(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030783
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】開放構造型イオン発生器
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20220210BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H01T23/00
H01T19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135027
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】304062432
【氏名又は名称】株式会社 リブレックス
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗敬
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人体に対して安全で効率的なイオン発生器を提供する。
【解決手段】空気中にイオンを供給するイオン発生器のイオン発生部を体積抵抗率10の8乗~13乗Ωからなる高抵抗の針電極を使用することで安全に構成し、該高抵抗の針電極は、たとえばヌキ型などで、簡便に安価に使い捨てで構成可能な構造であり、高抵抗の材料を採用したことにより、高電圧の針電極から人体を保護するバリヤ構造物をなくしたことで、イオンの放出途中のイオン障害物が排除され、簡便に安価にイオンを発生することを可能とするイオン発生器。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式のイオン発生器において、1個以上の高抵抗の針電極を有し、それらの針電極の構成材料の体積抵抗率が10の8乗~13乗Ωで構成し、該針電極は本体装置の外部に露出していることを特徴とするイオン発生器。
【請求項2】
請求項1において、該高抵抗の針電極の先端に10の6乗Ω以下の長さ2cm以下の補助針電極を有すことを特徴とするイオン発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部屋に正または負のイオンを供給するための、電気式のイオン発生器における、イオン発生部の構造および、機構に関する。
【背景技術】
【0002】
田園地区では水場近傍で空気中に負イオンが多く発生し、都市部は負イオンの発生環境がないため、正イオンが多いこと知られている。これを受け、都市部での負イオン不足の健康等へ影響が1910年代からドイツ等で研究されてきた。近年の文献では、負イオンはストレスや不安の解消、減菌、ダニ等の減少等に効果があるとされている。これらの背景から、主として、空気中に負イオンの供給でイオンバランスを改善する各種の負イオン発生器が提供されている。
また、産業用として、正負のイオンを発生させて、イオンを中和させて、部屋内の構造物の帯電を防止する装置等も、これらのイオン発生器の原理が使用されている。こちらは正と負のイオンの両者を発生させるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気式のイオン発生器は、一般に、導電物からなる先端の鋭利な針状構造物に高電圧の電圧を印加し、それにより、その針状構造物の鋭利な先端に発生する強い不平等電界がイオンを放出させる現象を利用してイオンを効率的に発生することが行われる。導体である金属部の先端が鋭利であればあるほど、高電圧を印加したときの不平等電界は強くなるため、数kVという比較的低い電圧でもイオンを発生させることが可能となるものである。
【0005】
図1は従来の電気式のイオン発生器の基本構成である。この例は負電圧を印加しており、負イオンを発生させる例となる。このときの、針状構造物に加わる高電圧の電圧は、例えば3kV~10kV程度となることから、不用意に使用者などの人体や、物体などを近接させると、アークを伴う放電が発生し、その電撃により人体は、直接的、あるいは物体を介した間接的な感電によるショック状態となる。なお、この例では針構造としたが、顕著な不平等電界を生じさせる構造であればよく、たとえば電気集塵機のような、細いワイヤー構造を使用することでもイオンを発生させることでもよい。
