(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031404
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】磁気ペン
(51)【国際特許分類】
B43K 8/22 20060101AFI20220210BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B43K8/22
B43K29/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209382
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2017135250の分割
【原出願日】2017-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】504462711
【氏名又は名称】Zero Lab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】古賀 律生
(57)【要約】
【課題】 磁気パネル用の磁気ペンであって、両端部に描画可能な磁石を有する磁気ペンを提供する。
【解決手段】 磁気ペン1は、本体10の両端部に摺動部40Aおよび40Bを有する。摺動部40Aは、円筒状のホルダー42Aを含み、その内部空間に複数の磁石44が配置され、摺動部40Bは、円筒状のホルダー42Bを含み、その内部空間に複数の磁石44が配置される。摺動部40Aの外径または内径は、摺動部42Aの外径または内径よりも小さく、摺動部40Aは、細字を描画するためのものであり、摺動部40Bは、太字を描画するためのものである。磁気ペン1にはさらに、消去キャップ50が着脱自在に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気パネルに文字、図形等を描画するための磁気ペンであって、
把持用のグリップ部と、
前記グリップ部の一方の端部に取り付けられた第1のホルダー部材と、
前記グリップ部の他方の端部に取り付けられた第2のホルダー部材と、
前記第1のホルダー部材の内部空間内に配置された第1の磁石と、
前記第2のホルダー部材の内部空間内に配置された第2の磁石とを有し、
前記第1のホルダー部材は、太字を描画するためのものであり、
前記第2のホルダー部材は、細字を描画するためのものであり、
前記第1の磁石は、少なくとも1つのS極と少なくとも1つのN極が前記磁気パネルと対向するように配置される、磁気ペン。
【請求項2】
磁気ペンはさらに、前記グリップ部の前記両端部のいずれか一方に着脱自在な消去キャップを含み、
前記消去キャップは、内部に消去用の磁石を含み、かつ前記グリップ部に装着されたとき、前記第1または第2のホルダー部材を内部に収容する、請求項1に記載の磁気ペン。
【請求項3】
前記第1の磁石の表面は、前記第1のホルダー部材の端面を超えない位置に配置され、前記第2の磁石の表面は、前記第2のホルダー部材の端面を超えない位置に配置される、請求項1に記載の磁気ペン。
【請求項4】
前記第1のホルダー部材の外径または内径は、前記第2のホルダー部材の外径または内径よりも大きい、請求項1に記載の磁気ペン。
【請求項5】
前記第1のホルダー部材および第2のホルダー部材は、磁性体材料から構成された第1の磁性体部および第2の磁性体部をそれぞれ含み、第1および第2の磁性体部内に第1の磁石および第2の磁石が配置される、請求項1または3に記載の磁気ペン。
【請求項6】
第1のホルダー部材は、前記第1の磁性体部を含む第1の摺動部材を含み第2のホルダー部材は、前記第2の磁性体部を含む第2の摺動部材を含み、前記第1の摺動部材は、前記磁気パネルの表面上において第1の磁性体部の摺動を容易にし、
前記第2の摺動部材は、前記磁気パネルの表面上において第2の磁性体部の摺動を容易にする、請求項5に記載の磁気ペン。
【請求項7】
前記第1の摺動部材および前記第2の摺動部材は、前記第1の磁性体部および前記第2の磁性体部と同一の底面を有する、請求項6に記載の磁気ペン。
【請求項8】
前記第1の摺動部材および前記第2の摺動部材のコーナー部分には面取りが形成されている、請求項6または7に記載の磁気ペン。
【請求項9】
磁気ペンはさらに、前記グリップ部の一方の端部と前記第1のホルダー部材とを結合する第1の自在継手と、前記グリップ部の他方の端部と前記第2のホルダー部材とを結合する第2の自在継手とを有する、請求項1に記載の磁気ペン。
【請求項10】
前記第1の自在継手は、前記第1のホルダー部材に結合され、表面に半球状の溝が形成された連結部と、前記一方の端部から延在し、かつ前記連結部の溝に先端を当接させる延在部と、前記延在部の先端が前記連結部の溝に一定の接圧で接触するように前記延在部を前記連結部に向けて付勢する付勢部とを含む、請求項9に記載の磁気ペン。
【請求項11】
前記付勢部は、前記第1のホルダー部材に接続されたフレキシブルな線と、当該フレキシブルな線に接続され、第1のホルダー部材を第1の端部側に向けて引っ張るバネとを有する、請求項10に記載の磁気ペン。
【請求項12】
前記付勢部は、前記第1のホルダー部材と前記一方の端部との間に介在されたコイルスプリングを含み、当該コイルスプリングは、第1のホルダー部材を第1の端部側に向けて引っ張る、請求項10に記載の磁気ペン。
【請求項13】
前記第1のホルダー部材の中心には磁性体材料が含まれる、請求項1に記載の磁気ペン。
【請求項14】
前記消去キャップはさらに、前記磁石を回転するための回転手段を含む、請求項2に記載の磁気ペン。
【請求項15】
前記消去キャップはさらに、前記磁石を回転させるためのスイッチを含む、請求項14に記載の磁気ペン。
【請求項16】
グリップ部は、内部に電池を含み、グリップ部の端部には、電力の電力を供給するための第1の端子が設けられ、前記消去キャップには、前記第1の端子と接続可能な第2の端子が設けられる、請求項15に記載の磁気ペン。
