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特開2022-31131機械的刺激応答性発光材料、ポリマー、機械的応力センサ、機械的応力を検出する方法、ポリマーの製造方法、銅錯体およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031131
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】機械的刺激応答性発光材料、ポリマー、機械的応力センサ、機械的応力を検出する方法、ポリマーの製造方法、銅錯体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/34 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
C08F20/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021100546
(22)【出願日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020103434
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】512155478
【氏名又は名称】学校法人沖縄科学技術大学院大学学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クスヌディノワ ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】狩俣 歩
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL66P
4J100BC73P
4J100CA01
4J100JA24
4J100JA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的力に応答して発光特性が可逆的かつ敏感に変化する機械的刺激応答性発光材料を提供する。
【解決手段】ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマーを含む材料である。式中、RおよびRはポリマー鎖部分への連結基を表し;RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。ここで、RおよびRがそれぞれアクリロイル基、エポキシ基、トリアゾール基、スルフィド基、ジスルフィド基、シロキサン結合、アミド基、エステル基、炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、アジド基、チオール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアネート基、およびイソシアネート基からなる群より選択される官能基を含む。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマーを含む機械的刺激応答性発光材料;
【化1】
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して前記ポリマー鎖部分への連結基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい。
【請求項2】
およびRがそれぞれアクリロイル基、エポキシ基、トリアゾール基、スルフィド基、ジスルフィド基、シロキサン結合、アミド基、エステル基、炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、アジド基、チオール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアネート基、およびイソシアネート基からなる群より選択される官能基を含む、請求項1に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項3】
およびRがそれぞれ独立に下記式(2)で表される群を含む、請求項1または2に記載の機械的刺激応答性発光材料;
【化2】
ここで、R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子、または、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、R11およびR12の少なくとも1つは置換または無置換のアルキル基である。
【請求項4】
~Rがそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、アシル基、カルボキシ基、カルボキシアミド基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、イソシアネート基、トリアゾール基、スルフィド基、ジスルフィド基、アリール基置換アルキル基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、またはヘテロアリール基を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項5】
およびRが互いに結合して芳香環を形成している、請求項1~4のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項6】
前記式(1)中の前記ピリジン環の少なくとも1つが置換基で置換されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項7】
およびRがベンジル基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項8】
前記銅錯体部分が前記ポリマー鎖部分の架橋部分である、請求項1~7のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項9】
前記ポリマーがエラストマーポリマーである、請求項1~8のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項10】
前記ポリマー鎖部分が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、およびポリビニルからなる群から選択される構造を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項11】
前記材料が、フィルム、被膜、または繊維である、請求項1~10のいずれか一項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
【請求項12】
ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマー;
【化3】
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して前記ポリマー鎖部分への連結基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい。
【請求項13】
請求項12に記載のポリマーを含む、機械的応力、ひずみ、または変形センサ。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料の機械的刺激応答を決定することを含む、機械的応力、ひずみ、または変形を検出する方法。
【請求項15】
前記機械的刺激応答が、前記機械的刺激応答性発光材料の発光または色変化を検出することによって決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記機械的応力、前記ひずみ、または前記変形が、圧縮、引張、引張伸び、衝撃、剪断、破砕、曲げ、摩耗、ねじり、引掻き、擦り、および超音波からなる群から選択される機械的負荷に由来する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマーの製造方法であって;
【化4】
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して前記ポリマー鎖部分への連結基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい;
前記方法は、
(1a) モノマーおよび下記式(3a)で表される化合物を共重合させて前駆体ポリマーを得ること;
【化5】
ここで、R21およびR22はそれぞれ独立して重合性基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい;または
(1b) 第1の官能基を有するポリマー鎖および下記式(3b)で表される化合物を反応させて前駆体ポリマーを得ること;
【化6】
ここで、R23およびR24はそれぞれ独立して前記第1の官能基と反応して結合を形成する第2の官能基を有する基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい;およびそれから
(2) 前記前駆体ポリマーおよび下記式(4)で表される化合物を反応させることを含む;
【化7】
ここで、Xはハロゲン原子、トリフラート基、または擬ハロゲン基を表し;そしてRからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【請求項18】
下記式(5)で表される銅錯体;
【化8】
ここで、R31からR36はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしR33およびR34、R34およびR35、ならびにR35およびR36はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよく、R34およびR35が両方とも水素原子である場合、R33およびR36は両方ともメチル基ではなくまたは両方ともイソプロピル基ではない。
【請求項19】
下記式(6)で表される化合物および下記式(7)で表される化合物を反応させる工程を含む、請求項18に記載された銅錯体の製造方法;
【化9】
ここで、R31およびR32はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよく;
【化10】
ここで、X31はハロゲン原子、トリフラート基、または擬ハロゲン基を表し;そしてRからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしR33およびR34、R34およびR35、ならびにR35およびR36はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、R34およびR35が両方とも水素原子である場合、R33およびR36は両方ともメチル基ではなく、または両方ともイソプロピル基ではない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的ひずみおよび応力を検出するセンサ材料として有用な機械的刺激応答性発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的刺激応答性材料は、機械的刺激によって誘導される特定の特性変化を示す、例えば、環境に応答してその物理的特性を変化させるまたは自己修復特性を示す、「スマート」材料とみなせる材料である。合成ポリマーの広範な産業用途を考えると、機械的応力をセンシングできる機械的刺激応答性ポリマーの設計は、材料の破損を防止するためだけでなく、ポリマー材料の構造と機械的特性の深い知見を得るための新たな分析法としても非常に重要である。多様な機械的刺激応答性材料の設計に対するアプローチとして、ポリマー鎖に共有結合的に導入されたメカノフォアの使用が挙げられる。メカノフォアは、機械的力に応答して分光学的特性が変化する(1)。一般的に使用されるメカノフォアの多くは、スピロピラン(2)、1,2-ジオキセタン(3)、ジアリールジベンゾフラノン(4)、およびその他(5)などの、有機色素の弱い共有化学結合が、機械的力によって切断される分子設計に基づく。本質的には、このような共有結合の切断の必要性およびそれに関連する構造の再配列は、しばしば、メカノフォアが初期構造へ戻るために時間を要するか、または不可逆な応答を示す。このような欠点は、微細な応力変化をリアルタイムで繰り返し可視化できる実用的な機械的応力プローブの開発を達成する上で難点となる。共有結合の切断を必要としないメカノフォア分子の開発は進んでおり(6)、以前の我々の報告(7)も含め、これらのシステムは通常、応力に応答した光学特性変化を観察するために大きなひずみ(>100%、例えば、引張試験中に元の長さの2倍以上に伸ばす)および応力(数MPa)を必要とする。一般に、迅速、可逆的かつ敏感に機械的応力に応答して光学特性が変化する分子(機械受容、メカノセンシティブ)システムの開発は、依然として重要な課題である。
【0003】
本発明者らのグループは、最近、直鎖ポリウレタン鎖に共有結合的に導入された環状配位子のピリジノファンを有するCuヨウ化物錯体を報告し、引張応力に応答して徐々に発光(フォトルミネッセンス)強度が変化することを示した(図1)(非特許文献1)(7)。しかし、その初期システムは、空気下での迅速な分解、低い発光量子収率(PLQY)を受けて、また、応答を観察するために試料の初期長さの数倍(ひずみ>100%)に延伸することを必要とし、それは全体的に低い感度および機械的力の非効率的な伝達を意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Adv. Mater., 2017, 29, 1700563
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況において、本発明者らは、機械的力に応答して発光特性が可逆的かつ敏感に変化する材料を実現することを目的として、さらに鋭意検討を重ねた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的を達成するために鋭意検討した結果、ピリジノファン配位子とN-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を有する銅錯体を導入したポリマーの発光強度は、ポリマーに機械的ひずみを生じさせることにより可逆的かつ敏感に増加することを見出した。また、このポリマーは機械的刺激応答性発光材料として有用であることが分かった。本発明者らは、その知見に基づいて、課題を解決するための手段として、以下の発明を提供した。
【0007】
[1] ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマーを含む機械的刺激応答性発光材料;
【化1】
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して前記ポリマー鎖部分への連結基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい。
[2] RおよびRがそれぞれアクリロイル基、エポキシ基、トリアゾール基、スルフィド基、ジスルフィド基、シロキサン結合、アミド基、エステル基、炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、アジド基、チオール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアネート基、およびイソシアネート基からなる群より選択される官能基を含む、[1]に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[3] RおよびRがそれぞれ独立に下記式(2)で表される群を含む、[1]または[2]に記載の機械的刺激応答性発光材料;
【化2】
ここで、R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子、または、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、R11およびR12の少なくとも1つは置換または無置換のアルキル基である。
[4] R~Rがそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、アシル基、カルボキシ基、カルボキシアミド基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、イソシアネート基、トリアゾール基、スルフィド基、ジスルフィド基、アリール基置換アルキル基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、またはヘテロアリール基を表す、[1]~[3]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[5] RおよびRが互いに結合して芳香環を形成している、[1]~[4]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[6] 前記式(1)中の前記ピリジン環の少なくとも1つが置換基で置換されている、[1]~[5]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[7] RおよびRがベンジル基である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[8] 前記銅錯体部分が前記ポリマー鎖部分の架橋部分である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[9] 前記ポリマーがエラストマーポリマーである、[1]~[8]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[10] 前記ポリマー鎖部分が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、およびポリビニルからなる群から選択される構造を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[11] 前記材料が、フィルム、被膜、または繊維である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の機械的刺激応答性発光材料。
[12] ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマー;
【化3】
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して前記ポリマー鎖部分への連結基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい。
[12a] [2]の限定を満たす[12]に記載のポリマー。
[12b] [3]の限定を満たす[12]または[12a]に記載のポリマー。
[12c] [4]の限定を満たす[12]~[12b]のいずれか1項に記載のポリマー。
[12d] [5]の限定を満たす[12]~[12c]のいずれか1項に記載のポリマー。
[12e] [6]の限定を満たす、[12]~[12d]のいずれか1項に記載のポリマー。
[12f] [7]の限定を満たす[12]~[12e]のいずれか1項に記載のポリマー。
[12g] [8]の限定を満たす[12]~[12f]のいずれか1項に記載のポリマー。
