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特開2022-31281リコンビナーゼポリメラーゼ増幅を多重化するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031281
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】リコンビナーゼポリメラーゼ増幅を多重化するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20220210BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220210BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220210BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220210BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/10 Z
C12N15/11 Z
C07K16/00
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189161
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2020076490の分割
【原出願日】2006-07-25
(31)【優先権主張番号】60/702,533
(32)【優先日】2005-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】60/728,424
(32)【優先日】2005-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520474495
【氏名又は名称】アボット・ダイアグノスティックス・スカボロー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オラフ ピーペンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】コリン エイチ. ウィリアムス
(72)【発明者】
【氏名】ニアル エー. アルメス
(57)【要約】
【課題】リコンビナーゼポリメラーゼ増幅を多重化するための方法の提供。
【解決手段】本開示は、迅速な多重リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)反応のための方法および試薬ならびに多重RPA反応産物を検出するための改良された方法を提供する。さらに、本開示は、RPAプロセス間の繰り越し汚染を排除するための新規方法を提供する。より詳細には、本発明は、容易に多重化できるプロセスにおいて核酸を迅速かつ効率的に増幅させるための新規なリコンビナーゼポリメラーゼ増幅プロトコールを含む核酸増幅の方法を提供する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年7月25日に出願された米国特許出願第60/702,533号および2005年10月18日に出願された米国特許出願第60/728,424号より優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)は、酵素を利用して合成オリゴヌクレオチドプライマーを二本鎖DNA内のそれらの相補的パートナーへマッチさせるDNA増幅プロセスである(Armes and Stemple、2002年2月21日に提出された米国特許出願第60/358,563号)。RPAは、細胞DNA複製および修復機構の構成要素に依存している。インビトロDNA増幅のためにこの機構の一部を使用するという考えはしばらくの間は存続していたが(Zarlingら、特許文献1)、この概念は、主として大腸菌(E. coli)recAタンパク質を含むリコンビナーゼ機能の分野における長年の研究の歴史にもかかわらず実用的技術へは変換されていなかったが、近年になってようやくDNAの感受性増幅を許容するインビトロ条件が決定されるに至った(Piepenburgら、2004年9月1日に提出された米国特許出願第10/931,916号、さらにPiepenburgら、PlosBiology 2006)。
【0003】
RPAは、DNA増幅の伝統的方法に比して多数の優れた長所を提供する。これらの長所には、任意の初期の熱もしくは化学融解の必要の欠如、絶対温度制御の必要を伴わずに低い定温で作用する能力、ならびに完全反応液(標的を欠如する)を乾燥状態で保存できるという観察所見が含まれる。これらの特性は、RPAがポータブル型の正確かつ機器を使用しない核酸検出試験を開発するための独創的に強力なツールであることを証明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,223,414号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の簡単な説明)
本発明は、容易に多重化できるプロセスにおいて核酸を迅速かつ効率的に増幅させるための新規なリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)プロトコールを含む核酸増幅の方法に関する。
【0006】
本発明の1つの実施形態は、複数のRPAを単一反応(単一試験管)内において同時に実施できる、そして結果を同時に検出できる方法に向けられる。以下では最初に単一RPA反応について記載し、次に前記反応を多重化する方法について記載する。
【0007】
本発明の1つの態様は、容易に検出可能なアンプリマー(RPA反応の産物である増幅した核酸)を生成するRPAの方法に向けられる。RPAプロセスは、DNAの第1および第2鎖を含む二本鎖標的核酸分子を増幅させた。工程(a)は、第1、第2および第3核タンパク質プライマーを形成するために、リコンビナーゼ因子を、第1および第2核酸
プライマーならびに1つまたは複数の非相補的もしくは修飾された内部残基を含む第3伸長ブロック化プライマーと接触させる工程を含んでいる。工程(b)は、結果として前記第1核タンパク質プライマーおよび前記第1核タンパク質プライマーの3’末端が前記3’末端間の標的核酸の第3部分を同一標的核酸分子上で相互に向けて方向付けるように第1および第2核タンパク質プライマーを前記二本鎖標的核酸と接触させ、それにより前記第1鎖の第1部分で前記第1核タンパク質プライマーと前記DNAの第1鎖との間で第1二本鎖構造を形成する(Dループを形成する)、および前記第2鎖の第2部分で前記第2核タンパク質プライマーと前記DNAの第2鎖との間で第2二本鎖構造を形成する(Dループを形成する)工程を含んでいる。工程(c)は、核酸の第3部分を含む内部領域を備える第1増幅された標的核酸を生成するために、1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて前記第1核タンパク質プライマーおよび第2核タンパク質プライマーの3’末端を伸長させる工程を含んでいる。工程(d)は、ヌクレアーゼの存在下で前記増幅させた標的核酸の第3部分で第3二本鎖構造を形成する(Dループを形成する)ために、前記増幅された標的核酸を前記第3核タンパク質プライマーと接触させる工程であって、このとき前記ヌクレアーゼは、第3の5’プライマーおよび第3の3’伸長ブロック化プライマーを形成するために前記第3二本鎖構造の形成後にのみ前記非相補的内部残基を特異的に切断する工程を含んでいる。工程(d)は、前記第1核酸プライマーおよび前記第3の5’プライマーを含む第2二本鎖増幅核酸を生成するために、1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて前記第3の5’プライマーの3’末端を伸長させる工程を含んでいる。RPA反応は、所望の程度の第2二本鎖増幅核酸が達成されるまで継続される。このプロセスは、任意の関連実施形態とともに、多重RPA反応(以下で記載する)のために使用できることに留意されたい。
【0008】
リコンビナーゼ因子は、例えば、uvsX、RecAおよびそれらの機能的アナログであってよい。さらに、RPA反応は、uvxY、gp32、一本鎖結合タンパク質およびその他の通常のRPA試薬の存在下で実施できる。RPAを実施する方法は、例えば、2002年2月21日に提出された米国特許出願第60/358,563号、2003年、2003年2月21日に提出された米国特許出願第10/371,641号、2004年9月1日に提出された米国特許出願第10/931,916号および2005年4月11日に提出されたPCT/IB2005/001560(WO2005/118853)に開示されている。
【0009】
このRPA反応において使用されるヌクレアーゼは、第3伸長ブロック化プライマーがDNAにハイブリダイズする場合は優先的に非相補的残基もしくは修飾された内部残基を特異的に切断して二本鎖構造を形成するはずである。ヌクレアーゼは、プライマーがリコンビナーゼもしくはSSBに付着するかどうかとは無関係に、伸長ブロック化プライマーが一本鎖形である場合には非相補的残基もしくは修飾された内部残基を切断しないことが好ましい。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼは、DNAグリコシラーゼもしくはAPエンドヌクレアーゼである。修飾された内部残基がウラシルもしくはイノシンである場合は、好ましいヌクレアーゼは、各々グリコシラーゼもしくはヒポキサンチン-DNAグリコシラーゼである。ヌクレアーゼは、さもなければ二本鎖構造内で非相補的残基の1領域(すなわち、バブル)を形成するミスマッチの性質によって非相補的塩基を認識できる。この場合には、ヌクレアーゼは、非相補的残基間の塩基ミスマッチを認識し、非相補的塩基でプライマーを切断する。
【0010】
本発明のプロセスのいずれかで使用されるヌクレアーゼは、DNAグリコシラーゼもしくはAPエンドヌクレアーゼであってよい。ヌクレアーゼは、前記第1伸長ブロック化プライマーと前記標的核酸との間の塩基ミスマッチを認識することおよび標的核酸を切断せずに塩基ミスマッチで伸長ブロック化プライマーを切断することとによって機能できる。または、ヌクレアーゼは、損傷した残基、無塩基性部位もしくは無塩基性部位模擬体、ま
たは合成オリゴヌクレオチド内に組み込まれる可能性がある任意の他の修飾を認識できる。ヌクレアーゼは、例えば、fpg、Nth、MutY、MutS、MutM、大腸菌MUG、ヒトMUG、ヒトOgg1、脊椎動物Nei様(Neil)グリコシラーゼ、Nfo、エキソヌクレアーゼIII、ウラシルグリコシラーゼ、ヒポキサンチン-DNAならびにそれらの機能的アナログおよびホモログであってよい。機能的アナログおよびホモログは、任意の哺乳動物、細菌もしくはウイルス起源であってよい。追加の例として、修飾された塩基がイノシンである場合は、ヌクレアーゼはヒポキサンチン-DNAグリコシラーゼであってよい;修飾された塩基がウラシルである場合は、ヌクレアーゼはウラシルグリコシラーゼであってよい。好ましい実施形態では、これらのヌクレアーゼは大腸菌由来であってよい。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼは大腸菌Nfoもしくは大腸菌エキソヌクレアーゼIIIであり、修飾された内部残基はテトラヒドロフラン残基もしくはリンカー基である。「リンカー」(炭素リンカーもしくは「スペーサー」とも呼ばれる)は、1つの糖の3’位を(通常は)また別の糖の5’位へ結合させるために使用される炭素含有鎖である。共通スペーサーは、約3、6、9、12もしくは18炭素鎖を含んでいてよいが、任意の数の炭素鎖であってもよい。炭素-酸素-炭素連鎖は、おそらくは疎水性を減少させるために、これらのスペーサー内で共通である。NfoおよびエキソヌクレアーゼIII(およびホモログ)は、スペーサーに結合したヌクレオチドの3’末端上の糖3’-O-C連鎖を認識してそれを切断することができる。例えば、C18スペーサー(18-O-ジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール、1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research社、米国バージニア州スターリング、製品番号10-1918-90)を参照されたい。
【0011】
本明細書で使用するオリゴヌクレオチド内の「無塩基性残基」は、オリゴヌクレオチド鎖内の分子フラグメント(MF)を意味するが、このとき分子フラグメントは、分子フラグメントに隣接する塩基が相互から、同一距離、またはあたかもA、G、C、T、もしくはUのいずれかのリボフラノースもしくはデオキシリボフラノース糖が無塩基性残基の代わりに存在しているかのように、事実上同一距離だけ離れているような方法でリボフラノースもしくはデオキシリボフラノース糖の長さを近似させる。無塩基性残基は、天然A、G、C、T、もしくはUにおけるようにリボフラノースもしくはデオキシリボフラノース環を組み込むことができる。しかし、無塩基性残基は、塩基、または無塩基性残基含有オリゴヌクレオチドを用いて形成される二本鎖の逆鎖に基づいてその塩基と相互作用できる他の分子を含有していない。そこで、無塩基性残基は、アプリンもしくはアピリミジン構造、塩基アナログ、またはホスフェート骨格のアナログであってよい。無塩基性置換は、アミド結合によって連結されたN-(2-アミノエチル)-グリシンから構成することもできる。好ましい実施形態では、無塩基性残基は、テトラヒドロフランもしくはD-スペーサー(テトラヒドロフランの1タイプ)である。D-スペーサーおよびテトラヒドロフランはどちらも効果的には1’および2’位のどちらもOH残基が欠如するデオキシリボース糖である。通常は、DNA内の真の無塩基性残基の1’位はその塩基が通常は付着しているその位置でヒドロキシルを有するであろうが、これは環形が開環アルデヒド形(以下を参照)と相互転換し、次にβ脱離のプロセスによって分解し得るので不安定性である。このヒドロキシルの除去は、オリゴヌクレオチドへ容易に合成される安定形を導く。テトラヒドロフランタイプの無塩基性部位および無塩基性残基としてのそれらの使用は知られている。テトラヒドロフランは、Glen Research社(米国バージニア州スターリング)から試薬を注文することによって合成中にオリゴヌクレオチド内に挿入できる。
【0012】
1つまたは複数の非相補的もしくは修飾された内部残基は、これが第1伸長ブロック化プライマーの5’最末端もしくは3’最末端残基ではないために内部にある。好ましい実施形態では、1つまたは複数の非相補的内部残基は、プライマーの5’もしくは3’残基から少なくとも10残基離れている。より好ましい実施形態では、1つまたは複数の非相
補的内部残基は、プライマーの5’もしくは3’残基から少なくとも15、または少なくとも20残基離れている。
【0013】
1つまたは複数の非相補的内部残基は、1つまたは複数の非相補的残基を用いてオリゴヌクレオチドプライマーを合成する工程によって導入できる。非相補的残基は、二本鎖構造内でその対応する残基とワトソン・クリック(Watson Crick)塩基対(水素結合)を形成しない任意の残基である。例えば、プライマーと標的核酸との間でワトソン・クリック塩基対を形成するために特定の場所で「T」が必要とされる場合は、「A」の使用は「A」が非相補的となることを引き起こすであろう。また別の例として、下記の二本鎖構造内の中間の塩基の各々は非相補的塩基である。
【0014】
【化1】
二本鎖核酸内の非相補的塩基の存在が二本鎖核酸内でバブルを生成するであろうことは知られている。1つの非相補的もしくは修飾された内部残基が本発明の方法とともに機能するために十分である場合は、2つ以上の非相補的もしくは修飾された内部残基を使用できる。2つ以上が使用される場合は、それらはオリゴヌクレオチド上で相互に隣接してよい、またはそれらは離れていてよい。ヌクレアーゼがミスマッチもしくは非相補的場所で標的核酸を切断する場合は、標的DNAはテンプレートとしてプライマーを用いてdNTPおよびポリメラーゼによって迅速に修復されることに留意されたい。このために、この反応は本開示のプロセスには影響を及ぼさないであろう。
【0015】
第1伸長ブロック化プライマーの1つまたは複数の非相補的内部残基は、修飾された内部残基であってよい。修飾された内部残基は、二本鎖核酸構造内でその対応する塩基とワトソン・クリック塩基対合構造を形成できない任意の化学構造(残基)であってよい。2つ以上の非相補的内部残基が使用される場合は、それらは非相補的内部残基もしくは修飾された内部残基の混合物であってよい。用語「修飾された内部残基」には、さらに少なくとも、例えばウラシルもしくはイノシンなどの、「A」、「G」、「C」もしくは「T」ではない任意の残基である、DNA内で通常は見いだされない任意の残基が含まれる。
【0016】
修飾された内部残基は、イノシン、ウラシル、8-オキソグアニン、チミングリコール、もしくは無塩基性部位模擬体であってよい。好ましい無塩基性部位模擬体には、テトラヒドロフラン残基もしくはD-スペーサー(オリゴヌクレオチド合成中に5’-O-ジメトキシトリチル-1’,2’-ジデオキシリボース-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイトを使用する産物として生成できる)が含まれる。
【0017】
