IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シブヤの特許一覧

<>
  • 特開-自動送り装置 図1
  • 特開-自動送り装置 図2
  • 特開-自動送り装置 図3
  • 特開-自動送り装置 図4
  • 特開-自動送り装置 図5
  • 特開-自動送り装置 図6
  • 特開-自動送り装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030642
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】自動送り装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 47/18 20060101AFI20220210BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20220210BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20220210BHJP
   B28D 1/14 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B23B47/18 B
G01B7/30 B
B23Q17/24 B
B28D1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134774
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】593110580
【氏名又は名称】株式会社シブヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高下 宗潤
(72)【発明者】
【氏名】笹口 法之
【テーマコード(参考)】
2F063
3C029
3C036
3C069
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063BA30
2F063BC05
2F063BD01
2F063CA28
2F063EA03
3C029AA40
3C036DD08
3C069AA04
3C069BA09
3C069BC03
3C069CA07
3C069EA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コストでかつ断線のおそれなく、ロータリエンコーダで正確な回転情報が得られるようにし、適切な送り制御を実現する。
【解決手段】自動送り装置1は、電磁クラッチ6の出力側の部材6cを出力減速機7に結合する結合部材8と、結合部材8の回転情報を取得するロータリロータリエンコーダ20と、ロータリエンコーダ20の出力信号に基づいて穿孔作業機の送り量を算出し、予め設定された送り量となるように送り用モータ2を制御する制御部を備えている。ロータリエンコーダ20は、結合部材8に設けられた被検出部と、ケーシング9の内部に配設され、被検出部を検出するセンサ20bとを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって回転駆動される出力軸の回転運動を直線運動に変換する変換機構を備え、当該変換機構によって変換された直線運動によって穿孔作業機を穿孔方向に自動で送る自動送り装置において、
前記モータの出力が入力されるモータ側減速機と、
前記モータ側減速機と前記出力軸との間に設けられる電磁クラッチと、
前記電磁クラッチの出力側と前記出力軸との間に設けられる出力減速機と、
前記電磁クラッチを構成している出力側の部材に固定されて当該出力側の部材と一体に回転し、前記出力側の部材を前記出力減速機に結合する結合部材と、
前記モータ側減速機、前記電磁クラッチ、前記出力減速機及び前記結合部材を収容するケーシングと、
前記結合部材の回転情報を取得するロータリエンコーダと、
前記ロータリエンコーダの出力信号に基づいて前記穿孔作業機の送り量を算出し、予め設定された送り量となるように前記モータを制御する制御部とを備え、
前記ロータリエンコーダは、前記結合部材に設けられた被検出部と、前記ケーシングの内部に配設され、前記被検出部を検出するセンサとを有していることを特徴とする自動送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動送り装置において、
前記被検出部は、前記結合部材の回転中心線から径方向に離れた部分に設けられていることを特徴とする自動送り装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動送り装置において、
前記被検出部は、前記結合部材の外周部に設けられ、
