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特開2022-30608樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030608
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20220210BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20220210BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G06F17/50 680C
G06F17/50 612H
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134728
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520167645
【氏名又は名称】東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山田 高光
【テーマコード(参考)】
4F206
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206AM32
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JQ81
5B046FA06
5B046FA18
5B046GA01
5B046HA05
5B046JA01
5B046JA04
5B046JA07
5B046JA09
5B046KA05
5B146AA06
5B146DG02
5B146DJ03
5B146DJ07
5B146DL08
5B146EA08
5B146EA17
(57)【要約】
【課題】成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することが可能な樹脂成形解析方法を提供する。
【解決手段】この樹脂成形解析方法は、樹脂成形時の樹脂の流動解析を行う工程と、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する工程と、を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形時の樹脂の流動解析を行う工程と、
流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する工程と、を備える、樹脂成形解析方法。
【請求項2】
流動解析の解析結果に基づいて、成形品の成形状態を取得する工程と、
前記成形品の形状的特徴部と、前記成形品の成形状態とに基づいて、成形品の成形不良を予測する工程と、をさらに備える、樹脂成形解析方法。
【請求項3】
前記成形品の成形不良を予測する工程において、前記成形品の形状的特徴部の位置に、前記成形品の成形状態としてのウェルドおよびヒケのうち少なくも1つが配置されているか否かに基づいて、成形品の成形不良を予測する、請求項2に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項4】
前記成形品の形状的特徴部は、厚肉部、薄肉部、穴部、ボス部、網状部、拡大部、縮小部、成形品の表層部、成形品の中央部、エッジ部、リブ部、丸型角部、テーパ部、平面部、曲面部のうち少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項5】
前記成形品の形状的特徴部を抽出する工程において、流動解析の解析結果としての、成形品の肉厚、成形品の外向き法線ベクトル、成形時の樹脂の流速ベクトル、成形時の樹脂のフローフロント情報のうち少なくとも1つに基づいて、前記成形品の形状的特徴部を抽出する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載された樹脂成形解析方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムが記録され、コンピュータにより読み取り可能な、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形解析方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、樹脂成形時の樹脂の流動解析を行って樹脂の流動比分布を算出し、算出した流動比分布と予め定められたしきい値とに基づいて、成形品の充填不足による成形不良を予測する成形品の設計支援方法(樹脂成形解析方法)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-318863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の設計支援方法(樹脂成形解析方法)では、算出した流動比分布と予め定められたしきい値とに基づいて、成形品の充填不足による成形不良を予測している。したがって、この特許文献1の設計支援方法では、成形品の充填不足による成形不良をしきい値を用いて予測することが可能である。しかしながら、成形品の穴部や薄肉部などの形状的な特徴を取得することができないため、成形品の形状を考慮して成形品の不良を予測することが困難である。このため、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することが可能な樹脂成形解析方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することが可能な樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による樹脂成形解析方法は、樹脂成形時の樹脂の流動解析を行う工程と、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する工程と、を備える。
