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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030593
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】光ケーブルの固定装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20220210BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G02B6/46
G02B6/44 386
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134709
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島津 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山根 慎司
【テーマコード(参考)】
2H001
2H038
【Fターム(参考)】
2H001BB05
2H001BB08
2H001BB16
2H001DD04
2H001DD06
2H001DD10
2H001DD23
2H001FF06
2H001KK06
2H001KK08
2H038CA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数種類の光ケーブルに適用可能な光ケーブルの固定装置を提供する。
【解決手段】光ケーブルの固定装置10は、複数の光ファイバとテンションメンバと外被とを有する光ケーブルを被固定部材に固定する。固定装置は、外被把持部11と、収容部12と、テンションメンバ把持部13とを備えている。外被把持部は、光ケーブルの外被を把持する。収容部は、光ケーブルの中心軸方向に延びた筒形状を有しており、光ケーブルの外被から露出された複数の光ファイバおよびテンションメンバを収容する。テンションメンバ把持部は、収容部に取り外し可能に取り付けられており、収容部内に収容されているテンションメンバを把持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバとテンションメンバと外被とを有する光ケーブルを被固定部材に固定する固定装置であって、
前記光ケーブルの外被を把持する外被把持部と、
前記光ケーブルの中心軸方向に延びた筒形状を有しており、前記光ケーブルの外被から露出された前記複数の光ファイバおよび前記テンションメンバを収容する収容部と、
前記収容部に取り外し可能に取り付けられており、前記収容部内に収容されている前記テンションメンバを把持するテンションメンバ把持部と、
を備えている、光ケーブルの固定装置。
【請求項2】
前記光ケーブルの固定装置は、複数の前記テンションメンバ把持部を備えており、
前記複数のテンションメンバ把持部の各々は、前記光ケーブルの中心軸方向に前記テンションメンバが挿入される挿入孔を有しており、
前記挿入孔は、前記光ケーブルの中心軸方向に直交する断面において前記収容部の内周面付近に位置している、請求項1に記載の光ケーブルの固定装置。
【請求項3】
前記テンションメンバ把持部は、前記光ケーブルの中心軸方向に前記テンションメンバが挿入される挿入孔を有しており、
前記挿入孔は、前記光ケーブルの中心軸方向に直交する断面において前記収容部の中心に位置している、請求項1に記載の光ケーブルの固定装置。
【請求項4】
前記テンションメンバ把持部は、前記挿入孔の内部に突出可能に配置されるねじを有している、請求項2または請求項3に記載の光ケーブルの固定装置。
【請求項5】
前記収容部は、前記光ケーブルの中心軸方向に対して交差する方向に前記収容部の側面を貫通する貫通孔を有している、請求項4に記載の光ケーブルの固定装置。
【請求項6】
前記外被把持部と前記収容部とは別体として構成されており、
前記収容部は、外周面に形成された雄ねじを有する第一端部と、前記第一端部と反対側に位置し、内周面に形成された雌ねじを有する第二端部とを有している、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ケーブルの固定装置。
【請求項7】
