(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031038
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtech(TM))及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20220210BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12N1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020135957
(22)【出願日】2020-08-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】109126556
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,Volume 83,Issue 12,令和1年8月12日発行,第2327-2333ページに発表
(71)【出願人】
【識別番号】509013611
【氏名又は名称】生展生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】陳威仁
(72)【発明者】
【氏名】朱慧芳
(72)【発明者】
【氏名】呉▲シェン▼慧
(72)【発明者】
【氏名】周志輝
(72)【発明者】
【氏名】蘇秋勇
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QR66
4B063QR69
4B063QR75
4B063QX01
4B065AA15X
4B065AC02
4B065AC05
4B065BB40
4B065BC02
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】 本発明は複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)及びその用途を得ることにある。
【解決手段】 本発明は、複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)及びその用途を開示する。そのうち、複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法は、改良を経た培地を提供し、所定温度下で測定対象試料を培養した後、改良を経た培地上の色の変化を根拠に有胞子性乳酸菌又はその胞子を含むコロニーを識別することで、有胞子性乳酸菌の総数を算出することができ、有胞子性乳酸菌の胞子数を推計することができる。本発明が開示する検出方法は、試料中の有胞子性乳酸菌の活性化の有無又はその活性化の良否を検出し、有胞子性乳酸菌株の腸内健康を促進する機能を評価するのに使用することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糞便試料を得る工程と、
前記糞便試料を次亜塩素酸ナトリウムで30~60秒処理する工程と、
培地を調製する工程と、
次亜塩素酸ナトリウム処理を経た前記糞便試料及び次亜塩素酸ナトリウム処理を経ていない糞便試料のそれぞれを培地に接種し、50℃~60℃の培養温度下で培養する工程と、
培養完了後、前記培地上のコロニー周囲の色の変化を観察し、それぞれの培地上で周囲に色の変化があった前記コロニーを選択して、前記コロニーの菌数をカウントする工程と、を含み、
前記培地のpH値は5.0~6.0であり、乳酸を生成する細菌の増殖のために提供される栄養成分と、pH指示薬として用いられるブロモクレゾールグリーンを有し、
前記コロニーが次亜塩素酸ナトリウム処理を経ていない前記糞便試料からのものである場合、前記コロニーのカウント結果は有胞子性乳酸菌の総数であり、前記コロニーが次亜塩素酸ナトリウム処理を経た前記糞便試料からのものである場合、前記コロニーのカウント結果は有胞子性乳酸菌の胞子数である、複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項2】
次亜塩素酸ナトリウムの濃度は500ppmである、請求項1に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項3】
前記糞便試料に対する次亜塩素酸ナトリウム処理の時間は30秒である、請求項1に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項4】
前記有胞子性乳酸菌の総数から前記有胞子性乳酸菌の胞子数を差し引き、有胞子性乳酸菌の栄養細胞の数量を得る、請求項1に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項5】
