(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031170
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】トランジスタの補正係数設定方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G09G 3/32 20160101AFI20220210BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20220210BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20220210BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220210BHJP
【FI】
G09G3/32 A
H01L27/04 T
G09G3/20 611H
G09G3/20 670J
G09G3/20 642P
H01L33/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123538
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】63/062,898
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/070,842
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラフ マルホトラ
【テーマコード(参考)】
5C080
5C380
5F038
5F241
【Fターム(参考)】
5C080AA07
5C080DD05
5C080DD29
5C080JJ02
5C080JJ07
5C380AA03
5C380BA21
5C380BA38
5C380BA39
5C380BB03
5C380BB04
5C380BD04
5C380CA31
5C380CC26
5C380CF48
5C380CF49
5C380FA03
5C380GA17
5C380HA03
5C380HA06
5C380HA12
5F038AC00
5F038AV04
5F038DF03
5F038DT08
5F038DT10
5F038DT11
5F038DT12
5F038DT17
5F241BC05
5F241BC33
5F241BC47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トランジスタパラメータを推定するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】駆動トランジスタの補正係数設定方法は、複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定する段階305と、前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する段階310と、そして前記第1補正係数に基づいて色値(color value)に対応する電圧を前記トランジスタのゲートに印加する段階と、を含む。加算補正係数を設定する段階320をさらに含んでもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定する段階と、
前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する段階と、
前記第1補正係数に基づいて色値(color value)に対応する電圧を前記トランジスタのゲートに印加する段階と、
を含む、トランジスタの補正係数設定方法。
【請求項2】
加算補正係数を設定する段階をさらに含み、
前記第1補正係数は乗算補正係数であり、
前記乗算補正係数および前記加算補正係数を設定する段階は前記トランジスタの複数のパラメータを推定する段階を含む、請求項1に記載の補正係数設定方法。
【請求項3】
前記複数のパラメータはアルファ、しきい電圧および移動度を含む、請求項2に記載の補正係数設定方法。
【請求項4】
前記複数のパラメータを推定する段階は前記アルファと前記しきい電圧に対する二つの方程式を解く段階を含む、請求項3に記載の補正係数設定方法。
【請求項5】
前記二つの方程式のそれぞれは前記トランジスタの前記パラメータのうち前記アルファと前記しきい電圧にのみ依存する、請求項4に記載の補正係数設定方法。
【請求項6】
は
の50%以内の値を有し、
I
1は前記トランジスタ電流測定値のうち第1電流であり、
I
2は前記トランジスタ電流測定値のうち第2電流であり、
I
3は前記トランジスタ電流測定値のうち第3電流であり、
I
4は前記トランジスタ電流測定値のうち第4電流であり、
Vgs
1は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第1電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
2は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第2電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
