(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030954
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】繊維ボードの熱成形法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/14 20120101AFI20220210BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220210BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20220210BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220210BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220210BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220210BHJP
B32B 5/06 20060101ALI20220210BHJP
D04H 3/105 20120101ALI20220210BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20220210BHJP
【FI】
D04H3/14
B32B5/26
B32B27/02
B32B27/12
B32B27/32 C
B32B27/32 E
B32B27/36
B32B5/06 A
D04H3/105
D04H1/498
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135293
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】永塚 裕介
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK07B
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK41D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG01D
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG15C
4F100DG15D
4F100EC09A
4F100EC09B
4F100EC09C
4F100GB33
4F100JA04B
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB08
4L047BA03
4L047BA09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CB09
4L047CC09
(57)【要約】
【課題】 微孔を開ける作業を不要としながら、熱成形によって優れた吸音特性を持つ成形体を得る熱成形法を提供する。
【解決手段】 ポリエステル系繊維が集積されてなる第一不織体1、ポリオレフィン系繊維が集積されてなる第二不織体2、芯成分がポリエステル系重合体で鞘成分がポリオレフィン系重合体である芯鞘型複合繊維Aが集積されてなる第三不織体3及びポリエステル系繊維が集積されてなる第四不織体4を積層して積層体を得る。この積層体にニードルパンチを施して、繊維ボードを得る。この繊維ボードに、第二不織体2のポリオレフィン系繊維の融点以上の温度で加熱成形を施す。ここで、第二不織体2は、ポリプロピレン系長繊維で構成されてなる第一長繊維不織布、その繊維径が該ポリプロピレン系長繊維の繊維径よりも細い極細繊維で構成されてなる極細繊維不織布及びポリプロピレン系長繊維で構成されてなる第二長繊維不織布の順に積層されたSMS不織布である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維が集積されてなる第一不織体と、ポリオレフィン系繊維が集積されてなる第二不織体と、芯成分がポリエステル系重合体で鞘成分がポリオレフィン系重合体である芯鞘型複合繊維Aが集積されてなる第三不織体と、ポリエステル系繊維が集積されてなる第四不織体とが積層されてなる積層体よりなる繊維ボードに、該ポリオレフィン系繊維の融点以上の温度条件で加熱成形を施すことを特徴とする繊維ボードの熱成形法。
【請求項2】
温度条件が、ポリオレフィン系繊維の融点以上でポリエステル系重合体の融点未満の温度である請求項1記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項3】
積層体にニードルパンチを施すことにより、第一不織体、第二不織体、第三不織体及び第四不織体の各構成繊維相互間を交絡させて繊維ボードを得る請求項1記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項4】
第一不織体及び第四不織体中のポリエステル系繊維は、芯成分がエチレングリコールとテレフタル酸からなる共重合体であり、鞘成分がエチレングリコールとアジピン酸とテレフタル酸を含む共重合体である芯鞘型複合繊維Bである請求項1記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項5】
