(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031447
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】組織容器システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
C12M1/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021210776
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2019538639の分割
【原出願日】2018-01-26
(31)【優先権主張番号】62/451,379
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507295048
【氏名又は名称】ストラタテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン コープセル
(72)【発明者】
【氏名】ケン グラッツ
(57)【要約】
【課題】本発明は、概して、組織の輸送での使用を見出す組織容器システム、及びその組織容器システムを使用する方法に関する。特に、本発明は、凍結保存されたヒトの皮膚等価物の輸送、解凍及び使用を支援するシステム、ならびに医療提供者によりそれらが使用される方法に関する。
【解決手段】いくつかの実施形態では、本発明は、周壁と、皿を画定する実質的に平坦な底面とを含む組織容器であって、周壁は雄型端部と雌型端部とを有し、周壁の雄型端部は長さと幅とを有する隆起部がそこから突出し、周壁の雌型端部は隆起部の長さと幅に対応する空間を画定し、それにより同一の組織容器が組織容器の頂部に配置されると、組織容器の雌型端部は同一の組織容器の雄型端部から延びる隆起部を解放可能に受容し、また、底面は、周を有し、周の周囲に延在する周囲レッジを含み、周囲レッジと底面とによって画定されるリザーバを設ける組織容器を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2017年1月27日に出願された米国特許仮出願第62/451,379号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、組織の輸送における使用を見出す組織容器システム及びその組織容器システムを使用する方法に関する。特に、本発明は、凍結保存されたヒトの皮膚等価物の輸送、解凍及び使用を支援するシステム、ならびに医療提供者によりそれらが使用される方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療従事者、医療提供者、及び第二の当事者の支払者による遺伝子操作組織の受け入れに対する主な障害は、遺伝子操作組織を効果的かつ効率的に保存及び保管するための手段が欠如していることである。生細胞及び組織製品の性質上、長期保管の開発は困難である。現在の遺伝子操作組織は、生存可能性及び機能を維持するために慎重に管理された条件下で保管及び出荷されなければならないことが多い。通常、遺伝子操作組織製品は、製造するのに数週間または数ヶ月かかるが、製造後数時間または数日以内に使用しなければならない。結果として、組織遺伝子操作会社は絶えず生産設備を最高の能力で操業し、廃棄されなければならない売れ残りの製品のコストを消し去らなければならない。一具体例として、APLIGRAFは製造に約4週間を必要とし、15日間しか使用できず、使用されるまで20~23℃に維持されなければならない。別の例として、EPICELは、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるGenzyme Biosurgeryの製造施設から携帯用インキュベータでの使用場所まで看護師によって輸送され、到着後すぐに使用される。そのような制約は、便利で費用対効果の高い製品を開発するための重大な課題を表している。
【0004】
凍結保存は保管の問題に対する解決策として探求されてきたが、氷の形成、低温による損傷、及び浸透圧の不均衡を通して組織の損傷を誘発することが知られている。APLIGRAFの他に、承認されている唯一の他の全体の厚さの生きている皮膚等価物であるORCELは、凍結製品として評価されているが、使用前に-100℃以下の温度に維持しなければならないという欠点があった。これは貯蔵のための液体窒素の使用を含む特別な製品の供給及び保管の条件を必要とし、それは高価であり、地方の診療所及び野外病院では容易に入手できない。
【0005】
したがって、当技術分野で必要とされているのは、使用時点で日常的に利用可能な条件下で保存するための生存可能の遺伝子操作された組織及び細胞を凍結保存するための改良版の方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、概して、組織の輸送における用途、及びその後の医療提供者による使用を見出す組織容器システムに関し、特に、凍結保存されたヒト皮膚等価物の輸送、解凍及び使用を支援するシステムに関する。
【0007】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、周壁と、皿を画定する実質的に平坦な底面とを含む組織容器であって、周壁は雄型端部と雌型端部とを有し、周壁の雄型端部は長さと幅とを有する隆起部がそこから突出し、周壁の雌型端部は隆起部の長さと幅に対応する空間を画定し、それにより同一の組織容器が組織容器の頂部に配置されると、組織容器の雌型端部は同一の組織容器の雄型端部から延びる隆起部を解放可能に受容し、また、底面は、周を有し、周の周囲に延在する周囲レッジを含み、周囲レッジと底面とによって画定されるリザーバを設ける組織容器を提供する。いくつかの実施形態では、周壁がそこから延びるフランジを有する。いくつかの実施形態では、フランジは、周壁の雄型端部から延びる1つまたは複数のタブを含む。いくつかの実施形態では、フランジは、周壁の雌型端部から延びる1つまたは複数のタブを含む。いくつかの実施形態では、隆起部は近位端を有し、隆起部の近位端は中に1つ以上の窪みを有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、実質的に同一の頂部組織容器及び底部組織容器であって、各々が周壁と、皿を画定する実質的に平坦な底面とを含む頂部組織容器及び底部組織容器を含む組織容器組立体であって、底面が、周を有し、周囲レッジと底面とによって画定されるリザーバを設けるために周の周りに延びる周囲レッジを備え、周壁が、雄型端部と雌型端部を有し、周壁の雄型端部はそこから長さと幅を有する隆起部が突出し、周壁の雌型端部は隆起部の長さと幅に対応する空間を画定して、頂部組織容器が底部組織容器に配置されると、底部組織容器の雌型端部が頂部組織容器の雄型端部から延びる隆起部を解放可能に受容する、組織容器組立体を提供する。いくつかの実施形態では、頂部組織容器の周壁がそこから延びる頂部フランジを有し、底部組織容器の周壁がそこから延びる底部フランジを有し、頂部組織容器と底部組織容器が組み立てられるとき頂部フランジと底部フランジが互いに接触するようにする。いくつかの実施形態では、頂部フランジは、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える。いくつかの実施形態では、底部フランジが、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える。いくつかの実施形態では、底部フランジが、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを含み、頂部フランジが、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備えて、頂部組織容器及び底部組織容器が組み立てられるときにタブがオフセットされるようにする。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、実質的に同一の頂部組織容器と底部組織容器、及び多孔質底面を含むトレイを含む組織容器システムを提供し、頂部組織容器と底部組織容器の各々が、周壁と、皿を画定する実質的に平坦なリザーバ底面とを含み、リザーバ底面は、周を有し、周レッジとリザーバ底面とによって画定されるリザーバを設けるために、周の周囲に延在する周レッジを備え、トレイは、組織容器に挿入されたときにレッジによってリザーバ底面上方に支持されるように大きさが決められ、周壁は、雄型端部と雌型端部を有し、周壁の雄型端部はそこから長さと幅を有する隆起部が突出し、周壁の雌型端部は隆起部の長さと幅に対応する空間を画定し、頂部組織容器が底部組織容器に配置されると、底部組織容器の雌型端部は頂部組織容器の雄型端部から延びる隆起部を解放可能に受容する。いくつかの実施形態では、頂部組織容器の周壁がそこから延びる頂部フランジを有し、底部組織容器の周壁がそこから延びる底部フランジを有し、頂部組織容器と底部組織容器が組み立てられるとき頂部フランジと底部フランジが互いに接触するようにする。いくつかの実施形態では、頂部フランジが、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える。いくつかの実施形態では、底部フランジは、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える。いくつかの実施形態では、底部フランジが、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを含み、頂部フランジが、周壁の雄型端部から延びる1つ以上のタブと、周壁の雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備えて、頂部組織容器及び底部組織容器が組み立てられるときにタブがオフセットされるようにする。いくつかの実施形態では、トレイの多孔質底面は多孔質膜である。いくつかの実施形態では、隆起部が近位端を有し、隆起部の近位端が中に1つ以上の窪みを有し、トレイは1つまたは複数のトレイタブを有し、その結果トレイは底部組織容器に挿入されたとき1つ以上のタブが1つ以上の窪みに挿入される。