【請求項17】
前記消去キャップ内の磁石は、前記回転手段の回転軸と直交する方向に着磁されたN極とS極とを有する、請求項14に記載の磁気ペン。
【請求項18】
前記消去キャップは、先端部にフェルト部材を有する、請求項2に記載の磁気ペン。
【請求項19】
前記第1のホルダー部材および第2のホルダー部材とは、前記グリップ部から取り外して交換が可能である、請求項1に記載の磁気ペン。
【請求項20】
前記グリップ部の一方の端部には、第1の径の第1の開口部が形成され、他方の端部には、第2の径の第2の開口部が形成され、
前記第1のホルダー部材は、第1の開口部に挿入可能な第1の部分を有し、前記第2のホルダー部材は、第2の開口部に挿入可能な第2の部分を有する、請求項19に記載の磁気ペン。
【請求項21】
第1の径と第2の径とは等しい、請求項20に記載の磁気ペン。
【請求項22】
磁気パネルに文字、図形等を描画するための磁気ペンであって、
把持用のグリップ部と、
前記グリップ部の一方の端部に取り付けられたホルダー部材と、
前記グリップ部の他方の端部に取り付けられた消去部と、
前記ホルダー部材の内部空間内に配置された第1の磁石と、
前記消去部に取り付けられた第2の磁石とを有し、
前記ホルダー部材は、前記磁気パネル上に文字等を描画するためのものであり、
前記消去部は、前記磁気パネル上に描画された文字等を消去するためのものである、磁気ペン。
【請求項23】
前記消去部は、前記第2の磁石を回転するための回転手段を含む、請求項22に記載の磁気ペン。
【請求項24】
前記消去部は、前記第2の磁石の磁力を調整するための磁力調整手段を含む、請求項22に記載の磁気ペン。
【請求項25】
前記磁力調整手段は、前記グリップ部の軸方向を摺動可能な磁性体部材を含む、請求項24に記載の磁気ペン。
【請求項26】
磁気ペンはさらに、前記グリップ部の一方の端部と前記ホルダー部材とを結合する自在継手を有し、当該自在継手は、前記ホルダー部材に結合され、表面に半球状の溝が形成された連結部と、前記一方の端部から延在し、かつ前記連結部の溝に先端を当接させる延在部と、前記延在部の先端が前記連結部の溝に一定の接圧で接触するように前記延在部を前記連結部に向けて付勢する付勢部とを含む、請求項24に記載の磁気ペン。
【請求項27】
前記ホルダー部材は、磁性体材料から構成された磁性体部を含み、当該磁性体部内に第1の磁石が配置される、請求項22に記載の磁気ペン。
【請求項28】
前記ホルダー部材は、前記磁性体部を含む摺動部材を含み、当該摺動部材は、前記磁気パネルの表面上において前記磁性体部の摺動を容易にするように、前記摺動部材は、前記磁性体部と同一の底面を有する、請求項27に記載の磁気ペン。
【請求項29】
前記摺動部材のコーナー部分には面取りが形成されている、請求項27または28に記載の磁気ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性を帯びた表示体を含む表示パネルに磁界を作用させ任意の文字、図形、記号等を描画することができる磁気ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性を帯びた表示体を含む磁気パネルに対して先端部に磁石を取り付けた磁気ペンを描画させたとき、磁気ペンからの磁界が表示体に作用することで磁気パネルには磁気ペンの移動軌跡に応じた文字、図形、記号等を表示させることができる。磁気パネルに磁界を作用させる磁気ペンについて、例えば、特許文献1は、簡単な構造で磁気パネルにかかる筆圧を緩和する磁気ペンを開示している。また、特許文献2ないし4は、磁性粒子をマイクロカプセルに封入して記録層を作成する磁気パネルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-935号公報
【特許文献2】特開2007-256891号公報
【特許文献3】特許第2717536号公報
【特許文献4】特許第4089808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の磁気ペンは、文字や図形等を描画する機能を備えているが、描画する線幅を適宜変更したり、描画した文字等を部分的に消去する機能を備えておらず、ユーザーにとっては、利便性の高いものではなかった。例えば、磁気パネルに太い線幅の文字を描画する場合には、太字用の磁気ペンを使用して描画し、細い線幅の文字を描画する場合には、細字用の磁気ペンに持ち替えて描画しなければならない。また、描画中に文字を間違えたりした場合には、磁気ペンから磁気消去具(イレイサー)に持ち替えて、該当する部分を消去した後、再び、磁気ペンに持ち替える必要があった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ユーザーにとって利便性の高い磁気ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気ペンは、磁気パネルに文字、図形等を描画するためのものであって、把持用のグリップ部と、前記グリップ部の一方の端部に取り付けられた第1のホルダー部材と、前記グリップ部の他方の端部に取り付けられた第2のホルダー部材と、前記第1のホルダー部材の内部空間内に配置された第1の磁石と、前記第2のホルダー部材の内部空間内に配置された第2の磁石とを有し、前記第1のホルダー部材は、太字を描画するためのものであり、前記第2のホルダー部材は、細字を描画するためのものである。
【0007】
