(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030679
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】自動分析装置、保冷庫およびパウチ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
G01N35/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134842
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 崇志
(72)【発明者】
【氏名】石川 清宏
(72)【発明者】
【氏名】山中 勇介
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB07
2G058BB12
2G058BB24
2G058HA01
(57)【要約】
【課題】保冷庫の密閉性の低下を抑えること、および、検体の分析に悪影響を与える成分の除去率を高めること、を同時に実現する。
【解決手段】自動分析装置に用いられる保冷庫であって、検体または試薬を収容する容器を収納可能な収納空間を有する保冷庫本体と、吸気部62とファン51と排気部83とを有し、ファン51の回転によって収納空間の空気を循環させる空気循環機器33と、を備える。空気循環機器33は、検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤を備えるパウチ93をセットするためのセット部78をさらに有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析するとともに、保冷庫を備える自動分析装置において、
前記保冷庫は、
液体を収容する容器を収納可能な収納空間を有する保冷庫本体と、
吸気部とファンと排気部とを有し、前記ファンの回転により、前記収納空間の空気を前記吸気部から吸い込むとともに、吸い込んだ空気を前記排気部から前記収納空間へ排出することにより、前記収納空間の空気を循環させる空気循環機器と、
を備え、
前記空気循環機器は、前記検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤をセットするためのセット部をさらに有し、
前記セット部は、前記吸気部および前記排気部のうち少なくとも一方に設けられている
自動分析装置。
【請求項2】
前記吸気部は、前記収納空間の上層から空気を吸い込む吸気口を有し、
前記排気部は、前記収納空間の下層へと空気を排出する排気口を有する
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記吸気口は、前記収納空間で上向きに開口しており、
前記排気口は、前記収納空間で下向きに開口している
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記空気循環機器は、前記保冷庫本体の内部に配置されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記セット部は、前記排気部に設けられている
請求項1~4のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記空気循環機器は、前記ファンを覆うカバーを有し、
前記セット部は、前記カバーの内側に設けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記カバーは、前記ファンが取り付けられる第1カバーと、前記第1カバーに対して着脱可能な第2カバーと、を有し、
前記セット部は、前記第2カバーに設けられている
請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記セット部は、前記除去剤が入れられた袋状体を収容して保持するように構成されている
請求項1~7のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記保冷庫は、前記保冷庫本体の上部開口を開閉可能であると共に、分注用孔が設けられた蓋体を備え、
前記蓋体は、前記保冷庫本体の上部開口を閉じることにより、前記分注用孔の部分を除いて前記収納空間を密閉する
請求項1~8のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記分注用孔は、前記吸気部に吸い込まれる空気の流路に臨むように形成されている
請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記保冷庫本体の収納空間を冷却する冷却部を備え、
前記排気部は、前記冷却部に向かって空気を排出する
請求項1~10のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記保冷庫の内部に一対の前記空気循環機器が配置され、
前記一対の前記空気循環機器は、前記保冷庫本体の相対向する側壁の内面に配置されている
請求項1~11のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項13】
検体を分析する自動分析装置に用いられる保冷庫であって、
液体を収容する容器を収納可能な収納空間を有する保冷庫本体と、
吸気部とファンと排気部とを有し、前記ファンの回転により、前記収納空間の空気を前記吸気部から吸い込むとともに、吸い込んだ空気を前記排気部から前記収納空間へ排出することにより、前記収納空間の空気を循環させる空気循環機器と、
を備え、
前記空気循環機器は、前記検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤をセットするためのセット部をさらに有し、
前記セット部は、前記吸気部および前記排気部のうち少なくとも一方に設けられている
保冷庫。
【請求項14】
請求項1に記載の自動分析装置が備える保冷庫、または請求項13に記載の保冷庫に用いられるとともに、空気循環機器が有するセット部にセットされるパウチであって、
検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤と、
前記除去剤を入れた袋状体と、
を備えるパウチ。
【請求項15】
前記除去剤が綿状または繊維状である
請求項14に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置、保冷庫およびパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、試料としての検体に含まれる様々な成分を迅速かつ高精度に分析する装置であり、生化学検査や輸血検査など様々な分野で用いられている。自動分析装置は、液体を収容する容器(以下、「液体容器」ともいう。)を収納する保冷庫を備えている。保冷庫は、自動分析装置で取り扱う液体が劣化しないよう、液体容器に収容した液体を保冷する。自動分析装置で取り扱う液体には、分析の対象となる検体や、検体の分析に使用する試薬などがある。
【0003】
試薬を収容する容器(以下、「試薬容器」ともいう。)を収納する保冷庫は、試薬庫(または試薬保冷庫)と呼ばれる。試薬庫に関しては、たとえば特許文献1に記載された技術が知られている。
特許文献1には、試薬容器から蒸散した試薬成分が、他の試薬容器に収容された試薬を劣化させる場合がある、という事情に鑑みて、試薬庫ケースの周壁に通気口を形成するとともに、試薬容器が載置されるラックと一体的に回転する羽根部材を設ける技術が記載されている。また、特許文献1には、試薬庫ケースの上部開口を覆う蓋体の内面に、化学物質を吸着あるいは分解するフィルターを装着する技術が記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、蒸散した試薬成分を試薬庫ケースから排出するために、試薬庫ケースの内部と外部とを連通させる通気口を保冷庫ケースの周壁に形成している。このため、通気口の存在によって試薬庫の密閉性が低下してしまう。また、特許文献1に記載された技術では、試薬庫ケースの上層に溜まった試薬成分を、羽根部材の回転によって通気口の方へ移動させているが、通気口を通して試薬成分を試薬庫ケースの外部に効率良く排出するには、試薬庫ケースの周壁に複数の通気口を設ける必要がある。このため、試薬庫の密閉性がますます低下してしまう。
