(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030892
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】編込みファスナーストリンガー及びカバー部材
(51)【国際特許分類】
A44B 19/56 20060101AFI20220210BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A44B19/56
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135206
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】魚住 典央
(72)【発明者】
【氏名】天野 政典
(72)【発明者】
【氏名】明和 正樹
(72)【発明者】
【氏名】木戸 晶之
【テーマコード(参考)】
3B098
3D030
【Fターム(参考)】
3B098DA02
3B098DC06
3B098FA05
3B098GB19
3D030DA25
3D030DA34
3D030DA69
3D030DB54
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ステアリングホイールの見栄え及び感触に与える影響を小さくすることが可能な編込みファスナーストリンガーを提供する。
【解決手段】編込みファスナーストリンガーは、ファスナーテープ23と、ファスナーテープの編成時に固定される連続エレメント列21とを有し、ファスナーテープは、テープ主体部24とエレメント取付部25とを有し、テープ主体部は、エレメント取付部に隣接する第1領域31と、第1領域に隣接する第2領域32と、第2領域に隣接するとともに最外側縁部を形成する第3領域33とを有し、第2領域は、第1領域よりも薄く形成され、第3領域は、第2領域よりも薄く形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編組織で形成されるファスナーテープ(23)と、前記ファスナーテープ(23)の編成時に固定される連続エレメント列(21)とを有する編込みファスナーストリンガー(20)であって、
前記ファスナーテープ(23)は、テープ主体部(24)と、前記テープ主体部(24)の側縁からテープ幅方向に延びるとともに前記連続エレメント列(21)が固定されるエレメント取付部(25)とを有し、
前記テープ主体部(24)は、テープ幅方向において、前記エレメント取付部(25)に隣接する第1領域(31)と、前記第1領域(31)に隣接する第2領域(32)と、前記第2領域(32)に隣接するとともに前記テープ主体部(24)の前記エレメント取付部(25)とは反対側の側縁部を形成する第3領域(33)とを有し、
前記第2領域(32)は、前記第1領域(31)よりも薄く形成され、
前記第3領域(33)は、前記第2領域(32)よりも薄く形成されている
ことを特徴とする編込みファスナーストリンガー。
【請求項2】
前記第1領域(31)のテープ幅方向の寸法(D3)は、前記テープ主体部(24)の全体におけるテープ幅方向の寸法の半分以下である請求項1記載の編込みファスナーストリンガー。
【請求項3】
前記第2領域(32)のテープ幅方向の寸法(D4)は、前記第1領域(31)のテープ幅方向の寸法(D3)以下である請求項1又は2記載の編込みファスナーストリンガー。
【請求項4】
前記ファスナーテープ(23)の全体におけるテープ幅方向の寸法(D1)は、前記連続エレメント列(21)を形成するファスナーエレメント(22)のテープ幅方向の寸法(D2)の400%以下である請求項1~3のいずれかに記載の編込みファスナーストリンガー。
【請求項5】
前記第2領域(32)を形成する各ウエール(W7,W8,W9)は、各コースに編糸のニードルループを1つずつ有し、
前記第1領域(31)を形成する各ウエール(W4,W5,W6)は、前記第2領域(32)の前記ウエール(W7,W8,W9)よりも編糸のニードルループを多くして形成され、
前記第3領域(33)を形成するウエール(W10)は、前記第2領域(32)の前記ウエール(W7,W8,W9)よりも編糸のニードルループを少なくして形成される
請求項1~4のいずれかに記載の編込みファスナーストリンガー。
【請求項6】
前記第1領域(31)は、鎖編糸(42)のニードルループとトリコット編糸(41)のニードルループとを有するウエールにより形成され、
前記第2領域(32)は、各コースにトリコット編糸(41)のニードルループを有するウエールにより形成され、
前記第3領域(33)は、トリコット編糸(41)のニードルループのみが設けられるコースと緯挿入糸(45)の折り返し部のみが設けられるコースとが交互に配されるウエールにより形成される
請求項1~5のいずれかに記載の編込みファスナーストリンガー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の前記編込みファスナーストリンガー(20)が、ステアリングホイール(1)への装着時に互いに対向する対向縁部(6a,6b)に沿って取着されていることを特徴とするステアリングホイール用カバー部材。
【請求項8】
一対の前記編込みファスナーストリンガー(20)の前記第1領域(31)が、前記カバー部材(5)の対向する前記対向縁部(6a,6b)にそれぞれ重ね合わされた状態で縫製部(7)により縫い付けられ、
一対の前記編込みファスナーストリンガー(20)の閉鎖により、前記対向縁部(6a,6b)が突き合わされ、
突き合わされた前記対向縁部(6a,6b)に跨ってステッチ(8)が設けられる
請求項7に記載のステアリングホイール用カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編込みファスナーストリンガー及びカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールのリング状のリム部にはカバー部材(ホイールカバー)が取り付けられている。従来、カバー部材の取り付けは、手縫い等を利用して行われていたものの、手縫いによる取り付け作業は煩雑であるとともに、長い作業時間を要する。また、カバー部材を取り付けた後の仕上がり具合が、作業者の技術に依存し易く、ステアリングホイールの品質にばらつきを生じさせる虞がある。
【0003】
