(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030971
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】分析用試料製造装置、分析用試料の製造方法及びチタンの分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20220210BHJP
G01N 33/2025 20190101ALI20220210BHJP
【FI】
G01N1/28 X
G01N33/2025
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135324
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】志賀 裕一
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
【テーマコード(参考)】
2G052
2G055
【Fターム(参考)】
2G052AA11
2G052AB02
2G052AD32
2G052AD52
2G052EB06
2G052FC04
2G052FC15
2G052FD09
2G052GA13
2G052HC08
2G052HC09
2G052HC25
2G055AA05
2G055BA01
2G055CA14
2G055CA25
2G055EA05
(57)【要約】
【課題】スポンジチタンの分析に好適に使用可能な分析用試料製造装置を提供する。
【解決手段】分析用試料製造装置100Aであって、チタン材を溶解させる熱源113と減圧用開口114とを有する熱源側容器110と、熱源側容器110と連結され、減圧用開口124を有する溶解用容器120とを備え、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部との連通と非連通が切り替え可能な可動部材130aを有する仕切部130を更に備え、熱源側容器110及び/又は溶解用容器120は、不活性ガス供給用開口116、126を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン材を溶解させる熱源と減圧用開口とを有する熱源側容器と、
前記熱源側容器と連結され、減圧用開口を有する溶解用容器とを備え、
前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部との連通と非連通が切り替え可能な可動部材を有する仕切部を更に備え、
前記熱源側容器及び/又は前記溶解用容器は、不活性ガス供給用開口を有する、分析用試料製造装置。
【請求項2】
前記溶解用容器は、収容部と、該収容部と連結される鋳型部と、流体の流路とを含む、請求項1に記載の分析用試料製造装置。
【請求項3】
前記熱源側容器は、前記熱源が前記仕切部側の先端部に設けられるトーチを更に備え、
前記トーチは、前記熱源側容器の内部から前記仕切部を介して前記溶解用容器側に前記熱源を移動させることが可能な進退機構を有する、請求項1又は2に記載の分析用試料製造装置。
【請求項4】
前記溶解用容器の減圧用開口と接続される着脱可能な減圧用配管を更に有し、
前記減圧用配管は、減圧用開口と接続される端部からその全長の20%以内の位置に開閉可能なバルブが設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析用試料製造装置。
【請求項5】
熱源によりダミー用チタン材を溶解するダミー溶解工程と、
前記熱源によりスポンジチタンを溶解することで分析用試料を製造する試料製造工程とを含み、
前記ダミー溶解工程及び試料製造工程はそれぞれ、ダミー用チタン材又はスポンジチタンを配置した溶解用容器の内部及び熱源側容器の内部を連通させることと、前記熱源側容器の内部及び前記溶解用容器の内部を不活性ガス雰囲気とすることとを順不同で行うステップaと、前記溶解用容器内の前記ダミー用チタン材又はスポンジチタンを溶解するステップbとを有し、
前記ダミー溶解工程後から前記試料製造工程まで、前記熱源側容器の内部が減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に維持される、分析用試料の製造方法。
【請求項6】
前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部との連通と非連通が切り替え可能な可動部材を有する仕切部を介して前記熱源側容器と前記溶解用容器とを連結し、
前記ダミー溶解工程後かつ前記試料製造工程前に、前記仕切部の可動部材を閉じて前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部とを非連通とし、その後前記ダミー用チタン材を溶解して得られるダミー用鋳材を回収する回収工程を更に含む、請求項5に記載の分析用試料の製造方法。
【請求項7】
前記試料製造工程において、連通した前記熱源側容器及び前記溶解用容器の内部に不活性ガスを連続的に流しつつ、前記溶解用容器の前記スポンジチタンを溶解する、請求項5又は6に記載の分析用試料の製造方法。
【請求項8】
前記試料製造工程のステップaにおいて、前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部とを連通させる前に、前記溶解用容器の内部を減圧しながら、前記溶解用容器の内部を昇温することを更に有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の分析用試料の製造方法。
【請求項9】
前記ダミー溶解工程の前記ステップaは、前記熱源側容器の内部及び前記溶解用容器の内部を減圧雰囲気にした後、不活性ガス雰囲気にすることを有する、請求項5~8のいずれか一項に記載の分析用試料の製造方法。
【請求項10】
前記ダミー溶解工程後、前記試料製造工程を複数回繰り返し実施し、各試料製造工程で、前記熱源側容器の内部が減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に維持される、請求項5~9のいずれか一項に記載の分析用試料の製造方法。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか一項に記載の分析用試料の製造方法で作製される分析用試料を分析する分析工程を含む、チタンの分析方法。
【請求項12】
前記分析工程は、分析用試料の酸素含有量の分析を含む、請求項11に記載のチタンの分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用試料製造装置、分析用試料の製造方法及びチタンの分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野及び触媒分野等において、更に高純度の金属チタンが要求されている。金属チタン中の酸素はその濃度を低減すべき成分の一つである。
【0003】
金属チタンのインゴットは、たとえば四塩化チタンをマグネシウムで還元するといったクロール法によって得られたスポンジチタン等のチタン材に対し、溶解、鋳造が行われることにより製造されている。
【0004】
