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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030640
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】折板屋根の更新方法および折板屋根
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/00 20060101AFI20220210BHJP
   E04G 23/03 20060101ALI20220210BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
E04D3/00 M
E04D3/00 E
E04G23/03
E04G23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134772
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】木下 喜仁
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 祐司
(72)【発明者】
【氏名】古池 一善
【テーマコード(参考)】
2E108
2E176
【Fターム(参考)】
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN06
2E108EE03
2E108ER01
2E108FF05
2E108FF11
2E108FG08
2E108GG05
2E108GG20
2E176AA07
2E176AA23
2E176BB25
(57)【要約】
【課題】折板屋根の更新構造の耐久性を向上させる。
【解決手段】折板屋根の更新方法は、検査工程と設置工程とを備える。検査工程は、第1の折板屋根材の下方で第1の折板屋根材を固定する第1の折板固定部材の状態の良否を、折板屋根における複数の位置において検査する工程である。設置工程は、第2の折板屋根材と、第2の折板屋根材の下方で第2の折板屋根材を固定する第2の折板固定部材と、第2の折板固定部材を支持する支持部材と、を第1の折板屋根材の上方に設置する工程であり、折板屋根のうち、第1の折板固定部材が不良状態であると判定された第1の領域については、第1の折板固定部材の谷部の上方に谷部用の支持部材を設置し、かつ、第1の折板固定部材が良状態であると判定された第2の領域については、第1の折板固定部材の山部の上方に山部用の支持部材を設置する工程である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根の更新方法であって、
山部および谷部が交互に形成された第1の折板屋根材の下方で前記第1の折板屋根材を固定する第1の折板固定部材であって、山部および谷部が交互に形成され、横架材に固定された第1の折板固定部材の状態の良否を、前記折板屋根における複数の位置において検査する検査工程と、
山部および谷部が交互に形成された第2の折板屋根材と、山部および谷部が交互に形成され、前記第2の折板屋根材の下方で前記第2の折板屋根材を固定する第2の折板固定部材と、前記第2の折板固定部材を支持する支持部材と、を前記第1の折板屋根材の上方に設置する設置工程と、を備え、
前記設置工程は、
前記折板屋根のうち、前記検査工程において前記第1の折板固定部材が不良状態であると判定された第1の領域については、前記第1の折板固定部材の前記谷部の上方に、前記第2の折板固定部材の前記谷部を支持し、前記横架材に固定された谷部用の前記支持部材を設置し、かつ、
前記折板屋根のうち、前記検査工程において前記第1の折板固定部材が良状態であると判定された第2の領域については、前記第1の折板固定部材の前記山部の上方に、前記第2の折板固定部材の前記山部を支持し、前記第1の折板屋根材に固定された山部用の前記支持部材を設置する工程である、
折板屋根の更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載の折板屋根の更新方法であって、
前記第1の折板固定部材の前記山部と前記谷部とが並ぶ方向を第1の方向としたとき、谷部用の前記支持部材の下側部分の前記第1の方向の幅は、当該支持部材の上側部分の幅よりも小さい、
折板屋根の更新方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の折板屋根の更新方法であって、さらに、
前記設置工程の前に、前記第2の折板固定部材と、谷部用の前記支持部材とを溶接により接合する工程を備える、
折板屋根の更新方法。
【請求項4】
折板屋根であって、
山部および谷部が交互に形成された第1の折板屋根材と、
山部および谷部が交互に形成され、前記第1の折板屋根材の下方で前記第1の折板屋根材を固定し、横架材に固定された第1の折板固定部材と、
山部および谷部が交互に形成され、前記第1の折板屋根材の上方に位置する第2の折板屋根材と、
山部および谷部が交互に形成され、前記第1の折板屋根材の上方かつ前記第2の折板屋根材の下方で前記第2の折板屋根材を固定する第2の折板固定部材と、
前記第1の折板固定部材の前記谷部の上方に位置し、前記第2の折板固定部材の前記谷部を支持し、横架材に固定された谷部用の支持部材と、を備え、
前記第1の折板固定部材の前記山部と前記谷部とが並ぶ方向を第1の方向としたとき、前記谷部用の支持部材の下側部分の前記第1の方向の幅は、前記谷部用の支持部材の上側部分の幅よりも小さい、
折板屋根。
【請求項5】
請求項4に記載の折板屋根であって、
前記谷部用の支持部材は、締結部材により前記横架材に締結されている、
折板屋根。
【請求項6】
請求項5に記載の折板屋根であって、
前記谷部用の支持部材の前記下側部分の下端部は、前記締結部材により前記横架材と締結されており、
