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特開2022-31354モノマーの重合を制御及び抑制する組成物並びにその使用及び調製の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031354
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】モノマーの重合を制御及び抑制する組成物並びにその使用及び調製の方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/40 20060101AFI20220210BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20220210BHJP
   C07C 7/09 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C08F2/40
C07C11/04
C07C7/09
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202952
(22)【出願日】2021-12-15
(62)【分割の表示】P 2019552506の分割
【原出願日】2018-03-28
(31)【優先権主張番号】201721012339
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】509270317
【氏名又は名称】ドルフ ケタール ケミカルズ (インディア)プライヴェート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニヤム,マヘッシ
(57)【要約】
【課題】
本発明は、モノマーの重合を制御及び抑制する組成物並びにその使用及び調製の方法を得ることにある。
【解決手段】
本発明は、(a)カテコール化合物を含むフェノール化合物と、(b1)脂肪族第三級アミン、(b2)前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体又は(b2)それらの混合物と、の組み合わせを含む、モノマーの重合を制御及び抑制する付加組成物に関し、ここで、前記脂肪族第三級アミンはアルキル鎖に1又はそれ以上のヒドロキシル基を含む。
一の実施形態では、本発明はまた、本発明の付加組成物を用いる、モノマーの重合を制御及び抑制する方法に関する。他の実施形態では、本発明はまた、モノマーの重合を制御及び抑制する本発明の付加組成物を使用する方法に関する。他の実施形態では、本発明はまた、一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制する方法、一次分留器を作動させる方法、一次分留器における付着及びポリマーの堆積を低減する方法、かつ一次分留器又はエチレンプラントのランレングスを延長する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーの重合を制御及び抑制する付加組成物であって、前記組成物が以下の、
(a) カテコール化合物を含むフェノール化合物、
(b) 脂肪族第三級アミン、前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体、又はそれらの混合物、
の組み合わせを含む、付加組成物。
【請求項2】
前記脂肪族第三級アミンがアルキル鎖に1又はそれ以上のヒドロキシル基を含む、請求項1に記載の付加組成物。
【請求項3】
前記脂肪族第三級アミンがアルキル鎖に3又はそれ以上のヒドロキシル基を含む、請求項1に記載の付加組成物。
【請求項4】
前記脂肪族第三級アミンがトリ-イソプロパノールアミン(TIPA)を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の付加組成物。
【請求項5】
前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体が以下の、
(i) トリ-イソプロパノールアミンのエチル酸化処理された誘導体(EO-TIPA)、
(ii) トリ-イソプロパノールアミンのプロピル酸化処理された誘導体(PO-TIPA)、又は
(iii) それらの混合物、
を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の付加組成物。
【請求項6】
前記フェノール化合物がカテコール化合物を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の付加組成物。
【請求項7】
前記カテコール化合物が第三ブチルカテコール(TBC)を含む、請求項6に記載の付加組成物。
【請求項8】
前記第三ブチルカテコール(TBC)が、4-tert-ブチルカテコール;3,5-ジ-tert-ブチルカテコール、及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項7に記載の付加組成物。
【請求項9】
モノマーの重合を制御及び抑制する方法であって、前記方法が、請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物でモノマーストリームを処理する工程を含む、方法。
【請求項10】
