(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031241
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
H02K 33/18 20060101AFI20220210BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20220210BHJP
H02K 33/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H02K33/18 B
B06B1/04 Z
H02K33/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129311
(22)【出願日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020135105
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593040391
【氏名又は名称】エミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄
【テーマコード(参考)】
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
5D107AA09
5D107CC08
5D107FF10
5H633BB02
5H633BB09
5H633BB10
5H633GG02
5H633GG03
5H633GG06
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5H633HH02
5H633HH15
5H633HH17
5H633JA02
5H633JB01
(57)【要約】
【課題】簡単な制御構成で、磁路形成部材および駆動コイルの温度をできるだけ低い温度に維持して、耐久性を向上させた振動発生装置を提供する。
【解決手段】励磁コイル(磁路形成部材)が発生させた静磁場の中で、移動方向を規制された駆動コイルを、振動制御部(励磁制御部)が発生させた電磁力によって往復移動させる。冷却制御部(第1の回転数設定部)は、温度センサ(温度測定部)が測定した励磁コイルの温度が、当該励磁コイルに応じた温度領域のいずれに属するかに応じて、冷却ブロア(ブロア)の回転数を設定する。また、冷却制御部(第2の回転数設定部)は、温度センサが測定した駆動コイルの温度が、当該駆動コイルに応じた温度領域のいずれに属するかに応じて、冷却ブロアの回転数を設定する。そして、冷却制御部は、励磁コイルと駆動コイルとの温度に応じて設定された冷却ブロアの回転数のうち、高い回転数で冷却ブロアを回転させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生させる磁路形成部材と、
被検体を載置する載置部と、
当該載置部に設置されて、移動方向を規制された状態で前記静磁場の中に置かれた駆動コイルと、
前記駆動コイルに、当該駆動コイルおよび前記載置部を前記移動方向に沿って往復移動させる電磁力を発生させる励磁制御部と、
前記磁路形成部材および前記駆動コイルの温度を測定する温度測定部と、
前記磁路形成部材および前記駆動コイルを冷却するブロアを駆動する冷却制御部と、
前記磁路形成部材の温度が、当該磁路形成部材に応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、前記ブロアの回転数を設定する第1の回転数設定部と、
前記駆動コイルの温度が、当該駆動コイルに応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、前記ブロアの回転数を設定する第2の回転数設定部と、を備えて、
前記冷却制御部は、前記第1の回転数設定部が設定した前記ブロアの回転数と、前記第2の回転数設定部が設定した前記ブロアの回転数のうち、高い回転数で前記ブロアを回転させる、
振動発生装置。
【請求項2】
前記温度領域は、前記ブロアの回転数を第1の所定回転数に設定することによって、前記磁路形成部材および前記駆動コイルの温度変化が発生した場合であっても、当該磁路形成部材および当該駆動コイルを、動作を損なう限界温度に到達させない第1の温度領域を含む、
請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記冷却制御部は、
前記第1の回転数設定部が設定した前記ブロアの回転数と、前記第2の回転数設定部が設定した前記ブロアの回転数のうち高い回転数が、所定の回転数以下である場合に、前記ブロアを停止させる、
請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記温度領域は、前記ブロアの回転数を、前記第1の所定回転数よりも高い第2の所定回転数に設定することによって、前記磁路形成部材および前記駆動コイルの温度変化が発生した場合であっても、当該磁路形成部材および当該駆動コイルを、動作を損なう限界温度に到達させない第2の温度領域を含む、
請求項2または請求項3に記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記冷却制御部は、
前記磁路形成部材および前記駆動コイルの温度のうち高い温度が、前記第2の温度領域に属している場合に、前記第1の回転数設定部および前記第2の回転数設定部は、前記温度の上昇に応じて漸増する回転数を設定する、
請求項4に記載の振動発生装置。
【請求項6】
前記温度領域は、前記ブロアの回転数を、前記第2の所定回転数よりも高い第3の所定回転数に設定することによって、前記磁路形成部材および前記駆動コイルの温度変化が発生した場合であっても、当該磁路形成部材および当該駆動コイルを、動作を損なう限界温度に到達させない第3の温度領域を含む、
請求項4または請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項7】
前記振動発生装置の稼働時間を積算する稼働時間積算部を更に備えて、
前記第1の回転数設定部および前記第2の回転数設定部は、前記磁路形成部材に応じて設定された複数の温度領域と、前記駆動コイルに応じて設定された複数の温度領域とを、前記稼働時間積算部が積算した稼働時間に応じた量だけ、それぞれ低温側にシフトする、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【請求項8】
前記第1の回転数設定部および前記第2の回転数設定部は、予め設定した、前記振動発生装置の稼働時間と前記複数の温度領域との対応関係を示すマップに基づいて、前記複数の温度領域を設定する、
請求項7に記載の振動発生装置。
【請求項9】
前記磁路形成部材および前記駆動コイルの色を計測する色測定部を更に備えて、
前記第1の回転数設定部および前記第2の回転数設定部は、前記磁路形成部材に応じて設定された複数の温度領域と、前記駆動コイルに応じて設定された複数の温度領域とを、
前記色測定部が測定した前記磁路形成部材および前記駆動コイルの色に応じた量だけ、それぞれ低温側にシフトする、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【請求項10】
前記第1の回転数設定部および前記第2の回転数設定部は、予め設定した、前記磁路形成部材および前記駆動コイルの色と前記複数の温度領域との対応関係を示すマップに基づいて、前記複数の温度領域を設定する、
請求項9に記載の振動発生装置。
【請求項11】
前記温度測定部は、前記磁路形成部材の、前記ブロアによって生じた空気の流れの風下側の位置の温度を測定するように設置される、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【請求項12】
前記温度測定部は、前記駆動コイルが、前記ブロアによって生じた空気の流れの最も風上側に位置する際に、当該駆動コイルの、風下側の位置の温度を測定するように設置される、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【請求項13】
前記磁路形成部材は、励磁コイルである、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【請求項14】
前記励磁コイルは、前記冷却制御部による冷却風の上流側と下流側とに2個設置されて、
前記第1の回転数設定部は、
前記温度測定部が測定した前記励磁コイルのいずれか一方の温度と、前記冷却制御部の動作状態に応じた各励磁コイルの温度と前記励磁コイルのいずれか一方の温度とに基づいて推定された他方の励磁コイルの温度と、のうち高い温度が、前記励磁コイルに応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、前記ブロアの回転数を設定する、
請求項13に記載の振動発生装置。
【請求項15】
