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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031168
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】防食塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20220210BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220210BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/08
C09D133/00
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122526
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020134993
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】田渕 秀典
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直樹
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG002
4J038DB001
4J038KA03
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038NA24
4J038NA26
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】防食性および耐水性に優れる塗膜を形成できる、ポットライフが長く、乾燥・硬化性に優れる防食塗料組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂硬化剤(A)、(メタ)アクリル樹脂(B)、および、水(D)を含有する第1剤と、エポキシ当量が270以下である非水性エポキシ樹脂(C)を含有する第2剤とを含む、防食塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂硬化剤(A)、(メタ)アクリル樹脂(B)、および、水(D)を含有する第1剤と、
エポキシ当量が270以下である非水性エポキシ樹脂(C)を含有する第2剤とを含む、
防食塗料組成物。
【請求項2】
前記硬化剤(A)が、水性アミン硬化剤(A1)および水性アミン変性エポキシ樹脂(A2)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項3】
前記樹脂(B)の不揮発分の含有量が、前記硬化剤(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の不揮発分の合計100質量%に対し、20~95質量%である、請求項1または2に記載の防食塗料組成物。
【請求項4】
揮発性有機化合物(VOC)の含有量が200g/L以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防食塗料組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の防食塗料組成物から形成された塗膜。
【請求項6】
基材と請求項5に記載の塗膜とを含有する塗膜付き基材。
【請求項7】
下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、請求項1~4のいずれか1項に記載の防食塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された防食塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食塗料組成物、塗膜、塗膜付き基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、橋梁、タンク、プラント、(輸送用)コンテナなどの陸上や海洋構造物等の基材には、腐食防止等を目的として、防食塗膜が設けられている。
【0003】
近年、環境保全や作業環境の安全性などの観点から、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の含有量に関する規制が厳しくなっており、前記のような防食塗膜を形成する塗料においても、溶剤型塗料から水性塗料への切り替えが望まれている。
【0004】
このような水性の塗料として、特許文献1および2には、自然乾燥型(常温硬化性)の水性防食塗料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-222901号公報
【特許文献2】特開平11-166153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1および2などに記載されている従来の水性防食塗料は、23℃程度の常温下では乾燥・硬化は一定程度進むものの、その乾燥・硬化の速度は十分に速いものではなく、特に、冬季等の低温(例:5℃)下での乾燥・硬化の速度について、改良の余地があった。
【0007】
防食性に優れる塗料として、エポキシ-アミン系の塗料が挙げられる。このようなエポキシ-アミン系の塗料の乾燥・硬化性を改善しようとする場合、エポキシ樹脂の分子量を高くすること、または、高反応性のアミンを使用することが考えられる。
しかしながら、これらの方法を本発明者が試したところ、乾燥・硬化性は改善するものの、前者の場合、防食性が低下することが分かり、後者の場合、塗料のポットライフが短くなることが分かった。特に、塗料の乾燥・硬化性に優れる(速い)ことと、塗料のポットライフが長いこととは、トレードオフの関係にあり、従来の塗料は、これらを両立することはできていなかった。
【0008】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、防食性および耐水性に優れる塗膜を形成できる、ポットライフが長く、乾燥・硬化性に優れる防食塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、特定の組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0010】
<1> エポキシ樹脂硬化剤(A)、(メタ)アクリル樹脂(B)、および、水(D)を含有する第1剤と、
エポキシ当量が270以下である非水性エポキシ樹脂(C)を含有する第2剤とを含む、
防食塗料組成物。
【0011】
<2> 前記硬化剤(A)が、水性アミン硬化剤(A1)および水性アミン変性エポキシ樹脂(A2)からなる群より選択される1種以上を含む、<1>に記載の防食塗料組成物。
【0012】
<3> 前記樹脂(B)の不揮発分の含有量が、前記硬化剤(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の不揮発分の合計100質量%に対し、20~95質量%である、<1>または<2>に記載の防食塗料組成物。
【0013】
<4> 揮発性有機化合物(VOC)の含有量が200g/L以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【0014】
<5> <1>~<4>のいずれかに記載の防食塗料組成物から形成された塗膜。
<6> 基材と<5>に記載の塗膜とを含有する塗膜付き基材。
【0015】
<7> 下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<4>のいずれかに記載の防食塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された防食塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防食性および耐水性に優れる塗膜を形成できる、ポットライフが長く(5時間以上)、乾燥・硬化性(以下単に、「乾燥性」ともいう。)に優れる防食塗料組成物を提供することができる。
特に、本発明に係る防食塗料組成物は、低VOC含有量であり、ポットライフが長く、冬季等の低温(例:5℃)下でも乾燥・硬化の速度が速いため、塗装現場において、従来の塗料に比べ、その塗装作業性を大きく改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪防食塗料組成物≫
本発明に係る防食塗料組成物(以下単に「本組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂硬化剤(A)、(メタ)アクリル樹脂(B)、および、水(D)を含有する第1剤と、エポキシ当量が270以下である非水性エポキシ樹脂(C)を含有する第2剤とを含む。
従来の組成物では、エポキシ樹脂を含む主剤に(メタ)アクリル樹脂が含まれることが多かったが、本組成物では、第1剤にエポキシ樹脂硬化剤(A)と(メタ)アクリル樹脂(B)とを配合することを特徴の一つとする。本組成物はこのような構成であることも、本組成物が、従来の塗料では達成できなかった前記効果を奏することの一因になっていると考えられる。
【0018】
本組成物は、前記第1剤と第2剤とを含む多成分型の組成物であれば特に制限されず、用いる成分によっては、前記第1剤および第2剤以外の第3剤を含む3成分型以上の組成物としてもよい。
これら第1~3剤等の剤(以下これらをまとめて「第n剤」ともいう。)は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、塗装の際(例:塗装直前)に混合して本組成物とした後用いられる。つまり、これら第n剤は、本組成物を調製するためのキットの構成要素であるともいえ、さらに換言すれば、本組成物は、前記第1剤と第2剤とを含む防食塗料組成物用キットであるといえる。
本発明において、第n剤は、これらの剤を調製した後、本組成物を調製するまでの間貯蔵され得る剤であり、例えば、下記実施例に記載のミルベースなどは、通常、該ミルベースを調製した後ほどなくして他の成分と混合して使用されるため、本発明における第n剤には該当しない。
【0019】
本組成物は、前記第n剤を混合して調製されるが、この調製の後またはこの調製の際に、塗装方法等に応じて、希釈して用いられることがある。
本明細書における各説明は、このような希釈に関する内容以外は、希釈される前についての説明である。
【0020】
本組成物は、水(D)を含むため、通常、水性塗料組成物となる。水性塗料組成物とは、水または水を主成分とする媒体(水性媒体)に、硬化剤(A)、樹脂(B)、樹脂(C)等の成分を分散および/または溶解させた組成物のことをいう。
