(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030827
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】コーヒー抽出具
(51)【国際特許分類】
A47J 31/18 20060101AFI20220210BHJP
A47J 31/38 20060101ALI20220210BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A47J31/18
A47J31/38
A47J31/06 130
A47J31/06 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135101
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】520277829
【氏名又は名称】金指 博文
(71)【出願人】
【識別番号】505064138
【氏名又は名称】ゼロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】特許業務法人 いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金指 博文
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA09
4B104BA43
4B104BA55
4B104BA80
4B104EA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ピストンを押し下げなくてもコーヒー液を抽出できるコーヒー抽出具を提供する。
【解決手段】コーヒー抽出具1は、有底筒状の容器2と、フィルタ4を保持可能なピストン3とを有し、ピストン3の外周面31が容器2の内周面21に面摺接しながらピストン3が自重で下降可能に構成されている。ピストン3は、平面視円形の外周面31を有するピストン本体32と、ピストン本体32の下面に着脱可能に接続されるフィルタ押え33とを備えている。ピストン本体32の下面とフィルタ押え33の上面との間にフィルタ4が挟持されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器と、フィルタを保持可能なピストンとを有するコーヒー抽出具であって、
前記ピストンの外周面が前記容器の内周面に面摺接しながら前記ピストンが自重で下降可能に構成されている、
コーヒー抽出具。
【請求項2】
前記ピストンの外周面は、前記ピストンが水平姿勢を保ちながら下降する程度の高さ寸法を有している、
請求項1に記載のコーヒー抽出具。
【請求項3】
前記ピストンは着脱可能なウェイトを備えている、
請求項1又は2に記載のコーヒー抽出具。
【請求項4】
前記ピストンは、平面視円形の前記外周面を有するピストン本体と、前記ピストン本体に着脱可能に接続されるとともに前記ピストン本体との間に前記フィルタを挟持するフィルタ押えと、
前記ピストン本体及び前記フィルタ押えは、前記フィルタを挟んで互いに対向する面にそれぞれ液流通孔が穿設されており、前記ピストン本体の液流通孔と前記フィルタ押えの液流通孔との重なり具合で抽出液流量を調節可能に構成している、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコーヒー抽出具。
【請求項5】
前記容器は、前記内周面を有する筒状の容器本体と、前記容器本体の下端開口を塞ぐ閉塞用底部材とを備え、前記閉塞用底部材が着脱可能に構成されるとともに、前記閉塞用底部材を、底フィルタ及び底抽出孔を有する抽出用底部材に交換可能に構成されている、
請求項1に記載のコーヒー抽出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー抽出具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器にコーヒー粉と熱湯とを入れてコーヒー液を抽出した後、フィルタを有するピストンを容器の底まで押し下げてピストンの上方にコーヒー液を抽出する、いわゆるフレンチプレス方式のコーヒー抽出具が知られている(例えば特許文献1を参照)。この種のコーヒー抽出具は、コーヒープレス方式とも呼ばれ、使用者は、ピストンの上方に抽出したコーヒー液をカップなどの他の容器に移して飲むのが通常である。
【0003】
