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特開2022-31434固形腫瘍悪性病変を処置するための、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体と組み合わせた、細菌、細菌産物、および他の免疫調節性実体の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031434
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】固形腫瘍悪性病変を処置するための、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体と組み合わせた、細菌、細菌産物、および他の免疫調節性実体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220210BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20220210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220210BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K35/742
A61P35/00
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210353
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2020058163の分割
【原出願日】2015-03-31
(31)【優先権主張番号】61/972,633
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/035,291
(32)【優先日】2014-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】514063906
【氏名又は名称】バイオメッド バレー ディスカバリーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(72)【発明者】
【氏名】シビン ゾウ
(72)【発明者】
【氏名】バート ボーゲルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス キンズラー
(72)【発明者】
【氏名】キベム キム
(72)【発明者】
【氏名】サウラブ サハ
(57)【要約】
【課題】抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体と、細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の少なくとも1つのメンバーの組み合わせを使用することにより、被験体において固形腫瘍を処置するための方法およびキットを提供すること。
【解決手段】特定の実施形態では、細菌はClostridium novyi-NTなどの毒素枯渇嫌気性細菌である。一局面において、被験体において固形腫瘍を処置するための方法が提供され、この方法は、上記被験体に、抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体の治療有効量を、細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせて投与して、上記固形腫瘍を処置することを含む。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において固形乳房腫瘍を処置するための組み合わせ物であって、抗CTLA-4抗体の治療有効量を、Clostridium novyi細菌と組み合わせて含む、組み合わせ物。
【請求項2】
被験体において固形乳房腫瘍を処置するための組成物であって、抗CTLA-4抗体の治療有効量を含み、前記組成物が、Clostridium novyi細菌と組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
被験体において固形乳房腫瘍を処置するための組成物であって、Clostridium novyi細菌を含み、前記組成物が、抗CTLA-4抗体の治療有効量と組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項4】
前記Clostridium novyi細菌が毒素枯渇嫌気性細菌である、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Clostridium novyi細菌がClostridium novyi-NTである、請求項4に記載の組み合わせ物または組成物。
【請求項6】
野生型の前記Clostridium novyi細菌の毒素遺伝子の一部または全てが欠失している、請求項4に記載の組み合わせ物または組成物。
【請求項7】
前記Clostridium novyi細菌の毒性が、対応する野生型Clostridium novyi細菌と比べて多くとも2分の1に減少している、請求項4に記載の組み合わせ物または組成物。
【請求項8】
前記Clostridium novyi細菌が静脈内にまたは腫瘍内に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2もしくは3に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗CTLA-4抗体が、静脈内、筋肉内、皮下、または腫瘍内からなる群より選択される少なくとも1つの方法により投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2もしくは3に記載の組成物。
【請求項10】
前記固形乳房腫瘍が悪性である、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2もしくは3に記載の組成物。
【請求項11】
前記固形乳房腫瘍が処置された後、前記固形乳房腫瘍が退縮する、または前記固形腫瘍の成長が遅延もしくは停止することを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2もしくは3に記載の組成物。
【請求項12】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2もしくは3に記載の組成物。
【請求項13】
前記被験体が非ヒト動物である、請求項1に記載の組み合わせ物または請求項2もしくは3に記載の組成物。
【請求項14】
固形乳房腫瘍を処置するためのキットであって、Clostridium novyi細菌、ならびに抗CTLA-4抗体を含む、キット。
【請求項15】
前記Clostridium novyi細菌が毒素枯渇嫌気性細菌である、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記Clostridium novyi細菌がClostridium novyi-NTである、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
野生型の前記Clostridium novyi細菌の毒素遺伝子の一部または全てが欠失している、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記Clostridium novyi細菌の毒性が対応する野生型Clostridium novyi細菌と比べて多くとも2分の1に減少している、請求項15に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2014年3月31日に出願された米国仮出願第61/972,633号および2014年8月8日に出願された米国仮出願第62/035,291号(これらは、それらの全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
膵臓、結腸、肺、乳房、卵巣、脳または前立腺の進行がんを示す患者の予後は不良である。この悲劇的状況から盛んに研究が行われた結果、がん病因についての理解に革新がもたらされ、従来の化学療法剤の適用が著しく増加し、有望な新たな薬剤がいくつか得られた。不運なことに、こうした革新は一般的な固形腫瘍の処置にまだ大きな影響を与えてはいない。将来の治療効果について何よりも望まれていることは、嫌気性細菌の株であるClostridium novyi(C.novyi)の芽胞などの新規のアプローチをさらに多くの従来の薬剤と組み合わせることにあると多くの者が考えている。
【0003】
嫌気性細菌を使用する理論的根拠は、腫瘍内に存在する独自の血管新生状態にある。固形腫瘍は成長するには血管新生が必要であり、成長に従って、腫瘍の一部の血管形成が不十分になる。これらの無血管領域は治療薬濃度が低くなる傾向がある。さらに、無血管領域にまで実際に到達する薬物分子は通常、完全な効力のためには酸素と、活発に複製する細胞の両方に依拠している。
【0004】
固形腫瘍悪性病変は、嫌気性細菌のいくつかの種を使用することにより処置が可能であることが以前に示されている。C.novyiは、グラム陽性内生胞子形成偏性嫌気性細菌である。Clostridium novyi-NT(C.novyi-NT)は、主要な毒素に欠ける減弱型のC.novyiである。がんの処置のためのC.novyi-NTの使用は以前に報告されている(Agrawalら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.101巻(42号):15172~15177頁;Bettegowdaら、(2003年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.100巻(25号):15083~15088頁;Bettegowdaら、(2006年)Nat. Biotechnol.24巻(12号):1573~1580頁;Cheongら、(2006年)Science 314巻(5803号):1308~1311頁;Dangら、(2004年)Cancer Biol. Ther.3巻:326~337頁;Dangら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.98巻(26号):15155~15160頁;Diazら、(2005年)Toxicol. Sci. 88巻(2号):562~575頁;Krickら、(2012年)Am. J. Vet. Re.73巻(1号):112~118頁)。
免疫療法も転移性がんを根絶する有望なアプローチである。T細胞媒介免疫のための2つの重要なチェックポイントであるCTLA-4およびPD-1を標的にする中和抗体についての最近の臨床試験では、固形腫瘍悪性病変を有する患者における臨床応答が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Agrawalら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2004年)101巻(42号):15172~15177頁
【非特許文献2】Bettegowdaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2003年)100巻(25号):15083~15088頁
【非特許文献3】Bettegowdaら、Nat.Biotechnol.(2006年)24巻(12号):1573~1580頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、ここに開示される主題は、被験体において固形腫瘍を処置するための方法であって、被験体に、抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体の治療有効量を、細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせて投与して、固形腫瘍を処置することを含む方法を提供する。特定の態様では、細菌は致死毒素枯渇嫌気性細菌である。別の特定の態様では、細菌産物は細菌の成分、例えば、細菌膜成分である。
【0007】
ある特定の態様では、ここに開示される主題は、固形腫瘍を処置するためのキットであって、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体、ならびに細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の少なくとも1つのメンバーを含むキットを提供する。
【0008】
他の態様では、ここに開示される主題は、被験体においてがんを処置する方法であって、被験体に、少なくとも1つの抗CTLA-4抗体と少なくとも1つの抗PD-1抗体の組み合わせの治療有効量を投与して、がんを処置することを含む方法を提供する。
【0009】
ここに開示される主題のある特定の態様は上述されており、ここに開示される主題により全体的にまたは部分的に取り組まれているが、本明細書の下で最もよく説明されているように、付随する実施例および図と関連して考慮すると説明が進むに従って、他の態様が明らかになる。
【0010】
ここに開示される主題をこのように概括的な言葉で説明したので、添付の図についてここで言及するが、必ずしも縮尺通りに描いてはいない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体において固形腫瘍を処置するための方法であって、前記被験体に、抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体の治療有効量を、細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせて投与して、前記固形腫瘍を処置することを含む、方法。
(項目2)
前記細菌が嫌気性細菌である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記嫌気性細菌がClostridium novyiである、項目2に記載の方法。(項目4)
前記細菌または前記細菌産物が毒素枯渇嫌気性細菌である、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記毒素枯渇嫌気性細菌がClostridium novyi-NTである、項目4に記載の方法。
(項目6)
野生型の前記毒素枯渇嫌気性細菌の毒素遺伝子の一部または全てが欠失している、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記毒素枯渇嫌気性細菌の毒性が、対応する野生型細菌と比べて多くとも2分の1に減少している、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記細菌産物が少なくとも1つの細菌膜成分である、項目1に記載の方法。
(項目9)
細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の前記少なくとも1つのメンバーが静脈内にまたは腫瘍内に投与される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記少なくとも1つの抗体が、静脈内、筋肉内、皮下、または腫瘍内からなる群より選択される少なくとも1つの方法により投与される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記固形腫瘍が悪性である、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記固形腫瘍が処置された後、前記固形腫瘍が退縮する、または前記固形腫瘍の成長が遅延もしくは停止する、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記被験体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記被験体が非ヒト動物である、項目1に記載の方法。
(項目15)
被験体においてがんを処置する方法であって、前記被験体に、少なくとも1つの抗CTLA-4抗体と少なくとも1つの抗PD-1抗体の組み合わせの治療有効量を投与して、前記がんを処置することを含む、方法。
(項目16)
少なくとも1つの抗CTLA-4抗体と少なくとも1つの抗PD-1抗体の前記組み合わせが、静脈内、筋肉内、皮下、および腫瘍内からなる群より選択される少なくとも1つの方法により投与される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記被験体がヒトである、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記被験体が非ヒト動物である、項目1に記載の方法。
(項目19)
固形腫瘍を処置するためのキットであって、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体、ならびに細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーを含む、キット。
(項目20)
前記細菌が嫌気性細菌である、項目19に記載のキット。
(項目21)
前記嫌気性細菌がClostridium novyiである、項目20に記載のキット。
(項目22)
前記嫌気性細菌が毒素枯渇嫌気性細菌である、項目20に記載のキット。
(項目23)
前記嫌気性細菌がClostridium novyi-NTである、項目22に記載のキット。
(項目24)
野生型の前記毒素枯渇嫌気性細菌の毒素遺伝子の一部または全てが欠失している、項目22に記載のキット。
(項目25)
前記毒素枯渇嫌気性細菌の毒性が対応する野生型細菌と比べて多くとも2分の1に減少している、項目22に記載のキット。
(項目26)
前記細菌産物が少なくとも1つの細菌膜成分である、項目19に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、C.novyi-NT芽胞と一緒にまたはなしで、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体で処置した皮下CT26腫瘍を有するBALB/cマウスからのデータを示すグラフである。
図2図2Aおよび図2Bは、C.novyi-NT芽胞と一緒にまたはなしで、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体で処置した皮下4T1腫瘍を有するBALB/cマウスからのデータを示すグラフである。A)腫瘍成長;およびB)生存データ。
図3図3A図3Cは、ラット同所性脳腫瘍モデルにおける腫瘍内C.novyi-NT処置に対する応答を示すグラフおよび画像である。(A)同系神経膠腫細胞株(F98)の同所性移植後のF344フィッシャーラットの生存を示すカプランマイヤー曲線。赤線は腫瘍移植の12~15日後に腫瘍内に注射されるC.novyi-NT芽胞。黒線は対照。(B)F98神経膠腫細胞株の同所性移植後の3頭の代表的F344フィシャーラットにおける生物発光(Xenogen撮像システム)。0日目(前処置-C.novyi-NT芽胞注射日)、C.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射後1日目、およびC.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射後2日目に得られた画像;ならびに(C)0日目(前処理)、C.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射後1日目、およびC.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射後2日目のルシフェラーゼ活性(百万)。
図4図4A図4Dは、顕微鏡レベルのラット脳腫瘍病変内で発芽したC.novyi-NT菌を示す画像である。グラム染色は、F344フィシャーラットの腫瘍(T)および星状微小浸潤(S)に局在している増殖性(vegetative)C.novyi-NT菌(黄色矢印)を示したが、正常な脳組織(Br)にはなかった:(A)腫瘍と正常な脳の界面、スケールバー30μm;(B)腫瘍と正常な脳の界面、スケールバー10μm;(C)正常な脳、腫瘍、および新生物組織の星状微小浸潤の界面、スケールバー30μm;ならびに(D)星状微小浸潤病変において明白なC.novyi-NT発芽、スケールバー10μm。
図5図5A図5Fは、C.novyi-NT療法に対する部分奏功を示しているイヌ11-R01からの写真画像およびCT画像を示す画像である。画像は、前処置からC.novyi-NT芽胞の最初の腫瘍内用量の70日後までに及ぶ:(A)末梢神経鞘腫瘍の処置前画像;(B)試験3日目の膿瘍形成、範囲は腫瘍に限定される;(C)自然膿瘍破裂ならびに壊死性および化膿物質の分泌に続く医療デブリードマンは二次的な意図による治癒を可能にした;(D)創傷は試験の70日目までに完全に治癒しており、腫瘍の最大径の77.6%減少が認められた;(E)最初の処置の4日前に撮影した処置前CT画像は、耳介と頭蓋の交差点の腫瘍の広がり(黄色円)を示していた;ならびに(F)試験10日目の処置後CT画像は腫瘍のほぼ完全な減量を示していた。
図6図6A図6Fは、C.novyi-NT療法への完全奏功を示しているイヌ04-R03からの写真画像およびCT画像を示す画像である。画像は前処置からC.novyi-NT芽胞の最初の腫瘍内用量の60日後までに及ぶ:(A)軟部組織肉腫の処置前画像;(B)C.novyi-NT芽胞の第3の用量の1日後、試験の15日目に形成された腫瘍局在化膿瘍;(C)腫瘍減量は試験の27日目までに完了し、健康な肉芽組織が形成されていた;(D)創傷は試験の60日目までに完全に治癒しており、残存腫瘍は全く認められなかった(完全奏功);(E)前腕上の腫瘍の広がり(黄色円)を示す、最初の処置の5日前に撮影された処置前CT画像;および(F)腫瘍量(tumor mass)の完全消失を示す試験の62日目の処置後CT画像。
図7図7は、C.novyi-NTの腫瘍内注射で処置されたイヌの生存分析を示すグラフである。腫瘍内注射C.novyi-NTに対する完全奏功または部分奏功のいずれかを示したイヌの無進行期間(time to progression)を示すカプランマイヤー曲線。最後の既知の評価で進行がなければイヌを調べる。
図8図8A図8Dは、ヒト患者からのCTおよびMRI画像を示す画像である:(A)髄内および髄外空気収集の証拠を示す3日目のコントラストでの処置後CT;(B)軟部組織およびおそらく隣接する骨を含むコントラスト強調腫瘤を示す右上腕骨の処置前MRI(ガドリニウムコントラストでのT1);(C)ベースラインと比べた腫瘍量における減少したコントラスト強調を示す4日目の処置後MRI;ならびに(D)進行中の壊死と一致する均質な非増大腫瘤を示す29日目の処置後MRI。腫瘍は黄色矢印で強調されている。
図9図9A図9Dは、C.novyi-NT芽胞で処置したヒト患者における広範な腫瘍壊死を示す画像である:(A、B)生存腫瘍(平滑筋肉腫)細胞を示す処置前腫瘍生検、スケールバーはそれぞれ100および30μm;ならびに(C、D)腫瘍細胞の広範な壊死を示すC.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射4日後の処置後腫瘍生検、スケールバーはそれぞれ100および30μm。
図10-1】図10は、配列決定された試料の要約データを示す表である。
図10-2】図10は、配列決定された試料の要約データを示す表である。
図10-3】図10は、配列決定された試料の要約データを示す表である。
図10-4】図10は、配列決定された試料の要約データを示す表である。
図11-1】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-2】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-3】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-4】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-5】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-6】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-7】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-8】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-9】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
図11-10】図11は、イヌ肉腫における体細胞変化を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここに開示される主題はこれより、付随する図を参照して下文にさらに完全に説明されるが、そこでは本発明の全てではなく一部の実施形態が示される。全体を通して類似する数字は類似する要素を指している。ここに開示される主題は多くの異なる形態で具体化することができるが、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈するべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。実際、本明細書に記載されるここに開示される主題の多くの変更および他の実施形態が、ここに開示される主題が属する分野の当業者の念頭に浮かぶことになり、その教示の利益は前述の説明および付随する図に提示されている。したがって、ここに開示される主題は開示されている特定の実施形態に限定されるべきではなく、変更および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていると理解するべきである。
【0013】
ここに開示される主題は腫瘍を処置するための方法およびキットを提供する。PD-1およびCTLA-4経路を通じて媒介される負の調節の撤廃は、腫瘍内細菌感染により誘発される抗がん免疫応答を増強することができ、したがって転移性腫瘍が治癒されると仮定されていた。抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体と組み合わせることにより、抗腫瘍細菌の治療効果がかなり増強されることが本明細書の下で示されている。皮下マウス腫瘍モデルでは、腫瘍の本質的に100%がこのアプローチにより根絶された。転移性腫瘍モデルでは、転移数は著しく減少し、有意な生存利益をもたらした。さらに、両方の腫瘍モデルで、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体を組み合わせると、どちらかの抗体を単独で使用するよりもよい結果が得られた。
【0014】
したがって、ここに開示される方法およびキットは、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体と組み合わせて抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体を使用し、免疫調節実体により誘導される抗腫瘍免疫応答の負の調節機序に拮抗する。さらに、ここに開示される方法およびキットを使用して抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体を組み合わせることによりがんを処置することが可能である。
【0015】
I.がんを処置するための方法
いくつかの実施形態では、ここに開示される主題は、被験体において固形腫瘍を処置するための方法であって、被験体に、抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体の治療有効量を、細菌、細菌産物、および免疫調節性実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせて投与して、固形腫瘍を処置することを含む方法を提供する。ここに開示される方法において使用することが可能な抗体の例には、CTLA-4に対するイピリムマブ(ipilimumab)およびトレメリムマブ(tremelimumab)ならびにPD-1に対するニボルマブ(nivolumab)が含まれるがこれらに限定されない。
【0016】
CD152(表面抗原分類152)としても知られる、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4;例えば、GenBank受託番号AAD00698.1)は、T細胞活性化の負の制御因子であるT細胞表面分子である。CTLA-4は、最初、マウス細胞溶解性T細胞cDNAライブラリーの差次的スクリーニングにより同定された(Brunetら、(1987年)Nature 328巻:267~270頁)。CTLA-4は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーでもあり、単一細胞外Igドメインを含む。CTLA-4転写物は細胞障害活性を有するT細胞集団中に見出されており、CTLA-4が細胞溶解性応答において機能する可能性があることを示唆している(Brunetら、(1987年)Nature 328巻:267~270頁;Brunetら、(1988年)Immunol. Rev. 103巻:21~36頁)。研究者たちは、CD28(Lafage-Pochitaloffら、(1990年)Immunogenetics 31巻:198~201頁)と同じ染色体領域(2q33-34)へのCTLA-4のヒト対応物(Dariavachら、(1988年)Eur. J. Immunol. 18巻:1901~1905頁)の遺伝子のクローニングおよびマッピングを報告している。このヒトCTLA-4 DNAとCD28タンパク質をコードするDNAの間の配列比較により、著しい配列相同性が明らかにされ、最大程度の相同性は膜近傍および細胞質領域であった(Brunetら、(1987年)Nature 328巻:267~270頁;Dariavachら、(1988年)Eur. J. Immunol. 18巻:1901~1905頁)。いくつかの研究により、CTLA-4が二次補助刺激分子として類似する機能を有することが示唆された(Linsleyら、(1992年)J. Exp. Med. 176巻:1595~1604頁;Wuら、(1997年)J. Exp. Med. 185巻:1327~1335頁;米国特許第5,977,318号、同第5,968,510号、同第5,885,796号、および同第5,885,579号)。しかし、他の研究者らは、CTLA-4がT細胞活性化の緩衝材として反対の役割を有することを報告した(Krurnmel(1995年)J.