前記谷部用の支持部材の前記下側部分の上端部は、上下方向視において、前記締結部材と重ならないように位置している、
折板屋根。
【請求項7】
請求項6に記載の折板屋根であって、
前記谷部用の支持部材の前記下側部分は、上下方向と前記第1の方向とに直交する第2の方向に延伸する中空空間を有する管状部材から構成されており、
前記谷部用の支持部材の前記下側部分のうち、前記第2の方向の一端は、前記第1の方向視において、下方に位置するほど前記第2の方向に突出している、
折板屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、折板屋根の更新方法および折板屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の屋根として、折板屋根が広く用いられている。折板屋根は、山部および谷部が交互に形成された折板屋根材を備える。折板屋根は、さらに、山部および谷部が交互に形成された折板固定部材(例えば、タイトフレーム)を備える。折板固定部材は、折板屋根材の下方で折板屋根材を固定し、かつ、横架材(例えば、梁)に固定される。
【0003】
例えば火災等により折板固定部材が損傷した際に折板屋根を更新する方法として、既設の折板屋根(以下、「既設折板屋根」という。)の折板屋根材(以下、「既設折板屋根材」という。)の上方に、さらに、山部および谷部が交互に形成された折板屋根材(以下、「新設折板屋根材」という。)を設置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。より詳細には、既設折板屋根の折板固定部材(以下、「既設折板固定部材」という。)の山部の上方に支持部材(例えば、受け金具)を設置し、支持部材の上方に、新設の折板固定部材(以下、「新設折板固定部材」という。)を設置し、さらにその上方に新設折板屋根材を設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-95315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の折板屋根の更新方法では、既設折板屋根のうち、既設折板固定部材の状態が不良状態である領域における既設折板固定部材の引張許容耐力は低い。そのような引張許容耐力が低い既設折板固定部材(特に、山部)にも、新設折板固定部材や新設折板屋根材の荷重が支持部材を介してかかるため、新設折板屋根の耐久性は低い。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される折板屋根の更新方法は、山部および谷部が交互に形成された第1の折板屋根材の下方で前記第1の折板屋根材を固定する第1の折板固定部材であって、山部および谷部が交互に形成され、横架材に固定された第1の折板固定部材の状態の良否を、前記折板屋根における複数の位置において検査する検査工程と、山部および谷部が交互に形成された第2の折板屋根材と、山部および谷部が交互に形成され、前記第2の折板屋根材の下方で前記第2の折板屋根材を固定する第2の折板固定部材と、前記第2の折板固定部材を支持する支持部材と、を前記第1の折板屋根材の上方に設置する設置工程と、を備え、前記設置工程は、前記折板屋根のうち、前記検査工程において前記第1の折板固定部材が不良状態であると判定された第1の領域については、前記第1の折板固定部材の前記谷部の上方に、前記第2の折板固定部材の前記谷部を支持し、前記横架材に固定された谷部用の前記支持部材を設置し、かつ、前記折板屋根のうち、前記検査工程において前記第1の折板固定部材が良状態であると判定された第2の領域については、前記第1の折板固定部材の前記山部の上方に、前記第2の折板固定部材の前記山部を支持し、前記第1の折板屋根材に固定された山部用の前記支持部材を設置する工程である。本折板屋根の更新方法によれば、折板屋根のうち、検査工程において第1の折板固定部材が不良状態であると判定された第1の領域における第1の折板固定部材の谷部の上方に、上述した谷部用の支持部材を設置する。そのため、第1の領域では、第2の折板固定部材や第2の折板屋根材の荷重が谷部用の支持部材を介してかかる。従って、第2の折板固定部材や第2の折板屋根材の荷重が、検査工程において第1の折板固定部材が不良状態であると判定された第1の折板固定部材(特に、山部)にはかからないようになる。そのため、本折板屋根の更新方法によれば、第1の領域における第1の折板固定部材の山部の上方に支持部材を設置する構成よりも、折板屋根(特に、第1の領域)の耐久性を向上させることができる。さらに、本折板屋根の更新方法によれば、第2の領域については、第1の折板固定部材の谷部の上方に、上述した谷部用の支持部材を設置することにより、第1の折板固定部材の山部の上方に、上述した山部の支持部材を設置する構成よりも、第1の折板固定部材を支持する支持部材を設置する工程を簡易なものとすることができ、ひいては折板屋根の更新作業の効率を向上させることができる。
【0009】
(2)上記折板屋根の更新方法において、前記第1の折板固定部材の前記山部と前記谷部とが並ぶ方向を第1の方向としたとき、谷部用の前記支持部材の下側部分の前記第1の方向の幅は、当該支持部材の上側部分の幅よりも小さい構成としてもよい。本折板屋根の更新方法によれば、設置工程において、谷部用の支持部材の上側部分の第1の方向の幅が当該支持部材の下側部分の幅よりも大きいことにより、谷部用の支持部材の上側部分の第1の方向の幅が当該支持部材の下側部分の幅以下である構成(以下、「比較構成」という。)よりも容易に、谷部用の支持部材の上側部分に第2の折板固定部材を設置することができる。さらに、谷部用の支持部材の下側部分の第1の方向の幅が当該支持部材の上側部分の幅よりも小さいことにより、上述した比較構成よりも容易に、第1の折板固定部材の谷部の上方に谷部用の支持部材の下側部分を設置することができる。
