(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031261
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】アクリル系繊維の簡素化及び改良された製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/18 20060101AFI20220210BHJP
D01D 5/06 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
D01F6/18 E
D01D5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130192
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】102020000019582
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518090672
【氏名又は名称】モンテフィブレ マエ テクノロジーズ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリネッティ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】ベッラルディ ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ブローニ ヴィットーリア
(72)【発明者】
【氏名】ワン チンチュン
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB04
4L035BB11
4L035BB14
4L035FF01
4L035HH02
4L035LB01
4L045AA02
4L045CA08
4L045DA05
4L045DA14
4L045DA36
(57)【要約】
【課題】真空装置、薄膜蒸発装置又は他の装置等の複雑な設備を用いた、水の除去又はポリマー溶液の濃縮のためのプロセスを回避し、これによりポリマー溶液の製造方法、ひいては繊維製造方法の全体を最適化する。
【解決手段】アクリル系繊維製造用の簡素化及び改良された方法、特にアクリル系繊維製造用の紡糸溶液を調製するための方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)水性懸濁液中においてモノマーを重合し、未反応モノマーを除去し、前記水性懸濁液をろ過及び洗浄して、40/60~60/40の範囲の重量比でポリマー及び水を含む第一ろ過ケーキを得る、アクリロニトリルのホモポリマー又はアクリロニトリルのコポリマーの水性懸濁液を調製する工程、
ii)前記第一ろ過ケーキの重量の2~10倍の範囲の重量比で、撹拌下、溶媒/水混合物中に又は純溶媒中に前記第一ろ過ケーキを分散する工程、
iii)ろ過又は遠心分離により、40/60~70/30の範囲の重量比でポリマーと溶媒/水混合物とを含む第二ケーキを得る、前記ポリマー分散液の固相/液相を分離する工程、
iv)前記第二ケーキにおける前記ポリマーの重量の2~10倍の範囲の重量比で、前記工程ii)と同じ溶媒又は同じ水/溶媒混合物中に、室温において又は室温未満の温度において5~20分の範囲の時間で、工程iii)で得られた前記第二ケーキを再分散して、溶媒/ポリマーの重量比が90/10~70/30の範囲の重量比である均質な分散液又は均質なスラリーを得る、工程、
を含む、アクリル系繊維製造用の均質な紡糸溶液へと変換される均質な分散液又は均質なスラリーの製造方法。
【請求項2】
前記工程iv)で得られた前記均質な分散液又は前記均質なスラリーが、下流の熱交換器により均質なポリマー溶液(ドープ)に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程ii)及び前記工程iv)において、前記溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程ii)において、温度が0℃未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒/水混合物における水の量が、前記混合物の総重量に対して0~20重量%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程iv)において、温度が5℃に等しい、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記均質な紡糸溶液が、前記紡糸溶液の総重量に対して10~26重量%の範囲のポリマー含有量を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記工程iii)及び前記工程iv)において、水溶性添加剤(