Exp. Med. 182巻:459~465頁);Krurnmelら、(1996年)Int’l. Immunol.8巻:519~523頁;Chambersら、(1997年)Immunity 7巻:885~895頁)。CTLA-4欠損マウスが大量のリンパ球増殖に罹患することが報告されている(Chambersら、(1997年)Immunity 7巻:885~895頁)。CTLA-4の遮断は、in vitro(Walunasら、(1994年)Immunity 1巻:405~413頁)およびin vivo(Kearney (1995年)J. Immunol. 155巻:1032~1036頁)でT細胞応答を増大させ、抗腫瘍免疫を悪化させ(Leach(1996年)Science 271巻:1734~1736頁)、誘導性自己免疫疾患(Luhder(1998年)J. Exp. Med. 187巻:427~432頁)を増強することが報告されている。CTLA-4はT細胞免疫応答の最初の特徴に別のまたは追加の影響を及ぼすことも報告されている(Chambers(1997年)Curr. Opin. Immunol. 9巻:396~404頁;Bluestone(1997年)J. Immunol.158巻:1989~1993頁;Thompson(1997年)Immunity 7巻:445~450頁)。
【0017】
CD279(表面抗原分類279)としても知られる、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1;例えば、GenBank受託番号NP_005009.2)は、主に活性化Tリンパ球のサブセット上で発現され、ヒトではPDCD1遺伝子(Entrez Gene GeneID:5133;Ishidaら、(1992年)EMBO J. 11巻:3887頁;Shinoharaら、(1994年)Genomics 23巻:704頁;米国特許第5,698,520号も参照)によりコードされている細胞表面膜タンパク質である。PD-1は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーであり、免疫グロブリンスーパーファミリードメインを含有する細胞外領域、膜貫通ドメイン、および免疫受容体チロシンベース阻害性モチーフを含む細胞内領域を有する(ITIM;Ishidaら、(1992年)EMBO J. 11巻:3887頁;Shinoharaら、(1994年)Genomics 23巻:704頁)。これらの特徴は、免疫阻害性受容体と呼ばれ、gp49B、PIR-B、およびキラー細胞抑制受容体(KIR)も含むポリペプチドの比較的大きなファミリーも定義している(VivierおよびDaeron(1997年)Immunol. Today 18巻:286頁)。これらの受容体のチロシルリン酸化ITIMモチーフはSH2ドメインを含有するホスファターゼと相互作用して、阻害シグナルを生じると想定されることが多い。これらの免疫阻害性受容体のサブセットはMHCポリペプチドと結合し、例えば、KIRおよびCTLA-4はB7-1およびB7-2と結合する。MHCとB7遺伝子の間には系統発生学的関係があると提唱されてきた(Henryら、(1999年)Immunol. Today
20巻(6号):285~8頁)。CTLA-4と同様に、PD-1は、抗CD3に応答してT細胞の表面で急速に誘導される(Agataら、(1996年)Int. Immunol. 8巻:765頁)。しかし、CTLA-4とは対照的に、PD-1はB細胞の表面でも誘導される(抗IgMに応答して)。PD-1は胸腺細胞および骨髄系細胞のサブセット上でも発現される(Agataら、(1996年)Int. Immunol. 8巻:765頁;Nishimuraら、(1996年)Int. Immunol. 8巻:773頁)。
【0018】
2種類のヒトPD-1リガンド、PDL1およびPDL2が同定されている。PD-1リガンドはシグナル配列、ならびにIgVドメイン、IgCドメイン、膜貫通ドメイン、および短い細胞質テイルを含む。PDL1(NCBI Reference Sequence:NP_001254635.1;Freemanら、(2000年)J. Exp. Med. 192巻:1027頁)もPDL2(NCBI Reference Sequence:NP_079515.2;Latchmanら、(2001年)Nat. Immunol.2巻:261頁)もポリペプチドのB7ファミリーのメンバーである。PDL1もPDL2も、胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺、および心臓で発現される。PDL2だけが膵臓、肺および肝臓で発現され、PDL1だけが胎児肝で発現される。両方のPD-1リガンドが活性化された単球および樹状細胞上で上方調節されている。PD-1がPDL1とPDL2に結合するという事実により、CTLA-4と共にPD-1は阻害性受容体のファミリーにマッピングされる。
【0019】
CTLA-4またはPD-1の「機能的変異体」には、機能的断片、機能的変異タンパク質、および/または機能的融合タンパク質が含まれる。選択されたポリペプチドの機能的変異体とは、選択されたポリペプチド(例えば、CTLA-4またはPD-1)の少なくとも1つの特性、活性および/または機能的特徴を有する単離されたおよび/もしくは組換えタンパク質またはポリペプチドのことである。本明細書で使用されるように、用語「活性」には、ポリペプチド、例えば、CTLA-4またはPD-1に関して使用される場合、野生型タンパク質の構造に固有の活性が含まれる。
【0020】
例えば、CTLA-4またはPD-1に関して、用語「活性」には、例えば、抗原提示細胞上に天然のCTLA-4またはPD-1リガンドを結合させることにより、活性化された免疫細胞において阻害シグナルを調節するCTLA-4またはPD-1の能力が含まれる。PD-1はCTLA-4に類似する様式で阻害シグナルを免疫細胞に伝達する。免疫細胞において阻害シグナルが調節されると、免疫細胞の増殖および/または免疫細胞によるサイトカイン分泌が調節される。したがって、用語「CTLA-4活性」または「PD-1活性」には、その天然のリガンド(複数可)に結合するCTLA-4またはPD-1の能力、免疫細胞共起刺激または阻害シグナルを調節する能力、および免疫応答を調節する能力が含まれる。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「共起刺激する」には、活性化された免疫細胞に関連して使用される場合には、増殖またはエフェクター機能を誘導する第2の非活性化受容体媒介シグナル(「共起刺激シグナル」)を提供する共起刺激ポリペプチドの能力が含まれる。例えば、共起刺激シグナルは、例えば、T細胞受容体媒介シグナルを受けたT細胞においてサイトカイン分泌をもたらすことが可能である。例えば、活性化受容体を経て細胞受容体媒介シグナルを受けた免疫細胞は、本明細書では「活性化された免疫細胞」と呼ばれる。本明細書で使用されるように、用語「共起刺激受容体」には、免疫細胞に共起刺激シグナルを伝達する受容体が含まれる。本明細書で使用されるように、用語「阻害受容体」には、免疫細胞に負のシグナルを伝達する受容体が含まれる(例えば、CTLA-4またはPD-1)。阻害受容体により伝達される阻害シグナルは、共起刺激受容体(CD28などの)が免疫細胞上に存在しなくとも発生することが可能であり、したがって、これは、単純に、共起刺激ポリペプチドの結合に関して阻害受容体と共起刺激受容体の間の競合という関数ではない(Fallarinoら、(1998年)J. Exp. Med. 188巻:205頁)。阻害シグナルの免疫細胞への伝達により、免疫細胞において無応答性またはアネルギーまたはプログラム細胞死が生じうる。好ましくは、阻害シグナルの伝達は、アポトーシスを含まない機序を通じて作動する。本明細書で使用されるように、用語「アポトーシス」には、当技術分野では公知である技法を使用して特徴付けることが可能であるプログラム細胞死が含まれる。アポトーシス細胞死は、例えば、細胞収縮、膜小疱形成および結果的に細胞断片化するクロマチン凝縮により特徴付けることが可能である。アポトーシスを起こしている細胞はヌクレオソーム間のDNA切断という特徴的なパターンも示す。
【0022】
一般的に、ここに開示される主題により包含されるCTLA-4またはPD-1の断片または部分には、野生型CTLA-4またはPD-1と比べてアミノ酸(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸)の欠失(すなわち、1つまたは複数の欠失)(N末端、C末端または内部欠失など)を有するCTLA-4またはPD-1の断片または部分が含まれる。野生型CTLA-4またはPD-1と比べて連続するアミノ酸のみが欠失しているまたは非連続アミノ酸が欠失している断片または部分も想定されている。一般的に、ここに開示される本主題により包含されるCTLA-4またはPD-1の突然変異体または誘導体には、1つもしくは複数の連続するもしくは非連続アミノ酸残基の付加、欠失および/もしくは置換によって異なっている天然のもしくは人工の変異体、または1つもしくは複数の残基が改変されている改変ポリペプチド、ならびに1つもしくは複数の改変残基を含む突然変異体が含まれる。好ましい突然変異体は、1つまたは複数の連続するまたは非連続アミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって異なるCTLA-4またはPD-1の天然または人工の変異体である。
【0023】
一般的に、CTLA-4またはPD-1の機能的変異体は、変異体の長さにわたってCTLA-4またはPD-1の野生型アミノ酸配列と少なくとも約80%同一である、少なくとも約81%同一である、少なくとも約82%同一である、少なくとも約83%同一である、少なくとも約84%同一である、少なくとも約85%同一である、少なくとも約86%同一である、少なくとも約87%同一である、少なくとも約88%同一である、少なくとも約89%同一である、少なくとも約90%同一である、少なくとも約91%同一である、少なくとも約92%同一である、少なくとも約93%同一である、少なくとも約94%同一である、少なくとも約95%同一である、少なくとも約96%同一である、少なくとも約97%同一である、少なくとも約98%同一である、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0024】
タンパク質またはポリペプチドの文脈での「配列同一性」または「同一性」とは、特定の比較ウインドウにわたって最大一致するように整列させた場合に同じである2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基のことである。
【0025】
したがって、「配列同一性の百分率」とは、2つの配列の最適整列の基準配列(付加も欠失も含まない)と比べた場合、比較ウインドウ内のアミノ酸配列の一部が付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことがある、比較ウインドウにわたり2つの最適に整列させた配列を比較することにより決定される値のことである。百分率は、同一のアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を決定して、適合する位置の数を得て、適合する位置の数を比較ウインドウ中の全位置数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることにより計算される。パーセント配列同一性の有用な例には、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または50%から100%までの任意の整数百分率が含まれるがこれらに限定されない。これらの同一性は、本明細書に記載されるプログラムのいずれかを使用して決定することが可能である。
【0026】
配列整列およびパーセント同一性または類似性計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)を含むがこれに限定されない、相同配列を検出するように設計された種々の比較法を使用して決定することができる。本出願の文脈内では、解析のために配列解析ソフトウェアが使用されている場合、解析のその結果は、別に指定されていなければ、参照されたプログラムの「デフォルト値」に基づいていることは理解されるであろう。本明細書で使用されるように、「デフォルト値」は、最初に初期化された時に元来ソフトウェアに搭載している任意のセットの値またはパラメータを意味することになる。「Clustal V整列方法」は、Clustal Vと表示され(HigginsおよびSharp(1989年)CABIOS 5巻:151~153頁;Higginsら、(1992年)Comput. Appl. Biosci. 8巻:189~191頁により記載されている)、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.、Madison、Wis.)に見られる整列方法に対応する。
【0027】
配列同一性の多くのレベルは、同じまたは類似する機能または活性を有するタンパク質またはポリペプチドを(例えば、他の種から)同定するのに有用であることは当業者にはよく理解されている。パーセント同一性の有用な例には、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または50%から100%までの任意の整数百分率が含まれるがこれらに限定されない。実際、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%などの50%から100%までの任意の整数アミノ酸同一性は、ここに開示される本主題を説明するのに有用でありうる。
【0028】
免疫グロブリン(Ig)としても知られる、用語「抗体」は、抗原と呼ばれる外来標的の独自の部分(エピトープ)を認識することにより細菌およびウイルスなどの異物を同定しかつ中和する免疫系により使用されるB細胞により産生される大きなY字型タンパク質である。本明細書で使用されるように、用語「抗体」には、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)も含まれる。用語「抗原結合部分」は、本明細書で使用されるように、抗原(例えば、PD-1またはCTLA-4)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1つまたは複数の断片のことである。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片により実施することが可能であることが示されている。抗体の用語「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結されている2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989年)Nature 341巻:544~546頁)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によりコードされているが、VLおよびVH領域が対になって一価ポリペプチド(単鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Birdら、(1988年)Science
242巻:423~426頁;Hustonら、(1988年)Proc. Natl. Acad Sci. USA 85巻:5879~5883頁;およびOsbournら、(1998年)Nature Biotechnology 16巻:778頁)を形成する単一タンパク質鎖として作ることを可能にする合成リンカーにより、組換え法を使用して2つのドメインは結合させることが可能である。そのような単鎖抗体は、抗体の用語「抗原結合部分」内に包含されることも意図されている。完全なIgGポリペプチドまたは他のアイソタイプをコードする発現ベクターを作製するために、特定のscFvの任意のVHおよびVL配列をヒト免疫グロブリン定常領域cDNAまたはゲノム配列に連結することが可能である。VHおよびVLは、タンパク質化学または組換えDNA技術を使用したFab、Fvまたは免疫グロブリンの他の断片の作製においても使用することが可能である。ダイアボディ(diabody)などの他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現される二価の二重特異性抗体であるが、同一鎖上で2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用しており、それによってドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成をせざるを得なくなり、2つの抗原結合部位が生じる(例えば、Holligerら、(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444~6448頁;Poljakら、(1994年)Structure 2巻:1121~1123頁)。
【0029】
さらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合により形成されるもっと大きな免疫接着ポリペプチドの一部であってもよい。そのような免疫接着ポリペプチドの例には、四量体scFvポリペプチドを作るためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら、(1995年)Human Antibodies and Hybridomas 6巻:93~101頁)ならびに二価ビオチン化scFvポリペプチドを作るためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用が含まれる(Kipriyanovら、(1994年)Mol. Immunol. 31巻:1047~1058頁)。FabおよびF(ab’)断片などの抗体部分は、全抗体のそれぞれパパインまたはペプシン消化などの従来の技法を使用して全抗体から調製することが可能である。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着ポリペプチドは、本明細書に記載されるように、標準組換えDNA技法を使用して得ることが可能である。
【0030】
抗体は、ポリクローナルでもモノクローナルでも、異種でも同種でももしくは同系でも、またはその改変された形態(例えば、ヒト化されたもの、キメラなど)でもよい。抗体は完全にヒトのものでもよい。好ましくは、ここに開示される主題の抗体はPD-1もしくはCTLA-4またはその機能的変異体に特異的にまたは実質的に特異的に結合する。用語「モノクローナル抗体」および「モノクローナル抗体組成物」とは、本明細書で使用されるように、抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる1種の抗原結合部位のみを含有する抗体ポリペプチドの集団のことであり、一方用語「ポリクローナル抗体」および「ポリクローナル抗体組成物」とは、特定の抗原と相互作用することができる複数種の抗原結合部位を含有する抗体ポリペプチドの集団のことである。モノクローナル抗体組成物は典型的には、それが免疫反応する特定の抗原に対して単一の結合親和性を示す。
【0031】
用語「ヒト化抗体」とは、本明細書で使用されるように、ヒト細胞により作られる抗体にもっと密接に似るように変更されている可変および定常領域を有する非ヒト細胞により作られる抗体を含むことを意図されている。例えば、非ヒト抗体アミノ酸配列を変更して、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に見出されるアミノ酸を組み込むことによる。ここに開示される主題のヒト化抗体は、例えば、CDRに、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によりまたはin vivoでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含むことができる。用語「ヒト化抗体」は、本明細書で使用されるように、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体も含む。
【0032】
「単離された抗体」は、本明細書で使用されるように、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図されている(例えば、CTLA-4またはPD-1に特異的に結合する単離された抗体は、CTLA-4またはPD-1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離された抗体は他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0033】
