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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030820
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】紡糸引取機
(51)【国際特許分類】
   D01D 11/04 20060101AFI20220210BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
D01D11/04
D01D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135083
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045DA09
4L045DB07
4L045DB11
4L045DB20
(57)【要約】
【課題】互いに回転軸が平行な2つのローラ間における糸道の、回転軸と平行な方向へのずれを抑制する。
【解決手段】紡糸引取機1は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを送るゴデットローラ12と、ゴデットローラ12よりも糸走行方向の下流側に配置され、ゴデットローラ12によって送られる複数の糸Yを送るゴデットローラ13と、糸走行方向におけるゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に配置され、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間を走行する複数の糸Yの左右方向への移動を規制する糸道規制ガイド70とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置から紡出された複数の糸を送る第1糸送りローラと、
前記第1糸送りローラよりも糸走行方向の下流側に配置され、前記第1糸送りローラによって送られる前記複数の糸を送る第2糸送りローラと、
前記糸走行方向における前記第1糸送りローラと前記第2糸送りローラとの間に配置され、前記第1糸送りローラと前記第2糸送りローラとの間を走行する前記複数の糸の前記第2糸送りローラの回転軸と平行な方向への移動を規制する糸道規制ガイドと、を備えることを特徴とする紡糸引取機。
【請求項2】
前記第2糸送りローラは、糸掛け位置と、前記糸掛け位置よりも前記第1糸送りローラとの離間距離が大きい巻き取り位置との間で移動可能であり、
前記糸道規制ガイドは、前記第2糸送りローラと一体的に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の紡糸引取機。
【請求項3】
前記第1糸送りローラの回転軸と前記第2糸送りローラの回転軸とは互いに平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸引取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸送りローラを備えた紡糸引取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紡糸装置から紡出された複数の糸を引き取る引取ローラ(本発明の第1糸送りローラ)と、引取ローラによって引き取られた複数の糸を送る糸送りローラ(本発明の第2糸送りローラ)と、糸送りローラの下方において複数の糸を複数のボビンに巻き取る巻取軸とを有する紡糸引取装置が開示されている。引取ローラと糸送りローラとの間を走行する糸の糸道は、2つのローラの間の最短経路と略一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-165060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引取ローラの回転軸と糸送りローラの回転軸の設計位置とを比較すると、製造上、引取ローラの回転軸に対して糸送りローラの回転軸が僅かにずれることがある。糸道は2つのローラの間の最短経路と略一致するため、2つのローラの間を走行する糸の糸道は糸送りローラの回転軸のずれに伴って、糸送りローラの回転軸と平行な方向にずれることとなる。その結果、糸送りローラに巻き掛けられる糸は、糸送りローラの外周面上において、実際の設計位置よりも糸送りローラの回転軸と平行な方向にずれる。