(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031067
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ型電極カテーテル、及び、ガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/25 20210101AFI20220210BHJP
A61B 18/08 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A61B5/04 300J
A61B18/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020145054
(22)【出願日】2020-08-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】503338228
【氏名又は名称】株式会社エフエムディ
(72)【発明者】
【氏名】寺師 剛
(72)【発明者】
【氏名】志村 誠司
(72)【発明者】
【氏名】東久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】大崎 郁野
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127LL08
4C127LL15
4C127LL21
4C127LL22
4C160KK47
(57)【要約】
【課題】先端側の細径化と先端側に備えた電極群とに起因する末梢血管内での挿入性の低下を解消させて挿入性を向上させることと、複数の異なる部位での電位を同時に測定できることとの技術課題がある。
【解決手段】電極群を備えたチューブ体のねじり剛性と、チューブ体の内側に備えた連接截頭円錐体構造の芯線のねじり剛性との相互の補完作用により、先端側への回転伝達性を向上させ、かつ、2つの電極カテーテルを組み合わせて、先端側の第1電極群と後端側の第2電極群とを備えた電極カテーテルの組立体とすることにより、かかる技術課題を克服することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性樹脂組成物から成るチューブ体と、
前記チューブ体の先端に配置されたコイルスプリング体と、
前記チューブ体の後端に配置されたコネクタと、
前記チューブ体の先端側の側面に複数の電極から成る第1電極群と、
前記コイルスプリング体と前記チューブ体と前記コネクタとの、内側に配置された芯線と、
前記コイルスプリング体の先端と前記芯線の先端とを接続固着して成る先端接続部と、
前記コイルスプリング体の後端と前記チューブ体の先端と前記芯線とを接続固着して成る後端接続部とを有するガイドワイヤ型電極カテーテルであって、
前記チューブ体は、先端側の側面に第1リード線の先端と接続固着して成る前記第1電極群と、前記第1電極群の固定位置に対応して側孔とを有し、
前記第1電極群の各電極の外周を除く、前記チューブ体の少なくとも先端側の外周に親水性被覆を備え、
前記第1リード線は、前記側孔から前記チューブ体の内側を経由して前記コネクタへ延在し、
前記芯線は、先端側に芯線先端部と後端側に芯線後端部とを備え、
前記芯線先端部は、少なくとも2個以上の截頭円錐体を連接して成る連接截頭円錐体を有し、
前記截頭円錐体は、先端に外径が小さい先端節部と、後端に外径が大きい後端節部とを備え、
前記第1電極群を備えた前記チューブ体の内側には、少なくとも前記芯線先端部における前記連接截頭円錐体の先端側の前記截頭円錐体を有し、
前記チューブ体の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、後端側から先端側へ徐変減少するのに対して、
前記連接截頭円錐体の、前記先端節部のねじり剛性と前記後端節部のねじり剛性との、節部でのねじり剛性比(前記後端節部のねじり剛性/前記先端節部のねじり剛性)が、後端側から先端側へ徐変増大することを特徴とするガイドワイヤ型電極カテーテル。
【請求項2】
前記チューブ体は、少なくとも、先端側の第1チューブ体と後端側の第2チューブ体とを有し、
前記チューブ体の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、前記第2チューブ体から第1チューブ体へ徐変減少し、
前記第1チューブ体のねじり剛性をJ1、前記第2チューブ体のねじり剛性をJ2とした場合に、前記第1チューブ体のねじり剛性J1に対する前記第2チューブ体のねじり剛性J2とのねじり剛性比(J2/J1)は、
I<(J2/J1)≦ 4.282
の関係式を満たし、かつ、
前記連接截頭円錐体は、加工誘起マルテンサイト相への変態割合が20%以上80%以下で、横弾性係数が68500MPa以上73000MPa以下のオーステナイト系ステンレス鋼線で、先端側の第1截頭円錐体と後端側の第2截頭円錐体から成り、
前記第1截頭円錐体の先端節部のねじり剛性をK21、後端節部のねじり剛性をK22、前記第2截頭円錐体の先端節部のねじり剛性をK22、後端節部のねじり剛性をK23とした場合に、
前記連接截頭円錐体の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、
20.075≧(K22/K21)>(K23/K22)>1
の関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ型電極カテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のガイドワイヤ型電極カテーテルであって、
前記連接截頭円錐体の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、
20.075 ≧(K22/K21)>(K23/K22)> 1 で、かつ、 4.789 ≧(K23/K22)> 1
の関係式を満たすことを特徴とするガイドワイヤ型電極カテーテル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載のガイドワイヤ型電極カテーテルと、電極カテーテルとの組立体であって、
前記電極カテーテルは、可撓性チューブ体の先端側の側面に複数の電極から成る第2電極群を備え、
前記可撓性チューブ体の内径は、前記ガイドワイヤ型電極カテーテルの前記チューブ体の外径よりも大きく、
前記可撓性チューブ体の後端から前記ガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側を挿入した際に、前記ガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側の前記第1電極群が前記電極カテーテルの先端から外部へ向けて延出して、先端側の前記第1電極群と後端側の前記第2電極群とを備えて成ることを特徴とするガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体。
【請求項5】
請求項4に記載のガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体であって、
前記電極カテーテルの前記可撓性チューブ体は、少なくとも、外側チューブ体と、前記外側チューブ体の内側に配された内側チューブ体とを備え、
前記可撓性チューブ体の後端側は、分岐接続具を介して、一方の側に前記内側チューブ体と連通して成る端末具と、他方の側に前記外側チューブ体と連通して成る分岐コネクタとを備え、
前記外側チューブ体は、先端側の側面に第2リード線の先端と接続固着して成る前記第2電極群と、前記第2電極群の固定位置に対応して側孔とを備え、
前記第2リード線は、側孔から前記外側チューブ体と連通して成る前記分岐コネクタへ延在し、
前記端末具の後端から前記ガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側を挿入して成ることを特徴とするガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血管内等で心筋の電位を測定する為に用いるガイドワイヤ型電極カテーテル、及び、ガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来血管の電気生理学的検査において、先端側に複数の電極を備えた電極カテーテルを用いて、不整脈等のメカニズムを明らかにする為の検査を行っていた。
しかし、近年不整脈の精度の高いメカニズムの解明と、異常部位の正確な位置を特定する為に、細径の末梢血管内で電位測定が必要となってきている。
従来のカテーテルでは、先端側の外径(約2mmから2.4mm)が太い為に、細径の末梢血管内で電位測定は不可能であった。又、細径の末梢血管内と他の部位との双方を含む電位を同時に測定することは困難であった。
そこで、この要求に応える為、先端側の外径が細くて操作性が高く、かつ、末梢血管内への挿入性の高い医療用具が必要となってきた。
【0003】
特許文献1には、先端部が円弧状に曲げ加工され、血管の内径、断面積、及び、狭窄度等を測定する医療用電極付ガイドワイヤが記載されている。
【0004】