前記センサは、前記結合部材の外周部に対向するように設けられていることを特徴とする自動送り装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動送り装置において、
前記センサは、前記ケーシングの壁部に固定されていることを特徴とする自動送り装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の自動送り装置において、
前記被検出部は、回転中心線と平行な方向へ突出する突出部で構成されていることを特徴とする自動送り装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動送り装置において、
前記被検出部は、前記結合部材の外周部から前記電磁クラッチ側へ突出し、前記出力側の部材の外周面と前記ケーシングの内面との間に位置付けられていることを特徴とする自動送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコアドリル等の穿孔作業機を自動で送る自動送り装置に関し、特にエンコーダを備えた構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンクリート構造物の穿孔作業を行う際にはコアドリルと呼ばれる穿孔作業機が使用され、この穿孔作業機を自動送り装置で送ることによって穿孔作業の自動化が可能になる。自動送り装置を用いて穿孔作業を行う際、孔の深さが予め設定された深さになった時点で穿孔作業を停止したい場合がある。この場合、コアドリルを支持する支柱の所定位置にストッパーを固定しておき、コアドリルと共に移動する部材をストッパーに当てることによって送り動作を物理的に強制停止させる方法や、例えば特許文献1に開示されているように、穿孔深さと相関関係がある信号を出力するロータリエンコーダを駆動部に設けておき、このロータリエンコーダの出力信号に基づいて自動送り装置の送り量を制御する方法等が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、自動送り装置を備えたタップ盤が開示されている。このタップ盤の自動送り装置の外部には、送り量を検出するためのロータリエンコーダが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-31613号公報
【特許文献2】特開平2-117849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、孔の深さが予め設定された深さになった時点で自動送り装置による穿孔作業を停止させる際、ストッパーを用いる方法を採用すると、穿孔開始位置から穿孔停止位置までの距離を実際に測定しなければならない煩わしさがあるとともに、例えば支柱に設けたラックによって送り動作を行う場合にはラックにストッパーを固定することになるので、ラックのピッチ以下の深さ設定ができないという問題があった。さらに、モータを強制停止させることになるので、一時的に過負荷になり、モータが損傷する可能性があった。
【0006】
そこで、ロータリエンコーダを用いれば、ストッパーを用いる方法のような問題を解決することができるが、ロータリエンコーダをどこに設けるかが問題となる。特許文献1では、カウント手段がロータリエンコーダに相当しているが、このカウント手段を設ける場所については記載されていない。
【0007】
ここで、自動送り装置の一般的な内部機構例について説明すると、モータの出力が第1減速機、電磁クラッチ、カップリング、第2減速機を順に経て出力軸に伝達される機構を挙げることができる。このような構造例の場合、送り動作時に回転するいずれかの部材にロータリエンコーダを設けることが可能である。
【0008】
ところが、仮に、ロータリエンコーダをモータまたは第1減速機の出力軸に設けた場合には、以下に述べる問題が生じる得る。すなわち、上記内部構造を備えた自動送り装置で穿孔作業を行っている時、何らかの原因でビット(穿孔具)がロックして出力軸が瞬時に停止することが考えられる。出力軸が瞬時に停止すると、電磁クラッチが若干滑ってロック時の衝撃を吸収することができるので、内部機構の損傷を防止できる反面、電磁クラッチの滑りによって当該電磁クラッチよりも出力側(第2減速機及び出力軸)と、入力側(モータ及び第1減速機)との回転量の相関関係がずれてしまい、その結果、孔の深さが予め設定された深さに達する前に送りが自動停止され、正確な深さを得ることができない。
【0009】
