IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ▲達▼▲亜▼帆布(上海)有限公司の特許一覧

特開2022-31073ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー
<>
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図1
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図2
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図3
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図4A
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図4B
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図5A
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図5B
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図6
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図7
  • 特開-ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031073
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/50 20060101AFI20220210BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220210BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20220210BHJP
   D03D 9/00 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220210BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20220210BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220210BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220210BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20220210BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B41M5/50 120
D03D1/00 Z
D03D15/00 A
D03D9/00
B32B5/28 Z
B32B27/00 D
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
B32B27/32 Z
C09J133/02
C09J11/04
C09J11/06
C09D133/00
B41M5/52 100
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162112
(22)【出願日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】109126968
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518150806
【氏名又は名称】▲達▼▲亜▼帆布(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】林▲義▼▲堅▼
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4F100
4J038
4J040
4L048
【Fターム(参考)】
2C056FC06
2H186BA11
2H186BB05X
2H186DA17
2H186DA20
4F100AA04A
4F100AA04C
4F100AA17A
4F100AA17C
4F100AA19A
4F100AA19C
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA06A
4F100CA06C
4F100CA07A
4F100CA07C
4F100CA22A
4F100CA22C
4F100CA30A
4F100CA30C
4F100CB01
4F100CB01A
4F100CB01B
4F100CB01C
4F100DC11
4F100DC11B
4F100DG12
4F100DG12B
4F100EJ82B
4F100JD05A
4F100JD05C
4F100JD14D
4F100JJ07A
4F100JJ07C
4F100JL16
4F100JN13A
4F100JN13C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4J038CG001
4J038PB11
4J038PC08
4J038PC10
4J040DF011
4J040HA136
