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特開2022-31417複数の水中航走体の投入方法、及び揚収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031417
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】複数の水中航走体の投入方法、及び揚収方法
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20220210BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B63C11/00 C
B63C11/48 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210035
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2017072283の分割
【原出願日】2017-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】金 岡秀
(72)【発明者】
【氏名】大和 裕幸
(57)【要約】
【課題】複数の水中航走体を展開・運用して水底探査等の調査作業を行うにあたって、水中航走体の投入及び揚収作業を効率よく安全に行うことができる複数の水中航走体の投入方法、及び揚収方法を提供すること。
【解決手段】母船10から水底を探査するための複数の水中航走体30を水中に投入するに当たり、複数の水中航走体30を管制するための数管理機能を有し水面の近傍を水中航走体30の数に基づいて制御することにより移動可能な水上管制手段20を先に進水させ、その後に、複数の水中航走体30を順次水中に投入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母船から水底を探査するための複数の水中航走体を水中に投入するに当たり、複数の前記水中航走体を管制するための数管理機能を有し水面の近傍を前記水中航走体の数に基づいて制御することにより移動可能な水上管制手段を先に進水させ、その後に、複数の前記水中航走体を順次水中に投入することを特徴とする複数の水中航走体の投入方法。
【請求項2】
先に進水した前記水上管制手段は、進水後、前記母船から所定距離離れるように移動することを特徴とする請求項1に記載の複数の水中航走体の投入方法。
【請求項3】
複数の前記水中航走体の投入順序は、前記水中航走体の沈降速度及び/又は潜航速度を考慮して定められることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複数の水中航走体の投入方法。
【請求項4】
前記母船の上で複数の前記水中航走体の探査深度を前記水中航走体に設定し、かつ前記水上管制手段に前記探査深度を入力することを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の複数の水中航走体の投入方法。
【請求項5】
母船に水底を探査するための複数の水中航走体を水中から揚収するに当たり、複数の前記水中航走体を順次水中から揚収した後に、複数の前記水中航走体を管制するための数管理機能を有し水面の近傍を前記水中航走体の数に基づいて制御することにより移動可能な水上管制手段を揚収することを特徴とする複数の水中航走体の揚収方法。
【請求項6】
後から揚収する前記水上管制手段は、複数の前記水中航走体を揚収している間は、前記母船から所定距離離れた位置で待機することを特徴とする請求項5に記載の複数の水中航走体の揚収方法。
【請求項7】
複数の前記水中航走体の揚収する順序は、浮上した順であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の複数の水中航走体の揚収方法。
【請求項8】
複数の前記水中航走体の揚収が完了するまで、前記水上管制手段は管制を行うことを特徴とする請求項5から請求項7のうちの1項に記載の複数の水中航走体の揚収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底探査等の調査作業を行う複数の水中航走体の投入方法、及び揚収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋や湖沼等において、調査水域に水中航走体を投入して水底探査等の調査作業を行う場合、水上に位置する船舶や水中に配置された装置が水中航走体に対する制御を行っている。
例えば特許文献1には、母船とケーブル接続された水中ステーションを海中に配設し、音響トランスポンダを探査地点近くの海底に配置し、複数の無索式無人潜水艇を水中ステーション及び音響トランスポンダと超音波信号を用いて通信させすることで誘導し、必要に応じて無索式無人潜水艇を水中ステーションにドッキングさせて充電又は電池交換と探査データの吸い上げを行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、第1トランスポンダ、第1受波器及び第2受波器を備えた水中ステーションを母船から海中に吊り下げ、海底に第2トランスポンダを設置し、探査用の自律型無人航走体に第3トランスポンダ及び第3受波器を設け、水中ステーションは第2トランスポンダの信号を第1受波器で受信することによって定点保持を図り、自律型無人航走体は、探査中は第2トランスポンダの信号を第3受波器で受信することによって自航し、動力が減少すると第1トランスポンダの信号を第3受波器で受信することによって水中ステーションに向かって航走し、水中ステーションは第3トランスポンダの信号を第2受波器で受信することによって自律型無人航走を収容するための姿勢制御を行う技術が開示されている。