一方、例えば国際公開第2017/094155号(特許文献1)には、ファスナー部材を用いて、シート状のカバー部材を基体の表面に取り付けるカバー取付構造体が開示されている。この特許文献1には、そのカバー取付構造体の適用例の1つとして、ステアリングホイールに取り付けられるカバー部材が説明されている。
【0004】
例えば
図7に示したように、特許文献1に記載されているカバー取付構造体では、ファスナー部材70が、複数のファスナーエレメント73を備える第1エレメント列71と、複数のファスナーエレメント73を備える第2エレメント列72とを有しており、第1エレメント列71及び第2エレメント列72が、カバー部材80の一側縁部及び他側縁部に対向して設けられている。また、カバー部材80が取り付けられるリム部81のリム本体部82の表面には、噛合した第1エレメント列71及び第2エレメント列72を収容する凹溝83が設けられている。
【0005】
特許文献1のカバー取付構造体をステアリングホイールのカバー部材80に適用した場合、第1エレメント列71と第2エレメント列72とを、リム本体部82の凹溝83に挿入することによって噛合させることができる。これにより、カバー部材80の一側縁部と他側縁部とを閉鎖してカバー部材80をステアリングホイールのリム本体部82に取り付けることができ、それによって、リム本体部82を形成することができる。更に、噛合した第1エレメント列71及び第2エレメント列72が凹溝83に挿入されて係止されるため、カバー部材80をリム本体部82に固定できる。
【0006】
このようにカバー部材80の取り付けに特許文献1のカバー取付構造体を利用することによって、例えば上述したような手縫いを利用して行う場合に比べて、カバー部材80の取り付け作業を簡単に行うことが可能となり、取付作業の効率化を図ることができる。また、カバー部材80の取り付け作業に経験や熟練度等が影響され難くなり、コストの削減や品質の安定化などのメリットを期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のカバー取付構造体を利用してカバー部材をステアリングホイールのリム部に取り付けた場合、ファスナー部材のファスナーテープが、カバー部材とリム部のリム本体部との間に保持される。しかしこの場合、ファスナーテープの厚さがカバー部材の表面に浮き出し易くなり、その結果、カバー部材の外表面にファスナーテープによる段差等の凹凸形状が形成されることがあった。
【0009】
また、ステアリングホイールのリム部は、一般的に円形状に湾曲するとともに、リム部の周方向に直交する断面が略円形を呈する形態を有する。このため、リム部のリム本体部の外面は、複雑に湾曲する曲面状に形成されている。従って、ファスナー部材を用いてステアリングホイールのリム部にカバー部材が取り付けられる場合、ファスナー部材の一部(特に、ファスナーテープのエレメント列が取り付けられていない側のテープ側縁部)が、リム本体部の複雑に湾曲する外面に対して適切に沿わせることができない。それにより、カバー部材とリム本体部との間で、ファスナー部材がリム本体部から浮き易くなることや、ファスナーテープに皺が生じることがある。
【0010】
その結果、カバー部材の外表面に凹凸形状がより形成され易くなる。このようにカバー部材の外表面に凹凸形状が形成された場合、ステアリングホイールの見栄え(外観品質)を低下させるとともに、ステアリングホイールを握ったときの感触(手触り感)に影響を与えることがあった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステアリングホイールに対するカバー部材の取り付け作業を簡単に行うことが可能で、また、ステアリングホイールの見栄え及び感触に与える影響を小さくすることが可能な編込みファスナーストリンガー、及び、その編込みファスナーストリンガーが取着されているステアリングホイール用カバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供される編込みファスナーストリンガーは、編組織で形成されるファスナーテープと、前記ファスナーテープの編成時に固定される連続エレメント列とを有する編込みファスナーストリンガーであって、前記ファスナーテープは、テープ主体部と、前記テープ主体部の側縁からテープ幅方向に延びるとともに前記連続エレメント列が固定されるエレメント取付部とを有し、前記テープ主体部は、テープ幅方向において、前記エレメント取付部に隣接する第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域と、前記第2領域に隣接するとともに前記テープ主体部の前記エレメント取付部とは反対側の側縁部を形成する第3領域とを有し、前記第2領域は、前記第1領域よりも薄く形成され、前記第3領域は、前記第2領域よりも薄く形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る編込みファスナーストリンガーにおいて、前記第1領域のテープ幅方向の寸法は、前記テープ主体部の全体におけるテープ幅方向の寸法の半分以下であることが好ましい。
また、前記第2領域のテープ幅方向の寸法は、前記第1領域のテープ幅方向の寸法以下であることが好ましい。
更に、前記ファスナーテープの全体におけるテープ幅方向の寸法は、前記連続エレメント列を形成するファスナーエレメントのテープ幅方向の寸法の400%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の編込みファスナーストリンガーにおいて、前記第2領域を形成する各ウエールは、各コースに編糸のニードルループを1つずつ有し、前記第1領域を形成する各ウエールは、前記第2領域の前記ウエールよりも編糸のニードルループを多くして形成され、前記第3領域を形成するウエールは、前記第2領域の前記ウエールよりも編糸のニードルループを少なくして形成されることが好ましい。
【0015】
また、前記第1領域は、鎖編糸のニードルループとトリコット編糸のニードルループとを有するウエールにより形成され、前記第2領域は、各コースにトリコット編糸のニードルループを有するウエールにより形成され、前記第3領域は、トリコット編糸のニードルループのみが設けられるコースと緯挿入糸の折り返し部のみが設けられるコースとが交互に配されるウエールにより形成されることが好ましい。
【0016】