また、特許文献1に記載された技術では、羽根部材の回転による空気の移動方向に対して、フィルターが垂直ではなく水平に配置されている。このため、試薬庫ケースの内部で蒸散した試薬成分の多くは、フィルターに流れ込むことなく、空気と一緒にフィルターの表面に沿って排気口の方に流れる。したがって、試薬成分をフィルターによって効率良く除去することができない。
【0006】
本発明の目的は、保冷庫の密閉性の低下を抑えること、および、検体の分析に悪影響を与える成分の除去率を高めること、を同時に実現することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検体を分析するとともに、保冷庫を備える自動分析装置において、保冷庫は、液体を収容する容器を収納可能な収納空間を有する保冷庫本体と、吸気部とファンと排気部とを有し、ファンの回転により、収納空間の空気を吸気部から吸い込むとともに、吸い込んだ空気を排気部から収納空間へ排出することにより、収納空間の空気を循環させる空気循環機器と、を備える。空気循環機器は、検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤をセットするためのセット部をさらに有する。セット部は、吸気部および排気部のうち少なくとも一方に設けられている。
【0008】
また本発明は、検体を分析する自動分析装置に用いられる保冷庫であって、液体を収容する容器を収納可能な収納空間を有する保冷庫本体と、吸気部とファンと排気部とを有し、ファンの回転により、収納空間の空気を吸気部から吸い込むとともに、吸い込んだ空気を排気部から収納空間へ排出することにより、収納空間の空気を循環させる空気循環機器と、を備える。空気循環機器は、検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤をセットするためのセット部をさらに有する。セット部は、吸気部および排気部のうち少なくとも一方に設けられている。
【0009】
また本発明は、上記の保冷庫に用いられるとともに、上記の空気循環機器が有するセット部にセットされるパウチであって、検体の分析に悪影響を与える成分を除去する除去剤と、除去剤を入れた袋状体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保冷庫の密閉性の低下を抑えること、および、検体の分析に悪影響を与える成分の除去率を高めること、を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の構成を模式的に示す概略平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る試薬庫の内部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る試薬庫の構成を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る試薬庫の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の構成を示す側面図である。
【
図7】
図5および
図6に示す空気循環機器の第1ユニットを示す斜視図である。
【
図8】
図5および
図6に示す空気循環機器の第2ユニットを示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す第2ユニットの内部を透視した斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るパウチの構成を模式的に示す概略断面図である。
【
図11】第1ユニットに対する第2ユニットの着脱作業を説明する側面図である。
【
図12】第1ユニットに対する第2ユニットの着脱作業を説明する斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の構成を示す斜視図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の内部構造を説明するための斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態において、第2カバーのセット部にパウチをセットした状態を示す斜視図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る試薬庫の構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
(自動分析装置の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の構成を模式的に示す概略平面図である。
本発明の第1実施形態においては、自動分析装置が生化学分析装置である場合を例に挙げて説明するが、本発明に係る自動分析装置は生化学分析装置以外の分析装置に適用してもよい。生化学分析装置は、血液や尿などの検体に含まれる生体成分を分析する装置である。また、本発明に係る自動分析装置は、生化学分析機能と電解質分析機能とを兼ね備えた分析装置に適用してもよい。
【0014】
図1に示す自動分析装置1は、検体を分析する装置であり、より具体的には、たとえば血液や尿などの体液成分を検体とし、糖やコレステロール、タンパク、酵素などの各種成分の測定を行う装置である。自動分析装置1は、サンプルターンテーブル2と、クーリングターンテーブル3と、サンプル分注ユニット4と、反応ターンテーブル5と、洗浄ユニット6と、第1攪拌ユニット7と、第2攪拌ユニット8と、第1試薬分注ユニット9と、第2試薬分注ユニット10と、試薬庫11と、多波長光度計(図示せず)と、を備えている。
【0015】
サンプルターンテーブル2は、上方から見て円環状に形成されている。サンプルターンテーブル2は、円周方向に回転可能に設けられている。サンプルターンテーブル2は、複数の検体容器21を収納可能に構成されている。複数の検体容器21は、サンプルターンテーブル2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、複数の検体容器21は、サンプルターンテーブル2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。検体容器21は、血液、尿、血清などの検体を収容する容器である。
【0016】
クーリングターンテーブル3は、上方から見て円環状に形成されている。クーリングターンテーブル3は、保冷機能を有する。クーリングターンテーブル3は、サンプルターンテーブル2と同様に周方向に回転可能に設けられている。クーリングターンテーブル3は、サンプルターンテーブル2と同心円状に配置されるとともに、サンプルターンテーブル2よりも内周側に配置されている。
【0017】
クーリングターンテーブル3は、複数の液体容器22を収納可能に構成されている。複数の液体容器22は、クーリングターンテーブル3の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、複数の液体容器22は、クーリングターンテーブル3の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。液体容器22は、自動分析装置1のキャリブレーションに使用する標準試薬などの液体を収容する容器である。
【0018】
なお、サンプルターンテーブル2の半径方向における複数の検体容器21の配置は、2列に限らず、1列でもよいし、3列以上でもよい。この点は、複数の液体容器22についても同様である。
【0019】