特許文献2には、先端部が円弧状に曲げ加工され、血管内で電位を測定する電極カテーテルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-247344号公報
【特許文献2】特許第5432932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の医療用電極付ガイドワイヤは、外径が0.6mmの中空体の芯線の内部に絶縁リード線を備え、芯線の先端部に、芯線の外径(0.6mm)と概ね同等の電極を備え、血管の狭窄度の測定以外に、電位も測定可能な技術内容が記載されている。
【0007】
特許文献2に記載の電極カテーテルは、円弧状に曲げ加工されたガイド部と、ガイド部の後端部に外径が1.30mmのチューブとを備え、チューブの先端側に外径1.30mmの複数の電極を備える。ガイド部とチューブとの内側には、手元側から先端側へ、長手方向の全長に亘って外径が連続して縮径(テーパ状)する芯線を備え、末梢血管内で電位を測定する技術内容が記載されている。
【0008】
そして、前記特許文献1、2のいずれについても、末梢血管内で電位の測定を可能にする構造でありながら、本発明よりも外径が大きな電極を用いている。
【0009】
例えば、電極の外径は、特許文献1が概ね0.6mmであり、本発明よりも約1.32倍大きく、特許文献2が1.30mmであり、本発明よりも約2.8倍大きい。
又、芯線の構造は、特許文献1が外径約0.6mmの中空体構造であるのに対して、本発明は、最大外径であっても約0.59倍と小さい中実体構造である。
そして、特許文献2がガイド部とチューブの内側に、手元側から先端側へ、長手方向の全長に亘って外径が一律に連続して縮径する構造(全長がテーパ状)であるのに対して、本発明は、コイルスプリング体とチューブ体との内側に、手元側から先端側へ外径が徐々に減少する連接截頭円錐体構造(截頭円錐体を2個以上連接した構造)を用いている。
さらに本発明は、先端側に備えた第1電極群に起因する回転抵抗の増大化と、柔軟性の向上と細径化に伴うチューブ体の、先端側への回転伝達性の低下とを、チューブ体と連接截頭円錐体構造の芯線のねじり剛性の相互の関係に着目して、チューブ体と連接截頭円錐体構造とのねじり剛性の相互の補完作用により、先端側への回転伝達性を向上させる技術思想である。
さらに又、本発明は、先端側と後端側に備えた二つの電極群の双方の間隔を可変できると共に、複数の部位での電位を同時に測定することができる組立体から成る技術思想である。この技術思想については、特許文献1、2のいずれにも記載されていない。
【0010】
本発明は、前記技術課題を鑑みてなされたものであり、細径の末梢血管内と他の部位との双方の電位を同時に測定することができ、かつ、細径でありながら先端側への回転伝達性を飛躍的に向上させたガイドワイヤ型電極カテーテル、及び、ガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する為、本発明のガイドワイヤ型電極カテーテルは、
チューブ体が、先端側の側面に第1リード線の先端と接続固着して成る複数の電極から成る第1電極群と、第1電極群の固定位置に対応して側孔とを備える。
第1電極群の各電極の外周を除く、チューブ体の少なくとも先端側の外周に親水性被覆を備える。
第1リード線は、側孔からチューブ体の内側を経由してコネクタへ延在する。
芯線は、先端側に芯線先端部と後端側に芯線後端部とを備える。芯線先端部は、少なくとも2個以上の截頭円錐体を連接して成る連接截頭円錐体を有する。截頭円錐体は、先端に外径が小さい先端節部と、後端に外径が大きい後端節部とを備える。
第1電極群を備えたチューブ体の内側には、少なくとも芯線先端部における連接截頭円錐体の先端側の截頭円錐体を有する。
【0012】
チューブ体の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、後端側から先端側へ徐変減少するのに対して、連接截頭円錐体の、先端節部のねじり剛性と後端節部のねじり剛性との、節部でのねじり剛性比(後端節部のねじり剛性/先端節部のねじり剛性)が、後端側から先端側へ徐変増大することを特徴とする。
【0013】
チューブ体は、少なくとも、先端側の第1チューブ体と後端側の第2チューブ体とを有する。
チューブ体の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、第2チューブ体から第1チューブ体へ徐変減少し、
第1チューブ体のねじり剛性をJ1、第2チューブ体のねじり剛性をJ2とした場合に、第1チューブ体のねじり剛性J1に対する第2チューブ体のねじり剛性J2とのねじり剛性比(J2/J1)は、一定の関係式を満たし、かつ、
連接截頭円錐体は、加工誘起マルテンサイト相への変態割合が20%以上80%以下で、横弾性係数が68500MPa以上73000MPa以下のオーステナイト系ステンレス鋼線で、先端側の第1截頭円錐体と後端側の第2截頭円錐体から成り、
第1截頭円錐体の先端節部のねじり剛性をK21、後端節部のねじり剛性をK22、第2截頭円錐体の先端節部のねじり剛性はK22となり、後端節部のねじり剛性をK23とした場合に、連接截頭円錐体の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、一定の関係式を満たす。
【0014】
連接截頭円錐体の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、それぞれの節部間で、それぞれ一定の関係式を満たす。
【0015】
ガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体であって、電極カテーテルは、可撓性チューブ体の先端側の側面に複数の電極から成る第2電極群を備える。
可撓性チューブ体の内径は、ガイドワイヤ型電極カテーテルのチューブ体の外径よりも大きく、可撓性チューブ体の後端からガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側を挿入した際に、ガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側の第1電極群が電極カテーテルの先端から外部へ向けて延出して、先端側の第1電極群と後端側の第2電極群とを備えて成ることを特徴とする。
【0016】
電極カテーテルの可撓性チューブ体は、少なくとも、外側チューブ体と、外側チューブ体の内側に配された内側チューブ体とを備える。
可撓性チューブ体の後端側は、分岐接続具を介して、一方の側に内側チューブ体と連通して成る端末具と、他方の側に外側チューブ体と連通して成る分岐コネクタとを備える。
外側チューブ体は、先端側の側面に第2リード線の先端と接続固着して成る第2電極群と、第2電極群の固定位置に対応して側孔とを備える。
第2リード線は、側孔から外側チューブ体と連通して成る分岐コネクタへ延在する。
端末具の後端からガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側を挿入して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガイドワイヤ型電極カテーテルは、
チューブ体が、先端側の側面に第1リード線の先端と接続固着して成る複数の電極から成る第1電極群と、第1電極群の固定位置に対応して側孔とを備える。
第1電極群の各電極の外周を除く、チューブ体の少なくとも先端側の外周に親水性被覆を備える。
第1リード線は、側孔からチューブ体の内側を経由してコネクタへ延在する。
芯線は、先端側に芯線先端部と後端側に芯線後端部とを備える。芯線先端部は、少なくとも2個以上の截頭円錐体を連接して成る連接截頭円錐体を有する。截頭円錐体は、先端に外径が小さい先端節部と、後端に外径が大きい後端節部とを備える。
第1電極群を備えたチューブ体の内側には、少なくとも芯線先端部における連接截頭円錐体の先端側の截頭円錐体を有する。
親水性被覆について第1電極群の各電極の外周を除く構成としたのは、親水性被覆に起因する電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
【0018】
チューブ体の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、後端側から先端側へ徐変減少するのに対して、連接截頭円錐体の、先端節部のねじり剛性と後端節部のねじり剛性との、節部でのねじり剛性比(後端節部のねじり剛性/先端節部のねじり剛性)が、後端側から先端側へ徐変増大することを特徴とする。
この理由は、先端側に備えた第1電極群に起因する回転抵抗の増大化と、先端側の、柔軟性の向上と細径化に伴う回転伝達性の低下とを、チューブ体と連接截頭円錐体構造の芯線とのねじり剛性の相互の関係に着目して、先端側への、チューブ体のねじり剛性の低下を連接截頭円錐体構造のねじり剛性によって補いながら、チューブ体と連接截頭円錐体構造とのねじり剛性の相互の補完作用により、先端側への回転伝達性の低下を防いで、先端側への回転伝達性を向上させる為である。
【0019】
例えば、一般に用いられている電極カテーテルでは、電極の外径が大きい為に、血管内径の小さい冠状静脈洞内での任意の位置での電位の測定は困難であった。