いくつかの実施形態において、システムはトレイの多孔質底面に支持された組織をさらに含む。いくつかの実施形態では、組織は凍結保存されている。いくつかの実施形態では、組織は器官型皮膚代用物である。いくつかの実施形態では、システムは組織容器システムを収容する無菌包装をさらに含む。組織容器システムは、1つ以上の吸収媒体及び/または1つ以上の液体培地、例えば組織適合性溶液を含むキットとして提供することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、前段落の組織容器システムに組織を包装することと、それを必要とする医療提供者に包装された組織を提供することとを含む、医療提供者によって使用される組織を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、上記のように組織容器システムに凍結保存組織を提供すること、頂部組織容器を取り外して凍結保存組織を露出させること、及び底部組織容器のリザーバに液体培地を、凍結保存組織が解凍して解凍組織を提供する条件下で充填することを含む、凍結保存組織を解凍する方法を提供する。いくつかの実施形態では、凍結保存組織は器官型ヒト皮膚代用物である。いくつかの実施形態では、方法は、それを必要とする患者の火傷または創傷への器官型ヒト皮膚代用物を塗布または移植することをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、周壁105と、皿を画定する実質的に平坦な底面110とを含む、
図1に示される組織容器100を提供する。周壁105は、雄型端部115と雌型端部120とを有する。周壁105の雄型端部115は、そこから延びる長さと幅を有する隆起部125を有する。周壁105の雌型端部120は、隆起部125の長さ及び幅に対応する空間130を画定し、その結果、同一の組織容器が組織容器100に配置されると、組織容器の該雌型端部120は下部により詳細に示すように、同一の組織容器の前記雄型端部から延びる隆起部125を解放可能に受容し得る。底面110は、底面110の周に延在する周囲レッジ135を含む。周囲レッジ135は、好ましくは約0.50~1.5mmの深さ、最も好ましくは約0.75mmの深さの容器の底にリザーバ140を形成し、それは液体培地で満たすことができる。周壁105は、そこから延びるフランジ145を有するのが好ましい。いくつかの実施形態では、組織容器100は、(a)周壁の雄型端部115及び雌型端部120を延在する1つまたは複数のタブ150を含むフランジ145、(b)トレイのタブを受容するよう構成される、1つまたは複数の窪み155を有するリッジ125、(c)好ましくは周壁105の雄型端部115に配置された複数のグリップ突起160を含む周壁105、または(d)それらの任意の組み合わせをさらに含む。本発明はまた、実質的に同一の底部容器及び頂部容器を含む組織容器組立体を提供し、底部容器及び頂部容器はこの段落に記載の組織容器である。本発明はまた、この段落の組織容器組立体とトレイ410とを備える
図4に示される組織容器システムを提供する。トレイは、上に記載されているように底部容器の底面の周囲レッジの頂部に載るように大きさが決められる。トレイ410は側壁415を備える。タブ420は側壁415から延び、それらが底部容器405の雄型端部435の隆起部430内の窪み425に係合して挿入されるようにする。トレイは多孔質底面440を有する。これは、場合により多孔質膜である。同一の頂部容器を底部容器に載せて、収容トレイからの干渉なしに閉じることができる。組織容器システムは、一次包装を提供するために、無菌バッグ内に任意に密封され、好ましくはヒートシールされ得る。一次包装は、二次バッグの内側に任意に密封することができる。組織容器システムまたは組織容器システムを含む包装は、1つまたは複数の吸収媒体及び/または組織適合性溶液などの1つまたは複数の液体培地を含むキットとして提供することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、前段落に記載のように組織を組織容器システムに包装すること、及びそれを必要とする医療提供者に包装された組織を提供することを含む、医療提供者が使用するために組織を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、前段落に記載のように組織を組織容器システムに包装すること、及び火傷または創傷を治療するのに使用するために医療提供者に包装された組織を提供することを含む、火傷または創傷を治療するのに使用するための組織を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象に適用する前に、凍結保存された皮膚等価物を解凍する方法を提供する。この方法は、前段落に記載したような組織容器システムにおいて凍結保存組織、好ましくは器官培養皮膚等価物を提供すること、頂部組織容器を取り出して凍結保存組織を露出させること、及び底部組織容器のリザーバに液体培地を、凍結保存組織が解凍して解凍組織を提供する条件下で充填することを含み、この場合組織内に含まれる抗凍結剤が液体培地中に希釈され、抗凍結剤を実質的に含まない組織を残す。他の実施形態では、この方法は、凍結保存組織を含む組織容器システムを含む一次または二次包装を、冷凍庫または輸送用容器から取り出すこと、包装(複数可)から組織容器システムを取り出すこと、頂部組織容器を取り出して凍結保存した組織物を露出させること、及び凍結保存された皮膚等価物のトレイを、第1の組織容器から、無菌にされ、無菌領域に置かれ、容器リザーバに液体培地を含む第2の組織容器に移し、移動した凍結保存した組織が解凍して解凍組織を提供し、その組織内に含まれる抗凍結剤を液体培地に希釈するようにすることを含む。上記実施形態のいくつかにおいて、液体培地は組織適合性溶液、好ましくは緩衝溶液である。さらに他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物を含むトレイを組織容器から取り出し、皮膚等価物から解凍された抗凍結剤溶液を除去するために吸収媒体に配置する。吸収媒体は、任意の適切な、好ましくは無菌の容器(例えば、培養容器または新鮮な組織容器組立体)にあり得る。本発明は特定の吸収媒体の使用に限定されない。吸収媒体は、好ましくは組織適合性溶液を含む。
【0013】
本発明の他の態様及び反復は、以下により詳細に説明される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
周壁と、皿を画定する実質的に平坦な底面とを含む組織容器であって、
前記周壁は雄型端部と雌型端部とを有し、前記周壁の前記雄型端部は長さと幅とを有する隆起部がそこから突出し、前記周壁の前記雌型端部は前記隆起部の前記長さと幅に対応する空間を画定し、それにより同一の組織容器が前記組織容器の頂部に配置されると、前記組織容器の前記雌型端部は前記同一の組織容器の前記雄型端部から延びる前記隆起部を解放可能に受容し、また、
前記底面は、周を有し、前記周の周囲に延在する周囲レッジを含み、前記周囲レッジと前記底面とによって画定されるリザーバを設ける前記組織容器。
(項目2)
前記周壁がそこから延びるフランジを有する、項目1に記載の組織容器。
(項目3)
前記フランジは、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブを備える、項目3に記載の組織容器。
(項目4)
前記フランジは、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブを備える、項目3に記載の組織容器。
(項目5)
前記隆起部が近位端を有し、前記隆起部の前記近位端が中に1つ以上の窪みを有する、項目1に記載の組織容器。
(項目6)
実質的に同一の頂部組織容器及び底部組織容器であって、各々が周壁と、皿を画定する実質的に平坦な底面とを含む前記頂部組織容器及び底部組織容器を含む組織容器組立体であって、
前記底面が、周を有し、周囲レッジと前記底面とによって画定されるリザーバを設けるために前記周の周りに延びる周囲レッジを備え、
前記周壁が、雄型端部と雌型端部を有し、前記周壁の前記雄型端部はそこから長さと幅を有する隆起部が突出し、前記周壁の前記雌型端部は前記隆起部の前記長さと幅に対応する空間を画定して、前記頂部組織容器が前記底部組織容器に配置されると、前記底部組織容器の前記雌型端部が前記頂部組織容器の前記雄型端部から延びる前記隆起部を解放可能に受容する、前記組織容器組立体。
(項目7)
前記頂部組織容器の前記周壁がそこから延びる頂部フランジを有し、前記底部組織容器の前記周壁がそこから延びる底部フランジを有し、前記頂部組織容器と前記底部組織容器が組み立てられるとき前記頂部フランジと前記底部フランジが互いに接触するようにする、項目6に記載の組織容器組立体。
(項目8)
前記頂部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える、項目7に記載の組織容器組立体。
(項目9)
前記底部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える、項目7に記載の組織容器。
(項目10)
前記底部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを含み、前記頂部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備えて、前記頂部組織容器及び前記底部組織容器が組み立てられるときに前記タブがオフセットされるようにする、項目7に記載の組織容器組立体。
(項目11)
実質的に同一の頂部組織容器と底部組織容器、及び多孔質底面を含むトレイを含む組織容器システムであって、
前記頂部組織容器と前記底部組織容器の各々が、周壁と、皿を画定する実質的に平坦なリザーバ底面とを含み、
前記リザーバ底面は、周を有し、周レッジと前記リザーバ底面とによって画定されるリザーバを設けるために、前記周の周囲に延在する前記周レッジを備え、前記トレイは、前記組織容器に挿入されたときに前記レッジによって前記リザーバ底面上方に支持されるように大きさが決められ、
