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特開2022-30884積層体、光学フィルター、固体撮像装置および光センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030884
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】積層体、光学フィルター、固体撮像装置および光センサー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220210BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220210BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/22
B32B27/00 101
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135196
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】三井 達郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 達之
(72)【発明者】
【氏名】長屋 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸恵
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
4M118
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA12
2H148AA16
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA15
2H148CA17
4F100AA20C
4F100AA21D
4F100AH02B
4F100AH06B
4F100AH07B
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK52B
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA08C
4F100BA08D
4F100BA10D
4F100EH46B
4F100EJ54B
4F100EJ86B
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JG05C
4F100JG05D
4F100JK06
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA10
4M118BA14
4M118GC11
4M118GC20
(57)【要約】
【課題】湿熱耐性に優れ、かつ、無機膜、特に蒸着膜との密着性に優れる積層体を提供すること。
【解決手段】基材と、基材の少なくとも片面に樹脂層を有する積層体であって、該樹脂層は、ポリシロキサンを、樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部の量で含み、かつ、基材とは反対側の樹脂層表面の水との接触角(25℃)が90~110°である、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の少なくとも片面に樹脂層を有する積層体であって、
該樹脂層は、ポリシロキサンを、樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部の量で含み、かつ、基材とは反対側の樹脂層表面の水との接触角(25℃)が90~110°である、積層体。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、R13/2およびR232/2[R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、芳香族基またはポリエーテル基であり、これらの基は置換基を有していてもよく、R3はOHである。]で表される群より選ばれる少なくとも1つの構造を有するポリオルガノシロキサンである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材とは反対側の樹脂層表面の、X線光電子分光法により測定したSi原子含有量が、2.5~13.0Atomic%である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
少なくとも、前記樹脂層の前記基材とは反対側上に、誘電体多層膜を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層が、熱可塑性樹脂、または、熱もしくは光により硬化する硬化性樹脂により形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記熱もしくは光により硬化する硬化性樹脂が、アクリル系紫外線硬化型樹脂である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記樹脂層が、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、スクアリリウム系化合物およびクロコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材が樹脂製支持体またはガラス製支持体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材が、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、スクアリリウム系化合物およびクロコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体を含む、光学フィルター。
【請求項11】
近赤外線カットフィルター、シングルバンドパスフィルター、または、デュアルバンドパスフィルターである、請求項10に記載の光学フィルター。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体、または、請求項10もしくは11に記載の光学フィルターを含む、固体撮像装置。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体、または、請求項10もしくは11に記載の光学フィルターを含む、光センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、光学フィルター、固体撮像装置および光センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フィルムの傷付防止や、基材とその上に設けられる上層との密着性向上のために、硬化性樹脂組成物等の塗工により基材の表面に樹脂層を設けた積層体が広く使用されている。このような積層体は、タッチパネル等の表示装置、メンブレンスイッチ、キーパッド等の表面材料、液晶表示素子を構成する液晶セルの電極基板、位相差フィルム、タッチパネル用透明電極付フィルム、光学フィルム等の光学部材として用いられている。
【0003】
かかる積層体には、その樹脂層が、耐擦傷性、基材または上層との密着性、硬度等の種々の性能に優れることが要求される(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-27400号公報
【特許文献2】特許第6041372号公報
【特許文献3】特開2017-47683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、基材/樹脂層/無機膜を形成した積層体の開発が進んでおり、このような積層体を形成するための積層用材料の検討がなされている。光学部材等に用いられる積層体には、信頼性評価の一つとして高温高湿環境下で長期間保持した後においても、各層界面、特に、樹脂層と無機膜と界面の高い密着性が要求されるが、従来の樹脂層には、この樹脂層と無機膜との高い密着性の点で、改良の余地があった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、湿熱耐性に優れ、かつ、無機膜、特に蒸着膜との密着性に優れる積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
なお、本発明において、数値範囲を表す「A~B」等の記載は、「A以上、B以下」と同義であり、AおよびBをその数値範囲内に含む。
【0008】
[1] 基材と、基材の少なくとも片面に樹脂層を有する積層体であって、
該樹脂層は、ポリシロキサンを、樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部の量で含み、かつ、基材とは反対側の樹脂層表面の水との接触角(25℃)が90~110°である、積層体。
【0009】
[2] 前記ポリシロキサンが、R13/2およびR232/2[R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、芳香族基またはポリエーテル基であり、これらの基は置換基を有していてもよく、R3はOHである。]で表される群より選ばれる少なくとも1つの構造を有するポリオルガノシロキサンである、[1]に記載の積層体。
【0010】
[3] 前記基材とは反対側の樹脂層表面の、X線光電子分光法により測定したSi原子含有量が、2.5~13.0Atomic%である、[1]または[2]に記載の積層体。
【0011】
[4] 少なくとも、前記樹脂層の前記基材とは反対側上に、誘電体多層膜を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
【0012】
[5] 前記樹脂層が、熱可塑性樹脂、または、熱もしくは光により硬化する硬化性樹脂により形成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記熱もしくは光により硬化する硬化性樹脂が、アクリル系紫外線硬化型樹脂である、[5]に記載の積層体。
【0013】
[7] 前記樹脂層が、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、スクアリリウム系化合物およびクロコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
【0014】
[8] 前記基材が樹脂製支持体またはガラス製支持体を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9] 前記基材が、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、スクアリリウム系化合物およびクロコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
【0015】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の積層体を含む、光学フィルター。