このようなフレンチプレス式のコーヒー抽出具では、ピストンの外周部と容器の内周面との間からコーヒー粉がピストン上方へ流れ込むのを防止するために、ピストンの外周部にシール部材を設けている。当該シール部材は、弾性体で形成され、容器の内周面に密着することでピストンと容器との隙間を埋めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコーヒー抽出具では、ピストン外周部のシール部材と容器内周面との間に摩擦抵抗が生じ、使用者は、コーヒー液を抽出する際にピストンを押し下げる必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、ピストンを押し下げなくてもコーヒー液を抽出できるコーヒー抽出具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコーヒー抽出具は、有底筒状の容器と、フィルタを保持可能なピストンとを有し、前記ピストンの外周面が前記容器の内周面に面摺接しながら前記ピストンが自重で下降可能に構成されているものである。
【0008】
本発明のコーヒー抽出具によれば、ピストンの外周面を容器の内周面に面接触させることで、ピストンの外周面と容器内周面との隙間からコーヒー粉がピストン上方へ流れ込むのを抑制できるとともに、コーヒー液を抽出する際にピストンは自重で下降するので、ピストンを押し下げる手間がなくなる。さらに、ピストンが自重でゆっくり沈み込む様子を見つめる使用者に暫しの安らぎを与えることができ、嗜好品としての付加価値を高めることができる。
【0009】
本発明のコーヒー抽出具において、前記ピストンの外周面は、前記ピストンが水平姿勢を保ちながら下降する程度の高さ寸法を有しているようにしてもよい。
【0010】
このような態様によれば、ピストンの傾斜に起因してピストンの外周面と容器内周面との隙間が大きくなるのを防止できる。これにより、コーヒー粉のピストン上方への流入をより確実に抑制できるとともに、ピストンの下降速さの増加を抑制できる。
【0011】
本発明のコーヒー抽出具において、前記ピストンは着脱可能なウェイトを備えているようにしてもよい。
【0012】
このような態様によれば、ウェイトを含むピストンの重さを変更することで、使用者の好みに合わせてピストンの下降速さやコーヒー液の濃さを変えることができ、使い勝手が良い。
【0013】
本発明のコーヒー抽出具において、前記ピストンは、平面視円形の前記外周面を有するピストン本体と、前記ピストン本体に着脱可能に接続されるとともに前記ピストン本体との間に前記フィルタを挟持するフィルタ押えと、前記ピストン本体及び前記フィルタ押えは、前記フィルタを挟んで互いに対向する面にそれぞれ液流通孔が穿設されており、前記ピストン本体の液流通孔と前記フィルタ押えの液流通孔との重なり具合で抽出液流量を調節可能に構成しているようにしてもよい。
【0014】
このような態様によれば、ピストン上方へ流れるコーヒー液の流量を調節することで、使用者の好みに合わせてピストンの下降速さやコーヒー液の濃さを変えることができ、使い勝手が良い。
【0015】
本発明のコーヒー抽出具において、前記容器は、円筒形の容器本体と、前記容器本体の下端開口を塞ぐ閉塞用底部材とを備え、前記閉塞用底部材が着脱可能に構成されるとともに、前記閉塞用底部材を、底フィルタ及び底抽出孔を有する抽出用底部材に交換可能に構成されているようにしてもよい。
【0016】
このような態様によれば、使用者の気分や好みに合わせて、コーヒー液をピストン上方へ抽出するか、コーヒー抽出具の下方に配置したカップ等の容器に抽出するかを選択でき、ユーザーフレンドリーである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ピストンを押し下げなくてもコーヒー液を抽出できるコーヒー抽出具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】コーヒー抽出具の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】同実施形態を示す図であり、(A)は縦断面図、(B)は平面図である。
【
図4】(A)~(C)は同実施形態の使用時の動作を説明するための縦断面図、(D)はピストンにおける上下の液流通孔の重なり具合の一例を示す平面図である。
【
図5】抽出用底部材を有する実施形態を分離して示す縦断面図である。
【
図6】(A)は同実施形態の使用状態を示す縦断面図、(B)はピストンにおける上下の液流通孔の重なり具合を示す平面図である。
【
図7】コーヒー抽出具の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図8】(A)は同実施形態を分解して示す縦断面図、(B)は平面図である。
【
図9】同実施形態のシャッター部材の液流通孔とピストン本体の液流通孔との位置関係の変化を説明するための平面図である。
【
図10】同実施形態の使用時の動作を説明するための縦断面図である。