また、特許文献3には、水上に位置する母船に送波器を設け、探査用の無人潜水機に受波器を設け、母船から無人潜水機に制御信号を送る水中音響通信において、画素信号のハフ変換を利用して伝送誤りを補正する技術が開示されている。
また、特許文献4には、母船と水中航走体との間における通信を中継する自走中継器を観察領域の水面近傍に配置し、自走中継器と母船との間の通信は電波通信で行い、自走中継器と水中航走体との間の通信は音響通信で行うことによって、水平方向の通信可能距離を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-266794号公報
【特許文献2】特開2003-26090号公報
【特許文献3】特開平5-147583号公報
【特許文献4】特開2001-308766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水中航走体は速度が遅いため1台だけでは広い水域を調査するのに時間がかかるが、エネルギー消費の面などから水中航走体の速度を上げるのには限界がある。そこで、広い水域を効率よく調査するために複数の水中航走体を投入することが考えられる。しかし、複数の水中航走体を用いて調査を行う場合は、1台の水中航走体を用いて調査を行う場合に比べて投入及び揚収作業に時間がかかる。また、水中航走体の投入及び揚収作業は、専用の設備を備えた専用船を用いて行うのが一般的であり、専用船のスケジュールが空くのを待つ必要があるため、水底探査の計画が希望通りに進まないといった課題がある。
特許文献1記載の発明は、水中ステーションや複数の無索式無人潜水艇の投入・揚収作業を効率よく安全に行うことについて開示するものではない。また、母船と水中ステーションがケーブルで接続されているため、母船や水中ステーションの移動が制限される。
特許文献2記載の発明は、水中ステーションや複数の自律型無人航走体の投入・揚収作業を効率よく安全に行うことについて開示するものではない。また、水中ステーションが母船から吊り下げられているため、母船や水中ステーションの移動が制限される。
特許文献3記載の発明は、水中音響通信が水面や海底の反射音の影響を受けやすいことを考慮し、伝送誤りを含んでいても正しい制御信号を推定することで無人潜水機が無制御状態に陥ることを防止しようとするものである。しかし、複数の無人潜水機の投入・揚収作業を効率よく安全に行うことについて開示するものではない。
特許文献4記載の発明は、自走中継器が自己の現在位置情報と水中航走体の現在位置情報とに基づいて水平移動の要否を判断し、水中航走体との通信状態を維持することが記載されている。また、水中航走体を複数投入することができる旨の記載がある。しかし、自走中継器や水中航走体の投入・揚収作業を効率よく安全に行うことについて開示するものではない。
【0005】
そこで本発明は、複数の水中航走体を展開・運用して水底探査等の調査作業を行うにあたって、水中航走体の投入及び揚収作業を効率よく安全に行うことができる複数の水中航走体の投入方法、及び揚収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に対応した複数の水中航走体の投入方法は、母船から水底を探査するための複数の水中航走体を水中に投入するに当たり、複数の水中航走体を管制するための数管理機能を有し水面の近傍を水中航走体の数に基づいて制御することにより移動可能な水上管制手段を先に進水させ、その後に、複数の水中航走体を順次水中に投入することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、先に水上管制手段が進水されるため、水上管制手段による水中航走体の管制を、水中航走体の投入後速やかに開始することができる。これにより、投入作業の効率及び安全性が向上する。
なお、探査とは観測、捜索、採取、救援、運搬等およそ水底において水中航走体が行なう行為の全体を含む。
【0007】
請求項2記載の本発明は、先に進水した水上管制手段は、進水後、母船から所定距離離れるように移動することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、水上管制手段は、後から投入される水中航走体が衝突したり、投入作業の邪魔となることがなく、投入された複数の水中航走体の管制を行うことができる。これにより、投入作業の効率及び安全性がさらに向上する。
【0008】
請求項3記載の本発明は、複数の水中航走体の投入順序は、水中航走体の沈降速度及び/又は潜航速度を考慮して定められることを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、例えば沈降速度や潜航速度が他よりも遅い水中航走体を先に投入することなどにより、探査開始までの時間を短縮でき、探査作業全体の効率を向上させることができる。また、各水中航走体間の沈降速度や潜航速度の差を考慮した投入順序とすることで、投入した水中航走体同士の衝突を防止することができ、安全性が向上する。
