(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030643
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220210BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20220210BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20220210BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/38 A
H05K3/46 G
H05K3/18 B
H05K3/18 A
H05K3/18 H
H01B13/00 503Z
H01B13/00 503D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134775
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】川合 悟
(72)【発明者】
【氏名】北原 早織
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 朗史
(72)【発明者】
【氏名】高木 美樹
【テーマコード(参考)】
5E316
5E343
5G323
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD25
5E316DD33
5E316FF02
5E316FF04
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316HH40
5E343AA02
5E343AA12
5E343AA36
5E343BB24
5E343CC73
5E343DD33
5E343DD43
5E343EE46
5E343ER01
5E343GG01
5G323AA03
5G323CA05
(57)【要約】
【課題】 ソルダーレジスト上に均一な厚みの無電解めっき層を形成する。
【解決手段】 実施形態のプリント配線板の製造方法では、樹脂絶縁層50Fを形成し、樹脂絶縁層上に導体層58Fを形成する(
図2(A))。樹脂絶縁層50Fと導体層58F上にソルダーレジスト層70Fを形成し、ソルダーレジスト層70Fの露出面にプラズマを照射する(
図2(B))。露出面に触媒を形成する(
図2(C))。露出面に触媒を介して無電解めっき層52を形成する(
図2(D))。無電解めっき層52の膜厚が0.22μm以上、0.38μm以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外の樹脂絶縁層を形成することと、
前記最外の樹脂絶縁層上に最外の導体層を形成することと、
前記最外の樹脂絶縁層と前記最外の導体層上にソルダーレジスト層を形成することと、
前記ソルダーレジスト層の露出面にプラズマを照射することと、
前記露出面に触媒を形成することと、
前記露出面に前記触媒を介して無電解めっき層を形成すること、とを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記無電解めっき層の膜厚が0.22μm以上、0.38μm以下である。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板の製造方法であって、さらに、
前記無電解めっき層上に開口を有するめっきレジストを形成することと、
前記めっきレジストの開口内に、前記無電解めっき層をシード層として電解めっきで金属ポストを形成することと、
めっきレジストを除去することと、
前記金属ポストから露出する前記無電解めっき層を除去すること、とを有する。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のプリント配線板の製造方法であって、
前記触媒の量は3.0mg/m2以上、6.0mg/m2以下である。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のプリント配線板の製造方法であって、
前記触媒はPdである。
【請求項5】
請求項1又は請求項2のプリント配線板の製造方法であって、
前記プラズマの照射は、前記触媒の形成よりも前に行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソルダーレジスト層上に無電解めっき被膜を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、樹脂絶縁層上に無電解めっきを析出させるために、パラジウム触媒を形成することを開示している。特許文献1でのパラジウム触媒の吸着量は5-1000mg/m2で、無電解めっきの膜厚は0.2-2.0μmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[発明が解決しようとする課題]
表面粗度の低いソルダーレジスト層上にめっき被膜を形成する場合、表面の凹凸形状によるアンカー効果が得られ難いため、ソルダーレジスト層へのめっき被膜の密着性は弱くなる。このときソルダーレジスト層上のめっき被膜の膜厚が厚すぎると、熱処理時に生じる応力が大きくなることにより、めっき被膜の剥離や膨れが生じ易くなると考えられる。特許文献1では、ソルダーレジスト層に適切な膜厚で密着性に優れた無電解めっき膜を形成することは困難であると推測される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、最外の樹脂絶縁層を形成することと、前記最外の樹脂絶縁層上に最外の導体層を形成することと、前記最外の樹脂絶縁層と前記最外の導体層上にソルダーレジスト層を形成することと、前記ソルダーレジスト層の露出面にプラズマを照射することと、前記露出面に触媒を形成することと、前記露出面に前記触媒を介して無電解めっき層を形成すること、とを有する。そして、前記無電解めっき層の膜厚が0.22μm以上、0.38μm以下である。