[12h] [9]の限定を満たす、[12]~[12g]のいずれか1項に記載のポリマー。
[12i] [10]の限定を満たす[12]~[12h]のいずれか1項に記載のポリマー。
[13] [12]~[12i]のいずれか一項に記載のポリマーを含む、機械的応力、ひずみ、または変形センサ。
[14] [1]~[11]のいずれか1項に記載の機械的刺激応答性発光材料の機械的刺激応答を決定することを含む、機械的応力、ひずみ、または変形を検出する方法。
[15] 前記機械的刺激応答が、前記機械的刺激応答性発光材料の発光または色変化を検出することによって決定される、[14]に記載の方法。
[16] 前記機械的応力、前記ひずみ、または前記変形が、圧縮、引張、引張伸び、衝撃、剪断、破砕、曲げ、摩耗、ねじり、引掻き、擦り、および超音波からなる群から選択される機械的負荷に由来する、[14]または[15]に記載の方法。
[17] ポリマー鎖部分および下記式(1)で表される銅錯体部分を含むポリマーの製造方法であって;
【化4】
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して前記ポリマー鎖部分への連結基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい;
前記方法は、
(1a) モノマーおよび下記式(3a)で表される化合物を共重合させて前駆体ポリマーを得ること;
【化5】
ここで、R21およびR22はそれぞれ独立して重合性基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい;または
(1b) 第1の官能基を有するポリマー鎖および下記式(3b)で表される化合物を反応させて前駆体ポリマーを得ること;
【化6】
ここで、R23およびR24はそれぞれ独立して前記第1の官能基と反応して結合を形成する第2の官能基を有する基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい;およびそれから
(2) 前記前駆体ポリマーおよび下記式(4)で表される化合物を反応させることを含む;
【化7】
ここで、Xはハロゲン原子、トリフラート基、または擬ハロゲン基を表し;そしてRからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしRおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
[18] 下記式(5)で表される銅錯体;
【化8】
ここで、R31からR36はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしR33およびR34、R34およびR35、ならびにR35およびR36はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよく、R34およびR35が両方とも水素原子である場合、R33およびR36は両方ともメチル基ではなくまたは両方ともイソプロピル基ではない。
[18a] [3]の限定を満たす[18]に記載の銅錯体。
[18b] [4]の限定を満たす[18]~[18a]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[18c] [5]の限定を満たす[18]~[18b]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[18d] [6]の限定を満たす[18]~[18c]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[18e] [7]の限定を満たす[18]~[18d]のいずれか一項に記載の銅錯体。
[19] 下記式(6)で表される化合物および下記式(7)で表される化合物を反応させる工程を含む、[18]~[18e]のいずれか一項に記載された銅錯体の製造方法;
【化9】
ここで、R31およびR32はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよく;
【化10】
ここで、X31はハロゲン原子、トリフラート基、または擬ハロゲン基を表し;そしてRからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、ただしR33およびR34、R34およびR35、ならびにR35およびR36はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよく、R34およびR35が両方とも水素原子である場合、R33およびR36は両方ともメチル基ではなく、または両方ともイソプロピル基ではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の機械的刺激応答性発光材料は、機械的ひずみに応答して可逆的かつ敏感にその発光強度を変化させる。したがって、本発明の機械的刺激応答性発光材料は、ひずみおよび応力を検出するためのセンサ材料として有用である。本発明の機械的刺激応答性発光材料を含むセンサは、検出対象物に発生するひずみや応力を高感度で検出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、直鎖状ポリウレタン鎖に共有結合的に導入された環状配位子のピリジノファンを有するCuヨウ化物錯体を示す図である。
図2図2は、Cu1-cPBAおよびCu2-cPBAの代表的な応力-ひずみ曲線である。
図3図3(a)は、延伸中のCu1-cPBAの発光スペクトルである。図3(b)は、Cu1-cPBAの積分光発光強度対ひずみのプロットである。
図4図4は、繰り返し延伸中のCu1-cPBAの光発光強度を示すグラフである。
図5図5は、Cu1-cPBAの積分光発光強度対ひずみのプロットである。
図6図6(a)は、可変ひずみでのCu2-cPBAの発光スペクトルである。図6(b)は、Cu2-cPBAの積分光発光強度対ひずみのプロットである。
図7図7は、0%(上)、100%(中)、200%(下)での延伸中のCu1-cPBAの解析画像である。
図8図8は、0%、100%、および200%のひずみにおけるCu2-cPBAの解析画像である。
図9図9は、0%、100%、および200%のひずみで1重量%のCu4を含有する参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋PBAの対照実験の画像分析である。
図10図10は、0%、100%、および200%のひずみで1重量%のCu6を含有する参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋PBAの対照実験の解析画像である。
図11図11(a)は、空気に曝した後のCu1-cPBAのPLQYを示すグラフである。図11(b)は、空気に曝した後のCu2-cPBAのPLQYを示すグラフである。
図12図12は、cPBA1およびCu1-cPBAのFT-IRスペクトルである。
図13図13は、cPBA2およびCu2-cPBAのFT-IRスペクトルである。
図14図14は、Cu3およびCu4のFT-IRスペクトルである。
図15図15は、Cu5およびCu6のFT-IRスペクトルである。
図16図16は、ジクロロメタン中のCu3~Cu6のUV-vis吸収スペクトルである。
図17図17は、CDCl中のCu4のEXSYスペクトルである。
図18図18は、CDCl中のCu5のEXSYスペクトルである。
図19図19は、CDCl中のCu6のEXSYスペクトルである。
図20図20は、CDCl中のCu3のVT H-NMRスペクトルである。
図21図21は、CDCl中のCu4のVT H NMRスペクトルである。
図22図22は、CDCl中のCu5のVT H NMRスペクトルである。
図23図23は、モニターされたCu6のBuのシグナルAおよびBを示すH NMRスペクトルである。
図24図24は、tauインターバルの関数としてのシグナルAおよびBの強度の実験データおよびフィッティングを示すグラフである。
図25図25(a)は、走査速度0.1V/sにおけるCu3のサイクリックボルタモグラムである。図25(b)は、走査速度0.1V/sにおけるCu4のサイクリックボルタモグラムである。
図26図26(a)は、走査速度0.1V/sにおけるCu5のサイクリックボルタモグラムである。図26(b)は、走査速度20V/sにおけるCu5のサイクリックボルタモグラムである。
図27図27(a)は、走査速度0.1V/sにおけるCu6のサイクリックボルタモグラムである。図27(b)は、走査速度20V/sにおけるCu6のサイクリックボルタモグラムである。
図28図28は、ジクロロメタン中のCu3~Cu6の25℃における発光スペクトルである。
図29図29は、25℃におけるCu1-cPBAおよびCu2-cPBAの発光スペクトルである。
図30図30は、25℃でのジクロロメタン(5×10-5M)中のCu3~Cu6の正規化された光発光失活プロファイルである。
図31】25℃におけるCu1-cPBAおよびCu2-cPBAの正規化された光発光失活プロファイルである。
図32図32は、0%および250%のひずみにおけるCu1-cPBAの正規化された発光スペクトルである。
図33図33は、繰り返し延伸中のCu2-cPBAの光発光強度の変化を示す写真である。
図34図34は、Cu2-cPBAの積分光発光強度対ひずみのプロットである。
図35図35は、0%および280%のひずみにおけるCu2-cPBAの正規化された発光スペクトルである。
図36図36(a)は、延伸中に1重量%のCu4と混合された参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリ(アクリル酸ブチル)の機械的混合物を使用する対照実験の発光スペクトルである。図36(b)は、延伸中に1重量%のCu6と混合された参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリ(アクリル酸ブチル)の機械的混合物を使用する対照実験の発光スペクトルである。
図37図37(a)は、参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリ(アクリル酸ブチル)および1重量%のCu4の機械的混合物を使用する対照実験の積分光発光強度対ひずみのプロットである。図37(b)は、参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリ(アクリル酸ブチル)および1重量%のCu6の機械的混合物を使用する対照実験の積分光発光強度対ひずみのプロットである。
図38図38(a)は、空気飽和されたTHF中のCu4の時間依存性UV-vis吸収スペクトルである。図38(b)は、空気飽和されたTHF中のCu6の時間依存性UV-vis吸収スペクトルである。
図39図39は、Cu1-cPBAのDSC曲線である。
図40図40は、Cu2-cPBAのDSC曲線である。
図41図41は、単結晶XRDデータによる50%確率レベルの錯体Cu1(a)、Cu2(b)、Cu3(c)、およびCu4(d)のカチオン部分のORTEPである。
図42図42は、単結晶X線回折データによる化合物Cu3についての非水素原子の50%の確率異方性変位楕円体を示すORTEP図である。
図43図43は、単結晶X線回折データによる化合物Cu4についての非水素原子の50%確率の異方性変位楕円体を示すORTEP図である。
図44図44は、単結晶X線回折データによる、化合物Cu5についての非水素原子の50%確率の異方性変位楕円体を示すORTEP図である。
図45図45は、単結晶X線回折データによる化合物Cu6についての非水素原子の50%確率の異方性変位楕円体を示すORTEP図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。以下、本発明の代表的な実施形態および具体例を挙げて構成要件を説明するが、本発明は実施形態および実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において、「XからYまで」で表される数値範囲は、数字XおよびYをそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明は、ポリマー部分および銅錯体部分を有するポリマーを提供する。銅錯体部分は、式(1)で表される。それは、ピリジノファン配位子とN-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を有するCu錯体構造を有し、励起されると発光する。前記ポリマーは、機械的刺激応答性発光材料として有用である。
以下の説明では、式(1)のポリマー部分と銅錯体部分とを有するポリマーを「Cu錯体含有ポリマー」と呼ぶことがあり、ピリジノファン配位子の橋かけ(ブリッジ)構造を構成する窒素原子を「橋かけ窒素」と呼び、ピリジノファン配位子のピリジン環を構成する窒素原子を「ピリジン窒素」と呼ぶ。
以下、式(1)のポリマー部分と銅錯体部分とを有するポリマーについて詳細に説明する。
【0012】
式(1)の銅錯体部分
【化11】
式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立してポリマー鎖部分への連結基を表す。RとRの構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。RおよびRで表される連結基は、ピリジノファン環の橋かけ窒素と、ポリマー鎖部分の1つとを連結する2価の基である。RおよびRは、同じポリマー鎖部分に結合してもよいが、RおよびRは異なるポリマー鎖部分に結合してこれらの部分の間の架橋を形成することが好ましい。本発明のポリマーは、RおよびRが同じポリマー鎖部分に結合する銅錯体部分、およびRおよびRが異なるポリマー鎖部分に結合して架橋を形成する銅錯体部分を含んでいてもよい。連結基としては、アルキレン基(炭素-炭素単結合)、アルケニレン基(炭素-炭素二重結合)、アルキニレン基(炭素-炭素三重結合)、カルボニル基、オキシ基、スルフィド基、シロキサン基、アミド基、エステル基、またはこれらの2価の基の2個以上の組合せが好ましい。組合せの例としては、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニル基、アルキレンカルボニル基、アルキレンオキシ基、アルキレンチオ基、ジスルフィド基、アルキレンシロキサン基、およびアルキレンアミド基が挙げられる。連結基の具体例としては、メチレンオキシカルボニル基、エチレンオキシカルボニル基、プロピレンオキシカルボニル基が挙げられる。
【0013】
連結基は、アルキレン基を含むことが好ましい。連結基におけるアルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることがさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキレン基は、置換されていても無置換であってもよい。さらに、連結基におけるアルキレン基は、下記式(2)で表される分岐構造を有することが好ましい。アルキレン基が分岐構造を有する場合、分岐構造の立体効果はピリジノファン配位子の異性化を抑制し、異性化による無輻射失活速度の増加を抑制する。その結果、機械的刺激応答性発光材料の発光効率が向上する。
【0014】
【化12】
式(2)において、R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子、または、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、R11およびR12の少なくとも1つは置換または無置換のアルキル基である。*は隣接原子への結合位置を表す。置換または無置換のアルキル基は、R11とR12の一方または両方であってもよい。R11とR12の両方が、置換または無置換のアルキル基であることが好ましい。R11およびR12の両方が置換または無置換アルキル基である場合、これらの置換または無置換アルキル基は、互いに同じであっても異なっていてもよい。R11とR12中のアルキル基は、直線状、分岐状または環状であってもよい。アルキル基は、炭素数1~10であることが好ましく、炭素数1~6であることがより好ましく、炭素数1~3であることがさらに好ましい。
【0015】
およびRで表される連結基の好ましい例は、次の式(2a)で表される構造を有する連結基である。
【0016】
【化13】
式(2a)中、R13は置換または無置換のアルキレン基を表す。*はピリジノファン環の橋かけ窒素への結合位置を表し、**はポリマー鎖部分への結合位置を表す。R13で表される置換または無置換のアルキレン基の説明、ならびにその好ましい範囲および具体例については、RおよびRにおける置換または無置換のアルキレン基の説明、ならびに上記の好ましい範囲および具体例を参考にすることができる。
【0017】
式(1)中、RからRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。RからRは互いに互いに同じであっても異なっていてもよい。RからRのうちの置換基の個数は特に限定されず、それら全てが水素原子であってもよい。好ましい実施形態では、少なくともRおよびRが置換基である。RからRに用いられる置換基の具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、炭素数2~20のアシル基、カルボキシ基、カルボキシアミド基、エステル基、シラン基、アルコキシシラン基、アミノ基、アルデヒド基、アミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、炭素数6~40のアリール基、ヘテロシクロアルキル基、炭素数4~40のヘテロアリール基、およびこれらの基の組合せが挙げられる。本発明のある実施形態では、RおよびRは、置換または無置換のアリール基で置換されたアルキル基であることが好ましく、置換または無置換のフェニル基で置換されたアルキル基であることがより好ましく、ベンジル基であることが特に好ましい。
【0018】
式(1)において、RおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。環状構造は、芳香環であっても脂環であってもよく、ヘテロ原子を含むものであってもよい。本明細書中のヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択されることが好ましい。形成される環状構造の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、およびこれらの環の2個以上から構成される縮合環が挙げられる。環状構造は置換されていてもよい。置換基の具体例としては、RからRに用いられる置換基の上記具体例を挙げることができる。本発明のいくつかの実施形態において、RおよびRは互いに結合して環状構造を形成し、そしてその環状構造は芳香環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
【0019】
式(1)において、ピリジノファン環を構成するピリジン環は、置換基で置換されていてもよい。前記置換基の具体例としては、RからRに用いられる置換基の上記具体例を挙げることができる。
【0020】
前記ポリマーは、1種類の銅錯体部分のみを含んでいてもよく、2種類以上の銅錯体部分を含んでいてもよい。
【0021】