【0008】
この発明の第1の局面による樹脂成形解析方法では、上記のように、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出することにより、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することができる。
【0009】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の成形状態を取得する工程と、成形品の形状的特徴部と、成形品の成形状態とに基づいて、成形品の成形不良を予測する工程と、をさらに備える。このように構成すれば、成形品の特定の形状において発生が好ましくない成形状態が発生するか否かを容易に判断することができるので、成形品の形状を考慮した成形品の不良をより容易に予測することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、成形品の成形不良を予測する工程において、成形品の形状的特徴部の位置に、成形品の成形状態としてのウェルドおよびヒケのうち少なくも1つが配置されているか否かに基づいて、成形品の成形不良を予測する。このように構成すれば、成形品の特定の形状においてウェルドまたはヒケが発生するか否かを容易に判断することができる。
【0011】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、成形品の形状的特徴部は、厚肉部、薄肉部、穴部、ボス部、網状部、拡大部、縮小部、成形品の表層部、成形品の中央部、エッジ部、リブ部、丸型角部、テーパ部、平面部、曲面部のうち少なくとも1つを含む。このように構成すれば、厚肉部、薄肉部、穴部、ボス部、網状部、拡大部、縮小部、成形品の表層部、成形品の中央部、エッジ部、リブ部、丸型角部、テーパ部、平面部、曲面部の形状を、流動解析の解析結果に基づいて取得することができる。
【0012】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、成形品の形状的特徴部を抽出する工程において、流動解析の解析結果としての、成形品の肉厚、成形品の外向き法線ベクトル、成形時の樹脂の流速ベクトル、成形時の樹脂のフローフロント情報のうち少なくとも1つに基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する。このように構成すれば、成形品の肉厚、成形品の外向き法線ベクトル、成形時の樹脂の流速ベクトル、成形時の樹脂のフローフロント情報に基づいて、成形品の形状的特徴部を容易に抽出することができる。
【0013】
この発明の第2の局面によるプログラムは、第1の局面による樹脂成形解析方法をコンピュータに実行させる。
【0014】
この発明の第2の局面によるプログラムでは、上記第1の局面による樹脂成形解析方法をコンピュータに実行させることにより、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することができる。
【0015】
この発明の第3の局面による記憶媒体は、第2の局面によるプログラムが記録され、コンピュータにより読み取り可能である。
【0016】
この発明の第3の局面による記憶媒体では、上記第2の局面によるプログラムを記録させることにより、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することが可能なコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態による樹脂成形解析方法を実施するための構成例を示したブロック図である。
図2】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第1例を示した図である。
図3】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第2例を示した図である。
図4】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第3例を示した図である。
図5】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第4例を示した図である。
図6】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第5例を示した図である。
図7】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第6例を示した図である。
図8】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第7例を示した図である。
図9】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第8例を示した図である。
図10】一実施形態による成形モデルの形状的特徴部を説明するための第9例を示した図である。
図11】一実施形態による形状的特徴部を判断する場合に使用する情報の種類を示した図である。
