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特開2022-30702永続的マイグレーションが可能な放送信号の送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030702
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】永続的マイグレーションが可能な放送信号の送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/238 20110101AFI20220210BHJP
   H04H 20/28 20080101ALI20220210BHJP
   H04H 40/18 20080101ALI20220210BHJP
【FI】
H04N21/238
H04H20/28
H04H40/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134878
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】509137087
【氏名又は名称】株式会社TBSテレビ
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】特許業務法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】今村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】穴澤 毅
(72)【発明者】
【氏名】岡田 寛正
(72)【発明者】
【氏名】森 享宏
(72)【発明者】
【氏名】深澤 知巳
(72)【発明者】
【氏名】高林 徹
(72)【発明者】
【氏名】本間 康文
(72)【発明者】
【氏名】柴田 豊
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164SA41S
5C164SB21P
5C164TA04S
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現行放送を継続しつつ、次世代放送のサービスエリアを広げ、早期に次世代放送を視聴したい視聴者の要望に応える放送信号の放送方法を提供する。
【解決手段】放送信号の送信方法は、送信所Tから第1放送信号及び第2放送信号を送信する方法であって、複数のセグメントに分かれた放送信号を、高出力階層14と低出力階層15に分け、高出力階層14の一部のセグメントで第1放送信号1を送信し、高出力階層の残りのセグメントで第2放送信号の一部である高出力第2放送信号9aを送信する。次世代放送への移行は、第1放送信号1のセグメント数を減らして高出力第2放送信号9aに変更する。増加した高出力第2放送信号9aと同じセグメントの低出力階層15のセグメントを削除する。
【効果】これで全体として第2放送信号2の伝送容量が増加し、次世代信号を受信可能なエリアが広がる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放送チャンネル毎に特定の周波数帯域が割り当てられ、前記複数の放送チャンネルの内の1の放送チャンネルにおいて放送用の信号を送信する方法において、
前記1の放送チャンネルに割り当てられた周波数帯域で送信される放送信号を、複数の周波数帯域に分割した複数のセグメントとすると共に、高出力階層と、前記高出力階層と分離可能な低い出力の低出力階層に分け、
第1放送信号を第1サービスエリアに送信し、前記第1放送信号とは異なる方式の第2放送信号を第2サービスエリアに同時に送信する送信方法であって、
前記高出力階層の一部のセグメントで前記第1放送信号を送信し、
前記高出力階層の残りのセグメントで前記第2放送信号の一部である高出力第2放送信号を送信し、
前記低出力階層で前記第2放送信号の残りの放送信号である低出力第2放送信号を送信することを特徴とする放送信号の送信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放送信号の送信方法であって、
前記高出力第2放送信号が割り当てられたセグメントと同じ周波数帯域の前記低出力階層のセグメントでは前記低出力第2放送信号を送信せず、
前記高出力第2放送信号の必要とする搬送波対雑音比を前記低出力階層の領域まで増加することで伝送容量を増加させることを特徴とする放送信号の送信方法。
【請求項3】
請求項1に記載の放送信号の送信方法であって、