銅錯体部分の分子量は具体的に限定されないが、1500未満であることが好ましく、1000未満であることがより好ましい。例えば、銅錯体部分は、800未満の分子量を有する部分から選択され得る。
【0022】
ポリマー鎖部分
本発明のポリマーを構成するポリマー鎖部分は特に限定されない。ポリマー鎖部分の例としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレンおよびポリビニルが挙げられる。ポリマー鎖部分は、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、架橋構造を含んでもよい。さらに、ポリマー鎖部分は、1種類のポリマー鎖のみを含んでもよく、互いに結合してなる2種類以上のポリマー鎖を含んでもよい。
【0023】
ポリマーの例
本発明のポリマーは、エラストマーポリマーであることが好ましい。
銅錯体部分およびポリマー鎖部分を含む本発明のポリマーの具体例を以下に示す。ただし、本発明において使用することができる銅錯体部分およびポリマー鎖部分が、特定の実施例に限定されると解釈されることはない。以下の式において、各Bnはベンジル基を表し、波線はポリブチルアクリレート鎖への結合位置を表す。
【化14】
【0024】
機械的刺激応答性発光材料
本発明は、本発明のポリマーを含む機械的刺激応答性発光材料も提供する。機械的刺激応答性発光材料は、本発明のポリマーのみからなるものでもよく、または本発明のポリマーに加えて他の材料を含んでいてもよい。その他の材料としては、特に限定されないが、例えば、充填剤、マトリックスが挙げられる。
機械的刺激応答性発光材料は、1種類の本発明のポリマーのみを含んでもよく、または2種類以上の本発明のポリマーを含んでもよい。さらに、機械的刺激応答性発光材料は、本発明以外のポリマーを含んでいてもよい。本発明のポリマーは、0.01重量%以上の含有量で機械的刺激応答性発光材料に含まれてもよい。
【0025】
機械的刺激応答性発光材料の形成は、特に限定されない。機械的刺激応答性発光材料は、用途に応じて様々な形態に成形することができる。機械的刺激応答性発光材料は、フィルム、被膜(コーティング)、繊維、および粒子の形態であってもよい。フィルムおよび被膜は、単層構造または多層構造を有してもよい。繊維は、織布または不織布などの布を構成することができる。
【0026】
本発明のポリマーは、ポリマー鎖部分および式(1)で表される銅錯体部分を含む。銅錯体部分は、ピリジノファン配位子、N-ヘテロ環状カルベン配位子、およびピリジノファン配位子とポリマー鎖部分とを橋かけ(ブリッジ)する2つの連結基を有する。このような構造を有するポリマーは、機械的ひずみのない状態よりも機械的ひずみのある状態の方が高い発光強度を示す。これは、以下のメカニズムによるものと推定される。
【0027】
銅錯体部分のピリジノファン環は流動性があることに加え、銅と配位していないフリーの窒素配位部位を有する。Cu錯体が励起されると、ピリジノファン環が励起状態で歪み幾何構造が平面(平坦)になる。これに加え、励起状態でフリーの窒素が中心の銅に配位することでエキシプレックスを形成する。その結果、Cu錯体の無輻射失活速度が増加し、発光効率が低下する。一方、ポリマーに外力を加えることで、ピリジノファン環の流動性の低下と、窒素の分子内求核付加の抑制が起こる。その結果、Cu錯体の無輻射失活過程が抑制され、発光強度が増大する。さらに、ポリマーが歪んだ状態から歪んでいない状態に戻ると、ピリジノファン環も元の流動性に戻り、発光効率が低下する。このような機構により、Cu錯体含有ポリマーの発光強度は、ポリマーに加えられる機械的ひずみに応答して可逆的かつ敏感に変化する。そのため、ポリマーの発光強度の変化を測定することにより、ポリマーに発生する機械的ひずみや応力を高感度で検出することができる。したがって、本発明のポリマーは、機械的ひずみ(変形量)および応力を検出するための機械的刺激応答性発光材料として有効に使用することができる。
【0028】
本発明の機械的刺激応答性発光材料は、Cu錯体含有ポリマーに発生する機械的ひずみおよび応力に応答して、発光強度が可逆的かつ敏感に増加する。したがって、本発明の機械的刺激応答性発光材料は、機械的ひずみおよび応力を検出するためのセンサの材料として有用である。機械的刺激応答性発光材料は、特に、圧縮、引張、引張伸び、衝撃、剪断、破砕、曲げ、摩耗、ねじり、引掻き、擦り、および超音波による機械的ひずみおよび応力を検出するためのセンサ材料として有効に使用される。
本発明の材料を含むセンサでは、例えば、材料の発光強度または発光色の変化を測定することにより、材料に発生する機械的ひずみ(変形量)および応力を検出することができる。ここで、機械的刺激応答性発光材料を発光させる励起方法は、特に限定されず、光励起であっても電流励起であってもよい。
【0029】
銅錯体
本発明は、銅錯体(Cu錯体)も提供する。
本発明のCu錯体は、下記式(5)で表される。後述する実施例に示すように、一般式(5)で表されるCu錯体は発光を示す。したがって、Cu錯体は発光材料として有用である。
【化15】
【0030】
式(5)中、R31からR36はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。R31からR36は、互いに同じであっても異なっていてもよい。R34およびR35が両方とも水素原子である場合、R33およびR36は両方ともメチル基ではなくまたは両方ともイソプロピル基ではない。R33およびR34、R34およびR35、ならびにR35およびR36はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。R31からR36およびその好ましい範囲及び具体例については、式(1)のRからRの上記記載、好ましい範囲および具体例を参照することができる。
【0031】
式(5)中、R31およびR32は置換基であることが好ましく、置換または無置換のアルキル基であることが好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよい。これらのアルキル基の中でも、分岐アルキル基であることが好ましい。R31およびR32が分岐アルキル基である場合、分岐構造の立体効果はピリジノファン配位子の異性化を抑制し、異性化による無輻射失活速度の増大を抑制する。その結果、銅錯体の発光効率が向上する。アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基(Me)、エチル基、n-プロピル基(n-Pr)、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基(t-Bu)、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、好ましいアルキル基は、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基およびtert-ペンチル基であり、より好ましいアルキル基は、tert-ブチル基およびtert-ペンチル基である。
【0032】
式(5)中、ピリジノファン環を構成するピリジン環は、置換基で置換されていてもよい。置換基の具体例としては、RからRに用いられる置換基の上記具体例を挙げることができる。
【0033】
式(5)で表されるCu錯体の具体例を以下に示す。ただし、本発明のCu錯体は、具体例に限定して解釈されるものではない。なお、下記式中、Me、n-Pr、i-Pr、t-Buは、それぞれメチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基を表す。
【化16】
【0034】
銅錯体の製造方法
本発明のCu錯体は、任意の公知の合成方法によって調製することができる。好ましい方法は、下記式(6)で表される化合物と下記式(7)で表される化合物とを反応させて、式(5)で表される銅錯体を得る工程を含む。対アニオンの存在下で反応を行うことにより、式(7)で表される化合物からアニオンとしてX31が解離し、式(7)で表される化合物のピリジノファン環の窒素原子がCu(I)に配位する。その結果、式(5)で表される銅錯体が生成する。銅錯体については、上記「銅錯体」の項目の説明を参照することができるが、対アニオンの反応条件および具体例については、「[2] Cu錯体形成プロセス」の以下の説明を参照することができる。
【0035】
【化17】
式(6)中、R31とR32はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。R31およびR32は同じであっても異なっていてもよい。R31およびR32の説明、ならびにそれらの好ましい範囲および具体例については、式(5)のR31およびR32の説明、ならびにそれらの好ましい範囲及び具体例を参照することができる。式(6)において、ピリジノファン環を構成するピリジン環は置換基で置換されていてもよい。置換基の具体例としては、RからRに用いられる置換基の上記具体例を挙げることができる。
【0036】
【化18】
式(7)中、X31はハロゲン原子、トリフラート基または擬ハロゲン基を表す。擬ハロゲン基の具体例については、式(4)のXにおける擬ハロゲン基の具体例を参照することができる。
【0037】
33からR36はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。R33からR36は互いに同じであっても、異なっていてもよい。R34およびR35が両方とも水素原子である場合、R33およびR36は両方ともメチル基ではなく、または両方ともイソプロピル基ではない。R33およびR34、R34およびR35、ならびにR35およびR36はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。R33からR36の説明、好ましい範囲および具体例については、上記式(5)のR33からR36の説明、好ましい範囲および具体例を参照することができる。
【0038】
ポリマーの製造方法
本発明のポリマーの製造方法は、特に限定されない。本発明の方法によれば、前記ポリマーを容易に調製することができる。本発明の方法は、前駆体ポリマー合成過程およびCu錯体形成工程を含む。以下、各工程について説明する。
【0039】
[1] 前駆体ポリマー合成工程
この工程は、ピリジノファン環およびポリマー鎖が互いに結合した前駆体を提供する。
この工程では、下記式(3a)で表される化合物およびモノマーを含む重合性組成物を反応させて前駆体ポリマーを合成する。この工程で用いられるモノマーは、式(3a)で表される化合物以外の重合性化合物である。前記モノマーは、単官能モノマーであっても、多官能モノマーであってもよい。重合性組成物の反応により、モノマーが重合してポリマー鎖を形成しながら、式(3a)で表される化合物のR21およびR22がそれぞれモノマーの重合性基と反応して架橋構造を形成する。
【0040】
【化19】
式(3)中、R21およびR22はそれぞれ独立して重合性基を表す。ここでの重合性基は、重合性官能基を有し、そして非重合性部分を有していてもよい。R21およびR22は互いに同じであっても、異なっていてもよい。R21およびR22中の重合性官能基は、重合性組成物中のモノマーと共重合することができる。モノマーが付加重合を起こす場合、R21およびR22中の重合性官能基は、モノマーと付加重合を起こすものから選択される。例えば、モノマーがビニル基などのエチレン性不飽和結合を有する場合、R21およびR22はビニル基などのエチレン性不飽和結合を有する基から選択されることが好ましい。具体的には、重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、およびエポキシ基が挙げられる。重合性官能基は、ピリジノファン環の橋かけ窒素に単結合で結合していてもよいし、2価の基を介して橋かけ窒素に結合していてもよい。好ましい実施形態において、R21およびR22はアクリロイルオキシアルキル基およびメタクリロイルオキシアルキル基から選択される。R21およびR22の好ましい例としては、アクリロイルオキシメチル基、アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシエチル基、およびメタクリロイルオキシプロピル基が挙げられる。
【0041】
式(3)において、ピリジノファン環を構成するピリジン環は、置換基で置換されていてもよい。置換基の具体例としては、RからRに用いられる置換基の上記具体例を挙げることができる。
【0042】
重合性組成物用のモノマーとしては、公知のモノマーを適宜選択すればよい。前記モノマーは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、炭素数4~23のアクリル酸アルキルエステル、炭素数5~24のメタクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、アクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸ブチルであることが特に好ましくい。重合性組成物は、1種類のモノマーのみを含んでいてもよく、2種類以上のモノマーを含んでいてもよい。
【0043】
モノマーの式(3a)で表される化合物に対するモル比は、1~10000であることが好ましく、10~1000であることがより好ましい。
重合性組成物の反応条件としては、公知の反応条件を適宜選択すればよい。反応の詳細については、後述する合成例を参照することができる。
【0044】
前駆体ポリマー合成工程は、別の方法によって実施されてもよい。
すなわち、第1の官能基を有するポリマー鎖および下記式(3b)で表される化合物を反応させて前駆体ポリマーを得ることである。
【0045】
【化20】
式(3b)中、R23およびR24はそれぞれ独立して第1の官能基と反応して結合を形成する第2の官能基を有する基を表し、少なくとも1つのピリジン環は置換されていてもよい。
【0046】
第1の官能基および第2の官能基は、第1の官能基および第2の官能基の反応を介して、前記ポリマー鎖および式(3b)で表される化合物の間に化学結合を形成する組合せから選択されてもよい。好ましい実施形態において、第1の官能基および第2の官能基は、エポキシ基、アジド基、チオール基、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基、シアネート基、およびイソシアネート基から選択される。第1の官能基および第2の官能基の間の典型的な反応は、縮合反応である。例えば、第1の官能基および第2の官能基は、カルボキシ基およびヒドロキシ基の組み合わせ、カルボニル基およびアミノ基の組み合わせ、カルボニル基およびヒドロキシ基の組み合わせ、エポキシ基およびヒドロキシ基との組み合わせ、ならびにそれらの逆の場合であってもよい。
【0047】
[2] Cu錯体形成工程
Cu錯体形成工程は、前駆体ポリマー合成工程の後に行われる。
この工程では、前駆体ポリマーおよび下記式(4)で表される化合物を反応させて、式(1)で表されるポリマーを得る。対アニオンの存在下、前駆体ポリマーおよび式(4)で表される化合物を反応させることにより、式(4)で表される化合物のXがアニオンとして解離し、前駆体ポリマーのピリジノファン環の窒素原子がCu(I)に配位する。その結果、式(1)で表されるポリマー(Cu錯体含有ポリマー)が製造される。Cu錯体含有ポリマーの説明については、上記「ポリマー」の項目の記載を参照することができる。
【0048】
【化21】
式(4)中、Xはハロゲン原子、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホネート基)または擬ハロゲン基を表す。
からRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。RおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。RからRは互いに互いに同じであっても異なっていてもよい。RからRの説明、好ましい範囲および具体例については、上記式(1)中のRからRの説明、好ましい範囲および具体例を参照することができる。
【0049】
反応に用いる対アニオンとしては、具体的には、PF が挙げられる。反応温度および反応時間は特に限定されない。
【実施例0050】
本発明の特徴を、合成例および以下の実施例を参照してより具体的に説明する。以下に示す材料、プロセス、手順等は、本発明の内容を逸脱しない限り、適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示される特定の実施例に限定されると解釈されることはない。
【0051】
本研究では、架橋部としてポリブチルアクリレートに共有結合的に導入された新しいフォトルミネッセント(光発光性)の(NHC)Cu錯体を報告した。その結果、架橋ポリブチルアクリレート(cPBA)試料であるCu1-cPBAおよびCu2-cPBA(Cu錯体含有ポリマー)は、小さなひずみ(<50%)および応力(<0.1MPa)値でも機械的応力に対して非常に敏感な応答を示す。このような感度は、有機をもととする(ベースとする)メカノフォアを含有する多くの現在知られている応力応答性ポリマーと比較すると、前例のないものである。このシステムは、画像化(イメージング)法を介して機械的応力の直接可視化を可能にする。さらに、試料が空気下で数日後に示した劣化はわずかだったので、我々は良好な耐気性を達成した。
【0052】
我々は、流動性のある(fluxional)、Cuをもととする(ベースとする)メカノフォアを含有する架橋部の移動度を制限することにより、機械的力に応答して発光強度が増加することを提案した。このため、これらのシステムは、応答のメカニズムが共有結合の切断または形成によって引き起こされない新しいタイプのメカノフォアを表し、我々は迅速かつ可逆的な応答を達成できた(6)。我々の機械論的な提案は、錯体の流動性とそれらの無輻射失活速度、ならびにそれらのPLQY(発光量子収率)との間の良好な相関を示すモデル化合物Cu3からCu6(Cu錯体)の研究によって支持されている。
【0053】
架橋部を作製し、それらをポリマーに組み込むことを試みる前に、置換基R(R=Me、n-Pr、i-Pr、t-Bu)によって修飾された立体障害を有するN4配位子(N,N’-ジアルキル-2,11-ジアザ[3.3](2,6)ピリジノファン配位子)を含むモデル錯体Cu3からCu6の合成を最適化した。対応する環状配位子N4を(BnNHC)CuCl(1,3-ジベンジルベンズイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)と反応させ、続いてKPFと対イオン交換することによって錯体を合成した。これらの錯体は単離され、NMR、IR、UV-vis分光法、単結晶X線回折(図41、ESI:電子的補助資料)、および元素分析によって同定した(8)。溶液中でのそれらの動的挙動をNMR(下記参照)(8)によって詳細に研究し、以前に記載された(N4)CuII錯体と同様であることが見出された(9)。Cu3からCu6の光物理的性質を表1にまとめた。
【0054】
【表1】
【0055】