サンプル分注ユニット4は、サンプルターンテーブル2と反応ターンテーブル5との間に配置されている。サンプル分注ユニット4は、サンプルターンテーブル2にセットされた検体容器21から検体を吸引すると共に、吸引した検体を、反応ターンテーブル5にセットされた反応容器23に吐出する。また、サンプル分注ユニット4は、検体を吐出済みの反応容器23に対し、図示しないポンプによって供給される希釈液を吐出する。つまり、サンプル分注ユニット4は、1つの反応容器23に検体と希釈液を順に吐出する。
【0020】
反応ターンテーブル5は、図示しない駆動機構によって周方向に回転可能に支持されている。反応ターンテーブル5は、複数の反応容器23を収納可能に構成されている。複数の反応容器23は、反応ターンテーブル5の周方向に並べて配置されている。反応容器23には、検体容器21からサンプリングし、かつ希釈液によって希釈された希釈検体と、第1試薬容器41からサンプリングした第1試薬と、第2試薬容器42からサンプリングした第2試薬とが注入される。そして、この反応容器23において、希釈検体、第1試薬および第2試薬が攪拌され、反応が行われる。
【0021】
洗浄ユニット6は、検査が終了した反応容器23の内部を洗浄するユニットである。洗浄ユニット6は、図示しない複数の洗浄ノズルを有している。複数の洗浄ノズルは、図示しない廃液ポンプと、図示しない洗剤ポンプとに接続されている。
【0022】
洗浄ユニット6による反応容器23の洗浄工程は、次のような手順で行われる。
まず、洗浄ユニット6は、反応容器23の内部に洗浄ノズルを挿入して廃液ポンプを駆動することにより、反応容器23内に残留する希釈検体を洗浄ノズルによって吸い込む。また、洗浄ユニット6は、洗浄ノズルによって吸い込んだ希釈検体を、図示しない廃液タンクに排出する。
【0023】
次に、洗浄ユニット6は、洗剤ポンプを駆動することにより、洗浄ノズルに洗剤を供給すると共に、供給した洗剤を洗浄ノズルから反応容器23の内部に吐出する。この洗剤の吐出によって反応容器23の内部が洗浄される。その後、洗浄ユニット6は、反応容器23に残留する洗剤を洗浄ノズルによって吸引した後、反応容器23の内部を乾燥させる。以上で、反応容器23の洗浄が完了する。
【0024】
第1攪拌ユニット7は、図示しない撹拌子を有し、この撹拌子を反応容器23の内部に挿入することにより、希釈検体と第1試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と第1試薬との反応が、均一かつ迅速に行われる。
【0025】
第2攪拌ユニット8は、図示しない撹拌子を有し、この撹拌子を反応容器23の内部に挿入することにより、希釈検体と第1試薬と第2試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と第1試薬と第2試薬との反応が、均一かつ迅速に行われる。
【0026】
第1試薬分注ユニット9は、反応ターンテーブル5と第1試薬ターンテーブル31との間に配置されている。第1試薬分注ユニット9は、第1試薬ターンテーブル31にセットされた第1試薬容器41から第1試薬を吸引すると共に、吸引した第1試薬を、反応ターンテーブル5にセットされた反応容器23に吐出する。
【0027】
第2試薬分注ユニット10は、反応ターンテーブル5と第2試薬ターンテーブル32との間に配置されている。第2試薬分注ユニット10は、第2試薬ターンテーブル32にセットされた第2試薬容器42から第2試薬を吸引すると共に、吸引した第2試薬を、反応ターンテーブル5にセットされた反応容器23に吐出する。
【0028】
試薬庫11は、保冷庫の一例として自動分析装置1の一部を構成している。試薬庫11は、試薬庫本体30と、第1試薬ターンテーブル31と、第2試薬ターンテーブル32と、一対の空気循環機器33と、第1蓋体34と、第2蓋体35と、を備えている。なお、
図1において、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する3軸方向である。具体的には、X方向およびY方向は、それぞれ水平方向に平行な方向であり、Z方向は鉛直方向に平行な方向である。X方向は試薬庫11の長手方向に相当し、Y方向は試薬庫11の短手方向に相当し、Z方向は試薬庫11の高さ方向に相当する。この点は、他の図でも同様とする。
【0029】
試薬庫本体30は、保冷庫本体に相当するものである。試薬庫本体30は、上部を開口した収納空間40を有する。収納空間40は、上方から見て角丸長方形に形成されている。角丸長方形は、長さが等しい2つの平行な線分と2つの半円形の線分とをつなぎあわせた形状である。収納空間40は、第1試薬容器41および第2試薬容器42を収納可能な空間である。第1試薬容器41は、検体の分析に使用する試薬である第1試薬を収容する容器であり、図示しないキャップによって密封される口部を有する。第2試薬容器42は、検体の分析に使用する試薬である第2試薬を収容する容器であり、図示しないキャップによって密封される口部を有する。第1試薬容器41および第2試薬容器42は、いずれも口部を開けた状態、すなわちキャップを取り外した状態で収納空間40に収納される。
【0030】
第1試薬ターンテーブル31は、試薬庫本体30の長手方向の一方側(
図1の右側)に配置され、第2試薬ターンテーブル32は、試薬庫本体30の長手方向の他方側(
図1の左側)に配置されている。すなわち、第1試薬ターンテーブル31および第2試薬ターンテーブル32は、試薬庫本体30の長手方向に隣り合わせに並んで配置されている。また、第1試薬ターンテーブル31および第2試薬ターンテーブル32は、試薬庫本体30の収納空間40に配置されている。
【0031】
第1試薬ターンテーブル31は、上方から見て円環状に形成されている。第1試薬ターンテーブル31は、回転駆動部31aの駆動によって回転するテーブルである。第1試薬ターンテーブル31は、回転駆動部31aに対して着脱可能である。第1試薬ターンテーブル31は、各々の第1試薬容器41を縦向きの姿勢で保持することができるラックを有する。縦向きの姿勢とは、第1試薬容器41の口部が上向きに配置される姿勢をいう。この点は、後述する第2試薬容器42についても同様である。複数の第1試薬容器41は、第1試薬ターンテーブル31の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、複数の第1試薬容器41は、第1試薬ターンテーブル31の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。
【0032】
第2試薬ターンテーブル32は、上方から見て円環状に形成されている。第2試薬ターンテーブル32は、回転駆動部32aの駆動によって回転するテーブルである。第2試薬ターンテーブル32は、回転駆動部32aに対して着脱可能である。第2試薬ターンテーブル32は、各々の第2試薬容器42を縦向きの姿勢で保持することができるラックを有する。複数の第2試薬容器42は、第2試薬ターンテーブル32の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、複数の第2試薬容器42は、第2試薬ターンテーブル32の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。
【0033】
一対の空気循環機器33は、試薬庫11の内部に配置されている。より具体的に記述すると、一対の空気循環機器33は、上述した第1試薬ターンテーブル31および第2試薬ターンテーブル32と共に、試薬庫本体30の収納空間40に配置されている。また、一対の空気循環機器33は、
図2にも示すように、試薬庫本体30の相対向する側壁36の内面36aに配置されている。空気循環機器33は、収納空間40の空気を循環させる機器である。収納空間40の空気は、試薬庫11内の空気、あるいは試薬庫本体30内の空気と言い換えることができる。空気循環機器33の構成については後段で詳しく説明する。
【0034】
試薬庫本体30の底部には、