特に、2つのローラの間の距離が大きいほど、糸送りローラに巻き掛けられる糸の、糸送りローラの外周面上における回転軸と平行な方向へのずれは大きくなり、糸が糸送りローラの外周面から外れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、互いに回転軸が平行な2つのローラ間における糸道の、ローラの回転軸と平行な方向へのずれを抑制する紡糸引取機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の紡糸引取機は、紡糸装置から紡出された複数の糸を送る第1糸送りローラと、前記第1糸送りローラよりも糸走行方向の下流側に配置され、前記第1糸送りローラによって送られる前記複数の糸を送る第2糸送りローラと、前記糸走行方向における前記第1糸送りローラと前記第2糸送りローラとの間に配置され、前記第1糸送りローラと前記第2糸送りローラとの間を走行する前記複数の糸の前記第2糸送りローラの回転軸と平行な方向への移動を規制する糸道規制ガイドと、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の発明によれば、第1糸送りローラと第2糸送りローラとの間に配置された糸道規制ガイドに糸が掛けられることで、第1糸送りローラと糸道規制ガイドとの間を走行する糸の、第2糸送りローラの回転軸と平行な方向へのずれは抑制される。これにより、第1糸送りローラの回転軸と第2糸送りローラの回転軸とが、製造上わずかにずれていたとしても、第1糸送りローラと第2糸送りローラとの間を走行する複数の糸の、第2糸送りローラの回転軸と平行な方向へのずれを抑制することができる。
【0008】
第2の発明の紡糸引取機は、第1の発明において、前記第2糸送りローラは、糸掛け位置と、前記糸掛け位置よりも前記第1糸送りローラとの離間距離が大きい巻き取り位置との間で移動可能であり、前記糸道規制ガイドは、前記第2糸送りローラと一体的に移動可能であることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成の場合、仮に第1糸送りローラの回転軸と第2糸送りローラの回転軸とがずれていると、第2糸送りローラが糸掛け位置から巻取位置に移動するときに、第2糸送りローラに掛けられる糸の、第2糸送りローラの回転軸と平行な方向へのずれが増幅されてしまい、第2糸送りローラから糸が外れてしまうおそれがある。この点、本発明のように糸道規制ガイドを設けていれば、第2糸送りローラに巻き掛けられる糸の、第2糸送りローラの回転軸と平行な方向へのずれの増幅を抑えることができ、第2糸送りローラの巻取位置への移動時に糸が外れることを防止できる。
【0010】
第3の発明の紡糸引取機は、第1又は第2の発明において、前記第1糸送りローラの回転軸と前記第2糸送りローラの回転軸とは互いに平行であることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明によれば、第1糸送りローラの回転軸と第2糸送りローラの回転軸とが平行であることによって、糸道規制ガイドによる糸の屈曲が抑制され、糸の物性に悪影響を及ぼす糸へのダメージを抑制できる
【発明の効果】
【0012】
紡糸引取機において、互いに回転軸が平行な2つのローラ間における糸道の、ローラの回転軸と平行な方向へのずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る紡糸引取機を示す概略図である。
図2】糸の巻き取り時における交絡装置を示す図である。
図3】糸掛け時における交絡装置を示す図である。
図4】本実施形態の(a)糸掛け時の2つのゴデットローラ、及び、(b)糸巻き取り時の2つのゴデットローラを示す下面図である。
図5】従来の(a)糸掛け時の2つのゴデットローラ、及び、(b)糸巻き取り時の2つのゴデットローラを示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(紡糸引取機1の全体構成)
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る紡糸引取機1の概略構成図である。紡糸引取機1は、図1に示すように、紡糸装置2、油剤ガイド10、紡糸延伸装置3、ゴデットローラ12、13、交絡装置8、糸巻取装置4等を有する。以下、図1の紙面の上下方向を上下方向とし、紙面の左右方向を前後方向とする。また、図1の紙面に垂直な方向を左右方向とし、紙面表側を右方とする。なお、後述するボビンホルダ24の先端側は、作業者が紡糸引取機1を操作する側であって、これを前側とする。
