(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031177
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】多孔質ポリアミドイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20220210BHJP
H04R 7/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08J9/28 CFG
H04R7/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124458
(22)【出願日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020133524
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】吉野 文子
(72)【発明者】
【氏名】正鋳 麗弥
(72)【発明者】
【氏名】松下 睦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【テーマコード(参考)】
4F074
5D016
【Fターム(参考)】
4F074AA74
4F074CB34
4F074CB47
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA24
4F074DA47
4F074DA49
5D016EC05
(57)【要約】
【課題】高音速性(高い比引張弾性率)を図ることができる多孔質PAIフィルムの提供。
【解決手段】
1)酸成分として無水トリメリット酸(TMA)、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネート(TODI)を用いたポリアミドイミド(PAI)からなる多孔質PAIフィルムであって、気孔率が75体積%以上であることを特徴とする多孔質PAIフィルム。
2)音速が1400m/sec以上である前記多孔質PAIフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分として無水トリメリット酸(TMA)、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネート(TODI)を用いたポリアミドイミド(PAI)からなる多孔質PAIフィルムであって、気孔率が75体積%以上であることを特徴とする多孔質PAIフィルム。
【請求項2】
音速が1400m/sec以上である請求項1記載の多孔質PAIフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高気孔率の多孔質ポリアミドイミド(PAI)フィルムに関するものである。この多孔質PAIフィルムは、例えば、スピーカ振動板、低誘電性のフレキシブル基板、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池電極用保護膜等として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動通信端末の高機能化に伴い、これらに用いられるスピーカについても、小型化、軽量化、薄型化が求められる。このような移動通信端末に用いられるスピーカとして、厚みが100μm~1000μm程度の高分子発泡体フィルムを平板型のスピーカ振動板として用いたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルからなる発泡体を高分子発泡体フィルムとして用いる方法が提案されている。特許文献2には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとのポリマアロイからなる発泡体を高分子発泡体フィルムとして用いる方法が提案されている。特許文献3には、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂からなる発泡体を高分子発泡体フィルムとして用いる方法が提案されている。このようなスピーカ振動板については、音質改良、特に、高温環境下での音質改良に対するニーズが高まっている。
しかしながら、前記した高分子はガラス転移温度が低いため、これらの高分子からなる発泡体フィルムは、高温下では、その剛性(弾性率)を充分に維持できず、良好な音質特性が得られないという問題があった。すなわち、振動板としての充分な音速(音波の伝搬速度)を確保することが難しかった。ここで、音速(音速=(E/ρ)1/2、E:フィルムの引張弾性率、ρ:フィルムの密度)とは、スピーカの音質に直接影響するパラメータであり、これが大きいほど電気信号に対する振動板の振動追随性が向上し、これにより音のひずみが低減されることが知られている。
【0004】
このような問題に対応するスピーカ振動板として、特許文献4には、高温下においても高い剛性が維持できる多孔質ポリイミド(PI)系フィルムを用いたスピーカ振動板が提案されている。この多孔質PIフィルムは耐熱性には優れるものの、音速としては、高々、1400m/s程度であり、更なる音速の向上が求められている。
【0005】
一方、耐熱性に優れた多孔質PI系フィルムとして、特許文献5、6には、酸成分として無水トリメリット酸(TMA)、イソシアネート成分としてo-トリジンジイソシアネート(TODI)を用いたPAIからなる多孔質PAIフィルムが開示されている。このPAIは、ガラス転移温度が300℃程度と高く、耐熱性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2003/073787号
【特許文献2】特開2009-35709号公報
【特許文献3】国際公開2014/017528号
【特許文献4】国際公開2019/074001号
【特許文献5】特開2004-152675号公報
【特許文献6】特開2005-281668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献に記載された多孔質PAIフィルムは、気孔率が55%(特許文献5の実施例5)、67%(特許文献6の実施例6)、71%(特許文献6の実施例7)と低いものであり、このような気孔率の低いものでは、高音速化を図ることは困難であった。また、これらの特許文献に記載されたような方法では、多孔質化のための条件を変更しても、気孔率を75体積%以上とすることは困難であり、気孔率を高めた場合に、高音速化が図れるかどうかを確認する術もなかった。
【0008】
そこで、本発明は前記課題を解決するものであって、高い比引張弾性率(E/ρ)を有し、高音速化を図ることができる、高耐熱の多孔質PAIフィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために鋭意研究した結果、酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIを用いたPAIからなる多孔質PAIフィルムにおいて、PAIの気孔率を特定のものとすることにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は以下を趣旨とするものである。
1) 酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIを用いたPAIからなる多孔質PAIフィルムであって、気孔率が75体積%以上であることを特徴とする多孔質PAIフィルム。
