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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031396
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】靴紐及び靴
(51)【国際特許分類】
   A43C 11/00 20060101AFI20220210BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A43C11/00
A43B23/02 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209142
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2017157607の分割
【原出願日】2017-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】399010545
【氏名又は名称】山三商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】巻渕 文彰
(57)【要約】
【課題】従来の結ばなくても靴の締め付けを保持できる靴紐よりも、紐通し作業や締め付け調整作業がより一層容易な靴紐を提供することを目的とする。
【解決手段】紐長手方向両側に設けられたこぶ領域部5と、このこぶ領域部5間に設けられた太さ一定領域部6とからなり、こぶ領域部5は、靴1の紐通し孔3の孔径よりも大径な略球状体に形成され、紐長手方向への引っ張り操作により伸長弾性変形して紐通し孔3の孔径よりも小径形状に変形する複数のこぶ状部4からなる構成であり、また、太さ一定領域部6は、靴1の紐通し孔3の孔径よりも小径な一定の太さに形成され、靴1の紐通し孔3に挿通し足甲部2に配設した場合、引っ張り操作により伸長弾性変形し、弾性復帰力により靴1の足甲部2を緊締するように構成されている靴紐。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐長手方向両側に、靴の足甲部の左右に設けられた紐通し孔の孔径よりも大径な略球状体に形成され、且つ、伸縮自在に弾性変形し、紐長手方向への引っ張り操作により伸長弾性変形して前記紐通し孔の孔径よりも小径形状に変形する複数のこぶ状部と、前記こぶ状部同士を連結するこぶ連結部とが交互に連設されてなるこぶ領域部を有し、前記紐通し孔に挿通され前記足甲部に配設された状態で最後の紐通し孔を通過し引き出された前記こぶ領域部を前記引っ張り操作することで、前記紐通し孔の内側に係止するこぶ状部が伸長弾性変形して前記紐通し孔よりも小径形状になって該紐通し孔を通過移動して締め上げることができ、この締め上げ状態において前記引っ張り操作を解除することで、前記紐通し孔を通過した前記こぶ状部が、前記小径形状からもとの前記紐通し孔の孔径よりも大径な略球状体に戻り変形し、前記紐通し孔に対して戻り通過移動不能な状態となることにより、前記最後の紐通し孔から引き出された前記各こぶ領域部同士を結ばなくても締め上げた状態が弛まないように構成される靴紐であって、前記紐長手方向両側に設けられた前記各こぶ領域部の間の略全域に亘って、前記紐通し孔の孔径よりも小径な一定の太さに形成され、且つ、伸縮自在に弾性変形する太さ一定領域部が設けられ、この太さ一定領域部は、弾性伸縮性を有する管状部材と、この管状部材よりも長尺で該管状部材内に弛み状態で挿通配設される紐状部材とから成り、前記靴の前記紐通し孔に挿通し前記足甲部に配設した場合、前記引っ張り操作により前記管状部材が伸長弾性変形し、この伸長弾性変形に伴って弾性復帰力が生じ、この弾性復帰力により前記靴の足甲部を緊締するように構成され、且つ、前記長手方向への引っ張り作用が増大し前記管状部材の伸張弾性変形量が大きくなるに連れ、前記紐状部材の弛みが減少し、この紐状部材の弛みがなくなり該紐状部材が緊張状態となることで、それ以上の伸長弾性変形が進まないように構成されていることを特徴とする靴紐。
【請求項2】