【0015】
紡糸引取機1は、図1に示すように、紡糸装置2から連続的に紡出されたポリエステル等の溶融繊維材料が固化して形成された複数の糸Yを、紡糸延伸装置3で延伸した後、糸巻取装置4で巻き取る構成となっている。
【0016】
紡糸装置2は、ポリエステル等の溶融繊維材料を複数のフィラメントFとして下方に連続的に紡出する。油剤ガイド10は、紡糸装置2から紡出された複数のフィラメントFをまとめて1本の糸Yにするとともに、糸Y(複数のフィラメントF)に油剤を付与する。油剤が付与された複数の糸Yは、紡糸延伸装置3に送られる。
【0017】
紡糸延伸装置3は、複数の糸Yを加熱延伸する装置であり、紡糸装置2の下方に配置されている。紡糸延伸装置3は、保温箱11と、保温箱11の内部に収容された複数の加熱ローラ(図示省略)とを有する。
【0018】
紡糸延伸装置3で延伸された複数の糸Yは、ゴデットローラ12(本発明の第1糸送りローラ)によって引き取られ、さらにゴデットローラ13(本発明の第2糸送りローラ)によって糸巻取装置4に送られる。
【0019】
ゴデットローラ12は、紡糸延伸装置3の下方に配置されている。ゴデットローラ13は、ゴデットローラ12よりも糸走行方向の下流側であって、ゴデットローラ12の後方上部に配置されている。また、ゴデットローラ12及びゴデットローラ13は、ローラ昇降機構7によって支持されている。
【0020】
ローラ昇降機構7は、ゴデットローラ12を回転可能に支持するブラケット14と、ゴデットローラ13を回転可能に支持する昇降ブラケット15と、固定フレーム16と、リニアガイド17と、不図示のモータとを含む。リニアガイド17は、一端部から他端部に向かって延びる部材である。リニアガイド17は、その長さ方向の一端部(図1中前側)が下、後端部(図1中後側)が上となるように、前後方向に対して斜めに配置されている。また、リニアガイド17は、水平方向に延びる固定フレーム16によって支持されている。ブラケット14は、リニアガイド17の一端部において、ゴデットローラ12の回転軸51(図4参照)がボビンホルダ24の軸方向と直交するように、ゴデットローラ12を回転可能に支持する。昇降ブラケット15は、ゴデットローラ13の回転軸52(図4参照)がボビンホルダ24の軸方向と直交するように、ゴデットローラ13を回転可能に支持する。昇降ブラケット15は、不図示のモータによって、リニアガイド17の長さ方向に沿って駆動される。
【0021】
ゴデットローラ13は、糸Yの糸掛け時、図1中破線で示すように、リニアガイド17の一端部に設置されたゴデットローラ12に近接する。糸掛け時におけるゴデットローラ13の位置が糸掛け位置である。また、ゴデットローラ13は、紡糸引取機1の糸巻取装置4による糸Yの巻き取り時、図1中実線で示すように、リニアガイド17の他端部であって、ボビンホルダ24の軸方向の略中央部上方に配置される。巻き取り時におけるゴデットローラ13の位置が巻き取り位置である。すなわち、ゴデットローラ13は、ローラ昇降機構7によって、糸掛け位置と、糸掛け位置よりもゴデットローラ12との離間距離が大きい巻き取り位置との間で移動可能である。
【0022】
交絡装置8は、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に配置され、1本の糸Yを構成する複数のフィラメントFを絡ませて交絡を付与する。交絡装置8は、図2及び図3に示すように、基材30と、交絡部31と、複数の上流糸ガイド32と、複数の下流糸ガイド33と、糸規制バー34とを有する。交絡装置8においては、糸Yは、前方から後方に向かうほど下方から上方に向かうように前後方向に対して傾いた糸走行方向に走行する。また、以下では、糸走行方向及び左右方向のいずれとも直交する方向を、交絡装置8の高さ方向とし、図2に示すように、高さ方向の一方側及び他方側を定義して説明を行う。
【0023】
基材30は、略直方体形状の部材である。交絡部31は、基材30の高さ方向における一方側の表面に形成されている。交絡部31には、左右方向に並んで複数の糸走行空間(不図示)が形成されている。複数の糸走行空間は、交絡部31の糸走行方向の全長にわたって延び、両端が開口している。それぞれの糸走行空間には、それぞれの糸Yが導入される。不図示の噴射部によって複数の糸走行空間に空気などの気体が供給されることで、糸走行空間を走行する糸Yを形成するフィラメントFに交絡が付与される。
【0024】