単離されたCTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、免疫原として使用すれば、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製のための標準技法を使用して、それぞれのCTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体に結合する抗体を作製することが可能である。完全長CTLA-4またはPD-1を使用することが可能である、あるいは代わりにここに開示される主題は、免疫原として使用するためのCTLA-4もしくはPD-1リガンドの抗原性ペプチド断片またはその機能的変異体に関する。CTLA-4もしくはPD-1の抗原性ペプチドまたはその機能的変異体は、少なくとも8アミノ酸残基を含み、かつペプチドに対して産生された抗体がそれぞれの完全長分子と特異的な免疫複合体を形成するように、それぞれの完全長分子に存在するエピトープを包含する。好ましくは、抗原性ペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、さらに好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含む。抗原性ペプチドにより包含される好ましいエピトープは、CTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体のうち、タンパク質の表面、例えば、親水性領域に位置している領域である。ポリペプチド分子の標準疎水性分析を実施すれば親水性領域を同定することが可能である。抗原性ペプチドにより包含される高度に好ましいエピトープは、ポリペプチド分子のうち、細胞外ドメインにあり、したがって結合に関与している領域である。一実施形態では、そのようなエピトープは、マウスまたはヒトなどの一種由来の所与のポリペプチド分子に特異的であることが可能である(すなわち、ポリペプチド分子のうち種を超えて保存されてはいない領域に及ぶ抗原性ペプチドは免疫原として使用され、そのような非保存残基は本明細書に提供される整列などの整列を使用して決定することが可能である)。
【0034】
CTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体を含む免疫原は典型的には、適切な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)を免疫原で免疫化することにより抗体を調製するのに使用される。適切な免疫原調製物は、例えば、免疫応答を起こすことになる組換え的に発現されるもしくは化学的に合成される分子またはその断片を含有することが可能である。調製物はフロイント完全もしくは不完全アジュバントなどのアジュバント、または類似の免疫刺激剤をさらに含有することが可能である。免疫原調製物での適切な被験体の免疫化は、そこに含有される抗原性ペプチドに対するポリクローナル抗体応答を誘導する。
【0035】
ポリクローナル抗体は、上記の通りに適切な被験体をポリペプチド免疫原で免疫化することにより調製可能である。免疫化された被験体のポリペプチド抗体力価は、固定化ポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などを用いて標準技法により時間をわたりモニターすることが可能である。必要に応じて、抗原に向けられた抗体を哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、プロテインAクロマトグラフィーなどの周知の技法によりさらに精製し、IgG画分を得ることが可能である。免疫化後の適切な時間に、例えば、抗体力価が最高になった時に、抗体産生細胞を被験体から入手し、これを使用して、最初にKohlerおよびMilstein(1975年)Nature 256巻:495~497頁;Brownら、(1981年)J. Immunol. 127巻:539~46頁;Brownら、(1980年)J. Biol. Chem. 255巻:4980~83頁;Yehら、(1976年)Proc. Natl. Acad. Sci. 76巻:2927~31頁;およびYehら、(1982年)Int. J. Cancer 29巻:269~75頁)により記載されたハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozborら、(1983年)Immunol.
Today 4巻:72頁)、EBV-ハイブリドーマ技法(Coleら、(1985年)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77~96頁)またはトリオーマ(trioma)技法などの標準技法によりモノクローナル抗体を調製することが可能である。モノクローナル抗体ハイブリドーマを産生するための技術は周知である(一般的には、Kenneth, R. H. Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、N.Y.(1980年);Lerner(1981年)Yale J. Biol. Med. 54巻:387~402頁;Gefterら、(1977年)Somatic Cell Genet.
3巻:231~36頁参照)。手短に言えば、不死細胞株(典型的には骨髄腫)を上記の免疫原で免疫化された哺乳動物由来のリンパ球(典型的には脾細胞)に融合させ、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、ポリペプチド抗原に好ましくは特異的に結合するモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマを同定する。
【0036】
リンパ球と不死化された細胞株を融合させるために使用される多くの周知のプロトコールのいずれでも、抗PD-1リガンドモノクローナル抗体を作製する目的で用いることが可能である(例えば、Galfre, G.ら、(1977年)Nature 266巻:55052頁;Kenneth, R. H. Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、N.Y.(1980年);Lerner(1981年)Yale J. Biol. Med. 54巻:387~402頁;Gefterら、(1977年)Somatic Cell Genet. 3巻:231~36頁)。さらに、当業者であれば、そのような方法にはそれも有用であると考えられる多くの変種があることは認識するであろう。典型的には、不死細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)はリンパ球と同じ哺乳動物種由来である。例えば、マウスハイブリドーマは、ここに開示される本主題の免疫原調製物で免疫化されたマウス由来のリンパ球を不死化されたマウス細胞株と融合させることにより作ることが可能である。好ましい不死細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性であるマウス骨髄腫細胞株である。いくつかの骨髄腫細胞株、例えば、P3-NS1/1-Ag4-1、P3-x63-Ag8.653またはSp2/O-Ag14骨髄腫株のいずれでも標準技法に従って融合パートナーとして使用可能である。これらの骨髄腫株はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、Rockville、Mdから入手可能である。典型的には、HAT感受性マウス骨髄腫細胞はポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾細胞に融合される。次に、融合から生じるハイブリドーマ細胞は、融合していない骨髄腫細胞および非生産的に融合している骨髄腫細胞を死滅させるHAT培地を使用して選択される(融合していない脾細胞は形質転換されていないために数日後には死んでしまう)。ここに開示される主題のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準ELISAアッセイを使用して、所与のポリペプチドに結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより検出される。
【0037】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製する代替案として、上記ポリペプチド抗体のうちの1つに特異的なモノクローナルを、適切なポリペプチドを用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることにより同定しかつ単離して、それによってポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することが可能である。ファージディスプレイを作製しスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01およびStratagene SurfZAP(商標)Phage Display Kit、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを作成しスクリーニングするのに使用するために特に受け入れられる方法および試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号、PCT特許出願公開第92/18619号、PCT特許出願公開第91/17271号、PCT特許出願公開第92/20791号、PCT特許出願公開第92/15679号、PCT特許出願公開第93/01288号、PCT特許出願公開第92/01047号、PCT特許出願公開第92/09690号、PCT特許出願公開第90/02809号、Fuchsら、(1991年)Biotechnology (NY) 9巻:1369~1372頁;Hayら、(1992年)Hum. Antibod. Hybridomas 3巻:81~85頁;Huseら、(1989年)Science 246巻:1275~1281頁;Griffithsら、(1993年)EMBO J. 12巻:725~734頁;Hawkinsら、(1992年)J. Mol. Biol. 226巻:889~896頁;Clarksonら、(1991年)Nature 352巻:624~628頁;Gramら、(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:3576~3580頁;Garrardら、(1991年)Biotechnology (NY) 9巻:1373~1377頁;Hoogenboomら、(1991年)Nucleic Acids Res. 19巻:4133~4137頁;Barbasら、(1991年)Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 88巻:7978~7982頁;およびMcCaffertyら、(1990年)Nature 348巻:552~554頁に見出すことができる。
【0038】
さらに、標準組換えDNA技法を使用して作ることが可能である、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗CTLA-4抗体または抗PD-1抗体は、ここに開示される主題の範囲内である。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、例えば、PCT特許出願公開第PCT/US86/02269号、欧州特許出願第184,187号、欧州特許出願第171,496号、欧州特許出願第173,494号、PCT出願国際公開第86/01533号、米国特許第4,816,567号、欧州特許出願第125,023号、Betterら、(1988年)Science 240巻:1041~1043頁;Liuら、(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84巻:3439~3443頁;Liuら、(1987年)J. Immunol. 139巻:3521~3526頁;Sunら、(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci. 84巻:214~218頁;Nishimuraら、(1987年)Cancer Res. 47巻:999~1005頁;Woodら、(1985年)Nature 314巻:446~449頁;およびShawら、(1988年)J. Natl. Cancer Inst. 80巻:1553~1559頁);Morrison, S. L.(1985年)Science 229巻:1202~1207頁;Oiら、(1986年)Biotechniques 4巻:214頁;米国特許第5,225,539号;Jonesら、(1986年)Nature 321巻:552~525頁;Verhoeyanら、(1988年)Science 239巻:1534頁;およびBeidlerら、(1988年)J. Immunol. 141巻:4053~4060頁に記載されている方法を使用して、当技術分野で公知の組換えDNA技法により産生することが可能である。
【0039】
さらに、ヒト化抗体は米国特許第5,565,332号に開示されているプロトコールなどの標準プロトコールに従って作ることが可能である。別の実施形態では、抗体鎖または特異的結合対メンバーは、例えば、米国特許第5,565,332号、同第5,871,907号、または同第5,733,743号に記載されているように、当技術分野で公知の技法を使用して、特異的な結合対メンバーのポリペプチド鎖と複製可能ジェネリックディスプレイパッケージの成分の融合物をコードする核酸分子を含むベクターと単一の結合対メンバーの第2のポリペプチド鎖をコードする核酸分子を含有するベクターの間の組換えにより産生することが可能である。細胞内でタンパク質機能を阻害するための細胞内抗体の使用も当技術分野では公知である(例えば、Carlson(1988年)Mol. Cell. Biol. 8巻:2638~2646頁;Bioccaら、(1990年)EMBO J. 9巻:101~108頁;Wergeら、(1990年)FEBS Lett. 274巻:193~198頁;Carlson(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:7427~7428頁;Marascoら、(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA
90巻:7889~7893頁;Bioccaら、(1994年)Biotechnology (NY)12巻:396~399頁;Chenら、(1994年)Hum. Gene Ther. 5巻:595~601頁;Duanら、(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:5075~5079頁;Chenら、(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:5932~5936頁;Beerliら、(1994年)J. Biol. Chem. 269巻:23931~23936頁;Beerliら、(1994年)Biochem. Biophys. Res. Commun. 204巻:666~672頁;Mhashilkarら、(1995年)EMBO J. 14巻:1542~1551頁;Richardsonら、(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻:3137~3141頁;PCT公開第94/02610号、およびPCT公開第95/03832号)。
【0040】
さらに、CTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体に対する完全ヒト抗体を作ることができる。完全ヒト抗体は、例えば、Hoganら、「Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratoryに従って、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるマウスにおいて作ることが可能である。手短に言えば、トランスジェニックマウスは精製されたCTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体で免疫化されている。脾臓細胞が収穫され骨髄腫細胞に融合されてハイブリドーマを生成する。ハイブリドーマは、CTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体に結合する抗体を産生するその能力を基に選択される。完全ヒト抗体はヒトにおいてそのような抗体の免疫原性を減少させると考えられる。
【0041】
一実施形態では、今ここに開示される主題において使用するための抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、単一の抗体ポリペプチド内に2つの異なる抗原に対する結合部位を有する。抗原結合は同時でも逐次でもよい。トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは二重特異性抗体を分泌することが可能な細胞株の2つの例である。ハイブリッドハイブリドーマまたはトリオーマにより産生される二重特異性抗体の例は米国特許第4,474,893号に開示されている。二重特異性抗体は化学的手段(Staerzら、(1985年)Nature 314巻:628頁およびPerezら、(1985年)Nature 316巻:354頁)およびハイブリドーマ技術(StaerzおよびBevan(1986年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、83巻:1453頁、およびStaerzおよびBevan(1986年)Immunol. Today 7巻:241頁)により構築されてきた。二重特異性抗体は米国特許第5,959,084号にも記載されている。二重特異性抗体の断片は米国特許第5,798,229号に記載されている。
【0042】
二重特異性作用物質は、異なる抗体を作るハイブリドーマまたは他の細胞を融合させることにより異種ハイブリドーマを作り、続いて両方の抗体を産生しているまたは会合(co-assemble)させているクローンを同定することにより作製することも可能である。二重特異性作用物質は、完全な免疫グロブリン鎖またはFabおよびFv配列などのその部分を化学的にまたは遺伝子的にコンジュゲーションすることにより作製することも可能である。抗体成分はCTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体に結合することが可能である。一実施形態では、二重特異性抗体はPD-1リガンドまたはその機能的変異体とPD-1ポリペプチドまたはその機能的変異体の両方に特異的に結合することができる。
【0043】
ここに開示される主題のさらに別の態様は、免疫原性CTLA-4もしくはPD-1またはその機能的変異体、あるいはCTLA-4またはPD-1に独特であるその免疫原性部分で動物を免疫化し、その後動物からポリペプチドに特異的に結合する抗体を単離することを含むプロセスにより入手可能な抗体に関する。
【0044】
いくつかの実施形態では、ここに開示される主題は、細菌、細菌産物、および/または他の免疫調節実体を使用して固形腫瘍を処置するための方法を提供する。他の実施形態では、細菌またはその細菌産物は嫌気性細菌またはその細菌産物である。適切な属には、Bifidobacteria、Lactobacilli、およびClostridium novyiまたはClostridium sordellii(C.sordellii)などのClostridiaが含まれるがこれらに限定されない。さらに他の実施形態では、細菌またはその細菌産物は偏性嫌気性細菌またはその細菌産物である。本明細書で使用される「嫌気性細菌」は成長に酸素を必要としない細菌である。本明細書で使用される「偏性嫌気性細菌」は、成長に酸素を必要としないだけでなく、正常レベルの大気の酸素により害される細菌である。さらなる実施形態では、嫌気性細菌またはその細菌産物はClostridium novyiまたはその細菌産物である。
【0045】
いくつかの実施形態では、細菌またはその細菌産物は、毒素枯渇嫌気性細菌またはその細菌産物である。他の実施形態では、毒素枯渇嫌気性細菌またはその細菌産物はClostridium novyi-NTまたはその細菌産物である。
【0046】