請求項1記載の靴紐において、前記太さ一定領域部は、靴紐装着状態において、前記靴の足甲部全体の1/2以上に亘って通し配設される長さに設定されていることを特徴とする靴紐。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の靴紐を具備することを特徴とする靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結ばなくても靴の足甲部の緊締状態を保持することができる靴紐及びこの靴紐を具備する靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の靴紐として、例えば特許文献1に開示されるようなもの(以下、従来例という)がある。
【0003】
この従来例は、間隔をあけて繰返し配置され、自身に加えられる軸方向張力の大小によって径の大きさが変化するこぶを有する伸縮性素材からなるチューブ状ひも本体と、ひも本体のチューブ構造によって構成される中心の管部分に非伸縮性素材からなり、こぶのコアを構成し、こぶの径変化に応じたこぶ両端距離の変化に追随するようにこぶ対応部分にて丸められた中心ひもとで構成されており、軸方向張力を加えてこぶの径が小さくなるよう収縮させ、この状態でひもをひも孔に通し、ひも孔への通しが終えたらひもに加えた軸方向張力を弱めてこぶの径が大きくなるように膨張させ、このこぶが膨張することでひも孔にひっかかり、ひもを結ぶ作業を経ることなく固定効果(ひもを結んだ際の締め上げ保持効果)が得られることを可能としたものである。
【0004】
よって、例えば、この従来例を靴紐として用いた場合、各ひも孔にこぶが係止して走るなどの運動をしても締め付け力が緩まず、靴が足にしっかりとフィットした状態が保持される効果が発揮される。
【0005】
しかしながら、この従来例を靴紐として用いた場合、紐全体に形成される多数のこぶを足甲部に設けられた多数のひも孔に対してほぼ全て通過させなければならず、紐通し作業が非常に厄介なものとなってしまう。
【0006】
また、締め付け状態を調整する際も、同様に一々全てのこぶを移動させなければならず、簡単に締め付け具合を調整することができない不便さがあった。
【0007】
このような背景のもと、本出願人は、この従来例で生じる上記問題を解決すべく、この結ぶことをしなくても靴の足甲部の締め付け状態を保持することができる靴紐において、紐通し作業や締め付け具合調整作業を容易に行うことができる靴紐を提案している(特許文献2)。
【0008】
この本出願人が提案する靴紐は、紐通し孔よりも大径な大径こぶ部が設けられる領域を、紐長手方向の端部側、具体的には、通常の最後の紐通し孔から引き出され遊離状態となる紐両側の紐先端側部の所定範囲だけにし、これ以外の領域、すなわち、紐両側に設けられた大径こぶ部が複数並設される大径こぶ領域部で挟まれる紐中間部分は、紐通し孔の孔径よりも小径で弾性変形自在に構成される小径こぶ部が間隔をおいて複数並設される構成として、引っ張り操作により伸長小径化変形させて紐通し孔を通過させる大径こぶ部の数を少なくして、紐通し作業や締め付け具合調整作業が容易になるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5079926号公報
【特許文献2】特願2016-240250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、本出願人が先に提案した靴紐(特願2016-240250号)に係る発明をさらに改良したものであり、より紐通し作業や締め付け具合調整作業を容易にすると共に、より優れた足甲部緊締作用を発揮する靴紐を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