[11] 近赤外線カットフィルター、シングルバンドパスフィルター、または、デュアルバンドパスフィルターである、[10]に記載の光学フィルター。
【0016】
[12] [1]~[9]のいずれかに記載の積層体、または、[10]もしくは[11]に記載の光学フィルターを含む、固体撮像装置。
【0017】
[13] [1]~[9]のいずれかに記載の積層体、または、[10]もしくは[11]に記載の光学フィルターを含む、光センサー。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、湿熱耐性に優れ、かつ、無機膜、特に蒸着膜との密着性に優れる積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、基材/樹脂層/無機膜の構成を含む積層体または光学フィルターを、高温高湿環境(例:温度85℃、湿度85%)下で長期間(例:1000時間)保持した後においても、無機膜(特に蒸着膜)と樹脂層との密着性に優れる積層体および光学フィルターを提供することができ、長期信頼性に優れる積層体および光学フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪積層体≫
本発明の一実施形態に係る積層体(以下「本積層体」ともいう。)は、基材と、基材の少なくとも片面に樹脂層(以下「Si含有樹脂層」ともいう。)を有し、
該Si含有樹脂層は、ポリシロキサンを、樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部の量で含み、かつ、基材とは反対側のSi含有樹脂層表面の水との接触角(25℃)が90~110°である。
【0020】
従来の樹脂層は、その上に無機膜を積層した場合、湿熱試験後に、樹脂層と無機膜との界面に剥がれが起りやすく、このような剥がれが生じた積層体は、光学特性などの所望の物性が損なわれていた。
本発明者が検討したところ、無機膜の剥がれが起こる一因として、樹脂層と無機膜との界面の水分が影響していると推測し、前記本積層体によれば、高温高湿環境下で長期間保持した後においても、このような無機膜の剥がれを抑制できることを見出した。これは、前記Si含有樹脂層の無機膜と接触しうる界面の水分を低減することができ、かつ、前記Si含有樹脂層が、無機膜(例:TiO2蒸着膜)と相互作用できることによるためであると推測している。
【0021】
本積層体は、本発明の効果がより発揮される等の点から、少なくとも、前記Si含有樹脂層の前記基材とは反対側上に、無機膜、特に誘電体多層膜を有する積層体であることが好ましい。これらの無機膜、誘電体多層膜は、蒸着膜であることが好ましい。
【0022】
本積層体は、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、前記基材のSi含有樹脂層が設けられた側と反対側の面、または、無機膜のSi含有樹脂層とは反対側の面に、基材や無機膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜やハードコート膜、帯電防止膜などの機能膜を適宜設けてもよい。
【0023】
本積層体は、タッチパネル等の表示装置、メンブレンスイッチ、キーパッド等の表面材料、液晶表示素子を構成する液晶セルの電極基板、位相差フィルム、タッチパネル用透明電極付フィルム、近赤外カットフィルター、シングルバンドパスフィルター(例:赤外線透過フィルター)、デュアルバンドパスフィルター(例:可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター)等の光学フィルター等の光学部材などに好適に用いることができる。
【0024】
本積層体を光学部材等に用いる場合、所望の光学特性を有する積層体を容易に得ることができる等の点から、本積層体のヘイズは、好ましくは0.0~0.5%、より好ましくは0.0~0.1%である。
該ヘイズは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
また、本積層体は、用いる用途によっては、具体的には、近赤外カットフィルターやデュアルバンドパスフィルターなどの光学フィルター等は、可視光透過性に優れることが好ましく、この場合、本積層体の垂直方向から測定した、波長430~580nmの光の平均透過率(Tb_ave)は、好ましくは75~98%、より好ましくは83~98%である。
該平均透過率は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
なお、本発明において、波長A~Bnmの平均透過率は、Anm以上Bnm以下の、1nm刻みの各波長における透過率を測定し、その透過率の合計を、測定した透過率の数(波長範囲、B-A+1)で除すことで算出した値である。
【0026】
<樹脂層(Si含有樹脂層)>
前記Si含有樹脂層は、樹脂100質量部と、ポリシロキサン0.01~1質量部とを含み、かつ、基材とは反対側のSi含有樹脂層表面の水との接触角(25℃)が90~110°である層であれば特に制限されない。
【0027】
高温高湿環境下で長期間保持した後においても、Si含有樹脂層上に形成された無機膜、特に誘電体多層膜の剥離をより抑制できる等の点から、前記接触角は、好ましくは92~105°、より好ましくは93~103°である。
このような接触角を有する樹脂層は、例えば、所定量のポリシロキサンを含有することで得ることができる。
該接触角は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
高温高湿環境下で長期間保持した後においても、Si含有樹脂層上に形成された無機膜、特に誘電体多層膜の剥離をより抑制できる等の点から、基材とは反対側のSi含有樹脂層表面の、X線光電子分光法により測定したSi原子含有量は、好ましくは2.5~13.0Atomic%、より好ましくは5.0~12.0Atomic%である。
Si原子含有量が前記範囲にあることで、Si含有樹脂層の表面にポリシロキサンが偏在し、無機膜(特に蒸着膜)と樹脂層との密着性に優れる積層体および光学フィルターを容易に得ることができる。
該Si原子含有量は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
本積層体は、Si含有樹脂層を1層のみ有していてもよく、Si含有樹脂層を2層以上有していてもよい。Si含有樹脂層を2層以上有する場合、基材の片面に2層以上のSi含有樹脂層を有していてもよいが、基材の両面にSi含有樹脂層を1層以上ずつ有していることが好ましい。また、Si含有樹脂層を2層以上有する場合、その基材とは反対側の最表層表面が前記接触角を満たせばよく、前記Si原子含有量を満たすことが好ましい。
なお、本発明において、基材や積層体の片面とは、基材や積層体の最も面積の大きい面(主面)の一方のことをいい、基材や積層体の両面とは、基材や積層体の主面の両方のことをいう。
【0030】
Si含有樹脂層の厚み(基材の片面に形成されるSi含有樹脂層の総厚み)は特に制限されないが、高温高湿環境下で長期間保持した後においても、Si含有樹脂層上に形成された無機膜、特に誘電体多層膜の剥離をより抑制でき、基材との密着性に優れ、基材を傷等から保護することができ、所望の光学特性を有する積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1~10.0μm、より好ましくは1.0~5.0μmである。
【0031】
[ポリシロキサン]
Si含有樹脂層に含まれるポリシロキサンは、Si含有樹脂層表面を疎水的、具体的には、接触角が前記範囲となるようにすることができるポリシロキサンであることが好ましい。
Si含有樹脂層に含まれるポリシロキサンは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0032】
ポリシロキサンとしては、Si含有樹脂層に含まれる樹脂や、Si含有樹脂層を形成する際に用いてもよい、下記硬化性化合物等との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、アルケニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロ基)を有さないポリシロキサンであることがより好ましく、界面活性剤であることが特に好ましい。
このようなポリシロキサンを用いることで、ポリシロキサンをSi含有樹脂層の表面に存在させる処理等を行わなくても、ポリシロキサンが表面に偏在するSi含有樹脂層を容易に形成することができ、接触角が前記範囲にあるSi含有樹脂層を容易に形成することができる。
【0033】
ポリシロキサンとしては、無機膜、特に誘電体多層膜との密着性に優れ、高温高湿環境下で長期間保持した後においても、Si含有樹脂層上に形成された無機膜、特に誘電体多層膜の剥離をより抑制できるSi含有樹脂層を容易に形成することができる等の点から、R13/2およびR232/2[R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、芳香族基またはポリエーテル基であり、これらの基は置換基を有していてもよく、R3はOHである。]で表される群より選ばれる少なくとも1つの構造を有するポリオルガノシロキサンであることが好ましく、R13/2およびR232/2で表される構造を有するポリオルガノシロキサンであることがより好ましい。
【0034】
なお、前記R13/2で表される構造とは、具体的には、下記式(I)で表される構造のことであり、前記R232/2で表される構造とは、具体的には、下記式(II)で表される構造のことである。
下記式(I)中のRは、R1と同義であり、下記式(II)中のRは、R2と同義であり、下記式(II)中のOHは、R3に対応する。
【0035】
【化1】
【0036】
前記炭素数1~12のアルキル基における炭素数としては、好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。
前記炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(n-Pr)、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基(n-Bu)、sec-ブチル基(s-Bu)、tert-ブチル基(t-Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基が好ましい。
【0037】
前記芳香族基としては、好ましくは炭素数6~14の芳香族基が挙げられる。
前記芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、アセナフチル基、フェナレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビフェニリル基が挙げられる。
【0038】
前記ポリエーテル基としては、-(RAO)nBで表される基が好ましい。ここで、RAは独立して、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、RBは、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、nは、1~30の整数が好ましい。