例えば、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第四級アンモニウム塩、ポリマーのイオン性末端基を塩化できる銅又は銀等の金属イオンの塩、又は水溶性ポリマー)が添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、80,000~200,000Daの範囲の高分子量ポリマー又は40,000~55,000Daの範囲の中分子量ポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アクリロニトリルのコポリマーが、コポリマーの総重量に対して90~99重量%の範囲の量であるアクリロニトリル並びにコポリマーの総重量に対して1~10重量%の範囲の量である1又は複数の他のコモノマーからなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コモノマーが、中性ビニル分子(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル又はアクリルアミド)及び1又は複数の酸性基を有する化合物(例えば、アクリル酸、イタコン酸又はスルホン化スチレン)から選択される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系繊維の簡素化及び改良された製造方法に関し、特にアクリル系繊維製造用の紡糸溶液の調製方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、アクリル系繊維の製造に関する分野に属し、アクリロニトリルから出発するポリマーの調製、又は主にアクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して90~99重量%)、及びポリマーの総重量に対して概して1~10重量%の範囲の量である1又は複数の他のコモノマーによって構成されるコポリマーの調製を提供する。
【0003】
好ましいコモノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド及び類似体等の中性ビニル分子、並びにアクリル酸、イタコン酸、スチレンスルホン酸塩及び類似体等の1若しくは複数の酸性基を有する分子の両方、又は様々な物理化学的特性を物質に付与することができる他のコモノマーである。
【0004】
このように調製されたポリマー及びコポリマーは、続いて、トウ(tows)として回収される繊維を得るために紡糸に供される。このトウは、続いて様々な加工技術によってテキスタイル用途及び技術的用途の両方のための製品に変換されるのに適する。
【0005】
アクリル系繊維の特定のタイプとしては、炭素繊維用の繊維「前駆体」がある。これらは、アクリロニトリルと、ポリマーの総重量に対して概して1~5重量%の範囲の量である、前記のコモノマーから選択される1又は複数のコモノマーとの高分子量コポリマーである。続いて、ポリアクリロニトリルをベースとするこれらの繊維「前駆体」の適切な熱処理によって、炭素繊維が得られる。
【背景技術】
【0006】
アクリル系繊維を調製するための様々な工業的プロセスが存在し、これらは様々な重合法及び紡糸法を用いている。
【0007】
現行技術は、以下のように分類し、体系化することができる。
【0008】
A.不連続プロセス(2段階)
2段階バッチプロセスでは、一般的にポリマーは水性懸濁液で製造され、単離され、続いて適切な溶媒に溶解されて紡糸され、繊維へと、又は炭素繊維の場合は繊維前駆体へと変換される。紡糸溶液の調製に最も一般的に用いられる溶媒としては、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)水溶液、及びさらには、米国特許第9296889号で最近報告されたように、ジメチルスルホキシド(DMSO)と様々な量の水との混合物がある。
【0009】
B.連続プロセス(1段階)
一方で、連続プロセスでは、重合は溶媒中で行われ、こうして得られた溶液は、ポリマーの中間単離を行うことなく、紡糸に直接用いられる。これらのプロセスで最も一般的に用いられる溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化亜鉛(ZnCl2)水溶液、及びチオシアン酸ナトリウム(NaSCN)水溶液がある。
【0010】
不連続プロセスは、操作の観点から大きな利点を有している。重合及び紡糸の2工程は、実際には独立しており、紡糸工程の前の洗浄およびろ過によって、微量の不純物及び未反応モノマーをポリマーから容易に分離することができる。
【0011】
そのため、このタイプのプロセスは、アクリル系繊維の製造のための工業的操作においてより広く用いられており、炭素繊維用前駆体の製造プロセスの相当な割合を占めている。
【0012】