前記水性塗料組成物における水の含有量は、組成物中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、好ましくは60~100質量%、より好ましくは65~100質量%である。
【0021】
コンテナなどの基材に塗料を塗装する環境は、乾燥設備が十分でない場合がある。このような環境において、従来の水性塗料を塗装する際には、乾燥性が重視され、該塗料に有機溶剤が多量に配合されてきた。
一方で、本発明によれば、乾燥性に優れる塗料組成物が得られるため、このように有機溶剤を多量に配合しなくても、乾燥設備が十分でない場所において、しかも冬季等の低温下においても、所望の塗膜を容易に形成することができる。
従って、環境保全や作業環境の安全性等の点から、本組成物中の揮発性有機化合物(VOC)の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下であり、本組成物中のVOC含有量は、好ましくは200g/L以下、より好ましくは180g/L以下である。
【0022】
本組成物中のVOC含有量は、組成物比重、加熱残分率(不揮発分の質量比率)および水分率の値を用い、下記式(1)および(2)から算出することができる。なお、組成物比重、加熱残分率および水分率は、以下のような測定値でも、用いる原材料から算出した値でも構わない。
VOC含有量(質量%)=(100-加熱残分率-水分率)/100・・・(1)
VOC含有量(g/L)=組成物比重×1000×(100-加熱残分率-水分率)/100・・・(2)
【0023】
組成物比重(g/ml):23℃の温度条件下で、本組成物(第n剤を混合した直後の組成物)を内容積100mlの比重カップに充満し、該組成物の質量を測定することで算出される値。
【0024】
加熱残分率(質量%):本組成物(第n剤を混合した直後の組成物)や各成分1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、加熱温度125℃で1時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分(不揮発分)および該針金の質量を測定することで算出される質量百分率の値。
以下、本組成物のこの加熱残分を本組成物の不揮発分ともいう。なお、下記各成分の不揮発分(例:硬化剤(A)の不揮発分)は、該各成分中の溶剤および分散媒以外の成分のことをいう。
【0025】
水分率(質量%):カールフィッシャー法により測定される、本組成物100質量%に含まれる水の質量百分率の値。
【0026】
本組成物は、ASTM D5895に基づき、23℃で塗装、乾燥させた際の、塗膜面の乾燥状態が、半硬化状態(Tack-free)に達するまでの時間が、好ましくは10~60分、より好ましくは10~50分であり、完全硬化状態(Dry-Hard)に達するまでの時間が、好ましくは10~90分、より好ましくは10~60分である。
これらの各時間(乾燥・硬化速度)が前記範囲にある本組成物は、乾燥性に優れるといえ、従来の塗料に比べ、その塗装作業性を大きく改善することができ、塗膜を形成する際に加熱が容易でない基材に対し、好適に用いることができる。
【0027】
また、本組成物は、ASTM D5895に基づき、5℃で塗装、乾燥させた際の、塗膜面の乾燥状態が、半硬化状態(Tack-free)に達するまでの時間が、好ましくは20~60分、より好ましくは20~50分であり、完全硬化状態(Dry-Hard)に達するまでの時間が、好ましくは20~60分、より好ましくは20~50分である。
これらの各時間(乾燥・硬化速度)が前記範囲にある本組成物は、低温での乾燥性に優れるといえ、従来の塗料に比べ、その塗装作業性を大きく改善することができ、塗膜を形成する際に加熱が容易でない基材に対し、好適に用いることができる。
【0028】
本組成物の下記実施例に記載の方法で測定したポットライフは、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上である。
本組成物は、ポットライフが前記範囲にあり、かつ、乾燥・硬化速度が前記範囲にある組成物とすることができるため、従来の塗料に比べ、その塗装作業性を大きく改善することができる。
【0029】
本組成物は、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛メッキ、亜鉛溶射等)、ステンレス(SUS304、SUS410等)などの基材に好適に用いられ、特に鉄鋼またはステンレス製の基材に好適に用いられる。このような基材として、具体的には、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、タンク、コンテナ(特にリーファーコンテナ)等の(大型の)鉄鋼またはステンレス製の構造物に好適に用いられる。
【0030】
本組成物は、防食塗料組成物として、前記基材に好適に用いることができる。
本組成物は、前記基材の、下塗り塗料(プライマー)として用いてもよく、下塗り塗料と上塗り塗料との間に形成される中塗り塗料として用いてもよく、上塗り塗料として用いてもよい。より具体的には、本組成物は、前記基材の下塗り塗料、中塗り塗料、タンク、コンテナ等の内面の上塗り塗料、亜鉛末を含むジンクプライマーとして好適に用いることができる。
【0031】
<第1剤>
本組成物の第1剤は、エポキシ樹脂硬化剤(A)、(メタ)アクリル樹脂(B)、および、水(D)を含有すれば特に制限されない。
第1剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分、例えば、顔料(E)(例:体質顔料、着色顔料、防錆顔料)、フラッシュラスト防止剤、分散剤、消泡剤、揺変剤(タレ止め・沈降防止剤)、レベリング剤、湿潤剤、増粘剤、造膜助剤、可塑剤、ドライヤー、繊維状物質、界面活性剤、有機溶剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、pH調整剤等の従来公知の成分を必要に応じて適宜配合してもよい。
これらはそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なお、本組成物は、塗装作業性の観点から、砂を含有しないことが好ましい。
【0032】
[エポキシ樹脂硬化剤(A)]
前記硬化剤(A)としては、活性水素を含有し、エポキシ樹脂(C)と反応するものであれば特に限定されず、例えば、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤が挙げられる。これらの中でも、防食性により優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、アミン硬化剤が好ましい。
本組成物に含まれる硬化剤(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0033】
本組成物の第1剤は水(D)を含有するため、水に分散可能なまたは水に溶解する水性化合物であることが好ましい。
このような水性化合物の好適例としては、水性アミン硬化剤(A1)、水性アミン変性エポキシ樹脂(A2)が挙げられ、水性アミン硬化剤(A1)および水性アミン変性エポキシ樹脂(A2)からなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0034】
本組成物中の硬化剤(A)の不揮発分の含有量は、乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐水性および防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%である。
【0035】
〈水性アミン硬化剤(A1)〉
前記硬化剤(A1)としては、例えば、水溶性アミン化合物、アミンエマルションが挙げられる。
前記水溶性アミン化合物としては、下記アミン化合物または下記アミン化合物を公知の方法で親水性とした化合物が挙げられる。該親水化の方法としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、水酸基など水溶性を促進する基の導入や、ポリアルキレングリコールのグリシジルエーテルをアダクト変性する等の親水性基の導入が挙げられる。
なお、水溶性アミン化合物とは、25℃で、水30質量%とアミン化合物70質量%とを混合し、十分撹拌した状態において、外観が透明である化合物のことをいう。
前記アミンエマルションとしては、例えば、下記アミン化合物が水等の水性媒体中で分散してなる乳濁液が挙げられる。
硬化剤(A1)としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
前記アミン化合物としては、三級アミン(3級アミノ基のみを有するアミン化合物)以外のアミン化合物であれば特に制限されないが、1分子中に2個以上のアミノ基を含有するアミン化合物が挙げられ、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系などのアミン化合物が好ましい。
【0037】
前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンが挙げられる。
【0038】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0039】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(Cm2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミンが挙げられる。
【0040】
前記アルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、式:「R2 2N-(CH2p-NH2」(R2は独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR2は炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミンが挙げられる。
【0041】
これら以外の脂肪族系アミンとしては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン(IPDA)、メンセンジアミン(MDA)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジンが挙げられる。
【0042】
前記脂環族系アミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリンが挙げられる。