【0039】
前記置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、アセチル基、アルコキシ基が挙げられる。
【0040】
前記R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~14の芳香族基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基がより好ましい。
【0041】
ポリシロキサンは、例えば、前記R1またはR2を有する加水分解性のシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。また、ポリシロキサンとしては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、信越化学工業(株)製やダウ・東レ(株)製、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のポリシロキサン系界面活性剤等が挙げられる。
【0042】
前記シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアリールジアルコキシシラン;が挙げられる。シラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0043】
前記加水分解・縮合反応は、1種または2種以上のシラン化合物と水とを、好ましくは適当な触媒および有機溶媒の存在下で反応させることにより行うことができる。
前記加水分解・縮合反応の際には、混合液を撹拌してもよいし、還流下で反応を行ってもよい。
【0044】
前記加水分解・縮合反応に際し、水の使用量は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは0.5~100モルであり、より好ましくは1~30モルである。
【0045】
前記触媒としては、例えば、酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物が挙げられる。触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
触媒の使用量は、触媒の種類、反応温度などの反応条件などにより異なり、適宜に選択すればよいが、例えば、シラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01~3倍モルであり、より好ましくは0.05~1倍モルである。
【0046】
前記有機溶媒としては、例えば、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールが挙げられる。これらのうち、非水溶性または難水溶性の有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、シラン化合物の合計100質量部に対し、好ましくは10~10,000質量部、より好ましくは50~1,000質量部である。
【0047】
前記加水分解・縮合反応は、加熱下で行うことが好ましい。加水分解・縮合反応時には、加熱温度を130℃以下とすることが好ましく、40~100℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.5~12時間とすることが好ましく、1~8時間とすることがより好ましい。
【0048】
前記反応終了後には、反応液から分取した有機溶媒層を水等で洗浄することが好ましい。
【0049】
ポリシロキサンの、ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~50,000、より好ましくは200~10,000である。
該Mwが前記範囲にあると、ポリシロキサンが表面に偏在するSi含有樹脂層を容易に形成することができ、ポリシロキサンがブリードアウトすることを抑制することができ、接触角が前記範囲にあるSi含有樹脂層を容易に形成することができる。
【0050】
Si含有樹脂層中のポリシロキサンの含有量は、Si含有樹脂層中の樹脂100質量部に対し、0.01~1質量部であり、好ましくは0.05~0.5質量部、より好ましくは0.1~0.4質量部である。
ポリシロキサンの含有量が前記範囲にあると、無機膜、特に誘電体多層膜との密着性に優れ、高温高湿環境下で長期間保持した後においても、Si含有樹脂層上に形成された無機膜、特に誘電体多層膜の剥離をより抑制できるSi含有樹脂層を容易に形成することができる。
【0051】
[樹脂]
Si含有樹脂層を形成するために用いられる樹脂としては特に制限されないが、熱可塑性樹脂、または、熱もしくは光により硬化する硬化性樹脂であることが好ましい。
該樹脂としては、下記基材に用いられる樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。
Si含有樹脂層を形成するために用いられる樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0052】
Si含有樹脂層を形成するために用いられる樹脂としては、前記硬化性樹脂であることが好ましく、該硬化性樹脂としては、例えば、ビニル化合物類、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂が挙げられる。これらの中でも、アクリル系紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。
これらの硬化性樹脂は、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系化合物から選ばれる少なくとも1種の硬化性化合物と、1種または2種以上の公知の熱または光重合開始剤とを含む硬化性組成物から合成することができる。該硬化性組成物としては、例えば、アクリル系紫外線硬化型樹脂を合成する場合、分子内に一つ以上のアクリル基またはメタクリル基を有する硬化性化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物とを含有する硬化性組成物等が挙げられる。
【0053】
前記アクリレート系樹脂(アクリル系紫外線硬化型樹脂を含む)、ウレタンアクリレート系樹脂を合成する際の硬化性組成物に用いられ得る硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの硬化性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0054】
前記ウレタン系もしくはウレタンアクリレート系樹脂を合成する際の硬化性組成物に用いられ得る硬化性化合物としては、例えば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴウレタン(メタ)アクリレート類、ポリウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーが挙げられる。また、1種または2種以上のモノもしくはポリイソシアネート化合物と、1種または2種以上のモノもしくはポリオール化合物とを用いてもよい。
これら硬化性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0055】
前記ビニル系硬化性化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルが挙げられる。これらの硬化性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0056】
前記エポキシ系またはエポキシアクリレート系硬化性化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類、ポリエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーが挙げられる。これらの硬化性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0057】
前記硬化性組成物中の重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物中の硬化性化合物100質量部に対し、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0058】
前記硬化性組成物は、有機溶剤を含んでいてもよく、該有機溶剤としては、公知の有機溶剤を使用することができる。
有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これら有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0059】
[その他の成分]
Si含有樹脂層は、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、前記ポリシロキサンおよび樹脂以外のその他の成分を含んでいてもよい。
該その他の成分としては、樹脂層に用いられてきた従来公知の成分が挙げられ、具体的には、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、可塑剤、光吸収剤(例:可視光吸収剤、(近)赤外線吸収剤、紫外線吸収剤)、酸化防止剤、帯電防止剤、カップリング剤、顔料、染料、スリップ剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
これらのその他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0060】
本積層体を光学フィルターに用いる場合、基材またはSi含有樹脂層は、前記光吸収剤を含むことが好ましい。該光吸収剤の種類は、本積層体の用途に応じて適宜選択すればよい。
前記光吸収剤のうち、(近)赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アントラセン系化合物、特開2019-014707号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0061】
Si含有樹脂層が光吸収剤を含有する場合、該光吸収剤の含有量は、Si含有樹脂層中の樹脂100質量部に対し、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部である。
【0062】
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-ジオキシ-3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
【0063】
<基材>
前記基材は、本発明の効果を損なわない限り、材質、形状等は特に制限されないが、例えば、無機材などを含む基材、樹脂などを含む基材が挙げられ、板状体であることが好ましい。該基材は、単層であっても、多層であってもよい。
【0064】
基材としては、具体的には、下記(a)~(c)等が挙げられる。これらの中でも、所望の光学特性を有する積層体や光学フィルターを容易に得ることができる等の点から、下記(b)および(c)が好ましい。