次に、本発明により提供されるカバー部材は、上述したような構成を有する前記編込みファスナーストリンガーが、ステアリングホイールへの装着時に互いに対向する対向縁部に沿って取着されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明のカバー部材において、一対の前記編込みファスナーストリンガーの前記第1領域が、前記カバー部材の対向する前記対向縁部にそれぞれ重ね合わされた状態で縫製部により縫い付けられ、一対の前記編込みファスナーストリンガーの閉鎖により、前記対向縁部が突き合わされ、突き合わされた前記対向縁部に跨ってステッチが設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステアリングホイールに対するカバー部材の取り付け作業を簡単に行うことが可能で、また、ステアリングホイールの見栄え及び感触に与える影響を小さくすることが可能な編込みファスナーストリンガー、及び、その編込みファスナーストリンガーが取着されているステアリングホイール用カバー部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係るカバー部材が取り付けられたステアリングホイールの要部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したステアリングホイールの周方向に直交する断面の一部を模式的に示す模式断面図である。
【
図3】カバー部材に取着されるスライドファスナーを模式的に示す底面図である。
【
図4】
図2に示すスライドファスナーにおける編込みファスナーストリンガーのファスナーテープの編組織を示す組織図である。
【
図5】編込みファスナーストリンガーに使用される各糸の組織図である。
【
図6】変形例に係るカバー部材が取り付けられたステアリングホイールの断面の一部を模式的に示す模式断面図である。
【
図7】従来のカバー部材が取り付けられるステアリングホイールの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
【実施例0021】
図1は、本実施例に係るカバー部材が取り付けられたステアリングホイールの要部を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示したステアリングホイールの周方向に直交する断面の一部を模式的に示す模式断面図である。なお、
図2では、連続エレメント列を簡略化して図示している。
【0022】
また、以下のスライドファスナー及び編込みファスナーストリンガーに関する説明において、前後方向とは、スライダーの摺動方向を言い、特に、スライダーがスライドファスナーのエレメント列を噛合させるために移動する方向(スライドファスナーを閉じる方向)を前方とし、エレメント列を分離させるために移動する方向(スライドファスナーを開く方向)を後方とする。
【0023】
左右方向とは、スライドファスナーのファスナーテープが平らに保持されたときのファスナーテープの幅方向を言い、また、前後方向に直交するとともにファスナーテープのテープ表面及びテープ裏面に平行な方向と言うこともできる。上下方向とは、平らに保持されたときのファスナーテープのテープ表面及びテープ裏面に直交する方向を言い、前後方向と左右方向とに直交する方向である。この場合、スライドファスナーの使用時(カバー部材への適用時)に外部に向く方向、又はファスナーテープに対してスライダーの引手又は操作部が配される側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。
【0024】
本実施例において、ステアリングホイール1は、例えばステアリングホイール1の正面視において、運転者が把持するリング状のリム部2と、リム部2の中央部に配される図示しないボス部と、リム部2及びボス部間を連結する図示しない複数のスポーク部とを有する。なお本発明において、ステアリングホイールは、カバー部材5が取り付けられるリング状のリム部を有していれば、その形状や形態は特に限定されるものではない。
【0025】
ステアリングホイール1のリム部2は、
図1に示すように、金属製の芯材部3と、その芯材部3を包み込むとともにウレタン等の合成樹脂により形成されるリム本体部4と、リム本体部4を被覆するカバー部材5(ホイールカバー、表皮部材とも呼ばれる)とを有する。なお本実施例において、リム部2のリム本体部4には、後述するスライドファスナー10の噛合した連続エレメント列21の少なくとも一部を収容可能な凹溝状の収容溝部が、リム本体部4の周方向に沿って凹設されていてもよい。
【0026】
本実施例のカバー部材5は、細長い形状を有するカバー本体部6を少なくとも有しており、カバー本体部6は、リム部2の周方向に沿って、リム本体部4の外面(外周面)を覆ってリム本体部4を包み込むことが可能に形成されている。また、カバー本体部6は、リム部2の周方向に沿って配されるとともに、互いに対向する第1側縁部(第1対向側縁部)6aと第2側縁部(第2対向側縁部)6bとを有する。なお本発明において、カバー部材の材質や形状は特に限定されず、カバー部材5を取り付けるステアリングホイール1の形態等に応じて任意に選択できる。
【0027】
カバー本体部6の第1側縁部6a及び第2側縁部6bには、スライドファスナー10の後述する左右一対の編込みファスナーストリンガー20が、縫製糸の縫製部7によって取着されている。本実施例のカバー部材5は、後述するように、カバー本体部6をリム本体部4に巻き付けながら、スライドファスナー10の後述するスライダー11を摺動させて左右の編込みファスナーストリンガー20に設けられた連続エレメント列21同士を噛み合わせることにより、カバー本体部6の第1側縁部6aと第2側縁部6bとを突き合せた状態で、ステアリングホイール1のリム本体部4に取り付けられる。また本実施例では、カバー本体部6がリム本体部4に取り付けられた後に、後述するようなジグザグ状のステッチ8(ユーロステッチと言われることもある)が、カバー本体部6の突き合された第1側縁部6aと第2側縁部6bに沿うように、リム部2の内周部に形成されている。
【0028】
本実施例のスライドファスナー10は、
図3に示すように、連続エレメント列21が設けられた左右一対の編込みファスナーストリンガー20と、左右の連続エレメント列21に沿って摺動可能なスライダー11とを有する。このスライドファスナー10は、カバー部材5に対し、