伸長ブロック化プライマーはその3’末端でブロックされるので、通常は相補的テンプレートの存在下でさえポリメラーゼおよびdNTPによって伸長させることはできない。プライマーをブロックする方法はよく知られており、少なくとも、ブロック化3’ヌクレオチドの包含が含まれる。ブロック化3’ヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ伸長を妨害するブロック基を含有していてよい。一般に、ブロック基は、3’糖残基の3’もしくは2’部位に付着させられるが、他の付着場所も可能である。最も一般的な3’ブロック法の1つは、オリゴヌクレオチドの3’末端にジデオキシ糖を配置する方法である。ブロック基は、例えば、検出可能標識であってよい。
【0018】
検出可能標識は、現行方法を用いて検出できる任意の成分として規定されている。これらの標識には、少なくとも、蛍光体(蛍光分子、蛍光色素とも呼ばれる)、酵素、クエンチャー、酵素阻害剤、放射性標識、結合対のメンバー、ジゴキシゲニン残基、ペプチド、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0019】
「結合対のメンバー」は、第1および第2成分の1つであることを意味するが、このとき前記第1および前記第2成分は相互に対する特異的結合親和性を有する。本発明において使用するために適切な結合対には、抗原/抗体(例えば、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル(DNP)/抗DNP、ダンシル-X-抗ダンシル、フルオレセイン/抗フルオレセイン、ルシファー・イエロー/抗ルシファー・イエロー、ペプチド/抗ペプチド、リガンド/受容体およびローダミン/抗ローダミン)、ビオチン/アビジン(もしくはビオチン/ストレプトアビジン)およびカルモジュリン結合タンパク質(CBP)/カルモジュリンが含まれるが、それらに限定されない。その他の適切な結合対には、例えば、FLAG-ペプチド(DYKDDDDK;配列番号7)[Hoppら、BioTechnology, 6:1204 1210(1988)];KT3エピトープペプチド(Martinら、Science 255:192 194(1992));チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら、J. Biol. Chem 266:15163 15166(1991));およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz-Freyermuthら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393 6397(1990))などのポリペプチドおよび各々それらに対する抗体が含まれる。一般に、好ましい実施形態では、結合対パートナーの小さい方は立体的考察が重要な可能性があるので検出可能標識として機能する。上記に加えて、RPA反応の核酸およびヌクレオチドのいずれかを検出可能標識で標識することができる。
【0020】
検出可能標識が使用される本発明のRPAプロセスのいずれかにおいては、検出可能標識はRPA反応の進行(アンプリマーの生成)を監視するために使用できる。1つの態様では、プライマーが標識されると、監視する工程はアンプリマー内の標識を検出する工程を含むことができる。アンプリマーは使用されるプライマーより大きいと予想されるであろうから、検出は、例えばゲル電気泳動および適切なサイズのアンプリマーの検出を含むことができる。または、標識されたアンプリマーは、カラムクロマトグラフィ(スピンカラム、プッシュカラムなどを含む)などのより迅速なプロセスによって標識されたプライマーにより分離することができる。本発明のRPA法は高度の特異性および低いアーチファクト産生(高いシグナル対ノイズ比)を有するので、監視する工程は、検出可能標識に付着したヌクレオチドを用いてRPAを実行する工程および高分子量核酸(長さが100塩基長を超える核酸)に付着した標識の量を測定する工程を含むことができる。例えば、放射性dNTPを使用することができ、RPA反応の進行は、高分子量DNA内への放射線の組み込み後に監視することができる。高分子量DNA内へのヌクレオチドの組み込みを監視する技術には、ゲル電気泳動、サイズ排除カラム(例、従来型、スピンおよびプッシュカラム)および酸沈降法が含まれる。
【0021】
第1核酸プライマーおよび第3の5’プライマーが各々相違する検出可能標識で標識されると、増幅産物(第2二本鎖増幅核酸)は両方の標識を備える唯一の核酸種であろう。この二重標識核酸種は、様々な手段によって検出できる。1つの好ましい方法では、増幅産物は、フローストリップを用いて検出できる。1つの好ましい実施形態では、1つの検出可能標識は1つの色を生成し、第2標識は固定化抗体によって認識されるエピトープである。両方の標識を含有する産物は固定化抗体に付着し、固定化抗体の場所で1つの色を生成するであろう。この検出法に基づくアッセイは、例えば、全RPA反応に適用できるフローストリップ(ディップスティック)法であってよい。陽性増幅は、フローストリップ上で1つのバンドを生成するであろうが、陰性増幅はいずれのカラーバンドも生成しないであろう。
【0022】
3種のプライマーを用いるRPA増幅プロセスを多重化できる(本明細書では多重RPAと呼ぶ)ことを留意されたい。すなわち、上記で考察したような3プライマーを用いる多重RPAプロセスは同一反応(試験管)内で実施できる。多重RPAは、1つまたは複数の標的核酸を用いて実施できる。各プロセスは、1つまたは複数の標的核酸の相違する領域に対して特異的である第1および第2核酸プライマーの相違する組み合わせを用いて実施される。好ましい実施形態では、多重RPAプロセスが同一反応内で実施される場合は、各RPAプロセスは同一標識を備えるが必ずしも同一配列を備えない第1核酸を使用する。さらに、各プロセスは、第2検出可能標識を備える同一の第3伸長ブロック化プライマーを使用する。この方法で、第1検出可能標識および第2検出可能標識の両方を備える二本鎖核酸産物の蓄積を測定することによって、各RPAプロセスの累積増幅を測定できる。
【0023】
多重RPAは、数多くの目的に有用である。例えば、複数の病原体がPRAによって直接増幅するには小さ過ぎる共通核酸配列を共有する可能性がある。さらに、共通核酸配列は各生体内で相違するフランキング配列を有しているので、この共通核酸配列を複数の生体において増幅させる単一セットのRPAプライマーを設計することはできない。上述したような多重RPAのプロセスを用いると、1つの反応において複数のRPAプライマーの組み合わせを使用することができるが、このとき各組み合わせは1つの生体内で共通核酸配列を増幅させ、この共通核酸配列は付随して共通第3プライマー(第3伸長ブロック化プライマー)によって増幅させられるであろう。複数の病原体を検出するように設計されたプライマー組み合わせを備える多重RPAは、例えば、各菌株内の共通配列(例、mec2)を増幅かつ検出することによってメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)菌株を検出するためのアッセイにおいて使用できる。本発明の多重RPAを使用することによって、同時RPA増幅により複数の遺伝子座(DNA配列)を検出できる。好ましい実施形態では、少なくとも2つの同時RPAが1つのRPA内で実施される。より好ましい実施形態では、少なくとも3つ、少なくとも5つ、少なくとも7つもしくは少なくとも10のRPA反応を同一試験管内で実施できる。
【0024】
そこで、本発明のまた別の態様は、1つの反応において1より多くのRPAプロセスを実施する工程を含むRPAの多重方法に向けられる。各個別反応は、3種のプライマーを用いてRPAについて上述したように実施される。手短には、各反応は、(a1)第1、第2および第3核タンパク質プライマーを形成するために、リコンビナーゼ因子を、第1および第2核酸プライマーならびに非相補的もしくは修飾された内部残基を含む第3伸長ブロック化プライマーと接触させる工程と;(a2)結果として前記第1核タンパク質プライマーおよび前記第1核タンパク質プライマーの3’末端が前記3’末端間の標的核酸の第3部分を同一標的核酸分子上で相互に向けて方向付けるように、第1および第2核タンパク質プライマーを前記二本鎖標的核酸と接触させ、それにより前記第1鎖の第1部分で前記第1核タンパク質プライマーと前記DNAの第1鎖との間で第1二本鎖構造を形成
する、および前記第2鎖の第2部分で前記第2核タンパク質プライマーと前記DNAの第2鎖との間で第2二本鎖構造を形成する工程と;(a3)核酸の第3部分を含む内部領域を備える第1増幅された標的核酸を生成するために、1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて前記第1核タンパク質プライマーおよび第2核タンパク質プライマーの3’末端を伸長させる工程と;(a4)ヌクレアーゼの存在下で前記増幅させた標的核酸の第3部分で第3二本鎖構造を形成するために、前記増幅された標的核酸を前記第3核タンパク質プライマーと接触させる工程であって、このとき前記ヌクレアーゼは、第3の5’プライマーおよび第3の3’伸長ブロック化プライマーを形成するために前記第3二本鎖構造の形成後にのみ前記非相補的もしくは修飾された内部残基を特異的に切断する工程と;(a5)前記第1核酸プライマーおよび前記第3の5’プライマーを含む第2二本鎖増幅核酸を生成するために、前記第3の5’プライマーの3’末端を伸長させる工程と;(a6)所望の程度の第2二本鎖増幅核酸が達成されるまで(a2)~(a5)の繰り返しを通して反応を継続する工程と、を含んでいる。本プロセスでは、各RPAプロセスは、第1および第2核酸プライマーの相違する組み合わせを用いて実施されるが、各プロセスは同一の第3伸長ブロック化プライマーを用いて実施される。
【0025】
各RPAプロセスは第1および第2核酸プライマーの相違する組み合わせを有するであろうが、それでもまだプライマーはRPAプロセス間で共用できることを留意されたい。例えば、RPAプロセス1はプライマー1および2を使用できるが、RPAプロセス2はプライマー2および3を使用できる。そこで、RPAプロセス1およびRPAプロセス2は、同一プライマー(プライマー2)を共用する。
【0026】
伸長ブロック化プライマー(例、第3伸長ブロック化プライマー)を含む任意のRPAプロセスでは、プライマーは1つまたは複数の検出可能標識をさらに含むことができ、RPAの進行はこのプライマー上で検出可能標識を監視することによる第2方法で監視できる。検出可能標識は、蛍光体、酵素、クエンチャー、酵素阻害剤、放射性標識、結合対の一方のメンバーおよびそれらの組み合わせであってよい。蛍光体もしくはクエンチャーが使用される場合、その付着は蛍光体-dTアミダイト残基もしくはクエンチャー-dTアミダイト残基によってでよい。
【0027】
好ましい実施形態では、第3伸長ブロック化プライマーは蛍光体およびクエンチャーを含んでいる。蛍光体とクエンチャーとは、0~2塩基、0~5塩基、0~8塩基もしくは0~10塩基、3~5塩基、6~8塩基、または8~10塩基離れている。さらに、蛍光体とクエンチャーとは、伸長ブロック化プライマーが標的核酸にハイブリダイズする場合よりも伸長ブロック化プライマーがハイブリダイズしない場合の方が長い距離離れていてよい。さらに、蛍光体およびクエンチャーは、蛍光体およびクエンチャーがヌクレアーゼによる修飾された内部残基の切断に続いて分離される限り、非相補的もしくは修飾された内部残基に付着させることができる。好ましい蛍光体には、フルオレセイン、FAM、TAMRAが含まれ、好ましいクエンチャーにはダーククエンチャー(例、Dark Quencher 1、Dark Quencher 2、Black Hole Quencher 1およびBlack Hole Quencher 2)が含まれる。
【0028】
このRPAプロセスの方法の1つの長所は、これを例えば14℃~21℃、21℃~25℃、25℃~30℃、30℃~37℃、または40℃~43℃などの低温で実施できる点である。これらの温度条件下では、反応は6%~8%のPEGなどの1%~12%のPEGの存在下において促進される。
【0029】
本発明の方法のいずれかのために伸長ブロック化プライマーを使用することのまた別の長所は、反応の進行をリアルタイムで監視できる点にある。監視する工程は、例えば、RPA反応における蛍光を測定する工程を含んでいてよい。本方法では、蛍光体およびクエ
ンチャーは、クエンチャーが蛍光体からの蛍光を防止するようにプライマー上で十分に近い距離に(本明細書で開示するように10残基未満離れて)配置される。しかし、第3伸長ブロック化プライマーがヌクレアーゼによって切断されると、クエンチャーは蛍光体から引き離され、プライマーは蛍光性になる。これは、単に蛍光体に蛍光を励起させることができる光源を使用し、光学検出器を用いてクエンチャーから引き離されている蛍光体からの任意の蛍光を検出することによるリアルタイムでのRPAの監視を可能にする。
【0030】
本開示のRPA反応のいずれかのための、伸長ブロック化プライマーを含むプライマーは、長さが2~100残基、例えば長さが12~30残基、長さが12~40残基、長さが12~50残基、もしくは12~60残基、長さが30~40残基、長さが40~45残基、または長さが45~50残基であってよい。好ましい実施形態では、プライマーは、長さが30~100、35~100、40~100または45~100であってよい。最も好ましい実施形態では、プライマーは、長さが30~60、35~60、40~60または45~60である-これらのプライマーは任意のRPA反応において使用することができ、30℃未満、15℃未満もしくは20℃未満でのRPA反応のために特に好ましい。30を超える、35を超える、40を超える、45を超える、または50塩基を超えるプライマー長は、30℃以下で実施されるRPAプロセスのために好ましい。分子生物学の分野においては、核酸のサブユニットは「塩基」もしくは「残基」と呼ばれると理解されている。例えば、DNAおよびオリゴヌクレオチドの構造および長さは、塩基(キロベース)、塩基対もしくは残基で言及される。
【0031】
本発明のRPA反応のいずれも、14℃~21℃、21℃~25℃、25℃~30℃、30℃~37℃、38℃から40℃または40℃~48℃で実施できる。本出願人らは、RPA反応が1%~12%のPEGの存在下では25℃で最適であることを見いだした。好ましくは、PEGの濃度は、例えば7~8%のように、6~9%である。これらの最適RPA条件は、本出願において開示したRPA反応および一般にすべてのRPA反応に適合する。
【0032】
本発明の典型的なRPA反応では、標的核酸の少なくとも1本の鎖は少なくとも10倍、少なくとも10倍または少なくとも10倍増幅させられる。
【0033】
本発明のRPA方法のいずれについても、標的核酸が一本鎖であってよいことは理解されている。一本鎖核酸は、例えば、ランダムプライマーのハイブリダイゼーションおよびそれに続くポリメラーゼによる伸長を含む、当技術分野において知られている方法によって二本鎖核酸へ転換させることができる。さらに、RPA反応は一本鎖標的核酸を用いて直接的に実施できるが、これは第1工程においてRPAプライマーが前記一本鎖標的核酸にハイブリダイズして、(第1伸長ブロック化プライマーの場合にはヌクレアーゼの存在下で)ポリメラーゼによる伸長はその後のRPAのための二本鎖標的核酸を生成するであろうからである。さらに、特異的プライマーは一本鎖標的核酸へハイブリダイズするためにRPA反応の開始時に加えることができ、そしてRPA反応内に既に存在するポリメラーゼを用いた伸長によって一本鎖標的核酸を二本鎖標的核酸へ転換させることができる。
【0034】
バックグラウンドおよび汚染を減少させるためには、本発明のRPA反応のいずれもdNTPミックス内のdUTPを用いて実施できる。本発明者らは、驚くべきことに、RPAは、ウラシルグリコシラーゼが不活性化される前に第1期間の間はdUTPおよび活性ウラシルグリコシラーゼの存在下で実施できることを見いだした。この第1期間は、好ましくは20分間未満、10分間未満、5分間未満または2分間未満である。さらに、ウラシルグリコシラーゼは、第1期間中の任意の時点に加えることができる。すなわち、RPA反応はウラシルグリコシラーゼを用いずにdUTP(およびその他のdNTP)を用いて開始することができ、ウラシルグリコシラーゼは第1期間中の任意の時点に加えること
ができる。
【0035】
第1期間の後に、ウラシルグリコシラーゼ阻害剤がRPA反応に加えられ、残りのRPA反応のために-所望の程度の増幅が達成されるまで、この反応は継続させられる。重要なことに、このプロセスはウラシルグリコシラーゼの温度に基づく不活性化を伴わずに実施される。この反応におけるウラシルグリコシラーゼ阻害剤は、枯草菌(Bacillus subtilis)ファージPBS1ウラシルグリコシラーゼ阻害剤もしくは枯草菌ファージPBS2ウラシルグリコシラーゼ阻害剤であってよい。dUTPが使用される場合は、本開示の任意のRPAに対して、dNTPは、(1)dTTP、dATP、dUTP、dCTPおよびdGTPまたは(2)dATP、dUTP、dCTPおよびdGTPから構成されてよい。好ましい実施形態では、dUTPが使用される場合は、dNTP混合物はdTTPを含有していない。dUTPおよびウラシルグリコシラーゼをRPA反応の第1部分に加えることによるこのバックグラウンドを減少させる方法は、任意のタイプのRPAへの一般的適合可能性を有している。さらに、本方法は、本発明のRPAプロセスのいずれかと組み合わせることができる。
【0036】