紐長手方向両側に、靴1の足甲部2の左右に設けられた紐通し孔3の孔径よりも大径な略球状体に形成され、且つ、伸縮自在に弾性変形し、紐長手方向への引っ張り操作により伸長弾性変形して前記紐通し孔3の孔径よりも小径形状に変形する複数のこぶ状部4と、前記こぶ状部4同士を連結するこぶ連結部10とが交互に連設されてなるこぶ領域部5を有し、前記紐通し孔3に挿通され前記足甲部2に配設された状態で最後の紐通し孔3を通過し引き出された前記こぶ領域部5を前記引っ張り操作することで、前記紐通し孔3の内側に係止するこぶ状部4が伸長弾性変形して前記紐通し孔3よりも小径形状になって該紐通し孔3を通過移動して締め上げることができ、この締め上げ状態において前記引っ張り操作を解除することで、前記紐通し孔3を通過した前記こぶ状部4が、前記小径形状からもとの前記紐通し孔3の孔径よりも大径な略球状体に戻り変形し、前記紐通し孔3に対して戻り通過移動不能な状態となることにより、前記最後の紐通し孔3から引き出された前記各こぶ領域部5同士を結ばなくても締め上げた状態が弛まないように構成される靴紐であって、前記紐長手方向両側に設けられた前記各こぶ領域部5の間の略全域に亘って、前記紐通し孔3の孔径よりも小径な一定の太さに形成され、且つ、伸縮自在に弾性変形する太さ一定領域部6が設けられ、この太さ一定領域部6は、弾性伸縮性を有する管状部材7と、この管状部材7よりも長尺で該管状部材7内に弛み状態で挿通配設される紐状部材8とから成り、前記靴1の前記紐通し孔3に挿通し前記足甲部2に配設した場合、前記引っ張り操作により前記管状部材7が伸長弾性変形し、この伸長弾性変形に伴って弾性復帰力が生じ、この弾性復帰力により前記靴1の足甲部2を緊締するように構成され、且つ、前記長手方向への引っ張り作用が増大し前記管状部材7の伸張弾性変形量が大きくなるに連れ、前記紐状部材8の弛みが減少し、この紐状部材8の弛みがなくなり該紐状部材8が緊張状態となることで、それ以上の伸長弾性変形が進まないように構成されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の靴紐において、前記太さ一定領域部6は、靴紐装着状態において、前記靴1の足甲部2全体の1/2以上に亘って通し配設される長さに設定されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0014】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の靴紐9を具備することを特徴とする靴に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、従来のものに比べて、紐通し作業や締め付け具合調整作業が容易になる。
【0016】
さらに、本発明の太さ一定領域部により、靴紐全体の伸長弾性変形量が大きくなり、この伸長弾性変形に伴って生じる弾性復帰作用が向上し、従来のものに比べて、より優れた足甲部緊締作用を発揮する。
【0017】
さらに、太さ一定領域部は、紐通し孔に対して良好な通過移動性を有し、また、良好な伸縮性も有することから、靴を足に良好に固定している(良好に締め付けている)にもかかわらず、血管が集中している足の甲を圧迫し過ぎず、足のむくみ等の経時変化にも対応して自然に緊締強度が調整され、良好な履き心地が維持され、また、足の健康にも良好に作用する。
【0018】
このように、本発明は、従来のものに比べて、使い勝手が良く、また、緊締作用も良好な実用性に優れた画期的な靴紐となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施例を示す斜視図である。
図2】本実施例を示す正面図である。
図3】本実施例の靴紐を示す正面図である。
図4】(a)本実施例の靴紐の非引っ張り操作状態(通常状態)を示す説明拡大図である。(b)本実施例の靴紐の引っ張り操作による伸長弾性変形状態を示す説明拡大図である。
図5】(a)図4(a)における靴紐内部状態を示す説明断面図である。(b)図4(b)における靴紐内部状態を示す説明断面図である。
図6】本実施例の使用状態(靴紐締め上げ状態)を示す説明図である。
図7】本実施例の使用状態(靴紐締め上げ解除後の状態)を示す説明図である。
図8】本実施例のこぶ状部(こぶ領域部)の紐通し孔挿通時の状態を示す説明図である。
図9】本実施例のこぶ状部(こぶ領域部)の紐通し孔挿通後の状態を示す説明図である。
図10】本実施例の太さ一定領域部の紐通し孔挿通時の状態を示す説明図である。
図11】本実施例の靴紐の靴紐自由端部を靴紐先端係止部に挿通配設する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