しかし、本発明のガイドワイヤ型電極カテーテルを用いることにより冠状静脈洞よりも、その奥の、さらに狭小血管(例えば、マーシャル静脈等)内での電位の測定を可能にすることができる。
これにより、より細い末梢血管内で電位の測定が可能となり、心筋細胞の電位の解析や立体構築マッピングシステム等を利用して、不整脈の精度の高いメカニズムの解析と異常部位の正確な特定に寄与することができる。
そして、異常部位の心筋を焼灼する治療技術に寄与することができると共に、患者の負担を軽減させることができる。
そして又、本発明が特に効果を発揮する各症例(心房細動、心室頻拍、心臓再起療法)については、後述する。
【0020】
チューブ体は、少なくとも、先端側の第1チューブ体と後端側の第2チューブ体とを有する。
チューブ体の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、第2チューブ体から第1チューブ体へ徐変減少し、
第1チューブ体のねじり剛性をJ1、第2チューブ体のねじり剛性をJ2とした場合に、第1チューブ体のねじり剛性J1に対する第2チューブ体のねじり剛性J2とのねじり剛性比(J2/J1)は、一定の関係式を満たし、かつ、
連接截頭円錐体は、加工誘起マルテンサイト相への変態割合が20%以上80%以下で、横弾性係数が68500MPa以上73000MPa以下のオーステナイト系ステンレス鋼線で、先端側の第1截頭円錐体と後端側の第2截頭円錐体から成り、
第1截頭円錐体の先端節部のねじり剛性をK21、後端節部のねじり剛性をK22、第2截頭円錐体の先端節部のねじり剛性をK22、後端節部のねじり剛性をK23とした場合に、連接截頭円錐体の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、一定の関係式を満たす。
この理由は、変態割合の高い加工誘起マルテンサイト相による高い横弾性係数を備えた連接截頭円錐体構造により、第1電極群に起因する先端側への回転伝達性の低下を防いで、チューブ体と連接截頭円錐体構造との、ねじり剛性の相互の補完作用により、狭小で、かつ、屈曲蛇行の血管内での深部への挿入をより高める為である。
【0021】
連接截頭円錐体の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、それぞれの節部間で、それぞれ一定の関係式を満たす。
この理由は、各節部間でのねじり剛性比の上下限値を設定することにより、より円滑な先端側への回転伝達性の向上を図ることができるからである。
これにより、チューブ体と連接截頭円錐体構造との、ねじり剛性の相互の補完作用をより高めることができ、狭小で、かつ、屈曲蛇行の血管内での深部への挿入をさらに高めることができる。
【0022】
ガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体であって、電極カテーテルは、可撓性チューブ体の先端側の側面に複数の電極から成る第2電極群を備える。
可撓性チューブ体の内径は、ガイドワイヤ型電極カテーテルのチューブ体の外径よりも大きく、可撓性チューブ体の後端からガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側を挿入した際に、ガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側の第1電極群が電極カテーテルの先端から外部へ向けて延出して、先端側の第1電極群と後端側の第2電極群とを備えて成ることを特徴とする。
この理由は、ガイドワイヤ型電極カテーテルにおける細径の先端側を前進させる為の反力を、電極カテーテルで支えながら、ガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側に備えた細径の第1電極群を、狭小血管内の所望の位置へ配置する為である。
そして、先端側の第1電極群と後端側の第2電極群との双方を備えることにより、複数の異なる部位での心筋の電位を測定する為である。
【0023】
電極カテーテルの可撓性チューブ体は、少なくとも、外側チューブ体と、外側チューブ体の内側に内側チューブ体とを備える。
可撓性チューブ体の後端側は、分岐接続具を介して、一方の側に内側チューブ体と連通して成る端末具と、他方の側に外側チューブ体と連通して成る分岐コネクタとを備える。
外側チューブ体は、先端側の側面に第2リード線の先端と接続固着して成る第2電極群と、第2電極群の固定位置に対応して側孔とを備える。
第2リード線は、側孔から外側チューブ体と連通して成る分岐コネクタへ延在する。
端末具の後端からガイドワイヤ型電極カテーテルの先端側を挿入して成ることを特徴とする組立体である。
この理由は、先端側に備えた細径の第1電極群を、屈曲蛇行する狭小血管内へ配置し、先端側の第1電極群と後端側の第2電極群との双方を用いて、複数の異なる部位での心筋の電位を測定する為である。
これにより、一つの手技で複数の異なる部位での心筋の電位を同時に測定することができ、不整脈のより精度の高いメカニズムの解析と、異常部位のより正確な特定に大きく寄与することができる。さらに、手技時間の短縮により、患者の負担を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】は、本発明のガイドワイヤ型電極カテーテルの全体を示す正面図である。
【
図2】は、
図1における一部切欠き縦断面図である。
【
図3】は、本発明の第1実施形態におけるチューブ体と連接截頭円錐体を有する芯線先端部との一部切欠き縦断面図である。
【
図4】は、本発明の第2実施形態におけるチューブ体と連接截頭円錐体を有する芯線先端部との一部切欠き縦断面図である。
【
図5】は、
図1、
図2における拡大した先端部(先端接続部、コイルスプリング体、後端接続部、チューブ体)の一部切欠き縦断面図である。
【
図6】は、
図2における第1電極群のうち、先端の電極部分(符号V)の一部切欠き縦断面図である。
【
図7】は、本発明の使用方法を説明する為の心臓血管系の図で、冠状静脈洞を介して、その奥の、右心房斜静脈へ本発明のガイドワイヤ型電極カテーテルを挿入した状態を表す図である。符号13a~13hは、13a:右心房、13b:左心房、13c:上大静脈、13d:下大静脈、13e:冠状静脈洞、13f:右心房斜静脈、13g:大心静脈、13h:中心静脈である。
【
図8】は、本発明のガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体の全体を示す正面図である。
【
図9】は、本発明の電極カテーテルの一部切欠き縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のガイドワイヤ型電極カテーテル、及び、ガイドワイヤ型電極カテーテルと電極カテーテルとの組立体の、実施形態について説明する。尚、本発明の実施形態の、ガイドワイヤ型電極カテーテルをGW型電極カテーテルといい、一般に用いられている外径の大きい電極カテーテルを一般電極カテーテルといい、外径の小さい本発明の電極カテーテルと区分する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態の、GW型電極カテーテルの全体の正面図を示し、
図2は、
図1の一部切欠き縦断面図を示す。
GW型電極カテーテル1、10は、全長Lが1000mmから1800mmで、チューブ体4、40と芯線2と第1電極群5と第1リード線6とを有する。
チューブ体4、40の先端側には、先端接続部7、70とコイルスプリング体3とを備え、後端側には、保護チューブ11A、11Bとコネクタ12とを有する。
チューブ体4、40は、中空体構造で、先端側の側面に第1リード線6の先端と接続固着して成る第1電極群5と、第1電極群5の固定位置に対応して側孔51(
図6参照)とを備える。
第1リード線6は、側孔51からチューブ体4、40の内側を経由してコネクタ12へ延在する。第1リード線6は、外径が約0.05mmから0.10mmで、金属芯線61の外周に膜厚が約0.010mmのポリアミドイミドから成る樹脂被覆62を備える(
図6参照)。
芯線2は、先端側に芯線先端部21と後端側に芯線後端部22とを備え、コイルスプリング体3とチューブ体4、40との内側で、コネクタ12まで延在する。
芯線先端部21は、先端側から後端側へ、先端細径体24と連接截頭円錐体23、200とを有する。
連接截頭円錐体23、200は、先端に外径が小さい先端節部と後端に先端節部よりも外径が大きい後端節部とを備えた截頭円錐体(23A、23B等)を複数連接して成る。
芯線後端部22は、芯線2のうち最も大きな外径D(約0.340mmから約0.3556mm)から成り、全長に亘って外径Dが一定で、コネクタ12まで延在する。
【0027】
先端接続部7、70は、先端側が先丸形状で後端側は円筒状の中実体構造で、外径が約0.33mm、長手方向の長さが約0.5mmから1mmであり、コイルスプリング体3の先端部と先端細径体24の先端部とを接続固着する。
後端接続部8は、コイルスプリング体3の後端部と連接截頭円錐体23、200の先端部とチューブ体4、40の先端部とを、幅Tが約0.5mmから3mmで接続固着する。