前記テンションメンバ把持部は、前記外被把持部に対向する平面を有している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ケーブルの固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ケーブルの固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、スプライスボックス内においてスプライスボックス内に導入された光ファイバケーブルの光ファイバ心線とコネクタに接続された光ファイバ心線とが融着接続された情報コンセントシステムを開示している。光ファイバケーブルの端末は、ケーブルクランプによりスプライスボックスの導入口に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-149455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数種類の光ケーブルに適用可能な光ケーブルの固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の光ケーブルの固定装置は、
複数の光ファイバとテンションメンバと外被とを有する光ケーブルを被固定部材に固定する固定装置であって、
前記光ケーブルの外被を把持する外被把持部と、
前記光ケーブルの中心軸方向に延びた筒形状を有しており、前記光ケーブルの外被から露出された前記複数の光ファイバおよび前記テンションメンバを収容する収容部と、
前記収容部に取り外し可能に取り付けられており、前記収容部内に収容されている前記テンションメンバを把持するテンションメンバ把持部と、
を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、複数種類の光ケーブルに適用可能な光ケーブルの固定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る光ケーブルの固定装置の構成を示す斜視図である。
図2図2は、固定装置の分解斜視図である。
図3図3は、図2のテンションメンバ把持部が取り付けられた収容部を上方から見た図である。
図4図4は、固定装置により被固定部材に固定される光ケーブルの端部を示す斜視図である。
図5図5は、図4の光ケーブルの端部が固定装置により被固定部材に固定された状態を示す部分拡大斜視図である。
図6A図6Aは、光ケーブルの端部のファイバ露出処理工程を示す図である。
図6B図6Bは、光ケーブルの端部のファイバ露出処理工程を示す図である。
図6C図6Cは、光ケーブルの端部のファイバ露出処理工程を示す図である。
図6D図6Dは、光ケーブルの端部のファイバ露出処理工程を示す図である。
図7A図7Aは、光ケーブルの端部のファイバ保護処理工程を示す図である。
図7B図7Bは、光ケーブルの端部のファイバ保護処理工程を示す図である。
図8A図8Aは、光ケーブルの端部の被固定部材への固定処理工程を示す図である。
図8B図8Bは、光ケーブルの端部の被固定部材への固定処理工程を示す図である。
図8C図8Cは、光ケーブルの端部の被固定部材への固定処理工程を示す図である。
図8D図8Dは、光ケーブルの端部の被固定部材への固定処理工程を示す図である。
図9図9は、固定装置により被固定部材に固定される他の光ケーブルの端部を示す斜視図である。
図10図10は、図9の光ケーブルに対応するテンションメンバ把持部が取り付けられる収容部を示す分解斜視図である。
図11図11は、図10のテンションメンバ把持部が取り付けられた収容部を上方から見た図である。
図12図12は、図9の光ケーブルの端部が固定装置により被固定部材に固定された状態を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の光ケーブルの固定装置は、
(1)複数の光ファイバとテンションメンバと外被とを有する光ケーブルを被固定部材に固定する固定装置であって、
前記光ケーブルの外被を把持する外被把持部と、
前記光ケーブルの中心軸方向に延びた筒形状を有しており、前記光ケーブルの外被から露出された前記複数の光ファイバおよび前記テンションメンバを収容する収容部と、
前記収容部に取り外し可能に取り付けられており、前記収容部内に収容されている前記テンションメンバを把持するテンションメンバ把持部と、
を備えている。
【0009】