(a)無機材からなる基材(近赤外線領域や近紫外線領域等に吸収を有していても有していなくてもよい。無機材製支持体ともいい、好ましくはガラス製支持体である。)
(b)樹脂からなる基材(下記添加剤を含んでいてもよく、含まなくてもよい。樹脂製支持体ともいう。)
(c)無機材製支持体や樹脂製支持体上に接着層等の他の層が積層された基材(無機材製支持体や樹脂製支持体は、近赤外線領域や近紫外線領域等に吸収を有していても有していなくてもよい。)
【0065】
前記基材の厚みは特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.01~0.3mm、より好ましくは0.015~0.2mm、特に好ましくは0.02~0.15mmである。
基材の厚みが前記範囲にあると、取り扱い容易性に優れ、得られた本積層体を、固体撮像装置、カメラモジュール、光センサー等に用いると、これらを薄くすることができ、より小型化が可能となる。
【0066】
[無機材]
前記無機材としては特に限定されないが、石英、無アルカリガラス、ホウケイ酸塩系ガラス、ケイ酸塩系ガラス、化学強化ガラス、物理強化ガラス、ソーダガラス、リン酸塩系ガラス、アルミナガラス、サファイアガラス、色ガラス、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラス等が挙げられる。
基材に用いられる無機材は、1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0067】
[樹脂]
基材に用いられる樹脂としては特に制限されず、従来公知の樹脂を用いることができる。
基材に用いられる樹脂は、1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0068】
前記樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルム(板)形状への成形性等に優れ、かつ、100℃以上程度の蒸着温度で行う高温蒸着で無機膜(誘電体多層膜)を形成し得る基材を容易に得ることができる等の点から、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、特に好ましくは120~360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のTgが140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得る基材が得られるため、特に好ましい。
【0069】
前記樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板の全光線透過率(JIS K 7375:2008)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となる樹脂が挙げられる。
全光線透過率が前記範囲にある樹脂を用いると、透明性に優れる樹脂組成物や光学フィルターを容易に得ることができる。
【0070】
前記樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000~350,000、好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000~150,000、好ましくは20,000~100,000である。
【0071】
前記樹脂としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
【0072】
・環状(ポリ)オレフィン系樹脂
環状(ポリ)オレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を用いて得られる樹脂、および、当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
【0073】
【化2】
【0074】
式(X0)中、Rx1~Rx4はそれぞれ独立に、下記(i')~(ix')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii’)トリアルキルシリル基
(iv’)酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(v’)置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(vi’)極性基(但し、(ii')および(iv’)を除く。)
(vii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(viii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(ix’)Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1とRx4は、それぞれ独立に前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
【0075】
【化3】
【0076】
式(Y0)中、Ry1およびRy2はそれぞれ独立に、前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表すか、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、kyおよびpyはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【0077】
・芳香族ポリエーテル系樹脂
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0078】
【化4】
【0079】
式(1)中、R1~R4はそれぞれ独立に、炭素数1~12の1価の有機基を示し、a~dはそれぞれ独立に、0~4の整数を示す。
【0080】
【化5】
【0081】
式(2)中、R1~R4およびa~dはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR1~R4およびa~dと同義であり、Yは、単結合、-SO2-または-CO-を示し、R7およびR8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhはそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R7はシアノ基ではない。
【0082】
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに、下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有していてもよい。
【0083】
【化6】
【0084】
式(3)中、R5およびR6はそれぞれ独立に、炭素数1~12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-CONH-、-COO-または炭素数1~12の2価の有機基を示し、eおよびfはそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、nは0または1を示す。
【0085】
【化7】
【0086】
式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfはそれぞれ独立に、前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0087】
・ポリイミド系樹脂
ポリイミド系樹脂としては特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば、特開2006-199945号公報や特開2008-163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0088】
・ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては特に制限されず、例えば特開2010-285505号公報や特開2011-197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0089】
・ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては特に制限されず、例えば、特開2008-163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0090】
・フッ素化芳香族ポリマー系樹脂
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては特に制限されないが、フッ素原子を少なくとも1つ有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであることが好ましく、例えば特開2008-181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0091】
・アクリル系紫外線硬化型樹脂
アクリル系紫外線硬化型樹脂としては特に制限されないが、分子内に一つ以上のアクリル基もしくはメタクリル基を有する化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物を含有する樹脂組成物から合成されるものを挙げることができる。
【0092】
・市販品
前記樹脂の市販品としては、以下の市販品等が挙げられる。環状(ポリ)オレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASが挙げられる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、例えば、住友化学(株)製スミカエクセルPESが挙げられる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、例えば、帝人(株)製ピュアエース、帝人(株)製パンライトSP-3810、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP-5000が挙げられる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTが挙げられる。アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、(株)日本触媒製アクリビュアが挙げられる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製シルプラスが挙げられる。
【0093】
[添加剤]
前記基材は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記Si含有樹脂層の欄に記載のその他の成分と同様の成分等を含んでいてもよい。
前記樹脂製支持体が光吸収剤を含有する場合、該光吸収剤の含有量も、前記Si含有樹脂層中の光吸収剤の含有量と同程度であればよい。
これら添加剤はそれぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0094】
