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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030685
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】身体洗浄用具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 7/02 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
A47K7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134850
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】596070009
【氏名又は名称】サラックス製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】山田 康子
【テーマコード(参考)】
2D134
【Fターム(参考)】
2D134CC00
2D134CD00
(57)【要約】
【課題】泡立ち及び泡持ちが良く優れた洗浄能力を発揮すると共に、洗浄時の感触が良く使い易い身体洗浄用具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】合成繊維から成る長尺矩形状の織布10の対向する両側の長辺11近傍及び対向する両側の短辺13近傍をそれぞれ縫着することにより形成された円環面状の円環面状布2と、円環面状布2の内部に挿入されて円環面状布2を縮小保持する紐状部材3と、を具備する。このような構成により、泡立ち及び泡持ちが良く優れた洗浄能力を発揮する身体洗浄用具が得られる。また、洗浄時に使用者の皮膚に与える感触が良く、とても使い易い。また、従来のポリエチレン製のネットに比べ、引っ張り強度を高くすることができ、優れた耐久性が得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維から成る長尺矩形状の織布の対向する両側の長辺近傍及び対向する両側の短辺近傍をそれぞれ縫着することにより形成された円環面状の円環面状布と、
前記円環面状布の内部に挿入されて前記円環面状布を縮小保持する紐状部材と、を具備することを特徴とする身体洗浄用具。
【請求項2】
前記円環面状布は、前記長辺及び前記短辺が前記円環面状布の内部に位置するよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の身体洗浄用具。
【請求項3】
前記紐状部材は、弾性部材から形成され軸方向に伸縮自在であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の身体洗浄用具。
【請求項4】
前記合成繊維は、ポリアミド系樹脂から成る繊維であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の身体洗浄用具。
【請求項5】
前記織布は、平織であって、経糸が前記長辺の方向に、緯糸が前記短辺の方向に延在するよう織成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の身体洗浄用具。
【請求項6】
合成繊維から成る織布を織成して長尺矩形状に裁断する工程と、
長尺矩形状に裁断された前記織布を両側の短辺近傍の表面が対向するよう2つ折りにして前記短辺近傍を縫着する工程と、
前記短辺近傍が縫着された前記織布の対向する一方の部分を長手方向に沿って折り畳み、前記一方の部分を覆い両側の長辺近傍の両面が対向するよう他方の部分を2つ折りにして前記他方の部分の前記長辺近傍を縫着する工程と、
前記長辺近傍が縫着された前記織布の長手方向の端部から内部にある前記織布を引き出し、外側に引き出された前記織布の両側の前記長辺近傍の前記表面を対向させて、一部の開口部を残して、残りの前記長辺近傍を縫着する工程と、
前記開口部から前記表面が外側になるよう内部の前記織布を引き出して円環面状の形態を成す円環面状布を形成する工程と、
