(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030788
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】灰処理方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/18 20060101AFI20220210BHJP
B09B 1/00 20060101ALI20220210BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20220210BHJP
B65G 53/30 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
E02B3/18 D
B09B1/00 H ZAB
B09B5/00 N
B65G53/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135034
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐一
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AA50
4D004BB02
4D004CC20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】石炭灰を貯留部に効率よく均一に埋め立てることができる灰処理方法を提供する。
【解決手段】水が溜められる貯留部10に石炭灰6を処理する灰処理方法であって、貯留部10を石炭灰6のクリンカ61が処理される第1区画領域11と石炭灰6のフライアッシュ62が処理される第2区画領域12に区画する区画工程と、第1区画領域11の一側の陸地2から他側の堤防3の間に形成される複数の領域111,112,113毎にクリンカ61を埋め立てる工程であって、第1区画領域11の一側の領域111からクリンカを送り、領域111を石炭灰6で埋め立てた後に、他側に隣接する領域112へのクリンカ61の移送を開始するクリンカ移送工程と、平面視における第2区画領域12の中心付近にフライアッシュ62を送るフライアッシュ移送工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が溜められる貯留部に石炭灰を処理する灰処理方法であって、
前記貯留部を石炭灰のクリンカが処理される第1区画領域と石炭灰のフライアッシュが処理される第2区画領域に区画する区画工程と、
前記第1区画領域の一側の岸から他側の岸の間に形成される複数の領域毎にクリンカを埋め立てる工程であって、前記第1区画領域の一側の領域からクリンカを送り、当該領域を石炭灰で埋め立てた後に、他側に隣接する領域へのクリンカの移送を開始するクリンカ移送工程と、
平面視における前記第2区画領域の中心付近にフライアッシュを送るフライアッシュ移送工程と、を含む灰処理方法。
【請求項2】
前記貯留部に石炭灰を所定の高さまで堆積させた後に、種子を含み植物が成長する植物成長層を石炭灰の上に形成する後処理工程を更に含む請求項1に記載の灰処理方法。
【請求項3】
前記植物成長層は、種子が付いた網状部材である請求項2に記載の灰処理方法。
【請求項4】
前記区画工程では、前記第1区画領域の前記一側の岸から前記他側の岸の間に形成される前記複数の領域を互いに区画する区画壁を形成する請求項1から3の何れかに記載の灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水が溜められる貯留部に石炭灰等の廃棄物を投入して処理する処理方法が知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1~3がある。特許文献1には、スラリー流出口から石炭灰スラリーを凹部に流出させ、流出させた石炭灰スラリーの一部を溝部に沿って流しつつ、溝部内で石炭灰を沈降させる方法が記載されている。特許文献2には、埋立場の内部を複数に区劃し、各区劃中に有機系廃棄物を含む廃棄物を投棄することが記載されている。特許文献3には、焼却底灰を粒径が大きいものと小さいものとに分級し、それらを個別に埋め立てることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-118865号公報
【特許文献2】特開昭60-112908号公報