前記磁路形成部材は、永久磁石である、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、励磁コイルと駆動コイルとを励磁した際に発生する電磁力によって、駆動部に載置した被試験体を振動させる動電式の振動発生装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された振動発生装置は、励磁コイルおよび駆動コイルを、限界温度に近い状態で動作させるように、励磁コイルおよび駆動コイルを冷却するブロアの回転数を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の振動発生装置では、励磁コイルおよび駆動コイルを、限界温度に近い状態で動作させるため、制御構成が複雑であるとともに、コイルの寿命が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な制御構成で、振動発生装置を構成する磁路形成部材および駆動コイルの温度をできるだけ低い温度に維持することによって、磁路形成部材および駆動コイルの耐久性を向上させた振動発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る振動発生装置は、静磁場を発生させる磁路形成部材と、被検体を載置する載置部と、当該載置部に設置されて、移動方向を規制された状態で前記静磁場の中に置かれた駆動コイルと、前記駆動コイルに、当該駆動コイルおよび前記載置部を前記移動方向に沿って往復移動させる電磁力を発生させる励磁制御部と、前記磁路形成部材および前記駆動コイルの温度を測定する温度測定部と、前記磁路形成部材および前記駆動コイルを冷却するブロアを駆動する冷却制御部と、前記磁路形成部材の温度が、当該磁路形成部材に応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、前記ブロアの回転数を設定する第1の回転数設定部と、前記駆動コイルの温度が、当該駆動コイルに応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、前記ブロアの回転数を設定する第2の回転数設定部と、を備えて、前記冷却制御部は、前記第1の回転数設定部が設定した前記ブロアの回転数と、前記第2の回転数設定部が設定した前記ブロアの回転数のうち、高い回転数で前記ブロアを回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る振動発生装置は、簡単な制御構成で、振動発生装置を構成する磁路形成部材および駆動コイルの温度をできるだけ低い温度に維持することによって、磁路形成部材および駆動コイルの耐久性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【
図2】
図2は、励磁コイルおよび駆動コイルの温度に応じたブロア周波数特性の設定方法の一例を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態において、振動発生装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【
図6】
図6は、第4の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【
図7】
図7は、励磁コイルおよび駆動コイルの温度と振動発生装置の稼働時間とに応じたブロア周波数特性の設定方法の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、振動発生装置の稼働時間と温度領域のシフト量との関係を示すマップの一例である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態において、振動発生装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図9に示したブロア周波数特性設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第5の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【
図12】
図12は、振動発生装置の稼働時間と励磁コイルおよび駆動コイルの色と温度領域のシフト量との関係を示すマップの一例である。
【
図13】
図13は、第5の実施形態において、振動発生装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、
図13に示したブロア周波数特性設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る振動発生装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
(第1の実施形態)
[振動発生装置の概略構成の説明]
まず、
図1を用いて第1の実施形態に係る動電式の振動発生装置10aの全体構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の振動発生装置10aは、固定部21と、被試験体(非図示)が搭載される駆動部12と、を備える。なお、
図1において、固定部21と駆動部12とは、XZ断面図を示している。
【0013】
固定部21は、例えば、鉄などの透磁性を有する材料から構成される、円環状の固定部21と、当該固定部21に流れる磁束を発生させる、円環状の励磁コイル15(磁束発生手段)とを備える。励磁コイル15は、固定部21の内部に設置されて、非図示の定電圧源から直流電圧が印加されることによって、固定部21に一定の磁束を生成する。より具体的には、励磁コイル15は、固定部21の空隙部23に挿入される駆動コイル16に対して直交する方向の磁界(静磁場)を発生させるように配置される。なお、励磁コイル15は、本開示における磁路形成部材の一例である。
【0014】
駆動部12は、被試験体を載置する試験台13と、駆動部12と固定部21とを連結して、駆動部12を可動状態で保持する弾性部14と、を備える。そして、駆動部12の底部には、固定部21の空隙部23に挿入される駆動コイル16が設置される。
【0015】
駆動コイル16は、電力増幅器27を介して振動制御部28aに接続されている。振動制御部28aは、被試験体に所定パターンの振動を与えるために必要な振動信号を生成して、電力増幅器27を介して駆動コイル16に印加する。振動制御部28aは、本開示における励磁制御部の一例である。
【0016】
また、振動制御部28aは、
図1に非図示の定電圧源から、励磁コイル15に直流電圧を印加して静磁場を生成する。
【0017】
また、振動制御部28aは、操作者の操作指示を受けて、振動発生装置10aの制御モードを、ノーマルモードとエコモードとのいずれかに設定する。ノーマルモードとエコモードについて、詳しくは後述する。
【0018】
駆動部12は、固定部21に設けられた軸受け25に挿入される軸24を有する。軸受け25には、ベアリング26が設けられて、このベアリング26によって、駆動コイル16の軸24が拘束される。
【0019】
駆動部12は、軸24と、軸受け25およびベアリング26と、前記した弾性部14とを有する拘束機構によって、可動域を所定の範囲(
図2の例では上下方向(Z軸方向))に制限される。
【0020】
なお、拘束機構として、固定部21と駆動部12との間に、ダンパー(非図示)を設けることもできる。このようにダンパーを設けることにより、駆動部12に必要以上の加振力が加わらないようにすることができ、これによって、駆動部12の破損を防止することができる。
【0021】
冷却ブロア30は、駆動コイル16が移動する空間である空隙部23が延長された貫通穴35を通して、外気を吸引することにより、励磁コイル15と駆動コイル16とを冷却する。冷却ブロア30は、例えば、複数の回転羽を備えたファンである。冷却ブロア30の回転によって、振動発生装置10aの周囲の外気が、空隙部23の上方から吸引されて、固定部21の底の貫通穴35のからブロアホース32に吸い出される。即ち、励磁コイル15と駆動コイル16とを冷却する空気は、
図1に示す矢印Aに沿って流れる。この空気の流れによって、励磁コイル15と駆動コイル16とが冷却される。なお、冷却ブロア30は、本開示におけるブロアの一例である。
【0022】
励磁コイル15の温度T1は、温度センサ18によって測定される。温度センサ18は、例えば放射温度計である。温度センサ18は、固定部21に開口された、励磁コイル15を臨む開口部22aの外側に設置されて、励磁コイル15の温度T1を非接触で測定する。なお、温度センサ18は、本開示における温度測定部の一例である。
【0023】
駆動コイル16の温度T2は、温度センサ19によって測定される。温度センサ19は、例えば放射温度計である。温度センサ19は、固定部21に開口された、駆動コイル16を臨む開口部22bの外側に設置されて、駆動コイル16の温度T2を非接触で測定する。なお、温度センサ19は、本開示における温度測定部の一例である。
【0024】
なお、温度センサ18は、励磁コイル15のなるべく下方の温度を測定するように設置される。これは、冷却ブロア30が動作中、即ち矢印Aに沿った空気の流れがある場合、風下側である励磁コイル15の下方の温度は、風上側である励磁コイル15の上方の温度よりも高い場合が多いため、なるべく温度が高い部分の温度を測定するのが、冷却度合を決定する上で望ましいためである。
【0025】
駆動コイル16は、
図1においてZ軸に沿って上下に移動するため、駆動コイル16の位置に関わらず、温度センサ19が常に駆動コイル16の温度を測定できる位置に設置される。例えば、温度センサ19は、駆動コイル16が冷却ブロア30によって生じた空気の流れの最も風上側に位置する際に、当該駆動コイル16の風下側の位置の温度を測定するように設置される。
【0026】
なお、本実施形態では、非接触の温度センサ18,19を用いて説明するが、温度センサ18,19は接触型であってもよい。その場合、例えば、熱電対やサーミスタ等のセンサが使用される。
【0027】
冷却制御部28bは、温度センサ18が測定した励磁コイル15の温度T1と、温度センサ19が測定した駆動コイル16の温度T2とに基づいて、冷却ブロア30の回転数であるブロア周波数fを決定する。そして、冷却制御部28bは、決定したブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。なお、冷却制御部28bは、本開示における第1の回転数設定部および第2の回転数設定部の一例である。
【0028】
[コイルの温度に基づくブロア周波数の制御方法の説明]
次に、
図2を用いて、励磁コイル15の温度と駆動コイル16の温度とに応じた適切なブロア周波数fの決定方法について説明する。