本発明は、紐長手方向両側に設けられた各こぶ領域部5の間の略全域に亘って、紐通し孔3の孔径よりも小径で且つ略一定の太さに形成される太さ一定領域部6が形成される構成とされているから、この太さ一定領域部6を靴1の紐通し孔3に挿通して足甲部2に装着する際、滑らかで引っ掛かりがなくスムーズに紐通し作業を行うことができ、また、締め付け具合調整作業においても、紐通し作業と同様、引っ掛かりが無いので、容易に且つスムーズに調整作業を行うことができる。
【0022】
また、従来のこの種の靴紐は、靴紐の全体に亘って大なり小なりのこぶ部が配置されていて、詳細には、伸縮自在に弾性変形するこぶ部と、非伸縮性の連結部とが間隔をおいて交互に配置されている構成とされるので、引っ張り操作において、連結部は非伸縮性のため、こぶ部のみが伸長弾性変形するが、本発明の太さ一定領域部6は、前述の非伸縮性の連結部がなく、太さ一定領域部6全体が伸縮自在に弾性変形するので、本発明は、引っ張り操作において、こぶ状部4が配置されるこぶ領域部5は従来と同様の伸長弾性変形をするが、太さ一定領域部6は、非伸縮性の連結部がない分だけ、より大きな伸長弾性変形をすることとなり、靴紐9全体として、従来よりも伸長弾性変形が大きくなり、よって、この伸長弾性変形に伴う弾性復帰作用も大きくなり、足甲部2に対する緊締作用がより一層向上することとなる。
【0023】
しかも、この太さ一定領域部6は、管状に形成される伸縮性部材7に、この伸縮性部材7よりも長尺な非伸縮性部材8が弛み状態で設けられて成り、長手方向に引っ張り作用が生じると伸縮性部材7が伸長弾性変形すると共に、非伸縮性部材8の弛みが減少し、更なる引っ張り操作により非伸縮性部材8の弛みがなくなり緊張状態になることで、この太さ一定領域部6を引っ張り操作しても、それ以上伸長しない伸長制限機能を有する構成となれるから、ゴムひものように引きちぎれるまで伸長することなく、靴紐として引っ張り操作により良好な紐通し作業や締め付け具合調整作業を行うことができることとなる。
【0024】
このように、本発明は、従来例における問題が解決され、結ぶことをしなくても靴1の足甲部2の締め付け状態を保持することができる靴紐9において、紐通し作業や締め付け具合調整作業をより一層容易に行うことができる実用性に優れた靴紐となる。
【実施例0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、本発明の結ばなくても足甲部2の緊締状態を保持することができる靴紐9を具備する靴1である。
【0027】
具体的には、本実施例の靴紐9は、紐長手方向両側に夫々、靴1の足甲部2の左右に設けられる紐通し孔3の孔径よりも大径に形成されると共に、伸縮自在に弾性変形する構成とされ引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔3の孔径よりも小径形状に変形するこぶ状部4が複数並設されてなるこぶ領域部5と、これら各こぶ領域部5の間の略全域に亘って、紐通し孔3の孔径よりも小径で且つ略一定の太さに形成される太さ一定領域部6とからなる構成とされ、紐通し孔3に挿通され靴1の足甲部2に装着された状態にて最後の紐通し孔3を通過して引き出されたこぶ領域部5を引っ張り操作することで、紐通し孔3の内側に係止するこぶ状部4が引っ張り操作により伸長弾性変形して紐通し孔3よりも小径形状になって紐通し孔3を通過移動して締め上げることができ、この締め上げ状態にて引っ張り操作を解除することで、紐通し孔3を通過したこぶ状部4が小径形状からもとの紐通し孔3の孔径よりも大径な非変形状態に戻り変形して、紐通し孔3に対して戻り通過移動不能な状態となることにより、最後の紐通し孔3から引き出された各こぶ領域部5同士を結ばなくても、引っ張り操作により締め上げた状態が弛まないように構成されている。
【0028】
より具体的には、こぶ領域部5は、上述したこぶ状部4と、このこぶ状部4間に介在し、こぶ状部4同士を連結するこぶ連結部10とで構成されており、言い換えると、本実施例のこぶ領域部5は、こぶ状部4とこぶ連結部10とが紐長手方向に沿って規則的に交互配置されてなる構成とされている。
【0029】