【0009】
請求項4記載の本発明は、母船の上で複数の水中航走体の探査深度を水中航走体に設定し、かつ水上管制手段に探査深度を入力することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、複数の水中航走体に、予め設定した探査深度において、水上管制手段の管制を受けながら探査作業を行わせることができる。また、作業スペースの広く取れる母船の上で、かつ水に触れることなく探査深度を入力できる。
【0010】
請求項5記載に対応した複数の水中航走体の揚収方法は、母船に水底を探査するための複数の水中航走体を水中から揚収するに当たり、複数の水中航走体を順次水中から揚収した後に、複数の水中航走体を管制するための数管理機能を有し水面の近傍を水中航走体の数に基づいて制御することにより移動可能な水上管制手段を揚収することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、水中航走体の位置や通信状態を水上管制手段で把握しながら揚収することができる。これにより、揚収作業の効率及び安全性が向上する。
【0011】
請求項6記載の本発明は、後から揚収する水上管制手段は、複数の水中航走体を揚収している間は、母船から所定距離離れた位置で待機することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、水上管制手段は、浮上して来る水中航走体が衝突したり、揚収作業の邪魔となることがなく、揚収を待つ複数の水中航走体の管制を最後まで行うことができる。これにより、揚収作業の効率及び安全性がさらに向上する。
【0012】
請求項7記載の本発明は、複数の水中航走体の揚収する順序は、浮上した順であることを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、先に浮上した水中航走体に後から浮上した水中航走体が衝突することを防止できる。また、浮上した水中航走体が水に流されて見失うことを防止できる。
【0013】
請求項8記載の本発明は、複数の水中航走体の揚収が完了するまで、水上管制手段は管制を行うことを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、全ての水中航走体が揚収されるまで水上管制手段による水中航走体の管制が継続されるので、揚収作業の効率及び安全性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複数の水中航走体の投入方法によれば、先に水上管制手段が進水されるため、水上管制手段による水中航走体の管制を、水中航走体の投入後速やかに開始することができる。これにより、投入作業の効率及び安全性が向上する。
【0015】
また、先に進水した水上管制手段は、進水後、母船から所定距離離れるように移動する場合には、水上管制手段は、後から投入される水中航走体が衝突したり、投入作業の邪魔となることがなく、投入された複数の水中航走体の管制を行うことができる。これにより、投入作業の効率及び安全性がさらに向上する。
【0016】
また、複数の水中航走体の投入順序は、水中航走体の沈降速度及び/又は潜航速度を考慮して定められる場合には、例えば沈降速度や潜航速度が他よりも遅い水中航走体を先に投入することなどにより、探査開始までの時間を短縮でき、探査作業全体の効率を向上させることができる。また、各水中航走体間の沈降速度や潜航速度の差を考慮した投入順序とすることで、投入した水中航走体同士の衝突を防止することができ、安全性が向上する。
【0017】
また、母船の上で複数の水中航走体の探査深度を水中航走体に設定し、かつ水上管制手段に探査深度を入力する場合には、複数の水中航走体に、予め設定した探査深度において、水上管制手段の管制を受けながら探査作業を行わせることができる。また、作業スペースの広く取れる母船の上で、かつ水に触れることなく探査深度を入力できる。
【0018】
また、本発明の複数の水中航走体の揚収方法によれば、水中航走体の位置や通信状態を水上管制手段で把握しながら揚収することができる。これにより、揚収作業の効率及び安全性が向上する。
【0019】
また、後から揚収する水上管制手段は、複数の水中航走体を揚収している間は、母船から所定距離離れた位置で待機する場合には、水上管制手段は、浮上して来る水中航走体が衝突したり、揚収作業の邪魔となることがなく、揚収を待つ複数の水中航走体の管制を最後まで行うことができる。これにより、揚収作業の効率及び安全性がさらに向上する。
【0020】
また、複数の水中航走体の揚収する順序は、浮上した順である場合には、先に浮上した水中航走体に後から浮上した水中航走体が衝突することを防止できる。また、浮上した水中航走体が水に流されて見失うことを防止できる。
【0021】
また、複数の水中航走体の揚収が完了するまで、水上管制手段は管制を行う場合には、全ての水中航走体が揚収されるまで水上管制手段による水中航走体の管制が継続されるので、揚収作業の効率及び安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による複数の水中航走体の運用システムの概略構成図
図2】同水中航走体の外観斜視図
図3】同水上管制手段及び複数の水中航走体の載置状態を示す図
図4】同水中航走体の揚収作業を示す図
図5】同投入・揚収システムの概略構成図
図6】同水中航走体の制御ブロック図