【0010】
(3)上記折板屋根の更新方法において、さらに、前記設置工程の前に、前記第2の折板固定部材と谷部用の前記支持部材とを溶接により接合する工程を備える構成としてもよい。本折板屋根の更新方法によれば、第2の折板固定部材と谷部用の支持部材とが溶接により接合された折板屋根を実現可能なものでありながら、設置工程において第2の折板固定部材と谷部用の支持部材とを溶接する際に生じる火災のリスクを抑制することができる。
【0011】
(4)本明細書に開示される折板屋根は、山部および谷部が交互に形成された第1の折板屋根材と、山部および谷部が交互に形成され、前記第1の折板屋根材の下方で前記第1の折板屋根材を固定し、横架材に固定された第1の折板固定部材と、山部および谷部が交互に形成され、前記第1の折板屋根材の上方に位置する第2の折板屋根材と、山部および谷部が交互に形成され、前記第1の折板屋根材の上方かつ前記第2の折板屋根材の下方で前記第2の折板屋根材を固定する第2の折板固定部材と、前記第1の折板固定部材の前記谷部の上方に位置し、前記第2の折板固定部材の前記谷部を支持し、横架材に固定された谷部用の支持部材と、を備え、前記第1の折板固定部材の前記山部と前記谷部とが並ぶ方向を第1の方向としたとき、前記谷部用の支持部材の下側部分の前記第1の方向の幅は、前記谷部用の支持部材の上側部分の幅よりも小さい。本折板屋根によれば、上記(2)に記載された折板屋根の更新方法による効果(谷部用の支持部材の上側部分の第1の方向の幅が谷部用の支持部材の下側部分の幅よりも大きいことによる効果)が得られる。
【0012】
(5)上記折板屋根において、前記谷部用の支持部材は、締結部材により前記横架材に締結されている構成としてもよい。本折板屋根によれば、谷部用の支持部材は締結部材により横架材に固定されるため、谷部用の支持部材が溶接により横架材に固定される構成における溶接の際に生じる火災のリスクを抑制することができる。
【0013】
(6)上記折板屋根において、前記谷部用の支持部材の前記下側部分の下端部は、前記締結部材により締結されており、前記谷部用の支持部材の前記下側部分の上端部は、上下方向視において、前記締結部材と重ならないように位置している構成としてもよい。本折板屋根によれば、上述した締結部材を備える構成(谷部用の支持部材の下側部分の下端部が締結部材により横架材と締結されている構成)を容易に実現することができる。
【0014】
(7)上記折板屋根において、前記谷部用の支持部材の前記下側部分は、上下方向と前記第1の方向とに直交する第2の方向に延伸する中空空間を有する管状部材から構成されており、前記谷部用の支持部材の前記下側部分のうち、前記第2の方向の一端は、前記第1の方向視において、下方に位置するほど前記第2の方向に突出している構成としてもよい。本折板屋根によれば、上述した谷部用の支持部材の下側部分の構成(谷部用の支持部材の下側部分の上端部が上下方向視において締結部材と重ならないように位置している構成)を容易に実現することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、折板屋根の更新方法、折板屋根等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の折板屋根100の構成を示す説明図
図2】本実施形態の折板屋根100の構成を示す説明図
図3】本実施形態の折板屋根100の構成を示す説明図
図4】谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の構成を示す説明図
図5】谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の構成を示す説明図
図6】谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の構成を示す説明図
図7】本実施形態の既設折板屋根10の更新方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.実施形態:
A-1.本実施形態の折板屋根100の構成:
図1から図3は、本実施形態の折板屋根100の構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。Z軸正方向が上方向であり、Z軸負方向が下方向である。図1には、折板屋根100の平面(上面)構成が示されており、図2には、図1に示されている折板屋根100の第1の領域AR1のY軸正方向視における外観構成が示されており、図3には、図1に示されている折板屋根100の第2の領域AR2(第1の領域AR1以外の領域)のY軸正方向視における外観構成が示されている。なお、X軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、Y軸方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0018】
本実施形態の折板屋根100は、建築物等の折板屋根10(以下、「既設折板屋根10」という。)の一部が火災等により損傷した際に、既設折板屋根10の上に、さらに、折板屋根材21(以下、「新設折板屋根材21」という。)等が設けられることにより更新された後の構造体である。なお、既設折板屋根10は、山部13および谷部12が交互に形成された折板屋根材11(以下、「既設折板屋根材11」という。)と、山部18および谷部17が交互に形成され、既設折板屋根材11の下方で既設折板屋根材11を固定し、横架材70(本実施形態では建築物等の梁部材)に固定された折板固定部材16(以下、「既設折板固定部材16」という。)と、を備えている。折板固定部材は、例えば、タイトフレームである。本実施形態では、既設折板屋根材11の各山部13および各谷部12は、Y軸方向(ただし厳密には屋根勾配に沿って傾いた方向)に延伸しており、かつ、X軸方向に沿って交互に形成されている。また、本実施形態では、横架材70は、H形鋼の梁である。なお、新設折板屋根材21は、特許請求の範囲における第2の折板屋根材に相当し、既設折板屋根材11は、特許請求の範囲における第1の折板屋根材に相当し、既設折板固定部材16は、特許請求の範囲における第1の折板固定部材に相当する。