2) 音速が1400m/sec以上である前記多孔質PAIフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多孔質PAIフィルムは、高気孔率、すなわち低密度であるにも拘わらず、引張弾性率が高い、すなわち比引張弾性率が高いので、高音速化を図ることができる。従い、この多孔質PAIフィルムは、スピーカ振動板として好適に用いることができる。 また、本発明の多孔質PAIフィルムは、比引張弾性率が高いので、スピーカ振動板のみならず、低誘電性のフレキシブル基板、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池電極用保護膜等としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の多孔質PAIフィルムを構成するPAIは、酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIが用いられていることが必要である。また、この多孔質PAIフィルムの気孔率は75体積%以上とすることが必要であり、80体積%以上とすることが好ましい。酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIのいずれかが用いられていないPAIからなる多孔質PAIフィルムでは、気孔率が75体積%以上であっても、高い音速が確保できないことがある。また、酸成分としてTMA、イソシアネート成分としてTODIが用いられているPAIからなる多孔質PAIフィルムであっても、その気孔率が75体積%未満では、高い音速が確保できないことがある。
ここで、多孔質PAIフィルムの気孔率は、多孔質PAIフィルムの見掛け密度と、PAIフィルムの真密度(比重)とから算出される値であり、その見掛け密度をρ1(g/cm3)、真密度をρ2(g/cm3)とした場合、次式により算出することができる。
気孔率(体積%)=100-ρ1*(100/ρ2)
また、音速は、JIS K7161に基づき引張モードで弾性率を測定した後、この弾性率を密度で割って比弾性率を算出し、この平方根を求めることにより得られる値であり、比弾性率と音速とは相関する数値である。
本発明の多孔質PAIフィルムをスピーカ振動板として用いる場合、その音速としては、1400m/sec以上とすることが好ましく、1450m/sec以上とすることがより好ましい。
【0014】
本発明の多孔質PIフィルムの厚みに制限はないが、通常、30μm以上、300μm以下程度であり、100μm以上、300μm以下とすることが好ましい。また、この多孔質PAIフィルムの平均孔径に制限はないが、通常、個数基準で、0.1μm以上、15μm以下程度であり、1μm超、10μm未満が好ましい。ここで、厚みはJIS K7130、密度はJIS Z8807の規定に基づき、25℃で測定することにより求めることができる。平均孔径は、多孔質PIフィルム断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を倍率2000~10000倍で取得し、Image-J等の画像処理ソフトで解析することにより確認することができる。
【0015】
本発明の多孔質PAIフィルムは、例えば、以下のような方法で得ることができる。
すなわち、基材上に、PAIと溶媒とを含む溶液(PAI溶液)を塗布して塗膜を形成した後、100~200℃で塗膜中の溶媒を揮発させて除去する際、塗膜内で相分離を起こさせて、基材上に多孔質PAI被膜を形成させ、しかる後、基材から多孔質PAI被膜を剥離することにより、気孔率が75体積%以上の多孔質PAIフィルムを得ることができる。
【0016】
前記多孔質PAI被膜を形成用のPAI溶液は、例えば、以下のような方法で得ることができる。
すなわち、先ず、略当モルのTMAとTODIとを、含窒素極性溶媒(PAIに対する良溶媒)中、重合反応させることによりPAI溶液を得た後、これにPAIに対する貧溶媒を配合することにより、多孔質PAI被膜形成用の、光学的に均一な多孔質被膜形成用PAI溶液を得ることができる。このPAI溶液には、PAIに対する貧溶媒が配合されているので、この貧溶媒の作用により、塗膜を乾燥した際に塗膜内で相分離が誘起される。
含窒素極性溶媒としては、アミド系溶媒、尿素系溶媒が好ましい。アミド系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を挙げることができる。尿素系溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素、ジメチルエチレン尿素を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、NMP、DMAcが好ましい。
なお、これらの溶媒は、その水分率が100ppm以下に脱水されていることが好ましい。
また、PAIに対する貧溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましい。エーテル系溶媒としては、トリグライム、テトラグライムが好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、PAIに対する貧溶媒とは、25℃におけるPAIの溶解度が1質量%未満の溶媒をいう。逆に、PAIに対する良溶媒とは、25℃におけるPAIの溶解度が1質量%以上の溶媒をいう。
貧溶媒の沸点は、良溶媒の沸点よりも5℃以上高いことが好ましい。
貧溶媒の配合割合は、全溶媒質量に対し、30質量%以上、90質量%以下とすることが好ましく、40質量%以上、80質量%以下とすることがより好ましい。
PAI溶液におけるPAIの固形分濃度は、5質量%以上、15質量%以下とすることが好ましく、8質量%以上、13質量%以下とすることがより好ましい。
【0017】
前記PAIの重合は、例えば、以下のようにして行うことができる。
すなわち、略当モルのTMAとTODIとを、含窒素極性溶媒中、100~200℃、好ましくは、120~180℃の温度で重合反応させる。この反応において、モノマーおよび溶媒の添加順序は特に制限はなく、いかなる順序でもよい。
ここで、TMAとTODIのみからなるホモポリマは、反応溶媒に溶解しにくい傾向があるので、TODIの10~50モル%をメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)および/またはトルエンジイソシアネート(TDI)に置換することが好ましい。
また、酸成分としては、無水トリメリット酸(TMA)のみを用いることが好ましいが、TMAの一部は、他の酸成分で置換されていてもよい。具体的には、TMAの10モル%以下であれば、ピロメリット酸無水物、フタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物等で置換されていてもよい。 この置換率が10モル%を超えると、多孔質PAIフィルムとした場合、良好な力学特性が得られにくいことがある。
酸成分と、イソシアネート成分の合計とのモル比は、1/1.01~1.05とすることが好ましい。
このように、イソシアネート成分をTMAに対し小過剰用いたPAI溶液とすることが好ましい。重合反応に際しては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、トリエチレンジアミン(DABCO)等の塩基性化合物をTMAに対し、0.01~1モル%配合することが好ましい。
このような重合条件とすることにより高粘度のPAI溶液とすることができる。
重合後のPAI溶液(貧溶媒配合前)の溶液粘度としては、PAI濃度を20質量%とした場合の、30℃における溶液粘度として、50Pa・s以上とすることが好ましい。
【0018】
PAI溶液の基材への塗布は、任意の塗布機を用いて行うことができる。塗布機としては、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、バーリバースロールコーター等を挙げることができる。また、多層塗布することも可能であり、その際、各層のPAI溶液の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