【0043】
前記芳香族系アミンとしては、例えば、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物が挙げられる。
この芳香族系アミンの具体例としては、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニルが挙げられる。
【0044】
前記複素環系アミンの具体例としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサンが挙げられる。
【0045】
前記アミン化合物としては、さらに、前述したアミンの変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。これらの中では、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物が好ましい。
【0046】
前記水溶性アミン化合物としては市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、「ダイトクラール I-6020」(大都産業(株)製)、「Cardolite NX-8102」(Cardolite Corporation製)、「アンカミン 401」(Evonik Industries社製)、「Beckopox EH 613w/80WA」(ALLNEX社製)、「Sunmide WH-900」(Evonik Industries社製)が挙げられる。
【0047】
前記アミンエマルションとしては市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、「フジキュアー FXS-918-FA」((株)T&K TOKA製)、「EPILINK 701」(Evonik Industries社製)、「ユカレジン HD-03」(吉村油化学(株)製)が挙げられる。
【0048】
硬化剤(A1)は、後述の(メタ)アクリル樹脂(B)との混和性、第1剤に用いる他の成分との混合後の貯蔵安定性等の点から、水溶性アミン化合物、特に水溶性ポリアミンが好ましい。
【0049】
乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、防食性等に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、硬化剤(A1)の不揮発分あたりの活性水素当量は、好ましくは30~500、より好ましくは40~300である。
【0050】
〈水性アミン変性エポキシ樹脂(A2)〉
前記樹脂(A2)としては特に制限されないが、具体的には、1種または2種以上のエポキシ樹脂(a1)と、1種または2種以上のアミン類(a2)との反応生成物が挙げられ、1分子中に1個以上のカルボキシ基を有し、不揮発分の酸価が1~20mgKOH/gである水性樹脂であることが好ましい。
このような樹脂(A2)を用いることで、乾燥性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性および基材に対する密着性により優れる塗膜を容易に形成できる。
なお、本発明における樹脂(A2)は、該樹脂を構成する全てのモノマー成分100質量%に対し、エポキシ樹脂を構成するモノマー成分が50質量%を超える樹脂をいう。
樹脂(A2)としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0051】
本発明において、「水性樹脂」とは、水または水を主な溶媒もしくは分散媒とする樹脂、または、水と混合可能(水で希釈可能)な樹脂であり、より具体的には、水分散型樹脂、水溶性樹脂および自己乳化性樹脂等が挙げられる。このような水性樹脂は、従来公知の方法、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、ミニエマルション重合法、マイクロエマルション重合法、無乳化剤(ソープフリー)乳化重合法等で合成することができる。また、これらの他に、樹脂を既知の方法、例えば、転相乳化、D相乳化、強制乳化、ゲル乳化、反転乳化、高圧乳化等で乳化させる方法でも、水性樹脂を得ることができる。
【0052】
なお、エポキシ基を有さない樹脂も、エポキシ基を有する化合物を原料とする樹脂であれば、「エポキシ」を含む通称が使用されているため、本発明における「エポキシ樹脂」も同様に、エポキシ基を有さない樹脂を含む。
【0053】
前記樹脂(A2)の不揮発分のエポキシ当量は、乾燥性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上であり、樹脂(A2)は、エポキシ基を有さないことが特に好ましい。
前記エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準拠して測定できる。
【0054】
前記樹脂(A2)の不揮発分の酸価は、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下であり、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上である。
酸価が前記範囲にある樹脂(A2)を用いることで、乾燥性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性に優れる塗膜を容易に形成できる。
前記酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定できる。
【0055】
前記樹脂(A2)の不揮発分のアミン価は、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下であり、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上である。
アミン価が前記範囲にある樹脂(A2)を用いることで、乾燥性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性に優れる塗膜を容易に形成できる。
前記アミン価は、JIS K 7273:1995に準拠して測定できる。
【0056】
前記アミン類(a2)としては特に制限されず、脂肪族アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類、芳香脂肪族アミン類、複素環アミン類等のモノアミン、ポリアミンが挙げられる。アミン類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
前記アミン類としては特に制限されず、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、2-エチルヘキシルアミン等の一級アルキルアミン類、モノエタノールアミン、2-エトキシエタノールアミン、2-ヒドロキシプロパノールアミン等の一級アルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン類、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香脂肪族アミン類、ポリアミン類とアルデヒド化合物と1価または多価フェノール類との重縮合物からなるマンニッヒ塩基、ポリアミン類とポリカルボン酸やダイマー酸との反応により得られるポリアミドポリアミン類、ポリオキシエチレンアミン、ポリオキシプロピレンアミン等のポリオキシアルキレンアミン類が挙げられる。水性媒体への分散性および水性媒体に分散させた分散体の貯蔵安定性に優れる点から、一級アルキルアミン類、一級アルカノールアミン類、ポリオキシアルキレンアミン類が好ましく、一級アルカノールアミン類、ポリオキシアルキレンポリアミン類がより好ましい。
【0058】
前記ポリオキシアルキレンアミン類としては、例えば、下記構造式(a2-1)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【化1】
[式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、またはt-ブチル基であり、R2は独立に、エチレン基、1,2-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,3-プロピレン基であり、R3はメチレン基、エチレン基、1,2-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,3-プロピレン基であり、nは繰り返し単位の平均値を意味し、2~100である。]
【0060】
前記ポリオキシアルキレンアミン類の分子量は、貯蔵安定性および防食性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは300~5,000、より好ましくは400~1,500である。
【0061】
前記ポリオキシアルキレンアミン類としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、「ジェファーミン M-600」(重量平均分子量:600)、「ジェファーミン M-1000」(重量平均分子量:1,000)、「ジェファーミン M-2005」(重量平均分子量:2,000)、「ジェファーミン M-2070」(重量平均分子量:2,000)(以上、いずれもハンツマン社製)が挙げられる。これらの中でも、「ジェファーミン M-600」、「ジェファーミン M-1000」が好ましい。
【0062】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、得られる塗膜の強靭性および基材に対する密着性等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
前記エポキシ樹脂(a1)は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0063】
前記反応生成物が、分子中に1個以上のカルボキシ基を有する樹脂となるには、エポキシ樹脂(a1)として、カルボキシ基を有する化合物を用いてもよく、前記化合物(a2)として、カルボキシ基を有する化合物を用いてもよく、これらを反応させる際にカルボキシ基を生じさせてもよく、また、これらを反応させた後、最終的に得られる樹脂がカルボキシ基を有するように変性などを行ってもよいが、前記反応の際に、前記エポキシ樹脂(a1)および化合物(a2)以外の、不飽和カルボン酸(a3)を用いることが好ましい。
【0064】
前記不飽和カルボン酸(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0065】