【0019】
折板屋根100は、図2に示すように、既設折板屋根10に加え、さらに、折板屋根材21(以下、「新設折板屋根材21」という。)と、折板固定部材26(以下、「新設折板固定部材26」という。)と、を備えている。新設折板屋根材21および新設折板固定部材26は、既設折板屋根10の更新により新たに設置されたものである。新設折板屋根材21は、山部23および谷部22が交互に形成され、既設折板屋根材11の上方に位置している。新設折板固定部材26は、山部28および谷部27が交互に形成され、既設折板屋根材11の上方かつ新設折板屋根材21の下方で新設折板屋根材21を固定している。なお、厳密には、本実施形態では、第2の領域AR2に含まれる新設折板固定部材26は、一体に形成された部材により構成されている(図3参照)のに対し、第1の領域AR1に含まれる新設折板固定部材26は、各山部28に対応するV字状部材VSを複数備える構成とされている(図2参照)点で双方の構成は異なるが、本明細書では双方を「新設折板固定部材26」という。なお、第2の領域AR2に含まれる新設折板固定部材26が各山部28に対応するV字状部材VSを複数備える構成とされていてもよく、第1の領域AR1に含まれる新設折板固定部材26が一体に形成された部材により構成されていてもよい。なお、新設折板固定部材26は、特許請求の範囲における第2の折板固定部材に相当する。
【0020】
折板屋根100は、さらに、新設折板固定部材26を支持するための部材として、谷部用支持部材30と、山部用支持部材40とを備えている。谷部用支持部材30は、折板屋根100における第1の領域AR1に設置され、山部用支持部材40は、折板屋根100における第2の領域AR2に設置されている。
【0021】
谷部用支持部材30は、図2に示すように、既設折板屋根材11の谷部12の上方に位置しており、新設折板固定部材26の谷部27を支持し、横架材70に固定されている。谷部用支持部材30の詳細構成については後述する。
【0022】
山部用支持部材40は、図3に示すように、既設折板屋根材11の山部13の上方に位置しており、新設折板固定部材26の山部28を支持している。山部用支持部材40は、公知の受け金具である。
【0023】
山部用支持部材40の下端部は、既設折板屋根材11の山部10に固定されている。山部用支持部材40の上端部は、新設折板固定部材26の谷部27および新設折板屋根材21の谷部22を支持している。
【0024】
A-2.谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の詳細構成:
図4から図6は、谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の構成を示す説明図である。図4には、X軸正方向視における谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の外観構成が示されている。図5には、Y軸正方向視における谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の外観構成(図2の谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺を拡大した外観構成)が示されている。図6には、下方向視における谷部用支持部材30および谷部用支持部材30の周辺の外観構成が示されている。なお、図4および図6では、既設折板屋根材11、新設折板屋根材21、および新設折板固定部材26の図示は省略されている。
【0025】
谷部用支持部材30は、上側部分31と、下側部分32とを備えている。
【0026】
上側部分31は、X軸方向に延伸する中空空間H31を有する部材(例えば、溝型鋼)である。
【0027】
上側部分31は、図4に示すように、X軸方向視においてY軸方向に延伸する上端部311と、上端部311のY軸正方向の一端から下方向に延伸する第1の接続部312と、第1の接続部312の下端からY軸負方向に延伸する第1の下端部313と、上端部311のY軸負方向の一端から下方向に延伸する第2の接続部314と、第2の接続部314の下端からY軸正方向に延伸する第2の下端部315と、を有している。
【0028】
第1の下端部313と第2の下端部315とは、互いに離隔し、Y軸方向に対向しており、これにより、第1の下端部313と第2の下端部315との間に空間が形成されている。当該空間は、中空空間H31に連通している。なお、上側部分31は、このような構成に限られず、例えば管状部材(例えば、角型鋼管)であってもよい。
【0029】
下側部分32は、Y軸方向に延伸する中空空間H32を有する管状部材(例えば、角型鋼管)である。
【0030】
下側部分32は、図5に示すように、Y軸正方向視においてX軸方向に延伸する上端部321と、上端部321のX軸負方向の一端から下方向に延伸する第3の接続部323と、上端部321のX軸正方向の一端から下方向に延伸する第4の接続部324と、第3の接続部323の下端と第4の接続部324の下端とに接続し、X軸方向に延伸する下端部322と、を有している。上端部321は、上側部分31の第1の下端部313および第2の下端部315に対して溶接(図4の溶接部35)により接合されている。
【0031】
また、図4に示すように、折板屋根100は、第1の接合部材80と、第2の接合部材85と、を備えている。
【0032】
第1の接合部材80は、X軸正方向視においてY軸方向に延伸するY軸延伸部81と、Y軸延伸部81のY軸正方向の一端から下方向に延伸する上下延伸部82と、を有している。
