(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031054
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】床パネル支持装置および免振二重床構造施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/024 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
E04F15/024 603D
E04F15/024 606A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020143946
(22)【出願日】2020-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】501428855
【氏名又は名称】若林 春雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 春雄
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA21
2E220AA43
2E220AB08
2E220AC03
2E220AC11
2E220CA17
2E220CA37
2E220CA63
2E220CA64
2E220DB09
2E220EA11
2E220FA11
(57)【要約】
【課題】 相対する床パネル同士の床面の面一保持が困難であり、地震に対して弱い面がある。
【解決手段】 本発明の床パネル支持装置は並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを施された二重螺子雄ネジ部を設けた支持脚と、床パネルを支持するボールキャスターと、前記二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する支持板と、前記二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットとからなり、軸直角方向振動外力がボールキャスターのボール回転により吸収され、ピッチの異なる螺合によるダブルナット効果でネジ部の緩みが防げ、床パネル同士の床面の面一保持が出来、また、床パネルがダンパーにより建造物の壁に接続されているため、ボール上部に載置された床パネルがボール上を水平全方向にスライドすることなく、また、建造物基礎床面からの揺れをも除くため、免振効果を得る免振二重床構造としての施工ができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物基礎床面上に設置される接地板から、並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を立設した支持脚と、
床パネルを支持するボールキャスターと、
前記二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する支持板と、
前記二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットと、
からなる床パネル支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の床パネル支持装置において、
前記ボールキャスターは並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を有し、
前記支持板は前記ボールキャスターの二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有し、
前記ボールキャスターの二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットが付加されたことを特徴とする床パネル支持装置。
【請求項3】
前記建造物基礎床面上に請求項1および請求項2の床パネル支持装置を設置し、前記床パネル支持装置のボールキャスター上に床パネルを載せ、前記建造物と前記床パネルとをダンパーで接続し、地震時に前記床パネルはダンパーにより前記建造物の揺れを吸収するとともに、前記床パネル支持装置から伝わる揺れを前記ボールキャスターのボールが回転し、前記床パネルの水平方向の動きが除かれることを特徴とする免振二重床構造施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎床面と床パネルとの間に空間を設け、通信・電力ケーブル等を収納、または床パネル上に設置された機器及び机等の配置に従って通信・電力ケーブルの配置換えを容易にする床を構成する床パネル支持装置及び前記建造物と前記床パネルとをダンパーで接続し、地震時に前記床パネルはダンパーにより前記建造物の揺れを吸収するとともに、前記床パネル支持装置から伝わる揺れを前記ボールキャスターのボールが回転し、前記床パネルの水平方向の動きが除かれる免振二重床構造施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の床パネル支持装置には、パネル押さえでフロアパネルを支持板に挟み込み、挟圧して支持板の回転を防ぐものがある(例えば、特許文献1-3参照。)。
【0003】
また、従来の床パネル支持装置には、支柱に留めネジをねじ込み、台座に設けられた雌ネジ部の回転を防ぐものがある(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
さらに、従来の床パネル支持装置には、支柱の雄ネジと調整台の胴部の雌ネジ間に接着剤を流し込み調整台の回転を防ぐものがある(例えば、特許文献5参照。)。
【0005】
従来の免振二重床構造には、支柱に球体保持部、球体、高さ調整ナットおよび固定ナットを設け、球体の上部に載置されたフロアパネルが球体の上を水平全方向にスライドし、免振効果を得るものがある(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-234435号公報
【特許文献2】特開2006-104891号公報
【特許文献3】特開2012-211450号公報
【特許文献4】特開2015-048654号公報
【特許文献5】特開2015-193989号公報