鞘成分が、エチレングリコール、アジピン酸、テレフタル酸並びにイソフタル酸及び/又はジエチレングリコールからなる共重合体である請求項4記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項6】
第二不織体は、ポリプロピレン系長繊維で構成されてなる第一長繊維不織布、その繊維径が該ポリプロピレン系長繊維の繊維径よりも細い極細繊維で構成されてなる極細繊維不織布及びポリプロピレン系長繊維で構成されてなる第二長繊維不織布の順に積層されてなるものである請求項1記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項7】
第三不織体中の芯鞘型複合繊維Aは、芯成分がポリエチレンテレフタレートで鞘成分がポリエチレンで構成されている請求項1記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項8】
芯鞘型複合繊維A及びBは、いずれも、芯成分と鞘成分とが同心に配置されている芯鞘型複合長繊維である請求項1又は4記載の繊維ボードの熱成形法。
【請求項9】
ポリエステル系繊維が集積されてなる第一不織体と、ポリオレフィン系繊維が集積されてなる第二不織体と、芯成分がポリエステル系重合体で鞘成分がポリオレフィン系重合体である芯鞘型複合繊維Aが集積されてなる第三不織体と、ポリエステル系繊維が集積されてなる第四不織体とが積層されてなる積層体に、ニードルパンチを施すことを特徴とする繊維ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ボードの熱成形法に関し、特に自動車の外装又は内装に用いる吸音特性に優れた成形体を得るための繊維ボードの熱成形法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等に用いられる吸音材として、再生繊維やガラス繊維等を集積してなる繊維ボードが採用されている。また、吸音特性を向上させるため、ポリエステル系繊維を集積してなる不織体にポリエステル系樹脂フィルムを積層してなる繊維構造体を、吸音材として用いることも提案されている(特許文献1)。しかるに、ポリエステル系樹脂フィルムは音を反射しやすいため、より吸音特性を向上させる目的で、このポリエステル系樹脂フィルムに数μm~数十μmの微孔を開けることも、特許文献1において提案されている。
【0003】
しかしながら、ポリエステル系樹脂フィルムに微孔を開けるのは煩わしい作業である。また、特許文献1記載の繊維構造体を加熱成形して成形体を得ようとすると、ポリエステル系樹脂フィルムの軟化又は溶融により、その微孔が塞がってしまうという恐れもある。したがって、成形体が所望の吸音特性を備えていないということがあった。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微孔を開ける作業を不要としながら、熱成形によって優れた吸音特性を持つ成形体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定の積層体よりなる繊維ボードに特定の加熱成形を施すことにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、ポリエステル系繊維が集積されてなる第一不織体と、ポリオレフィン系繊維が集積されてなる第二不織体と、芯成分がポリエステル系重合体で鞘成分がポリオレフィン系重合体である芯鞘型複合繊維Aが集積されてなる第三不織体と、ポリエステル系繊維が集積されてなる第四不織体とが積層されてなる積層体よりなる繊維ボードに、該ポリオレフィン系繊維の融点以上の温度条件で加熱成形を施すことを特徴とする繊維ボードの熱成形法に関するものである。
【0007】
本発明で用いる第一不織体1は、ポリエステル系繊維が集積されてなる。ポリエステル系繊維の繊度は、1~10デシテックス程度である。第一不織体1は、ポリエステル系繊維が単に集積されているだけでもよいが、一般的にはポリエステル系繊維相互間が結合され又は交絡されて、所定の強度を有して取り扱いやすくなっているのが好ましい。特に、集積されたポリエステル系繊維相互間をニードルパンチによって交絡させたニードルパンチ不織体となっているのが好ましい。なお、ニードルパンチを施す場合、パンチ密度は10本以上/cm2であるのが好ましい。第一不織体1の重量は、100~2000g/m2程度である。第一不織体1の重量が低すぎると、熱成形後に得られる微孔を有する膜を保護する機能が低下すると共に、得られる成形体の吸音性が低下する傾向が生じる。また、第一不織体1の重量が高すぎると、得られる成形体が高重量となり取り扱いにくく、合理的ではない。
【0008】
第一不織体1を構成するポリエステル系繊維は、従来公知のポリエステル系重合体を溶融紡糸して得られる長繊維又は短繊維を採用しうる。本発明においては、ポリエステル系繊維として、芯成分が高融点のポリエチレンテレフタレートよりなり、鞘成分が低融点のポリエステル系重合体よりなる芯鞘型複合長繊維Bを採用するのが好ましい。長繊維の方が、高剛性の成形体が得られるからである。かかる芯鞘型複合長繊維Bは、芯成分となるポリエチレンテレフタレートと、鞘成分となるポリエステル系重合体とを、複合紡糸孔を持つ紡糸装置に供給して、溶融紡糸するという公知の方法で得ることができる。