上記構成によれば、光ケーブルの外被から露出されたテンションメンバは、収容部に収容されて、テンションメンバ把持部に把持される。テンションメンバの配置は、光ケーブルの種類に応じて異なる場合がある。テンションメンバ把持部は、収容部に取り外し可能に取り付けられているので、例えば、光ケーブルの種類に応じてテンションメンバ把持部を取り替えることができる。これにより、光ケーブルの種類によらずに、テンションメンバを把持することができる。したがって、光ケーブルが固定装置から外れてしまうことを抑制しつつ光ケーブルを被固定部材に固定させることができる。すなわち、複数種類の光ケーブルに適用可能な光ケーブルの固定装置を提供することができる。
【0010】
(2)前記光ケーブルの固定装置は、複数の前記テンションメンバ把持部を備えており、
前記複数のテンションメンバ把持部の各々は、前記光ケーブルの中心軸方向に前記テンションメンバが挿入される挿入孔を有しており、
前記挿入孔は、前記光ケーブルの中心軸方向に直交する断面において前記収容部の内周面付近に位置してもよい。
【0011】
上記構成によれば、光ケーブルの固定装置は、光ファイバの周囲にテンションメンバが配置された光ケーブルに適用することができる。
【0012】
(3)前記テンションメンバ把持部は、前記光ケーブルの中心軸方向に前記テンションメンバが挿入される挿入孔を有しており、
前記挿入孔は、前記光ケーブルの中心軸方向に直交する断面において前記収容部の中心に位置してもよい。
【0013】
上記構成によれば、光ケーブルの固定装置は、テンションメンバの周囲に光ファイバが配置された光ケーブルに適用することができる。
【0014】
(4)前記テンションメンバ把持部は、前記挿入孔の内部に突出可能に配置されるねじを有してもよい。
【0015】
上記構成によれば、挿入孔に挿入されたテンションメンバにねじを当接させることにより、テンションメンバをテンションメンバ把持部に固定させることができる。
【0016】
(5)前記収容部は、前記光ケーブルの中心軸方向に対して交差する方向に前記収容部の側面を貫通する貫通孔を有してもよい。
【0017】
上記構成によれば、例えば、固定装置の外部から貫通孔を通したツールを用いてテンションメンバに近づく方向にねじを移動させることにより、ねじをテンションメンバに当接させることができる。
【0018】
(6)前記外被把持部と前記収容部とは別体として構成されており、
前記収容部は、内周面に形成された雌ねじ部を有する第一端部と、前記第一端部と反対側に位置し、外周面に形成された雄ねじ部を有する第二端部と、を有してもよい。
【0019】
上記構成によれば、収容部は、簡単な構造により、外被把持部または被固定部材に結合される。
【0020】
(7)前記テンションメンバ把持部は、前記外被把持部に対向する平面を有してもよい。
【0021】
上記構成によれば、例えば、光ケーブルが光ファイバを収容するチューブやスロットを有している場合、光ケーブルの外被から露出されたチューブやスロットをテンションメンバ把持部に当接させることができる。これにより、光ケーブルのチューブやスロットが収容部から延出して被固定部材の内部に突出することを抑制することができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光ケーブルの固定装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
以降の説明および図面における「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」という表現は、例示された構成の理解を促すために便宜上用いられるものであり、当該構成の実使用時における方向や姿勢を限定する意図はない。
【0024】
(光ケーブルの固定装置10)
図1から図5を参照して、一実施形態に係る光ケーブルの固定装置10の構成について説明する。なお、図4では、各光ファイバユニット303の先端部が破線で示されている。図5では、スロットロッド301の前側のスロット溝301Aに収容されている光ファイバユニット303の図示が省略されている。
【0025】
図1に示す固定装置10は、例えば、光ケーブル300を被固定部材500に固定するために使用される(図5参照)。光ケーブル300は、図4に例示されるように、スロットロッド301と、複数のテンションメンバ302と、複数の光ファイバユニット303と、押え巻き材304と、外被305とを有している。スロットロッド301は、例えばプラスチックなどの樹脂材料により形成されている。スロットロッド301の外周面には、光ファイバユニット303を収容するための複数のスロット溝301Aが光ケーブル300の中心軸CL1方向に沿って形成されている。スロットロッド301の中央部には、複数のテンションメンバ302が中心軸CL1方向に沿って埋設されている。テンションメンバ302は、例えば金属線や繊維強化プラスチック線等により形成されている。
