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特開2022-30949間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法
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  • 特開-間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030949
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/099 20060101AFI20220210BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20220210BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220210BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A01G23/099
G01C5/00 Z
G01C15/00 102C
H04N7/18 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135288
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】516343893
【氏名又は名称】株式会社藤興業
(74)【代理人】
【識別番号】100110537
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 繁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CC02
5C054CD04
5C054DA06
5C054FA00
5C054FE12
5C054HA11
(57)【要約】
【課題】本発明は、伐倒方向の立木間隔幅情報と伐倒する原木の高さ情報との空間情報を結合することで、間伐材等の伐倒方向の仮想空間を創り、この仮想空間情報に基づいて安全的確な伐倒方向の作業環境を形成することができる間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法は、携帯電話で衛星画像を取得し、またGPS機能付きレーザーで伐倒木の高さ及び隣接する立木の距離データを取得し、ヘッドセットにデジタルオブジェクトで伐倒する立木の位置座標データをマッチングし、ヘッドセットにより隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木の伐倒方向の仮想空間を創り表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)GPS機能付きレーザーを伐倒する立木の適宜高さ位置に取付部材で設置固定し、前記GPS機能付きレーザーで伐倒する木の高さ情報を得るため、上方向にレーザーを向けレーザーの距離測定機能により先端までの距離を測定する。
b)伐倒する立木の360°伐倒エリアの衛星画像を携帯電話で取得し、前記携帯電話の通信機能によりヘッドセットに伝送し、衛星画像のデジタルオブジェクトをヘッドセットの表示機能により表示する。
c)次に、前記GPS機能付きレーザーで隣接する木々にレーザーを向け、伐倒する木からの相対的な距離をレーザーの距離測定機能により計測し、各々の距離データをGPS機能付きレーザーの通信機能によりヘッドセットに伝送する。
d)前記ヘッドセットの画像判別処理機能でデジタルオブジェクトに伐倒する立木の位置座標データをマッチングし、前記ヘッドセットで伐倒する立木の位置座標データを基準とし、隣接する木々の枝葉の直径情報を衛星画像の画像解析から算出し、隣接する木々の距離データに隣接する木々の枝葉の直径情報を関連付けする。
e)前記ヘッドセットの画像判別処理機能で隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、前記ヘッドセットに伐倒木の伐倒方向の仮想空間を創りデジタルオブジェクトに表示する。
f)前記ヘッドセットのデジタルオブジェクトの伐倒仮想空間に伐倒する立木のGPS機能付きレーザーのレーザー照射光を調整し合わせることで現実空間と仮想空間をマッチングする。
以上、a)~f)の過程を行うことを特徴とする間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法。
【請求項2】
a)伐倒する立木と伐倒木に隣接する立木を携帯電話のカメラ機能で画像撮影し、取得した画像を現実空間とし、前記携帯電話の通信機能により撮影画像をヘッドセットに伝送し、前記ヘッドセットの表示機能により表示する。
b)カメラ画像とヘッドセットの画像は常にリンクさせ、マーカ技術を利用し、それらの立木を正方形でヘッドセットにマーキングする。
c)前記ヘッドセットに伐倒する立木の基準となる位置として位置情報登録し、高さ情報、枝葉を含んだ直径情報を計測アプリで取得・登録し、伐倒木を基準とした隣接対象の立木との相対位置情報、高さ情報、枝葉を含んだ直径情報を計測アプリで取得し、登録する。
d)伐倒木を基準とした隣接対象の立木の取得した位置情報、高さ情報などの3次元座標をヘッドセットのデジタルオブジェクトにデータとして組み込む。
e)前記携帯電話を位置精度良く固定できるGPS機能付きレーザーのレーザー照射器又はLED照射器を附帯し、伐倒する立木に固定設置する。
f)取得した位置情報、高さ情報などの3次元座標をヘッドセットのデジタルオブジェクトのデータから伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木の伐倒方向の仮想空間を創り、表示する。
