(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031487
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】疾患を処置するための遺伝子改変された細胞、組織、および臓器
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20060101AFI20220210BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220210BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220210BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220210BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220210BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220210BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220210BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220210BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220210BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220210BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220210BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/09 100
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/11 Z
A61K35/12
A61K39/00 Z
A61L27/38
A61P3/10
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021212142
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2018565376の分割
【原出願日】2017-06-14
(31)【優先権主張番号】62/350,048
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バーナード ジェイ. へリング
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ブルラク
(57)【要約】
【課題】疾患を処置または予防するための遺伝子改変された細胞、組織、および臓器を提供すること。
【解決手段】遺伝子改変された細胞および非ヒト動物を作製する方法も開示される。第1の態様では、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%同一である外因性核酸配列を含む遺伝子改変された非ヒト動物が本明細書で開示される。第1の態様の一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも96%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも97%同一である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年6月14日に出願された米国仮出願番号第62/350,048号の利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
ヒトなどのレシピエントでの移植のために利用可能な臓器、組織または細胞が不足している。ヒトへの臓器、組織、または細胞の異種移植または同種移植には、この必要性を満たし、毎年何十万もの人々を助ける可能性がある。非ヒト動物は、ヒトに対する解剖学的および生理学的類似性に基づいて臓器ドナーとして選択することができる。さらに、異種移植はヒトだけでなく、獣医学での応用にも関係する。
【0003】
しかしながら、未改変の野生型非ヒト動物組織は、ヒトなどのレシピエントの免疫系によって拒絶されることがある。拒絶は、組織および細胞媒介性の免疫への抗体の結合によって少なくとも部分的に引き起こされ、移植片機能損失に繋がると考えられている。例えば、ブタ移植片は、適応免疫細胞によって媒介される細胞機構によって拒絶されることがある。
【0004】
参照による援用
本明細書における全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、および特許出願が、参照により組み込まれるように、具体的かつ個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により組み込まれる。万一、本明細書の用語と、組み込まれる参考文献の用語との間で齟齬が生じた場合は、本明細書の用語が優先される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
第1の態様では、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%同一である外因性核酸配列を含む遺伝子改変された非ヒト動物が本明細書で開示される。
【0006】
第1の態様の一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも96%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも97%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも98%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも99%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と100%同一である。
【0007】
第2の態様では、改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される外因性核酸を含む遺伝子改変された非ヒト動物が本明細書で開示される。
【0008】
第2の態様の一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、1または複数の欠失を含む。一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、未改変のHLA-G mRNAと比較してmRNAの安定性を増加させる。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G2である。
【0009】
第1または第2の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物の少なくとも1つの細胞は、HLA-Gタンパク質を発現する。一部の実施形態では、HLA-Gタンパク質は、HLA-G1である。
【0010】
第1または第2の態様の一部の実施形態は、β-2-ミクログロブリン(B2M)タンパク質をコードする第2の外因性核酸をさらに含む。一部の実施形態では、B2Mタンパク質は、ヒトB2Mタンパク質である。
【0011】
第3の態様では、配列番号240と少なくとも75%同一である外因性核酸配列を含む遺伝子改変された非ヒト動物が本明細書で開示される。
【0012】
第3の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも80%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも85%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも90%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも95%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と同一である。
【0013】
第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物の少なくとも1つの細胞は、ヒトCD47タンパク質を発現する。
【0014】
第3の態様の一部の実施形態は、改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される第2の外因性核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、1または複数の欠失を含む。一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、未改変のHLA-G mRNAと比較してmRNAの安定性を増加させる。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G2である。
【0015】
第3の態様の一部の実施形態では、第2の外因性核酸配列は、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0016】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、構成的に活性な内因性プロモーターに作動可能に連結されている。
【0017】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、ROSA26遺伝子部位において遺伝子改変された非ヒト動物のゲノム中に挿入されている。
【0018】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、外因性核酸配列を有しない同じ種の動物または異なる部位に挿入された外因性核酸を有する同じ種の動物と比較して、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、またはこれらの組合せの発現を低減させるために効果的な部位において遺伝子改変された非ヒト動物のゲノム中に挿入されている。
【0019】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)の発現を低減させるために効果的な部位において遺伝子改変された非ヒト動物のゲノム中に挿入されている。
【0020】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む。
【0021】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む。一部の実施形態は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分のゲノム破壊を含み、MHC I特異的エンハンセオソームの成分は、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)である。一部の実施形態は、MHC I結合ペプチドのトランスポーターのゲノム破壊を含み、トランスポーターは、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)である。一部の実施形態は、C3のゲノム破壊を含む。一部の実施形態は、NK群2Dリガンドのゲノム破壊を含み、NK群2Dリガンドは、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)またはMHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)である。一部の実施形態は、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子のゲノム破壊を含み、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、またはβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)である。一部の実施形態は、CXCR3リガンドのゲノム破壊を含み、CXCR3リガンドは、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)である。
【0022】
一部の実施形態では、ゲノム破壊は、ゲノム破壊を有しない同じ種の動物と比較して、破壊された遺伝子の発現を低減させる。
【0023】
一部の実施形態では、ゲノム破壊は、ゲノム破壊を有しない同じ種の動物と比較して、破壊された遺伝子からのタンパク質の発現を低減させる。
【0024】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態は、感染細胞タンパク質47(ICP47)をコードするさらなる外因性核酸配列をさらに含む。
【0025】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、Laurasiatheria上目のメンバーである。
【0026】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、有蹄動物である。
【0027】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、ブタである。
【0028】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、非ヒト霊長類動物である。
【0029】
第1、第2、または第3の態様の一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト動物は、胎仔である。
【0030】
第1、第2、または第3の態様の任意の実施形態の遺伝子改変された非ヒト動物から単離された細胞も本明細書で開示される。一部の実施形態では、細胞は、島細胞である。一部の実施形態では、細胞は、幹細胞である。
【0031】
第1、第2、または第3の態様の任意の実施形態の遺伝子改変された非ヒト動物から単離された組織も本明細書で開示される。一部の実施形態では、組織は、実質臓器移植片である。一部の実施形態では、組織は、肝臓の全体または部分である。一部の実施形態では、組織は、腎臓の全体または部分である。
【0032】
第4の態様では、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%同一である外因性核酸配列を含む非ヒト細胞が本明細書で開示される。
【0033】
第4の態様の一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも96%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも97%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも98%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と少なくとも90%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸は、配列番号359または配列番号502と100%同一である。
【0034】
第4の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、細胞表面にヒト白血球抗原G1(HLA-G1)を発現する。
【0035】
第5の態様では、改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される外因性核酸を含む非ヒト細胞が本明細書で開示される。
【0036】
第5の態様の一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、1または複数の欠失を含む。一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、未改変のHLA-G mRNAと比較してmRNAの安定性を増加させる。
【0037】
第5の態様の一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G2である。
【0038】
第4または第5の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、β-2-ミクログロブリン(B2M)タンパク質をコードする第2の外因性核酸をさらに含む。一部の実施形態では、B2Mタンパク質は、ヒトB2Mタンパク質である。
【0039】
第6の態様では、配列番号240と少なくとも75%同一である外因性核酸を含む非ヒト細胞が本明細書で開示される。
【0040】
第6の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも80%同一である。
【0041】
一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも85%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも90%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と少なくとも95%同一である。一部の実施形態では、外因性核酸配列は、配列番号240と100%同一である。
【0042】
第6の態様の一部の実施形態では、少なくとも1つの非ヒト細胞は、ヒトCD47タンパク質を発現する。
【0043】
第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される第2の外因性核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、1または複数の欠失を含む。一部の実施形態では、改変された3’非翻訳領域は、未改変のHLA-G mRNAと比較してmRNAの安定性を増加させる。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G2である。一部の実施形態では、第2の外因性核酸配列は、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0044】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、構成的に活性な内因性プロモーターに作動可能に連結されている。
