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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031257
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】タイヤのシアバンド構造
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/22 20060101AFI20220210BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20220210BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B60C9/22 C
B60C9/20 D
B60C9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130044
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】16/987446
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ジェイハン セリック
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA35
3D131AA48
3D131DA44
3D131DA54
(57)【要約】      (修正有)
【課題】材料コストを抑制し、低燃費かつ、重量増加を抑制させたタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ10は、カーカスプライ13,14と、カーカスプライ13,14のクラウン領域20の半径方向外側に配置されたトレッド22と、トレッド幅に実質的に等しい軸方向全幅を有するシアバンド構造30と、を含み、シアバンド構造30はカーカスプライ13,14を円周方向に取り囲むようにトレッド22とクラウン領域20との間に挿入される。シアバンド構造30は、第1のシアバンド層と、第1のシアバンド層に半径方向に隣接する第2のシアバンド層と、を含む。第1のシアバンド層は第1のゴムマトリックスに埋め込まれた第1の補強コードを有する第1の補強複合材を含む。第1の補強コードは、アラミド構造と2.0と6.0との間の撚り係数(TM)とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスプライと、
前記カーカスプライのクラウン領域の半径方向外側に配置されたトレッドと、
トレッド幅に実質的に等しい軸方向全幅を有するシアバンド構造と、を含み、
前記シアバンド構造は前記カーカスプライを円周方向に取り囲むように前記トレッドと前記クラウン領域との間に挿入され、前記シアバンド構造は、第1のシアバンド層と、前記第1のシアバンド層に半径方向に隣接する第2のシアバンド層と、を含み、
前記第1のシアバンド層は、第1のゴムマトリックスに埋め込まれた第1の補強コードを有する第1の補強複合材を含み、
前記第1の補強コードは、アラミド構造と2.0と6.0との間の撚り係数(TM)とを有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記第2のシアバンド層は第2のゴムマトリックスに埋め込まれた第2の補強コードを有する第2の補強複合材を含み、前記第2の補強コードはアラミド構造と2.0と6.0との間の撚り係数(TM)とを有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のZ撚りを有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のS撚りを有することを特徴とする、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のZ撚りを有することを特徴とする、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第2の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のS撚りを有することを特徴とする、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1の補強コードは、前記第1のゴムマトリックス内で15EPIと35EPIとの間の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1の補