3は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第3電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
4は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第4電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
V
thは前記しきい電圧であり、
αは前記アルファである、請求項4に記載の補正係数設定方法。
【請求項7】
は
の50%以内の値を有し、
I
1は前記トランジスタ電流測定値のうち第1電流であり、
I
2は前記トランジスタ電流測定値のうち第2電流であり、
Vgs
1は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第1電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
2は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第2電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
V
thは前記しきい電圧であり、
αは前記アルファである、請求項4に記載の補正係数設定方法。
【請求項8】
前記二つの方程式を解く段階は前記アルファと前記しきい電圧に対する近似数値解(approximate numerical solution)を求める段階を含み、
前記近似数値解は前記二つの方程式が満たされる限り誤差の程度を最小化する、請求項4に記載の補正係数設定方法。
【請求項9】
前記アルファと前記しきい電圧に基づいて最小二乗適合法(least squares fit)で前記移動度に対する解を求める段階をさらに含む、請求項4に記載の補正係数設定方法。
【請求項10】
前記パラメータはバイアス電流をさらに含む、請求項9に記載の補正係数設定方法。
【請求項11】
前記アルファ、前記しきい電圧および前記移動度に基づいて最小二乗適合法(least squares fit)で前記バイアス電流に対する解を求める段階をさらに含む、請求項10に記載の補正係数設定方法。
【請求項12】
前記複数のパラメータを推定する段階は前記しきい電圧に対する一つの方程式を解く段階を含み、
前記一つの方程式は前記トランジスタの前記パラメータのうち前記しきい電圧にのみ依存する、請求項3に記載の補正係数設定方法。
【請求項13】
は
の50%以内の値を有し、
I
1は前記トランジスタ電流測定値のうち第1電流であり、
I
2は前記トランジスタ電流測定値のうち第2電流であり、
I
3は前記トランジスタ電流測定値のうち第3電流であり、
I
4は前記トランジスタ電流測定値のうち第4電流であり、
Vgs
1は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第1電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
2は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第2電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
3は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第3電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
Vgs
4は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第4電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、
V
thは前記しきい電圧である、請求項12に記載の補正係数設定方法。
【請求項14】
前記加算補正係数を、有効しきい電圧がゼロに対応する値の20%以内の値に設定する段階をさらに含む、請求項3に記載の補正係数設定方法。
【請求項15】
前記乗算補正係数を、基準移動度と同じ有効移動度に対応する値の20%以内の値に設定する段階をさらに含む、請求項14に記載の補正係数設定方法。
【請求項16】
加算補正係数を設定する段階と、
前記第1補正係数である乗算補正係数、前記加算補正係数および前記色値に基づいて前記ゲートに前記電圧を設定する段階と、
前記トランジスタが駆動する電流と基準電流の差を測定する段階と、
前記差に基づいて前記乗算補正係数および前記加算補正係数を調整する段階と、
をさらに含む、請求項1に記載の補正係数設定方法。
【請求項17】
処理回路と、
電源と、
発光素子と、
前記電源と前記発光素子の間に接続されたトランジスタと、
を含み、
前記処理回路は、
複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定し、
前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する、システム。
【請求項18】
前記第1補正係数は乗算補正係数であり、
前記処理回路は加算補正係数を設定し、
前記乗算補正係数および前記加算補正係数の設定は前記トランジスタの複数のパラメータを推定することを含み、