基材としては、金属箔(銅、アルミニウム、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステンまたはそれらの合金等)、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、芳香族ポリイミド系フィルム、フッ素樹脂系フィルム(ポリテトラフルオロエチレン等)等を挙げることができる。 これらの中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはアルミニウム箔が好ましい。これらの基材は、表面が平滑であることが好ましい。
また、表面に耐熱性の離型層が形成された離型用の金属箔またはプラスチックフィルムも好ましく用いることができる。これらの離型用金属箔またはプラスチックフィルムは、市販品を用いることができる。
【実施例0020】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
<実施例1>
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、TMA:1.00モル、TODI:0.82モル、TDI:0.20モル、DABCO:0.0005モルを固形分濃度が20質量%となるように脱水されたNMP(水分率80ppm)と共に仕込み、攪拌しながら150℃に昇温して5時間反応させさせることにより、30℃における溶液粘度が210Pa・sで、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液を得た。このPAI溶液100質量部に、テトラグライム100質量部を加え、固形分濃度が10質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。
このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが65μm、平均孔径が2.6μmの多孔質PAIフィルム(A-1)を得た。A-1の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0022】
<実施例2>
イソシアネート成分を、「TODI:0.82モル、MDI:0.20モル」としたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液を得た。このPAI溶液100質量部に、テトラグライム100質量部を加え、固形分濃度が10質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。
このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが63μm、平均孔径が2.1μmの多孔質PAIフィルム(A-2)を得た。
A-2の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0023】
<実施例3>
イソシアネート成分を、「TODI:0.72モル、TDI:0.30モル」としたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液を得た。このPAI溶液100質量部に、テトラグライム100質量部を加え、固形分濃度が10質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。
このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが104μm、平均孔径が3.7μmの多孔質PAIフィルム(A-3)を得た。
A-3の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0024】
<実施例4>
テトラグライムの使用量を100質量部から90質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が10.5質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが45μm、平均孔径が2.6μmの多孔質PAIフィルム(A-4)を得た。
A-4の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0025】
<実施例5>
テトラグライムの使用量を100質量部から110質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が9.5質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが71μm、平均孔径が3.1μmの多孔質PAIフィルム(A-5)を得た。
A-5の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0026】
<比較例1>
イソシアネート成分として、「MDI:1.02モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液を得た。このPAI溶液100質量部に、テトラグライム100質量部を加え、固形分濃度が10質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。
このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが45μm、平均孔径が2.6μmの多孔質PAIフィルム(B-1)を得た。
B-1の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0027】
<比較例2>
イソシアネート成分として、「TDI:0.51モル、MDI:0.51モル」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液を得た。このPAI溶液100質量部に、テトラグライム100質量部を加え、固形分濃度が10質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。
このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが45μm、平均孔径が2.6μmの多孔質PAIフィルム(B-2)を得た。
B-2の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0028】
<比較例3>
テトラグライムの使用量を100質量部から50質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が13.3質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが46μm、平均孔径が3.8μmの多孔質PAIフィルム(B-3)を得た。
B-3の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0029】
<比較例4>
イソシアネート成分を、「TODI:0.82モル、MDI:0.20モル」とし、テトラグライムの使用量を100質量部から50質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が13.3質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。
このPAI溶液を、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、160℃で20分乾燥することにより、厚みが41μm、平均孔径が4.2μmの多孔質PAIフィルム(B-4)を得た。
B-4の気孔率、音速の測定結果を表1に示す。
【0030】
【0031】
実施例で示したように、気孔率が75体積%以上である本発明の多孔質PAIフィルムは、音速が1450m/sec以上という高音速性を図ることができる。
本発明の多孔質PAIフィルムは、高い比引張弾性率、すなわち高音速性を有するので、スピーカ振動板、低誘電性のフレキシブル基板、リチウム2次電池用セパレータ、リチウム2次電池電極用保護膜などとして好適に用いることができる。