前記高出力第2放送信号が割り当てられたセグメントと同じ周波数帯域の前記低出力階層のセグメントで前記低出力第2放送信号を送信し、
前記高出力第2放送信号の必要とする搬送波対雑音比を、前記同じ周波数帯域の前記低出力階層のセグメントで送信される前記低出力第2放送信号と分離可能な値とすることを特徴とする放送信号の送信方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の放送信号の送信方法であって、
前記第2放送信号は、放送信号として視聴可能な信号であるベース信号と、前記ベース信号を補強する補強信号とを備え、
前記高出力第2放送信号に前記ベース信号又は前記補強信号の一方の信号を割り当て、前記低出力第2放送信号に前記ベース信号又は前記補強信号の他方の信号を割り当ててなることを特徴とする放送信号の送信方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の放送信号の送信方法を用いて、現行放送から次世代放送に移行する際に、円滑な移行を可能とする送信移行方法であって、
前記第1放送信号が現行放送信号であり、前記第2放送信号が次世代放送信号であり、
第1段階として、前記高出力階層において、周波数帯域の両端の1セグメントに高出力第2放送信号を割り当て、その他の前記高出力階層のセグメントに前記第1放送信号を割り当て、前記低出力階層において、前記低出力第2放送信号を割り当て、
第2段階として、前記第1放送信号に割り当てられたセグメントを1又は複数減少させ、当該減少させたセグメント数の前記高出力第2放送信号のセグメントを増加させることを特徴とする放送信号の送信移行方法。
【請求項6】
請求項5に記載の放送信号の送信移行方法であって、
前記第2段階において、前記高出力階層における放送信号の変調方式を調整して搬送波対雑音比を減らし、前記低出力階層の出力を上昇させることを特徴とする放送信号の送信移行方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の放送信号の送信移行方法であって、
前記第2段階において、前記第1放送信号の前記変調方式のうち、多値度又は符号化率の一方又は双方を変更して、第1サービスエリアの減少を防止することを特徴とする放送信号の送信移行方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に地上デジタル放送において、現行放送から次世代放送に移行(マイグレーション)する際に、円滑な移行を可能とする放送信号の送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる地上デジタル放送から4K放送、又は8K放送等の次世代放送に移行する際の放送信号の送信方法について、本願発明者等は、放送信号を出力レベルで分けた上で重畳して送信する方法について提案している。具体的には、放送信号をLDM(Layer Division Multiplexing)方式と呼ばれる方式を利用して、地上デジタル放送(現行放送)と4K放送又は8K放送(次世代放送)を同一の周波数帯で送信する方法を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の方法により、放送局側は新たにチャンネル数を増やすことなく、現行放送と次世代放送を同時に送信することを可能にしている。また、受像機側も、現行放送用の受像機の場合はそのまま現行放送を受信することができ、次世代放送用の受像機の場合は即座に次世代放送を受信することができる。
【0004】
また、本願発明者等は、現行放送が行われている期間であっても、次世代放送用の受像機を購入した視聴者の早期に次世代放送を視聴したいとの要望に対応するために、新たな放送信号の放送方法について提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-067825号公報
【特許文献2】特開2020-17843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2における放送信号の送信方法では、放送チャンネルに割り当てられた周波数帯域で送信される放送信号を第1出力レベルと、これよりも出力が低い第2出力レベルに分けている。そして、第1出力レベルで第1サービスエリアに現行放送である第1放送信号を送信し、第2出力レベルで次世代放送である第2サービスエリアに第2放送信号を送信している。
【0007】
当該送信方法においては、いわゆる地上デジタル放送である現行放送と、いわゆる4K放送或いは8K放送という次世代放送を同時に行う初期放送段階から、次世代放送の第2サービスエリアを広げる第2段階放送を行っている。その際、第1出力レベルと第2出力レベルのレベル差を減少させて第2レベル差とし、この第2レベル差を保った状態で第2サービスエリアを広げることを行っている。