工業的には、不連続プロセスは、水性懸濁液における重合から得られるポリマーの乾燥工程を提供し、当該乾燥は、ベルト式乾燥機又は流動層乾燥機を用いて行われる。粉末形態のポリマーは次に貯蔵庫へと搬送され、使用時まで貯蔵される。紡糸溶液(ドープ)を調製するため、粉末状ポリマーは、続いて塊及びゲルを含まない溶液を得るのに適した手段で溶媒と入念に混合される。ろ過後、ドープは最終的に紡糸機へと送られる。
【0013】
現行技術による上記プロセスは、
図1に模式的に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
さらに、粉末形態のポリマーの単離、乾燥及び輸送の工程、並びに紡糸溶液の調製工程では、微細で爆発の可能性のある粉末がプロセス中に存在することから、安全性の面で特に注意を必要とする複雑かつ高価な設備を用いる。さらに、これらのプロセス工程は、一般的に熱空気又は窒素を用いて操作される乾燥ユニット、及び粉末形態のポリマーの輸送ユニットが存在するため、エネルギーの観点からも極めて不利である。
【0016】
一方で、米国特許第10619012号は、ポリマーの乾燥工程を克服することを提供する製造方法を主張及び記載しており、前記方法は、主に紡糸に供されるポリアクリロニトリル系ポリマーのポリマー溶液を得ることを目的としている。この場合、ろ過ケーキを多少希釈した溶媒に分散させることで得られる、ジメチルスルホキシド(DMSO)におけるウェットポリマーのスラリーは、ポリマー懸濁液から水を除去することで優れたポリマー溶液(ドープ)を与えると主張している。
【0017】
水の除去、及び紡糸に供されるポリマー溶液の形成は、減圧下の蒸発システムにより行われ、温度上昇の寄与もあり、ゲルを含まず正確に形成されたポリマー溶液の形成をもたらす。
【0018】
本発明の目的は、真空装置、薄膜蒸発装置又は他の装置等の複雑な設備を用いた、水の除去又はポリマー溶液の濃縮のためのプロセスを回避することであり、これによりポリマー溶液の製造方法、ひいては繊維製造方法の全体を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、アクリル系繊維製造用の均質な紡糸溶液へと変換される均質な分散液又は均質なスラリーの製造方法に関し、前記方法は:
i)水性懸濁液中においてモノマーを重合し、未反応モノマーを除去し、前記水性懸濁液をろ過及び洗浄して、40/60~60/40の範囲の重量比で、好ましくは1:1以上の重量比でポリマー及び水を含む第一ろ過ケーキを得る、アクリロニトリルのホモポリマー又はアクリロニトリルのコポリマーの水性懸濁液を調製する工程、
ii)前記第一ろ過ケーキの重量の2~10倍の範囲の重量比で、好ましくは5℃以下の温度で5~15分の範囲の時間で、撹拌下、溶媒/水混合物中に又は純溶媒中に前記第一ろ過ケーキを分散する工程、
iii)ろ過又は遠心分離により、40/60~70/30の範囲の重量比で、ポリマーと溶媒/水混合物とを含む第二ケーキを得る、前記ポリマー分散液の固相/液相を分離する工程、
iv)前記第二ケーキにおける前記ポリマーの重量の2~10倍の範囲の重量比で、前記工程ii)と同じ溶媒又は同じ水/溶媒混合物中に、室温において又は室温未満の温度において5~20分の範囲の時間で、工程iii)で得られた前記第二ケーキを再分散して、溶媒/ポリマーの重量比が90/10~70/30の範囲の重量比である均質な分散液又は均質な「スラリー」を得る、工程、
を含む。
【0020】
工程iv)のこの均質な分散液又は均質なスラリーは、均質なポリマー溶液(ドープ)へのその後の変換に好適である。ドープへの変換は、ポリマーが完全に溶解するまで懸濁液を加熱することにより、好ましくはスラリーを下流の熱交換器へと通すことにより行われる。
【0021】
本発明の方法の最後に得られる均質な紡糸溶液は、ゲル及び未溶解残渣を含まず、紡糸ライン又は貯蔵タンクへと直接供給してもよい。
【0022】
こうして、本発明では、水性懸濁液における重合に関する利点を維持しつつも、ポリマーの乾燥、ポリマー粉末の貯蔵庫への輸送、及び引き続く紡糸のための溶媒中への再溶解という危険で高価な工程を省略し、アクリロニトリルのホモポリマー又はアクリロニトリルのコポリマーの、不溶性の凝集物を形成することなく、ゲルを含まない溶液を得ることができる。
【0023】
したがって、本発明の方法によれば、重合及び紡糸の2工程を簡素化された経済的な方法に統合することができる。
【0024】
さらに、純溶媒とポリマーとを混合することによって行われる工程iv)は、特に溶媒がDMSOである場合に、微量の水を含む溶媒に既に浸された粉末が、米国特許第4403055号に記載されたような分散における問題を有しないため、とりわけ簡素である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】現行技術における不連続プロセスを模式的に示す図である。
【