図7】同水中航走体の制御フロー図
図8】同水上管制手段の制御ブロック図
図9】同水上管制手段の制御フロー図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態による複数の水中航走体の投入方法、揚収方法、及び複数の水中航走体の投入・揚収システムについて説明する。
【0024】
図1は複数の水中航走体の運用システムの概略構成図、図2は水中航走体の外観斜視図である。
図1では、海洋や湖沼等において、調査水域に1台の水上管制手段20を進水させ、複数の水中航走体30を投入し、水底を探査することにより鉱物資源やエネルギー資源等の調査作業を行う状態を示している。水上管制手段20及び水中航走体30は、母船(支援船)10に積載して調査水域まで運搬してきたものである。
水上管制手段20及び水中航走体30は無人かつ無索で自律航走するロボットであり、水面の近傍に配置された水上管制手段20が、電波の届かない水中で調査作業を行う複数の水中航走体30に対して音響信号を利用した管制を行っている。
【0025】
水上管制手段20には、洋上中継器(ASV:Autonomous Surface Vehicle)を用いている。水上管制手段20は、端部が半球面となった筒型の本体20aと、本体20aの上面に延設された垂直翼20bとを備える。母船10から調査水域に進水させた水上管制手段20は、本体20aが水中に没して垂直翼20bの上部が水面上に突き出た半潜水状態で用いられる。垂直翼20bの上部には、GPS等の自己位置把握手段21と、衛星通信アンテナ及び無線LANアンテナ等の海上通信手段22が搭載されている。水上管制手段20は、自己位置把握手段21を用いてGNSS(全地球航法衛星システム)衛星1からのGNSS信号を受信することにより、自己の位置を把握できる。また、海上通信手段22を用いて母船10との通信を行うことができる。
また、本体20aの後部には舵及びプロペラを有する移動手段23が設けられており、移動手段23によって水面の近傍を移動することができる。
また、本体20aの下面には、音響測位手段24及び通信手段25が設けられている。通信手段25は、音波を送信する送波器と音波を受信する受波器とを有する。水上管制手段20は、音響測位手段24を用いて水中航走体30の位置を測定すると共に、通信手段25を用いて水中航走体30と音響信号による双方向通信を行い、水中航走体30を管制している。水上管制手段20から水中に向けて発信される音響信号が到達し易いのは、水上管制手段20を頂点とした略円錐状の範囲であるため、この略円錐状の範囲を水上管制手段20が管制する管制領域Xとしている。
【0026】
水中航走体30には、水上管制手段20との接続にケーブルを用いずに水中を自律的に航走する無索自律無人型の航走体(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)を用いている。水上管制手段20は複数の水中航走体30を音響信号を用いて管制するため、水上管制手段20にケーブル用の設備を設ける必要が無く、また、ケーブルが絡んだり、ケーブルによって水上管制手段20の移動が制限されたりすることがない。
図1では、複数の水中航走体30を、1台の第1水中航走体30Aと、2台の第2水中航走体30Bとした場合を示している。第1水中航走体30A及び第2水中航走体30Bには、舵、推進器及びバラスト(重り)などの航走手段(潜航手段)31が設けられており、この航走手段31によって水中を航走及び潜航することができる。また、水中航走体30には、自機の位置の測定に用いる自機測位手段32と、水上管制手段20との音響信号による双方向通信に用いる通信手段33と、水上管制手段20の音響測位手段24から発せられる信号に対して返答を行う音響トランスポンダ(図示無し)が設けられている。通信手段33は、音波を送信する送波器と音波を受信する受波器とを有する。水中航走体30は、水上管制手段20による測位が所定回数失敗した場合や、水上管制手段20との通信に所定回数失敗した場合などは、緊急浮上させて母船10に回収することができる。
ホバリング型の第1水中航走体30Aは、第2水中航走体30Bよりも航走速度を遅くすることができる。また、垂直スラスタや水平スラスタを有し、第2水中航走体30Bよりも動きの自由度が高く、水流等がある場所においても位置を保持することができるため、主に水底近くでの精密な調査作業を担う。第1水中航走体30Aには、水底の映像撮影を行うための撮像手段41が設けられている。撮像手段41は、例えば照明を備えたカメラである。
図2(a)は第2水中航走体30Bの上方斜視図、図2(b)は第2水中航走体30Bの下方斜視図である。航走型の第2水中航走体30Bは、第1水中航走体30Aよりも機敏かつ高速に動くことができるため、主に水底から離れた位置でより広い範囲における調査作業を担う。第2水中航走体30Bには、水底の地形の調査を行う地形調査手段42と水底下の地層の調査を行う地層調査手段43が設けられている。地形調査手段42及び地層調査手段43は、例えばソナーである。また、第2水中航走体30Bは、航走手段(潜航手段)31として、後部に推進器31Aを備え、下部にバラスト(重り)31Bを備えている。バラスト31Bは、第2水中航走体30Bから切り離し可能に取り付けられている。
【0027】
次に、水上管制手段20及び複数の水中航走体30の投入・揚収システムについて、図3から図5を用いて説明する。
【0028】