しかしながら、クロール法にてスポンジチタンを製造すると、スポンジチタン中には不可避的に塩化マグネシウムが残存してしまう。この塩化マグネシウムは潮解性を有する。また、チタンは大気中の酸素と反応しやすく、特にスポンジチタンは微小な穴(細孔)の存在によりその表面積が大きい。そのような理由から、スポンジチタンは大気に接触するとその酸素含有量が多くなる。スポンジチタンから製造される金属チタン中の酸素を低減すること等を目的として、スポンジチタンの酸素含有量を抑制する方法に関しては、様々な報告がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、クロール法により製造されたスポンジチタン塊の中央部を取り出し、これを破砕して得られたスポンジチタン粒を保管容器内に封入する際に、スポンジチタン粒が充填された保管容器内を40Pa以下まで減圧した後にその保管容器内に低湿度ガスを注入するスポンジチタン粒の保管方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スポンジチタンの酸素含有量を分析するために、始めに、スポンジチタンを、例えば減圧雰囲気又は不活性雰囲気とした溶解装置内で溶解させ、これにより得られる溶湯を固化させて、分析用試料を得る。この分析用試料を使用して酸素含有量を測定し、その測定結果をスポンジチタンの酸素含有量として扱うことができる。しかしながら、これまでの溶解装置を用いてスポンジチタンから分析用試料を作製すると、当該分析用試料の酸素含有量等の分析結果が安定しないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の一実施形態においては、スポンジチタンの分析に好適に使用可能な分析用試料製造装置を提供することを目的とする。更に、本発明の別の実施形態においては、スポンジチタンの酸素含有量等の分析を高い精度で行うことを可能にする分析用試料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の一側面において、チタン材を溶解させる熱源と減圧用開口とを有する熱源側容器と、前記熱源側容器と連結され、減圧用開口を有する溶解用容器とを備え、前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部との連通と非連通が切り替え可能な可動部材を有する仕切部を更に備え、前記熱源側容器及び/又は前記溶解用容器は、不活性ガス供給用開口を有する、分析用試料製造装置である。
【0010】
本発明に係る分析用試料製造装置の一実施形態においては、前記溶解用容器は、収容部と、該収容部と連結される鋳型部と、流体の流路とを含む。
【0011】
本発明に係る分析用試料製造装置の一実施形態においては、前記熱源側容器は、前記熱源が前記仕切部側の先端部に設けられるトーチを更に備え、前記トーチは、前記熱源側容器の内部から前記仕切部を介して前記溶解用容器側に前記熱源を移動させることが可能な進退機構を有する。
【0012】
本発明に係る分析用試料製造装置の一実施形態においては、前記溶解用容器の減圧用開口と接続される着脱可能な減圧用配管を更に有し、前記減圧用配管は、減圧用開口と接続される端部からその全長の20%以内の位置に開閉可能なバルブが設けられる。
【0013】
また、本発明の別の側面において、熱源によりダミー用チタン材を溶解するダミー溶解工程と、前記熱源によりスポンジチタンを溶解することで分析用試料を製造する試料製造工程とを含み、前記ダミー溶解工程及び試料製造工程はそれぞれ、ダミー用チタン材又はスポンジチタンを配置した溶解用容器の内部及び熱源側容器の内部を連通させることと、前記熱源側容器の内部及び前記溶解用容器の内部を不活性ガス雰囲気とすることとを順不同で行うステップaと、前記溶解用容器内の前記ダミー用チタン材又はスポンジチタンを溶解するステップbとを有し、前記ダミー溶解工程後から前記試料製造工程まで、前記熱源側容器の内部が減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に維持される、分析用試料の製造方法である。
【0014】
本発明に係る分析用試料の製造方法の一実施形態においては、前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部との連通と非連通が切り替え可能な可動部材を有する仕切部を介して前記熱源側容器と前記溶解用容器とを連結し、前記ダミー溶解工程後かつ前記試料製造工程前に、前記仕切部の可動部材を閉じて前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部とを非連通とし、その後前記ダミー用チタン材を溶解して得られるダミー用鋳材を回収する回収工程を更に含む。
【0015】
本発明に係る分析用試料の製造方法の一実施形態においては、前記試料製造工程において、連通した前記熱源側容器及び前記溶解用容器の内部に不活性ガスを連続的に流しつつ、前記溶解用容器の前記スポンジチタンを溶解する。
【0016】
本発明に係る分析用試料の製造方法の一実施形態においては、前記試料製造工程のステップaにおいて、前記熱源側容器の内部と前記溶解用容器の内部とを連通させる前に、前記溶解用容器の内部を減圧しながら、前記溶解用容器の内部を昇温することを更に有する。
【0017】
本発明に係る分析用試料の製造方法の一実施形態においては、前記ダミー溶解工程の前記ステップaは、前記熱源側容器の内部及び前記溶解用容器の内部を減圧雰囲気にした後、不活性ガス雰囲気にすることを有する。
【0018】
本発明に係る分析用試料の製造方法の一実施形態においては、前記ダミー溶解工程後、前記試料製造工程を複数回繰り返し実施し、各試料製造工程で、前記熱源側容器の内部が減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に維持される。
【0019】
更に、本発明の別の側面において、上記いずれかの分析用試料の製造方法で作製される分析用試料を分析する分析工程を含む、チタンの分析方法である。
【0020】
本発明に係るチタンの分析方法の一実施形態においては、前記分析工程は、分析用試料の酸素含有量の分析を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、スポンジチタンの酸素含有量等の分析に好適に使用可能な分析用試料製造装置が提供される。また、本発明の別の実施形態によれば、スポンジチタンの酸素含有量等の分析を高い精度で行うことを可能にする分析用試料の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分析用試料製造装置の内部構造の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る分析用試料製造装置の内部構造の他の例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の一実施形態に係る分析用試料製造装置の内部構造のさらに他の例を示す概略断面図である。
図3(B)は、
図3(A)に示す分析用試料製造装置の使用例を示す概略断面図である。
【
図4-1】
図4(A)~(B)は、本発明の一実施形態に係る分析用試料の製造方法の手順を示す、分析用試料製造装置の概略断面図である。
【
図4-2】
図4(C)~(D)は、本発明の一実施形態に係る分析用試料の製造方法の手順を示す、分析用試料製造装置の概略断面図である。
【
図4-3】
図4(E)~(F)は、本発明の一実施形態に係る分析用試料の製造方法の手順を示す、分析用試料製造装置の概略断面図である。
【
図4-4】
図4(G)~(H)は、本発明の一実施形態に係る分析用試料の製造方法の手順を示す、分析用試料製造装置の概略断面図である。
【
図5】比較例1の分析用試料製造装置の内部構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は以下に説明する各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
なお、本明細書において、「上方」は、
図1、
図2、
