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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031115
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】検体採取キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220210BHJP
   G01N 1/12 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N1/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065872
(22)【出願日】2021-04-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020134635
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日:令和3年1月23日 自社ホームページにて公開 http://rkk73.com/ http://rkk73.com/jirei/701/
(71)【出願人】
【識別番号】512195898
【氏名又は名称】株式会社臨床検査器材
(71)【出願人】
【識別番号】520299197
【氏名又は名称】公益財団法人神奈川県予防医学協会
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】杤久保 修
(72)【発明者】
【氏名】村主 弘和
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA29
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA19
2G052CA18
2G052DA04
2G052DA12
2G052DA27
2G052JA07
(57)【要約】
【課題】より便利な検体採取キットを提供する。
【解決手段】検体採取キットは、液状の検体Sを採取するために用いられる。検体採取キットは、容器1と、容器1の開口部10に装着自在なキャップ2と、採取具3と、を備える。採取具3は、キャップ2の貫通孔22に挿通されたスティック30と、キャップ2が開口部10に装着されたときに容器1内に位置するようにスティック30に設けられた検体吸収体31と、を備える。スティック30が、キャップ2に対して、第1方向X1に動かされると、検体吸収体31がキャップ2によって圧縮される。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の検体を採取するために用いられる検体採取キットであって、
一端に開口部を有する容器と、
前記開口部に装着自在なキャップと、
採取具と、を備え、
前記キャップは、
当該キャップが前記開口部に装着されたときに前記容器の軸線方向にのびるように形成された貫通孔を有しており、
前記採取具は、
前記貫通孔に挿通されたスティックと、
前記キャップが前記開口部に装着されたときに前記容器内に位置するように前記スティックに設けられた検体吸収体と、を備え、
前記スティックが、前記キャップに対して、前記検体吸収体が前記キャップに近接する第1方向に動かされると、前記検体吸収体が前記キャップによって圧縮されるようになっている、
ことを特徴とする検体採取キット。
【請求項2】
前記スティックの一部が、栓体部として構成され、
前記貫通孔の一部が、幅狭孔として構成され、
前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされて前記検体吸収体が前記キャップによって圧縮される際に、前記栓体部は、前記幅狭孔に圧入されて前記幅狭孔を閉栓する、
請求項1に記載の検体採取キット。
【請求項3】
前記スティックは、前記栓体部の前記第1方向側の端に連続して設けられ、前記栓体部から離れる方向に窄まるテーパー部を備える、
請求項2に記載の検体採取キット。
【請求項4】
前記スティックは、前記テーパー部の前記第1方向側の端の位置で破断容易に構成されている、
請求項3に記載の検体採取キット。
【請求項5】
前記採取具は、さらに、
前記スティックに設けられ、前記検体吸収体が圧縮された後に前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向にさらに動くのを規制するために前記キャップによって係止される引出ストッパを備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の検体採取キット。
【請求項6】
前記採取具は、さらに、
前記スティックに設けられ、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向と反対の第2方向に動くのを規制するために前記キャップによって係止される進入ストッパを備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検体採取キット。
【請求項7】
前記採取具は、さらに、
前記スティックに設けられ、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされる際に前記貫通孔内を移動し、前記検体吸収体が前記キャップによって圧縮されてから前記貫通孔を出るストッパを備え、
前記キャップは、さらに、
前記貫通孔から出た前記ストッパを係止して、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向と反対の第2方向に動くのを規制するための係止部を備える、
請求項1に記載の検体採取キット。
【請求項8】
前記ストッパは、前記貫通孔内を圧入状態で摺動するようになっており、
前記係止部は、前記貫通孔の前記検体吸収体に対する遠位端の周りに形成された前記貫通孔の延在方向に直角な平面である、
請求項7に記載の検体採取キット。
【請求項9】
前記ストッパが前記貫通孔を出た後に前記係止部によって係止されるように前記スティックが前記検体吸収体の復元力により前記第2方向に付勢されて、前記採取具が前記キャップに対して前記第1方向および前記第2方向にロックされるようになっている、