図3は水上管制手段20及び複数の水中航走体30の載置状態を示す図、図4は水中航走体30の揚収作業を示す図である。
本実施形態の投入・揚収システムは、母船10に搭載されている。母船10は水中航走体30の投入・揚収作業用の専用設備が設けられた専用船ではなく、一般船である。
図3に示すように、投入・揚収システムは、水上管制手段20を載置する水上管制手段用載置台50と、水中航走30を載置する水中航走体用載置台60を備える。水上管制手段用載置台50の下部には入替手段51が設けられ、水中航走体用載置台60の下部には入替手段61が設けられている。
また、図4に示すように、投入・揚収システムは、投入・揚収設備70を備える。投入・揚収設備70は一般船に装備又は搭載可能なクレーンを含む設備であり、水上管制手段20を進水及び揚収する機能と、水中航走体30を投入及び揚収する機能を有している。これにより、水上管制手段20と水中航走体30を同じ設備を用いて進水、投入及び揚収することができる。また、母船10に一般船を用いることができるため、専用船のスケジュールに左右されることなく水底探査を行うことができる。
本実施形態では、入替手段51、61をキャスターとしている。水上管制手段20及び水中航走体30の投入・揚収順序に従って、入替手段51、61により、水上管制手段用載置台50と水中航走体用載置台60の投入・揚収設備70との位置関係を入れ替えることができる。これにより、水上管制手段20及び複数の水中航走体30を安定して載置、入れ替え、投入及び揚収作業をスムーズに行うことができる。図4では、第2水中航走体30Bの揚収作業を行うにあたり、母船10上の所定位置に水中航走体用載置台60が配置された状態を示している。
なお、入替手段51、61は、水上管制手段用載置台50と水中航走体用載置台60を移動させて投入・揚収設備70との位置関係を入れ替えるロボットアームやコンベヤー等であってもよい。
【0029】
図5は投入・揚収システムの概略構成図である。
投入・揚収システムは、表示手段80を備える。表示手段80は、水中航走体30の投入順序又は揚収順序を表示するものであり、例えば電光掲示板、パソコンの画面、水中航走体30に付された番号などである。本実施形態では、表示手段80を、投入・揚収作業を行う作業指揮者から視認可能な位置に設けられた電光掲示板81と、各水中航走体30に付した識別番号82としている。表示手段80を備えることにより、複数の水中航走体30の投入順序又は揚収順序の間違いを防止して、作業の効率及び安全性を向上させることができる。
【0030】
母船10から複数の水中航走体30を投入するに当たっては、母船10から複数の水中航走体30を投入する前に、水上管制手段20を進水させる。水上管制手段20を進水させた後に水中航走体30を投入することで、水上管制手段20による水中航走体30の管制を、水中航走体30の投入後速やかに開始することができる。また、寸法的に水中航走体30よりも大きい水上管制手段20を先に進水させることにより、複数の水中航走体30の母船10上における作業スペースも広く確保できる。これにより、投入作業の効率及び安全性が向上する。
先に進水した水中航走体30よりも寸法的にも大きい水上管制手段20は、進水後、母船10から所定距離H離れるように移動する。所定距離Hは、後から投入される水中航走体30が衝突したり、投入作業の邪魔となることがなく、かつ、後から投入される複数の水中航走体30の管制を行うことができる範囲内とする。これにより、投入作業の効率及び安全性がさらに向上する。なお、所定距離Hは、水中航走体30の投入位置からの所定距離H1として設定してもよいし、船舶の側面からの所定距離H2として設定してもよい。
【0031】
複数の水中航走体30の投入順序は、水中航走体30の沈降速度又は潜航速度の少なくとも一方を考慮して定めることが好ましい。
例えば沈降速度や潜航速度が第2水中航走体30Bよりも遅く、探査深度も大きい第1水中航走体30Aを先に投入することなどにより、探査開始までの時間を短縮でき、探査作業全体の効率を向上させることができる。また、各水中航走体30間の沈降速度や潜航速度の差を考慮した投入順序とすることで、投入した水中航走体30同士の衝突を防止することができ、安全性が向上する。
【0032】
また、母船10の上で複数の水中航走体30の探査深度を水中航走体30に設定し、かつ水上管制手段20に水中航走体30に設定した探査深度を入力することが好ましい。これにより、予め設定した探査深度において、複数の水中航走体30が水上管制手段20の管制を受けながら探査作業を行うことができる。また、作業スペースを広く取れる母船10の上で、かつ水に触れることなく探査深度を入力できる。
なお、探査深度以外に、探査ミッション、探査領域、航走経路などといった探査に必要な情報を入力することにより探査条件として設定することも可能である。
【0033】
母船10に複数の水中航走体30を揚収するに当たっては、複数の水中航走体30を順次水中から揚収した後に、水上管制手段20を揚収する。最後に水上管制手段20を揚収することで、水中航走体30の位置や通信状態を水上管制手段20で把握しながら揚収することができる。これにより、揚収作業の効率及び安全性が向上する。