図2は、励磁コイルおよび駆動コイルの温度に応じたブロア周波数特性の設定方法の一例を説明する図である。
【0029】
冷却制御部28bは、励磁コイル15の温度T1に応じた冷却ブロア30のブロア周波数fを設定する。また、冷却制御部28bは、駆動コイル16の温度T2に応じた冷却ブロア30のブロア周波数fを設定する。
【0030】
そして、冷却制御部28bは、励磁コイル15のブロア周波数fと駆動コイル16のブロア周波数fのうち高い周波数で冷却ブロア30を駆動する。即ち、冷却制御部28bは、励磁コイル15と駆動コイル16のうち、より冷却が必要なコイルに応じた駆動周波数で、冷却ブロア30を駆動する。
【0031】
振動発生装置10aは、ノーマルモードとエコモードを備える。ノーマルモードは、励磁電源レベル100%で、駆動部12を駆動する。
図2に示すブロア周波数特性Nが、ノーマルモードにおけるブロア周波数fの温度特性を表す。エコモードは、励磁電源レベルを、例えば70%に抑制して、駆動部12を駆動する。
図2に示すブロア周波数特性Eが、エコモードにおけるブロア周波数fの温度特性を表す。
【0032】
まず、ノーマルモードについて説明する。なお、励磁コイル15と駆動コイル16とは、同じ温度特性を有するものとする。
【0033】
冷却制御部28bは、温度センサ18,19がそれぞれ測定した各コイルの温度に応じた、各コイルの温度領域を判定する。具体的には、コイルの温度が、安全温度領域Ta(例えば~60℃)に属する場合に、冷却制御部28bは、ブロア周波数fを、例えば42Hzの一定値(ブロア周波数fa1)に設定する。なお、ブロア周波数fa1は、本開示における第1の所定回転数の一例である。
【0034】
また、コイルの温度が、制御温度領域Tb(例えば60~100℃)に属する場合に、冷却制御部28bは、60℃から100℃のコイルの温度変化に応じたブロア周波数fを、例えば42Hz~60Hzの間で、コイルの温度上昇に応じて比例的に漸増するブロア周波数fa2に設定する。なお、ブロア周波数fa2は、本開示における第2の所定回転数の一例である。そして、ブロア周波数fa2は、ブロア周波数fa1よりも高い。
【0035】
そして、コイルの温度が、制限温度領域Tc(例えば100~120℃)に属する場合に、冷却制御部28bは、ブロア周波数fを、例えば60Hzの一定値(ブロア周波数fa3)に設定する。なお、ブロア周波数fa3は、本開示における第3の所定回転数の一例である。そして、ブロア周波数fa3は、ブロア周波数fa2よりも高い。
【0036】
本実施形態では、励磁コイル15と駆動コイル16の温度特性は等しいため、冷却制御部28bは、励磁コイル15の温度T1に基づいて設定したブロア周波数fと、駆動コイル16の温度T2に基づいて設定したブロア周波数fとのうち高いブロア周波数fを選択する。そして、冷却制御部28bは、選択されたブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。
【0037】
次に、エコモードを選択した場合のコイル温度制御動作を説明する。コイルの温度が安全温度領域Ta(例えば~60℃)に属する場合に、冷却制御部28bは、ブロア周波数fを、例えば0Hzの一定値(ブロア周波数fb1)に設定する。即ち、冷却ブロア30を停止する。なお、ブロア周波数fb1は、本開示における第1の所定回転数の一例である。
【0038】
また、コイルの温度が、制御温度領域Tb(例えば60~100℃)に属する場合に、冷却制御部28bは、60℃から100℃のコイルの温度変化に応じたブロア周波数fを、例えば30Hz~54Hzの間で、コイルの温度上昇に応じて比例的に漸増するブロア周波数fb2に設定する。なお、ブロア周波数fb2は、本開示における第2の所定回転数の一例である。そして、ブロア周波数fb2は、ブロア周波数fb1よりも高い。
【0039】
そして、コイルの温度が、制限温度領域Tc(例えば100~120℃)に属する場合に、冷却制御部28bは、ブロア周波数fを、例えば54Hzの一定値(ブロア周波数fb3)に設定する。なお、ブロア周波数fb3は、本開示における第3の所定回転数の一例である。そして、ブロア周波数fb3は、ブロア周波数fb2よりも高い。
【0040】
冷却制御部28bは、ノーマルモードの動作で説明した通り、励磁コイル15の温度T1に基づいて設定したブロア周波数fと、駆動コイル16の温度T2に基づいて設定したブロア周波数fとのうち、高いブロア周波数fを選択する。そして、冷却制御部28bは、選択されたブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。
【0041】
以上により、加振力が小さい時にはエコモードを選択することで、励磁電源から励磁コイルに供給される電流がより小さくなり、また何れのモードを選択した場合でも、励磁コイル15または駆動コイル16の測定温度に応じて冷却ブロア30の冷却能力を小さく出来ることでコイルの耐久性を確保出来ると同時に振動発生装置10a全体の消費電力を小さくでき、省電力化が可能になる等の特長を有する。
【0042】
[コイルの温度領域の説明]
次に、
図2を用いて、励磁コイル15および駆動コイル16の温度領域について、より具体的に説明する。
【0043】
振動発生装置10aに対して冷却作用を実施しない、または最低限の冷却作用を実施することによって、コイルの急激な温度変化が発生してもコイルの被覆材またはコイルの線材を固定する接着剤の限界温度に到達しない温度領域を、コイルの安全温度領域とする。コイルの安全温度領域Taは、コイルの温度が、例えば60℃以下の温度領域である。なお、安全温度領域Taは、本開示における第1の温度領域の一例である。
【0044】
振動発生装置10aに対してコイル温度に応じた冷却作用を実施させることによって、コイルの急激な温度変化が発生してもコイルの被覆材またはコイルの線材を固定する接着剤の限界温度に到達しない温度領域を、コイルの制御温度領域Tbとする。コイルの制御温度領域Tbは、コイルの温度が、例えば60~100℃の温度領域である。なお、制御温度領域Tbは、本開示における第2の温度領域の一例である。
【0045】
振動発生装置10aに対して冷却作用を実施していないと、コイルの被覆材またはコイルの線材を固定する接着剤の限界温度に到達する可能性が有る温度領域を、コイルの制限温度領域Tcとする。コイルの制限温度領域Tcは、コイルの温度が、例えば100~120℃の温度領域である。なお、制限温度領域Tcは、本開示における第3の温度領域の一例である。
【0046】
振動発生装置10aの機能を損なう温度、具体例としてはコイルを被覆する絶縁材料またはコイルの線材を固定する接着剤が熱で損傷することで振動発生装置10aの機能を損なう可能性がある温度領域を、コイルの限界温度領域Tdとする。コイルの限界温度領域Tdは、コイルの温度が、例えば120~180℃以上の温度領域である。
【0047】
なお、前記したコイルの安全温度領域Ta、コイルの制御温度領域Tb、コイルの制限温度領域Tc、コイルの限界温度領域Tdに対応する具体的な温度範囲は、一例であって、実際に使用される励磁コイル15および駆動コイル16に応じて設定される。
【0048】
[振動発生装置が行う処理の流れの説明]
次に、
図3を用いて、振動発生装置10aが行う処理の流れを説明する。
図3は、第1の実施形態において、振動発生装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
振動制御部28aおよび冷却制御部28bは、各種初期化処理を行う(ステップS11)。各種初期化処理とは、例えば、発生させる振動波形の読み込みや、
図2に示したノーマルモードおよびエコモードにおけるブロア周波数特性N,Eの読み込み等である。
【0050】
振動制御部28aは、振動発生装置10aの動作が開始したかを判定する(ステップS12)。振動発生装置10aの動作が開始したと判定される(ステップS12:Yes)とステップS13に進む。一方、振動発生装置10aの動作が開始したと判定されない(ステップS12:No)とステップS12を繰り返す。
【0051】
ステップS12において振動発生装置10aの動作が開始したと判定されると、振動制御部28aは振動信号を生成して、電力増幅器27を介して駆動コイル16に印加する。また、振動制御部28aは、
図1に非図示の定電圧源から励磁コイル15に直流電圧を印加させて、静磁場を発生させる(ステップS13)。
【0052】
温度センサ18は、励磁コイル15の温度を測定して、温度センサ19は、駆動コイル16の温度を測定する(ステップS14)。次に、ステップS15およびステップS19に進む。
【0053】
ステップS14に続いて、冷却制御部28bは、駆動コイル16の温度が、いずれの温度領域に属しているかを判定する(ステップS15)。温度領域が安全温度領域Taであると判定されると、ステップS16に進む。温度領域が制御温度領域Tbであると判定されると、ステップS17に進む。温度領域が制限温度領域Tcであると判定されると、ステップS18に進む。
【0054】
ステップS15において、温度領域が安全温度領域Taであると判定されると、冷却制御部28bは、ブロア周波数fをf1に設定する(ステップS16)。そして、ステップS23に進む。
【0055】
ステップS15において、温度領域が制御温度領域Tbであると判定されると、冷却制御部28bは、ブロア周波数fをf2に設定する(ステップS17)。そして、ステップS23に進む。
【0056】
ステップS15において、温度領域が制限温度領域Tcであると判定されると、冷却制御部28bは、ブロア周波数fをf3に設定する(ステップS18)。そして、ステップS23に進む。
【0057】
また、ステップS14に続いて、冷却制御部28bは、励磁コイル15の温度が、いずれの温度領域に属しているかを判定する(ステップS19)。温度領域が安全温度領域Taであると判定されると、ステップS20に進む。温度領域が制御温度領域Tbであると判定されると、ステップS21に進む。温度領域が制限温度領域Tcであると判定されると、ステップS22に進む。