請求項8に記載の検体採取キット。
【請求項10】
前記ストッパは、前記採取具が前記キャップに対して前記第1方向および前記第2方向にロックされているときに、前記貫通孔の前記検体吸収体に対する遠位端を密閉する、
請求項9に記載の検体採取キット。
【請求項11】
前記ストッパが前記貫通孔から出るまで前記スティックが動かされる際に当該貫通孔から出て行く前記スティックの部分は、所定の位置において破断容易に構成されている、
請求項7から請求項10に記載の検体採取キット。
【請求項12】
前記キャップは、前記検体吸収体と対向する対向面を有しており、
前記検体吸収体は、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされる際に前記対向面に押し付けられることで圧縮される、
請求項1から請求項11に記載の検体採取キット。
【請求項13】
前記採取具は、前記キャップが前記開口部に装着されたときに前記容器内に位置する前記スティックの端に設けられた規制部を備え、
前記検体吸収体は、前記対向面と前記規制部との間に挟まれて圧縮される、
請求項12に記載の検体採取キット。
【請求項14】
前記検体吸収体は、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされる際に前記貫通孔内に圧入されることで圧縮される、
請求項1に記載の検体採取キット。
【請求項15】
前記検体吸収体は、スポンジである、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の検体採取キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液、尿、汗などの液状の検体を採取するために用いられる検体採取キットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のような検体採取キットが、唾液、尿、汗などの液状の検体を採取するために利用されている。検体採取キットは、一端に開口部を有するチューブ状の容器と、検体を採取するために用いられる採取具とを備える。採取具は、容器の開口部に着脱自在な栓部と、栓部に突設されたスティックと、スティックの先端に取り付けられた検体吸収体とを含む。検体吸収体は、例えばスポンジや綿球である。さらに、特許文献1の検体採取キットは、容器に収容される保持具を備える。
【0003】
例えば、被検者は、採取具を用いて、液状の検体を検体吸収体に吸収させる。被検者は、採取具を容器に結合して、検体吸収体を容器内に入れるとともに栓部によって容器を密閉する。
【0004】
特許文献1では、栓部を容器に装着する際に、検体吸収体が、容器内に予め収容しておいた保持具に押し付けられて、圧縮される。この圧縮により、検体吸収体に吸収された検体は、検体吸収体から取り出され、容器の閉底に流れ落ち、容器内に貯留される(特許文献1の図3図4等参照)。
【0005】
その後に、例えば、検査採取キットはその状態で検査技師へ郵送などの手段によって移動される。検査技師は、一体化した採取具および保持具を容器から取り出し、検体だけを収容した容器を得る。その後に、検査技師は、検体の検査作業に取り掛かる。
【0006】
特許文献1では、保持具の下部が容器に貯留された検体に浸る(特許文献1の図4A参照)。そのため、採取具および保持具を容器から取り出す際に、検体が保持具の下部から垂れ落ちて、外部環境を汚染しかねない。したがって、検査技師は、採取具および保持具を容器から取り出す際に、慎重にならざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-8485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、より便利な検体採取キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液状の検体を採取するために用いられる検体採取キットであって、
一端に開口部を有する容器と、
前記開口部に装着自在なキャップと、
採取具と、を備え、
前記キャップは、
当該キャップが前記開口部に装着されたときに前記容器の軸線方向にのびるように形成された貫通孔を有しており、
前記採取具は、
前記貫通孔に挿通されたスティックと、
前記キャップが前記開口部に装着されたときに前記容器内に位置するように前記スティックに設けられた検体吸収体と、を備え、
前記スティックが、前記キャップに対して、前記検体吸収体が前記キャップに近接する第1方向に動かされると、前記検体吸収体が前記キャップによって圧縮されるようになっている。
【0010】
前記スティックの一部が、栓体部として構成され、
前記貫通孔の一部が、幅狭孔として構成され、
前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされて前記検体吸収体が前記キャップによって圧縮される際に、前記栓体部は、前記幅狭孔に圧入されて前記幅狭孔を閉栓してもよい。
【0011】
前記スティックは、前記栓体部の前記第1方向側の端に連続して設けられ、前記栓体部から離れる方向に窄まるテーパー部を備えてもよい。
【0012】
前記スティックは、前記テーパー部の前記第1方向側の端の位置で破断容易に構成されてもよい。
【0013】
前記採取具は、さらに、
前記スティックに設けられ、前記検体吸収体が圧縮された後に前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向にさらに動くのを規制するために前記キャップによって係止される引出ストッパを備えてもよい。
【0014】
前記採取具は、さらに、
前記スティックに設けられ、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向と反対の第2方向に動くのを規制するために前記キャップによって係止される進入ストッパを備えてもよい。
【0015】
前記採取具は、さらに、
前記スティックに設けられ、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされる際に前記貫通孔内を移動し、前記検体吸収体が前記キャップによって圧縮されてから前記貫通孔を出るストッパを備え、