4J040HA286
4J040HC25
4J040JA02
4J040KA29
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA43
4J040LA07
4J040LA11
4J040MA10
4J040MB02
4J040NA21
4L048AA15
4L048BA06
4L048DA24
4L048DA35
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナーを提供する。
【解決手段】繊維の基布層20は、ポリプロピレン(PP)の経糸21及び緯糸22が縫製されて形成された網状縫製物である。第一防水耐火接着層30及び第二防水耐火接着層40は、水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤(PA)が繊維の基布層20の第一表面24及び第二表面25にそれぞれ塗布された薄膜層であり、水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤がメッシュ23に浸み込んでいる。また、主にアクリル樹脂を含む吸水性塗料であるインク吸収コーティング層50が第二防水耐火接着層40に塗布されており、デジタルインクジェットバナー塗料を吸着する。本発明は、PVCを含まず無毒であり、インク吸収効果に優れ、軽量であり、コストを節約でき、環境保護性能に優れる。特に屋内外の広告、装飾等の用途に適用され、且つ医療グレードの使用規定に適合する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルインクジェットプリント用の環境保護バナーとして用いられるポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナーであって、
ポリプロピレン(PP)の経糸及び緯糸が縫製されて形成された網状縫製物であり、基本重量が120~155g/m2(gsm)の間の範囲内であり、厚さが0.2~0.8mmの間の範囲内であり、第一表面及び前記第一表面の反対面である第二表面を有するメッシュを有する繊維の基布層と、
水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤が前記繊維の基布層の第一表面及び第二表面にそれぞれ塗布されてなる薄膜層であり、前記水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤が前記メッシュに浸み込んでおり、且つ前記繊維の基布層の第一表面及び第二表面が被覆されて厚さが各々0.2~0.8mmとなっている第一防水耐火接着層及び第二防水耐火接着層と、
を備え、
前記水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤は、全ての組成成分の含量の和である100wt%を基準とすると、
基本重量が100~130g/m2(gsm)の範囲内である50~65wt%の水性ポリアクリレート(Polyacrylate、略称PA)と、
20~30wt%の耐火ペーストと、
7~10wt%の増白剤と、
3~10wt%の水と、
1~3wt%の助剤と、を含む成分で構成され、
前記環境保護インクジェットバナーの完成品の基本重量は180~300g/m2(gsm)の間の範囲内であることを特徴とするポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項2】
アクリル樹脂を含む吸水性塗料であるインク吸収コーティング層を更に備え、
前記インク吸収コーティング層は前記第二防水耐火接着層に塗布されており、その厚さは0.01~0.15mmの間の範囲であり、上面にデジタルインクジェットバナー塗料を吸着することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項3】
前記耐火ペーストは、リンを主とする添加剤と、アンチモンを主とする添加剤と、臭素を主とする添加剤と、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、コロイド状五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、メタアンチモン酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニア、リン酸二アンモニウム、スルファミン酸、スルファミン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、またはアルミナ水和物のうちの少なくとも1つと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項4】
前記増白剤は、蛍光増白剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項5】
前記助剤は、紫外線安定剤、抗酸化剤もしくは帯電防止剤のうちの何れか1つ、またはそれらの組み合わせによる構成を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項6】
前記繊維の基布層の厚さは0.3mmであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項7】