図2に示したように、連続エレメント列21が後述するファスナーテープ23の地組織よりもリム本体部4側に配されるようにカバー本体部6に取着されている。すなわち、本実施例のスライドファスナー10は、左右の連続エレメント列21を噛合させたときに、その連続エレメント列21がファスナーテープ23の裏面側に配される所謂裏使いタイプのスライドファスナーとして形成されている。
【0029】
本実施例のスライダー11は、裏使いタイプ用として形成されている。具体的に説明すると、スライダー11は、スライダー胴体12と、スライダー胴体12に取り付けられる図示しない引手とを有する。
【0030】
スライダー胴体12は、詳細な図示を省略するが、上翼板と、上翼板から離間した位置に上翼板に対向して配される下翼板12aと、上翼板及び下翼板12aの前端部(肩口側端部)間を連結する連結柱と、下翼板12aの左右側縁部に設けられる左右の下フランジ部と、上翼板の上面に設けられるとともに引手が取り付けられる引手取付柱とを有する。スライダー胴体12の前端部には、連結柱を間に挟むように左右に肩口が形成されている。スライダー胴体12の後端部には後口が形成されている。スライダー胴体12の上翼板と下翼板12aの間には、左右の肩口と1つの後口とを連通するY字状のエレメント案内路が形成されている。
【0031】
本実施例における左右の各編込みファスナーストリンガー20は、複数の編糸を用いて形成されるファスナーテープ23と、ファスナーテープ23が編成されるときにファスナーテープ23の一部に固定される連続エレメント列21とを有する。連続エレメント列21は、ファスナーテープ23の編成時に、複数の連続するファスナーエレメント22が1つずつファスナーテープ23の一部に挿入され、同ファスナーテープ23を形成する一部の編糸(後述する固定用鎖編糸43)で固定されることによって形成されている。
【0032】
複数のファスナーエレメント22は、ポリアミドやポリエステル等の合成樹脂製モノフィラメントをコイル状に成形することにより形成されている。また、各ファスナーエレメント22は、噛合頭部22aと、噛合頭部22aからテープ幅方向に延びる上脚部及び下脚部と、当該ファスナーエレメント22の上脚部(又は下脚部)と隣接する次位のファスナーエレメント22の下脚部(又は上脚部)を連結する連結部(反転部とも呼ばれることがある)とを有する。この場合、ファスナーエレメント22の上脚部は、ファスナーテープ23の地組織に接して配されており、下脚部は固定用鎖編糸43のシンカーループで地組織に向けて抑えられている。また、ファスナーエレメント22は、噛合頭部22aをファスナーテープ23の一方のテープ側縁からテープ幅方向に突出させてファスナーテープ23に固定されている。
【0033】
本実施例のスライドファスナー10において、左右の連続エレメント列21は、左右の編込みファスナーストリンガー20を互いに噛合させたときのファスナーテープ23の上面(外面)からファスナーエレメント22の下脚部の下面までの上下方向における寸法を、例えば従来の一般的な裏使いタイプのスライドファスナーよりも小さくして形成されている。なお、左右の編込みファスナーストリンガー20を噛合させた状態における上述のような上下方向における寸法は、チェーン厚さと呼ばれることもある。
【0034】
スライドファスナー10におけるチェーン厚さを上述のように小さくすることによって、
図1及び
図2に示したように、カバー部材5をステアリングホイール1のリム本体部4に取り付けたときに、噛合した左右の連続エレメント列21の厚さに起因してカバー部材5がリム本体部4から浮き上がることを抑制できる。これにより、カバー部材5が取着されたステアリングホイール1の外観品質を高めるとともに、ステアリングホイール1を握ったときの感触を良好にすることが可能となる。本実施例の場合、スライドファスナー10における上述したチェーン厚さは、1.4mm±0.05mmである。
【0035】
ファスナーテープ23は、
図4に示したように、複数の編糸と複数の緯挿入糸とによって編成される経編テープにより形成されている。このファスナーテープ23は、テープ主体部24と、そのテープ主体部24の一側縁からテープ幅方向に延びるエレメント取付部25とを有する。連続エレメント列21は、ファスナーテープ23のエレメント取付部25に編み込まれて固定されている。
【0036】
本実施例のファスナーテープ23は、テープ幅方向に形成される10個のウエールを有する。この場合、ファスナーテープ23において、噛合相手の編込みファスナーストリンガー20に対して最も近くに設けられてファスナーテープ23の一方の側縁部に形成されるウエールを第1ウエールW1とし、その第1ウエールW1に隣接するウエールから、ファスナーテープ23の他方の側縁部を形成するウエール(噛合相手の編込みファスナーストリンガー20から最も離れて設けられるウエール)までを順番に第2ウエールW2~第10ウエールW10と規定する。
【0037】
この場合、ファスナーテープ23のエレメント取付部25は、第1ウエールW1~第3ウエールW3の3つのウエールによって形成されている。テープ主体部24は、第4ウエールW4~第10ウエールW10の7つのウエールによって形成されている。なお、以下の説明において、ファスナーテープ23の他方の側縁部、すなわち、ファスナーテープ23の連続エレメント列21から離間して配される側のテープ側縁部を、最外側縁部と言うこともある。
【0038】
テープ主体部24は、互いに異なる厚さで形成される第1領域31、第2領域32、及び第3領域33の3つの領域を有する。また、テープ主体部24は、第1領域31、第2領域32、第3領域33の順番でエレメント取付部25から離れる方向に段階的に薄く形成されている。
【0039】
テープ主体部24の第1領域31は、編込みファスナーストリンガー20をカバー部材5のカバー本体部6に縫製によって取り付けるときに、縫製部7によってカバー本体部6に固定される部分であり、第1領域31には、縫製部7の縫製糸が刺し通される。この第1領域31は、エレメント取付部25に隣接して設けられており、また、第4ウエールW4~第6ウエールW6の3つのウエールに亘って形成されている。
【0040】
このような第1領域31は、テープ主体部24に対し、第1領域31のテープ幅方向の寸法(以下、幅寸法と言う)が、テープ主体部24の全体における幅寸法(テープ幅方向の寸法)の半分以下と小さくなるように細く形成されている。
【0041】