これに対し、例えば特許文献2に開示されているように、送り安全クラッチよりも出力側にロータリエンコーダを設ける構成が考えられるが、特許文献2では、ロータリエンコーダが主軸ヘッドの外部に設けられることが前提となっている。ロータリエンコーダが外部に設けられていると、ロータリエンコーダを設置するためのブラケットや外部を通る配線を保持するための保持具等、部品点数が増加してコスト高となる。また、ロータリエンコーダから延びる配線が外部を通ることになるので、配線に何らかの部材が当たり易く、そのときの外力の影響で断線するおそれもある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストでかつ断線のおそれなく、ロータリエンコーダで正確な回転情報が得られるようにし、適切な送り制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、ロータリエンコーダをケーシング内部の電磁クラッチよりも出力軸側に設けるようにした。
【0012】
第1の発明は、モータによって回転駆動される出力軸の回転運動を直線運動に変換する変換機構を備え、当該変換機構によって変換された直線運動によって穿孔作業機を穿孔方向に自動で送る自動送り装置において、前記モータの出力が入力されるモータ側減速機と、前記モータ側減速機と前記出力軸との間に設けられる電磁クラッチと、前記電磁クラッチの出力側と前記出力軸との間に設けられる出力減速機と、前記電磁クラッチを構成している出力側の部材に固定されて当該出力側の部材と一体に回転し、前記出力側の部材を前記出力減速機に結合する結合部材と、前記モータ側減速機、前記電磁クラッチ、前記出力減速機及び前記結合部材を収容するケーシングと、前記結合部材の回転情報を取得するロータリエンコーダと、前記ロータリエンコーダの出力信号に基づいて前記穿孔作業機の送り量を算出し、予め設定された送り量となるように前記モータを制御する制御部とを備え、前記ロータリエンコーダは、前記結合部材に設けられた被検出部と、前記ケーシングの内部に配設され、前記被検出部を検出するセンサとを有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、モータが回転すると、モータの回転力がモータ側減速機を介して電磁クラッチに入力される。電磁クラッチに入力された回転力は、当該電磁クラッチの出力側の部材から結合部材を介して出力減速機に入力され、出力減速機の出力によって出力軸が回転運動する。出力軸の回転運動は変換機構によって直線運動に変換され、この直線運動によって穿孔作業機が穿孔方向に送られる。
【0014】
モータの回転によって結合部材が回転すると、その結合部材に設けられている被検出部も回転し、この被検出部がロータリエンコーダのセンサによって検出される。これにより、結合部材の回転情報が取得される。取得された回転情報はロータリエンコーダからの出力信号として制御部に入力され、ロータリエンコーダの出力信号に基づいて穿孔作業機の送り量が算出される。算出された送り量が予め設定された送り量となるようにモータが制御され、これにより、所望深さの孔を開けることができる。
【0015】
被検出部が設けられている結合部材は、電磁クラッチよりも出力軸側に位置しているので、例えば穿孔具がロックして電磁クラッチが滑ったとしても、穿孔作業機の送り量の算出は正確に行われる。よって、孔の深さが所望深さになるまで、穿孔作業機を送ることができる。
【0016】
また、被検出部が結合部材に設けられているので、取付具のような部材を別途設けなくて済み、部品点数が削減される。さらに、センサがケーシングの内部に設けられているので、外部に設ける場合のようなブラケット等が不要になり、このことによっても部品点数が削減される。従って、ロータリエンコーダを有する自動送り装置の低コスト化が図られる。
【0017】
さらに、センサがケーシングの内部に設けられていることで、配線をケーシングの内部に通すことができ、断線のおそれが無くなる。
【0018】
第2の発明は、前記被検出部は、前記結合部材の回転中心線から径方向に離れた部分に設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電磁クラッチの出力側の部材と出力減速機との結合箇所から離れた部分に被検出部を設けることができるので、被検出部が出力側の部材や出力減速機と干渉しないように配置できる。
【0020】
第3の発明は、前記被検出部は、前記結合部材の外周部に設けられ、前記センサは、前記結合部材の外周部に対向するように設けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、結合部材に設けられている被検出部とセンサとが対向する位置関係になるので、センサによって被検出部を確実に検出することができる。
【0022】
第4の発明は、前記センサは、前記ケーシングの壁部に固定されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、センサの固定に際してケーシングの壁部を利用することができるので、センサの固定構造を簡素化できる。
【0024】