次に、架橋部としてビス(アクリレート)官能化ピリジノファン配位子を用いて、架橋ポリブチルアクリレート(cPBA)試料の調製を開始した。PBAは、工業で広範に使用されていること、弾性などの適切な機械的特性、およびモノマーの豊富な選択肢によって広範囲の特性をさらに調節する可能性があるために、本研究のために選択された。アクリル酸ブチルとビス(アクリレート)官能化配位子L1(1mol%)を用いた光開始ラジカル重合、続いて(BnNHC)CuC前駆体の溶液にフィルムを浸漬することによる(BnNHC)Cuの導入によって、架橋試料Cu1-cPBAを調製した(スキームS5, ESI)。アクリレート官能化配位子L2(スキームS6、ESI)(8)を用いた類似の手順によってCu2-cPBAを調製し、Cu1-cPBAおよびCu2-cPBAのPLQYをそれぞれ0.075および0.27と決定した。
【0056】
アルゴン雰囲気下で引張試験機を用いて、Cu1-cPBAとCu2-cPBAの機械的特性を調べた。良好な試料の伸長(Cu1-cPBAでは323%、Cu2-cPBAでは476%)を示している図2(ESI)に、代表的な応力-ひずみ(S-S)曲線が示されている。
【0057】
新しい架橋Cu1-cPBAフィルムの機械的刺激応答特性を調べるために、それは一軸方向に延伸され、同時にフィルムの中心領域を観測することによって延伸中の発光スペクトルを測定した。Cu1-cPBAフィルムが延伸されるにつれて、その光発光強度が増加した(図3(a))。積分発光強度対引張ひずみのプロット(図3(b))は、ひずみが50%未満で引張応力が0.1MPa未満の場合でさえ、発光強度が徐々に増加することを示す。このような感度は、応答を確実に観察するために典型的には数MPaの応力が必要な以前に報告された有機メカノフォア系の大部分において見出されたものよりも、はるかに高い(2)~(6)
フィルムを0から100%のひずみまで3回延伸して開放した場合、最初のサイクル中に測定した元の値と比較した時、わずかな発光(フォトルミネッセンス;PL)強度減少のみを示した。30サイクル以上の与えられた応力に対して、再現的および可逆的な方法で発光増強が観察された(図4)。
【0058】
さらに、引張伸びに応答する追加の強度増大も、フィルムの破断点(図5、ESI)まで観察された(8)。200%のひずみ値まで、最大波長および発光スペクトルの形状は変わらず、延伸の際に顕著な構造変化が生じないことを示している。低いひずみおよび応力値で測定可能な発光強度増加を示した点で類似の機械的応答が、Cu2-cPBAについても観測された(図6(a)および図6(b)、ESI)(8)
【0059】
敏感な応答および良好なPLQYは、光学的画像化を介して、与えられた機械的応力の変化を直接可視化できることを示唆する。したがって、本発明者らは、0~200%伸長範囲においてUV光照射下で延伸および開放の繰り返しサイクル間における、Cu1-cPBAおよびCu2-cPBA試料における発光強度変化をCCDカメラによって観測した。本発明者らにとって嬉しいことに、発光強度は、試料の延伸に応答して滑らかにかつ着実に増加した(図7および図8、ESI)。この応答は迅速かつ可逆的であり、試料を元の長さに開放すると、PL強度はそれに応じて減少した。ESIでは、応力に応答して発光の明るさがリアルタイムに変化する動画が提供されています。
【0060】
発光強度変化が、架橋部に直接伝達される機械的力によって引き起こされるか、またはそれが応力による環境要因、例えばポリマーの流動性の低下によって引き起こされるかどうかを調べるために、対照実験を行った。架橋cPBAである参照(対照)試料を、架橋部としてヘキサメチレンジアクリレートを用いて、1wt%のモデル化合物Cu4およびCu6と機械的に混合して調製した。ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリブチルアクリレートに機械的に導入された錯体を有する対照試料は、引張応力に応答して分光学的に検出された発光強度に有意な変化を示さなかった。また、画像解析により、機械的に取り込まれた錯体Cu4およびCu6を有する対照試料において、延伸に応答する顕著な発光強度変化がないことが確認された(図9および図10)。したがって、メカノフォアを共有結合で架橋部として導入する分子設計が、敏感な機械的刺激応答性挙動を明確に観察するために重要である(4e)
それらの空気安定性を調べるために、Cu1-cPBAおよびCu2-cPBAのフィルムを数日間空気に暴露し、PLQYを記録した(図11(a)および図11(b)、ESI)(8)。両方のポリマーは空気中で4日後にPLQY(3~4%)の僅かな減少のみを伴って良好な空気安定性を示した。空気による分解は、おそらく酸素によるCuIIへの酸化反応が要因と思われる。従って、理想的ではないが、カルベン部分を導入する戦略は、銅メカノフォアを実用的用途に適したものにする。機械的応力への応答メカニズムを解明するために、モデル錯体Cu3~Cu6の動的挙動と光物理的性質を解析した。これらの錯体はすべて、環状配位子N4の柔軟性に依存して異性化を示す(スキーム1)。CDCl溶液中の可変温度(VT)NMRの分析結果は、N4配位子の立体障害が増加するにつれて、錯体の流動性が低下し、異性体の平衡が4配位構造に傾くという結果を示した。興味深いことに、CDCl溶液中のPLQYはCu3からCu6にかけて増加し、立体障害の増加および柔軟性の低下と相関しており、発光ピークの短波長シフトを伴う(表1)。注目すべきことに、この傾向は、Cu3からCu6への無放射失活速度定数knrの緩やかな減少と非常に良い相関を示し、無放射失活の抑制がPLQYの増加の主な理由である可能性が高いことを示している。
これらの実験結果に基づいて、また文献に報告されている他の光発光性Cu錯体との類似性によって、配位子の剛直性によるモデル錯体のPLQYの増加は励起状態におけるJahn-Teller歪みの抑制によるものであることを本発明者らは提案する。置換フェナントロリンCu錯体についても同様の効果が報告されている(10)。類推により、加えられた機械的力が架橋部位の柔軟性を制限し、伸長時に観察された発光強度の増加をもたらすことを本発明者らは提案する。
さらに、励起状態においてN4配位子の橋かけ構造上の窒素が銅に配位して形成される励起錯体(エキシプレックス)の抑制が関与している可能性も考えられる。(10a)、(11)。実際、NMRの分析結果では、嵩高く剛直な錯体Cu5およびCu6は、溶液中において4配位のκ3-異性体のみが存在するが、立体障害が小さく流動性の高いCu3およびCu4については、5配位構造のκ4-および4配位構造のκ3-異性体の両方が平衡状態で存在することが確認された(スキーム1)。このモデル錯体のアルキル基の立体障害が及ぼす異性化の平衡速度の変化はサイクリックボルタンメトリーにおける実験結果とも一致する(8)
【0061】
【化22】
スキーム1 [()Cu(NHC)]錯体の流動挙動。
【0062】
NMR解析から、溶液中の錯体Cu6の異性化速度は約16s-1であることが見出され、ポリマーマトリックス中ではさらに遅い可能性が高い。この異性化反応の速度は、無輻射および輻射失活過程よりも数桁遅い(表1)(8)。これに基づいて、本発明者らは、観察された発光応答は、基底状態における異性化反応(12)ではなく励起状態における銅錯体の構造変化に基づくものと提案する。
【0063】
要約すると、本発明者らは、ポリブチルアクリレート中の架橋部として導入された、(N4)Cu(NHC)錯体に基づく新たなメカノフォアを報告する。このシステムは機械的力に対して非常に敏感な応答を示し、小さなひずみや応力値でも発光強度を観測することで機械的応力の変化の検出を可能にし、機械的応力の変化の直接可視化を可能にする。銅錯体を共有結合で架橋部に導入する分子設計は機械的刺激応答を観察するために重要である。このような高感度の応力応答は、スピロピラン、ジアリールジベンゾフラノンおよびその他(2)~(5)のメカノフォアに基づく、現在報告されている多くの系よりも優れている。機械的刺激応答のメカニズムは、共有結合の開裂/形成を含まないので、過去に報告された有機化合物を使用したメカノフォアとは異なる。本発明者らのモデル系の研究によって確認されたように、流動性Cu錯体の柔軟性を制限し、無輻射失活を抑制することに基づく。
【0064】
参考文献
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5 (a) R. Go ”stl and R. P. Sijbesma, Chem. Sci., 2016, 7, 370-375; (b) M. J. Robb, T. A. Kim, A. J. Halmes, S. R. White, N. R. Sottos and J. S. Moore, J. Am. Chem. Soc., 2016, 138, 12328-12331; (c) T. Wang, N. Zhang, J. Dai, Z. Li, W. Bai and R. Bai, ACS Appl. Mater. Interfaces, 2017, 9, 11874-11881.
6 (a) H. Yabu, Y. Saito, S. Saito, S. Yamagichi and S. Nobusue, US Pat. 20190031820A1, 2019; (b) Y. Sagara, M. Karman, E. Verde-Sesto, K. Matsuo, Y. Kim, N. Tamaoki and C. Weder, J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 1584-1587.
7 G. A. Filonenko and J. R. Khusnutdinova ,Adv. Mater., 2017, 29, 1700563.
8 See ESI for details.
9 P. H. Patil, G. A. Filonenko, S. Lapointe, R. R. Fayzullin and J. R. Khusnutdinova, Inorg. Chem., 2018, 57, 10009-10027.
10 (a) D. R. McMillin, J. R. Kirchhoff and K. V. Goodwin, Coord. Chem. Rev., 1985, 64, 83-92; (b) C. T. Cunningham, K. L. H. Cunningham, J. F. Michalec and D. R. McMillin, Inorg. Chem., 1999, 38, 4388-4392; (c) D. Felder, J.-F. Nierengarten, F. Barigelletti, B. Ventura and N. Armaroli, J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 6291-6299; (d) A. Lavie- Cambot, M. Cantuel, Y. Leydet, G. Jonusauskas, D. M. Bassani and N. D. McClenaghan, Coord. Chem. Rev., 2008, 252, 2572-2584; (e) O. Green, B. A. Gandhi and J. N. Burstyn, Inorg. Chem., 2009, 48, 5704-5714; (f) M. W. Mara, K. A. Fransted and L. X. Chen, Coord. Chem. Rev., 2015, 282-283, 2-18.
11 (a) E. M. Stacy and D. R. McMillin, Inorg. Chem., 1990, 29, 393-396 ;(b) L. X. Chen, G. B. Shaw, I. Novozhilova, T. Liu, G. Jennings, K. Attenkofer, G. J. Meyer and P. Coppens, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 7022-7034.
12 (a) G. A. Filonenko, J. A. M. Lugger, C. Liu, E. P. A. van Heeswijk, M. Hendrix, M. Weber, C. Muller, E. J. M. Hensen, R. P. Sijbesma and E. A. Pidko, Angew. Chem., Int. Ed., 2018, 57, 16385-16390; (b) G. A. Filonenko, D. Sun, M. Weber, C. Muller and E. A. Pidko, J. Am. Chem. Soc., 2019, 141, 9687-9692.
13 (a) H. J. Yoon and C. A. Mirkin, J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 11590-11591; (b) H. J. Yoon, J. Kuwabara, J.-H. Kim and C. A. Mirkin, Science, 2010, 330, 66-69; (c) H. J. Yoon, J. Heo and C. A. Mirkin, J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 14182-14183; (d) M. Raynal, P. Ballester, A. Vidal- Ferran and P. W. N. M. van Leeuwen, Chem. Soc. Rev., 2014, 43, 1734-1787; (e) J. Kuwabara, H. J. Yoon, C. A. Mirkin, A. G. Di Pasquale and A. L. Rheingold, Chem. Commun., 2009, 4557-4559.
【0065】
I. 一般仕様
材料
特に明記しない限り、全ての操作は、乾燥アルゴン雰囲気下でシュレンク管またはグローブボックス技術を用いて行った。水素化ナトリウムをヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥し、グローブボックスに保存した。ピリジン-2,6-ジアルデヒド(1)、3-アミノプロピル(tert-ブチル)ジメチルシリルエーテル(2)、N,N’-ジメチル-2,11-ジアザ[3,3](2,6)ピリジノファン(3)、N,N’-ジ-イソ-プロピル-2,11-ジアザ[3,3](2,6)ピリジノファン(3)、N,N’-ジ-tert-ブチルピリジノファン(4)、(1,3-ジベンジルベンズイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(5)を以前に報告された手順によって合成した。
【0066】
NMR分光法
NMRスペクトルはJEOL ECZ600RまたはJEOL ECZ400S NMR分光計で測定した。
【0067】
発光特性
発光スペクトルおよび発光量子収率は、Hamamatsu Quantaurus-QY Plus(励起波長は380nm)によって記録した。PLQY測定のために、石英皿上に置かれた固体試料を30分間窒素ガスでパージし、窒素ガス流中で測定した。発光寿命は、Spectra-Physics Mai TaiパルスレーザとHamamatsu Photonices Streak scope camera(励起波長は380nm)の第二高調波で測定した。発光失活のフィッティング曲線は双指数関数的フィッティングとして得られ、発光寿命は(A1τ1+A2τ2)/(A1τ1+A2τ2)で推定した強度重量平均として得られた。積分発光強度は、450~760nm範囲の積分発光スペクトルを、励起の反射の面積で除して得た。
【0068】
機械的特性
引張試験はすべてグローブボックス内で行った。25mm [L] ×10mm [W] ×0.6mm [T]のフィルムを用いた。Acroedge Co製のコンパクトな一軸引張試験機で、1秒間に1mmの速度でひずみ-応力曲線を記録した。3試料の測定値の平均±偏差として、破断時の応力およびひずみを推定した。ひずみを100×(L-L0)/L0(L0は初期長さ)と定義し、応力(MPa)を荷重(N)をフィルムの断面積(m)で除したものとして計算した。
【0069】
熱特性
示差走査熱量測定(DSC)は、20mL/分の窒素ガス流下で、10℃/minの昇温速度で、Perkin Elmer DSC 8500を使用して行った。
【0070】
延伸中の発光スペクトル
Ocean optics Co.製のReflection/Backscattering Probe R600-7を用いて、フィルムの両端側から延伸中にフィルムの中央領域の発光をコンパクトな一軸引張試験機を用いて観測することにより、延伸中のフィルムの発光スペクトルを得た。
【0071】
延伸中のフィルムの発光画像および発光時間プロファイル
発光画像の写真と動画は、UVカットフィルタを取り付けたThorlabs社製のCCDカメラで撮影した。撮影された写真および動画は、フリーソフトウェアImage Jによって分析された。
【0072】
サイクリックボルタンメトリー
ALS/CHI electrochemical analyzers 660Eを用いて、グローブボックス内でサイクリックボルタンメトリーを実施した。BuNPFの0.1M溶液をCHCl中の支持電解質として使用した。作用電極としてPtディスク電極(d=1.6mm)、補助電極として白金ワイヤ、0.01M AgNO/0.1M BuNClO/MeCN溶液を充填した非水性銀ワイヤ参照電極アセンブリを使用した。全ての電位はフェロセン(Fc/Fc+)に対して参照した。
【0073】
II. 配位子、金属錯体およびポリマーの合成
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】

【化28】
【0074】
2,6-ビス(n-プロピルアミノメチル)ピリジン(化合物2)
【化29】
2,6-ビス(n-プロピルアミノメチル)ピリジン(化合物2)は、以前に報告された手順(6)に従って調製した。乾燥MeOH(5.0mL)中のピリジン-2,6-ジアルデヒド 1(500mg、3.70mmol)、プロピルアミン(438mg、7.41mmol)、3Åモレキュラーシーブ(0.50g)の混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(310mg、8.19mmol)を、アルゴンガス流下、0℃で5分間を超えてゆっくりと添加した。室温で3時間撹拌した後、混合物をセライト(Celite)で濾過し、減圧下で濃縮した。NHClの飽和水溶液(1mL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。炭酸カリウムの飽和水溶液(3mL)を添加した後、水層をジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(10mL×2)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、無色油状物を、810mg、収率99%で得た。生成物をさらに精製することなく、次の反応に使用した。
H NMR(400MHz, 23℃, CDCl): δ 7.58 (t, HH=7.8Hz, p-HPy, 1H), 7.14(d, HH=7.8Hz, m-HPy, 2H), 3.88(s, Py-CH-N, 4H), 2.63(t, J=7.3Hz, N-CH-C, 4H), 2.02(s, NH, 2H), 1.56(sext, HH=7.3Hz, C-CH-C, 4H), 0.92(t, HH=7.3Hz, C-CH, 6H).