好ましくは磁気ペンはさらに、前記グリップ部の前記両端部のいずれか一方に着脱自在な消去キャップを含み、前記消去キャップは、内部に消去用の磁石を含み、かつ前記グリップ部に装着されたとき、前記第1または第2のホルダーを内部に収容する。好ましくは前記第1の磁石の表面は、前記第1のホルダー部材の端面を超えない位置に配置され、前記第2の磁石の表面は、前記第2のホルダー部材の端面を超えない位置に配置される。好ましくは前記第1の磁石は、少なくとも1つのS極と少なくとも1つのN極が前記磁気パネルと対向するように配置される。好ましくは前記第1のホルダー部材の外径または内径は、前記第2のホルダー部材の外径または内径よりも大きい。好ましくは前記第1のホルダー部材の中心には磁性体材料が含まれる。好ましくは前記消去キャップはさらに、前記磁石を回転するための回転手段を含む。好ましくは前記消去キャップはさらに、前記磁石を回転させるためのスイッチを含む。好ましくは前記消去キャップは、先端部にフェルト部材を有する。
【0008】
本発明に係る磁気ペンは、磁気パネルに文字、図形等を描画するためのものであって、把持用のグリップ部と、前記グリップ部の一方の端部に取り付けられたホルダー部材と、前記グリップ部の他方の端部に取り付けられた消去部と、前記ホルダー部材の内部空間内に配置された第1の磁石と、前記消去部に取り付けられた第2の磁石とを有し、前記ホルダー部材は、前記磁気パネル上に文字等を描画するためのものであり、前記消去部は、前記磁気パネル上に描画された文字等を消去するためのものである。
【0009】
好ましくは前記消去部は、前記第2の磁石を回転するための回転手段を含む。好ましくは前記消去部は、前記第2の磁石の磁力を調整するための磁力調整手段を含む。好ましくは前記磁力調整手段は、前記グリップ部の軸方向を摺動可能な磁性体部材を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気ペンの両端部に第1のホルダー部材と第2のホルダー部材とを設けたので、磁気ペンを反転させることで、第1のホルダー部材または第2のホルダー部材を用いて磁気パネル上に文字等を描画することができる。さらに、磁気ペンの使用しない端部に消去キャップを取り付け、磁気ペンを反転させることで、描画した文字等を簡単に消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る磁気ペンの全体構成を示す図であり、
図1(A)は、消去キャップが取り外された状態の磁気ペンの正面図、
図1(B)は、磁気ペンの一方の端部の側面図、
図1(C)は、磁気ペンの他方の端部の側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る磁気ペンの斜視図である。
【
図3】
図1(A)に示す磁気ペンのA-A断面図であり、
図3(A)は、消去キャップが取り外された状態、
図3(B)は、消去キャップが取り付けられた状態、
図3(C)は、両端部に消去キャップが取り付けられた状態を示す図である。
【
図4】
図4(A)は、磁気ペン先端の摺動部のボールジョイント部の例示、
図4(B)、(C)は、磁気ペン先端の摺動部の他の接合部の例示である。
【
図5】本発明の第1の実施例に係る磁気ペンの摺動部の構成を示し、
図5(A)は、概略断面図、
図5(B)は、概略斜視図である。
【
図6】本発明の第1の実施例に係る磁気ペンを利用することが可能な磁気パネルの構成を示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、本発明の第1の実施例に係る磁気ペンの動作を説明する図、
図7(B)は、比較例としての磁気ペンの動作を説明する図である。
【
図7A】本発明の第1の実施例に係る磁気ペンの細字用のホルダーの磁石の配置例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施例に係る磁気ペンに適用可能な磁石の構成例を示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施例に係る磁気ペンの構成を示す概略断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施例に係る磁気ペンの摺動部の構成を示す概略断面図である。
【
図10A】本発明の第3の実施例に係る磁気ペンの摺動部の面取り部の作用を説明する図である。
【
図11】本発明の第4の実施例に係る磁気ペンの概略構成を示す断面図である。
【
図12】本発明の第5の実施例に係る磁気ペンのジョイント部の構成を示す概略断面図である。
【
図13】本発明の第6の実施例に係る磁気ペンの先端部の着脱機構を説明する概略断面図である。
【
図14】本発明の第7の実施例に係る磁気ペンの消去キャップの構成を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の好ましい態様では、磁気ペンは、その両端部に描画用の磁石を備え、磁気泳動型や磁気反転型等の磁気シートに磁界を作用させ、磁気シート上に、文字、図形、絵等を描画することが可能である。なお、本発明の実施の形態で説明する図で示された各構成は、実際の大きさとは異なる点に留意する。
【実施例0013】
図1は、本発明の第1の実施例に係る磁気ペンの正面図とその両端の先端部の側面図であり、
図2は、磁気ペンの斜視図であり、
図3は、
図1(A)のA-A断面図である。なお、
図3(A)は、消去キャップが取り外された状態を示し、
図3(B)は、消去キャップが装着された状態を示す。
【0014】
本実施例に係る磁気ペン1は、ペン型の円筒状のグリップ部(本体)10と、グリップ部10の両端に取り付けられた先端部20A、20B(総称して先端部20と称することがある)とを有する。グリップ部10の形状は、任意であり、角柱状(例えば、断面が三角形、四角形、多角形)であってもよい。また、グリップ部10は、必ずしも一様の太さである必要はなく、先端部が細くなるようなテーパが形成されていてもよいし、ユーザーが把持し易くなるような凹部や凸部がグリップ部10の表面に形成されてもよい。グリップ部10の材料は任意であるが、例えば、プラスチックや金属などから構成される。
【0015】
先端部20A、20Bは、例えば、グリップ部10の外径が徐々に小さくなるような円柱状部22A、22Bと円錐部24A、24Bとを含み、全体として鉛筆のような形状に似せている。1つの好ましい例では、グリップ部10の内部は空洞であり、両端には径が幾分小さな支持部12A、12Bが形成される。支持部12A、12Bの開口内には、