第5の発明は、前記被検出部は、回転中心線と平行な方向へ突出する突出部で構成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、被検出部が結合部材の径方向へ突出しなくなるので、結合部材の径方向の寸法拡大が抑制される。
【0026】
第6の発明は、前記被検出部は、前記結合部材の外周部から前記電磁クラッチ側へ突出し、前記出力側の部材の外周面と前記ケーシングの内面との間に位置付けられていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、電磁クラッチとケーシングの内面との間の空間に被検出部を位置付けることができるので、当該空間を有効利用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電磁クラッチの出力軸側に配置される結合部材にロータリエンコーダの被検出部を設けておき、この被検出部をケーシングの内部に設けたセンサによって検出するようにしたので、低コストでかつ断線のおそれなく、ロータリエンコーダで正確な回転情報が得られるようにし、適切な送り制御を実現することにある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る自動送り装置を備えたコアドリルユニットを上方から見た斜視図である。
図2】自動送り装置の縦断面図である。
図3】自動送り装置のブロック図である。
図4】カップリングの正面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】カップリングの側面図である。
図7】変形例に係る図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る自動送り装置1を備えたコアドリルユニット100を上方から見た斜視図である。コアドリルユニット100は、自動送り装置1の他に、コアドリル101と、コアドリル101を支持する支持部材102と、支持部材102を上下方向に案内する支柱103と、支柱103の下部に設けられた基部104とを備えている。尚、この実施形態では、コアドリル101が穿孔作業機である場合について説明するが、自動送り装置1はコアドリル101以外の各種穿孔作業機を自動で送る場合に用いることができる。また、自動送りとは、作業者が送り作業を行うことなく、穿孔作業機を穿孔方向にモータ(後述する)の力で送ることである。
【0032】
コアドリル101は、例えばコンクリート構造物やアスファルトに孔を形成するための作業機であり、従来から周知のものである。すなわち、コアドリル101は、円筒状の穿孔具110と、穿孔具110を回転駆動するドリル用モータ111と、ドリル用減速機112とを備えている。ドリル用モータ111とドリル用減速機112とは一体化されており、この例では、ドリル用モータ111がドリル用減速機112の上に位置付けられている。
【0033】
また、ドリル用減速機112の出力軸112aに穿孔具110の基端部が固定されている。ドリル用モータ111の回転力がドリル用減速機112に入力された後、ドリル用減速機112から出力されて穿孔具110を回転させる。穿孔具110の先端部には、ビット110aが設けられている。穿孔作業中、回転しているビット110aが何か硬い部材に当たり、穿孔具110の回転が瞬時に止まることがある。
【0034】
支持部材102は、ドリル用減速機112を支持しており、略水平方向に延びる高剛性な部材で構成されている。一方、支柱103は、基部104から上方へ延びる角柱状をなしている。支柱103の一側面には、上下方向延びるラック4a(後述する変換機構4の一構成要素)が固定されている。ラック4aの長さは、コアドリル101の送り量に相当しており、ラック4aの長さ分だけ、コアドリル101を送ることができる。一方、ラック4aの上部の位置及び下部の位置によってコアドリル101の上昇位置と、下降位置とを設定することができる。
【0035】
基部104は板状をなしている。基部104の長手方向一端部に支柱103の下部が固定され、他端部に車輪104aが設けられている。車輪104aを接地させてコアドリルユニット100を作業者が引っ張るまたは押すことにより、当該コアドリルユニット100を搬送することができる。つまり、本実施形態のコアドリルユニット100は、作業者による搬送が可能な可搬型のコアドリルユニット100である。
【0036】
(自動送り装置1の構造)
自動送り装置1は、送り用モータ2(図2に示す)によって回転駆動される出力軸3の回転運動を直線運動に変換する変換機構4を備え、当該変換機構4によって変換された直線運動によってコアドリル100を穿孔方向に自動で送ることが可能に構成されている。変換機構4は、上記ラック4aと、出力軸3と一体に回転するピニオンギヤ4b(図1に破線で示す)とで構成されたラックアンドピニオン機構である。後述する電磁クラッチ6を断状態にすることで、コアドリル100を手動で上下させることができる。