【特許文献3】特開2002-79207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、石炭灰には比較的粒径が大きく堆積し易いクリンカと粒径が小さく水に浮遊し易いフライアッシュが含まれる。特許文献1に記載の灰処理方法は、スラリー流出口の位置を変更せずに石炭灰を貯留部に流出させているので、遠方に分散せずスラリー流出口の周辺に堆積し易い傾向があった。一方、特許文献2に記載の灰処理方法は、陸に近い方の区劃から順に1区劃毎に埋め立てているが、水に浮遊し遠方に分散し易いフライアッシュの埋め立てに対して改善の余地があった。特許文献3では、石炭灰の粒子を粒径が大きいものと小さいもので別々の埋立区画に処理しているが、2つの埋立区画が離れている。従来技術にはクリンカとフライアッシュを貯留部に効率よく均一に埋め立てる点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、石炭灰を貯留部に効率よく均一に埋め立てることができる灰処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水が溜められる貯留部に石炭灰を処理する灰処理方法であって、前記貯留部を石炭灰のクリンカが処理される第1区画領域と石炭灰のフライアッシュが処理される第2区画領域に区画する区画工程と、前記第1区画領域の一側の岸から他側の岸の間に形成される複数の領域毎にクリンカを埋め立てる工程であって、前記第1区画領域の一側の領域からクリンカを送り、当該領域を石炭灰で埋め立てた後に、他側に隣接する領域へのクリンカの移送を開始するクリンカ移送工程と、平面視における前記第2区画領域の中心付近にフライアッシュを送るフライアッシュ移送工程と、を含む。
【0007】
前記貯留部に石炭灰を所定の高さまで堆積させた後に、種子を含み植物が成長する植物成長層を石炭灰の上に形成する後処理工程を更に含む。
【0008】
前記植物成長層は、種子が付いた網状部材である。
【0009】
前記区画工程では、前記第1区画領域の前記一側の岸から前記他側の岸の間に形成される前記複数の領域を互いに区画する区画壁を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、石炭灰を貯留部に効率よく均一に埋め立てることができる灰処理方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の灰処理方法が用いられる灰処理設備を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の灰処理方法によって貯留部の第1区画領域における石炭灰が処理される様子を示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の灰処理方法によって貯留部の第2区画領域における石炭灰が処理される様子を示す側面図である。
【
図4】本発明の変形例に係る灰処理方法が用いられる灰処理設備の第1区画領域を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る灰処理方法は、石炭火力発電所等から発生する石炭灰6を処理するための方法である。まず、本実施形態に係る灰処理方法が用いられる灰処理設備1について
図1を参照しながら説明する。
図1は灰処理設備1の平面図である。
【0014】
石炭灰6は、主にクリンカ61と、フライアッシュ62に大別される。クリンカ61は、石炭火力発電所のボイラ底部に落下した塊状の灰である。フライアッシュ62は、石炭火力発電所における燃焼ガスとともに吹き上げられて電気集塵機等で回収された微粒子である。フライアッシュ62は、その粒径がクリンカ61に比べて小さく、クリンカ61よりも多量に発生する。
【0015】
図1に示すように、灰処理設備1は、貯留部10と、移送管20と、貯留部10を区画する区画壁30と、を含んで構成される。
【0016】
貯留部10は、石炭灰6を入れて埋め立てられる領域である。貯留部10には、石炭灰6の飛散を防ぐために水が溜められる。本実施形態の貯留部10は、陸地2と堤防3,4,5によって囲まれた海や湖の一部である。陸地2は貯留部10の一側(
図1では左側)の岸であり、堤防3は陸地2の反対側である他側(
図1では右側)の岸である。堤防4,5は陸地2と堤防3の間を延びる堤防である。陸地2のある一側には、石炭灰6の供給源(図示省略)が設けられる。
