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特開2022-31285樹脂組成物、シート状積層材料、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031285
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、シート状積層材料、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20220210BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220210BHJP
   C08G 59/00 20060101ALI20220210BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20220210BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/013
C08G59/00
C08G59/42
B32B15/08 J
B32B15/092
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190209
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2018042164の分割
【原出願日】2018-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 恒太
(57)【要約】
【課題】低誘電正接、高機械強度、高密着性である硬化物をもたらす樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱硬化性官能基FAを有する樹脂、(B)ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂、及び(C)熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂、を含む樹脂組成物であって、(A)成分の熱硬化性官能基FAの数を1とした場合の(C)成分の官能基FA’の数nと、(B)成分のラジカル重合性官能基FBの数を1とした場合の(C)成分の官能基FB’の数nとが、0.01≦n≦200、及び、0.01≦n≦400を満たす樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性官能基FAを有する樹脂(但し、(C)成分を除く。)、
(B)ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂(但し、(C)成分を除く。)、及び
(C)熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂、
を含む樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物の樹脂組成物層上に厚さ35μm銅箔を積層し、当該樹脂組成物層を190℃、90分の硬化条件で硬化することで得られるサンプルに対して、130℃、85%RHの条件で100時間の加速環境試験を実施した場合において、当該サンプルについてJIS C6481に準拠して測定される、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重が0.25kgf/cm以上である、
樹脂組成物。
【請求項2】
熱硬化性官能基FAが、エポキシ基、フェノール性水酸基、ベンゾオキサジン基、シアネートエステル基、活性エステル基、カルボジイミド基、酸無水物基、オキセタニル基、エピスルフィド基、イソシアネート基、及びアミノ基からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ラジカル重合性官能基FBが、エチレン性不飽和基である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ラジカル重合性官能基FBが、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基、及びマレイミド基からなる群から選択される1種以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分の官能基FA’が、エポキシ基、フェノール性水酸基、ベンゾオキサジン基、シアネートエステル基、活性エステル基、カルボジイミド基、酸無水物基、オキセタニル基、エピスルフィド基、イソシアネート基、及びアミノ基からなる群から選択される1種以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分の官能基FB’が、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基、及びマレイミド基からなる群から選択される1種以上である、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(D)無機充填剤を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(D)成分のメディアン径(体積基準)が3μm以下である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき50質量%以上である、請求項7又は8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき60質量%以上である、請求項7又は8に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき65質量%以上である、請求項7又は8に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(A)成分の熱硬化性官能基FAの数を1とした場合の(C)成分の官能基FA’の数nが、n≦200を満たす、請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(B)成分のラジカル重合性官能基FBの数を1とした場合の(C)成分の官能基FB’の数nが、n≦400を満たす、請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(A)成分の熱硬化性官能基FAの数を1とした場合の(C)成分の官能基FA’の数nと、(B)成分のラジカル重合性官能基FBの数を1とした場合の(C)成分の官能基FB’の数nとが、
0.01≦n≦200、及び、0.01≦n≦400
を満たす、請求項1~13の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
実質的に、光重合開始剤を含まない、請求項1~14の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
導体層を形成するための絶縁層用である、請求項1~15の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
【請求項19】
請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項20】
請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物であって、
当該樹脂組成物の樹脂組成物層上に厚さ35μm銅箔を積層し、当該樹脂組成物層を190℃、90分の硬化条件で硬化することで得られるサンプルに対して、130℃、85%RHの条件で100時間の加速環境試験を実施した場合において、当該サンプルについてJIS C6481に準拠して測定される、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重が0.25kgf/cm以上である、硬化物。
【請求項21】
請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項19若しくは請求項20に記載の硬化物を含む、プリント配線板。
【請求項22】
請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項19若しくは請求項20に記載の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、シート状積層材料、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術としては、内層基板上に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、一般に、樹脂組成物の硬化物により形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくともエポキシ樹脂(A)と、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)を含有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物であって、該樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の前記ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(B)の含有量が0.1~30質量%である樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、(A)ラジカル重合性化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤及び(D)粗化成分を含有することを特徴とする樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-47318号公報
【特許文献2】特開2014-34580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、低誘電正接、高機械強度、高密着性である硬化物をもたらす樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題につき鋭意検討した結果、(A)熱硬化性官能基FAを有する樹脂、(B)ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂、及び(C)熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂を所定量組み合わせて含む樹脂組成物により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1](A)熱硬化性官能基FAを有する樹脂、
(B)ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂、及び