前記培地はグルコース酵母エキス寒天培地であり、pH値は約5.5である、請求項1に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項6】
前記培養温度は約55℃である、請求項1に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項7】
前記糞便試料の提供者には、試料採取の少なくとも5日前に、有胞子性乳酸菌又は有胞子性乳酸菌を含む組成物を投与する、請求項1に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)。
【請求項8】
測定対象試料内の有胞子性乳酸菌の胞子の個体内における酸産生能を評価するのに用いることができる、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロバイオティクスの体外計測方法及びその用途に関し、特に複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有胞子性乳酸菌(Bacillus coagulans)は、バチルスコアグランスとも呼ばれており、乳酸桿菌とバチルス属の特徴を有し、芽胞を形成する特性を有している。研究によれば、有胞子性乳酸菌は、消化器疾患の調整、免疫調整、コレステロールを下げるなどの様々な健康促進効果を有するため、一種のプロバイオティクスと見なされている。しかし、有胞子性乳酸菌は非腸管内性の既存菌種であり、人体が獲得するには自ら摂取しなければならない。
【0003】
有胞子性乳酸菌は、胞子形態によって高温又は酸性などの過酷な環境に耐えるため、現在は胃酸などで活性化が破壊されるのを防ぐために、胞子形態の有胞子性乳酸菌を食品又は組成物とすることが多い。但し、有胞子性乳酸菌の胞子が個体に投与された後に腸管内で発芽(germination)しなかった場合には、腸管内での栄養細胞(vegetative cells)への変換及び腸管定着が不可能となるが、これは有胞子性乳酸菌が個体の体内において栄養細胞の生理活性を発揮できないことを意味している。
【0004】
現在の研究では、有胞子性乳酸菌の腸管内における発育機序を完全に理解することができない。また、従来の検出及び解析方法では糞便内の有胞子性乳酸菌及びその他の微生物を分離培養することができず、糞便中からバチルスコアグランスのスクリーニング又は分離を行う専用の培地も未だ提供されていない。また、75℃で30分間処理するなど、短時間の熱処理を通してその他の微生物を除去し、胞子形態の有胞子性乳酸菌の数量を算出する研究が行われているものの、加熱処理は「熱活性化」現象が生じるため、胞子の発芽・増殖が促進されて、誤った結果を得てしまう場合がある。
【0005】
従って、従来技術では有胞子性乳酸菌が腸管内で発芽したか否かを判断することが難しく、有胞子性乳酸菌の胞子又は有胞子性乳酸菌の胞子を含む組成物が個体内で栄養細胞の活性化を発揮しているか否かを知るのは困難であることが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)を提供することを主な目的としており、前処理済及び/又は未処理の糞便試料を、改良後の培地で培養し、糞便試料内の有胞子性乳酸菌又は栄養細胞の数量を直接的又は間接的に算出するものである。
【0007】
本発明の別の目的は、複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)の用途を提供することであり、本発明が開示する方法によって糞便試料内の有胞子性乳酸菌及び/又はその胞子の体内における有効性及びその胞子の数量を検出し、有胞子性乳酸菌の胞子が体内で栄養細胞に変換された数量を推計することにより、非侵襲的な方法で有胞子性乳酸菌を含む組成物を正確且つ迅速に評価し、善玉菌の増殖に有利な腸内環境を構築することができる効果を達成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)を提供するが、それは、糞便試料を培地に接種して培養し、周囲の色が変化したコロニーを選択して、当該コロニーが有胞子性乳酸菌であるかを判断し、次に当該コロニーをカウントして、当該コロニーの数量を得るものである。
【0009】
実施例中、糞便試料中の有胞子性乳酸菌の栄養細胞が培地上で増殖できるようにするため、培地に接種する前に、糞便試料に対して次亜塩素酸ナトリウム処理を行う必要がある。
【0010】
そのうち、糞便試料に対する次亜塩素酸ナトリウム処理の時間は、約30~60秒とし、例えば30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒とするが、処理時間は30秒とするのが好ましい。
【0011】