図3(A)~(B)及び
図4(A)~(H)に示す分析用試料製造装置100A、100B、100Cにおいて溶解用容器120から熱源側容器110に向かう方向を意味する一方、「下方」は、
図1、
図2、
図3(A)~(B)及び
図4(A)~(H)に示す分析用試料製造装置100A、100B、100Cにおいて熱源側容器110から溶解用容器120に向かう方向を意味する。
また、本明細書において、「スポンジチタン」とは、分析に供されるスポンジチタンを意味する。
また、ここで例示する実施形態では、バルブV1~V6付近に、図示しない圧力計がそれぞれ配置されている。
【0024】
[1.発明の概要]
スポンジチタンの定量分析では、微量の不純物であっても検出される精度の良い分析が求められることがある。本発明者らはスポンジチタンの分析において特に酸素分析値を安定させるべく鋭意研究を行い、以下の知見を得るに至った。なお、高純度のスポンジチタンの不純物量分析では、分析値の安定性に対する要求の水準が高い。
【0025】
まず、スポンジチタンの酸素含有量の分析においては、スポンジチタンを溶解して冷却することにより比較的小型の鋳片であるインゴットを得た後、このインゴットを分析用試料とし、該分析用試料の酸素含有量を測定することができる。分析用試料の酸素含有量の測定結果は、スポンジチタンの酸素含有量として扱うことができる。
【0026】
このような分析用試料の作製に用いる溶解装置では、その内壁に、前回のスポンジチタンの溶解時に蒸発した塩化マグネシウムが付着し得る。そして、この付着しうる塩化マグネシウム量は制御が困難である。従来、スポンジチタンの溶解時においては溶解装置の内部を減圧雰囲気又は不活性雰囲気とするため、溶解装置の内部に少量の塩化マグネシウムが残っていても問題ないと考えられていた。しかしながら、本発明者は、内壁に付着した塩化マグネシウムが溶解装置の大気解放後に大気中の水分を吸収すること、並びに、この塩化マグネシウムの水分がスポンジチタンの酸素含有量の分析において無視できないことを突き止めた。すなわち、スポンジチタンを溶解するたび、潮解性を有する塩化マグネシウムが溶解装置の内壁や配管等に堆積し、大気開放時に水分を吸収する。この塩化マグネシウムが吸収した水は、その後に当該溶解装置内でスポンジチタンを溶解した際に加熱されることで、塩化マグネシウムから溶解装置の内部空間に放出され、スポンジチタンを溶解して得られる溶湯と反応する。その結果、当該溶湯から作製された分析用試料の酸素含有量が上昇し、スポンジチタンの分析結果が変動する。なお、塩化マグネシウムが吸収した水分は25℃等通常の室温下で減圧処理しても十分に除去できない。また、上述のとおり、溶解装置の内部空間に付着する塩化マグネシウム量の制御は困難であるので、スポンジチタンを溶解した際の加熱に基づき塩化マグネシウムから溶解装置の内部空間に放出される水の量も制御することが困難である。
【0027】
溶解にて製造する分析用試料の酸素含有量の上昇を抑制するには、2回以上の溶解を行い、1回目の溶解をダミー用チタン材を用いて仮のものとして行うことが有効である。より詳細には、溶解装置の内壁に塩化マグネシウムが堆積していたとしても、1回目のダミー用チタン材の溶解時に塩化マグネシウム中の水分を適切に除去できれば、2回目以降のスポンジチタンの溶解では、水の吸収が抑制されてスポンジチタンの分析結果が安定すると考えられる。
【0028】
上記のように2回以上の溶解を行って、2回目以降の溶解で安定した分析結果を得るためには、上記の溶解装置として、内部にダミー用チタン材やスポンジチタンを入れる溶解用容器と、ダミー用チタン材やスポンジチタンを溶解させるための熱源を備え、さらに熱源側に配置されて、内壁等に付着し得る塩化マグネシウムがダミー用チタン材の溶解からスポンジチタンの溶解までの間に大気と接触することを抑制できる熱源側容器とを備える分析用試料製造装置が好適である。そのような熱源側容器を実現するため、本発明者らは、溶解用容器と熱源側容器との間に、可動部材を有する仕切部を設けることを案出した。
【0029】
この仕切部を設けた分析用試料製造装置では、まず、1回目のダミー用チタン材の溶解を行うと、熱源側容器の内部に付着した塩化マグネシウム中の水は放出され、溶解用容器の内部に配置されたダミー用チタン材の溶湯に吸収される。溶解用容器からダミー用鋳材を取り出す際には、可動部材を有する仕切部を利用して熱源側容器の内部の気密性が維持される。これにより、熱源側容器の内壁に付着した塩化マグネシウムが大気由来の水分を吸収することを抑制できる。他方、溶解用容器は比較的単純な形状とすることが可能であること等により、その内壁に堆積した塩化マグネシウムを洗浄等によって除去しやすい。よって、取り換え可能の溶解用容器は塩化マグネシウムを除去した状態でスポンジチタンを収容できるので、スポンジチタンの溶解時に塩化マグネシウムから放出される水分の影響を受けにくい。また、溶解用容器を複数個準備すれば分析用製造装置の稼働率が容易に向上する。なお、上記のダミー用鋳材は、分析には使用しない。
このようにして1回目のダミー用チタン材の溶解の際に熱源側容器の内部の塩化マグネシウムから水分が除去されており、その後に熱源側容器の内部が気密に維持されることから、2回目以降のスポンジチタンの溶解では、スポンジチタンの溶湯が塩化マグネシウムから放出される水分を吸収することを抑制することができる。その結果として、スポンジチタンの酸素含有量の分析結果を安定させることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る分析用試料製造装置、分析用試料の製造方法及びチタンの分析方法について図面を使用しながら説明する。
【0030】
[1.分析用試料製造装置]
図1に示す分析用試料製造装置100Aは、熱源側容器110と、溶解用容器120と、仕切部130とを備える。また、支持部140と、基部150とを更に備えることが好ましい。以下、各構成について図面を用いて好ましい態様を説明する。
【0031】
(熱源側容器)
熱源側容器110は、トーチ112と、減圧用開口114と、不活性ガス供給用開口116とを備える。熱源側容器110は、仕切部130で区画される内部を気密に区画することができる。気密の形成には前記仕切部130の他、バルブV1及びバルブV2が寄与する。熱源側容器110の内部は減圧用開口114からの排気に基づく減圧雰囲気もしくは真空雰囲気や、不活性ガス供給用開口116からの不活性ガスの供給及び充填による不活性ガス雰囲気にすることができる。なお、減圧用開口114からの排気や不活性ガス供給用開口116からの不活性ガスの供給を継続的に行うこともある。熱源側容器110の内壁は、溶解用容器120内でスポンジチタン等を溶解した際にそのスポンジチタン等に含有される塩化マグネシウムが付着し得る。熱源側容器110においては、トーチ112の熱源113によるダミー用チタン材やスポンジチタンの溶解を確認するために、観察用窓(不図示)を設けることができる。
なお、熱源側容器110の材質は、耐熱性及び適切な強度を有するものであればよく、例えば銅、銅基合金、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン、チタン合金等が挙げられる。
【0032】
(トーチ・熱源)