前記複数のパラメータはアルファ、しきい電圧および移動度を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数のパラメータを推定することは前記アルファと前記しきい電圧に対する二つの方程式を解くことを含み、
前記二つの方程式のそれぞれは前記トランジスタの前記パラメータのうち前記アルファと前記しきい電圧にのみ依存する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
処理手段と、
電源と、
発光素子と、
前記電源と前記発光素子の間に連結されたトランジスタと、
を含み、
前記処理手段は、
複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定し、
前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランジスタの補正係数設定方法およびシステムに関する。
【0002】
本出願は2020年8月7日付で米国特許庁に出願した米国特許出願番号第63/062,898号の優先権を主張し、ここに引用することによってこの出願の全体内容を本願に含む。
【背景技術】
【0003】
不確実なパラメータを有するトランジスタを含むシステムまたは互いに異なるパラメータを有する複数のトランジスタを含むシステムでは、パラメータの不確実性または差を補正する回路でトランジスタを駆動することが有利である。これのために、トランジスタパラメータを推定するシステムおよび方法を用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トランジスタパラメータを推定するシステムおよび方法を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によるトランジスタの補正係数設定方法は、複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定する段階、前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する段階、及び前記第1補正係数に基づいて色値(color value)に対応する電圧を前記トランジスタのゲートに印加する段階を含む。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、前記方法は加算補正係数を設定する段階をさらに含み、前記第1補正係数は乗算補正係数であり、前記乗算補正係数および前記加算補正係数を設定する段階は前記トランジスタの複数のパラメータを推定する段階を含み得る。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記複数のパラメータはアルファ、しきい電圧および移動度を含み得る。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記複数のパラメータを推定する段階は前記アルファと前記しきい電圧に対する二つの方程式を解く段階を含み得る。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記二つの方程式のそれぞれは前記トランジスタの前記パラメータのうち前記アルファと前記しきい電圧にのみ依存し得る。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、
は
の50%以内の値を有し、I
1は前記トランジスタ電流測定値のうち第1電流であり、I
2は前記トランジスタ電流測定値のうち第2電流であり、I
3は前記トランジスタ電流測定値のうち第3電流であり、I
4は前記トランジスタ電流測定値のうち第4電流であり、Vgs
1は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第1電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
2は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第2電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
3は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第3電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
4は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第4電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、V
thは前記しきい電圧であり、αは前記アルファであり得る。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、
は
の50%以内の値を有し、I
1は前記トランジスタ電流測定値のうち第1電流であり、I
2は前記トランジスタ電流測定値のうち第2電流であり、Vgs
1は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第1電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
