(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030578
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】燃料加熱装置
(51)【国際特許分類】
F02M 53/00 20060101AFI20220210BHJP
F02M 69/00 20060101ALI20220210BHJP
F02M 31/135 20060101ALI20220210BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
F02M53/00 J
F02M69/00 350H
F02M69/00 310T
F02M31/135 301G
F02M31/135 301N
F02M31/135 311G
F02D41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134688
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山口 智広
(72)【発明者】
【氏名】石井 正人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀任
(72)【発明者】
【氏名】島谷 和良
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】黒木 雅太
【テーマコード(参考)】
3G301
【Fターム(参考)】
3G301HA01
3G301JA10
3G301KA01
3G301ND01
3G301PE01
(57)【要約】
【課題】モータによるエンジンの始動時に、燃料加熱部による燃料の気化を十分に行うことが可能な燃料加熱装置を提供する。
【解決手段】この燃料加熱装置13は、燃料を加熱する燃料加熱部131と、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが残量しきい値C1以下になる場合、エンジン6の始動までの間、バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる制御を行う制御部132とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒内の燃焼室に供給される空気および燃料を含む混合気を燃焼させることにより駆動するエンジンと、電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリから供給される電力により前記エンジンを始動させるモータとを備える車両の燃料加熱装置であって、
前記バッテリから供給される電力により燃料を加熱する燃料加熱部と、
前記エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合、前記エンジンの始動までの間、前記バッテリから前記燃料加熱部に供給する電力量を増加させるか、または、前記燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させる制御を行う制御部とを備える、燃料加熱装置。
【請求項2】
前記残量しきい値は、前記燃料加熱部と前記エンジンとを動かすために必要な電力の下限値であるバッテリ下限値であり、
前記制御部は、前記バッテリ下限値を前記バッテリ残量が下回る場合、前記エンジンの始動までの間、前記バッテリから前記燃料加熱部に供給される電力量を増加させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の燃料加熱装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記エンジンの始動時において前記バッテリ残量が前記残量しきい値以下の場合、前記バッテリ残量が前記残量しきい値を超える場合と比較して、前記エンジンの始動時までの間、前記燃料加熱部の目標加熱温度を高い温度に設定することにより前記燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載の燃料加熱装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記エンジンの始動時において前記バッテリ残量が前記残量しきい値以下の場合、前記バッテリ残量が前記残量しきい値を超える場合と比較して、前記エンジンの始動までの間、前記バッテリから前記燃料加熱部への電力の供給時間を長く設定することにより前記燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載の燃料加熱装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記エンジンの始動時において前記バッテリ残量が前記残量しきい値以下の場合、前記バッテリ残量が前記残量しきい値を超える場合と比較して、燃料を供給するタイミングを早く設定することにより前記燃料加熱部による燃料の前記加熱時間を増加させる制御を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料加熱装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記エンジンの始動時において前記バッテリ残量が前記残量しきい値以下の場合、前記エンジンの始動までの間、前記バッテリから前記燃料加熱部に供給する電力を徐々に上昇させることにより前記燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料加熱装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記エンジンの始動中において、前記モータによる前記エンジンの始動が不良になった場合、前記エンジンの再始動の際、燃料の供給量を減少させるとともに、燃料の供給量を減少させた分に応じて前記バッテリから前記燃料加熱部に供給する電力量を減少させる制御を行うように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料加熱装置。
【請求項8】
前記気筒内の前記燃焼室に空気を供給するための吸気装置をさらに備え、
前記吸気装置は、
インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部と、
前記ポート部の内側に形成され、前記気筒に供給される空気および燃料を含む混合気を流す吸気通路とを含み、
前記燃料加熱部は、前記ポート部の内表面に沿って設けられ、前記吸気通路内に導入された燃料を気化させるポート用ヒータを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料加熱装置に関し、特に、燃料を加熱する燃料加熱部を備える燃料加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を加熱する燃料加熱部を備える燃料加熱装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、燃料を加熱するPTCヒータ(燃料加熱部)を備える内燃機関の燃料供給装置(燃料加熱装置)が開示されている。この内燃機関の燃料供給装置は、PTCヒータによる燃料の予熱を行うために、PTCヒータに供給する電力を制御する制御装置を備えている。これにより、燃料供給装置では、スタータモータによる内燃機関の始動時に、PTCヒータによる燃料の予熱を行うことにより、燃料の気化が促進されるので、内燃機関の始動性が向上される。
【0004】
上記特許文献1の制御装置は、スタータモータによる内燃機関の始動時に、スタータモータに供給する電力に合わせて、バッテリからPTCヒータに供給する電力を調整する制御を行うように構成されている。詳細には、制御装置は、内燃機関の始動前のバッテリ電圧に基づいて、スタータモータおよびPTCヒータに供給する電力がバッテリの電力供給能力を超えている場合、バッテリからPTCヒータに供給する電力を減少させる制御を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の内燃機関の燃料供給装置では、バッテリからPTCヒータに供給する電力を減少させた場合、スタータモータによる内燃機関の始動時に、PTCヒータの温度が過度に低下する場合があるという不都合がある。このため、上記特許文献1の内燃機関の燃料供給装置では、スタータモータおよびPTCヒータに供給する電力がバッテリの電力供給能力を超えないように、PTCヒータに供給する電力を減少させた場合に、スタータモータ(モータ)による内燃機関(エンジン)の始動時に、PTCヒータ(燃料加熱部)による燃料の気化を十分に行うことができないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、モータによるエンジンの始動時に、燃料加熱部による燃料の気化を十分に行うことが可能な燃料加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における燃料加熱装置は、気筒内の燃焼室に供給される空気および燃料を含む混合気を燃焼させることにより駆動するエンジンと、電力を蓄えるバッテリと、バッテリから供給される電力によりエンジンを始動させるモータとを備える車両の燃料加熱装置であって、バッテリから供給される電力により燃料を加熱する燃料加熱部と、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させる制御を行う制御部とを備える。なお、制御部は、複数の制御部により構成されていてもよいし、1つの制御部により構成されていてもよい。
【0009】
この発明の一の局面による燃料加熱装置では、上記のように、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させる制御を行う制御部を設ける。これにより、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合にも、燃料加熱部に供給する電力を増加した分だけ、エンジンの始動までの間に、あらかじめ燃料加熱部に蓄熱させることができるので、モータによるエンジンの始動時に、燃料加熱部の温度が過度に低下しないようにすることができる。また、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合にも、燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させることにより、燃料の加熱時間を増加した分だけ、エンジンの始動までの間に、あらかじめ燃料加熱部に蓄熱させることができるので、モータによるエンジンの始動時に、燃料加熱部の温度が過度に低下しないようにすることができる。これらにより、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合にも、モータによるエンジンの始動時に、燃料加熱部による燃料の気化を十分に行うことができる。
【0010】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、残量しきい値は、燃料加熱部とエンジンとを動かすために必要な電力の下限値であるバッテリ下限値であり、制御部は、バッテリ下限値をバッテリ残量が下回る場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に供給される電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0011】