強コードは、前記第1のゴムマトリックス内で22EPIと25EPIとの間の密度を有することを特徴とする、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1の補強コードは、前記第1のゴムマトリックス内で約28EPIの密度を有することを特徴とする、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第2の補強コードは、前記第2のゴムマトリックス内で15EPIと35EPIとの間の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第2の補強コードは、前記第2のゴムマトリックス内で22EPIと25EPIとの間の密度を有することを特徴とする、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第2の補強コードは、前記第2のゴムマトリックス内で約28EPIの密度を有することを特徴とする、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第1の補強コードは、アラミドから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第2の補強コードは、アラミドから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記第1および第2の補強コードは、何れもアラミドのみから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤと非空気入りタイヤの両方に関し、より具体的には、タイヤのトレッド部とタイヤの他の構造体との間に挿入されるシアバンド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのシアバンドアッセンブリが知られている。1つの従来のアッセンブリでは、折り畳みプライを高弾性率材料のコードで補強し、全体の幅を少なくともトレッド部の幅と等しくしているかもしれない。その各側面は、2つの展開された単一のカットプライの周りで、半径方向外側方向に折り返しているかもしれない。折り畳みプライの補強コードはタイヤの赤道面に関して20度から60度の間の角度を形成し、タイヤの赤道面に関して等しくかつ対向する角度を形成する2つの単一のカットプライの補強コードであるかもしれない。
【0003】
材料の制約のため、従来のタイヤ構造物は堅牢である傾向があった(例えば、重く多くの構成要素など)。このような構造物は高い転がり抵抗を有する傾向があり、これは燃費を低下させ、また、構造物の嵩は耐久性とハンドリング応答とを制限する傾向を有する可能性があるのみならず、材料コストを増加させる可能性がある。他の特性を向上させ、および/または維持しつつタイヤの重量を減少させることができるように、軽量、高強度、および高度な耐久性のある材料を特定し、タイヤにおけるそのような材料の適切な使用を見出すことが、継続目標である。
【0004】
アラミド補強材料は優れた耐疲労性を示している。この特性は、コードへの比較的低い撚りの適用に適した材料になり、より低密度の材料で耐久性と延長特性を維持することが可能になった。1つの従来のシアバンドアッセンブリは、補強コードを1670dTexから1100dTexに低減した場合、ハンドリング特性が改善されたことを示している。1つの従来のオーバーレイ構造は、6TPIと14TPIとの間の撚りレベルを有するアラミドコードで補強されてもよい。
【0005】
1つの従来のシアバンド構造は420から1100dTexのアラミドコードで補強されている可能性があり、30MPaから50MPaの測定された靭性、15,000MPaから40,000MPaの初期弾性率、140cN/Texから200cN/Texの強靭性、50%から100%の動的屈曲疲労保持破壊強度である。これらのシアバンドは互いに平行に延び、タイヤの赤道面(EP)に対して10度から40度の角度をなす補強コードで補強することができる。シアバンドアッセンブリは、折り畳みシアバンドを備えていてもよく、各横側面に折り畳まれた部分がカットシアバンドを覆って半径方向に折り畳まれている。折り畳みシアバンドの軸方向外側部は半径方向外側方向に折り畳まれていてもよく、カットシアバンドの半径方向外側に配置されていてもよい。
【0006】