前記周壁は、雄型端部と雌型端部を有し、前記周壁の前記雄型端部はそこから長さと幅を有する隆起部が突出し、前記周壁の前記雌型端部は前記隆起部の前記長さと幅に対応する空間を画定し、前記頂部組織容器が前記底部組織容器に配置されると、前記底部組織容器の前記雌型端部は前記頂部組織容器の前記雄型端部から延びる前記隆起部を解放可能に受容する、前記組織容器システム。
(項目12)
前記頂部組織容器の前記周壁がそこから延びる頂部フランジを有し、前記底部組織容器の前記周壁がそこから延びる底部フランジを有し、前記頂部組織容器と前記底部組織容器が組み立てられるとき前記頂部フランジと前記底部フランジが互いに接触するようにする、項目11に記載の組織容器システム。
(項目13)
前記頂部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える、項目12に記載の組織容器組立体。
(項目14)
前記底部フランジは、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備える、項目12に記載の組織容器。
(項目15)
前記底部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを含み、前記頂部フランジが、前記周壁の前記雄型端部から延びる1つ以上のタブと、前記周壁の前記雌型端部から延びる1つ以上のタブとを備えて、前記頂部組織容器及び前記底部組織容器が組み立てられるときに前記タブがオフセットされるようにする、項目12に記載の組織容器組立体。
(項目16)
前記トレイの前記多孔質底面が多孔質膜である、項目11に記載の組織容器システム。(項目17)
前記隆起部が近位端を有し、前記隆起部の前記近位端が中に1つ以上の窪みを有し、前記トレイは1つまたは複数のトレイタブを有し、その結果前記トレイは前記底部組織容器に挿入されたとき前記1つ以上のタブが前記1つ以上の窪みに挿入される、項目1に記載の組織容器システム。
(項目18)
前記トレイの前記多孔質底面に支持された組織をさらに備える、項目11に記載の組織容器システム。
(項目19)
前記組織は凍結保存されている、項目18に記載の組織容器システム。
(項目20)
前記組織が器官型皮膚代用物である、項目18に記載の組織容器システム。
(項目21)
前記組織容器システムを収容する無菌包装をさらに含む、項目11に記載の組織容器システム。
(項目22)
項目11に記載の前記組織容器システムに組織を包装することと、それを必要とする医療提供者に包装された組織を提供することとを含む、前記医療提供者によって使用される組織を提供する方法。
(項目23)
項目11に記載の前記組織容器システムに凍結保存組織を提供すること、前記頂部組織容器を取り外して前記凍結保存組織を露出させること、及び前記底部組織容器の前記リザーバに液体培地を、前記凍結保存組織が解凍して解凍組織を提供する条件下で充填することを含む、凍結保存組織を解凍する方法。
(項目24)
前記低温保存組織が器官型ヒト皮膚代用物である、項目23に記載の方法。
(項目25)
それを必要とする患者の火傷または創傷への前記器官型ヒト皮膚代用物を塗布または移植することをさらに含む、項目24に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】一実施形態による組織容器組立体の分解斜視図である。
【
図3】一実施形態による組み立てられた組織容器組立体の斜視図である。
【
図4】一実施形態による挿入されたトレイを有する組織容器の斜視図である。
【
図5】1日の再培養後の組織生存可能性のグラフである。データは、1群あたり15試料の平均±標準偏差(各バッチにおいて5試料/組織×3組織/条件)である。
【
図6】1日の再培養中の解凍後のVEGF分泌のグラフである。データは各バッチの条件あたり3つの組織の平均±標準偏差である。
【
図7A】
図7A及び
図7Bは、初期DPM(
図7A)とDPM変化(
図7B)を用いた1日再培養後の解凍後組織バリアの機能のグラフである。データは、1群あたり12回の読み取りの平均±標準偏差である(各バッチにおいて4試料/組織×3組織/条件)。
【
図7B】
図7A及び
図7Bは、初期DPM(
図7A)とDPM変化(
図7B)を用いた1日再培養後の解凍後組織バリアの機能のグラフである。データは、1群あたり12回の読み取りの平均±標準偏差である(各バッチにおいて4試料/組織×3組織/条件)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、概して、組織の輸送及び医療提供者によるその後の使用における用途を見出す組織容器システムに関し、特に、凍結保存されたヒト皮膚等価物の輸送、解凍及び使用を支援するシステムに関する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「皮膚等価物」、「ヒト皮膚等価物」、「ヒト皮膚代替物」、及び「器官型ヒト皮膚等価物」という用語は、扁平上皮内へと層別化されているインビトロ由来のケラチノサイト培養物を指すために互換的に使用されている。典型的には、皮膚等価物は器官型の培養によって産生され、ケラチノサイト層に加えて真皮層を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「無菌」という用語は、検出可能な微生物または真菌の汚染を本質的にまたは完全に含まない皮膚等価物を示す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「NIKS細胞」という用語は、細胞株ATCC CRL-12191として寄託された細胞の特徴を有する細胞を示す。「NIKS」は、ほぼ二倍体の不死化ケラチノサイトを表し、登録商標である。
【0019】
本明細書で使用される場合、皮膚等価物に関して使用される場合の「生存可能」という用語は、凍結保存後の皮膚等価物中の細胞の生存可能性をいう。好ましい実施形態では、「生存可能な」皮膚は、MTTアッセイによって測定した場合、対照非凍結保存組織の少なくとも50%、60%、70%、80%もしくは90%、または同様の生存可能性アッセイの読み取り値の少なくとも50%、60%、70%、80%もしくは90%のA550を有する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「培養容器」という用語は、細胞または組織を培養するために一般的に使用される種類の任意の容器を指し、組織培養プラスチック、ポリスチレン、ポリマー、プラスチック、ガラスなどの適切な材料から形成される円形、長方形及び正方形の皿を含む。「培養容器」及び「増殖チャンバ」という用語は互換的に使用されている。本開示の組織容器は、少なくとも本開示の組織容器が長期の培養に適したサイズではないため、本明細書で使用される培養容器ではない。
【0021】
本発明の組織容器は、以前に使用されていた容器よりも約60%小さいため、冷凍庫や手術室の空間を効率的に使用する。組織容器は、その上に組織(例えば、器官型皮膚代替物)を支持することができる、多孔質膜を底面として含むトレイと適合性がある。トレイの他の表面は、プラスチックシートからの熱成形プロセス、射出成形、またはプラスチックを操作するための当技術分野において公知の他の方法によって製造された透明または半透明のプラスチックであることが好ましい。適切なプラスチックとしては、医療グレードのプラスチック、例えばポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)、ポリスチレンなどが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、トレイは好ましくは本明細書の段落0022に記載のトレイである。組織容器は、容器内の組織を解凍し、組織が凍結したときに抗凍結剤を除去するための媒体で充填することができるリザーバを含む。これは、組織を解凍するために使用されていた、外科的無菌領域において容器から組織を取り出し、次いでTelfa(登録商標)パッドに配置しなければならなかった従来のシステムを超える利点を提供する。本発明の組織容器は、互いの鏡像である頂部及び底部を含むことが好ましい。容器組立体の頂部片と底部片は実質的に同一であり、密閉容器を形成するために互いにスナップ留めすることができる。実質的に同一である頂部及び底部を使用することは、頂部片と底部片の両方が同じ型から製造され得ることを意味し、それは頂部片と底部片の製造中の効率性を生み出す。頂部片及び底部片は好ましくは透明であり、プラスチックシートから熱成形法により製造される。適切なプラスチックとしては、医療グレードの熱成形可能なプラスチック、例えばポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)が挙げられる。したがって、本発明は、以下により詳細に説明される改良された組織容器及び組織容器システムを提供する。
【0022】
図1は、組織容器100を示す。いくつかの実施形態において、組織容器100は、好ましくは、周壁105と、皿を画定する実質的に平坦な底面110とを含む。周壁105は、雄型端部115と雌型端部120とを有する。周壁105の雄型端部115は、長さと幅を有する、そこから延びる隆起部125を有する。周壁105の雌型端部120は、隆起部125の長さ及び幅に対応する空間130を画定し、その結果、同一の組織容器が組織容器100の頂部に配置されたときに、組織容器の該雌型端部120に設けられた空間130が、以下により詳細に示されるような同一の組織容器の雄型端部から延びる隆起部125を解放可能に受容することができる。底面110は、底面110の周囲に延在する周囲レッジ135を含む。周囲レッジ135は、好ましくは約0.50~1.5mmの深さ、最も好ましくは約0.75mmの深さの容器の底にリザーバ140を形成し、それは液体培地で満たすことができる。周壁105は、そこから延びるフランジ145を有するのが好ましい。いくつかの実施形態では、フランジ145は、周壁の雄型端部115及び雌型端部120が延在する1つまたは複数のタブ150を備える。いくつかの実施形態では、隆起部125は、トレイのタブを受容するように構成された1つまたは複数の窪み155を中に有し、これは以下により詳細に示される。いくつかのさらなる実施形態では、周壁105は、好ましくは周壁105の雄型端部115に好ましくは配置される複数のグリップ突起160を含む。