13C NMR(100MHz, 23℃, CDCl): δ 159.5(o-CPy), 136.9(p-CPy), 120.5(m-CPy), 55.3(-Py-C-N-), 51.7(-N-C-C), 23.4(-C-C-C), 11.9(C-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C1324 [M+H]:222.1965, found:222.1956.
【0075】
N,N’-ジ-n-プロピル-2,11-ジアザ[3,3](2,6)-ピリジノファン(化合物3)
【化30】
MeCN(50mL)中の2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン(978mg、3.69mmol)の溶液を、滴下漏斗を使用して、80℃で4時間を超えて撹拌しながら、化合物2(810mg、3.66mmol)、炭酸カリウム(3.06g、22.1mmol)、およびMeCN(400mL)の混合物に滴下した。80℃で2日間撹拌した後、熱混合物を濾別し、減圧下で濃縮した。粗混合物をCHCl(30mL)に懸濁し、水(10mL×3)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濾別し、減圧下で濃縮した。混合物をMeCN(8mL)中に超音波処理により懸濁し、濾別して不溶性沈殿物を除去し、減圧下で濃縮した。混合物をヘキサン(20mL)に懸濁し、室温で30分間撹拌し、次いで、セライトを通して濾過して、不溶性の粘着性固体を除去した。濾液を減圧下で濃縮し、白色粉末を得た。粗生成物を、溶離液としてヘキサン:AcOEt(2:1/v:v)を用いた塩基性アルミナカラムクロマトグラフィーによって精製した。固体をヘキサン-ジエチルエーテル(1:1/v:v)(2mL)の溶液に溶解し、室温でゆっくりと蒸発させて、無色の結晶性生成物を、370mg、収率31%で得た。
H NMR (400MHz, 23℃, CDCl): δ 7.10(t, HH=7.7Hz, p-Hpy, 2H), 6.76(d, HH=7.6Hz, m-Hpy, 4H), 3.89(s, Py-CH-N, 8H), 2.82(t, HH=7.4Hz, -N-CH-, 4H), 1.72(sext, HH=7.4Hz, C-CH-CH, 4H), 1.04(t, HH=7.4Hz, -CH-CH, 6H).
13C NMR (100MHz, 23℃, CDCl): δ 158.1(o-CPy), 135.5(p-CPy), 122.6(m-CPy), 64.0 5(-Py-C-N-), 62.7(-N-C-C), 20.9(-C-C-C), 12.1(C-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C2029 [M+H]:325.2387, found:325.2378.
【0076】
Cu3の合成
【化31】
グローブボックス中で、(1,3-ジベンジルベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(44.5mg、0.112mmol)を、MeCN(2mL)中のN,N’-ジメチル-2,11-ジアザ[3,3](2,6)-ピリジノファン(30.0mg、0.112mmol)の溶液に添加した。室温で3時間撹拌した後(NMRにより配位子の消費を確認)、反応混合物にKPF(206mg、1.12mmol)を加え、室温で撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、ジクロロメタン(2mL)を添加し、反応混合物をセライトパッドを通して濾過した。濾液を真空下で濃縮し、ジクロロメタン-ジエチルエーテルとの蒸気拡散による結晶化によって繰り返し精製して、黄色の結晶を得た(66.5mg、74%)。これらの結晶をX線結晶解析に用いた。
【化32】
-30℃では、NMR積分によれば、κ3およびκ4異性体が40.8:59.2の比でCDCl溶液中に存在した。
κ、メジャー異性体。
H NMR(600MHz, -30℃, CDCl): δ 7.42-7.24(m, p-Hpy, Ar-Hbenz, 12H), 7.15(d, HH=5.5Hz, Ar-Hbenz, 4H), 6.68(d, HH=7.8Hz, m-Hpy, 4H), 5.80(s, CH2benz, 4H), 3.76(d, HH=14.8Hz, -Py-CH-N-, 4H), 3.39(d, HH=15.5Hz, -Py-CH-N-, 4H), 2.40(s, -N-CH, 6H).
13C NMR(151MHz、-30℃、CDCl): δ 192.65 (quat, CImd), 156.3(quat, CPy), 137.0(Ar-CHbenz), 136.96(Ar-Cbenz), 134.3(Ar-Cbenz), 128.8(Ar-CHbenz、), 128.0(Ar-Cbenz), 126.7(Ar -CHbenz,), 123.4(Ar-CHbenz), 122.2(m-Cpy), 111.5(Ar-CHbenz), 64.2(-Py-CH-N-), 52.0(CH2benz,), 48.8(-N-CH).
κ:マイナー異性体:
H NMR(600MHz, -30℃, CDCl): δ 7.42-7.24 (m, p-Hpy, Ar-Hbenz, 12H), 7.06(d, HH=5.1Hz, Ar-Hbenz, 4H), 6.91(d, HH=7.4Hz, m-Hpy, 2H), 6.83(d, HH=8.2Hz, m-Hpy, 2H), 5.73(s, CH2benz, 4H), 4.27(d, HH=13.1Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.92(dd, HH=14.4, 13.8Hz, -Py-CH-N-, 4H), 3.57(d, HH=15.1Hz, -Py-CH-N-, 2H), 2.37(s, -N-CH, 3H), 2.32(s, -N-CH, 3H).
13C NMR(151MHz, -30℃, CDCl): δ 191.34(quat. CImd), 155.0(quat. CPy), 154.9(quat. CPy), 137.4 (Ar-CHbenz), 136.96(Ar-Cbenz), 134.4(Ar-Cbenz), 128.95(Ar-CHbenz), 128.03(Ar-Cbenz), 126.4 (Ar-CHbenz), 124.4(m-Cpy), 123.7(Ar-CHbenz), 121.6(m-Cpy), 111.4(Ar-CHbenz), 66.4(-Py-CH-N-), 65.2(-Py-CH-N-), 51.8(CH2benz,), 50.8(-N-CH), 42.9(-N-CH).
Anal. Found (calcd for C3738CuFP): C, 57.17, (57.32); H, 4.74, (4.94) ; N, 11.07, (10.84).
【0077】
Cu4の合成
【化33】
(1,3-ジベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(30.6mg、0.0770mmol)、化合物3(25.0mg、0.0770mmol)、MeCN(5mL)、およびKPF(285mg、1.55mmol)を使用して、Cu3と同じ手順によってCu4を調製し、黄色結晶(55.8mg、84%)を得た。ジクロロメタン-ジエチルエーテルによる蒸気拡散法によりX線結晶解析に適した結晶を得た。
-30℃では、NMR積分によれば、κ3およびκ4異性体が66.7:33.3の比でCDCl溶液中に存在した。
κ、メジャー異性体:
H NMR (600MHz, -30℃, CDCl): δ 7.44-7.33 (m, p-Hpy, Ar-Hbenz, 6H), 7.29-7.23 (m, Ar-Hbenz, 6H), 7.07-7.04 (m, Ar-Hbenz, 4H), 6.90 (d, HH = 7.8 Hz, m-Hpy, 2H), 6.81 (d, HH = 7.6 Hz, m-Hpy, 2H), 5.82 (d, HH = 16.4 Hz, CH2benz, 2H), 5.70 (d, HH = 16.4 Hz, CH2Benz, 2H), 4.13 (d, HH = 13.1 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.96 (d, HH = 13.1 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.71 (d, HH = 15.3 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.53 (d, HH = 14.8 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 2.42-2.39 (m, -N-CH-CH-, 2H), 2.34-2.31 (m, -N-CH-CH-, 2H), 1.44-1.36 (m, -CH-CH-CH, 4H), 0.64 (t, HH = 7.3 Hz, -CH-CH, 3H), 0.63 (t, HH = 7.4 Hz, -CH-CH, 3H).
13C NMR (151MHz, -30℃, CDCl): δ 191.72 (quat. CImd), 156.62 (quat. Cpy), 154.88 (quat. Cpy), 137.51 (p-Cpy), 136.85 (Ar-Cbenz), 134.44 (Ar-Cbenz), 128.96 (Ar-CHbenz), 127.99 (Ar-Cbenz), 126.34 (Ar-CHbenz), 124.31 (m-Cpy), 123.70 (Ar-CHbenz), 121.70 (m-Cpy), 111.54 (Ar-CHbenz), 64.25 (-N-CH-CH-) 63.90 (-Py-CH-N-), 63.72 (-N-CH-CH-), 63.56 (-Py-CH-N-), 61.20 (-Py-CH-N-), 52.0 (CH2benz), 51.74 (CH2benz), 19.41 (-CH-CH-CH), 17.23 (-CH-CH-CH), 11.53 (-CH-CH), 11.24 (-CH-CH).
κ、マイナー異性体:
H NMR (600 MHz, -30℃, CDCl): δ 7.44-7.33 (m, Ar-Hbenz, 4H), 7.29-7.23 (m, p-Hpy, Ar-Hbenz, 8H), 7.07-7.04 (m, Ar-Hbenz, 4H), 6.69 (d, HH = 7.6 Hz, m-Hpy, 4H), 5.79 (s, CH2benz, 4H), 3.99 (d, HH = 15.3 Hz, -Py-CH-N-, 4H), 3.61 (d, HH = 15.3 Hz, -Py-CH-N-, 4H), 2.51 (t, HH = 7.1 Hz, -N-CH-CH-, 4H), 1.60-1.54 (m, -CH-CH-CH, 4H), 0.93 (t, HH = 7.13 Hz, -CH-CH, 6H).
13C NMR (151 MHz, -30℃, CDCl): δ 193.11 (quat. CImd), 156.67 (quat. Cpy), 137.04 (p-Cpy), 136.92 (Ar-Cbenz-), 134.41 (Ar-Cbenz-), 128.80 (Ar-CHbenz-), 126.66 (Ar-CHbenz-), 123.46 (Ar-Cbenz-), 122.27 (m-Cpy), 111.64 (Ar-CH-benz), 63.72 (-Py-CH-N-), 57.92 (-N-CH-CH-), 52.0 (CH2benz), 20.65 (-CH-CH-CH), 11.50 (-CH-CH).
Anal. Found (calcd for C4146CuFP): C, 58.96 (59.23), H, 5.58 (5.58), N, 9.88 (10.11).
【0078】
Cu5の合成
【化34】
(1,3-ジベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(25.0mg、0.0629mmol)、N,N’-ジイソプロピル-2,11-ジアザ[3,3](2,6)-ピリジノファン(20.5mg、0.0632mmol)、MeCN(0.5mL)、THF(0.5mL)、およびKPF(233mg、1.27mmol)を用いてCu3と同じ手順によってCu5を調製し、ジクロロメタン-エーテルによる蒸気拡散によって黄色結晶(38.5mg、71%)を得た。ジクロロメタン-ジエチルエーテルによる蒸気拡散法によりX線結晶解析に適した結晶を得た。
Cu5は、CDCl溶液中で単一異性体[κ3-PrN(Benz)Cu]PFとして存在する。
κ-3:
H NMR (600 MHz, -30℃, CDCl): δ 7.35 (t, JHH = 7.7 Hz, p-Hpy, 2H), 7.31-7.30 (m, Ar-Hbenz, 10H), 7.06 (t, HH = 3.6 Hz, Ar-Hbenz, 4H), 6.88 (d, HH = 7.7 Hz, m-Hpy, 2H), 6.80 (d, HH = 7.5 Hz, m-Hpy, 2H), 5.93 (d, HH = 16.2 Hz, CH2benz, 2H), 5.74 (d, HH = 16.2 Hz, CH2benz, 2H), 4.15 (d, HH = 14.8 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.83 (d, HH = 13.0 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.69 (d, HH = 12.7 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.61 (d, HH = 15.2 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.06 (septet, HH = 6.4 Hz, -N-CH(CH, 1H), 2.70-2.65 (m, -N-CH(CH, 1H), 1.12 (d, HH = 6.4 Hz, -N-CH(CH, 6H), 1.00 (d, HH = 6.4 Hz, -N-CH(CH, 6H).
13C NMR (101 MHz, -30℃, CDCl): δ 192.3 (quat. CImd), 159.4 (quat. CPy), 154.8 (quat. CPy), 137.8 (p-CPy), 136.6 (Ar-C-benz), 134.5 (Ar-C-benz), 129.1 (Ar-CH-benz), 128.1 (Ar-C-benz), 126.3 (Ar-CH-benz), 124.7 (m-CPy), 123.8 (Ar-CH-benz), 121.9 (m-CPy), 111.97 (Ar-CH-benz), 61.8 (-Py-CH-N-), 60.4 (-Py-CH-N-), 59.4 (-N-CH(CH), 59.1 (-N-CH(CH) and (-Py-CH-N-), 52.1 (CH2benz), 19.1 (-N-CH(CH), 18.9 (-N-CH(CH).
Anal. Found (calcd for C4146CuFP): C, 59.56 (59.23), H, 5.70 (5.58), N, 10.24 (10.11).