【0026】
光ファイバユニット303は、複数の光ファイバ303Aの集合体から構成されている。複数の光ファイバ303Aは、単心の光ファイバの集合体でもよく、複数の光ファイバをテープ状に結合したリボンファイバでもよい。押え巻き材304は、スロットロッド301の周囲に巻かれている。外被305は、押え巻き材304の外周を覆うように形成されている。
【0027】
図5に示す被固定部材500は、例えば、電話局やデータセンタなどに設置されている光接続箱である。光ケーブル300は被固定部材500に固定される場合、図4に例示されるように、外被305および押え巻き材304の一部が除去される。外被305から露出されたスロットロッド301およびテンションメンバ302は、一部を残して切断される。光ケーブル300は、外被305から露出された光ファイバユニット303が光接続箱内に導入された状態で、光接続箱に固定される。光ファイバユニット303を構成する光ファイバ303Aは、光接続箱内で他の光ファイバと融着接続される。
【0028】
光ケーブルの固定装置10は、図1に例示されるように、外被把持部11と、収容部12と、テンションメンバ把持部13と、ナット部14とを備えている。本例においては、外被把持部11と収容部12は、別体として構成されている。
【0029】
外被把持部11は、内部に挿入された光ケーブル300の外被305を把持するように構成されている(図5参照)。外被把持部11は、例えば、図2に例示されるように、本体部111とキャップ部112を有している。本体部111は、外周面に形成された雄ねじ部111Aと、押さえ部111Bとを有している。押さえ部111Bは、円筒状の緩衝材と、緩衝材の周りに配置された複数の短冊部とを有している。キャップ部112は、内周面に形成された雌ねじ部112Aと、内周面に形成されたテーパ部112Bとを有している。テーパ部112Bは、上方に向かって径が小さくなるように形成されている。キャップ部112の雌ねじ部112Aを本体部111の雄ねじ部111Aに対して螺合させることにより、キャップ部112は本体部111に結合される。また、本体部111の押さえ部111Bの短冊部がキャップ部112のテーパ部112Bに当接して径方向内側に倒れることにより、光ケーブル300の外被305が把持される。
【0030】
本例においては、本体部111は、下端部において外周面に形成された雄ねじ部111Cを有している。外被把持部11はさらに、本体部111に内挿されて、外被把持部11と光ケーブル300の外被305との間をシールするシール部材113(図8A参照)を有してもよい。
【0031】
収容部12は、上下方向に延びた円筒形状を有している。収容部12内には、図5に例示されるように、光ケーブル300の中心軸CL1方向が収容部12の長手方向に沿うように、外被305から露出されたテンションメンバ302および光ファイバユニット303が収容される。収容部12は、円筒形状に限らず、断面が多角形などの他の筒形状であってもよい。
【0032】
収容部12は、図2に例示されるように、上端部121において、内周面に形成された雌ねじ部121Aを有している。外被把持部11の雄ねじ部111Cを収容部12の雌ねじ部121Aに対して螺合させることにより、外被把持部11が収容部12に結合される。収容部12は、下端部122において、外周面に形成された雄ねじ部122Aを有している。収容部12とナット部14の間に被固定部材500が配置された状態で、ナット部14を雄ねじ部122Aに螺合させることにより、収容部12は被固定部材500に固定される(図8A図8B参照)。上端部121は、第二端部の一例である。下端部122は、第一端部の一例である。
【0033】
収容部12は、テンションメンバ把持部13が挿入される開口部123を有している。本例においては、収容部12の側面において、二つの開口部123が、収容部12の中心Cを介して互いに対向する位置に設けられている(図3参照)。開口部123は、収容部12の長手方向に直交する断面形状がT字状に形成されており、開口部123の両側には被取付部124が形成されている。
【0034】