このように構成すれば、エンジンの始動までの間に燃料加熱部に蓄熱させることにより、蓄熱させた分だけ燃料加熱部に電力を供給しないようにすることができるので、モータによるエンジンの始動の際に燃料加熱部に供給する電力を低減することができる。その結果、燃料加熱部に供給する電力を低減した分だけ、エンジンを動かすために必要な電力を確保することができるので、エンジンの始動を確実に行うことができる。
【0012】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、制御部は、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下の場合、バッテリ残量が残量しきい値を超える場合と比較して、エンジンの始動時までの間、燃料加熱部の目標加熱温度を高い温度に設定することにより燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0013】
このように構成すれば、燃料加熱部の目標加熱温度を高い温度に再設定した状態で、燃料加熱部に供給する電力量を増加させることにより、再設定した目標加熱温度に合わせて電力量を増加させることができるので、エンジンの始動までの間にあらかじめ行われる燃料加熱部への蓄熱を正確に行うことができる。
【0014】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、制御部は、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下の場合、バッテリ残量が残量しきい値を超える場合と比較して、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部への電力の供給時間を長く設定することにより燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0015】
このように構成すれば、バッテリから燃料加熱部へ供給する電力量を急激に増加させる場合と異なり、燃料加熱部により確実に蓄熱させた状態でエンジンを始動させることができるので、モータによるエンジンの始動の際中に、より確実に燃料加熱部の温度が過度に低下しないようにすることができる。
【0016】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、制御部は、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下の場合、バッテリ残量が残量しきい値を超える場合と比較して、燃料を供給するタイミングを早く設定することにより燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うように構成されている。
【0017】
このように構成すれば、燃料を供給するタイミングを早く設定することにより、燃料加熱部による燃料の加熱時間を十分に確保することができるので、燃料加熱部により燃料を確実に気化させることができる。その結果、エンジンの始動の際の失火を抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、制御部は、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下の場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に供給する電力を徐々に上昇させることにより燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0019】
このように構成すれば、バッテリから燃料加熱部に供給する電力を徐々に上昇させることにより、燃料加熱部に電流を流した後に温度変化するまでの時間遅れに合わせて、燃料加熱部の温度を徐々に上昇させることができるので、燃料加熱部の温度を目標加熱温度により正確に合わせることができる。その結果、バッテリから燃料加熱部に供給する電力の無駄を削減することができる。
【0020】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、制御部は、エンジンの始動中において、モータによるエンジンの始動が不良になった場合、エンジンの再始動の際、燃料の供給量を減少させるとともに、燃料の供給量を減少させた分に応じてバッテリから燃料加熱部に供給する電力量を減少させる制御を行うように構成されている。
【0021】
このように構成すれば、エンジンの再始動の際の燃料の供給量が過大になることを抑制することができるとともに、エンジンの再始動の際の電力量の無駄を削減することができる。これにより、エンジンの再始動の際の燃料の供給量が過大になることに起因するエンジンの失火を抑制しつつ、バッテリの電力の無駄を削減することができる。
【0022】
上記一の局面による燃料加熱装置において、好ましくは、気筒内の燃焼室に空気を供給するための吸気装置をさらに備え、吸気装置は、インジェクタの噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部と、ポート部の内側に形成され、気筒に供給される空気および燃料を含む混合気を流す吸気通路とを含み、燃料加熱部は、ポート部の内表面に沿って設けられ、吸気通路内に導入された燃料を気化させるポート用ヒータを含む。
【0023】
このように構成すれば、モータによるエンジンの始動の際中に、ポート用ヒータの温度が過度に低下しないようにすることが可能な吸気装置を得ることができる。
【0024】
なお、上記一の局面による燃料加熱装置において、以下のような構成も考えられる。
【0025】
(付記項1)
すなわち、上記一の局面による燃料加熱装置において、制御部は、エンジンの始動前において、燃料加熱部以外の電装品によるバッテリの電力消費が一定時間以上持続して行われる場合、燃料加熱部が目標加熱温度になったことに基づいて、バッテリから燃料加熱部に供給する電力量を減少させる制御を行うか、または、バッテリから燃料加熱部への電力の供給を停止するとともに、エンジンの始動に基づいてバッテリから燃料加熱部への電力の供給を再開する制御を行うように構成されている。
【0026】
このように構成すれば、エンジンの始動前において、燃料加熱部が目標加熱温度になった後、バッテリから燃料加熱部への電力供給を抑制することにより、燃料加熱部以外の電装品へのバッテリへの電力供給を確実に行うことができるとともに、バッテリの電力消費の無駄を削減することができる。また、エンジンの始動前において、燃料加熱部が目標加熱温度になった後、エンジンが始動された場合には、燃料加熱部を再加熱することにより、燃料加熱部が暖められた状態で再加熱することができるので、燃料加熱部を効率良く加熱することができる。
【0027】
(付記項2)
上記一の局面による燃料加熱装置において、制御部は、エンジンを始動させるための運転手の操作が行われるよりも前の所定タイミングに基づいて、燃料加熱部による燃料の加熱を開始するとともに、バッテリから燃料加熱部に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0028】
このように構成すれば、エンジン始動までの燃料加熱部を加熱可能な時間を可能な限り長くすることができるので、エンジンを始動させる際に燃料加熱部をより確実に目標加熱温度まで加熱させておくことができる。
【0029】
(付記項3)
上記一の局面による燃料加熱装置において、制御部は、エンジンの始動中において、バッテリ残量が残量しきい値を超える場合、エンジンから取得可能な情報に基づいて、少なくとも燃料加熱部への燃料の付着に起因する燃料加熱部の温度低下を燃料加熱部への電力量を増加させることによって抑制するフィードフォワード制御の制御定数を取得するとともに、制御定数に基づくフィードフォワード制御により燃料加熱部への電力量を増加させつつ、フィードバック制御により燃料加熱部を目標加熱温度に維持するように燃料加熱部への電力量を供給する制御を行うように構成されている。
【0030】
このように構成すれば、フィードフォワード制御により外乱に起因する燃料加熱部の温度低下を抑制することにより、燃料加熱部の温度低下をより確実に抑制することができるので、エンジンの始動中においても燃料加熱部による燃料の気化を適切に行うことができる。
【0031】
(付記項4)
上記一の局面による燃料加熱装置において、制御部は、エンジンの始動後において、エンジンから取得可能な情報に基づいて、少なくとも燃料加熱部への燃料の付着に起因する燃料加熱部の温度低下を燃料加熱部への電力量を増加させることによって抑制するフィードフォワード制御の制御定数を取得するとともに、制御定数に基づくフィードフォワード制御により燃料加熱部への電力量を増加させつつ、フィードバック制御により燃料加熱部を目標加熱温度に維持するように燃料加熱部への電力量を供給する制御を行うように構成されている
【0032】
このように構成すれば、フィードフォワード制御により外乱に起因する燃料加熱部の温度低下を抑制することにより、燃料加熱部の温度低下をより確実に抑制することができるので、エンジンの始動後においても燃料加熱部による燃料の気化を適切に行うことができる。
【0033】
(付記項5)
上記一の局面による燃料加熱装置において、制御部は、エンジンの始動後において、エンジンから取得可能な情報に基づいて、燃料加熱部による燃料の加熱の停止のタイミングを決定する制御を行うように構成されている。
【0034】
このように構成すれば、エンジンの状態に応じて燃料加熱部による燃料の加熱の停止のタイミングを決定することにより、燃料加熱部を用いることなく、エンジンの熱により燃料の気化が行われるタイミングで燃料加熱部による燃料の加熱を停止させることできる。その結果、燃料を確実に気化させることができるとともに、バッテリから燃料加熱部に供給される電力の無駄を削減することができる。
【0035】
(付記項6)
上記目的を達成するために、この発明の他の局面における燃料加熱システムは、気筒内の燃焼室に供給される空気および燃料を含む混合気を燃焼させることにより駆動するエンジンと、電力を蓄えるバッテリと、バッテリから供給される電力によりエンジンを始動させるモータと、バッテリから供給される電力により、エンジンの気筒内の燃焼室に供給される燃料を加熱する燃料加熱装置とを備え、燃料加熱装置は、バッテリから供給される電力により燃料を加熱する燃料加熱部と、燃料加熱部に供給される電力を制御する加熱制御部と、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うエンジン制御部とを含む。
【0036】
この発明の他の局面による燃料加熱システムでは、上記のように、燃料加熱装置に、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下になる場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うエンジン制御部を設ける。これにより、燃料加熱部に供給する電力を増加した分だけ、燃料加熱部に蓄熱させることができるので、モータによるエンジンの始動の際中に、燃料加熱部の温度が過度に低下しないようにすることができる。また、燃料加熱部による燃料の加熱時間を増加させることにより、燃料の加熱時間を増加した分だけ、燃料加熱部に蓄熱させることができるので、モータによるエンジンの始動の際中に、燃料加熱部の温度が過度に低下しないようにすることができる。これらにより、モータによるエンジンのクランキングの際中に、燃料加熱部による燃料の加熱を継続して十分に行うことが可能な燃料加熱システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1実施形態による燃料加熱装置を取り付けたエンジンを示した斜視図である。