図3】ろ過性試験に用いる装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
米国特許第9296889号に開示されるように、溶媒によるウェットポリマーの密接な浸潤は、分散及び溶解が困難な集塊(coacerves)の形成を抑制すると同時に、微細で均質な懸濁液の形成を最適化する。
【0027】
本明細書において、ポリマーという用語は、通常、アクリロニトリルから出発して得られるホモポリマー、並びにアクリロニトリル及び1又は複数の他のコモノマーから出発して得られるコポリマーの両方を意味する。
【0028】
特に、前記ポリマーは、80,000~200,000Daの範囲の高分子量ポリマー、又は40,000~55,000Daの範囲の中分子量ポリマーである。
【0029】
本発明の方法の工程ii)では、低温で、すなわち通常5℃以下の温度で、純溶媒又は溶媒/水混合物が用いられる。この温度は、溶媒の凝固点が許容すれば、0℃未満でもよい。
【0030】
工程ii)の溶媒/水混合物における水の量は、混合物の総重量に対して0~20重量%の範囲で変化させてもよい。
【0031】
本発明の方法の様々な工程、すなわち、工程ii)及び工程iv)において用いられるのに好適な溶媒は、アクリル系繊維を紡糸するためのポリマー溶液の形成に一般的に用いられる溶媒であり、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
【0032】
工程ii)で分散液を得るための条件は、粒状ポリマーが溶解又は膨潤しないような条件であるべきであり、したがって、溶媒/水混合物における水の濃度、前記分散液を得るための操作温度及び分散が行われる撹拌タンクでの滞留時間は、適切に決定されるべきである。
【0033】
工程ii)の分散において、ろ過ケーキは、前記ケーキの重量の2~10倍の範囲の重量比である、溶媒/水混合物中に又は純溶媒中に分散される。
【0034】
これらの条件下、すなわち、低温において、溶媒/水混合物の場合には正確な量の水を提供する特定の溶媒を用いた条件下では、工程ii)の分散媒はポリマーに対する溶媒能を有していない。より具体的には、工程ii)では、ケーキの固体粒子もポリマー自体の粒内の固体粒子も、これらを溶媒又は溶媒/水混合物に浸す分散媒と接触することで、工程ii)に供給されたケーキ中に存在する水との交換をもたらし、この水を純溶媒で、又は前述通り僅かな割合の水を含む溶媒/水混合物で置き換える。
【0035】
そのため、滞留時間は、分散媒中の水/溶媒濃度が平衡に達するのに十分な時間、すなわち、工程ii)の分散媒が、工程i)から得られるポリマー物質に浸み込んだ水を純溶媒で又は水/溶媒混合物で置き換えるような時間である。この状態は、分散液を5~15分の範囲の時間に渡って撹拌下におくことで通常達成され、これにより好適なポリマー分散液を得る。
【0036】
後続の工程iii)では、ろ過又は遠心分離による、固相/液相の2相の分離は、溶媒に非常に富んでいるもののポリマーを溶解する能力を有さない水溶液に浸された第二ポリマーケーキの形成をもたらす。
【0037】
工程iii)のろ過/遠心分離の最後における前記第二ケーキ中に残る水の量は、工程ii)のポリマーを再分散するために用いられる水/溶媒の比、第一ろ過ケーキが再分散された水/溶媒の量、並びに工程iii)においてろ過又は遠心分離により得られる第二ケーキの液体/固体の最終比に関連することになる。
【0038】
工程iii)のろ過又は遠心分離から得られる液相は、場合により純溶媒によるタイターの補正後、通常、蒸留により溶媒回収システムに送られ、あるいは、分散工程iii)へとリサイクルされてもよい。
【0039】
ポリマー/溶媒/水の比が明らかな、工程iii)から得られる第二ケーキは、渦巻管(cochlea)又はベルトコンベヤーシステムを用いて工程iv)へと輸送され、工程iv)では撹拌タンクにおいて溶媒に添加され、スラリーを形成し、その後下流の熱交換器によりドープへと変換される。
【0040】
実際に、工程iv)において、工程iii)で得られた第二ケーキは、前記ケーキにおけるポリマーの重量の2~10倍の範囲の重量比で、工程ii)と同じ溶媒又は同じ水/溶媒混合物中に、室温において又は室温未満の温度において5~20分の範囲の時間で、再分散され、均質な分散液又は均質な「スラリー」を得る。室温未満の温度は、DMAc及びDMFのような溶媒を使用する場合には、約5℃の温度も意味する。
【0041】
これらの紡糸可能なポリマー溶液は、通常、ポリマー溶液の総重量に対して10~26重量%の範囲のポリマー含有量を有する。
【0042】
【0043】
本発明の方法のさらなる利点は、引き続き紡糸工程に供給される、紡糸溶液に又はドープ溶液に含まれる特定の量の水により決定される。実際に、本発明の方法により得られるアクリル系繊維の製造用の均質な溶液中に残る水の割合は、乾式紡糸技術又は湿式紡糸技術によるアクリル系繊維紡糸技術並びにDJWS技術(乾式ジェット湿式紡糸又はエアギャップ)によるアクリル系繊維紡糸技術の両方に十分に適合する。したがって、紡糸に供される溶液から水を完全に除去する必要はない。