【0037】
自動送り装置1は、送り用モータ2、出力軸3及び変換機構4の他に、モータ側減速機5と、電磁クラッチ6と、出力減速機7と、カップリング(結合部材)8と、ケーシング9とを備えている。さらに、図3に示すように、自動送り装置1は、ロータリエンコーダ20と、制御部30と、各種設定ボタン40とを備えている。
【0038】
送り用モータ2は、回転軸2aが上下方向に延びる姿勢とされてケーシング9に固定されている。送り用モータ2の回転軸2aは下方へ向けてケーシング9の内部へ突出している。送り用モータ2の下方にモータ側減速機5が配設され、このモータ側減速機5はケーシング9に収容されている。モータ側減速機5は、例えば遊星歯車減速機等の複数の歯車を有する減速機を使用することができる。モータ側減速機5による減速比は任意に設定することができる。モータ側減速機5の入力側に送り用モータ2の回転軸2aが連結されており、送り用モータ2の回転力はモータ側減速機5に入力される。
【0039】
モータ側減速機5の出力側である下方には、回転中心線が上下方向に延びる姿勢とされた継手50が設けられており、この継手50もケーシング9に収容されている。継手50を介してモータ側減速機5の出力が方向変換部51に入力される。方向変換部51は、駆動側傘歯車51aと従動側傘歯車51bとを有している。駆動側傘歯車51aは、継手50の下側に固定されており、従って、駆動側傘歯車51aの回転中心線は上下方向に延びている。一方、ケーシング9の内部には、支軸52が水平方向に延びる姿勢で配設されており、支軸52はケーシング9に対して回転自在に支持されている。支軸52には、従動側傘歯車51bが相対回動不能に取り付けられており、駆動側傘歯車51aと従動側傘歯車51bとが噛み合うように配置されている。駆動側傘歯車51aの回転中心線が上下方向に延びる一方、従動側傘歯車51bが支軸52に取り付けられていてその回転中心線が水平方向に延びているので、駆動側傘歯車51a及び従動側傘歯車51bにより、入力側の回転中心線と出力側の回転中心線とを直交する関係にすることができる。
【0040】
支軸52には、従動側傘歯車51bよりも出力軸3側に電磁クラッチ6が設けられている。電磁クラッチ6もケーシング9に収容されている。電磁クラッチ6は、従来から周知のものを用いることができ、外部からの電力供給によって接続状態になる一方、電力を遮断することで断状態になるように構成されている。電磁クラッチ6は、モータ側減速機5と出力軸3との間に設けられている。電磁クラッチ6の一構成例としては、図2に示すように、電磁石6aと、入力側部材6bと、出力側部材6cとを備えたものを挙げることができる。図3に示すように、制御部30(後述する)によって電磁クラッチ6が制御される。
【0041】
電磁石6aはケーシング9に固定されている。電磁石6aに対して制御部30から所定の電力が供給されると励磁する。入力側部材6bは支軸52に対して相対回動不能にかつ軸方向への変位が不能に取り付けられており、従って、支軸52が回転すると入力側部材6bも回転する。出力側部材6cは、磁性体で構成されており、入力側部材6bを挟んで電磁石6aと反対側、即ち出力軸3側に配置されている。出力側部材6cは、支軸52に対して相対回動可能にかつ軸方向への変位が可能に取り付けられている。
【0042】
電磁石6aが励磁すると、電磁石6aを磁力によって出力側部材6cが入力側部材6bに押し付けられる。このときに出力側部材6cと入力側部材6bとの間で発生する摩擦力により、入力側部材6bの回転力が出力側部材6cに伝達される。これが接続状態である。一方、電磁石6aの磁力が発生しない状態では、出力側部材6cが入力側部材6bに押し付けられないので、入力側部材6bの回転力が出力側部材6cに伝達されてない。これが断状態である。
【0043】
電磁クラッチ6の出力側部材6cと出力軸3との間には、出力減速機7が設けられている。出力減速機7もケーシング9に収容されている。出力減速機7は、例えば遊星歯車減速機等の複数の歯車を有する減速機を使用することができ、図示するように複数を直列に接続して使用してもよいし、図示しないが単独で使用してもよい。
【0044】
出力減速機7の出力側の回転軸7aの回転中心線は、支軸52の回転中心線の延長線上に位置している。回転軸7aは出力軸3に対して相対回動不能に取り付けられており、出力減速機7の出力によって出力軸3が回転するようになっている。
【0045】
(カップリング8の構造)
カップリング8は、電磁クラッチ6を構成している出力側部材6cに固定されて当該出力側部材6cと一体に回転し、出力側部材6cを出力減速機7の入力側に結合するための部材である。カップリング8もケーシング9に収容されている。
【0046】