前記第一防水耐火接着層及び第二防水耐火接着層の厚さは0.3mmであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項8】
前記インク吸収コーティング層の厚さは0.02mmであることを特徴とする請求項2に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【請求項9】
前記第一防水耐火接着層表面に遮光層が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナーに関し、より詳しくは、PVCを含まず無毒であり、且つインク吸収性、耐火性、及び防水性という特性を有する環境保護インクジェットバナーに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、広告や商業施設の日よけや日よけルーフに応用する材料の多くは帆布であり、帆布は展示、日よけ、及び雨除けの効果を有する。従来の広告材料は、例えば特許文献1-3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案CN2650286Y明細書
【特許文献2】中国実用新案CN2704040Y明細書
【特許文献3】中国実用新案CN291192334Y明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最初期のPE縫製帆布は、PE布テープを経緯交錯することで単色またはストライプ柄の縫製層を形成しているが、縫製層に防水性がないため、表面にラミネート層を塗布して防水機能を達成している。これは比重が軽いという利点を有するが、ラミネート層は縫製層の表面に付着させにくい上に、一層の薄い層しかなく、加えてこれ自体の材質の柔軟性が不足している。そのため、PE帆布が折り曲げられたりぶつかったりすると、折り曲がった箇所のラミネート層が極めて容易に破損したり剥落してしまい、PE帆布の防水機能が失われるという最大の欠点が存在した。
【0005】
このために図1及び図2に示されるPVC帆布10が誕生した。これは中間の繊維基材層11の上下表面にPVC12、13を接着または熱圧着することで構成し、引張強度が高く、防水性に優れているという特徴を有する。防水日よけ及び広告用壁布として使用すると、PE壁布は耐用性が低く、損傷しやすいという問題点を確実に解決する。しかしながら、PE壁布の比重は約1であるが、PVC壁布20の比重は約1.4であり、ゆえに重量をPE壁布よりも40%以上重くせねばならなかった。また、PVCはポリ塩化ビニルの略称であり、英語ではPolyvinylchlorideと書き、国際環境NGOグリーンピースからは「有毒プラスチック」と呼ばれている。安価で製造が簡単であるため、PEに次ぐ製造量を誇る2番目に多く使用されているプラスチックであり、我々の生活の中で広く使用されており、環境や身体の健康に重大な脅威を与えている。
【0006】
さらに、PVCは5大汎用プラスチック(PE、PVC、PP、PS、ABS)のうちで唯一塩素を含むプラスチックである。塩素を含んでいるため、可塑剤を添加して柔軟性を改変している。可塑剤以外、PVCは熱安定性が非常に低いという問題もある。PVC製品は太陽や高温環境により分解してしまうため、通常は鉛、カドミウム、亜鉛等の重金属の安定剤を添加する必要があった。このため、PVCはPVCのみではなく、健康及び環境にとって有害な可塑剤及び安定剤も含んでいる。いかなる物質も添加していないPVC自体は無毒であるが、用途がなかった。
【0007】
このため、国際環境NGOグリーンピースがPVCを「有毒プラスチック」と呼ぶのは、いかなる添加剤も含まないPVC自体を指しているのではないが、たとえ添加剤を含むPVC製品を指していたとしても、原料の採集から始まり、製造、使用、廃棄までのライフサイクルの全ての段階において環境及び人体の健康に被害を与えている。
【0008】
但し、現在世界の屋外広告の多くはポリ塩化ビニル(PVC)コーティングメッシュ生地をデジタルインクジェットバナーとして採用しており、先行の特許文献1-3中に公開される広告材料ではポリ塩化ビニル(PVC)材料を大量に採用している。その使用量はとめどなく増加しており、他の多くの屋外広告宣伝方式を代替している。市場での流通を促進し、大衆に消費を促し、都市空間を美化し、都市の雰囲気を作り出す等のため、屋外広告は他では代用できない作用を発揮し続けている。
【0009】
また、広告業は情報の更新が速い業界であり、一般的な屋外広告の使用期限は極端に短く、長くても半年であり、短ければ数日である。PVCコーティングメッシュ生地をデジタルインクジェットバナーとして使用した後の処理は難しく、PVCの色艶は鮮やかで、耐腐食性があり、耐用性が高いが、熱安定性及び耐光性が低く、100℃以上の環境や長時間太陽光に晒されると分解して塩化水素を発生してしまう。このため、プラスチックを製造する際には安定剤、増塑剤、老化防止剤等のいくつかの有毒な補助材料を添加して耐熱性、靭性、展延性等を強化している。純粋なPVCの密度は1.4g/cm3であり、増塑剤等を添加したPVCの密度は一般的に1.15~2.00g/cm3である。但し、PVC内のこれらの有害な添加剤及び増塑剤が染み出したり気化したりすることで生物の内分泌に干渉し、生殖機能に影響を与え、癌のリスクを高める。このため、一部の増塑剤はすでにEUにおいて高懸念物質に指定され、使用が全面的に禁止されている。また、PVCは水で縮むという欠点もある。
【0010】