図3に示すように、先端部20A、20Bの円柱状部22A、22Bが嵌め込まれ、そこに固定される。
【0016】
円柱状部22A、22Bには、円錐部24A、24Bが接続され、円錐部24A、24Bの先端には、ジョイント部30A、30Bを介して摺動部40A、40Bが取り付けられる。ジョイント部30A、30Bは、摺動部40が磁気パネル上を水平移動するとき、グリップ部10の軸方向の角度を任意に変化することを可能にする。言い換えれば、ユーザーがグリップ部10を把持しながら摺動部40を水平方向に摺動させるとき、磁気パネルの平面に対して摺動部40の水平姿勢が維持されながら、ジョイント部30を介してグリップ部10の軸方向の角度が任意に変化する。
【0017】
ジョイント部30A、30Bは、先端部20A、20Bと摺動部40A、40Bとを結合する自在継手であり、その構成は任意である。1つの例では、ジョイント部30は、
図4(A)に示すように、球形状のボール部32を含み、ボール部32を摺動部40の表面に形成された半円状の溝42内に回転自在に係合させたボールジョイントであることができる。好ましくは、ボール部32と溝42との摩擦力により、グリップ部10が傾斜されたとき、その傾斜角がある程度維持されるようにすることが望ましい。
【0018】
また、ジョイント部は、
図4(B)に示すような構成であってもよい。この場合、グリップ部10の先端部26は、軸方向に延在する内部空間を含み、当該内部空間内に、バネ34と線材36とを配置する。線材36は、好ましくはフレキシブルな線であり、例えば、ステンレス等の材料からなる撚り線である。バネ34の一方の端部は、先端部26に固定され、他方の端部が線材36に接続される。線材36の他方の端部は、先端部26の開放端を通過し、さらに連結部38の貫通孔を介して摺動部40に接続される(例えば、スポット溶接)。連結部38は、その表面に球形状の溝38Aが形成され、この溝38Aの表面に先端部26の開放端が摺動自在に接触する。また、連結部38の底面は摺動部40に結合される。先端部26と摺動部40と間の接圧は、バネ34によって調整することができる。
図4(C)は、先端部26が摺動部40に対して傾斜した角度にある状態を示している。先端部26が連結部38と接触する部分は支点として機能し、バネ34の力を調整することで、グリップ部10が傾斜したときの角度の状態をある程度維持することができる。
【0019】
図1(B)は、グリップ部10の軸方向から見た摺動部40Aを示し、
図1(C)は、グリップ部10の軸方向から見た摺動部40Bを示す。摺動部40Aおよび40Bは、円筒状のホルダー42Aおよび42B(以下、総称してホルダー42と称することがある)を含む。ホルダー42A、42Bは、好ましくは、磁性体の材料から構成され、ホルダー42A、42Bには、磁石を保持するための内部空間(例えば、円柱状の内部空間)が形成される。
【0020】
図5(A)は、摺動部40Aの概略断面図、
図5(B)は、摺動部40Aの概略斜視図である。ホルダー42には、円筒状の内部空間43が形成され、そこに2つの磁石44-1、44-2が配置される。1つの例では、ホルダー42は、鉄や軟鉄等の磁性材料から構成される。内部空間43は、ホルダー42Aの端面Eから深さdを有する。磁石44-1、44-2は、例えば、円筒状であり、その軸方向にS極とN極とが着磁されている。好ましい態様では、磁石44-1、44-2は、同一サイズであり、内部空間43内にS極とN極とが反転するように配置され、磁石44-1、44-2の表面は、端面Eを越えないように、端面EからΔdだけ窪んだ位置にある。つまり、磁石44-1のS極と磁石44-2のN極とが磁気パネルに対向する。Δdは、磁石の磁束の強度やその直径にもよるが、例えば、0.1~0.5mm程度であり、好ましくは、0~0.3mm程度である。
【0021】
摺動部40Bも同様に構成され。
図1(C)の例では、ホルダー42B内には、4つのS極と4つのN極とが開放端に向けて露出されるように複数の磁石44が配置される。この場合、S極とN極とが交互に配置され、磁石44の表面は、ホルダー42Bの端面Eを越えない位置にある。
【0022】
好ましい例では、摺動部40Aは、細字用であり、摺動部40Bは、太字用であり、それ故、ホルダー42Aよりもホルダー42Bの外径(内部空間の内径)が大きく、ホルダー42Bには、よい多くの数の磁石44が収容されている。
図1(B)、(C)に示す例では、磁石44が円筒状であり、これをホルダー42の周方向に沿って配置させたとき、太字用のホルダー42Bの中央に大きな空間が形成される。この空間に、例えば、鉄等の磁性体や磁石46を配置し、中心部にも磁力線を形成させることで、太字を描画したときに線分等の中央がかすれるのを防止することができる。
【0023】
本実施例の磁気ペン1はさらに、グリップ部10の先端部20A、20Bに着脱自在な消去キャップ50を備えることができる。磁気キャップ50は、
図3(A)に示すように、内部空間が形成された円筒状のハウジング54を含み、ハウジング54の先端には、摺動を容易にする平坦な面52が形成されている。平坦な面52は、例えば、フェルト材から構成することで、磁気パネル上に描画されたホワイトボード用のマーカ等のインクを消去できるようにしてもよい。ハウジング54の内部空間には、円形状の磁石56が配置される。磁石56は、平坦な面52を介して磁気パネルに磁界を作用させることで、磁気パネルに描画された文字等を消去する。ハウジング54は、任意の材料で構成することができるが、例えば、磁性体材料から構成することで磁石56の磁界がハウジング54の外側へ漏洩するのを防止し、ハウジング54の外形サイズに応じた領域の消去が可能になる。あるいは、ハウジング54を樹脂材料から構成し、ハウジング54の内壁に磁気シートを貼り付けるようにしてもよい。
【0024】