モノマーの重合を制御及び抑制するために請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物を使用する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物を使用する工程を含む、方法。
【請求項11】
一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制する方法であって、前記方法が、請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物でモノマーストリームを処理する工程を含む、方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物を使用することを含む、一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制して一次分留器を作動させる方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物でモノマーストリームを処理する工程を含む、一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制して、一次分留器における付着及びポリマーの堆積物を低減させる方法。
【請求項14】
一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制して、一次分留器(又はエチレンプラント)における付着及びポリマーの堆積物を低減することで、一次分留器又はエチレンプラントのランレングスを延長する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の付加組成物でモノマーストリームを処理する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーの重合を制御及び抑制する付加組成物並びにその使用及び調製の方法に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、モノマーの重合を制御及び抑制する付加組成物並びにその使用及び調製方法に関し、ここで当該モノマーはスチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含んでよい。
【0003】
より具体的には、本発明は、モノマーの重合の制御及び抑制のための(a)フェノール化合物、及び(b)1又はそれ以上の脂肪族第三級アミン及び/又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体を含み、当該モノマーがスチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び、他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含みうる付加組成物、並びにその使用方法及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0004】
スチレンインデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含む(又は包含する)モノマーの加工中の重合は憂慮すべき問題であるが、それは当該重合により望ましくないポリマーが形成されると、付着が問題となり、かつ、最終生成物の収率が低下することにより当該方法の効率が損なわれるためである。
【0005】
さらに、本発明者は、モノマーの重合生成物は、例えばエチレンプラントにおいてクエンチタワーともいう一次分留器のトレイ表面上部及びトレイ表面下部に極めて急速に堆積され、当該作業では、1又はそれ以上の防汚剤等の添加剤が別途必要となることを見出した。
【0006】
本発明者は、さらに、この付着の問題のために、「分留効率」が低下すると「カラム圧力降下」が亢進することを見出した。
【0007】
従来技術では、スチレンを含むモノマーの重合の問題を克服するために、阻害剤及び遅延剤並びにそれらの組み合わせを用いることが報告されている。
【0008】
阻害剤が反応に消費されて枯渇すると重合が再開するため、当該阻害剤を単独使用する場合には、当該阻害剤を連続で又は一定間隔で添加しなければならないという問題がある。
【0009】
遅延剤を用いる場合の問題としては、スチレンを含むモノマーの重合を、実質的に抑制できるレベル又は商業的に実行可能に抑制できるレベルにまで低減するのにさほど効果がないという点である。
【0010】
先行技術は、スチレンを含むモノマーの重合を制御及び抑制する組成物を開示し、当該組成物は、カテコール化合物等のフェノール化合物、例えば第三ブチルカテコール(TBC)からなるか、又は、a)フェノール化合物と、b1)キノンメチド(QM)、特に7-アリール-キノンメチド、若しくはb2)キノンメチド(QM)誘導体、若しくはb3)フェニレンジアミン、若しくはb4)ヒドロキシルアミン化合物、若しくはb5)それらの混合物、の組み合わせを含むが、当該組成物はより高用量で用いる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含みうるモノマーの重合を実質的に制御及び抑制するのに適し、かつ、比較的低用量、又は少なくともフェノール化合物の用量が比較的低用量でも、重合抑制効率が同一か又はより優れる付加化合物のニーズが依然としてある。