【0079】
Cu6の合成
【化35】
(1,3-ジベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(28.3mg、0.0712mmol)、N,N’-ジ-t-ブチル-2,11-ジアザ[3,3](2,6)-ピリジノファン(25.0mg、0.0709mmol)、MeCN(1mL)、THF(1mL)、およびKPF(264mg、1.43mmol)を使用して、Cu3と同じ手順によってCu6を調製し、黄色結晶性固体(50.7mg、81%)を得た。ジクロロメタン-ジエチルエーテルによる蒸気拡散法によりX線結晶解析に適した結晶を得た。
CDCl中では、Cu6はκ3配位配位子を有する正方晶幾何学を特徴とし、単一異性体として溶液中に存在する。
H NMR (600 MHz, 20℃, CDCl,) (κ): Single conformer: δ 7.31-7.25 (m, p-Hpy and Ar-Hbenz, 12H), 7.06-7.04 (m, Ar-Hbenz, 4H), 6.78 (d, HH = 7.8 Hz, m-Hpy, 2H), 6.75 (d, HH = 7.5 Hz, m-Hpy, 2H), 6.12 (d, HH = 16.1 Hz, CH2benz, 2H), 5.62 (d, HH = 16.1 Hz, CH2benz, 2H), 4.75 (d, HH = 15.0 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.70 (d, HH = 13.1 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.57 (d, HH = 14.8 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 3.46 (d, HH = 13.0 Hz, -Py-CH-N-, 2H), 1.37 (s, -N-C(CH, 9H), 1.00 (s, -N-C(CH, 9H).
13C NMR (101 MHz, 20℃, CDCl) (κ): Single conformer: δ 192.5 (quat. CImd), 159.9 (quat. CPy), 155.2 (quat. CPy), 137.6 (p-CPy), 136.1 (Ar-C-benz), 134.4 (Ar-C-benz), 129.0 (Ar-CH-benz), 128.0 (Ar-C-benz), 126.2 (Ar-CHbenz), 124.2 (m-CPy), 123.7 (Ar-CH-benz), 121.5 (m-CPy), 112.2 (Ar-CH-benz), 59.6 (-Py-CH-N-), 59.2 (-Py-CH-N-), 59.1 (-Py-CH-N-), 56.3 (-N-C(CH), 52.2 (CH2benz), 27.5 (-N-C(CH).
Anal. Found (calcd for C4350CuFP): C, 60.11, (60.10); H, 5.88, (5.86); N, 10.43, (9.78).
【0080】
化合物4の合成
【化36】
化合物4は、以前に報告された手順(6)に従って調製した。
乾燥MeOH(30mL)中のピリジン-2,6-ジアルデヒド(化合物1)(2.16g、16.0mmol)および3Åモレキュラーシーブ(6.0g)の混合物を、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコ中、室温で撹拌した。3-アミノプロピル(tert-ブチル)ジメチルシリルエーテル(6.06g、32.0mmol)を添加した後、混合物を室温で3時間撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(1.33g、35.2mmol)を、アルゴンガス流下、0℃でゆっくりと添加した。室温で3時間撹拌した後、混合物をセライトで濾過し、減圧下で濃縮した。飽和NHCl水溶液(5mL)を0℃でゆっくりと混合物に加え、混合物を室温で10分間撹拌した。炭酸カリウム飽和水溶液(10mL)を加え、ジクロロメタン(20mL×5)で抽出した。ジクロロメタン溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗混合物を、溶離液としてヘキサン:AcOEt(2:1/v:v)を用いた塩基性アルミナカラムクロマトグラフィーによって精製して、油状物を、4.60g、収率60%で得た。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.56 (t, HH = 7.6 Hz, p-HPy, 1H), 7.14 (d, HH = 7.6 Hz, m-HPy, 2H), 3.86 (s, Py-CH-N, 4H), 3.68 (t, HH = 6.2 Hz, N-CH-C, 4H), 2.73 (t, HH = 6.9 Hz, C-CH-C, 4H), 1.85 (br s, NH), 1.74 (quint, HH = 6.6 Hz, C-CH, 6H), 0.86 (s, Si-C-C(CH, 18H), 0.023 (s, Si-CH, 12H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 159.4 (o-CPy), 136.9 (p-CPy), 120.5 (m-CPy), 61.8 (-N-C-C), 55.5 (Py-C-N-), 47.0 (-C-C-O), 33.1 (-C-C-C), 26.1 (Si-C(CH), 18.4 (Si-C(CH), -5.2 (-Si-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C2552Si [M+H]: 482.3593, found: 482.3574.
【0081】
化合物5の合成
【化37】
MeCN(50mL)中の2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン(2.54g、9.59mmol)の溶液を、滴下漏斗を用いて、80℃で4時間を超えて撹拌しながら、化合物4(4.60g、9.55mmol)、炭酸カリウム(7.97g、57.7mmol)、およびMeCN(500mL)の混合物に滴下した。80℃で2日間撹拌した後、熱混合物を濾別し、減圧下で濃縮した。粗混合物を、溶離液としてCHCl:MeOH:28% NH水溶液(50:1:0.1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色固体を得た。固体をMeCNから再結晶し、無色の固体生成物を、2.20g、収率39%で得た。
粗混合物は、ヘキサン:AcOEt(4:1/v:v)を用いた塩基性アルミナカラムクロマトグラフィーによっても精製することができる。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.10 (t, HH = 7.5 Hz, p-HPy, 2H), 6.75 (d, HH = 7.5 Hz, m-HPy, 4H), 3.89 (s, Py-CH-N, 8H), 3.82 (t, HH = 6.9 Hz, N-CH-C, 4H), 2.94 (t, HH = 6.9 Hz, C-CH-O, 4H), 1.92 (quint, HH = 6.9 Hz, C-CH-C, 4H), 0.93 (s, Si-C(CH, 18H), 0.10 (s, Si-CH, 12H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 158.0 (o-CPy), 135.6 (p-CPy), 122.6 (m-CPy), 64.0 (-N-C-C), 61.5 (-Py-C-N-), 57.1 (C-C-O), 30.9 (-C-C-C), 26.1 (Si-C(CH), 18.5 (Si-C(CH), -5.1 (Si-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C3257Si [M+H]: 585.4004, found: 585.3992.
【0082】
化合物6の合成
【化38】
化合物5(2.20g、3.76mmol)をMeOH(10mL)に溶解した。35%塩酸(1.0mL)の添加後、混合物を室温で1日間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。炭酸カリウム(2.60g、18.8mmol)および水(10mL)を混合物に添加した。混合物をCHCl(10mL×5)で抽出し、硫酸マグネシウムおよび炭酸カリウムの混合物上で乾燥し、濾別し、減圧下で濃縮した。混合物をMeCNから再結晶し、無色固体生成物を、1.23g、収率92%で得た。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.10 (t, HH = 7.8 Hz, p-HPy, 2H), 6.75 (d, HH = 7.8 Hz, m-HPy, 4H), 6.03 (br, 2H, OH), 4.04 (t, HH = 5.0 Hz, N-CH-C, 4H), 3.95 (s, Py-CH-N, 8H), 3.08 (t, HH = 5.5 Hz, C-CH-O, 4H), 1.93 (quint, HH = 5.0 Hz, C-CH-C, 4H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 157.2 (o-CPy), 136.3 (p-CPy), 122.3 (m-CPy), 65.0 (-N-C-C), 64.6 (-Py-C-N-), 61.2 (C-C-O), 29.0 (-C-C-C).
ESI-HRMS m/z calcd for C2029 [M+H]: 357.2285, found: 357.2289.
【0083】
化合物L1の合成
【化39】
【0084】
方法A
グローブボックスに、水素化ナトリウム(20.3mg、0.846mmol)および無水THF(5mL)を25mLシュレンク管に入れた。グローブボックスからシュレンク管を取り出した。アルゴンガス流下、0℃で化合物6(101mg、0.283mmol)を添加した後、混合物を室温で1時間撹拌した。塩化アクリロイル(112mg、1.24mmol)を、アルゴンガス流下、0℃でゆっくりと添加した。反応混合物を室温に温め、16時間撹拌した。0℃でMeOH(1mL)を添加した後、反応混合物を真空下、室温で濃縮した。アセトニトリル(3mL)及び10質量%炭酸カリウム水溶液(3mL)を加え、ヘキサン-ジエチルエーテル(10:1/v:v)溶液(30mL×5)で抽出した。抽出した溶液を硫酸マグネシウムと炭酸カリウムの混合物で乾燥し、濾過し、室温で減圧下に濃縮して、生成物を白色粉末(84.0mg、64%)として得た。この配位子を直ちに重合に用いた。
【0085】
方法B
乾燥ジクロロメタン(5mL)中の化合物6(100mg、0.281mmol)、トリエチルアミン(290mg、2.87mmol)、および2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(5.0mg、0.0227mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下、25mLシュレンク管中、0℃で撹拌した。塩化アクリロイル(67.2mg、0.742mmol)を、アルゴンガス流下で5分間を超えてゆっくりと溶液に添加し、反応混合物を室温で18時間撹拌した。メタノール(1mL)の添加後、混合物を減圧下、室温で濃縮した。粗混合物を、酢酸エチル:ヘキサン(2:1=v/v)、次いで溶離液として酢酸エチルを使用する塩基性アルミナカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色粉末(88.3mg、67%)を得た(TLCプレートをヨウ素で染色)。この配位子を直ちに重合に使用した。
生成物は容易にプロトン化できるので、NMR分析のためのCDCl溶液を測定前にKCOに通した。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.12 (t, HH = 7.78 Hz, p-HPy, 2H), 6.75 (d, HH = 7.8 Hz, m-HPy, 4H), 6.45 (d, HH = 17.4 Hz, -C=CH, 2H), 6.18 (dd, HH = 17.4 and 10.1 Hz, -CH=CH, 2H), 5.85 (d, HH = 10.1 Hz, -C=CH, 2H), 4.43 (t, HH = 6.4 Hz, C-CH-O, 4H), 3.89 (s, Py-CH-N, 8H), 2.95 (t, HH = 6.4 Hz, C-CH-N, 4H), 2.08 (quint, HH = 6.4 Hz, C-CH-C, 4H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 166.5(C=O), 157.8 (o-CPy), 135.8 (p-CPy), 131.0 (O=C-C=C), 128.6 (O=O-C=C), 122.8 (m-CPy), 64.1 (C-C-O), 63.0 (-Py-C-N-), 56.7 (N-C-C), 27.2 (C-C-C).
ESI-HRMS m/z calcd for C2633 [M+H]: 465.2496, found: 465.2482.
【0086】
1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-メチルプロパン-2-アミン(化合物7)の合成
【化40】
1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-メチルプロパン-2-アミン(化合物7)は、いくつかの改変を伴う、以前に報告された手順に従って調製した(7)
グローブボックスに、水素化ナトリウム(3.19g、133mmol)および乾燥THF(300mL)を500mLシュレンクフラスコに入れた。フラスコに蓋をしてグローブボックスから取り出し、氷浴で冷却した。2-アミノ-2-メチルプロパノール(11.9g、133mmol)を、撹拌しながらアルゴンガス流下、5分間かけてゆっくりと添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。乾燥THF (50mL)中のtert-ブチルジメチル塩化(20.0g、133mmol)の溶液を、0℃で5分を超えてゆっくりと混合物に添加し、次いで混合物を室温で3時間撹拌した。メタノール(10mL)の添加後、反応混合物を減圧下で約50mL体積まで濃縮した。ヘキサン(100mL)を添加した後、混合物を水(20mL×3)および飽和食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾別し、減圧下で濃縮して、生成物を無色油状物として得た(25.3g、収率93%)。この化合物をさらに精製することなく次の反応に使用した。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 3.25 (s, 2H, C-CH-O), 1.03 (s, 6H, C-CH), 0.89 (s, 9H, Si-C-(CH), 0.028 (s, 6H, Si-CH).NHのピークは、水(1.60ppmでの広い一重項)との交換の可能性のために、明確に割り当てることができなかった。
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 73.2 (C-C-O), 50.8 (-N-C-C), 26.9 (-C-CH), 26.0 (Si-C(CH), 18.4 (Si-C(CH), -5.3 (Si-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C1026 NOSi [M+ H]: 204.1778, found: 204.1777.
【0087】
化合物8の合成
【化41】
MeCN(50mL)中の2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン(6.36g、24.0mmol)の溶液を、滴下漏斗を用いて、80℃で撹拌しながら、化合物7(4.88g、24.0mmol)、炭酸カリウム(20.0g、145mmol)、およびMeCN(1.2L)の混合物に、4時間かけて滴下した。80℃で2日間撹拌した後、熱混合物を濾別し、減圧下で濃縮した。混合物をジクロロメタン(100mL)に懸濁し、水(20mL×2)で洗浄し、炭酸カリウムおよび硫酸マグネシウムの混合物上で乾燥し、濾別し、減圧下で濃縮した。混合物をヘキサン(30mL)に懸濁し、60℃で撹拌し、次いで室温までゆっくりと冷却した。さらに氷浴で冷却した後、混合物を濾別して沈殿を除去した。混合物を、CHCl:MeOH:28% NH水溶液(50:1:0.1/v)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色粉末を、1.99g、収率27%で得た。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.04 (t, J = 7.3 Hz, p-HPy, 2H), 6.72 (d, J = 7.3 Hz, m-HPy, 4H), 4.04 (s, Py-CH -N, 8H), 3.67 (s, C-CH -O, 4H), 1.28 (s, N-C-(CH, 12H), 0.93 (s, Si-C(CH, 18H), 0.09 (s, Si-CH, 12H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 159.6 (o-CPy), 135.3 (p-CPy), 122.1 (m-CPy), 69.6 (C-C-O), 59.6 (C-CH), 58.1 (-Py-C-N-), 26.1 (-C-CH), 23.7 (Si-C(CH), 18.5 (Si-C(CH), -5.3 (Si-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C3461Si [M+ H]: 613.4328, found: 613.4315.