【0058】
ステップS19において、温度領域が安全温度領域Taであると判定されると、冷却制御部28bは、ブロア周波数fをf4に設定する(ステップS20)。そして、ステップS23に進む。
【0059】
ステップS19において、温度領域が制御温度領域Tbであると判定されると、冷却制御部28bは、ブロア周波数fをf5に設定する(ステップS21)。そして、ステップS23に進む。
【0060】
ステップS19において、温度領域が制限温度領域Tcであると判定されると、冷却制御部28bは、ブロア周波数fをf6に設定する(ステップS22)。そして、ステップS23に進む。
【0061】
冷却制御部28bは、ステップS16,S17,S18のいずれか、またはステップS20,S21,S22のいずれかに続いて、設定されたブロア周波数f1,f2,f3のいずれかと、設定されたブロア周波数f4,f5,f6のいずれかのうち、高いブロア周波数で、冷却ブロア30を駆動する(ステップS23)。
【0062】
振動制御部28aは、振動発生装置10aの停止指示が入力されたかを判定する(ステップS24)。停止指示が入力されたと判定される(ステップS24:Yes)と、振動発生装置10aは
図3の処理を終了する。一方、停止指示が入力されたと判定されない(ステップS24:No)と、ステップS14に戻って、振動発生装置10aは前記した処理を繰り返す。
【0063】
なお、前記した処理の流れは、振動発生装置10aがノーマルモードで動作している場合のものである。エコモードで動作している場合は、
図2に示すブロア周波数特性Eに基づいたブロア周波数fが設定される。
【0064】
また、
図3に示す処理の流れは、励磁コイル15と駆動コイル16とが、同じ温度特性を有する場合についてのものである。しかし、一般には、励磁コイル15と駆動コイル16とは、使用している線材の違い、絶縁材の違い、線材を固定する接着剤の違い等によって、異なる温度特性を有する。本実施形態の振動発生装置10aは、このような場合であっても、適切なブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動することができる。
【0065】
励磁コイル15と駆動コイル16の温度特性が異なる場合、各コイルの温度領域(安全温度領域Ta,制御温度領域Tb,制限温度領域Tc)が異なる。
【0066】
このような場合、
図2に示すブロア周波数特性N、およびブロア周波数特性Eが、励磁コイル15と駆動コイル16のそれぞれに対して設定される。冷却制御部28bは、励磁コイル15の温度T1に対応するブロア周波数fと、駆動コイル16の温度T2に対応するブロア周波数fとを設定する。そして、冷却制御部28bは、励磁コイル15の温度T1に対応するブロア周波数fと、駆動コイル16の温度T2に対応するブロア周波数fとを比較して、高いブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の振動発生装置10aは、励磁コイル15(磁路形成部材)が発生させた静磁場の中で、振動制御部28a(励磁制御部)が発生させた電磁力によって、移動方向を規制された駆動コイル16を往復移動させる。励磁コイル15の温度は温度センサ18(温度測定部)によって測定されて、駆動コイル16の温度は温度センサ19(温度測定部)によって測定される。冷却制御部28b(第1の回転数設定部)は、励磁コイル15の温度が、当該励磁コイル15に応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、冷却ブロア30(ブロア)の回転数を設定する。また、冷却制御部28b(第2の回転数設定部)は、駆動コイル16の温度が、当該駆動コイル16に応じて設定された複数の温度領域のいずれに属するかに基づいて、冷却ブロア30(ブロア)の回転数を設定する。そして、冷却制御部28bは、励磁コイル15の温度に応じて設定された冷却ブロア30の回転数と、駆動コイル16の温度に応じて設定された冷却ブロア30の回転数のうち、高い回転数で冷却ブロア30を回転させる。したがって、簡単な構成で、振動発生装置10aを構成する励磁コイル15(磁路形成部材)および駆動コイル16の温度をできるだけ低い温度に維持することによって、励磁コイル15および駆動コイル16の耐久性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、励磁コイル15および駆動コイル16の温度領域は、冷却ブロア30の回転数を第1の所定回転数に設定することによって、励磁コイル15および駆動コイル16の温度変化が発生した場合であっても、当該励磁コイル15および駆動コイル16を、動作を損なう限界温度に到達させない安全温度領域Ta(第1の温度領域)を含む。したがって、励磁コイル15および駆動コイル16の熱による耐久性の低下を防止することができる。
【0069】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、冷却制御部28bは、冷却制御部28b(第1の回転数設定部)が設定した冷却ブロア30(ブロア)の回転数と、冷却制御部28b(第2の回転数設定部)が設定した冷却ブロア30の回転数のうち高い回転数が、所定の回転数以下である場合に、冷却ブロア30を停止させる。したがって、冷却ブロア30を停止させることにより、振動発生装置10a全体の電力消費量を低減させることができる。
【0070】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、励磁コイル15および駆動コイル16の温度領域は、冷却ブロア30の回転数を、第1の所定回転数よりも高い第2の所定回転数に設定することによって、励磁コイル15および駆動コイル16の温度変化が発生した場合であっても、当該励磁コイル15および駆動コイル16を、動作を損なう限界温度に到達させない制御温度領域Tb(第2の温度領域)を含む。したがって、予め設定された温度領域に基づいて冷却ブロア30の回転数を制御するため、簡単な構成でコイルの温度を制御することができる。
【0071】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、冷却制御部28bは、励磁コイル15および駆動コイル16の温度のうち高い温度が、制御温度領域Tb(第2の温度領域)に属している場合に、前記第1の回転数設定部および前記第2の回転数設定部は、前記温度の上昇に応じて漸増する回転数を設定する。したがって、温度の上昇に応じて、冷却ブロア30の回転数を増加させることによって、コイルの温度に応じた冷却性能を発揮させることができる。
【0072】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、励磁コイル15および駆動コイル16の温度領域は、冷却ブロア30の回転数を、第2の所定回転数よりも高い第3の所定回転数に設定することによって、励磁コイル15および駆動コイル16の温度変化が発生した場合であっても、当該励磁コイル15および駆動コイル16を、動作を損なう限界温度に到達させない制限温度領域Tc(第3の温度領域)を含む。したがって、予め設定された温度領域に基づいて冷却ブロア30の回転数を制御するため、簡単な構成でコイルの温度を制御することができる。
【0073】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、温度センサ18(温度測定部)は、励磁コイル15(磁路形成部材)の、冷却ブロア30(ブロア)によって生じた空気の流れの風下側の位置の温度を測定するように設置される。したがって、励磁コイル15のうち、一般に温度が高くなる風下側の領域の温度に基づいて冷却制御を行うことができるため、冷却性能をより向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、温度センサ19(温度測定部)は、駆動コイル16が、冷却ブロア30(ブロア)によって生じた空気の流れの最も風上側に位置する際に、当該駆動コイル16の、風下側の位置の温度を測定するように設置される。したがって、駆動コイル16のうち、一般に温度が高くなる風下側の領域の温度に基づいて冷却制御を行うことができるため、冷却性能をより向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態の振動発生装置10aにおいて、磁路形成部材は励磁コイル15である。したがって、励磁コイル15に発生させる磁束の量を制御することによって、振動発生装置10aの運転状態を、例えば、ノーマルモードとエコモードとで切り替えることができる。
【0076】
(第2の実施形態)
[振動発生装置の概略構成の説明]
次に、
図4を用いて、第2の実施形態である振動発生装置10bについて説明する。
図4は、第2の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【0077】
図4において、固定部21と駆動部12とは、XZ断面図を示している。振動発生装置10bは、振動発生装置10aとほぼ同じ構成を備える。振動発生装置10aと異なるのは、励磁コイル15が上部励磁コイル15aと下部励磁コイル15bとに分割されて配置される点である。そして、励磁コイル15の温度を測定する温度センサ18は、冷却ブロア30によって発生する冷却風の風下側に配置された下部励磁コイル15bの温度を測定するように設置される。
【0078】
冷却ブロア30の運転中は、一般に、励磁コイル15の温度に温度勾配が生じて風下側の下部励磁コイル15bの温度が高くなる。したがって、冷却制御部28bは、下部励磁コイル15bの温度と、駆動コイル16の温度とに基づいて、第1の実施形態で説明した方法に従って決定したブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。