また、このこぶ領域部5に設けられる複数のこぶ状部4は、紐通し孔3の孔径よりも大径な略球状体に形成され、そのままの状態(形状)では紐通し孔3を通過することができず、例えば、このこぶ領域部5の長手方向の両端部を手で持って引っ張り操作すると、この引っ張り操作によりこぶ状部4が引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔3の孔径よりも小径形状、例えばラグビーボールのような形状に変形して、紐通し孔3を通過することができる状態(形状)になり、また、この引っ張り操作を解除すると、こぶ状部4が元の紐通し孔3の孔径よりも大径形状の略球状体の状態に復元する構成とされている。
【0030】
また、本実施例のこぶ領域部5は、引っ張り操作によってこぶ状部4を伸長弾性変形させて紐通し孔3よりも小径形状にさせながら足甲部2の左右に並設される各紐通し孔3を通過させて締め上げた後、引っ張り操作をやめてこぶ状部4を元の紐通し孔3の孔径よりも大径な、すなわち、言い換えると、紐通し孔3を通過することができない大径形状のこぶ状部4に復元させた際に、この復元したこぶ状部4が、靴1の足甲部2の左右に並設されている紐通し孔3の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔3だけ、若しくはこの最後の紐通し孔3とその一つ手前の紐通し孔3だけに戻り係止する長さに設定されている。
【0031】
具体的には、本実施例のこぶ領域部5は、靴紐9全体の長さの1/4程度の長さに設定されている。すなわち、本実施例の靴紐9は、紐長手方向両側の各こぶ領域部5を合わせると、この靴紐9の約半分の長さをこのこぶ領域部5が占め、残りの半分を後述する太さ一定領域部6が占める構成とされている。
【0032】
さらに、本実施例のこぶ領域部5について説明すると、本実施例のこぶ領域部5は、引っ張り操作時に、このこぶ領域部5(具体的には、こぶ状部4)の伸長弾性変形量を制限する伸長変形制限機構を具備する構成とされている。
【0033】
具体的には、本実施例のこぶ領域部5は、こぶ状部4を形成するためのこぶ状部形成用膨出部11とこぶ連結部10を形成するためのこぶ連結部形成用細管部12とが交互に形成される管状のこぶ領域形成用伸縮性部材13と、このこぶ領域形成用伸縮性部材13内に挿通配設される紐状のこぶ領域形成用非伸縮性部材14からなる構成とされ、長手方向に引っ張り作用が生じると、こぶ領域形成用伸縮性部材13が伸長弾性変形し、このこぶ領域形成用伸縮性部材13の伸長弾性変形に伴ってこぶ領域部5に弾性復帰力が生じ、この弾性復帰力により足甲部2を緊締する足甲部緊締作用が生じる構成とされている。
【0034】
また、こぶ領域形成用非伸縮性部材14は、こぶ領域形成用伸縮性部材13よりも長尺な長さに設定され、こぶ領域形成用伸縮性部材13内に挿通配設される際に、このこぶ領域形成用伸縮性部材13のこぶ状部形成用膨出部11内で弛み状態に配設され、長手方向に引っ張り作用が生じると、こぶ状部形成用膨出部11の伸長弾性変形に伴って弛みが減少し、このこぶ領域形成用非伸縮性部材14の弛みがなくなり緊張状態になることでこぶ領域形成用伸縮性部材13の伸長弾性変形を抑止するように構成され、これにより、こぶ状部4の伸長弾性変形が制限される構成とされている。
【0035】
また、本実施例の太さ一定領域部6は、前述したように、紐通し孔3の孔径よりも小径で且つ略一定の太さに形成され、上述した靴紐9の両側に設けられたこぶ領域部5の間の略全域に亘る長さに設定されている。
【0036】
具体的には、本実施例の太さ一定領域部6は、靴1の足甲部2に靴紐9を装着した際(足甲部2の左右に設けられた紐通し孔3に左右交互に通し配設した際)、足甲部2全体の1/2以上を占める(1/2以上に亘って通し配設される)長さに設定されている。
【0037】
また、本実施例の太さ一定領域部6は、上述のこぶ領域部5と同様、伸長変形制限機構を具備する構成とされている。
【0038】