トーチ112の熱源113は仕切部130側の先端部に設けられ、溶解用容器120内のダミー用チタン材やスポンジチタン等のチタン材を溶解させることができる。トーチ112としては、例えばアークトーチ等のアーク発生機器、プラズマトーチ等のプラズマ発生機器等が挙げられる。トーチ112は、熱源側容器110の内部から仕切部130を介して溶解用容器120側に熱源113を移動させることが可能な進退機構を有することが好ましい。なお、トーチ112に別途進退機構が接続されている場合であっても、トーチ112は進退機構を有するものとして扱う。すなわち、進退機構があればトーチ112は、熱源113を溶解用容器120に対して接近する方向及び離隔する方向(図示の例では上下方向)に移動させることが可能である。また、トーチ112の上方の基端部側は、支持フレーム(不図示)により支持されることとしてよい。支持フレームは、熱源113を設置面Gに水平な方向に移動させることが可能な移動機構を有することとしてよい。
【0033】
(減圧用開口・不活性ガス供給用開口)
減圧用開口114は、減圧用配管115の一端部と連結されている。減圧用配管115の反対側の他端部は、減圧用ポンプP1と連結されている。減圧用配管115は、バルブV1が配置されている。
不活性ガス供給用開口116は、不活性ガス供給用配管117の一端部と連結されている。不活性ガス供給用配管117の反対側の他端部は、図示は省略するが、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスの供給源(不図示)に接続されている。不活性ガス供給用配管117は、バルブV2が配置されている。
また、
図2に示す分析用試料製造装置100Bの減圧用配管115、125、135は、減圧時に熱源側容器110及び/又は溶解用容器120内を排気することができる。また、特に減圧用配管115、125を用いると、溶解用容器120に不活性ガスを供給することもできる。つまり、バルブV1~V3、V5を開けてバルブV6を閉めた状態で、不活性ガスの供給源から不活性ガス供給用配管117を介して不活性ガスを供給すれば、仮に分析用試料製造装置100Bの熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とが仕切部130で非連通とされていても、分析用試料製造装置100Bの熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とに不活性ガスを充填することが可能である。なお、分析用試料製造装置100Bの減圧用配管115、125は、三方管TTを介して減圧用配管135と連通され、その減圧用配管135はバルブV6を有し、減圧用ポンプP3に接続されている。この三方管TTと減圧用配管115、125、135との連結手段としては、例えば溶接が挙げられる。
更に、
図1に示す分析用試料製造装置100Aの熱源側容器110の減圧用開口114及び不活性ガス供給用開口116を1つの開口に集約し、その開口に配管を連結し、その開口と反対側の配管に真空排気兼不活性ガス供給装置を連結してもよい。このように1つの開口が二つの機能を兼ね備える場合であっても、熱源側容器110は減圧用開口114と不活性ガス供給用開口116を備えるとして扱う。この扱いは他の部材であっても同様である。また、溶解用容器120の減圧用開口124及び不活性ガス供給用開口126も同様に、1つの開口にしてもよい。
【0034】
(溶解用容器)
図1では、溶解用容器120は、チタン材が収容される収容部121と、該収容部121と連結される鋳型部122と、減圧用開口124と、不活性ガス供給用開口126と、受け部128と、流体の流路(不図示)を備える。流体の流路には気体や液体である熱媒体が流通し、収容部121と鋳型部122の温度を調整可能である。流体が水であれば溶解用容器120は水冷式となる。溶解用容器120を熱源側容器110に接近させた場合、溶解用容器120の受け部128が仕切部130及び固定具132に当接し、溶解用容器120の内部が仕切部130で区画されることで、溶解用容器120の内部を気密に区画可能である。またこのとき、受け部128のシール部材129(例えば、パッキン等)により、溶解用容器120の気密性を維持することが可能である。気密時には、減圧用開口124からの排気に基づく減圧雰囲気や、不活性ガス供給用開口126からの不活性ガスの供給による不活性ガス雰囲気とすることがある。
また、溶解用容器120は、例えば水冷式の銅又は銅合金製の坩堝を含むことがある。この場合、流体の流路には水が流される。溶解用容器120では、内部のダミー用チタン材又はスポンジチタンが熱源113で溶解され、その溶湯が鋳型部122にて注がれて、そこで冷却される。これにより、溶解用容器120の内部に、ダミー用鋳材又は分析用試料が得られる。なお、収容部121の底側にチタンシートTSを敷き、その上にダミー用チタン材やスポンジチタンを配置させて加熱すると、溶湯を収容部121内に形成可能である。その後、熱源113の出力を上げる等して溶湯の温度を更に上昇させると、溶湯の下に位置するチタンシートTSも溶解され、鋳型部122に溶湯が注がれる。この際、チタンシートTSであったものは鋳型部122の底側に位置すると考えられるので、鋳型部122で形成される試料の高さ方向中央部付近を分析対象とすれば、スポンジチタンの酸素含有量を知ることができる。
スポンジチタンの溶解前の溶解用容器120の減圧時には流路に冷水でなく、温水等の高温流体を流すことで、溶解用容器120に付着した水の蒸発を促進することができる。また、溶解用容器120を加熱する加熱機器を使用しても同様の効果が期待される。更に、耐熱性の観点から、銅又は銅合金製の坩堝の外壁(溶湯に接しない側)にステンレス鋼や普通鋼を貼り合わせてよい。
なお、鋳型部122の形状は特に限定されず適宜決定可能であり、例えば円筒状、角筒状等である。
【0035】
(減圧用開口・不活性ガス供給用開口)
減圧用開口124は、減圧用配管125の一端部と連結されている。減圧用配管125の反対側の他端部は、減圧用ポンプP2と連結されている。減圧用配管125は、バルブV3が配置されている。この減圧用配管125は、メンテナンスの容易性の観点から、着脱可能であることが好ましい。更に、減圧用配管125は、減圧用開口124と接続される端部からその全長の20%以内の位置に開閉可能なバルブV3が設けられていることが好ましい。この理由としては、明確ではないが次のように推察される。ダミー用チタン材の溶解及びスポンジチタンの溶解時(
図4(D)参照)にそれらに内包された塩化マグネシウムが気化して熱源側容器110の内壁だけでなく、減圧用配管125の内側にも付着し得る。減圧用配管125の内側に塩化マグネシウムが付着すると、溶解用容器120はダミー用鋳材を取り出してスポンジチタンに取り換える際に、減圧用配管125内の塩化マグネシウムは、外気に曝される可能性がある。この場合、減圧用配管125の内側に付着した塩化マグネシウムは外気中の水分を吸収する。したがって、ダミー用チタン材の溶解及びスポンジチタンの溶解時に蒸発する塩化マグネシウムが減圧用配管125内に進入するのを抑制し、さらには減圧用配管125の内側に付着し得る塩化マグネシウム中の水の影響を少なくするため、減圧用配管125のバルブV3の位置は減圧用開口124に近い方がよい。なお、減圧用配管125を交換すれば、内部に塩化マグネシウムが付着していない減圧用配管125を使用できるため、上記影響を回避することが可能である。なお、減圧用配管125の全長とは配管の両端部間の長さを意味し、
図1に示す分析用試料製造装置100Aでは、端部側の減圧用開口124からもう一方の端部側の減圧用ポンプP2までの距離を意味する。
また、不活性ガス供給用開口126は、不活性ガス供給用配管127の一端部と連結されている。不活性ガス供給用配管127の反対側の他端部は、図示しない不活性ガスの供給源に接続されている。不活性ガス供給用配管127は、バルブV4が設けられている。なお、不活性ガスは、アルゴン又はヘリウム等である。上記減圧用配管125と同様に不活性ガス供給用配管127内にも蒸発した塩化マグネシウムが進入しうるためこれを抑制することが好ましい。よって、不活性ガス供給用配管127は、不活性ガス供給用開口126と接続される端部からその全長の20%以内の位置に開閉可能なバルブV4が設けられていることが好ましい。