【0079】
一方、冷却ブロア30の停止中は、上部励磁コイル15aの温度が下部励磁コイル15bの温度より高くなる傾向がある。上部励磁コイル15aの温度は、事前に取得した、冷却ブロア30が停止している場合の上部励磁コイル15aおよび下部励磁コイル15bの温度データを用いて、下部励磁コイル15bの温度から推定することができる。そして、冷却制御部28bは、推定された上部励磁コイル15aの温度と、駆動コイル16の温度とに基づいて、第1の実施形態で説明した方法に従って決定したブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。
【0080】
[振動発生装置が行う処理の流れの説明]
振動発生装置10bが行う処理の流れは、第1の実施形態で説明した振動発生装置10aが行う処理の流れ(
図3参照)とほぼ同じであるため、フローチャートの図示は省略する。
【0081】
図3の処理と異なるのは、振動発生装置10bがエコモードで、なおかつ冷却ブロア30が停止した状態である場合に、冷却制御部28b(第1の回転数設定部)が、下部励磁コイル15bの温度に基づいて、上部励磁コイル15aの温度の推定を行う部分である。
【0082】
そして、推定された上部励磁コイル15aの温度が安全温度領域Ta(第1の温度領域)に属していない場合、冷却制御部28bは、上部励磁コイル15aの温度を励磁コイル15の温度であるとして、再び励磁コイル15の温度判定(
図3のステップS15)を行う。
【0083】
一方、推定された上部励磁コイル15aの温度が安全温度領域Taに属している場合、冷却制御部28bは、冷却ブロア30の停止を継続する。
【0084】
即ち、冷却制御部28bは、上部励磁コイル15aの温度と下部励磁コイル15bの温度のうち、高い温度に基づいて、冷却ブロア30のブロア周波数fを設定する。
【0085】
なお、前記した説明では、冷却ブロア30の停止中において、下部励磁コイル15bの測定温度から上部励磁コイル15aの温度を推定するものとしたが、上部励磁コイル15aにも温度センサを設置して、上部励磁コイル15aの温度と下部励磁コイル15bの温度をともに測定してもよい。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の振動発生装置10bは、冷却ブロア30の冷却風の風上側に設置された上部励磁コイル15aと、風下側に設置された下部励磁コイル15bとを備える。そして、温度センサ18(温度測定部)は、下部励磁コイル15bの温度を測定する。また、冷却制御部28bは、下部励磁コイル15bの温度から上部励磁コイル15aの温度を推定して、下部励磁コイル15bの温度と上部励磁コイル15aの温度のうち高い方を励磁コイル15の温度とする。したがって、複数に分割された励磁コイルを設置した場合に、全ての励磁コイルの温度を測定する必要がないため、機器構成の簡素化を図ることができる。
【0087】
(第3の実施形態)
[振動発生装置の概略構成の説明]
次に、
図5を用いて、第3の実施形態である振動発生装置10cについて説明する。
図5は、第3の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【0088】
図5において、固定部21と駆動部12とは、XZ断面図を示している。振動発生装置10cは、振動発生装置10aとほぼ同じ構成を備える。振動発生装置10aと異なるのは、励磁コイル15の代わりに永久磁石17を備える点である。
【0089】
永久磁石17は、円環状をなして、固定部21の内部に、振動発生装置10aの励磁コイル15が発生する磁束と同じ向きの磁束を発生させる。したがって、振動発生装置10cは、振動発生装置10aが備える、励磁コイル15に直流電圧を印加して静磁場を発生させる定電圧源が不要である。
【0090】
永久磁石17の温度を測定する温度センサ20は、永久磁石17を臨む開口部22cの外側に設置される。開口部22cは、冷却ブロア30によって発生する冷却風の風下側に設けられる。なお、永久磁石17の内周面には、当該内周面に接するように銅リング36が設置されており、温度センサ20は、当該銅リング36の表面温度を測定する。銅リング36は熱伝導性が高いため、永久磁石17の温度を即座に反映する。したがって、温度センサ20が測定する銅リング36の温度は、永久磁石17の温度とほぼ等しい。
【0091】
振動発生装置10cの冷却制御部28bは、温度センサ20が測定した永久磁石17の温度T3に基づいて、永久磁石17を冷却するブロア周波数fを決定する。また、冷却制御部28bは、温度センサ19が測定した駆動コイル16の温度T2に基づいて、駆動コイル16を冷却するブロア周波数fを決定する。なお、温度センサ19は、永久磁石17を臨む開口部22bの外側に設置される。そして、温度センサ19は、永久磁石17および銅リング36を貫通する開口部22bを通して、駆動コイル16の温度を測定する。
【0092】
冷却制御部28bは、永久磁石17を冷却するブロア周波数fと、駆動コイル16を冷却するブロア周波数fとを比較して、高いブロア周波数fで冷却ブロア30を駆動する。
【0093】
振動発生装置10cにあっては、永久磁石17を用いて静磁場を形成するため、励磁電流を流す必要がない。これにより、振動発生装置10cの消費電力を低減させることができる。
【0094】
また、励磁コイル15に励磁電流を流した際に発生する熱が、永久磁石17を用いることで発生しないため、冷却ブロア30の回転数をより一層抑えることができる。これにより、振動発生装置10cの消費電力を、さらに低減させることができる。
【0095】
このように、振動発生装置10cは、消費電力を低減することができるため、振動発生装置10bが備える運転状態の切換機能(ノーマルモードとエコモード)を備えない。
【0096】
[永久磁石の温度領域の説明]
永久磁石17は、励磁コイル15および駆動コイル16と同様に温度特性を有する。即ち、高温になると磁力が低下してしまうおそれがある。そして、励磁コイル15および駆動コイル16と同様に、永久磁石17に対しても温度領域を設定することができる。
【0097】
振動発生装置10cに対して冷却作用を実施しない、または最低限の冷却作用を実施することによって、永久磁石17の急激な温度変化が発生しても永久磁石17の限界温度に到達しない温度領域を、永久磁石17の安全温度領域とする。永久磁石17の安全温度領域Taは、永久磁石17の温度が、例えば60℃以下の温度領域である。
【0098】
振動発生装置10cに対して永久磁石17の温度に応じた冷却作用を実施させることによって、永久磁石17の急激な温度変化が発生しても永久磁石17の限界温度に到達しない温度領域を、永久磁石17の制御温度領域Tbとする。永久磁石17の制御温度領域Tbは、永久磁石17の温度が、例えば60~80℃の温度領域である。
【0099】
振動発生装置10cに対して冷却作用を実施していないと、永久磁石17の限界温度に到達する可能性が有る温度領域を、永久磁石17の制限温度領域Tcとする。永久磁石17の制限温度領域Tcは、コイルの温度が、例えば80~100℃の温度領域である。
【0100】
振動発生装置10cの機能を損なう温度、具体例としては永久磁石17の温度上昇によって、永久磁石17が不可逆減磁してしまい、例え永久磁石17の温度を下げても元の磁力に戻らない可能性がある温度領域を、永久磁石17の限界温度領域Tdとする。永久磁石17の限界温度領域Tdは、永久磁石17の温度が、例えば100~150℃以上の温度領域である。
【0101】
なお、前記した温度範囲は一例であって、実際に使用される永久磁石17に応じて、適宜設定される。
【0102】
[振動発生装置が行う処理の流れの説明]
振動発生装置10cは、振動発生装置10aが行う処理(
図3参照)と同様の処理を行う。但し、励磁コイル15の温度T1を測定する代わりに、永久磁石17の温度T3を測定する点が異なる。
【0103】
即ち、振動発生装置10cは、
図3のステップS15に代わって、永久磁石17の温度T3を判定する。そして、
図3のステップS16,S17,S18に代わって、永久磁石17の温度領域に応じたブロア周波数fを設定する。
【0104】
それ以外の処理の流れは、
図3のフローチャートと同じである。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の振動発生装置10cにおいて、磁路形成部材は永久磁石17である。したがって、励磁コイル15が不要になるため、振動発生装置10cの消費電力を低減させることができる。
【0106】
(第4の実施形態)
[振動発生装置の概略構成の説明]
次に、
図6を用いて、第4の実施形態である振動発生装置10dについて説明する。
図6は、第4の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【0107】
振動発生装置10dは、第1の実施形態で説明した振動発生装置10aが備える各構成要素(
図1参照)に加えて、稼働時間積算部29を備える。また、振動発生装置10dは、振動発生装置10aが備える冷却制御部28bの代わりに冷却制御部28cを備える。
【0108】
稼働時間積算部29は、振動発生装置10dの稼働時間を積算する。
【0109】
冷却制御部28cは、励磁コイル15(磁路形成部材)に応じて設定された複数の温度領域と、駆動コイル16に応じて設定された複数の温度領域とを、稼働時間積算部29が積算した稼働時間に応じた量だけ、それぞれ低温側にシフトする。また、冷却制御部28cは、稼働時間積算部29が積算した稼働時間に応じて低温側にシフトされた複数の温度領域に基づいて設定された冷却ブロア30の回転数に基づいて、当該冷却ブロア30を回転させることによって、励磁コイル15と駆動コイル16とを冷却する。
【0110】