本発明のまた別の態様は、増加したシグナル対ノイズ比を備えるDNAの第1および第2鎖を含む二本鎖標的核酸分子のRPAを実施する方法に関する。工程Aでは、第1および第2核タンパク質プライマーを形成するために、リコンビナーゼ因子が(1)修飾された内部残基であってよい1つまたは複数の非相補的もしくは修飾された内部残基を含む第1伸長ブロック化プライマー、および(2)第2核酸プライマーと接触させられる。
【0037】
工程Bでは、結果として前記第1鎖の第1部分で第1核タンパク質プライマーおよび前記DNAの第1鎖との間で第1二本鎖構造(第1Dループの部分)が形成されるように、第1および第2核タンパク質プライマーはヌクレアーゼおよび二本鎖標的核酸と混合される(接触させられる)。さらに、前記第2鎖の第2部分で前記第2核タンパク質プライマーおよび前記DNAの第2鎖との間で第2二本鎖構造(第2Dループの一部)もまた形成される。第1伸長ブロック化プライマーおよび前記第2核酸プライマーの3’末端は、同一の二本鎖標的核酸分子上で相互に向けて方向付けられる。ヌクレアーゼは、プライマーが二本鎖構造を形成した後にのみ、第1伸長ブロック化プライマー内の1つまたは複数の非相補的もしくは修飾された内部残基を特異的に認識して切断する。ヌクレアーゼによる切断後、第1伸長ブロック化プライマーは、第1の5’プライマーおよび第1の3’伸長ブロック化プライマーの2種のプライマーに切断される。ブロック基は第1伸長ブロック化プライマーの3’末端上に存在するので、第1の5’プライマーはブロックされないが第1の3’伸長ブロック化プライマーはブロックされてポリメラーゼによって伸長させることはできない。
【0038】
工程Cでは、増幅された標的核酸を生成するために、第1の5’プライマーおよび第2核タンパク質プライマーの3’末端は1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTP(例、dATP、dTTP、dCTP、およびdGTPの混合物)を用いて伸長させられる。増幅された標的核酸は一本鎖(例えば置換された鎖)または二本鎖であってよい。さらに、一本鎖増幅された標的核酸は、ハイブリダイズして二本鎖標的核酸を形成できる。さらに、本開示のRPA系は、一本鎖増幅された標的核酸(以下で考察する)または二本鎖標的核酸のどちらも増幅させることができるので、一本鎖もしくは二本鎖増幅された標的核酸の産生はRPAの転帰に影響を及ぼさないであろう。
【0039】
工程Bおよび工程Cは、所望の程度の増幅が達成されるまで繰り返される。RPA反応は、試薬が消費し尽くされない限り、無際限に持続し続ける。1ラウンドの増幅の産物(増幅された標的核酸)は、RPAのその後のラウンドのためのインプットとして機能する。そこで、RPA反応は、所望温度で反応液のインキュベーションを単に継続することに
よって継続することができる。さらに、本明細書に開示したRPA反応は温度感受性ではないので、この反応は温度変動がある場合でさえ継続することができる。例えば、RPA反応試験管は、水浴中で、卓上で(室温)、または実験担当者のポケット内(例えば、現場で作業する場合)でさえ実施できる。そこで、RPA反応は、50℃未満、40℃未満、37℃未満、30℃未満、25℃未満、または20℃未満で実施できる。
【0040】
好ましい実施形態では、第1伸長ブロック化プライマーは、1つまたは複数の検出可能標識をさらに含んでいる。検出可能標識が蛍光体もしくはクエンチャーである場合、それは各々蛍光体-dTアミダイト残基もしくはクエンチャー-dTアミダイト残基によって伸長ブロック化プライマーへ付着させることができる。その他の付着もまた可能であり、広範囲に知られている。
【0041】
また別の好ましい実施形態では、伸長ブロック化プライマーは、蛍光体およびクエンチャーの両方を含んでいる。蛍光体とクエンチャーとは、0~2塩基、0~5塩基、0~8塩基または0~10塩基離れていてよい。当然ながら、蛍光体とクエンチャーとは、それらが引き離されるまではこの組み合わせが蛍光性ではないように十分に相互に近いことが好ましい。蛍光体とクエンチャーとは、プライマーが標的核酸にハイブリダイズする場合よりも核タンパク質プライマー内で長い距離離れているのが好ましい。これは、付着したタンパク質(リコンビナーゼおよび/またはSSBタンパク質)の作用がハイブリダイズしていないプライマーから伸長する傾向を示すために可能である。
【0042】
また別の態様では、蛍光体もしくはクエンチャーのいずれかを修飾された内部残基に付着させることができ、蛍光体とクエンチャーとは、ヌクレアーゼによる修飾された内部残基の切断後に引き離すことができる。
【0043】
本発明の方法のためには任意の蛍光体が機能できるが、フルオレセイン、FAMおよびTAMRAが好ましい蛍光体である。好ましいクエンチャーは、例えば、Dark Quencher 1、Dark Quencher 2、Black Hole Quencher 1もしくはBlack Hole Quencher 2であってよいダーククエンチャーである。
【0044】
本発明のまた別の態様は:(a)第1および第2鎖を含む二本鎖標的核酸分子を生成するために、第1核酸プライマーを前記一本鎖標的核酸へハイブリダイズさせ、1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPによって前記プライマーを伸長させる工程と;(b)第1および第2核タンパク質プライマーを形成するために、リコンビナーゼ因子を、非相補的内部残基を含む第1伸長ブロック化プライマー、および第2核酸プライマーと接触させる工程と;(c)結果として前記第1伸長ブロック化プライマーおよび前記第2核酸プライマーの3’末端を同一の二本鎖標的核酸分子上で相互に向けて方向付けるように、第1および第2核タンパク質プライマーをヌクレアーゼおよび前記二本鎖標的核酸と接触させ、それにより前記第1鎖の第1部分で前記第1核タンパク質プライマーと前記DNAの第1鎖との間の第1二本鎖構造および前記第2鎖の第2部分で前記第2核タンパク質プライマーと前記DNAの第2鎖との間の第2二本鎖構造を形成する工程であって、このとき前記ヌクレアーゼは、第1の5’プライマーおよび第1の3’伸長ブロック化プライマーを形成するために、前記第1二本鎖構造が形成された後にのみ前記修飾された非相補的内部残基を特異的に切断する工程と;(d)増幅された標的核酸分子を生成するために、1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて前記第1の5’プライマーおよび第2核タンパク質プライマーの3’末端を伸長させる工程と;(e)所望の程度の増幅が達成されるまで、(c)および(d)の繰り返しを通して反応を継続する工程と、を含む一本鎖標的核酸分子をDNA増幅させるRPAプロセスに向けられる。上記で説明したように、第1核酸プライマーは第1伸長ブロック化プライマー、前記第2核酸プライマー、第
1核タンパク質プライマーまたは第2核タンパク質プライマーであってよい。当然ながら、第1プライマーが第1伸長ブロック化プライマーである場合は、工程(a)はヌクレアーゼの存在下で実施されなければならない。さらに、出発物質として一本鎖核酸標的DNAを使用する任意のRPA反応は、標的核酸が二本鎖であり二本鎖増幅によって増幅させられるであろう中間段階を必然的に経由することに留意されたい。
【0045】
本発明のまた別の態様は、長さが12~100残基の伸長ブロック化プライマーであるRPAのためのプライマーに向けられるが、このときこのプライマーは1つまたは複数の修飾された内部残基を含んでいる。このプライマーは、本出願のいずれかで記載された、それらの任意の変種を含む伸長ブロック化プライマーのいずれかであってよい。手短には、修飾された内部残基は、ウラシル残基、イノシン残基、8-オキソグアニン、チミングリコール、無塩基性部位模擬体およびそれらのアナログからなる群から選択される。無塩基性部位模擬体は、テトラヒドロフラン残基もしくは5’-O-ジメトキシトリチル-1’,2’-ジデオキシリボース-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(一般には「D-スペーサー」として知られる)およびそれらのアナログであってよい。
【0046】
プライマーは伸長ブロック化されており、ポリメラーゼ(例、Klenowフラグメント)およびdNTPによって伸長させることができない。プライマーを伸長からブロックする方法は知られており、本開示においてもまた記載されている。手短には、プライマーはブロック化3’残基を有していてよい。ブロック化3’残基は、ブロック部分であってよい。任意で検出可能標識を含んでいてよいブロック部分は、プライマーの3’最末端の2’もしくは3’部位に付着させることができる。例えば、ブロック化3’残基は、2’3’-ジデオキシヌクレオチドであってよい。
【0047】
また別の実施形態では、プライマーは、1つまたは複数の検出可能標識を含んでいる。検出可能標識は、蛍光体、酵素、クエンチャー、酵素阻害剤、放射性標識、結合対の一方のメンバーおよびそれらの組み合わせであってよい。より好ましい実施形態では、プライマーは蛍光体およびクエンチャーの両方を含んでいる。クエンチャーは、蛍光体の蛍光を抑制するために蛍光体に接近していてよい。例えば、蛍光体とクエンチャーとの間隔は、0~2塩基、0~5塩基、0~8塩基、0~10塩基、3~5塩基、6~8塩基、および8~10塩基であってよい。好ましい実施形態では、蛍光体とクエンチャーとは、伸長ブロック化プライマーが標的核酸にハイブリダイズする場合よりも伸長ブロック化プライマーがハイブリダイズしない(しかしリコンビナーゼおよび/または一本鎖結合タンパク質に付着している)場合の方が長い距離離れている。蛍光体およびクエンチャーは、本開示に記載した蛍光体のいずれかである蛍光体およびクエンチャーを含むがそれらに限定されない、一緒に作用することが知られている任意の蛍光体およびクエンチャーであってよい。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
DNAの第1鎖および第2鎖を含む標的核酸分子をDNA増幅させるRPAプロセスであって:
(a)リコンビナーゼ因子を第1核酸プライマーおよび第2核酸プライマーならびに1つまたは複数の非相補的もしくは修飾された内部残基を含む第3伸長ブロック化プライマーと接触させて、第1核タンパク質プライマー、第2核タンパク質プライマーおよび第3核タンパク質プライマーを形成させる工程と;
(b)該第1核タンパク質プライマーおよび該第2核タンパク質プライマーを該二本鎖標的核酸と接触させ、それにより、該第1核タンパク質プライマーと該DNAの第1鎖の第1部分の該第1鎖との間で第1二本鎖構造を形成させ、そして該第2核タンパク質プライマーと該DNAの第2鎖の第2部分の該第2鎖との間で第2二本鎖構造を形成させ、そ
の結果、該第1核タンパク質プライマーおよび該第1核タンパク質プライマーの3’末端が、該3’末端間に標的核酸の第3部分を有して同一標的核酸分子上で相互に向けて方向付けられる工程と;
(c)1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて該第1核タンパク質プライマーおよび該第2核タンパク質プライマーの3’末端を伸長させて、該核酸の第3部分を含む内部領域を備える第1の増幅された標的核酸を生成する工程と;
(d)該増幅された標的核酸を該第3核タンパク質プライマーと接触させて、ヌクレアーゼの存在下で該増幅させた標的核酸の第3部分で第3二本鎖構造を形成する工程であって:このとき該ヌクレアーゼは、該第3二本鎖構造の形成後にのみ該非相補的内部残基を特異的に切断して、第3の5’プライマーおよび第3の3’伸長ブロック化プライマーを形成する工程と;
(e)1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて該第3の5’プライマーの3’末端を伸長させて、該第1核酸プライマーおよび該第3の5’プライマーを含む第2二本鎖増幅核酸を生成する工程と;
(f)所望の程度の第2二本鎖増幅核酸が達成されるまで、(b)と(e)とを繰り返して反応を継続する工程と、を含むプロセス。
(項目2)
前記第1二本鎖構造は第1Dループの一部であり、前記第2二本鎖構造は第2Dループの一部である、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記ヌクレアーゼは、DNAグリコシラーゼもしくはAPエンドヌクレアーゼである、項目1に記載のプロセス。
(項目4)
前記修飾された内部残基は、ウラシル残基もしくはイノシン残基である、項目1に記載のプロセス。
(項目5)
前記ヌクレアーゼは前記ウラシル残基もしくは前記イノシン残基を認識し、前記第3伸長ブロック化プライマーを該ウラシル残基もしくは該イノシン残基において切断する、項目4に記載のプロセス。
(項目6)
前記ヌクレアーゼは前記第3伸長ブロック化プライマーの非相補的塩基と前記標的核酸との間の塩基ミスマッチを認識し、該第3伸長ブロック化プライマーを該非相補的塩基において切断する、項目1に記載のプロセス。
(項目7)
前記ヌクレアーゼは、fpg、Nth、MutY、MutS、MutM、大腸菌MUG、ヒトMUG、ヒトOgg1、脊椎動物Nei様(Neil)グリコシラーゼ、ウラシルグリコシラーゼ、ヒポキサンチン-DNAグリコシラーゼならびにそれらの機能的アナログからなる群から選択される、項目1に記載のプロセス。
(項目8)
前記ヌクレアーゼは大腸菌Nfoもしくは大腸菌エキソヌクレアーゼIIIであり、前記修飾された残基はテトラヒドロフラン残基もしくは炭素リンカーである、項目1に記載のプロセス。
(項目9)
前記修飾された内部塩基は、8-オキソグアニン、チミングリコール、無塩基性部位模擬体からなる群から選択される、項目1に記載のプロセス。
(項目10)
前記無塩基性部位模擬体は、テトラヒドロフラン残基またはD-スペーサーである、項目9に記載のプロセス。
(項目11)
前記第3伸長ブロック化プライマーは、DNAポリメラーゼによる伸長に抵抗性である
ブロック化3’残基を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目12)
前記ブロック化3’残基は、ポリメラーゼによる前記プライマーの伸長を防止するブロック部分を含む、項目11に記載のプロセス。
(項目13)
前記ブロック部分は、3’残基の糖の3’部位または2’部位に付着させられる、項目12に記載のプロセス。
(項目14)
前記ブロック部分は、検出可能標識である、項目12に記載のプロセス。
(項目15)
前記検出可能標識は、蛍光体、酵素、クエンチャー、酵素阻害剤、放射性標識、結合対の一方のメンバーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目14に記載のプロセス。
(項目16)
前記ブロック化3’残基は、ジデオキシヌクレオチドである、項目11に記載のプロセス。
(項目17)
前記第1核酸プライマーは第1検出可能標識を含み、前記第3伸長ブロック化プライマーは第2検出可能標識を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目18)
前記第1検出可能標識と前記第2検出可能標識とは相違しており、前記第2二本鎖増幅核酸の産生は、単一の二本鎖DNA分子上の該第1検出可能標識および該第2検出可能標識の存在を検出することによって監視される、項目17に記載のプロセス。
(項目19)
前記第2二本鎖増幅核酸の産生は、第1抗体が前記第1検出可能標識に結合し、第2抗体が前記第2検出可能標識に結合するサンドイッチアッセイによって検出される、項目18に記載のプロセス。
(項目20)
前記第3伸長ブロック化プライマーは1つまたは複数の検出可能標識をさらに含む、項目1に記載のプロセス。
(項目21)
前記プロセスは、前記第3伸長ブロック化プライマー上の前記検出可能標識を検出することによってRPA反応の進行を監視する工程をさらに含む、項目20に記載のプロセス。
(項目22)
前記検出可能標識は、蛍光体、酵素、クエンチャー、酵素阻害剤、放射性標識、結合対の一方のメンバーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目20に記載のプロセス。
(項目23)
前記蛍光体は、蛍光体-dTアミダイト残基によって前記第3伸長ブロック化プライマーに付着させられる、項目22に記載のプロセス。
(項目24)
前記クエンチャーは、クエンチャー-dTアミダイト残基によって前記第3伸長ブロック化プライマーに付着させられる、項目22に記載のプロセス。
(項目25)
前記第3伸長ブロック化プライマーは蛍光体およびクエンチャーを含む、項目22に記載のプロセス。
(項目26)
前記蛍光体と前記クエンチャーとは0~2塩基離れている、項目25に記載のプロセス。
(項目27)
前記蛍光体と前記クエンチャーとは0~5塩基離れている、項目25に記載のプロセス。
(項目28)
前記蛍光体と前記クエンチャーとは0~8塩基離れている、項目25に記載のプロセス。
(項目29)
前記蛍光体と前記クエンチャーとは0~10塩基離れている、項目25に記載のプロセス。
(項目30)
前記蛍光体と前記クエンチャーとは、前記伸長ブロック化プライマーが前記標的核酸にハイブリダイズする場合よりも、該伸長ブロック化プライマーがハイブリダイズしない場合の方が長い距離離れている、項目25に記載のプロセス。
(項目31)
前記蛍光体または前記クエンチャーは、非相補的もしくは修飾された内部残基に付着させられ、該蛍光体および該クエンチャーは、前記ヌクレアーゼによる修飾された内部残基の切断に続いて分離される、項目25に記載のプロセス。