[他の層]
前記基材は、前記他の層を、1層有していてもよく、2層以上有していてもよい。2層以上有する場合、同様の層を2層以上有していてもよく、異なる層を2層以上有していてもよい。
該他の層の具体例としては、接着層、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層が挙げられる。
他の層の厚みは特に制限されず、該層に求められる目的に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0.05~10μmである。
【0095】
<無機膜>
本積層体は、本発明の効果がより発揮される等の点から、少なくとも、Si含有樹脂層の基材とは反対側上に、無機膜を有する積層体であることが好ましい。
本積層体は、無機膜を1つのみ有していてもよく、無機膜を2つ以上有していてもよい。本積層体が無機膜を1つのみ有する場合、本発明の効果が発揮される等の点から、通常、該無機膜は、Si含有樹脂層の基材とは反対側上に、Si含有樹脂層に接して設けられる。
本積層体が無機膜を2つ以上有する場合、基材の片面に2つ以上の無機膜を有していてもよいが、基材の両面に無機膜を1つ以上ずつ有していていることが好ましい。このように、本積層体が無機膜を2つ以上有する場合であっても、本発明の効果が発揮される等の点から、該無機膜に接するのは、Si含有樹脂層であることが好ましい。
なお、ここで該無機膜が誘電体多層膜等の多層膜である場合、この多層膜を1つとしてカウントする。
【0096】
本積層体は、高温高湿環境下で長期間保持した後においても、無機膜が剥がれ難い等の点から、基材/Si含有樹脂層/無機膜、または、無機膜/Si含有樹脂層/基材/Si含有樹脂層/無機膜の各層をこの順で含む積層体であることが好ましい。
【0097】
前記無機膜としては、誘電体多層膜、ITO膜等の導電膜、金、白金、銅などの金属、これら金属の酸化物またはこれら金属を含む合金の膜等が挙げられ、これらの中でも、本積層体を光学フィルターに用いる場合、誘電体多層膜が好ましい。
前記無機膜としては、本発明の効果がより発揮される等の点から、蒸着膜であることが好ましい。
【0098】
[誘電体多層膜]
誘電体多層膜としては、例えば、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層体が挙げられる。
【0099】
前記高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料が挙げられ、屈折率が通常は1.7~2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、チタニア、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、チタニア、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたものが挙げられる。
【0100】
前記低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2~1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0101】
前記高屈折率材料層としては、チタニア層を用いることが好ましく、前記低屈折率材料層として、シリカ層を用いることが好ましい。これらチタニア層とシリカ層との積層体とする場合、Si含有樹脂層に接するのは、チタニア層であることが好ましい。
Si含有樹脂層にチタニア層が接することでこれらの層の相互作用により、誘電体多層膜とSi含有樹脂層とがより密着性に優れると考えられる。
【0102】
前記高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の物理膜厚は、通常、遮断しようとする波長をλ(nm)とすると、0.1λ~0.5λの厚みが好ましい。
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の物理膜厚がこの範囲にあると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)である光学的膜厚が、λ/4とほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
前記λ(nm)の値としては、NIR-CFの場合、例えば700~1400nm、好ましくは750~1300nmである。
【0103】
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、例えばNIR-CFの場合、本積層体全体として16~70層であることが好ましく、20~60層であることがより好ましい。各層の厚み、本積層体全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、本積層体の反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
【0104】
基材やSi含有樹脂層の光学特性等に合わせて、高屈折率材料層および低屈折率材料層を構成する材料種、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚み、積層の順番、積層数を適切に選択することで、透過したい波長域に十分な透過率を確保した上で、カットしたい波長域に十分な光線カット特性を有し、かつ、斜め方向から光が入射した際の反射率を低減することができる。
【0105】
ここで、誘電体多層膜の条件を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用い、透過したい波長域の反射防止効果と、カットしたい波長域の光線カット効果を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。
前記ソフトの場合、例えば、NIR-CFの誘電体多層膜を形成する場合には、波長400~700nmの目標透過率を100%、Target Toleranceの値を1とした上で、波長705~950nmの目標透過率を0%、Target Toleranceの値を0.5にするなどのパラメーター設定方法が挙げられる。
これらのパラメーターは基材やSi含有樹脂層の各種特性などに合わせて波長範囲をさらに細かく区切ってTarget Toleranceの値を変えることもできる。
【0106】
<本積層体の製造方法>
本積層体の製造方法としては特に制限されず、基板上に樹脂層(膜)を形成した後、基板を剥離して、得られた樹脂層(膜)を基材と積層する方法や、Tダイフィルム成形法やインフレーションフィルム成形法等の公知の多層フィルム成形方法により、基材形成用材料と樹脂層形成材料とを共押出しする方法等であってもよいが、基材上に前記硬化性組成物等の樹脂層形成材料を塗布して、硬化することで積層体を形成することが好ましい。
【0107】
前記塗布の方法としては、公知の方法を適宜選択可能である。
基材上に樹脂層形成材料を塗布した後、下記硬化の前に、例えば、塗布した樹脂層形成材料を乾燥させてもよい。
【0108】
前記硬化の方法としては特に制限されないが、加熱により硬化する方法、光を照射する方法などがあり、特に光を照射する方法が好ましい。
照射する光は、波長200~500nmの光が好ましい。光を照射する際や光を照射した後などに、加熱することによって、硬化を促進してもよい。
光を照射する際の温度条件は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下である。
光を照射する際の雰囲気は、大気下でもよいが、酸素阻害の影響を低減する等の点から、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
光の照射量(積算光量)は、例えば、50~20000mJ/cm2程度の範囲から選択可能であり、窒素雰囲気下の場合、好ましくは100mJ/cm2以上、より好ましくは200mJ/cm2以上であり、好ましくは10000mJ/cm2以下、より好ましくは8000mJ/cm2以下である。
【0109】
前記無機膜、特に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、本積層体のSi含有樹脂層上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
なお、無機膜を積層する際に、前記Si含有樹脂層等の表面をコロナ処理やプラズマ処理等で表面処理してもよいが、本発明によれば、このような表面処理をしなくても、十分な密着性を有する無機膜を形成することができる。
【0110】
なお、無機膜(誘電体多層膜)を形成した際に、本積層体にソリが生じてしまう場合には、これを解消するために、本積層体の両面に無機膜(誘電体多層膜)を形成したり、無機膜(誘電体多層膜)を形成した面に紫外線等の電磁波を照射する方法等を行ってもよい。なお、電磁波を照射する場合、無機膜(誘電体多層膜)の形成中に照射してもよいし、形成後別途照射してもよい。
【0111】
≪光学フィルター≫
本発明の一実施形態に係る光学フィルター(以下「本フィルター」ともいう。)は、本積層体を含めば特に制限されず、本フィルターは、本積層体であってもよい。
本フィルターとしては、基材と、Si含有樹脂層と、誘電体多層膜とを含むことが好ましく、基材/Si含有樹脂層/誘電体多層膜、または、誘電体多層膜/Si含有樹脂層/基材/Si含有樹脂層/誘電体多層膜の各層をこの順で含む積層体であることが好ましい。さらに、前記機能膜を含んでいてもよい。
【0112】
本フィルターとしては特に制限されず、近赤外カットフィルター(NIR-CF)、可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター等のデュアルバンドパスフィルター(DBPF)、赤外線透過フィルター(IRPF)等のシングルバンドパスフィルター(SBPF)などが挙げられ、本積層体は、これらのいずれの光学フィルターにも、好適に用いることができる。
また、本フィルターは、科学捜査等に用いられる代替光源(ALS:Alternative Light Sources)用のフィルターや、スマートフォンやタブレット端末等の情報端末装置に用いられる環境光センサー用光学フィルターとしても用いることができる。
【0113】
<NIR-CF>
前記NIR-CFは、波長850~1200nmの領域におけるカット性能に優れ、可視波長域での透過性に優れる光学フィルターであることが好ましい。
このNIR-CFで用いる前記誘電体多層膜は、近赤外線反射膜であることが好ましい。
【0114】
NIR-CFを固体撮像素子などに使用する場合、近赤外波長域の透過率は低い方が好ましい。特に、波長800~1200nmの領域は固体撮像素子の受光感度が比較的高いことが知られており、この波長域の透過率を低減させることにより、カメラ画像と人間の目との視感度補正を効果的に行うことができ、優れた色再現性を達成することができる。また、さらに、波長850~1200nmの領域の透過率を低減させることで、セキュリティ認証機能に用いる近赤外光がイメージセンサー等に到達するのを効果的に防ぐことが可能になる。
【0115】