2は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第2電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、V
thは前記しきい電圧であり、αは前記アルファであり得る。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記二つの方程式を解く段階は前記アルファと前記しきい電圧に対する近似数値解(approximate numerical solution)を求める段階を含み、前記近似数値解は前記二つの方程式が満たされる限り誤差の程度を最小化し得る。
【0013】
本発明の一実施形態による補正係数設定方法は、前記アルファと前記しきい電圧に基づいて最小二乗適合法(least squares fit)で前記移動度に対する解を求める段階をさらに含み得る。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記パラメータはバイアス電流をさらに含み得る。
【0015】
本発明の一実施形態による補正係数設定方法は、前記アルファ、前記しきい電圧および前記移動度に基づいて最小二乗適合法(least squares fit)で前記バイアス電流に対する解を求める段階をさらに含み得る。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記複数のパラメータを推定する段階は前記しきい電圧に対する一つの方程式を解く段階を含み、前記一つの方程式は前記トランジスタの前記パラメータのうち前記しきい電圧にのみ依存し得る。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、
は
の50%以内の値を有し、I
1は前記トランジスタ電流測定値のうち第1電流であり、I
2は前記トランジスタ電流測定値のうち第2電流であり、I
3は前記トランジスタ電流測定値のうち第3電流であり、I
4は前記トランジスタ電流測定値のうち第4電流であり、Vgs
1は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第1電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
2は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第2電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
3は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第3電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、Vgs
4は前記複数のトランジスタ制御電圧のうち前記第4電流に対応するトランジスタ制御電圧であり、V
thは前記しきい電圧であり得る。
【0018】
本発明の一実施形態による補正係数設定方法は、前記加算補正係数を、有効しきい電圧がゼロに対応する値の20%以内の値に設定する段階をさらに含み得る。
【0019】
本発明の一実施形態による補正係数設定方法は、前記乗算補正係数を、基準移動度と同じ有効移動度に対応する値の20%以内の値に設定する段階をさらに含み得る。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記方法は、加算補正係数を設定する段階、前記第1補正係数である乗算補正係数、前記加算補正係数および前記色値に基づいて前記ゲートに前記電圧を設定する段階、前記トランジスタが駆動する電流と基準電流の差を測定する段階、そして前記差に基づいて前記乗算補正係数および前記加算補正係数を調整する段階をさらに含み得る。
【0021】
本発明の一実施形態によるシステムは、処理回路、電源、発光素子、そして前記電源と前記発光素子の間に接続されたトランジスタを含み、前記処理回路は、複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定し、前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記第1補正係数は乗算補正係数であり、前記処理回路は加算補正係数を設定し、前記乗算補正係数および前記加算補正係数の設定は前記トランジスタの複数のパラメータを推定することを含み、前記複数のパラメータはアルファ、しきい電圧および移動度を含み得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記複数のパラメータを推定することは前記アルファと前記しきい電圧に対する二つの方程式を解くことを含み、前記二つの方程式のそれぞれは前記トランジスタの前記パラメータのうち前記アルファと前記しきい電圧にのみ依存し得る。
【0024】
本発明の一実施形態によるシステムは、処理手段、電源、発光素子、そして前記電源と前記発光素子の間に接続されたトランジスタを含み、前記処理手段は、複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれトランジスタ電流測定値を決定し、前記トランジスタ電流測定値および前記トランジスタ制御電圧に基づいてトランジスタの第1補正係数を設定する。
【発明の効果】
【0025】