なお、PVCコーティングメッシュ生地を使用した後の処理方法は一般的に下記の3種類がある。
1、分離法:欠点としてPVCをメッシュ生地に貼付した後に分離しにくくなる点が挙げられる。
2、埋立法:欠点としてPVC自体数十年経たなければ分解せず、分解後の物質が土壌や水源を汚染する点が挙げられる。
3、焼却法:欠点としてPVCの燃焼中に発がん性のあるダイオキシン(Dioxin)を放出し、大気を汚染する点が挙げられる。
【0011】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナーを提供することにある。すなわち、繊維の基布層と同時に耐火性、防水性、及びインク吸収コーティング層を有する複合構造を形成し、壁布にPVCを含まず無毒である構造を形成する。
【0013】
本発明の他の目的は、ポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナーを提供する。比重が1未満であるという物理的構造特性を有し、構成するインクジェットバナーの布構造の比重がPVC壁布と比べて35%以上減少し、軽量で操作と使用が便利である。また、高い引張強度及び極めて優れた防水性を維持するという効果を有する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナーは、繊維の基布層と、第一防水耐火接着層及び第二防水耐火接着層と、を備える。
【0015】
繊維の基布層は、ポリプロピレン(PP)の経糸及び緯糸が縫製されて形成された網状縫製物であり、基本重量が120~155g/m2(gsm)の間の範囲内であり、厚さが0.2~0.8mmの間の範囲内であり、第一表面及び前記第一表面の反対面である第二表面を有するメッシュを有する。
【0016】
第一防水耐火接着層及び第二防水耐火接着層は、水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤が前記繊維の基布層の第一表面及び第二表面所にそれぞれ塗布されてなる薄膜層であり、前記水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤が前記メッシュに浸み込んでおり、且つ前記繊維の基布層の第一表面及び第二表面が被覆されて厚さが各々0.2~0.8mmとなっている。
【0017】
前記水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤は、全ての組成成分の含量の和である100wt%を基準とすると、
基本重量が100~130g/m2(gsm)の範囲内である50~65wt%の水性ポリアクリレート(Polyacrylate、略称PA)と、
20~30wt%の耐火ペーストと、
7~10wt%の増白剤(Brightener)と、
3~10wt%の水と、
1~3wt%の助剤と、を含む成分で構成され、
前記環境保護インクジェットバナーの完成品の基本重量は180~300g/m2(gsm)の間の範囲内である。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、次のような効果がある。
本発明の環境保護インクジェットバナーは、従来のPVCバナーと比較し、重量が軽く、刺激臭がなく、身体に無害であり、非アレルギー性であり、無毒である等の特性を有する。適用可能なインクの種類も多く、従来のPVCバナーはUV、Latex、Solvent、Ecosolvent等のインクジェットプリンターに適用可能であるが、本発明の環境保護インクジェットバナーもこれら全てに適用可能である。また、本発明は可塑剤を使用せず、保存の品質保持期間は1年以上あり、埋立や焼却を行っても大きな汚染を引き起こすことがない。塗料は分解され、リサイクル可能であり、耐熱性は-40℃~90℃である等の効果を促進する。
本明細書及び図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来のPVC帆布を示す外観概略図である。
図2】従来のPVC帆布を示す断面図である。
図3】本発明の好ましい実施形態の構成を示す傾斜断面図である。
図4A図3(4A部)の繊維の基布層拡大構成図である。
図4B】繊維の基布層の他の可能な実施形態の拡大構成図である。
図5A】本発明の繊維の基布層の一実施例を示す断面図である。
図5B】本発明のポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤が繊維の基布層に浸透する断面図である。
図6】本発明の好ましい実施形態の構成を示す断面図である。
図7】本発明の他の可能な実施形態の構成を示す断面図である。
図8】本発明の環境保護インクジェットバナーでインクジェットを行う使用状態の参照図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0021】
以下、図3~8を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。本発明のポリプロピレン織物環境保護インクジェットバナー60の好ましい実施例は、繊維の基布層20と、第一防水耐火接着層30と、第二防水耐火接着層40と、を備えている。繊維の基布層20はポリプロピレン(PP)の経糸21及び緯糸22が縫製されて形成された網状縫製物である(図4A参照)。当然ながら図4Bに示される縫製法で網状縫製物を構成する。その基本重量は120~155g/m2(gsm)の間の範囲内であり、厚さは0.2~0.8mmである。繊維の基布層20は高密度のメッシュ23及び高い引張強度を有する。メッシュ23は、第一表面24及び第一表面24の反対面である第二表面25を有する。本実施例では繊維の基布層20の厚さは最も好ましくは0.3mmであるが、但しこれに限定しない。