図3に示すように、冷却部45が敷設されている。冷却部45は、冷水などの冷媒を循環させて収納空間40を冷却するものである。試薬庫本体30の底部には床板46が取り付けられている。床板46は、試薬庫本体30の側壁36と共に収納空間40を形成している。床板46は、試薬庫本体30の底壁47との間に隙間を形成し、この隙間の部分に冷却部45が配置されている。また、冷却部45は、床板46に接触または近接して配置されている。このため、冷却部45は、床板46を介して収納空間40を冷却する仕組みになっている。この場合、床板46は、熱伝導性の高い材料で構成することが好ましい。
【0035】
冷却部45によって冷却された収納空間40の空気(冷気)は、空気循環機器33による空気の吸い込みと吐き出しによって収納空間40の内部を循環する。このため、第1試薬を収容する第1試薬容器41および第2試薬を収容する第2試薬容器42を、第1試薬ターンテーブル31および第2試薬ターンテーブル32と共に収納空間40に収納することにより、各々の容器に収容された試薬を効率良く冷やすことができる。
【0036】
なお、冷却部45は、冷媒を循環させる構成に限らず、たとえばペルチェ素子を用いた構成であってもよいし、他の構成であってもよい。すなわち、冷却部45は、収納空間40を冷却可能な構成であれば、どのような構成を採用してもよい。
【0037】
第1蓋体34および第2蓋体35は、試薬庫本体30の上部開口を開閉可能な蓋体に相当する。第1蓋体34は、試薬庫本体30が有する収納空間40のうち、第1試薬ターンテーブル31が収納される空間を開閉可能な蓋体であり、第2蓋体35は、第2試薬ターンテーブル32が収納される空間を開閉可能な蓋体である。
【0038】
図4は、本発明の第1実施形態に係る試薬庫が備える蓋体の構成を説明する斜視図である。なお、
図4においては、第2蓋体35を省略している。
図4に示すように、第1蓋体34は、フレーム部材37に取り付けられている。フレーム部材37は、試薬庫本体30の上に被せて取り付けられる部材である。フレーム部材37は、一対の張り出し部37aと、2つのヒンジ部37bとを有する。
【0039】
一対の張り出し部37aは、一対の空気循環機器33に対応してフレーム部材37に形成されている。張り出し部37aは、試薬庫本体30にフレーム部材37を取り付けた状態で、空気循環機器33の直上に配置される。すなわち、張り出し部37aは、空気循環機器33の上方を覆うようにY方向に張り出して配置される。2つのヒンジ部37bのうち、一方のヒンジ部37bは第1蓋体34を回動自在に支持する部分であり、他方のヒンジ部37bは第2蓋体35を回動自在に支持する部分である。第1蓋体34および第2蓋体35は、それぞれに対応するヒンジ部37bを支点に開閉可能に構成される。
【0040】
第1蓋体34には、2つの分注用孔38と、把持部39とが設けられている。2つの分注用孔38のうち、一方の分注用孔38は、第1試薬ターンテーブル31の外周側に配列される第1試薬容器41内の第1試薬を分注するための孔であり、他方の分注用孔38は、第1試薬ターンテーブル31の内周側に配列される第1試薬容器41内の第1試薬を分注するための孔である。これと同様に、第2蓋体35には、第2試薬ターンテーブル32における第2試薬容器42の配列に応じて、2つの分注用孔(図示せず)が設けられる。把持部39は、第1蓋体34を開閉操作するときにオペレーターが把持する部分である。把持部39は、第2蓋体35にも設けられる。第1蓋体34および第2蓋体35を共に閉じると、試薬庫本体30の上部開口は第1蓋体34および第2蓋体35によって閉じられる。これにより、試薬庫本体30の収納空間40は、分注用孔38の部分を除いて、第1蓋体34および第2蓋体35によって密閉される。分注用孔38の内径は、収納空間40全体の開口径に比べて非常に小さい。このため、第1蓋体34および第2蓋体35を閉じることにより、試薬庫本体30の内部は、外気の影響を受けない程度に実質密閉された状態になる。
【0041】
多波長光度計は、反応容器23の内部に注入され、かつ、第1試薬および第2試薬と反応した希釈検体に対して、光学的測定を行う。多波長光度計は、希釈検体の反応状態を検出するための光度計であり、希釈検体を検出(測定)対象として得られる「吸光度」という数値データを出力する。多波長光度計が出力する吸光度の数値データは、検体に含まれる様々な成分の量に応じて変化するため、この数値データから各成分の量を求めることができる。
【0042】
(空気循環機器の構成)
図5は、本発明の第1実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の構成を示す斜視図であり、
図6は、本発明の第1実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の構成を示す側面図である。また、
図7は、
図5および
図6に示す空気循環機器の第1ユニットを示す斜視図であり、
図8は、
図5および
図6に示す空気循環機器の第2ユニットを示す斜視図である。
【0043】
図5~
図8に示すように、空気循環機器33は、第1ユニット33aと第2ユニット33bとを備え、これらのユニット33a,33bの組み合わせによって構成されている。第1ユニット33aと第2ユニット33bは、互いに着脱可能に構成されている。以下、各々のユニット33a,33bについて順に説明する。
【0044】
(第1ユニット33a)
第1ユニット33aは、ファン51と、第1カバー52と、支持ブラケット53とを備えている。
【0045】
(ファン51)
ファン51は、たとえば軸流ファンによって構成される。ファン51は、
図7に示すように、支持ブラケット53と共に、複数のネジ54によって第1カバー52に取り付けられている。第1カバー52と支持ブラケット53は、一体構造になっていてもよいし、別体構造になっていてもよい。本第1実施形態においては、第1カバー52と支持ブラケット53が別体構造になっているものとする。空気循環機器に使用するファンは、一方から吸い込んだ空気を他方に送り出す機能、すなわち送風機能を有するものであれば、どのような型式、種類のファンでもよい。
【0046】
(第1カバー52)
第1カバー52は、試薬庫本体30の側壁36に固定されるカバーである。第1カバー52は、ファン51の回転中心軸線と直交する方向を径方向とすると、ファン51の径方向外側を覆っている。第1カバー52は、取り付け部55と、ファンカバー部56と、庇部57とを一体に有している。
【0047】
(取り付け部55)
取り付け部55は、空気循環機器33を試薬庫本体30の側壁36に取り付けるための部分である。取り付け部55は、空気循環機器33を正面から見て左右に対をなして配置されている。取り付け部55は、取り付け板58と、側板59と、下板60とを有している。
【0048】
取り付け板58は、上下方向に長い形状、すなわち縦長に形成されている。取り付け板58には2つの取り付け孔61が設けられている。2つの取り付け孔61は、上下方向に間隔をあけて配置されている。各々の取り付け孔61は、取り付け板58を板厚方向に貫通している。空気循環機器33を試薬庫本体30の側壁36に取り付ける場合は、各々の取り付け孔61に図示しないネジを挿入するとともに、そのネジを、あらかじめ側壁36の内面36aに設けられたネジ孔に噛み合わせて締め付ける。これにより、第1カバー52が試薬庫本体30の側壁36に固定される。
【0049】
側板59は、取り付け板58と同様に縦長に形成されている。側板59は、取り付け板58の縁部から直角に折れ曲がって形成されている。下板60は、一方の側板59の下端部と他方の側板59の下端部との間に掛け渡すように配置されている。左右の側板59と、その間に掛け渡された下板60は、空気循環機器33の吸気部62を形成している。吸気部62は、ファン51の回転中心軸方向において、ファン51と対向する位置に形成されている。吸気部62は、ファン51を回転させた場合に空気が吸い込まれる部分である。吸気部62は吸気口63を有する。吸気口63は、第1カバー52を試薬庫本体30の側壁36に取り付けた状態で形成される開口であって、ファン51の回転によって収納空間40の空気を吸気部62へと吸い込むための開口となる。吸気口63は、収納空間40の深さ方向の中間位置よりも上側(床板46から遠い側)に配置されている。吸気口63は、試薬庫本体30の収納空間40内で上向きに開口することにより、収納空間40の上層から空気を吸い込む。ここで記述する「上向き」とは、好ましくは鉛直上向きであるが、これに限らず、斜め上向きでもよい。