具体的には、本実施例の太さ一定領域部6は、管状に形成される伸縮性部材7に、この伸縮性部材7よりも長尺な非伸縮性部材8が弛み状態で挿通配設されてなる構成とされ、長手方向に引っ張り作用が生じると伸縮性部材7が伸長弾性変形し、この伸長弾性変形に伴って弾性復帰力が生じ、この弾性復帰力により足甲部2を緊締する足甲部緊締作用が生じる構成とされると共に、長手方向への引っ張り作用が大きくなるに連れ、伸縮性部材7は引っ張り方向に伸び、非伸縮性部材8は弛みが減少し、この非伸縮性部材8の弛みがなくなった際には、これ以上伸縮性部材7が伸長変形しないように構成されている。なお、本実施例においては、伸縮性部材7とこぶ領域形成用伸縮性部材13とが、天然ゴムや合成ゴム等の伸縮性素材(弾性素材)で一体に形成される構成とされ、また、非伸縮性部材8とこぶ領域形成用非伸縮性部材14とが、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン等の非伸縮性素材で一体に形成される構成とされている。
【0039】
また、上述した靴紐9を具備する本実施例の靴1は、図示するように、一般的なスニーカー形状に構成されているものであり、足甲部2の左右に夫々複数の紐通し孔3が靴先から履き口に向かう方向に沿って並設されている。
【0040】
また、本実施例の靴1は、左右の側面の夫々に、紐通し孔3に挿通配設した靴紐9の先端部分、すなわち、紐通し孔3に挿通配設し履き口側に位置する最後の紐通し孔3を通過させて外方に引き出された靴紐9の靴紐自由端部15を、この靴1に係止させるための靴紐先端係止部16が設けられている構成とされている。
【0041】
具体的には、本実施例の靴紐先端係止部16は、非変形状態のこぶ状部4は通過することができず、引っ張り操作により伸長小径化変形したこぶ状部4は通過することができる紐通し孔3とほぼ同等の径寸法に設定された通孔17を有する構成とされている。
【0042】
すなわち、本実施例の靴紐先端係止部16は、最後の紐通し孔3から引き出された靴紐自由端部15を手で引っ張り操作してこの靴紐自由端部15にあるこぶ状部4を伸長小径化変形させてこの靴紐自由端部15を通孔17に挿通させた後、引っ張り操作をやめて伸長小径化変形したこぶ状部4をそのままでは通孔17を通過することができない元の状態に復元させることで、靴紐9に戻り移動作用が生じてもこの靴紐自由端部15のこぶ状部4が通孔17の周縁部、すなわち、靴紐先端係止部16に戻り係止して、靴紐9の戻り移動が阻止されるように構成されている。
【0043】
すなわち、本実施例は、最後の紐通し孔3と共にこの靴紐先端係止部16の二箇所で靴紐9の締め上げ状態を保持する二重係止(ダブルロック)構造とされ、締め上げ状態を良好に保持し、靴紐9を結ばなくても靴1の足甲部2の緊締状態が良好に保持される構成とされている。
【0044】
さらに本実施例の靴紐先端係止部16について説明すると、本実施例の靴紐先端係止部16は、靴1の足甲部2の履き口側に位置する最後の紐通し孔3と、この最後の紐通し孔3を挿通する前に靴紐9が挿通される反対側の最後の紐通し孔3の一つ手前の紐通し孔3とを結ぶ紐通し方向延長線上よりも靴1の先端側に設けられる(配置される)構成とされ、具体的には、本実施例においては、最後の紐通し孔3のほぼ真下に設けられている構成とされている。
【0045】
すなわち、本実施例は、最後の紐通し孔3を通過し外方に引き出された靴紐9の靴紐自由端部15を、最後の紐通し孔3の真下に位置する靴紐先端係止部16の通孔17に挿通することで、最後の紐通し孔3で靴紐9を大きく屈曲させて引き回し方向を変えることで、靴紐9に戻り移動作用が生じた場合、この屈曲部が戻り移動作用に対する抵抗部となって、より戻り移動しにくくなるように構成されている。
【0046】
またさらに、本実施例の靴紐先端係止部16に設けられた通孔17は、靴1の側面に沿う方向に穿孔された構成とされ、最後の紐通し孔3から引き出された靴紐自由端部15を手で引っ張り操作してこの靴紐自由端部15にあるこぶ状部4を伸長小径化変形させてこのこぶ状部4を通孔17に挿通させた後、引っ張り操作をやめて伸長小径化変形したこぶ状部4をそのままでは通孔17を通過することができない元の状態に復元させると、この通孔17を挿通させた靴紐自由端部15が靴1の側面に沿設状態に位置決めされるように構成されている。
【0047】
すなわち、本実施例の靴紐先端係止部16は、靴紐9の締め上げ状態を保持する最後の保持部として構成されるとともに、余った靴紐9の靴紐自由端部15が運動中にバタつかないように所定位置に固定する靴紐端部位置決め部として作用する構成とされている。