電気式のイオン発生器は、これらの危険を防ぐ目的で、高電圧の印加された針構造部分に直接に人体が触れないように、針の前面、先端の先に置かれた蓋、あるいはシールドやバリヤ構造等の保護構造が施される。これにより、使用者は電撃や電気的ショックなどの感電を未然に防ぐことが可能となる。
【0006】
しかしながら、この人体が針構造部分に直接触れないための安全構造が、電気式のイオン発生器の性能を低下させる原因となる場合があり、それは主に次の二つの課題となる現象が単一で発生、あるいは、組合わさることでもたらされる。
【0007】
一つ目の課題は、たとえば、安全のため、針に直接触れないように、針の前面に絶縁物によるバリヤ構造を構成した場合である。針の前面、もしくは近傍に絶縁物が存在する場合は、その絶縁物の表面に発生したイオンの一部が必然的に付着し、表面帯電により、絶縁物の表面は容易に数kVの電圧に上昇する。すると、その電圧が周囲の電界に影響して歪ませることから、イオンの軌道が安定せず、物理的構成によっては、針先の電界も顕著に低下させる。極端な例では、絶縁物の表面の帯電により針周囲の電界が歪むことにより、全くイオンが発生しなくなる場合もある。このように、絶縁物をイオンが発生する針構造部の近傍に設けることは、帯電による電界擾乱を主たる原因とするイオン生成の不安定現象を引き起こすものである。イオン発生機構は自分自身が発生するイオンの分布により、周囲の構造物が帯電し、イオン発生機能が影響する場合が多々あるという課題となる。
これらのことから、電気式のイオン発生器のイオン発生用の針構造部分の近傍には、絶縁体のような構造物を置くことは、一般には行われない。しかし、製品として一般消費者に使用する目的で製造する場合は、安全上、どうしても置くことがもとめられるため、その場合は、機能の低下を承知してバリヤ構造などを針構造の前面に配置するものである。なお、このとき前面のバリヤを高抵抗の物質で構成し、大きな帯電が発生しないようにすることは一つの対案であるが、これについては、次に述べる第二の問題現象で言及する。
【0008】
二つ目の問題現象は、前述のバリヤ構造を、絶縁物ではなく、導体や金属、あるいは前述した高抵抗の物質で構成した場合である。このとき、これらの構造物は電位的にフロートしているとイオンによる帯電により電圧が上昇して前述と同等の不安定状態となるため、接地電位、あるいは、高電圧の針電極からみたらほぼ接地電位である商用電源に電位固定されるのが一般的である。このように接地電位もしくは、ほぼ接地とみなされる電位に固定された導体を安全対策のバリヤとして針の前面に設置することで、絶縁物のような帯電による影響を除去できるものである。
しかしながら、このように、導電物等で接地された電極が、安全のためにイオンを発生する針構造の前面に配置されると、イオンのほとんどが、この接地電位の電極に吸収されてしまい、結局は外部まで放出されるイオンの量の大部分が、このバリヤ構造部で吸収されてしまうという新たな課題が発生し、これにより、外部に放出されるイオンの総量が抑制されてしまうことになる。
【0009】
このように、人が高電圧部分に手が触れないような、安全上の目的で。針構造の前面側に設置されたバリヤ構造が要求されることから、本来のイオン発生機能を犠牲にして、安全機能優先で装置を構成することが現実的な製品として要求される。本来であれば、バリヤ構造がなくなれば、イオンの発生量は構成にもよるが、一般的に数倍になるが、この安全構造のために、市販のイオン発生器はイオン発生量をやむなく抑制して製作されている。
このため、すこしでもイオン発生量を多くするために、バリヤ構造部にイオンを反発する電位を与えたり、あるいは、帯電防止材料を使用したり等がおこなわれるが、装置が複雑となり、また、外郭ケースの大きさもかさばる大きさとならざる負えず、イオンを発生する機能が要求する大きさよりも、安全が要求する大きさのほうが大きくなり、必要以上に大型の装置となる場合もある。これらのことにより、装置も複雑となり、コストも増大し、必要以上に大型で、複雑で、その結果として高価な装置となる傾向があった。また、一部の市販の機器は、帯電防止塗装を施しているものもあるが、帯電防止塗装の多くは一時的であり、特に針構造により副次的に発生するオゾンで急速に劣化するものが多く、一時的な効果しか期待できないものである。永久的な帯電防止材料として、筐体に木材を使用してる機器もあるが、湿度により不安定であり、また、可燃性があるため、放電を伴う機器の筐体としては安全上の問題が残るものである。