(項目32)
前記蛍光体は、フルオレセイン、FAM、TAMRAの群から選択される、項目25に記載のプロセス。
(項目33)
前記クエンチャーはダーククエンチャーである、項目25に記載のプロセス。
(項目34)
前記ダーククエンチャーは、Dark Quencher 1、Dark Quencher 2、Black Hole Quencher 1およびBlack Hole
Quencher 2からなる群から選択される、項目33に記載のプロセス。
(項目35)
前記第1プライマー、前記第2プライマーもしくは前記第3伸長ブロック化プライマーは、長さが12~30残基である、項目1に記載のプロセス。
(項目36)
前記第1プライマー、前記第2プライマーもしくは前記第3伸長ブロック化プライマーは、長さが12~40残基である、項目1に記載のプロセス。
(項目37)
前記第1プライマー、前記第2プライマーもしくは前記第3伸長ブロック化プライマーは、長さが12~60残基である、項目1に記載のプロセス。
(項目38)
前記プロセスは、14℃~21℃の温度で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目39)
前記プロセスは、21℃~25℃の温度で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目40)
前記プロセスは、25℃~30℃の温度で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目41)
前記プロセスは、30℃~37℃の温度で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目42)
前記プロセスは、40℃~43℃の温度で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目43)
前記プロセスは、前記標的核酸の少なくとも第3部分を少なくとも10倍増幅させる、項目1に記載のプロセス。
(項目44)
前記プロセスは、1%~12%のPEGの存在下で実施される、項目1に記載のプロセ
ス。
(項目45)
前記プロセスは、6%~8%のPEGの存在下で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目46)
前記dNTPはdUTPを含み、前記RPAプロセスは20分間未満の第1期間にわたりウラシルグリコシラーゼの存在下で実施され、該プロセスは該第1期間後にウラシルグリコシラーゼ阻害剤の存在下で実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目47)
前記プロセスは、前記ウラシルグリコシラーゼの温度に基づく不活性化を伴わずに実施される、項目46に記載のプロセス。
(項目48)
前記ウラシルグリコシラーゼ阻害剤は、枯草菌ファージPBS1ウラシルグリコシラーゼ阻害剤または枯草菌ファージPBS2ウラシルグリコシラーゼ阻害剤である、項目46に記載のプロセス。
(項目49)
前記dNTPは、dATP、dUTP、dCTPおよびdGTPからなる、項目46に記載のプロセス。
(項目50)
前記dNTPはdTTPを含有していない、項目46に記載のプロセス。
(項目51)
1つの反応において1つまたは複数の二本鎖標的核酸上で1より多くのRPAプロセスを実施する工程を含むRPAの多重プロセスであって、各プロセスが以下の工程:
(a)リコンビナーゼ因子を第1核酸プライマーおよび第2核酸プライマーならびに1つまたは複数の非相補的もしくは修飾された内部残基を含む第3伸長ブロック化プライマーと接触させて、第1核タンパク質プライマー、第2核タンパク質プライマーおよび第3核タンパク質プライマーを形成させる工程と;
(b)該第1核タンパク質プライマーおよび該第2核タンパク質プライマーを該二本鎖標的核酸と接触させ、それにより、該第1核タンパク質プライマーと該DNAの第1鎖の第1部分の該第1鎖との間で第1二本鎖構造を形成させ、そして該第2核タンパク質プライマーと該DNAの第2鎖の第2部分の該第2鎖との間で第2二本鎖構造を形成させ、その結果、該第1核タンパク質プライマーおよび該第1核タンパク質プライマーの3’末端が、該3’末端間に標的核酸の第3部分を有して同一標的核酸分子上で相互に向けて方向付けられる工程と;
(c)1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて該第1核タンパク質プライマーおよび該第2核タンパク質プライマーの3’末端を伸長させて、該核酸の第3部分を含む内部領域を備える第1増幅された標的核酸を生成する工程と;
(d)該増幅された標的核酸を該第3核タンパク質プライマーと接触させて、ヌクレアーゼの存在下で該増幅させた標的核酸の第3部分で第3二本鎖構造を形成する工程であって:このとき該ヌクレアーゼは、該第3二本鎖構造の形成後にのみ該非相補的内部残基を特異的に切断して、第3の5’プライマーおよび第3の3’伸長ブロック化プライマーを形成する工程と;
(e)1つまたは複数のポリメラーゼおよびdNTPを用いて該第3の5’プライマーの3’末端を伸長させて、該第1核酸プライマーおよび該第3の5’プライマーを含む第2二本鎖増幅核酸を生成する工程と;
(f)所望の程度の第2二本鎖増幅核酸が達成されるまで、(b)と(e)とを繰り返して反応を継続する工程と;を含み、
このとき各RPAプロセスは、該第1核酸プライマーおよび該第2核酸プライマーの相違する組み合わせを用いて実施され、各プロセスは同一の第3伸長ブロック化プライマーを用いて実施されるプロセス。
(項目52)
前記1より多くのRPAプロセスは、少なくとも2つの別個のRPAプロセスを含む、項目51に記載のプロセス。
(項目53)
前記1より多くのRPAプロセスは、少なくとも4つの別個のRPAプロセスを含む、項目51に記載のプロセス。
(項目54)
前記1より多くのRPAプロセスは、少なくとも5つの別個のRPAプロセスを含む、項目51に記載のプロセス。
(項目55)
前記1より多くのRPAプロセスは、少なくとも7つの別個のRPAプロセスを含む、項目51に記載のプロセス。
(項目56)
前記1より多くのRPAプロセスは、少なくとも10の別個のRPAプロセスを含む、項目51に記載のプロセス。
(項目57)
前記修飾された内部残基は、ウラシル残基またはイノシン残基である、項目51に記載のプロセス。
(項目58)
前記第2二本鎖増幅核酸の形成を検出して、前記1より多くのRPAプロセスのいずれかの累積増幅を決定する工程をさらに含む、項目51に記載のプロセス。
(項目59)
各RPAプロセスの前記第1核酸プライマーは同一の第1検出可能標識で標識され、前記第3伸長ブロック化プライマーは第2検出可能標識で標識され、および前記検出する工程は該第1検出可能標識および該第2検出可能標識の両方を含む二本鎖核酸を検出する工程を含む、項目51に記載のプロセス。
(項目60)
前記第2二本鎖増幅核酸の産生は、第1抗体が前記第1検出可能標識に結合し、第2抗体が前記第2検出可能標識に結合するサンドイッチアッセイによって検出される、項目59に記載のプロセス。
(項目61)
前記ヌクレアーゼはDNAグリコシラーゼもしくはAPエンドヌクレアーゼである、項目51に記載のプロセス。
(項目62)
前記ヌクレアーゼは前記第3伸長ブロック化プライマーの非相補的塩基と前記標的核酸との間の塩基ミスマッチを認識し、該第3伸長ブロック化プライマーを該非相補的塩基で切断する、項目51に記載のプロセス。
(項目63)
前記ヌクレアーゼは、fpg、Nth、MutY、MutS、MutM、大腸菌MUG、ヒトMUG、ヒトOgg1、脊椎動物Nei様(Neil)グリコシラーゼ、ウラシルグリコシラーゼ、ヒポキサンチン-DNAグリコシラーゼならびにそれらの機能的アナログからなる群から選択される、項目51に記載のプロセス。
(項目64)
前記ヌクレアーゼは大腸菌Nfoもしくは大腸菌エキソヌクレアーゼIIIであり、前記修飾された残基はテトラヒドロフラン残基もしくは炭素リンカーである、項目51に記載のプロセス。
(項目65)
前記修飾された内部塩基は、8-オキソグアニン、チミングリコール、または無塩基性部位模擬体からなる群から選択される、項目51に記載のプロセス。
(項目66)
前記無塩基性部位模擬体は、テトラヒドロフラン残基またはD-スペーサーである、項目65に記載のプロセス。
(項目67)
前記無塩基性部位模擬体は、テトラヒドロフラン残基またはD-スペーサーである、項目66に記載のプロセス。
(項目68)
前記第3伸長ブロック化プライマーは、DNAポリメラーゼによる伸長に抵抗性であるブロック化3’残基を含む、項目51に記載のプロセス。
(項目69)
前記ブロック化3’残基は、ポリメラーゼによる前記プライマーの伸長を防止するブロック部分を含む、項目68に記載のプロセス。
(項目70)
前記ブロック部分は、3’残基の糖の3’部位または2’部位に付着させられる、項目69に記載のプロセス。
(項目71)
前記ブロック化3’残基は、ジデオキシヌクレオチドである、項目70に記載のプロセス。
(項目72)
DNAの第1鎖および第2鎖を含む二本鎖標的核酸分子をDNA増幅させるRPAプロセスであって、以下の工程:
(a)リコンビナーゼ因子を第1核酸プライマーおよび第2核酸プライマーと接触させて、第1核タンパク質プライマーおよび第2核タンパク質プライマーを形成させる工程と;
(b)該第1核タンパク質プライマーおよび該第2核タンパク質プライマーを該二本鎖標的核酸と接触させ、それにより、該第1核タンパク質プライマーと該DNAの第1鎖の第1部分の該第1鎖との間で第1二本鎖構造を形成させ、そして該第2核タンパク質プライマーと該DNAの第2鎖の第2部分の該第2鎖との間で第2二本鎖構造を形成させ、その結果、該第1核タンパク質プライマーおよび該第2核タンパク質プライマーの3’末端が、同一の二本鎖標的核酸分子上で相互に向けて方向付けられる工程と;
(c)1つまたは複数のポリメラーゼならびにdNTPおよびdUTPを用いて該第1核タンパク質プライマーおよび第2核タンパク質プライマーの3’末端を伸長させて、増幅された標的核酸分子を生成する工程と;
(d)ウラシルグリコシラーゼの存在下で20分間以内の第1期間にわたり(b)および(c)を繰り返すことで反応を継続する工程と;
(e)所望の程度の増幅が達成されるまで、ウラシルグリコシラーゼ阻害剤の存在下で、(b)および(c)の繰り返しを通して反応を継続する工程と、を含むプロセス。
(項目73)
前記第1期間は10分間以内である、項目72に記載のプロセス。
(項目74)
前記第1期間は5分間以内である、項目72に記載のプロセス。
(項目75)
前記第1期間は2分間以内である、項目72に記載のプロセス。
(項目76)
前記ウラシルグリコシラーゼ阻害剤は、枯草菌ファージPBS1ウラシルグリコシラーゼ阻害剤または枯草菌ファージPBS2ウラシルグリコシラーゼ阻害剤である、項目72に記載のプロセス。
(項目77)
前記dNTPは、dATP、dUTP、dCTPおよびdGTPからなる、項目72に記載のプロセス。
(項目78)
前記dNTPはdTTPを含有していない、項目72に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】枯草菌(Bacillus subtilis)ゲノム遺伝子座を標的とするプライマーの場合に、プライマーを伸長させると反応動態が加速されることを示している実験データを示した図である。
図2】25℃、23℃、20℃、および17℃で臭化エチジウムを用いて、DNAをゲル検出可能標識へ増幅させるのに成功するのは長い(45マー)および迅速なプライマーだけであることを示している実験結果の図である。
図3】25℃での増幅動態が37℃での速度のほぼ半分であることを示した図である。この図はさらに、PEGレベルが速度および特異性(PEG濃度が高くなるとプライマーのアーチファクトが増加する)の両方に影響を及ぼすことも示している。
図4】ヒトアポリポタンパク質B遺伝子座のためのプライマーであるApoB4およびApo300は、長さが各々33および32残基である場合にしか迅速な動態を示さず、反応動態(37℃で)は鎖延長によって加速されないことを示している。
図5】ヒトアポリポタンパク質B遺伝子座のためのプライマーであるApoB4およびApo300は、3’末端が伸長しているかどうかとは無関係に、25℃で増幅を示すことを示した図である。
図6】枯草菌ファージ由来のUNG阻害剤ペプチドは、UNGの熱変性の必要を回避する繰り越し汚染系のために大腸菌UNGと組み合わせて使用できることを示した図である。
図7】(a)FAM蛍光体、(b)ディープダーククエンチャー、(c)無塩基性部位模擬体、および(d)ブロック化3’末端を含むリアルタイム検出プローブが特異的産物蓄積を監視するためにRPA反応における極めて優れた特性を提供することを示している実験データの図である。
図8】第3プローブ検出系の開発を示した図である。蛍光データは、標準化のプロセスおよび蛍光の対数をプロットすることを通して最適に解釈できる可能性がある。
図9】サンドイッチアッセイのために高いシグナル対ノイズ比を入手するための可逆的ブロック化プライマーを示した図である。Nfo酵素によって分割された後にのみ活性であるブロック化された分割可能なプローブを用いて構成されたRPA反応は、ラテラルフロー試験ストリップ上で直接的に分析できる。
図10】院内スーパーバグMRSAのための二重プローブ増幅/検出系の開発を示している実験結果の図である。
図11】コントロールMSSA DNA配列のプローブをベースとするリアルタイム検出を示した図である。
図12】RPAプロセスの略図である。
図13】フローストリップ上に2種の抗原性標識を含有する複合体を固定化して検出するための特異的抗体の使用を示した図である。
図14】ヒトSry遺伝子座のためのプライマーを用いたRPA反応のポリアクリルアミドゲル電気泳動を示した図である。
図15】ヒトアポリポタンパク質B遺伝子座のためのプライマーを用いたRPA反応のアガロースゲル電気泳動を示した図である。
図16】RPAを支持するために必要な最小オリゴヌクレオチドサイズの調査を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(発明の詳細な説明)
RPAでは、特異的DNAフラグメントの等温増幅は、対向オリゴヌクレオチドプライマーをテンプレートDNAに結合させ、ポリメラーゼによるそれらの伸長によって達成される(図1A)。標的テンプレートの包括的融解を必要とするPCRとは相違して、RP
Aは、二本鎖DNAを走査して同族部位での鎖交換を促進するためにリコンビナーゼ-プライマー複合体を使用する。生じた構造は、置換されたテンプレート鎖と相互作用し、それによって分子鎖移動によるプライマーの放出を防止する一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)によって安定化させられる。リコンビナーゼは、この場合には枯草菌の大きなフラグメントPoll(Bsu)(Okazakiら、1964を参照)であるDNAポリメラーゼを置換する鎖へ接近可能なオリゴヌクレオチドの3’末端を分解して残し、そしてこれにプライマー伸長が続く。指数関数的増幅は、このプロセスの周期的反復によって遂行される。
【0050】
本開示では、本発明者らは、基本的RPAプロセスより優れた数多くの改善を証明した。第1に、本発明者らは、標準条件を修飾すると、RPAは25℃もしくは30℃で効率的に実施できることを見いだした。これらの反応温度は、1時間未満で結果の得られる、装置を使用しないRPA試験を可能にする。
【0051】
第2に、本発明者らは、RPA反応においてDNA修復酵素を使用することによってRPA反応の感受性および特異性を向上させた。本試験では、本発明者らは、これらの酵素がRPAの効率および忠実性に影響を及ぼすかどうかを判断するために、RPA反応において広範囲の以前に同定された修復酵素を直接的に使用した。本発明者らは、プライマーのアーチファクトは、RPAにおいては主として、プライマーによって形成された短命ヘアピン構造の異常な伸長によって、またはおそらくプライマーダイマーを形成することによって発生するという仮説を立てている(2005年4月11日に提出されたPCT国際出願PCT/IB2005/001560)。そのようなイベントはおそらくまれではあろうが、典型的には約1012~1013分子である反応内でのオリゴヌクレオチドの高濃度は、標的テンプレート核酸(すなわち増幅対象の核酸)の濃度が低い場合には有意な程度のそのようなイベントを促進する傾向を示すであろう。これらの副反応は、限定数の3’残基だけがサンプルDNAの部分と相同であるハイブリダイゼーション産物からの伸長の低忠実度に起因して、あまり関連していない配列が複合DNAサンプルから増幅されるPCRにおいてしばしば報告される副反応とは本質的には相違していることに留意されたい。RPAでは、本発明者らは、主要なリコンビナーゼ媒介性対合には有意な領域にわたり有意な相同性を必要とすること、そしてむしろ一本鎖DNAは使用された相当に低い温度で発生するスナップバックイベントを通してアーチファクトへ主として感受性である種であると考えている。この違いのために、PCRにおいてプライマーのアーチファクトを減少させる方法は、RPA反応では必ずしも機能しない。この違いは、任意の標的核酸の不在下でさえこの系で生成されたバックグラウンドノイズを減少させるために以下で説明するアプローチおよびメカニズム、ならびに競合的プライマーノイズを減少させることによりこれが感受性を増加させる方法を理解するために重要である。
【0052】