他の従来のタイヤは、シアバンドアッセンブリから半径方向外側に配置されたオーバーレイ構造を有していてもよい。リボンの螺旋状の畳み込みは、畳み込みが隣接して接触しているように、2つの単一カットプライにわたって軸方向に巻かれてもよい。リボンは、織物材料のコードで補強することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるタイヤは、カーカスプライと、前記カーカスプライのクラウン領域の半径方向外側に配置されたトレッドと、トレッド幅に実質的に等しい軸方向全幅を有するシアバンド構造と、を含み、前記シアバンド構造は前記カーカスプライを円周方向に取り囲むように前記トレッドと前記クラウン領域との間に挿入される。前記シアバンド構造は、第1のシアバンド層と前記第1のシアバンド層に半径方向に隣接する第2のシアバンド層とを含む。前記第1のシアバンド層は第1のゴムマトリックスに埋め込まれた第1の補強コードを有する第1の補強複合材を含む。前記第1の補強コードは、アラミド構造と2.0と6.0との間の撚り係数(TM)とを有している。
【0008】
前記タイヤの他の態様によれば、前記第2のシアバント層は第2のゴムマトリックスに埋め込まれた第2の補強コードを有する第2の補強複合材を含む。前記第2の補強コードは、アラミド構造と2.0と6.0との間の撚り係数(TM)とを有している。
【0009】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第1の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のZ撚りを有する。
【0010】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第1の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のS撚りを有する。
【0011】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第2の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のZ撚りを有する。
【0012】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、第2の補強コードは、100TPMと300TPMとの間のS撚りを有する。
【0013】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第1の補強コードは、前記第1のゴムマトリックス内で15EPIと35EPIとの間の密度を有する。
【0014】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第1の補強コードは、前記第1のゴムマトリックス内で22EPIと25EPIとの間の密度を有する。
【0015】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第1の補強コードは、前記第1のゴムマトリックス内で約28EPIの密度を有する。
【0016】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第2の補強コードは、前記第2のゴムマトリックス内で15EPIと35EPIとの間の密度を有する。
【0017】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第2の補強コードは、前記第2のゴムマトリックス内で22EPIと25EPIとの間の密度を有する。
【0018】
前記タイヤのさらに他の態様によれば、前記第2の補強コードは、前記第2のゴムマトリックス内で約28EPIの密度を有する。
【0019】
(定義)
本明細書および特許請求の範囲において以下のように使用される。
【0020】
「エイペックス」とは、ビードコアの半径方向上方でプライと折り返しプライとの間に配置されたエラストマー充填材を意味する。
【0021】
「環状」とは、リングのように形成されていることを意味する。
【0022】
「アラミド」および「芳香族ポリアミド」の両方は製造された繊維を意味し、繊維形成物質が一般にアミド結合の少なくとも85%が2つの芳香族環に直接結合している合成芳香族ポリアミドの長鎖として認識される。アラミドまたは芳香族ポリアミドの代表的なものは、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)である。
【0023】
「アスペクト比」とは、タイヤの断面幅に対するタイヤ断面高さの比を意味する。例えば、アスペクト比は、無負荷時および通常の圧力で膨張した時のタイヤサイドウォールの外側の間の最大軸方向距離であってもよく、パーセンテージとして表現するために100%を掛けたものであってもよい。低いアスペクト比は、65以下のアスペクト比を有するタイヤを意味してもよい。