【0048】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0049】
本実施例は、靴紐9を手で引っ張り操作しながらこぶ領域部5に設けられるこぶ状部4を伸長小径化変形させ、靴1の足甲部2の左右に夫々並設される複数の紐通し孔3に左右交互に挿通してこの靴紐9を足甲部2に交差状に引き回し配設し、最後の紐通し孔3を通過させ外方に引き出した靴紐9の靴紐自由端部15を引っ張り操作して締め上げた状態で、さらにこの靴紐自由端部15を靴紐先端係止部16の通孔17に挿通した後、この引っ張り操作をやめると最後の紐通し孔3を通過したこぶ状部4及び靴紐先端係止部16の通孔17を通過した各こぶ状部4の伸長小径化変形が解除され、各こぶ状部4が紐通し孔3及び通孔17を通過することができない元の形状に復元されて、靴紐9に戻り移動作用が生じた場合、最後の紐通し孔3を通過したこぶ状部4(具体的には、この最後の紐通し孔3の出口側に最も近いこぶ状部4)がこの最後の紐通し孔3の周縁部(ハトメ部材)に係止するとともに、靴紐先端係止部16の通孔17を通過したこぶ状部4(具体的には、この通孔17の出口側に最も近いこぶ状部4)がこの通孔17の周縁部、すなわち、靴紐先端係止部16に係止して靴紐9の戻り移動が二箇所で阻止され、靴紐9の締め上げ状態が良好に保持されるので、靴紐9を結ばなくても足甲部2の締め付け状態が確実に保持されるので、靴紐9の結びが不要となる。
【0050】
また、本実施例は、靴紐9の紐長手方向両側に設けられた各こぶ領域部5の間の略全域に亘って、紐通し孔3の孔径よりも小径で且つ略一定の太さに形成される太さ一定領域部6が形成される構成とされているから、この太さ一定領域部6を靴1の紐通し孔3に挿通して足甲部2に装着する際、滑らかで引っ掛かりがなくスムーズに紐通し作業を行うことができ、また、締め付け具合調整作業においても、紐通し作業と同様、引っ掛かりが無いので、容易に且つスムーズに調整作業を行うことができる。
【0051】
また、従来のこの種の靴紐は、靴紐の全体に亘って大なり小なりのこぶ部が配置されていて、具体的には、伸縮自在に弾性変形するこぶ部と、非伸縮性の連結部とが間隔をおいて交互に配置されている構成とされるので、引っ張り操作において、連結部は非伸縮性のため、こぶ部のみが伸長弾性変形するが、本実施例の太さ一定領域部6は、前述の非伸縮性の連結部がなく、太さ一定領域部6全体が伸縮自在に弾性変形するので、引っ張り操作において、こぶ状部4が配置されるこぶ領域部5は従来と同様の伸長弾性変形をするが、太さ一定領域部6は、非伸縮性の連結部がない分だけ、より大きな伸長弾性変形をすることとなり、靴紐9全体として、従来よりも伸長弾性変形が大きくなり、よって、この伸長弾性変形に伴う弾性復帰作用も大きくなり、足甲部2に対する緊締作用がより一層向上することとなり、これにより、靴1の足へのフィット感が向上し、しかも、この靴紐9全体の伸縮性に加え、太さ一定領域部6が紐通し孔3を自在に通過可能なので、この足甲部締め付け付勢の度合い、言い換えると、靴紐9の足甲部2に対する緊締具合がよりスムーズに自然調整されることとなる。
【0052】
すなわち、足は左右非対称形であるとともに、その足甲頂点には多くの血管が存在し、靴紐で緊締することで血流が阻まれ、歩行や長時間立っていることで足全体がむくみ、ひいてはからだ全体の血流を悪くすることがあるが、本実施例は、上記作用により長時間の歩行や立ち作業でむくみが生じても、このむくみに応じて緊締具合がスムーズに自然に調整されるので、足甲における血流が阻まれることがなく、この血流悪化による健康被害の発生を防止することができるものとなる。
【0053】
またさらに、本実施例は、靴紐9の半分は、こぶ状部4がない太さ一定領域部6となるので、足甲部2におけるこぶ状部4が少なく、従来品よりもさらに見た目がすっきりしたものとなる。
【0054】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
1 靴
2 足甲部
3 紐通し孔
4 こぶ状部
5 こぶ領域部
6 太さ一定領域部
7 管状部材
8 紐状部材
9 靴紐
10 こぶ連結部
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