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特開2022-31063サーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブ
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  • 特開-サーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブ 図1
  • 特開-サーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブ 図2
  • 特開-サーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブ 図3
  • 特開-サーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031063
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】サーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブ
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/46 20060101AFI20220210BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C21C5/46 A
F27D21/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020145047
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】593228564
【氏名又は名称】日本サーモテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷内江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 謙太
【テーマコード(参考)】
4K056
4K070
【Fターム(参考)】
4K056AA02
4K056AA06
4K056BA06
4K056CA02
4K056FA12
4K070BE04
(57)【要約】
【課題】 転炉または取鍋といった容器内の溶融金属の測温において、投入されたスクラップや溶融金属流の衝撃荷重に耐える強度と、溶融金属に対する高熱伝導率の双方を備えた温度センサーがなく、溶融金属を連続測温する手段がないことが課題であった。
【解決手段】 耐火物スリーブ内部に高熱伝導率、高温強度を備えたサーメット保護管を組み込むことにより、サーメット保護管が骨材として作用し高強度を示すと同時に、サーメット保護管の持つ高熱伝導率により、測温精度を向上させることで、取鍋内の溶融金属の連続測温を可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉または溶銑、溶鋼、溶湯等の溶融金属を運搬する取鍋に固定され、溶融金属の温度を連続的に測定可能な連続測温プローブにおいて、耐火物製の保護スリーブと、その内部に熱電対を組み込んだサーメット保護管と、サーメット保護管から所定の長さを延長する金属パイプから成る連続測温プローブ。
【請求項2】
アルミナ-カーボン、スピネル-カーボン、マグネシア-カーボン、ジルコニア-カーボン、炭化ケイ素-カーボン等の黒物系耐火物から成るものと、
アルミナ、アルミナ-シリカ、アルミナ-スピネル、アルミナ-マグネシア、マグネシア等の白物系から成るものの、いずれかまたは双方を用いた保護スリーブを備えた、請求項1に記載の連続測温プローブ。
【請求項3】
サーメット保護管を、請求項2に記載の保護スリーブにて周囲を覆うことで、サーメット保護管に保護スリーブの骨材としての機能を持たせると共に、サーメット保護管の高熱伝導率を利用して測温精度を高めた請求項1に記載の連続測温プローブ。
【請求項4】
熱間での交換を可能とするために、機能煉瓦であるマス煉瓦を取鍋に固定し、そのテーパ穴に保護スリーブ部を挿入し、押さえ煉瓦と調整用鉄板と締結治具で固定する構造と、取鍋の中修まで耐用する様、保護スリーブの形状を円錐台と角柱を組み合わせたものとしたものの、いずれかの固定方法にて使用する請求項1に記載の連続測温プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の鋳造の分野において、転炉内の溶銑、取鍋内の溶鋼等の溶融金属の温度を連続測温するための温度センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼における転炉での精錬は、溶銑内に含まれる炭素の脱炭、目標出鋼温度への昇熱、珪素、リン、マンガン等の不純物をスラグとして分離させ、除去することを目的として行われている。
この工程にて、溶銑から溶鋼へと精錬され、溶鋼取鍋に出湯された後、LF、RH、CAS、REDAといった二次精錬を経て、最終的に鋳造される。
【0003】