【0045】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、ROSA26遺伝子部位において非ヒト細胞のゲノム中に挿入されている。
【0046】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、外因性核酸配列を有しない同じ種の細胞または外因性核酸が異なる部位に挿入されている同じ種の細胞と比較して、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、またはこれらの組合せの発現を低減させるために効果的な部位において非ヒト細胞のゲノム中に挿入されている。
【0047】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、外因性核酸配列は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)の発現を低減させる部位において非ヒト細胞のゲノム中に挿入されている。
【0048】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む。
【0049】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む。一部の実施形態では、非ヒト細胞は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分のゲノム破壊を含み、MHC I特異的エンハンセオソームの成分は、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)である。一部の実施形態では、非ヒト細胞は、MHC I結合ペプチドのトランスポーターのゲノム破壊を含み、トランスポーターは、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)である。
【0050】
一部の実施形態では、非ヒト細胞は、C3のゲノム破壊を含む。
【0051】
一部の実施形態では、非ヒト細胞は、NK群2Dリガンドのゲノム破壊を含み、NK群2Dリガンドは、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)またはMHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)である。
【0052】
一部の実施形態では、非ヒト細胞は、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子のゲノム破壊を含み、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、またはβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)である。一部の実施形態では、非ヒト細胞は、CXCR3リガンドのゲノム破壊を含み、CXCR3リガンドは、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)である。一部の実施形態では、ゲノム破壊は、ゲノム破壊を有しない同じ種の細胞と比較して、破壊された遺伝子の発現を低減させる。
【0053】
一部の実施形態では、ゲノム破壊は、ゲノム破壊を有しない同じ種の細胞と比較して、破壊された遺伝子からのタンパク質発現を低減させる。
【0054】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態は、感染細胞タンパク質47(ICP47)をコードするさらなる外因性核酸配列をさらに含む。
【0055】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、Laurasiatheria上目の細胞である。
【0056】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、有蹄動物の細胞である。
【0057】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、ブタ細胞である。
【0058】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、非ヒト霊長類動物の細胞である。
【0059】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、胎仔細胞である。
【0060】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、幹細胞である。
【0061】
第4、第5、または第6の態様の一部の実施形態では、非ヒト細胞は、島細胞である。
【0062】
第4、第5、または第6の態様の任意の実施形態の非ヒト細胞を含む実質臓器移植片も本明細書で開示される。
【0063】
第4、第5、または第6の態様の任意の実施形態の非ヒト細胞を含む胚も本明細書で開示される。
【0064】
第7の態様では、第4、第5、または第6の態様の任意の実施形態の少なくとも1つの非ヒト細胞を対象に提供することを含む方法が本明細書で開示される。一部の実施形態では、少なくとも1つの非ヒト細胞は、実質臓器移植片である。一部の実施形態では、少なくとも1つの非ヒト細胞は、幹細胞移植片である。一部の実施形態では、少なくとも1つの非ヒト細胞は、島細胞移植片である。
【0065】
第7の態様の一部の実施形態は、寛容化ワクチンを対象に提供することを含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、少なくとも1つの非ヒト細胞が対象に提供される前に、それと同時に、またはその後に、提供される。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、アポトーシス性細胞を含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、対象に提供される少なくとも1つの非ヒト細胞と同じ種に由来する細胞を含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、対象に提供される少なくとも1つの非ヒト細胞と遺伝子的に同一である細胞を含む。
【0066】
第7の態様の一部の実施形態は、抗CD40抗体を対象に提供することを含む。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、少なくとも1つの非ヒト細胞が対象に提供される前に、それと同時に、またはその後に、提供される。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号487のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号488のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する。
【0067】
第8の態様では、a)第1、第2または第3の態様の任意の実施形態の遺伝子改変された非ヒト動物から単離された少なくとも1つの細胞、およびb)寛容化ワクチン、抗CD40抗体、またはこれらの組合せを含む異種移植用システムが本明細書で開示される。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、島細胞、幹細胞、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、実質臓器移植片である。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、肝臓の全体または部分である。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、腎臓の全体または部分である。
【0068】
第8の態様の一部の実施形態は、寛容化ワクチンを含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、アポトーシス性細胞を含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、少なくとも1つの細胞と同じ種に由来する細胞を含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、少なくとも1つの細胞と遺伝子的に同一である細胞を含む。
【0069】
第8の態様の一部の実施形態は、抗CD40抗体を含むまたはさらに含む。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号487のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号488のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する。
【0070】
第9の態様では、a)請求項58~108のいずれか一項に記載の少なくとも1つの非ヒト細胞、およびb)寛容化ワクチン、抗CD40抗体、またはこれらの組合せを含む異種移植用システムが本明細書で開示される。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、島細胞、幹細胞、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、実質臓器移植片である。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、肝臓の全体または部分である。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞は、腎臓の全体または部分である。
【0071】
第9の態様の一部の実施形態は、寛容化ワクチンを含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、アポトーシス性細胞を含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、少なくとも1つの細胞と同じ種に由来する細胞を含む。一部の実施形態では、寛容化ワクチンは、少なくとも1つの細胞と遺伝子的に同一である細胞を含む。
【0072】
第9の態様の一部の実施形態は、抗CD40抗体を含むまたはさらに含む。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号487のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号488のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する。
【0073】
【0074】
少なくとも1つの操作細胞を個体に提供することを含む方法が本明細書で提供され、前記操作細胞は、前記少なくとも1つの操作細胞に対する前記個体の免疫応答の阻害を結果としてもたらす少なくとも2つのゲノム改変を含み、前記阻害は、対応する非操作細胞と接触させた個体の免疫応答と比較した、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの内因性細胞の低減されたエフェクター機能によって、および/または、CD4+調節性T細胞、CD8+調節性T細胞、CD8+天然サプレッサー細胞、Tr1細胞、調節性B細胞、B10細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、およびこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない群から選択される少なくとも1つの内因性細胞の増加された免疫細胞調節によって、測定される。場合によって、少なくとも1つの操作細胞は、実質臓器移植片であり得る。他の場合には、少なくとも1つの操作細胞は、幹細胞移植片であり得る。場合によって、少なくとも1つの操作細胞は、島細胞移植片であり得る。個体は、少なくとも1つの操作細胞に対して寛容化され得る。場合によって、寛容化は、少なくとも1つの操作細胞が個体に提供され得る前に、その間に、またはその後に、起こり得る。
【0075】
場合によって、寛容化は、ワクチンの投与によって促進され得る。場合によって、寛容化は、少なくとも1つの操作細胞の投与であり得る。場合によって、寛容化は、ワクチンの投与および少なくとも1つの操作細胞の投与であり得る。ワクチンは、アポトーシス性細胞を含み得る。ワクチンは、生細胞も含み得る。場合によって、低減されたエフェクター機能は、前記少なくとも1つの操作細胞への曝露に応答した、低減された増殖、低減されたサイトカイン発現、細胞溶解エフェクター分子の低減された発現、アネルギーの低減された持続、欠失、誘導、増加した免疫細胞調節、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。
【0076】
少なくとも1つのさらなる処置ステップを個体に施すことも本明細書で開示され得る。場合によって、少なくとも1つのさらなる処置ステップは、免疫抑制療法であり得る。免疫抑制療法は、抗CD40抗体、抗CD20抗体、抗IL6受容体抗体、C51H79NO13(ラパマイシン)、可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNFR)、C66H99N23O17S2(コンプスタチン)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。個体は、主要組織適合性複合体(MHC)に感作されなくてもよい。抗CD40抗体は、拮抗性抗体であり得る。抗CD40抗体は、アミノ酸配列:EPPTACREKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECLPCGESEFLDTWNRETHCHQHKYCDPNLGLRVQQKGTSETDTICTCEEGWHCTSEACESCV(配列番号487)内のエピトープに特異的に結合する抗CD40抗体であり得る。抗CD40抗体は、アミノ酸配列:EKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECL(配列番号488)内のエピトープに特異的に結合する抗CD40抗体であり得る。抗CD40抗体は、Fab’抗CD40Lモノクローナル抗体断片CDP7657であり得る。抗CD-40抗体は、FcRを操作されたFcサイレント抗CD40Lモノクローナルドメイン抗体であり得る。場合によって、個体は、主要組織適合性複合体(MHC)に感作され得る。MHCは、ヒト白血球抗原(HLA)であり得る。個体は、パネル反応性抗体(PRA)スクリーニング解析に対する陽性応答による決定で、主要組織適合性複合体(MHC)に感作され得る。
【0077】
場合によって、個体は、0.1~100%の計算されたパネル反応性抗体(cPRA)スコアを有し得る。場合によって、低減されたエフェクター機能は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも2つの内因性細胞型の低減されたエフェクター機能であり得る。ゲノム改変は、遺伝子破壊、欠失、アネルギーの誘導、増加した免疫細胞調節、またはこれらの組合せであり得る。遺伝子は、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。場合によって、少なくとも1つの操作細胞は、異種移植片である。
【0078】
ターゲティングオリゴヌクレオチドをコードする少なくとも2つの配列を含む操作ポリ核酸が本明細書で開示され得、前記ターゲティングオリゴヌクレオチドは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列と隣接する少なくとも1つの非ヒトゲノム配列に対する相補配列を含む。場合によって、ターゲティングオリゴヌクレオチドは、ガイドRNA(gRNA)であり得る。gRNAは、GGTA1、Gal2-2、NLRC5、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される遺伝子に対する相補配列を含み得る。場合によって、gRNAは、GGTA1および/またはGal2に対する相補配列を含み得る。gRNAは、NLRC5およびGal2に対する相補配列を含み得る。場合によって、ターゲティングオリゴヌクレオチドは、前記遺伝子の第1のエクソンに結合し得る。非ヒトゲノムは、Laurasiatheria上目動物であるか、または非ヒト霊長類動物に由来し得る。Laurasiatheria上目動物は、有蹄動物であり得る。場合によって、有蹄動物は、ブタであり得る。PAM配列は、5’-NGG-3’(配列番号265)であり得る。
【0079】
場合によって、ガイドRNAは、少なくとも1つの修飾を含み得る。修飾は、5’アデニル酸、5’グアノシン三リン酸キャップ、5’N7-メチルグアノシン三リン酸キャップ、5’三リン酸キャップ、3’リン酸、3’チオリン酸、5’リン酸、5’チオリン酸、Cis-Synチミジン二量体、三量体、C12スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、dSpacer、PCスペーサー、rSpacer、Spacer 18、Spacer 9、3’-3’修飾、5’-5’修飾、脱塩基、アクリジン、アゾベンゼン、ビオチン、ビオチンBB、ビオチンTEG、コレステリルTEG、デスチオビオチンTEG、DNP TEG、DNP-X、DOTA、dT-ビオチン、二重ビオチン、PCビオチン、ソラーレンC2、ソラーレンC6、TINA、3’DABCYL、Black Hole Quencher 1、Black Hole Quencher 2、DABCYL SE、dT-DABCYL、IRDye QC-1、QSY-21、QSY-35、QSY-7、QSY-9、カルボキシルリンカー、チオールリンカー、2’デオキシリボヌクレオシド類似体プリン、2’デオキシリボヌクレオシド類似体ピリミジン、リボヌクレオシド類似体、2’-0-メチルリボヌクレオシド類似体、糖修飾類似体、ゆらぎ/ユニバーサル塩基、蛍光色素標識、2’フルオロRNA、2’O-メチルRNA、メチルホスホネート、ホスホジエステルDNA、ホスホジエステルRNA、ホスホチオエート(phosphothioate)DNA、ホスホロチオエートRNA、UNA、シュードウリジン-5’-三リン酸、5-メチルシチジン-5’-三リン酸、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。