第1電極群5は、1個の電極の外径が約0.46mm、幅Wが1mm、電極間の相互の間隔Xは1mmから2mmで、本実施形態では6個(符号5A~5F)備えている。又、電極数は、測定部位により異ならせてもよく、任意の複数個、例えば10個備えてもよい。
電極の材質は、金、白金、イリジウム、又は、これらの合金から成る。
電極は、第1リード線6の先端の樹脂被覆62を剥離して、金属芯線61の部分と各電極の内側とをそれぞれ抵抗溶接等により溶接接合する。又、溶接接合した第1リード線6の後端を側孔51からチューブ体41の内側を経由してコネクタ12と接続する。
そして、コネクタ12を介して、心電図計に接続される。
親水性被覆9Aは、第1電極群5の各電極(符号5Aから5F)の外周を除く、チューブ体4、40の、少なくとも先端側の外周に備え、又、コイルスプリング体3の外周に備えてもよい。第1電極群5の各電極(符号5Aから5F)の外周を除く構成としたのは、親水性被覆9Aに起因する電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
従って、第1電極群5の各電極間のチューブ体4、40の外周にも親水性被覆9Aを備えることが好ましい。この理由は、狭小血管内へ、チューブ体4、40の先端側の挿入性を向上させる為である。
そして、電位測定部位により、挿入性を大きく低下させない範囲であれば、第1電極群5の先端から後端までの範囲(符号S)に親水性被覆9Aを備えていなくてもよい。
例えば、先端の電極5Aの先端端面から後端の電極5Fの後端端面までの長さの、1.1倍から2.5倍以内の範囲(
図2、符号S)である。
そして又、潤滑性被覆9Bは、連接截頭円錐体23、200と芯線後端部22の外周面に備えてもよい。
【0028】
チューブ体4、40は可撓性樹脂組成物を用い、具体的にはポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルブロックアミド共重合体等を用いる。又、放射線透視下での視認性向上の為、造影剤(硫酸バリウム等)を添加してもよい。
そして、チューブ体4、40の後端側から先端側へ可撓性を増大させる方法として、可撓性樹脂組成物の樹脂硬度を後端側から先端側へ低下させる方法(例えば、ショア硬度72Dから30Dへ低下させる)、後端側から先端側へ内径と外径とをそれぞれ縮径する方法、後端側から先端側へ内径と外径とを全長に亘って一律に連続して縮径(テーパ状)する方
法、さらに、硬度の高い樹脂と低い樹脂とを組み合わせ、先端側に硬度の低い樹脂の体積量を多くした多層構造のチューブ体4、40としてもよく、前記いずれか一つ、又は、2つ以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
芯線2は、擬弾性特性を有するNiTi合金、又は、NiTi系合金、又は、ステンレス鋼線等を用いる。
NiTi合金、又は、NiTi系合金としては、超弾性金属(NiTi合金)、加工硬化型NiTi系合金、広ひずみ範囲弾性NiTi系合金、線形弾性NiTi系合金等である。好ましくは、応力歪特性が直線的な特性を示す線形弾性NiTi系合金である。
ステンレス鋼線としては、マルテンサイト系ステンレス鋼線(SUS403、SUS410等)、フェライト系ステンレス鋼線(SUS405、SUS430等)、析出硬化系ステンレス鋼線(SUS630、SUS631等)等を用いる。
特に、加工によるマルテンサイト相への変態割合を多くした加工誘起マルテンサイト変態相を有するオーステナイト系ステンレス鋼線のSUS304、SUS316等が好ましい。
この理由は、縮径伸線加工の加工率(又は総減面率)等の増大により、加工によるマルテンサイト相への変態割合を容易に多くすることができ、引張強さの向上のみならず、ねじり剛性の向上に重要な技術要素である横弾性係数を高めることができるからである。
【0030】
先端接続部7は、コイルスプリング体3の先端部と先端細径体24の先端部とを接続固着し、溶融温度が210℃から450℃の金錫系合金材、溶融温度が220℃から470℃の銀錫系合金材等の共晶合金を用いて接続固着する。先端接続部70の接続固着については後述する。
後端接続部8は、コイルスプリング体3の後端部と連接截頭円錐体23、200の先端部とチューブ体4、40の先端部とを接続固着し、前記先端接続部7と同じ共晶合金を用いて接続固着してもよく、又、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて接続固着してもよい。又、
図6において説明する封止剤52を用いて接続固着してもよい。
コイルスプリング体3は、金、白金、又はドープタングステン、金、白金にニッケル等を含む放射線不透過の線材を用いて巻回成形し、外径が約0.33mmである。
線材の線直径は、約0.05mmから約0.080mmで、長手方向の長さは、概ね10mmから30mmである。
【0031】
前記したように、親水性被覆9Aは、第1電極群5の各電極(符号5Aから5F)の外周を除く、チューブ体4、40の少なくとも先端側の外周と、コイルスプリング体3の外周に備えていてもよい。又、芯線2の連接截頭円錐体23、200と芯線後端部22の表面に、潤滑性被覆9Bを備えていてもよい。
親水性被覆9Aの親水性物質としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子物質、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸高分子物質、ポリエチレンオキサイド等のポリエチレンオキサイド系高分子物質、ポリビニルピロリドン等のアクリルアミド系高分子物質等である。
潤滑性被覆9Bとしては、PFA、FEP、PTFE等のフッ素系樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂等を用いる。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態のGW型電極カテーテル1の一部切欠き縦断面図で、第1電極群5を備えたチューブ体4の先端側と、芯線2の先端側とを示し、他の構成部品は省略している。
第1実施形態において、チューブ体4は、芯線先端部21の外側に第1チューブ体41と第2チューブ体42とを有する。第1チューブ体41は、内径と外径が一定で、長手方
後端側に第1電極群5を備える(
図2参照)。
第1電極群5を備えた第1チューブ体41の内側には、少なくとも連接截頭円錐体23の先端側の第1截頭円錐体23Aを備える。第1截頭円錐体23Aの先端は、先端接続部7の先端から約12mmの位置(符号Lo1)である。
第2チューブ体42は、第1チューブ体41の後端部に接続され、内径と外径が一定で、
mである。第1チューブ体41と第2チューブ体42との内径と外径については、後述する。
第1チューブ体41の後端と第2チューブ体42との先端とを重ね合わせて接合した重ね合わせ部4aは、重ね合わせ幅U1が約5mmで、接着剤等を用いて接着接合する。
接着剤は、後述する封止剤52としての接着剤を用いて接着接合し、又は、溶着接合、融着接合等の手段を用いてもよい。
第1チューブ体41と第2チューブ体42に用いる可撓性樹脂組成物は、ポリエーテルブロックアミド共重合体である。
第2チューブ体42の後端側には、保護チューブ11Aを備える。又、第2チューブ体42をコネクタ12まで延長して保護チューブ11Aの代わりとして用いてもよい。
【0033】
第1チューブ体41のねじり剛性をJ1、横弾性係数をG1、断面二次極モーメントをIp1、内径をd1、外径をd11とすると、
断面二次極モーメントIp1が{π×(d114-d14)/32}で表されることから、第1チューブ体41のねじり剛性J1は、
J1=G1×{π×(d114-d14)/32} ・・・(1)
関係式(1)で表すことができる。尚、πは円周率を示し、以下同様である。
前記同様に、第2チューブ体42のねじり剛性をJ2、横弾性係数をG2、断面二次極モーメントをIp2、内径をd2、外径をd22とすると、第2チューブ体42のねじり剛性J2は、
J2=G2×{π×(d224-d24)/32} ・・・(2)
関係式(2)で表すことができる。
そして、第1チューブ体41のねじり剛性J1に対する第2チューブ体42のねじり剛性J2とのねじり剛性比(J2/J1)は、前記関係式(1)(2)より、
J2/J1=G2×(d224-d24)/{G1×(d114-d14)}・・・(3)
関係式(3)で表すことができる。
【0034】
第1実施形態のチューブ体4において、第1チューブ体41の内径d1が0.28mm、外径d11が0.40mm、第2チューブ体42の内径d2が0.41mm、外径d22が0.56mm、又第1チューブ体41と第2チューブ体42とは、共に同一材質を用いている為、横弾性係数は同じ値(G1とG2とは同じ値)であることから、第1チューブ体41のねじり剛性J1に対する第2チューブ体42のねじり剛性J2とのねじり剛性比(J2/J1)は、前記関係式(3)より、3.603となる。
そして、前記ねじり剛性比の値を不等号で表すと、先端側のねじり剛性比(J1/J1)は、1であることから、1< 3.603(J2/J1)の関係となる。
つまり、第1実施形態におけるチューブ体4のねじり剛性比(J2/J1)は、
1 < (J2/J1) ・・・(4)
関係式(4)で表すことができる。