【0024】
「ビード断面のアスペクト比」とは、ビードの断面幅に対するビードの高さの比を意味する。
【0025】
「非対称トレッド」とは、タイヤの中心面または赤道面(EP)に関し対称でないトレッドパターンを有するトレッドを意味する。
【0026】
「軸線方向の」および「軸線方向に」は、タイヤの回転軸に平行な線または方向を示す。
【0027】
「ビード」とは、環状の引張り部材を含むタイヤの一部分を意味し、プライコードによって巻かれ、設計リムに適合するように形成されており、この際、フリッパー、チッパー、エイペックス、トゥーガードおよびチェーファーのような、その他の補強用要素を用いてもよいし、またはそれらを用いなくてもよい。
【0028】
「ベルト構造」または「シアバンド構造」とは、トレッドの下層にあり、ビードに固定されていない、織られまたは織られていない平行なコードからなる少なくとも2つの環状の層またはプライを意味し、タイヤの赤道面に対して傾斜したコードを有する。ベルト/シアバンド構造はまた、制限層として機能する、比較的低い角度で傾斜した平行なコードのプライを含んでもよい。
【0029】
「バイアスタイヤ」(クロスプライ)とは、カーカスプライ内の補強コードがビードからビードへタイヤを斜めに横切ってタイヤの赤道面に対して約25度から65度に延びるタイヤを意味する。複数のプライが存在する場合、プライコードは、互いに隣接する層において互いに逆向きの角度に延びる。
【0030】
「ブレーカー」とは、平行な補強コードからなる少なくとも2つの環状層またはプライを意味し、補強コードはタイヤの赤道面に関して、カーカスプライの平行な補強コードと同じ角度を有する。ブレーカーは、通常、バイアスタイヤと組み合わされる。
【0031】
「ケーブル」とは、2本以上のプライ糸を一緒に撚ることによって形成されたコードを意味する。
【0032】
「カーカス」とは、プライ上のシアバンド構造、トレッド、アンダートレッド、およびサイドウォールラバーとは別のタイヤ構造を意味し、ビードを含む。
【0033】
「ケーシング」とは、トレッドおよびアンダートレッドを除くカーカス、シアバンド構造、ビード、サイドウォール、およびタイヤの他のすべての構成要素、すなわちタイヤ全体を意味する。
【0034】
「チッパー」とは、ビード領域を補強し、サイドウォールの半径方向最内部分を安定させる機能を有し、ビード領域内に位置する織物コードまたはスチールコードからなる狭いバンドを示す。
【0035】
「周方向の」および「周方向に」とは、赤道面(EP)に平行で軸線方向に垂直な環状のタイヤの表面の周縁部に沿って延びるラインまたは方向を意味し、互いに隣接する円形曲線の複数の組であって、断面視において、それらの円形曲線の半径がトレッドの軸線方向の湾曲を画定する複数の円形曲線の組の方向を示すこともある。
【0036】
「コード」とは、タイヤの補強構造を構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0037】
「コード角度」とはコードによって形成される、赤道面に対する鋭角を意味し、タイヤの平面図において左右の鋭角を意味する。「コード角度」は、硬化したが膨張していないタイヤにおいて測定される。
【0038】
「コード撚り」は、その要素フィラメントが糸の単位長さ当たりの所与の巻数(通常、インチ当たりの巻数(TPI)またはメートル当たりの巻数(TPM)で表現される)で一緒に撚られること、さらに、糸はコードの単位長さ当たりの所与の巻数で一緒に撚られることを意味する。撚り方向は、撚り方向が縦に保持されたときの糸またはコードの螺旋の傾き方向を指す。螺旋の傾きが文字「S」の傾きと方向が一致する場合、撚りは「S」または「左手」と呼ばれる。螺旋の傾きが文字「Z」の傾きと方向が一致する場合、撚りは「Z」または「右手」と呼ばれる。「S」または「左手」撚り方向は、「Z」または「右手」撚りとは反対方向であると理解される。「糸撚り」はコードに組み込まれる前に糸に与えられた撚りを意味するものと理解され、「コード撚り」は2本以上の糸が互いに撚り合わされてコードを形成するときに、その2本以上の糸に与えられる撚りを意味するものと理解され、「dtex」は糸が撚りを与えられる前の10000メートルの糸のグラム重量を意味するものと理解される。
【0039】
「カットシアバンドプライ」はトレッド幅よりも小さい幅を有するシアバンドを指し、これは、タイヤのクラウン領域においてカーカスプライ上に平坦に位置する。
【0040】
「クラウン」とは、タイヤトレッドの近傍におけるタイヤの部分を意味する。
【0041】