【0012】
すなわち、(i)モノマーの重合生成物の形成を防ぐことができ、従って、(ii)モノマーの重合生成物の一次分留器若しくはクエンチタワーにおける堆積を防ぐことができ、それにより(iii)付着を防ぐことでエチレンプラントの効率を高め、及び/又は、(iv)一次分留器又はエチレンプラントのランレングスを延長する、付加組成物のニーズもまたある。
【0013】
従って、(v)付着の問題を防ぐことができ、そのため、(vi)「カラム圧力降下」の亢進を防ぐことができ、かつ、(vii)「分留効率」の低下を防ぐことができる、付加組成物のニーズもまたある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は上記の既存の産業問題の解決策を提供することを目的とするが、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含みうるモノマーの重合を制御及び抑制するのに適し、かつ、比較的低用量、又は少なくともフェノール化合物の用量が比較的低用量でも、重合抑制効率が同一か又はより優れることが見出される付加組成物によりもたらされる。
【0015】
すなわち、本発明はまた、上記の一次分留器の既存の産業問題の解決策を提供することを目的とするが、それは、(i)モノマーの重合生成物の形成を防ぎ、従って、(ii)一次分留器又はクエンチタワーにおけるモノマーの重合生成物の堆積を防ぎ、それにより(iii)付着を防いでエチレンプラントの効率を高める、及び/又は(iv)一次分留器又はエチレンプラントのランレングスを延長する、付加組成物によりもたらされる。
【0016】
従って、本発明はまた、上記の一次分留器の既存の産業問題の解決策を提供すること、すなわち、(v)付着の問題を防ぐことで、(vi)「カラム圧力降下」の亢進を防ぎ、(vii)「分留効率」の低下を防ぐ、付加組成物を提供することを目的とする。
【0017】
発明の目的
従って、本発明の主な目的は、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含みうるモノマーの重合を制御及び抑制するのに適し、かつ、従来技術の添加剤又はその個々の成分の用量と比較して比較的低用量でも重合抑制効率が同一か又はより優れる付加組成物を提供することである。
【0018】
すなわち、本発明の他の目的は、(i)モノマーの重合生成物の形成を防ぎ、従って(ii)一次分留器又はクエンチタワーにおけるモノマーの重合生成物の堆積を防ぎ、それにより、(iii)汚れを防ぐことでエチレンプラントの効率を高める、及び/又は(iv)一次分留器又はエチレンプラントのランレングスを延長するのに適した付加組成物を提供することである。
【0019】
すなわち、本発明の他の目的は、(v)付着問題を克服し、従って(vi)「カラム圧力降下」の亢進を防ぎ、(vii)「分留効率」の低下を防ぐのに適した付加組成物を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明及び本発明の範囲を制限することを意図しない実施例からより明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載されているように、エチレン等のより低級炭化水素生成物の製造中に、ナフサ、コンデンセート又はディーゼル油等の高級炭化水素が、より高温、一般には約850℃で、熱分解ヒーターにおいてクラッキング(分解)されると、エチレン、プロピレン及びブタジエンを含むが、これらに限定されない、低分子の混合物が形成されることが知られている。当該混合物は、一般に分解ガスといい、エチレンプラントの分留部で分離されるまでは、エチレンプラントの様々な段階で冷却及び圧縮される。
【0022】
一次熱回収では、分解されたガスは、一連の熱交換器、又はいわゆる移送ライン交換器を通過し、冷却された後に油、好ましくは重油で急冷される。一般にクエンチオイル、熱分解重油又はボトムスクエンチオイルとして知られる重油は、一次分留器の底部に蓄積する。一次分留器には、カラム底部から精留部といわれるカラムの最初の部分まで、燃料油種の様々な成分が含まれる。
【0023】
カラムの精留部は、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、インデン誘導体、及び他の高級環化合物/モノマー又はその誘導体、並びにそれらのポリマー等の様々なモノマーの存在により生じる付着の問題が重篤でありがちである。
【0024】
前記モノマーの重合生成物は、トレイ表面上部及びトレイ表面下部にも極めて急速に堆積する。この付着の問題により、「カラム圧力降下」が亢進し、「分留効率」が低下する。
【0025】
すなわち、クエンチタワーで凝縮するガソリンの品質や、当該システムから生成された燃料油の品質が悪影響を受ける。
【0026】
典型的には、精留部の付着の問題はまた、一次分留器の操作が不適切となるため、クエンチタワーの底部の粘度制御が十分に行われないという問題を伴う。
【0027】
さらに、一般にポリマーとして知られる付着物質の堆積により、分留器内の蒸気及び液体の流動が妨げられ、利用可能な表面積が減少することから、当該雰囲気はまた、カラム内でのきめこまかい泡(froth)/泡の発生が高まる。
【0028】