前記開口部から前記円環面状布の内部に紐状部材を挿入して前記円環面状布を縮小するよう前記紐状部材を取り付ける工程と、を具備することを特徴とする身体洗浄用具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を洗浄するために用いられる身体洗浄用具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体を洗浄する身体洗浄用具として、合成樹脂製のネット材から形成された洗浄用具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエチレン製の筒状網材をその長手方向に押し縮めてなる環状体の環の対峙する2箇所をそれぞれ紐材で環の胴部を絞るように縛り、その状態で環状体に対する押し縮め力を解いて復元力により上記環状体を略球状に形成した洗浄用具が開示されている。筒状網材の網目は、ポリエチレン製の糸材を熱融着することにより略菱形に形成されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、ポリエチレン製のネットから形成された球状のボール体と、同じくポリエチレン製のネットから形成されたフリル体と、から構成された身体洗浄具が開示されている。
【0005】
同文献に開示されたボール体は、ポリエチレン製のネットで成形される蛇腹形状の筒体を軸方向に沿って縮めて折り重ねることにより構成されるリングの両端部をそれぞれ緊締することにより形成されている。フリル体は、上記と同様に構成されたリングを径方向に緊締することにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-316743号公報
【特許文献2】実用新案登録第3194457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術の身体洗浄用具は、洗浄性能を高めると共に使用感を向上させるために改善すべき点があった。
【0008】
具体的には、ポリエチレン製のネット材から形成された洗浄用具は、旧来の布製タオルと比べれば洗剤の泡立ちが良かった。しかし、洗浄性能を高めると共に、泡の感触を良くするために、更に泡立ち及び泡持ちの良い身体洗浄用具が求められていた。
【0009】
また、熱融着によって形成されたポリエチレン製のネット材は、使用者の皮膚を擦る身体洗浄用具としては、やや硬く、使用時の肌に触れる感触、即ち風合い、が良くないという問題点があった。
【0010】
使用時の感触を良くするためにポリエチレン製のネットの糸材部分を細くすると、糸材部分の切れや熱融着部分の剥離が生じ、ネットの菱形状が崩れてしまう恐れがある。
【0011】
また、泡立ちを良くするために大きな球形状に構成された身体洗浄用具は、手指を洗浄する際等においては、指と指の間等の狭小箇所への挿入が難しい。そのため、例えば、ウイルスや細菌等を洗い流するために手指を洗浄する際、指間腔の付着したウイルス等の除去が難しいという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、泡立ち及び泡持ちが良く優れた洗浄能力を発揮すると共に、洗浄時の感触が良く使い易い身体洗浄用具及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の身体洗浄用具は、合成繊維から成る長尺矩形状の織布の対向する両側の長辺近傍及び対向する両側の短辺近傍をそれぞれ縫着することにより形成された円環面状の円環面状布と、前記円環面状布の内部に挿入されて前記円環面状布を縮小保持する紐状部材と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の身体洗浄用具の製造方法は、合成繊維から成る織布を織成して長尺矩形状に裁断する工程と、長尺矩形状に裁断された前記織布を両側の短辺近傍の表面が対向するよう2つ折りにして前記短辺近傍を縫着する工程と、前記短辺近傍が縫着された前記織布の対向する一方の部分を長手方向に沿って折り畳み、前記一方の部分を覆い両側の長辺近傍の両面が対向するよう他方の部分を2つ折りにして前記他方の部分の前記長辺近傍を縫着する工程と、前記長辺近傍が縫着された前記織布の長手方向の端部から内部にある前記織布を引き出し、外側に引き出された前記織布の両側の前記長辺近傍の前記表面を対向させて、一部の開口部を残して、残りの前記長辺近傍を縫着する工程と、前記開口部から前記表面が外側になるよう内部の前記織布を引き出して円環面状の形態を成す円環面状布を形成する工程と、前記開口部から前記円環面状布の内部に紐状部材を挿入して前記円環面状布を縮小するよう前記紐状部材を取り付ける工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の身体洗浄用具によれば、合成繊維から成る長尺矩形状の織布の対向する両側の長辺近傍及び対向する両側の短辺近傍をそれぞれ縫着することにより略円環面状の円環面状布が形成されている。そして、円環面状布は、その内部に紐状部材が挿入されて、紐状部材によって中央部側に略ギャザー状に縮小保持されている。このような構成により、泡立ち及び泡持ちが良く優れた洗浄能力を発揮する身体洗浄用具が得られる。また、本発明の身体洗浄用具は、洗浄時に使用者の皮膚に与える感触が良く、とても使い易い。また、従来のポリエチレン製のネットに比べ、引っ張り強度を高くすることができ、優れた耐久性が得られる。