【0017】
貯留部10は、区画壁30によって第1区画領域11と第2区画領域12に区画される。区画壁30は、平面視で堤防4と堤防5の間に形成され、貯留部10の陸地2と堤防3の間を延びる。区画壁30は、貯留部10の底部から立設するように形成される。
【0018】
区画壁30の材料は特に限定されない。例えば、本実施形態に係る区画壁30は、クリンカ61とセメント等の固化材の混合物からなる。処理対象であるクリンカ61を利用して区画壁30を設けているので、区画壁30の形成にかかる材料費の上昇を抑制できる。
【0019】
図1に示すように、第1区画領域11は、陸地2や堤防3,4、区画壁30によって囲まれる領域である。第1区画領域11では、石炭灰6のクリンカ61が処理される。本実施形態に係る灰処理方法では、第1区画領域は3つの領域111,112,113毎にクリンカ61が埋め立てられる。領域111は第1区画領域11のうち陸地2に隣接し、領域113は堤防3に隣接し、領域112は領域111と領域113の間に位置する。
【0020】
図1に示すように、第2区画領域12は、陸地2や堤防3,5、区画壁30によって囲まれる領域である。第2区画領域12では、石炭灰6のフライアッシュ62が処理される。本実施形態では、火力発電所からのフライアッシュ62の発生量がクリンカ61に比べて多いため、第2区画領域12の方が第1区画領域11よりもその体積が大きくなるように区画される。
【0021】
貯留部10には、第1区画領域11の水位を調整する水位調整部80を設けることが好ましい。本実施形態では、
図1に示すように、第1区画領域11における区画壁30の近傍に第1区画領域11の水位を調整する2つの水位調整部80が設けられる。水位調整部80は、全体として四角筒状に形成され、4つの側壁が貯留部10の底部に対して直交するように立設される。4つの側壁のうち1つは高さが調整可能な側壁81である。側壁81は、複数の角落し材によって形成される。具体的には、複数の角落し材が水位調整部80のガイド溝(図示せず)に差し込まれることで側壁81が形成される。側壁81の高さは、ガイド溝に差し込まれる角落し材の枚数に応じて変化する。
【0022】
水位調整部80は、側壁81と対向する側壁から区画壁30の下部を貫通し、第2区画領域12側に延びる配管82を備える。配管82によって、水位調整部80の内側と第2区画領域12が連通する。配管82は、第1区画領域11側から第2区画領域12側に向かって下り勾配を形成するように延びる。
【0023】
移送管20は、石炭灰6の供給源から貯留部10に石炭灰6を移送するための2本の管である。移送管20は、クリンカ移送管21とフライアッシュ移送管22を含む。
【0024】
クリンカ移送管21は、貯留部10の第1区画領域11の上方に設けられ、第1区画領域11の一側の陸地2から他側の堤防3に向かって延びる。石炭灰6のクリンカ61は、水と混合したスラリーの状態でクリンカ移送管21内を流れ、クリンカ移送管21の先端に設けられた送出口211から第1区画領域11に送られる。貯留部10への石炭灰6の処理が開始される前の状態では、送出口211は第1区画領域11のうち陸地2に隣接する領域111の上方に位置する。
【0025】
フライアッシュ移送管22は、貯留部10の第2区画領域12の上方に設けられ、第2区画領域12の一側の陸地2から他側の堤防3に向かって延びる。石炭灰6のフライアッシュ62は、水と混合したスラリーの状態でフライアッシュ移送管22内を流れ、フライアッシュ移送管22の先端に設けられた送出口221から第2区画領域12に送られる。フライアッシュ移送管22の送出口221は、平面視で第2区画領域12の中心付近に位置する。
【0026】
次に、本実施形態に係る灰処理方法について
図1から
図3を参照しながら説明する。
図2(A)は第1区画領域11の陸地2に隣接する領域111にクリンカ61を送る様子を示す図、
図2(B)は第1区画領域11の中心付近に位置する領域112にクリンカ61を送る様子を示す図、
図2(C)は第1区画領域11の堤防3に隣接する領域113にクリンカ61を送る様子を示す図である。
図3(A)は第2区画領域12にフライアッシュ62を送る様子を示す図、
図3(B)は第2区画領域12の埋め立てが完了した状態を示す図である。
【0027】