g)前記ヘッドセットを通し、前記レーザー照射器又はLED照射器のレーザー照射光又はLED照射光を、ヘッドセットに表示する伐倒仮想空間上に位置合わせすることで現実空間と仮想空間のマッチングを行う。
以上、a)~g)の過程を行うことを特徴とする間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法。
【請求項3】
前記ヘッドセットに、伐倒する木から10~60m以下に作業者がいないことを感知する機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間伐材等の伐倒方向の仮想空間を創り、この仮想空間情報に基づいて安全な伐倒方向の作業環境を形成することができる間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間伐材等の伐採作業では、伐倒方向を決める受け口の作成作業は、非常に重要な作業である。伐倒する木の伐倒方向を決め、この伐倒方向に合わせて受け口を形成し、反対側に追い口を形成して木を切り倒す作業を行う。伐採作業では、受け口が正しく形成されていないと伐倒仮想空間に正しく倒れないなどして作業者がけがを負ったり、場合によっては死亡事故にあったりするケースが多く発生している。
本出願人は、ラインレーザーを使用することで、受け口の作成作業を容易にサポートする間伐材等の伐倒補助装置を開発した(特許文献1を参照)。
この公知技術は、直線又は十字線を発光するラインレーザー発生器及び該ラインレーザー発生器を伐倒する木に固定する取付部材と、チェーンソー及び該チェーンソーの鋸刃本体に付けた目印と、から構成される。そのため、ラインレーザー発生器をチェーンソーではなく伐採する木に固定し、受け口を作る部分とチェーンソーの鋸刃本体の両方にラインレーザーを当てることで、チェーンソーの鋸刃から視線を外すことなく安全に作業を行うことができる。
【0003】
先の間伐材等の伐倒補助装置により、ラインレーザーを用いると数メートル先の伐倒方向が容易に判断できるが、隣接する立木の枝葉間隔や伐倒木材の高さ等の情報がないため、的確な指示情報とは言えない。
そこで、本発明は、伐倒方向の立木間隔幅情報と伐倒する原木の高さ情報と、チェーンソーの位置・角度との空間情報を結合することで、伐倒方向の作業環境の仮想空間を創り、安全確実に伐倒作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6249386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、伐倒方向の立木間隔幅情報と伐倒する原木の高さ情報と、チェーンソーの位置・角度との空間情報を結合することで、間伐材等の伐倒方向の仮想空間を創り、この仮想空間情報に基づいて安全的確な伐倒方向の作業環境を形成することができる間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法は、携帯電話で衛星画像を取得し、またGPS機能付きレーザーで伐倒木の高さ及び隣接する立木の距離データを取得し、ヘッドセットにデジタルオブジェクトで伐倒する立木の位置座標データをマッチングし、ヘッドセットにより隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木の伐倒方向の仮想空間を創り表示する。
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法は、携帯電話で伐倒木と隣接立木を撮影し、撮影画像にマーカ技術を利用して立木に正方形をマーキングし、ヘッドセットにより伐倒木と隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木の伐倒方向の仮想空間を創り表示する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法は、携帯電話で衛星画像を取得し、またGPS機能付きレーザーで伐倒木の高さ及び隣接する立木の距離データを取得し、ヘッドセットにデジタルオブジェクトで伐倒する立木の位置座標データをマッチングし、ヘッドセットにより隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木材の伐倒方向の仮想空間を創り表示するため、間伐材等の伐倒方向の仮想空間を創り、この仮想空間情報に基づいて安全な伐倒方向の作業環境を形成することができる。
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法は、携帯電話で伐倒木と隣接立木を撮影し、撮影画像にマーカ技術を利用して立木に正方形をマーキングし、ヘッドセットにより伐倒木と隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木材の伐倒方向の仮想空間を創り表示するため、間伐材等の伐倒方向の仮想空間を創り、この仮想空間情報に基づいて安全な伐倒方向の作業環境を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法に用いる伐倒補助装置の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法に用いられる伐倒補助装置は、図1の説明図に示すように、直線又は十字線を発光するGPS機能付きレーザーと、該GPS機能付きレーザーを伐倒する木に固定する取付部材と、衛星画像を取得し得るスマホ等の携帯電話と、該携帯電話から伝送された衛星画像およびデジタルオブジェクトを表示するヘッドマウントディスプレイやフェースガードディスプレイ等からなるヘッドセットと、からなる。
【0010】