複数の上流糸ガイド32は、基材30の高さ方向における一方側の表面の、糸走行方向における交絡部31よりも上流側の部分に配置されており、左右方向に配列されている。上流糸ガイド32は、高さ方向に延びた柱状のものである。複数の下流糸ガイド33は、基材30の高さ方向における一方側の表面の、糸走行方向における交絡部31よりも下流側の部分に配置されており、左右方向に配列されている。下流糸ガイド33は、上流糸ガイド32と同様の柱状のものである。上流糸ガイド32と下流糸ガイド33とは、左右方向の位置がほぼ同じとなっている。そして、糸走行方向に走行する糸Yが、隣接する上流糸ガイド32の間、及び、隣接する下流糸ガイド33の間を通されることで、糸Yの左右方向への移動が規制されて、糸道が規定される。また、上流糸ガイド32及び下流糸ガイド33は、交絡部31において糸Yに交絡を付与する際に、糸Yを支持する機能を有する。
【0025】
糸規制バー34は、図3に示すように、紡糸引取機1への糸掛け時に糸Yが交絡部31の糸走行空間(不図示)に導入されてしまうのを規制するためのものである。糸規制バー34は、複数の上流糸ガイド32、複数の下流糸ガイド33にわたって左右方向に延びた、左右方向を軸方向とする略円柱形状の部材である。糸規制バー34は、右端部においてレバー42の先端部に片持ち支持されている。レバー42は、左右方向に延びた軸43を中心に揺動可能となっている。糸規制バー34は、紡糸引取機1への糸掛け時には、図3に示すように、上流糸ガイド32よりも糸走行方向の下流側且つ下流糸ガイド33よりも糸走行方向の上流側であって、上流糸ガイド32及び下流糸ガイド33よりも高さ方向の一方側の位置(以下、「規制位置」とすることがある)に位置している。また、糸規制バー34は、紡糸引取機1において、紡出された糸Yの巻き取り時には、図2に示すように、下流糸ガイド33よりも糸走行方向の下流側で、且つ、交絡装置8における糸道よりも高さ方向の他方側の位置(以下、「規制解除位置」とすることがある)に位置している。糸規制バー34が規制解除位置に位置している状態では、糸規制バー34は、糸Yと干渉することはなく、交絡部31の糸走行空間(不図示)への糸Yの導入を規制しない。
【0026】
糸巻取装置4は、複数の糸Yを巻き取る装置であり、紡糸延伸装置3の下方に配置されている。糸巻取装置4は、機台20と、複数の振支点ガイド21と、複数のトラバースガイド22と、ターレット23と、2つのボビンホルダ24、コンタクトローラ25と、支持枠体26と、を有する。
【0027】
機台20は糸巻取装置4の後部に配置されている。機台20の上部には、前後方向に延びる長尺なフレーム状の部材である支持枠体26が取り付けられている。また、機台20の、支持枠体26が取り付けられた位置よりも下方の位置にはターレット23が支持されている。
【0028】
複数の振支点ガイド21は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。複数の振支点ガイド21は、支持枠体26に支持されたガイド部材29に取り付けられており、複数の糸Yがそれぞれ掛けられることで、複数の糸Yのそれぞれが綾振りされる際の支点となる。
【0029】
複数のトラバースガイド22は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。複数のトラバースガイド22は、不図示のトラバースモータによって駆動され、前後方向に往復移動する。これにより、トラバースガイド22に掛けられた糸Yが振支点ガイド21を支点に綾振りされる。
【0030】
ターレット23は、軸方向が前後方向と略平行な円板状の部材であり、機台20に回転可能に支持されている。ターレット23は、不図示のモータによって回転駆動される。ターレット23は2つのボビンホルダ24を片持ち支持するとともに、前後方向と略平行な回転軸を中心に回転することで、2つのボビンホルダ24を移動させる。これにより、糸巻取装置4においては、糸Yの巻取が行われる巻取位置(図1における上側の位置)にあるボビンホルダ24と、糸Yの巻き取りが行われない待機位置(図1における下側の位置)にあるボビンホルダ24とを入れ替えることが可能となっている。そして、巻取位置にあるボビンホルダ24に装着されたボビンBに糸Yの巻き取りが行われている間に、待機位置にあるボビンホルダ24に対してボビンBの交換を行うことが可能になっている。
【0031】