【0009】
芯成分を形成するポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコールをジオール成分とし、テレフタル酸をジカルボン酸成分として脱水縮合して得られるポリエステルであるが、ジカルボン酸成分として、ごく少量のイソフタル酸等の他のジカルボン酸成分が混合されていてもよい。かかるポリエチレンテレフタレートの融点は約260℃であり、ガラス転移点は約70~80℃であるのが好ましい。
【0010】
鞘成分を形成するポリエステル系重合体としては、エチレングリコールをジオール成分とし、アジピン酸とテレフタル酸をジカルボン酸成分として脱水縮合して得られる共重合ポリエステルを採用するのが好ましい。ジカルボン酸成分であるアジピン酸とテレフタル酸の混合割合は任意であるが、アジピン酸:テレフタル酸=1:1~10(モル比)程度である。ジオール成分として、少量のジエチレングリコールが混合されているのが好ましい。ジエチレングリコールの混合量は、ジオール成分中に0.5~5.0モル%程度である。また、ジカルボン酸成分として、少量のイソフタル酸が混合されているのが好ましい。イソフタル酸の混合量は、ジカルボン酸成分中に2.0~5.0モル%程度である。少量のジエチレングリコールやイソフタル酸を混合するのは、得られる繊維の剛性を適宜調整するためである。鞘成分を構成するポリエステル系重合体の融点は約200℃であり、ガラス転移点は約40~50℃であるのが好ましい。
【0011】
芯成分と鞘成分の重量割合は、芯成分:鞘成分=0.3~5:1(重量比)程度である。芯成分の重量割合が低すぎると、熱成形して得られる成形体の強度や剛性が低下する傾向が生じる。また、芯成分の重量割合が高すぎると、熱成形時に一体化されにくく、得られる成形体表面に毛羽立ちが生じやすくなる。芯成分と鞘成分は、同心に配置されていてもよいし、偏心して配置されていてもよい。しかしながら、偏心に配置されていると、熱成形時に、収縮が生じやすくなるため、同心に配置されている方が好ましい。
【0012】
本発明で用いる第二不織体2は、ポリオレフィン系繊維が集積されてなる。第二不織体2の重量は、20~70g/m2程度である。第二不織体2の重量が低すぎると、熱成形時に膜を形成しにくくなる傾向が生じる。また、第二不織体2の重量が高すぎると、熱成形時に微孔を持つ膜が形成されにくくなる。第二不織体2を構成しているポリオレフィン系繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよい。ポリオレフィン系繊維としては、一般的にポリプロピレン系繊維が用いられる。ポリプロピレン系繊維は、ポリプロピレン繊維であってもよいし、プロピレンにエチレンやブチレン等のオレフィンが共重合されている共重合体繊維であってもよい。ポリプロピレン系繊維の融点は200℃未満であり、ポリプロピレン繊維の融点は160~170℃程度である。このポリオレフィン系繊維としては、他の不織体を構成している繊維よりも繊維径の細い極細繊維を用いるのが好ましい。これは、熱成形時に溶融しやすく、微孔を持つ膜が形成されやすくなるからである。なお、極細繊維の繊維径は、概ね0.5μm~7μmであるのが好ましい。
【0013】
第二不織体2として、特に、ポリプロピレン系長繊維で構成されてなる第一長繊維不織布、その繊維径が該ポリプロピレン系長繊維の繊維径よりも細い極細繊維で構成されてなる極細繊維不織布及びポリプロピレン系長繊維で構成されてなる第二長繊維不織布の順に積層されてなるものを用いるのが好ましい。すなわち、二枚の長繊維不織布の間に極細繊維不織布が挟まれているものを用いるのが好ましい。極細繊維不織布のみでは強度が低く、取り扱いにくいからである。なお、第一及び第二長繊維不織布を構成している長繊維の繊維径は、概ね10μm~50μmであるのが好ましい。長繊維不織布としてはスパンボンド法で得られる不織布が用いられ、極細繊維不織布としてはメルトブロー法で得られる不織布が用いられることが多く、かかる積層不織布はSMS不織布と呼称される。したがって、第二不織体2としては、SMS不織布を採用するのが好ましい。SMS不織布の場合、第一及び第二長繊維不織布の重量は概ね1~30g/m2であり、極細繊維不織布の重量は概ね0.1~7g/m2である。
【0014】
本発明で用いる第三不織体3は、芯成分がポリエステル系重合体で鞘成分がポリオレフィン系重合体である芯鞘型複合繊維Aが集積されてなる。芯鞘型複合繊維Aの繊度は、1~10デシテックス程度である。第三不織体3の重量は、20~70g/m2程度であり、第二不織体2の重量と同程度であるのが好ましい。第三不織体3は、熱成形時において、第二不織体2のポリオレフィン系繊維を芯鞘型複合繊維Aの表面に沿って溶融させやすくするものだからである。第二不織体2の重量に比べて第三不織体3の重量の低すぎると、溶融したポリオレフィン系繊維の量が過剰となり、微孔の開いた膜を形成しにくくなる傾向が生じる。また逆に、第二不織体2の重量に比べて第三不織体3の重量の高すぎると、膜自体が形成されにくくなる傾向が生じる。芯鞘型複合繊維Aは、長繊維であっても短繊維であってもよいが、高強度が実現しうる長繊維であるのが好ましい。