前記エポキシ樹脂(a1)、化合物(a2)および不飽和カルボン酸(a3)を反応させる順番は特に制限されないが、前述のような酸価およびアミン価を満たす樹脂を容易に得ることができる等の点から、エポキシ樹脂(a1)と化合物(a2)とを反応(以下「反応1」ともいう。)させ、次いで、反応1で得られた化合物と、不飽和カルボン酸(a3)とを反応(以下「反応2」ともいう。)させることが好ましい。
これらの反応1および2は、従来公知の方法で行うことができる。
【0066】
前記反応1における、エポキシ樹脂(a1)と化合物(a2)との混合比は、得られる樹脂(A2)にエポキシ基が残存すると、本組成物の貯蔵安定性が低下する場合があるため、得られる樹脂(A2)にエポキシ基ができるだけ残存しないような比であることが好ましく、例えば、エポキシ基1モルに対し、アミノ基が、好ましくは1.1~1.5モル程度となる量、より好ましくは1.1~1.3モル程度となる量である。
【0067】
前記反応2における、前記反応1で得られた化合物と、前記不飽和カルボン酸(a3)との混合比は、得られる樹脂(A2)に1級または2級のアミノ基が残存すると、得られる塗膜の防食性が低下する場合があるため、アミノ基1モルに対し、カルボキシ基が1.1~1.5モル程度となる量が好ましく、1.1~1.3モル程度となるように混合することがより好ましい。
【0068】
前記樹脂(A2)としては、市販品を用いてもよく、例えば、ビスフェノールA構造および1分子中に1個以上のカルボキシ基を有する水性アミン変性エポキシ樹脂である、EPICLON C-250EP(DIC(株)製、エポキシ基不含、不揮発分の酸価:5.7mgKOH/g、不揮発分のアミン価:60mgKOH/g)が挙げられる。
【0069】
前記樹脂(A2)100質量%中の不揮発分(樹脂)の含有量は、調製容易性、保存安定性等により優れる組成物を得ることができる等の点から、好ましくは30~75質量%、より好ましくは35~60質量%である。
前記樹脂(A2)の残分には、水が含まれていることが好ましく、必要により、界面活性剤等の従来公知の成分が含まれていてもよい。
【0070】
[(メタ)アクリル樹脂(B)]
前記樹脂(B)は、硬化剤(A)以外の樹脂であり、モノマーとして(メタ)アクリル化合物を用いて得られる樹脂であれば特に制限されないが、貯蔵安定性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、本組成物の調製に用いる(メタ)アクリル樹脂(B)は水性樹脂であることが好ましく、エマルション(ラテックスを含む)の形態である
ことがより好ましい。
本組成物は、第1剤として硬化剤(A)および水(D)を含み、第2剤として樹脂(C)を含む組成物において、第1剤に樹脂(B)を配合するため、特に、ポットライフが長く、乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐水性に優れる塗膜を容易に形成することができる。
本組成物に含まれる樹脂(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0071】
なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。同様の表現も同様のことを意味する。つまり、(メタ)アクリル樹脂(B)は、アクリル樹脂であってもよく、メタクリル樹脂であってもよい。
【0072】
樹脂(B)は、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体または共重合体、(メタ)アクリルモノマーとその他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0073】
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸シクロへキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;
が挙げられる。
これらの(メタ)アクリルモノマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸オクチルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことがより好ましく、耐水性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、少なくとも(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが特に好ましい。
【0075】
(メタ)アクリルモノマーと共重合されるその他のモノマーとしては、例えば、
スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエスエル系モノマー;
無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和多価カルボン酸またはその無水物;
マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル等の不飽和多価カルボン酸誘導体のエステル類;
N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド;
エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;
が挙げられる。
これらのモノマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0076】
前記その他のモノマーとしては、耐水性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、芳香族ビニル系モノマーを含むことが好ましく、スチレンを含むことがより好ましく、スチレンを含み、ニトリル基含有モノマー、特にアクリロニトリルを含有しないことが特に好ましい。
【0077】
樹脂(B)の不揮発分の酸価は、好ましくは10~70mgKOH/g、より好ましくは20~60mgKOH/gである。
酸価が前記範囲にある樹脂(B)を用いることで、乾燥性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性に優れる塗膜を容易に形成できる。
前記酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定できる。
【0078】
樹脂(B)の不揮発分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000~200,000であり、塗工性能に優れる組成物が得られ、塗膜物性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、より好ましくは80,000~160,000である。
【0079】
本組成物中の樹脂(B)の不揮発分の含有量は、ポットライフが長く、乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐水性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%である。
【0080】
例えば、本組成物を下塗り塗料、中塗り塗料または上塗り塗料として使用する場合には、組成物中の樹脂(B)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%であり、また、例えば、本組成物をジンクプライマーとして使用する場合には、本組成物中の樹脂(B)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%である。
【0081】
本組成物中の樹脂(B)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、硬化剤(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の不揮発分の合計100質量%に対し、好ましくは20~95質量%、より好ましくは25~90質量%である。
【0082】
例えば、本組成物を下塗り塗料、中塗り塗料または上塗り塗料として使用する場合には、本組成物中の樹脂(B)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、硬化剤(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の不揮発分の合計100質量%に対し、好ましくは25~90質量%であり、また、例えば、本組成物をジンクプライマーとして使用する場合には、本組成物中の樹脂(B)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、硬化剤(A)、樹脂(B)および樹脂(C)の不揮発分の合計100質量%に対し、好ましくは20~60質量%である。
【0083】
[水(D)]
前記硬化剤(A)および樹脂(B)には水が含まれている場合があり、また、前記硬化剤(A)および樹脂(B)には水が含まれていることが好ましい。このため、前記硬化剤(A)および樹脂(B)に含まれている水を水(D)としてもよいが、本組成物の調製をより容易にし、貯蔵安定性および塗装作業性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、本組成物は、前記硬化剤(A)および樹脂(B)に含まれ得る水の他に、さらに水(D)を配合することが好ましい。
前記水(D)としては特に制限されず、水道水等を用いてもよいが、イオン交換水等を用いることが好ましい。
【0084】
第1剤中の水の含有量(硬化剤(A)および樹脂(B)等に含まれ得る水を含む)は、特に制限されないが、好ましくは10~50質量%である。
また、第1剤中の水の含有量は、所望の水性塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、第1剤中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70~100質量%、特に好ましくは80~100質量%である。
【0085】
[顔料(E)]
本組成物は、塗膜の強度、防食性、色相等の付与などの点から、顔料(亜鉛末、フラッシュラスト防止剤を除く)を含有することが好ましい。該顔料としては、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等が挙げられ、有機系、無機系の何れであってもよい。
顔料(E)としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0086】