(C)熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂、
を含む樹脂組成物であって、
(A)成分の熱硬化性官能基FAの数を1とした場合の(C)成分の官能基FA’の数nと、(B)成分のラジカル重合性官能基FBの数を1とした場合の(C)成分の官能基FB’の数nとが、
0.01≦n≦200、及び、0.01≦n≦400
を満たす樹脂組成物。
[2]熱硬化性官能基FAが、エポキシ基、フェノール性水酸基、ベンゾオキサジン基、シアネートエステル基、活性エステル基、カルボジイミド基、酸無水物基、オキセタニル基、エピスルフィド基、イソシアネート基、及びアミノ基からなる群から選択される1種以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]ラジカル重合性官能基FBが、エチレン性不飽和基である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]ラジカル重合性官能基FBが、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基、及びマレイミド基からなる群から選択される1種以上である、[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5](C)成分の官能基FA’が、エポキシ基、フェノール性水酸基、ベンゾオキサジン基、シアネートエステル基、活性エステル基、カルボジイミド基、酸無水物基、オキセタニル基、エピスルフィド基、イソシアネート基、及びアミノ基からなる群から選択される1種以上である、[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6](C)成分の官能基FB’が、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基、及びマレイミド基からなる群から選択される1種以上である、[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物。
[7]さらに(D)無機充填剤を含む、[1]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8]導体層を形成するための絶縁層用である、[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9]プリント配線板の絶縁層用である、[1]~[8]の何れかに記載の樹脂組成物。
[10][1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
[11][1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
[12][1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低誘電正接、高機械強度、高密着性である硬化物をもたらす樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、樹脂組成物中の各成分の量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対する値である。
なお、以下の説明において、「樹脂成分」とは、別途明示のない限り、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、(D)無機充填材(以下、本明細書中「(D)成分」ともいう)を除いた成分をいう。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)熱硬化性官能基FAを有する樹脂、(B)ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂、及び(C)熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂、を含む樹脂組成物であって、(A)成分の熱硬化性官能基FAの数を1とした場合の(C)成分の官能基FA’の数nと、(B)成分のラジカル重合性官能基FBの数を1とした場合の(C)成分の官能基FB’の数nとが、0.01≦n≦200、及び、0.01≦n≦400を満たすことを特徴とする。本発明の樹脂組成物を硬化して形成される硬化物は、(B)成分のラジカル重合性官能基FBと、(C)成分の官能基FB’とが反応して形成される分子構造部位を含む。この分子構造部位は極性が小さく、そのため、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の値を低減することができる。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物を硬化して形成される硬化物は、(B)成分のラジカル重合性官能基FBと、(C)成分の官能基FB’との反応により形成される分子構造部位だけでなく、(A)成分の熱硬化性官能基FAと、(C)成分の官能基FA’とが反応して形成される分子構造部位を含む。そのため、架橋密度が密となり(即ち、構造が密となり)、硬化物の機械的強度が向上し、硬化物の破壊を伴う剥離が生じ難くなるので、硬化物と被着対象(導体層等)との密着性に優れたものとなる。
【0014】
このように、本発明の樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分をそれぞれ単独で用いた場合に発現し得る効果を同時に奏する硬化物をもたらすことができる。さらには、(A)成分及び(B)成分と反応し得る反応部位を有する(C)成分を用いる本発明の樹脂組成物では、(A)成分と反応し得る熱硬化性官能基を有する化合物と、(C)成分と反応し得るラジカル重合性官能基を有する化合物とを別々に用いる場合と比較すると、(A)成分、(B)成分をはじめとする各成分の混和性を向上させることができる。そのため、硬化物における組成の均一性を向上させることができるので、上記効果をより高いレベルで得ることができる。
【0015】
低誘電正接、高機械強度、高密着性である硬化物をもたらす樹脂組成物を実現する観点から、(A)成分の熱硬化性官能基FAの数を1とした場合の(C)成分の官能基FA’の数nと、(B)成分のラジカル重合性官能基FBの数を1とした場合の(C)成分の官能基FB’の数nとが、0.01≦n≦200、及び、0.01≦n≦400を満たすことが重要である。後述するとおり、本発明者らは、n及びnが上記条件を満たすことにより、高温高湿環境下においても密着性の劣化の少ない硬化物をもたらす樹脂組成物を実現できることを見出した。ここで、nは、(A)成分の質量部(M)と熱硬化性官能基FAの当量(EqFA)、(C)成分の質量部(M)と官能基FA’の当量(EqFA’)とを用いて、式:n=(M/EqFA’)/(M/EqFA)により求めることができる。同様に、nは、(B)成分の質量部(M)とラジカル重合性官能基FBの当量(EqFB)、(C)成分の質量部(M)と官能基FB’の当量(EqFB’)とを用いて、式:n=(M/EqFB’)/(M/EqFB)により求めることができる。(A)成分として、当量値の異なる複数の樹脂を混合して用いる場合、(M/EqFA)は、各樹脂の質量部/当量の値の合計値を用いればよい。(B)成分として、当量値の異なる複数の樹脂を混合して用いる場合、(M/EqFB)は、各樹脂の質量部/当量の値の合計値を用いればよい。(C)成分に関する(M/EqFA’)及び(M/EqFB’)も同様である。なお、(A)成分の熱硬化性官能基FAの当量(EqFA)とは、1当量の熱硬化性官能基FAを含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定し得る。(B)成分のラジカル重合性官能基FBの当量(EqFB)、(C)成分の官能基FA’の当量(EqFA’)及び官能基FB’の当量(EqFB’)も同様である。
【0016】
誘電正接、機械強度、密着性に一層優れる硬化物をもたらす樹脂組成物を実現する観点、とりわけ高温高湿環境下においても密着性の劣化の少ない硬化物をもたらす樹脂組成物を実現する観点から、nは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上である。斯かるnの上限は、好ましくは180以下、より好ましくは160以下、さらに好ましくは150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、又は100以下である。
【0017】
誘電正接、機械強度、密着性に一層優れる硬化物をもたらす樹脂組成物を実現する観点、とりわけ高温高湿環境下においても密着性の劣化の少ない硬化物をもたらす樹脂組成物を実現する観点から、nは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、又は1以上である。斯かるnの上限は、好ましくは350以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは250以下、240以下、230以下、220以下、210以下、又は200以下である。
【0018】
<(A)熱硬化性官能基FAを有する樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、熱硬化性官能基FAを有する樹脂を含有する。斯かる(A)成分の熱硬化性官能基FAと(C)成分の官能基FA’とが反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、構造が密となり、機械強度が高く、密着性に優れる硬化物をもたらすことができる。
【0019】
(B)成分及び(C)成分との組み合わせにおいて、誘電正接、機械強度、密着性に優れる硬化物を実現する観点から、好適な熱硬化性官能基FAとしては、例えば、エポキシ基、フェノール性水酸基、ベンゾオキサジン基、シアネートエステル基、活性エステル基、カルボジイミド基、酸無水物基、オキセタニル基、エピスルフィド基、イソシアネート基、及びアミノ基が挙げられる。(A)成分は、1種又は2種以上の熱硬化性官能基FAを有してよい。
【0020】
(A)成分は、熱硬化性官能基FAを有し、かつ、後述する官能基FB及びFB’のようなラジカル重合性官能基を有していない樹脂を指す。
【0021】
好適な(A)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、オキセタン樹脂、エピスルフィド樹脂、イソシアネート樹脂、アミノ樹脂、及びこれらの反応生成物が挙げられる。(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
-エポキシ樹脂-
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂を指し、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を指し、ここでビフェニル構造はアルキル基、アルコキシ基、アリール基等の置換基を有していてもよい。したがって、ビキシレノール型エポキシ樹脂もビフェニル型エポキシ樹脂に含まれる。