【0036】
(仕切部)
図1に示す分析用試料製造装置100Aにおいて、熱源側容器110と溶解用容器120とは仕切部130を介して連結されている。仕切部130は、熱源側容器110の内部を気密に区画することができる。また、仕切部130は、溶解用容器120を熱源側容器110に接近させた状態で、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを物理的に仕切ることできるとともに、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを連通させることができる。これを実現するため、仕切部130は、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部との連通と非連通が切り替え可能な可動部材130aを有する。
また、可動部材130aは、熱源側容器110の内部を気密に区画し、また熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを連通することが可能であれば特に限定されるものではないが、例えばスライド式(
図4(C)参照)又はヒンジ式(
図3(A)及び
図3(B)参照)が挙げられる。
図1に示す可動部材130aがスライド式である場合、仕切部130の中央が開口するように、可動部材130aを設置面Gに略平行である水平な方向に移動させることとしてよい。例えば、可動部材130aが仕切部130の内部空間に内蔵されることにより開口し、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部が連通される。熱源側容器110を気密に区画する際は、可動部材130aをスライドさせて前記開口を閉じればよい。また、
図3(A)及び
図3(B)に示す分析用試料製造装置100Cの仕切部130にヒンジ式を採用している場合、仕切部130の中央にある開閉扉130bを該開閉扉130bのヒンジ131と反対側であって熱源側容器110側の表面上の結束バンド161に環状の把持部162を介して連結された押し棒160で押して、ヒンジ131を介して熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを連通させればよい。このとき、仕切部130が弾性部材(不図示)を有するので、押し棒160を引き上げた後に、開閉扉130bが元の位置に戻り、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とが閉じられ、非連通となる。
【0037】
(支持部)
支持部140は、溶解用容器120を支持する。支持部140は進退機構を有し、その進退機構は、溶解用容器120を上下方向に移動させることができる。これにより、熱源側容器110に対して溶解用容器120を離隔させ、また接近させることができる。接近させた結果、仕切部130と溶解用容器120は密着する。
【0038】
(基部)
基部150は、設置面G上であって、支持部140に連結されている。基部150は移動機構を有し、設置面Gに水平な方向に移動させることができる。
【0039】
[2.分析用試料の製造方法]
本発明に係る分析用試料の製造方法の一実施形態においては、先述した分析用試料製造装置100A、100B、100Cを用いることとしてもよく、ダミー溶解工程と、試料溶解工程とを含む。また、ダミー溶解工程と試料溶解工程との間には回収工程が含まれうる。以下、各工程について図面を用いて好ましい態様を説明する。
【0040】
(ダミー溶解工程)
ダミー溶解工程は、熱源側容器110の熱源113で溶解用容器120内のダミー用チタン材DTを溶解する。ダミー溶解工程は、ダミー用チタン材DTを配置した溶解用容器120の内部と熱源側容器110の内部とを連通させることと、熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部を不活性ガス雰囲気とすることとを順不同で行うステップaと、さらに溶解用容器120内のダミー用チタン材DTを溶解するステップbとを有する。
次に、ダミー溶解工程の一例を説明する。
【0041】
はじめに、
図4(A)に示すように、熱源側容器110は、バルブV1、V2を閉じた状態で、仕切部130により気密に区画されている。そして、熱源側容器110の内部を減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気にする。通常、ダミー溶解工程は試料製造工程に先行して行われるので、熱源側容器110内を減圧して水分を含む大気を排気し、その後不活性ガスを充填して不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。熱源側容器110の内部を減圧雰囲気にする場合、バルブV1を開きバルブV2を閉じた後、減圧用開口114を介して熱源側容器110の内部を減圧用ポンプP1で真空引きする。このとき、熱源側容器110の内部の圧力(絶対圧)は、例えば1.0×10
-4~1.0×10
2Paの範囲とする。真空引き終了後、バルブV1を閉じ、熱源側容器110内を減圧雰囲気とする。
また、熱源側容器110の内部を不活性ガス雰囲気にする場合、熱源側容器110の内部を上記のように減圧雰囲気にした後、バルブV1を閉じ、バルブV2を開けて、不活性ガス供給用開口116を介して熱源側容器110の内部を不活性ガス雰囲気にする。不活性ガス充填の終了後、バルブV2を閉じる。
一方、溶解用容器120においては、収容部121の底部にチタンシートTSを配置し、そのチタンシートTS上にダミー用チタン材DTを配置する。ダミー用チタン材DTについては特に限定されず、スポンジチタン、純チタンのスクラップ、純チタンの切粉、純チタンの板材、及び純チタンの鋳片等が挙げられる。中でも、ダミー用チタン材DTをスポンジチタンとする場合、該スポンジチタンは、後述するような分析用試料の作製に用いるスポンジチタンATと同一のスポンジチタン塊から採取されたもの、さらには同一ロットのものであることが好適である。なお、チタンシートの純度及び厚みは適宜選択すればよい。
【0042】
次に、
図4(B)に示すように、溶解用容器120を、支持部140の昇降機能により支持部140上の溶解用容器120を上方に移動させ、溶解用容器120と熱源側容器110とを仕切部130を介して連結させる。これにより、その受け部128が仕切部130及び固定具132と当接し、溶解用容器120の内部は、仕切部130と固定具132と受け部128のシール部材129と閉じられたバルブV3、V4で気密に区画される。そして、バルブV3を開いた後、溶解用容器120の内部を減圧用開口124に連通された減圧用配管125を介して減圧用ポンプP2で真空引きすることで、溶解用容器120の内部を減圧雰囲気にする。このとき、溶解用容器120の内部の圧力(絶対圧)は、可動部材130aを開放可能であればよく、例えば1.0×10
-4~1.0×10
2Paの範囲である。真空引き終了後、バルブV3を閉じる。
また、溶解用容器120の内部を不活性ガス雰囲気にする場合、溶解用容器120の内部を上記のように減圧雰囲気にした後、バルブV3を閉じ、バルブV4を開けて、不活性ガス供給用開口126を介して溶解用容器120の内部を不活性ガス雰囲気にする。不活性ガス充填の終了後、バルブV4を閉じる。
【0043】
次に、
図4(C)に示すように、仕切部130の可動部材130aを開口することで、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部が連通されて同一空間となる。