【0088】
化合物9の合成
【化42】
化合物8(1.98g、3.23mmol)をMeOH(10mL)に懸濁した。35%塩酸(1.0mL)の添加後、混合物を室温で1日間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。炭酸カリウム(16.2g、117mmol)および水(10mL)を混合物に添加した。混合物をCHCl(20mL×8)で抽出した(対象化合物は水に僅かにしか溶解しない)。合わせた有機層を、炭酸カリウムおよび硫酸マグネシウムの混合物上で乾燥し、濾別し、減圧下で濃縮した。トルエン(20mL)を混合物に添加し、110℃で5分間撹拌した。熱混合物を濾別して粘性固体を除去し、減圧下で濃縮した。MeCN(5mL)からの再結晶により、無色の結晶性固体として目標生成物を、1.01g、収率81%で得た。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.04 (t, J = 7.3 Hz, p-HPy, 2H), 6.50 (d, J = 7.3 Hz, m-HPy, 4H), 3.92 (s, Py-CH -N, 8H), 3.54 (s, C-CH -O, 4H), 2.14 (s, 2H, OH), 1.29 (s, N-C-(CH, 12H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 159.8 (o-CPy), 135.5 (p-CPy), 120.4 (m-CPy), 69.9 (C-C-O), 59.1 (C-CH), 55.7 (-Py-C-N-), 23.0 (C-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C2233 [M+ H]: 385.2598, found: 385.2587.
【0089】
L2の合成
【化43】
化合物8(100mg、0.260mmol)、水素化ナトリウム(20.0mg、0.834mmol)、乾燥THF(5mL)および塩化アクリロイル(112mg、1.24mmol)を使用して、L2をL1と同じ手順によって調製し、生成物を白色粉末として得た(82.5mg、収率64%)。
H NMR (400 MHz, 23℃, CDCl): δ 7.07 (t, HH = 7.8 Hz, p-HPy, 2H), 6.71 (d, HH = 7.8 Hz, m-HPy, 4H), 6.47 (d, HH = 17.4 Hz, -C=CH, 2H), 6.21 (dd, HH = 17.4 and 10.52 Hz, -CH=CH, 2H), 5.88 (d, HH = 10.52 Hz, -C=CH, 2H), 4.30 (s, C-CH-O, 4H,), 4.07 (s, Py-CH-N, 8H), 1.34 (s, C-CH, 12H).
13C NMR (100 MHz, 23℃, CDCl): δ 166.3 (C=O), 159.1 (o-CPy), 135.6 (p-CPy), 131.2 (CO-C=C), 128.6 (CO-C=C), 122.2 (m-CPy), 69.8 (C-C-O), 58.1 (C-CH), 58.0 (-Py-CH-N-), 24.4 (C-CH).
ESI-HRMS m/z calcd for C2837 [M+ H]: 493.2809, found: 493.2785.
【0090】
cPBA1の合成
【化44】
グローブボックス内で、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(39.5mg、0.141mmol)を、乾燥DMF(6mL)中の化合物L1(65.1mg、0.140mmol)およびアクリル酸ブチル(1.79g、14.0mmol)の溶液に溶解した。反応混合物を2つのテフロン(テフロンは登録商標)鋳型[40mm [W] ×70mm [L] ×5mm [D]]に分割した。
鋳型を薄いガラス板[50mm [W] ×80mm [L] ×0.15mm [T]]で覆い、シリコーングリースでシールした。UVランプで20分間照射した後、鋳型をグローブボックス内に24時間放置し、次いでグローブボックスから取り出した。形成されたフィルムを鋳型から採取し、蓋をされたガラス瓶中のヘキサン-ジエチルエーテルの溶液中に入れた。4~10時間後、溶媒を交換した。この洗浄プロセスを5回繰り返した。
洗浄溶媒を濃縮し、H NMRで分析したところ、ピリジノファン配位子のピークは得られず、アクリロイルオキシルを有する配位子が完全に取り込まれていることが示された。フィルムをテフロンシート上で、2日間、真空下でさらに乾燥させて、透明フィルム(1.52g、82%)を得た。
FT-IR (ATR, solid): υ 738, 840, 940, 1021, 1062, 1116, 1156, 1241, 1449, 1727, 2873, 2957 cm-1
【0091】
Cu1-cPBAの合成
【化45】
反応にはカットされたフィルム[25mm ×10mm]を用いた。グローブボックス中で、架橋ポリ(アクリル酸ブチル)フィルム[0.09mmol/gのL1がcPBA中に導入されたもの](2.39g)を、蓋をされた金属容器中の乾燥MeCN(30mL)中に1時間置いた。(1,3-ジベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(23.9mg、0.0471mmol)を乾燥MeCN(20mL)に撹拌して溶解し、溶液中で膨潤したフィルムに添加した。混合物を室温で24時間放置した。溶媒を新鮮なMeCNで置き換え、次いで4~10時間放置した。この洗浄プロセスを3回繰り返した。
洗浄溶媒を濃縮し、H NMRで分析したところ、(1,3-ジベンジルベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)のピークは得られなかった。
KPF(174mg、0.945mmol)の添加後、MeCN中のフィルムを6時間放置した。MeCN溶液を交換した後、フィルムを4~10時間放置してフィルムを洗浄し、次いで溶液から取り出し、テフロンシート上で2日間、真空下で乾燥した。
FT-IR (ATR, solid): υ 741, 841, 943, 1025, 1063, 1116, 1156, 1244, 1377, 1452, 1728, 2334, 2871, 2957 cm-1
【0092】
cPBA2の合成
【化46】
cPBA2は、化合物L2(69.0mg、0.140mmol)、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(39.1mg、0.140mmol)、アクリル酸ブチル(1.79g、14.0mmol)および乾燥DMF(6mL)を用いて、cPBA1と同様の手順で調製し、フィルム(1.54g、83%)を得た。
FT-IR (ATR, solid): υ 738, 806, 840, 941, 1020, 1062, 1116, 1156, 1242, 1450, 1540, 1576, 1727, 2873, 2958 cm-1
【0093】
Cu2-cPBAの合成
【化47】
cPBA2のフィルム[0.09mmol/gのL2がcPBAに導入されたもの](1.98g)および(1,3-ジベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)(19.8mg、0.0391mmol)およびヘキサフルオロリン酸カリウム(145mg、0.788mmol)を使用して、Cu1-cPBAと同じ手順によってCu2-cPBAを調製した。濃縮洗浄溶媒のH NMR分析により、(1,3-ジベンジルイミダゾイル-2-イリデン)塩化銅(I)のピークは確認されなかった。
FT-IR (ATR, solid): υ 737, 841, 940, 1021, 1062, 1116, 1156, 1241, 1449, 1589, 1727, 2873, 2932, 2957 cm-1
【0094】
対照実験用参照フィルムの調製
【化48】
1,6-ビス(アクリロイルオキシ)ヘキサン(31.8mg、0.141mmol)、アクリル酸ブチル(1.79g、14.0mmol)、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(39.2mg、0.140mmol)、及びDMF(6mL)を用いて、上記と同様の方法で対照実験用フィルムを調製し、透明フィルム(1.41g、77%)を得た。
以降の実験ではカットされたフィルム[25mm×10mm]を用いた。グローブボックス内で、架橋ポリ(アクリル酸ブチル)の参照フィルムをテフロンシート上に置き、各フィルムをMeCN(0.2mL)中で膨潤させた。次いで、膨潤したフィルムを、1質量%のCu4またはCu6を含むMeCN(0.3mL)の溶液によってさらに膨潤させた。3時間放置した後、フィルムを、テフロンシート上で2日間、真空下で乾燥した。
【0095】
III. FT-IRスペクトル
cPBA1、cPBA2、Cu1-cPBA、Cu2-cPBA、およびCu3~Cu6のFT-IRスペクトルを図12図15に示す。
【0096】
IV. UV-visスペクトル
Cu3~Cu6のUV-vis吸収スペクトルを図16に示す。
【0097】
V. EXSYおよびVT NMR実験
錯体Cu3~Cu6中の配位子の立体配座流動性を研究するために、VT実験でのNOESY(EXSY) NMR実験を行った。錯体Cu3~Cu6における異性化は既報のよう化銅(I)錯体で観察されたものと類似している(8)。混合時間0.5秒、緩和遅延(relaxation delay)1.5秒を用いた。
錯体Cu3およびCu4の溶液中には2つの異性体が存在し、これは対称性の考察に基づいてκ4-およびκ3-結合配位子との錯体として帰属された8。EXSY実験は、κ4-およびκ3-結合配位子を有する2つの異性体間の交換を示す(スキームS8)。例えば、メチレンプロトンHa/a’、Hb/b’およびHc/c’の間に交換交差(クロス)ピークが観察される。
【0098】
【化49】
スキームS7。(κ3-RN4)CuI(BnNHC)と(κ4-RN4)CuI(BnNHC)(R = Me, nPr)を含む異性体相互変換(interconversion)。
【0099】
さらに、1つの異性体(κ3-RN4)CuI(BnNHC)のみで、ペンダントと配位アミンとの間の交換を含む錯体Cu5およびCu6においても変性交換(degenerative exchange)が観察された(スキームS8)(8)
【0100】
【化50】
スキームS8。配位および非配位アミン(R=tBu, iPr)を含む(κ3-RN4)CuI(BnNHC)の溶液中での交換プロセス。
このような変性交換は、HmおよびHm’プロトンと、メチレンプロトンHa/a’およびHb/b’との間の交換ピークを示すEXSYスペクトルから明らかである。
【0101】
VT NMR実験によれば、錯体Cu3およびCu4については、ピリジンの芳香族メタプロトンHmetaの合体(coalescence)温度は約20℃であり、Cu5およびCu6については合体温度は27℃を超える(CDCl溶媒の低沸点のために試料を高温で加熱することができなかった)。交換はEXSYスペクトル(図17図19)から明らかであるが、錯体Cu6は室温ですでに鋭いピークを示す。
Cu3~Cu5のVT H-HMRスペクトルを図20図22に示す。
【0102】
錯体Cu6中の交換の動力学の予備的研究を、ソフトパルス移動実験(SPT)を用いて行った(9)。27℃の一定温度での測定にはCDClのCu6の解を用い、JEOL EX Z600Rで実施した二重パルス波形実験を用いた。ソフトパルス長15ms、緩和遅延7秒を用いた。
1.02ppmのtBu基のシグナル(シグナルA)を照射し、シグナルAの強度と1.36ppmの別のtBu基のシグナル(シグナルB)をモニターした。強度変化は、両方の信号がゆっくりとした相互交換の状態にあることを確認する理論式に適合した。フィッティングは、2つの化学的に等価な異性体間の等しい変性交換速度を強制することなく、Levenberg-Marquardtアルゴリズムに基づく非線形最小二乗最小化反復法を用いて、報告された方法(9)に与えられた一般式に従って行われた;それにもかかわらず、kaおよびkbの類似値がそれぞれ19.6s-1および15.9s-1が得られ、したがって、異性体間の交換速度が約16s-1である(2つの値の間の差は、実験誤差の範囲内であり得る)という推定を与えた。これは、正確な値ではなく、交換速度の順序の推定として使用することができる。なぜなら、これらの結果は、NOE効果による誤差がないからである。この値は、構造的に類似した(RN4)CuII錯体について決定されたものと同じ桁である(8)。遅い交換で予想されるように、交換率kex (kex = ka + kb)、35.5Hzは、シグナルAおよびBの化学シフトの差(205Hz)よりも小さい。交換速度論のより詳細な研究は、別の研究で実施される。
【0103】
【化51】
Cu6のH NMRスペクトルを図23に、シグナルAとBの強さをtauインターバルの関数として図24に示す。
【0104】
VI. サイクリックボルタンメトリー
錯体Cu3~Cu6のサイクリックボルタモグラムは、それらの溶液NMR研究と一致する、これらの錯体の立体配座挙動を反映する。
κ4およびκ3-異性体の混合物として溶液中に存在する嵩の小さいN-MeおよびN-nPr置換基を有する錯体は、より容易に酸化されたκ4-異性体に対応する1つの準可逆波を示す。順方向ピークと逆方向ピークの間の分離は59mVよりも多少大きいが、このような挙動は、典型的には、RN4配位子立体配座のわずかな変化にのみ帰属される(8)、(10)。これは、CuIIへの酸化の際に、κ4-形態でRN4が、嵩高なtBu-置換配位子に対してさえも配位することを示す以前の結果と一致する(10b)。平衡混合物中に既に存在するκ4-異性体の高い画分のために、遅いおよび速い走査速度で比較した場合、挙動は有意に変化しない。
対照的に、NMRに従って主にκ3-異性体として溶液中に存在するより嵩高な錯体Cu5およびCu6のCVは、走査速度依存性挙動を示す。高い走査速度では、より高い電位酸化波がメジャーκ3-異性体について観察される。順方向ピークと逆方向ピークの間の分離は0.54Vであり、配位子(CuII中のκ3-からκ4-配位)の有意な立体配座変化を示している(8)、(10b)。より低い走査速度では、異性体相互変換速度(κ3-CuIとκ4-CuIとの間)はCu5のサイクリックボルタンメトリー実験の所要時間(タイムスケール)に匹敵し、より低い電位波は、少量ではあるがより容易に酸化されるκ4-CuIについて観察可能になる。同時に、遅い走査速度でも、κ4-CuI波はtBu置換Cu6では検出されない。
【0105】
【化52】
スキームS9。錯体Cu3~C6における異性体相互変換。
【0106】
【表2】
【0107】
Cu3~Cu6のサイクリックボルタモグラムを図25(a)~図27(b)に示す。
【0108】
VII. 錯体およびポリマーフィルムの光物理的特性
Cu3~Cu6、Cu1-cPBA、Cu2-cPBAの発光スペクトルを図28および図29に、Cu3~Cu6の正規化された光発光失活プロファイルを図30および図31に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
VIII. 機械的応力に応答する光発光強度測定
Cu1-cPBAの積分発光強度対ひずみのプロットを図5に、0%および250%のひずみにおけるCu1-cPBAの正規化された発光スペクトルを図32に、延伸中のCu2-cPBAの発光強度の変化を図6(a)および図6(b)に、繰り返し延伸中のCu2-cPBAの光発光強度の変化を図33に、Cu2-cPBAの積分光発光強度対ひずみのプロットを図34に、0%および280%のひずみにおけるCu2-cPBAの正規化された発光スペクトルを図35に示し、延伸中に1重量%のCu4と混合された参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリ(アクリル酸ブチル)の機械的混合物を使用する対照実験の発光スペクトルを図36Aおよび図36Bに示し、参照ヘキサメチレンジアクリレート架橋ポリ(アクリル酸ブチル)および1重量%のCu4およびCu6の機械的混合物を使用する対照実験の積分光発光強度対ひずみのプロットを図37Aおよび図37Bに示す。