カップリング8は、中心部に円形の中心孔80aを有する円板部80と、円板部80の外周部から電磁クラッチ6側へ向けて突出して周方向に延びる周壁部81とを有している。円板部80の中心孔80aには、出力減速機7から突出する入力側の回転軸7bが挿入されている。この入力側の回転軸7bは、出力減速機7の出力側の回転軸7aの延長線上に位置している。中心孔80aの内周面には図示しないがスプライン溝等の嵌合形状が設けられており、また、入力側の回転軸7bの外周面には図示しないが上記スプライン溝に嵌合する突条が設けられている。入力側の回転軸7bの突条を中心孔80aのスプライン溝に嵌合させることで、カップリング8が入力側の回転軸7bに対して相対回動不能に結合される。尚、カップリング8と入力側の回転軸7bとの結合構造は、スプライン溝以外にも例えばキー溝を形成することによる結合構造等であってもよく、両者の相対回動が不能な結合構造であればよい。
【0047】
円板部80には、中心孔80aから径方向に離れた部分に、複数のねじ孔80bが周方向に互いに間隔をあけて形成されている。一方、電磁クラッチ6の出力側部材6cには、締結部材としてのねじAが挿入されるねじ挿入孔6dが形成されている。このねじ挿入孔6dに挿入されたねじAをカップリング8のねじ孔80bに螺合させることによってカップリング8を電磁クラッチ6の出力側部材6cに対して相対回動不能に結合することができる。尚、カップリング8と出力側部材6cとの結合構造は、ねじAを用いた構造以外にも例えば凹凸嵌合、ピン嵌合による結合構造等であってもよく、両者の相対回動が不能な結合構造であればよい。また、ねじAの代わりにボルトやリベット等を用いてもよい。
【0048】
(ロータリエンコーダ20の構造)
ロータリエンコーダ20は、カップリング8の回転情報を取得するためのものである。カップリング8は、出力減速機7の入力側の回転軸7bに対して相対回動不能に結合されているので、ロータリエンコーダ20によって出力軸3の回転情報を間接的に取得できる。
【0049】
ロータリエンコーダ20は、カップリング8に設けられた被検出部20aと、ケーシング9の内部に配設され、被検出部20aを検出する光学式センサ20bとを有している。この実施形態では、被検出部20aは、カップリング8の周壁部81に設けられており、これにより、被検出部20aをカップリング8の回転中心線から径方向に離れた部分、即ち、カップリング8の外周部に設けることができる。
【0050】
被検出部20aは、カップリング8の周壁部81に形成されたスリットである。また、周壁部81自体が被検出部であってもよい。周壁部81には、複数の被検出部20aを周方向に互いに等間隔に設けてもよいし、被検出部20aを1つのみ設けてもよい。被検出部20aは、スリット以外にも、例えば光の反射率が他の部分よりも高い高反射部であってもよいし、反対に、光の反射率が他の部分よりも低い低反射部であってもよい。また、図7に示す変形例のように、被検出部200aは、カップリング8の回転中心線と平行な方向へ突出する突出部で構成されていてもよい。この変形例の被検出部200aは、カップリング8の外周部から電磁クラッチ6側へ突出し、出力側部材6cの外周面とケーシング9の内面との間に位置付けられている。これにより、出力側部材6cの外周面とケーシング9の内面との間の空間を有効に利用して被検出部200aを設けることができる。
【0051】
センサ20bは、図示しないが例えば発光ダイオード等からなる発光素子と、フォトセンサ等からなる受光素子とを備えた構造のものを用いることができる。このようなセンサ20bによる被検出部20a、200aの検出原理は従来から周知の原理を用いることができる。例えば、センサ20bの発光素子から照射された光が例えば被検出部81、200aで反射されて受光素子で受光した回数をカウントして制御部30に出力する方法や、センサ20bの発光素子から照射された光が被検出部81、200a以外の部分で透過された回数をカウントして制御部30に出力する方法等があり、いずれの検出方法であってもよい。
【0052】
センサ20bは反射型であっても透過型であってもよい。反射型の場合は図2に示すように、同一場所に発光素子と受光素子を配置すればよい。透過型の場合は、図示しないが、図2におけるセンサ20bが配置されている場所に発光素子を、カップリング8の周壁部81の内方に受光素子をそれぞれ配置すればよい。この透過型の場合、発光素子と受光素子の位置が反対であってもよい。
【0053】
図2に示すように、センサ20bは、ケーシング9の壁部9aに固定されており、カップリング8の外周部に対向するように設けられている。すなわち、ケーシング9におけるカップリング8及び電磁クラッチ6を囲む壁部9aは、カップリング8及び電磁クラッチ6に対して所定の間隔をあけて対向するように形成されている。この壁部9aの一部には、センサ20bが配設される配設孔9bが形成されている。センサ20bを配設孔9bに挿入して壁部9aに固定することができる。センサ20bの投光面及び受光面が被検出部20a、200aと対向するように配置される。センサ20bは、図示しないがねじ止めしてもよいし、接着剤のような不定形な固定材によって固定してもよい。