なお、熱源側容器110の内部の減圧や不活性ガスの充填と溶解用容器120の内部の減圧との順序は特に限定されず両者を同時に実施してよいし、いずれかを先に実施してもよい。熱源側容器110の内部が不活性ガス雰囲気、溶解用容器120の内部が減圧雰囲気の状態で上記連通を行う場合、連通後に減圧処理を実施し、さらに不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。溶解用容器120の減圧が弱い場合、再度の減圧を行うことで分析用試料製造装置100A内の水分をより多く排気できる。以上のとおり、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを連通してから上記減圧及び不活性ガスの充填を行ってもよいし、前記連通前に熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部を不活性ガス雰囲気としてその後前記連通を行ってもよいし、減圧及び不活性ガス充填を行っている途中で熱源側容器110と溶解用容器120の内部を連結してよい。
熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とが連通され、かつ不活性ガス雰囲気である状態で、熱源113をトーチ112の進退機構により熱源側容器110の内部から仕切部130を介して溶解用容器120側に移動させ、熱源113とダミー用チタン材DTとの間が溶解に適した一定距離となるように調整する。
【0044】
次に、
図4(D)に示すように、熱源113でダミー用チタン材DTは溶解されて溶湯となり、その溶湯Mが収容部121にてプールとして形成される。熱源側容器110の内壁に付着した塩化マグネシウムがある場合は該塩化マグネシウム中の水分を蒸発させて排気するため、また、ダミー用チタン材が塩化マグネシウムを含む場合はダミー用チタン材の溶解により蒸発する塩化マグネシウムを排気するため、ダミー用チタン材DTの溶解中、バルブV2及び/又はバルブV4を開け、熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部に不活性ガスを流すことが好ましい。このとき、バルブV1及び/又はバルブV3を開けて、熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部の不活性ガスを排気することができる。なお、この不活性ガスの流量については適宜調整可能である。
また、熱源113による溶解時間は適宜調整可能であり、例えば1~60分程度である。また、熱源113による溶解中の溶湯Mのプールの温度は適宜調整可能である。この温度は、例えば二色型放射温度計で測定可能である。
【0045】
次に、熱源113の出力を更に高めることでチタンシートTSを溶解させ、
図4(E)に示すように、ダミー用チタン材DTの溶湯Mが鋳型部122に注がれる。なお適宜のタイミングで熱源113による加熱を停止してよい。そして、鋳型部122に注がれた溶湯Mは、
図4(F)に示すように、例えば溶解用容器120内で鋳型部122の外周側に形成された流路(不図示)に冷水が流れることで冷却されて固化され、ダミー用鋳材DCが得られる。また、流路での冷水の流動の代わりに、溶解用容器120の外壁に設けることができる冷却ジャケットにより、溶湯Mを冷却してもよい。
【0046】
ダミー用鋳材DCが得られた後、
図4(G)に示すように、開いている場合はバルブV1~V4を閉じて、熱源113をトーチ112の進退機構により溶解用容器120側から仕切部130を介して熱源側容器110内へ上方に移動させる。その後、仕切部130の可動部材130aを閉じて熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを非連通とする。このとき、熱源側容器110の内部は気密にされていて、不活性ガスで満たされている。また、前記非連通とした後に、熱源側容器110の内部に減圧処理を実施しもよいし、減圧処理後に更に不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気としてもよい。すなわち、ダミー溶解工程後から試料製造工程まで、熱源側容器110の内部を減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に維持することが肝要である。このような状態であれば、熱源側容器110の内部が外気に曝されていないので、熱源側容器110の内壁に付着した塩化マグネシウムが外気から水分を吸収することが抑制されている。
【0047】
そして、
図4(H)に示すように、支持部140の昇降機能により溶解用容器120を下方に移動させることで熱源側容器110と溶解用容器120との連結が解除され、溶解用容器120が開放される。
ダミー溶解工程は、熱源側容器110内由来の水分の影響を低減させることができる。よって、熱源側容器110内が大気等外気に接触した後はダミー溶解工程を実施することが好ましい。
【0048】
(回収工程)
ダミー溶解工程の後は、溶解用容器120内のダミー用鋳材DCを回収すればよい。このダミー用鋳材DCは、熱源側容器110の内壁に付着した塩化マグネシウム由来の酸素を吸収している。なお、ダミー溶解工程で使用した溶解用容器120を後述する試料製造工程でそのまま使用してもよいが、必要に応じて、その溶解用容器120を内壁の付着物を取り除くために洗浄及び乾燥してもよい。
【0049】
(試料製造工程)
試料製造工程は、ダミー溶解工程後(さらに回収工程後)、熱源側容器110の熱源113で溶解用容器120の内部のスポンジチタンATを溶解することで分析用試料ACを製造する。試料製造工程は、スポンジチタンATを配置した溶解用容器120の内部及び熱源側容器110の内部を連通させることと、熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部を不活性ガス雰囲気とすることとを順不同で行うステップaと、溶解用容器120内のスポンジチタンATを溶解するステップbとを有する。また、熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部を連通させる前に、溶解用容器120の内部を減圧しながら、溶解用容器120の内部を昇温することを更に有してもよい。
次に、試料製造工程の一例を説明する。ただし、試料製造工程の操作は、ダミー溶解工程の操作と同じ操作で実施している部分もある。そこで、試料製造工程については、ダミー溶解工程との重複する記載を割愛し、異なる操作を説明する。
【0050】
はじめに、
図4(A)に示す熱源側容器110の内部は、ダミー溶解工程で先述したように、仕切部130で気密となっているので不活性ガスで満たされている。したがって、この状態を維持すればよい。また、熱源側容器110の内部がすでに不活性ガス雰囲気であるが、減圧雰囲気又は再度不活性ガス雰囲気にしてもよい。熱源側容器110の内壁に付着した塩化マグネシウム中の水分を蒸発させて排気するために、熱源側容器110の内部を減圧用ポンプP1で真空引きしている間、熱源側容器110の内部に流路を設け、その流路に温水等の高温流体を流してもよく、熱源側容器110の外壁にヒータ等の加熱機器を設けてもよい。
一方、溶解用容器120においては、収容部121の底部にチタンシートTSを配置し、そのチタンシートTS上にスポンジチタンATを配置する。熱源113により収容部121のチタンシートTSを溶解すれば、該チタンシートTS上のスポンジチタンATの溶湯Mは、鋳型部122に注がれる。
【0051】
次に、