ハウジング54は、グリップ部10の両端の支持部12A、12Bの一方に着脱自在に取り付けられる。例えば、ハウジング54の内径は、支持部12A、12Bの外径よりも幾分だけ大きく、ハウジング54が一定の摩擦抵抗により支持部12A、12Bに保持される。あるいは、支持部12A、12Bにテーパを形成することで、ハウジング54の着脱を容易にしてもよい。さらには、支持部12A、12Bの一部に凸部または凹部を形成し、ハウジング54の内面にそれと係合する凹部または凸部を形成するようにしてもよい。例えば、太字用の摺動部40Aを使用するとき、磁気キャップ50が摺動部40Bを収容するように支持部12Bに取り付けられる。
【0025】
また、消去キャップ50は、保護キャップを兼ねることができる。すなわち、消去キャップ50をグリップ部10に取り付けることで、先端部のホルダー40A、40Bを保護することができる。従って、グリップ部10の両端のホルダー40A、40Bを保護したい場合には、
図3(C)に示すように、両端に消去キャップ50が取り付けられる。グリップ部10の支持部12A、12Bが同一の径であるならば、消去キャップ50は同一形状のものを利用することができる。
【0026】
次に、本実施例の磁気ペンにより描画可能な磁気パネルの一例を
図6に示す。磁気パネル100は、磁界を透過可能な透明なシートであって、かつ磁気パネルの表示面を構成する表面シート110、表面シート110と対向する裏面シート120、表面シート110と裏面シート120との間の空間内に2次元状に配置された複数のマイクロカプセル130を含んで構成される。なお、複数のマイクロカプセル130は、図示しないケースに収容される。
【0027】
好ましくは、マイクロカプセル130は、例えば透明な球状のセル内に、粒径が0.1μm~1.0μmの磁性粒子を1種類以上、粒径が1μm~20μmの磁性粒子を1種類以上、白色酸化チタン等の非磁性粒子、分散液、添加剤を内蔵する。マイクロカプセルの大きさは、例えば50~650μmである。このような磁気泳動型の磁気パネルは、例えば特許文献4に開示されており、以下の特徴を有する。
a.水平の磁力線で小さい粒子が磁力線の方向に反応しやすい。
b.垂直の磁力線を有する磁気ペンでは、大、小の磁性粒子が反応して表面側が黒くなり、文字を描画することができる。
c.磁気パネルの表面から消去する場合、水平の磁力線に反応しやすい小さい粒子に水平のみ磁力線を作用させれば、小さい粒子が磁力線の方向に泳動して白くなる。このとき、大きい粒子はほとんど反応しないため"黒“のままの状態であり、表面から見ると黒が透けて見えるので完全には、白にならずコントラストの低下が生じる。
d.文字を消去するためには水平の磁力線を作用させればよく、逆に水平の磁力線を有する磁気ペンは、自ら書いた文字を即座に消去するため、不具合を生じさせる。
【0028】
1つのマイクロカプセル130は、1つの画素を形成する。例えば、
図6(B)に示すように、表面シート110上の磁気ペン1によりマイクロカプセル130に磁界が作用されると、上記したように磁気ペンの垂直方向の磁力線に反応してマイクロカプセル130内の黒色の磁石粒子が表面側に泳動する。こうして、表面シート110上を磁気ペン10を移動させれば、その移動に従いマイクロカプセル130内の磁性粒子が泳動し、画像が形成される。一方、画像を消去する場合は、消去用磁石(図示省略)を表面シート110上においてスライドさせ、消去用磁石の水平方向の磁力線に反応して小さい粒子が表面側に泳動し、画像が消去される。この場合、消去用磁石と表面シート110との間には一定のクリアランスを設けることで、磁気パネルに対して水平な磁力線を多く作用させることが望ましい。
【0029】
なお、マイクロカプセル130は、必ずしも上記構成に限定されるものではなく、例えば、磁気パネルは、表側または裏面側から消去可能であってもよい。さらに、磁気パネルは、磁気泳動型の他、磁気反転型の磁気シートであっても良い。さらに磁気パネル100は、表面シート110側から磁界を作用させて描画した画像を消去することが可能なタイプ、あるいは裏面シート120側から磁界を作用させて描画した画像を消去することが可能なタイプのいずれであってもよい。
【0030】
次に、本実施例による磁気ペン1の動作について説明する。
図7(A)は、本実施例による摺動部40Aの磁石44-1、44-2から発生される磁力線を模式的に示している。本実施例では、磁性体材料から構成される円筒状の部材42Aの端面Eから突出しない窪んだ位置に磁石44-1、44-2の表面が存在するため、磁石44-2のN極から磁石44-1のS極へ向かう磁力線M1は、ホルダー42Aを超えないよう半径方向に収束される。言い換えれば、磁石44-2のN極の最外殻からの磁力線は、ホルダー42Aの側壁46を介してS極に入り、一方、磁石44-1のN極からの磁力線は、ホルダー42Aの側壁46を介して磁石44-1のS極へ入り、磁力線が半径方向に閉じ込められる。つまり、磁石44-2のN極表面から磁石44-1のS極表面に向かう磁力線が垂直方向に延び、ホルダー42Aの半径内に制限され、この磁力線が磁気パネルのマイクロカプセル130に作用する。その結果、制限された範囲内の垂直方向の磁力線によって作用されたマイクロカプセル130内の磁性粒子が泳動され、例えば磁性粒子が表面側に泳動される。
【0031】
一方、
図7(B)は、比較例であり、磁石44-1、44-2がホルダー42Aの端面Eから突出させたときの磁力線を模式的に示している。この場合、磁石44-1、44-2の表面が端面Eから突出しているため、磁石44-2のN極からホルダー42Aの側壁46に向かう磁力線Qが幾分だけ水平方向に延びる。この水平方向に延びる磁力線Qがマイクロカプセル130に作用すると、カプセル内の磁性粒子が消去する方向に磁力を受け、例えば、磁性粒子が裏面側に泳動し、その代わりに白色の非磁性粒子が表面側に泳動する磁力を受け、その結果、ホルダー42Aの中央の磁力線Q1により文字が描画されながら、同時に、外縁の磁力線Qにより描画された文字のエッジが消去されてしまい、エッジや輪郭が不鮮明な画像になってしまう。また、磁気パネルによっては、水平方向の磁力線は、磁性体粒子を吸着する力が弱くなるので、その部分に黒と白とが混在することにより、エッジは不鮮明な画像になり得る。