前記キャップは、さらに、
前記貫通孔から出た前記ストッパを係止して、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向と反対の第2方向に動くのを規制するための係止部を備えてもよい。
【0016】
前記ストッパは、前記貫通孔内を圧入状態で摺動するようになっており、
前記係止部は、前記貫通孔の前記検体吸収体に対する遠位端の周りに形成された前記貫通孔の延在方向に直角な平面でもよい。
【0017】
前記ストッパが前記貫通孔を出た後に前記係止部によって係止されるように前記スティックが前記検体吸収体の復元力により前記第2方向に付勢されて、前記採取具が前記キャップに対して前記第1方向および前記第2方向にロックされてもよい。
【0018】
前記ストッパは、前記採取具が前記キャップに対して前記第1方向および前記第2方向にロックされているときに、前記貫通孔の前記検体吸収体に対する遠位端を密閉してもよい。
【0019】
前記ストッパが前記貫通孔から出るまで前記スティックが動かされる際に当該貫通孔から出て行く前記スティックの部分は、所定の位置において破断容易に構成されてもよい。
【0020】
前記キャップは、前記検体吸収体と対向する対向面を有しており、
前記検体吸収体は、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされる際に前記対向面に押し付けられることで圧縮されてもよい。
【0021】
前記採取具は、前記キャップが前記開口部に装着されたときに前記容器内に位置する前記スティックの端に設けられた規制部を備え、
前記検体吸収体は、前記対向面と前記規制部との間に挟まれて圧縮されてもよい。
【0022】
前記検体吸収体は、前記スティックが前記キャップに対して前記第1方向に動かされる際に前記貫通孔内に圧入されることで圧縮されてもよい。
【0023】
前記検体吸収体は、例えばスポンジである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より便利な検体採取キッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1Aは、一実施形態に係る検体採取キットの容器を示し、図1Bは、その断面図である。
図2図2A図2Bは、一実施形態に係る検体採取キットのキャップおよび採取具を示し、図2Cは、図2Aの平面図、図2Dは、図2Bのストッパを含む部分の拡大図である。
図3図3A図3Bは、採取具の使用方法を説明する図であり、図3Cは、図3Aのストッパを含む部分の拡大図である。
図4図4Aは、一実施形態に係る検体採取キットの滴下キャップを示し、図4Bは、その断面図である。
図5図5A図5Bは、一実施形態に係る検体採取キットの使用方法を説明する図である。
図6図6A図6Bは、一実施形態に係る検体採取キットの使用方法を説明する図である。
図7図7は、一実施形態に係る検体採取キットの使用方法を説明する図である。
図8図8Aは、別の実施形態に係る検体採取キットの容器の断面図であり、図8Bは、別の実施形態に係るキャップおよび採取具を示す。
図9図9Aは、図8Bの採取具の使用方法を説明する図であり、図9Bは、検体吸収体および第2ストッパの取付例を示す。
図10図10A図10Bは、別の実施形態に係る検体採取キットの使用方法を説明する図である。
図11図11A、さらに別の実施形態に係る検体採取キットのキャップの断面図であり、図11Bは、図11Aのキャップの先端部分を拡大して示し、図11Cは、さらに別の実施形態に係る容器の断面図である。
図12図12Aは、さらに別の実施形態に係る検体採取キットの採取具を示し、図12Bは、図11Aのキャップとこれに組み込まれた状態の図12Aの採取具とを示す。
図13図13A図13Bは、さらに別の実施形態に係る検体採取キットの使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る検体採取キットが説明される。検体採取キットは、唾液、尿、汗などの液状の検体を採取するために用いられる。なお、図中に示される構成要素は必ずしも正寸ではなく、作用や機能を示すだけにすぎない。
【0027】
[第1実施形態]
図1A図1Bの通り、検体採取キットは、容器1を備える。容器1は、採取された検体を貯留するために用いられる。容器1は、チューブ形状であり、一端が開口し他端が閉口している。したがって、容器1は、その一端に開口部10を有し、その他端に閉底11を有する。開口部10にはフランジ100が形成されている。容器1は、実施形態では試験管である。容器1は、透明または半透明でよい。容器1は、例えば、ポリプロピレン(PP)のような樹脂で形成されてよい。
【0028】
図2A図2Bの通り、検体採取キットは、さらに、キャップ2および採取具3を備える。キャップ2は、容器1の開口部10に着脱自在に構成されている。このために、キャップ2は、装着部20を備える。装着部20は、開口部10に外嵌されるように構成された外筒部200と、開口部10に内嵌されるように構成された内筒部201とを備える。内筒部201の外周には少なくとも1つ、実施形態では2つの環状の突起202が形成されている。装着部20は頂部203を有しており、外筒部200および内筒部201は頂部203から突出している。
【0029】
図5Aの通り、容器1のフランジ100が外筒部200と内筒部201の間で頂部203に当接するまでキャップ2が開口部10に差し込まれることで、すなわち、外筒部200が開口部10に外嵌めされ、内筒部201が開口部10に内嵌されることで、キャップ2が開口部10に装着される。このとき、突起202が容器1の内面に密着し、頂部203がフランジ100に密着し、容器1とキャップ2との間の気密性が確保される。
【0030】
図2A図2Cの通り、キャップ2は、把持部21をさらに備える。把持部21は、装着部20の頂部203に続けて設けられている。把持部21は、中央部210と、中央部210を中心に等角度間隔で設けられた複数(例えば、3つまたは4つ、図2Cでは3つ)のリブ211とを備える。リブ211はそれぞれ装着部20から離れる方向に向かって窄まる略直角三角形状を有しており、これにより、被検者や検査技師などのユーザがキャップ2を把持しやすくなっている。ユーザは、キャップ2を操作するとき、また、キャップ2に組み込まれた採取具3を操作するとき、この把持部21を把持する。