「デニール」とは、9000メートル当たりのグラム重量(線密度を表す単位)を意味する。「Dtex」は、1万メートル当たりのグラム重量を意味する。
【0042】
「密度」とは、単位長さ当たりの重量を意味する。
【0043】
「エラストマー」とは、変形後にその大きさと形状を回復する能力を備えた弾性材料を意味する。
【0044】
「赤道面(EP)」とは、タイヤの回転軸に垂直で、タイヤのトレッドの中心を通る面、またはトレッドの周方向中心線を含む面を意味する。
【0045】
「進展するトレッドパターン」は、その走行面が道路と接するように意図されたトレッドパターンであって、路面に対するタイヤの走行から生じるトレッドの摩耗によって進展するトレッドパターンを意味する。進展はトレッドの摩耗の程度にかかわらず、タイヤの使用/摩耗の全期間の間、実質的に不変のままである付着および道路操縦性能を得るように、タイヤの設計時に予め決定される。
【0046】
「織物」は、実質的に一方向に延びる複数のコードの網構造を意味し、複数のコードは撚られていてもよく、あるいは、高弾性率材料からなる多数本のフィラメント(撚られてもよい)を複数束ねて構成される。
【0047】
「繊維」とは、フィラメントの基本要素を形成する天然または人工の物質の単位であり、長さは直径または幅の少なくとも100倍であることを特徴とする。
【0048】
「フィラメント数」とは、糸を構成するフィラメントの数を意味する。例:1000デニールのポリエステルは約190のフィラメントを有する。
【0049】
「フリッパー」とは、強度上およびタイヤ本体内でビードワイヤを結束するためにビードワイヤの周りの補強織物を意味する。
【0050】
「フットプリント」とは、ゼロ速度且つ通常の負荷および気圧下における、タイヤトレッドと平坦な面との接触面または接触領域を意味する。
【0051】
「ゲージ」とは、一般に、測定値、具体的には厚さの測定値を示す。
【0052】
「溝」とは、トレッドを周方向、または横方向に、直線状、または曲線状、またはジグザグ状に延びていてよいトレッド内の細長い空隙領域を意味する。周方向および横方向に延びる溝は、時々共通部分を有する。「溝幅」は、溝または溝部分によって占められるトレッド表面を、そのような溝または溝部分の長さで割ったものとすることができ、したがって、溝幅は、その長さ全体の平均幅とすることができる。溝は、タイヤ内で深さが変わっていてもよい。溝の深さは、トレッドの外周の周りで変化してもよく、または1つの溝の深さは一定であってもよいが、タイヤ内の他の溝の深さと異なっていてもよい。このような狭いまたは広い溝が、広い円周溝と比較して実質的に浅い深さであり、当該広い円周溝を相互接続する場合、それらは、それらが含まれるトレッド領域においてリブのような特性を維持する傾向がある「タイバー」を形成するものとみなすことができる。本明細書で使用されるように、溝は、タイヤ接触面またはフットプリント内に開いたままであるのに十分な幅を有することが意図されている。
【0053】
「高張力鋼(HT)」とは、フィラメント径0.20mmにおいて少なくとも3400MPaの引張り強度を有する炭素鋼を意味する。
【0054】
「内側」とは、タイヤの内側に向かうことを意味し、「外側」とは、タイヤの外側に向かうことを意味する。
【0055】
「インナーライナー」とは、チューブレスタイヤの内部表面を形成し、タイヤ内に膨張流体を封じ込めるエラストマーまたは他の材料の1つの層または複数の層を意味する。
【0056】
「インボード側」とは、タイヤがホイールに取り付けられ、ホイールが車両に取り付けられたときに、車両に最も近いタイヤの側を意味する。
【0057】
「LASE」とは、指定された伸びにおける負荷である。
【0058】
「横方向」とは、軸方向を意味する。
【0059】
「設置長さ」とは、撚られたフィラメントまたはストランドが延在して、他のフィラメントまたはストランドの周りを360度回転する距離を意味する。
【0060】
「負荷範囲」とは、The Tire and Rim Association, Inc.の表に定義されている特定の種類のサービスで使用される所与のタイヤの負荷量および膨張限界を意味する。
【0061】
「メガ張力鋼(MT)」とは、0.20mmにおけるフィラメント直径で少なくとも4500MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0062】
「正味接触面積」とは、定義されたトレッドの全周にわたって測定された境界エッジ間の地面に接触する要素の総面積を意味する。
【0063】
「ネット対グロス比」とは、トレッドの全周の周りのトレッドの側縁間の地面に接触するトレッド要素の総面積を、側縁間のトレッドの全周の総面積で割ったものを意味する。