【0008】
当該送信方法により、現行放送を行いながら、次世代の放送信号のサービスエリアである第2サービスエリアを広げ、次世代放送が受信可能な受像機を購入した者が早期に次世代放送を受信できるようにしている。
【0009】
上記送信方法によって、次世代の放送信号を受信できる第2サービスエリアを広げることができたが、次世代放送への期待が高まる中、さらにこの第2サービスエリアを広範囲に広げることが望まれている。
【0010】
本発明は、現行放送を行いながら、次世代放送も同時に行う放送信号の放送方法の改良を目的とし、さらに詳細には、次世代放送が受信可能なサービスエリアをさらに広げることができる放送信号の放送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放送信号の送信方法は、複数の放送チャンネル毎に特定の周波数帯域が割り当てられ、前記複数の放送チャンネルの内の1の放送チャンネルにおいて放送用の信号を送信する方法において、前記1の放送チャンネルに割り当てられた周波数帯域で送信される放送信号を、複数の周波数帯域に分割した複数のセグメントとすると共に、高出力階層と、前記高出力階層と分離可能な低い出力の低出力階層に分け、第1放送信号を第1サービスエリアに送信し、前記第1放送信号とは異なる方式の第2放送信号を第2サービスエリアに同時に送信する送信方法であって、前記高出力階層の一部のセグメントで前記第1放送信号を送信し、前記高出力階層の残りのセグメントで前記第2放送信号の一部である高出力第2放送信号を送信し、前記低出力階層で前記第2放送信号の残りの放送信号である低出力第2放送信号を送信することを特徴とする。
【0012】
本発明の放送信号の送信方法によれば、第1サービスエリアに現行放送である第1放送信号を送信し、第2サービスエリアに次世代放送である第2放送信号を送信することができる。第2放送信号は、低出力階層で低出力第2放送信号を送信するだけでなく、高出力階層で高出力第2放送信号を送信している。これにより、低出力第2放送信号のみを送信している場合に比べて、高出力第2放送信号が送信された分だけ第2放送信号のトータルでの伝送容量が増加する。伝送容量が増加すると、第2放送信号の画質を向上させることができる。
【0013】
一方で、画質の向上に代えて、第2放送信号の変調方式(多値度及び符号化率)を調整することにより、第2サービスエリアを広げることができる。例えば、第2放送信号の多値度を64(QAM)から16(QAM)に変更することにより、或いは、符号化率を12/16から10/16に変更することにより、第2サービスエリアを広げることができる。この場合、多値度又は符号化率の一方を変更してもよく、双方共に変更してもよい。
【0014】
本発明の放送信号の送信方法においては、前記高出力第2放送信号が割り当てられたセグメントと同じ周波数帯域の前記低出力階層のセグメントでは前記低出力第2放送信号を送信せず、前記高出力第2放送信号の必要とする搬送波対雑音比を前記低出力階層の領域まで増加することで伝送容量を増加させるようにしてもよい。即ち、前記高出力第2放送信号で必要とする搬送波対雑音比を、前記低出力第2放送信号の所要C/N比と同じレベルにまで大きくしてもよい。なお、搬送波対雑音比は、必要に応じてC/Nと省略する。
【0015】
高出力第2放送信号のC/Nを増加させれば、高出力第2放送信号の伝送容量を増加させることができる。これにより、第2放送信号のトータルでの伝送容量が増加する。この場合も、第2放送信号の画質を向上させてもよく、変調方式を調整して第2サービスエリアを拡大してもよい。
【0016】
また、本発明の放送信号の送信方法において、前記第2放送信号は、放送信号として視聴可能な信号であるベース信号と、前記ベース信号を補強する補強信号とを備え、前記高出力第2放送信号に前記ベース信号又は前記補強信号の一方の信号を割り当て、前記低出力第2放送信号に前記ベース信号又は前記補強信号の他方の信号を割り当ててもよい。
【0017】
当該構成によれば、放送信号として視聴可能なベース信号を高出力第2放送信号とするか、低出力第2放送信号にするか選択することができる。高出力第2放送信号と低出力第2放送信号は、送信する放送信号の変調方式によって受信可能な領域の広さが決まる。よって、ベース信号を受信可能な領域が広い方の放送信号とすることにより、第2サービスエリアとしての領域を広くすることができる。なお、当該構成の送信方法は、伝送信号を階層化させるものであるため、階層伝送方式という。