細菌を治療的に使用するには毒素の自然な産生を減少させることが望ましい。毒素枯渇菌株は完全に非毒性である必要はないが、毒素遺伝子の少なくとも1つが突然変異している、欠失している、または他の方法で不活性化していて、被験体にとって細菌の有害性が少なくなっていることが望ましい。本明細書で使用されるように、用語「毒性の」とは毒物として作用するまたは毒物の効果を有することである。毒性は少なくとも2、5、10、50、100、1000倍、またはそれ超減少していることが好ましい。毒素遺伝子がエピソーム性であるかまたはバクテリオファージ上にある場合、エピソームまたはバクテリオファージのキュアリング(curing)を使用すれば毒素遺伝子を欠失させることが可能である。突然変異誘発、キュアリング、および突然変異体のスクリーニングのための技法は当技術分野では周知である。
【0047】
いくつかの実施形態では、野生型形態の毒素枯渇嫌気性細菌またはその細菌産物の毒素遺伝子の一部または全ては、「毒素枯渇」細菌またはその細菌産物を生産するために欠失している。例えば、致死性α毒素遺伝子はC.novyi-NTにおいて欠失している。他の実施形態では、毒素枯渇嫌気性細菌の毒性は、対応する野生型細菌と比べて多くとも2分の1に減少している。さらに他の実施形態では、毒素枯渇Clostridium novyiの毒性は、対応するClostridium novyiと比べて多くとも2分の1に減少している。本明細書で使用される用語「野生型」とは、細菌または遺伝子などの正常な非変異バージョンのことである。本明細書で使用される用語「欠失」とは、1つまたは複数のヌクレオチドが取り除かれているヌクレオチド配列の変化のことである。
【0048】
いくつかの実施形態では、細菌産物は少なくとも1つの細菌膜成分である。細菌膜成分には、例えば、Clostridium novyiの膜に結合しているまたは会合している細菌膜タンパク質、適切には、細菌に感染すると細菌の外側に曝露され、したがってヒトの免疫系に可視であると考えられるドメインを有するタンパク質が含まれうる。本明細書での細菌膜タンパク質への言及は、所与の細菌膜タンパク質の欠失、挿入、および置換突然変異または適切に免疫原性である変異体の長さにわたり所与の細菌膜について野生型アミノ酸配列に少なくとも約80%同一である、少なくとも約81%同一である、少なくとも約82%同一である、少なくとも約83%同一である、少なくとも約84%同一である、少なくとも約85%同一である、少なくとも約86%同一である、少なくとも約87%同一である、少なくとも約88%同一である、少なくとも約89%同一である、少なくとも約90%同一である、少なくとも約91%同一である、少なくとも約92%同一である、少なくとも約93%同一である、少なくとも約94%同一である、少なくとも約95%同一である、少なくとも約96%同一である、少なくとも約97%同一である、少なくとも約98%同一である、もしくは少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質などの天然に存在する細菌膜タンパク質の変異体を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、他の免疫調節実体はCTLA-4および/またはPD-1に対する抗体と組み合わせることが可能である。そのような免疫調節実体には、例えば、GM-CSF、インターロイキン-12(IL-12)、およびIL-15などの免疫刺激サイトカインが含まれうる。免疫刺激目的で使用される細菌産物の追加の例には、フロイント完全アジュバンドおよびコーレイ毒素(Coley’s toxin)などの不活性化された細菌または細菌成分が含まれる。
【0050】
いくつかの実施形態では、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーが静脈内にまたは腫瘍内に投与される。他の実施形態では、少なくとも1つの抗体は、静脈内、筋肉内、皮下、および腫瘍内からなる群より選択される少なくとも1つの方法により投与される。
【0051】
被験体中の「がん」とは、癌を生じる細胞に典型的な特徴、例えば、制御されない増殖、特殊機能の喪失、不死性、顕著な転移能、抗アポトーシス活性の顕著な増加、急速な成長および増殖速度、ならびにある種の特徴的形態および細胞マーカーを有する細胞が存在することである。いくつかの状況では、がん細胞は腫瘍の形態になり、そのような細胞は動物内で局所的に存在することもあれば、独立した細胞、例えば、白血病細胞として血流中を循環していることもある。がんは、頭部がん、頸部がん、頭頸部がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、白血病/リンパ腫、子宮がん、皮膚がん、内分泌がん、泌尿器がん、膵臓がん、胃腸がん、卵巣がん、子宮頚がん(cervical cancer)、および腺腫を含みうるがこれらに限定されない。「腫瘍」とは、本明細書で使用されるように、悪性でも良性でも、あらゆる新生物細胞成長および増殖、ならびにあらゆる前がん性およびがん性細胞および組織のことである。「固形腫瘍」とは、本明細書で使用されるように、一般的には嚢胞も液体領域も含有しない異常な組織塊である。固形腫瘍は、非限定的例として、脳、結腸、乳房、前立腺、肝臓、腎臓、肺、食道、頭頸部、卵巣、子宮頸部(cervix)、胃、結腸、直腸、膀胱、子宮、精巣、および膵臓に存在することもある。いくつかの実施形態では、固形腫瘍がここに開示される方法で処置された後、固形腫瘍が退縮する、または固形腫瘍の成長が遅延もしくは停止する。他の実施形態では、固形腫瘍は悪性である。
【0052】
いくつかの実施形態では、ここに開示される主題は、被験体においてがんを処置する方法であって、被験体に、少なくとも1つの抗CTLA-4抗体と少なくとも1つの抗PD-1抗体の組み合わせの治療有効量を投与して、がんを処置することを含む方法を提供する。がんを処置するための抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体との組み合わせが、抗体を別個に投与する場合よりも良好な結果が得られることが分かっている。他の実施形態では、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の組み合わせは、静脈内、筋肉内、皮下、および腫瘍内からなる群より選択される少なくとも1つの方法により投与される。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語「処置する」は、そのような用語が当てはまる疾患、障害、もしくは状態、またはそのような疾患、障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状もしくは症状発現を逆転させる、軽減する、その進行を阻害する、予防するもしくはその可能性を減少させることを含むことが可能である。
【0054】
その多くの実施形態においてここに開示される方法により処置される被験体は望ましくはヒト被験体であるが、本明細書に記載される方法はあらゆる脊椎動物種に関して効果的であることは理解されるべきであり、あらゆる脊椎動物種は用語「被験体」に含まれることが意図されている。したがって、「被験体」は、既存の状態もしくは疾患の処置または状態もしくは疾患の発症を妨げるための予防的処置のためなどの医療目的でヒト被験体を、あるいは医療、獣医学目的または開発目的で動物被験体を含むことが可能である。適切な動物被験体には、霊長類、例えば、ヒト、サル、類人猿など;ウシ、例えば、畜牛、雄牛など;ヒツジ(ovine)、例えば、ヒツジ(sheep)など;ヤギ(caprine)、例えば、ヤギ(goat)など;ブタ(porcine)、例えばブタ(pig)、雄ブタなど;ウマ(equine)、例えば、ウマ(horse)、ロバ、シマウマなど;野生および家畜のネコを含むネコ(feline);イヌ(dog)を含むイヌ(canine);ウサギ(rabbit)、野ウサギなどを含むウサギ類(lagomorph);およびマウス、ラットなどを含む齧歯類を含むがこれらに限定されない哺乳動物が含まれる。動物はトランスジェニック動物でもよい。いくつかの実施形態では、被験体は、胎児、新生児、幼児、若年、および成人被験体を含むヒトである。さらに、「被験体」は、状態または疾患に罹患しているまたは罹患していると疑われる患者を含むことが可能である。したがって、用語「被験体」と「患者」は本明細書では互換的に使用される。
【0055】
さらに具体的には、本明細書に記載されるように、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含むここに開示される組成物は、経口的に、経鼻的に、経粘膜的に、眼に、直腸に、膣内に、筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、ならびに、髄腔内注射、直接脳室内注射、静脈内注射、関節内注射、胸骨内注射、滑膜内注射、肝臓内注射、病巣内注射、頭蓋内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、もしくは眼内注射を含む非経口的に、槽内に、頬側および舌下を含む、粉末、軟膏もしくは液滴(点眼を含む)による局所的に、経皮的に、吸入スプレーを通じて、または当技術分野で公知の他の送達様式を含む、任意の適切な投与経路によって治療のために被験体に投与することが可能である。ここに開示される組成物は、組成物が注射または他の手段などにより固形腫瘍に直接投与されるように、腫瘍内に投与することも可能である。
【0056】
本明細書で使用される語句「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」は、抗体が患者の系に入り、したがって、代謝および他の類似の過程を受けるように、直接中枢神経系に入る以外の、例えば、皮下投与で、細菌、細菌産物、および免疫調節実体、すなわち、化合物、薬物または他の物質からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含む組成物を投与することを意味する。
【0057】
本明細書で使用される語句「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、経腸および局所投与以外の、通常注射による投与様式を意味し、限定せずに、静脈内、筋肉内、動脈内(intarterial)、髄腔内、嚢内、眼窩内、眼内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内注射および注入を含む。
【0058】
ここに開示される医薬組成物は当技術分野では公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、レビテーティング(levitating)、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥工程によって製造することが可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ここに開示される医薬組成物は、再充填可能なまたは生分解性デバイスによって投与することが可能である。例えば、種々の徐放性ポリマーデバイスが開発されており、タンパク質生物製剤を含む、薬物の制御送達についてin vivoで試験されている。徐放調製物の適切な例には、成形品の形態の半透性ポリマーマトリックス、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルが含まれる。徐放マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22巻:547頁、1983年)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langerら、(1981年)J. Biomed.
Mater. Res.15巻:167頁;Langer(1982年)、Chem.
Tech.12巻:98頁)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、(1981年)J. Biomed. Mater. Res.15巻:167頁)、またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988A)が含まれる。徐放組成物には、細菌、細菌産物、およびそれ自体が公知の方法により調製することが可能な免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含むリポソームに捕捉された組成物も含まれる(Epsteinら、(1985年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.82巻:3688頁;Hwangら、(1980年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.77巻:4030頁;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびにEP102,324A)。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%コレステロールよりも多い小型の(約200~800オングストローム)単層型であり、選択された割合は最適治療のために調整されている。そのような物質は、例えば、いくつかの実施形態では、固形腫瘍などの特定の予め決定された標的部位で植え込むことが可能なここに開示される組成物の徐放のためのインプラントを含むことが可能である。
【0060】
別の実施形態では、ここに開示される医薬組成物はペグ化治療薬(例えば、ペグ化抗体または細菌産物)を含むことができる。ペグ化は一定範囲の抗体、タンパク質、およびペプチドの修飾のための十分に確立した検証済みのアプローチであり、抗体、タンパク質、およびペプチドの特定の部位にポリエチレングリコール(PEG)を結合させることを含む(Chapman(2002年)Adv. Drug Deliv. Rev. 54巻:531~545頁)。ペグ化のいくつかの効果には、(a)分子の見かけのサイズを糸球体濾過限界を超えるまで増加させているポリマーの結果としての腎クリアランスの回避による、および/または細胞クリアランス機構の回避を通じてのin vivoでの循環半減期の著しい改良;(b)改良された薬物動態;(c)改良された溶解度、PEGは水からトルエン、塩化メチレン、エタノールおよびアセトンなどの多くの有機溶媒まで及ぶ多くの異なる溶媒中で可溶性であることが分かっている;(d)ペグ化抗体断片は200mg/mlまで濃縮することが可能であり、それが可能であるために、高タンパク質用量の皮下投与などの製剤化および投与選択肢が広がり、これは、典型的には静脈内に投与される他の多くの治療抗体と対照的である;(e)コンジュゲートされたタンパク質の増強されたタンパク質分解抵抗性(Cunningham-Rundlesら、(1992年)J. Immunol. Meth.152巻:177~190頁);(f)皮下注射部位での損失の減少による改良された生物学的利用能;(g)毒性の減少が観察されている、毒性がピーク血漿レベルに関係している薬剤では、ペグ化タンパク質の皮下投与により達成されるさらに平らになった薬物動態プロファイルは有利である、毒性結果のある免疫応答を誘発するタンパク質はペグ化の結果として利益を得ることもできる;ならびに(h)ペグ化分子の改良された熱的および機械的安定性が含まれる。
【0061】
非経口投与のための医薬組成物には、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含む組成物の水溶液が含まれる。注射では、ここに開示される医薬組成物は、水溶液で、例えば、いくつかの実施形態では、ハンクス溶液、リンガー溶液などの生理学的に適合性のバッファー、または生理緩衝食塩水で製剤化することが可能である。水性注射懸濁物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁物の粘度を増加させる物質を含有することが可能である。さらに、細菌、細菌産物、および免疫調節実体またはビヒクルからなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含む組成物の懸濁物には、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。任意選択で、懸濁物は、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするように、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含む組成物の溶解度を増加させる適切な安定化剤または薬剤も含有することが可能である。
【0062】
経鼻または経粘膜投与では一般に、透過することになる特定の障壁に適した浸透剤が製剤中で使用される。そのような浸透剤は当技術分野では一般に公知である。
【0063】
吸入送達では、本開示の薬剤は当業者に公知の方法により製剤化することも可能であり、例えば、食塩水などの可溶化、希釈化または分散化物質、ベンジルアルコールなどの保存剤、吸収促進剤、およびフルオロカーボンの例を含みうるがこれらに限定されない。
【0064】
追加の成分を、そのような成分が薬学的に許容され上皮細胞またはその機能にとって有害でない限り、局所投与のために組成物に添加することが可能である。さらに、そのような追加の成分は組成物の上皮透過効率に悪影響を及ぼすべきではなく、組成物の安定性の悪化を引き起こすべきではない。例えば、芳香剤、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定化剤、界面活性剤、軟化剤、着色料、保存剤、緩衝剤などが存在することが可能である。ここに開示される局所組成物のpHは、組成物が被験体の皮膚と生理的に適合性であるように、そこに緩衝剤を添加することにより約6.0から約9.0までの生理的に許容される範囲に調整することが可能である。
【0065】
選択される投与経路とは無関係に、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含むここに開示される組成物は、本明細書に記載されるような薬学的に許容される剤形にまたは当業者に公知の他の従来の方法により製剤化される。
【0066】
一般に、活性な薬剤または薬物送達デバイスの「有効量」または「治療有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに必要な量のことである。当業者であれば認識するように、薬剤またはデバイスの有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、封入マトリックスの組成、標的組織などの要因に応じて変動することがある。
【0067】
用語「組み合わせ」はその最も広い意味で使用され、被験体が少なくとも2つの薬剤、さらに具体的には、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を投与されることを意味する。さらに具体的には、用語「組み合わせて」とは、例えば、単一疾患状態の処置のために2つの(またはそれよりも多い)活性な薬剤の同時投与のことである。本明細書で使用されるように、活性な薬剤は組み合わされて単一剤形で投与してもよく、別個の剤形で同時に投与してもよく、または同一日にもしくは別個の日に交互にもしくは逐次投与される別個の剤形として投与してもよい。ここに開示される主題の一実施形態では、活性な薬剤は組み合わされて単一剤形で投与される。別の実施形態では、活性な薬剤は別個の剤形で投与される(例えば、その場合、1つの剤形の量は変化させるがもう1つの剤形の量は変化させないことが望ましい)。単一剤形は疾患状態の処置のために追加の活性な薬剤を含むことができる。
【0068】
さらに、ここに開示される組成物は単独でまたは、薬剤の安定性を増強する、ある特定の実施形態では薬剤を含有する医薬組成物の投与を促進する、増加した溶解もしくは分散を提供する、活性を増やす、アジュバント療法を提供するアジュバント、および他の活性成分を含む同類のものと組み合わせて投与することが可能である。有利には、そのような併用療法はより少ない投与量の従来の治療薬を利用し、したがってそれらの薬剤が単独療法として使用される場合に被る考えうる毒性および有害な副作用を回避する。
【0069】
細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体および任意選択で追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体の化合物の投与のタイミングは、これら薬剤の組み合わせの有益な効果が達成される限り、変えることが可能である。したがって、語句「組み合わせて」とは、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体および任意選択で追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体の同時の、逐次の、またはその組み合わせの投与のことである。したがって、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体および任意選択で追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体の組み合わせを投与された被験体は、あらゆる薬剤の組み合わせの効果が被験体において達成される限り、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体および任意選択で追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体を同じ時間に(すなわち、同時に)または異なる時間に(すなわち、逐次的に、どちらかの順で、同一日にまたは異なる日に)受けることが可能である。