【0015】
芯鞘型複合繊維Aの芯成分を形成するポリエステル系重合体は、ポリエチレンテレフタレートであるのが好ましい。すなわち、エチレングリコールをジオール成分とし、テレフタル酸をジカルボン酸成分として脱水縮合して得られるポリエステルであるが、ジカルボン酸成分として、ごく少量のイソフタル酸等の他のジカルボン酸成分が混合されていてもよい。また、鞘成分はポリエチレン等のポリオレフィンであるのが好ましい。鞘成分をポリオレフィンとすることにより、熱成形時において、第二不織体2中のポリオレフィン系繊維を芯鞘型複合繊維Aの表面に沿って溶融させうるからである。鞘成分をポリオレフィンとせずに、たとえばポリエステル等の重合体にすると、第二不織体2中のポリオレフィン系繊維との相溶性が悪く、芯鞘型複合繊維Aの表面に沿って溶融させにくくなる。なお、芯鞘型複合繊維Aの芯鞘の重量割合及び芯鞘の配置形態は、芯鞘型複合繊維Bと同様であってよい。
【0016】
本発明で用いる第四不織体4は、ポリエステル系繊維が集積されてなる。第四不織体4は第一不織体1と同種のものであるのが好ましい。もちろん、第四不織体4はポリエステル系繊維が集積されているものであれば、第一不織体1と異種のものであってもよい。
【0017】
第一不織体1、第二不織体2、第三不織体3及び第四不織体4の順に積層し積層体を得る。この積層体は、単に積層して繊維ボードとしてもよいが、第一不織体1、第二不織体2、第三不織体3及び第四不織体4を結合し一体化して繊維ボードとするのが好ましい。一体化されている方が取り扱いやすいからである。一体化する方法としては、第一不織体1、第二不織体2、第三不織体3及び第四不織体4を積層した後、ニードルパンチを施す方法が好ましい。ニードルパンチにより、各不織体を構成する繊維相互間が交絡せしめられ、強固に一体化する。パンチ密度は任意であるが、一般的に、10本以上/cm2であるのが好ましい。パンチ密度が10本未満/cm2であると、一体化の程度が低く、取り扱い性が低下する傾向が生じる。繊維ボードの重量は、300~2500g/m2程度である。繊維ボードの重量が300g/m2未満であると、吸音性が向上しにくい傾向が生じる。繊維ボードの重量が2500g/m2を超えると、重すぎて取り扱い性が低下する傾向が生じる。
【0018】
繊維ボードに、第二不織体2を構成しているポリオレフィン系繊維の融点以上の温度で加熱して熱形成する。加熱温度は、一般的に、ポリオレフィン系繊維の融点以上で、第三不織体3を構成している芯鞘型複合繊維Aの芯成分であるポリエステル系重合体の融点未満であるのが好ましい。具体的には、加熱温度は200℃程度であるのが好ましい。加熱の際に、加圧して繊維ボードを圧縮するのが一般的である。また、金型を用いて加熱加圧し、所定の形状にすることも好ましい。
【0019】
繊維ボードを加熱して熱成形した成形体は、種々の用途に用いられる。たとえば、自動車等や車両用、住宅用、高速道路や高速鉄道の防音壁用等の吸音材として、好適に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る熱成形法によれば、加熱成形時において、第二不織体2中のポリオレフィン系繊維が、第三不織体3中の芯鞘型複合繊維Aの表面に沿って溶融するため、芯鞘型複合繊維A相互間の間隙を残しながら膜が形成され、この間隙が微孔となる。したがって、得られた成形体は、第一不織体1及び第四不織体4の間に微孔を有する膜が形成され、吸音特性に優れたものとなる。よって、本発明によれば、樹脂フィルムに微孔を設けることなく、微孔を有する膜を備えた成形体が得られるという効果を奏する。
【実施例0021】
実施例1
[第一不織体の準備]
芯成分として、エチレングリコールとテレフタル酸の共重合体(融点260℃)を準備した。鞘成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アジピン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸の共重合体(融点200℃)を準備した。なお、ジオール成分としてのエチレングリコールは99モル%でジエチレングリコールは1モル%であり、ジカルボン酸成分としてのアジピン酸は19モル%でテレフタル酸は78モル%でイソフタル酸は3モル%である。上記した芯成分と鞘成分の両者を、複合紡糸孔を持つ紡糸装置に供給して、溶融紡糸を行い、芯成分と鞘成分の重量割合が芯成分:鞘成分=8:2である芯鞘型複合長繊維B(繊度約3デシテックス)を得た。この芯鞘型複合長繊維Bをコンベア上に捕集及び集積して繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、ニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度90本/cm2でニードルパンチを施して、重量200g/m2の第一不織体を得た。
【0022】
[第二不織体の準備]