【0031】
図2A図2Bの通り、キャップ2は、貫通孔22を有している。貫通孔22は、キャップ2が図5Aの通り開口部10に装着されたときに容器1の軸線c1(図1参照)の方向にのびるように形成されている。貫通孔22は、実施形態では、軸線c1と同一直線状になるように、把持部21の中央部210および装着部20の頂部203を貫通するように形成され、内筒部201の内部と連通している。
【0032】
図2A図2Bの通り、採取具3は、キャップ2に組み込まれている。採取具3は、貫通孔22に挿通されたスティック30を備える。スティック30は、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)のような樹脂で形成されてよい。
【0033】
採取具3は、さらに、キャップ2が図5Aの通り開口部10に装着されたときに容器1内に位置するようにスティック30に設けられた検体吸収体31を備える。検体吸収体31は、キャップ2の内筒部201の内直径より小さくかつ貫通孔22の直径より大きい直径を有する。検体吸収体31は、スティック30に設けられた固定部32によって固定部32に位置において固定されている。
【0034】
検体吸収体31は、液状の検体を吸収でき、圧縮可能であり、復元性を有する。液状の検体を吸収した検体吸収体31が圧縮されると、検体が検体吸収体31から取り出される。検体吸収体31が圧縮されたとき、元の状態に戻ろうとする復元力が作用する。検体吸収体31は、例えば、実施形態ではスポンジである。スポンジは、例えばポリビニルアルコール(PVA)などの樹脂で形成されてよい。検体吸収体31は、スポンジに代えて球綿などであってもよい。
【0035】
スティック30は、貫通孔22に沿ってキャップ2に対して移動可能に挿通されている。したがって、スティック30を、検体吸収体31がキャップ2に近接する第1方向X1(図2A)と、検体吸収体31がキャップ2から離間する第2方向X2(第1方向X1と反対の方向)とに沿って動かすことができる。
【0036】
採取具3は規制部33を有している。規制部33は、キャップ2が図5Aの通り開口部10に装着されたときに容器1内に位置するスティック30の端に設けられている。規制部33は、スティック30よりも大きい直径を有する。検体吸収体31は、規制部33に隣接する。規制部33は、検体吸収体31がスティック30から抜け出るのを防止するのとともに後述の通り検体吸収体31の圧縮を補助する。
【0037】
採取具3は、スティック30の中間部分(両端間の部分)に設けられたストッパ34を備える。ストッパ34は、実施形態ではスティック30に一体形成されているが、これに代えてスティック30とは別の部材としてスティック30に装着されてもよい。図2Dの通り、ストッパ34は、スティック30の直径より大きい直径の大径部340とスティック30の直径より小さい直径の小径部341とを有し、検体吸収体31に対して離間する方向(すなわち、図2Dにおいて上方向)に大径部340から小径部341へ窄まる略円錐台形状である。
【0038】
図2Dの通り、貫通孔22の検体吸収体31に対する近位端部は、ストッパ34を解除可能に受容しかつ保持する受容孔220として構成されている。実施形態の受容孔220は、頂部203に形成されており、ストッパ34の大径部340を含む部分を受容し保持している。これによって、採取具3がキャップ2に対して解除可能に保持される。以下、この状態を保持状態と称する。
【0039】
図2Dの通り、頂部203には、受容孔220を部分的に規定する規制片204が形成されており、規制片204は、ストッパ34が受容孔220から第2方向X2への移動するのを規制し、したがって、保持状態において、スティック30がキャップ2に対して第2方向X2へ動かされるのを規制する。
【0040】
また、キャップ2は、貫通孔22の検体吸収体31に対する近位端、すなわち受容孔220の周りにおいて頂部203によって規定され、検体吸収体31と対向する対向面205を備える。
【0041】
ストッパ34が圧入状態で貫通孔22内を摺動することができるように、貫通孔22の直径とストッパ34の直径が設定されている。すなわち、ストッパ34の大径部340の直径が貫通孔22の直径よりもわずかに大きいことによって、ストッパ34が貫通孔22内を圧入状態で摺動することができる。ストッパ34が受容孔220に受容かつ保持された状態でスティック30がキャップ2に対して第1方向X1に一定以上の力で動かされると、ストッパ34が受容孔220から出て貫通孔22に圧入し、圧入状態で貫通孔22内を摺動する。すなわち、採取具3を、その保持状態を解除してキャップ2に対して第1方向X1に動かすことができる。
【0042】
なお、スティック30のうちストッパ34より第1方向X1側の部分はプルバー300として機能する。ユーザは、プルバー300のキャップ2から突出している部分を把持してキャップ2に対して第1方向X1に引っ張ることで、上記のように採取具3をその保持状態を解除して第1方向X1に動かすことができる。
【0043】
そして、採取具3が第1方向X1に動かされ続けると、図3Aのように、検体吸収体31がキャップ2に当接してキャップ2によって圧縮されるようになっている。具体的には、検体吸収体31は、内筒部201内に進入して対向面205に押し付けられることで圧縮される。このとき、規制部33は、検体吸収体31がスティック30から取り外されるのを防止し、かつ、検体吸収体31を対向面205に押しつけるのを補助している。すなわち、検体吸収体31が対向面205と規制部33との間に挟まれ、これらによって圧縮される。
【0044】
貫通孔22内を圧入状態で摺動していたストッパ34は、検体吸収体31が上記のようにキャップ2によって圧縮されてから貫通孔22を出る。実施形態では、検体吸収体31は貫通孔22を通過することができないので、キャップ2によって圧縮されきると、スティック30を第1方向X1にそれ以上動かすことができなくなる。好ましくは、検体吸収体31が圧縮されきったタイミングで、ストッパ34が貫通孔22から出るようにするのがよい。
【0045】