【
図2】第1実施形態による燃料加熱装置の燃料加熱部をインテークポートに取り付けた状態を示した断面図である。
【
図3】第1実施形態による燃料加熱装置のエンジン制御部および加熱制御部を示したブロック図である。
【
図4】第1実施形態による燃料加熱装置のバッテリ残量を示した模式図である。
【
図5】第1実施形態による燃料加熱装置の第1ヒータ温度制御のタイミングチャートである。
【
図6】第1実施形態による燃料加熱装置の第2ヒータ温度制御のタイミングチャートである。
【
図7】第1実施形態による燃料加熱装置の第3ヒータ温度制御のタイミングチャートである。
【
図8】第1実施形態による燃料加熱装置の第4ヒータ温度制御のタイミングチャートである。
【
図9】第1実施形態による燃料加熱装置の加熱制御処理を示したフローチャートである。
【
図10】第1実施形態による燃料加熱装置の第1加熱制御処理を示したフローチャートである。
【
図11】第1実施形態による燃料加熱装置の第2加熱制御処理を示したフローチャートである。
【
図12】第1実施形態による燃料加熱装置の噴射制御のステップS708~ステップS710を示したフローチャートである。
【
図13】第1実施形態による燃料加熱装置の噴射制御のステップS711~ステップS716を示したフローチャートである。
【
図14】第2実施形態による燃料加熱装置の燃料加熱部をインテークポートに取り付けた状態を示した断面図である。
【
図15】第2実施形態による燃料加熱装置のヒータ温度制御のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、ハイブリッド車およびガソリン車などの車両に搭載される本発明の実施形態の燃料加熱装置13を図面に基づいて説明する。
【0039】
[第1実施形態]
図1および
図2に示すように、第1実施形態では、ハイブリッド車などの電動車両100(特許請求の範囲の「車両」の一例)に搭載される燃料加熱装置13について説明する。電動車両100は、エンジン6または走行用モータ1の少なくともいずれかを駆動させることにより走行するように構成されている。電動車両100は、走行用モータ1と、メインバッテリ2と、エアクリーナ3と、スロットル4と、吸気装置5と、エンジン6と、排気管7と、三元触媒8と、フィルタ9と、テールパイプ10とを備えている。
【0040】
走行用モータ1は、動力伝達機構を介して車輪に伝達させる駆動力を発生させる駆動源である。走行用モータ1は、メインバッテリ2から供給される電力により駆動されるように構成されている。メインバッテリ2は、電力制御ユニット(図示せず)を介して電力を蓄えるように構成されている。メインバッテリ2は、二次電池である。
【0041】
ここで、吸気装置5は、気筒62a内の燃焼室63eに空気を供給するように構成されている。吸気装置5は、インテークマニホールド51と、ポート部52と、吸気通路53とを含んでいる。ポート部52は、インジェクタ64の噴射口から噴射された燃料が導入されるように構成されている。インテークマニホールド51と、ポート部52とは、締結部材により接続されている。吸気通路53は、ポート部52の内側に形成され、気筒62aに供給される空気および燃料を含む混合気を流すように構成されている。インジェクタ64は、燃焼室63eに向けて流れる空気に、霧状の燃料を噴射するように構成されている。燃料は、たとえば、ガソリン、ガス燃料またはエタノールなどである。このように、エンジン6は、燃料が吸気ポート63b内に噴射されるポート噴射式のエンジン6である。
【0042】
エンジン6は、気筒62a内の燃焼室63eに供給される空気および燃料を含む混合気を燃焼させることにより駆動する機関である。エンジン6は、クランクケース61の上方向側にシリンダブロック62を固定させるとともに、シリンダブロック62の上方向側にシリンダヘッド63を固定させた構造となっている。
【0043】
シリンダヘッド63は、燃焼室63eに連通する複数(4つ)の排気ポート63aおよび複数(4つ)の吸気ポート63bを有している。複数の吸気ポート63bの各々には、ポート部52が挿入されている。シリンダヘッド63には、吸気バルブ63cおよび排気バルブ63dが取り付けられている。吸気バルブ63cは、燃焼室63eと複数の吸気ポート63bとを連通させる吸気口を開閉するように構成されている。排気バルブ63dは、燃焼室63eと複数の排気ポート63aとを連通させる開口を開閉するように構成されている。シリンダブロック62には、内側にピストンが配置される複数(4つ)の気筒62aが設けられている。複数の気筒62aには、互いに異なるタイミングで燃料が供給される。
【0044】
エンジン6は、吸気ポート63bの内部に霧状の燃料を直接噴射する複数(4つ)のインジェクタ64と、吸気バルブ63cおよび排気バルブ63dを駆動させるカムシャフト65と、クランクシャフト66と、カムセンサ67と、クランクセンサ68とを備えている。
【0045】
また、電動車両100は、補助バッテリ11(特許請求の範囲の「バッテリ」の一例)と、モータリング用モータ12(特許請求の範囲の「モータ」の一例)と、燃料加熱装置13とを備えている。
【0046】
補助バッテリ11は、電力を蓄えるように構成されている。補助バッテリ11は、二次電池である。補助バッテリ11は、メインバッテリ2よりも蓄電量が小さい。補助バッテリ11は、モータリング用モータ12、エンジン制御部132および燃料加熱装置13と電気的に接続されている。モータリング用モータ12は、補助バッテリ11から供給される電力によりエンジン6を始動させるように構成されている。モータリング用モータ12は、モータリングの際、補助バッテリ11から供給される電力により駆動することによって、エンジン6のクランクシャフト66を駆動(クランキング)させるように構成されている。
【0047】
(燃料加熱装置)
燃料加熱装置13は、補助バッテリ11から供給される電力により燃料を加熱するように構成されている。燃料加熱装置13は、エンジン6に供給される燃料の予熱(プレヒート)を行うように構成されている。具体的には、燃料加熱装置13は、燃料加熱部131と、エンジン制御部132(特許請求の範囲の「制御部」の一例)と、加熱制御部133(特許請求の範囲の「制御部」の一例)とを含んでいる。
【0048】
燃料加熱部131は、補助バッテリ11から供給される電力により燃料を加熱するように構成されている。燃料加熱部131は、周囲温度が低い場合であっても、ポート部52の内表面に気化せず付着した燃料を強制的に加熱して気化させるように構成されている。燃料加熱部131は、燃料を気化する面状のポート用ヒータ131aである。燃料加熱部131は、ポート部52の先端側部分に配置されている。燃料加熱部131は、線状に延びた銅、ニクロム線およびステンレスなどにより形成された発熱体を有している。
【0049】
〈エンジン制御部〉
エンジン制御部132は、エンジン6を駆動させるための制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、CPU(Central Processing Unit)132aと、記憶媒体としてのメモリを有する記憶部132bとを含むECU(Electronical Contorol Unit)により構成されている。エンジン制御部132は、CPU132aが記憶部132bに記憶されているエンジン制御プログラムを実行することにより、エンジン6の各部を制御するように構成されている。
【0050】
すなわち、エンジン制御部132は、補助バッテリ11の充電および放電などを制御するように構成されている。また、エンジン制御部132は、補助バッテリ11の充電および放電を行った際のバッテリ残量Rを管理する制御を行うように構成されている。ここで、バッテリ残量Rとは、補助バッテリ11が完全充電された状態から放電した際のバッテリ電圧またはバッテリ電流の残量を示す。
【0051】
エンジン制御部132は、冷却水温度センサ、空燃比センサおよびO2センサなどのセンサ情報、補助バッテリ11のバッテリ残量Rおよび車両からの各種信号などを含むエンジン信号を取得する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、カムシャフト65の回転角度位置、および、クランクシャフト66の回転角度位置に基づいて、排気工程前の気筒62aおよび排気工程後の気筒62aを判別する制御を行うように構成されている。カムシャフト65の回転角度位置は、カムセンサ67により計測される。クランクシャフト66の回転角度位置は、クランクセンサ68により計測される。
【0052】
また、
図3に示すように、ハードウエアとしてのCPU132aなどからなるエンジン制御部132は、ソフトウエア(エンジン制御プログラム)の機能ブロックとして、運転手近接判定部P1と、ヒータ制御要求判定部P2と、バッテリ残量判定部P3と、エンジン始動判定部P4と、目標温度設定部P5と、目標温度制御部P6と、始動前燃料霧化判定部P7と、燃料噴射制御部P8とを有している。
【0053】
運転手近接判定部P1は、運転手が車両に近い位置にいるか否かを判定する機能を有している。具体的には、運転手近接判定部P1は、スマートキー信号と、ドアロック信号と、シート着座信号と、ブレーキペダル信号と、エンジン始動信号とを取得する機能を有している。運転手近接判定部P1は、上記複数の信号の少なくともいずれかに基づいて、運転手が車両に近い位置にいるか否かを判定する。
【0054】
ヒータ制御要求判定部P2は、燃料加熱装置13による燃料加熱を行うか否かを判定する機能を有している。具体的には、ヒータ制御要求判定部P2は、冷却水温度と、吸気温度と、外気温または燃料温度と、触媒温度と、エンジン停止時間と、アイドリングストップ状態(アイドリング時間)と、触媒活性化状態(空燃比センサまたはO2センサの計測値)と、エタノール濃度とを取得する機能を有している。ヒータ制御要求判定部P2は、上記複数の情報の少なくともいずれかに基づいて、燃料加熱装置13による燃料加熱を行うか否かを判定する。なお、上記複数の情報は、エンジン6(詳細には、エンジン信号を取得したエンジン制御部132)から取得可能な情報に含まれる。
【0055】
図3および
図4に示すように、バッテリ残量判定部P3は、冷却水温度と、吸気温度と、バッテリ残量Rとを取得する機能を有している。バッテリ残量判定部P3は、上記複数の情報に基づいて、バッテリ残量用マップにより、燃料加熱装置13による燃料加熱を行うか否かを判定する。バッテリ残量用マップは、あらかじめ取得されている。
【0056】
バッテリ残量判定部P3は、第1しきい値C1(特許請求の範囲の「残量しきい値」の一例)に基づいて、モータリング用モータ12を駆動可能か否かを判定する機能を有している。詳細には、バッテリ残量判定部P3は、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以上であることに基づいて、燃料加熱部131とモータリング用モータ12とを駆動可能であると判定する。また、バッテリ残量判定部P3は、バッテリ残量Rが第1しきい値C1未満であることに基づいて、燃料加熱部131を加熱可能ではないと判定する。このように、第1しきい値C1は、燃料加熱部131とエンジン6(特に、モータリング用モータ12)とを動かすために必要な電力の下限値であるバッテリ下限値である。