【0044】
さらに、米国特許第3932577号で主張されているようにアクリル系繊維用の紡糸溶液中に低割合の水が存在すると、溶液自体と凝固浴との相溶性が高まり、空胞及びクラックのない繊維が得られる。これらの特性は、良好な光沢及び密な構造を有する炭素繊維用前駆体又はテキスタイル繊維の製造において特に有利である。
【0045】
ドープ中の微量の水の存在に関連するさらなる利点は、再分散工程iii)及びスラリーの調製工程iv)の両方において、ポリマー、ひいては最終繊維に特定の性能を提供可能な水溶性添加剤を与えることが可能なことである。
【0046】
ポリマーひいては最終繊維に特定の性能を提供可能な添加剤の非限定的な例としては、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第四級アンモニウム塩、ポリマーのイオン性末端基を塩化できる銅又は銀等の金属イオンの塩、ポリマー溶液のレオロジーを変えるための水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0047】
特に、炭素繊維前駆体にとって、イタリア特許出願第102019000014880号に記載されているように、適切な量のアンモニア又はアミンをポリマー溶液へ添加することで、凝固浴における繊維の押し出しをさらに向上させ、よりいっそう密で空胞のない繊維を提供し、さらに酸化/炭化段階における反応速度を増加させることができることに留意すべきである。
【0048】
一方、テキスタイル繊維では、抗菌剤、難燃剤又は特定の特徴を繊維に付与できる他の物質を添加することが有益となり得る。
【0049】
本発明によるアクリル系繊維の製造用の均質な紡糸溶液を調製する方法は、アクリロニトリルから出発するホモポリマー、又は主にアクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して90~99重量%)、及びポリマーの総重量に対して概して1~10重量%の範囲の量である1又は複数の他のコモノマーによって構成されるコポリマー等のポリマーの調製を提供する。
【0050】
好ましいコモノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の中性ビニル分子、及びアクリル酸、イタコン酸、スルホン化スチレン等の1若しくは複数の酸性基を有する分子の両方、又は様々な物理化学的特性を物質に付与することができる他のコモノマーである。
【0051】
アクリル系繊維の特定のタイプとしては、炭素繊維用の繊維「前駆体」がある。これらは、アクリロニトリル(コポリマーの総重量に対して90~99重量%)と、コポリマーの総重量に対して概して1~5重量%の範囲の量である、前記のコモノマーから選択される1又は複数のコモノマーとの高分子量(80,000~200,000Da)コポリマーである。
【0052】
こうして得られた紡糸溶液又はドープ溶液は、好適な紡糸ラインへの供給に直ちに用いられてもよく、あるいは加熱されたタンク中に貯蔵されてもよい。
【0053】
前述したように、現行技術に従うプロセスを説明するために、
図1に記載したプラントスキームを参照する。
図1では、重合反応器1から送られる水中のスラリーの形態のポリマーが、未反応モノマーを除去するためのストリッピング塔2での処理後、真空下のロータリーフィルター3で洗浄及びろ過される。粉末状ポリマーは、一般的に熱空気又は窒素で運転される乾燥ユニット12を、続いてライン13を通して貯蔵サイト14に輸送される。ポリマーは、渦巻管又は他のコンベヤー手段を用いて混合部15へと供給され、そこには、貯蔵タンクからライン16を通って新たな溶媒も送られる。
【0054】
ミキサー15では、粉末状ポリマーが溶媒中に分散され、こうして得られたポリマースラリーは、貯蔵タンク17に供給され、交換器18によって紡糸溶液に変換される。次に、溶液は、任意の粒子を除去するための40μm~5μmの選択性布(selectivity cloths)を有する一連のフィルタープレス19へ送られ、ライン20を通して、紡糸ラインへ又は貯蔵タンク(
図1には図示せず)へ送られる。
【0055】
本発明の方法の実施形態を説明するために、以降において
図2に示すプラント略図を参照する。ここでは、前記方法は連続的に行われてもバッチごとに行われてもよく、好ましくは連続的に行われてよい。
【0056】