【0023】
これらの中でも、エポキシ樹脂としては、密着性を向上させる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂及びアントラセン型エポキシ樹脂が好ましい。また、平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族骨格とは、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む概念である。芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びナフトール型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
また、エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。中でも、エポキシ樹脂は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」と称することがある。)を含むことが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固形状エポキシ樹脂とこれ以外のエポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。中でも、エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」と称することがある。)とを、組み合わせて含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物の可撓性を向上させたり、樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させたりすることができる。
【0026】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0027】
液状エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL980」、「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER806H」、「jER807」、「YL983U」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0028】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0029】
固体状エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトールナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL6121」、「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱化学社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0030】
液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:0.1~1:15、より好ましくは1:0.5~1:10、特に好ましくは1:1~1:8である。液状エポキシ樹脂の質量比が斯かる範囲にあることで、シート状積層材料の形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取扱い性が向上し、ラミネートの際の十分な流動性を得ることができる。固体状エポキシ樹脂の質量比が斯かる範囲にあることで、エポキシ樹脂の粘性を低下させ、シート状積層材料の形態で使用する場合に、真空ラミネート時の脱気性を向上させることができる。また、真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性を良好にし、硬化後の耐熱性を向上させることができる。
【0031】
-フェノール樹脂及びナフトール樹脂-
フェノール樹脂及びナフトール樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール樹脂、又はノボラック構造を有するナフトール樹脂が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール樹脂又は含窒素ナフトール樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール樹脂又はトリアジン骨格含有ナフトール樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0032】
フェノール樹脂及びナフトール樹脂の具体例としては、明和化成(株)製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC(株)製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-1356」、「TD2090」等が挙げられる。
【0033】
-ベンゾオキサジン樹脂-
ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-メチル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)等が挙げられる。ベンゾオキサジン樹脂は、そのオキサジン環が開環重合した構造を含んでもよい。ベンゾオキサジン樹脂の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P-d」、「F-a」、エア・ウォーター社製の「RLV-100」等が挙げられる。
【0034】
-シアネートエステル樹脂-
シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル樹脂の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0035】
-活性エステル樹脂-
活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0036】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンタレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0037】
活性エステル樹脂の具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「EXB9416-70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0038】
-カルボジイミド樹脂-
カルボジイミド樹脂としては、分子中に1個以上のカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する樹脂が挙げられる。カルボジイミド樹脂は、分子中にカルボジイミド基を2個以上有することが好ましい。カルボジイミド樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0039】
-酸無水物樹脂-
酸無水物樹脂としては、分子中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物樹脂としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0040】
-オキセタン樹脂-
オキセタン樹脂としては、分子中に1個以上のオキセタニル基を有する樹脂が挙げられる。オキセタン樹脂としては、例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオロオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、及びビフェニル型オキセタンが挙げられる。オキセタン樹脂の具体例としては、東亞合成社製の「OXT-101」、「OXT-121」が挙げられる。
【0041】
-エピスルフィド樹脂-
エピスルフィド樹脂としては、分子中に1個以上のエピスルフィド基を有する樹脂が挙げられる。エピスルフィド樹脂は、分子中にエピスルフィド基を2個以上有することが好ましい。エピスルフィド樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エピスルフィド樹脂、ナフタレン型エピスルフィド樹脂、ノボラック型エピスルフィド樹脂、ビフェニル型エピスルフィド樹脂が挙げられる。エピスルフィド樹脂の具体例としては、三菱化学社製の「YL7000」が挙げられる。
【0042】
-イソシアネート樹脂-
イソシアネート樹脂としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を有する樹脂が挙げられる。イソシアネート樹脂は、分子中にイソシアネート基を2個以上有することが好ましい。イソシアネート樹脂としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
-アミノ樹脂-
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、スピログアナミン樹脂、シクロヘキシルグアナミン樹脂等が挙げられる。アミノ樹脂の具体例としては、三井サイアナミッド社製のサイメルシリーズ、三和ケミカル社製のニカラックシリーズが挙げられる。
【0044】
(A)成分の熱硬化性官能基FAの当量は、硬化物の架橋密度が十分となり、機械強度、密着性に優れる硬化物をもたらす樹脂組成物を実現し得る観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、又は1000以下である。熱硬化性官能基FAの当量の下限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、50以上、80以上、100以上、又は110以上とし得る。
【0045】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~4000、さらに好ましくは400~3000である。(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定し得る。例えば、(A)成分の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0046】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、上記n及びnの条件を満たす限り特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、例えば、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上である。(A)成分の含有量の上限は、例えば、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下である。