【0023】
図2は、本発明の組織容器組立体200の拡大図を示す。組織容器組立体200は、好ましくは、実質的に同一の底部容器205及び頂部容器210を含む。底部容器205及び頂部容器210は、それぞれ周壁215及び220を有し、底部容器205の場合は底面225を、頂部容器210の場合は頂面230を有する。底面225は、底面225の周囲に延在する周囲レッジ235を含む。周囲レッジ235は、底部容器205の底部にリザーバ240を形成し、これは好ましくは約0.50~1.5mm、最も好ましくは約0.75mmの深さであり、液体培地で満たすことができる。底部容器205及び頂部容器210のそれぞれは、雄型端部245及び雌型端部250を備える。雄型端部245は、長さ及び幅を有する、そこから延びる隆起部255を有する。雌型端部250は、隆起部255の長さ及び幅に対応する空間260を画定し、頂部容器210が破線265で示す位置合わせに沿って底部容器205に配置されたときに、底部組織容器205と頂部組織容器210の該雌型端部250に設けられた空間260が、解放可能に隆起部255を受容し得、その結果底部容器205と頂部容器210が解放可能に一緒にスナップ止めされ得る。周壁215及び220は、そこから延びるフランジ270及び275を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、フランジは、雄型端部245及び雌型端部250を延在する1つまたは複数のタブ280を含む。いくつかの実施形態では、隆起部255は、トレイにタブを受けるように構成される1つまたは複数の窪み285を中に有し、さらなる詳細を下部に示す。いくつかのさらなる実施形態では、周壁は、好ましくは雄型端部245に配置された複数のグリップ突起290を含むことが好ましい。
図3は、底部容器305及び頂部容器310が完全に係合して密閉容器を形成する本発明の容器組立体300を示す。
【0024】
本発明はさらに、トレイと共に上記の底部容器及び頂部容器を含む組織容器システムを提供する。
図4は、トレイ410が挿入されている本発明の底部容器を示す。トレイ410は、上述のように底部容器の底面の周囲レッジの上に載るような大きさである。トレイ410は側壁415を備える。タブ420は側壁415から延び、それらが底部容器405の雄型端部435の隆起部430の窪み425に係合して挿入されるようにする。側壁415及びタブ420は好ましくは、透明または半透明のプラスチックであり、プラスチックシートからの熱成形プロセス、射出成形、またはプラスチックを操作するための当技術分野において既知の他の方法によって製造される。好ましいプラスチックは、ポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)及びポリスチレンを含むがこれらに限定されない医療グレードの熱成形可能なプラスチックである。いくつかの好ましい実施形態では、側壁415及びタブ420に使用されるプラスチックはポリスチレンである。トレイは、好ましくは多孔質底面440を有する。いくつかの好ましい実施形態では、多孔質底面は多孔質膜、好ましくは半透性ポリマーフィルム、より好ましくは半透性トラックエッチポリマーフィルムである。細胞の付着を改善するために、膜を組織培養処理(例えば、プラズマ処理)することができる。さらなる実施形態では、膜は少なくとも5ミクロン、いくつかの例では約5ミクロン~約20ミクロン、好ましくは約10ミクロン~約20ミクロン、より好ましくは約10ミクロン~約15ミクロンの公称の厚さを有する。他の例では、膜は約10ミクロンの公称の厚さを有する。適切な膜材料は当技術分野において公知であり、それを通る多数の開放孔を有する、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、または市販の組織培養処理インサート(例えば、Transwell(登録商標)、Snapwell(商標)など)で使用される任意の他の膜材料が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、細孔は、約0.1ミクロン~約10ミクロン、好ましくは約0.1ミクロン~約0.8ミクロン、より好ましくは約0.2ミクロン~約0.8ミクロン、さらにより好ましくは約0.4ミクロン、約0.5ミクロン、または約0.6ミクロンの公称の孔径を有する。より広い範囲もまた許容可能であるが、膜は、平方センチメートル当たり約1×10
8~約4×10
8の細孔の公称細孔密度を有することが好ましい。最も好ましくは、膜は、公称サイズ約0.4ミクロンの細孔、及び平方センチメートル当たり約1×10
8の細孔の公称細孔密度を有するポリカーボネートから形成される。この膜は、ヒートシール、音波溶接、溶剤接着、接着剤の接着などによる当業者に公知の任意の適切な方法によって側壁415に付着させることができる。
【0025】
本発明は、種々の組織を凍結保存、保存及び/または輸送するために使用され得る。組織は好ましくはトレイの多孔質底面にて支持され、底部容器及び頂部容器を含む本発明の容器組立体で囲まれる。いくつかの好ましい実施形態において、組織は凍結保存されている。いくつかの実施形態では、組織は皮膚組織、例えば死体の皮膚または器官型皮膚等価物である。いくつかの例示的な実施形態では、組織は器官型皮膚等価物または凍結保存器官型皮膚等価物である。
【0026】
本発明は、いかなる特定の器官型皮膚等価物にも限定されない。実際、本発明は、初代ケラチノサイト及び不死化ケラチノサイトの両方を含む、扁平上皮に分化することができる様々な細胞株及び供給源の使用を企図する。細胞の供給源には、ヒト及び死体ドナーから採取したケラチノサイト及び真皮線維芽細胞(Auger et al, In Vitro Cell. Dev. Biol. -Animal 36:96-103;米国特許第5,968,546号及び第5,693,332号、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる)、新生児包皮(Asbill et al., Pharm. Research 17(9): 1092-97 (2000);Meana et al., Burns 24:621-30 (1998);米国特許第4,485,096号;第6,039,760号、及び第5,536,656号、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる)、及び、不死化ケラチノサイト細胞株、例えばNM1細胞(Baden, In Vitro Cell. Dev. Biol. 23(3):205-213 (1987))、HaCaT細胞(Boucamp et al., J. cell. Boil. 106:761-771 (1988))、及びNIKS(登録商標)細胞(細胞株BC-1-Ep/SL;参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,989,837号、ATCC CRL-12191)が含まれる。言及された細胞株のそれぞれは、所望のタンパク質(複数可)を発現または共発現することができる細胞株を産生するために培養または遺伝子改変することができる。特に好ましい態様において、NIKS(登録商標)細胞が利用される。新規のNIKS(登録商標)ヒトケラチノサイト細胞株の発見は、非ウイルスベクターを用いてヒトケラチノサイトを遺伝子操作する機会を提供する。NIKS(登録商標)細胞の独自の利点は、それらが遺伝的に均一で病原体のないヒトケラチノサイトの一貫した供給源であるということである。このため、それらは、現在利用可能な皮膚等価物を超える増強された特性を有するヒト皮膚等価物を提供する遺伝子工学及びゲノム遺伝子発現アプローチの適用に有用である。ウィスコンシン大学で同定及び特徴付けられたNIKS(登録商標)細胞は、非腫瘍原性で核型的に安定であり、単層培養及び器官型培養の両方で正常な増殖及び分化を示す。NIKS(登録商標)細胞は、培養液で完全に層化した皮膚等価物を形成する。これらの培養物は、これまでに試験されたすべての基準によって、初代ヒトケラチノサイトから形成された器官型培養物と区別がつかない。しかし初代細胞とは異なり、NIKS(登録商標)細胞は単層培養で長い寿命を示す。これは、細胞を遺伝的に操作し、新しい有用な特性を有する細胞の新しいクローンを単離する機会を提供する(Allen-Hoffmann et al., J. Invest. Dermatol., 114(3): 444-455 (2000))。
【0027】
NIKS(登録商標)細胞は、見かけ上正常な男性乳児から単離されたヒト新生児包皮ケラチノサイトのBC-1-Ep株から生じた。初期の継代において、BC-1-Ep細胞は、培養の正常ヒトケラチノサイトにとって異型である形態学的または増殖的特徴を示さなかった。培養したBC-1-Ep細胞は、プログラム細胞死の特徴と同様に層別化を示した。複製寿命を判定するために、BC-1-Ep細胞を標準ケラチノサイト増殖培地中で100-mm皿あたり3×105細胞の密度で連続的に老化まで培養し、毎週の間隔で継代した(およそ1:25の分割)。継代15代目までに、集団の大部分のケラチノサイトは、大きくて平らな細胞を示した多数の流産コロニーの存在によって判断されるように老化したように見えた。しかし、継代16代目で、小さな細胞の大きさを示すケラチノサイトが明らかになった。継代17代目までに、小型のケラチノサイトのみが培養物中に存在し、大きく老化したケラチノサイトは明らかではなかった。この推定上の危機的な期間を生き残った小さなケラチノサイトの得られた集団は、形態学的に均一であるように見え、細胞-細胞接着及び見かけの鱗片生成を含む典型的なケラチノサイトの特徴を示すケラチノサイトのコロニーを生成した。老化を生き残ったケラチノサイトは、100mm皿当たり3×105細胞の密度で連続的に培養された。典型的には、培養物は7日以内に約8×106細胞の細胞密度に達した。この安定した細胞増殖速度は少なくとも59継代を通して維持され、細胞が不死化を達成したことを実証している。元の老化した集団から出現したケラチノサイトは、現在NIKS(登録商標)と呼ばれている。NIKS(登録商標)細胞株は、PCRまたはサザンの分析のいずれかを用いて、HIV-1、HIV-2、EBV、CMV、HTLV-1、HTLV-2、HBV、HCV、B-19パルボウイルス、HPV-16、SV40、HHV-6、HHV-7、HPV-18及びHPV-31に対するプロウイルスDNA配列の存在についてスクリーニングされている。これらのウイルスはどれも検出されなかった。