前記体質顔料としては、従来公知の体質顔料を用いることができ、例えば、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスフレーク、プラスチックフレークが挙げられる。
【0087】
本組成物が体質顔料を含有する場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~70質量%、より好ましくは1.5~60質量%である。
【0088】
本組成物が体質顔料を含有する場合であって、例えば、本組成物を下塗り塗料、中塗り塗料または上塗り塗料として使用する場合、本組成物中の体質顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%であり、また、例えば、本組成物をジンクプライマーとして使用する場合、本組成物中の体質顔料の不揮発分の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%である。
【0089】
前記着色顔料としては、従来公知の着色顔料を用いることができ、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料、鱗片状酸化鉄、ステンレスフレーク等の光沢顔料が挙げられる。
【0090】
本組成物が着色顔料を含有する場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.1~25質量%である。
【0091】
前記防錆顔料としては、従来公知の防錆顔料を用いることができ、例えば、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、モリブデン酸亜鉛系化合物、モリブデン酸アルミニウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、トリポリリン酸亜鉛系化合物、ホウ酸亜鉛系化合物、ホウ酸バリウム系化合物、金属イオン交換シリカ系化合物が挙げられる。これらの中でも、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点からは、リン酸アルミニウム系化合物およびリン酸亜鉛系化合物が好ましく、また、非鉄金属製基材やステンレス製基材との密着性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点からは、金属イオン交換シリカ系化合物が好ましく、カルシウムイオン交換シリカ系化合物およびマグネシウムイオン交換シリカ系化合物がより好ましい。
【0092】
このような防錆顔料の市販品としては、例えば、リン酸亜鉛系としてLFボウセイPW2(キクチカラー(株)製)、リン酸アルミニウム系としてLFボウセイ PM-303W(キクチカラー(株)製)、トリポリリン酸アルミニウム系化合物としてK-WHTE #140W(テイカ(株)製)、カルシウムイオン交換シリカ系化合物としてサイロマスク 55(富士シリシア化学(株)製)、マグネシウムイオン交換シリカ系化合物としてサイロマスク 52(富士シリシア化学(株)製)が挙げられる。
【0093】
本組成物が防錆顔料を含有する場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0094】
[揺変剤(タレ止め・沈降防止剤)]
本組成物は、塗装時の厚塗り性、タレ止め性の向上、亜鉛末や顔料等の水や有機溶剤に対する不溶分の沈降防止のため、揺変剤を含有することが好ましい。
揺変剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0095】
揺変剤としては、例えば、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系塩類、ベントナイトクレイ、ヘクトライトクレイ等のクレイ類および該クレイ類の有機変性物(例:有機変性ヘクトライトクレイ)、酸化ポリエチレン系ワックス、エチレン・酢酸ビニル系ワックス、ポリアマイド系ワックス、水添ヒマシ油系ワックス、合成微粉シリカが挙げられる。これらの中でも、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、有機変性ヘクトライトクレイ、酸化ポリエチレン系ワックス、エチレン・酢酸ビニル系ワックス、ポリアマイド系ワックスなどの有機系揺変剤が好ましい。
【0096】
本組成物が揺変剤を含有する場合、その含有量は、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~3.5質量%、より好ましくは0.05~3質量%である。
【0097】
[分散剤]
本組成物は、該組成物における亜鉛末や顔料等の分散性を向上し、外観が良好な塗膜を容易に形成でき、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、分散剤を含有することが好ましい。
分散剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0098】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、リン酸基、アミノ基、これらの塩の基、アンモニウム塩基等の顔料吸着基(顔料親和性基)を有し、脂肪酸、ポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等の相溶性鎖を有する共重合体等の各種分散剤が挙げられる。
【0099】
本組成物が分散剤を含有する場合、その含有量は、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0100】
[フラッシュラスト防止剤]
水性塗料を活性な鋼材表面などに塗装する場合、塗装直後から乾燥過程において、該鋼材表面から鉄イオンが溶出することなどに起因する、発錆およびその錆などが塗膜表面に浮き出てくるフラッシュラストが起こる場合がある。特に、高温多湿条件下においてフラッシュラストの発生が顕著な場合がある。
このようなフラッシュラストを抑制する目的で、本組成物にはフラッシュラスト防止剤を用いることが好ましい。
フラッシュラスト防止剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0101】
フラッシュラスト防止剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩;安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アンモニウムなどの安息香酸塩;フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウムなどのフィチン酸塩;セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪酸の塩;アルキルリン酸、ポリリン酸などのリン酸誘導体;タンニン酸塩;N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、これらのアルカリ金属塩などのアミン系キレート剤;4-メチル-γ-オキソ-ベンゼンブタン酸とN-エチルモルホリンの付加反応物;モノアルキルアミンやポリアミン、第四級アンモニウムイオンなどをトリポリリン酸二水素アルミニウムなどの層状リン酸塩にインターカレートしてなる層間化合物;ヒドラジド化合物、セミカルバジド化合物、ヒドラゾン化合物などのヒドラジン誘導体が挙げられる。
【0102】
これらの中でも、耐フラッシュラスト性に優れ、安価である等の点から、亜硝酸塩(例:ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩)、安息香酸塩(例:ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩)が好ましく、使用量が少なくても、高い耐フラッシュラスト性を示す組成物を容易に得ることができる等の点から、亜硝酸塩がより好ましく、亜硝酸ナトリウムが特に好ましい。
【0103】
本組成物がフラッシュラスト防止剤を含有する場合、その含有量は、耐フラッシュラスト性に優れる組成物を容易に得る等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.03~1質量%である。
【0104】
[消泡剤]
本組成物は、該組成物の製造時や塗装時に泡の発生を抑えることができ、または、本組成物中に発生した泡を破泡することができ、所望の物性の塗膜を容易に形成することができる等の点から、消泡剤を含有することが好ましい。
前記消泡剤は、市販品でもよく、該市販品としては、例えば、「BYK-320」、「BYK-066N」、「BYK-1790」(いずれもビックケミー・ジャパン(株)製)、「TEGO Airex 902W」(Evonik社製)が挙げられる。
【0105】
本組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、泡の発生を十分に抑えることができ、所望の物性の塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0106】
[造膜助剤]
本組成物は、水を含有することに起因し、冬季に組成物が凍結することがあるため、また、低温下における成膜性や得られる塗膜の仕上がり外観を向上させる等の点から、造膜助剤を含むことが好ましい。
【0107】
前記造膜助剤としては、水系塗料組成物に通常使用されるものを用いることができ、例えば、炭素数5~10の直鎖状または分岐状の脂肪族アルコール類;芳香環を有するアルコール類;(ポリ)エチレングリコールまたは(ポリ)プロピレングリコール等のモノエーテル類;(ポリ)エチレングリコールエーテルエステル類;(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル類;が挙げられる。
【0108】
本組成物が造膜助剤を含有する場合、その含有量は、低温下における成膜性や外観に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。
【0109】
[可塑剤]
本組成物を非鉄金属製基材またはステンレス製基材の下塗り塗料として用いる場合、可塑剤を含有することが好ましい。
該可塑剤としては、従来公知の可塑剤を用いることができ、例えば、グリコールエーテル系ポリマー、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、リシノール酸エステル、ポリエステル、酢酸エステル、スルホンアミド等の可塑剤が挙げられる。
【0110】
本組成物が可塑剤を含有する場合、その含有量は、非鉄金属やステンレス面との密着性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.5質量%である。