本実施形態に係る灰処理方法は、貯留部10を第1区画領域11と第2区画領域12に区画する区画工程と、第1区画領域11にクリンカ61を送るクリンカ移送工程と、第2区画領域12にフライアッシュ62を送るフライアッシュ移送工程と、貯留部10の第1区画領域11の領域111,112,113のそれぞれに石炭灰6を堆積させた後や第2区画領域12に石炭灰6を堆積させた後に、種子を含み植物が成長する植物成長層70を形成する後処理工程と、を含む。
【0028】
区画工程では、貯留部10をクリンカ61が処理される第1区画領域11とフライアッシュ62が処理される第2区画領域12に区画する。具体的には、
図1に示すように、貯留部10の堤防4から堤防5の間に2つの領域が区画されるように陸地2と堤防3の間を延びる区画壁30を形成する。上述の通り、区画壁30はクリンカ61とセメント等の固化材を混合して形成する。区画壁30は、貯留部10のうち半干陸部(波打ち際)に形成することが好ましい。区画壁30を水深の深い位置に形成する場合は、矢板を用いて区画壁30を形成することが好ましい。
【0029】
図1に示すように、本実施形態では、第1区画領域11における区画壁30の近傍に2つの水位調整部80を設ける。
【0030】
区画壁30や水位調整部80を設けた後に、第1区画領域11に水を送る。第1区画領域11に送られた水が、水位調整部80の側壁81を超えると、配管82を介して第2区画領域12に水が流入する。第2区画領域12の水位が第1区画領域11の水位よりも低い状態では、第1区画領域11の水位は側壁81の高さを超えることはない。即ち、第1区画領域11の水位は水位調整部80のガイド溝への角落し材の抜き差しにより調整できる。
【0031】
クリンカ移送工程では、水が溜められた第1区画領域11にクリンカ61を送り、第1区画領域11の陸地2から堤防3の間に形成される複数の領域111,112,113毎にクリンカ61を埋め立てる。クリンカ移送工程の詳細について
図2(A)から
図2(C)を参照しながら説明する。
【0032】
まず、
図2(A)に示すように、第1区画領域11の領域111の上方に位置するクリンカ移送管21の送出口211からスラリー状のクリンカ61を領域111に送る。このとき、クリンカ61が第1区画領域11の水面から露出して飛散しないように重機で均しながらクリンカ61を堆積させる。陸地2は重機で作業を行うための足場となる。
【0033】
図2(B)に示すように、クリンカ61を領域111の所定の高さまで堆積させた後に、後処理工程が行われ、領域111の埋立が完了する。後処理工程では、クリンカ61が飛散しないように植物成長層70を領域111に堆積したクリンカ61の上に形成する。
【0034】
図2(B)に示すように、領域111をクリンカ61で埋め立てた後に、クリンカ移送管21の送出口211が領域112の上方に位置するようにクリンカ移送管21を延ばす。そして、送出口211からスラリー状のクリンカ61を領域112に送る。このとき、クリンカ61が第1区画領域11の水面から露出して飛散しないように重機で均しながらクリンカ61を堆積させる。クリンカ61で埋め立てられた領域111は重機で作業を行うための足場となる。
【0035】
図2(C)に示すように、クリンカ61を領域112の所定の高さまで堆積させた後に、後処理工程が行われて領域112の埋立が完了する。即ち、クリンカ61が飛散しないように植物成長層70を領域112に堆積したクリンカ61の上に形成する。
【0036】
図2(C)に示すように、領域112をクリンカ61で埋め立てた後に、クリンカ移送管21の送出口211が領域113の上方に位置するようにクリンカ移送管21を延ばす。そして、送出口211からスラリー状のクリンカ61を領域113に送る。このとき、クリンカ61が第1区画領域11の水面から露出して飛散しないように重機で均しながらクリンカ61を堆積させる。クリンカ61で埋め立てられた領域111,112は重機で作業を行うための足場となる。
【0037】
クリンカ61を領域113の所定の高さまで堆積させた後に、植物成長層70を領域113に堆積したクリンカ61の上に形成し、第1区画領域11全体の埋立が完了する。
【0038】
本実施形態に係るクリンカ移送工程では、堆積し易いクリンカ61を第1区画領域11の一側の領域111から他側の領域113に向かって領域111,112,113毎に埋め立てられる。これにより、クリンカ61で埋め立てた領域111を足場として利用し、隣接する領域112の埋立作業に重機を使用できる。例えば、クリンカ61が領域112のうち送出口211の下方付近に偏って堆積しても、重機でクリンカ61を均すことができる。よって、第1区画領域11が均一になるように効率的にクリンカ61で埋め立てることができる。