【0006】
[実施形態の効果]
本発明のプリント配線板では、無電解めっき層の膜厚が0.22μm以上であるため、めっきの未析出部分が無く、均一の膜厚で無電解めっき層が形成できる。無電解めっき層の膜厚が0.38μm以下であるため、めっき被膜中の内部応力が小さくなると考えられる。そのため、めっき被膜の剥離や膨れが生じ難くなり、ソルダーレジスト層表面への無電解めっき層の密着性が向上すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係るプリント配線板10が
図3(D)に示されている。
プリント配線板10には最外の導体層58F上に金属ポスト90が形成されている。金属ポスト90は、無電解めっき層82Fと無電解めっき層82F上の電解めっき膜84で形成されている。
【0009】
実施形態のプリント配線板10は、コア基板を有するプリント配線板であってもコアレス基板であっても良い。コア基板を有するプリント配線板やその製造方法は、例えば、JP2007227512Aに示されている。コアレス基板やその製造方法は、例えば、JP2005236244Aに示されている。
【0010】
図1(A)や
図3(D)に示されるように、実施形態のプリント配線板10は、コア基板30を有する。コア基板30は、第1面Fと、その第1面Fと反対側の第2面Sとを有する絶縁基板20と、絶縁基板20の第1面F上に形成されている第1導体層34Fと、絶縁基板20の第2面S上に形成されている第2導体層34Sとを有する。コア基板30はさらに、絶縁基板20に形成されているスルーホール導体用の貫通孔28を有する。貫通孔28はめっき膜で充填され、スルーホール導体36が形成される。スルーホール導体36は、第1導体層34Fと第2導体層34Sを接続している。コア基板30の第1面Fと絶縁基板20の第1面Fは同じ面であり、コア基板30の第2面Sと絶縁基板20の第2面Sは同じ面である。
【0011】
コア基板30の第1面F上に樹脂絶縁層(最外の樹脂絶縁層)50Fが形成されている。樹脂絶縁層50F上に導体層(最外の導体層)58Fが形成されている。導体層58Fと第1導体層34Fやスルーホール導体36は、樹脂絶縁層50Fを貫通するビア導体60Fで接続されている。樹脂絶縁層50Fと導体層58Fとビア導体60Fで上側のビルドアップ層55Fが形成されている。実施形態では、上側のビルドアップ層は1層である。
【0012】
コア基板30の第2面Sに樹脂絶縁層(最外の樹脂絶縁層)50Sが形成されている。樹脂絶縁層50S上に導体層(最外の導体層)58Sが形成されている。導体層58Sと第2導体層34Sやスルーホール導体は、樹脂絶縁層50Sを貫通するビア導体60Sで接続されている。樹脂絶縁層50Sと導体層58Sとビア導体60Sで下側のビルドアップ層55Sが形成されている。実施形態では、下側のビルドアップ層は1層である。
【0013】
上側のビルドアップ層55F上に上側のソルダーレジスト層70Fが形成され、下側のビルドアップ層55S上に下側のソルダーレジスト層70Sが形成されている。ソルダーレジスト層70Fは、パッド75Fを露出するための開口71Fを有する。パッド75F上には、開口71Fから突出する金属ポスト90が形成されている。ソルダーレジスト層70Sは、BGAパッド71SPを露出する開口71Sを有する。金属ポスト90、BGAパッド71SP上に表面処理膜が形成されても良い。表面処理膜の例は、Ni/AuやNi/Pd/Au、Pd/Au、Ni/Sn、OSPである。
【0014】
[実施形態の製造方法]
図3(D)に示される実施形態に係るプリント配線板10の製造方法が
図1~
図3に示されている。
図1(A)に示されるコア基板30が用意される。コア基板30は、第1面Fと、その第1面Fと反対側の第2面Sとを有する絶縁基板20と、絶縁基板20の第1面F上に形成されている第1導体層34Fと、絶縁基板20の第2面S上に形成されている第2導体層34Sとを有する。コア基板30はさらに、絶縁基板20に形成されているスルーホール導体用の貫通孔28を有する。貫通孔28はめっき膜で充填され、スルーホール導体36が形成される。
【0015】
コア基板30の第1面F上に樹脂絶縁層50Fが、第2面S上に樹脂絶縁層50Sが形成され、樹脂絶縁層50Fに開口51Fが、樹脂絶縁層50Sに開口51Sが形成される(
図1(B))。樹脂絶縁層50Fの表面及び開口51F内、樹脂絶縁層50Sの表面及び開口51S内に無電解めっき処理により無電解めっき層52が形成される(
図1(C))。無電解めっき層52は、例えばCuである。無電解めっき層52上にめっきレジストパターン54が形成される(
図1(D))。
【0016】
無電解めっき層52をシード層として、めっきレジストパターン54から露出する無電解めっき層52上に電解めっきにより電解めっき膜56が形成される。この際に、開口51F内にビア導体60Fが形成され、開口51S内にビア導体60Sが形成される(
図1(E))。電解めっき膜56は、例えばCuである。めっきレジストパターン54が除去され、電解めっき膜56から露出する無電解めっき層52が除去され、導体層58F、導体層58Sが形成される(