【0070】
逐次的に投与される場合、薬剤は互いに1、5、10、30、60、120、180、240分またはそれよりも長い時間内に投与することが可能である。他の実施形態では、逐次的に投与される薬剤は、互いに1、2、3、4、5、10、15、20またはもっと多くの日数内に投与することが可能である。細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体および任意選択で追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体の化合物が同時に投与される場合、化合物は、それぞれが細菌、細菌産物、もしくは他の免疫調節実体および任意選択で追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/もしくは抗PD-1抗体のいずれかを含む、別個の医薬組成物として被験体に投与することが可能である、または全ての薬剤を含む単一の医薬組成物として被験体に投与することが可能である。
【0071】
組み合わせて投与される場合、特定の生物学的応答を誘発する薬剤のそれぞれの有効濃度は、単独で投与された場合のそれぞれの薬剤の有効濃度よりも低くてよく、それによって、薬剤が単一薬剤として投与された場合に必要とされる用量に比べて1つまたは複数の薬剤の用量の減少が可能になる。複数の薬剤の効果は相加的でも相乗的でもよいが、そうである必要はない。薬剤は複数回投与することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、組み合わせて投与される場合、2つまたはそれよりも多い薬剤は相乗効果を有することが可能である。本明細書で使用されるように、用語「相乗作用」、「相乗的な」、「相乗的に」、および「相乗効果」または「相乗的組み合わせ」または「相乗的組成物」などのその派生語とは、薬剤の組み合わせ、例えば、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体、および少なくとも1つの追加の治療剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体の生物活性が個々に投与された場合のそれぞれの薬剤の生物活性の合計よりも大きい状況のことである。
【0073】
相乗作用は「相乗指数(Synergy Index)(SI)」の点から表すことが可能であり、指数は一般には、
+Q=相乗指数(SI)
により決定される比から、F. C. Kullら、Applied Microbiology 9巻、538頁(1961年)により記載されている方法によって決定することが可能であり、
は、成分Aに関するエンドポイントを生じた、単独で作用する成分Aの濃度であり、Qは、エンドポイントを生じた、混合物中での成分Aの濃度であり、
は、成分Bに関するエンドポイントを生じた、単独で作用する成分Bの濃度であり、Qは、エンドポイントを生じた、混合物中での成分Bの濃度である。
【0074】
一般には、Q/QとQ/Qの合計が1よりも大きい場合、拮抗作用が示される。合計が1に等しい場合、相加性が示される。合計が1よりも小さい場合、相乗性が示される。SIが低くなるに従って、その特定の混合物により示される相乗作用は大きくなる。したがって、「相乗的組み合わせ」は、単独で使用された場合の個々の成分の観察される活性に基づいて予測することが可能であるものよりも高い活性を有する。さらに、成分の「相乗的有効量」とは、例えば、組成物中に存在する別の治療剤において相乗効果を誘発するのに必要な成分の量のことである。
【0075】
本明細書で使用されるように、用語「減少させる」または「阻害する」、およびその文法的派生語とは、作用経路または作用機序を遮断する、部分的に遮断する、妨害する、減少させる、縮小させるまたは非活性化する薬剤の能力のことである。したがって、当業者であれば、用語「縮小させる」が、活性の完全なおよび/または部分的喪失、例えば、少なくとも10%の活性の喪失、いくつかの実施形態では、少なくとも20%、30%、50%、75%、95%、98%、および最大100%までの活性の喪失を包含することは認識すると考えられる。
【0076】
別の態様では、ここに開示される主題は、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体、および任意選択で、追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体を単独でまたは1つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて、薬学的に許容される賦形剤と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0077】
さらに具体的には、ここに開示される主題は、細菌、細菌産物、または他の免疫調節実体、および任意選択で、追加の薬剤と組み合わせた抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0078】
治療的および/または診断的適用では、本開示の化合物は、全身的および局所的または局在的投与を含む種々の投与様式のために製剤化することが可能である。技法および製剤は一般にRemington: The Science and Practice of Pharmacy(第20版)Lippincott, Williams and Wilkins(2000年)に見出すことができる。
【0079】
本開示を実施するために本明細書で開示される化合物を全身投与に適した投与量に製剤化するために薬学的に許容される不活性担体を使用することは本開示の範囲内である。担体および適切な製造実施の正しい選択により、本開示の組成物、特に溶液剤として製剤化された組成物は、静脈内注射などにより非経口的に投与することができる。化合物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を使用して経口投与に適した投与量に容易に製剤化することが可能である。そのような担体は、処置される被験体(例えば、患者)による経口摂取のために本開示の化合物を錠剤、丸剤、カプセル剤、液体剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
【0080】
経鼻または吸入送達では、本開示の薬剤は当業者に公知の方法により製剤化することもでき、例えば、食塩水などの可溶化、希釈化または分散化物質、ベンジルアルコールなどの保存剤、吸収促進剤、およびフルオロカーボンの例が含まれうるがこれらに限定されない。
【0081】
本開示において使用するのに適している医薬組成物には、活性成分がその意図された目的を達成する有効量で含有されている組成物が含まれる。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力内である。一般的に、本開示に従った化合物は広い投与量範囲にわたって有効である。例えば、成人ヒトの処置では、1日当たり0.01から1000mg、0.5から100mg、1から50mg、および1日当たり5から40mgの投与量が使用することができる投与量の例である。非限定的投与量は1日当たり10から30mgである。正確な投与量は投与経路、化合物が投与される形態、処置される被験体、処置される被験体の体重、ならびに担当医の好みおよび経験に依存することになる。
【0082】
活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、活性化合物の薬学的に使用することが可能な調製物への加工を促進する賦形剤および補助物質を含む適切な薬学的に許容される担体を含有することができる。経口投与のために製剤化される調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、または溶液剤の形態でもよい。
【0083】
II.がんを処置するためのキット
ここに開示される主題は、ここに開示される主題の方法を実行するためのキットにも関する。一般に、ここに開示されるキットは、ここに開示される主題に従って方法を実行するための、成分の一部もしくは全て、試薬、補給物質(supply)などを含有する。いくつかの実施形態では、用語「キット」とは、細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーと組み合わせた抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体ならびにここに開示される主題の方法を実行するための一組の具体的な指示を含む任意の意図された製品(例えば、パッケージまたは容器)のことである。キットは、カートン、瓶、アンプル、チューブなどの分割されたまたは分割されていない容器に包装することが可能である。ここに開示される組成物は、乾燥、凍結乾燥、または液体形態で包装することが可能である。提供される追加の成分は、乾燥成分の再構成のためのビヒクルを含むことが可能である。好ましくはそのようなビヒクルは全て、有害反応を引き起こすことなく被験体に注射するのに適するように、無菌であり非発熱性である。
【0084】
いくつかの実施形態では、ここに開示される主題は、固形腫瘍を処置するためのキットであって、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体、ならびに細菌、細菌産物、および免疫調節実体からなる群の少なくとも1つのメンバーを含むキットを提供する。他の実施形態では、キットは細菌またはその細菌産物ならびに抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体からなる群より選択される少なくとも1つの抗体を含む。さらに他の実施形態では、細菌または細菌産物は嫌気性細菌またはその細菌産物である。さらなる実施形態では、嫌気性細菌またはその細菌産物はClostridium novyiまたはその細菌産物である。
【0085】
いくつかの実施形態では、嫌気性細菌またはその細菌産物は毒素枯渇嫌気性細菌またはその細菌産物である。他の実施形態では、嫌気性細菌またはその細菌産物はClostridium novyi-NTまたはその細菌産物である。いくつかの他の実施形態では、野生型形態の毒素枯渇嫌気性細菌またはその細菌産物の毒素遺伝子の一部または全ては欠失している。さらなる実施形態では、毒素枯渇嫌気性細菌の毒性は、対応する野生型細菌と比べて多くとも2分の1に減少している。さらなる実施形態では、細菌産物は少なくとも1つの芽胞である。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の組み合わせを含むキットががんを処置するために使用される。
【0087】
長年の特許法慣例に従って、用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「それ(the)」とは、特許請求の範囲を含む本出願において使用される場合は「1つまたは複数」のことである。したがって、例えば、「被験体(a subject)」への参照は、その文脈が明らかにそれと反対(例えば、複数の被験体)でなければ、複数の被験体などを含む。
【0088】
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」は、文脈がそうでないことを要求する場合以外は、非排他的意味で使用される。同様に、用語「含む(include)」およびその文法的変形は、一覧表での項目の列挙が、列挙された項目と置き換えるまたはそれに付け加えることが可能な他の類似の項目の排除にならないように、非限定的であることを意図されている。
【0089】
本明細書および添付の特許請求の範囲を目的に、別に指示されていなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、サイズ、寸法、割合、形状、製剤、パラメータ、百分率、パラメータ、含量、特徴および他の数値を表す全ての数は、用語「約(about)」が値、量または範囲と共に明白に表れていないとしても、用語「約(about)」によってあらゆる例において修飾されていると理解するべきである。したがって、その反対であることが指示されていなければ、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは正確ではなく正確である必要はないが、許容差、変換率、丸め、測定誤差など、およびここに開示される主題が得ようとしている所望の特性に応じて当業者には公知の他の要因を反映して、近似するおよび/または要望に応じてさらに大きいもしくはさらに小さくてもよい。例えば、用語「約(about)」は、値に言及する場合、特定の量からいくつかの実施形態では±100%、いくつかの実施形態では±50%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意図することが可能である。なぜならば、そのような変動は開示された方法を実施するまたは開示された組成物を用いるのに適しているからである。
【0090】
さらに、用語「約(about)」は、1つまたは複数の数または数値範囲に関して使用される場合、範囲内の数全てを含む、そのような数全てを指すと理解するべきであり、その境界を記載されている数値より上および下まで広げることによりその範囲を修正する。エンドポイントによる数値範囲の列挙には、全ての数、例えば、その範囲内に包含されるその小数を含む全部の整数、(例えば、1から5までの列挙には、1、2、3、4、および5はもちろんその小数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1などが含まれる)およびその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【実施例0091】
以下の実施例は、ここに開示される主題の代表的実施形態を実行するためのガイダンスを当業者に提供するために含まれている。本開示および当技術分野の一般的技術レベルに照らして、当業者であれば、以下の実施例が例示となることのみを意図されており、多数の変化、修正、および変更はここに開示される主題の範囲から逸脱することなく用いることが可能であることを認識できる。以下に続く合成説明および特定の実施例は説明目的のみを意図されており、いかなる様式であれ他の方法により本開示の化合物を作ることを限定していると解釈するべきではない。
【0092】
(実施例1)
腫瘍モデルにおける併用治療
2つのマウス腫瘍モデル、CT26腫瘍モデルおよび4T1腫瘍モデルを使用して、C.novyi-NTの投与ありまたはなしでの腫瘍に対するCTLA-4およびPD-1抗体の効果を決定した。
【0093】
CT26腫瘍モデルを使用して、皮下CT26腫瘍を有するBALB/cマウスは、静脈内注射によりC.novyi-NT芽胞を用いておよび/または腹腔内注射により指示された抗体を用いて処置した。動物は3週間を超えるまでの間追跡され、腫瘍体積が決定された。CTLA-4抗体とPD-1抗体は、組み合わせると、現在臨床開発中である腫瘍標的化細菌株であるC.novyi-NTの芽胞を投与しても投与しなくても免疫原性CT26腫瘍を根絶することができた(図1)。
【0094】
4T1腫瘍モデルを使用して、皮下4T1腫瘍を有するBALB/cマウスは、静脈内注射によりC.novyi-NT芽胞を用いておよび/または腹腔内注射により指示された抗体を用いて処置した。動物はおよそ70日を超える間追跡した。腫瘍体積(図2A)と動物の生存(図2B)の両方を示している。
【0095】
CT26腫瘍モデルとは対照的に、4T1腫瘍は最小限に免疫原性であり自然に転移性であり、ヒト疾患の良好なモデルになっている。4T1腫瘍を有するマウスでは、特に腫瘍が200mmよりも大きい場合、治癒が報告されることはめったになかった。ここで、おそらく微小転移の免疫学的制御が改良されたため、生存率が抗体組み合わせを用いたことで著しく増加したとしても(図2B)、個々の抗体も抗体組み合わせも大きな原発4T1腫瘍(図2A)を根絶させるのに十分ではないことが示された。重要なことに、組み合わされた抗体に加えて、弱毒化された嫌気性腫瘍標的化細菌株であるC.novyi-NTの芽胞が静脈内に(IV)投与された場合、大きな原発腫瘍のかなりの割合が根絶され(図2A)、延長した生存だけではなく、この腫瘍モデルでは極端にまれな治癒ももたらされた(図2B)。
【0096】
これらの結果により、積極的な免疫刺激(例えば、腫瘍内細菌感染)が免疫学的チェックポイント(例えば、PD-1およびCTLA-4抗体)の欠如と組み合わされると、最小限の免疫原性腫瘍内でさえ著しい臨床的有用性が予測できることが示唆される。
【0097】
(実施例2)
Clostridium novyi-NTは抗腫瘍応答を誘導する
要約
Clostridium菌の種は、低酸素環境で成長する腫瘍細胞を溶解するその能力で知られる。ここで、Clostridium novyi(C.novyi-NT)の弱毒化された菌株は、腫瘍内注射後ラット同所性脳腫瘍モデルにおいて顕微鏡的に明確な腫瘍局在化応答を誘導することが示される。しかし、実験モデルが治療剤に対するヒト患者の応答を確実に予想しないことが多いことは周知である。したがって、天然に存在するイヌ腫瘍はヒト治験への橋渡しとして使用された。イヌ腫瘍は、それが不均一な遺伝的背景を有する動物で発生するのでヒトの腫瘍により類似しており、宿主起源であり、操作された突然変異ではなく自然発生的な突然変異に起因する。C.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射は自然発生的な固形腫瘍を有するコンパニオン動物のイヌでは十分に許容され、最もよくある毒性は細菌感染に関連する予想される症状であることが見出された。客観的な応答が16頭のイヌのうち6頭(37.5%)で観察され、3頭は完全奏功、3頭は部分奏功であった。これらの有望な結果に基づいて、進行性平滑筋肉腫を有するヒト患者はC.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射で処置された。この処置により、劇的な応答が生じ、骨内および周辺において腫瘍を著しく減少させた。まとめると、これらの結果により、C.novyi-NTは新生物組織を正確に根絶する制御された道具として作用することが可能であることが明らかにされ、選択された患者におけるこの薬剤のさらなる臨床試験が正当化されることが示唆される。
【0098】
導入
がんを特異的に標的化し破壊する治療法は正常な組織と悪性組織の違いを認識しなければならない(KrauseおよびVan Etten(2005年)New Engl.
J. Med. 353巻:172~187頁;ImaiおよびTakaoka(2006年)Nat. Rev.Cancer 6巻:714~727頁;Sosmanら、(2012年)New Engl. J. Med. 366巻:707~714頁;WilsonおよびHay(2011年)Nat. Rev.Cancer 11巻:393~410頁)。これらの違いには、遺伝子変化ならびに低酸素症および壊死の領域を有する不均一腫瘤をもたらす病態生理学的変化が含まれる(WilsonおよびHay(2011年)Nat. Rev.Cancer 11巻:393~410頁;HanahanおよびWeinberg(2011年)Cell 144巻:646~674頁;Kerbel(2008年)New Engl. J. Med. 358巻:2039~2049頁;ChungおよびFerrara(2011年)Annu. Rev. Cell Dev. Bio. 27巻:563~584頁;Baishら、(2011年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108巻:1799~1803頁)。全身的に送達される抗がん剤は、送達を腫瘍血管系に頼っており、したがって、血管形成が不十分な低酸素腫瘍領域では有効性が低い(WilsonおよびHay(2011年)Nat. Rev.Cancer 11巻:393~410頁)。さらに、酸素が放射線誘導細胞死の必要なエフェクターなので、放射線療法では低酸素細胞を死滅させることができない(Horsmanら、(2012年)Nat. Rev. Clin.