2つのボビンホルダ24は、それぞれに複数のボビンBを装着するためのものである。2つのボビンホルダ24は、それぞれが機台20に支持されたターレット23の上端部及び下端部に回転自在に支持され、ターレット23から前方に延びている。言い換えると、2つのボビンホルダ24は、後方側に配置された機台20によって片持ち支持されている。2つのボビンホルダ24の軸方向は、前後方向と略平行である。
【0032】
各ボビンホルダ24には、複数の糸Yに対して個別に設けられた複数のボビンBが、前後方向に並んで装着されている。2つのボビンホルダ24は、それぞれ、個別の巻取モータ(不図示)によって回転駆動される。
【0033】
コンタクトローラ25は、支持枠体26の下部に回転可能に支持されている。コンタクトローラ25は、軸方向が前後方向と略平行なローラであり、上側のボビンホルダ24のすぐ上方に配置されている。コンタクトローラ25は、上側のボビンホルダ24に装着された複数のボビンBに複数の糸Yが巻き取られて形成される複数のパッケージPの外周面に当接することで、巻取中のパッケージPの外周面に接圧を付与して、パッケージPの形状を整える。
【0034】
ここで、ゴデットローラ12とゴデットローラ13とは、互いに回転軸が平行となるように設計されている。しかしながら、製造上、ゴデットローラ12の回転軸51に対してゴデットローラ13の回転軸52が僅かにずれることがある。例えば、図5に示すように、ゴデットローラ13の回転軸52は、ゴデットローラ12の回転軸51と平行な軸60に対して角度θだけずれる場合がある。なお、図5では、ローラ昇降機構7及び交絡装置8の記載は省略している。
【0035】
ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間を走行する複数の糸Yの糸道は、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間の最短経路と略一致する。このため、ゴデットローラ13の回転軸52が軸60に対して角度θだけずれると、複数の糸Yはゴデットローラ12とゴデットローラ13との間の最短経路を走行しようとして左右方向にずれる。その結果、ゴデットローラ13に掛けられる複数の糸Yは、ゴデットローラ13の外周面上において左右方向にずれることになる。
【0036】
上述したように、紡糸引取機1に複数の糸Yを糸掛けするときには、ゴデットローラ13はリニアガイド17の一端部に設置されたゴデットローラ12に近接した糸掛け位置に位置している。このため、糸掛け時においては、図5(a)に示すように、ゴデットローラ13に掛けられる複数の糸Yがゴデットローラ13の外周面上において左右方向に多少ずれたとしても、複数の糸Yは依然としてゴデットローラ13の外周面上に配置される。
【0037】
一方で、ゴデットローラ12及びゴデットローラ13を含む紡糸引取機1に糸Yの糸掛けが行われると、ゴデットローラ13はローラ昇降機構7によって斜め方向に駆動され、巻き取り位置、すなわち、リニアガイド17の他端部に配置される。この場合、図5(b)に示すように、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間の距離が大きくなる。そうすると、ゴデットローラ13に掛けられる複数の糸Yのゴデットローラ13の外周面上における左右方向のずれは大きくなり、一部の糸Yがゴデットローラ13の外周面から外れてしまうことがある。
【0038】
そこで、本実施形態の紡糸引取機1は、図1及び図4に示すように、糸走行方向におけるゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に配置され、ゴデットローラ13と一体的に移動可能な糸道規制ガイド70を有している。糸道規制ガイド70は、図1に示すように、ゴデットローラ13の近接位置であって、ゴデットローラ13よりも糸走行方向の上流側に配置されている。また、糸道規制ガイド70は、ゴデットローラ13と一体的にローラ昇降機構7に支持されており、ローラ昇降機構7によってゴデットローラ13と一体的に斜め方向に駆動される。すなわち、糸道規制ガイド70は、糸Yの糸掛け時、図1中破線で示すように、リニアガイド17の一端部に設置されたゴデットローラ12、及び、後述する支持枠体26の前部に近接する。また、糸道規制ガイド70は、糸Yの巻き取り時、図1中実線で示すように、リニアガイド17の他端部であって、ボビンホルダ24の軸方向の略中央部上方に配置される。
【0039】