【0022】
また、第一防水耐火接着層30及び第二防水耐火接着層40は水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤を繊維の基布層20の第一表面24及び第二表面25で構成する薄膜層にそれぞれ塗布し、水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤をメッシュ23に浸み込ませ、且つ繊維の基布層20の第一表面24及び第二表面25を被覆し、第一防水耐火接着層30及び第二防水耐火接着層40の厚さを各々0.2~0.8mmの間の範囲とする。最も好ましくは、第一防水耐火接着層30及び第二防水耐火接着層40の厚さを各々0.3mmとするが、但しこれに限定しない。
【0023】
水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤は、全ての組成成分の含量の和である100wt%を基準とすると、50~65wt%の水性ポリアクリレート(Polyacrylate、略称PA)と、20~30wt%の耐火ペーストと、7~10wt%の増白剤(Brightener)と、3~10wt%の水と、1~3wt%の助剤と、を含む成分で構成される。主材料である水性ポリアクリレートの基本重量は100~130g/m2(gsm)の間の範囲内である。これにより、環境保護インクジェットバナー60の完成品の基本重量が180~300g/m2(gsm)の間の範囲内となる。
【0024】
本発明に使用する水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤(PA)は、防水性、難燃性等の多種類の機能を有する。ポリアクリル酸塩系コーティング層接着剤(PA)は一般的に全て硬成分(ポリメタクリレート等)及び軟成分(ポリアクリル酸ブチル等)の共重合により形成される。ポリアクリレートコーティング層の主要なモノマーとしてアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等を含む。防水性能を高めるため、必要であればアクリルアミド及びアクリロニトリルが添加され、重合開始剤としては一般的に過酸化物(ペルオキソ二硫酸カリウム等)が用いられる。
そこで、本発明に使用する水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤(PA)は、1、耐候性が高く、黄ばみにくい、2、透明性及び適合性が高く、有色コーティング層製品の生産に適する、3、耐水洗性が高い、4、粘着力が強い、5、低コストである、等の機能を向上する特徴を有する。
【0025】
本実施例では、耐火ペーストは、リンを主とする添加剤と、アンチモンを主とする添加剤と、臭素を主とする添加剤と、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、コロイド状五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、メタアンチモン酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニア、リン酸二アンモニウム、スルファミン酸、スルファミン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、またはアルミナ水和物のうちの少なくとも1つと、を含む。但しこれに限定しない。
【0026】
本実施例では、増白剤は蛍光増白剤(Optical Brightening Agents、OBA)を含む。これは蛍光増白剤、分散剤、及び水で構成し、蛍光増白剤はスチルベントリアジン系化合物であり、分散剤はメチレン-2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム系化合物であるが、但しこれに限定しない。蛍光増白剤の光学作用により製造する環境保護インクジェットバナー60の白色度を高めている。
【0027】
本実施例では、助剤は、紫外線安定剤、抗酸化剤もしくは帯電防止剤のうちの何れか1つ、またはそれらの組み合わせによる構成を含む。
【0028】
本実施例では、主にアクリル樹脂を含む吸水性塗料であるインク吸収コーティング層50を更に備える。インク吸収コーティング層50は、第二防水耐火接着層40に塗布され、その厚さは0.01~0.15mmである。インク吸収コーティング層50の上面51にはデジタルインクジェットバナー塗料を吸着する。インク吸収コーティング層50の厚さは最も好ましくは0.02mmである(図6参照)。
【0029】
図7は本発明の他の可能な実施形態の構成を示す断面図である。第一防水耐火接着層30の表面には遮光層80が塗布されるが、但しこれに限定しない。
【0030】
図8は本発明の環境保護インクジェットバナー60で広告インク70にインクジェットを行う使用状態の参照図である。インク吸収コーティング層50を広告インク70にインクジェットを行った後、インク吸収機能を有する。クリアラッカー層または保護層を別途インクジェットする必要がなく、且つインクジェット後の視覚効果及び質感が市場に存在する従来のバナーよりも優れる。