キャップ2は、さらに、検体吸収体31がキャップ2によって圧縮されるまでスティック30が動かされた後に、スティック30がキャップ2に対して第2方向X2に動くのを規制するように、ストッパ34を係止するための係止部23を備える。実施形態では、係止部23は、貫通孔22の両端のうち検体吸収体31に対する遠位端の周りに形成され、貫通孔22の延在方向(第1および第2方向X1,X2)に直角な平面である。ストッパ34が圧入状態で貫通孔22を通るが、貫通孔22を一旦出ると、スティック30が第2方向X2に動かされたとしても、大径部340によって規定される面342(図3C)が係止部23としての平面によって係止されるので、スティック30をキャップ2に対して第2方向X2に移動させることができない。これにより、検体吸収体31を圧縮状態のままにすることができる。
【0046】
さらに、検体吸収体31の復元力によってスティック30がキャップ2に対して第2方向X2に付勢されて、ストッパ34(その面342)が係止部23(平面)に係止される。これにより、採取具3がキャップ2に対して第1および第2方向X1,X2にロックされる。以下、この状態をロック状態と称する。さらに、ロック状態のとき、ストッパ34は、図3Cの通り、貫通孔22の検体吸収体31に対する遠位端を密閉する。
【0047】
さらに、ストッパ34が貫通孔22から出るまでスティック30が動かされる際に当該貫通孔22から出て行くスティック30の部分は、その所定の位置において破断容易に構成されている。実施形態では、プルバー300を採取具3から分離できるようになっている。小径部341(図3C参照)が脆弱な部分を構成し、したがって、採取具3をロック状態にした後に、プルバー300を左右に倒すことにより、図3Bの通り、スティック30を小径部341の位置で破断でき、それにより、プルバー300を採取具3から分離することができる。
【0048】
図4A図4Bの通り、検体採取キットは、容器1内に収容された検体を滴下するために用いられる滴下キャップ4を、オプションとして、さらに備える。滴下キャップ4は、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)などの樹脂で形成されてよい。
【0049】
滴下キャップ4は、容器1の開口部10に装着可能である。このために、滴下キャップは、キャップ2の装着部20と同様の構成の装着部40を備える。したがって、装着部40は、外筒部400、内筒部401、環状の突起402、及び、頂部403を備える。
【0050】
滴下キャップ4は、さらに、装着部40に隣接して設けられ、内筒部401の内部と連通する滴下チューブ41をさらに備える。滴下チューブ41は、チューブ状の操作部410と、操作部410に続いて設けられたノズル411とからなる。操作部410は、外力がその外周から内側に向って加えられることによりその容積が減少される。したがって、操作部410内に検体が収容されているときに操作部410が押圧されると、検体をノズル411から出すことが、すなわち滴下することができる。
【0051】
以下、第1実施形態の検体採取キットの使用例が説明される。
検体採取キットが図5Aの状態で被検者や検査技師などのユーザに提供される。すなわち、キャップ2が容器1(開口部10)に装着されている。ストッパ34が受容孔220に受容され保持されており、採取具3がキャップ2に対して保持状態である。検体採取キットは滅菌されている。
【0052】
まず、被検者などのユーザが、キャップ2およびこれに組み込まれた採取具3を容器1から取り外す。次いで、ユーザが、把持部21を把持して採取具3を操作し、検体吸収体31が柔らくなるまで液状の検体を検体吸収体31に吸収させて、検体を採取する。この際も、採取具3は、キャップ2に対して保持状態である。
【0053】
採取後、ユーザは、キャップ2を容器1(開口部10)に再び装着する。そして、図5Bの通り、プルバー300をキャップ2および容器1に対して第1方向X1に引っ張って、ストッパ34を受容孔220から出して貫通孔22内に圧入させて摺動させ貫通孔22から出す。このスティック30の移動によって、検体吸収体31は、キャップ2(対向面205)に押し付けられて圧縮する。すなわち、採取具3を、その保持状態を解除しロック状態になるまでキャップ2に対して第1方向X1に移動させ、検体吸収体31を圧縮する。
【0054】
検体吸収体31は、検体を吸収しているので、圧縮されることで、検体S(図5B)が検体吸収体31から取り出され、容器1の閉底11へ流れ落ち、容器1内に貯留されていく。
【0055】
容器1とキャップ2との間は密閉されており、さらに、上述の通り、貫通孔22もストッパ34によって密閉される。これにより、検体Sを容器1内に密閉状態で収容することができる。コンタミを防止することができる。
【0056】
その後、ユーザは、スティック30を破断してプルバー300を採取具3から分離する(図6A)。採取具3(プルバー300)がキャップ2から大きく突出していると、その後の郵送などの移送や操作において邪魔になる。プルバー300を分離できることでその後の移送や取扱いが容易になる。
【0057】
その後、検査技師などのユーザが、図6Aの状態の検体採取キットを受け取り、検査作業を始める。すなわち、キャップ2を(したがって、これに一体化された採取具3も)容器1から外して、検体Sの検査作業に取り掛かる。定量の検体Sが必要な場合は、図6Bの通り、ユーザは、付属の滴下キャップ4を容器1(開口部10)に装着する。次いで、ユーザは、図7の通り、容器1および滴下キャップ4を逆さまにして検体Sを操作部410内に移動させる。それから、ユーザは、操作部410を押圧して検体Sをノズル411から1滴ずつ滴下させる。その滴下数によって検体Sの量を調整することができる。
【0058】
特許文献1では、検体採取後、保持具の下部が容器内に貯留された検体に浸かっているので、採取具および保持具を容器から取り出すときに、保持具の下部から検体が垂れ落ちまたは飛散する虞があり、慎重にならざるを得ない。一方、実施形態のように、採取具3を引っ張って検体吸収体31を圧縮する構成であれば、図6Aの通り、採取具3を、容器1内に貯留された検体Sから離しておくことができる。したがって、検体Sが十分に検体吸収体31から取り出された(抽出された)後にキャップ2および採取具3を容器1から取り外せば、検体Sが採取具3やキャップ2から垂れ落ちたり飛散したりして外部環境を汚してしまう可能性は極めて低い。このように、実施形態の採取キットはより便利なもとなっている。