前記GPS機能付きレーザーは、GPS機能、距離測定機能及び通信機能を有し、目標物にレーザーを当ててGPS機能付きレーザーと目標物との距離を測定することができる。前記GPS機能付きレーザーを用いると、数十メートル先の伐倒方向が容易に判断でき、また、隣接する立木の間隔や枝葉間隔なども計測することができる。
前記取付部材は、立木の円周に巻き付けて固定保持ができる形式のバンドである。
前記携帯電話は、衛星画像(例えば、Google Earth(商品名))を取得できる機種であればよい。
前記ヘッドセットは、ヘルメットに通信機能、画像判別処理機能及び表示機能を有し、携帯電話から衛星画像が伝送され、画像判別処理機能及び表示機能によりヘッドマウントディスプレイやフェースガードディスプレイ等に衛星画像を表示でき、かつデジタルオブジェクトを表示できるものであればよい。また、安全作業確保のため、ヘルメットに人を感知する感知センサーを付け、伐倒する木から10~60m以下に作業者がいないことを感知する機能を備える。
【0011】
次に、本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法の操作動作を以下1)~8)に説明する。
1)GPS機能付きレーザーを伐倒する立木の適宜高さ位置(例えば、地面から1メートル)に取付部材で設置固定する。
2)GPS機能付きレーザーで伐倒する木の高さ情報を得るため、上方向にレーザーを向けレーザーの距離測定機能により先端までの距離を測定する。
3)伐倒する立木の360°伐倒エリアの衛星画像を携帯電話で取得し、前記携帯電話の通信機能によりヘッドセットに伝送し、衛星画像のデジタルオブジェクトをヘッドセットの表示機能により表示する。
4)次に、GPS機能付きレーザーで隣接する木々にレーザーを向け、伐倒する木からの相対的な距離をレーザーの距離測定機能により計測し、各々の距離データをGPS機能付きレーザーの通信機能によりヘッドセットに伝送する。
【0012】
5)ヘッドセットの画像判別処理機能でデジタルオブジェクトに伐倒する立木の位置座標データ(GPS情報で位置情報を整合)をマッチングする。
6)ヘッドセットで伐倒する立木の位置座標データを基準とし、隣接する木々の枝葉の直径情報を衛星画像の画像解析から算出し、隣接する木々の距離データに隣接する木々の枝葉の直径情報を関連付けする。
7)ヘッドセットの画像判別処理機能で隣接する木々の距離データおよび隣接する木々の枝葉の直径情報から伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木材の伐倒方向の仮想空間を創りデジタルオブジェクトに表示する。
8)ヘッドセットのデジタルオブジェクトの伐倒仮想空間に伐倒する立木のGPS機能付きレーザーのレーザー照射光を調整し合わせることで現実空間と仮想空間をマッチングする。
【0013】
9)次に、伐倒する立木のGPS機能付きレーザーのレーザー照射光にチェーンソーの罫書き線を合わせる。
10)予めチェーンソーに設置し、ゼロ点調整済みのデジタル水平器からXY方向の傾き情報をヘッドセットに表示し、チェーンソーの傾きを動かしながらXYのゼロ点を調整する。
11)調整完了情報を入力した後、ヘッドセットには受け口と追口(角度情報をあらかじめ登録した円弧)の最適線を表示し、チェーンソーは表示された最適線になぞって切断作業をする。
【0014】
次に、本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法に用いる伐倒補助装置の他の実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法に用いられる伐倒補助装置は、直線又は十字線を発光するGPS機能付きレーザーと、該GPS機能付きレーザーを伐倒する木に固定する取付部材と、前記GPS機能付きレーザーに一体に取り付けられ、カメラ機能を有する携帯電話と、該携帯電話のカメラ画像およびデジタルオブジェクトを表示するヘッドマウントディスプレイやフェースガードディスプレイ等からなるヘッドセットと、該ヘッドセットの制御部に設けたマーカ技術、計測アプリからなる。また、安全作業確保のため、ヘルメットに人を感知する感知センサーを付け、伐倒する木から10~60m以下に作業者がいないことを感知する機能を備える。
【0015】
次に、本発明の間伐材等の伐倒方向の仮想空間形成方法の他の実施例の操作動作を以下12)~18)に説明する。
12)伐倒する立木と伐倒木に隣接する立木を携帯電話のカメラ機能で画像撮影し、取得した画像を現実空間とし、前記携帯電話の通信機能により撮影画像をヘッドセットに伝送し、前記ヘッドセットの表示機能により表示する。
13)対象となる木々の撮影画像に、マーカ技術を利用し、それらの立木を正方形でヘッドセットにマーキングする。カメラ画像とヘッドセットの画像は常にリンクさせる。
14)ヘッドセットに伐倒する立木の基準となる位置として位置情報登録し、高さ情報、枝葉を含んだ直径情報を計測アプリで取得・登録し、伐倒木を基準とした隣接対象の立木との相対位置情報、高さ情報、枝葉を含んだ直径情報を計測アプリで取得し、登録する。
15)伐倒木を基準とした隣接対象の立木の取得した位置情報、高さ情報などの3次元座標をヘッドセットのデジタルオブジェクトにデータとして組み込む。
16)携帯電話を位置精度良く固定できるGPS機能付きレーザーのレーザー照射器又はLED照射器を附帯し、伐倒する立木に固定設置する。
17)取得した位置情報、高さ情報などの3次元座標をヘッドセットのデジタルオブジェクトのデータから伐倒する方向に引っ掛かりのない位置を自動計算し、ヘッドセットに伐倒木材の伐倒方向の仮想空間を創り表示する。
18)ヘッドセットを通し、前記レーザー照射器又はLED照射器のレーザー照射光又はLED照射光をヘッドセットに表示する伐倒仮想空間上に位置合わせすることで現実空間と仮想空間のマッチングを行う。
以下、前述と同様に、前記9)~11)の操作を行い、立木の伐倒を行うことができる。
図1