付着が発生し続けると、ポリマーの堆積物もカラムトレイ内で発生し続け、その結果、プラントオペレータが単位供給速度を著しく低下させなければならず、最終的には、プラントを停止させて、一次分留器を洗浄及び/又はメンテナンスしなければならない。
【0029】
上記先行技術の問題を克服し、本発明の上記目的を達成するために、本発明者は、(a)カテコール化合物を含むフェノール化合物を、(b1)脂肪族第三級アミン及び/又は(b2)その誘導体、好ましくは、アルキル鎖に1又はそれ以上のヒドロキシル基がある脂肪族第三級アミンと組み合わせると、カテコール化合物を含むフェノール化合物の重合阻止効率が極めて高まることを見出した。
【0030】
先行技術には、モノマーが、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含み、上記の既存の産業問題、特に、一次分留器における堆積物の形成及び付着の問題を克服できる、モノマーの重合を制御及び抑制する組成物は開示されておらず、ここで前記組成物とは、以下の、
(a) カテコール化合物を含むフェノール化合物と、
(b1) 脂肪族第三級アミン及び/又は(b2)酸化処理されたその誘導体、好ましくは、前記脂肪族第三級アミンのアルキル鎖に1又はそれ以上のヒドロキシル基がある脂肪族第三級アミンと、
の組み合わせを含み、前記カテコール化合物を含むフェノール化合物の重合抑制効率の向上、及び/又は前記モノマーの重合を制御及び抑制する前記カテコール化合物を含むフェノール化合物の量の低減を目的とする組成物である。
【0031】
すなわち、本発明は、モノマーのポリマー形成を低減するのに適すること、すなわち、一次分留器又はエチレンプラントの付着の防止にも適し、それにより、一次分留器又はエチレンプラントのランレングスの延長にも適すること、が見いだされた組成物を提供する。
【0032】
すなわち、一の態様では、本発明は、モノマーの重合の制御及び抑制のための付加組成物を提供し、ここで、前記組成物は、以下の、
(a) カテコール化合物を含むフェノール化合物と、
(b) 脂肪族第三級アミン、前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体、又はそれらの混合物と、
の組み合わせを含む。
【0033】
すなわち、好ましい一の態様では、本発明は、モノマーの重合の制御及び抑制のための付加組成物を提供し、ここで、前記組成物は、以下の、
(a) カテコール化合物を含むフェノール化合物と、
(b) 脂肪族第三級アミン、前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体、又はそれらの混合物と、
の組み合わせを含み、前記脂肪族第三級アミンはアルキル鎖に1又はそれ以上のヒドロキシル基を含む(又は有する)。
【0034】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記脂肪族第三級アミンはアルキル鎖に3又はそれ以上のヒドロキシル基を含む。
【0035】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記脂肪族第三級アミンはトリ-イソプロパノールアミンを(TIPA)含む。
【0036】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は以下の、
(i) トリ-イソプロパノールアミンのエチル酸化処理された誘導体(EO-TIPA)、
(ii) トリ-イソプロパノールアミンのプロピル酸化処理された誘導体(PO-TIPA)、又は
(iii) それらの混合物、
を含む。
【0037】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記フェノール化合物はカテコール化合物を含む。
【0038】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記カテコール化合物は、第三ブチルカテコール(TBC)を含む。
【0039】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記第三ブチルカテコール(TBC)は、4-tert-ブチルカテコール;3,5-ジ-tert-ブチルカテコール、又はそれらの混合物を含む群から選択されてよい。
【0040】
本発明は、本組成物におけるTBC(先行技術の添加剤)の量を低減させることを目的とすることが、本記載から理解されることに留意されてよい。したがって、TBCは本組成物の一次成分であり、TIPA、EO-TIPA又はPO-TIPAは本組成物の添加成分であり、ここで当該添加成分とは、一次成分に添加されるか、又は、TBCを含む、若しくはTBCからなる組成物に添加される添加成分である。従って、一般に、本発明の主要成分とは重量パーセントの大部分として存在し、本発明の添加成分とは、重量パーセントの微量部分として存在する。しかしながら、当業者であれば、逆順でも本組成物を用いうる。
【0041】
本発明では、スチレンを含む、又は包含するモノマーを、スチレンを包含する、又はスチレンを含むことを意図するモノマー又はモノマーストリームというが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の一の実施形態では、前記フェノール化合物及び前記脂肪族第三級アミン又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は、およそ99.99:0.01からおよそ0.01:99.99まで変化する重量パーセント比で含まれてよい。