【0028】
継代3の親BC-1-Ep細胞及び継代31及び54のNIKS(登録商標)細胞について染色体分析を実施した。親BC-1-Ep細胞は46の正常染色体相補体、XYを有する。31代継代時には、すべてのNIKS細胞が第8染色体の長腕の余分なイソ染色体を伴う47個の染色体を含んでいた。その他の肉眼的染色体異常またはマーカー染色体は検出されなかった。NIKS(登録商標)細胞の核型は少なくとも54代継代するまで安定であることが示されている。
【0029】
NIKS(登録商標)細胞株及びBC-1-EpケラチノサイトについてのDNAフィンガープリントは、分析された12の遺伝子座すべてにおいて同一であり、NIKS(登録商標)細胞が親BC-1-Ep集団に由来することを実証した。ランダムな偶然による親BC-1-Ep DNAフィンガープリントを有するNIKS(登録商標)細胞株のオッズは4×10-16である。ED-1-Ep、SCC4及びSCC13yというヒトケラチノサイトの3つの異なる供給源からのDNAフィンガープリントは、BC-1-Epのパターンとは異なる。このデータはまた、他のヒトから単離されたケラチノサイト、ED-1-Ep、SCC4、及びSCC13yが、BC-1-Ep細胞または互いに無関係であることを示している。NIKS(登録商標)DNAフィンガープリントのデータは、NIKS(登録商標)細胞株を識別するための明確な方法を提供する。
【0030】
p53の機能の喪失は、培養細胞における増殖能の増強及び不死化の頻度の増加と関連している。NIKS(登録商標)細胞におけるp53の配列は、公開されているp53の配列(GenBank登録番号:M14695)と同一である。ヒトにおいて、p53は、コドン72のアミノ酸によって区別される2つの主な多形性形態で存在する。NIKS(登録商標)細胞におけるp53の両方の対立遺伝子は野生型であり、コドン72にアルギニンをコードする配列CGCを有する。p53の他の一般的な形態はこの位置にプロリンを有する。NIKS(登録商標)細胞のp53の全配列はBC-1-Ep前駆細胞と同一である。Rbはまた、NIKS(登録商標)細胞において野生型であることも見出された。
【0031】
足場非依存性増殖はインビボでの腫瘍形成能と高度に相関している。このため、寒天またはメチルセルロース含有培地中でのNIKS(登録商標)細胞の足場非依存性増殖特性を調べた。NIKS(登録商標)細胞は、寒天またはメチルセルロース含有培地のいずれかにおいて4週間後に単一細胞として残った。NIKS(登録商標)細胞の増殖が遅い変異体を検出するために、アッセイを合計8週間続けた。何も観察されなかった。
【0032】
親BC-1-Epケラチノサイト及び不死のNIKS(登録商標)ケラチノサイト細胞株の腫瘍形成性を判定するために、細胞を無胸腺ヌードマウスの脇腹に注射した。ヒト扁平上皮癌細胞株SCC4を、これらの動物における腫瘍産生の陽性対照として用いた。試料の注射は、動物が一方の脇腹にSCC4細胞を受け、反対側の脇腹に親BC-1-EpケラチノサイトまたはNIKS(登録商標)細胞のいずれかを受けるように設計した。この注射戦略は、腫瘍の産生における動物間の変動を排除し、マウスが腫瘍形成性細胞の活発な増殖を支持することを確認した。親BC-1-Epケラチノサイト(6代継代)もNIKS(登録商標)ケラチノサイト(35代継代)も無胸腺ヌードマウスにおいて腫瘍を産生しなかった。
【0033】
NIKS(登録商標)細胞を、液内培養及び器官型培養の両方において分化する能力について分析した。器官型培養のための技術は実施例に詳細に記載されている。特に好ましい実施形態では、本発明の器官培養された皮膚等価物は、コラーゲンまたは同様の材料と線維芽細胞から形成された皮膚等価物を含む。ケラチノサイト、例えばNIKS(登録商標)細胞、またはNIKS(登録商標)細胞と患者由来の細胞との組み合わせを、真皮等価物上に播種し、器官型培養プロセス後の扁平分化を特徴とする表皮層を形成する。
【0034】
液内培養中の細胞については、角化エンベロープの形成を扁平分化のマーカーとしてモニターした。培養ヒトケラチノサイトでは、角化エンベロープ集合の初期段階では、インボルクリン、シスタチンa及び他のタンパク質から構成される未成熟構造が形成され、これらは成熟角化エンベロープの最も内側の3分の1を表す。接着性BC-1-Ep細胞またはNIKS(登録商標)細胞株由来のケラチノサイトの2%未満が角質化エンベロープを産生する。この知見は、活発に増殖しているサブコンフルエントなケラチノサイトが5%未満の角化エンベロープを産生することを実証している以前の研究と一致している。分化誘導されたときにNIKS(登録商標)細胞株が角化エンベロープを産生することができるかどうかを判定するために、細胞を接着培養物から取り出し、メチルセルロースを含む半固体培地に24時間懸濁した。ケラチンの差次的発現及び角質化エンベロープの形成を含む最終分化の多くの局面は、ケラチノサイト細胞間接着及び細胞基層接着の喪失によってインビトロで引き起こされ得る。NIKS(登録商標)ケラチノサイトは、親ケラチノサイトと同じ、通常はより多くの角質化エンベロープを産生した。これらの知見は、NIKS(登録商標)ケラチノサイトがこの細胞型特異的分化構造の形成を開始するそれらの能力を欠いていないことを実証している。
【0035】
NIKS(登録商標)ケラチノサイトが扁平上皮分化を受け得ることを確認するために、細胞を器官型培養で培養した。プラスチックの基層にて増殖させ、培地に浸したケラチノサイト培養物は複製するが、限られた分化を呈する。具体的には、ヒトケラチノサイトはコンフルエントになり、3層以上のケラチノサイトからなるシートを産生する限定的な層別化を受ける。光学顕微鏡及び電子顕微鏡によって、浸漬培養で形成された多層シートの構造と無傷のヒトの皮膚との間には顕著な違いがある。対照的に、器官型培養技術は、インビボ様条件下でのケラチノサイトの増殖及び分化を可能にする。具体的には、細胞は、線維性コラーゲンベース内に埋め込まれた真皮線維芽細胞からなる生理学的基層に接着する。器官型培養物は空気-培地界面で維持される。このようにして、上層シート中の細胞は空気に曝される一方、増殖している基底細胞はコラーゲンゲルを通る拡散によって提供される栄養素の勾配に最も近いままである。これらの条件下で、正しい組織構造が形成される。正常な分化表皮のいくつかの特徴は明らかである。親細胞及びNIKS(登録商標)細胞系の両方において、単層の立方形の基底細胞が表皮と真皮等価物との接合部にある。丸い形態及び高い核対細胞質比は、ケラチノサイトの活発に分裂している集団の指標である。正常なヒトの表皮では、基底細胞が分裂するにつれて、それらは組織の分化層へと上方に移動する娘細胞を生じる。娘細胞はサイズが大きくなり、平らになり扁平になる。最終的にこれらの細胞は除核し、角質化、角質化構造を形成する。この正常な分化過程は、親細胞とNIKS(登録商標)細胞の両方の上層で明らかである。平らになった扁平上皮細胞の出現は上部表皮層で明らかであり、これは層別化が器官型培養物で生じたことを実証している。器官型培養物の最上部では、除核された鱗片が培養物の上から剥がれ落ちる。今日まで、親ケラチノサイトと器官型培養で増殖させたNIKS(登録商標)ケラチノサイト細胞株との間の光学顕微鏡レベルでの分化における組織学的差異は観察されていない。
【0036】
親(5代継代)及びNIKS(登録商標)(38代継代)器官型培養物のより詳細な特徴を観察し、組織学的観察を確認するために、試料を、電子顕微鏡を用いて分析した。親細胞及び不死化NIKS(登録商標)ヒトケラチノサイト細胞株を器官型培養で15日後に回収し、層別化の程度を示すために基底層に対して垂直に切片化した。親細胞とNIKS(登録商標)細胞株はどちらも器官型培養で広範囲に層別化されており、正常なヒトの表皮に特徴的な構造を形成している。豊富なデスモソームが、親細胞及びNIKS(登録商標)細胞株の器官型培養物に形成される。親細胞及び細胞株の両方の基底ケラチノサイト層における基底層及び関連するヘミデスモソームの形成もまた注目された。
【0037】
ヘミデスモソームは、基底膜へのケラチノサイトの接着性を高め、組織の完全性及び強度を維持するのを補助する特殊な構造である。これらの構造が存在することは、親細胞またはNIKS(登録商標)細胞が多孔質支持体に直接付着していた領域において特に明白であった。これらの知見は、線維芽細胞含有多孔質支持体で培養されたヒト包皮ケラチノサイトを使用した以前の超微細構造的知見と一致している。光学顕微鏡レベルと電子顕微鏡レベルの両方での分析は、器官型培養におけるNIKS(登録商標)細胞株が、正常なヒト表皮に見られるデスモソーム、基底層、及びヘミデスモソームなどの構造を層化、分化、及び形成することができることを示している。
【0038】
いくつかの実施形態では、多孔質膜にて支持され、容器組立体で囲まれた組織は凍結保存される。この組織が皮膚等価物である場合、凍結保存された皮膚等価物は、生存可能性を実質的に失うことなく、好ましくは、約-50℃、-60℃、-70℃、-80℃、またはそれより低温で、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月から12ヶ月または24ヶ月までなどのより長い期間の貯蔵が可能である。
【0039】