【0057】
バッテリ残量判定部P3は、第1しきい値C1および第2しきい値C2に基づいて、燃料加熱部131の加熱を行うことが可能か否かを判定する機能を有している。ここで、第2しきい値C2は、第1しきい値C1よりも大きいバッテリ残量Rとしてのしきい値である。
【0058】
詳細には、バッテリ残量判定部P3は、バッテリ残量Rが第2しきい値C2以上であることに基づいて、バッテリ残量Rに余裕があると判定する。そして、バッテリ残量判定部P3は、バッテリ残量Rが第2しきい値C2以上であることに基づいて、通常の電力量(たとえば、約12Vの電圧を約1秒間供給可能な電力)で燃料加熱部131による加熱を行うことが可能であるとともに、モータリング用モータ12も駆動可能であると判定する。
【0059】
また、バッテリ残量判定部P3は、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以上第2しきい値C2未満であることに基づいて、バッテリ残量Rに余裕がないと判定する。そして、バッテリ残量判定部P3は、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以上第2しきい値C2未満であることに基づいて、通常の電力よりも低い省電力で燃料加熱部131による加熱を行うことが可能であるとともに、モータリング用モータ12も駆動可能であると判定する。
【0060】
図3に示すように、エンジン始動判定部P4は、エンジン始動前、エンジン始動中(クランキング中)またはエンジン始動後のいずれかを判定する機能を有している。具体的には、エンジン始動判定部P4は、エンジン回転数を取得する機能を有している。エンジン始動判定部P4は、エンジン回転数に基づいて、エンジン始動前、エンジン始動中またはエンジン始動後のいずれかを判定する。
【0061】
目標温度設定部P5は、燃料加熱部131の目標加熱温度を設定する機能を有している。
【0062】
具体的には、目標温度設定部P5は、ヒータ制御要求判定の判定結果を取得する機能を有している。目標温度設定部P5は、ヒータ制御要求判定の判定が燃料加熱部131による加熱が必要という判定の場合、燃料加熱部131の目標加熱温度の設定を行う機能を有している。また、目標温度設定部P5は、バッテリ残量判定部P3の判定結果を取得する機能を有している。目標温度設定部P5は、バッテリ残量判定部P3の判定が燃料加熱部131による加熱が可能という判定の場合、燃料加熱部131の目標加熱温度の設定を行う機能を有している。また、目標温度設定部P5は、エンジン始動判定部P4のエンジン始動前か、エンジン始動中か、または、エンジン始動後の状態かの判定結果を取得する機能を有している。
【0063】
また、目標温度設定部P5は、冷却水温度と、吸気温度と、燃料噴射量(燃料噴射時間)と、エンジン回転数と、吸気圧(インテークマニホールド51内の圧力)と、バルブタイミング(吸気バルブ63cおよび排気バルブ63dの各々の開閉時期)と、燃焼室63e内に吸入した吸入空気量と、外気圧(大気圧)と、充填率(気筒62a内の新気の割合)とを取得する機能を有している。目標温度設定部P5は、上記複数の情報に基づいて、目標温度設定用マップにより、燃料加熱装置13の目標加熱温度(たとえば、約110℃)を設定する。目標温度設定用マップは、あらかじめ取得されている。上記複数の情報は、エンジン6から取得可能な情報に含まれる。
【0064】
目標温度制御部P6は、燃料加熱部131を目標加熱温度に制御するための電力量を取得する機能を有している。
【0065】
具体的には、目標温度制御部P6は、目標温度設定部P5から目標加熱温度を取得する機能を有している。目標温度制御部P6は、目標加熱温度と、現在の燃料加熱部131の温度とに基づいて、フィードバック制御により、電力量を取得する機能を有している。フィードバック制御は、エンジン始動前、エンジン始動中およびエンジン始動後において、行われる。
【0066】
目標温度制御部P6は、目標加熱温度に基づいて、フィードフォワード制御により、燃料加熱部131から熱を奪う燃料と、燃料加熱部131から熱を奪う吸気とを含む外乱を抑制するための、電力量を取得する機能を有している。フィードフォワード制御は、エンジン始動中およびエンジン始動後において、行われる。ここで、目標温度制御部P6は、冷却水温度と、吸気温度と、外気温または燃料温度と、燃料噴射量(燃料噴射時間)と、エンジン回転数と、吸気圧(インテークマニホールド51内の圧力)と、バルブタイミング(吸気バルブ63cおよび排気バルブ63dの各々の開閉時期)と、燃焼室63e内に吸入した吸入空気量と、外気圧(大気圧)と、充填率(気筒62a内の新気の割合)と、現在の燃料加熱部131の温度と、バッテリ残量Rと、アクセル開度とを取得する機能を有している。目標温度設定部P5は、上記複数の情報に基づいて、フィードフォワード制御定数用マップにより、フィードフォワード制御定数を設定する。フィードフォワード制御定数用マップは、あらかじめ取得されている。上記複数の情報は、エンジン6から取得可能な情報に含まれる。
【0067】
目標温度制御部P6により取得された電力量は、加熱制御部133により取得される。
【0068】
始動前燃料霧化判定部P7は、エンジン始動前の燃料噴射か、エンジン始動中の燃料噴射か、または、エンジン始動後の燃料噴射かを判定する機能を有している。具体的には、始動前燃料霧化判定部P7は、バッテリ残量判定部P3の判定結果を取得する機能を有している。始動前燃料霧化判定部P7は、エンジン始動判定部P4の判定結果を取得する機能を有している。始動前燃料霧化判定部P7は、バッテリ残量判定の判定結果と、エンジン始動判定部P4の判定結果とに基づいて、エンジン始動前の燃料噴射か、エンジン始動中の燃料噴射か、または、エンジン始動後の燃料噴射かを判定する機能を有している。
【0069】
燃料噴射制御部P8は、インジェクタ64の燃料噴射量を目標噴射量にするための噴射時間を取得する機能を有している。具体的には、燃料噴射制御部P8は、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて、複数の噴射制御のうちから対応する噴射制御に切り替えるとともに、燃料噴射用マップにより、燃料噴射時間を取得する機能を有している。ここで、燃料噴射制御部P8は、複数の噴射制御として、始動後増量制御と、暖気増量制御と、通常噴射制御と、第1加速時噴射制御と、第2加速時噴射制御と、第3加速時噴射制御と、フィードバック燃料噴射制御とを有している。
【0070】
始動後増量制御とは、エンジン6の始動の後、直前の燃料噴射量よりも燃料噴射量を増加させる制御である。暖気増量制御とは、エンジン6の始動の後、始動後増量制御の燃料噴射量よりも燃料噴射量を増加させる制御である。通常噴射制御とは、暖気増量制御よりも燃料噴射制御を減少させた制御である。第1加速時噴射制御とは、暖気増量制御よりも燃料噴射量を増加させる制御である。第2加速時噴射制御とは、通常噴射制御よりも燃料噴射量を増加させる制御である。第2加速時噴射制御とは、フィードバック燃料噴射制御よりも燃料噴射量を増加させる制御である。フィードバック燃料噴射制御とは、目標噴射量に燃料噴射量を追従させる制御である。
【0071】
燃料噴射制御部P8により取得された燃料噴射時間は、インジェクタ64により取得される。
【0072】
〈加熱制御部〉
加熱制御部133は、エンジン始動前、エンジン始動中およびエンジン始動後の各々において、目標温度制御部P6により取得された電力量に基づいて、燃料加熱部131を制御するためのデューティ比を取得する制御を行うように構成されている。加熱制御部133は、取得したデューティ比に基づいて、補助バッテリ11からの電力を制御するように構成されている。
【0073】
また、加熱制御部133は、燃料加熱部131に流す電流と、燃料加熱部131において計測される電圧とに基づいて、抵抗値を取得する制御を行うように構成されている。ここで、上記抵抗値は、燃料を気化させる燃料加熱部131の温度に対応している。
【0074】
具体的には、加熱制御部133は、制御回路としてのCPU133aと、記憶媒体としてのメモリを有する記憶部133bとを含むドライバにより構成されている。加熱制御部133は、CPU133aが記憶部133bに記憶されている電力供給制御プログラムを実行することにより、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給される電力を制御するように構成されている。
【0075】
(燃料加熱制御)
図3および
図4に示すように、電動車両100では、エンジン制御部132および加熱制御部133の各々の上記した機能により、燃料加熱部131の温度制御(燃料加熱制御)が行われている。ここで、エンジン制御部132では、燃料加熱部131に供給する電力量を取得する処理が行われている。加熱制御部133では、燃料加熱部131に供給するデューティ比の計算が行われている。このように、エンジン制御部132において、燃料加熱制御における主な処理が行われている。燃料加熱制御は、第1ヒータ温度制御、第2ヒータ温度制御、第3ヒータ温度制御および第4ヒータ温度制御を有している。
【0076】
以下に、第1ヒータ温度制御、第2ヒータ温度制御、第3ヒータ温度制御および第4ヒータ温度制御について説明する。
【0077】
第1実施形態のエンジン制御部132は、バッテリ残量Rに基づいて、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を制御するように構成されている。すなわち、エンジン制御部132は、エンジン始動前、エンジン始動中およびエンジン始動後の各々において、バッテリ残量Rに基づいて、燃料加熱部131の制御条件を変更する制御を行うように構成されている。
【0078】
〈エンジン始動前〉
図5~
図8に示すように、エンジン制御部132は、エンジン始動前の状態において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以下にならないように、燃料加熱部131を目標加熱温度まで加熱する予熱(プレヒート)する制御を行うように構成されている。
図5~
図7に示すタイミングチャートに示す、エンジン回転数、バッテリ残量R、ヒータ温度および電力量は、あくまで一例である。
【0079】
図5に示すように、具体的には、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる第1ヒータ温度制御を行うように構成されている。すなわち、エンジン制御部132は、第1しきい値C1(バッテリ下限値)をバッテリ残量Rが下回ると推定される場合、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給される電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0080】
詳細には、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが残量しきい値以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、エンジン6の始動時までの間、燃料加熱部131の目標加熱温度を高い温度に設定することにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0081】