【0059】
特許文献1では、検体吸収体の圧縮のために、栓体を容器の開口部に装着して開口部を閉じる動作に伴って検体吸収体を容器の底に向う方向に保持具へ押し付ける必要があり、扱いにくい。本願の実施形態では、キャップ2を容器1の開口部10に装着してから採取具3を引っ張ることによって検体吸収体31を圧縮することができ、扱い易い。キャップ2で開口部10を閉じた状態で検体吸収体31を圧縮できるので、検体吸収体31の圧縮時において、検体Sが開口部10から飛散して外部環境を汚す可能性は極めて低い。このような点においても、実施形態の検体採取キットはより便利なものとなっている。
【0060】
検体吸収体31の圧縮後においては、係止部23およびストッパ34によって、採取具3を第2方向X2に移動できないようになっている。したがって、容器1を起立姿勢にしておけば、採取具3を、容器1内に貯留された検体Sに浸からせてしまうようなことを防げる。さらに、実施形態では、採取具3はロックされ、第2方向X2だけでなく第1方向X1にもキャップ2に対して動かないので、その後のキャップ2の取扱い易さを向上させている。
【0061】
また、実施形態では、検体吸収体31が内筒部201内に収容されており、内筒部201が検体Sの飛散を防止するよう機能し、かつ、その後のキャップ2の取扱い易さを向上させている。
【0062】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態が説明される。第1実施形態と同一または類似の構成については同一の符号が付され、その説明が省略される。
【0063】
第2実施形態では、図8Aの通り、容器1は、スピッツ管である。容器1の開口部10の外周には、雄ネジ101が形成されている。図8Bの通り、キャップ2の装着部20は、筒部206を備え、筒部206の内周面には雌ネジ207が形成されている。したがって、キャップ2は、図10Aの通り、雄ネジ101と雌ネジ207のネジ係合によって容器1の開口部10に装着することができ、これにより容器1とキャップ2との間の気密性が確保される。
【0064】
装着部20は、頂部203から突出する突出部208を有している。そして、この実施形態の貫通孔22は、装着部20(その突出部208・頂部203)および把持部21(その中央部210)を貫通するように形成されている。貫通孔22は、その一部が幅狭孔221として構成されている。貫通孔22は、本実施形態では、貫通孔22の検体吸収体31に対する遠位端部としての幅狭孔221と、当該遠位部分を除く部分として、幅狭孔221より幅広な、具体的には、幅狭孔221の直径より大きい直径の幅広孔222とからなる。両孔221,222の直径の差ゆえに、幅狭孔221と幅広孔222とによって段差223が形成されている。
【0065】
係止部23は、幅狭孔221の検体吸収体31に対する遠位端の周りに形成されて貫通孔22の延在方向に直角な平面として形成されている。具体的には、キャップ2の把持部21の先端面によって、より具体的には中央部210の先端面によって係止部23としての平面が形成されている。
【0066】
検体吸収体31は、キャップ2が容器1の開口部10に装着されたときに容器1内に位置するように、スティック30の一端に取り付けられている。第2実施形態の検体吸収体31は、ウレタンフォームのスポンジである。
【0067】
採取具3は、第1実施形態と同様の構成のストッパを第1ストッパ34として備える。さらに、採取具3は、さらに、第1ストッパ34と検体吸収体31との間でスティック30に設けられた第2ストッパ35を備える。
【0068】
第1ストッパ34(その大径部340)の直径は、幅広孔222の直径より小さく、幅狭孔221の直径より僅かに大きい。従って、スティック30がキャップ2に対して第1方向X1に動かされる際、第1ストッパ34は、幅広孔222内を移動し、それから幅狭孔221内を圧入状態で摺動するようになっている。
【0069】
第2ストッパ35は、実施形態では、スティック30とは別部材として構成され、スティック30に外嵌される筒形状であり、検体吸収体31に隣接している。第2ストッパ35は、筒部350と、筒部350の外周面に設けられた環状突起としての大径部351とを含む。第2ストッパ35の大径部351が、幅広孔222より僅かに大きい。これにより、第2ストッパ35は、幅広孔222内を圧入状態で摺動することができる。第2ストッパ35を、幅広孔222から幅狭孔221へ移動させようとしても段差223によって係止されるので、幅広孔222から幅狭孔221へ進入することができないようになっている。第1ストッパ34と第2ストッパ35との間隔は、幅狭孔221の長さと実質的に同じである。
【0070】
受容孔220は、幅広孔222の幅狭孔221とは反対側の端部に、すなわち突出部208の先端部に形成されている。第2実施形態の受容孔220は、第2ストッパ35(その大径部351)を解除可能に受容し保持する。第2ストッパ35が、受容孔220に受容され保持されていることにより、採取具3がキャップ2に対して解除可能に保持される。以下、この状態を、第2実施形態の保持状態と称する。なお、保持状態において、第1ストッパ34は幅広孔222内に位置している。
【0071】
採取具3が保持状態にあるときに、スティック30がキャップ2に対して第1方向X1に一定以上の力で動かされると、第2ストッパ35が受容孔220から出て幅広孔222内を圧入状態で摺動する。すなわち、保持状態を解除することができる。
【0072】
それから、スティック30が第1方向X1に動かされ続けると、図9Aのように、検体吸収体31が幅広孔222内に圧入されていき、これによって検体吸収体31が圧縮される。この間に、第1ストッパ34が幅広孔222内から幅狭孔221内へ移動し、幅狭孔内を圧入状態で摺動し、検体吸収体31が圧縮されてから幅狭孔221を出る。すると、第1ストッパ34および第2ストッパ35が幅狭孔221の両端側に位置する。
【0073】