【0080】
配列番号261の少なくとも1つのゲノム破壊を含む異種移植用移植片が本明細書で開示され得る。
【0081】
配列番号262の少なくとも1つのゲノム破壊を含む異種移植用移植片が本明細書で開示され得る。
【0082】
場合によって、異種移植用移植片は、少なくとも1つのトランス遺伝子をさらに含み得る。トランス遺伝子は、内因性であり得る。トランス遺伝子は、操作され得る。トランス遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)をコードし得る。HLAは、HLA-Gであり得る。トランス遺伝子は、CD47であり得る。
【0083】
MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される2またはそれよりも多くの遺伝子においてゲノム破壊を有する遺伝子改変された動物が本明細書で提供され、前記遺伝子改変された動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して前記遺伝子の発現が低減している。場合によって、遺伝子改変された動物は、Laurasiatheria上目のメンバーであってよく、前記Laurasiatheria上目のメンバーは、有蹄動物である。有蹄動物は、ブタであり得る。
【0084】
場合によって、前記2またはそれよりも多くの遺伝子のタンパク質発現は、遺伝子改変された動物において非存在であり得る。場合によって、タンパク質発現の低減は、前記2またはそれよりも多くの遺伝子の機能を不活化させる。場合によって、遺伝子改変された動物は、3またはそれよりも多くの遺伝子の低減されたタンパク質発現を有し得る。遺伝子改変された動物は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分の低減されたタンパク質発現を有してよく、MHC I特異的エンハンセオソームの成分は、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)であり得る。遺伝子改変された動物は、MHC I結合ペプチドのトランスポーターの低減されたタンパク質発現を含んでよく、トランスポーターは、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)であり得る。
【0085】
場合によって、遺伝子改変された動物は、C3の低減されたタンパク質発現を含み得る。場合によって、タンパク質発現の低減は、2またはそれよりも多くの遺伝子の機能を不活化させ得る。場合によって、低減されたタンパク質発現のNK群2Dリガンドは、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)またはMHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)であり得る。場合によって、低減されたタンパク質発現の内因性遺伝子は、ヒトにおいて発現されない場合があり、ヒトにおいて発現されない場合がある前記内因性遺伝子は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、またはβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)であり得る。
【0086】
本明細書に記載される一部の遺伝子改変された動物では、少なくとも2つのゲノム破壊は、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)であり得るCXCR3リガンドの低減されたタンパク質発現を結果としてもたらす。
【0087】
少なくとも1つのタンパク質またはその機能的断片をコードする1または複数の外因性トランス遺伝子をさらに含む少なくとも1つの遺伝子改変された動物が本明細書で提供され、前記少なくとも1つのタンパク質は、MHC I形成サプレッサー、補体活性化の調節因子、NK細胞の阻害性リガンド、B7ファミリーのメンバー、CD47、セリンプロテアーゼインヒビター、ガレクチン、およびこれらの任意の組合せから選択される。
【0088】
場合によって、少なくとも1つのタンパク質は、少なくとも1つのヒトタンパク質であり得る。MHC I形成サプレッサーをコードする1または複数の外因性トランス遺伝子は、感染細胞タンパク質47(ICP47)であり得る。場合によって、補体活性化の調節因子をコードする1または複数の外因性トランス遺伝子は、分化クラスター46(CD46)、分化クラスター55(CD55)、または分化クラスター59(CD59)であり得る。場合によって、NK細胞の阻害性リガンドをコードする1または複数の外因性トランス遺伝子は、白血球抗原E(HLA-E)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、またはβ-2-ミクログロブリン(B2M)であり得る。他の場合には、1または複数の外因性トランス遺伝子は、HLA-Gをコードし、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7であり得る。場合によって、HLA-Gは、HLA-G1であり得る。
【0089】
本明細書で提供する一部の遺伝子改変された動物では、B7ファミリーのメンバーをコードする1または複数の外因性トランス遺伝子が提供され、B7ファミリーのメンバーはプログラム死リガンド(programed death-ligand)であり得る。プログラム死リガンドは、プログラム死リガンド1(PD-L1)またはプログラム死リガンド2(PD-L2)であり得る。場合によって、1または複数の外因性トランス遺伝子は、PD-L1およびPD-L2の両方をコードし得る。場合によって、1または複数の外因性トランス遺伝子は、セリンプロテアーゼインヒビターをコードしてもよく、セリンプロテアーゼインヒビターは、セリンプロテアーゼインヒビター9(Spi9)であり得る。場合によって、1または複数の外因性トランス遺伝子は、ガレクチンをコードしてもよく、ガレクチンは、ガレクチン9であり得る。場合によって、1または複数の外因性トランス遺伝子は、遍在性プロモーターと隣接して挿入され得る。遍在性プロモーターは、Rosa26プロモーターであり得る。
【0090】
場合によって、1または複数の外因性トランス遺伝子は、ターゲティングされた遺伝子のプロモーターと隣接して、前記ターゲティングされた遺伝子内で、またはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列と隣接して、挿入され得る。場合によって、2またはそれよりも多くの遺伝子のタンパク質発現は、CRISPR/Casシステムを使用して低減され得る。
【0091】
MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子においてゲノム破壊を有する遺伝子改変された動物が本明細書で提供され、前記遺伝子改変された動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して前記遺伝子の低減された発現を有し、かつ前記遺伝子改変された動物は、生後少なくとも22日生存する。場合によって、遺伝子改変された動物は、生後少なくとも23日、30日、35日、50日、70日、100日、150日、200日、250日、300日、350日または400日生存し得る。
【0092】
本発明の新規の特色は、付属の特許請求の範囲において詳細に明示される。本発明の原理が用いられる例示的な実施形態と、付属の図面とを明示する、以下の詳細な記載を参照することにより、本発明の特色および利点のよりよい理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】
図1は、MHCクラスIの機能的発現を欠く、遺伝子改変された細胞および臓器移植片の使用を中心とした、免疫療法戦略を裏付ける図である。移植片拒絶の予防のために求められる維持免疫抑制の必要性は、遺伝子改変された細胞および臓器の移植が拮抗性抗CD40抗体の一過性使用と併用された場合、およびさらにいっそう、抗CD40抗体の援護の下でのアポトーシス性ドナー細胞を含む寛容化ワクチンの投与と併用された場合、漸減される(または細胞および臓器異種移植片の移植ならびに幹細胞由来細胞の同種移植片および異種移植片の移植の適用可能性が漸増される)。
【0094】
【
図2】
図2は、遺伝子改変されたブタ島細胞および寛容化ワクチンを作製する1つの戦略を裏付ける図である。ブタの2つのクローン集団が創出される。少なくともGGTA1がノックアウトされた1つの集団を使用して、寛容化ワクチンを創出することができる。少なくともGGTA1およびMHC I遺伝子(例えば、NRLC5)がノックアウトされたブタの他のクローン集団を、細胞、組織、および/または臓器ドナーに使用することができる。
【0095】
【
図3】
図3は、陽性ワクチンおよび寛容化ワクチン(陰性ワクチンとも呼ばれる)の使用を裏付ける図である。
【0096】
【
図4】
図4は、一過性免疫抑制の援護の下で寛容化ワクチン接種にアポトーシス性ドナー脾細胞の注入を用いて対象の異種移植片の生存を延長する例示的な手法を裏付ける図である。
【0097】
【
図5】
図5は、異種移植片レシピエントの慢性および全身性免疫抑制の非存在下でレシピエントにおける異種移植片に対する拒絶を予防するまたは異種移植片の生存を延長するための例示的な手法を示す図である。この例示的な手法は、i)αGal、MHCクラスI、補体C3およびCXCL10の欠損および/または発現低下、ならびにHLA-Gのトランスジェニック発現を有する、遺伝子操作された島;ii)αGal、Neu5Gc、およびSda/CADの欠損および/または発現低下、ならびにヒトCD47、ヒトPD-L1、ヒトPD-L2を伴うまたは伴わないHLA-Gのトランスジェニック発現を有する、遺伝子操作されたドナーアポトーシス性および非アポトーシス性単核細胞(例えば、脾細胞)(例えば、遺伝子操作されたワクチン);ならびにiii)一過性免疫抑制(拮抗性抗CD40 mAb、抗CD20 mAb、ラパマイシンを含む)および一過性の抗炎症療法(コンプスタチン(例えば、コンプスタチン誘導性APL-2)、抗IL-6受容体mAb、および可溶性TNF受容体を含む)の投与の3つの構成要素を含み、これらを統合する。
【0098】
【
図6】
図6は、ブタからカニクイザルへの島異種移植の際の移植拒絶予防のための例示的なプロトコールを裏付ける図である。IE:島同等物;sTNFR:可溶性TNF受容体(例えば、エタネルセプト);α-IL-6R:抗インターロイキン6受容体;Tx’d:移植された。
【0099】
【
図7A】
図7A~7Eは、GGTA1をターゲティングするpx330-Gal2-1プラスミドをクローニングするための戦略を裏付ける図である。
図7Aは、GGTA1をターゲティングするガイドRNAを作製するためのクローニング戦略およびオリゴヌクレオチド(出現順に、それぞれ、配列番号266~267)を示す。
図7Bは、px330プラスミド(配列番号268)上の挿入部位を示す。
図7Cは、クローニングおよび検証戦略を裏付けるフローチャートを示す。
図7Dは、クローニング部位(配列番号270)およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号269および271)を示す。
図7Eは、シーケンシング結果(出現順に、それぞれ、配列番号272~274)を示す。
【0100】
【
図8A】
図8A~8Eは、CMAHをターゲティングするpx330-CM1Fプラスミドをクローニングするための戦略を裏付ける図である。
図8Aは、CMAH1をターゲティングするガイドRNAを作製するためのクローニング戦略およびオリゴヌクレオチド(出現順に、それぞれ、配列番号275および276)を示す。
図8Bは、px330プラスミド(配列番号277)上の挿入部位を示す。
図8Cは、クローニングおよび検証戦略を裏付けるフローチャートを示す。
図8Dは、クローニング部位(配列番号279)およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号278および280)を示す。
図8Eは、シーケンシング結果(出現順に、それぞれ、配列番号281~283)を示す。
【0101】
【
図9A】
図9A~9Eは、NLRC5をターゲティングするpx330-NL1_第1のプラスミドをクローニングするための戦略を裏付ける図である。
図9Aは、NLRC5をターゲティングするガイドRNAを作製するためのクローニング戦略およびオリゴヌクレオチド(出現順に、それぞれ、配列番号284および285)を示す。
図9Bは、px330プラスミド(配列番号286)上の挿入部位を示す。
図9Cは、クローニングおよび検証戦略を裏付けるフローチャートを示す。
図9Dは、クローニング部位(配列番号288)およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号287および289)を示す。
図9Eは、シーケンシング結果(出現順に、それぞれ、配列番号290~292)を示す。
【0102】
【
図10A】
図10A~10Eは、C3をターゲティングするpx330/C3-5プラスミドをクローニングするための戦略を裏付ける図である。
図10Aは、C3をターゲティングするガイドRNAを作製するためのクローニング戦略およびオリゴヌクレオチド(出現順に、それぞれ、配列番号293および294)を示す。
図10Bは、px330プラスミド(配列番号295)上の挿入部位を示す。
図10Cは、クローニングおよび検証戦略を裏付けるフローチャートを示す。
図10Dは、クローニング部位(配列番号297)およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号296および298)を示す。
図10Eは、シーケンシング結果(出現順に、それぞれ、配列番号299~301)を示す。
【0103】
【
図11A】
図11A~11Eは、B4GALNT2をターゲティングするpx330/B41_第2のプラスミドをクローニングするための戦略を裏付ける図である。
図11Aは、B4GALNT2をターゲティングするガイドRNAを作製するためのクローニング戦略およびオリゴヌクレオチド(出現順に、それぞれ、配列番号302および303)を示す。
図11Bは、px330プラスミド(配列番号304)上の挿入部位を示す。
図11Cは、クローニングおよび検証戦略を裏付けるフローチャートを示す。
図11Dは、クローニング部位(配列番号306)およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号305および307)を示す。
図11Eは、シーケンシング結果(出現順に、それぞれ、配列番号308~310)を示す。
【0104】
【
図12】
図12は、実施例2でシーケンシングされたRosa26遺伝子座のマップを裏付ける図である。
【0105】
【
図13A】
図13A~13Eは、Rosa26をターゲティングするpx330/Rosaエクソン1プラスミドをクローニングするための戦略を裏付ける図である。
図13Aは、Rosa26をターゲティングするガイドRNAを作製するためのクローニング戦略およびオリゴヌクレオチド(出現順に、それぞれ、配列番号311~312)を示す。
図13Bは、px330プラスミド(配列番号313)上の挿入部位を示す。
図13Cは、クローニングおよび検証戦略を裏付けるフローチャートを示す。
図13Dは、クローニング部位(配列番号315)およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号314および316)を示す。
図13Eは、シーケンシング結果(出現順に、それぞれ、配列番号317~319)を示す。
【0106】
【
図14A】
図14Aは、HLA-Gのゲノム配列のマップを示す図である。
図14Bは、HLA-GのcDNA配列のマップを示す図である。
【0107】
【
図15】
図15は、pSpCas9(BB)-2A-GFPがトランスフェクトされたブタの胎仔線維芽細胞の例示的な顕微鏡写真を示す図である。
【0108】
【
図16】
図16は、第1染色体上の位置を明らかにする特異的プローブによるGGTA1遺伝子との蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を示す図である。
【0109】
【
図17】
図17A~17Bは、cas9/sgRNA媒介性GGTA1/NLCR5破壊を用いる細胞の表現型選択の例を裏付ける図である。
図17Aは、アルファガラクトシダーゼを発現しない、遺伝子改変された細胞を示す。
図17Bは、アルファガラクトシダーゼを発現する、遺伝子改変されていない細胞であって、イソレクチンB4(IB)が連結されている第一鉄ビーズで標識された細胞を示す。
【0110】
【
図18A】
図18A~18Bは、2匹の別々の同腹仔の胎仔細胞から単離されたDNAのシーケンシングを示す図(妊娠1:
図18Aまたは妊娠2:
図18B)であって、GGTA1(Sus scrofa品種混合第1染色体、Sscrofa10.2 NCBI参照配列:NC_010443.4と比較した)標的領域のPCR増幅に付されたDNAのシーケンシングを示す図である。得られたアンプリコンを、1%アガロースゲル上で分離した。アンプリコンを、各反応からのフォワードプライマーを単独で使用してサンガーシーケンシングによって解析もした。
図18Aには、妊娠1の胎仔からの胎仔1~7(それぞれ、配列番号322~328)についての結果が、参照および標的遺伝子配列(それぞれ、配列番号320~321)にアラインされて示されている。胎仔1、2、4、5、6および7は、GGTA1の標的部位の後で6ヌクレオチド切断された。胎仔3は、切断部位の後で17ヌクレオチド切断され、続いて、2,511(668~3179)のヌクレオチド欠失があり、続いて、単一塩基置換があった。標的遺伝子の両方のコピーからの対立遺伝子を含む単一のシーケンシング実験からの切断、欠失および置換は、遺伝子改変が起こったことを単に示唆することはできるが、各対立遺伝子について正確な配列を明らかにすることはできない。この解析から、7匹全ての胎仔は、GGTA1について単一の対立遺伝子改変を有すると思われる。