重合反応器1から送られる水中のスラリーの形態のポリマーは、未反応モノマーを除去するためのストリッピング塔2での処理後、真空下のロータリーフィルター3で洗浄及びろ過される。その結果、ポリマー及び水から構成されるケーキが得られ、当該ケーキは、本発明の方法の工程i)から工程ii)へ送られる。ロータリーフィルター3から送られたケーキは、その後、低温の溶媒/水あるいは低温の純溶媒混合物が図に記載のラインを通して供給される撹拌タンク4中で再分散される。撹拌タンク4において、懸濁液は、5℃以下の温度に保持される。得られる懸濁液は、撹拌下で数分間保持され、その後、第二ロータリーフィルターへ又は遠心分離機5へ供給され、本発明の方法の工程iii)が達成される。水/溶媒に浸された物質は、渦巻管又は他のコンベヤー装置6を用いて撹拌タンク17へと供給され、そこには、貯蔵タンクからライン16を通って新たな溶媒が送られ、全混合物が交換器18によって紡糸溶液に変換される。
【0057】
次に、前記溶液は、任意の粒子を除去するための40μm~5μmの選択性布(selectivity cloths)を有する一連のフィルタープレス19へ送られ、ライン20を通して、紡糸ラインへ又はドープ貯蔵タンク(
図2には図示せず)へ送られる。
【実施例0058】
本発明の非限定的な例により、本発明の方法のいくつかの実施形態の例を以下に提供する。
【0059】
(実施例1)
[アクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して96重量%)及びアクリル酸メチル-イタコン酸のペア(ポリマーの総重量に対して4重量%)からなる高分子量アクリル系コポリマー(MWn=75,000~100,000)の溶解]
【0060】
重合反応器から送られた水中のスラリーの形態のポリマーを、未反応モノマーを除去するためのストリッピング塔での処理後、真空下のロータリーフィルターで洗浄及びろ過し、ポリマー(57重量%)及び水(43重量%)からなるケーキを得た。
【0061】
このケーキの70kgを、撹拌タンクへ輸送し、DMSO(80%)及び水(20%)からなる、4℃の温度に維持した、混合物400kgを添加した。得られた懸濁液を、5℃で5分間撹拌し、その後、ロータリーフィルターに供給した。ろ液は、ポリマー52%、DMSO39%及び水9%の重量割合で、水/溶媒混合物に浸されたポリマーケーキからなることが特定されている。
【0062】
次に、こうして得られた物質を、115kgのDMSOを供給した撹拌タンクに渦巻管を通して供給し、20重量%のポリマー、75重量%のDMSO及び5重量%の水を含むスラリーを得た。前記スラリーは、容積式ポンプを用いて、以下からなるドープへの溶解及び変換システムに供給した。
- チューブバンドル交換器;
- 均質化のためのスタティックミキサー;
- 存在する可能性のある任意の溶解していない粒子を除去するための40μmから5μmまで少しずつ異なる選択性布を有する一連のフィルタープレス
【0063】
こうして製造されたドープは、70℃で約320ポアズの粘度を特徴とする。
【0064】
粘度は、CC25DIN/Ti同軸シリンダージオメトリ及び恒温セルを有するHaake「Viscotester IQ」回転式粘度計を用いて測定した。
【0065】
得られた紡糸溶液の品質は、未溶解のポリマー粒子及びゲル等の不純物が存在しないことによって判断される。これらの不純物は、スピナレットの孔に密集し、製造される繊維の品質を損なう。
【0066】
紡糸溶液の品質を判断するための方法は、ろ過性試験である。
【0067】
前記試験は、試験下のドープによる標準布(SEFAR-Nytal 5μm)の目詰まり速度を特定することにより行われる。
【0068】
実際には、ろ過性試験は、以下を備えた装置(
図3参照)によって行われる。
- 恒温ジャケット(4’)付きの、スラリー調製又はドープ貯蔵のためのタンク(3’);
- ギア計量ポンプ(6’);
- グリコール/水溶液が供給されるジャケット付き管型熱交換器(7’)(長さ1,400mm、容積90ml);
- ドープの恒温制御のために50℃の水が供給されるジャケット付き管型熱交換器(8’);
- 圧力計(9’);
- フィルターブロック(10’)(SEFAR-Nytal 5μmの布)
【0069】
図3はまた、1’のモーター、2’のスターラー、及び5’の「stober」タイプのサーボリデューサーを備えた計量ポンプのモーターを示す。
【0070】
紡糸溶液を、タンク3’へ供給し、次にグリコール及び水の混合物により、ポンプの流速を27cc/分(滞留時間3.3分)とした熱交換器7’を通して70℃まで加熱した。次に、ドープを、恒温水槽に接続した交換器8’によって50℃に冷却した。次に、冷却したドープをフィルターブロックに通し、ここでの圧力を圧力計により測定した。フィルターの目詰まり速度は、圧力上昇ΔP(ate/時間)によって評価した。
【0071】
この実施例では、コントロール装置におけるΔPの上昇は、0.4ate/時間であった。工業的な状況では、この圧力上昇はラインの適正な運転条件に対応する。実際に、この値は、150時間(6.25日)後に5μmの布を備えるフィルタープレスの目詰まりに起因するシステムの閉塞の予測を可能にするものである。したがって、150時間という値は、優れた条件下での連続的な紡糸を保証している。