収容部12はさらに、収容部12の長手方向すなわち光ケーブルの中心軸CL1(図5参照)方向に対して交差する方向に収容部12の側面を貫通する貫通孔125を有してもよい。この貫通孔125には、テンションメンバ302をテンションメンバ把持部13に固定するためのツールを挿入することができる。本例においては、収容部12の側面において、三つの貫通孔125が、テンションメンバ把持部13に対向する位置に設けられている。ここで「光ケーブルの中心軸方向に対して交差する方向」とは、「光ケーブルの中心軸と交差する方向」に限られるものではなく、「光ケーブルの中心軸と交差する平面と平行な方向」全てを含む。
【0035】
テンションメンバ把持部13は、図4に例示される光ケーブル300のテンションメンバ302を把持するように構成されている。具体的には、テンションメンバ把持部13は、図2に例示されるように、挿入部131と、支持部132と、取付部133とを有している。挿入部131は、テンションメンバ302が挿入される挿入孔131Aを有している。支持部132は、挿入部131の両側から延びており、挿入部131を支持する。取付部133は、支持部132の一端部に設けられている。
【0036】
テンションメンバ把持部13は、図2の矢印の方向に、収容部12の開口部123から挿入されて、挿入孔131Aが収容部12の長手方向に直交する断面において収容部12の中心Cに位置するように、収容部12内に配置される(図3参照)。そして、テンションメンバ把持部13の取付部133が、ビスにより収容部12の被取付部124に固定される。テンションメンバ把持部13を収容部12から取り外す場合は、取付部133からビスを外して、テンションメンバ把持部13を、図2の矢印と反対方向に移動させる。このように、テンションメンバ把持部13は、収容部12に取り外し可能に取り付けられる。なお、本明細書においては、「挿入孔131Aが収容部12の中心に位置する」とは、収容部12の内径(内面12Aの半径)をrとする場合(図3参照)、挿入孔131Aが収容部12の中心Cから径方向にr/2までの領域に位置することを含みうる。
【0037】
テンションメンバ把持部13はさらに、挿入孔131Aの内部に突出可能に配置されたビス134を有してもよい。例えば、挿入部131には、挿入孔131Aに交差する方向に固定孔131Bが形成される。ビス134は、固定孔131Bに挿入されて、収容部12の長手方向に交差する方向に移動可能に配置される。挿入孔131Aに挿入されたテンションメンバ302の側面にビス134を当接させることにより、テンションメンバ302が挿入部131に固定される。例えば、収容部12の貫通孔125Aは、図3および図5に例示されるように、固定孔131Bに対応する位置に設けられており、貫通孔125Aから挿入されたツールによりビス134をテンションメンバ302に近づく方向に移動させる。ビスは、ねじの一例である。
【0038】
テンションメンバ把持部13の挿入部131は、平面状に形成された上面135を有してもよい。挿入部131の上面135には、スロットロッド301が当接される(図5参照)。上面135は、外被把持部11に対向する平面の一例である。
【0039】
(固定方法)
次に、図6Aから図8Dを用いて、固定装置10により光ケーブル300を被固定部材500に固定する手順について説明する。図6Aから図6Dは、光ケーブル300の端部のファイバ露出処理工程を示している。図7Aおよび図7Bは、光ケーブル300の端部のファイバ保護処理工程を示している。図8Aから図8Dは、光ケーブル300の端部の被固定部材500への固定処理工程を示している。
【0040】
まず、図6Aから図6Dに例示されるように、被固定部材500に固定される光ケーブル300の端部のファイバ露出処理が行われる。具体的には、図6Aに例示される光ケーブル300の外被305が除去されて、図6Bに例示されるように、押え巻き材304が露出される。
【0041】
続いて、外被305から露出された押え巻き材304が除去されて、図6Cに例示されるように、スロットロッド301から取り出された光ファイバユニット303が折り返されて、外被305の外周面にテープTにより仮止めされる。
【0042】
続いて、図6Dに例示されるように、外被305から露出されたスロットロッド301が切断される。先端が切断されたスロットロッド301は、外被305から長さLだけ突出した状態となる。さらに、スロットロッド301の先端が除去されて、スロットロッド301からテンションメンバ302が露出される。
【0043】