従って、第1実施形態におけるチューブ体4のねじり剛性比(J2/J1)は、先端側へ減少し、後端側から先端側へ徐変減少する。
そして又、チューブ体4の公差(0.01mm)の範囲でねじり剛性比(J2/J1)の上限値を算出すると、ねじり剛性比(J2/J1)の上限値は、4.282となる。
従って、前記関係式(4)において、好ましいねじり剛性比(J2/J1)は、
1 <(J2/J1)≦4.282 である。
【0035】
第1実施形態において、芯線2の先端側は長手方向の長さが250mmから350mmの芯線先端部21を備え、芯線先端部21は、先端側から後端側へ、先端細径体24と連接截頭円錐体23とを有する。
連接截頭円錐体23は、先端側に長手方向の長さL1が30mmの第1截頭円錐体23Aを備え、後端側に長手方向の長さL2が120mmの第2截頭円錐体23Bを備える。
第1截頭円錐体23Aは、先端に外径が小さい先端節部230と後端に外径が大きい後端節部231とを有し、第2截頭円錐体23Bも前記第1截頭円錐体23Aと同様に、先端節部231と後端節部232とを有する。尚、後端節部231と先端節部231とが重複する場合がある為、単に節部231ともいう。以下、後端節部232等についても、同様である。
先端細径体24は、長手方向の長さLoが約11mmで、横断面形状が円形でもよく、又、押圧加工により矩形であってもよい。
芯線先端部21は、連接截頭円錐体23の後端側で芯線後端部22の先端との間に、外径が等径、又は先端側へ縮径するテーパ形状の円錐体とを備えていてもよい。
芯線2は、加工によるマルテンサイト相への変態割合を多くした加工誘起マルテンサイト変態相を有するオーステナイト系ステンレス鋼線を用いる。
そして、加工によるマルテンサイト相への変態割合が20%以上80%以下(好ましくは、30%以上70%以下)で、横弾性係数が68500MPaから73000MPaのSUS304を用いる。
【0036】
第1截頭円錐体23Aの先端節部230のねじり剛性をK21、横弾性係数をG21、断面二次極モーメントをIp21、外径をD1とすると、断面二次極モーメントIp21が{π×D14/32}で表されることから、第1截頭円錐体23Aの節部230(先端節部230と同じ)のねじり剛性K21は、
K21=G21×{π×D14/32} ・・・(5)
関係式(5)で表すことができる。
第1截頭円錐体23Aの後端節部231のねじり剛性をK22、横弾性係数をG22、断面二次極モーメントをIp22、外径をD2とすると、断面二次極モーメントIp22が{π×D24/32}で表されることから、第1截頭円錐体23Aの節部231(後端節部231と同じ)のねじり剛性K22は、前記関係式(5)と同様に、
K22=G22×{π×D24/32} ・・・(6)
関係式(6)で表すことができる。
そして、第1截頭円錐体23Aの先端節部230のねじり剛性K21に対する後端節部231のねじり剛性K22との、節部でのねじり剛性比(K22/K21)は、前記関係式(5)(6)より、
K22/K21=G22×D24/(G21×D14) ・・・(7)
関係式(7)で表すことができる。
【0037】
第2截頭円錐体23Bの先端節部231は、第1截頭円錐体23Aの後端節部231に相当することから、第2截頭円錐体23Aの先端節部231のねじり剛性K22は、前記関係式(6)で表される。
後端節部232のねじり剛性をK23、横弾性係数をG23、断面二次極モーメントをIp23、外径をD3とすると、第2截頭円錐体23Bの後端節部232のねじり剛性K23は、前記関係式(5)と同様に、
K23=G23×{π×D34/32} ・・・(8)
関係式(8)で表すことができる。
そして、第2截頭円錐体23Bの先端節部231のねじり剛性K22に対する後端節部232のねじり剛性K23との、節部でのねじり剛性比(K23/K22)は、前記関係式(7)と同様に、
K23/K22=G23×D34/(G22×D24) ・・・(9)
関係式(9)で表すことができる。
【0038】
第1実施形態の、先端側の第1截頭円錐体23Aと後端側の第2截頭円錐体23Bにおいて、第1截頭円錐体23Aの先端節部230の外径D1が0.060mm、後端節部231の外径D2が0.125mm、第2截頭円錐体23Bの先端節部231の外径D2が0.125mmとなり、後端節部232の外径D3が0.182mm、又、第1截頭円錐体23Aと第2截頭円錐体23Bとは、共に同一材質を用いている為、横弾性係数は同じ値(G21とG22とG23とは同じ値)であることから、
第1截頭円錐体23Aの節部でのねじり剛性比(K22/K21)は、前記関係式(7)より、18.838となる。
又、第2截頭円錐体23Bの節部でのねじり剛性比(K23/K22)は、前記関係式(9)より、4.494となる。
そして、前記ねじり剛性比の値を不等号で表すと、後端側のねじり剛性比(K23/K23)は、1であることから、
18.838(K22/K21)>4.494(K23/K22)>1 の関係となる。
つまり、第1実施形態における連接截頭円錐体23の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、
(K22/K21)> (K23/K22)> 1 ・・・(10)
関係式(10)で表すことができる。
従って、第1実施形態における連接截頭円錐体23の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22)は、先端側へ増大し、後端側から先端側へ徐変増大する。
そして又、前記関係式(7)において、横弾性係数G22、G21の上下限値の範囲(68500MPaから73000MPa)でねじり剛性比(K22/K21)の上限値を算出すると、節部でのねじり剛性比(K22/K21)の上限値は、20.075となる。
従って、前記関係式(10)において、好ましいねじり剛性比の関係は、
20.075 ≧(K22/K21)>(K23/K22)> 1 である。
さらに、前記関係式(9)において、前記同様に、横弾性係数G23、G22の上下限値の範囲でねじり剛性比(K23/K22)の上限値を算出すると、節部でのねじり剛性比(K23/K22)の上限値は、4.789となる。
従って、前記関係式(10)において、より好ましいねじり剛性比の関係は、
20.075 ≧(K22/K21)>(K23/K22)> 1 で、かつ、 4.789 ≧(K23/K22)> 1 である。
このように、各節部間でのねじり剛性比の上下限値を設定することにより、より円滑な先端側への回転伝達性の向上を図ることができる。
これにより、チューブ体4と連接截頭円錐体構造23との、ねじり剛性の相互の補完作用をより高めることができ、狭小で、かつ、屈曲蛇行の血管内での深部への挿入をさらに高めることができる。
【0039】
図4は、本発明の第2実施形態のGW型電極カテーテル10の一部切欠き縦断面図で、
図3と同様に、第1電極群5を備えたチューブ体40の先端側と、芯線2の先端側とを示し、他の構成部品は省略している。
第1実施形態と異なるところは、チューブ体40は、第2チューブ体42の後端側に第3チューブ体43を有し、内径と外径と長手方向の長さが異なる3つのチューブ体41、42、43から成る。又、連接截頭円錐体200は、第2截頭円錐体23Bの後端側に第3截頭円錐体23Cを有し、第1截頭円錐体23Aは第1実施形態と同じで、外径と長手方向の長さが異なる3つの截頭円錐体23A,23B,23Cを連接して成る。
【0040】
ついては、後述する。
第3チューブ体43の先端と第2チューブ体42の後端とを重ね合わせて接合した重ね合わせ部4bは、重ね合わせ幅U2が約5mmで、第1チューブ体41の後端と第2チューブ体42との先端との重ね合わせ部4aの重ね合わせ幅U1は、前記第1実施形態と同様で、接合方法についても、前記第1実施形態と同様である。
そして、チューブ体40は、前記第1実施形態のチューブ体4と同じ材質を用いる。
第3チューブ体43の後端側には、保護チューブ11Aを備える。又、第3チューブ体43をコネクタ12まで延長して保護チューブ11Aの代用として用いてもよい。
【0041】
第2実施形態において、前記第1実施形態と同様に、芯線2の先端側は長手方向の長さが250mmから350mmの芯線先端部21を備え、芯線先端部21は、先端側から後端側へ、先端細径体24と連接截頭円錐体200とを有する。
第2実施形態における連接截頭円錐体200は、第1截頭円錐体23Aの長手方向の長さL1が30mm、第2截頭円錐体23Bの長手方向の長さL2が45mm、第3截頭円錐体23Cの長手方向の長さL3が75mmで、それぞれの外径については、後述する。
第3截頭円錐体23Cは、第1截頭円錐体23A、第2截頭円錐体23Bと同様に、先端節部232と後端節部233とを有する。尚、後端節部232と先端節部232とが重複する場合がある為、単に節部232等ともいう。以下、同様である。
先端細径体24の、長手方向の長さLoと横断面形状、及び、芯線先端部21の、連接截頭円錐体200の後端側で芯線後端部22の先端との間の形状については、前記第1実施形態と同様である。又、連接截頭円錐体200は、前記連接截頭円錐体23と同じ材質を用いる。
【0042】
チューブ体43のねじり剛性をJ3、横弾性係数をG3、断面二次極モーメントをIp3、内径をd3、外径をd33とすると、