このようにすることによりトランジスタパラメータを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態によるトランジスタを含む回路のブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるトランジスタを含む回路のブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるトランジスタパラメータ推定および補正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付する図面を参照して以下に記載する詳細な説明はトランジスタパラメータ推定システムおよび方法の実施形態に関し、本発明の実施形態によって実現または利用される形態をすべて表現したものではない。以下添付する図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、互いに異なる実施形態で実現されるものと同じまたは均等の機能と構造も本発明の範囲内に含まれる。明細書全体にわたって同一または類似の構成要素に対しては同じ図面符号を付けた。
【0028】
図1を参照すると、コンピュータモニタなど映像表示装置で、複数の発光画素はそれぞれ駆動トランジスタ(drive transistor)115を含み得、駆動トランジスタ115は明るさ制御信号または色値(color value)に応答して発光ダイオード120など発光素子に電流を駆動する。駆動トランジスタ115は電源(power source)125に接続された電界効果トランジスタ(FET:field-effect transistor)であり得る。表示装置はこのような駆動トランジスタを非常に多く含み得、駆動トランジスタは完全に理想的でない場合がある。このようなシステムで(そしてトランジスタが制御されるべき他のシステムで)トランジスタパラメータの変化を補正し、実現しなければならない明るさを特定するために与えられた明るさ制御信号(例:コンピュータのビデオカードで受信したデジタル制御信号)がどの画素に印加されるかに関係なく実質的に同じ明るさを与えた方が良い。
【0029】
このようなシステムで、各トランジスタに対してパラメータを推算することができ、明るさ制御信号およびトランジスタのパラメータに基づいて各トランジスタに制御電圧を印加することができる。[例えば処理回路105(以下でさらに詳細に説明する)およびデジタル-アナログ変換器110が]制御電圧を調整して駆動するトランジスタと基準トランジスタのパラメータの間の差を補正し得る。例えば、明るさ制御信号に乗算(multiplicative)補正係数を印加(すなわち、乗算)することができ、(明るさ制御信号と乗算補正係数の)積に追加補正係数を印加し、補正係数[すなわち、乗算補正係数と加算補正係数]が通常の値(nominal value)に設定された場合、同じ明るさ制御信号に対して(仮想の、「理想的な」トランジスタであり得る)基準トランジスタ(reference transistor)が駆動する電流と実質的に同じ電流をそのトランジスタが駆動することができるようにする。
【0030】
複数のトランジスタ制御電圧のそれぞれに対してトランジスタが駆動する電流を測定することによって(すなわち、測定したトランジスタ電流を決定することによって)トランジスタのパラメータを推算し得る。ここで、「トランジスタが駆動する電流」はトランジスタのチャネルを介して(すなわち、ソースとドレインの間に)流れる電流である。ここで、「制御電圧」または「トランジスタ制御電圧」はゲート-ソース電圧である。
【0031】
測定したトランジスタ電流とトランジスタ制御電圧から、トランジスタのパラメータを推定することができ、このようなパラメータに基づいて補正係数(すなわち、乗算補正係数および加算補正係数)の初期値を設定し得る。このようなパラメータは、FETの場合、しきい電圧Vth、移動度M、アルファ(alpha)αおよびバイアス電流Ibiasを含み得る。このようなパラメータで示したトランジスタモデルは次のとおりである。
【0032】
IDS=M*(Vgs-Vth)α+Ibias
【0033】
「アルファ」と「α」という用語は同義であり、ここでは交換的に使用され得る。上記のように、アルファはトランジスタ入力に適用される電圧とその出力における電流との関係を示す式の指数を意味する。バイアス電流は、リーク電流という場合もあり、オフ状態のトランジスタを流れる電流を意味する。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、パラメータは複数のトランジスタ制御電圧に対してそれぞれ決定された複数のトランジスタ電流測定値から次のように推定され得る。4個のトランジスタ電流測定値をI1、I2、I3、I4とし、対応する制御電圧をVgs1、Vgs2、Vgs3、Vgs4とする。トランジスタ電流測定値とトランジスタ制御電圧をトランジスタモデルに代入すると、次の4個の方程式になる。
【0035】
I1=(Vgs1-Vth)α*M+Ibias
I2=(Vgs2-Vth)α*M+Ibias
I3=(Vgs3-Vth)α*M+Ibias
I4=(Vgs4-Vth)α*M+Ibias
【0036】
この方程式をペアにして結合すると(例:減算)、例えば、次のようにバイアス項Ibiasが消去された3個の方程式に到達する。
【0037】
I2-I1=M*[(Vgs2-Vth)α-(Vgs1-Vth)α]