本発明者らは、本明細書において、3’-ブロック基(ビオチン、ddC残基、またはその他)を用いて意図的に修飾された、そして大まかに中心に位置する修飾された(もしくは不在の)塩基を含有するプライマーの使用を開示する。内部に配置された修飾は修復エンドヌクレアーゼ酵素にとってヌクレアーゼ標的となったが、これは、最初に標的に対合して安定性二本鎖を生成し、次に酵素によってプロセッシングされる場合にのみプライマーを分割して2種の別個のプライマーを生成できるであろう。新規娘プライマーの1つ(すなわち、最も相対的に5’に位置する)が自由に伸長可能な3’ヒドロキシル基を有する、または引き続いて有するようにプロセッシングできる場合は、それは続いてポリメラーゼ基質として機能することができよう。これとは対照的に、相対的に3’に配置された娘オリゴヌクレオチドは元のブロック修飾を保持し、ポリメラーゼ基質として機能することはできないであろう。ニックもしくは単一ヌクレオチドギャップにより分離された2つの二本鎖ハイブリッドを形成するためのオリゴヌクレオチドの分割への依存性は、3’-ブロック基の存在に起因して分割されていないプライマーが一過性折り返し構造内に間
違って伸長する機会がほとんど、もしくは全く生じないので、RPA系にノイズ減少を加える。本発明者らは、2種の標識されたDNAプライマーが物理的に連結したかどうかを単に判定することによって微量DNAサンプルを検出かつ水から識別できることを証明することによって、本明細書でプライマーノイズを減少させるためこのアプローチの有用性を証明する。そのような単純なアッセイの可能性は、RPAが安価で、ディスポーザブルの、装置を使用しないDNAテストの開発における強力なツールであることを表している。
【0053】
最後に本発明者らは、専有的リアルタイム蛍光プローブの開発に上記の二本鎖特異的ヌクレアーゼ系を採用した。本発明者らは、効果的な蛍光プローブの設計は、PCR法におけるなどの他の報告された系と比較してRPA系では全く相違するであろうと予想した。これはなぜか。本発明者らは、2つの重要な相違する領域を同定した。第1に、プローブ上の官能基の組織化は、RPA反応環境と他の増幅系の環境との間の極めて大きな相違に起因して、おそらく必然的に相違するであろう。初期の研究は、RPA反応環境が他の核酸増幅反応において遭遇する環境とは基本的かつ臨界的に相違することを証明した。一本鎖DNA結合タンパク質およびリコンビナーゼタンパク質の量を満たすことは、修飾されていない骨格を備えるオリゴヌクレオチドがランダムコイル構造を作用しないことを保証する。DNA結合タンパク質は、これらのタンパク質B形DNAの大まかには1.5倍の長さのフィラメントを備える核タンパク質フィラメントに染み込んでいるので、相当に「広がって」おり、剛性である(Yangら、2001;Scheerhagenら、1985;Kuil MEら、1990)。結果として、一次配列内では離れている蛍光体およびクエンチャーに共有結合したプローブはそれでもまた頻回なランダムアプローチに起因してクエンチするであろうという推定は正しくない。RPAプローブが他の記載された系におけるプローブとは極めて相違する第2の重要な領域は、プローブのプロセッシングに使用される酵素に関する。本発明者らは実験によって、本明細書に記載したPolIクラスの酵素の5’エキソヌクレアーゼドメインを用いるアプローチ(いわゆる「Taqman法」)が、おそらくこれらの酵素のFLAPエンドヌクレアーゼ活性に起因して、RPAと不適合に思われることを見いだした(Kaiserら、1999)。本発明者らはさらに、分子ビーコンもしくはサソリプローブなどの他の系が同様に(RPA条件における短い二本鎖アンカーの不安定性のために)おそらく実用的ではないと予測した。その代わりに、本発明者らは、本明細書において二本鎖状況においてのみ骨格の分割を引き起こす、修飾された塩基によって分離される蛍光体およびクエンチャー成分を相互に接近させて配置することによって極めて優れたリアルタイムRPAプローブを構成することが可能であることを証明する。このアプローチは、リアルタイム定量的検出および多重化の詳細を、他の方法を用いる最新技術と整列させるので、RPAプロセスに極めて大きな価値を付け加えることを約束する。詳細には、これは、サンプル中の標的核酸分子の絶対数を判定するため、単一分子検出を可能にする特異性および感受性を増加させるため、およびさらに数個の標的の多重分析も許容するためのアプローチを提供する。これらの特性はすべてが本方法を用いると、ゲル電気泳動、または実験的介入を必要とする他のアプローチの必要を伴わずに達成することができ、それどころか反応は専用機器によって継続的かつ自動的に監視することができる。RPAプロセスをこれらの高度に忠実な検出アプローチと結合した場合の能力を例示するために、本発明者らは、超高感受性の内部制御された、病原性菌株の複雑かつ多様な性質、および多重化する必要のために、困難な標的である院内病原体MRSAについての試験を開発した。
【0054】
以下では、本発明の各態様についてより詳細に記載する。
【0055】
(低温RPA)
RPA反応は、RPA反応に含まれる酵素に最適な温度を反映して、約37℃で最適に機能する。37℃は研究室内では容易に達成されるが、30℃もしくは25℃で効率的に
機能できるRPA反応はRPAの有用性を増加させ、37℃でのインキュベートを利用できない現場条件下でのリアルタイム増幅を可能にするであろう。
【0056】
プライマーの長さがRPA効率に影響を及ぼすかどうかを決定するために、RPA反応を相違する長さのプライマー対を用いて37℃で実施した(図1)。図1に示した実験の結果は、プライマーを延長させることによってプライマーの「速度」を強化できることを示している。図1のパネルAは、RPA増幅のためにBsA1およびBsb3プライマーが標的とする枯草菌遺伝子座でのプライマー組織化を示している。プライマーBsA1およびBsB3(各々、30および31残基)、またはRPA反応に使用された標的との適切なホモログを保持している伸長を含有している誘導体。パネルBは、38℃へ設定した加熱ステージを備えるBIOTEK Flx-800マイクロプレートリーダーで監視された増幅動態の結果を示している。SYBRグリーンを使用してDNA蓄積を評価した。正確な反応条件および成分濃度は以下のとおりである:10コピー/μL;10mMの酢酸マグネシウム;50mMのTris(pH7.9);100μMのdNTP;600ng/μLのgp32;120ng/μLのuvsX;30ng/μLのuvsY;300nMのオリゴ;5%のCarbowax 20M;1:50,000のSYBRグリーン;100mMの酢酸カリウム;20mMのホスホクレアチン;100ng/mLのCK(クレアチンキナーゼ);3mMのATP。
【0057】
本発明のいずれかのためのプライマーは、DNA、RNA、PNA、LNA、モルホリノ骨格核酸、ホスホロチオレート骨格核酸およびそれらの組み合わせから生成することができる。この場合のそれらの組み合わせとは、1つまたは複数の他の塩基に結合した1つまたは複数の塩基を含有していてよい単一核酸分子を意味する。これらの分子の好ましい濃度は、25nM~1,000nMの範囲内にあってよい。1つの好ましい実施形態では、プライマーは、その3’末端の2つの塩基間で非ホスフェート連鎖を含有していてよく、3’~5’ヌクレアーゼ活性に対して耐性である。
【0058】
本発明者らの結果は、プライマーが長くなると運動速度の漸増が生じることを証明しており、実際にプライマーが30/31マーから45マーへ長くなると、本明細書で使用した条件(10mMのマグネシウム、5%のCarbowax 20M)下では閾値検出までの増幅時間が大まかに35分間から25分間へ約10分間短縮された。この実験の結果に基づいて、本発明者らは、緩徐な動態を備えるプライマーはプライマー長を増加させることによって強化できると結論する。
【0059】
本発明者らはさらに、プライマー長が低温で実施されるRPAに影響を及ぼすかどうかについても調査した。RPAは、少なくとも2つの理由から低温では機能しない可能性がある。第1に,例えば、反応の成分の1つが所定温度未満で機能するのを停止する場合は、所定温度未満でのRPA反応の機能の突然かつ劇的な停止が発生する可能性がある。例えば、Carbowaxは低温では相転移を経験して所望方法で機能を停止する可能性がある。第2に、反応速度は単純に進行性で緩徐化し、緩徐な酵素触媒反応および拡散を反映して倍加時間は長くなる可能性がある。第2の場合には、プライマー「速度」は、反応がおそらくATPなどの反応成分の枯渇に関して「時間との競争」になるであろうから極めて重要になるであろう。
【0060】
本発明者らの仮説を試験するために、本発明者らは、図1に示したものと同一のフラグメントを、しかし25℃で増幅させることを試みた。図2に示した結果は、迅速な動態を備えるプライマーが典型的な周囲温度(室温)でDNAを増幅できることを示している。図1で使用したプライマーを使用して枯草菌ゲノムから特異的フラグメントを増幅させた。図2Aは、プライマーの略配置図を示している。図2Bは、25℃では45マーだけが検出可能なレベルへ増幅することを示している。使用した条件は次のとおりであった:5
0mMのTris(pH8.4)、100mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、7.5%のPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、25mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、700ng/μLのgp32、160ng/μLのuvsX、40ng/μLのuvsY、200μMのdNTP、300nMの各オリゴヌクレオチド。反応時間、90分間。開始時コピー密度2コピー/μL、反応量50μL。図2Cは、23℃では45マーだけがDNAを増幅させ、45マーを使用した場合には検出可能なレベルへの増幅が20℃および17℃でも発生できるが、回収された増幅産物は漸減したことを示している。使用した条件:50mMのTris(pH8.4)、100mMの酢酸カリウム、14mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、7.5%のPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、50mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、650ng/μLのgp32、125ng/μLのuvsX、40ng/μLのuvsY、200μMのdNTP、300nMの各オリゴヌクレオチド。反応時間、120分間。開始時コピー密度1コピー/μL、反応量20μL。
【0061】
図2から明らかなように、17℃という低温でさえ約1010倍の特異的増幅が観察された。検出所要時間は2時間以内であった。23℃以下で実施した実験では、20コピーのゲノムDNAしか添加されず、一部の微量繰り越し汚染が水コントロールから明確に証明されていたが(図示していない)、臭化エチジウム色素を用いた場合の目に見える産物の達成(17℃で20ngと推定された)は、約10倍、もしくは30サイクルの増幅レベルを示唆している。重要なことに、高レベルの「ノイズ」は出現していないが、本発明者らは同定されていない性質の1つの追加の迅速に移動する余分なバンド(きっとおそらく、伝統的なプライマーダイマー、または産物に関連する一本鎖DNA)を観察した。
【0062】
相違する濃度のPEG下での、25℃での45マーのプライマーの速度挙動は、図3に示されている。図3では、図1および2に使用された45マーのプライマーが25℃で枯草菌ゲノムのフラグメントを増幅させるために使用された。図3Aは、使用されたプライマー対の配置を示している。図3Bは、アガロースゲル電気泳動および反応終点でのサンプルの臭化エチジウム染色を示している。予想されたバンド(*)に、より高いPEG濃度(#)での追加のバンドが付随している。図3Cは、SYBRグリーンを用いて監視した増幅反応の動態を示している。使用した条件は次のとおりであった:50mMのTris(pH8.4)、100mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、指示したPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、25mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、650ng/μLのgp32、160ng/μLのuvsX、40ng/μLのuvsY、200μMのdNTP、300nMの各オリゴヌクレオチド、ストックからの1:50,000のSYBRグリーン。反応時間、120分間。開始時コピー密度、10コピー/μL、反応量50μL。
【0063】
4%レーンにおけるシグナルの欠如は、おそらく実験誤差に起因する。これらの結果は、高いPEG濃度はある点までは動態を加速させることができるが、その後は動態および全反応挙動/転帰の一部の阻害が観察されることを証明している。この場合には、正しい長さの増幅核酸の量を最適化するためには7%もしくは8%のPEGが最適であった。PEG濃度がより高くなると、高速で移動する異常なバンドの進行性優勢が生じる。8%のPEGの存在下では、検出は25℃では約37分間で観察され、これは約1分25秒間の倍加時間に相当する。5%のPEGでは、約54分間で検出が行われた(これは2分間の倍加時間に相当する)。25℃でのこの反応は、図1に示した実験のほぼ半分の速度である(検出時間は27分間であり、そして倍加時間は1分間である)。これに基づいて、本発明者らは、RPA反応速度が温度が10℃低下する毎にほぼ半分になると推定する。さらに、ATPなどの限定された試薬プールに起因して、検出可能な産物形成は、温度、プ
ライマーの活性、および産物の長さに依存してインキュベーション時間とは無関係に限定される可能性がある。本発明者らの試験結果は、効果的な低温RPAは、迅速な動態を示す、そして反応において律速ではないプライマーを用いると改善されることを示唆している。
【0064】
図3の実験は、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子を標的とするプライマーを用いて繰り返し、その結果は図4に示されている。図4Aは、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子座を標的とするプライマーの配置を示している。図示したように3種のプライマー対を使用したが、重複するプライマーは共通の5’末端を共有していたが、3’末端は相違していた。(B)38℃での増幅の動態。指示したプライマー対を用いた反応は、SYBRグリーン色素を用いてリアルタイムで監視した。開始時標的コピー数は、ヒトDNAの1コピー/μLまたは100コピー/μLのいずれかであった。反応条件は次のとおりであった:50mMのTris(pH7.9)、100mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、5%のPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、25mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、600ng/μLのgp32、120ng/μLのuvsX、30ng/μLのuvsY、100μMのdNTP、300nMの各オリゴヌクレオチド、ストックからの1:50,000のSYBRグリーン。反応時間、60分間。反応量、50μL。
【0065】
ヒトアポリポタンパク質B遺伝子座のためのプライマーは、プライマー伸長を伴わずに迅速な動態を示す。この場合におけるSYBRグリーンを用いた速度試験は、RPAプライマーがより長くなっても速度上昇が見いだされないことを明らかにした。本明細書で使用したApoB4およびApo300プライマーは、短い場合でさえ、それらが反応において速度制限因子ではない程度まで高速行動を有している。おそらく、この反応では、ポリメラーゼの速度が現在はこの反応の主要な速度制限因子であり、より活性な(長い)プライマーは総合的な速度の利益を達成できない。本発明者らの仮説に一致して、本発明者らは、アポリポタンパク質Bプライマーの全部が25℃で予測された産物を生成することを見いだしている(図5)。図5Aは、使用したプライマーの配置を示している点で図4Aと同一である。図5Bは、指示したプライマー対を用いて25℃で実施されたRPA反応のゲル電気泳動を示している。各場合に、0もしくは10コピー/μLのコピー数を試験した。使用した条件は、SYBRグリーンを排除した以外は図4における条件と同様であった。この場合には、アーチファクトバンドは見られない-これは、低温ではRPA反応に「ノイズ」が有意に付随しないという考えを支持している。
【0066】
(バクテリオファージPBS2由来のUNG阻害剤を用いた汚染制御)
RPA反応は、繰り越し汚染を制御するための方法としてのdUTPの使用と適合する。初期の実験データに関する補足説明は、この反応を開始するためにはウラシルグリコシラーゼ酵素を熱不活性化しなければならなかったことである。これはRPAとの2つの不適合問題を有する。第1に、熱不活性化は、RPA試薬が熱安定性ではないために完全RPA反応液もまた不活性化するであろう。第2に、熱不活性化は、サーマルサイクリングの回避というRPAの1つの目標と一致しない。
【0067】