【0111】
[増粘剤]
本組成物は、塗装時のタレを抑制できる等の点から、増粘剤を含有することが好ましい。
該増粘剤としては、従来公知の増粘剤を用いることができ、例えば、ポリサッカライド系、アルカリ増粘型、ポリウレタン会合型、ポリエーテル会合型、ポリオレフィン系、セルロース系等の増粘剤が挙げられる。
【0112】
本組成物が増粘剤を含有する場合、その含有量は、塗装時のタレを十分に抑制できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~0.4質量%、より好ましくは0.15~0.35質量%である。
【0113】
[有機溶剤]
第1剤が水を含有する場合、冬季における凍結を抑制するため、また、塗装作業性により優れる組成物を得るため、任意の量で水と混和可能な有機溶剤を用いてもよい。
有機溶剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0114】
このような有機溶剤としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等の炭素数1~3のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0115】
有機溶剤の含有量は、本組成物中のVOC含有量が前記範囲となる量で用いることが好ましい。
【0116】
<第2剤>
本組成物の第2剤はエポキシ当量が270以下である非水性エポキシ樹脂(C)を含有すれば特に制限されず、実質的に該樹脂(C)のみからなってもよいし、本発明の効果を損なわない範囲において、該樹脂(C)以外の成分を含んでいてもよい。該樹脂(C)以外の成分としては、前記第1剤の欄に記載した他の成分と同様の成分に加え、亜鉛末(F)挙げられる。
該他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0117】
また、第2剤は、前記と同様の理由等の点から、造膜助剤を含有することが好ましく、該造膜助剤としては、第1剤の欄で挙げた造膜助剤と同様の造膜助剤等が挙げられる。
【0118】
<エポキシ樹脂(C)>
前記樹脂(C)としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、およびそのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマー等が挙げられる。
樹脂(C)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0119】
樹脂(C)としては、低温での乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐水性および防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、非水性エポキシ樹脂、つまり、水に溶解または分散できないエポキシ樹脂である。
非水性エポキシ樹脂としては、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定した光透過率が、好ましくは1%以上、より好ましくは10%以上であるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0120】
樹脂(C)のエポキシ当量(樹脂(C)の不揮発分のエポキシ当量)は、低VOC含有量の塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは100~270、より好ましくは100~200である。エポキシ当量がこのような範囲にあるエポキシ樹脂としては、液状または半固形状のエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ当量が前記範囲にあると、低VOC含有量の塗料組成物を容易に得ることができ、本発明の効果がより発揮されるため好ましい。エポキシ当量が270を超える場合、低VOC含有量の塗料組成物を容易に得ることができない傾向にある。
前記エポキシ当量は、樹脂の不揮発分について、JIS K 7236:2001に基づいて算出される。
【0121】
なお、本組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、エポキシ当量が270を超えるエポキシ樹脂を併用することもでき、樹脂(C)100質量部に対する、エポキシ当量が270を超えるエポキシ樹脂の割合は、低VOC含有量の塗料組成物を容易に得ることができる等の観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0122】
樹脂(C)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、基材に対する密着性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のエポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0124】
樹脂(C)としては、例えば、エピクロルヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテルタイプ);エピクロルヒドリン-ビスフェノールADエポキシ樹脂;エピクロルヒドリン-ビスフェノールFエポキシ樹脂;エポキシノボラック樹脂;3,4-エポキシフェノキシ-3',4'-エポキシフェニルカルボキシメタン等から得られる脂環式エポキシ樹脂;エピクロルヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂中のベンゼン環に結合している水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンと脂肪族2価アルコールとから得られる脂肪族エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンとトリ(ヒドロキシフェニル)メタンとから得られる多官能性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0125】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどの縮重合物が挙げられる。
【0126】
樹脂(C)は、従来公知の方法で合成した化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、常温(15~25℃の温度、以下同様。)で液状のものとして、「EPOKUKDO YD-128」(KUKDO社製、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、不揮発分100%、エポキシ当量184~190、粘度11,500~13,500mPa・s/25℃)、「E-028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、不揮発分100%、エポキシ当量180~190、粘度12,000~15,000mPa・s/25℃)、「jER-807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、エポキシ当量160~175、粘度3,000~4,500mPa・s/25℃)、「E-028-90X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのキシレン溶液(828タイプエポキシ樹脂溶液、不揮発分90%)、不揮発分のエポキシ当量約190)等が挙げられる。常温で半固形状のものとして、「jER-834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270、不揮発分100%)、「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型半固形状エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液、不揮発分85%)、不揮発分のエポキシ当量約255)等が挙げられ、ノボラック型エポキシ樹脂である「D.E.N. 425」(DOW Chemical社製、エポキシ当量169~175、不揮発分100%)、「D.E.N. 431」(DOW Chemical社製、エポキシ当量172~179、不揮発分100%)および「D.E.N. 438」(DOW Chemical社製、エポキシ当量176~181、不揮発分100%)等が挙げられる。
【0127】
本組成物の不揮発分100質量%に対する、樹脂(C)の含有量は、好ましくは0.5~25質量%、より好ましくは1~20質量%である。
また、第2剤中の樹脂(C)の含有量は、好ましくは1~95質量%、より好ましくは1.5~90質量%である。
樹脂(C)の含有量が前記範囲にあると、防食性および基材への密着性により優れる防食塗膜を容易に得ることができる。
【0128】
例えば、本組成物を下塗り塗料、中塗り塗料または上塗り塗料として使用する場合には、本組成物中の樹脂(C)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~25質量%、より好ましくは1.5~20質量%であり、また、例えば、本組成物をジンクプライマーとして使用する場合には、本組成物中の樹脂(C)の不揮発分の含有量は、前記と同様の理由から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5~10質量%である。
【0129】
[亜鉛末(F)]
例えば、本組成物をジンクプライマーとして用いる場合には、本組成物に亜鉛末(F)を配合する。
亜鉛末(F)としては、金属亜鉛の粉末、または、亜鉛を主体(亜鉛の含有量が全体の90質量%以上)とする合金(例:亜鉛とアルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金、好ましくは亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-錫合金)の粉末が挙げられる。
亜鉛末(F)としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0130】
亜鉛末(F)の形状は特に制限されないが、より防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、メディアン径(D50)が、好ましくは2~15μm、より好ましくは2~7μmである粒子状亜鉛末が望ましい。