冷却制御部28cが冷却ブロア30の回転数を決定する方法は、第1の実施形態で説明した通りである。なお、冷却制御部28cは、本開示における第1の回転数設定部および第2の回転数設定部の一例である。
【0111】
[振動発生装置の稼働時間に応じたブロア周波数の設定]
図7と
図8を用いて、振動発生装置10dの稼働時間Otに応じて、ブロア周波数fを設定する方法を説明する。
図7は、励磁コイルおよび駆動コイルの温度と振動発生装置の稼働時間とに応じたブロア周波数特性の設定方法の一例を説明する図である。
図8は、振動発生装置の稼働時間と温度領域のシフト量との関係を示すマップの一例である。
【0112】
図7のグラフは、第1の実施形態で説明したグラフ(
図2参照)と同様に、励磁コイル15および駆動コイル16の温度Tに応じた冷却ブロア30の回転数であるブロア周波数特性N,Eを示す。
【0113】
励磁コイル15および駆動コイル16は、長時間稼働させると、耐久性が低下するおそれがある。そのため、本実施形態では、振動発生装置10dの稼働時間Otに応じて、
図2に示した各温度領域を低温側にシフトする。
【0114】
例えば、
図7は、
図2に示した安全温度領域Ta、制御温度領域Tb、制限温度領域Tcを、それぞれ温度シフト量ΔT(
図7の例ではΔT=5℃)だけ低温側にシフトした例を示している。即ち、
図7の例では、安全温度領域Taは~55℃、制御温度領域Tbは55~95℃、制限温度領域Tcは95~120℃に設定される。
【0115】
励磁コイル15および駆動コイル16の温度領域(安全温度領域Ta、制御温度領域Tb、制限温度領域Tc)の温度シフト量ΔTは、振動発生装置10dの稼働時間Otが長いほど大きく設定するのが望ましい。そのため、冷却制御部28cは、例えば、
図8に示すマップに基づいて、温度シフト量ΔTを設定する。
【0116】
例えば、振動発生装置10dの稼働時間Otが50,000時間以内の場合、冷却制御部28cは、温度シフト量ΔTを0℃に設定する。そして、振動発生装置10dの稼働時間Otが50,000~100,000時間の場合、冷却制御部28cは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する。更に、振動発生装置10dの稼働時間Otが100,000時間を超える場合、冷却制御部28cは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する。なお、
図8に示す稼働時間Otおよび温度シフト量ΔTは一例であって、振動発生装置10dに応じた値が適宜設定される。
【0117】
[振動発生装置が行う処理の流れの説明]
次に、
図9を用いて、振動発生装置10dが行う処理の流れを説明する。
図9は、第4の実施形態において、振動発生装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0118】
振動制御部28aおよび冷却制御部28cは、各種初期化処理を行う(ステップS31)。各種初期化処理とは、
図3のステップS11で説明したのと同様である。
【0119】
振動制御部28aは、振動発生装置10dの動作が開始したかを判定する(ステップS32)。振動発生装置10dの動作が開始したと判定される(ステップS32:Yes)とステップS33に進む。一方、振動発生装置10dの動作が開始したと判定されない(ステップS32:No)とステップS32を繰り返す。
【0120】
ステップS32において、振動発生装置10dの動作が開始したと判定されると、冷却制御部28cは、稼働時間積算部29から振動発生装置10dの稼働時間Otを読み出す(ステップS33)。
【0121】
続いて、冷却制御部28cは、ブロア周波数特性設定処理を行う(ステップS34)。ブロア周波数特性設定処理理は、振動発生装置10dの稼働時間Otに応じたブロア周波数特性N,E(
図7)を設定する処理である。なお、ブロア周波数特性設定処理の具体的な処理内容は後述する(
図10参照)。
【0122】
振動制御部28aは振動信号を生成して、電力増幅器27を介して駆動コイル16に印加する。また、振動制御部28aは、
図6に非図示の定電圧源から励磁コイル15に直流電圧を印加させて、静磁場を発生させる(ステップS35)。
【0123】
稼働時間積算部29は、振動発生装置10dの稼働時間Otを積算する(ステップS36)。なお、振動発生装置10dの稼働時間Otは、ステップS35において、励磁コイル15および駆動コイル16に励磁されてからの経過時間の積算値である。
【0124】
温度センサ18は、励磁コイル15の温度を測定して、温度センサ19は、駆動コイル16の温度を測定する(ステップS37)。
【0125】
続いて、冷却制御部28cは、ブロア周波数特性N,E(
図7)を設定するブロア周波数特性設定処理を行う(ステップS38)。なお、ブロア周波数特性設定処理は、
図3のフローチャートにおける、ステップS15からステップS22と同じ処理である。
【0126】
冷却制御部28cは、励磁コイル15および駆動コイル16の温度判定処理に基づいて設定されたブロア周波数f1,f2,f3のいずれかと、設定されたブロア周波数f4,f5,f6のいずれかのうち、高いブロア周波数で、冷却ブロア30を駆動する(ステップS39)。
【0127】
振動制御部28aは、振動発生装置10dの停止指示が入力されたかを判定する(ステップS40)。停止指示が入力されたと判定される(ステップS40:Yes)とステップS41に進む。一方、停止指示が入力されたと判定されない(ステップS40:No)と、ステップS36に戻って、振動発生装置10dは前記した処理を繰り返す。
【0128】
ステップS40において、振動発生装置10dの停止指示が入力されたと判定されると、稼働時間積算部29は、その時点における振動発生装置10dの稼働時間Otを記憶する(ステップS41)。その後、振動発生装置10dは
図9の処理を終了する。
【0129】
次に、
図10を用いて、ブロア周波数特性設定処理の流れを説明する。
図10は、
図9に示したブロア周波数特性設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0130】
冷却制御部28cは、ステップS33において稼働時間積算部29から読み出した振動発生装置10dの稼働時間Otの長さを判定する(ステップS51)。稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、ステップS52に進む。稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、ステップS53に進む。稼働時間が100,000時間を超えると判定されると、ステップS54に進む。
【0131】
ステップS51において、稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、冷却制御部28cは、温度シフト量ΔTを0℃に設定する(ステップS52)。その後、ステップS55に進む。
【0132】
ステップS51において、稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、冷却制御部28cは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する(ステップS53)。その後、ステップS55に進む。
【0133】
ステップS51において、稼働時間Otが100,000時間を超えると判定されると、冷却制御部28cは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する(ステップS54)。その後、ステップS55に進む。
【0134】
ステップS52,S53,S54に続いて、冷却制御部28cは、励磁コイル15および駆動コイル16の温度と冷却ブロア30のブロア周波数fとの関係、即ちブロア周波数特性N,Eを決定する(ステップS55)。その後、メインルーチン(
図9)に戻る。
【0135】
以上説明したように、本実施形態の振動発生装置10dは、当該振動発生装置10dの稼働時間Otを積算する稼働時間積算部29を更に備えて、冷却制御部28c(第1の回転数設定部および第2の回転数設定部)は、励磁コイル15(磁路形成部材)に応じて設定された複数の温度領域と、駆動コイル16に応じて設定された複数の温度領域とを、稼働時間積算部29が積算した稼働時間Otに応じた量だけ、それぞれ低温側にシフトする。したがって、振動発生装置10dを構成する励磁コイル15および駆動コイル16の温度を、振動発生装置10dの稼働時間Otに応じて、できるだけ低い温度に維持することによって、励磁コイル15および駆動コイル16の耐久性を向上させることができる。
【0136】
また、本実施形態の振動発生装置10dにおいて、冷却制御部28c(第1の回転数設定部および第2の回転数設定部)は、予め設定した、振動発生装置10dの稼働時間Otと複数の温度領域との対応関係を示すマップに基づいて、複数の温度領域を設定する。したがって、振動発生装置10dの稼働時間Otに応じたブロア周波数特性N,Eを容易に設定することができる。
【0137】
なお、本実施形態の構成は、第2の実施形態で説明した振動発生装置10b、および第3の実施形態で説明した振動発生装置10cに対しても適用することができる。
【0138】
(第5の実施形態)
[振動発生装置の概略構成の説明]
次に、
図11を用いて、第5の実施形態である振動発生装置10eについて説明する。
図11は、第5の実施形態に係る振動発生装置の全体概要図である。
【0139】
振動発生装置10eは、第4の実施形態で説明した振動発生装置10dが備える各構成要素(
図6参照)に加えて、色センサ40,41と、コイル劣化判定部45とを備える。また、振動発生装置10eは、振動発生装置10dが備える冷却制御部28cの代わりに冷却制御部28dを備える。
【0140】