【0031】
本発明の環境保護インクジェットバナー60に使用するPP繊維の基布層20が高密度のメッシュ23及び高い引張強度を有する。第一防水耐火接着層30及び第二防水耐火接着層40は、水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤が繊維の基布層20の第一表面24及び第二表面25にそれぞれ塗布されてなる薄膜層である。PP繊維は無毒、無臭、無味の乳白色の高結晶性重合体であり、従来の全てのプラスチック中で最軽量の品種の1つであり、密度はわずか0.90~0.91g/cm3であり、これはPVCの密度の60%前後である。通常のプラスチックではポリアクリル酸樹脂系の耐熱性が最も高く、その熱変形温度は80~100℃であり、同時に良好な耐応力亀裂性及び高い湾曲疲労寿命を有する。また、インク吸収コーティング層50は主にアクリル樹脂で構成され、ポリアクリル酸樹脂系が適切に配合されることでインク吸収特性を有する。これにより、本発明の壁布環境保護インクジェットバナー60が繊維の基布層20に耐火性、防水性、及びインク吸収コーティング層を有する複合構造を形成する。
【0032】
本発明の上述の環境保護インクジェットバナー60は主に、120~155gsmの間の範囲内のPP繊維の基布層20に第1種類の配合が加えられる。すなわち、100~130gsmの間の範囲内の50~65%(PA)の水性PAコーティング層接着剤に、20~30%の耐火ペースト、7~10%の増白剤、3~10%の水、及び1~3%の助剤が配合される。
【0033】
別の可能な実施形態では、環境保護インクジェットバナー60は、110~135gsmの間の範囲内のPP繊維の基布層20に第2種類の配合が加えられる。すなわち、水性PUコーティング層接着剤は50~70gsmの間の範囲内の70~85%の水性PUに、10~25%の水、及び1~2%の硬化剤が配合される。
【0034】
さらに別の可能な実施形態では、環境保護インクジェットバナー60は、100~120gsmの間の範囲内のPP繊維の基布層20に第3種類の配合が加えられる。すなわち、溶剤PUコーティング層接着剤は、50~70gsmの間の範囲内の70~80%の溶剤PUに、15~25%のブタノン(MEK)及び1~5%の硬化剤が配合される。
【0035】
なお別の可能な実施形態では、環境保護インクジェットバナー60は、120~140gsmの間の範囲内のPP繊維の基布層20に第4種類の配合が加えられる。すなわちPPコーティング層接着剤は、45~65gsmの間の範囲内の75~80%PPコーティング層に、15~25%の水及び1.5~2.5%の硬化剤が配合される。
【0036】
上述の第1種類~第4種類の配合の共通点は、全てPPメッシュを繊維の基布層20とし、第一防水耐火接着層30及び第二防水耐火接着層40は、水性PAコーティング層接着剤、水性PUコーティング層接着剤、溶剤PUコーティング層接着剤、PPコーティング層接着剤をそれぞれ配合したものであるという点である。本発明者は実際の試験を経て、全ての配合が実施可能であり、環境保護インクジェットバナー60を製造可能であることが分かった。さらに第1種類は、繊維の基布層20に水性ポリアクリル酸塩系織物コーティング層接着剤を加え、繊維の基布層20の第一表面24及び第二表面25で構成された環境保護インクジェットバナー60にそれぞれ塗布することが最も理想的である。
【0037】
また、本発明のいくつかの特徴及び効果は、以下のとおりである。
まず、本発明の環境保護インクジェットバナー60の構造は、EUが公告する実験室授権機構に送り、基準技術服務(上海)有限会社を通してSGSの検査を行った。EU規格の防火性能等級でEN13501-1-B-s1-d0基準の防火性能等級「B」を獲得し、製品の燃焼性能では、煙生成量の付加等級は「s1」を獲得した。また、燃焼滴下物/微粒子の付加等級は「d0」であった。そこで、本発明の環境保護インクジェットバナー60は、耐火等級安全性の高いEU規格に適合し、難燃性及び耐火性には疑いの余地がない。
【0038】
また、本発明の環境保護インクジェットバナー60は、PVCを含まず無毒であるという特性を有し、特に室内外の広告及び室内装飾に適用し、且つ医療グレードの使用規定に適合する。
【0039】
また、本発明の環境保護インクジェットバナー60の構造は、市場にある従来のPVCバナーと比較し、その重量が35%近く減少している。よって、軽く柔軟であり、着脱がさらに簡単に手早く行えるようになり、取り外しが容易になるという特性を有する。
【0040】
さらに、本発明の環境保護インクジェットバナー60の組み合わせ構造の強度が高く、所定の成形機の加工と組み合わせることで、環境保護インクジェットバナー60の幅(W)を顧客の要求に合わせてオーダーメイド可能となり、且つ最大幅(W)は5.0mに達する。こうして、好きな画像を選択してインクジェットを行えるようになる。よって、本発明の環境保護インクジェットバナー60はより高い適用性及び選択性を有する。
【0041】
本発明の環境保護インクジェットバナー60構造は、室内広告及び室内装飾に適用可能であるのみならず、欧州のTUVの「アレルギー性」及び「皮膚刺激性」の認証を通過しており、その試験レポートは以下の通りとなっている。
<1.アレルギー性試験>
試験環境:室温22℃~26℃;湿度:50%~70%
検査基準:ISO10993-10:2010