【0047】
<(B)ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、ラジカル重合性官能基FBを有する樹脂を含む。(B)成分のラジカル重合性官能基FBと(C)成分の官能基FB’とが反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の値を低減することができる。
【0048】
ラジカル重合性官能基FBは、炭素-炭素二重結合を有するエチレン性不飽和基であることが好ましい。エチレン性不飽和基は、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、オレフィン基及びマレイミド基からなる群より選ばれる1以上の基であることが好ましい。オレフィン基の好ましい例としては、アリル基、ビニル基、プロペニル基が挙げられる。よって、好適な一実施形態において、ラジカル重合性官能基FBは、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基及びマレイミド基からなる群から選択される1種以上である。(B)成分は、1種又は2種以上のラジカル重合性官能基FBを有してよい。
【0049】
(B)成分は、ラジカル重合性官能基FBを有し、かつ、前述の官能基FA及び後述する官能基FA’のような熱硬化性官能基を有していない樹脂を指す。
【0050】
(B)成分の好適な例としては、下記式(B1)で表される化合物、下記式(B6)で表される化合物、下記式(B7)で表される化合物、下記式(B9)で表される化合物、及び、下記式(B10)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【化1】
【0052】
式(B1)において、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子を表す。式(B1)において、Aは、下記式(B2)又は下記式(B3)で表される2価の基を表す。
【0053】
【化2】
【0054】
式(B2)中、Bは、下記式(B2-1)、(B2-2)又は(B2-3)で表される2価の基を表す。
【0055】
【化3】
【0056】
式(B2-1)において、R15~R18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基を表す。
式(B2-2)において、R19~R26は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基を表す。
式(B2-3)において、R27~R34は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基を表す。また、式(B2-3)において、Eは、炭素原子数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を表す。
【0057】
【化4】
【0058】
式(B3)において、Dは、下記式(B4)で表される2価の基を表す。
【0059】
【化5】
【0060】
式(B4)において、R~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6以下のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基を表す。特に、R、R、R13及びR14は、より好ましくはメチル基を表す。式(B4)において、a及びbは、少なくとも一方が0でない、0以上100以下の整数である。式(B4)において、Bは、前記の式(B2-1)、(B2-2)又は(B2-3)で表される2価の基を表す。
【0061】
前記式(B1)で表される化合物は、好ましくは、下記式(B5)で表される化合物である。
【0062】
【化6】
【0063】
式(B5)において、R~Rは、前記式(B1)中のR~Rと同義であり、Bは、前記式(B2)中のBと同義であり、a及びbは、前記式(B4)中のa及びbと同義である。
【0064】
【化7】
【0065】
【化8】
【0066】
式(B7)において、環Fは、5員環以上の環状エーテル構造を有する2価の基を表す。
【0067】
環状エーテル構造は、1つの環のみを含む単環構造を有していてもよく、2以上の環を含む多環構造を有していてもよく、縮合環を含む縮合環構造を有していてもよい。
【0068】
1つの環状エーテル構造に含まれる酸素原子数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0069】
環状エーテル構造は、5~10員環であることが好ましく、5~8員環であることがより好ましく、5~6員環であることがさらに好ましい。5員環以上の環状エーテル構造の具体例としては、フラン構造、テトラヒドロフラン構造、ジオキソラン構造、ピラン構造、ジヒドロピラン構造、テトラヒドロピラン構造、ジオキサン構造が挙げられる。中でも、樹脂組成物の相溶性を向上させる観点から、ジオキサン構造が好ましい。ジオキサン構造には、1,2-ジオキサン構造、1,3-ジオキサン構造及び1,4-ジオキサン構造が含まれ、1,3-ジオキサン構造が好ましい。
【0070】
環状エーテル構造は、置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に限定されず、先述の置換基の何れであってもよく、例えば、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。かかる置換基の炭素原子数は先述のとおりであるが、好ましくは1~6、より好ましくは1~3である。
【0071】
5員環以上の環状エーテル構造を有する2価の基としては、例えば、フラン-2,5-ジイル基、テトラヒドロフラン-2,5-ジイル基、ジオキソラン-2,5-ジイル基、ピラン-2,5-ジイル基、ジヒドロピラン-2,5-ジイル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,2-ジオキサン-3,6-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-ジオキサン-2,5-ジイル基、5-エチル-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基が挙げられる。中でも、5-エチル-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基が好ましい。
【0072】
式(B7)において、B及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。B及びBは、2価の連結基であることが好ましい。2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基、-COO-で表される基、-CO-で表される基、-CONH-で表される基、-NHCONH-で表される基、-NHCOO-で表される基、-C(=O)-で表される基、-S-で表される基、-SO-で表される基、-NH-で表される基、及び、これらの基を複数組み合わせた基が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、B及びBは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、-COO-で表される基、及び-O-で表される基からなる群から2個以上の基を選択して組み合わせた基が好ましい。特に、B及びBは、置換基を有していてもよいアルキレン基、及び、-COO-で表される基からなる群から2個以上の基を選択して組み合わせた基がより好ましい。
【0074】
式(B7)において、C及びCは、それぞれ独立に、官能基を表す。官能基としては、例えば、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、アリル基、スチリル基、プロペニル基、エポキシ基が挙げられる。好適な一実施形態において、C及びCは、ビニル基である。
【0075】
式(B7)で表される化合物の具体例としては、下記式(B8)で表される化合物が挙げられる。
【0076】
【化9】
【0077】
【化10】
【0078】
【化11】
【0079】
式(B10)中、nは1~5を表す。
【0080】
(B)成分としては、例えば、三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」(スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ラジカル重合性官能基当量630g/eq、数平均分子量1200、前記式(B5)相当)、三菱ケミカル社製「YL7776」(ビキシレノールジアリルエーテル樹脂、ラジカル重合性官能基当量165.5g/eq、数平均分子量331、前記式(B6)相当)、新中村化学工業社製「A-DOG」(ジオキサンアクリルモノマーグリコールジアクリレート、ラジカル重合性官能基当量163g/eq、数平均分子量326、前記式(B8)相当)、日本化薬社製「KAYARAD R-604」(前記式(B8)相当)、新中村化学工業社製「A-DCP」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ラジカル重合性官能基当量152g/eq、数平均分子量304、前記式(B9)相当)、日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、ラジカル重合性官能基当量275g/eq、前記式(B10)相当)が挙げられる。また、(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(B)成分の数平均分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上であり、好ましくは10000以下、より好ましくは3000以下である。(B)成分の数平均分子量が前記の範囲にあることにより、樹脂ワニスの乾燥時の揮発を抑制したり、樹脂組成物の溶融粘度が過大となることを抑制したりできる。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値で測定できる。GPC法による数平均分子量の測定は、例えば、測定装置として島津製作所社製「LC-9A/RID-6A」を用い、カラムとして昭和電工社製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を用い、移動相としてクロロホルムを用いて、カラム温度40℃にて測定できる。
【0082】