【0064】
「非方向性トレッド」とは、好ましい前進方向を持たず、トレッドパターンを好ましい移動方向と一致させるために車両の特定のホイール位置または複数の位置に配置する必要がないトレッドを意味する。逆に、方向性トレッドパターンは、特定のホイール位置を必要とする好ましい移動方向を有する。
【0065】
「通常負荷」とは、タイヤの使用条件に対して、適切な標準化機構によって割り当てられた特定の設計膨張圧力および負荷を意味する。
【0066】
「普通張力鋼(NT)」とは、0.20mmフィラメント直径において少なくとも2800MPaの引張り強度を有する炭素鋼を意味する。
【0067】
「アウトボード側」とは、タイヤがホイールに取り付けられ、ホイールが車両に取り付けられたときに、車両から最も離れたタイヤの側を意味する。
【0068】
「プライ」とは、ゴムで被覆されたコード補強層を意味し、半径方向に展開され、または、さもなければ平行なコードである。
【0069】
「半径方向の」および「半径方向に」とは、径方向にタイヤの回転軸に向かい、または離れる方向を意味する。
【0070】
「ラジアルプライ構造」とは、少なくとも1つのプライがタイヤの赤道面に対して65度から90度の角度で配向した補強コードを有する1つ以上のカーカスプライを意味する。
【0071】
「ラジアルプライタイヤ」とは、少なくとも1つのプライが、ビードからビードへ延びタイヤの赤道面に対して65度から90度のコード角に配置されるコードを有する、シアバンド構造の、または周方向に拘束された空気入りタイヤを意味する。
【0072】
「リブ」とは、少なくとも1つの周方向溝と、第2のそのような溝または側縁の何れかによって画定される、トレッド上の周方向に延びるゴムのストリップを意味し、ストリップは、十分に深い溝によって横方向に分割されない。
【0073】
「リベット」とは、層中のコード間の開放空間を意味する。
【0074】
「断面高さ」とは、赤道面での公称リム直径からタイヤの外径までの半径方向距離を意味する。
【0075】
「断面幅」とは、通常圧力且つ無負荷時で24時間膨張させたとき、およびそれ以降の、サイドウォールの外側間の、タイヤ軸に平行な最大直線距離を意味し、ラベル、装飾または保護バンドによるサイドウォールの高さを除く。
【0076】
「自立型ランフラット」とは、タイヤが限られた時間および限られた速度で、非膨張状態で操作されたときに、タイヤ構造のみで車両の負荷を支持するのに十分に強い構造を有するタイプのタイヤを意味する。タイヤ構造しかないため(例えば、内部構造がないため)、タイヤのサイドウォールおよび内面は潰れたり、座屈したりすることがない。
【0077】
「サイドウォールインサート」とは、タイヤのサイドウォール領域に配置されたエラストマーまたはコード補強材を意味する。インサートは、カーカス補強プライおよびタイヤの外面を形成する外側のサイドウォールゴムへの追加であってもよい。
【0078】
「サイドウォール」とは、トレッドとビードとの間のタイヤの部分を意味する。
【0079】
「サイプ」または「切り込み」とは、トレッド表面を細分化し、牽引力を改善する、タイヤのトレッド要素に成形された小さなスロットを意味し、サイプは溝とは異なり、接触面またはフットプリント内で閉じるように設計されてもよい。
【0080】
「ばね率」とは、所与の圧力での負荷たわみ曲線の勾配として表されるタイヤの剛性を意味する。
【0081】
「剛性比」とは、コードの両端が支持され、固定端の間の中心に掛けられた負荷で曲げられる固定三点曲げ試験によって値が決定された場合の、制御シアバンド構造の剛性値を別のシアバンド構造の剛性値で割った値を意味する。
【0082】
「超高張力鋼(ST)」とは、0.20mm繊維径において少なくとも3650MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0083】
「靭性」とは、歪みのない試験片の単位線密度当たりの力(cN/tex)として表される応力を意味する。
【0084】
「引張り応力」とは、力/断面積で表される力である。強度psi=12,800×比重×デニールあたりのグラムにおける靭性。
【0085】
コードの「張力」とは、mN/texとして表されるコード上の力を意味する。
【0086】
「トゥーガード」とは、各ビードの軸方向内側のタイヤの円周方向に展開されたエラストマーのリム接触部分を示す。
【0087】
「TM」とは、TM=(単一プライのデニール×プライ数)×(TPI/73)の平方根のような撚り係数を意味する。
【0088】