【0018】
また、本発明の放送信号の送信移行方法は、上記放送信号の送信方法を用いて、現行放送から次世代放送に移行する際に、円滑な移行を可能とする送信移行方法であって、前記第1放送信号が現行放送信号であり、前記第2放送信号が次世代放送信号であり、第1段階として、前記高出力階層において、周波数帯域の両端の1セグメントに高出力第2放送信号を割り当て、その他の前記高出力階層のセグメントに前記第1放送信号を割り当て、前記低出力階層において、前記低出力第2放送信号を割り当て、第2段階として、前記第1放送信号に割り当てられたセグメントを1又は複数減少させ、当該減少させたセグメント数の前記高出力第2放送信号のセグメント数を増加させることを特徴とする。
【0019】
本発明の放送信号の送信移行方法によれば、現行放送と次世代放送の放送信号を同時に送信しながら第1段階から第2段階に移行する方法であり、第2段階において第1放送信号に割り当てられたセグメントを1又は複数減少させ、当該減少させたセグメント数の前記高出力第2放送信号のセグメントを増加させる。これにより、第2段階における第2放送信号のトータルでの伝送容量が増加する。この場合も、第2放送信号の画質を向上させてもよく、変調方式を調整して第2サービスエリアを拡大してもよい。
【0020】
また、本発明の放送信号の送信移行方法においては、前記第2段階において、前記高出力階層における放送信号の変調方式を調整して搬送波対雑音比を減らし、前記低出力階層の出力を上昇させてもよい。当該構成によれば、高出力階層における放送信号の所要C/Nを減少させることで、低出力階層の出力を上昇させても両階層の信号の分離が可能となる。このため、第2段階における第2放送信号のトータルでの伝送容量がさらに増加する。この場合も、第2放送信号の画質を向上させてもよく、変調方式を調整して第2サービスエリアを拡大してもよい。
【0021】
また、本発明の放送信号の送信移行方法においては、前記第2段階において、前記第1放送信号の前記変調方式のうち、多値度又は符号化率の一方又は双方を変更して、第1サービスエリアの減少を防止する。当該構成により、第2段階における第1サービスエリアの減少を防止することができるので、第1放送信号を送信する必要があるエリアに第1放送信号の送信を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態の放送信号の送信方法におけるサービスエリアの状況を示す説明図。
図2】第1の実施形態の送信所内の機能的構成を示す説明図。
図3】第1の実施形態において合成された放送信号を示す模式図。
図4図3の放送信号を次世代放送に移行する際の信号の状態を示す図であり、(A)は第2段階放送の第1段階の放送信号、(B)は第2段階放送の第2段階の放送信号、(C)は第2段階放送の第3段階の放送信号を示す模式図。
図5】第1の実施形態の移行方法の応用例の放送信号を示す説明図。
図6】第2の実施形態において合成された放送信号を示す模式図。
図7】第2の実施形態の移行方法を示す模式図であり、(A)は第2段階放送の第1段階の放送信号、(B)は第2段階放送の第2段階の放送信号、(C)は第2段階放送の第3段階の放送信号を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態である放送信号の送信方法について説明する。第1の実施形態における放送信号の送信方法は、送信所Tから第1放送信号1及び第2放送信号2を送信する方法に関する。この第2放送信号2は、第1放送信号1とは異なる方式の信号である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の放送信号の送信方法においては、第1放送信号1が送信される第1サービスエリア3が一番広範囲に広がっており、その内部に第2放送信号2が送信される第2サービスエリア4が形成されている。
【0025】
ここで、図1における第1サービスエリア3及び第2サービスエリア4は、本実施形態の放送方法の開始時点である第1段階放送におけるサービスエリアを示している。また、次世代放送に移行する第2段階放送におけるサービスエリアは、図1において点線で表される第2サービスエリア4a,4bとなる。
【0026】
第1の実施形態においては、第1放送信号1は、現行放送信号のISDB-T方式の地上デジタル放送(以下必要に応じて「2K放送」と省略する。)の信号であり、第2放送信号2は、次世代放送信号を用いたテレビ放送である4Kと呼ばれる超高精細な画質を有するテレビ放送(以下必要に応じて「4K放送」と省略する。)の信号である。
【0027】