I4-I2=M*[(Vgs4-Vth)α-(Vgs2-Vth)α]
I4-I3=M*[(Vgs4-Vth)α-(Vgs3-Vth)α]
【0038】
前記の三つの方程式は4個のトランジスタ電流測定値のうち互いに異なる2個を選択して作り得る6個(4個から2個を選択する場合の数、すなわち4C2)のこのような方程式のうち3個である。本発明の一実施形態によれば、四つを超えるトランジスタ電流を測定して(または以下で説明するようにより小さい数を測定し得)互いに異なるペアの集合が作られ得る。前記の三つの方程式をペアにして結合すると(例:比率を取ることができる)、例えば、移動度Mも消去された後二つの方程式を得ることができる。
【0039】
【0040】
このように、二つの方程式のそれぞれはトランジスタのパラメータのうちアルファとしきい電圧にのみ依存する。前記の二つの方程式は二つの未知数がある二つの独立方程式であり、未知数、Vthおよびαについて解くことができる。これは例えば、傾斜降下(gradient descent)最適化を行う、又はVthとαの値のグリッド(grid of values)全体について完全探索(exhaustive search)を行い、費用関数(cost function)を最小化する{Vth,α}値の集合を見つけることによって達成することができる。ここでグリッドはVthとαのそれぞれに対して可能な(plausible)値の範囲(例:Vthに対して0Vないし0.7Vの範囲、αに対して1.5ないし2.5の範囲)にわたる。このような方法によりアルファとしきい電圧に対する近似数値解(approximate numerical solution)を見つけることができ、近似数値解は費用関数を最小化し、費用関数は二つの方程式が満たされる範囲では誤差の程度であり得る。費用関数は平均二乗誤差であり、例えば次のように定義される。
【0041】
【0042】
V
thとα値は前記の方程式を満たし、例えば、V
thとαのこのような値について、
が
と同じ値を有する場合、又は本発明の一実施形態によれば、この値が若干異なる場合もあり、例えば、
が
の50%以内である値を有する場合である。
【0043】
Vthとαの値が求められると、(一つの未知数を有する3個の方程式である)次の方程式から移動度Mの値を求めることができる。
【0044】
I2-I1=M*[(Vgs2-Vth)α-(Vgs1-Vth)α]
I4-I2=M*[(Vgs4-Vth)α-(Vgs2-Vth)α]
I4-I3=M*[(Vgs4-Vth)α-(Vgs3-Vth)α]
【0045】
この方程式は線形方程式の過剰決定系(overdetermined system)をなし、これらを次のような形態で記載することによって解を求めることができる。
【0046】
ここでk1=[(Vgs
2-V
th)
α-(Vgs
1-V
th)
α]、k2とk3は同様に定義される。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
バイアスを見つけるために、次の過剰決定系をIbiasについて解くことができる。
【0051】
【0052】
最小二乗適合法(least squares fit)を用いて本系を解くと、Ibiasに対する解はバイアス電流4個の平均になる。[これはトランジスタモデルをバイアス電流に対して4回解くことによって求めることができるが、解くたびに(i)トランジスタ電流測定値のうち異なる一つ、そして(ii)該当するトランジスタ制御電圧を使用する。]
【0053】
場合によっては、リーク電流Ibiasを無視し得る(例:リークがない)。無バイアストランジスタモデルは次のように書くことができる。
【0054】
IDS=M*(Vgs-Vth)α
【0055】
このモデルで、α、Vth,Mは推定すべきである未知のパラメータである。(i)トランジスタ電流の最初の測定値およびこれに対応するトランジスタ制御電圧である時の無バイアストランジスタモデルに対する(ii)トランジスタ電流の二番目の測定値およびこれに対応するトランジスタ制御電圧である時の無バイアストランジスタモデルの比率を求めることによって移動度を消去することができる。
【0056】
【0057】
この方程式から、未知数Vthとαである以下の方程式が導かれる。
【0058】
【0059】
追加的なトランジスタ電流測定値とこれに対応するトランジスタ制御電圧についてはVthとαを未知数とする異なる方程式を求めることができる。
【0060】
【0061】
前記の二つの方程式のそれぞれはトランジスタのパラメータのうちアルファとしきい電圧にのみ依存する。二つの方程式のそれぞれの両側にログを取ると次の方程式になる。
【0062】
【0063】
二つの方程式の比率を求めると、パラメータαを消去することができる。
【0064】
【0065】
この方程式はトランジスタのパラメータのうちしきい電圧にのみ依存し、繰り返しによりVthに対する解を求めることができる[例えば、Vthの値のグリッド全体に対して完全探索(exhaustive search)を行うことによって可能であるが、グリッドはVthに対して可能な(plausible)値の範囲(例:0Vないし0.7Vの範囲)にわたる]。本発明の一実施形態によれば、トランジスタ制御電圧を次のように選択することができる。
【0066】
【0067】