【0050】
なお、
図6においては、側板59の下端部59aと下板60の上面60aとの間に僅かな隙間が形成されているが、この隙間があるかどうかについては、ファン51の回転によって形成される空気の流路に大きな影響を与えない限り、どちらでもよい。つまり、側板59の下端部59aと下板60の上面60aとが密着していてもよい。
【0051】
(ファンカバー部56および庇部57)
ファンカバー部56は、ファン51の周りを囲むように配置されている。庇部57は、第1カバー52の天井部分から水平方向に突き出して配置されている。庇部57は、第1カバー52を上方から見て台形に形成されている。庇部57は、ファンカバー部56と庇部57との境界部を基端部、庇部57の先端部(突出端部)を自由端部として、上下方向に撓み変形可能な性質、すなわち可撓性を有している。また、庇部57の先端部の下面側には、図示しない係止部が設けられている。係止部は、第1ユニット33aに第2ユニット33bを装着する場合に、第2ユニット33bを係止する部分である。係止部は、たとえば、フック形状に形成される。
【0052】
(支持ブラケット53)
支持ブラケット53(
図7参照)は、第2ユニット33bを支持するカバーである。支持ブラケット53は、開口部65と、受け部66とを有している。開口部65は、支持ブラケット53を正面から見て円形に形成されている。開口部65は、ファン51の回転中心軸方向において、ファン51と対向するように配置されている。開口部65は、ファン51の吐き出し側に配置されている。支持ブラケット53には、開口部65を塞ぐようにメッシュ部材67が取り付けられている。メッシュ部材67は、ファン51の回転によって送り出される空気を通過させる機能と、後述するパウチ93(
図10参照)がファン51に接触しないように防御する機能とを有する。また、メッシュ部材67は、ファン51の回転によって送り出される空気の通過量(風量)を調整する機能を有する。なお、本第1実施形態においては、支持ブラケット53にメッシュ部材67を取り付けた構成を採用しているが、これに限らず、たとえば支持ブラケット53の一部であってファン51と対向する部分に複数の孔を設けた、いわゆるパンチングプレート構造を採用してもよい。
【0053】
受け部66は、第2ユニット33bを下から受けて支持する部分である。受け部66は、支持ブラケット53の下端部に設けられている。受け部66は、第1ユニット33aにおいて、ファン51が配置されている側を後方、その反対側を前方とすると、支持ブラケット53の下端部から前方に延出して形成されている。受け部66の延出端66a(
図6参照)は、斜め上向きに屈曲している。
【0054】
(第2ユニット33b)
第2ユニット33b(
図8参照)は、第2カバー71と、複数のリブ部材72とを備えている。第2ユニット33bは、たとえば樹脂の一体成形品によって構成することができる。また、第2ユニット33bは、第2カバー71の内側に複数のリブ部材72を固定することによって構成することもできる。
【0055】
(第2カバー71)
第2カバー71は、第1カバー52に対して着脱可能に構成されている。第2カバー71は、ファン51の回転によって発生した空気の流れを下向きに変える機能を有する。第2カバー71は、天板部73と、一対のサイドカバー部74と、フロントカバー部75とを一体に有している。天板部73、サイドカバー部74およびフロントカバー部75は、第2カバー71の内側に排気部83を形成している。排気部83は、ファン51の回転中心軸方向において、メッシュ部材67を介してファン51と対向する位置に形成されている。排気部83は、ファン51を回転させた場合に空気が排出される部分である。排気部83は排気口84を有する。排気口84は、ファン51の回転によって排気部83へと排出された空気を試薬庫本体30の収納空間40へと排出する部分である。排気口84は、収納空間40の深さ方向の中間位置よりも下側(床板46に近い側)に配置されている。排気口84は、試薬庫本体30の収納空間40内で下向きに開口することにより、収納空間40の下層へと空気を排出する。ここで記述する「下向き」とは、好ましくは鉛直下向きであるが、これに限らず、斜め下向きでもよい。
【0056】
天板部73は、第2カバー71の最上部に形成されている。天板部73は、第1カバー52の庇部57と同様に台形に形成されている。ただし、天板部73は、庇部57よりも一回り小さく形成されている。一対のサイドカバー部74は、第2カバー71を正面から見て左右に対をなして配置されている。各々のサイドカバー部74の外面には複数の突起部76が形成されている。複数の突起部76は、上下方向に所定の間隔で配置されている。各々の突起部76は、第1カバー52に第2カバー71を取り付ける場合にファンカバー部56のエッジ部分56a(
図6、
図7参照)に突き当たる。これにより、突起部76はストッパーとして機能する。フロントカバー部75は、一対のサイドカバー部74をつなぐように形成されている。フロントカバー部75の外面にはツマミ部77が形成されている。ツマミ部77は、フロントカバー部75よりも前方に突き出して配置されている。ツマミ部77は、第1ユニット33aに第2ユニット33bを取り付ける場合、あるいは第1ユニット33aから第2ユニット33bを取り外す場合に、作業者が指先でつまむ部分である。
【0057】
(リブ部材72)
複数のリブ部材72は、排気部83の空間内に位置するように第2カバー71の内側に配置されている。複数のリブ部材72は、除去剤をセットするためのセット部78を形成している。除去剤は、検体の分析に悪影響を与える成分(以下、「分析阻害成分」ともいう。)を除去するものである。除去剤については後段で詳しく説明する。リブ部材72は、
図8および
図9に示すように、板状に形成されている。リブ部材72は凹部79を有している。凹部79は、リブ部材72の上部に形成された上側突き出し部80と、リブ部材72の下部に形成された下側突き出し部81とによって凹状に形成されている。複数のリブ部材72は、第2カバー71の幅方向に所定の間隔をあけて配列されている。第2カバー71の幅方向は、第2カバー71を正面から見たときの左右方向である。リブ部材72の配列方向において、隣り合う2つのリブ部材72の間、および、端に配置されたリブ部材72とサイドカバー部74との間は、それぞれ空気の通り道になっており、ファン51の回転によって発生した空気はこの通り道を通って下向きに排出される構成になっている。
【0058】
また、上述したセット部78は、複数のリブ部材72によって排気部83に設けられている。具体的には、セット部78は、各々のリブ部材72に形成された凹部79を複数のリブ部材72の配列にしたがって配置することにより、排気部83に形成されている。セット部78は、空気循環機器33の内部を流れる空気の流路において、排出口84よりも上流側に配置されている。また、下側突き出し部81には載置部82が形成されている。載置部82は、第1ユニット33aに第2ユニット33bを装着する場合に、受け部66に載置される部分である。載置部82は、下側突き出し部81の一部を下方に突き出して形成されている。
【0059】
(除去剤および分析阻害成分)