図2は特許文献1による従来例の一部であり、主構成部を本案とほぼ同等の高抵抗の板を使用した吸着板等を外部に露出させたものである。吸着板はイオンを発生せず、イオンにより帯電された粒子を吸着するものである。これは単純構造であるが、イオン吸着板であり、イオンを発生させる基本構造ではなく、本案とは構成を異とするものとなる。
【0010】
安全にために必要なバリヤ構造であるが、一つの実験例として、安全バリヤが付属することによるイオン発生量の低下を補償するために、イオンを発生する針を8本として増やしてイオン発生量を増大させた、一般のイオン発生器と、安全バリヤを意図的に外して、たった一本の針構造からなるイオン発生器のイオン発生量の比較試験の例を示す。この結果は、ほぼ同等の結果となる。この結果が示すことは、安全バリヤさえなければ、たった1本の針構造で十分な量のイオンを発生可能であることを示す。このことは一般的であり、容易に観測されることでもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本案では、イオンを発生する主たる部分である針構造部、あるいは、極細ワイヤー部分を体積抵抗率の高い、導電性の樹脂等の、半導体材料を使用することを特徴としている。形状は、いわゆる針構造でもよく、薄板をくさび状にして先端を鋭利にした形状の疑似的な針構造でもよい。このようなくさび型構造は、一般のトムソン型などで容易に材料をヌキ加工することができるため、安価な構成とすることが可能となる。
なお、以降では電圧の極性が正負のいずれであるかは特に必要と思われるとき以外は言及せず、絶対値としての値として電圧を表現するものである。
【0012】
一般的な導電性の樹脂材料の多くは低効率が低く、いわゆる導電性プラスチックとして体積率抵抗率が10の6乗Ω前後の、導電性樹脂としては低い部類、つまりは樹脂材料としては比較的に導電性が高い樹脂が良く使用されている。これらは導電性樹脂としては優秀であるが、本案の目的であるイオン発生部を安価に、簡便に、小型で、単純構造で構成するために、例えば安全バリヤ構造をなくすためには次の問題がある。
【0013】
具体的には、これらの導電性樹脂プラスチックでは低効率が小さすぎる、つまりは導電性が良すぎるという問題である。例としてこれらの樹脂で30cm四方の板材を構成すると、端と端の両端の抵抗は、樹脂材料にもよるが、たとえば1MΩ前後となる。この値の場合では、仮に事故等で外部の接地電位部分との間で、短絡回路が生じた場合の漏れ電流は、1000Vで1mAとなり、充分に電気的ショックをともなった感電現象が発生する。
また、イオンを効率的に発生させるには針構造部に電圧として数kV~10kV程度の高電圧を加えるが、この程度の抵抗率の材料の場合は、接地電位の構造物を近接させるとアーク放電による放電音をともなう現象が発生し、人体にショックを与え、電撃によるいわゆる感電現象が発生し、危険をともなうこととなる。結果として、人体を保護するためのバリヤ構造をたとえばイオンを発生させる針構造部の前面側に設けて、直接触れられない構造とする必要がある。
なお、この場合に電流制限抵抗を挿入して漏れ電流を低減させても、周囲の構造物との静電容量により、直流電圧分により電荷が蓄積されて、電気的なショックを伴う放電現象が発生することがあり、単純に抵抗値を上げて、定常的な短絡電流を下げることは可能であるが、定常状態に至るまでの過渡的な現象として大きな短絡電流が流れることとなるため、保護抵抗回路を追加して抵抗値を上げるだけでは根本的な解決には至らない。
【0014】
このように、高電圧のイオン発生部を構成する電極である、たとえば針構造部に直接触れても安全であるために、10の6乗Ω前後の、導電性樹脂を使用した場合は、実験によっても、電圧や材料の厚み等にも依存するが、一般に電撃による電気的ショックを得るため、依然として安全のためのバリヤ構造が必要となることが確認された。この結果は前述した理論的な計算でも十分に予想された結果である。針電極の材料として絶縁物を使用した場合であるが、体積低効率が10の15乗以上となるため、表面の帯電が発生するため不適切であり、またこれではイオンを発生させる電流そのものを流すことができないため使用できない。一方で、イオンの電流は10nA程度でよいため、10kVの高圧電源を例として10nAの短絡電流を得る抵抗値を試算すると、抵抗値=10kV/10nA=1000MΩとなることから、針構造物の大きさや構造にも依存するが、数mmまでの板材を使用であれば、10の10乗~13乗程度の体積抵抗率の材料が適切であると試算できるものである。
【0015】