すなわち、エンジン制御部132は、エンジン始動前(クランキング開始前のA時点)において、バッテリ残量Rを取得する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前、取得したバッテリ残量Rが、第1しきい値C1よりも大きく、かつ、第2しきい値C2よりも小さい場合、目標温度設定部P5により、燃料を蒸発させるために最低限必要な第1目標加熱温度T1よりも高い第2目標加熱温度T2を設定する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前、燃料加熱部131の温度(ヒータ温度)と、第2目標加熱温度T2との差に基づいて、フィードバック制御により、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を調整する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前、燃料加熱部131の温度が第2目標加熱温度T2になった後、フィードバック制御により、燃料加熱部131の温度を第2目標加熱温度T2に保温する制御を行うように構成されている。
【0082】
なお、A時点は、運転手がエンジン6を始動させる前の時点である。すなわち、A時点とは、エンジン制御部132が、運転手近接判定部P1により、運転手が電動車両100に近い位置にいるか否かを、スマートキー信号と、ドアロック信号と、シート着座信号と、ブレーキペダル信号と、エンジン始動信号とに基づいて、判定した時点である。
【0083】
また、
図6に示すように、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になると推定される場合、エンジン6の始動までの間、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる第2ヒータ温度制御を行うように構成されている。
【0084】
詳細には、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131への電力の供給時間を長く設定することにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。
【0085】
すなわち、エンジン制御部132は、エンジン始動前(クランキング開始前のA時点)において、バッテリ残量Rを取得する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前、取得したバッテリ残量Rが、第1しきい値C1よりも大きく、かつ、第2しきい値C2よりも小さい場合、目標温度制御部P6により、目標加熱温度にする所定タイミングTfを通常のタイミングよりも早めに設定する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前の所定タイミングTfにおいて、燃料加熱部131の温度(ヒータ温度)と、目標加熱温度との差に基づいて、フィードバック制御により、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を調整する制御を行うように構成されている。これにより、燃料加熱部131に蓄熱することにより、エンジン始動中(クランキング中)の温度低下を抑制する。そして、エンジン制御部132は、エンジン始動前、燃料加熱部131の温度が目標加熱温度になった後、フィードバック制御により、燃料加熱部131の温度を目標加熱温度に保温する制御を行うように構成されている。なお、通常のタイミングとは、第1ヒータ温度制御における燃料加熱部131を目標加熱温度にするタイミングを示す。
【0086】
このように、エンジン制御部132は、エンジン6を始動させるための運転手の操作が行われるよりも前の所定タイミングTfに基づいて、燃料加熱部131による燃料の加熱を開始するとともに、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている
【0087】
また、
図7に示すように、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になると推定される場合、エンジン6の始動までの間、インジェクタ64による燃料噴射タイミングFtをクランキング開始時よりも早めるとともに、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる第3ヒータ温度制御を行うように構成されている。
【0088】
詳細には、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、燃料を供給するタイミングを早く設定することにより燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うように構成されている。
【0089】
すなわち、エンジン制御部132は、エンジン始動前(クランキング開始前のA時点)において、バッテリ残量Rを取得する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前、取得したバッテリ残量Rが、第1しきい値C1よりも大きく、かつ、第2しきい値C2よりも小さい場合、燃料噴射制御部P8により、インジェクタ64の燃料噴射タイミングFtをクランキング開始時よりも早めに設定する制御を行うように構成されている。さらに、エンジン制御部132は、目標温度制御により、目標加熱温度にするタイミングを、燃料噴射タイミングFtに合わせてクランキング開始時よりも早めに設定する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、エンジン始動前の燃料噴射タイミングFtにおいて、燃料加熱部131の温度(ヒータ温度)と、目標加熱温度との差に基づいて、フィードバック制御により、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を調整する制御を行うように構成されている。これにより、燃料加熱部131上の燃料の滞在時間を増加させることにより、燃料加熱部131上の燃料の気化時間を増加させる。そして、エンジン制御部132は、エンジン始動前において、燃料加熱部131の温度が目標加熱温度になった後、フィードバック制御により、燃料加熱部131の温度を目標加熱温度に保温する制御を行うように構成されている。
【0090】
図8に示すように、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合、エンジン6の始動前からエンジン始動中の間、燃料加熱部131の温度と、目標加熱温度とに基づいて、フィードバック制御により、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を調整する第4ヒータ温度制御を行うように構成されている。すなわち、エンジン制御部132は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1を超えると推定される場合、クランキング中も継続して、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を調整する制御を行うように構成されている。
【0091】
エンジン制御部132は、燃料加熱部131に通電開始後、常にバッテリ残量Rを計測(モニタリング)し、第1しきい値C1に対する計測したバッテリ残量Rの余裕に基づいて、第1~第4ヒータ加熱制御を再決定する制御を行うように構成されている。
【0092】
また、エンジン制御部132は、エンジン6の始動前において、燃料加熱部131以外の電装品による補助バッテリ11の電力消費が一定時間以上持続して行われる場合、燃料加熱部131が目標加熱温度になったことに基づいて、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を減少させる制御を行うか、または、補助バッテリ11から燃料加熱部131への電力の供給を停止するとともに、エンジン6の始動に基づいて補助バッテリ11から燃料加熱部131への電力の供給を再開する制御を行うように構成されている。
【0093】
詳細には、エンジン制御部132は、運転手によるエンジン6を始動させる操作が、エンジン6を始動させる前の状態であり、かつ、補助バッテリ11からアクセサリおよび電装品に電力の供給が一定時間以上続いた場合、燃料加熱部131が目標加熱温度に達したことに基づいて、フィードバック制御を行うことなく、燃料加熱部131に供給する電力量を下げる(デューティ比を下げる)、または、燃料加熱部131の加熱を停止する制御を行うように構成されている。そして、エンジン制御部132は、運転手によりエンジン6が始動された場合、燃料加熱部131を再加熱する制御を行うように構成されている。
【0094】
なお、電動車両100では、走行用モータ1により走行される際、燃料加熱部131を早急に目標加熱温度まで加熱する必要がないので、最大限のデューティ比(たとえば、100%)よりも小さいデューティ比(たとえば、50%)により燃料加熱部131の加熱を行うことが好ましい。これにより、補助バッテリ11の電力消費が抑えられる。
【0095】
〈エンジン始動中〉
図5~
図8に示すように、エンジン制御部132は、エンジン始動中の状態において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以下にならないように、かつ、ヒータ温度が目標加熱温度を維持可能なように、燃料加熱部131を加熱する制御を行うように構成されている。
図5~
図8に示すタイミングチャートに示す、エンジン回転数、バッテリ残量R、燃料噴射量、ヒータ温度および電力量は、あくまで一例である。
【0096】
まず、エンジン始動中において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1よりも大きい場合の一例として、
図8に示す第4ヒータ温度制御を用いて説明する。
【0097】
図8に示すように、エンジン制御部132は、目標温度制御部P6において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1よりも大きい場合、フィードバック制御によりヒータ温度を目標加熱温度に維持しつつ、フィードフォワード制御により外乱を抑制するための電力量をさらに含める制御を行うように構成されている。この際、エンジン制御部132は、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を下回らないように、バッテリ残量Rを調節する制御を行うように構成されている。
【0098】
詳細には、エンジン制御部132は、エンジン6の始動中において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合、エンジン6から取得可能な情報に基づいて、少なくとも燃料加熱部131への燃料の付着に起因する燃料加熱部131の温度低下(外乱)を燃料加熱部131への電力量を増加させることによって抑制するフィードフォワード制御の制御定数を取得するとともに、制御定数に基づくフィードフォワード制御により燃料加熱部131への電力量を増加させつつ、フィードバック制御により燃料加熱部131を目標加熱温度に維持するように燃料加熱部131への電力量を供給する制御を行うように構成されている。
【0099】