【特許文献6】特許第6662514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、床パネル支持装置は建物の基礎床面と床パネルとの間に空間を設けるためと、床パネルを上下させて相対する床パネル同士の床面の面一を調整するためと、床パネル同士の床面の面一を保持する機能がなければならない。しかし、従来の構造には床パネル同士の床面の面一を保持する機能が挟圧により床パネルを挟み込む、留めネジで支柱を抑える、接着剤で支柱と調整台を固定、または、固定ナットで固定し回転を防ぐため、支柱のネジ部とこのネジ部に螺合するパネル受板のネジ部とのネジの緩みによりパネル受板が下がり床パネルのガタ付き・ずれが生じ、床パネル同士の床面の面一を保持する事が出来ないために床面の面一を何度も繰返して調整しなければならないという問題点があった。
【0008】
また、免振二重床構造において、本発明が解決しようとする問題点は、支柱に球体保持部、球体、高さ調整ナットおよび固定ナットを設け、球体の上部に載置されたフロアパネルが球体の上を水平全方向にスライドし、免振効果を得るとしているが、上述したように固定ナットでの回転防止が無い、フロアパネルが球体の上を水平全方向にスライドするが、建物への衝突を防ぐ機能が無い。
【0009】
ネジの緩みとして、軸直角方向振動外力を受けてネジが戻り回転して生じる緩みがあり、この緩みはしばしば起こる緩みできわめて危険である。床パネル上を人が歩行すると、足の動きは踏み込んだ時に往きの水平方向の動きを、又、蹴る時に復する水平方向の動きとなり床パネルを水平往復移動させるため、パネル受板上面と床パネル下面が摩擦を起こし、支柱とパネル受板が螺合しているネジ部に軸直角方向振動外力を与え、相対変位による滑り軌跡に緩みを起こす原動力となり、支柱とパネル受板が螺合しているネジ部が戻り回転して緩みを生じ、パネル受板が下がる。
【0010】
従来の床パネル支持装置はベースプレートの中心にオネジ部を有する支柱を立設し、支柱のオネジ部に螺合するメネジ部を中心に有するパネル受板と、支柱のオネジに螺合するメネジ部を有するパネル押さえで床パネルを挟圧により床パネルを挟み込む、留めネジで支柱を抑える、接着剤で支柱と調整台を固定、または、固定ナットで固定しているが、軸直角方向振動外力によるネジの緩み防止を設けていないため、床パネル上を人が歩行すると床パネルが水平往復移動し、パネル受板上面と床パネルの下面が、又、パネル押さえのフランジ面と床板の上面が摩擦により螺合しているそれぞれのネジに軸直角方向振動外力を与え、相対変位による滑り軌跡に緩みを起こしてパネル受板及びパネル押さえのネジが戻り回転して緩みを生じる。
【0011】
このため、従来の床パネル支持装置は床パネル上を人が歩行して生じる軸直角方向振動外力を除去する方策が無く、支柱のネジ部に螺合するパネル受板のネジ部とのネジの緩みの防止が弱いため、長い間に床パネル上を人が歩行すると、パネル受板が下がり、床パネルのガタ付き・ずれが生じるために床パネルを外してパネル受板を上下させて相対する床パネル同士の床面の面一を度々調整しなければならない。
【0012】
本発明はこの軸直角方向振動外力を除去する点、および、支柱のネジ部に螺合するパネル受板のネジ部とのネジの緩みの防止に鑑みてなされたものであり、床パネルをボールキャスターで支持し、並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を立設した支持脚と、前記二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する支持板と、前記二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットとを設けることによって、上記問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明1の床パネル支持装置は建造物基礎床面上に設置される接地板から、並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を立設した支持脚と、床パネルを支持するボールキャスターと、前記二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する支持板と、前記二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットと、からなることを特徴とする。
【0014】
本発明2の床パネル支持装置は本発明1において、
前記ボールキャスターは並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を有し、前記支持板は前記ボールキャスターの二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有し、前記ボールキャスターの二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットが付加されたことを特徴とする。
【0015】
また、前記建造物基礎床面上に請求項1および請求項2の床パネル支持装置を設置し、前記床パネル支持装置のボールキャスター上に床パネルを載せ、前記建造物と前記床パネルとをダンパーで接続し、地震時に前記床パネルはダンパーにより前記建造物の揺れを吸収するとともに、前記床パネル支持装置から伝わる揺れを前記ボールキャスターのボールが回転し、前記床パネルの水平方向の動きが除かれることを特徴とする免振二重床構造施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明1の床パネル支持装置によれば、人の歩行で床パネルに生じた水平往復移動の力はボールキャスターのボールを回転させる力に変換されるため、従来の構造で生じていた床パネルの下面とパネル受板の上面との摩擦が生じないため、支持台とパネル受部とが螺合しているネジ部には軸直角方向振動外力が伝わらないのでパネル受部のネジ部が戻り回転して緩みを生じることは無くなる、また、ネジの緩み止めとして、接地板から、並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を立設した支持脚と、前記二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する支持板と、前記二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットとが設けられているからネジの緩み止め、即ち、ダブルナット効果が強化されることを提供することができる。
【0017】
本発明2の床パネル支持装置によれば、本発明1の効果に加え、前記ボールキャスターは並目螺子と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部を有し、前記支持板は前記ボールキャスターの二重螺子の一方の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有し、前記ボールキャスターの二重螺子の他方の雄ネジ部に螺合するナットが付加されたため、それぞれの床パネルの角部の高さを微調整出来る効果をも提供することができる。。