また、第1段階放送とは、第1放送信号1と第2放送信号2の送信を開始した状態の放送形態をいい、第2段階放送とは、第1段階放送の後(例えば4K受信機の一定数普及後)に行う新たな放送形態をいう。
【0028】
送信所Tにおいては、図2に示すように、2K放送の信号処理装置である2K信号処理装置6と、4K放送の信号処理装置である4K信号処理装置7とを備えている。4K信号処理装置7の内部には、信号分離装置7aが設けられている。2K信号処理装置6からは2K放送信号(第1放送信号)8が生成され、信号分離装置7aからは4K放送信号9(9a,9b)が生成される。
【0029】
また、送信所Tにおいては、これらの放送信号を合成する合成装置10と、合成装置10で合成された放送信号を送信する送信装置11が設けられている。送信装置11は、テレビジョン放送用のアンテナ12に接続されている。
【0030】
本実施形態では、この信号分離装置7aは、4K放送信号9(第2放送信号2)を同質の信号を複数に分離する、いわゆるバルク伝送送信装置と呼ばれる装置を用いている。分離された信号は、合成装置10で2K放送信号8と合成され、送信装置11から送信される。
【0031】
テレビ放送では、公共放送及び民放の各テレビ局が番組制作を行い、その番組及びCM等を放送している。各テレビ局にはそれぞれ放送用電波を送信する際の周波数帯域が設定されている。各テレビ局で制作された番組は、送信所Tにおいて、放送用信号5として2K信号処理装置6と4K信号処理装置7の2台に送信される。
【0032】
図3は、第1の実施形態における放送信号の模式図である。図3において、縦軸の上端が信号レベルを、その長さがC/Nを表しており、横軸は周波数を表している。放送信号としては、複数の放送チャンネル毎に特定の周波数帯域が割り当てられており、図3における横軸の周波数は、各テレビ局に割り当てられた1の周波数帯域(1の放送チャンネル)を示す。
【0033】
図3に示すように、第1の実施形態における放送信号は、信号レベルの高い高出力階層14と、信号レベルの低い低出力階層15に分けられている。低出力階層15は、高出力階層14と受像機において分離可能となるように、信号のレベル差16が設定されている。また、これらの各階層の放送信号は、それぞれ複数の周波数帯域に分割した13のセグメントで構成されている。
【0034】
高出力階層14において、中央のセグメントS1は、いわゆるワンセグと呼ばれる放送信号である。また、高出力階層14のセグメントS2~S11には、第1放送信号1である2K放送信号8が割り当てられている。さらに、高出力階層14の残りのセグメントである左右両端のセグメントS12及びS13には、4K放送信号9の一部である高出力第2放送信号9aが割り当てられている。この高出力第2放送信号9aの所要C/Nは、他のセグメントと異なり、低出力階層15にて必要とするC/Nのレベルである。
【0035】
低出力階層15には、4K放送信号9の一部である低出力第2放送信号9bが割り当てられている。低出力階層15もs1~s13の13のセグメントで構成されている。低出力階層15においては、高出力第2放送信号9aが割り当てられた左右両端のセグメントと同じ周波数帯域である両端のセグメントs12,s13には低出力第2放送信号9bは割り当てられていない。第1の実施形態においては、4K放送信号9は、高出力第2放送信号9aと、低出力第2放送信号9bに分割されて放送信号が出力される。
【0036】
第1の実施形態における放送信号は上記構成となっており、図1の第1サービスエリア3の領域内で受像機によって受信されると、2K放送信号8のみを受信可能な受像機においては、2K放送信号8として送信された映像が受像機によって表示される。
【0037】
受像機が4K放送信号9を受信可能な場合、高出力第2放送信号9aと低出力第2放送信号9bの両信号を受信可能な第2サービスエリア4においては、両信号を受信して合成することにより、4K放送を受像することができる。
【0038】
次に、第1の実施形態における放送信号の放送方法を用いて、現行放送から次世代放送に移行する際に、円滑な移行(マイグレーション)を可能とする送信移行方法について説明する。本実施形態の送信移行方法は、現行の2K放送信号8と4K放送信号9を同時に放送している状態から、2K放送信号8の伝送容量を減らし、4K放送信号9の伝送容量を増やすものである。
【0039】
まず、第1段階放送における放送信号は、図3に示す通りとなる。また、第1段階放送におけるサービスエリアは図1の第1サービスエリア3及び第2サービスエリア4に示す通りである。第1段階放送がしばらく継続すると、視聴者の中には、受像機の買い換えにより、次世代の4K放送信号9が受信可能な受像機を購入する人が出てくる。このような視聴者が増えてくると、4K放送信号9の第2サービスエリア4の外側にいる視聴者の中にも4K放送信号9に対応した受像機を取得する人も出てくる。