図18Bには、妊娠2の胎仔DNA試料からの胎仔1~5(それぞれ、配列番号331~335)についての結果が、参照および標的遺伝子配列(それぞれ、配列番号329~330)にアラインされて示されている。胎仔1、3、4および5は、GGTA1標的部位から3ヌクレオチド切断された。胎仔2は、サンガーシーケンシングで可変性を有した。これは、DNA突然変異の複雑な可変性または低い試料の質を示唆する。しかし、胎仔DNA鋳型の質は、上記のGGTA1遺伝子スクリーニング実験の生成に十分なものであった。
【0111】
【
図19A】
図19A~19Bは、NLRC5(コンセンサス配列)標的領域のPCR増幅に付された2匹の別々の同腹仔の胎仔細胞から単離されたDNAのシーケンシング(妊娠1:
図19Aまたは妊娠2:
図19B)を示す図である。得られたアンプリコンを、1%アガロースゲル上で分離した。アンプリコンを、各反応からのフォワードプライマーを単独で使用してサンガーシーケンシングによって解析もした。
図19Aには、妊娠1の胎仔からの胎仔1、3、5、6および7(それぞれ、配列番号338~342)についての結果が、参照および標的遺伝子配列(それぞれ、配列番号336~337)にアラインされて示されている。NLRC5標的部位の配列解析は、一貫性があるアラインメントを示すことができなかった。これは、シーケンシング反応における未知の複雑性、またはサンガーシーケンシング反応および解析を複雑にするNLRC5対立遺伝子間で異なるDNA改変を示唆する。
図19Bには、妊娠2の胎仔からの胎仔1~5(それぞれ、配列番号345~349)についての結果が、参照および標的遺伝子配列(それぞれ、配列番号343~344)にアラインされて示されている。胎仔1~5のNLRC5遺伝子アンプリコンは、全て、NLRC5遺伝子切断部位の120ヌクレオチド下流で切断された。
【0112】
【
図20】
図20A~20Bは、後肢生検材料から単離された胎仔DNA(wtおよび1~7(
図20A:妊娠1)または1~5(
図20B:妊娠2))からのデータを示す図である。標的遺伝子をPCRにより増幅し、PCR生成物を1%アガロースゲル上で分離し、蛍光DNA染色により可視化した。wtレーンに存在するアンプリコンバンドは、改変されていないDNAの配列を表す。アンプリコンサイズの増加または減少は、それぞれ、そのアンプリコン内での挿入または欠失を示唆する。1つの試料中の対立遺伝子間のDNA改変のバリエーションのため、バンドがより拡散して見える可能性がある。妊娠1(
図20A)は、7匹の胎仔をもたらし、その一方で妊娠2(
図20B)は、5匹の胎仔をもたらし、それらを、それぞれ、45日目および43日目に回収した。
図20Aの胎仔1、3および4におけるNLRC5ゲルでのようにバンドがないこと(下部のゲル)は、標的領域への改変が、DNA増幅プライマーの結合を破壊したことを示唆する。
図20A中のGGTA 1に関する全てのバンドの存在(上部のゲル)は、DNAの質が、NLRC5ターゲティングPCR反応中にDNAアンプリコンを生成するのに十分なものであったことを示唆する。妊娠1の胎仔1、2、4および5(
図20A)は、WTよりも大きいGGTA 1アンプリコンを有する。これは、標的領域内での挿入を示唆する。妊娠1の胎仔3(
図20A)では、GGTA 1アンプリコンは、WT対照よりも速く泳動した。これは、標的領域内での欠失を示唆する。妊娠1の胎仔6および7(
図20A)NLRC5アンプリコンは、WTよりも速く泳動した。これは、標的領域内での欠失を示唆する。胎仔1~5(
図20B)GGTA1アンプリコンは、サイズによって解釈することが困難であり、WT対照と比較して拡散していた。胎仔1~5(
図20B)NLRC5アンプリコンは、野生型対照と比較してサイズおよび密度が均一であった。
【0113】
【
図21A】
図21A~21Eは、ブタの2匹の別々の同腹仔からの胎仔の表現型解析を示す図(
図21A、21B、21C:妊娠1、または
図21D~21E:妊娠2)である。胎仔を45日目(妊娠1)または43日目(妊娠2)に回収し、DNAおよび培養細胞単離のために加工した。組織断片および細胞を2日間にわたり培養培地に播種して、胎仔細胞を接着および増殖させた。野生型細胞(遺伝子改変されていない胎仔細胞)ならびに妊娠1および2からの胎仔細胞を培養プレートから取り出し、Alexa fluor 488とコンジュゲートしているIB4レクチン、またはFITCとコンジュゲートしている抗ブタMHCクラスI抗体で標識した。フローサイトメトリー解析が、試験した細胞の標識強度を描示するヒストグラムとして示されている。胎仔細胞の各群の全強度の減少を強調するために、各々のパネルにWT細胞についてのヒストグラムが含まれている。妊娠1にはアルファGalおよびMHCクラスI標識の減少があり(
図21A)、それがピーク強度の減少として示されている。妊娠2(
図21B)では、胎仔1および3に、WT胎仔細胞と比較して、アルファgal標識の大きい減少、およびMHCクラス1標識の有意な低減がある。
【0114】
【
図22A】
図22A~22Cは、遺伝子クローンからの野生型胎仔細胞と比較して、胎仔3(妊娠1)からの細胞におけるMHCクラスI発現の低下の影響を示す図である。ブタ対照線維芽細胞およびNLRC5ノックアウト胎仔細胞に対するヒトCD8+細胞およびCD4 T細胞の増殖応答を測定した。
図22A。細胞に、増殖の評価の前に、CD4またはCD8としてゲートをかけた。
図22B。CD8 T細胞増殖は、改変されていない対照ブタ線維芽細胞と比較して、ブタ胎仔GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞による処置刺激後に低減された。ヒトレスポンダーを1:1比のブタ胎仔GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞で処置したとき、CD8 T細胞増殖のほぼ55%の低減が観察された。野生型胎仔細胞は、ヒトCD8 T細胞の17.2%増殖を誘発したが、胎仔3(妊娠1)からのMHCクラスI欠損細胞は、7.6%増殖しか誘導しなかった。
図22C。1:5および1:10比では、改変されていない胎仔細胞と比較して、CD8 T細胞増殖応答の差は見られなかった。研究した全ての比で、NLRC5ノックアウトブタ胎仔細胞および改変されていない対照ブタ胎仔細胞に応答しての、CD4 T細胞増殖の変化は観察されなかった。
【0115】
【
図23】
図23は、CRISPR/Cas技術を使用して産生されたGGTA1/NLRC5ノックアウト子ブタの生仔出生を示す図である。
【0116】
【
図24A】
図24A~24Cは、実施例6で産生された子ブタの遺伝子型のDNAゲル解析を示す図である。
図24Aは、実施例6での第1のPCR実験の結果を示す。
図24Bは、実施例6での第2のPCR実験の結果を示す。
図24Cは、実施例6での第3のPCR実験の結果を示す。
【0117】
【
図25A】
図25Aは、子ブタ#1のNLRC5遺伝子の一部についてのシーケンシングデータおよび配列コール(配列番号350)を示す図である。
図25Bは、子ブタ#2のNLRC5遺伝子の一部についてのシーケンシングデータおよび配列コール(配列番号351)を示す図である。
図25Cは、子ブタ#4のNLRC5遺伝子の一部についてのシーケンシングデータおよび配列コール(配列番号352)を示す図である。
図25Dは、子ブタ#5のNLRC5遺伝子の一部についてのシーケンシングデータおよび配列コール(配列番号353)を示す図である。
図25Eは、子ブタ#6のNLRC5遺伝子の一部についてのシーケンシングデータおよび配列コール(配列番号354)を示す図である。
図25Fは、子ブタ#7のNLRC5遺伝子の一部についてのシーケンシングデータおよび配列コール(配列番号355)を示す図である。
【0118】
【
図26A】
図26Aは、実施例8におけるRosa26の左アーム(配列番号356)を示す図である。
図26Bは、実施例8での相同組換えの構築物についてのDNAゲル解析を示す図である。
図26Cは、実施例8でのペアードリード解析に基づくアンプリコンのコンセンサス配列(配列番号357)を示す図である。
図26D(配列番号358)、
図26E(配列番号359)、および
図26F(配列番号360)は、実施例8におけるRosa26遺伝子座でのHLA-G1挿入についての相同性により導かれる組換え構築物を示す図である。
【0119】
【
図27A】
図27Aは、実施例8で生成されたRosa26ターゲティングオリゴを含有する適正なpx330プラスミド(配列番号362)、およびシーケンシングプライマー(出現順に、それぞれ、配列番号361および363)の配列を示す図である。
図27Bは、実施例8でのRosa26ターゲティングオリゴを含有する構築されたpx330プラスミドのシーケンシング結果を示す図である。配列番号364~366が、それぞれ、出現順に開示されている。
図27Cは、実施例8でのRosa26ターゲティングオリゴを含有する構築されたpx330プラスミドの制限消化を示す図である。
【0120】
【
図28】
図28は、実施例8で使用されたGalMetプラスミドおよびオリゴ(出現順に、それぞれ、配列番号367~368)のマップを示す図である。
【0121】
【
図29】
図29は、in vitroにおいて転写されたgRNAのin vitroにおけるCas9媒介性切断反応を示す図である。レーン1:切断されていないブタRosa26(2000bp)。レーン2:ブタRosa26の、デザインされたgRNAにより導かれるCas9切断;レーン3:切断されていないブタGGTA1;レーン4:GGTA1鋳型の、デザインされたgRNAにより導かれるCas9切断。
【0122】
【
図30】
図30は、実施例8で生成された、遺伝子改変された細胞のフローサイトメトリーによる分取を示す図である。
【0123】
【
図31】
図31は、実施例9で生成された、CD47のGGTA1遺伝子座への相同組換えの構築物(配列番号369)を示す図である。
【0124】
【
図32】
図32は、実施例9におけるGGTA1遺伝子座の右アーム(
図32A;配列番号370)および左アーム(
図32B;配列番号371)の配列を示す図である。
【0125】
【
図33A】
図33A、33Bおよび33Cは、実施例9での非染色細胞の分取を示す図である。
【0126】
【
図34A】
図34A、34Bおよび34Cは、実施例9でのpx330染色細胞の分取を示す図である。
【0127】
【
図35A】
図35A、35Bおよび35Cは、実施例9でのIB4染色細胞の分取を示す図である。
【0128】
【
図36A】
図36A、36Bおよび36Cは、実施例9でのCD47/IB4染色細胞の分取を示す図である。
【0129】
【
図37A】
図37A、37Bおよび37Cは、実施例9における分取されたIB4染色細胞CD47/IB4染色細胞を示す図である。
【0130】
【
図38A】
図38A、38Bおよび38Cは、実施例9における分取されたCD47/IB4染色細胞を示す図である。
【0131】
【
図39】
図39は、解析のための単一細胞および生細胞の選択に使用したゲーティング戦略を示す図である。全CD3+細胞を観察し、その集団内のCD4+およびCD8+細胞を実験パラメータのために選択し、カウントした。
【0132】
【
図40】
図40Aは、第2象限の非刺激細胞が、PHAで刺激された同じ細胞と同一の培養条件にあった場合、ほんのわずかな拡大しか示さなかったことを示す図である。
図40Bは、PHA刺激が、このアッセイで可能な最大刺激量を示唆する20.7%(CD3)、24.7%(CD4)、18.4%(CD8)および21%(CD20)増殖をリンパ球試料において誘導したことを示す図である。
【0133】
【
図41】
図41は、CD8+T細胞が、接着WTまたは遺伝子操作されたブタ線維芽細胞の培養物に100:1、50:1、10:1、または1:1の希釈度で添加された、共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。WT細胞は、50:1、10:1、および1:1比でT細胞を増殖するように刺激した。GM細胞#3および#4は、100:1、50:1、および10:1比ではT細胞を刺激する点でほとんど効果を示さなかった。これは、T細胞増殖応答の完全消失を示唆する。
【0134】
【
図42】
図42は、CD4+T細胞が、接着WTまたは遺伝子操作されたブタ線維芽細胞の培養物に100:1、50:1、10:1、およびは1:1の希釈度で添加された、共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。GM細胞#3および#4は、100:1、50:1、および10:1比ではT細胞を刺激する点でほとんど効果を示さなかった。これは、T細胞増殖応答の完全消失を示唆する。
【0135】
【
図43】
図43は、CD3+T細胞(全CD4およびCD8)が、接着WTまたは遺伝子操作されたブタ線維芽細胞の培養物に100:1、50:1、10:1、および1:1の希釈度で添加された、共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。GM細胞#3および#4は、100:1、50:1、および10:1比ではT細胞を刺激する点でほとんど効果を示さなかった。これは、T細胞増殖応答の完全消失を示唆する。
【0136】
【
図44】
図44は、GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞とともにインキュベートされたときの、野生型細胞と比較しておよそ50%のB細胞増殖阻害を示す図である。
【0137】
【
図45】
図45は、ヒトリンパ球をWTまたはGM細胞とともにインキュベートし、続いて、ブレフェルジンAを導入してエンドサイトーシスを遮断し、それに起因してエンドソームへの4つのサイトカインの細胞内蓄積が生じることによってサイトカインを測定したときの、共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。細胞の固定および透過処理により、サイトカインの蓄積の細胞内測定が可能になる。CD8 T細胞集団内で、IL2刺激は、100:1比で観察されず、CD107a、パーフォリンおよびグランザイムの中等度の低減が、100:1比で観察された。パーフォリンおよびグランザイムB二重陽性細胞は、100:1および10:1比で有意に阻害される。
【0138】
【
図46】
図46は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。CD8 T細胞集団内で、IL2は、10:1比で刺激され、遺伝子改変されたブタ細胞との培養ではおよそ40%低減された。CD107a、発現がおよそ25%低下された。パーフォリン発現は、およそ40%低下され、グランザイムは、このインキュベーション比で影響を受けなかった。
【0139】
【
図47】
図47は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。CD3細胞内で、CD107aは、およそ50%低減された。パーフォリンおよびグランザイムBも、遺伝子改変された細胞とのインキュベーション後に低減され、比較時には第2象限から後退する二重陽性細胞として表された。
【0140】
【
図48】
図48は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。CD4+T細胞は、GM細胞の存在下ではサイトカインを産生するために活性化される程度が低かった。IL2発現は、40%低下された。CD107aは、およそ50%低下された。パーフォリンおよびグランザイムBは、それぞれ、およそ50%および30%低減された。
【0141】
【
図49】
図49は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。CD3細胞の中では、IFNγ発現がリンパ球をGMブタ線維芽細胞と10:1比で培養されたとき、有意に低下された。TNFa発現は、WT細胞との培養では低かったが、GM細胞との培養での場合には低下された。この実験の中で、グランザイムBも、GM細胞とともにインキュベートされたとき、WT細胞と比較して劇的に低減された。
【0142】
【
図50】
図50は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。CD4細胞の中では、IFNγ発現は、リンパ球がGMブタ線維芽細胞と10:1比で培養されたとき、有意に低下された。TNFa発現は、WT細胞との培養では低かったが、GM細胞との培養での場合には低下された。この実験の中で、グランザイムBも、GM細胞とともにインキュベートされたとき、WT細胞と比較して劇的に低減された。
【0143】
【
図51】
図51は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。CD8細胞の中では、IFNγ発現は、リンパ球をGMブタ線維芽細胞が10:1比で培養されたとき、有意に低下された。TNFa発現は、WT細胞との培養では低かったが、GM細胞との培養での場合には低下された。この実験の中で、グランザイムBも、GM細胞とともにインキュベートされたとき、WT細胞と比較して劇的に低減された。
【0144】
【
図52】
図52は、ヒトリンパ球とWTまたは遺伝子改変されたブタ線維芽細胞のT細胞対FC比=10:1での共培養アッセイのフローサイトメトリー結果を示す図である。NK細胞(CD56+)は、細胞上でのMHCクラスI発現の非存在下で活性化されることが示されている。IFNγ(y軸)およびグランザイムB(x軸)は、WT細胞との共培養で発現されたが、GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞との共培養での場合には有意に低減された。TNFa発現に関しては、GM細胞を用いると発現が観察されなかったか、またはWT細胞と比較して変化が観察されなかった。
【0145】
【
図53】
図53は、WTブタ線維芽細胞とともにインキュベートされたヒトPBMCが、IL10を発現するCD4陽性T細胞の正常バックグラウンド百分率(11%)を有したことを示す図である。それぞれ#3および#4と表示されているGGTA1/NLRC5ノックダウン細胞(13.3および20.2%)は、IL10発現に対してわずかな影響しか及ぼさなかった。ブタにおける発現のために最適化されたヒト吸入HLAG1タンパク質を発現するブタ線維芽細胞は、ヒトCD4+T細胞の60.7%を、IL10を産生するように誘導した。