【0033】
図4に示すように、第2の接合部材85は、X軸正方向視においてY軸方向に延伸するY軸延伸部86と、Y軸延伸部86のY軸負方向の一端から下方向に延伸する上下延伸部87と、を有している。第1の接合部材80および第2の接合部材85は、例えば山形鋼により構成される。
【0034】
第1の接合部材80の上下延伸部82には、Y軸方向に貫通する貫通孔T82が形成されており、第2の接合部材85の上下延伸部87には、Y軸方向に貫通する貫通孔T87が形成されており、横架材70には、Y軸方向に貫通する貫通孔T70が形成されており、貫通孔T82と貫通孔T87と貫通孔T70とは、連通している。以下、貫通孔T82と貫通孔T87と貫通孔T70とにより構成される貫通孔を「貫通孔T100」という。
【0035】
折板屋根100は、ボルト91と、ナット92と、ワッシャー93とからなる接合用締結部材90を備えている。第1の接合部材80および第2の接合部材85は、貫通孔T100に挿入されたボルト91と、ボルト91に挿入されたワッシャー93と、ボルト91に螺号されたナット92とにより、横架材70に締結されている。
【0036】
図5に示すように、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のうち、Y軸負方向側端部には、上下方向に貫通する貫通孔T321が形成されている。既設折板屋根材11の谷部12には、上下方向に貫通する貫通孔T12が形成されており、第1の接合部材80のY軸延伸部81には、上下方向に貫通する貫通孔T81が形成されており、貫通孔T321と貫通孔T12と貫通孔T81とは、連通している。以下、貫通孔T321と貫通孔T12と貫通孔T81とにより構成される貫通孔を「貫通孔T101」という。
【0037】
図4に示すように、折板屋根100は、ボルト61と、ナット62と、ワッシャー63とからなる支持用締結部材60を備えている。谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸負方向側端部は、貫通孔T101に挿入されたボルト61と、ボルト61に挿入されたワッシャー63と、ボルト61に螺号されたナット62とにより、第1の接合部材80のY軸延伸部81に締結されている。これにより、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸負方向側端部は、横架材70に間接的に締結されている。なお、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322は、横架材70に直接的に締結されていてもよい。また、本実施形態では、折板屋根100は、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸負方向側端部と、第1の接合部材80のY軸延伸部81との間であって、貫通孔T101の内周面とボルト61との間に位置するスペーサー64を備えている。なお、支持用締結部材60は、特許請求の範囲における締結部材に相当する。
【0038】
同様に、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸正方向側端部には、上下方向に貫通する貫通孔T322が形成されている。既設折板屋根材11の谷部12には、上下方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されており、既設折板固定部材16の谷部17には、上下方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されており、第2の接合部材85のY軸延伸部86には、上下方向に貫通する貫通孔T86が形成されており、これらの貫通孔は連通している。以下、これらの貫通孔により構成される貫通孔を「貫通孔T102」という。谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸正方向側端部は、貫通孔T102に挿入されたボルト61と、ボルト61に挿入されたワッシャー63と、ボルト61に螺号されたナット62とにより、第2の接合部材85のY軸延伸部86に締結されている。これにより、下端部322のY軸正方向側端部は、横架材70に間接的に締結されている。また、本実施形態では、折板屋根100は、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸正方向側端部と、第2の接合部材85のY軸延伸部86との間であって、貫通孔T102の内周面とボルト61との間に位置するスペーサー64を備えている。上述した2個のスペーサー64が備えられていることにより、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のY軸負方向側端部に位置するスペーサー64と、下端部322のY軸正方向側端部に位置するスペーサー64との間に空間が形成され、当該空間に既設折板固定部材16の谷部17が配置されている。
【0039】
図4および図6に示すように、谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321のうち、Y軸負方向の一端E1は、支持用締結部材60よりもY軸正方向側に位置している。
【0040】
谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のうち、Y軸負方向の一端E2は、支持用締結部材60よりもY軸負方向側に位置している。
【0041】