好ましい実施形態では、製品包装前の凍結保存プロセスの全工程は、クラス10,000クリーンルーム内のクラス100バイオセーフティキャビネット内にて無菌で行われる。いくつかの実施形態では、凍結保存プロセスは、抗凍結剤溶液中で器官培養された皮膚等価物を処置することを含む。器官培養された皮膚等価物は、本開示のトレイの多孔質膜にて支持され、トレイは、本開示の培養容器または組織容器組立体などの適切な容器内に配置される。抗凍結剤溶液の適量が多孔質膜と接触するように容器に添加されるが、組織を浸水させず、抗凍結剤がその基部を通して組織内に移動することを可能にする。本発明の特定の実施形態は、任意の特定の抗凍結剤の使用に限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、抗凍結剤はグリセロールである。抗凍結剤は、抗凍結剤溶液に異なる濃度で供給されてもよい。いくつかの実施形態では、抗凍結剤は、溶液の約20体積%または21体積%~約70体積%、より好ましくは溶液の約20体積%または21体積%~約45体積%、または溶液の37.5体積%~62.5体積%、または最も好ましくは溶液の約25体積%~40体積%、または溶液の42.5体積%~57.5体積%を含む溶液で、温度に応じて供給される。いくつかの実施形態では、抗凍結剤溶液は、好ましくは約32.5%v/vまたは約50%v/vの抗凍結剤(例えばグリセロール)を含む。いくつかの実施形態では、抗凍結剤は基礎培地溶液に供給される。適切な基礎培地溶液には、DMEM、Ham’s F-10、Ham’s F-12、DMEM/F-12、Medium 199、MEM及びRPMIが含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態において、基礎培地は溶液の体積の残りを形成する。いくつかの実施形態では、抗凍結剤溶液は緩衝化されている。適切な緩衝剤としては、HEPES、Tris、MOPS、及びTrizma緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝剤は、pH7.0~7.4の範囲の緩衝系を提供する量で含まれてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、抗凍結剤溶液は、約7.0~7.4のpHに対して、約5mM~15mMのHEPES、最も好ましくは約10mMのHEPESで緩衝化されている。
【0040】
いくつかの特に好ましい態様において、抗凍結剤溶液による処理は単一工程で行われる。「単一工程」とは、当技術分野で一般的であるように、抗凍結剤溶液が平衡化手順の間に交換されないことを意味する。例えば、処理工程は、各工程で抗凍結剤の濃度が増加するにつれていくつかの媒体が変化する段階的平衡化手順とは対照的に、規定の濃度の抗凍結剤を含む抗凍結剤溶液を使用して行われる。いくつかの実施形態では、処理工程は低温で行われる。好ましい実施形態では、処理工程は約2℃~8℃で行われ、他の実施形態では、処理工程は室温で、例えば約15℃~30℃で行われる。いくつかの実施形態において、皮膚等価物は、抗凍結剤溶液で、約10~60分間、好ましくは約20~30分間インキュベートされる。
【0041】
いくつかの実施形態では、トレイの多孔質膜にて支持された皮膚等価物は、好ましくは過剰の抗凍結剤溶液が皮膚等価物から除去された後に、例えば溶液を吸引するか、新鮮な容器(例えば、本開示の無菌培養容器または無菌組織容器組立体)に相当する処理された皮膚を動かすことによって、凍結保護溶液で処理された後に凍結される。したがって、いくつかの実施形態では、トレイの多孔質膜にて支持された処理済み皮膚等価物は、約-50℃~-100℃の範囲、最も好ましくは約-80℃の温度に曝すことによって凍結される。いくつかの好ましい実施形態では、処理された皮膚等価物を含むトレイは、単にバッグまたは他の容器(例えば、本開示の無菌培養容器または無菌組織容器組立体)内に配置され、低温(例えば-80℃の冷凍庫)の冷凍ユニットなどの凍結ユニット内に配置される。対照的に、凍結ユニット内の温度を制御することによって、または温度の低下速度の制御を可能にする容器に凍結させる組織を入れることによって、凍結速度を制御することは、当技術分野において一般的である。
【0042】
いくつかの実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は長期保存のために包装される。いくつかの好ましい実施形態では、トレイ内の皮膚等価物は、上で詳細に説明されたように底部容器及び頂部容器で囲まれる。いくつかの実施形態において、ヒト皮膚等価物を含む組立体は、一次包装を提供するために無菌バッグ(例えば、プラスチックまたはポリマーバッグ)内に密封され、好ましくはヒートシールされる。一次包装は次に、二次バッグ、例えば二次プラスチック、ホイル、またはマイラーバッグの内側に密封される。本発明の凍結保存組織は、好ましくは約-50℃~約-100℃以下、好ましくは約-80℃の低温で保存することができる。皮膚等価物は、生存可能性を実質的に失うことなく、好ましくは約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月から、12ヶ月または24ヶ月まで保存することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、本開示の無菌底部容器に挿入される、トレイ内の器官型培養皮膚等価物を、上記のように凍結保護溶液で処理する。抗凍結剤溶液を底部容器から吸引することにより、凍結前に過剰の抗凍結剤溶液を皮膚等価物から除去する。次いで、トレイ内の処理済み皮膚等価物を本開示の無菌頂部容器で囲み、それによって組織容器システムを形成する。あるいは、本開示の第2の無菌底部容器に相当する処理された皮膚を含むトレイを移動させ、次いで本開示の無菌頂部容器でトレイを囲み、それにより組織容器システムを形成することによって、凍結前に、過剰の抗凍結剤溶液を皮膚等価物から除去する。次いで、処理されたヒト皮膚等価物を含む組織容器システムは、一次包装を提供するために無菌バッグ(例えば、プラスチックまたはポリマーバッグ)に密封され、好ましくはヒートシールされる。一次包装は、二次バッグ、例えば二次プラスチック、ホイル、またはマイラーバッグの内側に密封することができる。次いで、一次バッグまたは二次バッグを、約-50℃~約-100℃、好ましくは約-80℃の低温で保存する。皮膚等価物は、生存可能性を実質的に失うことなく、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月から、12ヶ月または24ヶ月まで保存することができる。
【0044】
別の好ましい実施形態では、培養容器に配置された、トレイ内の器官培養された皮膚等価物を、上記のように抗凍結剤溶液で処理する。本開示の無菌底部容器に相当する処理された皮膚を含むトレイを移動させ、次いでトレイを本開示の無菌頂部容器に封入し、それにより組織容器システムを形成することによって、過剰の抗凍結剤溶液を、凍結する前に、皮膚等価物から除去する。次いで、処理されたヒト皮膚等価物を含む組織容器システムは、一次包装を提供するために無菌バッグ(例えば、プラスチックまたはポリマーバッグ)にて密封され、好ましくはヒートシールされる。一次包装は、二次包装を製造するために、二次バッグ、例えば二次プラスチック、ホイル、またはマイラーバッグの内側に密封されてもよい。次いで、一次包装物または二次包装物を約-50℃~約-100℃、好ましくは約-80℃の低温で保存する。皮膚等価物は、生存可能性を実質的に失うことなく、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月から、12ヶ月または24ヶ月まで保存することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象への適用前の凍結保存皮膚等価物の解凍方法を提供し、その方法は、上記のような組織容器システムにおいて凍結保存組織を提供すること、頂部組織容器を取り出して凍結保存組織を露出させること、及び底部組織容器のリザーバに液体培地を、凍結保存組織が解凍して解凍組織を提供する条件下で充填することを含み、この場合組織内に含まれる抗凍結剤が液体培地中に希釈され、抗凍結剤を実質的に含まない組織を残す。他の実施形態では、この方法は、凍結保存組織を含む組織容器システムを含む一次または二次包装を、冷凍庫または輸送用容器から取り出すこと、包装(複数可)から組織容器システムを取り出すこと、頂部組織容器を取り出して凍結保存した組織物を露出させること、及び凍結保存された皮膚等価物のトレイを、第1の組織容器から、無菌にされ、無菌領域に置かれ、容器リザーバに液体培地を含む第2の組織容器に移し、移動した凍結保存した組織が解凍して解凍組織を提供し、その組織内に含まれる抗凍結剤を液体培地に希釈するようにすることを含む。上記実施形態のいくつかにおいて、液体培地は組織適合性溶液、好ましくは緩衝溶液である。適切な組織適合性溶液には、DMEM、Ham’s F-10、Ham’s F-12、DMEM/F-12、Medium 199、MEM及びRPMIが含まれるが、これらに限定されない。適切な緩衝剤としては、HEPES、Tris、MOPS、及びTrizma緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝剤は、pH7.0~7.4の範囲の緩衝系を提供する量で含まれてもよい。さらに他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物を含むトレイを組織容器から取り出し、皮膚等価物から解凍された抗凍結剤溶液を除去するために吸収媒体に配置する。吸収媒体は、任意の適切な、好ましくは無菌の容器(例えば、培養容器または新鮮な組織容器組立体)であり得る。本発明は特定の吸収媒体の使用に限定されない。適切な吸収媒体は、Telfa(登録商標)パッド、セルロースパッド(例えば、Whatman 1003-090フィルターパッド及びPall 70010フィルターパッド)、ガーゼパッド、及びフォームパッド(例えば、Covidien 55544親水性フォームパッド)を含むが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、吸収媒体はTelfa(登録商標)パッドである。いくつかの実施形態では、吸収媒体は組織適合性溶液をさらに含む。いくつかの実施形態では、組織適合性溶液は緩衝溶液である。適切な組織適合性溶液には、DMEM、Ham’s F-10、Ham’s F-12、DMEM/F-12、Medium 199、MEM及びRPMIが含まれるが、これらに限定されない。適切な緩衝剤としては、HEPES、Tris、MOPS、及びTrizma緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝剤は、pH7.0~7.4の範囲の緩衝系を提供する量で含まれてもよい。