水上管制手段20は、複数の水中航走体30を揚収している間は、母船10から所定距離H離れた位置で待機する。所定距離Hは、浮上してくる水中航走体30が衝突したり、水中航走体30の揚収作業の邪魔となることがなく、かつ、揚収されていない水中航走体30の管制を行うことができる範囲内とする。これにより、揚収作業の効率及び安全性がさらに向上する。なお、所定距離Hは、水中航走体30の揚収位置からの所定距離H1として設定してもよいし、船舶の側面からの所定距離H2として設定してもよい。
【0034】
複数の水中航走体30の揚収順序は、浮上した順であることが好ましい。浮上した順に揚収することで、先に浮上した水中航走体30に後から浮上した水中航走体30が衝突することを防止できる。また、浮上した水中航走体30が水に流されて見失うことを防止できる。
【0035】
また、複数の水中航走体30の揚収が完了するまで、水上管制手段20は、母船10から所定距離H離れた位置で水中航走体30の管制を行うことが好ましい。全ての水中航走体30が揚収されるまで水上管制手段20による水中航走体30の管制を継続することにより、揚収作業の効率及び安全性が向上する。
【0036】
次に、水中航走体30の制御について、図6及び図7を用いて説明する。
図6は水中航走体30の制御ブロック図、図7は水中航走体30の制御フロー図である。
水中航走体30は、航走手段31、自機測位手段32、通信手段33、設定手段34、深度計35、探査ミッション遂行手段36、伝送手段37、記録手段38、航走速度設定部39、航走制御部40、撮像手段41、地形調査手段42及び地層調査手段43を備える。
探査ミッション遂行手段36は、深度制御部36A、潜航制御部36B、位置推定部36C、時刻管理部36D、ミッション制御部36Eを有する。
航走制御部40は、管制領域判断部40Aを有する。
【0037】
母船10に乗船しているオペレーターは、水中航走体30を母船10から探査水域に投入する前に、設定手段34を用いて、水中航走体30に対して、水中航走体30の探査ミッション、探査深度、探査領域及び航走経路などといった探査に必要な情報を入力することにより探査条件設定を行うと共に、航走速度設定部39を用いて、水中航走体30に対して、航走速度を設定する(ステップ1)。探査ミッション、探査深度、探査領域及び航走経路は、水中航走体30ごとに異ならせて設定する。
設定した探査深度などの探査条件及び航走速度は、後述のように水上管制手段20に入力する。
探査領域は、設定された各々の探査深度において、複数の水中航走体30が各々の探査領域を有するように設定することが好ましい。これにより、一層効率よく探査を行うことができる。
また、航走経路は、各々の探査領域を航走する水中航走体30の航走軌跡が、同時刻に重ならないように、航走経路を設定することが好ましい。これにより、探査深度が近接した水中航走体30同士の衝突を防止して安全性を高めることができる。また、水中航走体30が上下に重ならないようにすることで、水中航走体30が誤観測を起こしたり観測不能に陥ったりすることを低減できる。
また、水中航走体30ごとに異ならせて設定する探査深度は、探査深度が水底に近い低高度探査深度と、探査深度が水底から遠い高高度探査深度を有することが好ましく、低高度探査深度は水底からの高度(距離)が1m以上50m未満とし、高高度探査深度は水底からの高度(距離)が10m以上200m未満とすることがより好ましい。これにより、水底に近い領域と、水底から遠い領域を効率よく探査することができる。本実施形態では、ホバリング型の第1水中航走体30Aが低高度探査深度の領域の探査を担い、航走型の第2水中航走体30Bが高高度探査深度の領域の探査を担っている。第1水中航走体30Aの航走速度は第2水中航走体30Bの航走速度よりも遅いため、水底近くでの探査をより精密なものとすることができる。
【0038】
ステップ1の後、複数の水中航走体30を投入順序に従って水中に投入する(ステップ2)。
先に進水させた水上管制手段20は、投入された水中航走体30の管制を開始する。
【0039】
ステップ2の後、複数の水中航走体30は潜航及び沈降を開始する(ステップ3)。
潜航は推進器31A及びバラスト31Bを用いて行い、沈降は推進器31を停止してバラスト31Bの重さのみによって行う。
潜航及び沈降にあたって複数の水中航走体30の各々は、深度計35及び自機測位手段32を用いて自機の深度及び位置を測定し、深度制御部36A、潜航制御部36B及び位置推定部36Cを有する探査ミッション遂行手段36が、ステップ1で設定された探査深度に従って航走制御部40を制御する。航走制御部40は、探査ミッション遂行手段36による制御と航走速度設定部39で設定された航走速度に従って航走手段31を制御する。
自機測位手段32による自機の位置の測定は、例えば、速度センサ及びジャイロセンサを搭載し、自機の速度及び加速度を検出して算出することにより行う。
【0040】
ステップ3の後、設定された探査深度に達した水中航走体30は航走を開始する(ステップ4)。
設定された探査深度で航走を開始した各水中航走体30は、自機測位手段32を用いて自機の位置を測定し、探査ミッション遂行手段36に送信する。位置推定部36Cを有する探査ミッション遂行手段36は、ステップ1で設定された探査領域を水中航走体30が航走するように航走制御部40を制御する。航走制御部40は、探査ミッション遂行手段36による制御と航走速度設定部39で設定された航走速度に従って航走手段31を制御する。これにより、水中航走体30は探査領域を航走する(ステップ5)。
時刻を管理する時刻管理部36Dを有する探査ミッション遂行手段36は、ステップ1で設定された航走経路に従って、他の水中航走体30と航走軌跡が同時刻に重ならないように航走制御部40を制御する。