(B)成分のラジカル重合性官能基FBの当量は、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の低い硬化物をもたらす樹脂組成物を実現し得る観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、又は1000以下である。ラジカル重合性官能基FBの当量の下限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、50以上、80以上、又は100以上とし得る。
【0083】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、上記n及びnの条件を満たす限り特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上である。(B)成分の含有量の上限は、例えば、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下である。
【0084】
<(C)熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、熱硬化性官能基FAと反応する官能基FA’及びラジカル重合性官能基FBと反応する官能基FB’を有する樹脂を含む。(C)成分を用いることにより、(A)成分及び(B)成分の両成分と反応し、硬化物を形成する。(A)成分の熱硬化性官能基FAと、(C)成分の官能基FA’とが反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、構造が密となり、硬化物の機械強度が高く、密着性に優れるものとなる。また、(B)成分のラジカル重合性官能基FBと、(C)成分の官能基FB’とが反応して形成される分子構造部位を硬化物が有することにより、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の値を低減することができる。
【0085】
従来、2つの異なる反応性を有する樹脂を併用した場合、各樹脂の混和性が悪く、硬化物は均一に形成され難いものであった。従って、上記の効果を高いレベルで同時に発現することは困難であった。一方、本発明の樹脂組成物においては、(C)成分が、2つの異なる反応性を有する樹脂とそれぞれ反応可能な部位を同一化合物中に有する。そのため、(C)成分が各樹脂を連結して硬化物を形成し、均一な硬化物を形成することができる。従って、上記の特性を高いレベルで同時に発現することができ、本願発明の所望の効果を奏することができる。さらには、(C)成分を用いると、(A)成分、(B)成分をはじめとする各成分の混和性を向上させることができる。そのため、硬化物における組成の均一性を向上させることができるので、上記の効果をより高いレベルで得ることができる。
【0086】
(C)成分の官能基FA’は、(A)成分の熱硬化性官能基FAと反応し得る限り特に限定されず、例えば、エポキシ基、フェノール性水酸基、ベンゾオキサジン基、シアネートエステル基、活性エステル基、カルボジイミド基、酸無水物基、オキセタニル基、エピスルフィド基、イソシアネート基、及びアミノ基が挙げられる。(C)成分は、1種又は2種以上の官能基FA’を有してよい。
【0087】
熱硬化性官能基FAがエポキシ基である場合、官能基FA’はエポキシ基、フェノール性水酸基、活性エステル基、アミノ基であってよい。
熱硬化性官能基FAが活性エステル基である場合、官能基FA’はエポキシ基、カルボジイミド基であってよい。
熱硬化性官能基FAがフェノール性水酸基である場合、官能基FA’はエポキシ基、フェノール性水酸基であってよい。
熱硬化性官能基FAがカルボジイミド基である場合、官能基FA’はエポキシ基、活性ステル基であってよい。
熱硬化性官能基FAと官能基FA’との組み合わせは、それらが反応し得る限り特に限定されないが、熱硬化性官能基FAと官能基FA’の少なくとも一方は、エポキシ基、エピスルフィド基、又はオキセタニル基であることが好ましく、エポキシ基であることがより好ましい。
【0088】
(C)成分の官能基FB’は、(B)成分のラジカル重合性官能基FBと反応し得る限り特に限定されないが、炭素-炭素二重結合を有するエチレン性不飽和基であることが好ましい。エチレン性不飽和基は、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、オレフィン基及びマレイミド基からなる群より選ばれる1以上の基であることが好ましい。オレフィン基の好ましい例としては、先述のとおり、アリル基、ビニル基、プロペニル基が挙げられる。よって、好適な一実施形態において、官能基FB’は、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基及びマレイミド基からなる群から選択される1種以上である。(C)成分は、1種又は2種以上の官能基FB’を有してよい。
【0089】
(C)成分の好適な例としては、下記式(C1)で表される化合物、下記式(C2)で表される化合物、下記式(C3)で表される化合物、及び、下記式(C4)で表される化合物が挙げられる。
【0090】
【化12】
式(C1)中、mは1~6の整数を表し、nは1~20の整数を表す。
【0091】
式(C1)中、mは、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは1~3の整数である。また、nは、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、特に好ましくは1~3の整数である。斯かる数値範囲であることにより、(C)成分は(B)成分と適切な割合で反応し、誘電正接の低下を実現し得る。
【0092】
(C)成分は、式(C1)で表される化合物のm、nの値が異なる化合物の混合物であってもよい。混合物である場合、(C)成分は、式(C1)で表される化合物を含む限り、式(C1)においてnが0の化合物(下記式(0-1)で表される化合物)や、nが1~20の整数であり、mが0の化合物(下記式(0-2)で表される化合物)を含むものであってもよい。
【0093】
なお、(C)成分の全体を100質量%としたとき、式(0-1)で表される化合物及び式(0-2)で表される化合物の合計の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、又は0質量%である。斯かる範囲であることで、(C)成分は(B)成分と適切な割合で反応し、誘電正接の低下を実現し得る。
【0094】
【化13】
【0095】
式(0-2)中、nは1~20の整数を表す。
【0096】
【化14】
【0097】
【化15】
【0098】
【化16】
【0099】
式(C4)中、nは0~3であり、Rc1~Rc5は、それぞれ独立に、水素原子又はアリル基を表す。ここで、式(C4)中のRc1~Rc5の少なくとも1つは、アリル基である。
【0100】
(C)成分としては、例えば、エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」(活性エステル基当量199g/eq、ビニル基当量1400g/eq、前記式(C1)相当)、日本化薬社製「RE-810NM」(エポキシ基当量221g/eq、アリル基当量221g/eq、前記式(C2)相当)、日本化薬社製「RE-820」(エポキシ基当量228g/eq、アリル基当量228g/eq、前記式(C3)相当)、明和化成社製「MEH-8000H」(フェノール性水酸基当量140g/eq、アリル基当量140g/eq、前記式(C4)相当)が挙げられる。
【0101】
(C)成分の官能基FA’の当量は、硬化物の架橋密度が十分となり、機械強度、密着性に優れる硬化物をもたらす樹脂組成物を実現し得る観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、又は1000以下である。官能基FA’の当量の下限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、50以上、80以上、又は100以上とし得る。
【0102】
(C)成分の官能基FB’の当量は、硬化物の極性が小さくなり、誘電正接の低い硬化物をもたらす樹脂組成物を実現し得る観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2000以下、又は1500以下である。官能基FB’の当量の下限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、50以上、80以上、又は100以上とし得る。
【0103】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、上記n及びnの条件を満たす限り特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、例えば、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上又は10質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、例えば、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下である。
【0104】
誘電正接、機械強度及び密着性に優れる硬化物をもたらす樹脂組成物を実現する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。該合計含有量の上限は、特に限定されないが、通常、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下とし得る。
【0105】
<(D)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、無機充填材をさらに含んでもよい。無機充填材を含むことにより、線熱膨張係数及び誘電正接が一層低い硬化物を実現し得る。
【0106】
(D)成分の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウムが挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましく、無定形シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカがより好ましく、絶縁層の表面粗さを低下させるという観点から、溶融シリカ、球状シリカがさらに好ましく、球状溶融シリカが特に好ましい。(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
通常、(D)成分は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(D)成分の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下、0.8μm以下、0.6μm以下、0.4μm以下である。該平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上である。(D)成分の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製「UFP-30」;トクヤマ社製「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」が挙げられる。