該D50は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0131】
例えば、本組成物をジンクプライマーとして用いる場合、本組成物の不揮発分100質量%に対する亜鉛末(F)の含有量は、より防食性、耐水性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは55~90質量%、より好ましくは60~85質量%である。
【0132】
<防食塗料組成物の調製方法>
前記第1剤および第2剤は、これらの剤に配合する各成分を混合(混練)することで、調製することができ、この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。
本組成物は、これら第1剤、第2剤および必要に応じて用いられる他の剤(例:第3剤)を混合(混練)することで、調製することができる。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
【0133】
≪塗膜、塗膜付き基材≫
本発明に係る塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前記本組成物を用いて形成され、本発明に係る塗膜付き基材(以下「本塗膜付き基材」ともいう。)は、本塗膜と基材とを有する積層体である。
【0134】
前記基材の材質としては特に制限されず、例えば、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛メッキ、亜鉛溶射等)、ステンレス(SUS304、SUS410等)が挙げられる。
また、前記基材として、例えば、マイルドスチール(SS400等)を用いる場合、必要により、グリットブラスト等で基材表面を研磨するなど、素地調整(例:算術平均粗さ(Ra)が30~75μm程度になるよう調整)しておくことが望ましい。
前記基材としては、さらに、基材に付着した錆、汚れ、塗料(旧塗膜)等を落とす洗浄処理やブラスト処理等の前処理を行った基材であってもよい。
【0135】
前記基材としては特に制限されず、防食性が求められる基材に対し、制限なく使用することができるが、本組成物を用いる効果がより発揮される等の点から、好ましくは、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、タンク、コンテナなどの(鉄鋼)構造物等が挙げられる。
【0136】
本塗膜の乾燥膜厚は特に限定されないが、十分な防食性を有する塗膜が得られる等の点から、通常は10~100μm、好ましくは15~80μm、より好ましくは20~60μmである。
【0137】
本塗膜付き基材は、本塗膜と基材とを含む積層体であって、基材への密着性や防食性の向上を目的とした下塗り塗膜(プライマー塗膜)、防食性の向上を目的とした中塗り塗膜、耐候性や美観等に優れる上塗り塗膜を有していてもよい。
具体的には、本組成物をジンクプライマーとして用いる場合には、本塗膜上に、中塗り塗膜や上塗り塗膜を形成してもよく、本組成物を中塗り塗料として用いる場合には、本塗膜と基材との間に下塗り塗膜を形成してもよく、本塗膜上に上塗り塗膜を形成してもよく、本組成物を上塗り塗料(内面上塗り塗料)として用いる場合には、本塗膜と基材との間に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成してもよく、本組成物を非鉄金属製基材またはステンレス製基材の下塗り塗料として用いる場合には、本塗膜上に中塗り塗膜や上塗り塗膜を形成してもよい。
前記下塗り塗膜としては、エポキシ樹脂系等の各種プライマー組成物より形成される塗膜等が挙げられる。前記中塗り塗膜としては、(メタ)アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等の各種中塗り塗料組成物より形成される塗膜等が挙げられる。また、前記上塗り塗膜としては、(メタ)アクリル樹脂系、(メタ)アクリルシリコン樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系等の各種上塗り塗料組成物より形成される塗膜等が挙げられる。また、本組成物の組成等を変え、本組成物で下塗り塗膜、中塗り塗膜および上塗り塗膜を形成してもよい。
【0138】
≪塗膜付き基材の製造方法≫
本発明に係る塗膜付き基材の製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、下記工程[1]および[2]を含む。
工程[1]:本組成物を基材に塗装する工程
工程[2]:基材上に塗装された本組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【0139】
<工程[1]>
前記工程[1]における塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアースプレー塗装等のスプレー塗装、はけ塗り、ローラー塗りなどの従来公知の方法が挙げられる。これらの中でも、前記構造物などの大面積の基材を容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
このような塗装の際には、得られる塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装することが好ましい。
【0140】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい乾燥膜厚に応じて適宜調整すればよいが、例えば、エアレススプレー塗装の場合、1次(空気)圧:0.3~0.6MPa程度、2次(塗料)圧:10~15MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度が好ましい。
【0141】
なお、本組成物を塗装する際に、所望に応じて、適正な塗料組成物の粘度に調整してもよい。このような粘度調整に用いる希釈剤としては、水を用いることが好ましい。
この場合、各塗装方法に適した塗料粘度となるように希釈剤を用いることが好ましく、例えば、エアレススプレー塗装する場合、本組成物100質量部に対する希釈剤の使用量は、好ましくは1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0142】
前記スプレー塗装に適した本組成物(必要により希釈された組成物)の粘度は、測定器としてB型粘度計(リオン(株)製、型式VT-06)を用いた、23℃の測定条件下での粘度が、好ましくは500~5,000mPa・s、より好ましくは1,000~3,000mPa・sである。
【0143】
<工程[2]>
前記工程[2]における乾燥条件としては、特に制限されず、塗膜の形成方法、基材の種類、用途、塗装環境等に応じて適宜設定すればよいが、乾燥温度は、常温乾燥の場合、通常5~35℃であり、熱風乾燥機等で強制乾燥する場合、通常30~90℃、より好ましくは40~80℃である。本組成物によれば、このような常温乾燥でも組成物を乾燥・硬化させることができる。
乾燥時間は、塗膜の乾燥方法によって異なり、常温乾燥の場合、従来の塗料と同様に1日~7日程度であってもよいが、本組成物によれば、好ましくは1.5時間~6時間、より好ましくは1.5時間~3時間で乾燥・硬化させることができる。また、強制乾燥する場合、従来の塗料と同様に5分~60分程度であってもよいが、本組成物によれば、好ましくは5分~30分、より好ましくは10分~20分で乾燥・硬化させることができる。
【実施例0144】
本発明について実施例を挙げ、更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0145】
[実施例1]
容器に、イオン交換水を24質量部、分散剤1を1質量部、フラッシュラスト防止剤を0.1質量部、消泡剤を0.1質量部、着色顔料を4質量部、体質顔料を34質量部、および、揺変剤を0.2質量部添加し、ハイスピードディスパーで粒ゲージ40μm以下まで分散し、ミルベースを作製した。得られたミルベースに、アクリル樹脂1を32質量部、硬化剤A-1を2.6質量部、造膜助剤を1.2質量部、消泡剤を0.3質量部、および、増粘剤を0.5質量部添加した後、ハイスピードディスパーで混合し、第1剤を調製した。
容器に、エポキシ樹脂1を70質量部、および、造膜助剤を30質量部添加した後、ハイスピードディスパーで混合し、第2剤を調製した。
その後、前述のようにして得られた第1剤95質量部と、第2剤5質量部とを、均一になるまでハイスピードディスパーで混合し、塗料組成物を調製した。
【0146】
[実施例2~17および比較例1~9]
表1~5に記載の各原材料を、該表に記載の量(質量部)で用い、表1~5に記載の混合比で混合した以外は実施例1と同様にして、塗料組成物を調製した。
表1~5中の原材料の詳細を表6に示す。
【0147】
実施例1~8で得られた塗料組成物は、中塗り塗料として好適に用いることができ、実施例9で得られた塗料組成物は、タンクやコンテナ等の内面上塗り塗料として好適に用いることができ、実施例10で得られた塗料組成物は、ジンクプライマーとして好適に用いることができ、実施例11~17で得られた塗料組成物は、非鉄金属製基材またはステンレス製基材の下塗り塗料として好適に用いることができる。
【0148】
<乾燥性>
ASTM D5895に基づき、実施例および比較例の各塗料組成物を、すき間0.2mmのアプリケーターを用いて塗装し、23℃または5℃で塗装、乾燥させた際の、塗膜面の乾燥状態が、半硬化状態(Tack-free)に達するまでの時間および完全硬化状態(Dry-Hard)に達するまでの時間を測定した。結果を表1~5に示す。
【0149】
[試験体作製方法1]
B型粘度計(リオン(株)製、型式VT-06)を用いて測定した、実施例1~8および比較例1~9の各塗料組成物の23℃での粘度が1,000mPa・sとなるように、イオン交換水を用いて各塗料組成物の粘度を調整した。
ブラスト処理鋼板(SS400、寸法:150mm×70mm×1.6mm(厚))上に平均乾燥膜厚が30μmとなるように、水性ジンクプライマー(「EKOMATE ZINC M」、中国塗料(株)製)をエアースプレーで塗布し、常温下で5分間乾燥した後、50℃で15分間熱風乾燥させ、下塗り塗膜を形成した。
続いて、該下塗り塗膜上に、粘度調整後の前記各塗料組成物を、平均乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥させた後、50℃で15分間熱風乾燥させ、中塗り塗膜を形成した。
その後、該中塗り塗膜上にアクリル樹脂系水性上塗り塗料(「EKOMATE FINISH」、中国塗料(株)製)を平均乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥させた後、50℃で30分間熱風乾燥させ、上塗り塗膜を形成した。