【0146】
【
図54】
図54は、可溶性HLA-G(100ng/ml)が、WTブタ島との培養でCD8+、CD8-およびPBMCの増殖を遮断することを示す図である。Q1およびQ2は、増殖(CFSE lo)および非増殖(CFSE hi)画分をそれぞれ示す。
【0147】
【
図55】
図55は、遺伝子改変されたブタ線維芽細胞(HLAG1発現)、WT、またはWTプラスPT85抗体とともに培養されたヒトT細胞のサイトカインおよびエフェクター機能分子解析のためのCD3、CD4またはCD8集団の解析に使用されたフローサイトメトリーゲーティング戦略を示す図である。
【0148】
【
図56】
図56は、野生型ブタ線維芽細胞、PT85抗体を伴うWTブタ線維芽細胞、またはHLAG1発現性ブタ線維芽細胞と共培養されたCD4集団のサイトメトリーデータを示す図である。サイトカインレベル(IL-2)およびエフェクター分子分泌の実質的減少が、MLR培養の10:および1:1の比でのPT85遮断またはHLAG1発現細胞に関して観察された。PT85遮断抗体を使用して、観察された免疫阻害効果のどの程度がNLRC5ノックアウト(MHCクラス1ヌル)またはGGTA1ノックアウトに起因するのかを判定した。PT85抗体は、正常WTアルファGal表面発現の存在下でNLRC5ノックアウトの効果を模倣した。細胞表面でのHLAG1タンパク質発現には、CD4+およびCD8+T細胞サイトカイン産生ならびにフェクター機能に対する顕著な阻害効果があった。
【0149】
【
図57】
図57は、野生型ブタ線維芽細胞、PT85抗体を伴うWTブタ線維芽細胞、またはHLAG1発現性ブタ線維芽細胞のいずれかと共培養されたCD8集団のサイトメトリーデータを示す図である。サイトカインレベル(IL-2)およびエフェクター分子分泌の実質的減少が、MLR培養の10:および1:1の比でのPT85遮断またはHLAG1発現細胞に関して観察された。PT85遮断抗体を使用して、観察された免疫阻害効果のどの程度がNLRC5ノックアウト(MHCクラス1ヌル)またはGGTA1ノックアウトに起因するのかを判定した。PT85抗体は、CD8集団内で正常WTアルファGal表面発現の存在下、NLRC5ノックアウトの効果を模倣した。細胞表面でのHLAG1タンパク質発現には、CD4+およびCD8+T細胞サイトカイン産生ならびにフェクター機能に対する顕著な阻害効果があった。細胞表面でのHLAG1タンパク質発現には、CD4+およびCD8+T細胞サイトカイン産生ならびにフェクター機能に対する顕著な阻害効果があった。
【0150】
【
図58】
図58は、野生型ブタ線維芽細胞、PT85抗体を伴うWTブタ線維芽細胞、またはHLAG1発現性ブタ線維芽細胞と共培養されたCD4集団のサイトメトリーデータを示す図である。サイトカインレベル(TNF-a、IFN-g)およびエフェクター分子分泌の実質的減少が、MLR培養の10:および1:1の比でのPT85遮断またはHLAG1発現細胞に関して観察された。PT85遮断抗体を使用して、観察された免疫阻害効果のどの程度がNLRC5ノックアウト(MHCクラス1ヌル)またはGGTA1ノックアウトに起因するのかを判定した。PT85抗体は、正常WTアルファGal表面発現の存在下でNLRC5ノックアウトの効果を模倣した。細胞表面でのHLAG1タンパク質発現には、CD4+およびCD8+T細胞サイトカイン産生ならびにフェクター機能に対する顕著な阻害効果があった。
【0151】
【
図59】
図59は、野生型ブタ線維芽細胞、PT85抗体を伴うWTブタ線維芽細胞、またはHLAG1発現性ブタ線維芽細胞と共培養されたCD8集団のサイトメトリーデータを示す図である。サイトカインレベル(TNF-a、IFN-g)およびエフェクター分子分泌の実質的減少が、MLR培養の10:および1:1の比でのPT85遮断またはHLAG1発現細胞に関して観察された。PT85遮断抗体を使用して、観察された免疫阻害効果のどの程度がNLRC5ノックアウト(MHCクラス1ヌル)またはGGTA1ノックアウトに起因するのかを判定した。PT85抗体は、正常WTアルファGal表面発現の存在下でNLRC5ノックアウトの効果を模倣した。細胞表面でのHLAG1タンパク質発現には、CD4+およびCD8+T細胞サイトカイン産生ならびにフェクター機能に対する顕著な阻害効果があった。
【0152】
【
図60】
図60は、細胞増殖/CFSE低増殖解析のフローゲーティングスキームを示す図である。
【0153】
【
図61】
図61AおよびBは、A.非刺激細胞またはB.PHA刺激細胞(陽性対照もしくは最大希釈)の中での、CD3、CD4またはCD8集団の細胞増殖(CFSE希釈)実験のフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0154】
【
図62】
図62は、T細胞増殖が、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後に、低減されたことを示す図である。ヒトレスポンダーが、10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置されたとき、T細胞(CD3)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていない/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。
【0155】
【
図63】
図63は、T細胞増殖が、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後に、低減されたことを示す図である。ヒトレスポンダーが、10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置されたとき、T細胞(CD4)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていない/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。
【0156】
【
図64】
図64は、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後の、T細胞増殖の低減を示す図である。ヒトレスポンダーが、10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置されたとき、T細胞(CD8)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていない/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。
【0157】
【
図65】
図65は、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後の、T細胞増殖の低減を示す図である。PT-85でのSLA-I遮断、またはHLA-G発現のどちらを用いても、B細胞増殖の実質的低減なし。
【0158】
【
図66】
図66は、IFNγが、主としてナチュラルキラー(NK)細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞により生得的免疫応答の一部として産生されることを示す図である。DKO#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。IFNγは、抗原特異的免疫発生後にCD4 Th1およびCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エフェクターT細胞によっても産生される。
【0159】
【
図67】
図67は、ヒト免疫細胞および対照とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中の、GMC-SF集団を示す図である。二重ノックアウト(DKO)細胞には、GM-CSF集団を刺激する能力がなかった。HLAG1は、発現の有意な低下を有した。DKO#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。
【0160】
【
図68】
図68は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の間の、IL-17 A発現を示す図である。DKOおよびHLAG1トランスジェニック細胞のいずれも、ヒトPMBCから炎症誘発性応答を誘導する能力がなかった。
【0161】
【
図69】
図69は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中での、フラクタルカイン発現を示す図である。HLAG1発現は、対数規模で発現されたとしても、T細胞活性化およびフラクタルカイン産生の有意な阻害剤のままである。
【0162】
【
図70】
図70は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中での、TNFアルファ発現を示す図である。
【0163】
【
図71】
図71は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中での、IL-6産生を示す図である。
【0164】
【
図72】
図72は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中での、IL-4産生を示す図である。
【0165】
【
図73】
図73は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中での、MIP 1アルファ産生を示す図である。
【0166】
【
図74】
図74は、ヒト免疫細胞とともに培養された、遺伝子改変された細胞の中での、MIP 1ベータ産生を示す図である。
【0167】
【
図75】
図75は、T細胞増殖が、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後に、低減されたことを示す図である。ヒトレスポンダーが、10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置されたとき、T細胞(CD3)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていない/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。
【0168】
【
図76】
図76は、T細胞増殖が、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後に低減されたことを示す図である。ヒトレスポンダーが、10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置されたとき、T細胞(CD4)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていない/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。
【0169】
【
図77】
図77は、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後の、T細胞増殖の低減を示す図である。ヒトレスポンダーが、10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置されたとき、T細胞(CD8)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていない/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。
【0170】
【
図78】
図78は、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後の、T細胞増殖の低減を示す図である。PT-85でのSLA-1遮断、またはHLA-G発現のどちらを用いても、B細胞増殖の実質的低減なし。
【0171】
【
図79】
図79は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のIFNガンマ発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図76B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図79A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0172】
【
図80】
図80は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のGM-CSFガンマ発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図80B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図80A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0173】
【
図81】
図81は、ヒトドナー#1混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のIL-2発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。
【0174】
【
図82】
図82は、2名のドナーからのヒト混合リンパ球(
図82AおよびB)と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のIL-17アルファ発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。DKOおよびHLA-G1トランスジェニック細胞のいずれも、ヒトPMBCから炎症誘発性応答を誘導する能力がなかった。
【0175】
【
図83】
図83は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のフラクタルカイン発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図83B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図83A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。HLA-G1発現は、対数規模で発現されたとしても、T細胞活性化およびフラクタルカイン産生の有意な阻害剤のままである。
【0176】
【
図84】
図84は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のTNFアルファ発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図84B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図84A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0177】
【
図85】
図85は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のIL-6発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図85B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図85A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0178】
【
図86】
図86は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のIL-4発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図86B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図86A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0179】
【
図87】
図87は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のMIP-1アルファ発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図87B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図87A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0180】
【
図88】
図88は、ヒト混合リンパ球と遺伝子改変されたブタ細胞との共培養後のMIP-1ベータ発現を示す図である。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLA-G1トランスジェニック細胞は、ヒトドナー#2については別の実験で(
図88B)扱ったため(但しドナー#1については、扱わなかった;
図88A)、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
【0181】
【
図89】
図89は、PX333ベクター内のCRISPR/Cas構築物を示す図である。
【0182】
【
図90】
図90は、構築物:GGTA1-10/B4GALNT2(条件2)、NLRC5-6/B4GALNT2(条件3)、GGTA1-10/B4GALNT2およびNLRC5-6/B4GALNT2(条件4)、条件1(WT):細胞のみを使用する、初代ブタ線維芽細胞のトランスフェクションの概略を示す図である。
【0183】
【
図91】
図91は、磁性ビーズ分取を使用する遺伝子改変選択を示す図である。
【0184】
【
図92】
図92は、SLA I+/IB4+(右上);SLA I+/IB4-(右下);SLA I-/IB4+(左上);およびSLA I-/IB4(左下)の細胞分取を使用する遺伝子改変選択を示す図である。
【0185】
【
図93】