図4(B)に示すように、ダミー溶解工程の操作と同様に実施すればよい。なお、溶解用容器120の内部に存在する水分を蒸発させて排気するために、溶解用容器120の内部を減圧しながら、溶解用容器120の内部を昇温することが好ましい。
【0052】
次に、
図4(C)に示すように、ダミー溶解工程の操作と同様に実施すればよい。
【0053】
次に、
図4(D)~(H)に示すように、ダミー溶解工程の操作と同様に実施すればよい。なお、
図4(D)~(E)においては、スポンジチタンAT中に残留していた塩化マグネシウムを排気するため、連通した熱源側容器110及び溶解用容器120の内部に不活性ガス供給源から不活性ガスを連続的に流しつつ、溶解用容器120のスポンジチタンATを溶解することが好ましい。
【0054】
そして、分析用試料ACを回収すればよい。熱源側容器110の内壁に付着している塩化マグネシウム中の水はすでにダミー用鋳材DCに吸収されているので、分析用試料ACは前記塩化マグネシウム由来の水分をほとんど吸収しない。その結果、分析用試料ACを用いて化学分析しても、酸素含有量のバラツキを低減することが可能である。したがって、スポンジチタンATの高精度の分析結果を得ることが可能である。
【0055】
更に、試料製造工程は、複数回繰り返し実施することが可能である。ダミー溶解工程を挟まずに複数回繰り返し試料製造工程を実施する場合は、溶解用容器120を複数個準備し、工程ごとに溶解用容器120を取り換えて使用することが好ましい。試料製造の歩留を向上できる他、効率的に溶解用容器120の洗浄及び乾燥を行える。なお、使用した溶解用容器120を再度使用してもよいが、その際は溶解用容器120を洗浄及び乾燥してもよい。一方、各試料製造工程で、仕切部130を適切に使用し、熱源側容器110の内部が長期にわたって減圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気に維持されることで、メンテナンス負荷を低減できる。スポンジチタンATの溶解を繰り返して熱源側容器110の内壁に塩化マグネシウムの付着量がその都度増加しても、熱源側容器110が大気開放されなければ付着した塩化マグネシウムが大気由来の水分を吸収しないため、スポンジチタンATの溶解時に、外部からの酸素がそのスポンジチタンATに混入することを適切に抑制できる。なお、スポンジチタンATを溶解するとスポンジチタンAT中に不可避的に残留した塩化マグネシウムが蒸発してその内壁に堆積していくので、適宜洗浄及び乾燥等メンテナンスすればよい。熱源側容器110のメンテナンス後は、通常、ダミー溶解工程を行う。
【0056】
[3.チタンの分析方法]
本発明に係るチタンの分析方法の一実施形態においては、先述した分析用試料の製造方法で作製される分析用試料を分析する分析工程を含む。従来の方法では、分析用試料の作製時に、その酸素含有量が変動しやすかったが、一実施形態では、分析用試料の作製時に水の混入が抑えられたことにより酸素含有量の変動が抑制されている。したがって、分析用試料の分析によって得られた酸素含有量から、スポンジチタンの酸素含有量を高い精度で予測することができる。
また、分析用試料は酸素含有量以外の分析にも使用可能であり、水素、窒素、炭素、塩素等の分析や不純物金属の分析にも使用可能である。
【実施例0057】
本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例及び比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものではない。
【0058】
(実施例1)
実施例1においては、
図1に示す分析用試料製造装置100Aを使用した。このとき、トーチ112としてアークトーチ加熱機器を用い、溶解用容器120として水冷銅坩堝を用い、鋳型部122は円筒状とした。また、バルブV3は、減圧用開口124と接続される端部から減圧用配管125の全長の15%の位置に配置した。
【0059】
次に、分析用試料製造装置100Aの支持部140の進退機構を下方に移動することで、熱源側容器110と溶解用容器120との連結を解除した後、溶解用容器120の収容部121にチタンシートTSを配置し、そのチタンシートTS上にダミー用スポンジチタン(ダミー用チタン材)を配置した。なお、このダミー用スポンジチタンとしては、金属製還元反応容器内で溶融マグネシウムに四塩化チタンを滴下することで大塊状のスポンジチタン塊を生成した後、このスポンジチタン塊の中心部位を大割シャー及び破砕シャーで切断したものを使用した。
【0060】
ダミー溶解工程は、以下の手順に従って実施した。
(a-1)バルブV2を閉めてバルブV1を開けて熱源側容器110の内部を減圧用ポンプで1×10-2Pa(絶対圧)となるまで真空引きした。真空引き後、バルブV1を閉めバルブV2を開けて、不活性ガス供給装置から不活性ガス供給用配管117を介して熱源側容器110の内部にアルゴンガスを充填することでアルゴンガス雰囲気に置換した。アルゴンガス置換後、バルブV2を閉めた。
(a-2)支持部140の進退機構で支持部140上の溶解用容器120を上方に移動することで、熱源側容器110と溶解用容器120とを連結させた。
(a-3)バルブV4を閉めてバルブV3を開けて溶解用容器120の内部を減圧用ポンプで10Pa(絶対圧)となるまで真空引きした。真空引き後、バルブV3を閉めた。
(a-4)可動部材130a(スライド式)により仕切部130を開け、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを連通させた。
(a-5)バルブV1及びV3を開けて、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを減圧用ポンプP1、P2で1×10-2Pa(絶対圧)となるまで真空引きした。真空引き後、バルブV1、V3を閉めた。
(a-6)バルブV2及びV4を開けて、熱源側容器110の内部の圧力及び溶解用容器120の内部の圧力が大気圧と同程度になるまで、アルゴンガスを流した。
(a-7)熱源113をトーチ112の進退機構で下方に移動することで、その熱源113を溶解用容器120のダミー用スポンジチタン付近まで近づけた。
(a-8)不活性ガス供給源から少量のアルゴンガスを流しつつ、バルブV1を開けて熱源側容器110の内部及び溶解用容器120の内部のアルゴンガスを排出し、熱源113によりダミー用スポンジチタンを溶解させた。さらに、ダミー用スポンジチタンの他、チタンシートTSも溶解させた。このとき、溶解用容器120内の流路に冷水を流していた。
(a-9)上記溶解後、熱源113によるダミー用スポンジチタンの溶解を停止し、バルブV1、V2、V4を閉めてアルゴンガスも流すことを停止した後、熱源113をトーチ112の進退機構で上方に移動した。
(a-10)ダミー用スポンジチタンの溶湯Mからダミー用鋳材DCが形成されてから30分放置して、可動部材で仕切部130を閉じて熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを非連通とした。
(a-11)分析用試料製造装置100Aの支持部140の進退機構を下方に移動することで、熱源側容器110と溶解用容器120との連結を解除した。
【0061】
上記ダミー溶解工程後、溶解用容器120の鋳型部122で形成されたダミー用鋳材DCを回収した。回収後、使用した溶解用容器120を洗浄、乾燥した。その乾燥後の溶解用容器120を、分析用試料製造装置100Aの支持部140の上に配置した。溶解用容器120の収容部121にチタンシートTSを配置し、そのチタンシートTS上にスポンジチタンATを配置した。このスポンジチタンATについては、先述したダミー溶解工程で使用したものと同じロットであって、同じ中心部位から採取した。なお、熱源側容器110の内部はアルゴンガス雰囲気のままであった。