該上塗り塗膜を形成した後、23℃、相対湿度50%の環境下で7日間乾燥することで、後述の耐水性および防食性試験に用いる試験体(強制乾燥工程を経て作製した塗膜付き基材)を作製した。
【0150】
[試験体作製方法2]
B型粘度計(リオン(株)製、型式VT-06)を用いて測定した、実施例1~8および比較例1~9の各塗料組成物の23℃での粘度が1,000mPa・sとなるように、イオン交換水を用いて各塗料組成物の粘度を調整した。
ブラスト処理鋼板(SS400、寸法:150mm×70mm×1.6mm(厚))上に平均乾燥膜厚が30μmとなるように、水性ジンクプライマー(「EKOMATE ZINC M」、中国塗料(株)製)をエアースプレーで塗布し、5℃環境下で一昼夜乾燥させ、下塗り塗膜を形成した。
続いて、該下塗り塗膜上に、粘度調整後の前記各塗料組成物を、平均乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレーで塗布し、5℃環境下で一昼夜乾燥させ、中塗り塗膜を形成した。
その後、該中塗り塗膜上にアクリル樹脂系水性上塗り塗料(「EKOMATE FINISH」、中国塗料(株)製)を平均乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレーで塗布し、5℃環境下で一昼夜乾燥させ、上塗り塗膜を形成した。
該上塗り塗膜を形成した後、5℃環境下で一昼夜乾燥することで、後述の防食性試験に用いる試験体(5℃乾燥工程を経て作製した塗膜付き基材)を作製した。
【0151】
[試験体作製方法3]
前記B型粘度計を用いて測定した、実施例9の塗料組成物の23℃での粘度が1,000mPa・sとなるように、イオン交換水を用いて該組成物の粘度を調整した。
ブラスト処理鋼板(SS400、寸法:150mm×70mm×1.6mm(厚))上に平均乾燥膜厚が30μmとなるように、前記水性ジンクプライマーをエアースプレーで塗布し、常温下で5分間乾燥した後、50℃で15分間熱風乾燥させ、下塗り塗膜を形成した。
続いて、形成した下塗り塗膜上に、粘度調整後の前記塗料組成物を、平均乾燥膜厚が50μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥させた後、50℃で30分間熱風乾燥させ、上塗り塗膜を形成した。
上塗り塗膜を形成した後、23℃、相対湿度50%の環境下で7日間乾燥することで、後述の各種塗膜性能評価試験に用いる試験体(塗膜付き基材)を作製した。
【0152】
[試験体作製方法4]
前記B型粘度計を用いて測定した、実施例10の塗料組成物の23℃での粘度が1,000mPa・sとなるように、イオン交換水を用いて該組成物の粘度を調整した。
粘度調整後の塗料組成物を、ブラスト処理鋼板(SS400、寸法:150mm×70mm×1.6mm(厚))上に平均乾燥膜厚が30μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で5分間乾燥した後、50℃で15分間熱風乾燥させ、下塗り塗膜を形成した。
該下塗り塗膜上に、アクリル樹脂系水性中塗り塗料(「EKOMATE 100 PRIMER」、中国塗料(株)製)を平均乾燥膜厚が40μmとなるように、エアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥させた後、50℃で15分間熱風乾燥させ、中塗り塗膜を形成した。
その後、該中塗り塗膜上に前記アクリル樹脂系水性上塗り塗料を平均乾燥膜厚が40μmとなるように、エアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥させた後、50℃で30分間熱風乾燥させ、上塗り塗膜を形成した。
上塗り塗膜を形成した後、23℃、相対湿度50%の環境下で7日間乾燥することで、後述の各種塗膜性能評価試験に用いる試験体(塗膜付き基材)を作製した。
【0153】
[試験体作製方法5]
前記B型粘度計を用いて測定した、実施例11~17の塗料組成物の23℃での粘度が1,000mPa・sとなるように、イオン交換水を用いて該組成物の粘度を調整した。
粘度調整後の塗料組成物を、ステンレス鋼板(SUS410、寸法150mm×70mm×1.6mm(厚))上に平均乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥した後、50℃で15分間熱風乾燥させ、下塗り塗膜を形成した。
該下塗り塗膜上に、前記アクリル樹脂系水性上塗り塗料を平均乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥させた後、50℃で30分間熱風乾燥させ、上塗り塗膜を形成した。
上塗り塗膜を形成した後、23℃、相対湿度50%の環境下で7日間乾燥することで、後述の各種塗膜性能評価試験に用いる試験体(塗膜付き基材)を作製した。
【0154】
<耐水性>
耐液体性(水浸せき法)に関するJIS K 5600-6-2:2016に基づいて、前記のように作製した試験体を、23℃の水に96時間浸漬する水浸漬試験を実施し、下記評価基準に従って、耐水性を評価した。結果を表1~5に示す。
(評価基準)
○:耐水性試験後の塗膜に膨れが発生していない
△:耐水性試験後の塗膜に膨れが発生しており、JIS K 5600-8-2:2008で規定される、膨れの大きさが2であり、かつ、量(密度)が3以下である
×:耐水性試験後の塗膜に膨れが発生しており、JIS K 5600-8-2:2008で規定される、膨れの大きさが2であり、かつ、量(密度)が4以上である、若しくは、膨れの大きさが3以上である
【0155】
<防食性>
前記のように作製した試験体の、長辺下端から5cmであり、かつ、短辺左端から1cmの箇所から、長辺下端から1cmであり、かつ、短辺右端から1cmの箇所に、鋼板またはステンレス鋼板が露出する程度の深さの傷(スクライブ)を入れ、同様に、長辺下端から5cmであり、かつ、短辺右端から1cmの箇所から、長辺下端から1cmであり、かつ、短辺左端から1cmの箇所に、鋼板またはステンレス鋼板が露出する程度の深さの傷(スクライブ)を入れた。
該試験体をJIS K 5600-7-1:1999に基づいて、塩水濃度5wt%、温度35℃、相対湿度98%の塩水噴霧条件の塩水噴霧試験機中に、試験体のスクライブ側が下になるように入れ、24時間保持することで塩水噴霧試験を行い、下記評価基準に従って、防食性を評価した。結果を表1~5に示す。
(評価基準)
○:塩水噴霧試験後の塗膜にさびおよび膨れが発生していない。
△:塩水噴霧試験後の塗膜にさびまたは膨れが発生しており、JIS K 5600-8-3:2008で規定されるさびの等級がRi1以下(Ri1、Ri0)である、または、JIS K 5600-8-2:2008で規定される、膨れの大きさが2であり、かつ、量(密度)が3以下である。
×:塩水噴霧試験後の塗膜にさびまたは膨れが発生しており、JIS K 5600-8-3:2008で規定されるさびの等級がRi2以上(Ri2、Ri3・・・)である、または、JIS K 5600-8-2:2008で規定される、膨れの大きさが2であり、かつ、量(密度)が4以上であるか、膨れの大きさが3以上である。
【0156】
<ポットライフ>
実施例および比較例の各塗料組成物を、内径11cm、高さ12.5cmの容器に1000g量り採り、35℃の恒温槽中で保持し、該組成物に沈殿または凝集が生じるまでの時間を測定した。結果を表1~5に示す。
【0157】
<二次密着性>
[碁盤目付着性試験]
前記防食性試験後の試験体を水洗し、次いで、温度23℃、湿度50%の環境下で1日乾燥させた試験体の塩水が噴霧された箇所であって、かつ、前記スクライブが形成されていない箇所に対し、JIS K 5600-5-6:1999に準じて、2mm×2mmの25マスの碁盤目付着性試験(クロスカット法)を実施し、下記評価基準に従って、該25マスが占める塗膜面積100%に対する、ステンレス鋼板から剥離した塗膜の面積の割合(%)で付着性を評価した。結果を表5に示す。
(評価基準)
○:剥離した塗膜の面積が15%以下
×:剥離した塗膜の面積が15%より大きい
【0158】
[クリープ幅測定]
前記防食性試験後の試験体を水洗し、次いで、温度23℃、湿度50%の環境下で1日乾燥させた試験体の評価対象部において、クリープ幅(塗膜とステンレス鋼板とが剥離している箇所のうち、スクライブ部から最も遠い箇所とスクライブ部との間の長さ)を測定した。なお、ここで、「評価対象部」とは、試験片の端部から1cmの範囲を除いた部分を指す。結果を表5に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
前記実施例1では、エポキシ樹脂1を用いているが、エポキシ樹脂1の代わりに、「jER-834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270、不揮発分100%)や、「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型半固形状エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液、不揮発分85%)、不揮発分のエポキシ当量約255)等の#834タイプのエポキシ樹脂を用いても前記と同様の結果を示した。
但し、#834タイプのエポキシ樹脂を用いると、前記実施例1に比べ、VOC含有量が約10g/L増加する。
【0166】
<エポキシ樹脂の性質>
前記実施例および比較例で用いたエポキシ樹脂の性質を以下のように測定した。
サンプル瓶に、実施例および比較例で用いたエポキシ樹脂(有姿)0.1gを、純水90gとブチルカルビトール10gとの混合溶液に加え、サンプル瓶をよく振り混ぜ測定液を得た。
なお、エポキシ樹脂(有姿)0.1gとは、エポキシ樹脂として、不揮発分がa%のエポキシ樹脂を0.1g用いる場合、エポキシ樹脂(有姿)は、0.1gであり、0.1×a/100gではない。
【0167】
前記混合溶液を用いてベースライン測定を行った後、得られた測定液の透過率を以下の測定条件で測定した。リファレンスには前記混合溶液を使用した。波長600nmの光の透過率を下記表7に示す。
(測定条件)
・装置:SolidSpec-3700((株)島津製作所製)
・測定波長範囲:200~800nm
・スキャンスピード:300nm/min
・サンプリングピッチ:0.5nm
・スリット幅:5nm
・光源:重水素ランプ(200~310nm)およびハロゲンランプ(310~1400
nm)
・光路長(セルの厚さ)1cm
【0168】
【表7】
【0169】
なお、エポキシ樹脂3は、エポキシ樹脂2と同様に、エマルションであるため、エポキシ樹脂2と同様結果になると考えられる。