Oncol. 9巻:674~687頁)。こうした重要な理由から、切除不可能な局所的に進行した腫瘍は、従来の治療法で扱うのは特に困難である。
【0099】
腫瘍は壊死、低酸素、および十分に酸素化された領域で構成されている。低酸素腫瘍領域は、全身抗がん剤および放射線療法により抵抗性である。しかし、低酸素腫瘍領域は嫌気性細菌の成長のための肥沃な土壌を提供する。したがって、腫瘍の低酸素領域は嫌気性細菌の成長のための完璧なニッチを提供する。原則として、これは進行した局所的腫瘍の的確な様式での根絶の機会を提供し、周囲の十分に血管形成された正常酸素圧組織を温存する。100年以上前にがん患者をStrepococcus pyogenesで処置したコーレイの最初の研究以来、種々の嫌気性細菌がこの目的で検討されてきた(Coley(1910年)Proc. Roy. Soc. Med. 3巻:1~48頁;Coley(1991年)Clin. Orthop. Relat. Res. 3~11頁)。この初期の研究は、部分的には再現性が低く容認できない毒性があったため実行可能な抗がん剤を作製できなかった。もっと最近の研究は、Salmonella typhimurium、および他の弱毒化された菌株を含んでいた(Forbes(2010年)Nat. Rev.Cancer 10巻:785~794頁;Weiら、(2008年)Cancer Lett. 259巻:16~27頁)。しかし、イヌとヒト患者の両方におけるS.typhimuriumの第I相臨床試験では、細菌が安全に投与され腫瘍を標的にすることが可能であることが実証されたが、観察された効力は限られていた(Tosoら、(2002年)J. Clin. Oncol.20巻:142~152頁;Thammら、(2005年)Clin. Cancer Res.11巻:4827~4834頁)。S.typhimurium治療を用いて効力を増強しようとする試みで、全身的に投与された5-フルロシトシン(flurocytosine)を5-フルロウラシル(flurouracil)に転換するシトシンデアミナーゼを組み込んでいる遺伝的に改変された菌株が開発され患者において評価された(Nemunaitisら、(2003年)Cancer Gene Ther. 10巻:737~744頁)。
【0100】
しかし、1つの特に有望な細菌はClostridium novyiである(Dangら、(2001年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98巻:15155~15160頁)。C.novyiは、酸素に対して鋭敏に感受性である高度に可動性の芽胞形成細菌である。C.novyi-NTと呼ばれる野生型菌株の派生物は、α毒素遺伝子の除去を通じて作製された(Dangら、(2004年)Cancer
Bio. Ther. 3巻:326~337頁;Dangら、(2001年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98巻:15155~15160頁)。移植された同系腫瘍を有するマウスおよびウサギ内への静脈内に注射されるC.novyi-NT芽胞の単回用量により、局所化された腫瘍壊死、強い炎症応答、および処置を受けた動物の25~30%における完全奏功がもたらされた(Agrawalら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101巻:15172~15177頁)。これらのデータに基づいて、静脈内に注射されるC.novyi-NT芽胞は、自然発生するイヌ腫瘍において評価された(Krickら、(2012年)Amer. J. Vet. Res.73巻:112~118頁)。しかし、容認できる毒性を示す用量では、完全奏功は観察されなかった。
【0101】
周囲の正常組織は無処置のままにしてマウス腫瘍に局在化させ、その内部で発芽し、破壊する静脈内に注射されるC.novyi-NT芽胞の著しい能力を考慮すると、固形腫瘍内への芽胞の直接腫瘍内注射は静脈内経路による投与よりも有利である可能性があると仮定された。芽胞の全身注射が遭遇する1つの問題は、腫瘍まで実際に送達される芽胞の割合が少ないことである(Diazら、(2005年)Toxicol. Sci.88巻:562~575頁)。この問題は、マウスと比べると血液量が比較的大きく腫瘍が比較的小さい大型動物およびヒト患者では複雑になる。腫瘍内注射を使えば、桁の規模でもっと多い芽胞を標的腫瘍内に直接蓄積させてこの問題を克服することが可能である。さらに、芽胞の腫瘍内注射は、手術および放射線療法などの他の従来型の局所治療よりも有利である可能性もある。理論的には、C.novyi-NT療法であれば、正常組織の周辺部を切除する必要なく腫瘍からの新生物細胞の正確で微細な切除が可能になる。C.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射は、強力で限局化された炎症応答ならびに腫瘍細胞に対する適応免疫応答も誘発することができるであろう(Agrawalら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101巻:15172~15177頁)。このような推論に基づいて、腫瘍内に注射されるC.novyi-NT芽胞の安全性および効力を、前臨床動物モデルにおいてならびに自然発生しているがんを有するイヌの比較試験において調べた。腫瘍内に注射されるC.novyi-NT芽胞で処置された患者からの初めてのヒトデータも報告している。
【0102】
材料および方法
試験設計:腫瘍病変に特異的におよび正確に局在化しているC.novyi-NT誘導感染を実証するために、ラット同所性F98神経膠腫モデルを使用して前臨床概念証明試験を行った。ルシフェラーゼ活性およびカプランマイヤー生存曲線を使用して治療効果を評価した。自然発生的固形腫瘍を有するコンパニオン動物のイヌにおける比較試験を使用して、前臨床とヒト試験の間の橋渡しを行った。実験単位は1試験イヌであり、それぞれのイヌが4サイクルまでの処置を受けた。プラセボ対照、盲検、または無作為化は本試験では使用しなかった。正式な演繹的な統計的仮説は本比較試験では計画しなかった。記述要約統計および分析は事後に提供された。ヒト臨床試験は、進行中の非盲検、非無作為化、多施設第I相試験であり、標準「3+3」用量漸増を用いた。試験は、(i)単回腫瘍内注射として投与した場合の、処置抵抗性固形腫瘍悪性病変を有するヒトでのC.novyi-NT芽胞の安全性プロファイル、用量制限毒性、および最大耐用量を決定する、(ii)注射された腫瘍と応答全体の両方の予備的抗腫瘍活性を記述する、(iii)循環しているC.novyi-NT芽胞の処分を試験する、ならびに(iv)C.novyi-NT処置に関連する宿主免疫および炎症応答を測定するように設計した。
【0103】
細胞株および組織培養:レンチウイルスを経てルシフェラーゼ構築物をトランスフェクトさせたラットF98神経膠腫細胞株は、10%胎仔ウシ血清(FBS)ならびに1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で維持した。
【0104】
ラット同所性脳腫瘍モデル:ラットを含む全ての動物実験はJohns Hopkins University Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。6週齢の雌F344フィシャーラット(体重100~150グラム)を国立がん研究所から購入した。移植手順では、雌F344フィシャーラットに、無菌NaCl(0.9%)溶液中塩酸ケタミン(75mg/kg;100mg/mLケタミンHCl;Abbot Laboratories)、キシラジン(7.5mg/kg;100mg/mL Xyla-ject;Phoenix
Pharmaceutical、Burlingame、CA)、およびエタノール(14.25%)の腹腔内注射によって麻酔をかけた。レンチウイルスを経てルシフェラーゼ構築物をトランスフェクトさせたF98神経膠腫細胞(2×10)は、以前記載された通りに(Baiら、(2011年)Neuro-oncology 13巻:974~982頁)、穿頭孔を通じてブレグマの3mm外側で2mm前側に位置する右前頭葉中に定位的に植え込んだ。腫瘍サイズは、腫瘍細胞の植込み後12日目に8mg/ラット D-ルシフェリンカリウム塩を腹腔内注射し、Xenogen器具によって評価した。引き続いて、以前記載された通りに(Dangら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98巻(26号):15155~15160頁;Bettegowdaら、(2006年)Nat. Biotechnol.24巻:1573~1580頁)生成された3百万のC.novyi-NT芽胞を上記と同じ座標を使用して頭蓋内腫瘍中に定位的に注射した。ラットは最初の2日間は10mg/kg/日の腹腔内デキサメタゾンで処置して術後浮腫のリスクを最小化し、これは脳腫瘍手術および生検後のヒト患者において使用される標準臨床プロトコールを厳密に模倣している。対照ラットは同じ体積のPBSを定位的に注射され、最初の2日間は10mg/kg/日の腹腔内デキサメタゾンで処置された。動物は、ジョンズホプキンズ動物実験ガイドラインに従って、悪化、嗜眠、神経毒性、または疼痛のいかなる徴候についても毎日観察した。窮迫の症状がある場合は、水分補給とドキシサイクリンを用いた支持的治療(腹腔内に15mg/kgの負荷量とそれに続いて維持として12時間ごとに10mg/kg)を開始し、7日間続けた。症状が持続するおよび/または衰弱した場合、瀕死の動物は安楽死させた。腫瘍内に注射されたC.novyi-NT芽胞の有効性はカプランマイヤー生存曲線、ならびに脳部分の残っている腫瘍組織量(tumor burden)により評価した。後者では、脳はさらなる病態試験のために死後に収集され、ホルムアルデヒドに入れ、パラフィンに包埋した。グラム染色スライド、サフラニンでの対比染色、およびH&Eスライドを標準手順ガイドラインに従って入手した。
【0105】
統計解析:カプランマイヤー生存曲線およびルシフェラーゼ計数グラフを作成し、GraphPad Prism v.5.00(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用して、それぞれマンテルコックス検定およびマンホイットニー検定を用いて解析した。
【0106】
配列決定のためのゲノムDNA単離:腫瘍内に注射されたC.novyi-NT芽胞の比較試験に参加しているイヌ由来のゲノムDNAは、QIAamp DNAミニキット(QIAGEN、Valencia、CA)を製造業者のプロトコールに従って使用して、末梢血リンパ球(PBL)およびホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織から抽出した。
【0107】
配列決定およびバイオインフォマティック解析:腫瘍および正常試料のゲノム精製、ライブラリー構築、エキソーム捕獲、次世代配列決定、およびバイオインフォマティック解析は、Personal Genome Diagnostics社(PGDx、Baltimore、MD)で実施した。手短に言えば、腫瘍および正常試料由来のゲノムDNAは断片化し、Illumina TruSeqライブラリー構築(Illumina、San Diego、CA)のために使用した。エキソーム領域はAgilent Canine All Exonキットを製造業者の使用説明書(Agilent、Santa Clara、CA)に従って使用して溶液中で捕獲した。ペアードエンド配列決定は、断片のそれぞれの末端から100塩基を生じるが、HiSeq 2000 Genome Analyzer(Illumina、San Diego、CA)を使用して実施した。タグはCASAVA 1.7ソフトウェアのElandアルゴリズム(Illumina、San Diego、CA)を使用してイヌ基準配列(CanFam2.0)と整列させた。IlluminaのBaseCallソフトウェアの純正フィルターを使用してそれに続く解析のために配列リードを選択した。次に、CASAVA 1.7ソフトウェアのELANDアルゴリズム(Illumina、San Diego、CA)を適用して点突然変異ならびに小さな挿入および欠失を同定した。dbSNP131(CanFam2.0)に記録されている公知の多型は解析から取り除いた。潜在的体細胞突然変異はフィルターをかけられ、以前記載された通りに(Jonesら、(2010年)Science 330巻:228~231頁)視覚的に点検した。
【0108】
自然発生的イヌ腫瘍におけるC.novyi-NT芽胞の調製および腫瘍内注射:比較イヌ試験において使用するためのC.novyi-NT芽胞は、以前記載された通りに(Dangら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98巻(26号):15155~15160頁;Bettegowdaら、(2006年) Nat. Biotechnol.24巻:1573~1580頁)生成した。手短に言えば、細菌は少なくとも2週間芽胞形成培地で培養して、成熟芽胞の最大収量を確保した。成熟芽胞は、2つの連続する絶え間ないPercoll勾配、続いて4回の洗浄およびPBSでの再懸濁を通じて精製した。最終産物の無菌性試験は、FDA 21CFR610.12ガイドライン(Nelson Laboratories、Salt
Lake City、UT)に従ってダイズカゼイン消化培地およびチオグリコレート培地において産物を培養することにより実施した。発芽効率アッセイは、5%ウマ血液を含むブルセラ寒天上、嫌気条件下で実施して、芽胞が予め設定した生存能力基準を確実に満たすようにした。芽胞は、体積1000μLおよび濃度1×10芽胞/mLでOリング密封ねじ口付の無菌1.8mLクリオバイアル(Simport、Beloeil、Canada)に詰めた。C.novyi-NTクリオバイアルは2~8℃で保存した。投薬のため、0.4mLアリコートの保存芽胞溶液を0.5mLクリオバイアルに詰めた。投薬後、クリオバイアルおよび未使用のC.novyi-NT芽胞は、バイオセーフティーレベル2材料の処分のために適用可能な規制に従って破棄した。
【0109】
腫瘍内注射に先立って、芽胞は1mL注射器中に引き入れる前に全部で3回、10秒間、最大速度で混合しながらボルテックスで再懸濁した。注射部位は無菌的に準備した。利用可能であれば、超音波またはコンピュータ断層撮影(CT)を使用して腫瘍の壊死領域を同定した。壊死領域が同定されない場合は、注射は腫瘍の中心に向けられた。針は予め規定された領域に1回挿入され、100μLの芽胞懸濁物(1×10C.novyi-NT芽胞)は均等圧力で分注した。注射針はゆっくりと取り除き、注射部位は殺菌した。
【0110】
比較イヌ試験の設計および実行:イヌを含む全ての動物試験は、適用可能な地方、州、国および国際動物権利保護規則に従って実施し、最も高い基準の動物管理および使用を遵守した。それぞれのイヌの登録に先立って所有者から書面によるインフォームドコンセントを得た。試験プロトコールおよびインフォームドコンセントはAnimal Clinical Investigation(ACI、Washington、DC)動物実験委員会から承認を得て、試験に登録されたイヌの倫理的管理を確保した。
【0111】
自然発生的腫瘍を有する依頼人所有のイヌは4サイクルまでの腫瘍内C.novyi-NT芽胞を受けた。サイクルは、1標的腫瘍への1×10C.novyi-NT芽胞(100μL PBS中)の1回腫瘍内注射からなっていた。腫瘍内C.novyi-NT芽胞のサイクルは典型的には1週間隔であった。プラセボ対照もマスキングも使用しなかった。イヌは90日間追跡し、利用可能な場合には疾患進行および生存についての延長された経過観察が保証された。試験からの早期撤退は毒性または進行性疾患では許容された。
【0112】
イヌはAnimal Clinical Investigation腫瘍学ネットワーク(ACI、Washington、DC)に参加している複数の施設で登録されていた。処置、管理、および試験評価は委員会認定の獣医腫瘍学者により監督された。登録は、自然発生的固形腫瘍を有する依頼主所有のイヌに提供され、標準的治療に失敗した軟部組織肉腫またはその所有者(複数可)がそのような治療を断ったイヌを優先した。参加は、標的病変が1から7センチメートルの最も長い径を有する坦腫瘍イヌに制限された。腫瘍が、膿瘍発達が破局的だと考えられる(例えば、脳内まで広がった鼻腫瘍または著しい肺転移性疾患)領域に位置しているイヌは試験から排除された。C.novyi-NT芽胞処置の7日以内に全身抗生物質治療をまたは21日以内にがん治療(化学療法、放射線療法、および免疫療法)を必要とする活発な細菌感染の証拠があるイヌは不適格であった。イヌは0または1のパフォーマンススコアを有すること(表1)および登録の全試験期間の間利用できることが求められた。抗がん剤の同時使用および他の臨床試験への参加は禁止された。
【0113】
イヌは、研究者の裁量で、C.novyi-NTの最初の腫瘍内注射の後4日間、およびそれに続く腫瘍内注射の後24~48時間、観察するために入院させた。静脈内流体治療はC.novyi-NT芽胞の各腫瘍内注射の後、4mL/kg/時の割合で2時間投与された。皮下流体治療はC.novyi-NT芽胞の各腫瘍内注射の後、20mL/kg/日の割合で4日間投与された。イヌはC.novyi-NT芽胞の各腫瘍内注射の後、6時間詳しくモニターされた。
【0114】