図4に示すように、谷部用支持部材30の下側部分32の第3の接続部323のうち、Y軸負方向の一端E3は、下方に位置するほどY軸負方向に突出している。同様に、谷部用支持部材30の下側部分32の第4の接続部324のうち、Y軸負方向の一端E4は、下方に位置するほどY軸負方向に突出している。なお、このような谷部用支持部材30の下側部分32の構成は、例えば、管状部材(例えば、角型鋼管)を、X軸方向視においてY軸負方向の一端が下方に位置するほどY軸負方向に突出している構成となるように切断することにより実現することができる。これは、後述するY軸正方向の一端E7,E8がY軸正方向に突出している構成を実現する際においても同様である。
【0042】
また、図4および図6に示すように、谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321のうち、Y軸正方向の一端E5は、支持用締結部材60よりもY軸負方向側に位置している。
【0043】
谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322のうち、Y軸正方向の一端E6は、支持用締結部材60よりもY軸正方向側に位置している。
【0044】
図4に示すように、谷部用支持部材30の下側部分32の第3の接続部323のうち、Y軸正方向の一端E7は、下方に位置するほどY軸正方向に突出している。同様に、谷部用支持部材30の下側部分32の第4の接続部324のうち、Y軸正方向の一端E8は、下方に位置するほどY軸正方向に突出している。
【0045】
上述した谷部用支持部材30および支持用締結部材60の構成においては、図6に示すように、谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321は、上下方向視において、支持用締結部材60と重ならないように位置している。
【0046】
また、谷部用支持部材30の下側部分32のX軸方向の幅W32は、上側部分31の幅W31よりも小さい。
【0047】
A-3.既設折板屋根10の更新方法:
図7は、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法を示すフローチャートである。はじめに、既設折板固定部材16の状態の良否を、既設折板屋根10における複数の位置(本実施形態では、図1のD1~D6の6箇所)において検査する(S10)。以下、S10の工程を「検査工程S10」という。
【0048】
既設折板固定部材16の状態の良否は、例えば、既設折板屋根10の各位置(図1のD1~D6)について引張試験を実施し、各位置D1~D6の許容耐力を計測した結果に基づいて判断する。例えば、許容耐力の所定閾値を設定した上で各位置の許容耐力を計測し、既設折板屋根10のうち、計測した許容耐力が所定閾値以下である位置の周辺領域に位置する既設折板固定部材16(の部分)を「不良」と判断し、計測した許容耐力が所定閾値より大きい位置の周辺領域に位置する既設折板固定部材16(の部分)を「良」と判断する。本実施形態では、位置D1~D3においては、「不良」と判断し、位置D4~D6においては、「良」と判断した。第1の領域AR1は、「不良」と判断された位置D1~D3の周辺領域であり、第2の領域AR2は、「良」と判断された位置D4~D6の周辺領域である。
【0049】
次に、第1の領域AR1に含まれる新設折板固定部材26および谷部用支持部材30を用意し、用意した新設折板固定部材26と谷部用支持部材30とを溶接により接合する(S11)。以下、S11の工程を「溶接工程S11」という。溶接工程S11は、溶接による火災のリスクを抑制するために、工場や、新設折板屋根材21等を既設折板屋根10に設置する現場のうち、既設折板屋根10からある程度離れた場所など、なるべく既設折板屋根10を備える建築物等から離れた場所で行うことが好ましい。
【0050】
次に、新設折板屋根材21と、新設折板固定部材26と、谷部用支持部材30および山部用支持部材40と、を既設折板屋根材11の上方に設置する(S12)。このとき、既設折板屋根10のうち、検査工程S10において既設折板固定部材16が不良状態であると判定された第1の領域AR1については、既設折板固定部材16の谷部17の上方に、谷部用支持部材30を設置する。さらに、既設折板屋根10のうち、検査工程S10において既設折板固定部材16が良状態であると判定された第2の領域AR2については、既設折板固定部材16の山部18の上方に、山部用支持部材40を設置する。以下、S12の工程を「設置工程S12」という。
【0051】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法は、検査工程S10と設置工程S12とを備える。検査工程S10は、山部13および谷部12が交互に形成された既設折板屋根材11の下方で既設折板屋根材11を固定する既設折板固定部材16であって、山部18および谷部17が交互に形成され、横架材70に固定された既設折板固定部材16の状態の良否を、既設折板屋根10における複数の位置(D1~D6)において検査する工程である。設置工程S12は、山部23および谷部22が交互に形成された新設折板屋根材21と、山部28および谷部27が交互に形成され、新設折板屋根材21の下方で新設折板屋根材21を固定する新設折板固定部材26と、新設折板固定部材26を支持する谷部用支持部材30および山部用支持部材40と、を既設折板屋根材11の上方に設置する工程である。設置工程S12は、既設折板屋根10のうち、検査工程S10において既設折板固定部材16が不良状態であると判定された第1の領域AR1については、既設折板固定部材16の谷部17の上方に、新設折板固定部材26の谷部27を支持し、横架材70に固定された谷部用支持部材30を設置し、かつ、既設折板屋根10のうち、検査工程S10において既設折板固定部材16が良状態であると判定された第2の領域AR2については、既設折板固定部材16の山部18の上方に、新設折板固定部材26の山部28を支持し、既設折板屋根材11に固定された山部用支持部材40を設置する工程である。
【0052】