【0040】
そこで、放送事業者としては、このような視聴者の増加に対応するため、第2段階放送を行うことができる。第2段階放送においては、2K放送信号8の送信を継続しつつ、第2サービスエリア4を広げる措置を行う。
【0041】
本実施形態では、第2段階放送は、図4の(A)~(C)に示す3段階で移行を行う。まず、図4(A)の放送信号について説明する。図4(A)では、高出力階層14における2K放送信号8のセグメントS10を、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bのセグメントs10の送信を停止する。
【0042】
図4(A)に示すように、2K放送信号8は、図3の第1段階の状態から1セグメント分だけ伝送容量が減少する。一方で、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aは、1セグメント分増加する。また、高出力第2放送信号9aは、高出力階層14から低出力階層15まで延びる信号となっているので、伝送容量が増加する。低出力階層15においては、低出力第2放送信号9bが、図3の第1段階の状態から1セグメント分だけ伝送容量が減少するが、第2放送信号2全体としては伝送容量が増加する。
【0043】
第2放送信号2の伝送容量の増加は、変調方式を変更しなければ、放送信号の画質を向上させることができるが、変調方式を所要C/Nが少なく伝送容量の少ないものに変更することにより第2サービスエリアを広げることができる。例えば、第2放送信号2について、64QAM(12/16)を16QAM(10/16)に変更することにより、第2サービスエリアを拡大させることができる。
【0044】
ここで、64(QAM)及び16(QAM)は多値度、12/16及び10/16は符号化率となる。多値度は、数値が高くなるほど伝送容量が大きくなるが、送信されるエリアが狭くなる。符号化率は、分母と分子の差が誤り訂正となり、誤り訂正が大きくなるほど送信されるエリアが広くなる。
【0045】
次に、図4(A)に示す放送信号のサービスエリアについて、図1を参照して説明する。2K放送信号8は、図3の状態から図4(A)の状態に変更され、伝送容量が少なくなるため多少画質が低下するが、第1サービスエリア3には変化はない。
【0046】
第2サービスエリア4は、全体として第2放送信号2の伝送容量が増加したため、その増加した分の送信信号について、所要C/Nが少なく伝送容量は少ないが受信エリアを広くできる変調方式(64QAM(12/16)を16QAM(10/16)に変更等)としたので、図1の符号4aの点線のエリアとなる。これにより、4K放送信号9を受信可能なエリアが広がる。
【0047】
次に、図4(B)の放送信号について説明する。図4(B)では、高出力階層14における2K放送信号8のセグメントS11を、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bのセグメントs11の送信を停止する。
【0048】
図4(B)に示すように、2K放送信号8は、図4(A)の状態から1セグメント分だけ伝送容量が減少する。一方で、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aは、1セグメント分増加する。また、高出力第2放送信号9aは、高出力階層14から低出力階層15まで延びる信号となっているので、伝送容量が増加する。
【0049】
低出力階層15においては、低出力第2放送信号9bが、図4(A)の第1段階の状態から1セグメント分だけ伝送容量が減少するが、第2放送信号2全体としては伝送容量が増加する。さらに、増加した分の第2放送信号2については、変調方式を変更して、所要C/Nが少なく伝送容量の少ないが受信エリアを広くできる方式、例えば64QAM(12/16)を16QAM(10/16)とすることにより、第2サービスエリア4の拡大も可能となる。
【0050】
次に、図4(B)に示す放送信号のサービスエリアについて、図1を参照して説明する。2K放送信号8が送信される第1サービスエリア3は、伝送容量は少なくなるが、変調方式に変更はないので、そのサービスエリアは変わらない。
【0051】
第2サービスエリア4は、全体として第2放送信号2の伝送容量が増加したため、その増加した分について、所要C/Nが少なく伝送容量は少ないが受信エリアを広くできる変調方式に変更すると、図1の符号4bの点線のエリアとなる。これにより、4K放送信号9を受信可能なエリアが広がる。