なお本発明において、第1領域31を形成するウエールの個数(ウエール数)は限定されないが、第1領域31のウエール数は、2つ以上5つ以下であること(特に3つであること)が好ましい。第1領域31を2つ以上のウエールで形成することによって、第1領域31の幅寸法を適切に確保できる。それにより、編込みファスナーストリンガー20をカバー本体部6に固定する縫製部7を第1領域31内に安定して形成できる。また、スライドファスナー10に対し、左右の編込みファスナーストリンガー20を幅方向の外側に向けて引っ張る横引き力が加えられたときに、第1領域31から縫製部7を脱落させ難くすることができる。更に第1領域31のウエール数が2つ以上であることによって、編込みファスナーストリンガー20の前後方向の伸縮性を適切に制御でき、編込みファスナーストリンガー20を編成するときの安定性を高めることができる。
【0042】
一方、第1領域31のウエール数を5つ以下にすることによって、ファスナーテープ23を細く形成し易くできる。それにより、スライドファスナー10が取着されたカバー部材5をステアリングホイール1のリム本体部4に取り付けたときに、リム本体部4の複雑な曲面状の外面に対し、スライドファスナー10(特にファスナーテープ23)を沿わせ易くできる。それにより、ファスナーテープ23の皺や折れ曲がり、また、カバー部材5の浮き上がり等を生じさせ難くすることができる。
【0043】
テープ主体部24の第2領域32は、第1領域31に隣接して、第7ウエールW7~第9ウエールW9の3つのウエールに亘って形成されている。このような第2領域32を設けることによって、ファスナーテープ23の厚さをテープ幅方向に段階的に薄く形成できる。このため、例えばカバー部材5をステアリングホイール1のリム本体部4に取り付けたときに、カバー部材5の表面に、ファスナーテープ23の厚さの変化に起因する段差が形成されることを抑制できる。また、第2領域32が設けられることによって、スライドファスナー10に上述した横引き力が加えられたときに、テープ主体部24の第1領域31を第2領域32で幅方向から押さえることができ、それによって、第1領域31からの縫製部7の脱落をより生じさせ難くすることができる。
【0044】
この場合、第2領域32の幅寸法は、第1領域31の幅寸法以下であることが好ましい。これにより、ファスナーテープ23を細く形成できる。更に、第2領域32の幅寸法は、第1領域31の幅寸法の50%以上であることが好ましい。これにより、ファスナーテープ23が適切な伸縮性を有することができる。
【0045】
また具体的に、第2領域32は、第1領域31と同じウエール数、又は第1領域31よりも少ないウエール数で形成されることが好ましい。例えば、第2領域32のウエール数は、2つ以上5つ以下であることが好ましい。第2領域32が2つ以上のウエールを有することによって、第2領域32を安定して形成できる。第2領域32が5つ以下のウエールを有することによって、ファスナーテープ23を細く形成できる。
【0046】
テープ主体部24の第3領域33は、第2領域32に隣接して配されている。この第3領域33によって、テープ主体部24のエレメント取付部25とは反対側のテープ側縁部(最外側縁部)が形成されている。また、第3領域33は、第10ウエールW10のみによって形成されている。
【0047】
本実施例のテープ主体部24は、
図4及び
図5に示したように、トリコット編糸41(1-0/1-2)と、鎖編糸42(0-1/1-0)と、3つのウエールに亘ってジグザグ状に挿入される第1正緯挿入糸44(3-3/0-0)と、4つのウエールに亘ってジグザグ状に挿入される第2正緯挿入糸45(4-4/0-0)と、2つのウエールに亘ってジグザグ状に挿入される逆緯挿入糸46(0-0/2-2)と、第10ウエールW10に破線で示す水溶性の仮鎖編糸48(0-1/1-0)とを用いて編成されている。これらの糸によって、テープ主体部24の編組織(地組織)が形成されている。この場合、逆緯挿入糸46は、ウエール方向に隣接する2つのコース間で第1正緯挿入糸44と交差する方向に挿入される。
【0048】
以下に、テープ主体部24の編組織(地組織)についてより具体的に説明する。テープ主体部24の第1領域31(第4ウエールW4~第6ウエールW6)には、トリコット編糸41、鎖編糸42、第1正緯挿入糸44、第2正緯挿入糸45、逆緯挿入糸46が配されている。
【0049】
第4ウエールW4~第6ウエールW6の各ウエールは、トリコット編糸41のニードルループと鎖編糸42のニードルループの2種類のニードルループを有する。特に、第5ウエールW5と第6ウエールW6とには、トリコット編糸41のニードルループと鎖編糸42のニードルループとが各コースに形成されている(交絡している)。これにより、第1領域31の厚さ(テープ表裏方向における寸法)を安定して増大させることができる。また、第1領域31の幅寸法を、鎖編糸42を含まない第2領域32の幅寸法よりも大きくできる(言い換えると、第2領域32を第1領域31よりも狭く形成できる)。
【0050】
また、第1領域31に挿入される逆緯挿入糸46は、第4ウエールW4上で鎖編糸42のニードルループと交わるとともに、第3ウエールW3上で後述する固定用鎖編糸43のニードルループとに交わる。これにより、テープ主体部24とエレメント取付部25間のテープ強度が高められている。
【0051】
テープ主体部24の第2領域32(第7ウエールW7~第9ウエールW9)は、トリコット編糸41と第2正緯挿入糸45の2種類の糸を用いて形成されている。このため、第7ウエールW7~第9ウエールW9の各ウエールは、各コースにトリコット編糸41のニードルループが1つずつ設けられている。これにより、第2領域32の厚さを、上述した第1領域31の厚さよりも減少させて、第2領域32を薄く形成することができる。また、第1領域31のウエール数と第2領域32のウエール数は同じであるものの、第2領域32を、上述したように、トリコット編糸41と鎖編糸42を含む第1領域31よりも細く形成できる。
【0052】
テープ主体部24の第3領域33(第10ウエールW10)は、トリコット編糸41のニードルループのみが設けられるコースと、第2正緯挿入糸45の折り返し部のみが設けられるコースとがウエール方向に交互に配されて形成されている。すなわち、第3領域33は、第2領域32の各ウエールよりも、編糸(トリコット編糸41)のニードルループを少なくし、且つ、編糸のニードルループには第2正緯挿入糸45の折り返し部が交わらないウエールによって形成されている。これにより、第3領域33の厚さを、第2領域32の厚さよりも更に減少させることができる。