すなわち、エンジン制御部132は、目標温度制御部P6により、冷却水温度と、吸気温度と、外気温または燃料温度と、燃料噴射量(燃料噴射時間)と、エンジン回転数と、吸気圧(インテークマニホールド51内の圧力)と、バルブタイミング(吸気バルブ63cおよび排気バルブ63dの各々の開閉時期)と、燃焼室63e内に吸入した吸入空気量と、外気圧(大気圧)と、充填率(気筒62a内の新気の割合)と、現在の燃料加熱部131の温度と、バッテリ残量Rと、アクセル開度とに基づいて、燃料加熱部131のヒータ温度低下をヒータ温度低下用マップにより推定する制御を行うように構成されている。
【0100】
エンジン制御部132は、目標温度制御部P6により、ヒータ温度低下に基づいて、フィードフォワード制御定数用マップにより、フィードフォワード制御定数を取得する制御を行うように構成されている。これにより、エンジン制御部132は、取得したフィードフォワード制御定数に基づくフィードフォワード制御により燃料加熱部131への電力量を増加させつつ、フィードバック制御により燃料加熱部131を目標加熱温度に維持する制御を行うように構成されている。
【0101】
ここで、エンジン制御部132は、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の両方を行っても、ヒータ温度が低下する場合、燃料加熱部131に供給する電力をさらに大きくする制御を行うように構成されている。すなわち、加熱制御部133において取得されたデューティ比が、最大限のデューティ比よりも小さい場合には、取得されたデューティ比と、最大限のデューティ比との差の分だけ、燃料加熱部131に供給する電力を大きくする。また、加熱制御部133において取得されたデューティ比が、最大限のデューティ比と略等しい場合には、目標加熱温度を高くすることにより、燃料加熱部131に供給する電力を大きくする。
【0102】
なお、電動車両100では、モータリングによるエンジン始動が多い。これにより、吸気ポート63bから排気ポート63aを流れる空気に起因する燃料加熱部131の温度低下が大きくなるので、上記した燃料加熱部131に供給する電力を大きくする処理が、電動車両100において行われることが好ましい。
【0103】
また、エンジン制御部132は、エンジン始動中、フィードフォワード制御定数を更新し続けるとともに、計測したヒータ温度と、目標加熱温度とに基づいて、フィードバック制御を行うように構成されている。
【0104】
次に、エンジン始動中において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合の一例として、
図7に示す第3ヒータ温度制御を用いて説明する。
【0105】
図7に示すように、エンジン制御部132は、エンジン6の始動中において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる(と推定される)場合、フィードフォワード制御を行うことなく、フィードバック制御により燃料加熱部131を目標加熱温度に維持するように燃料加熱部131への電力量を供給する制御を行うように構成されている。すなわち、エンジン制御部132は、目標温度制御部P6において、バッテリ残量Rが第1しきい値C1よりも大きく第2しきい値C2よりも小さい場合、フィードバック制御のみによりヒータ温度を目標加熱温度に維持する制御を行うように構成されている。
【0106】
ここで、第1~第4ヒータ温度制御では、上記した制御に加えて、以下に説明する制御も行われている。
【0107】
エンジン制御部132は、エンジン6の始動中において、始動用モータ212によるエンジン6の始動が不良になった場合、エンジン6の再始動の際、燃料の供給量を減少させるとともに、燃料の供給量を減少させた分に応じて補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を減少させる制御を行うように構成されている。
【0108】
すなわち、エンジン制御部132は、カムシャフト65の回転角度位置、および、クランクシャフト66の回転角度位置に基づいて、排気工程前の気筒62aおよび排気工程後の気筒62aを判別する制御を行うように構成されている。エンジン制御部132は、排気工程前の気筒62aは掃気されていないため、直前に噴射した噴射量の分だけ燃料が気筒62a内に残っていると判断する制御を行うように構成されている。これにより、エンジン制御部132は、排気工程前の気筒62aに対して、直前に噴射した燃料の噴射量の分だけ、インジェクタ64から噴射する燃料の噴射量を減少させる制御を行うように構成されている。また、エンジン制御部132は、排気工程後の気筒62aは掃気されているため、気筒62a内に燃料が残っていないと判断する制御を行うように構成されている。これにより、エンジン制御部132は、排気工程後の気筒62aに対して、インジェクタ64から噴射する燃料の噴射量を減少させる制御を行わないように構成されている。
【0109】
〈エンジン始動後〉
図5~
図8に示すように、エンジン制御部132は、エンジン始動後の状態において、エンジン6が駆動することによりバッテリ残量Rが増加することによって、バッテリ残量Rが第1しきい値C1に対して余裕があるので、ヒータ温度が目標加熱温度を維持可能なように、燃料加熱部131を加熱する制御を行うように構成されている。
図5~
図8に示すタイミングチャートに示す、エンジン回転数、バッテリ残量R、燃料噴射量、ヒータ温度および電力量は、あくまで一例である。
【0110】
エンジン始動後の一例として、
図8に示す第4ヒータ温度制御を用いて説明する。
【0111】
エンジン制御部132は、エンジン6の始動後において、エンジン6から取得可能な情報に基づいて、少なくとも燃料加熱部131への燃料の付着に起因する燃料加熱部131の温度低下を燃料加熱部131への電力量を増加させることによって抑制するフィードフォワード制御の制御定数を取得するとともに、制御定数に基づくフィードフォワード制御により燃料加熱部131への電力量を増加させつつ、フィードバック制御により燃料加熱部131を目標加熱温度に維持するように燃料加熱部131への電力量を供給する制御を行うように構成されている。
【0112】
すなわち、エンジン制御部132は、エンジン始動後において、フィードフォワード制御定数を更新し続けるとともに、計測したヒータ温度と、目標加熱温度とに基づいて、フィードバック制御を行うように構成されている。
【0113】
エンジン制御部132は、エンジン6の始動後において、エンジン6から取得可能な情報に基づいて、燃料加熱部131による燃料の加熱の停止のタイミングを決定する制御を行うように構成されている。詳細には、エンジン制御部132は、排気の温度、触媒温度、冷却水温度、空燃比および吸気温度などの情報に基づいて、燃料加熱部131による燃料の加熱の停止のタイミングを決定する制御を行うように構成されている。なお、燃料加熱部131による燃料の加熱の停止のタイミングは、三元触媒8が活性化し、三元触媒8による排気ガスの浄化が可能となる時点よりも後であることが好ましい。
【0114】
(燃料加熱制御処理)
以下に、
図9を参照して、エンジン制御部132および加熱制御部133による燃料加熱制御処理について説明する。燃料加熱制御処理は、バッテリ残量Rに応じて、燃料加熱部131に供給される電力を適切に調整する処理である。
【0115】
ステップS1において、エンジン制御部132の運転手近接判定部P1により、運転手が電動車両100の近くにいるかいないかが判断される。運転手が近くにいる場合は、ステップS2に進み、エンジン制御部132および加熱制御部133を起動する。運転手が近くにいない場合は、ステップS1を繰り返す。
【0116】
ステップS3において、エンジン制御部132のヒータ制御要求判定部P2により、燃料を燃料加熱部131により加熱するか否かが判断される。詳細には、エンジン制御部132のヒータ制御要求判定部P2により、冷却水温度と、吸気温度と、外気温または燃料温度と、触媒温度と、エンジン停止時間と、アイドリングストップ状態と、触媒活性化状態と、エタノール濃度とに基づいて、燃料の加熱を行うか否かを判定する。燃料を燃料加熱部131により加熱する場合には、ステップS4に進み、燃料を燃料加熱部131により加熱しない場合には、ステップS9に進む。
【0117】
ステップS4において、エンジン制御部132により、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以上か否かが判断される。詳細には、エンジン制御部132のエンジン始動判定部P4により、エンジン始動判定部P4は、エンジン回転数に基づいて、エンジン始動前、エンジン始動中またはエンジン始動後のいずれかが判定される。ステップS4において、エンジン制御部132により、バッテリ残量Rが取得される。そして、バッテリ残量Rが第1しきい値C1以上の場合には、ステップS5に進み、第1加熱制御を行う。また、バッテリ残量Rが第1しきい値C1未満の場合には、ステップS6に進み、第2加熱制御を行う。
【0118】
ステップS7において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて、燃料噴射用マップにより、噴射制御が行われる。噴射制御では、エンジン制御部132により、燃料噴射時間に基づいて、インジェクタ64から燃料が噴射される。
【0119】
ステップS8において、エンジン制御部132により、燃料加熱部131の加熱が停止されるか否かが判断される。燃料加熱部131の加熱を停止させる場合、加熱制御処理は終了する。燃料加熱部131の加熱を続ける場合、ステップS4に戻る。
【0120】
ステップS9において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて、燃料噴射用マップにより、噴射制御が行われる。噴射制御では、エンジン制御部132により、燃料噴射時間に基づいて、インジェクタ64から燃料が噴射される。
【0121】
ステップS10において、エンジン制御部132により、エンジン6が始動したか否かが判断される。エンジン6が始動した場合には、ステップS7に進み、エンジン6が始動していない場合には、ステップS11に進み燃料の噴射および点火を停止した後に燃料加熱制御処理を終了する。
【0122】
〈第1加熱制御処理〉
以下に、
図10を参照して、エンジン制御部132および加熱制御部133による第1加熱制御処理について説明する。第1加熱制御処理は、バッテリ残量Rに余裕がある場合、燃料加熱部131に供給される電力を適切に調整する処理である。
【0123】
ステップS501において、エンジン制御部132により、目標加熱温度が取得される。詳細には、エンジン制御部132の目標温度設定部P5により、ヒータ制御要求判定の判定結果と、バッテリ残量判定部P3の判定結果と、エンジン始動判定部P4の判定結果と、冷却水温度と、吸気温度と、燃料噴射量(燃料噴射時間)と、エンジン回転数と、吸気圧(インテークマニホールド51内の圧力)と、バルブタイミング(吸気バルブ63cおよび排気バルブ63dの各々の開閉時期)と、燃焼室63e内に吸入した吸入空気量と、外気圧(大気圧)と、充填率(シリンダ内の新気の割合)とに基づいて、目標温度設定用マップによって、燃料加熱装置13の目標加熱温度が設定される。
【0124】
ステップS502において、現在の燃料加熱部131の温度と、目標加熱温度とに基づいて、フィードバック制御により、燃料加熱部131が加熱される。ステップS503において、燃料加熱部131が目標加熱温度か否かが判断される。目標加熱温度である場合は、ステップS504に進み、目標加熱温度がフィードバック制御により維持される。目標加熱温度でない場合は、ステップS502に戻る。