図12】一実施形態による成形不良予測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図11を参照して、一実施形態による樹脂成形解析方法について説明する。
【0021】
本実施形態による樹脂成形解析方法は、成形品の形状的特徴部を抽出する方法である。また、この樹脂成形方法は、成形品の形状を考慮した成形品の成形不良を予測する方法である。
【0022】
(装置構成例)
本実施形態による樹脂成形解析方法は、コンピュータ1にプログラム3aを実行させることにより実施することができる。樹脂成形解析方法は、たとえば、図1に示すような装置構成によって実施可能である。コンピュータ1は、プログラム3aを実行可能に構成されている。コンピュータ1にプログラム3aを実行させることにより、樹脂成形解析装置100が構成されている。コンピュータ1にプログラム3aを実行させることにより行われる処理の一部または全部が、専用の演算回路等のハードウェアによって行われてもよい。
【0023】
図1の構成例では、コンピュータ1は、CPU(Central Processing Unit)などからなる1または複数のプロセッサ2と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および記憶装置などを含んだ記憶部3とを備える。記憶装置は、たとえば、ハードディスクドライブや半導体記憶装置などである。
【0024】
コンピュータ1は、記憶部3に記憶されたプログラム3aをプロセッサ2に実行させることにより、樹脂成形解析を行うことが可能である。プログラム3aは、記録媒体7から読み出される他、インターネットなどのネットワークやLAN(Local Area Network)などの伝送経路8を介して外部サーバなどから提供されてもよい。記録媒体7は、光学ディスク、磁気ディスク、不揮発性半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、プログラム3aが記録されている。
【0025】
記憶部3には、プログラム3aの他、樹脂成形解析を行うために利用される各種の解析用データ3bが記憶されている。解析用データ3bは、樹脂成形条件情報および樹脂成形品の特性を含む樹脂成形情報、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータ、製品カテゴリ情報、形状特徴量、最適なパラメータの群、誤差率、解析に用いる数値データ、解析条件のデータなどが記憶されている。
【0026】
また、コンピュータ1は、液晶表示装置などの表示部4、キーボードおよびマウスなどの入力装置からなる入力部5、記録媒体7からプログラム3aや各種データを読み取るための読取部6を備えている。読取部6は、記録媒体7の種類に応じたリーダ装置などである。解析条件のデータは、入力部5を用いてユーザが入力することができる。解析用データ3bは、ユーザが作成した記録媒体から読み出したり、ユーザが外部サーバなどに作成しておいて、伝送経路8を介して外部サーバから取得したりしてもよい。
【0027】
(樹脂成形解析方法)
次に、樹脂成形解析方法について説明する。本実施形態では、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する。
【0028】
樹脂成形解析方法は、3次元CAD情報などから、成形品の形状を取得し、取得した成形品の形状を、複数の解析メッシュ(小さな要素)に分割する。この場合、3次元CAD情報から出力された3次元空間内部を複数の解析メッシュ(有限要素メッシュ)で埋めるようにメッシュ生成される。そして、複数の解析メッシュにおいて、樹脂成型時の樹脂の流動解析を行う。なお、3次元CAD情報では、穴部やフィレットなどの形状的特徴部の位置を、フィーチャの履歴により把握することが可能である。しかし、流動解析において利用する複数の解析メッシュでは、フィーチャの履歴がなくなるため、形状的特徴部の位置を把握することができなくなる。つまり、流動解析において利用する複数の解析メッシュは、3次元空間の情報を含むものであり、形状的特徴部の情報を含んでいない。
【0029】
ここで、本実施形態では、樹脂成形解析方法は、樹脂成形時の樹脂の流動解析を行う工程と、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する工程と、を備える。
【0030】
具体的には、成形品の形状的特徴部を抽出する工程において、流動解析の解析結果としての、成形品の肉厚、成形品の外向き法線ベクトル、成形時の樹脂の流速ベクトル、成形時の樹脂のフローフロント情報のうち少なくとも1つに基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する。
【0031】
成形品の肉厚は、解析メッシュの所定方向(樹脂の流れる方向と交差する方向)に対するメッシュの厚みおよび積層数に基づいて取得される。
【0032】
成形品の外向き法線ベクトルは、最も外側の解析メッシュの外側の面に対する法線ベクトルに基づいて取得される。
【0033】
成形時の樹脂の流速ベクトルは、各解析メッシュの流動解析に基づいて取得される。
【0034】
成形時の樹脂のフローフロント情報は、流動解析において、流れる樹脂の先端位置に基づいて取得される。フローフロントは、1つの流れが2つに分かれる場合には、1つから2つに分かれる。また、フローフロントは、2つの流れが1つに合流する場合には、2つから1つになる。
【0035】