上記の理由から、本発明者らは、汚染制御を実行するためのまた別の技術的方法の調査に取り組んだ。枯草菌ファージPBS1(Savva and Pearl,1995を参照)およびPBS2(Wang, Z. and Mosbaugh, D.W.(1989)を参照)が大腸菌および枯草菌ウラシル-DNAグリコシラーゼの特異的小ペプチド阻害剤を有する(Wang and Mosbaugh,1988)ことは知られている。それらは、固有のDNAがdTTPではなくむしろdUTPを用いて合成されるので、高度に有効な系を必要とする。本発明者らは、阻害剤ペプチドをコードするPBS2
DNA塩基配列をクローニングし、C末端ヘキサヒスチジンタグを用いて大腸菌内で発
現させた。本発明者らは、さらにまた大腸菌ウラシルグリコシラーゼ遺伝子をクローニングし、それをC末端ヘキサヒスチジンを用いて発現させた。本発明者らは、これらのタンパク質調製物を使用して、繰り越し汚染系をそれらと一緒に使用できるかどうか試験した。図6は、そのようなアプローチの妥当性を確認する、実施された実験の例を示している。図6では、テンプレートの開始時標的コピー数は、使用されたヒトDNAの800コピーであった。反応条件は次のとおりであった:50mMのTris(pH8.4)、100mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、5%のPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、25mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、600ng/μLのgp32、125ng/μLのuvsX、30ng/μLのuvsY、100μMのdNTP、300nMの各オリゴヌクレオチド(SRY8およびSRY9プライマー)。反応時間、75分間。反応量、50μL。大腸菌を使用した場合はUNGを150ng/μLで使用し、UNG阻害剤は140ng/μLで使用した。汚染は、研究室用液体処理装置内ではこのアプリコンについて存在する真性の繰り越し汚染であった。反応は、ポリメラーゼ以外の全増幅成分を用いて確立された。反応1~4はゲノムテンプレートDNAを有しており、反応5および6は汚染物質だけを含有していた。サンプルは、サンプル2、3、4、および6ではUNGを用いて5分間にわたり処理した。サンプル2、4、および6ではUNG阻害剤を5分後に加えた。全部の場合に、5分間のインキュベーション期間が終了した後に、UNGを含めて、もしくは含まずに、そしてその後のUNG阻害剤の添加を行って、もしくは行わずに、DNA合成を開始させるためにポリメラーゼを加えた。この実験では、本発明者らは:(1)大腸菌UNGはdUTP基質を含有するRPA反応を阻害するであろう、(2)阻害剤ペプチドの共含有はこの阻害を克服する、(3)dUTP含有汚染物質は最初に大腸菌UNGを用いて、次に阻害剤を用いて処理されるとアンプリコン生成が抑制されるが、それでもまだ真性テンプレートは有効であることを証明する。使用した条件下では、本発明者らは、反応液内にUNGが存在する場合には頑丈性/産物レベルのある程度減少する証拠を見いだした。しかし本発明者らは、この系をより最適に構成できると予測している。
【0068】
(RPA反応のためのリアルタイム蛍光プローブ)
DNA(もしくはRNA)配列を検出する際のRPAプロセスの多数の可能性のある適用は、リアルタイムフォーマットで適用することから利益が得られるであろう。RPAはすでに、SYBRグリーンなどのマイナーグルーブ結合色素と結び付けると有効であることが証明されている(2005年4月11日に提出されたPCT特許出願PCT/IB2005/001560)。しかし、反応挙動を評価するためにDNA蓄積のそのような一般的インジケータを使用することには潜在的限界がある。第1に、これらの色素は形成された様々な産物間を識別できないので、増幅反応を多重化する能力がない。例えば数多くの臨床試験では、偽陰性を排除するために内部増幅コントロールを含める必要があるであろう。第2に、RPA反応はサンプル中に標的が存在しない場合でさえ一部のDNA合成が場合によっては発生する範囲で、ほとんどの他のDNA増幅プロセスと類似である。結果として、蛍光検出の現行方法に基づいて数コピーの標的核酸の存在と核酸のコピーの不在とを識別することは困難もしくは不可能になることがある。
【0069】
これらの問題に応えて、本発明者らは、RPA反応を監視するための蛍光に基づく専有的プローブ系を開発した。本発明者らは、大腸菌PolIクラスのポリメラーゼに関連する5’-3’ヌクレアーゼを用いて調査した。このヌクレアーゼは、5’ヌクレアーゼ、もしくは「Taqman」アッセイとして知られるPCRのための蛍光プローブ法において使用されている。本発明者らは、5’-3’ヌクレアーゼドメインを保持している枯草菌PolIおよび大腸菌PolI酵素のどちらもRPA反応を支持しないことを見いだした。再考の結果、本発明者らは、これらのヌクレアーゼはFEN1 FLAPエンドヌクレアーゼファミリーの構造的/機能的ホモログであり、きっとおそらく構造特異的エンド
ヌクレアーゼである(Kaiserら)ために、これが発生すると考える。本発明者らは、これらの酵素は、鎖置換合成中に置換された鎖を漸進的に消化するので、したがってDNA増幅を阻害するのだと考える。
【0070】
本発明者らは、fpg、Nth、Nfo、およびより近年は大腸菌エキソヌクレアーゼIIIとして知られる、DNA修復に関係している大腸菌グリコシラーゼ酵素およびAPエンドヌクレアーゼに特に焦点を当てて注目した。重要なことに、これらの酵素は、塩基修飾が発生している位置で、および決定的には二本鎖DNAの状況においてのみ損傷した塩基を取り除く、および/またはDNA骨格を切断するであろう。これらの酵素は全部が、RPA環境において高特異性でそのような適切な二本鎖DNA分子を切断することができる(用途を参照)。オリゴヌクレオチドの本体内に修飾された塩基(各々、8-オキソグアニン、チミングリコール、もしくは無塩基性部位模擬体)および3’末端上の追加の別個の伸長ブロック基(3’-dR-ビオチンによって提供される)を含有する試験プローブを使用した。これらの酵素および潜在的にすべての他の修復/プロセッシング酵素についての明白な展望にもかかわらず、本発明者らは、以下の理由から大腸菌NfoおよびエキソヌクレアーゼIII酵素の挙動に焦点を当てた。第1に、本発明者らは、fpg、Nth、およびNfoタンパク質を試験したときに、プローブプロセッシングに成功する程度はテトラヒドロフラン残基(THF-無塩基性部位模擬体)を含有し、Nfoによってプロセッシングされたプローブについてが最高であることを観察した。第2に、Nfo、および機能的に類似である大腸菌エキソヌクレアーゼIIIは、単一ヌクレオチドギャップで分離された2つの小さなオリゴヌクレオチドに分割するからであるが、このとき形成される新規3’末端はニックで開始できる鎖置換ポリメラーゼによって伸長できる。この特性は、THF/NfoもしくはTHF/エキソヌクレアーゼIIIプロセッシング系に、蛍光プローブプロセッシングへの適用を超えて拡大する多様な用途を付与する(他の無塩基性部位模擬体、または真性無塩基性部位もまた使用できることを留意されたい)。
【0071】
以前の報告はさらに、増幅プロセスの状況において、無塩基性部位もしくは他のブロック残基を使用する潜在的使用を例示しているが、その好ましい意図はPCRもしくはLCR反応の状況において熱安定性ヌクレアーゼを用いて残基を除去することであった(本明細書では‘607号特許と記載する、米国特許第5,792,607号を参照)。しかし、本発明者らが使用したアプローチは、‘607号特許のアプローチとは明らかに異なっている。‘607号特許では、無塩基性部位は極めて広範囲の選択範囲内の修飾基1メンバーであると記載されており、企図された増幅オリゴヌクレオチドの3’末端に優先的に配置され、そしてポリメラーゼによる基質認識もしくは触媒反応を効果的に防止することによって可逆性3’糖修飾基として機能するように設計されている。その意図は、PCRおよびLCR技術には減少した頻度にもかかわらずオリゴヌクレオチドプライマーの3’領域に対する限定された相同性を共有する配列を備えるハイブリッドを形成する傾向があるために、サンプルDNA中で増幅系が意図されない標的を増幅する傾向を減少させることにある。さらに、極めて重要なことに、‘607号特許では、この基質認識を妨害する修飾は標的依存方法で特異的に修正されることが意図されている。そのような活性は、3’糖残基由来の基を「洗練する」ことのできるエンドヌクレアーゼIVなどの物質の活性によって実施できるであろう。しかし、極めて疑いようなく、本明細書に記載したプロセスでは、THF残基は、初期オリゴヌクレオチド/テンプレートハイブリッドが真性基質として認識されることを防止する3’糖に対する伸長ブロック修飾剤として機能しない。実際に、THF残基は、オリゴヌクレオチドの3’最末端に位置する代わりに、ポリメラーゼの基質標的(すなわち、テンプレートDNA上にハイブリダイズしたプライマーの3’末端領域)から離れたオリゴヌクレオチドの本体内に配置されている。本開示における主要な動機は、プライマーの折り返しアーチファクトから発生するノイズを防止することである。そこで、その代わりに、この場合にはエンドヌクレアーゼ活性によるTHF残基のプロセッシングは、ポリメラーゼの基質認識を妨害する修飾の「補正」とは相違するイ
ベントにおいて真性二本鎖の状況におけるオリゴヌクレオチド骨格の切断を引き起こす。本発明者らは、本明細書ではさらに3’末端伸長ブロック修飾について記載するが、しかしこれらはこの場合には「補正された」修飾ではなく、‘607号特許におけるような3’末端ヌクレオチドから必ずしも除去されない。その代わりに、本明細書に記載した場合には、本発明者らは、2つの別個の実体である未修正3’-ブロック基および中央に位置する無塩基様残基を使用するであろうが、後者はニック構造およびそれらの一方だけがポリメラーゼ基質である2種の独立娘アニール化プライマーを生成するためにAPエンドヌクレアーゼによって切断できる。
【0072】
図7は、蛍光感知プローブを使用してRPA反応における特異的アンプリコンの蓄積についてアッセイされた実験の結果を示している。図7Aは、プローブの概略構造を示している。このプローブは、市販で入手できるフルオレセイン-dTもしくはDDQ2-dTアミダイト(Glen Research社、米国バージニア州スターリン)を使用することによって合成中に組み込まれた、内部塩基で標識された蛍光体およびクエンチャー(フルオレセインおよびディープダーククエンチャーII)を有している。
【0073】
THF残基は、これらの修飾された塩基間のヌクレオチド位置で挿入された。プローブは、3’-dR-ビオチン基の存在によってブロックされた。図7Bは、プローブ配列を示している:
【0074】
【化2】
このプローブは、プライマーJ1およびK2によって生成されたアンプリコン内に含有される枯草菌SpoOB遺伝子座の一部と相同である。蛍光体およびクエンチャーは、それらを市販で入手できるアミダイト上に直接的に組み込むことができるように配列内のT残基上にあるように設計された。図7Cは、蛍光増加によって監視される増幅およびプローブ切断動態を示している。増幅反応は、様々な濃度の標的枯草菌ゲノムDNAを用いて確立された。反応は氷上で確立され、次に38℃に設定したステージを備えるBIOTEK Flx800マイクロプレートリーダー内でインキュベートされた。増幅条件は次のとおりである:開始時標的コピー数は指示したとおりであった。反応条件:50mMのTris(pH7.9)、100mMの酢酸カリウム、12mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、5%のPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、25mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、900ng/μLのgp32、120ng/μLのuvsX、30ng/μLのuvsY、180μLのNfo、100μMのdNTP、450nMのK2プライマー、150nMのJ1プライマー、100nMのプローブ。反応時間、60分間。反応量、20μL。
【0075】
感知プローブは、(a)10塩基未満(効率的クエンチングを保証するため)および(b)切断可能な部位(THF残基)によって分離された蛍光体およびクエンチャーを有するように設計された。この場合には、一次アンプリコンは枯草菌SpoOB遺伝子座からフラグメントを増幅させるためにプライマーJ1およびK2を用いて生成した。RPA反応は、以下の方法で本発明者らの通常の条件から修飾した。第1に、その全体構造および配列を図の下方部分に示したプローブを含めた。第2に、増幅プライマーは、プローブに対して相補的配列が定常状態過剰となるようにプローブに対向する増幅プライマーが相当に過剰であるような濃度で偏らせた。最後に、Nfo酵素を反応に含めた。反応は標準384ウエルマイクロプレート内で20μL量で実施し、BIO-TEK Flx800プレートリーダー内の485/525の励起/検出フィルターを用いて蛍光を監視した。本
発明者らは、蛍光のテンプレート依存性増加があることを観察した。蓄積が開始する時点はコピー数に依存性であり、1時間の反応監視時間の終了時の全蛍光レベルも同様であった。
【0076】
図8では、この実験が繰り返された。図8Aは生蛍光データを示しており、図8Bは標準化した蛍光シグナルを示している。任意の所定時点での水コントロール中に存在する蛍光シグナルを他の全サンプル中蛍光シグナルから減じた。全サンプルは、測定可能な蛍光が上昇する前の期間に基づく共通ベースラインへそれらを調整することによって相互に標準化した。図8Cでは、標準化した蛍光データの対数をプロットし、図8Dでは蛍光シグナルの閾値交差の時間(約2.6に設定)を開始時コピー数に対してプロットした。
【0077】
この場合に、本発明者らは、水コントロール中のシグナルに対してサンプルを標準化した結果を示し、次に標準化した蛍光シグナルの対数をプロットした結果を示した。本発明者らは、2.5以上の蛍光シグナルは陽性シグナルを構成すると規定した。SYBRグリーンを用いた場合に通常観察される状況とは対照的に、低コピーサンプルを水から識別するのは容易であることに留意されたい。水サンプル中のわずかな蛍光の増加はほぼ確実に、研究室内で幅広く取り扱われている特定のアンプリコンに関連するわずかな繰り越し汚染に起因する。
【0078】
本開示のクエンチャーに関して、クエンチャーは必ずしも蛍光体である必要はないことは理解されている。ドナーの発光(ダーククエンチャー)と重複する非蛍光発色団を使用できる。そのような場合には、転移したエネルギーは熱として放散する。
【0079】
Dark Quencher 1、Dark Quencher 2、Black Hole Quencher 1およびBlack Hole Quencher 2などの高効率ダーククエンチャーは知られており、市販で入手できる(Biosearch Technologies社、カリフォルニア州ノバート)。当技術分野において知られているように、ダーククエンチャーの高いクエンチング効率および天然蛍光の欠如は、1つのオリゴヌクレオチド上への蛍光体およびクエンチャーの付着を可能にし、そのようなオリゴヌクレオチドが溶液中に存在する場合は蛍光を発しないことを保証する。
【0080】
本発明のポリヌクレオチドと一緒に使用するために適合する蛍光体およびクエンチャーは、当業者であれば容易に決定できる(さらに、Tgayiら、Nature Biotechnol. 16:49-53(1998);Marrasら、Genet. Anal.:Biomolec. Eng. 14:151-156(1999)も参照されたい)。多くの蛍光体およびクエンチャーは、例えばMolecular Probes社(オレゴン州ユージーン)またはBiosearch Technologies社(カリフォルニア州ノバート)から市販で入手できる。本発明において使用できる蛍光体の例には、フルオレセインならびにFAM、VIC、およびJOEなどのフルオレセイン誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、クマリンおよびクマリン誘導体、ルシファー・イエロー、NED、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、テトラクロロ-6-カルボキシフルオロセイン、5カルボキシローダミン、シアニン色素などが含まれるが、それらに限定されない。クエンチャーには、DABSYL、4’-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-マレイミド(DABMI)、テトラメチルローダミン、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、Black Hole Quencher、Dark Quencher 1、およびDark Quencher 2が含まれるが、それらに限定されない。蛍光体およびクエンチャーを核酸に結合させる方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0081】
本発明者らは、RPA反応環境において蛍光プローブ系を実行することに成功し、プローブの一般構造を確立した。この知識を用いると、任意のアンプリコンを検出するためのプローブを開発することは、そして代替蛍光体の賢明な選択によって、一度に2つ以上の増幅を多重化することは容易なはずである。これを証明するために、本発明者らは、英国内ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)、もしくは略してMRSAとして知られる抗生物質耐性黄色ブドウ球菌病原体に対する多重試験を開発した。