Cu6を導入した試料で観察された減少は、延伸時の膜上のルミノフォア密度の減少によって説明することができる。(a)に示す試料ではPL強度のわずかな増加が観察されるが、これらの変化はCu1-cPBAおよびCu2-cPBAと比較してわずかである。
【0111】
IX. 空気安定性
フィルムを石英皿上に置き、室温で、室内光下で、空気中に保持した。積分球中のPLQYを測定する前に、試料を窒素ガスで30分間パージした。PLQYを窒素ガス流下で測定し、3枚のフィルムの測定の平均として、決定した。Cu1-cPBAおよびCu2-cPBAのPLQYを図11(a)および図11(b)に示す。
石英セル(キュベット)中のCu4およびCu6の空気飽和THF溶液を周囲温度下に保ち、UV/visスペクトルを周期的に記録した。Cu4およびCu6の時間依存性UV-vis吸収スペクトルを図38Aおよび図38Bに示す。
【0112】
X. 機械的特性
図2にCu1-cPBAおよびCu2-cPBAの代表的な応力-ひずみ曲線を示す。
【表4】
【0113】
XI. DSC分析
Cu1-cPBAおよびCu2-cPBAのDSC曲線を図39および図40に示す。
【0114】
XII. 画像解析
図8にCu2-cPBAの画像解析、図9および図10に対照実験の画像解析を示す。
【0115】
XIII. X線構造決定の詳細
単結晶のX線回折データは、多層膜光学系によって単色化したMoKα (0.71073 Å)放射線を用いて、PILATUS3 R 200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたリガクXtaLab PRO装置(κ-ゴニオメータ)上で収集した。MicroMaxTM-003マイクロフォーカス密封管X線の性能モードは50kV、0.60mAであった。回折計には低温実験用のRigaku GN2システムを装備した。適当な寸法の適当な結晶をランダム配向のループ上に取り付けた。予備単位セルパラメータを、合計10のナローフレームスキャンの3組で決定した。データは、ω-スキャンモードでの推奨方法に従って収集した。最終セル定数は、格子ウィザードモジュールを使用して、完全なデータセットからの反射の全体的な精緻化によって決定した。画像は、CrysAlisProデータ縮小パッケージ(1.171.39.46、Rigaku Oxford Diffraction、2018)を使用して、「スマート」背景技術評価と共にインデックス化され、統合された。統合データの分析は、いかなる失活も示さなかった。ABSPACKモジュールを用いて系統誤差と吸収についてデータを補正した:多面的結晶モデル上のGauss組み込みに基づく数値吸収補正と、等価反射を用いた点群対称性に従う球面調和関数に基づく経験的吸収補正。WinGXスイートのGRALモジュールおよびASSIGN SPACEGROUPルーチンを、系統的非存在の分析および空間群決定のために使用した。SHELXT-2018/211を用いた直接法により構造を解き、球面原子に基づく原子散乱のモデルを用いるSHELXL-2018/3,12を用いてF2上の全行列最小二乗法により精密化した。計算は、主にWinGX-2018.3スイートのプログラムを使用して行った(13)。非水素原子は異方的に微細化した。メチル基の水素原子の位置は、理想化された四面体角を有する回転基精密化を使用して見出された。計算した位置に水素原子を挿入し、ライディング原子として精密化した。無秩序性は、存在する場合、自由変数および幾何学的および異方的変位パラメータに対する合理的な制約を使用して解消された。錯体Cu6の構造は、副成分について0.4476(81)の分数体積寄与を有する2成分双晶として精密化された;双晶則は(1.00 0.00 0.00, 0.00 -1.00 0.00, 0.00 0.00 -1.00)であった。研究したすべての化合物は異常な結合の長さと角度を有していない。錯体Cu5とCu6の絶対構造をFlackパラメータに基づいて決定した(14)
研究した錯体中の四配位Cu中心に対するτ4’パラメータ(15)は0.57(Cu3)、0.63(Cu4)、0.62(Cu5)、0.63(Cu6)であり、τ4’値が1に等しいと予想される理想的四面体配置(ジオメトリ)からの目立ったひずみを示す。すべての錯体において、ピリジノファン配位子はsyn-boat-chair立体配座をとる。研究された結晶錯体の重要な特徴は、これらのピリジン環間の分子内π-π相互作用を可能にし得るピリジノファン配位子内の芳香族単位の緊密な配置である:重心-重心の距離は、3.3094(6)Å(Cu3)、3.5510(6)Å(Cu4)、3.6498(18)Å(Cu5)、および3.3392(12)Å(Cu6);角度は、25.34(4)°(Cu3)、36.31(4)°(Cu4)、41.81(10)°(Cu5)、および27.55(7)°(Cu6);シフト距離は、0.8091(15)Å(Cu3)、1.0034(18)Å(Cu4)、1.328(5)AÅ(Cu5)、および0.765(3)Å(Cu6)。
さらに、化合物Cu3は、ピリジンPy(2)環間{対称操作:2-x、1-y、-z;3.6567(9)Åの重心-重心距離、0.000(8)°の角度、および1.5262(17)Åのシフト距離}、ならびに芳香族部分間C(1-7)N(5-6){対称操作:1-x、1-y、-z;3.9430(7)Åの重心-重心距離、0.000(7)°の角度、および2.0872(12)Åのシフト距離}で分子間π-π相互作用を示した。Cu4の結晶構造において、フェニルC(52-57)とピリジンPy(2)環との間の分子間π-π相互作用が見出された:対称操作:x+1,y,z;3.8736(6)Åの重心-重心距離、18.15(4)°の角度、および1.1666(17)Åのシフト距離。Cu5の結晶構造において、芳香族C(2-7)とピリジンPy(1)環間の分子間π-π相互作用が見出された:対称操作:x、1-y、z-0.5;3.7156(18)Åの重心-重心距離、13.45(11)°の角度、および1.189(5)Åのシフト距離。注目すべきことに、錯体Cu6の場合、分子間π-π相互作用は見出されなかった。結晶相における調査した錯体のカチオン性部分の構造および受け入れた部分番号付けは、図S73~S76におけるORTEP図として提示される。
蒸着番号1903712、1903713、1937851、および1937852は、本論文について、それぞれ、錯体Cu4、Cu6、Cu3、およびCu5の補足的結晶学的データを含む。これらのデータは、ケンブリッジ結晶学データセンターとFachinformationszentrum Karlsruheアクセス構造サービス
www.ccdc.cam.ac.uk/structuresの共同研究により無料で提供される。
【0116】
Cu3の結晶学的データ。
3738CuN 1+1-、黄色プリズム(0.363×0.250×0.162mm)、式量775.24、直方晶系、P21/c (No. 14), a=15.83319(17)Å, b=17.71151(19)Å, c=12.63601(15)Å, β=97.3523(10)°, V=3514.38(7)Å, Z=4, Z’=1, T=93(2)K, dcalc=1.465g cm?3, μ(MoKα) = 0.736mm-1, F(000)=1600; Tmax/min=1.000/0.401; 130963反射を収集した(2.260°≦θ≦33.508°, インデックス範囲:-24≦h≦23, -27≦k≦27, -19≦l≦18)、そのうち13162は一意であった、Rint=0.046, Rσ=0.0218; completeness to θ of 25.242° 99.9%。 334個の拘束を伴う542個のパラメータの精緻化は、I>2σ(I)の11810反射に対してR1=0.0331およびwR2=0.0797に、S=1.033および残留電子密度、ρmax/min=0.527および-0.363eÅ-3のすべてのデータについてR1=0.0376およびwR2=0.0813に収束した。結晶は、室温でDCM溶液中へのジエチルエーテルの蒸気拡散によって成長させた。
【0117】
Cu4の結晶学的データ。
4146CuN 1+1-、黄色プリズム(0.443×0.294mm)、式量831.35、三斜晶、P1 ̄(No.2), a=11.36657(18)Å, b=11.3830(2)Å, c=17.2143(2)Å, α=76.7608(13)°、β=71.4730(12)°, γ=64.7231(17)°、V=1898.30(6)Å, Z=2、 Z’=1, T=93(2)K, dcalc=1.454g cm-3, μ(MoKα)=0.687mm-1, F(000)=864; Tmax/min=1.000/0.188; 83923反射を収集した(2.046°≦β≦32.415°、インデックス範囲:-16≦h≦16, -17≦k≦16, -25≦l≦25), そのうち12578は一意であった、Rint=0.0444, Rσ=0.0271; completeness to θ of 25.242° 99.8%。 拘束のない498パラメータの精緻化は、I>2σ(I)の11453反射についてR1=0.0318およびwR2=0.0827に、S=1.027および残留電子密度、ρmax/min=0.543および-0.522eÅ-3のすべてのデータについて、R1=0.0357およびwR2=0.0843に収束した。結晶は、室温でDCM溶液中へのジエチルエーテルの蒸気拡散によって成長させた。
【0118】
Cu5の結晶学的データ。
4146CuN 1+1-、黄色プリズム(0.180×0.086×0.062mm)、式量831.35、単斜晶、Cc(No.)、 a=10.8787(2)Å, b=19.7204(4)Å, c=18.0429(4)Å, β=94.732(2)°, V=3857.57(14)Å, Z=4, Z’=1, T=100(2)K, dcalc=1.431g cm-3, μ(MoKα)=0.67mm-1, F(000)=1728; Tmax/min=0.688/0.141; 32877反射を収集した(2.356°≦β≦29.930°、インデックス範囲:-15≦h≦14, -27≦k≦27, -23≦l≦24)、そのうち9480は一意であった、Rint=0.0338, Rσ=0.0299; completeness to θ of 25.242°99.8%。 371個の拘束を伴う564個のパラメータの精緻化は、I>2σ(I)の9149反射に対してR1=0.0407およびwR2=0.1069に、S=1.083および残留電子密度、ρmax/min=0.472および-0.501eÅ-3の全てのデータについて、R1=0.0421およびwR2=0.1079に収束した。すべての強度への古典的フィッティングによるFlackパラメータx=0.010(9)。Parsonsの方法により4041の選択商を用いて決定したFlackパラメータx=0.004(11)。結晶は、室温でDCM溶液中へのジエチルエーテルの蒸気拡散によって成長させた。
【0119】
Cu6の結晶学的データ。
4350CuN 1+1-、黄色プリズム(0.236×0.118×0.052mm)、式量859.40、斜方形、Pca21(No.29)、a=20.03506(17)Å, b=13.30252(12)Å, c=15.03486(14)Å, V=4007.05(6)Å, Z=4, Z’=1, T=93(2)K、 dcalc=1.425g cm-3, μ(MoKα)=0.653mm-1, F(000)=1792; 172675反射を収集した(1.838°≦β≦32.426°、インデックス範囲:-28≦h≦30, -19≦k≦19, 21≦l≦22)、そのうち13516は一意であった、Rint=0.0438, Rσ=0.0206; completeness to θ of 25.242° 100%。1拘束を有する521パラメータの精緻化は、I>2σ(I)の13018反射について、R1=0.0392およびwR2=0.1009に、S=1.094および残留電子密度、ρmax/min=0.516および-0.722eÅ-3の全てのデータについてR1=0.0406およびwR2=0.1018に収束した。すべての強度への古典的フィッティングによるFlackパラメータx=-0.009(70)。Parsonsの方法により5904の選択商を用いて決定したFlackパラメータx=0.018(11)。結晶は、室温でDCM溶液中へのジエチルエーテルの蒸気拡散によって成長させた。
錯体Cu3~Cu6のXRDデータの概要を図41に示し、個々のORTEPプロットを図42図45に示す。
【0120】
XV.参照文献
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3. F. Tang, F. Qu, J. R. Khusnutdinova, N. P. Rath and L. M. Mirica, Dalton Trans., 2012, 41, 14046-14050.
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5. N. I. I. S. Korotkikh, V. S.; Kiselev, A. V; Glinyanaya, N. V; Marichev, K. A.; Pekhtereva, T. M.; Dudarenko, G. V; Bumagin, N. A.; Shvaika, O. P., Chem. Heterocycl.Compd., 2012, 47, 1551-1560.
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8. P. H. H. Patil, G. A. Filonenko, S. Lapointe, R. R. Fayzullin and J. R. Khusnutdinova, Inorg.Chem., 2018, 57, 10009-10027.
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10. (a) J. J. R. Khusnutdinova, N. P. Rath and L. M. Mirica, Inorg.Chem., 2014, 53, 13112-13129; (b) J. R. Khusnutdinova, J. Luo, N. P. Rath and L. M. Mirica, Inorg.Chem., 2013, 52, 3920-3932.
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15. A. Okuniewski, D. Rosiak, J. Chojnacki and B. Becker, Polyhedron, 2015, 90, 47-57.
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の機械的刺激応答性発光材料は、ひずみおよび応力を検出するためのセンサ材料として有用である。本発明の機械的刺激応答性発光材料を含むセンサは、検出対象物に発生するひずみや応力を高感度で検出する。したがって、本発明は、高い産業上の利用可能性を有する。
【0122】
本開示は、2020年6月16日に出願された日本特許出願第2020-103434号、およびChem. Commun., 2020,56, 50-53に含まれる対象事項に関するものであり、それらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態の上述の説明は、例示および説明の目的で提示されており、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。本明細書は、本発明の原理およびそれらの実用的な応用先を最も良く説明するために選択され、他の当業者が考える特定の用途に適するように、様々な実施形態および様々な改良において本発明を最良に利用することを可能にした。本発明の範囲は、明細書によって限定されるものではなく、以下に記載の定義された特許請求の範囲であることが意図される。
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【外国語明細書】