ポリプロピレンを紡糸孔を持つ紡糸装置に供給し、スパンボンド法により、ポリプロピレン不織布を得た。このポリプロピレン不織布の重量は約22g/m2であり、ポリプロピレン不織布を構成するポリプロピレン長繊維の繊維径は約10μmであった。このポリプロピレン不織布上に、メルトブロー法により、極細繊維を集積し、極細繊維不織布を得た。この極細繊維不織布の重量は約7g/m2であり、極細繊維不織布を構成している極細繊維の繊維径は1~5μm程度であった。そして、この極細繊維不織布上に、上記のポリプロピレン不織布を積層して、重量が約50g/m2のSMS不織布を得た。このSMS不織布を第二不織体とした。
【0023】
[第三不織体の準備]
第三不織体として、ユニチカ株式会社製のエルベス(品番T0503WDO)を準備した。第三不織体は、芯成分がポリエチレンテレフタレートで鞘成分がポリエチレンである芯鞘型複合長繊維Aが集積されてなる不織布である。第三不織体の重量は約50g/m2であり、芯鞘型複合長繊維Aの繊度は約3デシテックスである。
【0024】
[第四不織体の準備]
第一不織体の製造方法と同一の方法で、重量600g/m2の第一不織体を得た。
【0025】
[繊維ボードの製造]
第一不織体、第二不織体、第三不織体及び第四不織体の順に積層して積層体を得た。この積層体をニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度45本/cm2でニードルパンチを施して、重量約1050g/m2の繊維ボードを得た。
【0026】
[繊維ボードの熱成形]
得られた繊維ボードを、200℃に加熱した二枚の熱板間に挟み、熱板間の距離を3mmとなるように加圧した状態で30秒間熱成形を行った。これにより、厚み3mmの成形体を得た。
【0027】
比較例1
実施例1で用いた第一不織体及び第四不織体を積層した積層体とし、この積層体に実施例1と同一の条件で熱成形を行い、厚み3mmの成形体を得た。
【0028】
比較例2
実施例1で用いた第一不織体、第三不織体及び第四不織体を積層し、これをニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度45本/cm2でニードルパンチを施して、積層体を得た。この積層体に実施例1同一の条件で熱成形を行い、厚み3mmの成形体を得た。
【0029】
比較例3
実施例1で用いた第一不織体、下記のポリエステル不織布及び実施例1で用いた第四不織体を積層し、これをニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度45本/cm2でニードルパンチを施して、積層体を得た。この積層体に実施例1同一の条件で熱成形を行い、厚み3mmの成形体を得た。
[ポリエステル不織布]
ポリエチレンテレフタレート長繊維が集積されてなるポリエステル不織布であって、ポリエチレンテレフタレート長繊維の繊度は約3デシテックスで、ポリエステル不織布の重量は約50g/m2である。
【0030】
比較例4
実施例1で用いた第一不織体、第二不織体及び第四不織体を積層し、これをニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度45本/cm2でニードルパンチを施して、積層体を得た。この積層体に実施例1同一の条件で熱成形を行い、厚み3mmの成形体を得た。
【0031】
比較例5
実施例1で用いた第一不織体、第二不織体、比較例3で用いたポリエステル不織布及び実施例1で用いた第四不織体を積層し、これをニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度45本/cm2でニードルパンチを施して、積層体を得た。この積層体に実施例1同一の条件で熱成形を行い、厚み3mmの成形体を得た。
【0032】
実施例1で得られた成形体から第一不織体に相当する層を剥がし、残存層の表面をSEM写真で観察したところ、
図2に示すとおり、微孔を有する膜が形成されていた。一方、比較例4で得られた成形体から第一不織体に相当する層を剥がし、残存層の表面をSEM写真で観察したところ、
図3に示すとおり、溶融物の塊が存在しており、膜の形成が認められなかった。
【0033】
実施例1で得られた成形体及び比較例1~5で得られた成形体の各々を、JIS L 1096記載の通気度測定法A法に準拠し、通気度を測定したところ、以下のとおりであった。すなわち、実施例1で得られた成形体は9cc/m2で、比較例1で得られた成形体は22cc/m2、比較例2で得られた成形体は16cc/m2、比較例3で得られた成形体は20cc/m2、比較例4で得られた成形体は16cc/m2、比較例5で得られた成形体は11cc/m2であった。
【0034】
実施例1で得られた成形体及び比較例1~5で得られた成形体の各々を、株式会社小野測器製のSR-4100 B管(内径29mmφ)を用い、ISO 10534-2に準拠し、第一不織体側を入射側にして垂直入射吸音率を測定した。なお、垂直入射吸音率の測定は、1000Hz、2000Hz、3000Hz、4000Hz及び5000Hzで行った。この結果を、
図4に示した。
【0035】
図2、
図3及び
図4の結果から、実施例1に係る熱成形法で得られた成形体は、微孔を持つ膜を有しており、吸音率が向上していることが分かる。