【0039】
フライアッシュ移送工程では、水が溜められた第2区画領域12にフライアッシュ62を送る。具体的には、
図3(A)に示すように、第2区画領域12の中心付近の上方に位置するフライアッシュ移送管22の送出口221からスラリー状のフライアッシュ62を第2区画領域12の中心付近に送る。
【0040】
図3(A)に示すように、フライアッシュ移送管22から第2区画領域12に送られたフライアッシュ62は、その粒径が小さいので、第2区画領域12の中心付近から水に浮遊しながら八方に分散される。
【0041】
図3(B)に示すように、フライアッシュ62を第2区画領域12の所定の高さまで堆積させた後に、後処理工程を行い、第2区画領域12の埋立が完了する。即ち、フライアッシュ62が飛散しないように植物成長層70を第2区画領域12の上に形成する。植物成長層70では、その下に堆積された石炭灰6が肥料となり、種子が発芽して植物が成長する。本実施形態に係る植物成長層70は、種子が付いた網状部材であり、石炭灰6上に敷かれる。
【0042】
本実施形態のフライアッシュ移送工程では、フライアッシュ62を第2区画領域12の中心付近に送る。これにより、粒径が小さいフライアッシュ62が第2区画領域の中心付近から全体に水に浮遊しながら拡散される。よって、フライアッシュ62を第2区画領域12に流入させる位置を変更せずに第2区画領域12が均一になるように効率的にフライアッシュ62で埋め立てることができる。
【0043】
また、クリンカ移送工程及びフライアッシュ移送工程における石炭灰6を堆積させる所定の高さは区画壁30と略同じ高さであることが好ましい。これにより、貯留部10全体をより均一に埋め立てることができる。
【0044】
次に、上記実施形態の変形例に係る灰処理方法について説明する。
図4は変形例に係る灰処理方法が用いられる灰処理設備1Aの第1区画領域11Aを示す図である。なお、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0045】
灰処理設備1Aは、貯留部10と、クリンカ移送管21と、フライアッシュ移送管22と、区画壁30と、を含んで構成される。貯留部10は、区画壁30によって第1区画領域11と第2区画領域12に区画される。本実施形態では、第2区画領域12の方が第1区画領域11Aよりもその体積が大きくなるように区画される。
【0046】
灰処理設備1Aは、第1区画領域11の構成が灰処理設備1と主に異なる。灰処理設備1Aでは灰処理設備1と同様に第1区画領域11Aの陸地2から堤防3の間に領域111,112,113が形成される。灰処理設備1Aでは、領域111,112,113が互いに区画されるように区画壁31,32が形成される。区画壁31,32は、貯留部10の底部から立設するように形成される。
【0047】
図4に示すように、区画壁31,32は区画壁30から堤防4の間を延びるように間隔を空けて形成される。また、区画壁31は区画壁32よりも一側に位置する。区画壁31,32によって第1区画領域11は、陸地2と区画壁31の間に形成される領域111と、区画壁31と区画壁32の間に形成される領域112と、区画壁32と堤防3の間に形成される領域113に区画される。また、領域111や領域112、領域113における区画壁30の近傍には、水位調整部80が設けられる。
【0048】
変形例の灰処理方法は、区画工程が上記実施形態の灰処理方法と異なる。即ち、変形例の区画工程では、貯留部10を第1区画領域11と第2区画領域12に区画するための区画壁30を形成するとともに、第1区画領域11の陸地2から堤防3に形成される領域111,112,113を区画するように区画壁31,32を形成する。
【0049】
以上説明した実施形態に係る灰処理方法によれば、以下のような効果を奏する。
【0050】
本発明の実施形態に係る灰処理方法は、水が溜められる貯留部10に石炭灰6を処理する灰処理方法であって、貯留部10を石炭灰6のクリンカ61が処理される第1区画領域11と石炭灰6のフライアッシュ62が処理される第2区画領域12に区画する区画工程と、第1区画領域11の一側の陸地2から他側の堤防3の間に形成される複数の領域111,112,113毎にクリンカを埋め立てる工程であって、第1区画領域11の一側の領域111からクリンカ61を送り、領域111をクリンカ61で埋め立てた後に、他側に隣接する領域112へのクリンカ61の移送を開始するクリンカ移送工程と、平面視における第2区画領域12の中心付近にフライアッシュ62を送るフライアッシュ移送工程と、を含む。