【0052】
次に、図4(C)の放送信号について説明する。図4(C)では、高出力階層14における2K放送信号8を全て停止し、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bも全て停止する。
【0053】
これは、2K放送信号8による放送サービスを停止し、4K放送信号9による放送サービスのみを提供する場合の放送信号である。図4(C)では、S1~S13の各セグメントに高出力第2放送信号9aを割り当てる。これにより、現状の2K放送信号8が送信されている第1サービスエリア3と同等かさらに広いエリアに4K放送信号9を送信することができる。
【0054】
ここで、第1の実施形態における放送信号の放送方法の応用例について説明する。上記実施形態では、高出力第2放送信号9a及び低出力第2放送信号9bは、バルク伝送送信装置である信号分離装置7aにより分離されており、同質の信号であった。この応用例は、階層伝送方式であり、信号分離装置7aは、4Kベース信号と4K補強信号に分離する階層符号化装置として機能する。
【0055】
本応用例においては、高出力第2放送信号9aは、この信号のみを受像機で受像した際に4K放送を視聴可能な4Kベース信号となっている。一方で、低出力第2放送信号9bは、この信号のみでは4K放送は視聴できないが、4Kベース信号を補強する信号である4K補強信号となっている。
【0056】
受像機が4K放送信号9を受信可能な場合、4Kベース信号である高出力第2放送信号9aと4K補強信号である低出力第2放送信号9bの両信号を受信可能な第2サービスエリア4においては、受像機において両信号を受信して合成することで、高画質な4K放送を受像することができる。一方で、4Kベース信号である高出力第2放送信号9aのみを受信可能な第2サービスエリア4aにおいては、ベーシックな4K放送のみを受像することができる。
【0057】
次に、現行放送から次世代放送に移行する際に、円滑な移行(マイグレーション)を可能とする送信移行方法の応用例について説明する。本応用例の送信移行方法は、図3に示す状態から、図5(A)~(C)に示す状態に移行する方法である。
【0058】
上記実施形態の送信移行方法とは、高出力階層14において、第1放送信号1のセグメント数を減少させ、その分高出力第2放送信号9aのセグメント数を増加させる際に、第1放送信号1の変調方式を調整することにより所要C/Nを減らし、これに伴って低出力第2放送信号9bの出力を上昇させる点が異なっている。
【0059】
まず、図5(A)の放送信号について説明する。図5(A)では、高出力階層14における2K放送信号8のセグメントS10を、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bのセグメントs10の送信を停止する。
【0060】
また、2K放送信号8のセグメントS2~S9及びS11の所要C/Nを減らす。具体的には、2K放送信号8のセグメントS2~S9及びS11の変調方式を、伝送容量は少ないが受信エリアを広くできる方式へ変更する。例えば、2K放送信号8の変調方式を、64QAM(12/16)から16QAM(10/16)とする等の変更を行う。なお、1セグ用のセグメントS1は、変調方式がQPSK(2/3)であり、伝送容量が少なく所要C/Nがさらに少ないため、変調方式の変更は必要ない。
【0061】
一方で、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aは、1セグメント分増加する。また、低出力第2放送信号9bの信号レベルの上限値を上昇させているので、第2放送信号2全体としての伝送容量が増加する。この増加した高出力第2放送信号9aについて、変調方式を例えば64QAM(12/16)から16QAM(10/16)に変更することにより、第2サービスエリアを拡大させることができる。
【0062】
次に、図5(B)の放送信号について説明する。図5(B)では、高出力階層14における2K放送信号8のセグメントS11を、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bのセグメントs11の送信を停止する。
【0063】
また、2K放送信号8のセグメントS2~S9の変調方式を、伝送容量は少ないが受信エリアを広くできる方式へ更に変更することにより所要C/Nを減らす。これにより、2K放送信号8の伝送容量がさらに減少する。同時に、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aを1セグメント分増加させ、低出力第2放送信号9bの信号レベルの上限値を上昇させ、変調方式を例えば64QAM(12/16)から16QAM(10/16)に変更することにより、第2サービスエリアを拡大させることができる。