「TPI」とは、1インチ当たりの撚りを意味する。
【0089】
「TPM」とは、1メートル当たりの撚りを意味する。
【0090】
「トレッド」とは、タイヤケーシングに結合されたときに、タイヤの通常負荷通常膨張時に道路と接触するタイヤの部分を含む成型されたゴム部品を意味する。
【0091】
「トレッド要素」または「牽引要素」とは、リブまたはブロック要素を意味する。
【0092】
「トレッド幅」とは、タイヤの回転軸を含む平面におけるトレッド表面の弧の長さを意味する。
【0093】
「インチ当たりの巻き」またはTPIは、コードの各インチ長に対するコード撚りの回転数を意味する。
【0094】
「折り返し端」とは、プライが巻かれているビードから上方に(すなわち、半径方向外側に)曲がるカーカスプライの部分を意味する。
【0095】
「超超張力鋼(UT)」とは、0.20mmフィラメント直径において少なくとも4000MPaの引張り強度を有する炭素鋼を意味する。
【0096】
「垂直たわみ」とは、タイヤが負荷の下でたわむ量を意味する。
【0097】
「糸」は、織物繊維またはフィラメントの連続ストランドの総称である。糸は以下の形態で発生する:(1)一緒に撚り合わされた多数の繊維;(2)撚りをかけずに一緒に配置された多数の繊維;(3)ある程度の撚りを加えて一緒に配置された多数の繊維;(4)撚りの有無にかかわらず単一の繊維(モノフィラメント);および(5)撚りの有無にかかわらない材料の狭いストリップ。
本発明は、一例として、以下の添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明に使用するタイヤの一例の断面図である。
図2】本発明で使用するタイヤの他の例の断面図である。
図3】本発明によるシアバンド複合材の斜視図である。
図4】本発明によるいくつかの例示的なコード構造の特性の表である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1を参照すると、本発明で使用するための空気入りまたは非空気入りタイヤ10の一例が表されている。タイヤ10は、一対の実質的に非伸張性のビードコア11、12を有することができ、ビードコアは、ビードコア間に延在する2つのカーカスプライ13、14と共に軸方向に間隔を空けて配置されている。カーカスプライは、ビードコア11、12の各々の周りに軸方向および半径方向外側に向けて折り畳められ、タイヤ10の赤道面(EP)に対して50度から90度の角度で同じプライ内で互いに実質的に平行なコードによって補強されてもよい。隣接するカーカスプライ13、14に属するコードは、一般に、2度から5度の角度で互いに交差する反対の角度を有していてもよい。カーカスプライ13、14のコードは、鋼、ナイロン、レーヨン、アラミド、および/またはポリエステルなどの任意の適切な材料とすることができる。タイヤ10は、ポリエステルケーブルまたはレーヨンケーブルが並んで配置されたカーカスプライ13、14を有し、タイヤトレッド22の半径方向内側に配置されたシアバンドアッセンブリ21によって補強されたクラウン領域20を有してもよい。タイヤ10は、25と65との間のアスペクト比を有してもよい。
【0100】
タイヤ10は、実質的に剛体の折り畳みシアバンド23と、折り畳みシアバンドの半径方向外側に配置されたカットシアバンド24とを備えたシアバンド構造30をさらに含んでもよい。両シアバンド23、24は、アラミドケーブルまたはアラミド糸で補強されてもよい。シアバンド23、24は、同一のまたは異なる構造を有していてもよい。このようなコードは、ディップとして知られる処理において、1つ以上の接着層で処理(被覆)されてもよい。処理されたコードの弾性率はコードに使用される異なる糸の撚り、コードの撚り、およびコードがディップ操作を受ける方法の関数であってもよい。
【0101】
折り畳みシアバンド23のコードは互いに実質的に平行であり、タイヤ10の赤道面(EP)に対して15度から40度の角度を作ってもよい。折り畳みシアバンド23の軸方向外側部は、カットシアバンド24の軸方向端を覆い、かつ折り畳み部25、26が赤道面(EP)に対して対称となるように、半径方向外側方向に、両側の横側面に折り返されていてもよい。折り畳み部25、26は夫々、トレッド幅(TW)の5%と30%との間、または15%と30%との間の横幅を有していてもよい。
【0102】