【0016】
また、本発明の身体洗浄用具によれば、前記円環面状布は、前記長辺及び前記短辺が前記円環面状布の内部に位置するよう形成されても良い。これにより、織布の周囲辺部の糸材の端部が円環面状布の外部に露出しないので、使用時に糸材の端部が使用者の皮膚に当たることがない。よって、使用者の皮膚が糸材の端部で擦られて傷つくことがなく、優れた感触が得られる。
【0017】
また、本発明の身体洗浄用具によれば、前記紐状部材は、弾性部材から形成され軸方向に伸縮自在であっても良い。これにより、使用者は、円環面状布の中央部を広げて指等を挿入することができる。よって、手指洗いの際に、身体洗浄用具の中央部に指を挿入して、指と指の間を綺麗に洗浄することができる。例えば、ウイルス感染症対策としての手指洗いでは、指の間に付着したウイルス等を効率的に洗い流すことができるので、感染予防の優れた効果が期待できる。
【0018】
また、本発明の身体洗浄用具によれば、前記合成繊維は、ポリアミド系樹脂から成る繊維であっても良い。これにより、身体の洗浄に適した繊維性能によって優れた洗浄性能及び風合いが得られる。
【0019】
また、本発明の身体洗浄用具によれば、前記織布は、平織であって、経糸が前記長辺の方向に、緯糸が前記短辺の方向に延在するよう織成されていても良い。これにより円環面状布は、径方向へ伸縮自在となり、肌に触れる感触が好適となる。また、製造が容易になり生産性が向上するという利点もある。
【0020】
また、本発明の身体洗浄用具の製造方法によれば、合成繊維から成る織布を織成して長尺矩形状に裁断する工程と、長尺矩形状に裁断された前記織布を両側の短辺近傍の表面が対向するよう2つ折りにして前記短辺近傍を縫着する工程と、前記短辺近傍が縫着された前記織布の対向する一方の部分を長手方向に沿って折り畳み、前記一方の部分を覆い両側の長辺近傍の両面が対向するよう他方の部分を2つ折りにして前記他方の部分の前記長辺近傍を縫着する工程と、前記長辺近傍が縫着された前記織布の長手方向の端部から内部にある前記織布を引き出し、外側に引き出された前記織布の両側の前記長辺近傍の前記表面を対向させて、一部の開口部を残して、残りの前記長辺近傍を縫着する工程と、前記開口部から前記表面が外側になるよう内部の前記織布を引き出して円環面状の形態を成す円環面状布を形成する工程と、前記開口部から前記円環面状布の内部に紐状部材を挿入して前記円環面状布を縮小するよう前記紐状部材を取り付ける工程と、を具備する。これにより、合成繊維から成る織布から形成された円環面状布を有し、織布の周囲辺部が円環面状布の内部に位置して手触りが良く、且つ、泡立ち及び泡持ちが良くて優れた洗浄能力を発揮する身体洗浄用具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の概略を示す透視図である。
図2】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の円環面状布を広げた状態を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の円環面状布の織布を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の円環面状布の織布の短辺近傍を縫着する工程を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の円環面状布の織布の(A)上方部分を折り返す工程、(B)下方部分を折り返して長辺近傍を縫着する工程、(C)長辺近傍を更に縫着する工程、を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の円環面状布の織布の(A)長辺近傍を縫着する工程、(B)開口部から引き出して裏返す工程、を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る身体洗浄用具の円環面状布に掛け紐を縫着する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る身体洗浄用具を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る身体洗浄用具1の概略を示す透視図である。