【0053】
なお、ファスナーテープ23を編成するためには、ファスナーテープ23の最外縁に設けられる第10ウエールW10に鎖編糸が編み込まれる必要がある。一方、ファスナーテープ23の最外縁のウエールに鎖編糸が編み込まれると、ファスナーテープ23の伸縮性及び柔軟性の低下を招く。このため、本実施例の編込みファスナーストリンガー20を編成する際には、最外縁の第10ウエールW10に水溶性の仮鎖編糸48が編み込まれているものの、この仮鎖編糸48は、編込みファスナーストリンガー20の編成後の染色加工等で溶かされることによって第10ウエールW10から取り除かれている。本実施例の場合、仮鎖編糸48には、ポリビニルアルコールからなる水溶性のマルチフィラメント糸が使用されている。
【0054】
従って、第3領域33(第10ウエールW10)は、第1領域31及び第2領域32(第4ウエールW4~第9ウエールW9)に比べて、糸の本数が少ない粗い編組織で形成されている。このため、ファスナーテープ23を、例えばステアリングホイール1のリム本体部4に沿うように湾曲させる場合に、第3領域33におけるウエール方向の間隔を容易に広げること及び狭めることが可能となるため、編込みファスナーストリンガー20の伸縮性や柔軟性を高めることができる。
【0055】
また、上述した染色加工等で仮鎖編糸48が溶かされた後に最終的に得られる編込みファスナーストリンガー20において、テープ主体部24では、第1領域31のみに鎖編糸42が配されている。
【0056】
本実施例において、テープ主体部24を形成するトリコット編糸41、鎖編糸42、第1正緯挿入糸44、第2正緯挿入糸45、逆緯挿入糸46には、ナイロン又はポリエステル系のマルチフィラメント糸が使用されている。なお、本発明において、各糸の材質は特に限定されるものではなく、その他の材質からなる糸を用いてもよい。
【0057】
本実施例のテープ主体部24において、第3領域33にニードルループを形成するトリコット編糸41は、テープ主体部24を形成するその他のトリコット編糸41よりも小さな繊度を有する。具体的な一例として、第3領域33にニードルループを形成するトリコット編糸41は、84デシテックス以上167デシテックス以下の繊度を有し、テープ主体部24に配されるその他のトリコット編糸41は、110デシテックス以上220デシテックス以下の繊度で、且つ、第3領域33のトリコット編糸41よりも大きな繊度を有する。このように第3領域33のトリコット編糸41に細い糸を用いることにより、編込みファスナーストリンガー20の伸縮性や柔軟性をより効果的に高めることができる。
【0058】
第1領域31の鎖編糸42のうち、第4ウエールW4に配される鎖編糸42は、第5ウエールW5及び第6ウエールW6に配される鎖編糸42よりも大きな繊度を有する。また、第4ウエールW4に配される鎖編糸42は、第1領域31に配されるトリコット編糸41よりも大きな繊度を有することが好ましい。具体的な一例として、第4ウエールW4の鎖編糸42は、167デシテックス以上278デシテックス以下の繊度を有し、第5ウエールW5及び第6ウエールW6の鎖編糸42は、84デシテックス以上167デシテックス以下の繊度を有する。このように第4ウエールW4の鎖編糸42を第5ウエールW5及び第6ウエールW6の鎖編糸42よりも太くすることによって、第1領域31の厚さが、トリコット編糸41のニードルループが1コース置きに形成される第4ウエールW4上で部分的に減少することを抑制できる。また、第1領域31の強度を高めることができる。
【0059】
またテープ主体部24において、第1領域31のみに配される第1正緯挿入糸44は、第1領域31、第2領域32、及び第3領域33に配される第2正緯挿入糸45よりも大きな繊度を有する。具体的な一例として、第1正緯挿入糸44は、110デシテックス以上220デシテックス以下の繊度を有し、第2正緯挿入糸45は、84デシテックス以上167デシテックス以下の繊度で、且つ、第1正緯挿入糸44よりも小さな繊度を有する。これにより、第1領域31の強度を効果的に高めることができる。
第1領域31の一部に挿入される逆緯挿入糸46は、第2正緯挿入糸45よりも大きな繊度を有する。具体的な一例として、逆緯挿入糸46は、110デシテックス以上220デシテックス以下の繊度を有する。
【0060】
第1ウエールW1~第3ウエールW3を有するエレメント取付部25は、
図4及び
図5に示したように、第1ウエールW1に配される鎖編糸42(0-1/1-0)と、第2ウエールW2及び第3ウエールW3に配される固定用鎖編糸43(0-1/1-0)と、3つのウエールに亘ってジグザグ状に挿入される第1正緯挿入糸44(3-3/0-0)と、2つのウエールに亘ってジグザグ状に挿入される逆緯挿入糸46(0-0/2-2)と、第1ウエールW1~第3ウエールW3の各ウエールに配される経挿入糸47(1-1/0-0)とを用いて編成されている。
【0061】
エレメント取付部25の第1ウエールW1に配される鎖編糸42は、ファスナーテープ23の地組織を形成している。第2ウエールW2及び第3ウエールW3に配される固定用鎖編糸43は、ニードルループでファスナーテープ23の地組織を形成するとともに、シンカーループで連続エレメント列21のファスナーエレメント22をファスナーテープ23に固定している。
【0062】
固定用鎖編糸43が配される第2ウエールW2では、第1正緯挿入糸44の折り返し部と、逆緯挿入糸46の折り返し部とが、固定用鎖編糸43のニードルループに同じコースで交わるように配されている。また、固定用鎖編糸43が配される第3ウエールW3でも、第1正緯挿入糸44の折り返し部と、逆緯挿入糸46の折り返し部とが、固定用鎖編糸43のニードルループに同じコースで交わるように配されている。これにより、第2ウエールW2及び第3ウエールW3に編み込まれる固定用鎖編糸43の位置がコース方向にずれることを防止し、固定用鎖編糸43を所定の位置で安定して保持できる。
【0063】
経挿入糸47は、第1ウエールW1~第3ウエールW3の各ウエールに配されている。これにより、エレメント取付部25の柔軟性を確保しながら、エレメント取付部25を補強して、ファスナーテープ23のテープ形態を安定させることができる。なお本実施例において、エレメント取付部25は経挿入糸47を用いずに編成されていてもよい。
【0064】