本実施形態の既設折板屋根10の更新方法では、上述したように、設置工程S12は、既設折板屋根10のうち、第1の領域AR1については、既設折板固定部材16の谷部17の上方に、新設折板固定部材26の谷部27を支持し、横架材70に固定された谷部用支持部材30を設置する工程である。仮に第1の領域AR1における既設折板固定部材16の山部18の上方に山部用支持部材40を設置する構成としたときには、引張許容耐力が低い既設折板固定部材16(の部分)にも、新設折板固定部材26や新設折板屋根材21の荷重が山部用支持部材40を介してかかるため、第1の領域AR1における折板屋根100の耐久性は低くなる。これに対し、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法では、第1の領域AR1における既設折板固定部材16の谷部17の上方に、上述した谷部用支持部材30を設置する。そのため、第1の領域AR1では、第2の折板固定部材や新設折板屋根材21の荷重が谷部用支持部材30を介してかかる。従って、新設折板固定部材26や第2の折板屋根材の荷重が、検査工程S10において既設折板固定部材16が不良状態であると判定された既設折板固定部材16(特に、山部18)にはかからないようになる。そのため、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法によれば、第1の領域AR1における既設折板固定部材16の山部18の上方に山部用支持部材40を設置する構成よりも、折板屋根100(特に、第1の領域AR1)の耐久性を向上させることができる。
【0053】
但し、既設折板固定部材16の谷部17の上方に、上述した谷部用支持部材30を設置する工程は、既設折板固定部材16の山部18の上方に、上述した山部用支持部材40を設置する工程よりも煩雑となる傾向がある。従って、仮に、第1の領域AR1以外の領域である第2の領域AR2を含めた既設折板屋根10の全体において、既設折板固定部材16の谷部17の上方に、上述した谷部用支持部材30を設置する構成としたときには、既設折板固定部材16に谷部用支持部材30を設置する工程が煩雑となり、これにより既設折板屋根10の更新作業の効率が悪化する。
【0054】
これに対し、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法では、上述したように、設置工程S12は、既設折板屋根10のうち、検査工程S10において既設折板固定部材16が良状態であると判定された第2の領域AR2については、既設折板固定部材16の山部18の上方に、新設折板固定部材26の山部28を支持し、既設折板固定部材16に固定された山部用支持部材40を設置する工程である。検査工程S10において既設折板固定部材16が良状態であると判定された第2の領域AR2においては、既設折板固定部材16の山部18の上方に山部用支持部材40を設置する構成であっても、第2の領域AR2の耐久性が十分に確保されない蓋然性は低い。本実施形態の既設折板屋根10の更新方法によれば、第2の領域AR2については、既設折板固定部材16の谷部17の上方に、上述した谷部用支持部材30を設置することにより、既設折板固定部材16の山部18の上方に、上述した山部用支持部材40を設置する構成よりも、新設折板固定部材26を支持する部材である谷部用支持部材30を設置する工程を簡易なものとすることができ、ひいては既設折板屋根10の更新作業の効率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法では、谷部用支持部材30の下側部分32のX軸方向(既設折板屋根材11の山部13と谷部12とが並ぶ方向)の幅W32は、谷部用支持部材30の上側部分31の幅W31よりも小さい。
【0056】
谷部用支持部材30の上側部分31のX軸方向の幅W31が大きいほど、谷部用支持部材30の上側部分31に新設折板固定部材26を設置する工程は容易なものとなる。また、既設折板屋根材11の谷部12のX軸方向における幅は小さいため、谷部用支持部材30の下側部分32のX軸方向の幅W32が小さいほど、既設折板屋根材11の谷部12の上方に谷部用支持部材30の下側部分32を設置する工程は容易なものとなる。
【0057】
本実施形態の既設折板屋根10の更新方法によれば、谷部用支持部材30の上側部分31のX軸方向の幅W31が谷部用支持部材30の下側部分32の幅W32よりも大きいことにより、谷部用支持部材30の上側部分31のX軸方向の幅W31が谷部用支持部材30の下側部分32の幅W32以下である構成(以下、「比較構成」という。)よりも容易に、谷部用支持部材30の上側部分31に新設折板固定部材26を設置することができる。さらに、谷部用支持部材30の下側部分32のX軸方向の幅W32が谷部用支持部材30の上側部分31の幅W31よりも小さいことにより、上述した比較構成よりも容易に、既設折板屋根材11の谷部12の上方に谷部用支持部材30の下側部分32を設置することができる。
【0058】
また、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法では、さらに、設置工程S12の前に、新設折板固定部材26と谷部用支持部材30とを溶接により接合する溶接工程S11を備える。従って、設置工程S12において、設置工程S12の前に溶接により接合された新設折板固定部材26および谷部用支持部材30を設置する。