【0054】
センサ20bから延びる配線20cは、ケーシング9の内部に設けられており、先端は制御部30に接続されている。配線20cをケーシング9の内部に通すことができ、断線20cのおそれが無くなる。
【0055】
尚、光学式センサ20bの代わりに、例えば近接センサ等を用いて被検出部の近接状態を検出してもよく、センサ20bの種類は特に限定されるものではない。
【0056】
(制御部30の構成)
図3に示すように、制御部30には、ロータリエンコーダ20と各種設定ボタン40とが接続されるとともに、送り用モータ2及び電磁クラッチ6も接続されている。各種設定ボタン40は、送り速度や送り量等を設定するためのボタンである。制御部30は、例えば図示しないスタートスイッチが押されたことを検出すると、電磁クラッチ6に所定の電力を供給して接続状態にする。制御部30は、必要に応じて電磁クラッチ6を断状態にすることもできる。
【0057】
制御部30は、ロータリエンコーダ30の出力信号に基づいてコアドリル100の送り量を算出し、予め設定された送り量となるように送り用モータ2を制御する。すなわち、ロータリエンコーダ20によってカップリング8の回転情報として、回転角度、回転回数等を取得することができる。また、例えばカップリング8の1回転当たりにコアドリル100が送られる量は、出力減速機7及びラックアンドピニオン機構のギヤ比によって予め計算することができ、これを制御部30に記憶させておくことができる。以上の情報により、ロータリエンコーダ30の出力信号に基づいてコアドリル100の送り量を算出でき、制御部30は、予め設定された送り量になると送り用モータ2を停止させる。
【0058】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、送り用モータ2が回転すると、当該送り用モータ2の回転力がモータ側減速機5、方向変換部51を介して電磁クラッチ6に入力される。電磁クラッチ6に入力された回転力は、当該電磁クラッチ6が接続状態にあるときには、出力側部材6cからカップリング8を介して出力減速機7に入力され、出力減速機7の出力によって出力軸3が回転運動する。出力軸3の回転運動はラックアンドピニオンからなる変換機構4によって直線運動に変換され、この直線運動によってコアドリル100が穿孔方向に送られる。
【0059】
送り用モータ2の回転によってカップリング8が回転すると、そのカップリング8に設けられている被検出部20a、200aも回転し、この被検出部20a、200aがセンサ20bによって検出される。これにより、カップリング8の回転情報が取得される。取得された回転情報はロータリエンコーダ20からの出力信号として制御部30に入力され、ロータリエンコーダ20の出力信号に基づいてコアドリル100の送り量が算出される。算出された送り量が予め設定された送り量となるように送り用モータ2が制御され、これにより、所望深さの孔を自動で開けることができる。
【0060】
被検出部20a、200aが設けられているカップリング8は、電磁クラッチ6よりも出力軸3側に位置しているので、例えば穿孔具110がロックして電磁クラッチ6が滑ったとしても、コアドリル100の送り量の算出は正確に行われる。よって、孔の深さが所望深さになるまで、コアドリル100を送ることができる。
【0061】
また、被検出部20a、200aがカップリング8に設けられているので、取付具のような部材を別途設けなくて済み、部品点数が削減される。さらに、センサ20bがケーシング9の内部に設けられているので、外部に設ける場合のようなブラケット等が不要になり、このことによっても部品点数が削減される。従って、ロータリエンコーダ20を有する自動送り装置1の低コスト化が図られる。
【0062】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明に係る自動送り装置は、例えばコンクリート構造物やアスファルトに孔を開けるコアドリル等を送る場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 自動送り装置
2 送り用モータ
3 出力軸
4 変換機構
5 モータ側減速機
6 電磁クラッチ
7 出力減速機
8 カップリング(結合部材)
9 ケーシング
9a 壁部
20 ロータリエンコーダ
20a、200a 被検出部
20b センサ
30 制御部
100 コアドリル(穿孔作業機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7