色センサ40は、固定部21に開口された、励磁コイル15を臨む開口部22dの外側に設置されて、励磁コイル15の表面の色を非接触で測定する。色センサ40は、例えばR(Red)・G(Green)・B(Blue)それぞれの色フィルタを備えたフォトダイオードである。また、色センサ40は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metаl Oxide Semicоnductоr)等の光電変換素子であってもよい。色センサ40は、当該色センサ40に設置した光ファイバ42が備える照明機能によって照明された励磁コイル15の表面の色を非接触で測定する。測定範囲は、例えば、直径4mm、直径8mm、直径25.4mm程度の狭い範囲である。色センサ40は、例えばL*a*b*表色系における明度、色相、彩度を出力する。なお、色センサ40は、本開示における色測定部の一例である。
【0141】
なお、励磁コイル15は、例えば、線材と被覆材と接着剤とで形成したコイルに、更に、全体を絶縁材のワニスで真空含浸処理したものが用いられる。また、線材と被覆材を紙の絶縁材で被覆した上で、真空含浸処理したものが用いられる。したがって、色センサ40は、真空含浸処理された励磁コイル15の表面のワニスまたは紙の絶縁体の色を測定する。
【0142】
色センサ41は、固定部21に開口された、駆動コイル16を臨む開口部22eの外側に設置されて、駆動コイル16の表面の色を非接触で測定する。色センサ41は、例えばR・G・Bそれぞれの色フィルタを備えたフォトダイオードである。また、色センサ40は、CCDやCMOS等の光電変換素子であってもよい。色センサ41は、当該色センサ41に設置した光ファイバ43が備える照明機能によって照明された駆動コイル16の表面の色を非接触で測定する。測定範囲は、例えば、直径4mm、直径8mm、直径25.4mm程度の狭い範囲である。色センサ41は、例えばL*a*b*表色系における明度、色相、彩度を出力する。なお、色センサ41は、本開示における色測定部の一例である。
【0143】
なお、駆動コイル16は、例えば、ボビンと呼ばれるコイルの円筒芯材の表面に接着剤を塗布して、その上に線材を巻回することによって形成される。その際、線材と線材との隙間は出来るだけ小さくなるように巻回されて、線材と線材との隙間にも接着剤が塗布される。即ち、駆動コイル16のコイル表面には、被覆材がむき出しの領域と、線材間に塗布された接着剤の領域とが存在する。したがって、色センサ41は、むき出しの被覆材の領域、または接着剤の領域の色を測定する。
【0144】
コイル劣化判定部45は、色センサ40が測定した励磁コイル15の表面の色と、色センサ41が測定した駆動コイル16の表面の色とに基づいて、励磁コイル15と駆動コイル16との劣化度合を判定する。
【0145】
励磁コイル15と駆動コイル16は、振動発生装置10eの動作に伴って発生する振動による物理的な負荷と、励磁コイル15と駆動コイル16の温度と、振動発生装置10eの稼働時間とによって少しずつ劣化する。この劣化度合は、励磁コイル15と駆動コイル16の変色となって表れる。新品の励磁コイル15および駆動コイル16の表面は、コイルの被覆材(ポリイミド、ポリアミド等の絶縁材料)の色である、例えば銅色を呈する。そして、コイルの劣化の進行に応じて、コイルの表面の色が徐々に濃くなる(黒色に近づく)傾向がある。コイル劣化判定部45は、励磁コイル15と駆動コイル16の表面の色が、新品の状態からどの程度黒色に近づいたかを判定する。
【0146】
なお、励磁コイル15および駆動コイル16の線材の間には、前記したように接着剤が塗布されている。接着剤は、例えば熱硬化性を有する高分子樹脂材(エポキシ系)である。このような接着剤は、無色透明あるいは少し白濁した色であるが、振動発生装置10eの使用状態に応じて、色が濃くなる傾向がある。
【0147】
コイル劣化判定部45は、振動発生装置10eにおいて、色センサ40,41が測定した新品の励磁コイル15および駆動コイル16の表面の色を記憶しておく。そして、コイル劣化判定部45は、記憶した色を基準として、現時点で色センサ40,41が測定した、各コイルの表面の色の変色度合を判定する。
【0148】
変色が発生したことは、例えば、L*a*b*表色系における色差に基づいて判定すればよい。例えば、2つの色に対して、明度L1*と明度L2*、色相a1*と色相a2*、彩度b1*と彩度b2*が得られたとする。このとき、2つの色の色差ΔE*abは、式(1)で算出される。
【0149】
ΔE*ab=[(L1*-L2*)2+(a1*-a2*)2+(b1*-b2*)2]1/2・・・(1)
【0150】
コイル劣化判定部45は、式(1)で算出される色差ΔE*abと、励磁コイル15および駆動コイル16の劣化度合(例えば劣化度合小、劣化度合中、劣化度合大)と、を対応付けるマップを予め記憶しておき、当該マップに基づいて判定されたコイルの劣化度合を出力する。
【0151】
なお、コイルの色が変化したことは、L*a*b*表色系における色差に基づいて判定する他に、RGB値の変化に基づいて判定してもよい。
【0152】
冷却制御部28dは、励磁コイル15(磁路形成部材)に応じて設定された複数の温度領域と、駆動コイル16に応じて設定された複数の温度領域とを、色センサ40,41(色測定部)が測定した励磁コイル15および駆動コイル16の色と、稼働時間積算部29が積算した稼働時間とに応じた量だけ、それぞれ低温側にシフトする。また、冷却制御部28dは、低温側にシフトされた複数の温度領域に基づいて設定された冷却ブロア30の回転数に基づいて、当該冷却ブロア30を回転させることによって、励磁コイル15と駆動コイル16とを冷却する。
【0153】
冷却制御部28dが冷却ブロア30の回転数を決定する方法は、第1の実施形態で説明した通りである。なお、冷却制御部28dは、本開示における第1の回転数設定部および第2の回転数設定部の一例である。
【0154】
[コイルの色と振動発生装置の稼働時間とに応じたブロア周波数の設定]
図12を用いて、振動発生装置10eの稼働時間Otに応じて、ブロア周波数fを設定する方法を説明する。
図12は、振動発生装置の稼働時間と励磁コイルおよび駆動コイルの色と温度領域のシフト量との関係を示すマップの一例である。
【0155】
励磁コイル15および駆動コイル16の温度領域(安全温度領域Ta、制御温度領域Tb、制限温度領域Tc)の温度シフト量ΔTは、励磁コイル15または駆動コイル16の色に基づいて判定される劣化度合が大きいほど大きく設定するのが望ましい。また、温度シフト量ΔTは、振動発生装置10eの稼働時間Otが長いほど大きく設定するのが望ましい。そのため、冷却制御部28dは、例えば、
図12に示すマップに基づいて、温度シフト量ΔTを設定する。
【0156】
例えば、振動発生装置10eの稼働時間Otが50,000時間以内の場合、コイルの劣化度合が小または中であれば、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを0℃に設定する。そして、コイルの劣化度合が大であれば、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する。
【0157】
また、振動発生装置10dの稼働時間Otが50,000~100,000時間の場合、コイルの劣化度合が小または中であれば、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する。そして、コイルの劣化度合が大であれば、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する。
【0158】
更に、振動発生装置10dの稼働時間Otが100,000時間を超える場合、コイルの劣化度合が小または中であれば、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する。そして、コイルの劣化度合が大であれば、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-15℃に設定する。
【0159】
なお、
図12に示す稼働時間Ot、劣化度合および温度シフト量ΔTは一例であって、振動発生装置10eに応じた値が適宜設定される。
【0160】
また、冷却制御部28dは、励磁コイル15または駆動コイル16の色に基づいて判定される劣化度合のみに基づいて、温度シフト量ΔTを設定してもよい。
【0161】
[振動発生装置が行う処理の流れの説明]
次に、
図13を用いて、振動発生装置10eが行う処理の流れを説明する。
図13は、第5の実施形態において、振動発生装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0162】
振動制御部28aおよび冷却制御部28dは、各種初期化処理を行う(ステップS61)。各種初期化処理とは、
図3のステップS11で説明したのと同様である。
【0163】
振動制御部28aは、振動発生装置10eの動作が開始したかを判定する(ステップS62)。振動発生装置10eの動作が開始したと判定される(ステップS62:Yes)とステップS63に進む。一方、振動発生装置10eの動作が開始したと判定されない(ステップS62:No)とステップS62を繰り返す。
【0164】
ステップS62において、振動発生装置10eの動作が開始したと判定されると、冷却制御部28dは、稼働時間積算部29から振動発生装置10eの稼働時間Otを読み出す(ステップS63)。
【0165】
色センサ40は、励磁コイル15の色を計測する。また、色センサ41は、駆動コイル16の色を計測する(ステップS64)。
【0166】
コイル劣化判定部45は、励磁コイル15および駆動コイル16の劣化度合を判定する。そして、冷却制御部28dは、振動発生装置10eの稼働時間Otと、励磁コイル15および駆動コイル16の劣化度合とに基づいて、ブロア周波数特性N,E(