【0072】
こうして得られた溶媒中のポリマー溶液を、炭素繊維前駆体用の紡糸ラインに供給した。
【0073】
紡糸プロセスの過程では、水とDMSOとの混合物からなる凝固浴中に浸漬されたスピナレットから、完全に円形状の密でクラックのない繊維が生成された。こうして得られた繊維を、脱イオン水で洗浄して残留溶媒を除去し、沸騰水中において、様々な工程で初期長さの約8倍に延伸し、熱ローラー上で乾燥し、ボビンに回収した。得られたトウは、ASTM D-3822の方法に従って、10Nセルを備えたInstron 5542動力計で測定した、60cN/Texの平均引っ張り強さ、及び約15%の伸びを有する直径約11ミクロン(約1dtexのタイターに等しい)の繊維から構成されており、炭素繊維への変換に好適であることが示されている。
【0074】
(実施例2)
[アクリロニトリル及び酢酸ビニル(ポリマーの総重量に対して重量基準で93/7)からなるテキスタイル用途のための中分子量アクリル系コポリマー(MWn=40,000~55,000)の溶解]
【0075】
重合反応器から送られた水中のスラリーの形態のポリマーを、未反応モノマーを除去するためのストリッピング塔での処理後、真空下のロータリーフィルターで洗浄及びろ過し、ポリマー(51重量%)及び水(49重量%)からなるケーキを得た。
【0076】
このケーキの100kgを、撹拌タンクへ輸送し、-10℃の温度に維持した純ジメチルアセトアミド255kgを添加した。得られた懸濁液を、この温度で5分間だけ冷却タンク内で継続して撹拌した。こうして得られたポリマー懸濁液を、Fundabacキャンドルフィルターへと送り、ろ過後、42重量%の水/溶媒及び59重量%のポリマーを含む物質を得た。
【0077】
より具体的には、ろ過された物質の組成は、ポリマー59重量%、DMAc34重量%及び水7重量%であることが特定された。
【0078】
フィルターから送り出されたポリマー物質を、5℃の温度に保持したジメチルアセトアミド(DMAc)118kgを含む撹拌タンクへと輸送し、10分間継続して撹拌し、その後、実施例1と同様に、ギアポンプを通してドープへの変換工程へと輸送した。
【0079】
こうして製造された25%の固体及び2%の水を含有するドープは、70℃で測定された粘度が約280ポアズであり、水含有量が約2重量%に等しく、固体含有量が25重量%に等しいことを特徴とする。
【0080】
得られた紡糸溶液には、未溶解のポリマー粒子及びゲル等の不純物が存在しない。
【0081】
粘度を測定するための方法は、実施例1で示した方法と同じであり、紡糸溶液の品質を判断するための方法は、実施例1に示したように、ろ過性試験である。
【0082】
この実施例では、
図3の装置で実行された試験におけるΔPの上昇は、0.25ate/時間であった。この圧力上昇は、272時間(11.3日)ごとに5μmの布を備えるフィルタープレスが完全に目詰まりを起こすことに相当し、製造ラインの観点から許容可能な値である。
【0083】
こうして得られた溶媒中のポリマーの溶液を、テキスタイル繊維のための紡糸ラインへと供給した。水/溶媒混合物からなる凝固浴中に浸漬されたスピナレットから、クラックのない繊維が生成された。前記繊維を、脱イオン水中で熱洗浄し、初期長さの約5倍に延伸し、熱ローラー上で乾燥し、捲縮機で巻きつけた。約110g/m(Ktex)のトウ(繊維束)として回収した繊維リボンを、スチーム処理して、ASTM D-3822の方法に従って、10Nセルを備えたInstron 5542動力計で測定した、約28cN/texに等しい引っ張り強さ、及び約35%に等しい伸びを有する、3.3dtexのデニールの繊維を得た。これらの特性を有する繊維は、合成繊維用の公知のテキスタイルサイクルで製品に変換するのに適することが示された。
【0084】
(実施例3)
[アクリロニトリル(ポリマーの総重量に対して98重量%)及びイタコン酸(ポリマーの総重量に対して2重量%)からなる高分子量アクリル系コポリマー(MWn=75,000~100,000)の溶解]
【0085】
重合反応器から送られた水中のスラリーの形態のポリマーを、未反応モノマーを除去するためのストリッピング塔での処理後、真空下のロータリーフィルターで洗浄及びろ過し、ポリマー(55重量%)及び水(45重量%)からなるケーキを得た。
【0086】
このケーキの200kgを、撹拌タンクへ輸送し、DMSO(90重量%)及び水(10重量%)からなる、3℃の温度に維持した、混合物1000kgを添加した。得られた懸濁液を、5℃で5分間継続して撹拌し、その後、Kraus-Maffeiタイプの遠心分離機に供給し、ポリマー39重量%及び水/溶媒混合物61重量%を含み、その組成がポリマー39重量%、溶媒50重量%及び水11重量%と特定された物質を得た。