NIR-CFは、波長850~1200nmの領域において、該フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。
波長850~1200nmの平均透過率がこの範囲にあると、近赤外線を十分にカットすることができ、優れた色再現性を達成できるため好ましい。
【0116】
NIR-CFを固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましい。具体的には、波長430~580nmの領域において、該フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上、特に好ましくは84%以上である。
波長430~580nmの平均透過率がこの範囲にあると、優れた撮像感度を達成することができる。
【0117】
<DBPF>
前記DBPFは、透過させたい2つの波長域の光を透過し、カットしたい波長域の光をカットする光学フィルターであれば特に制限されない。
DBPFの具体例としては、可視光線と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを透過し、近赤外線のうちカットしたい波長の光をカットする光学フィルターが挙げられる。このDBPFで用いる前記誘電体多層膜は、可視光と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを透過し、近赤外線のうちカットしたい波長の光をカットする膜であることが好ましい。
【0118】
DBPFもNIR-CFと同様に、固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましく、前記と同様の理由から、波長430~580nmの平均透過率が、NIR-CFの該平均透過率と同様の範囲にあることが好ましい。
【0119】
<IRPF>
前記IRPFは、可視光をカットし、近赤外線のうち透過させたい波長の光を透過する光学フィルターであれば特に制限されない。
このIRPFで用いる前記誘電体多層膜は、カットしたい波長の光(可視光および/または近赤外線のうちの一部)をカットする膜であることが好ましい。
また、IRPFは、可視光吸収剤を用いて可視光をカットしてもよい。
【0120】
IRPFは、赤外線監視カメラ、車載赤外線カメラ、赤外線通信、各種センシングシステム、赤外線警報機、暗視装置等の光学系に好適に使用でき、これらの用途に使用する場合、透過させたい近赤外線以外の波長の光の透過率は低い方が好ましい。
特に、波長380~700nmの領域において、本フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0121】
また、IRPFは、透過させたい近赤外線の透過率は高い方が好ましく、具体的には、波長750nm以上の領域に、光線透過帯を有し、該光線透過帯において、IRPFの垂直方向から測定した場合の最大透過率(TIR)は、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上である。
【0122】
<本フィルターの用途>
本フィルターは、例えば、カットしたい領域の波長の光のカット能と、透過したい波長の光の透過能に優れる。従って、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、赤外線カメラ、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、各種センシングシステム、赤外線通信等に有用である。さらに、自動車や建物等のガラス板等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0123】
≪固体撮像装置≫
本発明の一実施形態に係る固体撮像装置は、本積層体または本フィルターを含む。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSイメージセンサー等といった固体撮像素子を備えた装置であり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。
【0124】
≪光学センサー≫
本発明の一実施形態に係る光学センサーは、本積層体または本フィルターを含めば特に制限されず、従来公知の構成とすればよい。
例えば、受光素子と本フィルターとを有する装置が挙げられ、具体的には、受光素子(半導体基板)、保護膜、本フィルターおよび他のフィルター等を有する装置が挙げられる。
【実施例0125】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0126】
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、以下の方法で測定を行った。
ウォターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー(株)製のHタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0127】
<ガラス転移温度(Tg)>
(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0128】
<接触角>
接触角の測定は、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて以下の方法で測定した。
接触角は、25℃の条件下で、水平に置いた積層体に、マイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影し、得られた画像から、θ/2法により接触角を算出した。
【0129】
<ヘイズ>
積層体のヘイズは、(株)東洋精機製作所製のヘイズメーター(ヘイズガードII)を用いて測定した。積層体の異なる3か所について小数点第2位まで測定を行い、該3か所のヘイズ値の平均値の小数点第2位を四捨五入した。結果を表7に示す。
【0130】
<分光透過率>
積層体および光学フィルターの各波長域における透過率は、(株)日立ハイテク製の分光光度計(U-4100)を用いて測定した。なお、この透過率は、光が積層体および光学フィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。下記表7に記載のTb_ave、Tf_aveおよびTf_IRは、以下のとおりである。
・Tb_ave:積層体の垂直方向から測定した、波長430~580nmの光の平均透過率
・Tf_ave:光学フィルターの第一光学層側の垂直方向から測定した、波長430~580nmにおける平均透過率
・Tf_IR:光学フィルターの第一光学層側の垂直方向から測定した、波長800~900nmにおける平均透過率
【0131】
<Si含有樹脂層表面のSi原子含有量の測定方法>
積層体におけるSi含有樹脂層表面のSi原子含有量(Atomic%)は、X線光電子分光法装置(Quantum2000(アルバック・ファイ(株)製))を用いて、測定範囲約100μmφにおけるC、Si、O、Nの元素の定性、定量を行い、Si原子含有量(Atomic%)を、下記式により算出した。
Si原子含有量(Atomic%)=Si元素数×100/(C元素数+Si元素数+O元素数+N元素数)
【0132】
<膜密着性>
光学フィルターを、恒温恒湿槽(エスペック(株)製のPL-3J)を用いて、湿度85%および温度85℃の条件下にて1000時間処理した後、カッターを用い、誘電体多層膜(I)の表面に、Si含有樹脂層に届く深さで、1mm角の切り込みを入れ、該切り込み部の上からニチバン(株)製No.405のテープを貼り付け、90°方向へ一気に剥がした場合に、剥がれの無い場合を「○」、剥がれが発生した場合を「×」とした。
【0133】
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(x-1)および化合物(x-2)は、一般的に知られている方法で合成した。該方法としては、例えば、特開昭60-228448号公報、特開平1-146846号公報、特開平1-228960号公報、特許第4081149号公報、「フタロシアニン -化学と機能-」(アイピーシー、1997年)、特開2009-108267号公報、特開2010-241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報に記載されている方法を挙げることができる。
【0134】
[合成例1]
下記式(a)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン100質量部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18質量部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300質量部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2質量部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9質量部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することで開環重合反応させ、開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0135】
【化8】
【0136】
前記で得られた開環重合体溶液1,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12質量部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。得られた反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
【0137】
[合成例2]
特開2002-226490号公報に記載の方法でn-プロピルトリエトキシポリシロキサン(ポリシロキサン(a-1))を得た。
【0138】
[合成例3]
合成例2で用いたn-プロピルトリエトキシシランを、n-オクチルトリエトキシシランに変更した以外は合成例2と同様の方法で、n-オクチルトリエトキシポリシロキサン(ポリシロキサン(a-2))を得た。
【0139】
[合成例4]
合成例2で用いたn-プロピルトリエトキシシランを、フェニルトリエトキシシランに変更した以外は合成例2と同様の方法で、フェニルトリエトキシポリシロキサン(ポリシロキサン(a-3))を得た。
【0140】
[合成例5]
合成例4で得たポリシロキサン(a-3)を加水分解して、ポリシロキサン(a-3)の部分加水分解物(ポリシロキサン(a-4))を得た。
【0141】
[合成例6]
合成例2で用いたn-プロピルトリエトキシシランを、n-プロピルトリメトキシシランに変更した以外は合成例2と同様の方法で、n-プロピルトリメトキシポリシロキサン(ポリシロキサン(a-5))を得た。
【0142】
[実施例1]
容器に、合成例1で得られた樹脂A 100質量部と、塩化メチレンとを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの樹脂製基材を得た。
【0143】