図1を参照して、身体洗浄用具1は、身体等を洗浄するために用いられる洗浄用具であり、特に、手指の洗浄に適している。
【0023】
身体洗浄用具1は、合成繊維から成る織布10から構成された略円環面状の形態を成す円環面状布2と、円環面状布2の内部に設けられた紐状部材3と、円環面状布2の外側に設けられた掛け紐4と、を有する。
使用者は、一方の手で身体洗浄用具1の円環面状布2を把持し、例えば、他方の手のひら、甲、指、指間腔等に円環面状布2を当てて、手指を洗浄する。
【0024】
図2は、円環面状布2を広げた状態を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、円環面状布2は、略円環面状、即ち略トーラス状に形成されている。詳細については後述するが、円環面状布2は、略長尺矩形状に織成された織布10の対向する両側の長辺11近傍、及び、対向する両側の短辺13近傍を、それぞれ縫着することにより形成されている。
【0025】
詳しくは、織布10の両側の長辺11近傍が縫着され、円環面状布2の周方向に延在する略環状の長辺縫着部12が形成されている。また、織布10の両側の短辺13近傍が縫着され、円環面状布2の径方向、即ち略円筒形状の部分の周方向、に延在する短辺縫着部14が形成されている。
【0026】
円環面状布2は、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン)から成る繊維から織成された織布10から構成されている。これにより、身体の洗浄に適した繊維性能によって、泡立ちの良い優れた洗浄性能及び風合いが得られる。
【0027】
紐状部材3は、円環面状布2の内部に設けられ、図1に示す如く円環面状布2を縮小して保持する部材である。即ち、円環面状布2は、紐状部材3によって中央部22側に略ギャザー状に縮小され保持されている。紐状部材3は、例えば、ゴム紐等の弾性紐であり、伸縮自在である。
【0028】
図1を参照して、紐状部材3が伸縮自在であるので、円環面状布2は、その中央部22を広げることが可能である。これにより、使用者は、円環面状布2の中央部22を広げて指等を挿入することができる。よって、手指洗いの際に、身体洗浄用具1の中央部22に指を挿入して、指と指の間を綺麗に洗浄することができる。
【0029】
身体洗浄用具1は、例えば、ウイルス感染症対策に対する優れた効果が期待でき、ウイルス感染対策の手指洗いでは、指の間に付着したウイルス等を効率的に洗い流すことができる。
【0030】
掛け紐4は、合繊繊維等から成る平紐状、即ちリボン状、のストラップ等であり、身体洗浄用具1を、例えば、洗面所、浴室、台所等に吊り下げるための部材である。掛け紐4が設けられていることにより、身体洗浄用具1を使用箇所近傍に吊り下げることができるので便利である。
【0031】
図3は、身体洗浄用具1の円環面状布2の素材としての織布10を示す平面図である。
図1ないし図3を参照して、円環面状布2は、長辺11及び短辺13が円環面状布2の内部に位置するよう形成されている。
【0032】
つまり、織布10の周囲辺部、具体的には長辺11及び短辺13、の糸材の端部は、円環面状布2の外部に露出していない。このような構成により、使用時に糸材の端部が使用者の皮膚に接触することがない。よって、使用者の皮膚が糸材の端部で擦られて傷つくことがなく、優れた感触が得られる。
【0033】
図3を参照して、織布10は、平織である。織布10は、経糸16が長手方向、即ち長辺11の方向に、緯糸17が短手方向、即ち短辺13の方向に、延在するよう織成されている。
【0034】
換言すれば、図2を参照して、織布10の経糸16は、円環面状布2の周方向に、緯糸17は、円環面状布2の径方向に、延在する。このような構成により、円環面状布2は、径方向へ伸縮自在となり、肌に触れる感触が好適となる。
【0035】
また、織布10の経糸16と緯糸17が上記の方向であることにより、円環面状布2の製造が容易になり生産性が向上するという利点もある。詳しくは、織布10を所定形状にするため効率良くカットすることができる。また、後述する織布10を裏返す工程(図6(B)参照)についても作業効率が向上する。
【0036】
織布10の経糸16は、例えば、1本の長繊維、即ちフィラメント、から成るモノフィラメント糸であり、その太さは、20~50デニール、好ましくは、20~40デニール、最も好ましくは、30デニールである。