【0108】
(D)成分等の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により、測定し得る。例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で測定し、その粒径分布からメディアン径として平均粒径を測定可能である。測定サンプルは、粒子を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用可能である。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-960」等を使用可能である。
【0109】
(D)成分は、任意の表面処理剤で表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらの表面処理剤で(D)成分を表面処理することにより、(D)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。
【0110】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM-22」(ジメチルジメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE-903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM-103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)が挙げられる。また、表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0111】
表面処理剤による表面処理の程度は、(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量によって評価し得る。(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、(D)成分の分散性向上の観点から、好ましくは0.02mg/m以上、より好ましくは0.1mg/m以上、特に好ましくは0.2mg/m以上である。一方、樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、前記のカーボン量は、好ましくは1mg/m以下、より好ましくは0.8mg/m以下、特に好ましくは0.5mg/m以下である。
【0112】
(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(D)成分を溶媒(例えば、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称することがある。))により洗浄処理した後に、測定し得る。例えば、十分な量のメチルエチルケトンと、表面処理剤で表面処理された(D)成分とを混合して、25℃で5分間、超音波洗浄する。その後、上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて、(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量を測定し得る。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」を使用し得る。
【0113】
線熱膨張係数及び誘電正接の低い硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、得られる硬化物の機械強度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0114】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、難燃剤及び有機充填材からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0115】
-硬化促進剤-
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤を使用する場合、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.01~3質量%の範囲が好ましい。
【0116】
-熱可塑性樹脂-
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、インデンクマロン樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、8,000~70,000の範囲が好ましく、10,000~60,000の範囲がより好ましく、20,000~60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。例えば、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0118】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0119】
フェノキシ樹脂としては、例えば、三菱化学社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱化学社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱化学社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱化学社製の「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7891BH30」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0120】
インデンクマロン樹脂としては、例えば、日塗化学社製の「H-100」、「WS-100G」、「WS-100H」、「WS-120V」、「WS-100GC」;ノバレス・ルトガーズ社製の「C10」、「C30」、「CA80」が挙げられる。
【0121】
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量の下限は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、その上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。斯かる範囲であることにより、フィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮され、更に溶融粘度の上昇や湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度を低下させることができる。
【0122】
-難燃剤-
本発明の樹脂組成物は、難燃剤をさらに含んでもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤を使用する場合、樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.5~20質量%の範囲が好ましく、0.5質量%~15質量%の範囲がより好ましく、0.5~10質量%の範囲がさらに好ましい。
【0123】
-有機充填材-
本発明の樹脂組成物は、有機充填材をさらに含んでもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0124】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER-91(日本合成ゴム(株)製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業(株)製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0125】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm~1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm~0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR-1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。有機充填材を使用する場合、樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%~10質量%、より好ましくは2質量%~5質量%である。
【0126】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0127】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0128】
本発明の樹脂組成物は、誘電正接の低い硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述の<誘電正接及び機械特性(伸び)の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、空洞共振摂動法により周波数5.8GHz、測定温度23℃で測定することができる。高周波での発熱防止、信号遅延及び信号ノイズの低減の観点から、誘電正接は0.0058未満が好ましい。誘電正接の下限は、低いほど好ましいが、通常、0.001以上などとし得る。
【0129】
本発明の樹脂組成物は、機械強度が高い硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の破断点伸度(破断伸び)は、後述の<誘電正接及び機械特性(伸び)の測定>に記載の方法により測定することができる。破断伸びは、1.6%以上が好ましい。上限は特に限定されず、10%以下等とし得る。
【0130】
本発明の樹脂組成物は、導体層との密着性(銅箔密着性)に優れる硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の銅箔密着性は、後述の<銅箔密着性の測定>に記載の方法により測定することができる。得られる硬化物の銅箔密着性は、0.40kgf/cm以上が好ましく、0.45kgf/cm以上、又は0.50kgf/cm以上がより好ましい。銅箔密着性の上限は特に限定されないが、通常、1.2kgf/cm以下などとし得る。
本発明の樹脂組成物は、高温高湿環境下における銅箔密着性の劣化の少ない硬化物をもたらすことができる。得られる硬化物は、130℃、85%RHの条件下で100時間保持の加速環境試験後であっても、高い銅箔密着性を呈する。加速環境試験後の銅箔密着性は、0.25kgf/cm以上が好ましい。該銅箔密着性の上限は特に限定されないが、通常、1.2kgf/cm以下などとし得る。