糸道規制ガイド70は、図4に示すように、複数の柱状部材71を有している。複数の柱状部材71は、左右方向に配列されている。それぞれの柱状部材71は、高さ方向の他方側から一方側に延びている。糸道規制ガイド70とゴデットローラ13とは、左右方向の位置がほぼ同じとなっている。そして、糸走行方向に走行する糸Yが、隣接する柱状部材71の間を通されることで、糸Yの左右方向への移動が規制されて、糸道が規定される。複数の糸Yのそれぞれが隣接する柱状部材71の間を通された状態が、複数の糸Yが糸道規制ガイド70に掛けられた状態のことである。また、ゴデットローラ13の外周面上の複数の糸Yが掛けられる領域は、糸道規制ガイド70によって規定される。なお、図4では、ローラ昇降機構7及び交絡装置8の記載は省略している。
【0040】
また、複数の柱状部材71によって規定されるゴデットローラ12と糸道規制ガイド70との間の糸道と、交絡装置8の上流糸ガイド32、下流糸ガイド33及び規制位置にある糸規制バー34によって規定される複数の糸Yの糸道とが一致するように糸道規制ガイド70が配置される。
【0041】
なお、本実施形態において、糸道規制ガイド70は、糸走行方向の下流側のゴデットローラ13と近い位置に配置されることが好ましい。糸道規制ガイド70の柱状部材71の配列方向と、ゴデットローラ13の回転軸52とが平行ではない場合、糸道規制ガイド70とゴデットローラ13との間の距離が大きいほど、ゴデットローラ13に掛けられる糸Yの左右方向へのずれが増幅される。糸道規制ガイド70とゴデットローラ13とが近い位置に配置されることで、角度ずれによる複数の糸Yのゴデットローラ13の外周面上における左右方向のずれをできるだけ小さくすることができる。これにより、複数の糸Yがゴデットローラ13の外周面から外れにくくすることができる。
【0042】
(効果)
本実施形態の紡糸引取機1は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを送るゴデットローラ12と、ゴデットローラ12よりも糸走行方向の下流側に配置され、ゴデットローラ12によって送られる複数の糸Yを送るゴデットローラ13と、ゴデットローラ12の回転軸51とゴデットローラ13の回転軸52とは互いに平行であって、糸走行方向におけるゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に配置され、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間を走行する複数の糸Yの左右方向への移動を規制する糸道規制ガイド70とを備えている。
【0043】
本実施形態によれば、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間を走行する複数の糸Yの糸道は、ゴデットローラ12と糸道規制ガイド70との間の最短経路、及び、糸道規制ガイド70とゴデットローラ13との間の最短経路と略一致する。そして、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に配置された糸道規制ガイド70に複数の糸Yが掛けられることで、ゴデットローラ13の回転軸52が軸60から角度θずれていたとしても、ゴデットローラ12と糸道規制ガイド70との間を走行する糸Yの左右方向へのずれは抑制される。これにより、ゴデットローラ12の回転軸51とゴデットローラ13との回転軸52とが、製造上わずかにずれていたとしても、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間を走行する複数の糸Yの、左右方向へのずれを抑制することができる。また、ゴデットローラ12の回転軸51とゴデットローラ13の回転軸52とが平行であることによって、糸道規制ガイド70による糸Yの屈曲が抑制され、糸Yの物性に悪影響を及ぼす糸Yへのダメージを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態の紡糸引取機1は、ゴデットローラ13は、糸掛け位置と、糸掛け位置よりもゴデットローラ12との離間距離が大きい巻き取り位置との間で移動可能であり、糸道規制ガイド70は、ゴデットローラ13と一体的に移動可能である。
【0045】
ゴデットローラ12の回転軸51とゴデットローラ13の回転軸52とがずれていると、ゴデットローラ13が糸掛け位置から巻き取り位置に移動するときに、ゴデットローラ13上に掛けられる糸Yの左右方向へのずれが増幅されてしまい、ゴデットローラ13から糸Yが外れてしまうおそれがある。この点、本実施形態のように糸道規制ガイド70を設けていれば、ゴデットローラ13に巻き掛けられる糸Yの左右方向へのずれの増幅を抑えることができ、ゴデットローラ13の巻き取り位置への移動時に糸Yが外れることを防止できる。