この状態において、係止部23および第1ストッパ34が、スティック30の第2方向X2への移動を規制するのは第1実施形態と同様である。そして、スティック30をキャップ2に対して第1方向X1にさらに動かそうとしても、第2ストッパ35が段差223によって係止され幅狭孔221への進入が規制されるので、スティック30の第1方向X1への移動も規制される。したがって、第1及び第2ストッパ34,35が幅狭孔221の両端側に位置することで、採取具3がキャップ2に対して第1方向X1および第2方向X2にロックされる。この状態を、第2実施形態のロック状態と称する。
【0074】
検体吸収体31(スポンジ)および第2ストッパ35のスティック30への取付例を説明する。図9Bの通り、スティック30の一端は、二又になっており、2つの挟持片36が形成されている。まず、検体吸収体31の先端部を摘み、それから、当該先端部を挟持片36の間に差し込み、そして、筒状の第2ストッパ35をスティック30の他端からスティック30に通し、2つ挟持片36に外嵌めして、2つの挟持片36を拘束する。これにより、検体吸収体31の先端部が挟持片36によって強固に挟持される。
【0075】
以下、第2実施形態の検体採取キットの使用例が説明される。
【0076】
検体採取キットが図10Aの状態で被検者や検査技師などのユーザに提供される。すなわち、キャップ2が容器1(開口部10)に装着されている。採取具3がキャップ2に対して保持状態である。
【0077】
第1実施形態と同様に、キャップ2およびこれに組み込まれた採取具3を容器1から取り外して、検体吸収体31に液状の検体を吸収させて検体を採取する。その後、キャップ2を再び容器1に装着する。
【0078】
そして、ユーザがプルバー300を引っ張って採取具3をキャップ2に対して第1方向X1に移動させて、保持状態を解除し、図10Bの通りロック状態にする。この間に、検体吸収体31は、幅広孔222に圧入されることで圧縮され、この圧縮により、検体S(図10B)が検体吸収体31から出て行き、閉底11に流れ落ち、容器1内に貯留されていく。その後の使用方法は、第1実施形態と同様であるため省略される。このように、本実施形態では、検体Sが検体吸収体31から搾取される。
【0079】
第2実施形態の検体採取キットも、第1実施形態と同様に、従来よりも便利なものとなっている。
【0080】
第2実施形態では、採取具3がロック状態にあるときに、図10Bの通り、検体吸収体31が圧入状態で幅広孔222内に完全に収容されている。これは、検体Sの飛散を防止するよう機能し、かつ、その後のキャップ2の取扱い易さを向上させている。
【0081】
第2実施形態においては、図10Bの通り、採取具3がキャップ2に対してロック状態にあるときに、第1ストッパ34または第2ストッパ35のうち少なくともどちらか一方が幅狭孔221を気密に閉じることが好ましい。これにより、この実施形態でも、第1実施形態と同様に、検体Sを容器1内に密閉状態で収容することができる。
【0082】
なお、図9Bの通り、検体吸収体31の端部を挟持してスティック30に取り付けていることは、検体吸収体31が幅広孔222にスムーズに圧入されるのを容易にするためである。
【0083】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態が説明される。上記の各実施形態と同一または類似の構成については同一の符号が付され、その説明が省略される。
【0084】
図11Cの通り、この実施形態の容器1もスピッツ管である。容器1の開口部10の外周には、2条の雄ネジ101が形成されている。図11Aの通り、この実施形態のキャップ20では、その装着部20の筒部206の内周面に、2条の雌ネジ207が形成されている。キャップ2は、さらに、頂部203から突出する環状の突起209をさらに備える。キャップ2は、図13Aの通り、雄ネジ101と雌ネジ207のネジ係合によって容器1の開口部10に装着することができる。キャップ2が開口部10に装着されたとき、開口部10の開口縁が筒部206と突起209との間に挿入され頂部203に当接する。これにより容器1とキャップ2との間の気密性が確保される。
【0085】
貫通孔22は、第2実施形態と同様であり、装着部20(その突出部208・頂部203)および把持部21(その中央部210)を貫通するように形成されて、その一部が幅狭孔221として構成されている。幅狭孔221は、この実施形態でも、貫通孔22の検体吸収体31に対する遠位端部(第1方向X1側の端部)として構成されており、残りの部分が幅広孔222として構成されている。幅狭孔221は、図11Bにはっきりと示されている。
【0086】
図12Aは、この実施形態の採取具3を示す。スティック30の一部が栓体部301として構成されている。具体的には、スティック30の第2方向X2側の部分が、栓体部301として構成されており、第1方向X1側の部分が、プルバー300として構成されている。検体吸収体31は、スポンジであり、検体を吸収する前は比較的硬いが、液状の検体を吸収すると柔らかくなり大きく圧縮できる。検体吸収体31は、栓体部301の第2方向X2側の端部に設けられて、規制部33に隣接している。
【0087】
栓体部301の横断面は、幅狭孔221の横断面よりもわずかに大きく幅広孔222の横断面より小さく構成されている。具体的には、実施形態の栓体部301は、円柱形状であり、その直径が、幅狭孔221の直径よりわずかに大きく、幅広孔222の直径よりも小さい。また、プルバー300の横断面は、貫通孔22の、具体的に幅狭孔221の横断面よりも小さい。すなわち、実施形態の円柱形状のプルバー300の直径は、貫通孔22(幅狭孔221)の直径よりも小さい。検体吸収体31は、貫通孔22(幅広孔222)よりも幅広であり、貫通孔22(幅広孔222)を通過できず、突出部208の先端に設けられた対向面205にぶつかるようになっている。
【0088】
スティック30は、栓体部301の第1方向X1側の端に連続して設けられたテーパー部302を備える。すなわち、テーパー部302は、プルバー300と栓体部301との間に設けられている。テーパー部302は、栓体部301から離れプルバー300に近づく方向(すなわち、第1方向X1)に窄まり、実施形態では円錐台形状を有する。テーパー部302は、第1方向X1側の端(すなわち、プルバー300との境界)の位置302aでは、プルバー300よりも直径が小さくなっている。これによって、スティック30は、当該位置302aにおいて、他の実施形態と同様、他の位置に比べて脆弱になっており、破断容易である。