【0037】
緯糸17は、例えば、複数の長繊維から成るマルチフィラメント糸である。緯糸17は、太さの異なる複数種類、例えば、2~3種類、のマルチフィラメント糸が用いられても良い。
【0038】
例えば、緯糸17は、複数種類のマルチフィラメント糸から構成され、少なくとも1種類の糸は、太さが350~500デニール、フィラメント数が60~86フィラメント、の極細繊維から成るマルチフィラメント糸であることが望ましい。
【0039】
更に好ましくは、緯糸17は、380~460デニール、64~80フィラメント、最も好ましくは、400~440デニール、68~76フィラメント、のマルチフィラメント糸を有する。
緯糸17として上記の極細繊維から成るマルチフィラメント糸が含まれることにより、従来技術の洗浄用具にはない、身体洗浄に適したソフトな肌触り感が得られる。
【0040】
また、緯糸17は、上述の極細繊維からなるマルチフィラメント糸に組み合わされる糸として、太さが250~450デニール、フィラメント数が8~20フィラメント、好ましくは、280~340デニール、10~18フィラメント、更に好ましくは、300~320デニール、10~16フィラメント、のマルチフィラメント糸を有する。
【0041】
詳しくは、織布10の経糸16として、ポリアミド系樹脂のみから形成される30デニールのモノフィラメント糸が用いられ、緯糸17として、それぞれポリアミド系樹脂のみから形成される420デニール、72フィラメントのマルチフィラメント糸と、300デニール、10フィラメントのマルチフィラメント糸と、320デニール、16フィラメントのマルチフィラメント糸と、が組み合わされて用いられても良い。
【0042】
このような経糸16及び緯糸17が用いられることにより、泡立ちが良く、また、微細な気泡を多数包含することができるので、泡持ちも優れている。また、身体の洗浄に適した硬さにより、優れた摩擦効果が得られると共に、肌触りも優れている。また、身体洗浄に適した強度が得られ、耐久性についても優れている。
【0043】
次に、図1ないし図7を参照して、身体洗浄用具1の製造方法について詳細に説明する。
先ず、身体洗浄用具1の素材である織布10を製造する工程が実行される。織布10を製造する工程では、前述のとおり、例えば、ポリアミド系樹脂の合成繊維から平織により織布10の生地が織成される。
【0044】
そして、図3に示すように、織布10は、略長尺矩形状に裁断される。経糸16は長手方向に延在し、緯糸17は短手方向に延在する。これにより、前述のとおり、効率の良い製造作業ができる。
【0045】
図4は、身体洗浄用具1の製造工程を示す図であり、織布10の短辺13近傍を縫着する工程を模式的に示している。
図4に示すように、略長尺矩形状に裁断された織布10は、両側の短辺13近傍の表面18が対向するよう、2つ折りにされる。即ち、織布10は、長手方向の略中央部を中心として約180度折り返される。
【0046】
そして、重ねられた短辺13近傍は、例えば、ロックミシン等を利用して、短辺13に沿って縫着される。具体的には、表面18が当接する両側の短辺13近傍が縫着され、短辺縫着部14が形成される。これにより織布10は、略環状の形態になる。
【0047】
次に、織布10を折り返して長辺11近傍を縫着する工程が実行される。
図5(A)は、織布10の上方部分20を折り返す工程を示す図であり、図5(B)は、下方部分21を折り返して長辺11近傍を縫着する工程を示す図であり、図5(C)は、長辺11近傍を更に縫着する工程を示す図である。
【0048】
短辺縫着部14が形成された織布10は、図5(A)に示すように、織布10の表面18を対向させた状態で、対向する一方の部分、即ち図5(A)において正面側の部分である上方部分20が折り畳まれる。具体的には、上方部分20は、長手方向に沿って、例えば、3つ折りにされる。
【0049】
次いで、上方部分20に対向する他方の部分としての下方部分21、詳しくは図5(A)において背面側にある下方部分21が、図5(B)に示すように、折り返される。即ち、下方部分21は、折り畳まれている上方部分20を覆うように、そして、下方部分21の両側の長辺11近傍の表面18を当接させるよう、2つ折りにされる。
【0050】
このように下方部分21が上方部分20に被せられた状態で、下方部分21の対向する両側の長辺11近傍が縫着され、長辺11に沿って長辺縫着部12が形成される。これにより、織布10は、下方部分21が略筒状の形態に形成され、下方部分21の内部には、折り畳まれている上方部分20が存在することになる。
【0051】