【0046】
本発明の凍結保存された皮膚等価物は、解凍後に治療で使用され得ると企図されている。いくつかの実施形態では、凍結保存された皮膚代替物は、創傷閉鎖及び火傷治療の用途において解凍後に使用される。火傷及び創傷閉鎖の治療のための自家移植片及び同種移植片の使用は、Myers et al., A. J. Surg. 170(1):75-83 (1995)、及び米国特許第5,693,332号、第5,658,331号、及び第6,039,760号に記載されている。これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、皮膚等価物は、DERMAGRAFTまたはINTEGRAなどの皮膚代替物と併せて使用され得る。したがって、本発明は、本開示の組織容器システムにおいて凍結保存された皮膚等価物を提供すること、皮膚等価物を解凍すること、及び創傷が閉鎖されるような条件下で解凍皮膚等価物を伴う創傷を患う患者を治療することを含む、火傷によって引き起こされる潰瘍または創傷を含む創傷閉鎖方法を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、皮膚等価物は慢性皮膚創傷を治療するために利用される。慢性皮膚創傷(例えば、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡)は深刻な問題である。このような創傷の治癒は、頻繁に1年を優に超える治療を要する。治療の選択肢には、現在、包帯や創面切除(壊死した組織を除去するための化学物質または手術の使用)、及び/または感染の場合には抗生物質が含まれる。これらの治療法の選択肢は、長い期間と、高レベルの患者のコンプライアンスとを要する。そのため、慢性的な創傷の治癒における開業医の成功を増大させ、創傷の治癒の速度を加速させることができる療法は、この分野において満たされていない必要性を満たす。したがって、本発明は、凍結保存された皮膚等価物による皮膚創傷の治療を企図する。いくつかの実施形態において、皮膚等価物は、解凍後に創傷に局所的に適用される。他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、解凍後の部分層創傷への適用に使用される。他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、解凍後に全層創傷を治療するために使用される。他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、胃腸管の内側を覆う粘膜の内部創傷、潰瘍性大腸炎、及びがん治療により引き起こされ得る粘膜の炎症を含むがこれらに限定されない、解凍後の多くの種類の内部創傷の治療に用いられる。さらに他の実施形態において、宿主防御ペプチドまたは血管新生促進因子を発現する皮膚等価物は、解凍後の一時的または永続的な創傷の包帯として使用される。
【0048】
さらに別の実施形態では、細胞は対象に追加の治療薬を提供するように遺伝子操作されている。本発明は、任意の特定の治療薬の送達に限定されない。実際、酵素、ペプチド、ペプチドホルモン、他のタンパク質、リボソームRNA、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)マイクロRNA(miRNA)、及びアンチセンスRNAを含むがこれらに限定されない様々な治療薬を対象に送達することができると考えられる。好ましい実施形態において、作用物質は、宿主防御ペプチド、例えばヒトβディフェンシン1、2、もしくは3、またはカテリシジン、または他のタンパク質、例えばVEGF及びHIF-1aであり、例えば米国特許第7,674,291号、第7,807,148号、第7,915,042号、第7,988,959号、及び第8,092,531号を参照されたい。これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの治療薬は、遺伝的欠陥を修正する目的を含むがこれに限定されない様々な目的のために送達することができる。いくつかの特定の好ましい実施形態では、治療薬は、皮膚等価物が野生型組織としての役割を果たす、固有の先天性代謝異常(例えば、アミノ酸症)を有する患者を解毒する目的で送達される。治療薬の送達は欠陥を矯正することが企図されている。いくつかの実施形態では、細胞を治療薬(例えば、インスリン、凝固因子IX、エリスロポエチンなど)をコードするDNA構築物でトランスフェクトし、トランスフェクトした細胞から調製した皮膚等価物を対象に投与する。次に治療薬を移植片から患者の血流または他の組織に送達する。好ましい態様において、治療薬をコードする核酸は適切なプロモーターに機能的に連結されている。本発明は、いかなる特定のプロモーターの使用にも限定されない。実際、誘導型、構成型、組織特異的、及びケラチノサイト特異的プロモーターを含むがこれらに限定されない、様々なプロモーターの使用が企図される。いくつかの実施形態において、治療薬をコードする核酸は、ケラチノサイトに直接導入される(すなわち、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈、またはリポソームトランスフェクションによって)。他の好ましい実施形態において、治療薬をコードする核酸はベクターとして提供され、ベクターは当技術分野において公知の方法によってケラチノサイトに導入される。いくつかの実施形態では、ベクターは複製プラスミドなどのエピソームベクターである。他の実施形態では、ベクターはケラチノサイトのゲノムに組み込まれる。組み込みベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、非複製プラスミドベクター及びトランスポゾンベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
実施例
【0049】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態及び態様を実証及びさらに説明するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されない。
【0050】
以下の実験の開示では、以下の略語が適用される。eq(等量)、M(モル)、mM(ミリモル)、μM(マイクロモル)、N(通常)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、μmol(マイクロモル)、nmol(ナノモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、lig(マイクログラム)、ng(ナノグラム)、1またはL(リットル)、mlまたはmL(ミリリットル)、μ1またはμL(マイクロリットル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル)、nm(ナノメートル)、C(摂氏)、U(単位)、mU(ミリ単位)、min.(分)、sec.(秒)、%(パーセント)、kb(キロベース)、bp(塩基対)、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、BSA(ウシ血清アルブミン)、CFU(コロニー形成単位)、kGy(キログレイ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、BCA(ビシンコニン酸)、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)。
【0051】
実施例1
StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、正常なヒトの皮膚の構造的及び生物学的特性の多くを再現する、生きている、全層の、同種異系のヒト皮膚代替物である。StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、病原体を含まないヒトケラチノサイト前駆細胞の一貫性があってよく特徴付けられている源である、NIKS(登録商標)細胞由来の生存可能な完全重層表皮層と、コラーゲンの豊富なマトリックスに埋め込まれた正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を含む真皮層の両方を含む。StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、それをヒトの皮膚移植片と同様に噛み合わせ、ステープルで留め、縫合することを可能にする優れた引張強度及び取り扱い特性を有する。StrataGraft(登録商標)はまた、無傷のヒトの皮膚に匹敵するバリア機能を示し、創傷床のコンディショニング及び組織の再生のために生物活性分子を送達することができる。StrataGraft(登録商標)皮膚組織の物理的及び生物学的特性により、様々な皮膚の創傷の治療に理想的である。
【0052】
StrataGraft(登録商標)皮膚組織の製造工程は、3つの連続した細胞培養及び組織培養プロセスを包含する。製造プロセスのステージIでは、NIKS(登録商標)ケラチノサイトを単層細胞培養で増殖させる。ステージIのNIKS(登録商標)ケラチノサイトの培養と同時に、NHDFを単層培養で増殖させ、精製されたI型コラーゲン及び培地と混合し、ゲル化させて細胞化真皮等価物(DE)を形成させる。あるいは、NHDFをTranswell(登録商標)インサート(Corning)に播種し、増殖させ、細胞外マトリックス分子を分泌させ、単純化された真皮等価物に集合させる。ステージIIでは、NIKS(登録商標)ケラチノサイトをDEの表面に播種し、DE表面の完全な上皮化を促進するために2日間浸漬条件下で培養する。次いで、組織はステージIIIで気液界面に持ち上げられ、そこで組織の成熟を促進するために、制御された低湿度の環境に、18日間維持させる。皮膚等価物は、一般に、米国特許第7,674,291号、第7,807,148号、第7,915,042号、第7,988,959号、第8,092,531号、及び米国特許出願公開第20140271583号に記載されているように調製される。これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