第3チューブ体43のねじり剛性J3は、前記関係式(1)(2)と同様に、
J3=G3×{π×(d334-d34)/32} ・・・(11)
関係式(11)で表すことができる。
そして、第2チューブ体42のねじり剛性比J2に対する第3チューブ体43のねじり剛性J3とのねじり剛性比(J3/J2)は、前記関係式(3)と同様に、
J3/J2=G3×(d334-d34)/{G2×(d224-d24)}・・・(12)
関係式(12)で表すことができる。
【0043】
第2実施形態のチューブ体40において、
第1チューブ体41の内径d1が0.28mm、外径d11が0.36mm、第2チューブ体42の内径d2が0.37mm、外径d22が0.45mm、第3チューブ体43の内径d3が0.46mm、外径d33が0.56mm、又第1チューブ体41と第2チューブ体42と第3チューブ体43とは、共に同一材質を用いている為、横弾性係数は同じ値(G1とG2とG3とは同じ値)であることから、第1チューブ体41のねじり剛性J1に対する第2チューブ体42のねじり剛性J2とのねじり剛性比(J2/J1)は、前記関係式(3)より、2.091となる。
又、第2チューブ体42のねじり剛性J2に対する第3チューブ体43のねじり剛性J3とのねじり剛性比(J3/J2)は、前記関係式(12)より、2.406となる。
そして、前記ねじり剛性比の値を不等号で表すと、先端側のねじり剛性比(J1/J1)は、1であることから、1< 2.091(J2/J1)< 2.406(J3/J2)の関係となる。
つまり、第2実施形態におけるチューブ体40のねじり剛性比(J2/J1、J3/J2)は、
1 < (J2/J1) < (J3/J2) ・・・(13)
関係式(13)で表すことができる。
従って、第2実施形態におけるチューブ体40のねじり剛性比(J2/J1、J3/J2)は、先端側へ減少し、後端側から先端側へ徐変減少する。
そして又、前記第1実施形態と同様に、チューブ体40の公差(0.01mm)の範囲でねじり剛性比(J3/J2)の上限値を算出すると、ねじり剛性比(J3/J2)の上限値は、2.772となる。
従って、前記関係式(13)において、好ましいねじり剛性比(J2/J1、J3/J2)は、
1 <(J2/J1)<(J3/J2)≦2.772 である。
さらに又、前記関係式(13)において、前記同様に、チューブ体40の公差(0.01mm)の範囲でねじり剛性比(J2/J1)の上限値を算出すると、ねじり剛性比(J2/J1)の上限値は、2.335となる。
従って、前記関係式(13)において、より好ましいねじり剛性比(J2/J1、J3/J2)は、
1 <(J2/J1)<(J3/J2)≦2.772 で、かつ、
1 <(J2/J1)≦2.335 である。
【0044】
第2実施形態の連接截頭円錐体200において、第3截頭円錐体23Cの先端節部232は第2截頭円錐体23Bの後端節部232に相当することから、先端節部232の、ねじり剛性はK23、横弾性係数はG23、断面二次極モーメントはIp23、外径はD3となる。
第3截頭円錐体23Cの後端節部233の、ねじり剛性をK24、横弾性係数をG24、断面二次極モーメントをIp24、外径をD4とすると、第3截頭円錐体23Cの後端節部233のねじり剛性K24は、前記関係式(8)と同様に、
K24=G24×{π×D44/32} ・・・(14)
関係式(14)で表すことができる。
そして、第3截頭円錐体23Cの先端節部232のねじり剛性K23に対する後端節部233のねじり剛性K24との、節部でのねじり剛性比(K24/K23)は、前記関係式(9)と同様に、
K24/K23=G24×D44/(G23×D34) ・・・(15)
関係式(15)で表すことができる。
【0045】
第2実施形態の、連接截頭円錐体200において、第1截頭円錐体23Aの先端節部230の外径D1が0.060mm、後端節部231の外径D2が0.125mm(前記第1実施形態と同じ)、第2截頭円錐体23Bは、先端節部231の外径D2が0.125mmとなり、後端節部232の外径D3は0.182mm(前記第1実施形態と同じ)、第3截頭円錐体23Cは、先端節部232の外径D3が0.182mm(後端節部232の外径と同じ)となり、後端節部233の外径D4は0.200mm、又、第1截頭円錐体23Aと第2截頭円錐体23Bと第3截頭円錐体23Cとは、共に同一材質を用いている為、横弾性係数は同じ値(G21とG22とG23とG24とは同じ値)であることから、第1截頭円錐体23Aの節部でのねじり剛性比(K22/K21)は、前記関係式(7)より、18.838となる。
又、第2截頭円錐体23Bの節部でのねじり剛性比(K23/K22)は、前記関係式(9)より、4.494となる。
又、第3截頭円錐体23Cの節部でのねじり剛性比(K24/K23)は、前記関係式(15)より、1.458となる。
そして、前記ねじり剛性比の値を不等号で表すと、後端側のねじり剛性比(K24/K24)は、1であることから、
18.838(K22/K21)>4.494(K23/K22)>1.458(K24/K23)>1 の関係となる。
つまり、第2実施形態における連接截頭円錐体200の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22、K24/K23)は、
(K22/K21)>(K23/K22)>(K24/K23)>1 ・・・(16)
関係式(16)で表すことができる。
従って、第2実施形態における連接截頭円錐体200の節部でのねじり剛性比(K22/K21、K23/K22、K24/K23)は、先端側へ増大し、後端側から先端側へ徐変増大する。
そして又、前記関係式(7)において、横弾性係数G22、G21の上下限値の範囲(68500MPaから73000MPa)でねじり剛性比(K22/K21)の上限値を算出すると、前記同様に、節部でのねじり剛性比(K22/K21)の上限値は、20.075となる。
従って、前記関係式(16)において、好ましいねじり剛性比の関係は、
20.075 ≧(K22/K21)>(K23/K22)>(K24/K23)>1 である。
さらに、前記第1実施形態と同様に、前記関係式(9)において、横弾性係数G23、G22の上下限値の範囲でねじり剛性比(K23/K22)の上限値を算出すると、前記同様に、節部でのねじり剛性比(K23/K22)の上限値は、4.789となる。
従って、前記関係式(16)において、より好ましいねじり剛性比の関係は、
20.075 ≧(K22/K21)>(K23/K22)>(K24/K23)>1 で、かつ、4.789 ≧(K23/K22)>1 である。
このように、前記第1実施形態と同様に、各節部間でのねじり剛性比の上下限値を設定することにより、より円滑な先端側への回転伝達性の向上を図ることができる。
これにより、チューブ体40と連接截頭円錐体構造200との、ねじり剛性の相互の補完作用をより高めることができ、狭小で、かつ、屈曲蛇行の血管内での深部への挿入をさらに高めることができる。
【0046】
本発明の前記実施形態におけるチューブ体4、40と連接截頭円錐体23、200との相互の作用効果は、以下である。
本発明のチューブ体4、40の先端側に備えた第1電極群5における各電極(符号5A~5F)の外径は、約0.46mmで、チューブ体4、40と共に、前記特許文献1、2より外径が格段に小さくなっている。
これは、チューブ体4、40を細径化することにより各電極(符号5A~5F)の外径を小径化することが可能となる。
しかし、チューブ体4、40の先端側への細径化に伴い、先端側への柔軟性は増大するものの、その反面、先端側への回転伝達性は低下し、チューブ体4、40のねじり剛性は、後端側から先端側へ減少する。
本発明は、チューブ体4、40の先端側へのねじり剛性の低下を、芯線先端部21の先端側に備えた連接截頭円錐体23、200の構造を用いることにより、先端側への回転伝達性を向上させる技術を開示する発明である。
特に、回転抵抗が発生する第1電極群5を先端側に備え、最もねじり剛性が低くなり易い第1チューブ体41の内側に、節部でのねじり剛性比(K22/K21)が最も高い第1截頭円錐体23Aを備えて、チューブ体4、40の先端側への回転伝達性の低下を補完すると共に、後端側から先端側へ、節部でのねじり剛性比を増大させた連接截頭円錐体23、200の構造を用いることにより、さらに、先端側への回転伝達性を向上させることができる。
そして、先端側に第1電極群5を備え、細径でありながら先端側への回転伝達性を向上させた本発明のGW型電極カテーテルを用いることにより、例えば、冠状動脈と比較して血管径が細く、かつ、擦れに弱い冠状静脈洞内で、擦過傷を発生させることもなく容易に挿入することができ、さらに、冠状静脈洞を超えて、その奥の、さらに狭小血管(例えば、マーシャル静脈等)内へ挿入することができ、この部位での電位の測定を可能とすることができる。
これにより、より細い末梢血管内での心筋の電位の測定が可能となり、心筋細胞の電位の解析や立体構築マッピングシステム等を利用して、不整脈の精度の高いメカニズムの解析と異常部位の正確な特定に寄与することができる。
【0047】
図5は、本発明の先端接続部7の他の実施形態である先端接続部70を説明する為の図で、チューブ体4、40よりも先端側の、一部切欠き縦断面図を示す。