【0131】
本発明の樹脂組成物は、低誘電正接、高機械強度、高密着性である硬化物をもたらすことができる。したがって本発明の樹脂組成物は、それと接して導体層(再配線層を含む)が形成されることとなる絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、半導体パッケージにおいて半導体部品を埋め込んだり、部品内蔵回路板において部品を埋め込んだりするための樹脂組成物(部品埋め込み用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。
【0132】
[シート状積層材料]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0133】
シート状積層材料としては、以下に示す接着フィルム、プリプレグが好ましい。
【0134】
一実施形態において、接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層(接着層)とを含んでなり、樹脂組成物層(接着層)が本発明の樹脂組成物から形成される。
【0135】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下又は50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、などとし得る。
【0136】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0137】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0138】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0139】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」などが挙げられる。
【0140】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0141】
接着フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0142】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0143】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0144】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0145】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0146】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されないが、通常、10μm以上である。
【0147】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0148】
プリプレグの厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0149】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせて含む樹脂組成物を使用する本発明においては、誘電正接が低く、機械強度が高く、導体層との密着性が良好な硬化物をもたらす、シート状積層材料を実現することができる。
【0150】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0151】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0152】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用すればよい。
【0153】
内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0154】
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0155】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0156】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0157】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0158】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0159】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0160】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)とすることができる。
【0161】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5~150分間、より好ましくは15~120分間)予備加熱してもよい。
【0162】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
【0163】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に接着フィルムを用いる場合と同様である。
【0164】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0165】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に硬化体を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0166】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。
【0167】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0168】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0169】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0170】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0171】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0172】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属(株)製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山(株)製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0173】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を組み合わせて含む本発明の樹脂組成物を使用してプリント配線板を製造する場合、誘電正接が低く、機械強度が高く、密着性に優れる絶縁層を実現することができる。
【0174】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、回路基板と、該回路基板に実装された半導体部品と、該半導体部品を封止する封止材とを含み、封止材が、本発明の樹脂組成物の硬化物から形成されていることが特徴である。ここで、本発明の半導体パッケージを構成する回路基板、半導体部品の構造・種類は特に限定されず、半導体パッケージを形成するに際して通常使用される任意の回路基板、半導体部品を使用してよい。
【0175】
本発明の半導体パッケージは、本発明の樹脂組成物により半導体を封止することにより製造することができる。半導体を封止する際の条件は特に限定されず、半導体パッケージを製造するに際して通常使用される任意の封止条件を採用してよい。
【0176】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物の硬化物を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板又は半導体パッケージを用いて製造することができる。
【0177】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0178】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0179】
まず、本明細書での物性評価における測定・評価方法について説明する。
【0180】
<銅箔密着性の測定>
(1)銅箔の下地処理
電解銅箔(三井金属鉱山(株)製「3EC-III」、厚さ35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ-8101」)に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、次いで、防錆溶液(メック社製「CL8300」)を用いて防錆処理を施した。得られた銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0181】
(2)銅箔の積層と絶縁層形成
内層回路基板として、内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を準備した。次いで、実施例および比較例で得られた接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路板と接合するように、内層回路基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。積層後、PETフィルムを剥離した。露出した樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、積層した。その後、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、CZ銅箔/絶縁層/ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板/絶縁層/CZ銅箔の構造を有するサンプルを作製した。
【0182】
-銅箔密着性(密着性1)の測定-
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具((株)TSE製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「密着性1」と称する。
【0183】
-高温高湿環境試験(HAST)後の銅箔密着性(密着性2)の測定-