得られた樹脂製基材の片面に、下記組成の樹脂組成物(1)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で3分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが3μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式UV露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,ピーク照度:200mW/cm2)を行い、樹脂組成物(1)を硬化させ、樹脂製基材上にSi含有樹脂層を形成した。同様に、樹脂製基材のもう一方の面にも樹脂組成物(1)を用いてSi含有樹脂層を形成し、樹脂製基材の両面に、ポリシロキサンを含むSi含有樹脂層を有する積層体を得た。
【0144】
樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、合成例2で得られたポリシロキサン(a-1)0.1質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0145】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0146】
続いて、得られた積層体の片面に第一光学層として誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に第二光学層として誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルター(NIR-CF)を得た。
【0147】
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度120℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる、合計26層の多層膜である。
誘電体多層膜(II)は、蒸着温度120℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる、合計20層の多層膜である。
誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、積層体側から、チタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0148】
誘電体多層膜(I)および(II)の設計は、以下のようにして行った。
各層の厚さと層数については、可視光領域の反射防止効果と、近赤外線領域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう、積層体の屈折率の波長依存特性等に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、この実施例1では、ソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表1の通りとした。
【0149】
【表1】
【0150】
膜構成最適化の結果、前記誘電体多層膜(I)を、物理膜厚約30~155nmのシリカ層と、物理膜厚約10~94nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数26層の多層蒸着膜とし、誘電体多層膜(II)を、物理膜厚約36~183nmのシリカ層と、物理膜厚約10~108nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数20層の多層蒸着膜とした。最適化を行った膜構成の一例を下記表2に示す。
なお、以下の表の光学膜厚の欄におけるλは550nmである。
【0151】
【表2】
【0152】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0153】
[実施例2]
容器に、合成例1で得られた樹脂A 100質量部と、下記式で表される化合物(x-2)0.4質量部と、塩化メチレンとを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂製基材を得た。
【0154】
【化9】
【0155】
実施例1において、樹脂組成物(1)の代わりに、樹脂組成物(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(2):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、合成例3で得られたポリシロキサン(a-2)0.1質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0156】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0157】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計23層の誘電体多層膜(III)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計18層の誘電体多層膜(IV)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルター(SBPF)を得た。
【0158】
誘電体多層膜(III)および(IV)の設計は、以下のようにして行った。
各層の厚さと層数については、可視光領域の反射防止効果と、近赤外線領域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう、積層体の屈折率の波長依存特性や、用いた化合物(x-2)の吸収特性に合わせて、光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、この実施例2では、ソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表3の通りとした。
【0159】
【表3】
【0160】
膜構成最適化の結果、前記誘電体多層膜(III)を、物理膜厚約84~196nmのシリカ層と、物理膜厚約40~213nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数23層の多層蒸着膜とし、誘電体多層膜(IV)を、物理膜厚約76~184nmのシリカ層と、物理膜厚約105~135nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数18層の多層蒸着膜とした。最適化を行った膜構成の一例を下記表4に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0163】
[実施例3]
容器に、合成例1で得られた樹脂A 100質量部と、下記式で表される化合物(x-1)0.07質量部と、化合物(x-2)0.08質量部と、塩化メチレンとを加えたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂製基材を得た。
【0164】
【化10】
[i-Prはイソプロピル基を示す。]
【0165】
実施例1において、樹脂組成物(1)の代わりに、下記樹脂組成物(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(3):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、合成例4で得られたポリシロキサン(a-3)0.2質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0166】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0167】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計24層の誘電体多層膜(V)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計18層の誘電体多層膜(VI)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルター(DBPF)を得た。
【0168】
誘電体多層膜(V)および(VI)の設計は、以下のようにして行った。
各層の厚さと層数については、可視光領域の反射防止効果と、近赤外線領域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう、積層体の屈折率の波長依存特性や、用いた化合物(x-1)および(x-2)の吸収特性に合わせて、光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、この実施例3では、ソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表5の通りとした。
【0169】
【表5】
【0170】
膜構成最適化の結果、前記誘電体多層膜(V)を、物理膜厚約13~174nmのシリカ層と、物理膜厚約9~200nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数24層の多層蒸着膜とし、誘電体多層膜(VI)を、物理膜厚約41~198nmのシリカ層と、物理膜厚約12~122nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数18層の多層蒸着膜とした。最適化を行った膜構成の一例を下記表6に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0173】
[実施例4]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(4)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(4):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、合成例5で得られたポリシロキサン(a-4)0.2質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0174】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0175】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0176】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0177】
[実施例5]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(5)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(5):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、合成例6で得られたポリシロキサン(a-5)0.3質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0178】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0179】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0180】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0181】