このため、念のため種々の体積低効率の板材により検証し、実地のデータを蓄積した結果、電圧や形状にもよるが、予測値どおりに10の10乗~13乗Ωの範囲の体積低効率の板材が効果的であることを確認した。たとえば、数mmの板材に10kVの高電圧を加えても、直接手で触れても、電撃を伴う感電現象は発生せず、また、接地電位の構造物を近接させても人体で把握できる放電を観測されることがないことを確認した。つまりは、表面に帯電することもなく、静電気のようにパチッと手で触れて放電することはなく、かつ、高い抵抗のため、当然であるが手で触れ続けて感電するということもない。なんとなれば、構造物の抵抗値は大きさにもよるが数100MΩ~1000MΩ以上となり、感電するための電流値に達しないからでもある。さらに、周囲との構造物との間の漂遊容量による過渡現象としての電荷の放電による電撃であるが、体積低効率が高いと分布定数としての抵抗値が高くなり、数cm角の材料であっても10nA程度の電流で十分に電圧降下するので、材料に接地構造が接触しても、接触部の電圧が瞬時に低下して、放電に至る前に、放電現象が抑制されることとなる。
【0016】
このような材料は、いわゆる導電性樹脂ではなく、一般に帯電防止樹脂と言われる領域の材料となる。これ以上大きな抵抗率、例えば10の13乗Ω等となると、数cmの構造物であっても数1000MΩ等となり、絶縁物に近くなり、針構造を構成してもイオンを発生させる電流を維持することができず、適していない。
この問題は高抵抗の材料を使用する場合は、ある程度共通して付随する問題であり、針の細くなる直前まで、高抵抗材料を厚く、かつ、幅を確保して、実質の針の先端までの抵抗を下げるような工夫も併用することで効果的なイオン電流が維持できるものである。
【0017】
また、樹脂材料の場合、針構造や極細ワイヤー構造とすることは可能であるが、強度を持たせることが困難なため、先端の数mmだけを金属線、あるいは、グラファイト、炭化ケイ素等の補助的な比較的に抵抗率が低い半導体材料とした複合構成とすることも効果的となる。なお、高抵抗の材料を使用して、針電極構造等を構成するため、低効率が高いほどイオン電流が抑制されるため、発生するイオン量は少なくなることから、適切な範囲で、あまり高抵抗とならない抵抗率を選択し、必要であれば、厚みや巾を工夫することでイオン電流量を適正に保つことが可能となるものである。
【0018】
このように、高電圧を加えるイオン発生部を適切な高抵抗の半導体材料とすることで、人が触れても問題ない、安全な電極構成とすることができるため、たとえば10kVと、という常識的には高くて危険な電圧であるとみなされている電圧を印加した構成にしても、なんら危険なく、イオン発生部を外部に露出して構成することが可能となる。この構造が安全なのは高電圧が印加された材料に触れた場合でも、その分布定数的な高抵抗により数nA程度の微小な電流で瞬時に先端部分が安全な電圧まで電圧低下することによる。
また、電気的に裸の充電部であるとみなされる構造物は危険であり、一般の種々の規格においても、充電部とみなさない安全な回路の条件として、短絡時の電流値が0.5mA~1.0mA以下であることが求められるが、これについても充分にみたされているものである。なお、高抵抗であっても、充電電流は継続して流れるため、絶縁された大きな金属板等が長時間触れていると、その金属板が高電圧で充電されてしまうリスクが想定されが、これらについては、傾いた構造物が直接的に針先に当たらないガード構造と、間欠的な印加電圧方式、および、出力に影響しない程度の高抵抗による放電回路の併設等でクリアされる。
【0019】
以上により、イオンの放出を阻害するバリヤ構造が不要となり、高電圧の針構造を露出して構成することが可能となるものである。また、樹脂をトムソン型等で一体でヌキ加工することも可能であり、安価で構成することも可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】従来例の高抵抗の樹脂を使用したイオン吸着板のイメージ図
【
図3】高抵抗の針電極を露出させた、本案のイオン発生器の例
【
図4】複数の針電極を露出させた、本案のイオン発生器の例
【
図5】複数の針電極に保護抵抗を挿入したイオン発生器の例
【
図6】先端に比較的体積抵抗の低い材料による補助針電極を構成した例
【
図7】針先端までの抵抗を下げる為に、高抵抗の板材を段階的に多段重ねした例
【
図8】くさび型の針電極であり、先端にいくに従い高抵抗となる構成の例
【
図9】途中まで長方形の針電極であり、途中まで抵抗が一定となる構成の例
【
図10】対抗電極に接地された丸穴をあけた高抵抗材料の平板で構成した例