除去剤は、空気中に存在する分析阻害成分を、たとえば吸着または分解することによって除去する。除去剤の種類や材料等は、除去したい分析阻害成分に応じて選択するとよい。分析阻害成分は、検体の分析結果として得られる測定値の精度を低下させる可能性のある成分であり、より具体的には、検体や試薬などの液体を劣化、変質等させる成分である。分析阻害成分としては、種々の成分が考えられる。たとえば、ある試薬容器から蒸散した試薬成分が、他の試薬容器に収容された試薬を劣化させる場合は、蒸散した試薬成分が分析阻害成分となる。また、酸素と反応して劣化する試薬を取り扱う場合は、酸素が分析阻害成分となる。また、空気中の水分と反応して劣化する試薬を取り扱う場合は、水分が分析阻害成分となる。また、検体に含まれるアンモニアの分析(測定)に使用される試薬を取り扱う場合は、その試薬に空気中のアンモニアが溶け込んでしまうと正確な分析結果が得られなくおそれがあるため、そのような場合は、空気中に存在するアンモニアが分析阻害成分となる。分析阻害成分については、1つに限らず、複数存在する場合がある。また、除去剤についても、この除去剤によって除去される成分は1つに限らず、複数存在する場合がある。また、除去剤は、一種類に限らず、複数の種類を混ぜてもよい。除去剤の具体例としては、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ等を挙げることができる。また、除去剤は、たとえば綿状、繊維状、粒状などのように、空気を通す性質を有するものであればよい。繊維状または綿状の除去剤は、軽量であること、高い通気性を有すること、袋の中に入れても位置がずれにくいこと、袋の形状を保ちやすいこと、取り扱いが容易であること、などの利点がある。
【0060】
なお、綿状または繊維状の除去剤については、この除去剤を袋の中に入れたときに、綿状原料同士または繊維原料同士の絡み合いによって隙間が形成されるため、この隙間を利用して空気を通すことができる。また、粒状の除去剤については、この除去剤を袋の中に入れたときに個々の粒の間に隙間が形成されるため、この隙間を利用して空気を通すことができる。粒状の除去剤は、多孔質の原料によって構成されていてもよい。
【0061】
本発明の第1実施形態においては、
図10に示すように、綿状の除去剤91を袋状体92に入れたパウチ93を採用することとした。パウチ93は、適度な厚みを有するとともに、正面から見て角丸長方形に形成されている。パウチ93の形状は、角丸長方形に限らず、セット部78の形状に合わせて任意に変更可能である。綿状の除去剤91は、綿状原料の間に空気を含んで膨らむことにより全体に柔らかで伸縮性に富む。また、綿状の除去剤91は、これを袋状体92の中に入れた場合に、袋状体92の形状を保ちつつ自在に伸縮するため、特に取り扱いが容易である。袋状体92は、通気性を有する材料、好ましくは不織布によって構成されている。ただし、袋状体92は不織布によって構成するものに限らず、たとえば、多数の通気孔が形成された樹脂製の袋(たとえばビニール袋など)、あるいは網目状の袋によって袋状体92を構成してもよい。また、空気循環機器33のセット部78に、袋状体92に代わって除去剤91を収容可能な部材、たとえば網目状のケース部材(図示せず)が設けられている場合は、除去剤91を袋状体92に入れずに直接、セット部78のケース部材にセットしてもよい。
【0062】
上述したパウチ93は、
図8および
図9に示すように、セット部78に収容して保持される。セット部78にパウチ93を収容する場合は、一対のサイドカバー部74の内側で、かつ、上側突き出し部80と下側突き出し部81との間に、パウチ93自体の伸縮性を利用してパウチ93を押し込むようにする。これにより、複数のリブ部材72は、各々のリブ部材72に形成された凹部79にパウチ93を収容して保持する。このため、セット部78にパウチ93をセットする場合は、ネジ止めや接着などの作業を行わなくても、パウチ93をセットすることができる。また、セット部78からパウチ93を取り出す場合も、ネジを取り外したり接着剤を取り除いたりしなくても、パウチ93を取り出すことができる。したがって、自動分析装置1においてパウチ93を消耗品として取り扱う場合に、パウチ93の交換作業を短時間で終えることができる。
【0063】
続いて、試薬庫本体30に空気循環機器33を取り付ける場合の手順について説明する。
まず、作業者は、試薬庫本体30の側壁36に第1ユニット33aを取り付ける。このとき、作業者は、側壁36の内面36aに形成されているネジ孔(図示せず)の位置と、一対の取り付け板58に形成されている取り付け孔61の位置とを合わせる。また、作業者は、側壁36の内面36aに一対の取り付け板58を押し付けた状態で、取り付け孔61にネジ(図示せず)を挿入するとともに、このネジをネジ孔に噛み合わせて締め付ける。これにより、試薬庫本体30の側壁36に第1ユニット33aを固定することができる。このとき、第1ユニット33aの背面側には、一対の側板59と、下板60と、側壁36の内面36aとによって囲まれた状態で、吸気部62が形成される。この吸気部62の吸気口63は、収納空間40から直接、空気を吸い込むことができるよう、収納空間40に面して配置される。また、吸気部62の吸気口63は、収納空間40内で上向きに開口した状態となる。なお、第1ユニット33aの背面側とは、側壁36の内面36aと対向する側をいう。
【0064】
次に、作業者は、
図11および
図12に示すように、第1ユニット33aに対して第2ユニット33bを傾けた状態で、支持ブラケット53の受け部66に各々のリブ部材72の載置部82を載せる。次に、作業者は、第1ユニット33aに対して第2ユニット33bの傾きが小さくなるように、第2ユニット33bをA方向に押し上げる。そうすると、第2ユニット33bを押し上げる途中で、第1カバー52の庇部57の下面に第2カバー71の天板部73の上面が接触する。この状態で第2ユニット33bを更にA方向に押し上げると、庇部57の先端側が天板部73に押されて上方に撓む。そして、第2ユニット33bを傾きなく起立させた状態では、庇部57の撓みが解放されて、庇部57の下面側に天板部73が嵌り込む。このとき、庇部57の下面側に形成されている係止部(図示せず)は、天板部73のエッジ部分73a(
図8、
図11参照)に係止される。また、第2カバー71のサイドカバー部74に形成されている複数の突起部76は、ファンカバー部56のエッジ部分56aに突き当てられる。このとき、第2ユニット33bの排気部83(
図8参照)は、メッシュ部材67(
図7参照)を介してファン51と対向する状態に配置される。また、排気部83の排気口84は、収納空間40に直接、空気を排出することができるよう、収納空間40に面して配置される。また、排気部83の排気口84は、収納空間40内で下向きに開口した状態となる。
【0065】
以上の手順により、試薬庫本体30に空気循環機器33を取り付けることができる。また、第1ユニット33aに第2ユニット33bを取り付ける前に、第2ユニット33bのセット部78にパウチ93をセットしておくことにより、
図6に示すように、空気循環機器33の内部にパウチ93を配置することができる。
【0066】
このように、試薬庫本体30の内部に空気循環機器33を配置して、第1蓋体34および第2蓋体35を閉じることにより、試薬庫本体30の収納空間40が実質的に密閉された状態になる。この状態で空気循環機器33のファン51を回転させると、ファン51による空気の吸い込みおよび吹き出しにより、収納空間40の内部で空気が循環する。このため、床板46の下に配置された冷却部45によって収納空間40の空気を冷却することにより、収納空間40の内部で冷気を循環させ、試薬庫11の庫内温度を低く保つことができる。
【0067】
また、空気循環機器33におけるファン51の吸気側では、収納空間40の上層の空気が吸気口63から吸気部62へと吸い込まれる。本実施形態においては、第1蓋体34に設けられた分注用孔38、および、第2蓋体35に設けられた分注用孔(図示せず)が、空気循環機器33の吸気部62に吸い込まれる流路に臨むように形成されている。このため、分注用孔38から収納空間40へと流れ込んだ空気に分析阻害成分が含まれている場合でも、その分析阻害成分は収納空間40に拡散することなく直ちに吸気部62へと吸い込まれる。一方、空気循環機器33におけるファン51の排気側では、ファン51によって送り出される空気が、メッシュ部材67を通過して排気部83に排出され、かつ排気口84から収納空間40の下層へと排出される。このように、空気循環機器33の吸気部62は、収納空間40の上層の吸気口63から吸い込み、空気循環機器33の排気部83は、排気口84から収納空間40の下層へと空気を排出する。