【
図11】(A)は抽出用底部材を有する実施形態を分離して示す縦断面図、(B)はピストンにおけるシャッター部材の液流通孔とピストン本体の液流通孔との位置関係を示す平面図である。
【
図12】同実施形態の使用状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、コーヒー抽出具の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図4に示すように、コーヒー抽出具1は、有底筒状の容器2と、フィルタ4を保持可能なピストン3とを備えている。そして、コーヒー抽出具1は、ピストン3の外周面31が容器2の内周面21に面摺接しながらピストン3が自重で下降可能に構成されている。本実施形態では、ピストン3の外周面31と容器2の内周面21との隙間は、コーヒー粉が通過不能な大きさ、例えば20~800μm程度の大きさである。
【0020】
コーヒー抽出具1は、ピストン3の外周面31を容器2の内周面21に面接触させることで、外周面31と内周面21との隙間からコーヒー粉がピストン3の上方へ流れ込むのを抑制できるとともに、コーヒー液を抽出する際にピストン3は自重で下降するので、ピストン3を押し下げる手間がなくなる。
【0021】
次に、コーヒー抽出具1の各部の詳細について説明する。
図1~
図3に示すように、容器2は、平面視円形の内周面21を有する円筒状の容器本体22と、容器本体22の下端開口を塞ぐ略円盤形の閉塞用底部材23とを備えている。閉塞用底部材23は、容器本体22の下端部にねじ連結にて着脱可能に取り付けられている。
【0022】
容器本体22及び閉塞用底部材23は、例えば金属製(ここではステンレス製又はアルミニウム合金製)である。特に、容器本体22を金属製とすることで、内周面21の内径を精密加工することができ、寸法誤差を小さくできる。
【0023】
ピストン3は、平面視円形の外周面31を有するピストン本体32と、ピストン本体32の下面に着脱可能に接続されるフィルタ押え33とを備えている。ピストン本体32の下面とフィルタ押え33の上面との間にフィルタ4が挟持されている。
【0024】
ピストン本体32は略円盤形であり、本実施形態では上面が凹状に形成されて中空状(略桶形状)になっている。容器2の内周面21に面摺接するピストン本体32の外周面31の外径は、外周面31と内周面21との隙間がコーヒー粉の粒径よりも小さくなるように、内周面21の内径よりも僅か(例えば20~400μm程度)に小さい。また、ピストン本体32の外周面31は、ピストン3が水平姿勢を保ちながら容器2内部を下降する程度の高さ寸法を有している。
【0025】
ピストン本体32及びフィルタ押え33は、例えば金属製(ここではステンレス製又はアルミニウム合金製)である。特に、ピストン本体32を金属製とすることで精密加工でき、外周面31の外径の寸法誤差を小さくできる。
【0026】
ピストン本体32及びフィルタ押え33は、フィルタ4を挟んで互いに対向する面にそれぞれ液流通孔32a,33aが穿設されている。本実施形態では、ピストン本体32とフィルタ押え33それぞれに、同心円上に等間隔で液流通孔32a又は33aが4つずつ形成されている。ピストン本体32の液流通孔32aとフィルタ押え33の液流通孔33aとを重ね合せることで、液体がピストン3の液流通孔32a,33aを介して上下方向に流通可能に構成されている。
【0027】
液流通孔32aと液流通孔33aとの間にはフィルタ4が介在している。フィルタ4は、コーヒー粉の通過を阻止するフィルタであり、例えば円形の金属製メッシュフィルタである。
【0028】
ピストン3は、ピストン本体32の中央部から上向きに延出した棒状部材34を備えている。棒状部材34は、上端に掴み部34aを有し、下端にピストン本体32とフィルタ押え33とを接続するための雄ねじ部34bを有している。雄ねじ部34bを、ピストン本体32の中央部に穿設した雌ねじ穴32bに上方からねじ込むことで、ピストン本体32に棒状部材34が着脱可能に接続される。
【0029】
雄ねじ部34bの先端部は、ピストン本体32の下面から下向きに突出しており、その突出した雄ねじ部34bに、フィルタ4の中央部に設けた挿通孔4bを嵌め込んだ上で、フィルタ押え33の中央部に穿設した雌ねじ穴33bをねじ連結する。これにより、フィルタ押え33がピストン本体32に着脱可能に取り付けられるとともに、ピストン本体32とフィルタ押え33との間にフィルタ4が挟持される。
【0030】
本実施形態では、フィルタ押え33の雌ねじ穴33bへの棒状部材34の雄ねじ部34bのねじ込み具合を調節することで、ピストン本体32の液流通孔32aとフィルタ押え33の液流通孔33aとの重なり具合を調節して、ピストン3を通過するコーヒー液(抽出液)の流量を調節可能になっている(