そのうち、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は1000ppm以下とし、例えば100、200、300、400、500、600、700、800、900ppmとするが、例として、次亜塩素酸ナトリウム濃度が500ppmである場合でも、処理前後における糞便試料中の有胞子性乳酸菌の胞子の数量を安定的に維持することができる。
【0012】
別の実施例中、本発明が開示する複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)では、糞便試料及び次亜塩素酸ナトリウム処理を経た糞便試料をそれぞれ培養し、有胞子性乳酸菌の総数及びその胞子の数量を算出して、有胞子性乳酸菌の栄養細胞の数量を推計する。具体的には、糞便試料の一部を取り、次亜塩素酸ナトリウムで処理し、次亜塩素酸ナトリウム処理を経た糞便試料及び次亜塩素酸ナトリウム処理を経ていない糞便試料のそれぞれを培地に接種して、培養を行う。培養完了後、培地上のコロニー周囲の色の変化を観察し、それぞれで培地上の周囲に色の変化があった当該コロニーを選択し、且つ当該コロニーの数量をカウントして、当該コロニーが次亜塩素酸ナトリウム処理を経ていない糞便試料からのものである場合、当該コロニーのカウント結果は有胞子性乳酸菌の総数であり、当該コロニーが次亜塩素酸ナトリウム処理を経た糞便試料からのものである場合、当該コロニーのカウント結果は有胞子性乳酸菌の胞子数である。
【0013】
そのうち、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は1000ppm未満とし、例えば500ppmとする。また、糞便試料に対する次亜塩素酸ナトリウム処理の時間は60秒未満であるのが好ましく、例えば30秒又は45秒とする。
【0014】
また、実施例中、有胞子性乳酸菌の総数から有胞子性乳酸菌の胞子数を差し引くと、有胞子性乳酸菌の栄養細胞の数量を得ることができる。
【0015】
本発明の実施例中、培地はグルコース酵母エキス寒天培地(GYEA medium)であり、pH値は約5.5である。
【0016】
本発明の実施例中、pH指示薬はブロモクレゾールグリーンである。
【0017】
本発明の実施例中、培養温度は約55℃である。
【0018】
本発明の実施例中、糞便試料の提供者には、試料採取の少なくとも5日前に、有胞子性乳酸菌又は有胞子性乳酸菌を含む組成物を投与する。
【0019】
さらに、本発明が開示する複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)は、測定対象試料内の有胞子性乳酸菌の胞子の一個体内における酸産生能又は酸産生率を検出又は評価するのに使用することができ、つまり、被験者は測定対象試料を少なくとも5日前に投与され、被験者からの糞便試料を培地で培養して、有胞子性乳酸菌及び/又はその胞子の数量を算出し、有胞子性乳酸菌及びその胞子の数量の差が大きいほど、測定対象試料の被験者内における酸産生能又は酸産生率が優れていることを示すため、これにより、有胞子性乳酸菌株の腸内における健康促進機能の評価が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1中のAは、有胞子性乳酸菌を改良GYEA培地で培養し、コロニー形態を肉眼観察したものである。
図1中のBは、有胞子性乳酸菌を改良GYEA培地で培養し、第2段階の培養4日目にコロニー形態を顕微鏡で観察した結果である。
図1中のCは、有胞子性乳酸菌を改良GYEA培地で培養し、第2段階の培養5日目にコロニー形態を顕微鏡で観察した結果であり、そのうち、矢印の指す箇所が有胞子性乳酸菌の胞子である。
図1中のDは、有胞子性乳酸菌を改良GYEA培地で培養し、第2段階の培養6日目にコロニー形態を顕微鏡で観察した結果であり、そのうち、矢印の指す箇所が有胞子性乳酸菌の胞子である。
【
図2】胞子を有する有胞子性乳酸菌コロニーの培養日数別割合である(Duncan's test,p<0.05)。
【
図3】異なる濃度の次亜塩素酸ナトリウム処理を経た試料における有胞子性乳酸菌の胞子数の相対的割合であり、そのうち、次亜塩素酸ナトリウム処理を経ていない有胞子性乳酸菌の胞子数を比較基準としている。
【
図4】異なる時間の次亜塩素酸ナトリウム処理を経た試料における有胞子性乳酸菌の胞子数の相対的割合であり、そのうち、次亜塩素酸ナトリウム処理が0秒の有胞子性乳酸菌の胞子数を比較基準としている。
【
図5】異なる腸管部分における有胞子性乳酸菌の胞子と栄養細胞それぞれの割合であり、そのうち、a~b間に顕著な差異(p<0.05)があり、c~d間に顕著な差異(Duncan's test,p<0.05)がある。
【