【0087】
次に、遠心分離機から得た物質を、実施例1で説明したように撹拌タンクに供給し、そこにDMSOを270kg供給し25重量%のアンモニア水溶液を2.5kg添加し、その組成がポリマー20重量%、溶媒74.5重量%及び水5.5重量%と特定されたスラリーを得た。前記スラリーを、その後撹拌タンクに輸送した。
【0088】
実施例1で説明したのと同様に、前記スラリーを、容積式ポンプを用いて、炭素繊維前駆体用の湿式アクリル紡糸ラインに供給するためのドープに変換した。
【0089】
前記ポリマー溶液を、水/DMSO溶液からなる凝固浴においてスピナレットにより押し出し、洗浄し、熱水及び蒸気の両方において初期長さの約9倍に延伸し、その後ボビンに回収した。
【0090】
こうして、3000のフィラメントの連続トウが得られ、これらの単一のフィラメントは、円形状で、割れがなく、光沢があり、透明であった。
【0091】
こうして得られた繊維は、ASTM D-3822の方法に従って、10Nセルを備えたInstron 5542動力計で測定した、57cN/Texの平均引っ張り強さ、及び約17%に等しい伸びを有し、約12ミクロンの直径(約1.1~1.2dtexのタイターに等しい)を有することが示され、炭素繊維への変換に好適であることが示された。
【0092】
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1> i)水性懸濁液中においてモノマーを重合し、未反応モノマーを除去し、前記水性懸濁液をろ過及び洗浄して、40/60~60/40の範囲の重量比で、好ましくは1:1以上の重量比でポリマー及び水を含む第一ろ過ケーキを得る、アクリロニトリルのホモポリマー又はアクリロニトリルのコポリマーの水性懸濁液を調製する工程、
ii)前記第一ろ過ケーキの重量の2~10倍の範囲の重量比で、好ましくは5℃以下の温度で5~15分の範囲の時間で、撹拌下、溶媒/水混合物中に又は純溶媒中に前記第一ろ過ケーキを分散する工程、
iii)ろ過又は遠心分離により、40/60~70/30の範囲の重量比でポリマーと溶媒/水混合物とを含む第二ケーキを得る、前記ポリマー分散液の固相/液相を分離する工程、
iv)前記第二ケーキにおける前記ポリマーの重量の2~10倍の範囲の重量比で、前記工程ii)と同じ溶媒又は同じ水/溶媒混合物中に、室温において又は室温未満の温度において5~20分の範囲の時間で、工程iii)で得られた前記第二ケーキを再分散して、溶媒/ポリマーの重量比が90/10~70/30の範囲の重量比である均質な分散液又は均質なスラリーを得る、工程、
を含む、アクリル系繊維製造用の均質な紡糸溶液へと変換される均質な分散液又は均質なスラリーの製造方法。
<2> 前記工程iv)で得られた前記均質な分散液又は前記均質なスラリーが、下流の熱交換器により均質なポリマー溶液(ドープ)に変換される、<1>に記載の方法。
<3> 前記工程ii)及び前記工程iv)において、前記溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される、<1>に記載の方法。
<4> 前記工程ii)において、温度が0℃未満である、<1>~<3>のいずれか一項に記載の方法。
<5> 前記溶媒/水混合物における水の量が、前記混合物の総重量に対して0~20重量%の範囲である、<1>~<4>のいずれか一項に記載の方法。
<6> 前記工程iv)において、温度が5℃に等しい、<1>~<5>のいずれか一項に記載の方法。
<7> 前記均質な紡糸溶液が、前記紡糸溶液の総重量に対して10~26重量%の範囲のポリマー含有量を有する、<1>又は<2>に記載の方法。
<8> 前記工程iii)及び前記工程iv)において、水溶性添加剤が添加され、好ましくは、前記水溶性添加剤はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第四級アンモニウム塩、ポリマーのイオン性末端基を塩化できる銅又は銀等の金属イオンの塩、又は水溶性ポリマー等から選択される、<1>~<7>のいずれか一項に記載の方法。
<9> 前記ポリマーが、80,000~200,000Daの範囲の高分子量ポリマー又は40,000~55,000Daの範囲の中分子量ポリマーである、<1>~<8>のいずれか一項に記載の方法。
<10> 前記アクリロニトリルのコポリマーが、コポリマーの総重量に対して90~99重量%の範囲の量であるアクリロニトリル並びにコポリマーの総重量に対して1~10重量%の範囲の量である1又は複数の他のコモノマーからなる、<1>~<9>のいずれか一項に記載の方法。
<11> 前記コモノマーが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の中性ビニル分子;及びアクリル酸、イタコン酸、スルホン化スチレン等の1又は複数の酸性基を有する化合物から選択される、<10>に記載の方法。