実施例2
この実施例は、室温で32.5%または50%のグリセロールを含有する凍結保存溶液を用いた、凍結前処理工程を利用する、ヒト皮膚等価物のための改善された凍結保存方法を記載しており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる同時係属の米国特許出願公開第20140271583号に記載されている。一般的な製造プロセスは、前述の現在の方法と変わらない。製造プロセスの終わりに、組織は次のように処理及び凍結保存される。
【表1】
【0054】
最終製品包装工程の前の凍結保存プロセスの全工程は、クラス10,000クリーンルーム内のクラス100バイオセーフティキャビネットにて無菌で行われる。この実施例に記載される特定の体積及び皿は、本開示のより大きな長方形のフォーマットではなく、以前の円形の44cm2のフォーマットで生成された組織に適用可能である。
【0055】
工程1-100mmの培養皿に20mlの抗凍結剤溶液を分注する。
【0056】
工程2-StrataGraft(登録商標)組織を含有するTranswell(登録商標)インサートを、抗凍結剤溶液を含有する個々の皿に移す。抗凍結剤溶液中で組織を15~45分間インキュベートする。
【0057】
工程3-処理したStrataGraft(登録商標)組織を含有するTranswell(登録商標)インサートを、最終製品のラベルを含む新しい無菌100mm培養皿に移し、組織が培養皿の底に載るようにする。過剰の抗凍結剤を皮膚等価物から排出させて、皮膚等価物の外面に過剰の抗凍結剤を実質的に含まない処理済み皮膚等価物を提供する。
【0058】
工程4-透明な無菌バッグに100mm培養皿をヒートシールする。一次包装を二次マイラーバッグに入れてヒートシールする。
【0059】
工程5-包装されたStrataGraft(登録商標)組織をクリーンルームから取り出し、組織を超低冷凍庫(-70℃~-90℃)に移す。冷凍庫の予冷したラックに組織を置き、包装された組織の上下に無制限の空気が流れるようにして、均一で急速な冷却を確保する。凍結プロセスの間、組織を一晩静置する。
【0060】
凍結保存した組織を室温で10分間解凍し、40mlのHEPES緩衝培地で飽和させたTelfa(登録商標)パッドを含む保持チャンバに移した。それは、室温(RT)に温め、RTで15~20分間保持した。組織を90mlのSMO1培地を含む培養皿に移し、一晩培養に戻した。一晩再培養した後、生存可能性について組織を分析した。室温で15~45分間32.5%グリセロールで処理した組織は、許容できる解凍後の生存可能性を示した。室温で15分間、50%グリセロールで処理した組織はまた、許容可能な生存可能性を有していた。しかし、50%グリセロールを用いて室温で45分間処理した組織は、許容できない生存可能性を有していた。
【0061】
実施例3
本試験は、凍結保存されたStrataGraft(登録商標)組織の包装として使用するための、本開示の組織容器組立体である製品包装プラスチック製品の性能を評価するために行われた。本試験では、Transwell(登録商標)増殖チャンバに包装された組織と、本明細書に記載の組織容器に包装された組織とを比較して、3つの独立したロットの長方形の100cm2のStrataGraft(登録商標)組織を評価した。各バッチについて、本発明の組織容器に包装された組織の解凍後の特性を、異なる保持条件に従って評価し、現在の包装及び解凍/保持手順を用いて対照組織のものと比較した。本試験の結果は、本発明の組織容器が凍結保存されたStrataGraft(登録商標)組織の輸送及び解凍に使用するのに適しており、許容できる解凍がTelfa(登録商標)パッドを使用せずに無菌のフィールドで達成できることを示した。
【0062】
StrataGraft(登録商標)皮膚組織は100cm2のStrataGraft(登録商標)皮膚組織のバッチで製造される。このより大きな組織フォーマット及びバッチサイズの増大は、皮膚組織の効率的な保管及び出荷にさらに重点を置く。この問題に対処するために、同時係属中の米国特許出願公開第20140271583号に開示されているように、Transwell(登録商標)増殖チャンバ内での包装と比較して最終包装製品の体積を60%減少するプラスチック製組織容器が設計されたこの実施例では、この包装は、製品がホイルパウチに密封されて長期保存のために超低温冷凍庫に移される直前に、抗凍結剤処理の後のプロセスに導入される。本発明の組織容器は、組織の下に0.75mmの深さのリザーバを有するように設計されており、これは保持溶液であふれ得る。この設計により、包装を解凍後の保持容器として使用することが可能になり、別の保持用の器が不要になり、臨床用途でのStrataGraft(登録商標)組織の調製が単純化される。
【0063】
この実験は、3つのバッチから得たStrataGraft(登録商標)皮膚組織の解凍後特性を評価し、Transwell(登録商標)増殖チャンバまたは本発明の組織容器のいずれかで凍結した。さらに、本試験は、Telfa(登録商標)パッドを使用せずに本発明の組織容器で行われた解凍後保持手順を、Telfa(登録商標)パッドを含む保持用の器で行われた対照保持条件と比較して評価した。
【表2】
【0064】
20の100cm2の長方形のStrataGraft(登録商標)皮膚組織のバッチを、Stratatechの標準プロセスを使用して製造した。手短に言えば、NIKS(登録商標)細胞及び正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を単層培養で増殖させた。NHDFを解凍し、単層で増殖させた。増殖後、NHDF細胞を回収し、I型コラーゲン溶液に混合し、本開示の100cm2の長方形のトレイ(組織培養処理ポリカーボネート膜、公称の厚さ約10ミクロン、公称孔径約0.4ミクロン)に分配し、真皮等価層(DE)を形成するためにゲル化した。ゲル化後、DEを増殖チャンバ内の培地に浸し、NIKS(登録商標)の播種の前に5日間培養した。NIKS(登録商標)を解凍し、膨張させ、次いで収穫し、DE表面上に播種した。DE表面上でのNIKS(登録商標)の付着及び増殖を可能にするために組織を2日間液内培養で維持し、次いで完全な表皮分化を可能にするために18日間気液界面で培養した。トレイ及びTranswell(登録商標)増殖チャンバへの培地、NHDF/コラーゲン混合物、及びNIKS(登録商標)懸濁液の移動は、蠕動ポンプを用いて行われた。
【0065】
製造工程の終わりに、培地を吸引し、トレイの膜になおも支持されながら、室温(RT)で20分間、37.5%グリセロールを含有する50mLの凍結保存溶液を用いて組織をTranswell(登録商標)増殖チャンバにおいて処理した。処理の終わりに、この実験用に指定された9つの組織を含むトレイを、過剰の凍結保存溶液から取り出し、2つの包装形態のうちの1つに包装した:1)3つの組織をTranswell(登録商標)増殖チャンバの高い位置に保ち、7.875インチ×12インチのホイルパウチの内側に密封した(群1)。また、2)6つの組織を本発明の無菌組織容器に移し、6.75インチ×10.25インチのホイルピールパウチの内側に密封した(群2及び群3、群当たりn=3)。包装の終わりに、包装されたすべての組織を超低温冷凍庫に移し、分析まで-70~-90℃で保存した。
【0066】
次いで、吸収媒体(例えば、Telfa(登録商標)パッド)を利用した以前に確立された手順を使用して、群1及び群2の組織を解凍した。群3の組織は、単純化された保持手順を用いて解凍された。手短に言えば、グループ3の凍結保存した組織を、組織が凍結している組織容器で室温にて10分間解凍し、次いで底部組織容器を保持溶液(35℃~39℃に温めた15mlのHEPES緩衝培地)で満たし、室温で15~20分間保持した。解凍後の保持の後、すべての群から得た組織を、SM01を含む新しい長方形の増殖チャンバに移し、22~26時間再培養した。
【0067】
組織を外観、バリア機能、生存可能性、組織学、及び調整した培地でのVEGFの分泌について評価した。さらに、全組織MTT染色を実施して、組織の生存可能性の均一性を評価した。本発明の組織容器(群2及び群3)で凍結した組織の結果を対照群の結果と比較した。
【0068】
本試験の結果は、本発明の組織容器の使用が、凍結保存されたStrataGraft(登録商標)組織の性質に影響を及ぼさないことを実証している。2つの構成で包装され、以前に確立された手順(群1及び群2)を使用して解凍/保持された組織は、匹敵する外観、組織学、生存可能性、及びバリア機能、ならびにVEGFの分泌を有した。本発明の組織容器はまた、単純化された保持手順において使用するための有望な結果を示した。解凍後保持のために本発明の組織容器に包装されて保持された組織(群3)は、他の両群と同様の性質を有していた。組織の外観、組織学、VEGFの分泌、及びバリア機能は、対照組織と有意差はなかった(群1)。生存可能性は、対照と比較して、控えめな(-10%)、しかし統計的に有意(p<0.05)な減少を示したが、それでもなお確立されたロット放出基準を容易に超えていた。すべての群からの組織のMTT染色パターンは同程度であり、組織表面全体にわたって定性的に一貫した染色を示した。
図5、
図6及び
図7を参照されたい。
【0069】
上記の明細書において言及されたすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することのない、記載された本発明の方法及びシステムの様々な修正及び変形が、当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、組織培養、分子生物学、生化学、または関連分野の当業者に明らかである、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、後続の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【外国語明細書】