【0062】
次の試料製造工程においては、以下の手順に従って実施した。
(b-1)支持部140をその進退機構で上方に移動することで、熱源側容器110と溶解用容器120とを連結した。
(b-2)バルブV4を閉めてバルブV3を開けて溶解用容器120の内部を減圧用ポンプで10Pa(絶対圧)となるまで真空引きした。真空引き後、バルブV3を閉めた。
(b-3)仕切部130の可動部材130a(スライド式)を開け、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを連通させた。
(b-4)バルブV1及びV3を開けて、熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを減圧用ポンプP1、P2で1×10-2Pa(絶対圧)となるまで真空引きした。真空引き後、バルブV1、V3を閉めた。
(b-5)バルブV2及びV4を開けて、熱源側容器110の内部の圧力及び溶解用容器120の内部の圧力が大気圧と同程度になるまで、アルゴンガスを流した。
(b-6)熱源113をトーチ112の進退機構で下方に移動することで、その熱源113を溶解用容器120のスポンジチタンAT付近まで近づけた。
(b-7)不活性ガス供給源から少量のアルゴンガスを流しつつ、バルブV1を開けて熱源側容器110の内部及び溶解用容器120内のアルゴンガスを排出し、熱源113によりスポンジチタンATを溶解させた。さらに、スポンジチタンATの他、チタンシートTSも溶解させた。このとき、溶解用容器120内の流路に冷水を流していた。
(b-8)上記溶解後、熱源113によるスポンジチタンATの溶解を停止し、バルブV1、V2、V4を閉めてアルゴンガスも流すことを停止した後、熱源113をトーチ112の進退機構で上方に移動した。
(b-9)スポンジチタンATの溶湯Mから分析用試料ACが形成されてから30分放置して、可動部材で仕切部130を閉じて熱源側容器110の内部と溶解用容器120の内部とを非連通とした。
(b-10)分析用試料製造装置100Aの支持部140の進退機構を下方に移動することで、熱源側容器110と溶解用容器120との連結を解除した。
(b-11)溶解用容器120の鋳型部122で形成された分析用試料ACを回収した。なお、熱源側容器110の内部はアルゴンガス雰囲気のままであった。このため続けて試料製造工程を実施可能であった。
【0063】
<酸素含有量測定>
分析用試料ACの高さ方向の中央付近を切断具で切断し、分析用スライスを得た。分析用スライスの中心から小片を採取し、小片中の酸素含有量を不活性ガス溶融-赤外線吸光法によりそれぞれ測定した。その結果、スポンジチタンATの酸素含有量は、130ppmであった。なお、酸素含有量の結果を表1に示す。
一方、ダミー用鋳材DCも分析用試料ACの酸素含有量測定と同様に、ダミー用スライスを得た。ダミー用スライスの中心から小片を採取した。小片中の酸素含有量を不活性ガス溶融-赤外線吸光法によりそれぞれ測定した。その結果、ダミー用スポンジチタンの酸素含有量は、150ppmであった。この酸素含有量の結果も表1に示す。
【0064】
分析用試料ACを回収した後、更に、ダミー溶解工程を挟まずに試料製造工程を先述した方法で2回繰り返し実施した。但し、スポンジチタンATはロットの異なるもの(ロット2~3)を使用した。その都度、得られた分析用試料ACについて、先述した方法により、スポンジチタンATの酸素含有量を求めた。この酸素含有量の結果も表1に示す。
【0065】
(比較例1)
比較例1においては、
図5に示すように、熱源側容器510と、熱源側容器と連結された溶解用容器520と、支持部540と、基部550とを備えた分析用試料製造装置500を使用した。熱源側容器510は、アークトーチ加熱機器であるトーチ512と、減圧用配管515と連結された減圧用開口514と、不活性ガス供給用配管517と連結された不活性ガス供給用開口516とを有していた。また、溶解用容器520は、収容部521と、円筒状の鋳型部522とを有していた。このとき、熱源側容器510を取り外して、溶解用容器520の収容部521にチタンシートTSを配置し、そのチタンシートTS上にスポンジチタンを配置した。そして、熱源側容器510の内部及び溶解用容器520の内部を、受け部528のシール部材529及び固定具532により、気密にした。このスポンジチタンについては、実施例1で使用したものと同じロットであって、同じ中心部位から採取した。なお、トーチ512は、熱源側容器510の内部から溶解用容器520側に先端部の熱源513を移動させることが可能な進退機構を有していた。溶解用容器520として水冷銅坩堝を用いた。また、シール部材529としてパッキンを用いた。
【0066】
次に、以下の手順に従って分析用試料を作製した。
(c-1)バルブV8を閉めてバルブV7を開けて装置本体の内部を減圧用ポンプP4で1×10-2Pa(絶対圧)となるまで真空引きした。真空引き後、バルブV1を閉じた。
(c-2)バルブV8を開けて、熱源側容器510の内部及び溶解用容器520の内部の圧力が大気圧と同程度になるまで、アルゴンガスで充填した。
(c-3)不活性ガス供給装置から少量のアルゴンガスを流しつつ、バルブV7を開けて熱源側容器510の内部及び溶解用容器520内のアルゴンガスを排出し、トーチ512の熱源513によりスポンジチタンATを溶解させた。さらに、スポンジチタンATの他、チタンシートTSも溶解させた。このとき、溶解用容器520内の流路に冷水を流していた。
(c-4)スポンジチタンATの溶湯から分析用試料が形成後、熱源513によるスポンジチタンATの溶解を停止し、バルブV7、V8を閉じて、アルゴンガスを流すのを停止した。
(c-5)固定具532を取り外した後、熱源側容器510を取り外して、溶解用容器520の鋳型部522で形成された分析用試料を回収した。
【0067】
得られた分析用試料について、先述した方法により、スポンジチタンATの酸素含有量を求めた。その結果、スポンジチタンATの酸素含有量は、150質量ppmであった。なお、酸素含有量の結果については表1に示す。
【0068】
分析用試料を回収した後、更に、試料製造工程を先述した方法で2回繰り返し実施した。但し、スポンジチタンATはロットの異なるもの(ロット2~3)を使用した。その都度、得られた分析用試料について、先述した方法により、スポンジチタンの酸素含有量を求めた。なお、酸素含有量の結果については表1に示す。
【0069】
【0070】
(実施例による考察)
実施例1と比較例1とでは同一ロットのスポンジチタンを使用しているにもかかわらず、実施例1のスポンジチタンの酸素含有量は、比較例1と比べ、10~20質量ppm低かった。この理由しては、ダミー溶解工程後から試料製造工程まで、熱源側容器110の内部が不活性ガス雰囲気に維持されていたので、熱源側容器110の内部が外気に曝されず、熱源側容器110の内壁に付着した塩化マグネシウムが外気から水分を吸収することを抑制できていたと推察される。その結果として、実施例1では、比較例1と比べ、スポンジチタンの酸素含有量の分析を高い精度で実施することができた。
なお、熱源側容器110及び熱源側容器510の内壁を含む内部について、丁寧にメンテナンスしても堆積した塩化マグネシウムを完全に除去することは困難であった。即ち、スポンジチタンの溶解を1回でも実施した後は熱源側容器110及び熱源側容器510の内部に不可避的に塩化マグネシウムが存在してしまうこととなる。比較例1ロット1はロット2~3より先にスポンジチタンATの溶解を実施したため熱源側容器110の内壁等に付着する塩化マグネシウム量は少なかったが、実施例1ロット1に比べ、酸素含有量が高くなってしまった。