また、本実施形態では、成形品の形状的特徴部は、厚肉部11a、薄肉部11b、穴部11f、ボス部11g、網状部11h、拡大部11d、縮小部11c、成形品の表層部11i、成形品の中央部11j、エッジ部11e、リブ部11k、丸型角部11l、テーパ部11m、平面部11n、曲面部11oのうち少なくとも1つを含む。
【0036】
厚肉部11aは、図2に示すように、成形モデル10において、他より肉厚が大きい部分である。たとえば、厚肉部11aは、厚さT1(>厚さT2)を有する。また、薄肉部11bは、他より肉厚が小さい部分である。たとえば、薄肉部11bは、厚さT2(<厚さT1)を有する。厚肉部11aおよび薄肉部11bは、図11に示すように、成形品の肉厚の情報に基づいて取得される。
【0037】
穴部11fは、図3に示すように、穴が開いている部分である。また、ボス部11gは、突出部に穴が開いている部分である。穴部11fおよびボス部11gは、図11に示すように、肉厚の情報およびフローフロント情報に基づいて取得される。つまり、フローフロントが1つから2つに分かれ、再び1つに戻った場合に、その間に穴が開いていると判断される。これにより、穴部11fおよびボス部11gの穴の位置が取得される。
【0038】
網状部11h(グリル部)は、図4に示すように、細かい網形状を有している。網状部11h(グリル部)は、図11に示すように、肉厚の情報に基づいて取得される。つまり、肉厚が小さい部分が規則的に配置されていることに基づいて、網状部11hの位置が取得される。
【0039】
拡大部11dは、図2に示すように、樹脂の流れが拡大する部分である。縮小部11cは、樹脂の流れが縮小する部分である。なお、図2に示す例では、左側から右側に向かって樹脂が流れる。拡大部11dおよび縮小部11cは、図11に示すように、肉厚の情報および流速ベクトルの情報に基づいて取得される。つまり、流速ベクトルが肉厚方向に放射状に広がる部分は、拡大部11dであると判断される。一方、流速ベクトルが肉厚方向に収束する部分は、縮小部11cであると判断される。
【0040】
成形品の表層部11iは、図5に示すように、成形品の外表面部分である。成形品の中央部11jは、成形品の表層部11iの内側の部分である。成形品の表層部11iおよび成形品の中央部11jは、図11に示すように、肉厚の情報に基づいて取得される。
【0041】
エッジ部11eは、図3に示すように、成形品の外周部分である。エッジ部11eは、成形時に金型が2方向以上から接する部分である。たとえば、エッジ部11eは、成形時に上方、下方および側方の3方向から金型が接する。エッジ部11eは、図11に示すように、肉厚の情報および外向き法線ベクトルの情報に基づいて取得される。つまり、外向き法線ベクトルが複数の方向(上方、下方、側方)に向いている部分は、エッジ部11eであると判断される。
【0042】
リブ部11kは、図6に示すように、主面に対して交差する方向に突出する部分である。リブ部11kは、図11に示すように、肉厚の情報、流速ベクトルの情報およびフローフロント情報に基づいて取得される。つまり、フローフロントが2つに分かれ、流速ベクトルが肉厚方向に向くことに基づいて、リブ部11kの位置が取得される。
【0043】
丸型角部11lは、図7に示すように、角が丸型(R形状)に面取りされている部分である。テーパ部11mは、図8に示すように、傾斜している部分である。丸型角部11lおよびテーパ部11mは、図11に示すように、肉厚の情報および外向き法線ベクトルの情報に基づいて取得される。つまり、外向き法線ベクトルが肉厚方向と交差する方向においてR形状に変化している部分であれば、丸型角部11lであると判断される。また、外向き法線ベクトルが肉厚方向に対して傾斜している部分であれば、テーパ部11mであると判断される。
【0044】
平面部11nは、図9に示すように、平面部分である。曲面部11oは、図10に示すように、曲面部分である。平面部11nおよび曲面部11oは、図11に示すように、外向き法線ベクトルの情報に基づいて取得される。つまり、外向き法線ベクトルが一定の方向であれば、平面部11nであると判断される。また、外向き法線ベクトルが変化していれば、曲面部11oであると判断される。
【0045】
また、本実施形態では、樹脂成形解析方法は、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の成形状態を取得する工程と、成形品の形状的特徴部と、成形品の成形状態とに基づいて、成形品の成形不良を予測する工程と、を備える。具体的には、成形品の成形不良を予測する工程において、成形品の形状的特徴部の位置に、成形品の成形状態としてのウェルドおよびヒケのうち少なくも1つが配置されているか否かに基づいて、成形品の成形不良を予測する。
【0046】
たとえば、薄肉部11b、穴部11f、ボス部11gなどにウェルドラインやヒケが発生する場合に成形不良が発生していると予測する。また、エッジ部11eおよび成形品の表層部11iのうち外観部、位置決めを行うための位置決部(穴部11f、ボス部11gなど)にガス抜き不良のエアポケットが発生する場合に成形不良が発生していると予測する。
【0047】
(成形不良予測処理)
図12を参照して、成形不良予測処理について説明する。なお、成形不良予測処理は、コンピュータ1(プロセッサ2)により実行される。
【0048】
図12のステップS1において、3次元の形状データ(3次元CADデータ)が読み込まれる。ステップS2において、計算用のモデルが作成される。つまり、3次元の形状データに基づいて、流動解析のための複数の解析メッシュが作成される。