図6】各ラット群の糞便中の短鎖脂肪酸含有量であり、そのうち、*は顕著な差異があることを示している(Duncan's test,p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、複雑な微生物検体中に含まれる有胞子性乳酸菌の数量を検出する方法(VESPOtechTM)及びその用途を開示するが、それは、改良を経た所定のpH値を有する培地を提供し、且つ糞便試料の前処理技術を組み合わせることにより、糞便試料を培地に接種し、所定温度下で培養した後、培地上のコロニー周囲の色の変化により有胞子性乳酸菌が含まれたコロニーを選択且つ判断し、有胞子性乳酸菌の総数及び/又は有胞子性乳酸菌の胞子数を算出するものである。また、有胞子性乳酸菌の総数及び有胞子性乳酸菌の胞子数を得た後、有胞子性乳酸菌の総数と有胞子性乳酸菌の胞子数との間の差値を算出すれば、有胞子性乳酸菌の栄養細胞の数量となり、これにより、測定対象試料内の有胞子性乳酸菌の個体内における酸産生能又は酸産生率を評価することができ、腸管内の弱酸性環境を安定的に維持できるなら、善玉菌が増殖するのに有利となり、且つ悪玉菌の増殖が抑えられるため、本発明が開示する方法は、測定対象試料内の個体内における活性化の有無及びその活性化の良否を推定することで、測定対象試料の有効性を判断する効果を達成することができる。
【0022】
本発明における「判断」とは、コロニーが有胞子性乳酸菌であることをスクリーニングによって確認することを指し、手作業又は機器により行うことができる。
【0023】
本発明における「栄養細胞(vegetative cells)」とは、芽胞形成菌が、適正な増殖環境下で胞子形態の休眠状態から再び活性化した状態を指し、栄養細胞は、増殖状態において増殖能を有する。
【0024】
以下、本発明及びその効果について説明するため、幾つかの実施例を挙げて、実施例の結果と図面を合わせてより詳細に説明する。
【0025】
本発明が使用する有胞子性乳酸菌は、「胞子形態のバチルス属純菌株(約5x109胞子/g)」で、生展生物科技股▲分▼有限公司が提供する商用の菌であり、4℃の環境下で保存したものである。この菌株の選択はあくまでも例示に過ぎず、本案の保護範囲を限定するものではなく、生展生物科技股▲分▼有限公司が提供するものではない有胞子性乳酸菌を使用しても本発明の開示する効果を達成することができる。
【0026】
以下の実施例中の動物実験は、いずれも国立中興大学及び使用委員会による承認を経ており、関係する倫理規定を遵守して行われた。
【0027】
以下の実施例における全てのデータは、いずれもダンカンの新多重範囲検定(Duncan's test)により統計解析されたものである。
【実施例0028】
複雑な微生物検体中の有胞子性乳酸菌の確認
【0029】
測定対象の菌試料を取り、先ず改良GYEA(glucose yeast extract agar)培地で培養した。改良条件は、pH値を5.5に調整し、ブロモクレゾールグリーンをpH指示薬とした。55℃の好気性環境下で2日間培養し、温度によって55℃以上の温度では生存できない細菌を除去して、有胞子性乳酸菌コロニー(
図1中のAの通り)を残した。有胞子性乳酸菌の増殖により、培養環境中のpH値が約pH3.8に下がったため、有胞子性乳酸菌コロニーの周囲に青から黄色への色の変化が生じ、さらに顕微鏡でコロニーの胞子形成状況を確認すると、周囲が黄色の輪であり且つ胞子を有する青色のコロニーが有胞子性乳酸菌コロニーであることが分かった。第2段階の培養を行ったが、即ち、引き続き55℃の恒温環境下に置いて特定の日数培養した後、黄色の輪を有する有胞子性乳酸菌コロニーを選択し、且つマラカイトグリーン及び蕃紅花で染色して、顕微鏡で観察した。結果は
図1中のB~Dに示す通りである。また、胞子を有するコロニーをカウントした結果は
図2に示す通りである。
【0030】
図1中のBは、第2段階の培養4日後、有胞子性乳酸菌コロニーは増殖型の栄養細胞(vegetative form)のみ現れていることを示しているが、第2段階の培養5日目からは、有胞子性乳酸菌コロニー中に胞子が現れ始め、培養日数が増えるにつれて増加していることが分かる(
図1中のC及びDの通り)。さらに、
図2の結果は、第2段階の培養6日目に、胞子を有する有胞子性乳酸菌コロニーの割合が顕著に増加し、さらに培養7日目には、ほぼ全てのコロニーが胞子を有していたことを示している。
【0031】
従って、有胞子性乳酸菌の検出及び培養を行う環境には、下記の条件が含まれている必要がある。55℃の培養温度であること;培養後、少なくとも5日目に胞子形成が観察可能となるが、培養7日目に観察すると効果が良好である;使用する培地は、上述の改良GYEA培地のように、乳酸を生産する細菌が増殖できるようにする必要があり、且つpH値指示薬を有するのが好ましい。
次亜塩素酸ナトリウムで試料を処理する目的は、有胞子性乳酸菌の栄養細胞を除去し、且つ有胞子性乳酸菌の胞子数を安定的に維持することで、培養後に得られる有胞子性乳酸菌の胞子数を正確にすることであるため、次亜塩素酸ナトリウムで処理した試料中の有胞子性乳酸菌の胞子数は、次亜塩素酸ナトリウム処理を経ていない試料中の有胞子性乳酸菌の胞子数に近いほど、より好適である。