図2に示すように、本発明で使用する他の実施例のタイヤ10aは、ビード11a、12aの周りに巻かれた1つのカーカスプライ13aを含んでもよい。シアバンド構造30は、アラミドコードで補強されたシアバンド16、17と、シアバンド16、17の半径方向外側に配置されたオーバーレイ27、28とを含んでもよい。シアバンド16、17は、同一または異なる構造を有することができる。オーバーレイ27、28はオーバーレイ材料の単一シート、カットオーバーレイ(例えば、タイヤ全体にわたってランダムな位置で不連続なオーバーレイ内の補強コード)、および/または螺旋状のオーバーレイとすることができる。オーバーレイ27、28内の補強コードは、ナイロン、ポリエステル、ポリアミン、アラミド、および/または任意の他の適切なオーバーレイ補強材料を含むことができる。
【0103】
図3に示すように、本発明によれば、シアバンド構造30のシアバンド16、17、23、24は、ゴムマトリックス32に埋め込まれ圧縮耐久性のあるアラミド補強コード31を有する補強複合材を含むことができる。圧縮耐久性のある補強コード31は、糸の単位長さ当たり所与の巻数(通常、インチ当たりの巻数、TPI、またはメートル当たりの巻数、TPMで表現される)で一緒に撚られた複数の要素フィラメントを有するアラミド糸であってもよい。アラミド糸は、撚りレベルを有するコード31を形成するため一緒に撚られてもよい。
【0104】
シアバンド構造30の第1の例の圧縮耐久性のあるアラミド補強コード31は1100/4dtex構造を有し、15EPI(エンド/インチ)から35EPI、または22EPIから25EPI、または28EPIのコード分布密度を有していてもよい。第1の補強コード31はZ150/S150TPM(メートル当たりの巻数)とZ200/S200TPMとの間、または約Z180/S180TPMの撚り、および100mN/texと200mN/texとの間、または約180mN/tex、または約120mN/texの張力を有していてもよい。
【0105】
シアバンド構造30の第2の例の圧縮耐久性のあるアラミド補強コード31は1210/3dtex構造を有し、15EPI(エンド/インチ)から35EPI、または22EPIから25EPI、または28EPIのコード分布密度を有していてもよい。第2の補強コード31は、Z150/S150TPM(メートル当たりの巻数)とZ250/S250TPMとの間、または約Z200/S200TPMの撚り、および100mN/texと150mN/texとの間、または約120mN/texの張力を有していてもよい。
【0106】
上述したように、重量を減らすために、アラミドシアバンド構造は、鋼のシアバンドの代わりに使用してもよい。スチールワイヤは圧縮耐久性が限られている。しかしながら、撚りアラミドコードは、スチールワイヤと比較して、より高い圧縮耐久性を提供する可能性がある。その利点を最大化するために、圧縮耐久性のあるアラミドコードは、本質的にスチールシアバンドワイヤの応力-歪曲線を模倣してもよい。アラミドコードの規格は、目標とするスチールワイヤ規格に類似していてもよい。このような「より少ない撚り」のアラミドコード構造は硬い、スチールワイヤのような、浸漬したアラミドコードにより高い張力を提供する可能性がある。
【0107】
図4に示すように、これらのアラミドコードは、2.00~6.00、または2.98~4.97の範囲の撚り係数TMを有してもよい。これらのコードは、2つ以上の異なる領域で張力をかけられる可能性がある。これらのコードは、非空気入りタイヤのシアバンド構造のスチールワイヤ、または螺旋コード、0度および/または角度のあるシアバンドのスチールワイヤに取って代わる可能性がある。これらのコードは、同様の応力-歪曲線を有するスチールワイヤの最高で6倍の耐久性を示すことがある。
【0108】
上述した本発明の実施例は例示として考慮されるべきであり、以下の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲を限定するものとして考慮されるべきではない。本発明の上記および他の目的、機能、および利点は添付の図面に示されるように、本発明の実施例の上記の詳細な説明から明らかであり、添付の図面において、同様の参照番号は、本発明の同様の部分を表す。
【0109】
本明細書に提供される説明に照らして本発明の変形が可能である。本発明を説明する目的で、特定の代表実施例および詳細を示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、その中で種々の変更および修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、以下の付属請求項によって定義されるように、本発明の全範囲内であると説明される特定の実施例において変更が行われ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】