【0043】
本発明の好ましい一の実施態様では、前記フェノール化合物及び前記脂肪族第三級アミン又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は、およそ90:10からおよそ10:90まで変化する重量パーセント比で含まれてよい。
【0044】
本発明の他の実施形態では、前記フェノール化合物及び前記脂肪族第三級アミン又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は、およそ80:20~およそ20:80の範囲の重量パーセント比で含まれてよい。
【0045】
本発明のさらに他の実施形態では、前記フェノール化合物及び前記脂肪族第三級アミン又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は、およそ70:30~およそ30:70の範囲の重量パーセント比で含まれてよい。
【0046】
本発明のさらに他の実施形態では、前記フェノール化合物及び前記脂肪族第三級アミン又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は、およそ60:40~およそ40:60の範囲の重量パーセント比で含まれてよい。
【0047】
本発明のさらに他の実施形態では、前記フェノール化合物及び前記脂肪族第三級アミン又は前記脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体は、およそ50:50の重量パーセント比で含まれてよい。
【0048】
本発明の一の実施形態では、モノマーの重合における反応物質の重量に基づいて、本組成物のおよそ0.01~およそ5000ppmが用いられてよい。
【0049】
本発明の他の実施形態では、モノマーの重合における反応物質の重量に基づいて、本組成物のおよそ0.20~およそ5000ppmが用いられてよい。
【0050】
本発明のさらに他の実施形態では、モノマーの重合における反応物質の重量に基づいて、本組成物のおよそ0.50~およそ5000ppmが用いられてよい。
【0051】
本発明のさらに他の実施形態では、モノマーの重合における反応物質の重量に基づいて、本組成物のおよそ1.0~およそ5000ppmが用いられてよい。
【0052】
本発明のさらに他の実施形態では、モノマーの重合における反応物質の重量に基づいて、本組成物のおよそ5.0~およそ5000ppmが用いられてよい。
【0053】
本発明のさらに他の実施形態では、モノマーの重合における反応物質の重量に基づいて、本組成物のおよそ10.0~およそ5000ppmが用いられてよい。
【0054】
本発明の一の実施形態では、本発明の付加組成物は、およそ60℃~およそ180℃の温度範囲で、又は好ましくはおよそ80℃~およそ150℃の温度範囲で用いられ、又は使用されてよい。
【0055】
一の実施形態では、本発明はモノマーの重合を制御及び抑制する方法に関し、前記方法は、モノマーストリームを本発明の付加組成物で処理する工程を含む。
【0056】
他の実施形態では、本発明はモノマーの重合を制御及び抑制するために本発明の付加組成物を使用する方法にも関し、前記方法は、モノマーストリームにおいて本発明の付加組成物を用いる工程を含む。
【0057】
前記組成物は、いかなる組成物のモノマーの重合を制御及び抑制するためにも用いられうることに留意されたい。
【0058】
一の例示的実施形態では、前記組成物は、モノマーの重合の制御及び抑制に用いられ、前記モノマーは、スチレン、インデン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、及び他の高級環化合物若しくはモノマー、又はその誘導体を含みうる。
【0059】
他の例示的実施形態では、前記組成物は、一次分留器又はエチレンプラントにおけるモノマーの重合の制御及び抑制に用いられる。
【0060】
すなわち、さらに他の実施態様では、本発明はまた、一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制する方法に関し、前記方法は、モノマーストリームを本発明の付加組成物で処理する工程を含む。
【0061】
すなわち、他の実施形態では、本発明はまた一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制して一次分留器を作動させる方法にも関し、前記方法は、モノマーストリームにおいて本発明の付加組成物を用いる工程を含む。
【0062】
従って、さらに他の実施形態では、本発明はまた、一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制して、一次分留器における付着及びポリマーの堆積を低減する方法に関し、前記方法は、モノマーストリームを本発明の付加組成物で処理する工程を含む。
【0063】
従って、さらに他の実施形態では、本発明はまた、一次分留器(又はエチレンプラント)におけるモノマーの重合を制御及び抑制して、一次分留器における付着及びポリマーの堆積を低減することで、一次分留器又はエチレンプラントのランレングスを延長する方法に関し、ここで前記方法は、モノマーストリームを本発明の付加組成物で処理する工程を含む。
【0064】