【0032】
さらに、ホルダー42Aが仮に金属であっても真鍮のような非磁性体材料から構成された場合には、磁石44-1、44-2の磁力線がホルダー42Aの半径方向を越え、幾分水平方向に広がる部分を含んでしまうため、上記した理由により、描画される画像のエッジにおいて消去する方向の磁力線または磁性粒子を吸着する力を弱める磁力線が作用してしまうため、文字等が不鮮明になってしまう。
【0033】
ホルダー42A、42B内には、1つのS極または1つのN極が磁気パネル側に対向するように1つの磁石が配置されるようにしてもよい。
図7A(A)は、1つの磁石48のS極が磁気パネル側に対向するように露出されている。特に、細字を描画する場合には、ホルダーの外径も小さくなり、それに伴い磁石のサイズも小さくなるため、S極またはN極の一方が露出されるように磁石が配置される。さらに、磁石48の表面は、上記したようにホルダーの端面Eを越えない位置に配置される。
図7(B)は、1つの磁石49のN極が磁気パネル側に対向するように露出されている。この例では、磁石49の表面は、端面Eを越えない位置として、Δd=0にある。
【0034】
次に、本実施例に適用することができる磁石の構成例を
図8に示す。
図8(A)は、ホルダー42内の隙間あるいは空間に磁性体部材80を配置した例である。磁性体部材80を空隙に配置することで、磁力線をホルダー42内に集中させることができる。
図8(B)は、ホルダー42の内部空間に一致するようにS極とN極の磁石を配置させた例である。この場合、磁石は、物理的に1つの磁石であることができる。
図8(C)は、
図8(B)に示す磁石の変形であり、中心部分に貫通孔が形成されたドーナツ形状の磁石をホルダー42内に配置させたものである。この場合にも、
図8(A)と同様に中心部分の空隙に、例えば円筒状の磁性体を配置させてもよい。
図8(D)は、1つの面に2つのN極と2つのS極とが形成された物理的に1つの形状のドーナツ状の磁石をホルダー42内に配置させた例である。この場合にも、中心部分の空隙に、例えば円筒状の磁性体を配置させてもよい。
【0035】
ホルダー42内に収容される磁石の大きさは、それぞれ異なる大きさであってもよい。例えば、
図8(E)に示すように、磁気パネル側に露出されるN極の磁石がS極の磁石よりも大きくてもよいし、それとは反対に
図8(F)に示すように、S極がN極よりも大きくても良い。
【0036】
また、
図8(G)に示すように、4つの磁石の中心部分の隙間内に、磁性体(例えば、軟鉄のような軸または磁石)80を配置し、中心部分の磁力線が弱まるのを防止するようにしてもよい。また、
図8(H)に示すように、磁石の配置を菱形形状になるようにし、中心部分に大きな空隙が生じないようにしてもよい。この場合、ホルダー42の内部空間もまた菱形形状にしてもよい。さらに
図8(I)に示すように、2つのN極と1つのS極を配置するようにしてもよい。あるいは、
図8(J)に示すように、5つの磁石を配置したり、
図8(K)に示すように、6つの磁石を配置することも可能である。さらに、
図8(L)に示すように、一方の端部の表面にS極とN極を含む磁石を、S極とN極とが交互になるように配置したり、その中央に磁性体80を配置したりすることも可能である。
【0037】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例に係る磁気ペンは、グリップ部10に取り付けられる消去キャップに特徴を有する。第2の実施例の消去キャップ50Aは、内蔵する磁石を駆動する駆動機構を備えている。
図9に、第2の実施例の消去キャップの概略断面図を示す。同図において、消去キャップ50Aは、内部に空間が形成された円筒状のハウジング200と、ハウジング200内に収容されるS極とN極とが着磁された円盤状の磁石210と、磁石210の中心部分に結合され、磁石210を回転させるモータ220と、モータ220を駆動する電子回路等を含む駆動部230と、バッテリー240と、ハウジング200の表面に取り付けられたスイッチ250とを含む。円盤状の磁石210は、図に示すように回転方向または径方向にS極とN極が着磁されたものであり、S極とN極とが磁気パネルに対向する。但し、磁石の形状は円盤状に限らず、例えば、棒状の磁石210Aであってもよく、この場合にも、その表面にS極とN極とが着磁され、消去時に、S極とN極とが磁気パネルに対向する。
【0038】
ユーザーは、消去キャップ50Aにより消去を開始するときスイッチ250をオンし、消去を終了するときスイッチ250をオフする。駆動部230は、スイッチ250がオンされると、バッテリー240からの電力をモータ220に供給し、円盤状の磁石210を回転させる。磁石210が回転することにより、N極からS極に向かう磁力線が変化し、特に、その水平方向の磁力線がマイクロカプセルに作用することで磁気パネルに描画された図形等が効率的に消去される。
【0039】
消去キャップ50Aは、第1の実施例のときと同様に、グリップ部10の一方の端部に着脱自在に取り付けてもよいし、
図9(C)に示すように、グリップ部10の両端に取り付けるようにしてもよい。あるいは、
図9(D)に示すように、グリップ部10の一方の端部に第1の実施例の消去キャップ50を取り付け、他方の端部に第2の実施例の消去キャップ50Aを取り付けるようにしてもよい。また、消去キャップ50Aは、グリップ10から取り外された状態で、つまり、消去キャップ50Aそれ自身を磁気パネル上に作用させて使用することも可能である。さらに磁気キャップ50Aの先端形状は、球形状に限定されず、磁気パネルの面上を摺動が容易となる平坦な面であってもよく、さらに先端部には、
図3に示すようなフェルト材が取り付けられても良い。
【0040】