このような本実施例の編込みファスナーストリンガー20では、ファスナーテープ23のテープ主体部24が、上述したように第1領域31、第2領域32、及び第3領域33の厚さを、最外側縁部に向けて段階的に減少させて形成されている。また、テープ主体部24の第1領域31、第2領域32、及び第3領域33が、各領域の機能をそれぞれ確保可能な範囲で幅寸法を小さくして形成されており、それによって、ファスナーテープ23が全体的に細く形成されている。
【0065】
ここで、ファスナーテープ23の細さについて具体的な数値を用いて説明すると、本実施例の編込みファスナーストリンガー20では、編込みファスナーストリンガー20の平面視又は底面視(例えば
図3を参照)において、ファスナーテープ23の全体における幅寸法D1(すなわち、ファスナーテープ23における噛合頭部22a側の一方のテープ側縁からその反対側に配される他方のテープ側縁までのテープ幅方向の寸法D1)が、例えばファスナーエレメント22の幅寸法D2(すなわち、ファスナーエレメント22における噛合頭部22aの先端から連結部のテープ内方側の面までのテープ幅方向の寸法D2)に対し、400%以下となるように形成されている。この場合、テープ主体部24の第1領域31、第2領域32、及び第3領域33の機能を考慮すると、ファスナーテープ23の全体における幅寸法D1は、ファスナーエレメント22の幅寸法D2の350%以上であることが好ましい。
【0066】
特に、ファスナーテープ23の全体における幅寸法D1は、9.00mm以上10.00mm以下であることが好ましい。この場合、テープ主体部24における第1領域31の幅寸法D3(すなわち、ファスナーエレメント22の連結部におけるテープ内方側の面から、テープ主体部24の第1領域31及び第2領域32間の境界部までの幅寸法D3)は、0.55mm以上0.70mm以下であることが好ましい(
図4を参照)。
【0067】
第2領域32の幅寸法D4(すなわち、テープ主体部24の第1領域31及び第2領域32間の境界部から、テープ主体部24の第2領域32及び第3領域33間の境界部までの幅寸法D4)は、0.45mm以上0.55mm以下であることが好ましい。第3領域33の幅寸法D5(すなわち、テープ主体部24の第2領域32及び第3領域33間の境界部から、ファスナーテープ23の他方のテープ側縁までの幅寸法D5)は、0.25mm以上0.35mm以下であることが好ましい。
【0068】
左右の編込みファスナーストリンガー20を有する本実施例のスライドファスナー10は、上述したように、カバー本体部6の第1側縁部6a及び第2側縁部6bの内面に縫製によって取着される。この場合、編込みファスナーストリンガー20におけるファスナーテープ23の第1領域31とカバー本体部6の第1側縁部6a又は第2側縁部6bとが重ね合わされ、その重ね合された部分に縫製が行われる。それによって、
図2に示したように、縫製糸の縫製部7により、左右のファスナーテープ23の第1領域31がカバー本体部6の第1側縁部6a及び第2側縁部6bにそれぞれ重ね合わされた状態で縫い付けられる(固定される)。
【0069】
これにより、スライドファスナー10が設けられたカバー部材5が製造される。このとき、編込みファスナーストリンガー20をカバー部材5に縫い付ける縫製部7は、カバー本体部6の第1側縁部6a及び第2側縁部6bをそれぞれ刺通して形成されているため、カバー本体部6の外面にも縫製部7のステッチが直線状に表出する。
【0070】
左右一対の編込みファスナーストリンガー20が取着された本実施例のカバー部材5は、その後、ステアリングホイール1のリム本体部4に取り付けられる。
カバー部材5をリム本体部4に取り付ける方法について簡単に説明すると、先ず、カバー部材5をステアリングホイール1のリム本体部4に巻き付けるように被せるとともに、左右の編込みファスナーストリンガー20に設けた連続エレメント列21の一端部を、スライダー胴体12のエレメント案内路に挿通させる。
【0071】
続いて、スライダー11の図示しない引手を引っ張ることにより、スライダー11を、リム部2に沿って左右の連続エレメント列21を噛合させる方向(前方)に向けて摺動させる。これによって、カバー本体部6の第1側縁部6aと第2側縁部6bとを突き合せながら、左右の連続エレメント列21を噛み合わせることができる。
【0072】
これにより、連続エレメント列21を噛合させた左右の編込みファスナーストリンガー20は、
図2に示したように、リム本体部4とカバー部材5との間に保持される。また、左右の編込みファスナーストリンガー20は、連続エレメント列21が噛合した状態で、テープ長さ方向に延びる部分を、例えば
図1に矢印51で示すように、円弧状のリム部2に沿って、テープ表裏方向の連続エレメント列21が設けられていない側に向けて湾曲させて配される。更に、左右の編込みファスナーストリンガー20は、テープ幅方向に延びる部分を、例えば
図2に矢印52で示すように、リム部2の周方向に直交する略円形の断面に沿ってテープ表裏方向の連続エレメント列21が設けられている側に向けて湾曲させて配される。すなわち、左右の編込みファスナーストリンガー20は、リム本体部4の外面に沿うように複雑に湾曲した状態で、リム本体部4とカバー部材5との間に保持される。
【0073】
そして、カバー部材5をリム本体部4に巻き付けつつ、スライダー11を、左右の連続エレメント列21の噛合方向側の端部(前端部)まで摺動させることにより、スライドファスナー10の左右の編込みファスナーストリンガー20が閉鎖されて、カバー部材5をリム本体部4に取り付けることができる。この場合、カバー本体部6の第1側縁部6aと第2側縁部6bとは、閉鎖されたスライドファスナー10によって突き合わされた状態で保持されている。
【0074】
このようなカバー部材5の取付作業は、例えばカバー部材をリム本体部に巻き付けながら接着剤等で固定する場合に比べて、短時間で容易に且つ安定して行うことができる。なお、左右の連続エレメント列21を噛合させたスライダー11については、その後、ステアリングホイール1に設けた図示しないスライダー収容部に収容してもよく、又は、連続エレメント列21から取り外して回収してもよい。
【0075】
また本実施例のステアリングホイール1では、スライドファスナー10を閉鎖してカバー部材5をリム本体部4に取り付けた後、そのカバー部材5に対し、
図1に示すように、ジグザグ状のステッチ8を、カバー本体部6の突き合わされた第1側縁部6aと第2側縁部6bとを跨ぐように形成するステッチ加工が行われる。
【0076】