【0082】
(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出)
MRSAは、黄色ブドウ球菌ゲノム内の特定の場所で耐性カセットであるmecAカセットを統合することによって抗生物質耐性を発生した一群の黄色ブドウ球菌株を含んでいる。同一の一般ゲノム統合部位が常に使用されるが、正確な統合部位接合部およびカセットの方向付けは変動する可能性がある。この変動にもかかわらず、独立単離菌は代表的な統合構造を備える限定数の一般群に分離することができる。この複雑性に加えて、増幅プライマーおよびプローブの有効性を弱める可能性がある菌株間の塩基多型性の存在に起因してまた別の困難が発生する。そこでMRSA病原体は、単一試験における臨床標本中で一般に見いだされる菌株の90%超を捕捉するためにはmecA耐性カセット統合遺伝子座の3つの構造的に相違する変化の検出に適応する、そして一部の一般多形を説明することが必要であるので、複合標的を表している。さらに、アンプリコンは、増幅させた任意のmecA配列が黄色ブドウ球菌ゲノムの状況内にあり、非関連性細菌中には存在しなかったことを保証するために、統合カセット内の1つの群にわたっていることが必要である。
【0083】
一般MRSA菌株の90%超についてのRPA試験を構成するために、本発明者らは、図10に例示したプライマー設計戦略を開発した。図10は、多重試験環境におけるMRSA対立遺伝子のリアルタイム検出を描出している。図10Aは、RPAプローブ原理の略図である。シグナル生成は、二本鎖特異的Nfoによるプローブ切断に左右される。図10Bは、図2C~Fおよび3Cにおいて使用した標的に比較したプライマーおよびプローブの配置を示している。標的部位sccIIIおよびorfXへ非関連配列を結合させたPCRフラグメントは、内部コントロールとして機能した。図10Cは、プライマーセットorfX/sccIIIを用いたRPA反応のプローブシグナルを示している。10(黒色、反応1~3)、10(赤色、4~6)、100(黄色、7~9)、10(緑色、10~12)または2コピー(紫色、13~17)もしくは水(青色、18~20)でのMRSAIII DNAは、テンプレートとして機能した。図10Dは、コピー数が線形関係を明らかにしているテンプレートの対数に対して図2Cにおける反応1~12における増幅の開始時間(2.5閾値を通過したと規定した)のプロットを示している。(E)多重RPAアプローチは、同一反応内での相違するMRSA対立遺伝子および内部コントロールの検出を可能にする。10コピーでのMRSAI(緑色)、MRSAII(紺青色)、MRSAIII DNA(赤色)もしくは10コピーでのMSSA DNA(青色、陰性コントロール)または水(黄色、青緑色)はテンプレートとして機能した(各テンプレート条件について3つずつ)。(F)図2Eにおける反応に含まれた50コピーの内部コントロールDNAの検出。陰性コントロールは水(青緑色)を含有していた。RPA反応は、次のとおりに実施した:リアルタイムRPAは蛍光体/クエンチャープローブの存在下でプレートリーダー(BioTek Flx-800)内で実施した。反応は37℃で90分間実施した。条件は、50mMのTris(pH7.9)、100mMの酢酸カリウム、14mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、5.5%のCarbowax 20M、200μMのdNTP、3mMのATP、50mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、20ng/μLのBsuであった。gp32/uxsX/uvsY(単位ng/μL)の濃度は900/120/30であった。プライマーは、265nMのsccI/II、265nMのsccIII、70nMのorfX
を使用した。反応量は20μLであった。
3種のプローブを使用した:
【0084】
【化3】
ここで(T)はdT-TAMRA、(F)はdT-フルオレセイン、(H)はTHF、(q1)はdT-BHQ1、(q2)はdT-BHQ2、(q3)はdT-DDQ1である。プローブは、60nMのSATamra1(MRSAIII実験)もしくは45nMのSATamra1、45nMのSATamra2、60nMのBSFlc(多重実験)を使用した。Nfoは200ng/μLで使用した。励起/検出は、485/525nm(SybrGreenI、BSFlc)または530/575nm(SATamra1/2)で実施した。測定値は、30秒間もしくは45秒間(多重実験)毎に入手した。蛍光プローブデータは、水コントロールおよび調整した増幅前ベースライン値に対して標準化した。読み出し値の対数を反応時間に対してプロットした。
【0085】
手短には、統合カセット領域の外側にある黄色ブドウ球菌ゲノムDNAを認識するために単一プライマーを設計し、orfXと名付けた。さらにmecカセットに特異的な2種のプライマーを設計したが、これら(sec I/II)のうちの1つは2種の菌株変種から遺伝子座を増幅させるために使用でき、第2(sec III)は第3変種から遺伝子座を増幅させるために使用できる。アンプリコンのためには、一般単一ヌクレオチド多形の原因となる2つの残基が相違している2種のプローブを使用する。これらのMRSAプローブはどちらも、蛍光体としてTAMRAを使用する。最後に、反応液内にはorfxおよびsccIIIプライマーに縮合させた非関連性枯草菌ゲノムDNAフラグメントの固有のセグメントを含んでいるコントロールアンプリコンが含められ、このアンプリコンを感知するためには第3のプローブを使用できる(BSFlc、およびこれは図7に記載の実験で使用された同一プローブであり、フルオレセインおよびディープダーククエンチャーIを含有している)。図10のパートAは、再びアンプリコンとハイブリッドを形成するプローブをプロセッシングすることにより反応において増加した蛍光を発生させるための戦略を例示している。パートCでは、1つのMRSAゲノムDNAテンプレートの検出が、非多重化環境では広い濃度範囲にわたって証明されている。パートEは、3つのタイプのMRSAの各(約)10コピーが単一反応マスターミックスを用いて個別に検出された実験の結果を示している。パートFではフルオレセインチャネル内でコントロール配列によって生成されたシグナルが示されており、本発明者らは、コントロールDNAを含有するそれらの全サンプルの判定が陽性であると判断できる。
【0086】
これらの実験には、相当に高濃度(10コピー)の非耐性黄色ブドウ球菌DNAを含有するコントロール反応が含まれている。十分満足できることに、これらのサンプルは陽性とは判定されないが、これは黄色ブドウ球菌配列ならびにmecAカセット両方について厳密な要件があることを示している。このコントロールDNAが機能的であること、そしてコピー濃度が指示されたとおりであることを保証するために、orfXプライマーおよびmssaと名付けられた第2の黄色ブドウ球菌特異的プライマーの組み合わせを使用するコントロール反応においてDNAを使用した。この場合には、プローブが黄色ブドウ
球菌ゲノムの共通区画を認識するので、同一プローブを使用できる。図11には、これらの非耐性菌株特異的プライマーを用いて実施された実験の結果を観察することができ、コントロールMSSA DNAが実際にいかに有効であるか、そしてコピー数についての定量的分析の適切な応答を示しているかを見ることができる。図11は、リアルタイム定量的RPA反応におけるMSSA DNAの検出を示している。プライマーセットorfX/mssaおよびプローブSATamra2を用いるRPA反応のプローブシグナル。図11Aは、テンプレートとして機能した10(黒色、反応1~3)、10(赤色、4~6)、100(黄色、7~9)、10(緑色、10~12)もしくは2コピー(紫色、13~17)または10コピーでのMRSAI DNA(灰色、反応18~20)もしくは水(青色、21~23)でのMSSA DNAの測定を示している。反応条件は、50mMのTris(pH7.9)、100mMの酢酸カリウム、14mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、200μMのdNTP、3mMのATP、20mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、5%のCarbowax20M、900ng/μLのgp32、120ng/μLのuvsX、30ng/μLのuvsYおよび20ng/μLのBsuであった。オリゴヌクレオチドは、500nMのmssa、100nMのorfXおよび60nMのSATamra2を使用した。MSSA標的は極めて低い濃度でさえ増幅するが、陰性コントロール(MRSAI)はシグナルを生成しない。図11Bは、コピー数が線形関係を明らかにしているテンプレートの対数に対して反応1~12における増幅の開始時間(2.5閾値を通過したと規定)のプロットを示している。
【0087】
(伸長可能な3’末端の酵素的生成に続くプライマーの結合による微量核酸の検出)
RPAは、ポータブル型で機器不要の、または軽量な機器によるDNA試験の開発にとって理想的に適合する。しかしそのような試験は、増幅が発生したかどうかを決定するために安価で使用法が簡便なアプローチを使用するのが理想的であろう。伝統的には、規定サイズの産物が蓄積したかどうかを判定するためにはゲル電気泳動が使用されている。または、蛍光プローブを使用できる。いずれの場合においても、分析を実施するためにはかなり大きなハードウエアが必要とされるので、これは適切な装置を有していないエンドユーザーが本試験を使用することを妨害する。
【0088】
他のアプローチを使用して、DNA増幅が発生したか否かを決定することができる。1つの便宜的な、ハードウエアを使用しないアプローチは、2種の標識された遺伝子特異的プライマーが共通DNA二本鎖内で結合したかどうかをインテロゲートすることによってアンプリコンの存在が判定される、サンドイッチアッセイを実施する方法である。これは、1種の増幅プライマーをビオチンなどの標識で、そして対向するプライマーをFAMなどの第2標識で標識することによって達成できる。2種の標識されたプライマーが結合したかどうかを決定するためには、様々なアプローチを使用できる。例えば従来型のラテラルフロー・ストリップアッセイ(例えば、欧州特許EP0810436A1を参照)では、2種の抗体(またはオリゴヌクレオチド標識の1つに高親和性で結合するストレプトアビジンなどの他の成分)が使用される。1つの抗体は、ラインもしくはスポットでフローメンブレン上に固定化されるであろう。もう1つの抗体は、コロイド状金、ラテックス粒子などの可視粒子に結合させられる。この場合には希釈もしくは未希釈増幅反応であるサンプルが、抗体結合可視粒子が事前に沈着しているサンプルパッドに適用されると、可視粒子は標識したオリゴヌクレオチドの1つと安定性に結合される。次にサンプル全体が毛細管作用によってメンブレンの上方に移動し、それが流動するにつれて、もう1種の標識されたプライマーは固定化抗体上に「捕捉」される。標識されたプライマーが二本鎖内で共結合しない場合は、メンブレン上に「捕捉された」抗体は他のプライマーと結合している可視粒子とは結合しない。しかし、それらが増幅の結果として結合している場合は、可視粒子はラインもしくはスポット上に捕捉され、そして可視シグナルが蓄積する。プライマーの結合について評価するためには他のアプローチを構成できる。
【0089】
サンドイッチアッセイなどの単純な結合アッセイを用いる場合の1つの問題は、所望の標的の真正増幅が発生しない限りプライマーが結合しないという必要条件である。何らかの望ましくない結合は、偽陽性シグナルを発生させるであろう。しかしそのような明確な状況は、特に標的が豊富ではない場合には、大多数の増幅方法についてはまれである。例えば、PCR法においてはプライマーダイマー、もしくは他のアーチファクトが、最適化とは関係なく、ある程度蓄積する傾向を示す。RPAもまた上記で詳述したようにプライマー関連性アーチファクトの蓄積に悩まされ、これらはRPAとそのような単純な読み出しとの直接組み合わせを妨害する可能性がある。実際に、この一般的問題は、サンドイッチアッセイが現在利用できる高感受性/特異性DNA試験において広汎には実施されていないことの理由の一部を実証している可能性がある。PCR産物蓄積を評価するために販売されているそれらの市販で入手できるラテラルフローシステム(例、Milenia社製のGenline Chlamydia Direct試験ストリップ)は、便宜的ではなく、DNA合成を通してのプライマーの異常な共結合を回避するために、反応が実施された後に追加のプローブプライマーを産物へハイブリダイズさせる最終工程を必要とする。
【0090】
本発明者らは、ラテラルフロー・ストリップへ直接的に添加することにより、または将来的には他の類似方法によって、真正標的増幅の容易な評価を許容するためのRPA反応を構成した。陽性および陰性サンプル間の明確な識別を達成するために、本発明者らは、大腸菌NfoもしくはエキソヌクレアーゼIII酵素によって分割される標識されたプライマーを使用して2種のプライマーを生成したが、それらの1つは鎖延長させることができる。これは、オリゴヌクレオチドの3’末端をブロックし、オリゴヌクレオチド合成中に、酵素に対して分解標的として作用するオリゴヌクレオチドにおいて、本明細書ではGlen Research社(米国バージニア州スターリング)から入手できる「D-スペーサー」と呼ばれる5’-O-ジメトキシトリチル-1’,2’-ジデオキシリボース-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイトを使用してTHF残基もしくは産物を個別に組み込む工程によって達成される。NfoもしくはエキソヌクレアーゼIII酵素がプライマーを切断/分割する前の安定性二本鎖形成への依存性は、このプライマーと他の標識された対向プライマーとの異常な結合が発生しない、または検出閾値未満へ低下するようにめったに起こらないことを保証する。
【0091】
図9は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(mec2カセットを含有するEMRSA 16菌株)由来、または非耐性参考菌株(MSSA)由来のDNAを3種のプライマーの存在下で増幅させた実験からのデータを示している。この実験は、ラテラルフローアッセイもしくは他の単純なサンドイッチ検出スキームのために適合する高いシグナル対ノイズ比増幅戦略が実行可能であることを示している。図9Aは、プライマーの略配置図を示している。一番左のプライマー、およびプローブは、黄色ブドウ球菌ゲノム内に存在する、および同様に黄色ブドウ球菌MSSA参考菌株ならびに下流mecIIカセットインサートを含有するMRSA16菌株内に存在する配列を認識する。一番右の増幅プライマーは、mecIIカセット内の配列に対して特異的であり、非耐性黄色ブドウ球菌ゲノム内では見いだされない。一番右のプライマーは5’末端がビオチン成分で標識されているが、プローブは5’-FAM成分で標識されている。プローブは3’ddCでブロックされており、内部THF残基を含有している。図9Bでは、増幅反応は次の条件を用いて確立された:50mMのTris(pH7.9)、100mMの酢酸カリウム、14mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、5%のPEG化合物(Carbowax-20M)、3mMのATP、25mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、600ng/μLのgp32、125ng/μLのuvsX、30ng/μLのuvsY、270μMのNfo、100μMのdNTP、100nMのORFX45bプライマー、100nMのsccII-35-2-バイオプライマー、50nMプローブのORFXp
robe2。反応時間、60分間。反応量、30μL。反応温度37℃。コピー数は、1,000コピーのMSSA DNAもしくは1,000コピーのMRSA16 DNA、または水であった。60分後、1μLの反応液を5μLのPBS/3%のTween-20で希釈し、100μLのPBS/3%のTween-20(Milenia product:Genline hybri-detect MGHD1)を用いてMilenia社製の市販のラテラルフロー試験ストリップのサンプルパッドに塗布した。
【0092】
この場合には、プライマー中2種が主要増幅プライマー対として機能し、第3のプライマーがプローブとして機能する。プローブは、分割標的として、ならびに5’末端でFAM標識として作用するために3’ブロック基および別個の内部THF残基を含有している。プローブは、ビオチン残基で標識されている主要増幅プライマーの1つに対向する。真正アンプリコンしか蓄積していなければ、プローブはNfoによってニック/分割され、伸長させられ、したがって2種の標識されたプライマーを結合させる安定性ハイブリッドを形成するであろう。この方法で確立されたRPA増幅が耐性および非耐性菌株由来のDNA上で実施された実験の結果は図示されている。少量の反応液(1μL)を次に5μLのラテラルフロー・ランニングバッファー(3%のTween-20を含むリン酸緩衝食塩液)と混合し、市販のラテラルフロー・ストリップ(Milenia-germany社)へ直接的に塗布した。約1~2分後、ストリップをシグナルについて評価し、写真を撮影した。試験は、明白に陽性を陰性から識別している。