転炉での精錬は、原料組成、温度、排ガスの二次燃焼比率等から成る吹錬モデルに基づいて酸素の吹錬が行われ、サブランスによる含有炭素量と温度の測定結果から酸素吹錬量を調節し、炭素含有量が目標値となるまでの推測値を算出し自動で吹錬を終了するダイナミックコントロールの手法が広く用いられている。
このため、転炉内の溶銑、溶鋼の温度を測定することは、転炉での精錬において不可欠な作業であることは明白である。
【0004】
取鍋に出鋼された溶鋼は、LF処理にて昇熱、造滓、脱硫が行われ、RHやCAS、REDAといった処理にて、脱ガス、成分調整が行われる。
いずれの処理においても、処理前に消耗型熱電対プローブを用いて、溶融金属のバッチ測温が実施され、処理中にも必要に応じて複数回のバッチ測温を行い、必要な処理の時間、昇熱量、合金添加実施等を決定している。
【0005】
前記の通り、転炉、取鍋での二次精錬工程においては、溶融金属の測温は不可欠であるが、転炉、取鍋のいずれの精錬工程においても、処理前、処理途中、処理終了前、終了後といったタイミングで、消耗型熱電対を使用した、バッチ測温が行われている。測温値から、従来からの実績に基づいた手法で以降の処理を決定しているが、測温を実施した時点の温度から処理時点での温度を推定して、処理を行う。また、推測値と併せて、オペレーターの経験に基づいた判断による制御も行われている。
しかし、この推測値については、転炉、取鍋の消耗の度合いや、精錬する溶融金属の材質の違いにより常に変化していくことから、必ずしも合致するものとはいえない。
【0006】
バッチ測温を基準として処理を進める場合、推測値と経験による制御となるが、処理中の溶融金属の温度が常に連続的に測定され、リアルタイムにシステム及びオペレーターに反映されれば、処理時点での転炉、取鍋の状態や、取鍋内の溶融金属そのものの温度を反映することとなるため、より精度が高く、効率の良い処理が実現できるが、現在でもこの技術は確立されていない。
【0007】
溶融金属の連続的な測温は、過去に取鍋のポーラス煉瓦等の耐火物内部に、シース熱電対等の温度センサーを埋め込み、炉壁材内部の温度を測定することで、溶融金属の温度を推定可能か否かの検証がなされたことはあるが、周囲の耐火物表面には、操業の進行、転炉や取鍋の使用回数の蓄積により、金属やスラグが付着したり、または損耗したりすることで、測定対象との距離や伝熱特性が常に変化していくことから、補正が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】特開2009-41069
【0008】
測温精度は、温度センサーが適切な外径、長さを確保した上で、直に溶融金属と接触することで向上させることができるが、シース熱電対は溶融金属と接触させると、容易に破損する。これを防ぐためには、溶融金属との接触部分を耐火物から成る保護管にて覆ったものとすれば、温度による早期の破損は、ある程度防止できる。
一方で、機械的破損に関しては、耐火物は高温強度が低いことと、転炉や取鍋の内壁から所定の長さが飛び出した形であることから、転炉内に投入されたスクラップや、受銑、受鋼時に受ける溶融金属流の衝撃荷重に耐えることが出来ず、破砕してしまうことが懸念される。
【0009】
耐火物部分の肉厚を増すことにより機械的強度は上がるが、肉厚増大による温度センサーの大型化により、スラグ付着面積が増大する。また、肉厚化により、耐火物の低い熱伝導率の影響度が高くなってしまうことで、溶融金属の温度がセンサーの測温点に到達する前に、周囲の耐火物より抜熱されてしまい、溶融金属の温度を捉えることが困難となる。特に、溶鋼取鍋での耐久性が一般に高いとされているアルミナ‐マグネシア系耐火物は、低熱伝導率であることから影響度が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたもので、直接溶融金属に接触させた状態での、補正値でなく真の溶湯温度を測定可能としながら、同時にスクラップや、受銑、受鋼時に受ける溶融金属流の衝撃荷重に耐えられる強度を持った温度センサーを提供することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる連続測温プローブは、内部に靭性、耐熱衝撃性、高温強度、高熱伝導率を備えたサーメット保護管を使用することにより、サーメット保護管が周囲を覆う耐火物スリーブの骨材として作用することで、耐火物のみの保護管では耐えられない衝撃に耐える強度を持ち、その高強度化による周囲耐火物の肉薄化と、サーメット保護管の高熱伝導性による良好な測温精度を兼ね備えた連続測温手段を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連続測温プローブを、耐火物のみの保護管を用いたプローブよりも高強度化することができ、溶融金属に直接接触させる状態で転炉や取鍋内部に露出していても破損せず、良好な測温精度を保ったまま、連続的に測温することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】 本発明のうち、取鍋が予熱や注湯終了後といった、耐火物が蓄熱された熱間状態であっても交換可能な連続測温プローブの構成を示す図である。