【0125】
ステップS505において、エンジン制御部132がクランキング要求を受信したか否かが判断される。エンジン制御部132がクランキング要求を受信した場合には、ステップS506に進み、エンジン制御部132がクランキング要求を受信していない場合には、ステップS511に進む。
【0126】
ステップS506において、モータリング用モータ12に通電される。そして、ステップS57において、燃料加熱部131への投入電力が増加される。詳細には、エンジン制御部132の目標温度制御部P6により、目標加熱温度と、現在の燃料加熱部131の温度との差に基づいて、フィードバック制御により、電力量が取得される。さらに、エンジン制御部132の目標温度制御部P6により、目標加熱温度と、フィードフォワード制御定数とに基づいて、フィードフォワード制御により、電力量が加えられる。そして、ステップS508において、クランキングが開始される。
【0127】
ステップS509において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて、燃料噴射用マップにより、燃料の噴射が行われる。この際、エンジン制御部132により、燃料噴射時間に基づいて、インジェクタ64から燃料が噴射される。
【0128】
ステップS510において、エンジン制御部132により、エンジン6が始動したか否かが判断される。エンジン6が始動した場合には、第1加熱制御処理を終了してステップS7に進み、エンジン6が始動していない場合には、ステップS514に進み燃料の噴射および点火を停止した後に第1加熱制御処理を終了する。
【0129】
ステップS511において、エンジン制御部132により、燃料加熱部131に一定時間以上通電したか否かが判断される。一定時間以上通電した場合にはステップS512に進み、一定時間以上通電していない場合にはステップS502に戻る。ステップS512において、エンジン制御部132により、クランキング要求を受信したか否かが判断される。エンジン制御部132がクランキング要求を受信した場合には第1加熱制御処理を終了してステップS7に進み、エンジン制御部132がクランキング要求を受信していない場合にはステップS502に戻る。
【0130】
〈第2加熱制御処理〉
以下に、
図11を参照して、エンジン制御部132および加熱制御部133による第2加熱制御処理について説明する。第2加熱制御処理は、バッテリ残量Rに余裕がない場合、燃料加熱部131に供給される電力を適切に調整する処理である。
【0131】
第2加熱制御処理では、ステップS601~ステップS606が、それぞれ、第1加熱制御処理のステップS501~ステップS506と同じ処理である。第2加熱制御処理では、ステップS607~ステップS614が、それぞれ、第1加熱制御処理の
ステップS508~ステップS510、ステップS507、ステップS511~ステップS514と同じ処理である。そして、第2加熱制御処理が終了して、燃料加熱制御処理のステップS7に進む。
【0132】
〈噴射制御処理〉
以下に、
図12および
図13を参照して、エンジン制御部132および加熱制御部133による噴射制御処理について説明する。噴射制御処理は、燃料加熱部131を加熱しつつ、インジェクタ64による燃料の噴射を行う処理である。
【0133】
ステップS701において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて取得された燃料噴射用マップに基づいて、始動後増量制御が行われる。ステップS702において、エンジン制御部132により、三元触媒が活性化したか否かが判断される。三元触媒が活性化した場合には、ステップS8に進み、三元触媒が活性化していない場合には、ステップS703に進む。そして、ステップS703において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて取得された燃料噴射用マップに基づいて、暖気増量制御が行われる。
【0134】
ステップS704において、エンジン制御部132により、三元触媒が活性化したか否かが判断される。三元触媒が活性化した場合には、ステップS8に進み、三元触媒が活性化していない場合には、ステップS705に進む。ステップS705において、エンジン制御部132が加速要求を受信したか否かが判断される。エンジン制御部132が加速要求を受信した場合には、ステップS709に進み、暖気増量制御の燃料噴射量をさらに増加させた第1加速時噴射制御が行われる。エンジン制御部132が加速要求を受信していない場合には、ステップS706に進む。
【0135】
ステップS706において、エンジン制御部132により、暖気が完了したか否かが判断される。エンジン制御部132が暖機完了と判断した場合には、ステップS707に進み、エンジン制御部132が暖機完了していないと判断した場合には、ステップS702に戻る。
【0136】
ステップS707において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて取得された燃料噴射用マップに基づいて、通常噴射制御が行われる。そして、ステップS708において、エンジン制御部132により、三元触媒が活性化したか否かが判断される。三元触媒が活性化した場合には、ステップS8に進み、三元触媒が活性化していない場合には、ステップS710に進む。ステップS710において、エンジン制御部132が加速要求を受信したか否かが判断される。エンジン制御部132が加速要求を受信した場合には、ステップS717に進み、通常噴射制御の燃料噴射量をさらに増加させた第2加速時噴射制御が行われる。エンジン制御部132が加速要求を受信していない場合には、ステップS711に進む。
【0137】
ステップS711において、エンジン制御部132により、空燃比センサが活性化したか否かが判断される。空燃比センサが活性化した場合には、ステップS712に進み、空燃比センサが活性化していない場合には、ステップS707に戻る。
【0138】
ステップS712において、エンジン制御部132により、始動前燃料霧化判定部P7の判定結果に基づいて取得された燃料噴射用マップに基づいて、インジェクタ64による燃料のフィードバック燃料噴射制御が行われる。そして、ステップS713において、エンジン制御部132により、三元触媒が活性化したか否かが判断される。三元触媒が活性化した場合には、ステップS8に進み、三元触媒が活性化していない場合には、ステップS714に進む。ステップS713において、エンジン制御部132が加速要求を受信したか否かが判断される。エンジン制御部132が加速要求を受信した場合には、ステップS718においてフィードバック燃料噴射制御の燃料噴射量をさらに増加させた第3加速時噴射制御が行われる。エンジン制御部132が加速要求を受信していない場合には、ステップS715に進む。
【0139】
ステップS719において、エンジン制御部132により、ギヤがパーキングレンジか否かが判断される。エンジン制御部132がパーキングレンジと判断した場合には、ステップS715に進み、エンジン制御部132がパーキングレンジと判断しなかった場合には、ステップS712に戻る。
【0140】
ステップS715において、エンジン制御部132により、イグニッションが停止したか否かが判断される。エンジン制御部132がイグニッション停止と判断した場合には、ステップS714に進み、燃料の噴射および点火を停止した後、噴射制御処理を終了してステップS8に進む。エンジン制御部132がイグニッション停止と判断しなかった場合には、ステップS712に戻る。
【0141】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0142】
第1実施形態では、上記のように、燃料加熱装置13に、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うエンジン制御部132を設ける。これにより、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合にも、燃料加熱部131に供給する電力を増加した分だけ、エンジン6の始動までの間に、あらかじめ燃料加熱部131に蓄熱させることができるので、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動時に、燃料加熱部131の温度が過度に低下しないようにすることができる。また、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合にも、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させることにより、燃料の加熱時間を増加した分だけ、エンジン6の始動までの間に、あらかじめ燃料加熱部131に蓄熱させることができるので、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動時に、燃料加熱部131の温度が過度に低下しないようにすることができる。これらにより、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合にも、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動時に、燃料加熱部131による燃料の気化を十分に行うことができる。
【0143】
また、第1実施形態では、上記のように、第1しきい値C1を、燃料加熱部131とエンジン6とを動かすために必要な電力の下限値であるバッテリ下限値とする。エンジン制御部132を、バッテリ下限値をバッテリ残量Rが下回る場合、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給される電力量を増加させる制御を行うように構成する。これにより、エンジン6の始動までの間に燃料加熱部131に蓄熱させることにより、蓄熱させた分だけ燃料加熱部131に電力を供給しないようにすることができるので、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動の際に燃料加熱部131に供給する電力を低減することができる。この結果、燃料加熱部131に供給する電力を低減した分だけ、エンジン6を動かすために必要な電力を確保することができるので、エンジン6の始動を確実に行うことができる。
【0144】
また、第1実施形態では、上記のように、エンジン制御部132を、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、エンジン6の始動時までの間、燃料加熱部131の目標加熱温度を高い温度に設定することにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成する。これにより、燃料加熱部131の目標加熱温度を高い温度に再設定した状態で、燃料加熱部131に供給する電力量を増加させることにより、再設定した目標加熱温度に合わせて電力量を増加させることができるので、エンジン6の始動までの間にあらかじめ行われる燃料加熱部131への蓄熱を正確に行うことができる。
【0145】