図4(D)参照)。
【0031】
また、ピストン3は、棒状部材34に遊嵌された複数のウェイト35を備えている。本実施形態では、ウェイト35は中央部に棒状部材34を挿通可能な挿通孔35aを有する円盤形の形態を有し、3つのウェイト35を挿通した棒状部材34をピストン本体32に接続することで、ウェイト35が脱落不能に保持される。なお、棒状部材34の掴み部34aは、ねじ連結にて棒状部材34の上端に着脱可能に設けられている。
【0032】
図3(A)に示すように、本実施形態では、ピストン3を容器2に収納した状態で、棒状部材34は、その上端部(掴み部34a)が容器2内に収まる長さに設けられており、容器2の上部に蓋部材5を装着可能になっている。蓋部材5は、例えば樹脂製であり、飲み口を設けた、いわゆるリッドとすることができる。
【0033】
次に、
図4も参照しながら、コーヒー抽出具1の使用について説明する。まず、
図4(A)に示すように、容器2にコーヒー豆を挽いたコーヒー粉と湯とを入れて混合液6とした後、容器2にピストン3を挿入する。ピストン3は、外周面31が容器2の内周面21に面摺接しながら自重で下降する。ピストン3と混合液6との間の空気は、大部分が液流通孔32a、フィルタ4及び液流通孔33aを介してピストン3の上方へ移動し、極一部がピストン3の外周面31と容器2の内周面21との隙間を通ってピストン3の上方へ移動する。
【0034】
図4(B)に示すように、自重で下降するピストン3が混合液6に到達すると、混合液6はピストン3の液流通孔33aに流れ込み、フィルタ4でコーヒー粉が濾過されて、コーヒー液7が液流通孔32aを介してピストン3の上方へ抽出する。
【0035】
図4(C)に示すように、ピストン3は自重で容器2の底付近まで下降し、混合液6に含まれるコーヒー粉が濃縮されてピストン3の下降を停止させる。これにより、ピストン3の上方へのコーヒー液7の抽出が完了する。
【0036】
使用者は、抽出したコーヒー液7を、容器2に口を付けて飲んでもよいし、カップ等の他の容器に移して飲んでもよい。また、使用者は、ピストン3の下降が停止した後、又はピストン3の下降中に、掴み部34aを把持してピストン3を持ち上げて、抽出したコーヒー液7の一部又は全部を混合液6に戻すことで、コーヒー液7の濃さを好みに応じて調節することも可能である。
【0037】
このように、コーヒー抽出具1は、ピストン3の外周面31を容器2の内周面21に面接触させることで、外周面31と内周面21との隙間からコーヒー粉がピストン3の上方へ流れ込むのを抑制できるとともに、ピストン3が自重で下降するので、ピストン3を押し下げる手間がなくなる。さらに、ピストン3が自重でゆっくり沈み込む様子を見つめる使用者に暫しの安らぎを与えることができ、嗜好品としての付加価値を高めることができる。
【0038】
また、コーヒー抽出具1において、ピストン3の外周面31は、ピストン3が水平姿勢を保ちながら下降する程度の高さ寸法を有しているので、ピストン3の傾斜に起因して外周面31と内周面21との隙間が大きくなるのを防止できる。これにより、混合液6内のコーヒー粉のピストン3上方への流入をより確実に抑制できるとともに、ピストン3の下降速さの増加を抑制できる。
【0039】
また、ピストン3は着脱可能なウェイト35を備えているので、ウェイト35を含むピストン3の重さを容易に変更でき、使用者の好みに合わせてピストン3の下降速さやコーヒー液7の濃さを変えることができ、使い勝手が良い。
【0040】
また、
図4(D)に示すように、ピストン本体32とフィルタ押え33とを相対的に回転させて、ピストン本体32の液流通孔32aとフィルタ押え33の液流通孔33aとの重なり具合を調節することで、ピストン3の下降時の抽出液流量(ピストン3の上方へ抽出するコーヒー液7の流量)を調節できる。これにより、使用者の好みに合わせてピストン3の下降速さやコーヒー液7の濃さを変えることができ、使い勝手が良い。
【0041】
次に、
図5及び
図6も参照しながら、コーヒー抽出具1の他の使用態様について説明する。上述のように、容器2は閉塞用底部材23が容器本体22に着脱可能に設けられており、この使用態様では、閉塞用底部材23を、底フィルタ24及び底抽出孔25を有する抽出用底部材26に交換可能に構成している。
【0042】
抽出用底部材26は、底抽出孔25を有する底部材本体27と、底部材本体27の上面側にねじ連結される底フィルタ押え28とを備え、底部材本体27と底フィルタ押え28との間に底フィルタ24を挟持している。
【0043】