図2図1の連続測温プローブよりも、耐火物の肉厚を大きくすることで耐久性を増し、冷間状態にて煉瓦の差し替えや、不定形耐火物による損耗箇所の増厚を行う、中間補修時に交換することを想定したものの構成を示す図である。
図3図1または図2に示すような連続測温プローブが、溶融金属の取鍋に取り付けられた状態を示す図である。
図4】 本発明の実施例により得られた、取鍋内の溶融金属温度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0014】
以下に、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明に係るサーメット保護管を用いた転炉または溶融金属取鍋用連続測温プローブの実施例である。なお、実施例はあくまで、発明の理解を容易にするためであり、この実施例の条件に制限されない。図1に示すように、連続測温プローブは、耐火物から成る保護スリーブ2と、耐火物内部に固定され、内部に熱電対の組み込まれたサーメット保護管1と、サーメット保護管1と接続し、熱電対の保護と、必要な全長の確保と、外部コネクタと接続するための構造を有する金属パイプ9から構成される。連続測温プローブは、内部にテーパ穴を持つ機能煉瓦であるマス煉瓦4に挿入され、その下部から押さえ煉瓦10、調整用鉄板11にて挿入長の調整を行った後、締結治具12により取鍋内部方向に押し当てる様にして固定する。
【0015】
サーメット保護管は、高温下での熱伝導率及び熱間強度を確保するため、冷間等方圧加圧法により成形し、焼結炉にて焼結した焼結密度の高いものが好ましいが、保護スリーブが溶損や浸食により消耗して、サーメット保護管が取鍋内部に露出する前に連続測温プローブを交換することを前提とするのであれば、押出成形で成形し、焼結したサーメット保護管を採用してもよい。
【0016】
煉瓦3、煉瓦5、煉瓦6、煉瓦7は、取鍋内に注湯して運搬する溶融金属の種類により異なるが、特に煉瓦3と、保護スリーブ2、マス煉瓦4は溶融金属に接触し、高温化することから、線膨張率、熱伝導率の近い材質とすることが好ましい。実施例では、煉瓦3がアルミナ-マグネシア系のキャスタブルであったため、保護スリーブ2も同様のキャスタブルを流し込みで成形した、プレキャストスリーブを採用した。材質としては、連続測温プローブの使用環境に応じて、アルミナ-カーボン、スピネル-カーボン、マグネシア-カーボン、ジルコニア-カーボン、炭化ケイ素-カーボン等の黒物系耐火物から成るものと、アルミナ、アルミナ-シリカ、アルミナ-スピネル、アルミナ-マグネシア、マグネシア等の白物系から成るものの、いずれかまたは双方を用いた保護スリーブを採用してもよい。
【0017】
金属パイプ9は、取り外しが簡易であることから、先端にワンタッチ式のコネクタ用部品を、溶接にて固定したものを採用した。
【先行技術文献】
【実用新案】
実用新案登録第3211664号
このコネクタについては、ワンタッチ式のコネクタ用部品の代わりに、ステンレス製ホースを接続して内部に熱電対素線を通し、先端にメタルコネクタやセラミックスコネクタを取り付けたものとしてもよい。
【0018】
図3の様に、取鍋14の敷に固定されたマス煉瓦4に、連続測温プローブ15を固定し、金属パイプ9を鍋の外に露出してその先端に熱電対延長ケーブル16を接続した。このケーブルを、取鍋外部に取り付けた断熱ボックス17に接続し、断熱ボックス17内部にセットした無線送信機18へ起電力を読み込ませ、温度データを送信する仕組みとした。
【0019】
このような構成にて、試験的に溶融金属の温度を連続測温した実施例を以下に説明する。
実施例に示した構造の連続測温プローブを、実際に操業中の取鍋に取り付けて温度測定を実施したところ、図4のグラフに示す通りの測温データが得られた。測温点は、取鍋底面から90mmの位置である。この図に示されるように、
連続測温プローブは予熱時から取鍋内部の温度を検出しており、二次精錬のLF処理、RH処理時に実施された、消耗型熱電対プローブによるバッチ測温の測温値と比較しても、ほぼ同じ温度を捉えていることがわかる。
【0020】
なお、実施例においては、図1の熱間での交換が可能な構造の連続測温プローブを使用しているが、連続測温プローブの交換頻度及び漏鋼のリスクを低減するために、冷間状態にて煉瓦の差し替えや、不定形耐火物による損耗箇所の増厚を行う、中間補修時まで耐用させることを前提とした、図2のような構造の連続測温プローブを取鍋内に組み込んでもよい。この形状であれば、図1の様な押さえ煉瓦10、調整用鉄板11、締結治具12を使用する時と比較して、穿孔する穴の径を小さくでき、連続測温プローブの取り付けの手間も削減することができる。
【0021】
以上の様に、本発明によれば、取鍋内部に露出していても、受鋼時に受ける溶融金属流の衝撃荷重に耐える強度を持ち、良好な測温精度も兼ね備える連続測温プローブの製作が可能となった。
【符号の説明】
【0022】
1 サーメット保護管
2 保護スリーブ
3 煉瓦
4 マス煉瓦
5 煉瓦
6 煉瓦
7 煉瓦
8 鉄皮
9 金属パイプ
10 押さえ煉瓦
11 調整用鉄板
12 締結治具
13 保護スリーブ
14 取鍋
15 連続測温プローブ
16 熱電対延長ケーブル
17 断熱ボックス
18 無線送信機
図1
図2
図3
図4