続いて、テープTが外されて、光ファイバユニット303は、元の位置に戻される。なお、各光ファイバユニット303を構成する複数の光ファイバ303Aの集合体がバンドル材やチューブにより束ねられていない場合は、図7Aに例示されるように、各光ファイバユニット303に保護チューブ308が被せられてもよい。保護チューブ308は、光ファイバユニット303を保護しつつ、光ファイバユニット303の取り扱いを容易にする。そして、図7Bに例示されるように、保護チューブ308の根元にテープ309が巻かれることにより、保護チューブ308が外被305に固定される。これにより、被固定部材500に挿入される前の光ケーブル300の端部のファイバ露出処理が完了する。
【0044】
次に、図8Aから図8Dに例示されるように、上記のように処理された光ケーブル300の端部が固定装置10により被固定部材500に固定される。なお、図8Aから図8Dにおいて、チューブ308から露出された光ファイバユニット303の図示は省略されている。
【0045】
まず、光ケーブル300の端部を外被把持部11および収容部12の順に挿通させる。テンションメンバ把持部13は収容部12に取り付けられており、光ケーブル300のテンションメンバ302は、テンションメンバ把持部13の挿入孔131Aに挿通される。
【0046】
続いて、テンションメンバ302をテンションメンバ把持部13に固定させる。具体的には、貫通孔125Aから挿入されたツールにより、固定孔131Bに予め挿入されたビス134をテンションメンバ302に向けて移動させて、ビス134をテンションメンバ302の側面に当接させる。
【0047】
続いて、収容部12を被固定部材500に固定させる。具体的には、図8Aに例示されるように、収容部12の下端部122を被固定部材500の開口に挿入させる。そして、収容部12とナット部14との間で被固定部材500を挟んだ状態でナット部14を収容部12の下端部122に螺合させる。
【0048】
続いて、外被把持部11の本体部111を収容部12に結合させる。具体的には、図8Bに例示されるように、光ケーブル300に挿通させておいた本体部111を収容部12の方に移動させて、本体部111を収容部12に螺合させる。
【0049】
続いて、外被把持部11のキャップ部112を本体部111に結合させる。具体的には、図8Cに例示されるように、光ケーブル300に挿通させておいたキャップ部112を本体部111の方に移動させて、本体部111にシール部材113が内挿された状態で、キャップ部112を本体部111に螺合させる。光ケーブル300の外被305は、押さえ部111Bにより把持される。これにより、図8Dに例示されるように、光ケーブル300が被固定部材500に固定される。
【0050】
このように、本実施形態の光ケーブルの固定装置10によれば、テンションメンバ把持部13によりテンションメンバ302を把持することにより、光ケーブル300が固定装置10から外れてしまうことを抑制しつつ、光ケーブル300を被固定部材500に固定させることができる。
【0051】
(テンションメンバ把持部の変形例)
なお、光ケーブルの固定装置10は、テンションメンバ把持部13を取り替えることにより、例えば、図9に例示される光ケーブル400を被固定部材500に固定するために使用されうる。
【0052】
光ケーブル400は、図9に例示されるように、円筒型のチューブ401と、複数の光ファイバ402と、二つのテンションメンバ403と、外被404とを有している。チューブ401は、例えば、熱可塑性樹脂などの樹脂材料により形成される。複数の光ファイバ402は、チューブ401内に収容されている。複数の光ファイバ402は、例えば光ケーブル400の中心軸CL2方向に沿って、樹脂テープなどのバンドル材により束ねられてもよい。外被404は、チューブ401の外側を覆うように形成されている。外被404には、二つのテンションメンバ403がチューブ401を挟んで対向する位置において中心軸CL2方向に沿って埋設されている。テンションメンバ403は、例えば金属線や繊維強化プラスチック線等により形成されている。
【0053】
光ケーブル400は被固定部材500に固定される場合、図9に例示されるように、外被404の一部が除去される。外被404から露出されたチューブ401およびテンションメンバ403は、一部を残して切断される。光ケーブル400は、外被404から露出された光ファイバ402が被固定部材500内に導入された状態で、被固定部材500に固定される。光ファイバ402は、被固定部材500内で他の光ファイバと融着接続される。
【0054】
収容部12内には、図12に例示されるように、光ケーブル400の中心軸CL2方向が収容部12の長手方向に沿うように、外被404から露出された光ファイバ402およびテンションメンバ403が収容される。
【0055】