底部材本体27は、下向き凸の略円錐形の形態を有し、底部材本体27の上端外周部が容器本体22の下端部にねじ連結可能に構成されている。底部材本体27の上面には、すり鉢状の凹部27aが設けられ、底抽出孔25は底部材本体27の中央部で凹部27aの底部から下方に貫通して設けられている。
【0044】
底フィルタ押え28は、下向き開口の略桶状の形態を有し、側壁下端の外周部が底部材本体27の凹部27aの内周面上部にねじ連結されることで、底部材本体27に着脱可能に接続される。底フィルタ押え28の上面部には、複数の流通孔28aが設けられており、
図6(A)に示すように、コーヒー粉と湯の混合液6が流通孔28aを介して底フィルタ押え28の下方へ流入可能に構成されている。
【0045】
底フィルタ24は、コーヒー粉の通過を阻止するフィルタであり、例えば円形の金属製メッシュフィルタである。底フィルタ24の周縁部は、底フィルタ押え28の側壁下端面と底部材本体27の凹部27aの周縁部との間に挟持される。この状態で、底フィルタ押え28の上面部と底フィルタ24との間には空間が形成され、コーヒー液の抽出時には当該空間内で混合液6が対流可能に構成されている。
【0046】
容器本体22に抽出用底部材26を取り付けた容器2を使用するときには、
図6(B)に示すように、ピストン3において、ピストン本体32とフィルタ押え33とを液流通孔32aと液流通孔33aとが重なり合わないようにして位置合わせする。
【0047】
コーヒー液7を抽出するときには、まず容器2をカップ等の容器8の上に設置する。次に、容器2にコーヒー粉と湯とを入れて混合液6とした後、容器2にピストン3を挿入する。ピストン3は、外周面31が容器2の内周面21に面摺接しながら自重で下降する。ピストン3と混合液6との間の空気は、ピストン3の重みで圧縮されるとともに、ピストン3の外周面31と容器2の内周面21との隙間を通って少しずつピストン3の上方へ抜け出る。このとき、ピストン3はゆっくりと沈み込む一方、混合液6はピストン3の重みで加圧され、底フィルタ24で濾過されたコーヒー液7が底抽出孔25を介して容器8内に抽出される。
【0048】
ピストン3と混合液6との間の空気が抜けきった後、ピストン3は、混合液6に接触し、混合液6を加圧しながら自重で容器本体22内を下降する。混合液6はピストン3の重みで加圧されながら底フィルタ24で濾過され、コーヒー液7が底抽出孔25から容器8内へ抽出する。なお、容器2の内周面21とピストン3の外周面31との隙間は、小さい(例えば20~800μm程度)ので、当該隙間から混合液6中のコーヒー粉がピストン3上方へ抜け出ることは、ほとんど無い。
【0049】
ピストン3が自重で容器2の底付近まで下降し、混合液6に含まれるコーヒー粉が濃縮されてピストン3の下降を停止させると、コーヒー液7の抽出が完了する。
【0050】
このように、コーヒー抽出具1は、使用者の気分や好みに合わせて、コーヒー液7をピストン3の上方へ抽出するか、コーヒー抽出具1の下方に配置したカップ等の容器8に抽出するかを選択でき、ユーザーフレンドリーである。
【0051】
次に、
図7~
図12を参照しながら、コーヒー抽出具1の他の実施形態について説明する。
図7~
図12において、
図1~
図6に示した実施形態と同様の部分を有する部分には同じ符号を付している。
【0052】
本実施形態のコーヒー抽出具1は、ピストン3にシャッター部材36を備えている。シャッター部材36は、ピストン本体32の液流通孔32aの形成面の上に配置される円盤状のシャッター部37と、シャッター部37の中央部から上向きに延出した筒部38とを有している。
【0053】
シャッター部37には、ピストン本体32の4つの液流通孔32aに対応して4つの液流通孔37aが設けられている。筒部38は、棒状部材34を挿通可能な丸パイプにて構成され、シャッター部37の中央部には筒部38の穴に繋がって棒状部材34を挿通可能な中央穴が形成されている。シャッター部37の中央穴及び筒部38に棒状部材34の軸部を挿通して棒状部材34をピストン本体32にねじ連結することで、シャッター部材36を棒状部材34の軸回りに回転可能に保持している。棒状部材34の掴み部34aは、筒部38の内径よりも大きなサイズを有しており、シャッター部材36は棒状部材34の軸部に抜け不能に遊嵌保持される。
【0054】
すなわち、ピストン3は、シャッター部材36の筒部38の上部を摘んで棒状部材34の軸回りに回転させることで、シャッター部37をピストン本体32に対して相対回転可能に構成されている。本実施形態では、シャッター部37の周縁部に切欠き凹部37bが設けられる一方、ピストン本体32には液流通孔32aの形成面の周縁部に上向きの突起部39が形成されており、切欠き凹部37bに突起部39を位置させることで、シャッター部37の回転許容範囲が規制されている。
【0055】