【0068】
これにより、複数の第1試薬容器41および複数の第2試薬容器42のうち、いずれかの試薬容器に収容された試薬が揮発性を有し、その試薬容器から分析阻害成分となり得る試薬成分が蒸散した場合でも、その分析阻害成分を収納空間40の上層の空気と一緒に吸気口63から吸気部62へと吸い込むことができる。そして、後述する空気循環機器33内での空気の流れにより、分析阻害成分を除去剤91によって除去することができる。この点は、分注用孔38から収納空間40へと流れ込む空気に含まれる分析阻害成分についても同様である。よって、空気循環機器33から収納空間40へと排出される空気は、分析阻害成分を除去した後の清浄な空気になる。また、空気循環機器33は、収納空間40の下層へと空気を排出する構成となっているため、特許文献1に記載された技術のように収納空間の上層で羽根部材を回転させる構成に比べて、収納空間40の上層で空気の流れに乱れが生じにくくなる。このため、試薬容器から蒸散した試薬成分が、別の試薬容器に侵入することを抑制することができる。また、空気循環機器33は、上向きに開口する吸気口63を有しているため、試薬容器から蒸散した試薬成分を、収納空間40の上層を流れる空気と一緒に吸気口63へと取り込むことができる。
【0069】
また、空気循環機器33の排気部83は、床板46の下に配置された冷却部45に向かって空気を排出する。これにより、冷却部45の存在によって結露が発生しやすい床板46の上面に清浄な空気を吹き付けることができる。このため、結露の発生や、結露に起因する微生物の発生を抑えて収納空間40内の空気を清浄に保つことができる。また、上述したように吸気口63を上向きに配置し、かつ、排気口84を下向きに配置することにより、空気流の短絡現象を抑制することができる。ここで記述する空気流の短絡現象とは、空気循環機器33から排出された空気が、すぐに空気循環機器33へと吸い込まれる現象をいう。
【0070】
また、本発明の第1実施形態においては、排気部83にセット部78が設けられ、このセット部78にパウチ93がセットされている。このため、メッシュ部材67を通過した空気は、パウチ93の内部、すなわち袋状体92に入れられた除去剤91へと流れ込む。したがって、ファン51の回転によって吸気部62に吸い込まれた空気に分析阻害成分が含まれている場合は、この分析阻害成分が空気と一緒に除去剤91へと流れ込む。また、空気に含まれる分析阻害成分は、ファン51の回転による風圧を受けながらパウチ93の内部に突入する。このため、除去剤91を入れた袋状体92の中に分析阻害成分を確実に取り込んで除去することができる。
【0071】
また、本発明の第1実施形態においては、第1ユニット33aに対して第2ユニット33bが着脱可能に構成されている。このため、除去剤91の性能低下などによってパウチ93の交換が必要になった場合に、パウチ93の交換を迅速に行うことができる。
【0072】
パウチ93の交換作業は、たとえば、下記(1)~(8)の順序で行われる。
(1)第1蓋体34および第2蓋体35を開ける。
(2)試薬庫本体30から第1試薬ターンテーブル31および第2試薬ターンテーブル32を取り外す。
(3)第1ユニット33aから第2ユニット33bを取り外す。
(4)第2ユニット33bのセット部78から使用済のパウチ93を取り出す。
(5)第2ユニット33bのセット部78に未使用(新品)のパウチ93をセットする。
(6)第1ユニット33aに第2ユニット33bを取り付ける。
(7)試薬庫本体30に第1試薬ターンテーブル31および第2試薬ターンテーブル32を取り付ける。
(8)第1蓋体34および第2蓋体35を閉じる。
なお、第1ユニット33aに対する第2ユニット33bの着脱作業を、試薬庫本体30から第1試薬ターンテーブル31と第2試薬ターンテーブル32を取り外さなくても実施可能である場合は、上記(2)および(7)の作業は不要である。また、第1ユニット33aから第2ユニット33bを取り外す場合は、
図11に示すツマミ部77をつまんで、第2ユニット33bをA方向と反対方向に引き込む。これにより、庇部57による天板部73の係止状態が解除されるため、その状態で第2ユニット33bを斜めに持ち上げることにより、第1ユニット33aから第2ユニット33bを取り外すことができる。
【0073】
以上説明したように、本発明の第1実施形態においては、収納空間40の空気を循環させる空気循環機器33の排気部83に、除去剤91を入れたパウチ93をセットするためのセット部78を設けた構成を採用している。これにより、ファン51の回転によって吸気部62へと吸い込んだ空気に分析阻害成分が含まれている場合は、その分析阻害成分が空気と一緒に除去剤91に流れ込む。このため、分析阻害成分を除去剤91によって効率良く除去することができる。また、本発明の第1実施形態においては、収納空間40の空気が空気循環機器33を通過するときに、分析阻害剤が除去剤91によって除去されるため、空気循環機器33の排気部83から排出される空気は、分析阻害成分を除去した後の清浄な空気になる。このため、試薬庫本体30の内部と外部とを連通させる通気口を試薬庫本体30の側壁36に設けなくても、収納空間40の空気を清浄な状態に保つことができる。したがって、本発明の第1実施形態によれば、試薬庫11の密閉性の低下を抑えること、および、検体の分析に悪影響を与える成分(分析阻害成分)の除去率を高めること、を同時に実現することができる。
【0074】
また、本発明の第1実施形態においては、試薬庫本体30の上部開口を第1蓋体34および第2蓋体35によって閉じることにより、分注用孔38の部分を除いて収納空間40が密閉される。このため、試薬庫本体30の外部から内部(収納空間40)への外気の流れ込みを抑制することができる。これにより、収納空間40を循環する空気は、外気の影響をほとんど受けることなく、清浄な状態に保たれる。したがって、除去剤91の性能を長期にわたって良好に維持し、パウチ93の交換頻度を下げることができる。
【0075】
また、本発明の第1実施形態においては、第1カバー52に対して第2カバー71が着脱可能に構成されるとともに、除去剤91がセットされるセット部78が第2カバー71に設けられている。このため、除去剤91の交換作業を容易に行うことができる。
【0076】
また、本発明の第1実施形態においては、除去剤91を袋状体92に入れてパウチ93を構成し、第2カバー71の内側では、各々のリブ部材72に形成された凹部79にパウチ93を収容して保持するため、除去剤91の交換をパウチ93単位で行うことができる。したがって、除去剤91の交換作業を容易に行うことができる。
なお、本第1実施形態においては、1つの空気循環機器33に1つのパウチ93をセットする構成になっているが、これに限らず、1つの空気循環機器33に複数のパウチ93をセットする構成になっていてもよい。
【0077】
また、本発明の第1実施形態において、一対の空気循環機器33は、第1試薬ターンテーブル31の相対向する側壁36の内面に配置されている。このため、各々の空気循環機器33の排気部83から排出される空気は、試薬庫11の短手方向の中央部で互いにぶつかり合い、これにともなう空気の拡散によって収納空間40全体に広がる。したがって、除去剤91で分析阻害成分を除去した後の空気、すなわち清浄な空気を収納空間40全体に行き渡らせることができる。よって、第1試薬庫および第2試薬庫を1つの広い収納空間40で形成する場合でも、収納空間40を清浄な状態に保つことができる。
【0078】
空気循環機器33の吸気部62にセット部を設けてもよい。また、空気循環機器33の吸気部62および排気部83の両方にセット部を設けてもよい。