光ケーブルの固定装置10は、図10に例示されるように、テンションメンバ把持部13の代わりに、二つのテンションメンバ把持部23を有している。テンションメンバ把持部23の各々は、対応するテンションメンバ403を把持するように構成されている。
【0056】
具体的には、テンションメンバ把持部23は、挿入部231と、支持部232と、取付部233とを有している。挿入部231は、テンションメンバ403が挿入される挿入孔231Aを有している。支持部232は、挿入部231の片側から延びており、挿入部231を支持する。取付部233は、支持部232の一端部に設けられている。
【0057】
テンションメンバ把持部23は、図10の矢印の方向に、収容部12の開口部123から挿入されて、挿入孔231Aが収容部12の長手方向に直交する断面において収容部12の内周面12A付近に位置するように、収容部12内に配置される(図11参照)。そして、テンションメンバ把持部23の取付部233が、ビスにより収容部12の被取付部124に固定される。テンションメンバ把持部23を収容部12から取り外す場合は、取付部233からビスを外して、テンションメンバ把持部23を、図10の矢印と反対方向に移動させる。このように、テンションメンバ把持部23は、収容部12に取り外し可能に取り付けられる。なお、本明細書においては、「挿入孔231Aが収容部12の内周面12A付近に位置する」とは、挿入孔231Aが収容部12の内周面12Aから径方向にr/2までの環状領域に位置することを含みうる。
【0058】
テンションメンバ把持部23はさらに、挿入孔231Aの内部に突出可能に配置されたビス234を有してもよい。例えば、挿入部231には、挿入孔231Aの交差する方向に固定孔231Bが形成される。ビス234は、固定孔231Bに挿入されて、収容部12の長手方向に交差する方向に移動可能に配置される。挿入孔231Aに挿入されたテンションメンバ403の側面にビス234を当接させることにより、テンションメンバ403が挿入部231に固定される。例えば、収容部12の貫通孔125Bは、図11および図12に例示されるように、固定孔231Bに対応する位置に設けられており、貫通孔125Bから挿入されたツールによりビス234をテンションメンバ403に近づく方向に移動させる。ビスは、ねじの一例である。
【0059】
テンションメンバ把持部23の挿入部231は、平面状に形成された上面235を有してもよい。挿入部231の上面235には、チューブ401が当接される(図12参照)。上面235は、外被把持部11に対向する平面の一例である。
【0060】
上述のように、本実施形態の光ケーブルの固定装置10によれば、テンションメンバ把持部13およびテンションメンバ把持部23は、収容部12に取り外し可能に取り付けられている。したがって、光ケーブルの種類に対応するテンションメンバ把持部13またはテンションメンバ把持部23を収容部12に取り付けることにより、光ケーブルの種類によらずに、テンションメンバ302およびテンションメンバ403を把持することができる。これにより、光ケーブル300または光ケーブル400が固定装置10から外れてしまうことを抑制しつつ、光ケーブル300または光ケーブル400を被固定部材500に固定させることができる。すなわち、光ケーブルの固定装置10は、複数種類の光ケーブルに適用させることができる。
【0061】
特に、本実施形態において、テンションメンバ把持部13の挿入孔131Aは、光ケーブル300の中心軸CL1方向に直交する断面において収容部12の中心に位置している。これにより、光ケーブルの固定装置10は、テンションメンバ302の周囲に光ファイバ303Aが配置された光ケーブル300に適用することができる。
【0062】
一方、テンションメンバ把持部23の挿入孔231Aは、光ケーブル400の中心軸CL2方向に直交する断面において収容部12の内周面12A付近に位置している。これにより、光ケーブルの固定装置10は、光ファイバ402の周囲にテンションメンバ403が配置された光ケーブル400に適用することができる。
【0063】
また、本実施形態において、テンションメンバ把持部13は、挿入孔131Aの内部に突出可能に配置されたビス134を有している。これにより、ビス134を挿入孔131Aに挿通されたテンションメンバ302に当接させることにより、テンションメンバ302をテンションメンバ把持部13に固定させることができる。同様に、テンションメンバ把持部23は、挿入孔231Aの内部に突出可能に配置されたビス234を有している。これにより、ビス234を挿入孔231Aに挿通されたテンションメンバ403に当接させることにより、テンションメンバ403をテンションメンバ把持部23に固定させることができる。