【0089】
採取具3は、スティック30に設けられた引出ストッパ37をさらに備える。実施形態の引出ストッパ37は、栓体部301の外周に一体的に形成され、環状を有しており、その直径は、貫通孔22の、より具体的には幅広孔222の直径よりも大きい。こうして、引出ストッパ37は、貫通孔22を通過できず、キャップ2によって、具体的には突出部208の先端の対向面205によって係止可能に構成されている。引出ストッパ37は、検体吸収体31の内側に位置する。
【0090】
採取具3は、進入ストッパ38をさらに備える。進入ストッパ38は、プルバー300の外周に一体的に形成されている。進入ストッパ38の直径は、貫通孔22の、具体的には幅狭孔221の直径よりも大きい。図12Bは、キャップ2とこれに組み込まれた採取具3を示す。採取具3が組み込まれた状態において、進入ストッパ38は、キャップ2に対して第1方向X1側に位置している。こうして、進入ストッパ38が、キャップ2に、具体的には係止部(係止面)23によって係止可能に構成されている。
【0091】
したがって、採取具3が、進入ストッパ38が係止部23によって係止される位置からそれ以上、キャップ2に対して第2方向X2に動くことが規制される。これにより、検体採取の作業時に、採取具3が必要以上にキャップ2に対して第2方向X2に動くのを防止する。また、キャップ2が容器1に装着されているときに、採取具3が、必要以上に容器1内に進入するのを防止する。
【0092】
以下、第3実施形態の検体採取キットの使用例が説明される。
【0093】
検体採取キットが図13Aの状態でかつ滅菌状態で被検者や検査技師などのユーザに提供される。すなわち、キャップ2が容器1(開口部10)に装着されている。ユーザは、キャップ2およびこれに組み込まれた採取具3を容器1から取り外して、検体吸収体31に液状の検体を吸収させて検体を採取する。その後、キャップ2を再び容器1に装着する。
【0094】
そして、ユーザが、図13Bの通り、プルバー300を引っ張って採取具3をキャップ2に対して第1方向X1に動かす。これにより、検体吸収体31が、キャップ2に、具体的には対向面205に押し付けられ、圧縮される。より具体的には、検体吸収体31は、対向面205と規制部33との間に挟まれて圧縮される。検体吸収体31の圧縮によって、検体Sが検体吸収体31から取り出され、容器1の閉底11へ流れ落ち、容器1内に貯留されていく。
【0095】
採取具3がキャップ2に対して第1方向X1に動かされて検体吸収体31が圧縮される際に、栓体部301が、幅狭孔221に圧入されて、幅狭孔221を閉栓する。この栓体部301の幅狭孔221への圧入は、検体吸収体31がある程度圧縮されてから開始されることが好ましい。というのも、栓体部30が圧入され始めてからは、ユーザはプルバー300を強い力で引っ張る必要があるからである。この圧入により、幅狭孔221の内周面と栓体部301の外周面が互いに密着して、幅狭孔221が密閉される。容器1とキャップ2との間は密閉されており、さらに、貫通孔22も幅狭孔221によって密閉される。これにより、検体Sを容器1内に密閉状態で収容することができる。検体Sの飛散や、コンタミを防止することができる。
【0096】
テーパー部302は、栓体部301の幅狭孔221への圧入を容易にせしめる。図13Bの通り、検体吸収体31が圧縮され栓体部301が幅狭孔221に挿通されると、テーパー部302が貫通孔22から出る。ユーザは、テーパー部302が貫通孔22から出てきたことを、検体吸収体31が十分に圧縮されたことの目印とすることができ、これに基づいてプルバー300を引っ張るのをやめればよい。
【0097】
検体吸収体31が圧縮され図13Bのようにテーパー部302がキャップ2の外部に現れてからは、採取具3がキャップ2に対して第1方向X1に動かされようとしても、引出ストッパ37が、キャップ2(対向面205)によって係止される。これにより、採取具3が検体吸収体31の十分な圧縮後に、キャップ2に対してさらに第1方向X1に動くのが規制される。
【0098】
栓体部301が幅狭孔221に圧入されていることで、採取具3はキャップ2に対して保持された状態である。検体吸収体31の復元力は大きくなく、この保持力のほうが十分に大きく設定されているので、復元力が作用したとしても採取具3がキャップ2に対して第2方向X2に動かないようになっている。そのため、容器1の密閉状態が維持されるし、検体吸収体31も圧縮状態のままである。ユーザが、強い力で採取具3を動かさない限り、採取具3が第2方向X2に戻ることはない。したがって、検体Sを含む容器1の密閉状態を問題なく維持できる。
【0099】
プルバー300がキャップ2から大きく突出するが、ユーザがスティック30を破断してプルバー300を採取具3から分離すればよいことは、先の実施形態と同様である。その後の使用方法も、先の実施形態と同様であるため省略される。
【0100】
以上の通り、第3実施形態の検体採取キットも、他の実施形態と同様に、従来よりも便利なものとなっている。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明されたが、本発明は、上記実施形態に当然ながら限定されるものではない。
上記の例示の検体採取キットにおいて、貫通孔22(幅狭孔221、幅広孔222)、スティック30(プルバー300、栓体部301、テーパー部302)、各ストッパ34、35、37、38は、それぞれ、その横断面が円形状であるが、これらは、その役割を果たす限りにおいて、例えば多角形状などの断面を有してよい。
【符号の説明】
【0102】
1 容器
10 開口部
2 キャップ
20 装着部
205 対向面
22 貫通孔
220 受容孔
221 幅狭孔
222 幅広孔
23 係止部(平面)
3 採取具
30 スティック
301 栓体部
302 テーパー部
31 検体吸収体
34 ストッパ(第1ストッパ)
340 大径部
35 第2ストッパ
37 引出ストッパ
38 進入ストッパ
4 滴下キャップ
S 検体
X1 第1方向
X2 第2方向
c1 容器の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13