【0079】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図13は、本発明の第2実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の構成を示す斜視図であり、
図14は、本発明の第2実施形態に係る試薬庫が備える空気循環機器の内部構造を説明するための斜視図である。本発明の第2実施形態に係る試薬庫の構成は、空気循環機器を除いて、第1実施形態の場合と同様である。
【0080】
図13および
図14に示すように、空気循環機器330は、ファン100と、第1カバー101と、第2カバー102と、を備えている。空気循環機器330の全体的な形状は、第1実施形態における空気循環機器33の全体形状と同様である。また、空気循環機器330は、上向きに開口する吸気口を有する吸気部と、下向きに開口する排気口を有する排気部とを有する点も、第1実施形態における空気循環機器33と同様である。
【0081】
ファン100は、たとえば軸流ファンによって構成される。ファン100は、図示しない複数のネジによって第1カバー101に取り付けられる。
【0082】
第1カバー101は、試薬庫本体30の側壁36に固定されるカバーである。このため、第1カバー101には、上述した取り付け部55と同様の構造を有する取り付け部105が形成されている。第1カバー101は、ファン100の径方向外側を覆っている。
【0083】
第2カバー102は、第1カバー101に対して着脱可能に構成されている。第2カバー102は、正面から見て門型に形成されている。第2カバー102の外面は、第1カバー101の外面と面一に配置されている。第2カバー102の内面側はセット部106を形成しており、このセット部106にパウチ107がセットされている。セット部106は、空気循環機器330の内部で排気部108に設けられる。パウチ107は、第1実施形態におけるパウチ93(
図10参照)と同様に除去剤を袋状体に入れて構成される。
【0084】
空気循環機器330にパウチ107をセットする場合は、第1カバー101から第2カバー102を取り外した後、
図15に示すように第2カバー102の内側、すなわちセット部106にパウチ107をセットする。このとき、パウチ107の伸縮性を利用して第2カバー102の内側にパウチ107を押し込むことにより、パウチ107の収縮による反力を利用して、セット部106にパウチ107を保持させることができる。
【0085】
次に、パウチ107をセット済みの第2カバー102を第1カバー101に取り付ける。これにより、空気循環機器330の内部において、パウチ107は、第1実施形態と同様に、ファン100と対向する状態で排気部108に配置される。
【0086】
上記構成からなる空気循環機器330を、第1実施形態における空気循環機器33に代えて、試薬庫11の収納空間40に配置した場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
<第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。
図16は、本発明の第3実施形態に係る試薬庫の構成を示す側断面図である。
図16に示す試薬庫110の構成は、第1試薬容器を収納する第1試薬庫と第2試薬容器を収納する第2試薬庫とが互いに独立(分離)している場合にも適用可能である。
試薬庫110は円筒状の試薬庫本体111を備えている。試薬庫本体111の内部には収納空間112が形成されている。収納空間112には、ターンテーブル113が配置されている。ターンテーブル113は、図示しない試薬容器を縦向きの姿勢で保持することができるラックを有する。また、試薬庫本体111の底部には、収納空間112を冷却する冷却部114が配置されている。
【0088】
空気循環機器115は、ターンテーブル113の回転中心部付近のスペースを利用して試薬庫本体111の内部、すなわち収納空間112に配置されている。収納空間112は、試薬庫本体111の上部開口を蓋体116で閉じることにより、実質的に密閉された状態となる。
【0089】
空気循環機器115は、ファン121と、ファン121を覆う筒状のカバー122とを備えている。カバー122の中心軸方向の一方(上方)には吸気部123が形成されている。吸気部123は、上向きに開口する吸気口124を有している。また、吸気部123には、段部125によってセット部126が形成され、このセット部126にパウチ127がセットされている。段部125は、カバー122の内周面から径方向内側に突き出して配置されている。パウチ127は、段部125に載置される状態でセット部126にセットされる。パウチ127は、
図10に示すパウチ93と同様の構成を有する。一方、カバー122の中心軸方向の他方(下方)には排気部128が形成されている。排気部128は、横向きに開口する排気口129を有している。
【0090】
上記構成からなる試薬庫110において、空気循環機器115のファン121を回転させると、収納空間112の上層の空気が吸気口124から吸気部123へと吸い込まれる。このとき、吸気部123に吸い込まれる空気に分析阻害成分が含まれている場合は、この分析阻害成分が空気と一緒にパウチ127に流れ込む。これにより、パウチ127を構成する除去剤によって分析阻害成分が除去される。このため、吸気部123を経由してファン121に吸い込まれる空気は、除去剤によって分析除外成分が除去された後の空気になる。したがって、ファン121の回転によって排気部128に排出され、かつ排気口129から収納空間112へと排出される空気は、清浄な空気になる。また、排気口129は、収納空間112の底部付近で開口している。このため、排気口129は、収納空間112の下層へと空気を排出する。排気口129から収納空間112の下層へと排出された空気は、その後、ターンテーブル113の配置領域へと流れ込んだ後、収納空間112の上層から吸気口124へと吸い込まれる。これにより、収納空間112の内部で空気を循環させながら、空気中に存在する分析阻害成分を除去することができる。
【0091】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件、あるいは、その構成要件の組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0092】
たとえば、上記第1実施形態においては、保冷庫の一例として、試薬容器を収納する試薬庫を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、液体容器22を収納する保冷庫、あるいは検体容器21を収納する保冷庫にも適用可能である。また、容器に収容される液体は、試薬や検体に限らず、たとえば希釈液でもよいし、その他の液体でもよい。
【0093】
また、除去剤がセットされるセット部は、空気循環機器が有する吸気部および排気部のうち、いずれか一方のみに設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0094】
また、空気循環機器は、保冷庫をコンパクトに構成するうえでは保冷庫本体の内部に配置することが好ましいが、所期の目的を達成するうえでは保冷庫本体の外部に配置してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…自動分析装置、11,110…試薬庫(保冷庫)、30,111…試薬庫本体(保冷庫本体)、33,115…空気循環機器、34…第1蓋体(蓋体)、35…第2蓋体(蓋体)、36…側壁、36a…内面、38…分注用孔、40,112…収納空間、41…第1試薬容器(容器)、42…第2試薬容器(容器)、45,114…冷却部、51,100,121…ファン、52,101…第1カバー、53…支持ブラケット、62,123…吸気部、63,124…吸気口、71,102…第2カバー、78,106,126…セット部、83,108,128…排気部、84,129…排気口、91…除去剤、92…袋状体、93,107,127…パウチ、116…蓋体、122…カバー、330…空気循環機器