図5(C)に示すように、長辺11近傍の縫着を進めて長辺縫着部12を更に形成する工程が続けて行われる。
詳しくは、長手方向の一方の端部、即ち図5(C)において右側の端部、から内部にある上方部分20が引き出される。これと同時に、図5(C)において左側にある長手方向の他方の端部からは、外側にある、長辺11近傍が縫着された下方部分21が内部に引き込まれる。
【0052】
一方の端部から外側に引き出された織布10に対して、両側の長辺11近傍の表面18を対向させて、長辺11近傍が引き続き縫着される。上記の織布10を引き出して長辺11近傍を縫着する工程を繰り返し、残りの長辺11近傍が縫着される。これにより、長辺11に沿って連続する長辺縫着部12が形成される。
【0053】
図6(A)は、織布10の長辺11近傍を更に縫着する工程を示す図であり、図6(B)は、織布10を開口部15から引き出して裏返す工程を示す図である。
図6(A)に示すように、上述の長辺11近傍を縫着する工程は、一部分に縫着されていない開口部15を残して完了する。即ち、長辺11近傍には、一部分に長辺縫着部12が形成されていない開口部15が残されている。
【0054】
なお、図示を省略するが、開口部15の周縁部やその他織布10の周縁部等には、ほつれ防止のために、例えば、ロックミシン等を利用して、かがり縫い等が縫製されていても良い。これにより、周縁部のほつれが防止され耐久性が向上する。
【0055】
図6(B)に示すように、開口部15からは、内部の織布10が外側に引き出される。なお、前述のとおり、織布10は径糸16方向に引き出されるので、その作業は容易である。このように内部の織布10が開口部15から外側に引き出されることにより、織布10は、図2に示す如く、略円環面状の形態になる。即ち、円環面状布2が形成される。
【0056】
開口部15から織布10が引き出され円環面状布2が形成されると、図6(B)を参照して、織布10の表面18と裏面19とが引っ繰り返され、表面18が外側になる。そして、図2に示すように、織布10の長辺11及び短辺13は、円環面状布2の内部に隠れることになる。これにより、糸材の端部が使用者の皮膚に接触することがなくなり、使用者の皮膚が傷つくことが抑制される。そして、好適な肌触りが得られる。
【0057】
図7は、円環面状布2に紐状部材3を挿入して引き締める工程を示す図である。
図7に示すように、開口部15から円環面状布2の内部に紐状部材3が挿入される。詳しくは、紐状部材3は、その一端が開口部15から挿入され、円環面状布2の内部を略円筒形状の部分に沿って一周し、再び開口部15から外側に出される。そして、紐状部材3は、両端を持って引き締められる。
【0058】
円環面状布2は、紐状部材3によって引き締められて縮小する。即ち、織布10は、略円筒形状の部分が略ギャザー状に短くなり、図1に示す如く中央部22が閉じた状態になる。なお、前述のとおり、紐状部材3は伸縮性を有する弾性紐等であるので、使用時には中央部22を開くことができる。これにより、使用者は、中央部22に手の指等を挿入して清潔に洗浄することができる。
【0059】
次に、図1を参照して、円環面状布2の織布10に掛け紐4を縫着する工程が行われる。掛け紐4は、身体洗浄用具1を洗面所近傍等に吊り下げるため等に利用されるものである。これにより、円環面状布2の取り扱いが容易になる。
【0060】
以上説明の工程により、合成繊維から成る織布10から形成された円環面状布2を有する身体洗浄用具1が得られる。身体洗浄用具1は、泡立ち及び泡持ちが良く優れた洗浄能力を発揮する。また、身体洗浄用具1は、好適な硬さであって、織布10の周囲辺部が円環面状布2の内部に位置するので手触りが良く、とても使い易い。また、身体洗浄用具1は、従来のポリエチレン製のネットに比べ、引っ張り強度を高くすることができ、優れた耐久性が得られる。
【0061】
また、身体洗浄用具1は、身体洗浄の他にも、洗面台、浴室、トイレ、食器類等を洗浄するために用いられても良い。即ち、本発明は、身体等以外を洗浄するための洗浄用具を含むものとする。
【0062】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 身体洗浄用具
2 円環面状布
3 紐状部材
4 掛け紐
10 織布
11 長辺
12 長辺縫着部
13 短辺
14 短辺縫着部
15 開口部
16 経糸
17 緯糸
18 表面
19 裏面
20 上方部分
21 下方部分
22 中央部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7