また、第1実施形態では、上記のように、エンジン制御部132を、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131への電力の供給時間を長く設定することにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成する。これにより、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力を急激に増加させる場合と異なり、燃料加熱部131により確実に蓄熱させた状態でエンジン6を始動させることができるので、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動の際中に、より確実に燃料加熱部131の温度が過度に低下しないようにすることができる。
【0146】
また、第1実施形態では、エンジン制御部132を、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、燃料を供給するタイミングを早く設定することにより燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うように構成する。これにより、燃料を供給するタイミングを早く設定することにより、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を十分に確保することができるので、燃料加熱部131により燃料を確実に気化させることができる。この結果、エンジン6の始動の際の失火を抑制することができる。
【0147】
また、第1実施形態では、上記のように、エンジン制御部132を、エンジン6の始動中において、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動が不良になった場合、エンジン6の再始動の際、燃料の供給量を減少させるとともに、燃料の供給量を減少させた分に応じて補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を減少させる制御を行うように構成する。これにより、エンジン6の再始動の際の燃料の供給量が過大になることを抑制することができるとともに、エンジンの再始動の際の電力量の無駄を削減することができる。この結果、エンジン6の再始動の際の燃料の供給量が過大になることに起因するエンジンの失火を抑制しつつ、補助バッテリ11の電力の無駄を削減することができる。
【0148】
また、第1実施形態では、上記のように、燃料加熱装置13に、気筒62a内の燃焼室63eに空気を供給するための吸気装置5を設ける。吸気装置5に、インジェクタ64の噴射口から噴射された燃料が導入されるポート部52と、ポート部52の内側に形成され、気筒62aに供給される空気および燃料を含む混合気を流す吸気通路53とを設ける。燃料加熱部131に、ポート部52の内表面に沿って設けられ、吸気通路53内に導入された燃料を気化させるポート用ヒータ131aを設ける。これにより、モータリング用モータ12によるエンジン6の始動の際中に、ポート用ヒータ131aの温度が過度に低下しないようにすることが可能な吸気装置5を得ることができる。
【0149】
[第2実施形態]
次に、
図14および
図15を参照して、第2実施形態の燃料加熱装置213について説明する。詳細には、ハイブリッド車などの電動車両100に搭載される第1実施形態の燃料加熱装置13とは異なり、第2実施形態の燃料加熱装置213は、コンベ車200に搭載されている。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。なお、コンベ車200とは、ガソリン車など(非ハイブリッド車)の車両を示す。
【0150】
図14に示すように、第2実施形態では、ガソリン車などのコンベ車200(特許請求の範囲の「車両」の一例)に搭載される燃料加熱装置213について説明する。コンベ車200は、エンジン6を駆動させることにより走行するように構成されている。コンベ車200は、エアクリーナ3と、スロットル4と、吸気装置5と、エンジン6と、排気管7と、三元触媒8と、フィルタ9と、テールパイプ10とを備えている。
【0151】
また、コンベ車200は、バッテリ211と、始動用モータ212(特許請求の範囲の「モータ」の一例)と、燃料加熱装置213とを備えている。
【0152】
(燃料加熱装置)
燃料加熱装置213は、バッテリ211から供給される電力により燃料を加熱するように構成されている。燃料加熱装置213は、エンジン6に供給される燃料の予熱(プレヒート)を行うように構成されている。具体的には、燃料加熱装置213は、燃料加熱部131と、エンジン制御部232(特許請求の範囲の「制御部」の一例)と、加熱制御部133(特許請求の範囲の「制御部」の一例)と、を含んでいる。
【0153】
〈エンジン制御部〉
エンジン制御部232は、エンジン6を駆動させるための制御を行うように構成されている。エンジン制御部232は、CPU232aと、記憶媒体としてのメモリを有する記憶部232bとを含むECUにより構成されている。エンジン制御部232は、CPU232aが記憶部232bに記憶されているエンジン制御プログラムを実行することにより、エンジン6の各部を制御するように構成されている。
【0154】
図15に示すように、エンジン制御部232は、目標温度制御部P6により、エンジン始動前において、目標加熱温度と、現在の燃料加熱部131の温度との差に基づいて、フィードバック制御により、電力量を取得する機能を有している。
【0155】
具体的には、エンジン制御部232は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが残量しきい値以下になると推定される場合、エンジン6の始動までの間、バッテリ211から燃料加熱部131に供給する電力を徐々に上昇させることにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている。すなわち、エンジン制御部232は、燃料加熱部131の昇温速度(抵抗値変化)を計測しながら、目標加熱温度に対して余分な電流を流さないよう、電力量を徐々に上昇させる制御を行うように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0156】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0157】
第2実施形態では、上記のように、燃料加熱装置213に、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合、エンジン6の始動までの間、バッテリ211から燃料加熱部131に供給する電力量を増加させるか、または、燃料加熱部131による燃料の加熱時間を増加させる制御を行うエンジン制御部232を設ける。これにより、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下になる場合にも、始動用モータ212によるエンジン6の始動時に、燃料加熱部131による燃料の気化を十分に行うことができる。
【0158】
第2実施形態では、上記のように、エンジン制御部232を、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1以下の場合、バッテリ残量Rが第1しきい値C1を超える場合と比較して、エンジン6の始動までの間、バッテリ211から燃料加熱部131に供給する電力を徐々に上昇させることにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成する。これにより、バッテリ211から燃料加熱部131に供給する電力を徐々に上昇させることにより、燃料加熱部131に電流を流した後に温度変化するまでの時間遅れに合わせて、燃料加熱部131の温度を徐々に上昇させることができるので、燃料加熱部131の温度を目標加熱温度により正確に合わせることができる。この結果、バッテリ211から燃料加熱部131に供給する電力の無駄を削減することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0159】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0160】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、加熱制御部133とは別個に、運転手近接判定部P1と、ヒータ制御要求判定部P2と、バッテリ残量判定部P3と、エンジン始動判定部P4と、目標温度設定部P5と、目標温度制御部P6と、始動前燃料霧化判定部P7と、燃料噴射制御部P8とを有するエンジン制御部132(232)を設けている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加熱制御部133が、エンジン制御部132(232)が有する燃料加熱部131を加熱する機能を全て有していてもよいし、エンジン制御部132(232)が、加熱制御部133の機能を有していてもよい。また、加熱制御部133には、エンジン制御部132(232)が有する機能の一部が分担されてもよい。
【0161】
また、第1および第2実施形態では、エンジン制御部132(232、制御部)は、エンジン6の始動中において、モータリング用モータ12(モータ)によるエンジン6の始動が不良になった場合、エンジン6の再始動の際、燃料の供給量を減少させるとともに、燃料の供給量を減少させた分に応じて補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力量を減少させる制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、燃料の供給量を減少させた分に応じてバッテリから燃料加熱部に供給する電力量を減少させる制御を行わなくてもよい。
【0162】
また、第2実施形態では、制御部は、エンジン6の始動時においてバッテリ残量Rが第1しきい値C1(残量しきい値)以下の場合、エンジン6の始動までの間、補助バッテリ11から燃料加熱部131に供給する電力を徐々に上昇させることにより燃料加熱部131に供給する電力量を増加させる制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。制御部は、エンジンの始動時においてバッテリ残量が残量しきい値以下の場合、エンジンの始動までの間、バッテリから燃料加熱部に最大限の電力を供給する制御を行うように構成されていてもよい。
【0163】
また、上記第1および第2実施形態では、燃料加熱部131は、インジェクタ64から噴射された燃料を加熱するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、燃料加熱部は、燃料タンクから供給される燃料が流れる燃料油路中の燃料を加熱するように構成されていてもよい。
【0164】
また、上記第1および第2実施形態では、説明の便宜上、エンジン制御部132(232)および加熱制御部133(制御部)の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0165】
5 吸気装置
6 エンジン
11 補助バッテリ(バッテリ)
12 モータリング用モータ(モータ)
13、213 燃料加熱装置
52 ポート部
53 吸気通路
62a 気筒
63e 燃焼室
64 インジェクタ
100 電動車両(車両)
131 燃料加熱部
131a ポート用ヒータ
132、232 エンジン制御部(制御部)
133 加熱制御部(制御部)
200 コンベ車(車両)
211 バッテリ
212 始動用モータ(モータ)
C1 第1しきい値(残量しきい値)
R バッテリ残量