【0041】
航走制御部40は、探査ミッション遂行手段36から受信した自機の推定位置、深度及び水上管制手段20との通信状態に基づいて、水上管制手段20の管制領域X内で航走する(ステップ6)。通信状態は、例えばシグナル/ノイズ比(S/N比)で把握する。
また、航走制御部40は、管制領域判断部40Aを有し、自機の推定位置及び水上管制手段20との通信状態に基づいて、自機が管制領域X内に位置するか否かを定期的に判断する(ステップ7)。
【0042】
ステップ7において、自機が管制領域X内にいると判断した場合には、探査ミッションを遂行する(ステップ8)。
探査ミッション遂行手段36のミッション制御部36Eが、第1水中航走体30Aに設けられた撮像手段41を制御することにより、水底の映像撮影を行うことができる。また、ミッション制御部36Eが、第2水中航走体30Bに設けられた地形調査手段42及び地層調査手段43を制御することにより、水底の地形及び水底下の地層の情報を得ることができる。
得られた撮影画像、水底の地形及び水底下の地層の情報といった探査ミッション遂行結果は、ハードディスクや磁気テープ等の記録手段38に記録される。また、伝送手段37で符号化等の処理が行われた後に通信手段33を用いて水上管制手段20へ送信される(ステップ9)。
【0043】
ステップ9の後、探査ミッション遂行手段36は、設定された探査ミッションを完了したと判断した場合は、探査ミッションを終了し(ステップ10)、自機を浮上させる(ステップ11)。
【0044】
ステップ7において、自機が管制領域X内にいないと判断した場合には、探査ミッション遂行手段は、探査続行不可能と判断し、自機を浮上させる(ステップ11)。
なお、浮上させる前に、自機測位手段32による測位結果等に基づいて、位置推定部36Cによる自機の位置推定を行い、管制領域Xに戻れるか否かを判断し、戻れないと判断した場合に浮上させるようにしてもよい。
【0045】
次に、水上管制手段20の制御について、図8及び図9を用いて説明する。
図8は水上管制手段20の制御ブロック図、図9は水上管制手段20の制御フロー図である。
水上管制手段20は、自己位置把握手段21、海上通信手段22、移動手段23、音響測位手段24、通信手段25、管制設定部26及び移動制御手段27を備える。
移動制御手段27は、数管理部27A、待機制御部27B、位置推定部27C、航走記録部27D及び管制判断部27Eを有する。
【0046】
母船10に乗船しているオペレーターは、水上管制手段20を母船10から調査水域に進水させる前に、管制設定部26を用いて、水上管制手段20に対して、水上管制手段20の移動範囲、管制すべき水中航走体30の数や性能、深度などといった管制に必要な情報を入力することにより管制設定を行う(ステップ11)。
ステップ11の後、調査水域に進水した水上管制手段20は、後から投入された水中航走体30に対する管制を開始する。まず、音響測位手段24を用いて複数の水中航走体30のそれぞれの位置を測定し、測位結果を移動制御手段27に送信する(ステップ12)。
ステップ12の後、通信手段25を用いて複数の水中航走体30のそれぞれとの通信状態を測定し、測定結果を移動制御手段27に送信する(ステップ13)。通信状態は、例えばシグナル/ノイズ比(S/N比)で把握する。
移動制御手段27は、受信したステップ12における測位結果とステップ13における測定結果に基づいて、複数の水中航走体30のそれぞれの航走経路を時刻とともに航走記録部27Dに記録する(ステップ14)。
【0047】
ステップ14の後、数管理部27Aは、ステップ11における管制設定で入力された水中航走体30の数と、ステップ14で航走経路が記録された水中航走体30の数とを比較し、管制すべき水中航走体30の全数が管制領域X内に位置するか否かを判断する(ステップ15)。
ステップ15において、管制すべき水中航走体30の数と航走経路が記録された水中航走体30の数が同じか多いと判断した場合、すなわち管制すべき水中航走体30の全数が管制領域X内に位置すると判断した場合には、その結果を管制判断部27Eに送信する。
この場合において、移動制御手段27は、航走記録部27Dに記録された航走経路等に基づいて複数の水中航走体30の行動を予測し、その予測結果に基づいて水中航走体30が管制領域Xから外れないように水上管制手段20を移動するように制御してもよい。これにより、水中航走体30が管制領域Xから外れることを未然に防ぐことができる。
なお、水上管制手段20を移動するに当り、移動開始時点での管制領域Xの中に位置する複数の水中航走体30の数が減じない範囲で移動することが好ましい。これにより、管制領域X内に位置する水中航走体30の数が減少することを防止できる。
【0048】
ステップ15において、管制すべき水中航走体30の数よりも航走経路が記録された水中航走体30の数が少ないと判断した場合、すなわち管制すべき水中航走体30の一部又は全数が管制領域Xを外れたと判断した場合には、位置推定部27Cは、航走記録部27Dに記録された水中航走体30の航走経路に基づいて、管制領域Xを外れた水中航走体30が存在する方向を推定する(ステップ16)。
ステップ16の後、待機制御部27Bは、ステップ15において水中航走体30が管制領域Xを外れたことが最初に検出されたときから所定時間経過したか否かを判断する(ステップ17)。