先端接続部70は、特に、先端接続部7の接続機能に加えて電位を測定できる機能を備えていることである。
先端接続部70は、前記先端接続部7と同様に、先端側が先丸形状で後端側は円筒状の中実体構造で、外径が約0.33mm、長手方向の長さが約0.5mmから1mmである。
先端接続部70は、コイルスプリング体3の先端部と先端細径体24の先端部とを接続固着するのに加えて、第1リード線6の先端部とを接続固着する。第1リード線6の後端側は、前記第1電極群5に用いる第1リード線6と同様に、コネクタ12まで延在する。尚、先端接続部70に用いる第1リード線6は、前記第1電極群5の接続に用いる第1リード線6と同一である。
先端接続部70における、第1リード線6、コイルスプリング体3、及び、先端細径体24の各先端部との接続は、導電性材料で接続固着し、導電性材料としては、前記先端接続部7と同じ共晶合金を用いる。好ましくは、金、白金、又はこれらの合金系から成る共晶合金である。
先端接続部70内へ接続固着する第1リード線6は、先端から長手方向の長さWが約0.4mmから0.8mm樹脂被覆62を剥離して、先端接続部70の後端端面から金属芯線61が露出しないように樹脂被覆62を含めて、先端接続部70内に収納して接続固着する。
この理由は、コイルスプリング体3の屈曲変形等によるコイル線間の隙間から流入する血液等により、電気信号が洩れて電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
そして、先端接続部70の先端側の先丸形状の部分、又は、先端接続部70の外周に親水性被覆9Aを備えないことである。この理由は、前記同様に、親水性被覆9Aに起因する電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
【0048】
図6は、
図2における第1電極群5のうち、先端の電極5Aの部分(符号V)の一部切欠き縦断面図を示す。
第1チューブ体41は、外周に固定する各電極(符号5A~5F)の固定位置に対応して側孔51を備える。
第1リード線6の先端の樹脂被覆62を剥離した金属芯線61の部分を電極5Aの内側に抵抗溶接等により溶接接合する。その後、電極5Aに溶接した第1リード線6の後端を、側孔51からチューブ体41の内側を経由してコネクタ12と接続する。
そして、電極5Aの先端側と後端側の両側面、及び、電極5Aと第1チューブ体41の外周面との隙間、並びに、第1チューブ体41の側孔51における電極5Aの内側と第1リード線6との隙間に封止剤52を備える。第1リード線6の金属芯線61が封止剤52から露出しないように樹脂被覆62を含めて封止剤52内で接着接合する。
この理由は、前記同様に、前記隙間から流入する血液等により、電気信号が洩れて電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
封止剤52としては、主成分が、フェノール系、エポキシ系(1液型、2液型)等の熱硬化性接着剤、ポリウレタン系、アクリル系等の熱可塑性樹脂系接着剤、クロロプレン系、ニトリルゴム系等のエラストマー系接着剤等を用いる。又、主成分が、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型接着剤を用いてもよく、接着部位の材質差により、前記接着剤の、いずれか一つ、又は二つ以上を組み合わせてもよい。他の電極(符号5Bから5F)についても、前記同様である。
そして又、チューブ体4、40の先端側の側面に備えた第1電極群5の、各電極(符号5Aから5F)の外周には親水性被覆9Aを備えないことである。この理由は、前記同様、親水性被覆9Aに起因する電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
従って、第1電極群5の各電極間のチューブ体4、40の外周にも親水性被覆9Aを備えることが好ましい。この理由は、狭小血管内へ、チューブ体4、40の先端側の挿入を容易にする為である。
そして、電位測定部位により、挿入性を大きく低下させない範囲であれば、第1電極群5の先端から後端までの範囲(符号S)に親水性被覆9Aを備えていなくてもよい。
例えば、先端の電極5Aの先端端面から後端の電極5Fの後端端面までの長さの、1.1倍から2.5倍以内の範囲(
図2、符号S)である。
【0049】
図7は、本発明のGW型電極カテーテルの使用方法を説明する為の説明図で、本発明のGW型電極カテーテル1、10を用いて、冠状静脈洞13eよりも、さらにその奥の、狭小の右心房斜静脈13f(通称マーシャル静脈)内で電位を測定する例示である。
一般に、心房と心室との電位を同時に測定する場合に、外径が2.0mmから2.4mmの一般電極カテーテルを用いて、冠状静脈洞13e内で電位を測定している。
しかし、冠状静脈洞13eは、冠動脈と比較して、血管壁が擦れに弱く、一般電極カテーテルとの擦過により損傷し易く、又、外径の大きい一般電極カテーテルを用いた場合には、この擦過による血管壁の損傷が大きくなり易い。
さらに、外径の大きい一般電極カテーテルでは、冠状静脈洞13e内の深部への挿入は不可能である。
これに対して、本発明のGW型電極カテーテル1、10は、先端部の電極(符号5A~5F)の外径が約0.46mmで、一般電極カテーテルの約1/5である為、冠状静脈洞13e内へ、血管壁を損傷させることなく、容易に挿入することができる。
尚、後述する本発明の電極カテーテル80は、一般電極カテーテルの外径(2.00mmから2.4mm)よりも約25%小さく(外径D10が約1.65mm、
図9参照)、冠状静脈洞13e内へ挿入することができる。
そして、心室頻拍(VT)の症例の場合には、冠状静脈洞13eよりも奥の、例えば、大心静脈13g内の末梢での電位測定が好ましい。
かかる場合に、本発明のGW型電極カテーテル1、10は、電極(符号5A~5F)の外径が一般電極カテーテルの約1/5である為、冠状静脈洞13eよりも奥の、大心静脈13g内の末梢へ挿入することができ、電位測定が可能となる。
そして又、心房細動(AF)の症例の場合には、冠状静脈洞13eよりもさらに奥の、例えば、右心房斜静脈13f(通称マーシャル静脈)内での電位測定が好ましい。
かかる場合であっても、本発明のGW型電極カテーテル1、10は、電極(符号5A~5F)の外径が一般電極カテーテルの約1/5である為、右心房斜静脈13f内へ挿入することができ、右心房斜静脈13f内での電位測定が可能となる。
これにより、心室頻拍(VT)、並びに、心房細動(AF)の症例に対して、症状改善に大きく寄与することができる。尚、補足すれば、大心静脈13g、及び、右心房斜静脈13fへの挿入方法は、本発明のGW型電極カテーテル1、10を細径のカテーテルと共に、上大静脈13cから右心房13a内へ挿入し、右心房13aの後下壁における冠状静脈洞13eの入口部でカテーテルの先端部を係止させ、その後、カテーテル内の本発明のGW型電極カテーテル1、10を冠状静脈洞13e内へ前進させて、大心静脈13g、及び、右心房斜静脈13f内へ挿入する。
【0050】
さらに、本発明のGW型電極カテーテル1、10を用いれば、心臓再同期療法(CRT)において、留置する電極リードの好適位置を見つけ出すことができる。
心臓再同期療法は、例えば、一方の電極リードを右心室に留置し、他方の電極リードを左心室の表面に留置した場合に、留置する電極リードの双方の位置関係により、心臓の同期不全を改善できる、効果的な位置と効果的でない位置とが存在する。
かかる場合において、電極リードを留置する前に、予め、本発明のGW型電極カテーテル1、10を冠状静脈洞13e内へ挿入して、冠状静脈洞13e内での各部位の電位を測定し、心電図波形が正常範囲となる効果的な留置位置(前記例では、左心室の表面に留置する他方の電極リードの留置位置)を見つけ出すことができる。
これにより、心臓の同期不全の症例に対して、症状改善に大きく寄与することができる。
【0051】
次に、
図8、9を用いて、本発明のGW電極カテーテル1、10と電極カテーテル80との組立体100の、第3実施形態について説明する。
【0052】
図8は、本発明のGW型電極カテーテル1、10と電極カテーテル80との組立体100の全体の正面図を示し、
図9は、本発明の電極カテーテル80の一部切欠き縦断面図を示す。
電極カテーテル80は、全長L10が650mmから1200mm、外径D10が約1.65mmで、可撓性チューブ体82と、可撓性チューブ体82の先端に先端チップ81と、後端側に分岐接続具83とを備える。分岐接続具83の後端側には、一方の側へ分岐し、カテーテル保護チューブ84Aと接続固着した端末具84と、他方の側へ分岐し、第2リード線保護チューブ85Aと接続固着した分岐コネクタ85とを備える。
【0053】
可撓性チューブ体82は、外側チューブ体821と、外側チューブ体821の内側に外側チューブ体821と同心状の内側チューブ体822とを備え、外側チューブ体821と内側チューブ体822とは共に、分岐接続具83へ延在する。
外側チューブ体821の内側と内側チューブ体822の外側との間に形成された内腔82Aは、分岐接続具83を経由して、第2リード線保護チューブ85Aと分岐コネクタ85とに連通する。
又、内側チューブ体822の内腔82Bは、分岐接続具83を経由して、カテーテル保護チューブ84Aと端末具84とに連通する。