【0093】
他のプロセッシング酵素をそのようなアプローチで使用できる。詳細には、大腸菌fpg、Nth、およびエキソヌクレアーゼIII酵素、他のphyla由来のホモログ、大腸菌MutY、MutSおよびMutMなどの塩基ミスマッチ修復酵素、大腸菌MUG、ヒトMUG、Ogg1、および脊椎動物Nei様(Neil)グリコシラーゼ。上記の修復酵素の任意の組み合わせもまた使用できる。特に、大腸菌Nfo(エンドヌクレアーゼIV)、および大腸菌エキソヌクレアーゼIIIは、ホスホジエステラーゼ活性を有しており、他のグリコシラーゼ/リアーゼの切断産物の伸長不可能な3’末端を伸長可能な3’-ヒドロキシル残基へプロセッシングできることに留意されたい。
【0094】
本開示のいずれかに言及したすべての特許、特許出願および参考文献は、全体として参考して組み込まれる。
【0095】
以下では、本発明を実施例によってより詳細に記載する。実施例は本発明の例示であり、決して本発明を限定することは意図していない。
【実施例0096】
(実施例1:核酸配列)
(タンパク質およびDNA)
uvsx、uvsy、gp32、BsuおよびNfoについてのコーディング配列は、ゲノムDNA(DSMZ社、ドイツ国)から増幅させ、ヘキサヒスチジンタグ(uvsY、BsuおよびNfoについてはN末端、uvsXおよびgp32についてはC末端)へ縮合させ、適切な発現ベクター内へクローニングした。過剰発現および精製は、ニッケル-NTA樹脂(Qiagen社)を用いて標準プロトコールによって実施した。黄色ブドウ球菌対立遺伝子は、EMRSA-3(SCCmecタイプI;MRSAI)、EMRSA-16(MRSAII)、EMRSA-I(MRSAIII)および野生型MSSAであった。以下に提供した追加の配列情報を参照されたい。
【0097】
(プライマー配列)
【0098】
【化4】
【0099】
【化5】
【0100】
【化6】
【0101】
【化7】
(本明細書中で使用されたMSSA対立遺伝子およびMRSA対立遺伝子ならびにプライマーの配列)
プライマーの標的部位は、太字/下線が引かれており、プローブ結合部位は、太字/斜字体である。
【0102】
【化8】
【0103】
【化9】
【0104】
【化10】
(実施例2:RPA反応の速度)
RPAプロセスの略図は図12Aに示されている。リコンビナーゼ/プライマーフィラメントは、テンプレートDNAを相同配列(赤色/青色)について走査する。鎖置換に続いて、置換された鎖はgp32(緑色)によって結合され、プライマーはBsuポリメラーゼ(青色)によって伸長させられる。対向するプライマーの繰り返しの結合/伸長イベントは、指数関数的DNA増幅を生じさせる。
【0105】
リコンビナーゼ/プライマーフィラメント形成の動態は、図12Bに示されている。ATPの存在下では、uvsX(灰色)はオリゴヌクレオチド(赤色、上)へ協調的に結合する。ATP加水分解が起こると、核タンパク質複合体は分解し(左)、uvsXはgp32(緑色、右)によって置換される可能性がある。uvsYおよびCarbowax20Mの存在は、リコンビナーゼ付加に好都合なように平衡を移動させる。
【0106】
典型的なRPA反応の結果は、STRマーカーのためのプライマーを用いたRPA反応のPAGEである図12Cに示されている。2つの個体(1/2、父/息子)由来のゲノムDNAをテンプレートとして使用した。ときどき(D7S820、D16S539)、全長産物の低レベル量のダイマー形(星印)を観察することができる。
【0107】
RPA反応をリアルタイムで監視する能力は、図12Dに示されている。図12Dでは、枯草菌SpoB遺伝子座のためのプライマーを用いたリアルタイムRPAが、反応液の蛍光を監視することによって監視された。新生産物内へのSybrGreenIの挿入後の蛍光が検出される。5×10(黒色)、5×10(赤色)、5×10(黄色)、500(緑色)もしくは50コピー(紫色)での枯草菌DNAまたは水(青色)がテンプレートとして機能した。増幅の開始は、開始時テンプレートコピー数の対数に線形に依存する(差込図を参照;時間(増殖曲線の中点)対、対数[テンプレート濃度])。
【0108】
(実施例3:ラテラルフロー・ストリップを用いたRPAアンプリコンの検出)
本発明者らは、RPAアンプリコンを検出するためにラテラルフロー・ストリップテクノロジーを使用する方法を考案した。この方法は、特異的抗体を使用して、2種の抗原性標識を含有する複合体を固定化かつ検出する(図13A)。手短には、標的核酸は2種の相違するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅させられるが、このとき各プライマーは相違する標識もしくは抗原を有する。そこで、生成したすべてのアンプリコンは2種の標識もしくは抗原に結合するであろう(すなわち、二重標識アンプリコン)。
【0109】
二重標識アンプリコンの存在を検出するためには、これらのアンプリコンを含有することが疑われるサンプル、2種の標識中の1つ(この場合には、この標識は抗原である)を認識する抗体に結合させた可視(金)粒子中に浸漬したパッド(図13C)。複合体は、次にメンブレンを通ってバッファー流中を移動し、追加の固定化された抗体が第2抗原(Id.)を捕捉する。抗原がDNA二本鎖中で結合させられると、ストリップ上の規定の場所に着色されたラインが現れる。本発明者らのプローブ検出系の変形では、本発明者らは、RPAアンプリコン中のビオチン-およびFAM-担持オリゴヌクレオチドを結合す
ることによってそのような二重抗原複合体を作製した(図3B)。5’-ビオチン化プライマーおよびその対向する対応物は、プローブ結合のための標的の十分な増幅を保証する。5’-FAM標識、内部THFおよび3’-ブロック基を含むプローブは、結合するとNfoによって切断され、Bsuによる鎖延長のための3’OH基質を生成する。プローブ残余の伸長は、それとビオチン標識鎖との相互作用を安定化させ、ビオチンおよびFAM両方を含有するアンプリコンを生成する。THF/3’-ブロックは、Nfoによる真生二本鎖のプロセッシングは臨界的なプルーフリーディング工程を付け加えるので、プライマーアーチファクトを含有するビオチン/FAMの産生を防止する。サンプルをラテラルフロー・ストリップに適用した後に、ビオチン/FAMアンプリコンはFAM検出ライン上に可視シグナルを発生するであろうが、結合した複合体を作製できないRPA反応は可視シグナルを発生しないであろう。本発明者らは、図10Eに使用した1つのアプローチに類似する多重アプローチを使用して、10コピーの3つのMRSA対立遺伝子各々を検出してそれらをMSSAから識別した(図3C)。
【0110】
数多くの研究および臨床適用は、本明細書に開示したRPAおよび様々な検出方法を使用することから利益を得ることができよう。例えば、RPAは、非研究室用器具を開発するための重要な突破口を提供する。ハンドヘルド型機器もしくは完全に機器を使用しないDNA検出システムと統合すれば、RPAは、様々な病原体のための簡便な試験システムならびに他の適用のための現場用キットを可能にするであろう。
【0111】
(材料および方法)
(タンパク質およびDNA)
uvsx、uvsy、gp32、BsuおよびNfoについてのコーディング配列は、ゲノムDNA(DSMZ、ドイツ)から増幅させ、ヘキサヒスチジンタグ(uvsY、BsuおよびNfoについてはN末端、uvsXおよびgp32についてはC末端)へ縮合させ、適切な発現ベクター内へクローニングした。過剰発現および精製は、ニッケル-NTA樹脂(Qiagen社)を用いて標準プロトコールによって実施した。
【0112】
ヒトDNAは血液から精製し(Wizard-Genomic精製キット、Promega社)、枯草菌DNAはATCC(米国)から入手し、黄色ブドウ球菌DNAはJodi Lindsay氏から贈答された。黄色ブドウ球菌対立遺伝子は、EMRSA-3(SCCmecタイプI;MRSAI)、EMRSA-16(MRSAII)、EMRSA-1(MRSAIII)および野生型MSSA(12)であった。配列についての補遺情報を参照されたい。
【0113】
(RPA条件)
反応は37℃で60分間、または指示したように実施した。標準条件は、50mMのTris(pH8.4)、80mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、5%のCarbowax 20M、200μMのdNTP、3mMのATP、20mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、20ng/μLのBsuであった。対照的に、MRSAの増幅は、50mMのTris(pH7.9)、100mMの酢酸カリウム、14mMの酢酸マグネシウムで実施した;多重実験でのCarbowax20Mは5.5%であった。gp32/uxsX/uvsYの濃度(単位:ng/μL)は、600/200/60(STR実験)、600/120/30(枯草菌実験)または900/120/30(MRSA実験)であった。プライマーは、500nMのsccIII、100nMのorfX(MRSAIII実験)もしくは265nMのsccI/II、265nMのsccIII、70nMのorfX(多重実験)または240nMのBiosccl/II、240nMのBio-sccIII、120nMのorfX(ラテラルフロー・ストリップ実験)を使用したMRSA増幅を除いて、各300nMで使用した。反応量は、STR実験(40μL)および枯草菌実験(50μL)を除
いて、20μLであった。
【0114】
(リアルタイムモニタリング)
リアルタイムRPAは、SybrGreenI(1:50000、Molecular
Probes社)または蛍光体/クエンチャープローブ(Eurogentec社)の存在下で、プレートリーダー(BioTek Flx-800)内で実施した。3種のプローブを使用した:
【0115】
【化11】
ここで(T)はdT-TAMRA、(F)はdT-フルオレセイン、(H)はTHF、(q1)はdT-BHQ1、(q2)はdT-BHQ2、(q3)はdT-DDQ1である。プローブは、60nMのSATamra1(MRSAIII実験)もしくは45nMのSATamra1、45nMのSATamra2、60nMのBSFlc(多重実験)を使用した。Nfoは200ng/μLで使用した。励起/検出は、485/525nm(SybrGreenI、BSFlc)または530/575nm(SATamra1/2)で実施した。測定値は、30秒間もしくは45秒間(多重実験)毎に入手した。蛍光プローブデータは、水コントロールおよび調整した増幅前ベースライン値に対して標準化した。読み出し値の対数を反応時間に対してプロットした。
【0116】
(ラテラルフロー・ストリップ検出)
ラテラルフロー・ストリップ実験のためには2種のプローブを各75nMで使用した:
【0117】
【化12】
sccI/IIおよびsccIIIの5’-ビオチン化形をプライマーとして利用した。製造業者の取扱説明書にしたがって、各反応液(20μL)に対して1μLを5μLのランニングバッファー(PBS/3%のTween)で希釈し、HybriDetect-ストリップ(Milenia社)へ直接塗布した。
【0118】
ラテラルフロー・ストリップ検出の結果は、図13Cに示されている。反応液は、テンプレートとして(左から右へ)10コピーのMRSAIII、10コピーのMRSAII、10コピーのMRSAIもしくは10,000コピーのMSSA(陰性コントロール)を含有していた。陽性シグナルは、最初の3つの反応において発生する(矢印)。
【0119】
(実施例4:RPAのための最適条件の分析)
(RPA条件)
RPAは、リコンビナーゼ-オリゴヌクレオチド複合体の形成を支持する反応環境の確立に依存する。このプロセスはATP依存性であるので(Formosaら、1986)、持続性活性のためにエネルギー再生システムを必要とする。この実験では、本発明者らは、それらが増幅性能に及ぼす影響を決定するためにRPA反応混合液の重要な成分を滴
定した。結果は、図14に示されている。図14は、ヒトSry遺伝子座のためのプライマーを用いたRPA反応のポリアクリルアミドゲル電気泳動を示している。反応は、37℃で120分間にわたり実施し、所定の成分が試験下にある場合を除いて、300nMのプライマーsry3およびsry4、50mMのTris(pH8.4)、80mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、3mMのATP、200μMのdNTP、20mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、5%のCarbowax20M、600ng/μLのgp32、200ng/μLのuvsX、60ng/μLのuvsYおよび20ng/μLのBsuを含有していた。この特定標的を効果的に増加させるためのgp32(図14A)、uvsY(図14B)、uvsX(図14C)、Carbowax20M(図14D)、ATP(図14E)およびBsu(図14F)の最適量を決定した。(G)ADP-(R)-Sおよび(H)ATP-(c)-Sは反応を阻害する。1,500コピー/μLのヒトY染色体DNAは30μL(1サンプルに付き同等の10μL反応量をゲル上に装填した)の反応液中でテンプレートとして機能した。
【0120】
RPAは、相当に広範囲の試薬濃度にわたって確実に作用することが実証された。しかし本発明者らは、最適反応条件が様々なプライマー対間で変動すること、このために個別に規定しなければならないことを見いだした。
【0121】
(プライマーの必要条件)
本発明者らは、RPAを使用して広範囲の標的を増幅させた。プライマーの設計は配列組成自体の制限を明らかにしなかったが、オリゴヌクレオチドがRPAに適合するために所定のパラメーターが満たされなければならない。本発明者らは、これらのパラメーターを図15に示した実験において調査した。図15は、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子座のためのプライマーを用いたRPA反応のアガロースゲル電気泳動を示している。プライマーApoB4は、指示したサイズの産物を生成できる対向するプライマーと結合された。反応は37℃で120分間実施し、使用した条件は、50mMのTris(pH8.4)、80mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、3mMのATP、200μMのdNTP、20mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、5%のCarbowax20M、600ng/μLのgp32、125ng/μLのuvsX、25ng/μLのuvsYおよび20ng/μLのBsuであった。450コピーのヒトDNAを30μL(1サンプルに付き同等の10μL反応量をゲル上に装填した)の反応液中でテンプレートとして使用した。300bpアンプリコンの一部を2×および3×ユニット長へ変換させて一部のヘアピン媒介性産物複製が発生したことに留意されたい(*)。RPAは1,500bp以上のアンプリコンを生成できなかった。この実験は、使用した条件下でのアンプリコンサイズがほぼ1kbに限定されることを証明している。
【0122】
ヒトゲノムDNA内の3つの独立遺伝子座(アポリポタンパク質B、STR D18S51、Sry)のためのプライマーを用いたRPA反応のポリアクリルアミドゲル電気泳動が示されている。プライマーは、指示したように25、28、もしくは>31塩基であった。反応は37℃で120分間実施した。使用した条件は、50mMのTris/Cl(pH8.4)、80mMの酢酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、3mMのATP、200μMのdNTP、20mMのホスホクレアチン、100ng/μLのクレアチンキナーゼ、5%のCarbowax20M、600ng/μLのgp32、200ng/μLのuvsXおよび60ng/μLのuvsY、および20ng/μLのBsuポリメラーゼであった。3,000コピーの標的は30μL(1サンプルに付き同等の10μL反応量をゲル上に装填した)の反応液中でテンプレートとして使用した。RPAを支持するためには>28塩基のプライマー長が必要とされるという所見は、様々なオリゴヌクレオチドサイズでuvsX-オリゴヌクレオチドフィラメントのATP
加水分解活性を調査した報告書と良好に一致している(Huletskyら、2004を参照)。
【0123】
プライマーの最小長は、約30ヌクレオチドであることが実証された(図16)。本発明者らは、それらの対応物に比較して配列は相違するが長さおよび位置は類似であるオリゴヌクレオチドの性能における変動性を観察した。特定のRPAプライマーの品質にヌクレオチド配列が及ぼす影響を支配する法則は、現時点では調査中である。
【0124】
(コントロールDNA)
図2Cに示した実験において陰性コントロールとして機能する野生型黄色ブドウ球菌DNA(MSSA)(Enrightら、2002;Huletskyら、2004を参照)は、プライマー対であるorfX/mssaと結合した場合にRPAのためのテンプレートとして機能する(図16)。
【0125】
(参考文献)
【0126】
【化13】
【0127】
【化14】
【0128】
【化15】
【0129】
【化16】
【0130】
【化17】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2022031281000001.app
【外国語明細書】