【
図11】対抗電極に接地された高抵抗材料の円筒で構成した例
【
図12】外部構造から針電極を保護するプロテクトガイドを有す例
【
図13】印加電圧をオフしたときに放電する放電抵抗を設けた例
【発明を実施するための形態】
【0021】
図3に本案の基本構成を示す。イオンを発生させる高抵抗の針電極13は、体積低効率が少なくとも10の8乗Ω以上、たとえば10の10乗~13乗Ωからなる高抵抗の樹脂等からなる材料である。この例では30mm巾×100mm×厚み3mmの材料を使用して、先端を三角形状に鋭利としている。通常のイオン発生器の針は先端Rを50μm程度以下に鋭利に加工することで、先端の電界強度を大きくする、これにより、たとえば3kV程度の電圧でも十分にイオンを発生することが可能となる。一般のイオン発生器であまり電圧を高く設定すると、周囲の構造物に放電しないような絶縁離隔を各所で確保する必要があり、また、汚れや汚染がないように配慮も必要であり、可能な限り低い電圧で構成したほうが構造的に単純となり、価格も安価となるものである。
【0022】
一方で、本案の高抵抗の針電極13は、いわゆるヌキ型で簡単にヌキ加工する程度の先端の鋭利さであっても充分にイオンを発生することが可能である。これは、本例における負の高圧電源2の電圧を例えば-10kV等に高く設定できるから、あえて電圧を低くてもイオンを発生させるために鋭利な先端の針を使用する必要がないためである。さらに高抵抗の材料であるため、フラッシュオーバーするまえに自己の高抵抗により材料の電圧が部分的に低下するため、いわゆるセルフプロテクト構造でもあり、高電圧であっても、その引き回しに厳密な配慮が不要であるという利点もある。なお、一般に柔らかい樹脂であり、先端が鋭利な構造で作成しても、肌に刺さるような高度はなく、柔軟に織曲がるため、基本的に外部に露出して構成しても安全である。
【0023】
この結果、材料全体に等しく分布する高抵抗の存在により、負の高圧電源2の電圧を-10kVと非常に高くした場合であっても、直接人体に触れてもなんら電撃ショックもなく、安全に使用できるため、高抵抗の針電極13は外部に露出して構成できるものである。なお、負の高電圧電源2の出力側に電流を制限する保護抵抗11を挿入してもよい。
この高抵抗の針電極13が、万が一に接地電位に触れた時の短絡電流は、たとえば10nA程度となる。このため、種々の規格でもとめられている、危険な充電部とみなさない短絡電流値の目安となる0.5mA~1.0mAと比較しても1/100程度の小さな値となり、当然であるが、充電部とみなさないため、規格上の安全のための絶縁構造や、感電しないための離隔を確保するメッシュ構造などの補助的な安全構造を一切必要としないことが大きな特徴となる。
これらにより、従来品では針電極の前面に配置していた安全のためのバリヤ構造物は不要となる。その結果、針電極から発生するイオンを、そのまま、バリヤ構造物の影響をうけることなく、発生したイオンの100%を空間に供給することが可能となる。
【0024】
なお、高抵抗の針電極13を体積低効率が10の6乗程度で構成すると、短絡電流も増大し、前述の-10kVの負の高圧電源2と組み合わせると、人体が触れると電撃をともなう放電が発生し、触れることができない値となる。電極のサイズを調整して短絡電流の値を規格が充電部とみなさない0.5mA以下とすることは可能であるが、実際の痛みをともなう電撃が発生するため、現実的にはこの程度の低効率では課題がのこるものとなる。このため、高抵抗の針電極13の材料は少なくともその100倍程度、最低でも10の8乗Ω程度以上を確保することが現実的な値となり、たとえば前述した10の10乗~13乗Ωという値で適切に構成することができるものである。
【0025】
図4は高抵抗の針電極13を複数個として、水平方向に並列に構成したものである。これは、安全を重視して体積抵抗率の高いものを使用すると、イオンの微小電流であっても電圧降下するため、発生イオン量が低下する場合に、それを補償する目的と、部屋の広い範囲にイオンを放出することを目的に、水平方向に広げている構成としたものである。
高抵抗の針電極13は触れても安全なため、当然であるが外部に露出しており、また、従来型のような、保護バリヤ構造が前面にあるわけではないので、イオンは素直に部屋全体に放出されるものである。この例では分割されて描かれているが、一体型でくし状にして、簡単に交換できる構造としてもよい。一般にイオンの放電電極は針の先端に電界により汚れが付着するため、定期的に清掃することとなる。本案では、たとえばくし形の多段の電極をワンタッチで交換する、使い捨て電極構造としてもよい。高抵抗の樹脂材料は安価であり、ヌキ加工で一括製造することにより、非常に安価となることから、清掃せずに使い捨てすることも可能となる。