そして、内側チューブ体822の内径は、GW電極カテーテル1、10のチューブ体40の最大外径(d33が0.56mm)よりも大きく設定されており、本実施形態では例えば、約0.83mmとなっている。
内側チューブ体822を、分岐接続具83を経由して端末具84まで延在させて端末具84と連通させ、カテーテル保護チューブ84Aの代わりとして用いてもよい。
【0054】
外側チューブ体821は、前記第1実施形態のチューブ体4と同様に、先端側の側面に第2リード線60の先端と接続固着して成る第2電極群50と、第2電極群50の固定位置に対応して側孔(図示せず、
図6の側孔51と同様)とを備える。
第2リード線60は、側孔から外側チューブ体821の内側と内側チューブ体822の外側との間の内腔82Aに通過させて、分岐接続具83を経由し、他方の側へ分岐した第2リード線保護チューブ85A内を経て、分岐コネクタ85へ延在する。
そして、分岐コネクタ85を介して心電図計に接続される。尚、第2リード線60の、寸法と材質、及び、第2電極群50における各電極(符号50Aから50F)との接続方法は、前記第1実施形態と同様である(
図6参照)。
【0055】
に備えられ、1個の電極の外径が、外側チューブ体821の外径D10と同じ約1.65mm、幅Wが1mm、電極間の相互の間隔Xは2mmから8mmで、電極を例えば、6個(符号50Aから50F)備えている。
電極間の相互の間隔Xは、1mmから10mmの範囲で用いてもよく、又可変させてもよい(一定間隔でなくてもよい)。さらに電極数も、例えば、12個備えていてもよく、測定部位により任意に増減させてもよい。
そして、第2電極群50の各電極の外径が、外側チューブ体821と同じ外径にする為には、予め、外側チューブ体821の外径D10よりも少し大きな内径から成る電極を上下かしめ型、又は、回転式スウェージング機等の押圧加工により形成することができる。
これにより、第2電極群50の各電極の両端エッジにより、心臓、及び、血管の内壁を損傷させることはない。
又、前記第1実施形態における第1電極群5についても同様に、前記押圧加工を行うことにより、電極外径約0.46mmをさらに小さな外径(前記第1実施形態のチューブ体の外径d11と同じ0.40mm)を備えたGW電極カテーテルを提供することができる。尚、第2電極群50の各電極(符号50Aから50F)の材質は、前記第1実施形態の第1電極群5の各電極と同様である。
【0056】
親水性被覆9Aは、第2電極群50の各電極(符号50Aから50F)の外周を除く、外側チューブ体821の、少なくとも先端側の外周に備える。第2電極群50の各電極(符号50Aから50F)の外周を除く、としたのは、前記同様、親水性被覆9Aに起因する電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。
従って、第2電極群50の各電極間の外側チューブ体821の外周にも親水性被覆9Aを備えることが好ましい。この理由は、前記第1実施形態と同様に、外側チューブ体821の先端側の挿入性を向上させる為である。
そして、電位測定部位により、挿入性を大きく低下させない範囲であれば、第2電極群50の先端から後端までの範囲(符号S)に親水性被覆9Aを備えていなくてもよい。
例えば、先端の電極50Aの先端端面から後端の電極50Fの後端端面までの長さの、1.1倍から2.5倍以内の範囲(
図9、符号S)である。親水性被覆9Aの親水性物質は、前記第1実施形態と同様である。
【0057】
先端チップ81は、中心部に貫通孔(内側チューブ体822の、内径と同じ約0.83mm、又は、外径と同じ孔径)を有する半球状、又は先細りの円錐形状で、内側チューブ体822の先端側の外周と、外側チューブ体821の先端とを封止剤(図示せず)を用いて接着接合する。
この理由は、第2リード線60を配置している外側チューブ体321の内側と、内側チューブ体322の外側との間の内腔82A内へ、血液等が侵入して、電気信号が漏れて電位測定時の心電図波形の不安定化を防ぐ為である。尚、接着接合に用いる封止剤は、前記第1実施形態にて説明した封止剤52と同様である。
そして、先端チップ81の外周に親水性被覆9Aを備えることにより、心臓、及び、血管の内壁を損傷させることはない。
【0058】
外側チューブ体821、及び、内側チューブ体822は、前記第1、2実施形態のチューブ体4、40と同様に、可撓性樹脂組成物を用いる。
外側チューブ体821は、前記第1、2実施形態のチューブ体4、40と同様に、外側チューブ体821の、横弾性係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性が、後端側から先端側へ徐変減少することが好ましい。
具体例を以下に説明する。
図9において、外側チューブ体821が、先端部821Aと中間部821Bと基端部821Cとの3つのチューブ体を、中間部821Bの両端部でそれぞれ接着接合し、又は、溶着接合し、いずれのチューブ体もポリエーテルブロックアミド共重合体を用いた場合に、例えば、3つのチューブ体に硬度差を設ける場合においては、
基端部821Cは、長さL13が400mmから950mmでショア硬度が72D、
中間部821Bは、長さL12が120mmでショア硬度が45D、
先端部821Aは、長さL11が80mmでショア硬度が30Dの仕様とする。
かかる場合には、ショア硬度の高い基端部821C(後端側)からショア硬度の低い先端側の先端部821Aへ向かって、ねじり剛性を後端側から先端側へ向かって徐変減少させることができる。
又、例えば、外側チューブ体821の3つのチューブ体のいずれかに、金属線による編組を加える場合においては、基端部821Cは、長さL13が400mmから950mmでショア硬度が72Dとステンレス鋼線による編組とを一体化させ、中間部821Bは、長さL12が120mmでショア硬度が60D、先端部821Aは、長さL11が80mmでショア硬度が30Dの仕様とする。
かかる場合には、高いショア硬度と金属製編組とを組み合わせた基端部821C(後端側)からショア硬度の低い先端側の先端部821Aへ向かって、ねじり剛性を後端側から先端側へ向かって徐変減少させることができる。
これにより、前記第1、2実施形態のチューブ体4、40と同様に、外側チューブ体821の、横断面係数と断面二次極モーメントとの積で表されるねじり剛性を、後端側から先端側へ徐変減少させることができる。
【0059】
次に、本発明のGW型電極カテーテル1、10と電極カテーテル80との組立体100の作用効果について、以下に説明する。
本発明の第3実施形態の組立体100は、GW型電極カテーテル1、10の先端を、電極カテーテル80の後端側に備えた端末具84の内腔へ挿入し、分岐接続具83内を経由して先端チップ81から外部へ向けて、GW型電極カテーテル1,10の先端側の第1電極群5が延出する。
そして、組立体100は、電極カテーテル80の先端から外部へ向けて延出した第1電極群5と電極カテーテル80の先端側に備えた第2電極群50との2つの電極群を備えている。このような組立体100とする理由は、GW型電極カテーテル1、10における細径の先端側を前進させる為の反力を、電極カテーテル80で支えながら、GW型電極カテーテル1、10の先端側に備えた細径の第1電極群5を、狭小血管内の所望の位置へ容易に配置する為である。又、先端側の第1電極群5と後端側の第2電極群50との双方を備えて、複数の異なる部位での心筋の電位を測定する為である。
さらに、本発明の組立体100とすることにより、第1電極群5と第2電極群50との双方の間隔を可変することができ、双方の電極群5、50を所望の位置に容易に配置する為である。
これにより、例えば、先端側の第1電極群5で冠状静脈洞内での電位を測定し、後端側の第2電極群50で右心房壁の電位を測定することができる。
さらに、先端側の第1電極群5で冠状静脈洞内よりも先端側で狭小のマーシャル静脈内での電位を測定し、後端側の第2電極群50でマーシャル静脈より後端側の冠状静脈洞内での電位を測定することができる。
このように、本発明の組立体100は、一つの手技で複数の異なる部位での心筋の電位を同時に測定することができ、不整脈のより精度の高いメカニズムの解明と、異常部位のより正確な特定に寄与することができる。さらに、手技時間を短縮させて患者の負担を軽減させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ガイドワイヤ型電極カテーテル(第1実施形態)
2 芯線
3 コイルスプリング体
4 チューブ体(第1実施形態)
5 第1電極群
6 第1リード線
7 先端接続部
8 後端接続部
10 ガイドワイヤ型電極カテーテル(第2実施形態)
21 芯線先端部
22 芯線後端部
23 連接截頭円錐体(第1実施形態)
23A 第1截頭円錐体
23B 第2截頭円錐体
23C 第3截頭円錐体
40 チューブ体(第2実施形態)
41 第1チューブ体
42 第2チューブ体
43 第3チューブ体
50 第2電極群
60 第2リード線
70 先端接続部(他の実施形態)
80 電極カテーテル(第3実施形態)
81 先端チップ
82 可撓性チューブ体(第3実施形態)
83 分岐接続具
84 端末具
85 分岐コネクタ
100 組立体(第3実施形態)
200 連接截頭円錐体(第2実施形態)
821 外側チューブ体
822 内側チューブ体