(例:電流はI1=1nA,I2=2nA,I3=2.5nA,I4=5nAであるかこの値の30%以内であり得る)。
【0068】
この場合、Vthを次のように直接求めることができる。
【0069】
【0070】
本発明の一実施形態によれば、V
thについて類似の(しかし必ずしも同じではない)値を見つけることができる。例えば、
は
の50%以内の値を有する。
【0071】
Vthの値を使用して次のようにαとMを求めることができる。
【0072】
【0073】
V
thとαの値は
が
の50%以内の値を有する特性を有する。
【0074】
複数のトランジスタ電流測定値とこれに対応するトランジスタ制御電圧を使用してαとMを計算できるので、最小二乗適合法を使用してアルファを計算することができる。
【0075】
【0076】
次に、αとMは次のように求めることができる。
【0077】
【0078】
上記の方法は4個のトランジスタ電流測定値を使用する。これは、無バイアスの場合に、3個のパラメータ(Vth、アルファ、M)のみ求めるので、この3個のパラメータを解くためは3個のトランジスタ電流測定値で十分であり、本発明の一実施形態によれば、3個のトランジスタ電流測定値のみを使用する。
【0079】
一旦、トランジスタのパラメータを推定すると、次のように補正係数(すなわち、乗算補正係数および加算補正係数)を計算することができる。
図2は本発明の一実施形態によるトランジスタ制御回路を示す。基準電流源205は、(i)M
ideal*C
in
2[M
idealは基準移動度、C
inは(要請した画素の明るさを表す)制御ワード(control word)]を計算する処理回路210、そして(ii)電流デジタル-アナログ変換器(または「電流DAC」)215を含み、関数I
ref=M
ideal K
V2I C
in
2に従って基準電流を生成する。基準移動度M
idealはMの可能な値の範囲内にあるように選択できるが、例えば、製造偏差とトランジスタ特性の老化による変化がない時の移動度値に選択することができる。駆動回路220は(制御ワードC
inおよび補正係数に基づいて調整されたトランジスタ制御電圧を計算する)処理回路105(
図1)、デジタル-アナログ変換器110およびトランジスタ115を含む。補正を印加(すなわち、乗算補正係数および加算補正係数)するために使用される処理回路105は(例えば、ファームウェアまたはソフトウェアで)適切に構成された処理回路であり得、「補正回路(compensation circuit)」ということができる。駆動回路220の処理回路105は基準電流源205の処理回路210と成分を共有することができる(例:同じ処理回路であり得る)。基準移動度Μ
ideal、I
ref DAC215の利得K
V2I、及び駆動回路220のデジタル-アナログ変換器の利得K
Dは知られている。
【0080】
未知のパラメータはトランジスタのVth(Vth_actualともいう)、すなわち実際のしきい電圧とトランジスタのM(Mactualともいう)、すなわち実際の移動度を含む。このような未知のパラメータを、例えば先立って説明したようにトランジスタ電流測定値およびこれに対応するトランジスタ制御電圧から推定する。
【0081】
補正係数(すなわち、乗算補正係数Aおよび加算補正係数B)の初期値を次のように計算することができる。
【0082】
【0083】
Iref=Ipixelの場合、KDB=Vth_actualになるようにBを選択すると、(B=Vth_actual/KDに設定することによって)前記の方程式は次のようになる。
【0084】
【0085】
これをAについて解くと、以下の式になる。
【0086】
【0087】
前記のA、B値を使用すると、補正回路105、デジタル-アナログ変換器110およびトランジスタ115の組み合わせは、しきい電圧が0であり、基準移動度を有し、同じ利得を有するデジタル-アナログ変換器110を介して駆動される非補正(uncompensated)トランジスタと実質的に同じ特性を有することができる。したがって、前記のAおよびB値は有効しきい電圧が0であり、有効移動度が基準移動度と同じ場合に該当する。前記で導出したAおよびB値は初期値として使用することができ、補正係数(すなわち、乗算補正係数および加算補正係数)を印加する時測定される残余誤差(residual error)[残余誤差のそれぞれは(i)発光素子を介して駆動される所期の、または「基準」電流と(ii)トランジスタ駆動電流の間の測定された差]に基づいて適宜調整される。例えば、2019年10月18日付で出願された「ESTIMATION OF PIXEL COMPENSATION COEFFICIENTS BY ADAPTATION」と題された米国特許出願番号第16/657,680号(ここに引用することによって本発明の一部として含む)に記載されたとおりに適用することができる。
【0088】
図3は本発明の一実施形態によるフローチャートである。この方法では、段階305で、複数のトランジスタ電流測定値(例:それぞれは複数のトランジスタ制御電圧の一つに対応)を決定し、段階310で、(例えば電流測定値と制御電圧に基づいて)乗算補正係数および加算補正係数の初期値を設定し、例えば、段階315で、残余誤差を測定し、段階320で、乗算補正係数および加算補正係数を調整することによって、乗算補正係数および加算補正係数を適宜調整する。
【0089】