図93は、条件2:GGTA1-10/B4GALNT2のフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0186】
【
図94】
図94は、条件3:NLRC5-6/B4GALNT2のフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0187】
【
図95】
図95は、条件4:GGTA1-10/B4GALNT2+NLRC5-6/B4GALNT2のフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0188】
【
図96】
図96は、分取後の条件2:GGTA1-10/B4GALNT2のフローサイトメトリー解析を示す図である。各集団を分取して、正しい集団が分取後に獲得され、他のゲートからの交差試料がないことを検証した。
【0189】
【
図97】
図97は、条件3:NLRC5-6/B4GALNT2のフローサイトメトリー解析を示す図である。各集団を分取して、正しい集団が分取後に獲得され、他のゲートからの交差試料がないことを検証した。
【0190】
【
図98】
図98は、条件4:GGTA1-10/B4GALNT2+NLRC5-6/B4GALNT2のフローサイトメトリー解析を示す図である。各集団を分取して、正しい集団が分取後に獲得され、他のゲートからの交差試料がないことを検証した。
【0191】
【
図99】
図99Aは、WT非染色、全細胞非染色、WT陰性、およびWTまたはPFF1とともに培養された条件#2 Gal陰性画分の中での、IB4レクチンのフローサイトメトリー解析を示す図である。
図99Bは、条件#4 Gal陰性画分、WT陽性、条件#2 Gal陽性画分、条件#3 Gal陽性画分、またはWTもしくはPFF1とともに培養された条件#4 Gal陽性画分の側方散乱対前方散乱の中での、IB4レクチンのフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0192】
【
図100】
図100は、条件1(WT)、2、3および4(それぞれ、左から右へ)の遺伝子改変された細胞についてのフローサイトメトリー定量を示す図である。
【0193】
【
図101】
図101Aは、WT非染色、全細胞非染色、WT陰性、およびWTまたはPFF1とともに培養された条件#2 Gal陰性画分の中での、SLAIのフローサイトメトリー解析を示す図である。
図101Bは、条件#4 Gal陰性画分、WT陽性、条件#2 Gal陽性画分、条件#3 Gal陽性画分、またはWTもしくはPFF1とともに培養された条件#4 Gal陽性画分の側方散乱対前方散乱の中での、SLAIのフローサイトメトリー解析を示す図である。
【0194】
【
図102】
図102は、A.条件3細胞およびB.条件4細胞の中での、SLA1(FITC)のフローサイトメトリー定量を示す図である。
【0195】
【
図103】
図103Aおよび103Bは、共焦点顕微鏡観察を示す図であって、A.WTブタ細胞ならびに遺伝子改変された条件2、3および4の細胞の撮像結果、B.撮像された、産生された物のスライドを示す図である。
【0196】
【
図104】
図104は、条件4の細胞株のNLRC5シーケンシングのシーケンシング結果を示す図である。配列番号372~376が、それぞれ、出現順に開示されている。
【0197】
【
図105】
図105は、GG1、Gal2-1、Gal2-2、Gal2-3、Gal2-4、Gal2-5、GGTA1-10、GGTA1-11、GGTA1-16、NL1、NLRC5-6、NLRC5-7、NLRC5-8についてのPCRオリゴおよび標的配列(2列目)の表を示す図である。配列番号377~404が、それぞれ、出現順に第2列に開示されている。配列番号405~413が、それぞれ、出現順に第4列に開示されている。配列番号414~422が、それぞれ、出現順に第6列に開示されている。
【0198】
【
図106】
図106は、CM1F、CM2RS、CM3RS、CM4RSについてのPCRオリゴおよび標的配列(2列目)の表を示す図である。配列番号423~430が、それぞれ、出現順に第2列に開示されている。配列番号431~434が、それぞれ、出現順に第4列に開示されている。配列番号435~437が、それぞれ、出現順に第6列に開示されている。
【0199】
【
図107】
図107Aは、B41、C3-9_1、C3-9_2、C3-5_1、C3-5_2、C3-15RS_1、C3-15RS_2についてのgRNAの標的配列の表を示す図である。配列番号438~447が、それぞれ、出現順に第2列に開示されている。
図107Bは、Gal1についての検出スクリーニングプライマーおよびそれらのそれぞれの配列の表を示す図である。配列番号448~453が、それぞれ、出現順に第2列に開示されている。
【0200】
【
図108】
図108は、Gal2-2(B4GALNT2)ベクターおよびクローニング戦略の概観を示す図である。ベクターの一部分についてのヌクレオチド配列(配列番号454)、ならびに2つのオリゴ:Gal2-2_フォワード(配列番号455)およびGal2-2_リバース(配列番号456)が開示されている。
【0201】
【
図109】
図109は、
図113のベクターおよびクローニング戦略に基づく適正な挿入時の予想Gal2-2(B4GALNT2)クローン配列(上のパネル)を示す図である。配列番号457~459が、それぞれ、出現順に開示されている。下のパネルには、構築されたプラスミド(配列番号462)のシーケンシング結果が、予想配列(配列番号460~461)に対してアラインされている。
【0202】
【
図110】
図110AおよびB。Aは、GGTA1遺伝子(配列番号464)内のGal2-1(B4GALNT2)標的部位と、2つのオリゴ(Gal2-1_スクリーン_フォワード_1、配列番号463;およびGal2-1_スクリーン_リバース_1、配列番号465)とを示す図である。Bは、ゲル上で観察されたGal2-1_スクリーン_1プライマーセット、Gal2-1_スクリーンプライマーセットPCR産物、および303bpの予想アンプリコンサイズを示す図である。予想アンプリコンサイズ産物で観察された強い単一のバンドを、配列検証し、スクリーニングに望ましいGal2-1標的切断部位を含むことが示された。
【0203】
【
図111】
図111Aおよび111B。Aは、CMAH遺伝子(配列番号467)内のCM1F標的部位と、2つのオリゴ(CM1F-1_スクリーン_フォワード_1、配列番号466;およびCM1F-1_スクリーン_リバース_1、配列番号468)とを示す図である。Bは、309bpのCM1F_スクリーン_1プライマーセット予想アンプリコンサイズ、ゲル上で観察されたCM1F_スクリーンプライマーセットPCR産物を示す図である。予想アンプリコンサイズで強いバンドが観察され、約600bpでぼんやりしたバンドも観察された。およそ300bpでの産物を、配列検証し、スクリーニングに望ましい標的切断部位を含むことが示された。
【0204】
【
図112】
図112Aおよび112B。Aは、NLRC5遺伝子(配列番号470)内NL1_第1の標的部位と、2つのオリゴ(NLR amp2フォワード、配列番号469;およびNLR amp2リバース、配列番号471)とを示す図である。Bは、NLR amp2プライマー予想アンプリコンサイズ:217bp、ゲル上で観察されたNLR amp2プライマーセットPCR産物、予想アンプリコンサイズで観察された強い単一のバンドを示す図である。産物を配列検証し、スクリーニングに望ましいNL1_第1の標的切断部位を含むことが示された。
【0205】
【
図113A】
図113A~113Iは、Gal2-2およびNLRC5遺伝子のエクソン1ゲノム改変を表す図である。Aは、Galのスクリーニングプライマーの位置を示す。B.Gal2-2スクリーン1プライマーを使用するGal2-2 PCRスクリーン。C.Gal2-2のシーケンス結果。配列番号472~478がそれぞれ、出現順に開示されている。D.GGTA1-10、11スクリーンプライマーを使用する、GGTA1-10 PCRスクリーン。E.NLRC5-6スクリーンプライマー位置。F.NLRC5-6セットA(NLRC5-678スクリーンプライマー)。G.セットAからのNLRC5-6シーケンス結果。配列番号479~486がそれぞれ、出現順に開示されている。H.NLRC5-6セットB(NLRC5-678フォワードおよびNLR1stスクリーン2リバーススクリーンプライマー)。I.NLRC5-6セットC(NLRC5-678フォワードおよびNLR1stスクリーン2リバーススクリーンプライマー)。
【0206】
【
図114】
図114A~Cは、CRISPR/Cas技術を使用して産生されたGGTA1/NLRC5ノックアウト/HLA-G1ノックイン子ブタの生仔出生を示す図である。
【0207】
【
図115】
図115は、HLA-G1のROSA遺伝子部位への挿入を確認するシーケンシング結果を示す図である。配列番号499が開示されている。
【0208】
【
図116】
図116は、実施例8におけるRosa26遺伝子座でのHLA-G1挿入のための、相同性により導かれる組換え構築物の適正な構築を確認するシーケンス結果を示す図である。配列番号500が開示されている。
【0209】
【
図117】
図117は、Rosa26遺伝子座へのHLA-G1または別の配列の挿入のための相同性ターゲティングベクターの構築の際に使用することができる、Rosa26遺伝子座に対応する左アームの配列を示す図である。配列番号501が開示されている。
【0210】
【
図118】
図118は、Rosa26遺伝子座などの遺伝子座へのHLA-G1の挿入のための相同性ターゲティングベクターの構築の際に使用することができる、改変されたHLA-Gコード配列の配列を示す図である。配列番号502が開示されている。
【0211】
【
図119】
図119は、Rosa26遺伝子座へのHLA-G1または別の配列の挿入のための相同性ターゲティングベクターの構築の際に使用することができる、Rosa26遺伝子座に対応する右アームの配列を示す図である。配列番号503が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0212】
開示の詳細な説明
以下の記載および実施例は、本発明の実施形態を詳細に例示する。本発明は、本明細書で記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって変化し得ることを理解されたい。当業者は、その範囲内に包含される本発明の多数の変形および改変が存在することを認識するであろう。
【0213】
移植片拒絶は、本明細書に記載される方法を含む免疫応答を和らげる方法によって予防することができる。例えば、最小の免疫抑制薬を使用せずにまたは使用して移植拒絶を予防するまたは移植拒絶までの時間を長期化するための本明細書に記載される1つの方法により、動物、例えばドナー非ヒト動物は、例えば遺伝子的に、変化し得る。その後、変化した動物、例えばドナー非ヒト動物の細胞、臓器、および/または組織を回収し、同種移植片または異種移植片においてそれを使用することができる。あるいは、動物、例えばヒトまたは非ヒト動物から細胞を抽出することができ(初代細胞を含むが、これに限定されない)、または細胞は、以前に抽出された動物細胞、例えば細胞株であり得る。これらの細胞を使用して、遺伝子的に変化した細胞を創出することができる。
【0214】
移植片拒絶(例えば、T細胞媒介性の移植片拒絶)は、慢性免疫抑制によって予防することができる。しかしながら、免疫抑制は費用がかかり、かつ深刻な副作用のリスクが付随する。慢性免疫抑制の必要性を回避するために、多面的なT細胞ターゲティング拒絶予防が開発された(
図1)が、これは、
i)MHCクラスIの機能的発現を欠いた遺伝子改変された移植片を利用し、それによって直接の特異性を有するCD8
+T細胞の活性化に干渉し、これらのCD8
+T細胞の細胞溶解エフェクター機能を妨げ、
ii)拮抗性抗CD40 mAb(および枯渇性抗CD20 mAbおよびmTORインヒビター)を含む誘導免疫療法を使用して抗ドナーT細胞のB細胞(および他のAPC)媒介性のプライミングおよび記憶生成に干渉し、かつ/または、
iii)アポトーシス性ドナー細胞ワクチンの周移植期(peritransplant)注入により、間接的な特異性を有する抗ドナーT細胞を枯渇させる。
【0215】
遺伝子改変された非ヒト動物(非ヒト霊長類動物、またはLaurasiatheria上目のメンバー、例えば有蹄動物である遺伝子改変された動物など)、それから単離された臓器、組織、または細胞、寛容化ワクチン、および、非ヒト動物から単離された臓器、組織、または細胞の移植によるそれを必要とするレシピエントにおいて疾患を処置または予防する方法が本明細書に記載される。非ヒト動物(非ヒト霊長類動物、またはLaurasiatheria上目のメンバー、例えば有蹄動物である遺伝子改変された動物など)から単離された臓器、組織、または細胞は、同じ種(同種移植)または異なる種(異種移植)のそれを必要とするレシピエントに移植することができる。レシピエントは、寛容化ワクチンおよび/または1もしくは複数の免疫モジュレート剤(例えば、抗体)を用いて寛容化され得る。異種移植を伴う実施形態では、レシピエントは、ヒトであり得る。処置され得る適する疾患は、レシピエントの臓器、組織、または細胞が欠損または損傷しており(例えば、心臓、肺、肝臓、静脈、皮膚、または膵島細胞)、かつレシピエントが非ヒト動物から単離された臓器、組織、または細胞の移植によって処置され得る任意の疾患である。
【0216】
ヒト白血球抗原G(HLA-G)HLA-Gは、強力な免疫阻害性および寛容原性分子であり得る。したがって、一態様では、HLA-Gタンパク質をコードする外因性核酸配列を含む遺伝子改変された非ヒト動物および細胞が本明細書で開示される。遺伝子改変された非ヒト動物および細胞はまた、本明細書で開示される遺伝子改変(例えば、ノックイン、ノックアウト、遺伝子破壊など)のいずれかなどの、1または複数のさらなる遺伝子改変も含み得る。
【0217】
定義
本明細書で使用される基準数値に関する「約」という用語およびその文法的同等物は、その数値自体およびその数値からプラスまたはマイナス10%の範囲の値を含み得る。例えば、「約10」という量は、10および9~11の任意の量を含む。例えば、基準数値に関する「約」という用語はまた、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%の範囲の値も含み得る。
【0218】
本明細書で使用される「非ヒト動物」という用語およびその文法的同等物は、ヒト以外の全ての動物種であって、天然動物の場合もあり、遺伝子改変された非ヒト動物の場合もある、非ヒト哺乳動物を含む動物種を含む。非ヒト哺乳動物は、有蹄動物、例えば、偶蹄類動物(例えば、ブタ、ペッカリー、カバ、ラクダ、ラマ、マメジカ(ネズミジカ)、シカ、キリン、プロングホーン、アンテロープ、ヤギ-アンテロープ(ヒツジ、ヤギなどを含む)、またはウシ)、または奇蹄類動物(例えば、ウマ、バク、およびサイ)など、非ヒト霊長類動物(例えば、サル、またはチンパンジー)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、またはネコを含む。非ヒト動物は、Laurasiatheria上目のメンバーであり得る。Laurasiatheria上目は、Waddellら、Towards Resolving the Interordinal Relationships of Placental Mammals、Systemic Biology 48巻(1号):1~5頁(1999年)に記載された哺乳動物群を含む場合がある。Laurasiatheria上目のメンバーは、Eulipotyphla(ハリネズミ、トガリネズミ、およびモグラ)、Perissodactyla(サイ、ウマ、およびバク)、Carnivora(肉食動物)、Cetariodactyla(偶蹄目動物およびクジラ目動物)、Chiroptera(コウモリ)、およびPholidota(センザンコウ)を含む場合がある。Laurasiatheria上目のメンバーは、本明細書に記載される有蹄動物、例えば奇蹄類動物または偶蹄類動物であり得る。有蹄動物は、ブタであり得る。メンバーは、ネコなどのCarnivoraのメンバー、またはイヌであり得る。場合によって、Laurasiatheria上目のメンバーは、ブタであり得る。
【0219】
本明細書で使用される「ブタ」という用語およびその文法的同等物は、偶蹄類動物のSuidae科に含まれるSus属の動物を指す場合がある。例えば、ブタは、野生ブタ、家畜ブタ、ミニブタ、Sus scrofaのブタ、Sus scrofa domesticusのブタ、または近交ブタであり得る。
【0220】
本明細書で使用される「トランス遺伝子」という用語およびその文法的同等物は、生物へと移入され得る遺伝子または遺伝子素材を指す場合がある。例えば、トランス遺伝子は、生物へと導入される遺伝子を含有する、DNAの連なりまたはセグメントであり得る。遺伝子または遺伝子素材は、異なる種に由来し得る。遺伝子または遺伝子素材は、合成されたものであり得る。トランス遺伝子を生物へと移入する場合、生物を、トランスジェニック生物と称する場合がある。トランス遺伝子は、トランスジェニック生物において、RNAまたはポリペプチド(例えば、タンパク質)を産生するその能力を保持し得る。トランス遺伝子は、タンパク質またはその断片(例えば、機能的断片)をコードするポリヌクレオチドを含む場合がある。トランス遺伝子のポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドであり得る。タンパク質の断片(例えば、機能的断片)は、タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは99%、または少なくともほぼこれらの比率を含む場合がある。タンパク質の断片は、タンパク質の機能的断片であり得る。タンパク質の機能的断片は、タンパク質の機能の一部または全てを保持する場合がある。
【0221】
「外因性核酸配列」という用語は、細胞外または動物外に由来する、細胞または動物へと移入された遺伝子または遺伝子素材を指す場合がある。外因性核酸配列は、合成により産生され得る。外因性核酸配列は、異なる種、または同じ種の異なるメンバーに由来し得る。外因性核酸配列は、内因性核酸配列の別のコピーであり得る。
【0222】