試験評価は表2に記載する通りに行った。プレスクリーニング評価は腫瘍内C.novyi-NT芽胞の最初のサイクルの1~14日前に行った。イヌは試験中、入院患者と外来患者ベースの両方で定期的にモニターした。実験室試料は表2に規定する通りに採取し、全血球数、血清生化学、プロトロンビン時間、部分トロンボプラスチン時間、および検尿を含んだ。スクリーニング時に撮像を行い、局所CT、胸部X線検査、および腹部超音波検査を含んだ。研究者の裁量で試験中に追加の撮像を実行した。
【0115】
可能な場合は、薬事獣医辞典(Veterinary Dictionary for
Drug Related Affairs)(VeDDRA)rev.4(European Medicines Agency(2012年)Combined VeDDRA list of clinical terms for reporting
suspected adverse reactions in animals and humans to veterinary medicinal products)の用語を用いて、獣医がん臨床研究グループ(Veterinary Co-operative Oncology Group)有害事象共通用語規準(VCOG-CTCAE)v1.0(Veterinary co-operative oncology group(2004年)Vet. Comp. Oncol. 2巻:195~213頁)を使用して有害事象を評価した。C.novyi-NT発芽に関連する有害事象(標的病変反応)についての用語は表3に定義している。適切なVeDDRAも標的病変反応用語もない臨床所見は符号化されていない徴候として別々に分類した(表4)。C.novyi-NT療法との関係は報告する研究者により決定された。
【0116】
標的(注射された)病変の最長径腫瘍測定は処置後0日目、7日目、14日目、21日目、60日目および90日目に行った(表2)。非標的および新しい病変は記録したが測定はしなかった。最良の全標的応答は21日目の試験訪問時またはその後に評価し、完全奏功(CR)は、標的病変の完全消滅として定義され、部分奏功(PR)は、標的病変の最長径の少なくとも30%減少として定義され、進行性標的疾患(PD)は、標的病変の最長径の少なくとも20%増加または新しい非標的病変の出現として定義された。安定病態(SD)は、標的病変の最長径の不十分な減少または増加として定義されCR、PR、またはPDとして認定した。C.novyi-NT関連膿瘍の場合、壊死組織の医学的または外科的デブリードマンは研究者の裁量に任された。
【0117】
外科試料および部検の評価は、委員会認定の獣医病理学者によって行われた。組織標本は10%中性緩衝ホルマリン中で固定されパラフィンに包埋された。H&Eで染色したスライドおよび/またはグラム染色スライドを、標準手順ガイドラインに従って評価のために調製した。免疫組織化学(IHC)では、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織は5μmで切片にし、キシレン中で脱パラフィンし、段階的アルコールを通じて再び湿潤化した(rehydrate)。抗原回復(antigen retrieval)はアンマスキング溶液中10分間スライドを加熱することにより行った(カタログ番号H-3300、Vector Laboratories、Burlingame、CA)。次に全てのスライドを動物種由来の10パーセントブロッキング血清中でインキュベートし、そこから室温で10分間PBS中で二次抗体を作った。一次抗体S100(カタログ番号Z0311、DAKO、Carpinteria、CA)および抗平滑筋アクチン(カタログ番号M0851、DAKO、Carpinteria、CA)を室温で60分間、1:100で使用した(Dukeら、(2014年)Vet. Pathol.;Zarfossら、(2007年)Vet. Pathol. 44巻:276~284頁)。DABで標識された二次抗体(カタログ番号BA-1000およびBA-2000、Vector Laboratories、Burlingame、CA)を室温で30分間、1:500で使用した。切片はABC試薬(Vector Laboratories、Burlingame、CA)と一緒にインキュベートし、ヘマトキシリンで対比染色した。腫瘍悪性度は公表されている基準(Dennisら、(2011年)Vet. Pathol. 48巻:73~84頁;Patnaikら、(1984年)Vet. Pathol.21巻:469~474頁;Smedleyら、(2011年)Vet. Pathol.48巻:54~72頁;Sabattiniら、(2014年)Vet. Pathol.)に基づいてそれぞれに割り当てられた。
【0118】
腫瘍内に注射されたC.novyi-NT芽胞の第I相ヒト臨床試験:C.novyi-NT芽胞の単回腫瘍内注射の非盲検非無作為化多施設第I相安全性試験は処置抵抗性固形腫瘍を有する患者において現在進行中である。臨床試験プロトコールはそれぞれの参加施設の施設内審査委員会(Institutional Review Board)(IRB)により審査され承認され、全ての規制ステップは食品医薬品局(FDA)の指導の下で実施した(http://www.clinicaltrials.gov;NCT01924689)。患者は全員が試験に組み込まれる前に書面でのインフォームドコンセント用紙(ICF)に署名することを求められた。
【0119】
本第I相試験の主要目的は、腫瘍内に注射されるC.novyi-NTの安全性プロファイル、用量制限毒性、および最大耐用量を決定することである。さらに、腫瘍内C.novyi-NTの抗腫瘍活性を調査した。
【0120】
第I相試験におけるC.novyi-NT芽胞の調製および腫瘍内注射:C.novyi-NT芽胞はOmnia Biologics,Inc.(Rockville、MD)により製造され製剤化された。C.novyi-NT芽胞の臨床供給は、ゴム栓および不正開封防止キャップ付のアルミニウムシール付の単回使用2mL無菌無パイロジェンI型ホウケイ酸ガラスバイアルに、1.0mLの無菌リン酸緩衝食塩水(PBS)に懸濁された8.52×10芽胞/mLの濃度で詰めた。バイアルは、一定の温度監視下で制御温度環境において2~8℃で保存した。
【0121】
患者を試験に登録後、1つのバイアルを試験施設に輸送した。C.novyi-NTのさらなる調製が必要であり、腫瘍内注射と同じ日に行われた。濃縮された芽胞懸濁物の希釈は、適切なサイズの無菌食塩水(0.9%)注入バッグを使用して指定された生物学用安全キャビネットにおいて実施し、割り当てられたコホートに基づいて必要な用量を達成した。次に注射体積(3mL)を食塩水バッグから引き出し、X線撮影ガイダンス下で注射した。C.novyi-NT芽胞は18ゲージマルチプロングド針(multi-pronged needle)(Quadra-Fuse(登録商標)、Rex-Medical、Conshohocken、PA)で注射した。
【0122】
ヒト臨床試験の設計および実行:本試験は標準3+3用量漸増設計を用いて行った。試験に登録するためには、患者たちは進行固形腫瘍悪性病変である、触知でき超音波またはX線撮影ガイダンス下で明らかに同定可能である標的腫瘍であると診断されたことがなければならない。さらに、標的病変は最長径≧1cmであり、RECIST 1.1基準によって定義された場合測定可能であり、C.novyi-NT芽胞の経皮注射に適していなければならない。
【0123】
適格規準には、処置抵抗性固形腫瘍悪性病変の病歴;少なくとも18歳;Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス≦2;救急処置室の45分以内の滞在能力および腫瘍内注射後28日間介護者がいることが含まれた。除外基準には、妊娠;原発性脳悪性病変または脳転移;臨床的に重大な腹水または門脈体静脈高血圧もしくは硬変の臨床証拠もしくは病歴;グラスゴーコーマスコア(GCS)<15;血清クレアチニンレベル>1.5×正常値上限(ULN)、血液透析または腹膜透析を必要とした慢性腎不全;酸素飽和度(Sp02)<95%(室内気);平均動脈血圧(BP)<70mmHg;血小板数≦100,000/mm3;ヘモグロビン<9.0g/dL;好中球絶対数(ANC)<1,000/mm3;臨床的に重大な胸水、心内膜液浸出、周辺心膜液貯留(circumferential pericardial effusion)、または心臓周辺のいかなる位置でも1.0cmを超える任意の浸出液;免疫抑制剤を用いた進行中の処置の必要性;固形臓器移植の病歴;全身または局所感染が含まれた。
【0124】
適格患者は投薬コホートに入れ、登録した。患者はC.novyi-NT芽胞注射後は入院したままで、8日間観察された。患者は、慣例的にスケジュールにされた経過観察来診のために臨床施設を再び訪れ、その期間、安全性および効力の評価を実施した。
【0125】
臨床応答および進行はRECIST version 1.1を使用して評価した。客観的応答は、注射した腫瘍の連続CTまたはMRIスキャンならびに遠隔転移により測定した(5病変まで)。
【0126】
C.novyi-NT療法の公衆衛生上の含意:C.novyiは、土壌中に一般的に存在する芽胞形成グラム陽性偏性嫌気性細菌である(NishidaおよびNakagawara(1964年)J. Bacteriol.88巻:1636~1640頁)。C.novyi-NTは全身的病原性に必要な毒素遺伝子を欠失させることによりC.novyiの菌株から導かれた(Dangら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.98巻(26号):15155~15160頁)。C.novyi-NTの広範囲な前臨床評価では、非腫瘍組織におけるC.novyi-NT芽胞の発芽を実証できなかった(Diazら、(2005年)Toxicol. Sci.88巻:562~575頁)。さらに、C.novyi-NT芽胞は酸素に抵抗性であるが、増殖性C.novyi-NTは酸素に高度に感受性である(Diazら、(2005年)Toxicol. Sci. 88巻:562~575頁)。したがって、増殖性C.novyi-NTは低酸素腫瘍微小環境の外側では生存できない。C.novyi-NT療法を用いた場合の公衆衛生へのリスクは最小であると考えられているが、C.novyi-NTの取扱いおよびC.novyi-NT汚染物質の処分についての注意が煽られた。イヌ比較試験では、処置されたイヌからの糞便、尿、唾液、または腫瘍分泌物を取り扱う時は保護手袋をし;糞便は密封プラスチックバッグ中に置き、一般家庭ごみと一緒に処分し;尿、糞便または腫瘍分泌物で汚れた物品は他の洗濯物とは別にして洗った。ヒト臨床試験では、標準保護服および手袋が医療提供者に求められた。
【0127】
結果
腫瘍内注射されたC.novyi-NT芽胞は腫瘍組織を特異的に標的にし、ラットの生存を伸ばす:高悪性度神経膠腫は、広範囲な領域の低酸素および壊死のある著しい病理組織学的変動性を示す。この腫瘍型は一般には転移しないが、その複雑さは中枢神経系内での保護された位置と共にこのがんを最も処置するのが困難ながんの1つにしてきた。完全な外科的切除は、解剖学的制約および無情にも腫瘍再発をもたらす浸潤性成長パターンのためほぼ常に不可能である。したがって、神経膠腫は、C.novyi-NT芽胞の局所注射が治療的に有用である可能性のある腫瘍型を表すと思われた。この可能性を評価するため、ルシフェラーゼを発現するように操作されたF98ラット神経膠腫細胞を6週齢のF344フィシャーラットに同所的に移植すると、急速に致死的になる局所的浸潤性腫瘍を生じた(図3A)。これらのラットの腫瘍中へのC.novyi-NT芽胞の定位的腫瘍内注射によって、24時間以内に発芽し、48時間以内には腫瘍組織量の指標であるルシフェラーゼ活性が急速に低下した(図3Bおよび3C)。C.novyi-NT発芽は増殖性形態の細菌の出現により示された。際立ったことに、C.novyi-NTは腫瘍に正確に局在化しており、隣接する正常細胞をわずか数ミクロン離れて温存していた(図4Aおよび4B)。さらに、これらの増殖性細菌は、正常な脳実質内に埋もれた微小浸潤性腫瘍細胞のアイランド内で特異的に成長し、同時にアイランドを破壊するように見えることがあった(図4Cおよび4D)。この細菌処置により、この極めて侵襲性のラットモデルにおいて著しい生存上の利点が生じた(図3A、P値<0.0001)。C.novyi-NT発芽の結果としての脳浮腫は一般的であり、医学的に管理された。脳内の膿瘍形成は抗生物質を適切に使用した同系ラットモデルでははっきり観察はされなかった。しかし、膿瘍形成は本治療の潜在的副作用であり、ヒト患者において発症するおそれがあり、慣例的な臨床手順である、神経外科的膿瘍切除およびドレナージを必要とすると考えられる。にもかかわらず、高悪性度神経膠腫の陰鬱な予後を考慮すると、C.novyi-NT処置の利益は関連する潜在的リスクよりまさる可能性がある。
【0128】
イヌ軟部組織肉腫はヒト腫瘍に似ている:抗がん剤の前臨床動物試験ではヒトにおいて観察された効果が再現されないことが多い。しかし、コンパニオン動物のイヌでは、臨床的に使用される治療剤はヒトにおいて見られるのと類似の毒性および効果を誘導する(PaoloniおよびKhanna(2008年)Nat. Rev. Cancer 8巻:147~156頁)。コンパニオン動物のイヌでの調査的治療の試験では、前臨床動物試験とヒト臨床試験の間の極めて重要な橋渡しを表すことが可能である。特に、イヌ軟部組織肉腫は、多くの品種のイヌで一般的であり、ヒト軟部組織肉腫と著しく類似する臨床的および病理組織学的特徴を有するので優れたモデルである(PaoloniおよびKhanna(2008年)Nat. Rev. Cancer 8巻:147~156頁;VailおよびMacEwen(2000年)Cancer Invest.18巻:781~792頁)。さらに、多くの軟部組織肉腫が表面的な位置にあるので、治療関連膿瘍形成の迅速な評価と管理が可能である。
【0129】
ゲノミクスの最近の進歩により、ヒトにおけるがん遺伝学の知識が拡大し、突然変異負荷、腫瘍免疫原性ならびに抗PD-1および抗PD-L1抗体などの免疫療法に対する応答の間の関連の証拠が最近もたらされた(Champiatら、(2014年)Oncoimmunology 3巻:e27817)。しかし、イヌがんの遺伝的景観について知られていることは比較的少ない。C.novyi-NTは強力な抗腫瘍免疫応答を誘導することが示されているので(Agrawalら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S,A 101巻(42号):15172~15177頁)、イヌ軟部腫瘍肉腫がヒトの軟部腫瘍肉腫に遺伝的に類似しているかどうか、したがって、適切な比較モデルになるかを決定することが求められた。したがって、腫瘍のエキソームを配列決定し、比較試験に参加している軟部組織肉腫を有する10頭のイヌ(7頭が末梢神経鞘腫瘍、1頭が線維肉腫、1頭が粘液肉腫、および1頭が滑膜細胞肉腫)由来の正常なDNAとマッチさせた(図10)。この分析には、DNAの32.9メガ塩基(Mb)を含む30,194名目遺伝子の照合を含んでいた。平均では、作製された配列の16.2ギガ塩基(Gb)(範囲:8.1~23.3Gb)がゲノムにマッピングされ、標的にされた領域の92.2%の塩基が腫瘍DNA中の少なくとも10の独自のリードによって網羅された。同様に、平均で配列の16.2Gb(範囲:14.6~19.7Gb)が正常DNA中のゲノムにマッピングされ、標的にされた塩基の93.6%が少なくとも10の独自のリードによって網羅された。腫瘍中の標的にされた塩基ごとの平均カバー度(coverage)は158倍(範囲:73~227倍)、マッチさせた正常試料では151倍(範囲:130~178倍)であった。
【0130】
厳密な分析基準を使用すると、10の軟部組織肉腫の間の156の体細胞突然変異および28の体細胞コピー数変化が同定された(図11および表5)。体細胞突然変異の範囲は0から95であり、平均で腫瘍あたり16であった。軟部組織肉腫における突然変異普及率は低く、平均でMbあたり0.47であった(範囲:Mbあたり0.00~2.89)。95体細胞変化を有する1つの試料外れ値を排除すると、Mbあたり0.21突然変異の平均普及率(範囲:Mbあたり0.00~0.61)(図10)になり、ヒト小児ラブドイド腫瘍(Leeら、(2012年)J. Clin. Invest.122巻:2983~2988頁)および他の軟部組織肉腫(Josephら、(2014年)Gene Chromosome Canc.53巻:15~24頁)における突然変異率の概算に類似していた。最も一般的な種類の体細胞変化はミスセンス突然変異であり、優勢なものはCからT(45.5%)およびGからAへの移行であった(34.0%;表6および7)。増幅および欠失はそれほど一般的ではなく、平均で腫瘍あたり3(範囲:0から17)(図10)であった。10のイヌ軟部組織肉腫のうち7つは増幅も欠失も有していなかった。
【0131】