【0051】
これにより、堆積し易いクリンカ61は第1区画領域11の一側の陸地2から他側の堤防3に向かって順に埋め立てられ、粒径が小さく水に浮遊する傾向にあるフライアッシュ62は第2区画領域12の中心付近に送られる。このため、第1区画領域11の陸地2や埋立が完了した領域を足場として利用して堆積し易いクリンカ61を重機で均しながら埋め立てることができる。また、クリンカ61に比べて多量に発生するフライアッシュ62は第2区画領域の中心付近から全体に水に浮遊しながら拡散される。このように、1つの貯留部10に対してクリンカ61及びフライアッシュ62のそれぞれの特性に適した方法を用いて石炭灰6を埋め立てることで、貯留部10全体を効率的よく均一に埋め立てることができる。
【0052】
本発明の実施形態に係る灰処理方法は、貯留部10に石炭灰6を所定の高さまで堆積させた後に、種子を含み植物が成長する植物成長層70を石炭灰6の上に形成する後処理工程を更に含む。
【0053】
これにより、第1区画領域11及び第2区画領域12に堆積した石炭灰6の飛散を防ぐとともに、堆積したフライアッシュ62等の石炭灰6を植物の肥料として有効に利用できる。
【0054】
本発明の実施形態に係る灰処理方法において、植物成長層70は、種子が付いた網状部材である。
【0055】
これにより、石炭灰6の上に網状部材を敷くという簡易な方法で植物成長層70を形成できる。
【0056】
本発明の実施形態に係る灰処理方法において、区画工程では、第1区画領域11Aの一側の陸地2から他側の堤防3の間に形成される複数の領域111~113を互いに区画する区画壁31,32を形成する。
【0057】
これにより、領域111~113が区画壁31,32によって区画されるので、埋立が完了した領域をより強固にすることができ、当該領域がより安定した足場になる。よって、より安全に堆積するクリンカ61を均しながら他側に隣接する領域の埋立作業を行うことができる。
【0058】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0059】
上記実施形態及び変形例では、第1区画領域11や第2区画領域12に石炭灰6を所定の高さまで堆積させた後に、植物の種子が付いた植物成長層70を堆積させた石炭灰6の上に敷いているが、後処理工程はこの方法に限定されない。例えば、堆積した石炭灰6に覆土してもよく、石炭灰6の固化物を敷き詰めてもよい。
【0060】
上記実施形態及び変形例では、第1区画領域11を陸地2から堤防3の間を3つの領域111,112,113に分けて領域111,112,113毎にクリンカ61を埋め立てたが、分けられる領域の数は特に限定されない。例えば、第1区画領域11を2つの領域に分けて領域毎に埋め立ててもよく、4つ以上の領域に分けて領域毎に埋め立ててもよい。
【0061】
上記実施形態及び変形例では、第2区画領域12の方が第1区画領域11よりもその体積が大きくなるように区画しているが、第1区画領域11と第2区画領域12を略同じ体積になるように区画してもよく、第1区画領域11の方が第2区画領域12よりもその体積を大きくなるように区画してもよい。
【0062】
上記実施形態及び変形例では、植物成長層70として種子が付いた網状部材を用いたが、植物成長層70の構造は特に限定されない。例えば、種子が付いたスポンジ状の部材であってもよい。
【0063】
上記実施形態及び変形例では、第1区画領域11の水位を調整する水位調整部80を設けたが、第2区画領域12における区画壁30の近傍に第2区画領域12の水位を調整する水位調整部を設けてもよい。
【0064】
上記実施形態及び変形例では、配管82を第1区画領域11側から第2区画領域12側に向かって下り勾配を形成するように延びる構造としたが、第2区画領域12側から第1区画領域11側に向かって下り勾配を形成するように延びる構造としてもよく、略水平に延びる構造としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1、1A 灰処理設備
2 陸地(岸)
3 堤防(岸)
6 石炭灰
10 貯留部
11 第1区画領域
12 第2区画領域
61 クリンカ
62 フライアッシュ