図2(A))。樹脂絶縁層50F及び導体層58F上に上側のソルダーレジスト層70Fが、樹脂絶縁層50S及び導体層58S上に下側のソルダーレジスト層70Sが形成される。下側のソルダーレジスト層70Sは、BGAパッド71SPを露出する開口71Sを有する(
図2(B))。レーザーにより、上側のソルダーレジスト層70Fにパッド75Fを露出するための開口71Fが形成される(
図2(C))。上側のソルダーレジスト層70F、下側のソルダーレジスト層70Sの表面にプラズマが照射され、表面が平均粗度Ra=0.06μm以上、0.15μm以下程度に処理される。これにより表面の濡れ性が高くなり、アンダーフィル等との密着性が高くなる。BGAパッド71SP上に表面処理膜が形成されても良い。表面処理膜の例は、Ni/AuやNi/Pd/Au、Pd/Au、Ni/Sn、OSPである。
【0017】
パラジウム触媒薬液処理により、上側のソルダーレジスト層70Fと、下側のソルダーレジスト層70Sの表面にパラジウム触媒が形成される。パラジウム触媒の吸着量は、3.0mg/m
2以上、6.0mg/m
2以下である。(
図2(D))。パラジウム触媒の吸着量は、パラジウム触媒薬液の濃度、温度、浸漬時間により調整される。
【0018】
上側のソルダーレジスト層70Fの表面、開口71Fの側壁、パッド75F上、下側のソルダーレジスト層70Sの表面、開口71Sの側壁、BGAパッド71SP上に無電解めっき処理により、膜厚が0.22μm以上、0.38μm以下の無電解めっき層82F、82Sが形成される(
図2(E))。上側のソルダーレジスト層70Fと、下側のソルダーレジスト層70Sの表面にパラジウム触媒が3.0mg/m
2以上、6.0mg/m
2以下付与され、めっき析出の核が均一に分散している。そのため、未析出部分が生じることなく、均一の厚みで、膜厚が0.22μm以上、0.38μm以下の無電解めっき層82F、82Sが形成される。無電解めっき層82F、82Sは、例えばCuである。
【0019】
無電解めっき層の膜厚が0.22μm以上であるため、めっきの未析出部分が無く、均一の膜厚で無電解めっき層が形成できる。無電解めっき層の膜厚が0.38μm以下と薄いため、めっき被膜中の内部応力が小さくなると考えられる。そのため、無電解めっき層をアニール処理で加熱した際にもめっき被膜の剥離や膨れが生じ難くなり、ソルダーレジスト層表面への無電解めっき層の密着性が向上すると考えられる。
【0020】
無電解めっき層82F上に金属ポスト形成用の開口86Aを備えるめっきレジスト86Fが形成される。無電解めっき層82S上にBGAパッド71SPを保護するめっきレジスト86Sが形成される(
図3(A))。無電解めっき層82Fをシード層として電解めっきにより電解めっき膜84から成る金属ポスト90が形成される(
図3(B))。電解めっき膜84は、例えばCuである。金属ポスト90上に保護膜が形成されても良い。保護膜の例は、Ni/AuやNi/Pd/Au、Pd/Au、Ni/Sn、OSPである。めっきレジスト86F、86Sが剥離される(
図3(C))。金属ポスト90から露出する無電解めっき層82Fと、下側のソルダーレジスト層70Sの表面、開口71Sの側壁、BGAパッド71SP上の無電解めっき層82Sが除去され、プリント配線板10が完成する(
図3(D))。
【0021】
図6はパラジウム触媒付与の模式図である。
図6(A)はパラジウム吸着量が少ない(触媒の量:3.0mg/m
2未満)場合を示している。図中で鎖線円C1で示す部位において、パラジウム触媒同士の間隔が大きいためめっき被膜が形成できず、未析出となる。
図6(B)はパラジウム吸着量が適正(触媒の量:3.0mg/m
2以上、6.0mg/m
2以下)の場合を示している。パラジウム触媒が均一に分散するため、低膜厚かつ均一なめっき被膜が形成可能である。
図6(C)はパラジウム吸着量が過剰(触媒の量:6.0mg/m
2超)の場合を示している。図中で鎖線円C2で示す部位においてパラジウム触媒が偏っている。鎖線円C2で示す部位においてめっき析出が過剰となり、めっき被膜が部分的に厚くなる。
【0022】
[実施例1]
実施形態の
図2(C)に示されるソルダーレジスト層の表面へのパラジウム触媒付与工程において、実施例1では、パラジウム触媒の吸着量が4.8mg/m
2吸着される。そして、実施形態の
図2(D)に示されるソルダーレジスト層の表面への無電解めっき層形成の工程において、実施例1では、無電解めっき層の膜厚が、最大0.284μm、最小0.232μmで形成された。
図4は無電解めっき層の平面写真である。無電解めっき層は未析出部分ができず、全体に亘って最大厚みは0.284μm、最小厚みは0.232μmで形成された。実施例1では、めっきの未析出部分が無く、ほぼ均一の膜厚(最大0.284μm、最小0.232μm)で無電解めっき層を形成できた。
【0023】
[比較例1]
実施形態の
図2(C)に示されるソルダーレジスト層の表面へのパラジウム触媒付与工程において、比較例1では、パラジウム触媒が1.7mg/m
2吸着される。そして、実施形態の
図2(D)に示されるソルダーレジスト層の表面への無電解めっき層形成の工程において、比較例1では、無電解めっき層の膜厚が、最大0.268μm、最小0μmで形成された。
図5は無電解めっき層の平面写真である。写真中で黒い部分は無電解めっき層が未析出となっているところである。比較例1では、無電解めっき層に一部未析出部分が生じ、均一の膜厚で無電解めっき層が形成できなかった。
【符号の説明】
【0024】
10 プリント配線板
70F 上側のソルダーレジスト層
82 無電解めっき層
84 電解めっき膜
90 金属ポスト