図9(A)に示すように、切欠き凹部37bの一端に突起部39が位置するときには液流通孔37aと液流通孔32aとが重なり合い、
図9(B)に示すように、切欠き凹部37bの他端に突起部39が位置するときには液流通孔37aと液流通孔32aとが重なり合わないように構成されている。
【0056】
また、
図9(C)に示すように、突起部39が切欠き凹部37bの中途部に位置するときには、液流通孔37aの一部分が液流通孔32aと重なる。ここで、切欠き凹部37bの側壁に、突起部39の側面部に係合する複数の凹部を等間隔に設け、シャッター部37を所定角度で段階的に回転可能に構成してもよい。
【0057】
なお、ウェイト35の挿通孔35aは、シャッター部材36の筒部38を挿通可能な大きさを有しており、ピストン3にウェイト35を取り付けるときには、ウェイト35は筒部38に遊嵌した状態で棒状部材34がピストン本体32にねじ連結にて固着される。
【0058】
本実施形態では、
図10(A)に示すように、ピストン3において、ピストン本体32とフィルタ押え33は、液流通孔32aと液流通孔33aとが重なり合うようにして配置される(
図3も参照)。そして、ピストン本体32の液流通孔32aとシャッター部材36の液流通孔37aとの重なり具合を調節することで、ピストン3の抽出液流量を調節可能に構成している。
【0059】
次に、
図10も参照しながら、本実施形態のコーヒー抽出具1の使用について説明する。
図10(A)に示すように、容器2にコーヒー粉と湯とを入れて混合液6とした後、容器2にピストン3を挿入すると、ピストン3は、外周面31が容器2の内周面21に面摺接しながら自重で下降する。
【0060】
図10(B)に示すように、ピストン3が混合液6に到達すると、混合液6はピストン3の液流通孔33aに流れ込み、フィルタ4で濾過されたコーヒー液7が液流通孔32a及びシャッター部材36の液流通孔37aを介してピストン3の上方へ抽出する。
【0061】
図10(C)に示すように、ピストン3が容器2の底付近まで下降し、混合液6に含まれるコーヒー粉が濃縮されてピストン3の下降を停止させると、ピストン3の上方へのコーヒー液7の抽出が完了する。
【0062】
その後、
図10(D)に示すように、シャッター部材36を棒状部材34の軸回りに回転させてシャッター部37にてピストン本体32の液流通孔32aを塞ぐ。これにより、混合液6とコーヒー液7とが隔離され、混合液6に抽出した苦み成分などの抽出成分がコーヒー液7に移動するのを阻止できる。このような構成は、コーヒー液7の抽出後に時間が経過してもコーヒー液7の味が変化しないので、使用者が容器2を飲用のカップとして使用するときに特に有効である。
【0063】
図11及び
図12に示すように、容器2の容器本体22の下端部に抽出用底部材26を取り付けてコーヒー液7をカップ等の容器8に抽出する場合には、ピストン3において、シャッター部37にてピストン本体32の液流通孔32aを塞いでおく。これにより、混合液6がピストン3の上方へ流出するのを防止できる。
【0064】
ここで、シャッター部37の浮き上がりを防止するために、ピストン本体32の液流通孔32aの形成面周縁部に複数の突起部39を設け、シャッター部37の周縁部に複数の突起部39に対応して複数の切欠き凹部37bを設け、突起部39の先端部にシャッター部37の上面に係合する爪部を設けるようにしてもよい。
【0065】
また、シャッター部材36のシャッター部37がピストン本体32の液流通孔32aの形成面に接触した状態で、筒部38の上端部が棒状部材34の掴み部34aの下端部に接触するように構成することで、シャッター部37の浮き上がりを防止してもよい。
【0066】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0067】
例えば、有底筒状の容器2は、筒状部分と底部分とが一体的に形成されたものであってもよいし、二重構造(例えば真空断熱構造)のものであってもよいし、取っ手が固着されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 コーヒー抽出具
2 容器
3 ピストン
4 フィルタ
4b 挿通孔
5 蓋部材
6 混合液
7 コーヒー液
8 容器
21 内周面
22 容器本体
23 閉塞用底部材
24 底フィルタ
25 底抽出孔
26 抽出用底部材
27 底部材本体
27a 凹部
28 底フィルタ押え
28a 流通孔
31 外周面
32 ピストン本体
32a 液流通孔
32b 雌ねじ穴
33 フィルタ押え
33a 液流通孔
33b 雌ねじ穴
34 棒状部材
34a 掴み部
34b 雄ねじ部
35 ウェイト
35a 挿通孔
36 シャッター部材
37 シャッター部
37a 液流通孔
37b 切欠き凹部
38 筒部
39 突起部