【0064】
また、本実施形態において、収容部12は、側面を貫通する貫通孔125を有している。貫通孔125は、収容部12の長手方向に対して交差する方向に延びている。これにより、固定装置10の外部から貫通孔125を通して挿入したツールを用いてテンションメンバ302に近づく方向にビス134を移動させることにより、ビス134をテンションメンバ302に当接させることができる。同様に、固定装置10の外部からツールを用いてテンションメンバ403に近づく方向にビス234を移動させることにより、ビス234をテンションメンバ403に当接させることができる。
【0065】
また、本実施形態において、外被把持部11と収容部12とは別体として構成されており、収容部12は、内周面に形成された雌ねじ部121Aを有する上端部121と、上端部121と反対側に位置し、外周面に形成された雄ねじ部122Aを有する下端部122と、を有している。これにより、収容部12は、簡単な構造により、外被把持部11または被固定部材500に結合されうる。
【0066】
また、本実施形態において、テンションメンバ把持部13の挿入部131は、平面状に形成された上面135を有している。例えば、外部からの衝撃などを受けたことによりスロットロッド301が外被404からさらに延出したとしても、スロットロッド301は挿入部131の上面135に当接するので、スロットロッド301が被固定部材500の内部に突出することを抑制することができる。
【0067】
同様に、テンションメンバ把持部23の挿入部231は、平面状に形成された上面235を有している。例えば、周囲の温度変化等によりチューブ401が外被404からさらに延出したとしても、チューブ401は挿入部231の上面235に当接するので、チューブ401が被固定部材500の内部に突出することを抑制することができる。
【0068】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0069】
上記の実施形態においては、外被把持部11と収容部12とは別体として構成されている。しかしながら、例えば、外被把持部11の本体部111と収容部12は、単一部材により構成されてもよい。
【0070】
上記の実施形態においては、光ケーブル300および光ケーブル400が光ケーブルの一例として挙げられている。しかしながら、光ケーブルは、他の種類の光ケーブルでもよい。この場合、光ケーブルの種類に応じて、収容部12に取り付けられるテンションメンバ把持部の形状や数が変更される。
【0071】
上記の実施形態においては、光接続箱が被固定部材500の一例として挙げられている。しかしながら、被固定部材500は、光接続箱以外のモジュールでもよい。また、被固定部材500は、モジュール以外の部材もありうる。
【0072】
上記の実施形態においては、光ケーブルの固定装置10は、ナット部14を有している。しかしながら、収容部12の下端部122が被固定部材500に螺合可能な場合には、光ケーブルの固定装置10は、ナット部14を含まない構成とされうる。
【符号の説明】
【0073】
10:固定装置
11:外被把持部
12:収容部
12A:内周面
13、23:テンションメンバ把持部
14:ナット部
111:本体部
111A:雄ねじ部
111B:押さえ部
111C:雄ねじ部
112:キャップ部
112A:雌ねじ部
112B:テーパ部
113:シール部材
121:上端部
121A:雌ねじ部
122:下端部
122A:雄ねじ部
123:開口部
124:被取付部
125、125A、125B:貫通孔
131、125B:挿入部
131A、231A:挿入孔
131B、231B:固定孔
132、232:支持部
133、233:取付部
134、234:ビス
135、235:上面
300:光ケーブル
301:スロットロッド
301A:スロット溝
302:テンションメンバ
303:光ファイバユニット
303A:光ファイバ
304:押え巻き材
305:外被
306:外被引裂紐
308:保護チューブ
309:テープ
400:光ケーブル
401:チューブ
402:光ファイバ
403:テンションメンバ
404:外被
500:被固定部材
C:中心
CL1:中心軸
CL2:中心軸
r:内径
T:テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12