【0018】
また、前記建造物基礎床面上に本発明1および本発明2の前記床パネル支持装置を設置し、前記床パネル支持装置のボールキャスター上に床パネルを載せ、前記建造物と前記床パネルとをダンパーで接続し、地震時に前記床パネルはダンパーにより前記建造物の揺れを吸収するとともに、前記床パネル支持装置から伝わる揺れを前記ボールキャスターのボールが回転し、前記床パネルの水平方向の動きが除かれることを特徴とする免振二重床構造施工方法をも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】 本発明の一実施例の床パネル支持装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】 本発明の一実施例の床パネル支持装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】 本発明に使用される二重螺子の雄ネジ部を示す外観図である。
【
図4】 本発明に使用される二重螺子の雄ネジ部に並目雌ネジ部と細目雌ネジ部が螺合した状態を示す断面図である。
【
図5】 本発明の一実施例を示す免振二重床構造施工の建物断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1に示す本発明による床パネル支持装置1は建造物2の基礎床面3上に設置される接地板4、並目螺子5と前記並目螺子5より小さいピッチの細目螺子6とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部7を立設した支持脚8、床パネル9を支持するボールキャスター10、前記二重螺子の一方の並目螺子5の雄ネジ部7に螺合する雌ネジ部11を有する支持板12、前記二重螺子の他方の細目螺子6の雄ネジ部7に螺合するナット13とからなり、主に建造物2の壁14側に近接する場所に設置され床パネル9を支える。
【0021】
床パネル9上を人が歩行する場合、足の動きは踏み込んだ時に往きの水平方向の動きを、又、蹴る時に復する水平方向の動きとなり床パネル9を水平往復移動させるため、支持板12上面と床パネル9下面が摩擦を起こし、支持脚8と支持板12が螺合しているネジ部に軸直角方向振動外力を加えるが、床パネル9はボールキャスター10で支えられているため、軸直角方向振動外力がボールキャスター10のボール回転により吸収される。
【0022】
並目螺子5と前記並目螺子5より小さいピッチの細目螺子6とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部7に前記二重螺子の並目螺子5の雄ネジ部7に螺合する雌ネジ部11を有する支持板12と前記二重螺子の細目螺子6の雄ネジ部7に螺合するナット13でダブルナット効果をもたらす。従来のダブルナットの場合、同じピッチを持つ螺子のため、ダブルナット効果は薄かったが、本発明はピッチの異なるダブルナットのため、支持板12が何らかの外力が加わり緩み回転を起こそうとしてもピッチの異なるナット13が支持板12の下部に設けられているため緩み回転が出来ないダブルナット効果が生じる。
【0023】
床パネル支持装置1で床パネル9同士の床面の面一を調整して設置された床パネル9は床面の面一を保持する機能が付加される。
【0024】
図2は並目螺子5と前記並目螺子5より小さいピッチの細目螺子6とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部16を設けたボールキャスター17が4個、前記二重螺子の一方の雄ネジ部7に螺合する雌ネジ部11と前記二重螺子の一方の雄ネジ部16に螺合する雌ネジ部18を4個有する支持板15、前記二重螺子の他方の雄ネジ部16に螺合するナット19が4個の構成を示し、主に、建造物2の前記壁14側から離れた場所で床パネル9の角部が複数(4個)集まる場所に設置される床パネル支持装置1の一実施例である。
【0025】
通常、床パネル9の寸歩は約500mm前後の正方形で建造物2の壁14側を除き、床パネル支持装置1に4枚の床パネル9の角部が載置される。雄ネジ部7とナット13で4枚の床パネル9の略水平を出し、各ボールキャスター17とナット19とで各床パネル9の高さの微調整をそれぞれ1枚毎に行う。
【0026】
図2に示す構成では、ピッチの異なるダブルナット効果が二重に得られ、床パネル支持装置1で床パネル9同士の床面の面一を調整して設置された床パネル9は床面の面一を保持する。
【0027】
床パネル9による軸直角方向振動外力をボールキャスター10およびボールキャスター17とで除去出来ても、地震時、建造物2からの軸直角方向振動外力が加わる。この時、雌ネジ部11とナット13のネジ部のピッチが異なるため緩みを防げる。同じく、雌ネジ部18とナット19のネジ部のピッチも異なるため緩みを防げる。
【0028】
図5に示す本発明による免振二重床構造は建造物2の基礎床面3上に設置された床パネル支持装置1上に載置された床パネル9はダンパー20を介して建造物2の壁14に接続されている。
【0029】
人が床パネル9上を歩行して生じる軸直角方向振動外力をボールキャスター10およびボールキャスター17で除去、もし、支持板12および支持板15に何らかのネジの緩み方向回転力が加わっても、並目螺子5と前記並目螺子より小さいピッチの細目螺子6とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部7、および並目螺子5と前記並目螺子5より小さいピッチの細目螺子6とを外周部に施された二重螺子雄ネジ部16、とに螺合する雌ネジ部11および雌ネジ部18と、ナット13およびナット19とのダブルナット効果でネジの緩みを防ぐ。
また、前記した床パネル支持装置1上に載置された床パネル9はダンパー20により建造物2の壁14に接続されているため、地震時、床パネル9が球体の上を水平全方向にスライドすることなく、ダンパー20により相互の水平方向の振動を吸収するとともに、前記床パネル支持装置1から伝わる揺れを前記ボールキャスター10およびボールキャスター17のボールが回転し、前記床パネル9の水平方向の動きが除かれる。
【0030】
転造ボルト参考資料「特許第5042931号」
【符号の説明】
【0031】
床パネル支持装置1、建造物2、基礎床面3、接地板4、並目螺子5、細目螺子6、雄ネジ部7、支持脚8、床パネル9、ボールキャスター10、雌ネジ部11、支持板12、ナット13、壁14、支持板15、雄ネジ部16、ボールキャスター17、雌ネジ部18、ナット19、ダンパー20