次に、第2の実施例の変形例について説明する。スイッチ250は、モータ220の回転数を切替えるための入力を含むことができる。磁気パネルに描画された文字等は、時間が経過すると消去し難くなることがある。モータ220の回転数を変化させることで、適切な磁力線が磁力パネルに作用し、消去をし易くすることができる。例えば、スイッチ250は、例えば、高速、中速、低速などの入力を含むことができる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、磁気ペンの摺動部の構成に関するものであり、その概略断面図を
図10(A)に示す。第3の実施例による摺動部300は、プラスチック本体310と、プラスチック本体310内に埋め込まれた磁性体材料からなるホルダー320とを含む複合部材である。プラスチック本体310は、概ね円筒状を有し、その上端部312にはジョイント部30が接続される。また、プラスチック本体310の底面314の中央には開口部が形成され、当該開口部内にホルダー320が収容される。1つの例では、プラスチック本体310は、ホルダー320を埋め込むように一体モールド成型され、プラスチック本体310の底面314とホルダー320の端面Eとはほぼ同一平面である。ホルダー320は、
図5に示すような構成であり、その内部に1つまたは複数の磁石を配置する。プラスチック本体310は、比較的大きな平坦な底面314を有するため、磁気パネル上を摺動するとき、磁気パネルの面に対して摺動部300の水平姿勢を安定させ、ホルダー320の軸方向が磁気パネルの面に鉛直になることを保証する。
【0042】
図10(B)、(C)は、第3の実施例の摺動部の変形例である。
図10(B)に示す摺動部300Aは、プラスチック本体310のコーナー部に面取り部330を形成し、
図10(C)に示す摺動部300Bは、プラスチック本体310のコーナー部に丸面取り部340を形成する。このような面取り部330、340を形成することで、磁気パネルの面に対する摺動部300A、300Bの水平姿勢がより安定化される。つまり、摺動部300が磁気パネル上を摺動されるときに、その摺動方向に追随できずに摺動部300が回転しようとしても、面取部が磁気パネルの表面に接触することで、摺動部300の底面が磁気パネルの面と接触するように摺動部300の回転が戻されることになる。それ故、摺動部は、磁気パネルの表面に対して水平姿勢を保ち易くなり、摺動が容易になる。また、面取り部330、340は、磁気パネルの表面が傷つくことを防止する機能も併せ持つ。なお、上記実施例では、磁性体材料のホルダー300をプラスチック本体310により収容したが、プラスチック本体310は、他の材料、例えば、摺動性に優れた樹脂やゴムなどから構成されるようにしてもよい。
【0043】
次に、摺動部のコーナーに面取り部(テーパ)を形成したときの具体的な作用について説明する。
図10A(A)は、面取り部が形成されていない摺動部300(
図10(A)を参照)により描画するときの状態を表す模式図、
図10A(B)は、面取り部330が形成された摺動部300A(
図10(B)を参照)により描画するときの状態を表す模式図である。ここで、グリップ部10の軸方向と磁気パネルの表面シート110の平面との成す角度を握り角θとする。摺動部300のコーナーに面取り部が形成されていない場合には、同図(A)に示すように、摺動部300と表面シート110とが接触する支点350が、磁気パネルの面に垂直である垂直線Vよりも左側にずれるため、摺動部300が矢印f1の方向に力を受け、摺動部300の磁石面である底面314が磁気パネルの表面シート110に接触することができなくなる。これに対し、摺動部300Aのコーナーに面取り部330が形成されている場合には、同図(B)に示すように、摺動部300Aと表面シート110とが接触する支点360が垂直線Vよりも右側にずれるため、f1とは反対の回転方向の力f2を受け、摺動部300Aの磁石面である底面314が磁気パネルの表面シート110に接触するため安定した描画動作が可能になる。
【0044】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
図11(A)は、第4の実施例に係る磁気ペンの概略断面図である。第4の実施例に係る磁気ペン400は、グリップ部10の一方の端部に第1の実施例のときと同様に摺動部40A(ホルダー42A)が取り付けられ、他方の端部に消去部410が設けられる。消去部410は、フェルト材等から構成された平坦な面を有する摺動部材412と、消去用磁石414とを含む。1つの例では、摺動部材412は、グリップ部10の閉じた端部に接着剤等により接着され、消去用磁石414は、グリップ部10の内部空間内に配置される。摺動部材412を磁気パネル上で摺動させるとき、消去用磁石414からの磁力線が磁気パネルに作用し、磁気パネル上に描画された図形等が消去される。好ましくは、消去用磁石414からの水平方向の磁力線が磁気パネルに効果的に作用するように、消去用磁石414の位置が選択される。
【0045】
図11(B)は、磁気ペン400の摺動部を保護するための保護キャップ420を取り付けた例を示している。保護キャップ420は、内部に空間が形成されたハウジングを含み、内部空間内に摺動部40Aが収容されるようにグリップ部10に着脱自在に取り付けられる。なお、第1の実施例で説明した消去キャップ50も同様に、グリップ部10に取り付けられたとき、摺動部40Aを保護する機能を備えている。
【0046】
図11(C)は、磁気ペン400の摺動部40Aを保護する他の変形例を示している。本例では、図示するように、グリップ部10の外周上で、その軸方向にスライド可能なスライド部材430を取付けたものである。スライド部材430は、円筒状の部材であり、その内径がグリップ部10の外径よりも幾分だけ大きく、磁気ペン400の使用時、摺動部40Aが露出されるようにスライド部材430が右側にスライドされ、磁気ペン400の不使用時、摺動部40Aが覆われるようにスライド430が左側にスライドされる。ここには図示しないが、スライド部材430の位置を固定するための位置決め機構をグリップ10の表面および/またはスライド部材430の内側に設けるようにしてもよい。例えば、グリップ部10の表面に凸部を設け、保護スライド430の内側の面に凹部を設け、凸部と凹部とを係合させることでスライド部材430を所望の位置に停止させるようにしてもよい。