【0026】
図5は、
図4において、個々の高抵抗の針電極13の前段に保護抵抗11を各々設けた例である。
【0027】
図6は、高抵抗の針電極13の鋭利な先端に、第二の補助針電極14を構成した例である。この第二の針電極は金属でもよいが、10の6乗前後の高抵抗の樹脂やセラミック系材料であってもうよい、たとえば、鉛筆に使用されるようなグラファイトで構成してもよい。構成の特徴は、高抵抗の針電極13の材料は10の10乗~13乗Ω程度であるのに対して、補助針でンkyク14を構成する材料は、少なくとも10の6乗以下であることが望ましい。また、サイズもΦ0.1~0.5程度で、長さも20mm程度以下が望ましく、あまり長くすると、電撃ショックが大きくなる可能性があり、小さなサイズにとどめることが重要である。太さは電圧が低くする場合は細いほうが良いが、電圧が高い場合はあまり考慮しなくてもよく、物理的な、たとえば折れやすい等の理由で適切なサイズに決めてよい。ただし、金属の針は硬度があり、皮膚を傷つける場合が想定されるので画、グラファイトや炭化ケイ素の糸のような柔軟構造がこのましい。
動作については、補助針電極14と、高抵抗の針電極の接触面で電流を集めることができるため、発生するイオンの電流を多く供給でき、先端の電圧がイオン電流により部分的に低下することwさけることが可能となる。なお、補助針電極14のサイズを限定的に制限しているため、これにより、先端を触れることによる電撃ショックや、感電はない。
【0028】
図7は、高抵抗の針電極13の構造を段階的な多段重ね構造とした例である。このようにすると、針先端の直前までの抵抗値を下げることができるため、イオン電流による電圧降下が抑えられるため、比較的に発生するイオンの量を確保することが可能となる。
図8は、
図7と比較するためのくさび型の高抵抗の針電極13のイメージ図である。従来の考え方でいけば、先端を鋭利にして電界集中形状とするために、このような鋭利なくさびがたの形状は理にかなっているが、高抵抗の材料の場合は、材料自身の分布抵抗によりイオン電流による材料自身の電圧降下が影響するため、先端にいくほど細くなる形状とすると比例して抵抗値が無視できない大きさとなっていき、イオン発生量が低下することとなる。
図7は、特にくさび型形状などにする場合に、複数重ねることで、抵抗の増大を防ぐ手法の一つの例である。
図9は、これらを解決する基本形状である、高抵抗の針電極13は直前まで長方形をたもち、抵抗がいたずらに低下しない構造が基本であり、針構造をなす先端の直前で30~45°程度の、比較的広い角度で三角形形状を構成して、先端を柔らかな針形状としているものである。、
【0029】
図10は、従来型と似ている構造であるが、針部分と、対抗電極は外部に露出しており、プロテクトとなるバリヤ構造はないことが特徴となる。装置の外部に露出して構成される高抵抗の針電極13とその対抗面に構成された、針の対抗電極(丸穴型)15を基本構成とし、両者ともに外部に露出されて構成する。針の対抗電極(丸穴型)は、金属等でもよいが、清掃時の使い捨てを考慮すると、高抵抗の樹脂材料で構成してもよい。
図11は、
図10の対抗電極を針の対抗電極(円筒型)16としたものである。
【0030】
図12は、外部構造物が露出された高抵抗の針電極13に当たらないようにプロテクトガイド17を構成した例である。
【0031】
図13は、外部構造物が誤って、高抵抗の針電極13に触れ、かつ、外部構造物がフロートしている導電物であるばあいに、充電された電荷を、インターバルで負の高圧電源2をオフにて、放電する放電抵抗19を追加した例である。インターバルで定期的にオフにし、図示しない電圧低下の時定数検出回路により、電荷が外部構造物に触れているかどうかを確認することができるため、万が一の充電現象が発生した場合の、対策となる。
【符号の説明】
【0032】
1 導体による針状構造物
2 負の高電圧電源
3 接地
4 対抗電極(中空パイプ状構造)
5 安全バリヤ構造物
6 高抵抗樹脂の板
7 静電反発板
8 正の高電圧電源
9 負イオン発生器
10 マイナスイオン
11 保護抵抗
12 イオン発生器本体
13 高抵抗の針電極
14 補助針電極
15 針の対抗電極(丸穴型)
16 針の対抗電極(円筒型)
17 プロテクトガイド
18 電源コード
19 放電抵抗