本明細書で使用される「遺伝子改変」という用語およびその文法的同等物は、核酸、例えば生物ゲノム内の核酸の1または複数の変更を指す場合がある。例えば、遺伝子改変は、遺伝子の変更、付加、および/または欠失を指す場合がある。遺伝子改変された細胞はまた、付加、欠失および/または変更された遺伝子を有する細胞を指す場合もある。遺伝子改変された細胞は、遺伝子改変された非ヒト動物に由来し得る。遺伝子改変された非ヒト動物由来の遺伝子改変された細胞は、そのような遺伝子改変された非ヒト動物から単離された細胞であり得る。遺伝子改変された非ヒト動物由来の遺伝子改変された細胞は、そのような遺伝子改変された非ヒト動物に由来する細胞であり得る。
【0223】
「遺伝子ノックアウト」または「ノックアウト」という用語は、「ノックアウト」されている遺伝子の発現を低減させるあらゆる遺伝子改変を指す場合がある。低減された発現は、発現がないことを含む場合がある。遺伝子改変は、ゲノム破壊を含む場合がある。
【0224】
本明細書で使用される「島」または「島細胞」という用語およびそれらの文法的同等物は、生物の膵臓に存在する内分泌(例えば、ホルモン産生)細胞を指す場合がある。例えば、島細胞は、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞、および/または膵ε細胞を含むがこれらに限定されない異なる種類の細胞を含む場合がある。島細胞はまた、細胞群、細胞クラスターなどを指す場合もある。
【0225】
本明細書で使用される「状態」状態という用語およびその文法的同等物は、疾患、事象、または健康状態の変化を指す場合がある。
【0226】
本明細書で使用される「糖尿病」という用語およびその文法的同等物は、長期間にわたる高血糖レベルによって特徴付けられる疾患を指す場合がある。例えば、本明細書で使用される「糖尿病」という用語およびその文法的同等物は、1型、2型、嚢胞性繊維症関連、外科的、妊娠糖尿病、およびミトコンドリア糖尿病を含むがこれらに限定されない全てのまたは任意の種類の糖尿病を指す場合がある。場合によって、糖尿病は、遺伝性糖尿病の形態である場合がある。
【0227】
本明細書で使用される「表現型」という用語およびその文法的同等物は、生物の観察可能な特徴または形質の複合物であって、その形状、発生、生化学的または生理学的特性、生物季節学、挙動、および挙動の結果などの複合物を指す場合がある。文脈に応じて、「表現型」という用語は、ある場合には、集団の観察可能な特徴または形質の複合物を指す場合がある。
【0228】
本明細書で使用される「~を破壊すること」という用語およびその文法的同等物は、例えば、欠失、挿入、突然変異、再配列、またはこれらの任意の組合せにより遺伝子を変更する過程を指す場合がある。例えば、遺伝子は、ノックアウトにより破壊することができる。遺伝子の破壊は、遺伝子の発現(例えば、mRNAおよび/またはタンパク質の発現)を部分的に低減することの場合もあり、これを完全に抑制することの場合もある。破壊はまた、阻害技術、例えば、shRNA、siRNA、マイクロRNA、ドミナントネガティブ、または遺伝子もしくはタンパク質の機能性もしくは発現を阻害する任意の他の手段などを含む場合がある。
【0229】
本明細書で使用される「遺伝子編集」という用語およびその文法的同等物は、ゲノムにおいて、1または複数のヌクレオチドを挿入するか、置き換えるか、または除去する遺伝子操作を指す場合がある。例えば、遺伝子編集は、ヌクレアーゼ(例えば、天然で存在するヌクレアーゼまたは人工的に操作されたヌクレアーゼ)を使用して実施することができる。
【0230】
本明細書で使用される「移植片拒絶」という用語およびその文法的同等物は、臓器移植のレシピエントの免疫応答が、移植された素材(例えば、細胞、組織、および/または臓器)の機能を損なうまたはそれを壊すのに十分なその移植された素材に対する反応を開始する1または複数の過程を指す場合がある。
【0231】
本明細書で使用される「超急性拒絶」という用語およびその文法的同等物は、移植された素材または組織が移植後最初の24時間以内に起こすまたは開始する拒絶を指す場合がある。例えば、超急性拒絶は、「急性液性拒絶」および「抗体媒介拒絶」を包含する場合があるが、これらに限定されない。
【0232】
本明細書で使用される「陰性ワクチン」、「寛容化ワクチン」という用語およびそれらの文法的同等物は、互換的に使用される場合がある。寛容化ワクチンは、適切な免疫療法の援護の下で使用された場合に、移植片に対してレシピエントを寛容化させるか、または移植片に対するレシピエントの寛容化に寄与する場合がある。これは、移植拒絶の予防を助ける場合がある。
【0233】
本明細書で使用される「レシピエント」、「対象」という用語およびそれらの文法的同等物は、互換的に使用される場合がある。レシピエントまたは対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。レシピエントまたは対象は、移植片、寛容化ワクチン、および/または本出願に開示される他の組成物を受けることになる、受けている、または受けたヒトまたは非ヒト動物であり得る。レシピエントまたは対象はまた、移植片、寛容化ワクチンおよび/または本出願に開示される他の組成物を必要とする場合がある。場合によって、レシピエントは、移植片を受けることになる、受けている、または受けたヒトまたは非ヒト動物であり得る。
【0234】
全体を通して開示される一部の数値は、例えば、「Xは少なくとも100;もしくは200[もしくは任意の数]、または少なくともほぼこれらの数」のように言及される。この数値は、その数それ自体および以下:
i)Xは少なくとも100;
ii)Xは少なくとも200;
iii)Xは少なくとも約100;および
iv)Xは少なくとも約200
の全てを含む。
全てのこれらの異なる組合せが、全体を通して開示される数値によって想定される。全ての開示される数値は、そうでないことを具体的に指し示さない限り、それが治療剤の投与について言及しようが、または日、月、年、重量、投与量などについて言及しようが、このように解釈されるべきである。
【0235】
全体を通して開示される範囲は、ある場合には、例えば、「Xは、1~2日目、もしくは2~3日目[もしくは任意の数値範囲]、またはほぼこれらの期間内に投与される」のように言及される。この範囲は、その数それ自体(例えば、範囲の端点)および以下:
i)Xは1日目から2日目の間に投与される;
ii)Xは2日目から3日目の間に投与される;
iii)Xは約1日目から2日目の間に投与される;
iv)Xは約2日目から3日目の間に投与される;
v)Xは1日目から約2日目の間に投与される;
vi)Xは2日目から約3日目の間に投与される;
vii)Xは約1日目から約2日目の間に投与される;および
viii)Xは約2日目から約3日目の間に投与される
の全てを含む。
全てのこれらの異なる組合せが、全体を通して開示される範囲によって想定される。全ての開示される範囲は、そうでないことを具体的に指し示さない限り、それが治療剤の投与について言及しようが、または日、月、年、重量、投与量などについて言及しようが、このように解釈されるべきである。
【0236】
本明細書で使用される「および/または」および「これらの任意の組合せ」という用語およびそれらの文法的同等物は、互換的に使用される場合がある。これらの用語は、任意の組合せが具体的に想定されることを伝える場合がある。単なる例示的な目的のために、以下の語句「A、B、および/またはC」または「A、B、C、またはこれらの任意の組合せ」は、「個々にA;個々にB;個々にC;AおよびB;BおよびC;AおよびC;ならびにA、B、およびC」を意味する場合がある。
【0237】
「または」という用語は、文脈が離接的使用であることに具体的に言及しない限り、接続的にまたは離接的に使用される場合がある。
【0238】
I.遺伝子改変された非ヒト動物
移植用の細胞、組織、および/または臓器のドナーであり得る遺伝子改変された非ヒト動物が本明細書で提供される。遺伝子改変された非ヒト動物は、任意の所望の種であり得る。例えば、本明細書に記載される遺伝子改変された非ヒト動物は、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物であり得る。遺伝子改変された非ヒト哺乳動物は、遺伝子改変された偶蹄類動物(例えば、ブタ、ペッカリー、カバ、ラクダ、ラマ、マメジカ(ネズミジカ)、シカ、キリン、プロングホーン、アンテロープ、ヤギ-アンテロープ(ヒツジ、ヤギなどを含む)、またはウシ)または遺伝子改変された奇蹄類動物(例えば、ウマ、バク、およびサイ)を含む遺伝子改変された有蹄動物、遺伝子改変された非ヒト霊長類動物(例えば、サル、またはチンパンジー)または遺伝子改変されたCanidae(例えば、イヌ)であり得る。遺伝子改変された非ヒト動物は、Laurasiatheria上目のメンバーであり得る。遺伝子改変された非ヒト動物は、非ヒト霊長類動物、例えば、サル、またはチンパンジーであり得る。非ヒト動物がブタの場合、ブタは、少なくとも1、5、50、100、もしくは300ポンド、または少なくともほぼこれらの重さである場合があり、例えば、ブタは、5ポンドから50ポンドの間;25ポンドから100ポンドの間;もしくは75ポンドから300ポンドの間、または約5ポンドから50ポンドの間;約25ポンドから100ポンドの間;もしくは約75ポンドから300ポンドの間であり得る。場合によって、非ヒト動物は、少なくとも1回、仔を産んだブタである。
【0239】
遺伝子改変された非ヒト動物は、任意の年齢であり得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物は、胎仔;1日または約1日~1ヶ月または約1ヶ月;1ヶ月または約1ヶ月~3ヶ月または約3ヶ月;3ヶ月または約3ヶ月~6ヶ月または約6ヶ月;6ヶ月または約6ヶ月~9ヶ月または約9ヶ月;9ヶ月または約9ヶ月~1年または約1年;1年または約1年~2年または約2年であり得る。遺伝子改変された非ヒト動物は、非ヒト胎仔動物、周生期非ヒト動物、新生非ヒト動物、離乳前非ヒト動物、若年非ヒト動物、または成体非ヒト動物であり得る。
【0240】
遺伝子改変された非ヒト動物は、生後少なくともある期間にわたって生存し得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物は、生後、少なくとも1日、2日、3日、1週、2週、3週、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、8ヶ月、1年、2年、5年、または10年にわたって生存し得る。複数の遺伝子改変された動物(例えば、ブタ)が同腹仔として生まれる場合がある。遺伝子改変された動物の同腹仔は、少なくとも30%、50%、60%、80%、または90%の生存率を有する場合があり、生存率は、例えば、生後に生存する同腹仔の動物数を同腹仔の動物の総数で割ったものである。
【0241】
遺伝子改変された非ヒト動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して、1または複数の遺伝子の低減された発現を含み得る。遺伝子発現の低減は、遺伝子の1または複数のアレルにおける突然変異に起因し得る。例えば、遺伝子改変された動物は、遺伝子の2またはそれよりも多くのアレルにおける突然変異を含み得る。場合によって、そのような遺伝子改変された動物は、二倍体動物であり得る。
【0242】
遺伝子改変された非ヒト動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して1または複数の遺伝子の低減された発現を含み得る。遺伝子改変された非ヒト動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して2またはそれよりも多くの遺伝子の低減された発現を含み得る。遺伝子改変された動物は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子においてゲノム破壊を有し得る。
【0243】
場合によって、遺伝子改変された動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して遺伝子の低減された発現を有する。場合によって、遺伝子改変された動物は、生後少なくとも22日生存する。他の場合には、遺伝子改変された動物は、生後、少なくとも23~30日、25~35日、35~45日、45~55日、55~65日、65~75日、75~85日、85~95日、95~105日、105~115日、115~225日、225~235日、235~245日、245~255日、255~265日、265~275日、275~285日、285~295日、295~305日、305~315日、315~325日、325~335日、335~345日、345~355日、355~365日、365~375日、375~385日、385~395日、もしくは395~400日、または少なくともほぼこれらの日数にわたり生存し得る。
【0244】
遺伝子改変されていない対応する動物は、遺伝子改変された動物と実質的に同一であるが、ゲノム中に遺伝子改変を有しない動物であり得る。例えば、遺伝子改変されていない対応する動物は、遺伝子改変された動物と同じ種の野生型動物であり得る。
【0245】
遺伝子改変された非ヒト動物は、レシピエントまたはそれを必要とする対象に移植するための細胞、組織または臓器を提供し得る。レシピエントまたはそれを必要とする対象は、ある状態を有することが既知であるか、またはそれが疑われるレシピエントまたは対象であり得る。状態は、本明細書で開示される方法および組成物によって、処置、予防、低減、消失、または増大され得る。レシピエントは、移植された細胞、組織または臓器に対して低い免疫応答を呈する場合、または免疫応答を呈しない場合がある。移植された細胞、組織または臓器は、レシピエント(例えば、ヒトまたは別の動物)のCD8+T細胞、NK細胞、またはCD4+T細胞によって認識され得ない場合がある。発現が低減される遺伝子は、MHC分子、MHC分子の発現調節因子、およびドナー非ヒト動物とレシピエント(例えば、ヒトまたは別の動物)との間で差次的に発現される遺伝子を含み得る。低減された発現は、1または複数の遺伝子のmRNA発現またはタンパク質発現であり得る。例えば、低減された発現は、1または複数の遺伝子のタンパク質発現であり得る。低減された発現はまた、発現がないことも含み得る。例えば、遺伝子の低減された発現を有する動物、細胞、組織または臓器は、遺伝子の発現(例えば、mRNAおよび/またはタンパク質発現)を有しない場合がある。遺伝子の発現の低減は、遺伝子の機能を不活化し得る。場合によって、遺伝子の発現が遺伝子改変された動物において低減された場合に、遺伝子の発現は遺伝子改変された動物において非存在である。
【0246】
遺伝子改変された非ヒト動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して1または複数のMHC分子の低減された発現を含み得る。例えば、非ヒト動物は、1または複数のブタ白血球抗原(SLA)クラスIおよび/またはSLAクラスII分子の低減された発現を有する有蹄動物、例えばブタであり得る。
【0247】
遺伝子改変された非ヒト動物は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して、主要組織適合性複合体(MHC)分子(例えば、MHC I分子および/またはMHC II分子)を調節する任意の遺伝子の低減された発現を含み得る。そのような遺伝子の低減された発現は、MHC分子(例えば、MHC I分子および/またはMHC II分子)の低減された発現および/または機能を結果としてもたらし得る。場合によって、発現が非ヒト動物において低減される1または複数の遺伝子は、以下:MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー群2Dリガンド、CXC化学受容体(CXCR)3リガンド、補体成分3(C3)、および主要組織適合性複合体IIトランスアクチベーター(CIITA)の1または複数を含み得る。場合によって、MHC I特異的エンハンセオソームの成分は、NLRC5であり得る。場合によって、MHC I特異的エンハンセオソームの成分はまた、調節因子X(RFX)(例えば、RFX1)、核転写因子Y(NFY)、およびcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)も含み得る。一部の例では、MHC I結合ペプチドのトランスポーターは、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)であり得る。場合によって、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンドは、MICAおよびMICBを含み得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物は、以下の遺伝子:NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、補体成分3(C3)、およびCIITAの1または複数の低減された発現を含み得る。遺伝子改変された動物は、以下の遺伝子:MHC I特異的エンハンセオソームの成分(例えば、NLRC5)、MHC I結合ペプチドのトランスポーター(TAP1)、およびC3の1または複数の低減された発現を含み得る。
【0248】
遺伝子改変された非ヒト動物は、非ヒト動物と非ヒト動物由来の細胞、組織、または臓器を受けるレシピエントとの間で異なるレベルで発現される1または複数の遺伝子の、遺伝子改変されていない対応物と比較して低減された発現を含み得る。例えば、1または複数の遺伝子は、非ヒト動物におけるよりもヒトにおいてより低いレベルで発現され得る。場合によって、1または複数の遺伝子は、非ヒト動物の内因性遺伝子であり得る。内因性遺伝子は、場合によって、別の種において発現されない遺伝子である。例えば、非ヒト動物の内因性遺伝子は、ヒトにおいて発現されない遺伝子であり得る。例えば、場合によって、1または複数の遺伝子の相同体(例えば、オーソログ)は、ヒトにおいて存在しない。別の例では、1または複数の遺伝子の相同体(例えば、オーソログ)は、ヒトにおいて存在し得るが、発現されない。
【0249】