ステップ17において、所定時間経過していないと判断した場合には、ステップ15に戻り、管制すべき水中航走体30の全てが管制領域X内にいるか否かを再度判断する。
ステップ17において、所定時間経過したと判断した場合には、待機制御部27Bは、ステップ15の判断結果を管制判断部27Eに送信すると共に、水上管制手段20の移動を開始するように指示する(ステップ18)。これにより移動手段23が動作して水上管制手段20が移動する。
管制すべき水中航走体30の一部又は全数が管制領域Xを外れたと判断した場合であっても、管制領域Xを外れた水中航走体30が自ら管制領域X内に戻ってくる可能性や、実際には管制領域X内に位置しているものの一時的な測位・通信障害により管制領域Xを外れたと誤って検出された可能性等があるため、本実施形態のように、水上管制手段20を移動するに当り、水中航走体30が管制領域Xを外れたことを検出してから所定時間待機し、その間にステップ5の判断を所定回数繰り返すことで、水上管制手段20が無用に動くことを低減できる。これにより、水上管制手段20のエネルギーの浪費や、管制領域X内に位置する水中航走体30が管制領域Xから外れてしまうことを防止できる。
また、位置推定部27Cが、航走記録部27Dに記録された水中航走体30の航走経路に基づいて、管制領域Xを外れた水中航走体30が存在する方向を推定し、移動制御手段27がこの推定結果に基づいて移動手段23を制御することで、水上管制手段20の管制精度や移動効率を向上させ、管制領域Xから外れた水中航走体30を管制領域X内により早く戻すことができる。
【0049】
移動制御手段27は、水上管制手段20を移動させる場合、複数の水中航走体30の全てを管制できる位置に水上管制手段20が移動するように移動手段23を制御することが好ましい。これにより、全ての水中航走体30を水上管制手段20の管制下におくことができるため、より安全かつ効率的に水中探査を行うことができる。
また、複数の水中航走体30の全数を管制できない場合は、移動制御手段27は、複数の水中航走体30の最大数を管制できる位置に水上管制手段20が移動するように移動手段23を制御することが好ましい。これにより、管制領域Xから外れる水中航走体30の数を最小にすることができる。この場合、最大数は、複数の水中航走体30の数から管制領域Xを逸脱した水中航走体30、故障した水中航走体30、浮上した水中航走体30のいずれかを含む管制不可能数を減じた数であることが好ましい。これにより、探査可能な複数の水中航走体30を管制領域X内に位置させて水中探査を継続することができる。
【0050】
管制判断部27Eは、数管理部27A又は待機制御部27Bから送信された判断結果に基づいて、管制設定を変更するか否かを判断する(ステップ19)。
ステップ19では、数管理部27Aから判断結果を受信した場合であって、管制すべき水中航走体30の数と航走経路が記録された水中航走体30の数が同じ場合には、管制設定を変更せず、ステップ12となる。
また、数管理部27Aから判断結果を受信した場合であって、管制すべき水中航走体30の数よりも航走経路が記録された水中航走体30の数が多い場合には、ステップ11となり、管制設定部26は、管制領域Xに戻った水中航走体30を含めた管制設定に変更する。これにより、管制領域Xに戻った水中航走体30を含めて管制を継続することができる。
また、待機制御部27Bから判断結果を受信した場合、すなわち管制領域Xを外れた水中航走体30があるとの判断結果を受信した場合には、ステップ11となり、管制設定部26は、管制領域Xを外れた水中航走体30を除いた管制設定に変更する。これにより、管制領域Xを外れた水中航走体30を除いて管制を継続することができる。
【0051】
このように水上管制手段20は、複数の水中航走体30の数を管理する数管理部27Aを有することで、水上管制手段20の移動を、水中航走体30の数に基づいて制御することができる。
また、水上管制手段20が複数の水中航走体30を測位できる位置に移動するため、複数の水中航走体30を管制領域X内に位置させて調査作業を継続することができる。
また、水上管制手段20を複数の水中航走体30との通信が可能な位置に移動させることで、より安全かつ効率的に調査作業を行うことができる。
これらにより、複数の水中航走体30を見失うことなく広い水域を安全かつ効率的に調査することができる。
なお、複数の水中航走体30の設定手段34で設定される探査深度等の探査条件は、母船10における探査条件設定以外にも、母船10からの指示を水上管制手段20を介して、又は水上管制手段20にプログラムされたスケジュールに基づいて、自動的に更新することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の複数の水中航走体の投入方法、揚収方法、及び複数の水中航走体の投入・揚収システムは、複数の水中航走体を展開・運用して水底探査等の調査作業を行うにあたって、水中航走体の投入及び揚収作業を効率よく安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
10 母船
20 水上管制手段
30 水中航走体
34 設定手段
50 水上管制手段用載置台
51 入替手段
60 水中航走体用載置台
61 入替手段
70 投入・揚収設備
80 表示手段
H 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9