[実施例6]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(6)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(6):国際公開第2019/167876号に記載の樹脂組成物(3)に、ポリシロキサン系界面活性剤KP-124(ポリシロキサン(a-6)、信越化学工業(株)製)0.3質量部を加えた組成物
【0182】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0183】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0184】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0185】
[実施例7]
縦60mm、横60mmの大きさにカットした、日本電気硝子(株)製のガラス基材「OA-10G」(商品名、厚さ100μm)の片面に、下記樹脂組成物(7)をスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去することで、接着層を形成した。この際、該接着層の膜厚が0.8μm程度となるようにスピンコーターの塗布条件を調整した。
【0186】
樹脂組成物(7):イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM-315、東亜合成(株)製)30質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20質量部、メタクリル酸20質量部、メタクリル酸グリシジル30質量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、BASFジャパン(株)製)5質量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1質量部を混合し、固形分濃度が50wt%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した後、孔径0.2μmのミリポアフィルタでろ過して得られた組成物
【0187】
次に、前記接着層上に、スピンコーターを用いて、下記樹脂組成物(8)を、乾燥後の厚みが3μmとなるような条件で塗布し、減圧下100℃で8時間乾燥して、ガラス基材上に、接着層を介して樹脂層を形成した。
樹脂組成物(8):容器に、合成例1で得られた樹脂A 100質量部、前記化合物(x-1)2.3質量部、前記化合物(x-2)2.6質量部、および、ジクロロメタンを加えて樹脂濃度が10質量%の溶液を調製し、孔径5μmのミリポアフィルタでろ過して得られた組成物
【0188】
次に、前記樹脂組成物(8)から得られた樹脂層上に、スピンコーターを用いて下記樹脂組成物(9)を乾燥後の厚みが3μmとなるような条件で塗布し、実施例1と同様の条件で樹脂組成物(9)を硬化させ、Si含有樹脂層を形成した。
樹脂組成物(9):国際公開第2019/167876号に記載の樹脂組成物(3)に、ポリシロキサン系界面活性剤KP-323(ポリシロキサン(a-7)、信越化学工業(株)製)0.4質量部を加えた組成物
【0189】
以上により、ガラス基材の片面に接着層、該接着層の上に樹脂組成物(8)から得られた樹脂層、該樹脂層の上に樹脂組成物(9)から得られたSi含有樹脂層を有する、厚さ0.107mm、縦60mm、横60mmの積層体を得た。
【0190】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0191】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.112mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0192】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0193】
[実施例8]
縦60mm、横60mmの大きさにカットした、松波硝子工業(株)製の近赤外線吸収ガラス基材「BS-11」(厚さ0.2mm)の片面に、前記樹脂組成物(7)をスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去することで、接着層を形成した。この際、該接着層の膜厚が0.8μm程度となるようにスピンコーターの塗布条件を調整した。
【0194】
次に、該接着層上に、スピンコーターを用いて、下記樹脂組成物(10)を乾燥後の厚みが2μmとなるような条件で塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱し、溶剤を揮発除去した。次いで、ガラス基材側からコンベア式UV露光機を用いて露光(露光量1J/cm2,ピーク照度:200mW/cm2)した後、減圧下100℃で8時間乾燥することで、Si含有樹脂層を形成して積層体を得た。
【0195】
樹脂組成物(10):容器に、合成例1で得られた樹脂A 100質量部、前記化合物(x-1)2.3質量部、前記化合物(x-2)2.6質量部、ポリシロキサン系界面活性剤KP-327(ポリシロキサン(a-8)、信越化学工業(株)製)0.4質量部、および、ジクロロメタンを加えて樹脂濃度が10質量%の溶液を調製し、孔径5μmのミリポアフィルタでろ過して得られた組成物
【0196】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0197】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.208mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0198】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0199】
[実施例9]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(11)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(11):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、ポリシロキサン系界面活性剤KP-624(ポリシロキサン(a-9)、信越化学工業(株)製、有効成分10%)4.0質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0200】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよびSi含有樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0201】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0202】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0203】
[比較例1]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(14)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(14):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、その他のSi含有化合物としてKBM-903(化合物(b-1)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製)0.1質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0204】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよび樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0205】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0206】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
[比較例2]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(15)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(15):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、フッ素系界面活性剤F-554(DIC(株)製)0.1質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0207】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよび樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0208】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0209】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0210】
[比較例3]
樹脂組成物(3)の代わりに、下記樹脂組成物(16)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
樹脂組成物(16):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、および、イソプロピルアルコール117質量部を含む組成物
【0211】
得られた積層体の接触角、ヘイズ、Tb_aveおよび樹脂層表面のSi原子含有量を測定した。結果をそれぞれ表7に示す。
【0212】
続いて、実施例1と同様に、得られた積層体の片面に、第一光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに積層体のもう一方の面に、第二光学層として、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.111mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、積層体の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
【0213】
得られた光学フィルターのTf_ave、Tf_IRおよび膜密着性を評価した。結果を表7に示す。
【0214】
【表7】