図7)を設定するブロア周波数特性設定処理を行う(ステップS65)。なお、ステップS65で行うブロア周波数特性設定処理の具体的な内容は後述する(
図14参照)。
【0167】
振動制御部28aは振動信号を生成して、電力増幅器27を介して駆動コイル16に印加する。また、振動制御部28aは、
図11に非図示の定電圧源から励磁コイル15に直流電圧を印加させて、静磁場を発生させる(ステップS66)。
【0168】
稼働時間積算部29は、振動発生装置10eの稼働時間Otを積算する(ステップS67)。なお、振動発生装置10eの稼働時間Otは、ステップS66において、励磁コイル15および駆動コイル16に励磁されてからの経過時間の積算値である。
【0169】
温度センサ18は、励磁コイル15の温度を測定して、温度センサ19は、駆動コイル16の温度を測定する(ステップS68)。
【0170】
続いて、冷却制御部28dは、励磁コイル15および駆動コイル16の温度判定処理を行う(ステップS69)。なお、励磁コイル15および駆動コイル16の温度判定処理は、
図3のフローチャートにおける、ステップS15からステップS22と同じ処理である。
【0171】
冷却制御部28dは、励磁コイル15および駆動コイル16の温度判定処理に基づいて設定されたブロア周波数f1,f2,f3のいずれかと、設定されたブロア周波数f4,f5,f6のいずれかのうち、高いブロア周波数で、冷却ブロア30を駆動する(ステップS70)。
【0172】
振動制御部28aは、振動発生装置10eの停止指示が入力されたかを判定する(ステップS71)。停止指示が入力されたと判定される(ステップS71:Yes)とステップS72に進む。一方、停止指示が入力されたと判定されない(ステップS71:No)と、ステップS67に戻って、振動発生装置10eは前記した処理を繰り返す。
【0173】
ステップS71において、振動発生装置10eの停止指示が入力されたと判定されると、稼働時間積算部29は、その時点における振動発生装置10eの稼働時間Otを記憶する(ステップS72)。その後、振動発生装置10eは
図13の処理を終了する。
【0174】
次に、
図14を用いて、ブロア周波数特性設定処理の流れを説明する。
図14は、
図13に示したブロア周波数特性設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0175】
コイル劣化判定部45は、色センサ40が測定した励磁コイル15の色と、色センサ41が測定した駆動コイル16の色に基づいて、励磁コイル15および駆動コイル16の劣化状態を判定する(ステップS81)。劣化状態が小さいと判定されると、ステップS82に進む。劣化状態が中程度と判定されると、ステップS86に進む。劣化状態が大きいと判定されると、ステップS90に進む。
【0176】
ステップS81において、劣化状態が小さいと判定されると、冷却制御部28dは、振動発生装置10eの稼働時間Otの長さを判定する(ステップS82)。稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、ステップS83に進む。稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、ステップS84に進む。稼働時間が100,000時間を超えると判定されると、ステップS85に進む。
【0177】
ステップS82において、稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを0℃に設定する(ステップS83)。その後、ステップS94に進む。
【0178】
ステップS82において、稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する(ステップS84)。その後、ステップS94に進む。
【0179】
ステップS82において、稼働時間Otが100,000時間を超えると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する(ステップS85)。その後、ステップS94に進む。
【0180】
ステップS81において、劣化状態が中程度と判定されると、冷却制御部28dは、振動発生装置10eの稼働時間Otの長さを判定する(ステップS86)。稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、ステップS87に進む。稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、ステップS88に進む。稼働時間が100,000時間を超えると判定されると、ステップS89に進む。
【0181】
ステップS86において、稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを0℃に設定する(ステップS87)。その後、ステップS94に進む。
【0182】
ステップS82において、稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する(ステップS88)。その後、ステップS94に進む。
【0183】
ステップS82において、稼働時間Otが100,000時間を超えると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する(ステップS89)。その後、ステップS94に進む。
【0184】
ステップS81において、劣化状態が大きいと判定されると、冷却制御部28dは、振動発生装置10eの稼働時間Otの長さを判定する(ステップS90)。稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、ステップS91に進む。稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、ステップS92に進む。稼働時間が100,000時間を超えると判定されると、ステップS93に進む。
【0185】
ステップS90において、稼働時間Otが50,000時間以内であると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-5℃に設定する(ステップS91)。その後、ステップS94に進む。
【0186】
ステップS90において、稼働時間Otが50,000~100,000時間であると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-10℃に設定する(ステップS92)。その後、ステップS94に進む。
【0187】
ステップS90において、稼働時間Otが100,000時間を超えると判定されると、冷却制御部28dは、温度シフト量ΔTを-15℃に設定する(ステップS93)。その後、ステップS94に進む。
【0188】
ステップS83,S84,S85,S87,S88,S89,S91,S92,S93に続いて、冷却制御部28dは、励磁コイル15および駆動コイル16の温度と冷却ブロア30のブロア周波数fとの関係、即ちブロア周波数特性N,Eを決定する(ステップS94)。その後、メインルーチン(
図13)に戻る。
【0189】
以上説明したように、本実施形態の振動発生装置10eは、励磁コイル15(磁路形成部材)および駆動コイル16の色を計測する色センサ40,41(色測定部)を更に備えて、冷却制御部28d(第1の回転数設定部および第2の回転数設定部)は、励磁コイル15に応じて設定された複数の温度領域と、駆動コイル16に応じて設定された複数の温度領域とを、色センサ40,41が測定した励磁コイル15および駆動コイル16の色に応じた量だけ、それぞれ低温側にシフトする。したがって、振動発生装置10eを、励磁コイル15および駆動コイル16の色に応じて、できるだけ低い温度に維持することによって、励磁コイル15および駆動コイル16の耐久性を向上させることができる。
【0190】
また、本実施形態の振動発生装置10eにおいて、冷却制御部28d(第1の回転数設定部および第2の回転数設定部)は、予め設定した、励磁コイル15(磁路形成部材)および駆動コイル16の色と複数の温度領域との対応関係を示すマップに基づいて、複数の温度領域を設定する。したがって、励磁コイル15および駆動コイル16の劣化度合に応じたブロア周波数特性N,Eを容易に設定することができる。
【0191】
なお、本実施形態の構成は、第2の実施形態で説明した振動発生装置10b、および第3の実施形態で説明した振動発生装置10cに対しても適用することができる。
【0192】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0193】
10a,10b,10c,10d,10e…振動発生装置、12…駆動部、13…試験台、14…弾性部、15…励磁コイル(磁路形成部材)、15a…上部励磁コイル(磁路形成部材)、15b…下部励磁コイル(磁路形成部材)、16…駆動コイル、17…永久磁石(磁路形成部材)、18,19,20…温度センサ(温度測定部)、21…固定部、22a,22b,22c,22d,22e…開口部、23…空隙部、24…軸、25…軸受け、26…ベアリング、27…電力増幅器、28a…振動制御部(励磁制御部)、28b,28c…冷却制御部(第1の回転数設定部、第2の回転数設定部)、29…稼働時間積算部、30…冷却ブロア(ブロア)、32…ブロアホース、35…貫通穴、36…銅リング、40,41…色センサ(色測定部)、42,43…光ファイバ、45…コイル劣化判定部、E,N…ブロア周波数特性、f,f1,f2,f3,f4,f5,f6…ブロア周波数、fa1,fb1…ブロア周波数(第1の所定回転数)、fa2,fb2…ブロア周波数(第2の所定回転数)、fa3,fb3…ブロア周波数(第3の所定回転数)、Ot…稼働時間、T,T1,T2,T3…温度、Ta…安全温度領域(第1の温度領域)、Tb…制御温度領域(第2の温度領域)、Tc…制限温度領域(第3の温度領域)、Td…限界温度領域、ΔT…温度シフト量