作製したサンプルに対して、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の加速環境試験を実施した。その後、密着性1の測定と同様に、切込みをいれてから銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具((株)TSE製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「密着性2」と称する。
【0184】
密着性2における測定結果が0.25kgf/cm未満の場合を「NG」とし、0.25kgf/cm以上の場合を「OK」として評価した。
【0185】
<誘電正接及び機械特性(伸び)の測定>
実施例および比較例で得られた接着フィルムを、200℃にて90分間熱硬化させた後、支持体を剥離して、硬化物性評価用サンプルを作製した。
【0186】
-誘電正接の測定-
硬化物性評価用サンプルから、幅2mm、長さ80mmの試験片を切り取った。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0187】
誘電正接の平均値が0.0058未満の場合を「OK」とし、0.0058以上の場合を「NG」として評価した。
【0188】
-破断伸びの測定-
オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、23℃における破断伸びを測定した。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。測定を5回行い、上位3点の平均値を算出した。
【0189】
破断伸びの平均値が1.6%未満の場合を「NG」とし、1.6%以上の場合を「OK」として評価した。
【0190】
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ当量180g/eq)10部、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量330g/eq)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量238g/eq)10部をメチルエチルケトン(MEK)30部に撹拌しながら加熱溶解し、その後室温にまで冷却した。得られた樹脂溶液に、活性エステル樹脂(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量223g/eq、不揮発分65質量%のトルエン溶液)30部、フェノール樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、フェノール性水酸基当量151g/eq、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、アクリル基含有樹脂(新中村化学工業社製「A-DCP」、ラジカル重合性官能基当量152g/eq)20部、ビニル基含有活性エステル樹脂(エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」、活性エステル基当量199g/eq、ラジカル重合性官能基当量1400g/eqの不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)20部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発分5質量%のMEK溶液)3部、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミル D」)0.6部、アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理した球状シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス1を調製した。
【0191】
次いで、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック社製「AL-5」、厚さ38μm)の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように、樹脂ワニス1をダイコーターにて均一に塗布し、80~110℃(平均95℃)で5分間乾燥させて、接着フィルム1を作製した。
【0192】
<実施例2>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」)10部に代えて、アリル基含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE810-NM」、エポキシ基当量221g/eq、ラジカル重合性官能基当量221g/eq)10部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス2及び接着フィルム2を作製した。
【0193】
<実施例3>
ビニル基含有活性エステル樹脂(エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」)を配合しなかった点、活性エステル樹脂(DIC社製「HPC-8000-65T」)の配合量を30部から50部に変更した点以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス3及び接着フィルム3を作製した。
【0194】
<実施例4>
フェノール樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、フェノール性水酸基当量151g/eq、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、スチリル基含有樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、ラジカル重合性官能基当量630g/eq、不揮発分60%のトルエン溶液)10部、ビニル基含有活性エステル樹脂(エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」、活性エステル基当量199g/eq、ラジカル重合性基当量1400g/eq、不揮発分65%のメチルアミルケトン溶液)50部、アリル基含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE810-NM」、エポキシ基当量221g/eq、ラジカル重合性官能基当量221g/eq)25部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部、硬化促進剤(DMAP、不揮発分5質量%のMEK溶液)3部、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミル D」)0.6部、アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理した球状シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス4を調製した。
得られた樹脂ワニス4を用いて、実施例1と同様にして接着フィルム4を作製した。
【0195】
<実施例5>
(1)フェノール樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」)の配合量を5部から1部に変更した点、(2)スチリル基含有樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」)の配合量を10部から1部に変更した点、(3)ビニル基含有活性エステル樹脂(エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」)の配合量を50部から55部に変更した点、(4)アリル基含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE810-NM」)の配合量を25部から30部に変更した点以外は、実施例4と同様にして樹脂ワニス5及び接着フィルム5を作製した。
【0196】
<実施例6>
アクリル基含有樹脂(新中村化学工業社製「A-DCP」)20部に代えて、スチリル基含有樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」)10部を使用した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス6及び接着フィルム6を作製した。
【0197】
<実施例7>
フェノール樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」)5部に代えて、カルボジイミド樹脂(日清紡ケミカル社製「V-03」、カルボジイミド基当量216g/eq、不揮発分50質量%のトルエン溶液)20部を使用した以外は、実施例6と同様にして樹脂ワニス7及び接着フィルム7を作製した。
【0198】
<実施例8>
スチリル基含有樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」)10部に代えて、ビスマレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、ラジカル重合性基当量275g/eq、不揮発分70質量%のトルエン、MEK溶液)10部を使用した以外は、実施例6と同様にして樹脂ワニス8及び接着フィルム8を作製した。
【0199】
<実施例9>
アリル基含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE810-NM」)10部に代えて、アリル基含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE820」、エポキシ基当量228g/eq、ラジカル重合性基当量228g/eq)10部を使用した以外は、実施例3と同様にして樹脂ワニス9及び接着フィルム9を作製した。
【0200】
<実施例10>
アリル基含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE810-NM」)10部に代えて、アリル基含有フェノール樹脂(明和化成社製「MEH-8000H」、フェノール性水酸基当量140g/eq、ラジカル重合性官能基当量140g/eq)10部を使用した以外は、実施例3と同様にして樹脂ワニス10及び接着フィルム10を作製した。
【0201】
<比較例1~8>
下記表に記載の配合量に従い、比較例1~8の樹脂ワニス11~18を調製した。そして実施例1と同様にして接着フィルム11~18を作製した。
【0202】
実施例及び比較例の各評価結果を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
球状シリカ「SO-C2」を配合しない場合、硬化促進剤(ジメチルアミノピリジン(DMAP)及び「パークミル D」)を配合しない場合に関しても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。