【0046】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。以下に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0047】
上記実施形態では、糸道規制ガイド70は、ゴデットローラ12と、ローラ昇降機構7によって昇降するゴデットローラ13との間に配置され、ゴデットローラ13と一体的に昇降可能である。しかしながら、糸道規制ガイド70は、共に昇降しない2つのゴデットローラの間に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、ゴデットローラ12よりも糸走行方向の下流側に配置されたゴデットローラ13は、巻き取り位置にあるときに、ボビンホルダ24の軸方向の略中央部上方に配置されている。しかしながら、ゴデットローラ13は、巻き取り位置にあるときに、ボビンホルダ24の軸方向の略中央部上方に配置されていなくてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ゴデットローラ12の回転軸51及びゴデットローラ13の回転軸52はボビンホルダ24の軸方向と設計上直交している。そして、ゴデットローラ12とゴデットローラ13の間に配置された糸道規制ガイド70の複数の柱状部材71の配列方向は、ボビンホルダ24の軸方向と設計上直交している。しかしながら、ゴデットローラ12の回転軸51とゴデットローラ13の回転軸52はボビンホルダ24の軸方向と直交していなくてもよい。例えば、ゴデットローラ12の回転軸51及びゴデットローラ13の回転軸52がボビンホルダ24の軸方向と設計上平行であってもよい。この場合、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に配置された糸道規制ガイド70の複数の柱状部材71の配列方向は、ボビンホルダ24の軸方向と設計上平行である。また、この場合において、ゴデットローラ12及び13の回転軸と平行な方向の長さが、ボビンホルダ24の軸方向の長さよりも短いほど、糸道規制ガイド70による糸道のずれの抑制の効果がより見込めることは当然のことである。
【0049】
上記実施形態において、ローラ昇降機構7によるゴデットローラ13及び糸道規制ガイド70の移動は、制御装置によって自動で制御されてもよいし、作業者によって手動で行われてもよい。
【0050】
紡糸引取機1において、糸道規制ガイド70は、複数配置されていてもよい。この場合、それぞれの糸道規制ガイド70は、互いに回転軸が平行である2つの糸送りローラの間に配置される。
【0051】
上記実施形態では、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間に交絡装置8が配置されている。しかしながら、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間には交絡装置8が配置されていなくてもよい。また、ゴデットローラ12とゴデットローラ13との間には、交絡を付与するための交絡装置8に限らず、糸Yに付与された油剤の均一化を目的とするマイグレーションノズルが配置されていてもよく、その他の流体によって糸Yを処理する装置が配置されていてもよい。
【0052】
上記実施形態では、リニアガイド17は、その長さ方向の一端部が下、他端部が上となるように、前後方向に対して斜めに配置されている。しかしながら、リニアガイド17は、その長さ方向が水平方向に沿うように配置されていてもよく、その長さ方向が鉛直方向に沿うように配置されていてもよい。
【0053】
上記実施形態では、紡糸引取機1は、紡糸延伸装置3を有する構成である。しかしながら、紡糸引取機1は、紡糸延伸装置3を含まないものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 紡糸引取機
2 紡糸装置
7 ローラ昇降機構
8 交絡装置
12 ゴデットローラ(第1糸送りローラ)
13 ゴデットローラ(第2糸送りローラ)
24 ボビンホルダ
51 回転軸
52 回転軸
60 軸
70 糸規制ガイド
71 柱状部材
B ボビン
F フィラメント
P パッケージ
Y 糸
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5