「パーセント比」とは、特に別段の定めがない限り、「重量パーセント比」又は「重量パーセント比」を意味することにも留意されたい。
【0065】
用語「およそ」は、本発明の分野における実験的に許容される誤差を含むことが意図されることにも留意されたい。
【0066】
本発明は、その範囲に限定されることを意図しない添付の実施例を援用してさらに例示される。
【実施例0067】
例-I:
熱分解ガソリン試料を窒素ガスパージ用のチューブ内で採取し、当該試料をおよそ90℃、およそ120℃及びおよそ150℃の温度でおよそ2時間処理した。そして形成したポリマーをメタノール沈殿で分離して、ブランク(添加剤を含まず)、比較試料(TBCからなる添加剤を100ppm含む)及び本発明の試料(40:10重量パーセントのTBCとTIPAを含む添加剤を100ppm含む)の重合パーセントを測定して、表-Iに示した。
【0068】
本発明及び本明細書の記載のように、TIPA、EO-TIPA及びPO-TIPAは、本組成物の添加成分であり、つまり、当該添加成分は、TBCを含む、又はTBCからなる組成物に添加されることに留意されたい。その結果、本実施例のように、10重量%のTIPAが40重量%TBCと混合された場合に、当該実施例の本発明の組成物が見いだされる。
【0069】
【表1】
【実施例0070】
今回は窒素ガスをパージせずに熱分解ガソリン試料をチューブに採取し、当該試料を120℃及び150℃の温度で2時間処理した。形成されたポリマーをメタノール沈殿で分離して、ブランク(添加剤を含まず)、比較試料(TBCからなる添加剤を100ppm含む)及び本発明の試料(40:10重量パーセントのTBCとTIPAを含む添加剤を100ppm含む)の重量パーセントを測定して、表-IIに示した。
【0071】
【表2】
上記実験から、フェノール化合物のモノマーの重合の制御及び抑制に対する効率は、脂肪族第三級アミン及び/又は当該脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体と組み合わせることにより向上するという、本発明の組成物の驚くべき、予想外の相乗効果が確認される。
上記知見からはまた、モノマーの重合を制御及び抑制するフェノール化合物の効率が、脂肪族第三級アミン、及び/又は当該脂肪族第三級アミンの酸化処理された誘導体と組み合わせることで向上していることから、本発明の組成物が従来技術の添加剤及び組成物よりも技術的に有利であり、驚くべき効果があることが確認される。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次分留器における付着や堆積物の形成を制御及び抑制して、熱分解ガソリンの重合を制御及び抑制する付加組成物であって、以下の、
(a) カテコール化合物を含むフェノール化合物、及び
(b) 以下の、
(i)トリ-イソプロパノールアミンのエチル酸化処理された誘導体(EO-TIPA)、
(ii)トリ-イソプロパノールアミンのプロピル酸化処理された誘導体(PO-TIPA)、又は
(iii)それらの混合物、
の組み合わせからなる、脂肪族第三級アミンの酸化物処理誘導体、
を含む、付加組成物。
【請求項2】
カテコール化合物は、第三ブチルカテコール(TBC)を含む、請求項1に記載の付加組成物。
【請求項3】
第三ブチルカテコール(TBC)は、4-tert-ブチルカテコール;3,5-ジ-tert-ブチルカテコール;またはそれらの混合物を含む、請求項2に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
熱分解ガソリンの重合を制御及び抑制する方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加組成物で熱分解ガソリンを処理する工程を含む、方法。
【請求項5】
熱分解ガソリンの重合を制御および抑制するために、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加組成物を使用する方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加組成物を熱分解ガソリンで処理する工程を含む方法。
【請求項6】
一次分留器における熱分解ガソリンの重合を制御および抑制することによる、一次分留器の運転方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加組成物を一次分留器において熱分解ガソリンとともに処理する工程を含む、方法。
【請求項7】
一次分留器における熱分解ガソリンの重合を制御および抑制することにより、前記一次分留器におけるファウリングおよびポリマー堆積物を低減する方法であって、前記方法は、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加組成物で熱分解ガソリンを処理する工程を含む、方法。
【請求項8】
一次分留器又はエチレンプラントにおける熱分解ガソリンの重合を制御及び抑制して、前記一次分留器又は前記エチレンプラントにおけるファウリングおよびポリマー堆積物を低減することにより、前記一次分留器又は前記エチレンプラントの稼働時間を延長する方法であって、前記方法は、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加組成物で熱分解ガソリンを処理する工程を含む、方法。
【外国語明細書】