ここで、ある物の「部分(portion)」はそれの「少なくとも一部(at least some)」を意味し、これはそれのすべてより小さいかすべてを意味し得る。このように、ある物の「部分は」特別な場合としてそれの全体を含み得る。すなわち、それの全体はそれの部分の一例である。ここで、「長方形」とは特別な場合として正方形を含む。すなわち、正方形は長方形の一例であり、「長方形の(rectangular)」とは「正方形の(square)」を含む。ここで、第2数字(number)が第1数字のY%以内(within)であれば、これは第2数字が第1数字の(1-Y/100)倍以上であり、第1数字の(1+Y/100)倍以下であることを意味する。ここで、「または」という用語は「および/または」と解釈されるべきであるが、例えば、「AまたはB」は「A」または「B」であるか「AおよびB」の一つを意味する。
【0090】
「処理回路」または「処理手段」という用語はここでデータまたはデジタル信号を処理するために使用するハードウェア、ファームウェアおよびソフトウェアの組み合わせを意味する。処理回路は例えば、特定用途集積回路(ASIC)、汎用または専用中央処理装置(CPU)、デジタル信号処理器(DSP)、グラフィックス処理装置(GPU)、FPGAなどのプログラム可能な論理装置を含み得る。処理回路でそれぞれの関数はその機能を遂行する有線ハードウェアまたは非一時的(non-transitory)記憶媒体に格納された命令を行うCPUなどの汎用ハードウェアによって行われ得る。処理回路は一つの印刷回路基板(PCB)に形成され、互いに接続されたPCBに分散配置され得る。処理回路は他の処理回路を含み得るが、例えばPCB上で互いに接続されたFPGAとCPUを含み得る。
【0091】
ここで、方法(例:調整)または第1量(quantity)[例:第1変数(variable)]が第2量(例:第2変数)に「基づく」という場合、第2量がその方法の入力であるか第1量に影響を及ぼすことを意味するが、例えば、第2量が第1量を計算する関数の入力(例:単一入力または複数入力の一つ)であるか、第1量が第2量と等しいか(equal)、第1量が第2量と同じ(same)(例:メモリ内で同じ場所に格納)であることを意味する。
【0092】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語を様々な要素、成分、領域、層、部分などに使用するが、これらはこのような修飾語によって限定されない。このような用語はある要素、成分、領域、層、部分を他の要素、成分、領域、層、部分と区別するために使用するものであり、本発明の趣旨と範囲を逸脱しない。
【0093】
ここで使用された用語は特定の実施形態を説明することを目的として使用するだけであり、本発明を制限することを意図するものではない。ここで「実質的に」「約」、「概して」およびこれと同様の表現は近似を示す表現であり、「程度」を示すものではなく、当業者が認識できる測定値または計算値の固有誤差を示すために使用する。
【0094】
ここで数について特に言及しなければ単数または複数の場合をすべて含む。ある特徴、段階、動作、部分、成分などを「含む」という表現は該当部分の他に他の特徴、段階、動作、部分、成分なども含み得ることを意味する。「および/または」という表現は羅列されたもの一つまたは二つ以上のすべての組み合わせを含む。羅列したリストの前に記載した「少なくとも一つ」などの表現はリスト全体を修飾するものであり、リスト内のそれぞれのものを修飾するものではない。また、本発明の実施形態を説明する際に使用する「し得る」という表現は本発明の一つ以上の実施形態に適用可能であることを意味する。「例示的な」という用語は例または図面を示す。「使用」、「利用」などはこれと類似の他の表現と共に同様の意味で使用される。
【0095】
部分、層、領域、成分などが他の部分、層、領域、成分の「上に」あるか「接続されて」いると記載する場合、「すぐ」上にあるかまたは直接接続されている場合だけでなく、中間に他の部分、層、領域、成分などがさらに介在する場合も含む。しかし「すぐ上に」あるか「直接接続」されていると記載する場合は中間に他の部分がないことを意味する。
【0096】
ここに記載した数値範囲は該当範囲内に含まれる同じ正確度のすべての部分範囲(sub-range)を含む。例えば、「1.0ないし10.0」または「1.0と10.0の間」の範囲は最小値1.0と最大値10.0およびその間にあるすべての部分範囲、すなわち、1.0以上の最小値と10.0以下の最大値を有する部分範囲、例えば2.4ないし7.6を含む。ここで言及した最大値はその中に含まれ、それより小さいすべての数値限界を含み、本明細書に記載した最小値はその中に含まれ、それより大きいすべての数値限界を含む。
【0097】
以上でトランジスタパラメータ推定システムおよび方法の実施形態について説明および図示したが、当業者であればこのような実施形態を変更および修正することができる。したがって、ここで提示した原理により構成された他のトランジスタパラメータ推定システムおよび方法も本発明に含まれる。本発明は次の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【符号の説明】
【0098】
105:処理回路/補正回路
110:デジタル-アナログ変換器
115:トランジスタ
120:発光ダイオード
205:基準電流源
210:処理回路
215:DAC
220:駆動回路