このステッチ加工では、編込みファスナーストリンガー20を縫製によってカバー部材5に固定するときに形成された直線状の2つの縫製部7間に、ジグザグ状のステッチ8を形成する。この場合、ジグザグ状のステッチ8は、カバー部材5を刺通しておらず、カバー部材5の外面に表出する左右の縫製部7のステッチに交互に交差させることによって、カバー本体部6の突き合わされた第1側縁部6aと第2側縁部6bとに跨って設けられている。これにより、ジグザグ状のステッチ8を容易に形成できるとともに、ステッチ加工の作業時間を短縮できる。
【0077】
このようなジグザグ状のステッチ8をステアリングホイール1に施すことによって、ステアリングホイール1の外観品質を高めること、又は、ステアリングホイール1に高級感を付与することが可能となる。
以上のような工程を行うことにより、本実施例のステアリングホイール1が製造される。
【0078】
本実施例のカバー部材5を用いて製造されたステアリングホイール1では、カバー部材5に取り付けた編込みファスナーストリンガー20のファスナーテープ23が、テープ主体部24の厚さを第1領域31、第2領域32、及び第3領域33と段階的に薄くして形成されている。更に、本実施例のスライドファスナー10は、従来の一般的な編込みファスナーストリンガーを有するスライドファスナーに比べて、チェーン厚さを小さくして形成されている。
【0079】
これにより、カバー部材の外面に、スライドファスナー10の厚さが浮き出ることを抑制できる。特に本実施例では、ファスナーテープ23のテープ主体部24における厚さを第3領域33に向けて段階的に減少させ、第3領域33を最も薄く形成している。このため、テープ主体部24における第1領域31と第2領域32の間の厚さの変化、及び第2領域32と第3領域33の間の厚さの変化を小さくするとともに、リム本体部4の表面と左右のファスナーテープ23の最外側縁部との間に形成される段差を小さくできる。従って、カバー部材5の表面に、ファスナーテープ23に起因する凹凸形状(凹部及び/又は凸部を含む形状)が形成されることをより効果的に抑制できる。
【0080】
また本実施例の場合、カバー本体部6の第1側縁部6aと第2側縁部6bとが突き合わされた部分の近傍に、
図1に示したように、縫製部7の直線状のステッチとジグザグ状のステッチ8とが形成されており、且つ、編込みファスナーストリンガー20のテープ主体部24が細く形成されている。このため、例えばファスナーテープ23に起因する凹凸形状がカバー部材5の表面に小さく表れたとしても、上述した縫製部7の直線状のステッチとジグザグ状のステッチ8とによって目立ち難くすることが可能である。
【0081】
更に本実施例では、ファスナーテープ23のテープ主体部24が、従来の一般的な編込みファスナーストリンガーの場合よりも幅寸法を大幅に小さくして形成されている。例えば、編込みファスナーストリンガー20を、リム本体部4の外面に見栄えよく沿わせるためには、リム本体部4の外面に対応して複雑に湾曲させる必要がある。この場合、上述のようにテープ主体部24の幅寸法を小さくすることにより、カバー部材5をリム本体部4に取り付けて、編込みファスナーストリンガー20をカバー部材5とリム本体部4との間に保持した際に、編込みファスナーストリンガー20を複雑に湾曲させるために求められるファスナーテープ23の柔軟性及び伸縮性を比較的小さくすることができる。
【0082】
その上、本実施例では、編込みファスナーストリンガー20の伸縮性及び柔軟性(特にファスナーテープ23の最外側縁部及びその近傍における伸縮性及び柔軟性)が、大きく高められている。すなわち、上述したようにファスナーテープ23の第3領域33が最も薄く形成されているとともに、第3領域33の第10ウエールW10が、トリコット編糸41のニードルループのみが設けられるコースと、第2正緯挿入糸45の折り返し部のみが設けられるコースとがウエール方向に交互に配されて形成されている。更に、テープ主体部24の第3領域33に隣接する第2領域32が、ウエール方向の伸縮性に優れるトリコット編糸41と、第2正緯挿入糸45とによって形成されている。その結果、ファスナーテープ23の最外側縁部及びその近傍が、高い伸縮性及び高い柔軟性を備えることができる。
【0083】
このため、本実施例のスライドファスナー10が、リム本体部4の湾曲する外面に沿うように複雑に湾曲した状態でリム本体部4とカバー部材5との間に保持されても、ファスナーテープ23(特に、ファスナーテープ23の最外側縁部及びその近傍)をリム本体部4の外面に沿わせ易くすることができる。それによって、ファスナーテープ23に波打ち状の皺が生じることや、ファスナーテープ23が部分的に折れ曲がることを抑制できる。その結果、カバー部材5をリム本体部4の外面から浮き上がらせ難くすることができる。また、カバー部材5の表面に、ファスナーテープ23の皺や折れ曲がり等による凹凸形状が形成されることを抑制できる。
【0084】
以上のように、本実施例のスライドファスナー10が取着されたカバー部材5を用いることにより、ステアリングホイール1に対するカバー部材5の取り付け作業を短時間で容易に行うことができる。また、リム本体部4に取り付けられたカバー部材5の表面に、編込みファスナーストリンガー20に起因する段差や浮き上がり等の凹凸形状が形成され難くなり、カバー部材5の表面を滑らかに仕上げることが可能となる。これにより、優れた外観品質を備えるとともに、リム部2を握ったときに良好な感触(手触り感)が得られるステアリングホイール1を提供することができる。
【0085】
なお、本発明は、上述した実施例の形態に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、上述した実施例では、
図2に示したように、編込みファスナーストリンガー20を備えたスライドファスナー10が、裏使いタイプとして使用されるように、左右の連続エレメント列21を、ファスナーテープ23の地組織よりもリム本体部4側に配置するようにカバー部材5に取着されている。
【0086】
しかし本発明では、例えば
図6に変形例を示したように、編込みファスナーストリンガー20を備えたスライドファスナー10が、左右の連続エレメント列21を、ファスナーテープ23の地組織よりもカバー部材5側に配置するようにカバー部材5に取着されていてもよい。このように、スライドファスナー10が通常タイプのスライドファスナー10としてカバー部材5に取り付けられる場合でも、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。