【0064】
最後に、図5(C)に示すように、高出力階層14における2K放送信号8を全て停止し、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bも全て停止する。本応用例の送信移行方法によれば、次世代の放送信号である4K放送信号9の第2サービスエリア4を迅速に拡大させることができる。なお、本実施形態では、セグメントS1の1セグ放送を廃止し、全ての放送信号を4K放送信号9としている。
【0065】
次に、本発明の第2の実施形態における放送信号の送信方法について図6図7を参照して説明する。図6は、第2の実施形態における放送信号の模式図である。第1の実施形態と異なるところは、高出力第2放送信号9aの下方に低出力第2放送信号9bが存在しており、高出力第2放送信号9aの所要C/Nが低出力第2放送信号9bと分離可能な値となっている点である。
【0066】
この第2の実施形態における放送信号の放送方法を用いて、現行放送から次世代放送に移行する際に、円滑な移行(マイグレーション)を可能とする送信移行方法について説明する。まず、第1段階放送における放送信号は、図6に示す通りとなる。第2段階放送は、この状態から図7(A)~(C)の状態にして第2放送信号2の送信されるエリアを広げる。
【0067】
図7(A)では、高出力階層14におけるセグメントS10及びS11を、2K放送信号8から4K放送信号9である高出力第2放送信号9aに切り替える。これにより、4K放送信号9は、高出力階層14の4個のセグメントと、低出力第2放送信号9bの13個のセグメントとを合計した伝送容量となるので、伝送容量が増加する。
【0068】
この場合、変調方式を例えば64QAM(12/16)から16QAM(10/16)に変更することにより、第2サービスエリアを拡大させることができる。このとき、2K放送信号8は2セグメント分の放送信号が減少するため伝送容量は少なくなるが、変調方式に変更はないので、第1サービスエリア3は変わらない。
【0069】
次に、図7(B)では、高出力階層14におけるセグメントS8及びS9を、2K放送信号8から高出力第2放送信号9aである4K放送信号9に切り替える。これにより、4K放送信号9は、高出力階層14の6個のセグメントと、低出力第2放送信号9bの13個のセグメントとを合計した伝送容量となるので、伝送容量が増加する。さらに、増加した分の第2放送信号2については、変調方式を変更して、所要C/Nが少なく伝送容量は少ないが受信エリアを広くできる方式、例えば64QAM(12/16)を16QAM(10/16)とすることにより、第2サービスエリア4の拡大も可能となる
【0070】
最後に、図7(C)に示すように、高出力階層14における2K放送信号8を全て停止し、4K放送信号9の高出力第2放送信号9aに変更する。また、その際、低出力第2放送信号9bも全て停止する。第2の実施形態の送信移行方法によれば、次世代の放送信号である4K放送信号9の第2サービスエリア4を迅速に拡大させることができる。このように、第2の実施形態における送信移行方法によれば、現行放送から徐々に次世代放送へとマイグレーションを行うことができる。
【0071】
また、4K放送信号9が現行放送となった場合、例えば8K放送信号が次世代放送信号となる。この場合は、例えば図3に示す2K放送信号8のセグメントに4K放送信号を割り当て、4K放送信号9(高出力第2放送信号9a及び低出力第2放送信号9b)のセグメントに8K放送信号を割り当てることにより、4K放送信号から8K放送信号へのマイグレーションを行うことができる。
【0072】
なお、上記各実施形態において、多値度及び符号化率等について具体的な数値を例示して説明したが、本発明は上記具体的な数値には限定されず、任意の数値を用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…第1放送信号
2…第2放送信号
3…第1サービスエリア
4,4a,4b…第2サービスエリア
5…放送用信号
6…2K信号処理装置
7…4K信号処理装置
7a…4K信号分離装置
8…2K放送信号
9…4K放送信号
9a…高出力第2放送信号
9b…低出力第2放送信号
10…合成装置
11…送信装置
12…アンテナ
14…高出力階層
15…低出力階層
16…レベル差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7