一塩基置換は、ヒト腫瘍において頻繁に突然変異する3つの腫瘍抑制遺伝子(NF1、MLL3、およびPTCH1)で同定された。さらに、ヒトがんにおいて増幅しているが点突然変異していないことが示されているがん遺伝子であるMDM4は1つのイヌ腫瘍において増幅している(しかし点突然変異していない)ことが見出された(Leeら、(2012年)J. Clin. Invest.122巻:2983~2988頁;Barretinaら、(2010年)Nat. Genet.42巻:715~721頁;Chmieleckiら、(2013年)Nat. Genet.45巻:131~132頁;Vogelsteinら、(2013年)Science 339巻:1546~1558頁)。1つよりも多い腫瘍において突然変異している唯一の遺伝子はATP7B(2つの腫瘍においてミスセンス突然変異)およびAIG1(2つの腫瘍において増幅している)であった。興味深いことに、ATP7Bにおける突然変異はヒト脂肪肉腫においても見出された(Josephら、(2014年)Gene Chromosome Canc.53巻:15~24頁)。イヌ腫瘍における184体細胞変化のうち22はヒト軟部組織肉腫において突然変異していることがすでに示されている遺伝子で起きていた(表8)。分析はいくつかの軟部組織肉腫組織型(histiotypes)を包含していたので、これらが重要で保存された腫瘍形成経路を示すドライバー突然変異を表しているかどうかを決定するためには、両方の種における軟部組織肉腫についてのさらに大規模な試験が必要になる。にもかかわらず、イヌ腫瘍の遺伝的景観は、遺伝子変化の数および突然変異の範囲の点でヒトの腫瘍の遺伝的景観に類似していた。具体的には、これにより、ヒトにおける類似の腫瘍型よりも免疫応答を開始する可能性を高くしうる非常に多数の突然変異をイヌ腫瘍が有する可能性は排除される。
【0132】
自然発生的イヌ腫瘍におけるC.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射:C.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射の安全性および効力を調べるために、自然発生している固形腫瘍を有する16頭のイヌの比較試験を実施した(表9)。それぞれのイヌは、1つの標的腫瘍に1×10C.novyi-NT芽胞の単回腫瘍内注射として定義された少なくとも1サイクルのC.novyi-NT芽胞処置を受けた。イヌは、サイクル間で1週間の間隔をあけて4サイクルまでの処置を受けた。処置されたイヌは最初の腫瘍内注射後少なくとも90日間追跡された。
【0133】
9頭の去勢された雄、6頭の去勢された雌および1頭の無傷の雄が試験に登録された(表2)。イヌの平均体重は29.4kg(範囲8.1~44.3kg)でその平均年齢は10.9歳(範囲:7.2~14.3歳)であった。13頭のイヌが軟部組織肉腫の組織形態学的(histomorphic)診断を受け(8末梢神経鞘腫瘍、1線維肉腫、1粘液肉腫、1横紋筋肉腫、および1滑膜細胞肉腫)ならびに骨肉腫、悪性黒色腫、および肥満細胞腫瘍と1頭ずつ診断された。13の軟部組織肉腫のうち、6つの末梢神経鞘腫瘍は免疫組織化学(IHC)で利用可能であった。6つ全てがS100に陽性で平滑筋アクチンに陰性であり、組織形態学的(histiomorphic)診断を確証していた。腫瘍のうちの7つは悪性度Iであり、5つが悪性度IIであり、4つが悪性度IIIであった。8頭のイヌはそのがんのため以前外科治療を受けていた。
【0134】
全てのイヌが少なくとも1サイクルの処置を受け、計画された最大64のうち53サイクルが施された。過半数のイヌ、16頭のうち10頭は意図された4サイクルを受けた。第1サイクル後初期の腫瘍応答、毒性、または進行性疾患を示したイヌでは、その後のサイクルは停止した(表9)。一般に、有害事象は軽度の重症度(>90%悪性度Iまたは悪性度II)であり、発熱(17インシデント)、腫瘍炎症(12インシデント)、腫瘍膿瘍(10インシデント)、食欲不振(9インシデント)および嗜眠(6インシデント)を含むC.novyi-NT芽胞注射部位での局所感染と一致していた(表10)。注射された標的病変部位での炎症応答の臨床徴候は、腫瘍炎症(12/14)、腫瘍膿瘍(7/14)、腫瘍疼痛(5/14)、および腫瘍分泌(4/14)を含む、16頭のイヌのうち14頭(87.5%)で観察された(表11)。
【0135】
イヌは試験の21日目にまたはその後に最良の応答について評価した。16頭のイヌのうち2頭、04-R04および04-R08は、注射した腫瘍が21日目前に外科的に切除されたために、応答について評価することができなかった。イヌ04-R04は、C.novyi-NTの最初の腫瘍内注射の2日後強固な発芽を生じた上腕骨骨肉腫を有しており、その腫瘍の位置が深いため、膿瘍管理のために21日目に肢切断を実施した。イヌ04-R08は、後足の内側側面の末梢神経鞘腫瘍を有しており、進行性疾患の管理のために15日目の肢切断の前に3サイクルの処置を受けた。16頭のイヌのうち14頭は処置に対する応答について評価された。3頭は治療に完全奏功(CR)があり、3頭は部分奏功(PR)があり、5頭は安定病態(SD)があり、3頭は進行性疾患(PD)があった。処置についての奏効率は37.5%(16頭のイヌのうち6頭;95%信頼区間:15.2~64.6%)であった。腫瘍膿瘍および応答は1から4サイクルの処置の後で発生した。イヌ11-R01は単回サイクル後PRを経験し、04-R03は3サイクル後CRを有し、イヌ04-R02および04-R05は4サイクル後PRを有し、04-R01および04-R06は4サイクル後CRを有していた。図5および図6は、それぞれ部分(11-R01)および完全奏功(04-R03)のイヌの代表的変化を示している。客観的応答を経験した6頭のイヌのうち3頭において手術管理で膿瘍の消散が起きた。これらの場合、最初のサイクルの処置の平均22日後にデブリードマンを行った。イヌ04-R02では、腫瘍応答は、所有者が創傷管理のために肢切断を選択する前に評価した。イヌ04-R03および11-R02では腫瘍応答は創傷デブリードマン後に評価した。郭清した組織はイヌ04-R02および04-R03において組織病理学的分析に利用可能であり、これらのイヌは腫瘍の広範な壊死および炎症を示しており、多数のグラム陽性桿菌がClostridium spp.と形態学的に一致していた。イヌ04-R02では、腫瘍縁には生存可能な腫瘍細胞は存在しなかった。イヌ04-R03では、珍しい散在する腫瘍細胞が観察された。しかし、C.novyi-NT関連膿瘍形成という活発な性質ならびにその後の免疫浸潤および創傷治癒を考慮すると、デブリードマンを行わなかった場合にはその最終的な運命を推測するのは困難である。デブリードマンとは無関係に、創傷治癒は2から4週間後は平穏で完全であった。外科的管理に加えて、客観的応答のあった6頭のイヌのうち3頭は、試験の過程中は抗生物質(アンピシリン、アモキシシリン、およびメトロニダゾール)および鎮痛剤(オピオイド、トラマドール、および非ステロイド系抗炎症薬)を受けた。しかし、客観的応答前には必ずしも明白な膿瘍形成は観察されなかった。イヌ04-R01および04-R06は4サイクルの処置を受け、21日目の試験訪問では腫瘍炎症が観察されたが膿瘍形成は観察されなかった。完全奏功は、これら2頭のイヌではそれぞれ42日目(予定にない訪問)および60日目の試験訪問では認められた。CRまたはPRのどちらかを経験した6頭のイヌのうち3頭が長期応答を有していた(図7)。残りの3頭のイヌでは、平均無進行期間は106日(範囲:60~169)であった。
【0136】
C.novyi-NTは最初のヒト患者において急速な局所腫瘍破壊を引き起こす:比較イヌ試験におけるC.novyi-NT処置の有望な結果および好ましいリスク/効果プロファイルは、ラットにおいて観察された結果と併せて、ヒトにおけるこの処置の企てに理論的根拠を提供した。したがって、標準的治療に抵抗性であるかまたは利用可能な標準的治療がない固形腫瘍を有するヒト患者における第I相治験試験を開始した(NCT01924689)。本明細書では、この試験に登録された最初の患者、2006年8月に後腹膜平滑筋肉腫と診断された53歳女性を報告する。患者は数回の外科切除を受け、複数の化学療法および放射線療法処置を受けていた。しかし、患者の疾患は進行し、転移性の病変が肝臓、肺、腹膜、ならびに右肩および隣接する右上腕骨における軟部組織に存在していた。
【0137】
計画開始用量1×10C.novyi-NT芽胞を18ゲージのマルチプロングド針で患者の転移性右肩腫瘍に注射して処置を実施した(0日目)。1日目、患者は肩甲骨まで広がる軽度の右肩疼痛を起こし、これはトラマドールおよびアセトアミノフェンに応答した。2日目、患者の疼痛はヒドロモルホンを用いた静脈内患者管理無痛法が必要であり、白血球数はμLあたり18,300まで増加し、患者は発熱して、最高体温は39.2℃であった。3日目、患者の右肩および肩甲骨の疼痛は制御困難であった。最高体温は37.8℃であった。右上肢のCTスキャンでは、腫瘍の軟部組織および骨質成分におけるガスを伴う広範な腫瘍破壊が示された(図8A)。ガスの透過パターンは近位上腕骨の広範な壊死と一致していた。患者の腫瘍のCT誘導吸引液は嫌気性培養条件下でのC.novyi-NT成長を明らかにした。次に、患者は抗生物質(ピペラシリン/タゾバクタム、メトロニダゾールおよびバンコマイシン)を開始し、患者の発熱はその後間もなく軽減した。4日目、右上肢の磁気共鳴画像法(MRI)は、ベースラインと比べて腫瘍腫瘤に限定されていた増強(enhancement)の著しい減少を示した(図8Bおよび8C)。腫瘍由来の生検は多くのグラム陽性菌および生存可能な腫瘍細胞の非存在を示していた(図9)。生検時には、経皮ドレインが腫瘍膿瘍内に置かれて体液およびデブリを排出した。患者は無熱性のままで、その白血球数は徐々に正常化した。患者は抗生物質を続け、経口鎮痛剤に移行する20日目まで静脈内無痛法のために病院に置かれた。患者は、プロトコールによって経口投与されるメトロニダゾールおよびドキシサイクリンで退院した。29日目、経過観察MRIは腫瘍増強の進行中の減少を示した(図8D)。55日目、患者は、壊死性の右近位上腕骨の患者努力(patient-effort)誘導性の病的骨折の結果としての局所的疼痛を呈した。その後の、上腕骨の部分的切除、デブリードマン、および髄内釘およびセメントスペーサーを用いた内固定により疼痛は著しく改善され、可動域が増加した。手術中培養により、嫌気性培養条件下でのC.novyi-NT成長が明らかにされた。病理組織学により、広範な腫瘍壊死と残留腫瘍細胞の小病巣が示された。患者はモニターされ続けており、現在はEastern Cooperative Oncology Groupスケール(ECOG)パフォーマンスステータス1を有しており、感染の臨床徴候はない。
【0138】
考察
大半の従来の抗がん治療は腫瘍の十分に血管形成されている成分を標的にする。しかし、この疾患を治癒するためには、全ての新生物細胞を破壊しなければならず、残っているがん細胞はいずれも腫瘍を再生することが可能である。この原則は最近の研究で、標的化された抗がん剤を用いて劇的に例証された。顕著な寛解を誘導することは可能であるが、治療に先立って抵抗性突然変異を有するわずかな割合(<0.0001%)の細胞のため腫瘍が数か月以内にほぼ常に再発する(Sharmaら、(2007年)Nat. Rev. Cancer7巻:169~181頁;Chapmanら、(2011年)New
Engl. J. Med 364巻:2507~2516頁;Kwakら、(2010年)New Engl. J. Med 363巻:1693~1703頁)。
【0139】
腫瘍内に注射されるC.novyi-NT芽胞を用いた処置は、原則的に、腫瘍特異的遺伝子変化とは無関係に、新生物細胞を正確に根絶する方法を提供する。その低酸素環境において腫瘍細胞を直接死滅させることに加えて、C.novyi-NTは、先天的なものでも後天的なものでも、前臨床モデルにおいて強力な抗腫瘍免疫応答を誘導することが示されている(Agrawalら、(2004年)Proc. Natl. Acad.
Sci. U.S.A 101巻(42号):15172~15177頁)。ヒト患者でもコンパニオン動物のイヌでも後天的抗腫瘍免疫応答を実証する明白な証拠はなかったが、C.novyi-NT芽胞の腫瘍内注射により誘導された著しい炎症応答は先天的免疫応答の明確な証拠を提供している。C.novyi-NTは酸素に対して鋭敏に感受性であり、腫瘍の正常酸素圧領域で発芽することは示されていないので、永続的な完全奏功が得られるイヌにおいて免疫(先天的なものでも後天的なものでも)が役割を果たしていたことはもっともらしい。さらに、腫瘍内注射C.novyi-NT芽胞での最初のヒト経験は、迅速で強固な局所抗腫瘍応答を生じた。この場合、下にある骨が近位にあったことが、最終的に手術を必要とした病的骨折の一因となった可能性がある。しかし、患者選択は将来における類似の合併症のリスクを最小化することができる。この結果はわずか10,000芽胞、イヌまたはラットを処置するのに使用した用量のわずかな割合により生じたことを指摘することは重要である。第I相試験が進行するに従って、さらに高い用量が直接局所部位から循環内に放出される芽胞の拡散を通じてまたは宿主媒介免疫を通じて、遠隔転移に影響するかどうかを見ることは興味深いことになる。
【0140】
自然発生的腫瘍を有するイヌの比較試験は、がんの実験動物モデルでの研究の翻訳可能性についての議論に組み込むべきである(VailおよびMacEwen(2000年)Cancer Invest.18巻:781~792頁)。イヌの自然発生的腫瘍における治療効果の証明は、前臨床動物モデルにおける移植されるまたは遺伝的に誘導される腫瘍の研究を強力に補完することが可能である。この相補性は本明細書に記載されるヒトとイヌ腫瘍の間の遺伝的類似性により補強される。合わせると、そのような類似性はヒトにおける研究を指導するための説得力のある理論的根拠を提供することが可能であり、こうしたことはC.novyi-NTと他の生物学的薬剤を用いた新しい形態の治療などの、顕著に強力な毒性と関連する新しい形態の治療に特に適している。
【0141】
この一連の研究の次のステップは明らかである。まず、腫瘍内C.novyi-NT芽胞処置の安全性および効力をさらに特徴付けることが重要になる。少なくとも全身的に投与された場合のC.novyi-NT芽胞の効果は、慎重に選択される化学療法剤または放射線療法と組み合わせることにより劇的に増強される(Dangら、(2004年)Cancer Bio. Ther. 3巻:326~337頁;Cheongら、(2006年)Science 314巻(5803号):1308~1311頁;Bettegowdaら、(2003年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.100巻(25号):15083~15088頁)。C.novyi-NTが腫瘍細胞を死滅させる機序は他の形態の治療の作用機序とは重ならないので、多数モデルアプローチは特に魅力的だと思われる(Dangら、(2004年)Cancer Bio.
Ther. 3巻:326~337頁)。最後に、免疫チェックポイント遮断が腫瘍内C.novyi-NT芽胞処置から予想される抗腫瘍免疫を増強することができるかどうかを決定するのも非常に興味深いものになる(Agrawalら、(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 101巻(42号):15172~15177頁)。
【0142】
いくつかの実施形態では、ここに開示される主題は、嫌気性芽胞形成菌であるClostridium novyi(C.novyi-NT)の弱毒化された菌株を使用し、C.novyi-NT芽胞がラット、飼い犬、およびヒトの腫瘍内に注射された場合の正確で強固な再現性のある抗腫瘍応答を実証している。これらの結果により、腫瘍内C.novyi-NT芽胞が、局所的に進行した切除不可能ながんを有する患者の治療薬として使用することが可能であることが示される。
【表1】

【表2】

【表3-1】

【表3-2】

【表4】

【表5-1】

【表5-2】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10-1】

【表10-2】

【表11】
【0143】
参考文献
本明細書で言及した刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は全て、ここに開示される主題が属する技術分野の当業者のレベルを示している。刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は全て、それぞれ個々の刊行物、特許出願、特許および他の参考文献が参照により組み込まれると具体的におよび個々に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの特許出願、特許、および他の参考文献が本明細書で言及されているが、そのような言及はこれらの文書のいずれも当技術分野の共通の一般的知識の一部を形成することを認めたことにはならないのは理解されるであろう。
【0144】
前述の主題は理解の明瞭さを目的として図解と実施例によりある程度詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲内である種の変更および修正が実行可能であることは当業者であれば理解されるであろう。

図1
図2
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図4
図5
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図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
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図11-5】
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図11-7】
図11-8】
図11-9】
図11-10】