そのため、本実施形態の既設折板屋根10の更新方法によれば、新設折板固定部材26と谷部用支持部材30とが溶接により接合された折板屋根100を実現可能なものでありながら、設置工程S12において新設折板固定部材26と谷部用支持部材30とを溶接する際に生じる火災のリスクを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の折板屋根100は、山部13および谷部12が交互に形成された既設折板屋根材11と、山部18および谷部17が交互に形成され、既設折板屋根材11の下方で既設折板屋根材11を固定し、横架材70に固定された既設折板固定部材16と、山部23および谷部22が交互に形成され、既設折板屋根材11の上方に位置する新設折板屋根材21と、山部28および谷部27が交互に形成され、既設折板屋根材11の上方かつ新設折板屋根材21の下方で新設折板屋根材21を固定する新設折板固定部材26と、既設折板屋根材11の谷部12の上方に位置し、新設折板固定部材26の谷部27を支持し、横架材70に固定された谷部用支持部材30と、を備える。谷部用支持部材30の下側部分32のX軸方向(既設折板屋根材11の山部13と谷部12とが並ぶ方向)の幅W32は、谷部用支持部材30の上側部分31の幅W31よりも小さい。本実施形態の折板屋根100によれば、上述した効果(谷部用支持部材30の上側部分31のX軸方向の幅W31が谷部用支持部材30の下側部分32の幅W32よりも大きいことによる効果)が得られる。
【0060】
また、本実施形態の折板屋根100は、谷部用支持部材30は、支持用締結部材60により横架材70に締結されている。本実施形態の折板屋根100によれば、谷部用支持部材30は支持用締結部材60により横架材70に固定されるため、谷部用支持部材30が溶接により横架材70に固定される構成における溶接の際に生じる火災のリスクを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態の折板屋根100は、谷部用支持部材30の下側部分32の下端部322は、支持用締結部材60により横架材70と締結されており、谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321は、上下方向視において、支持用締結部材60と重ならないように位置している。本実施形態の折板屋根100においては、谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321は、上下方向視において、支持用締結部材60と重ならないように位置している構成であることにより、既設折板屋根10の更新作業において支持用締結部材60を設置する作業を行うときに、谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321が当該作業の邪魔となることが抑制される。これにより、支持用締結部材60の上方から容易に当該作業を行うことができ、ひいては、上述した支持用締結部材60を備える構成(谷部用支持部材30の下側部分32が支持用締結部材60により横架材70と締結されている構成)を容易に実現することができる。
【0062】
また、本実施形態の折板屋根100は、谷部用支持部材30の下側部分32は、Y軸方向(上下方向とX軸方向とに直交する方向)に延伸する中空空間H32を有する管状部材から構成されている。谷部用支持部材30の下側部分32の第3の接続部323のうち、Y軸負方向の一端E3は、下方に位置するほどY軸負方向に突出している。谷部用支持部材30の下側部分32の第3の接続部323のうち、Y軸正方向の一端E7は、下方に位置するほどY軸正方向に突出している。本実施形態の折板屋根100によれば、管状部材(例えば、角型鋼管)を切断などの簡易な方法により加工することにより、上述した谷部用支持部材30の下側部分32の構成(谷部用支持部材30の下側部分32の上端部321が上下方向視において支持用締結部材60と重ならないように位置している構成)を容易に実現することができる。
【0063】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態において、谷部用支持部材30の下側部分32の上記一端E3,E4,E7,E8の一部または全部は、下方に位置するほどY軸方向に突出していなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10:折板屋根 11:既設折板屋根材 12:(既設折板屋根材の)谷部 13:(既設折板屋根材の)山部 16:既設折板固定部材 17:(既設折板固定部材の)谷部 18:(既設折板固定部材の)山部 21:新設折板屋根材 22:(新設折板屋根材の)谷部 23:(新設折板屋根材の)山部 26:新設折板固定部材 27:(新設折板固定部材の)谷部 28:山部 30:谷部用支持部材 31:(谷部用支持部材の)上側部分 32:(谷部用支持部材の)下側部分 35:接着剤 40:山部用支持部材 60:支持用締結部材 61:(支持用締結部材の)ボルト 62:(支持用締結部材の)ナット 63:(支持用締結部材の)ワッシャー 64:(支持用締結部材の)スペーサー 70:横架材 80:第1の接合部材 81:(第1の接合部材の)Y軸延伸部 82:(第1の接合部材の)上下延伸部 85:第2の接合部材 86:(第2の接合部材の)Y軸延伸部 87:(第2の接合部材の)上下延伸部 90:接合用締結部材 91:(接合用締結部材の)ボルト 92:(接合用締結部材の)ナット 93:(接合用締結部材の)ワッシャー 100:折板屋根 311:(谷部用支持部材の上側部分の)上端部 312:(谷部用支持部材の上側部分の)第1の接続部 313:(谷部用支持部材の上側部分の)第1の下端部 314:(谷部用支持部材の上側部分の)第2の接続部 315:(谷部用支持部材の上側部分の)第2の下端部 321:(谷部用支持部材の下側部分の)上端部 322:(谷部用支持部材の下側部分の)下端部 323:(谷部用支持部材の下側部分の)第3の接続部 324:(谷部用支持部材の下側部分の)第4の接続部 AR1:第1の領域 AR2:第2の領域 E1~E8:(谷部用支持部材30の下側部分32の)一端 H31:中空空間 H32:中空空間 VS:V字状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7