【0047】
図11(D)の磁気ペンは、グリップ部10の一方の端部に摺動部40Aが取り付けられ、他方の端部に、磁石回転機構を含む消去部440が設けられる。消去部440は、第2の実施例で説明した消去キャップ50Aの機能を有し、当該機能がグリップ部10の内部空間に収容されている。
【0048】
図11(E)は、消去部の磁力可変機構を備えた磁気ペンを例示する。消去部440はさらに、磁性体材料からなる円筒状のスライド部材450を含む。円筒状のスライド部材450は、グリップ部10の外側を軸方向Xにスライド可能であり、スライド部材450の位置を可変することで、消去部440の磁石から生じる磁界の大きさ、あるいは磁力線の方向を変化させることができる。ユーザーは、磁気パネル上に描画された図形等を消去するとき、スライド部材450の位置を調整することで、消去できる範囲を調整することができる。例えば、スライド部材450を先端側にスライドさせれば、磁力線の半径方向の範囲が絞られ、小さな消去範囲を得ることができ、反対に、スライド部材450をグリップ部側にスライドさせれば、磁力線が半径方向に広がり、大きな消去範囲を得ることができる。
【0049】
次に、本発明の第5の実施例について説明する。第5の実施例は、摺動部40とグリップ部10との間のジョイント部に特徴を有する。
図12(A)に示すように、グリップ部10の端部には、軸方向に延在する細長い支持部材500が取り付けられる。細長い支持部材500は、円弧状または球面状の端部502を有し、端部502は、
図4に示すような連結部38の半円状の溝に当接される。連結部38の底面には、摺動部40が固定される。また、摺動部40の表面とグリップ部10の端部との間には、コイルスプリング520が介在される。コイルスプリング520の一方の端部がグリップ部10に固定され、他方の端部が摺動部40の表面に固定され、コイルスプリング520は、グリップ部10と摺動部40とを引き付けあう方向に張力を生じさせる。このスプリングの張力により支持部材500の端部502が連結部38の溝に一定の圧力で接触される。
図12(B)に示すように、ユーザーがグリップ部10を把持して摺動部40を磁気パネル上で摺動させるとき、摺動部40の水平姿勢が保持されつつ、グリップ部10が摺動部40に対して傾斜する。このとき、支持部材500の端部502が一定の接圧で連結部38に接触するため、グリップ部10の傾斜角がある程度保持され、ユーザーにとって描画がし易くなる。
【0050】
次に、本発明の第6の実施例について説明する。第6の実施例では、
図13に示すように、磁気ペンは、先端部20A、20Bを交換可能な構成を有している。先端部20Aは、グリップ部10の一方の支持部12Aの開口内に着脱自在に取り付けられ、同様に、先端部20Bは、グリップ部10の他方の支持部12Bの開口内に着脱自在に取り付けられる。先端部20A、20Bには、ジョイント部を介して摺動部40A、40Bが取り付けられているが、ジョイント部が故障または破損したり、長期間の使用により摺動部40A、40Bが消耗することがある。このような場合、先端部20A、20Bの交換が必要であり、新たな先端部20A、20Bが支持部12A、12Bに取り付けられる。好ましい態様では、
図13(B)に示すように、支持部12A、12Bの開口の内径D1=D2にし、先端部20A、20Bの円柱状部22A、22Bの直径を等しくすることで、先端部20A、20Bを支持部12A、12Bのいずれにも取り付け可能にすることができる。また、D1≠D2とした場合には、支持部12A、12Bの内径D1、D2に応じた直径の先端部20A、20Bが取り付けられる。
【0051】
次に、本発明の第7の実施例について説明する。第7の実施例では、
図14(A)に示すように、消去キャップ50Bが電池を内蔵せず、電池がグリップ部10内に内蔵される。消去キャップ50Bは、ハウジング200内に、円盤状の磁石210、モータ220、および駆動部230を含み、グリップ部10内に電池240が収容される。また、グリップ部10には、消去キャップ50Bの動作を開始させるためのスイッチ250が取り付けられる。スイッチ250がオンされたとき、電池240からの電力は、図示しない配線を介してコネクタ端子600に供給される。コネクタ端子600は、例えば、支持部12Bの外周に正極端子と負極端子とを有する。一方、ハウジング200の内側には、コネクタ端子610が取り付けられ、コネクタ端子610は、図示しない配線を介して駆動部230等の回路基板に接続される。コネクタ端子610は、正極端子と負極端子とを有する。
【0052】
ハウジング200がグリップ部10に装着されたとき、コネクタ端子600とコネクタ端子610とが接続され、スイッチ250がオンされたとき、電池240からの電力が駆動部230へ供給される。コネクタ端子600と610は、例えば、着脱可能な雄型端子と雌型端子とから構成される。
【0053】
グリップ部10内に電池240を内蔵することで、消去キャップ50Bに電池を内蔵する場合と比較して容量の大きな電池を使用することができ、動作寿命を長くし、また駆動能力を高めることができる。さらに、消去キャップ50Bの小型化、軽量化を図ることができる。なお、上記の例では、スイッチ250をグリップ部10に設けたが、スイッチ250は、消去キャップ50Bに設けるようにしてもよい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、本発明は、第1ないし第5の実施例をそれぞれ単独で包含するものであってもよいし、第1ないし第5の実施例の任意の組み合わせを包含するものであってもよい。