サンプル名称:001-白色壁布
検査動物:白色モルモット30匹、302.4g~362.8g、オス
浸出媒体:○110.9%の塩化ナトリウム浸出媒体、○2綿実油
陰性対照:同量の浸出媒体
浸出液調製:6cm2/mlの比率で70℃で24時間かけて2種類の媒体のサンプル浸出液をそれぞれ調製する
試験方法:最大線量測定法
試験工程:1.誘導:浸出液を動物の背中に対称に注射し、一周注射した後、注射部位に浸出液のパッチを貼付して48時間固定する。
2.励起:動物の腹側の毛を剃り浸出液のパッチを貼付して24時間固定する。
評価指標:パッチを取り除いた後に24時間及び48時間腹側の皮膚の紅斑水腫反応程度を観察する。
結果:48時間の観察期間内の対照群の皮膚の反応等級が0であり、試験群の皮膚の反応等級が0であり、アレルギー反応なし。
結論:ISO10993-10:2010の方法を参照すると、前記試験サンプルの浸出液の皮膚のアレルギー試験結果は要求を満たす。
<2.皮膚刺激試験>
試験環境:室温22℃~26℃;湿度:50%~70%
検査基準:ISO 10993-10:2010
サンプル名称:001-白色壁布
検査動物:健康なニュージーランドウサギ6匹、2.3kg~2.7kg、オス
浸出媒体:○10.9%の塩化ナトリウム浸出媒体、○2綿実油
陰性対照:同量の浸出媒体
接触経路:皮膚の貼付パッチ
接触時間:24時間
評価指標:24時間、48時間、及び72時間接触部位の皮膚組織の紅斑水腫反応の程度を観察する。
結果:貼付パッチを取り除いた後、24時間、48時間、及び72時間試験サンプルの0.9%の塩化ナトリウム注射液の浸出液の接触部位の皮膚組織の原発性刺激指数が0であり(平均スコアが0である)、綿実油浸出液の接触部位の皮膚組織の原発性刺激指数が0である(平均スコアが0である)。
【0042】
結論:ISO10993-10:2010の方法を参照すると、前記試験サンプル浸出液の皮膚刺激性試験結果は要求を満たす。
【0043】
上述の試験レポートは、本発明の環境保護型壁布60の構造が医療グレードの使用規定に適合することを証明する。これは従来のPVCバナーには達成不能な効果である。
【0044】
なお、従来のPVCバナーと比較し、本発明の環境保護インクジェットバナー60は、ポリプロピレン(PP)を繊維の基布層20として構成し、下記効果を有する。
1.本発明の環境保護インクジェットバナー60は、インクジェット後の効果は現在市場にある従来のバナーに相似する。
2.同じ強度では、本発明の環境保護インクジェットバナー60は、市場にある従来のバナーと比較して重量が半分に減少し、軽く柔軟であり、取り外しが簡単で手早く行える。
3.本発明の環境保護インクジェットバナー60は、材料が軽く、体積が小さく、輸送コストを大幅に減らす。
4.本発明の環境保護インクジェットバナー60は、いかなる添加剤も添加せずに零下40℃での耐寒性を達成する。前記基準の耐寒実験(ASTM D2136-2002)をすでに通過している。
5.本発明の環境保護インクジェットバナー60は、従来のバナーに使用するポリ塩化ビニル(PVC)と比較し、ポリプロピレンの製造が簡単であり、エネルギー消費量が少ない。ポリ塩化ビニル(PVC)は典型的なエネルギー消費が多い製品であり、炭化カルシウム法やエチレン法で作製したポリ塩化ビニル(PVC)は、エネルギー消費量が多く、コストが高く、現代の省エネ、排出量削減、有限資源の再利用というグローバルな趨勢には適合しない。
【0045】
また、前記ポリプロピレンを原材料とする環境保護バナーは、使用後の処理も下記環境保護要求を満たす。
1.本発明の環境保護バナー60は、容易に粉砕リサイクルが可能であり、且つ製品の包装ケース、植木鉢、本革バッグのハードタイプの芯地等の他のポリプロピレン製品として再生できる。
2.本発明の環境保護バナー60は、燃焼後に発生するガスが空気汚染を引き起こしにくい。
3.本発明の環境保護バナー60は、埋立分解しても他の有毒物質を発生して土壌及び水質を汚染することがない。
【0046】
上述の説明を総合すると、本発明の環境保護インクジェットバナー60は従来のPVCバナーと比較すると下記表1の通りとなる。
【0047】
【表1】
【0048】
上記分析表から明らかなように、本発明の環境保護インクジェットバナー60は、従来のPVCバナーと比較し、重量が軽く、手早く交換でき、刺激臭がなく、身体に無害であり、非アレルギー性であり、無毒である等の特性を有する。適用可能なインクの種類が多く、従来のPVCバナーではUV、Latex、Solvent、Ecosolvent等のタイプのインクジェットプリンターが適用可能であるが、本発明の環境保護インクジェットバナー60もこれら全てが適用可能である。また、本発明は可塑剤を使用せず、保存の品質保持期間は1年以上に達し、埋立や焼却を行っても大きな汚染に繋がらず、塗料が分解され、且つリサイクル可能であり、耐熱性は-40℃~90℃である等の効果を促進する。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
20 繊維の基布層
21 経糸
22 緯糸
23 メッシュ
24 第一表面
25 第二表面
30 第一防水耐火接着層
40 第二防水耐火接着層
50 インク吸収コーティング層
51 上面
60 環境保護インクジェットバナー
70 広告インク
80 遮光層
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8