【0049】
ステップS3において、樹脂の射出成形条件の入力を受け付ける。射出成形条件は、たとえば、製品カテゴリ情報(用途、分野)、解析(計算)メッシュ情報(要素タイプ、要素数、節点数、分割条件、要素品質)、樹脂データ(樹脂メーカ、グレード名、ベースレジン、潜熱、固化温度、密度、比熱、熱伝導率、溶融粘度、PVTデータ、弾性率、ポアソン比、線膨張係数、成形収縮率、機械的強度、強化材物性、強化材含有率、粘弾性特性(プロニー級数、シフトファクター)、光学特性(応力光学係数、光弾性係数、屈折率、分子構造、ゲル化反応率、硬化反応熱))、成形条件(時間、充填率、圧力上限、スクリュー位置、スクリュー速度、流量、計量位置、樹脂温度、金型温度、VP切替タイミング、保圧力、保圧時間、型内冷却条件、サイクルタイム)、金型条件(ゲート位置、ゲート点数、ランナーレイアウト、冷却回路、突き出しピン配置)、境界条件(ノズル部の流量・圧力、熱伝達率、雰囲気温度、雰囲気湿度)、成形機情報(成形機メーカ名、成形機型番、最大射出速度、最大射出圧力、最大保持圧力、スクリュー径、最大型締力、最大射出容量)、成形品の剛性情報などである。
【0050】
ステップS4において、樹脂流動シミュレーション(解析)が実行される。ステップS5において、解析結果に基づいて成形品の形状的特徴部が抽出される。
【0051】
ステップS6において、形状的特徴部における成形状態がチェックされる。特定の形状的特徴部において、好ましくない成形状態が出現する場合には、成形不良であると予測される。そして、成形不良部分が通知される。結果に問題がない場合は、予測処理が完了する。
【0052】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0053】
本実施形態では、上記のように、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出することにより、成形品の形状を考慮した成形品の不良を容易に予測することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、流動解析の解析結果に基づいて、成形品の成形状態を取得する工程と、成形品の形状的特徴部と、成形品の成形状態とに基づいて、成形品の成形不良を予測する工程と、を設ける。これにより、成形品の特定の形状において発生が好ましくない成形状態が発生するか否かを容易に判断することができるので、成形品の形状を考慮した成形品の不良をより容易に予測することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、成形品の成形不良を予測する工程において、成形品の形状的特徴部の位置に、成形品の成形状態としてのウェルドおよびヒケのうち少なくも1つが配置されているか否かに基づいて、成形品の成形不良を予測する。これにより、成形品の特定の形状においてウェルドまたはヒケが発生するか否かを容易に判断することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、成形品の形状的特徴部は、厚肉部11a、薄肉部11b、穴部11f、ボス部11g、網状部11h、拡大部11d、縮小部11c、成形品の表層部11i、成形品の中央部11j、エッジ部11e、リブ部11k、丸型角部11l、テーパ部11m、平面部11n、曲面部11oのうち少なくとも1つを含む。これにより、厚肉部11a、薄肉部11b、穴部11f、ボス部11g、網状部11h、拡大部11d、縮小部11c、成形品の表層部11i、成形品の中央部11j、エッジ部11e、リブ部11k、丸型角部11l、テーパ部11m、平面部11n、曲面部11oの形状を、流動解析の解析結果に基づいて取得することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、成形品の形状的特徴部を抽出する工程において、流動解析の解析結果としての、成形品の肉厚、成形品の外向き法線ベクトル、成形時の樹脂の流速ベクトル、成形時の樹脂のフローフロント情報のうち少なくとも1つに基づいて、成形品の形状的特徴部を抽出する。これにより、成形品の肉厚、成形品の外向き法線ベクトル、成形時の樹脂の流速ベクトル、成形時の樹脂のフローフロント情報に基づいて、成形品の形状的特徴部を容易に抽出することができる。
【0058】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、3次元形状を3次元CAD情報から取得して、流動解析に利用する成形モデルを作成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3次元形状を他の情報から取得してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、コンピュータの処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コンピュータの処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 コンピュータ
3a プログラム
7 記録媒体
11a 厚肉部
11b 薄肉部
11c 縮小部
11d 拡大部
11e エッジ部
11f 穴部
11g ボス部
11h 網状部
11i 成形品の表層部
11j 成形品の中央部
11k リブ部
11l 丸型角部
11m テーパ部
11n 平面部
11o 曲面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12