場合によって、非ヒト動物はブタであってよく、かつレシピエントはヒトであってよい。これらの場合に、1または複数の遺伝子は、ブタにおいて発現されるがヒトにおいて発現されない任意の遺伝子であり得る。例えば、1または複数の遺伝子は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、およびβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)を含み得る。遺伝子改変された非ヒト動物は、B4GALNT2、GGTA1、またはCMAHの低減された発現を含む場合があり、低減された発現は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較したものである。遺伝子改変された非ヒト動物は、B4GALNT2およびGGTA1の低減された発現を含む場合があり、低減された発現は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較したものである。遺伝子改変された非ヒト動物は、B4GALNT2およびCMAHの低減された発現を含む場合があり、低減された発現は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較したものである。遺伝子改変された非ヒト動物は、B4GALNT2、GGTA1、およびCMAHの低減された発現を含む場合があり、低減された発現は、遺伝子改変されていない対応する動物と比較したものである。
【0250】
遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、TAP1、CXCL10、MICA、MICB、C3、CIITA、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2を含む本明細書で開示される遺伝子のいずれかの1または複数の、遺伝子改変されていない対応物と比較して低減された発現を含み得る。
【0251】
遺伝子改変された非ヒト動物は、発現が低減された、例えば遺伝子発現が低減された、1または複数の遺伝子を含み得る。発現が低減された1または複数の遺伝子は、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、クラスII主要組織適合性複合体トランスアクチベーター(CIITA)、ベータ-1,4-N-アセチル-ガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(B4GALNT2)、補体成分3(C3)、および/またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0252】
遺伝子改変された非ヒト動物は、発現が破壊される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれよりも多くの遺伝子を含み得る。様々な組合せを限定するためではなく例示的な目的のために、当業者は、遺伝子改変された非ヒト動物が個々に破壊されたNLRC5およびTAP1を有し得ることを想定することができる。遺伝子改変された非ヒト動物はまた、破壊されたNLRC5およびTAP1の両方を有し得る。遺伝子改変された非ヒト動物はまた、以下:破壊されたGGTA1、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、B4GALNT2、またはCIITA遺伝子の1または複数に加えてNLRC5およびTAP1を有する場合があり、例えば、「NLRC5、TAP1、およびGGTA1」または「NLRC5、TAP1、およびCMAH」が破壊され得る。遺伝子改変された非ヒト動物はまた、破壊されたNLRC5、TAP1、GGTA1、およびCMAHを有し得る。あるいは、遺伝子改変された非ヒト動物は、破壊されたNLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、およびCMAHを有し得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、破壊されたC3およびGGTA1を有し得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、C3、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、およびCXCL10の低減された発現を有し得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、TAP1、C3、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、およびCXCL10の低減された発現を有し得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、TAP1、C3、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、およびCXCL10の低減された発現を有し得る。B4GALNT2遺伝子は、Gal2-2またはGal2-1であり得る。
【0253】
移植されたヒト細胞上のMHCクラスI発現の欠如は、ナチュラルキラー(NK)細胞の受動的な活性化を引き起こし得る(Ohlenら、1989年)。MHCクラスI発現の欠如は、NLRC5、TAP1、またはB2M遺伝子の欠失に起因する可能性がある。NK細胞の細胞傷害性は、ヒトMHCクラス1遺伝子HLA-Eの発現によって克服される場合があり、NK細胞上の阻害性受容体CD94/NKG2Aを刺激して細胞殺滅を防止し得る(Weissら、2009年;Lilienfeldら、2007年;Sasakiら、1999年)。HLA-E遺伝子の発現の成功は、ヒトB2M(ベータ2ミクログロブリン)遺伝子とコグネイトのペプチドとの共発現に依存し得る(Weissら、2009年;Lilienfeldら、2007年;Sasakiら、1999年;Pascasovaら、1999年)。幹細胞のDNAにおけるヌクレアーゼ媒介性の切断は、相同性により導かれる修復による1または複数の遺伝子の挿入を可能とし得る。トランス遺伝子を挿入しながらHLA-EおよびhB2M遺伝子を連続してヌクレアーゼ媒介性のDNA切断の領域に組み込んで、標的遺伝子(例えば、NLRC5)の発現を防止することができる。
【0254】
遺伝子の発現レベルは、様々な程度まで低減され得る。例えば、1または複数の遺伝子の発現は、100%または約100%低減され得る。場合によって、1または複数の遺伝子の発現は、例えば改変されていない対照の発現と比較して、通常の発現の99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、もしくは50%、またはほぼこれらの比率だけ低減され得る。場合によって、1または複数の遺伝子の発現は、例えば改変されていない対照の発現と比較して、通常の発現の少なくとも99%~90%、89%~80%、79%~70%、69%~60%、59%~50%だけ、または少なくともほぼこれらの比率まで低減され得る。例えば、1または複数の遺伝子の発現は、通常の発現の少なくとももしくは少なくとも約90%、または、少なくとも90%~99%もしくは少なくともほぼこの比率だけ低減され得る。
【0255】
発現は、任意の公知の方法、例えば、PCR、リアルタイムPCR(例えば、Sybr-green)、および/またはホットPCRを含むがこれらに限定されない定量PCR(qPCR)などによって測定することができる。場合によって、1または複数の遺伝子の発現は、遺伝子の転写物のレベルを検出することによって測定することができる。例えば、1または複数の遺伝子の発現は、ノーザンブロッティング、ヌクレアーゼ保護アッセイ(例えば、RNアーゼ保護アッセイ)、逆転写PCR、定量PCR(例えば、リアルタイム定量的逆転写PCRなどのリアルタイムPCR)、in situハイブリダイゼーション(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH))、ドットブロット解析、ディファレンシャルディスプレイ、遺伝子発現のシリアル解析、サブトラクティブハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、ナノストリング、および/またはシーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)によって測定することができる。場合によって、1または複数の遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるタンパク質のレベルを検出することによって測定することができる。例えば、1または複数の遺伝子の発現は、タンパク質免疫染色、タンパク質免疫沈降、電気泳動(例えば、SDS-PAGE)、ウエスタンブロッティング、ビシンコニン酸アッセイ、分光光度法、質量分析、酵素アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ)、免疫組織化学、フローサイトメトリー、および/または免疫細胞化学(immunoctyochemistry)によって測定することができる。1または複数の遺伝子の発現はまた、顕微鏡法によっても測定することができる。顕微鏡法は、光学、電子、または走査型プローブ顕微鏡法であり得る。光学顕微鏡法は、明視野、斜光照明、交差偏光、分散染色、暗視野、位相コントラスト、微分干渉コントラスト、干渉反射顕微鏡法、蛍光(例えば、粒子、例えば細胞が免疫染色されている場合)、共焦点、単一平面照明顕微鏡法、ライトシート蛍光顕微鏡法、デコンボリューション、または連続時間符号化振幅顕微鏡法の使用を含み得る。MHC I分子の発現はまた、本明細書に記載される発現を試験するための任意の方法によっても検出することができる。
【0256】
破壊される遺伝子
本明細書に記載される異なる組合せの破壊された遺伝子を有する細胞、臓器、および/または組織は、レシピエントに移植された場合に拒絶をより受けにくい細胞、臓器、および/または組織を結果としてもたらし得る。例えば、本発明者らは、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、および/またはCIITAなどのある特定の遺伝子の破壊(例えば、発現の低減)は、移植片の生存可能性を増加させ得ることを見出した。場合によって、少なくとも2つの遺伝子が破壊される。例えば、GGTA1-10およびGal2-2が破壊され得る。場合によって、GGTA1-10、Gal2-2、およびNLRC5-6が破壊され得る。他の場合には、NLRC5-6およびGal2-2が破壊され得る。
【0257】
場合によって、破壊は、これらの遺伝子のみに限定されない。本出願内の遺伝子の遺伝子相同体(例えば、遺伝子の任意の哺乳動物形)を対象とすることが想定される。例えば、破壊される遺伝子は、本明細書で開示される遺伝子、例えば、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、および/またはCIITAに対する、一定の同一性および/または相同性を呈し得る。したがって、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率の相同性を呈する遺伝子、例えば、少なくとも50%から60%、60%から70%、70%から80%、80%から90%、もしくは90%から99%、または少なくともほぼこれらの比率の相同性(核酸またはタンパク質レベルで)を呈する遺伝子を破壊できることが想定される。また、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、99%、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率の同一性を呈する遺伝子、例えば、少なくとも50%から60%、60%から70%、70%から80%、80%から90%、もしくは90%から99%、または少なくともほぼこれらの比率の同一性(核酸またはタンパク質レベルで)を呈する遺伝子を破壊できることも想定される。当技術分野では、一部の遺伝子相同体は公知であるが、場合によって、相同体は公知ではない。しかし、哺乳動物の間で相同な遺伝子は、NCBIのBLASTなど、公表されているデータベースを使用して、核酸(DNAまたはRNA)配列またはタンパク質配列を比較することにより見出すことができる。例示的な遺伝子のゲノム配列、cDNAおよびタンパク質配列を表1に示す。
【0258】
遺伝子の抑制はまた、多数の方式で行うこともできる。例えば、遺伝子の発現は、ノックアウトにより減少させることもでき、遺伝子のプロモーターを変更することにより減少させることもでき、かつ/または干渉性RNAを投与すること(ノックダウン)により減少させることもできる。これは、生物レベルで行うこともでき、組織レベル、臓器レベル、および/または細胞レベルで行うこともできる。非ヒト動物内、細胞内、組織内、および/または臓器内で、1または複数の遺伝子をノックダウンする場合、1または複数の遺伝子は、RNA干渉性試薬、例えば、siRNA、shRNA、またはマイクロRNAを投与することにより減少させることができる。例えば、shRNAを発現させうる核酸を、細胞へと、安定的にトランスフェクトして、発現をノックダウンすることができる。さらに、shRNAを発現させうる核酸を、非ヒト動物のゲノムへと挿入し、これにより、非ヒト動物内の遺伝子をノックダウンすることもできる。
【0259】
破壊法はまた、ドミナントネガティブのタンパク質を過剰発現させるステップも含み得る。この方法は、機能的な野生型遺伝子の機能の、全体的な減殺を結果としてもたらし得る。加えて、ドミナントネガティブの遺伝子を発現させるステップは、ノックアウトおよび/またはノックダウンの表現型と類似の表現型を結果としてもたらし得る。
【0260】
ある場合には、終止コドンを、1または複数の遺伝子内に、挿入または創出(例えば、ヌクレオチドの置換により)することができ、これは、非機能的転写物または非機能的タンパク質を結果としてもたらし得る(ある場合には、ノックアウトと称する)。例えば、終止コドンを、1または複数の遺伝子の中央部において創出する場合、結果として得られる転写および/またはタンパク質は切断される可能性があり、非機能的であり得る。しかし、場合によって、切断は、活性(部分的に活性であるか、または過剰に活性の)タンパク質をもたらし得る。場合によって、タンパク質が過剰に活性である場合、これは、ドミナントネガティブタンパク質、例えば、野生型タンパク質の活性を破壊する突然変異体ポリペプチドを結果としてもたらし得る。
【0261】
このドミナントネガティブのタンパク質は、任意のプロモーターの制御下にある核酸内で発現させうる。例えば、プロモーターは、遍在性プロモーターであり得る。プロモーターはまた、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、および/または発生特異的プロモーターでもあり得る。
【0262】
次いで、ドミナントネガティブのタンパク質をコードする核酸を、細胞または非ヒト動物へと挿入することができる。任意の公知の方法を使用することができる。例えば、安定的なトランスフェクションを使用することができる。加えて、ドミナントネガティブのタンパク質をコードする核酸は、非ヒト動物のゲノムへも挿入することができる。
【0263】
非ヒト動物内の1または複数の遺伝子は、本分野において公知の任意の方法を使用して、ノックアウトすることができる。例えば、1または複数の遺伝子のノックアウトは、1または複数の遺伝子を、非ヒト動物のゲノムから欠失させることを含み得る。ノックアウトはまた、遺伝子配列の全部または一部を、非ヒト動物から除去することも含み得る。また、ノックアウトは、非ヒト動物のゲノム内の遺伝子の全部または一部を、1または複数のヌクレオチドで置き換えることを含み得ることも想定される。1または複数の遺伝子のノックアウトはまた、配列を、1または複数の遺伝子内に挿入し、これにより、1または複数の遺伝子の発現を破壊することも含み得る。例えば、配列の挿入は、終止コドンを、1または複数の遺伝子の中央部に作製し得る。配列の挿入はまた、1または複数の遺伝子のオープンリーディングフレームもシフトさせうる。場合によって、ノックアウトは、遺伝子の第1のエクソンにおいて実施され得る。他の場合には、ノックアウトは、遺伝子の第2のエクソンにおいて実施され得る。
【0264】
ノックアウトは、任意の細胞内、臓器内、および/または非ヒト動物の組織内で行うことができる。例えば、ノックアウトは、全身におけるノックアウトであることが可能であり、例えば、1または複数の遺伝子の発現が、非ヒト動物の全ての細胞内で減少される。ノックアウトはまた、非ヒト動物の、1または複数の細胞、組織、および/または臓器に特異的でもあり得る。これは、1または複数の遺伝子の発現を、1または複数の臓器、組織、または細胞型において選択的に減少させる、条件的ノックアウトにより達成することができる。条件的ノックアウトは、creを、細胞特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、および/または臓器特異的プロモーターの制御下で発現させる、Cre-lox系により実施することができる。例えば、1または複数の遺伝子を、1または複数の組織内または臓器内でノックアウトし得る(または発現を減少させ得る)が、この場合、1または複数の組織または臓器は、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、眼、網膜、生殖器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、または尿管、子宮、卵巣、精巣、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。また、1つの細胞型内の、1または複数の遺伝子も、ノックアウトし得る(または発現を減少させ得る)が、この場合、1または複数の細胞型は、毛胞、角化細胞、性腺刺激物質産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞(corticotrope)、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、ソマトトロピン産生細胞、プロラクチン産生細胞、クロム親和性細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜実質細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア(例えば、希突起膠細胞、星状細胞)、脳室上衣細胞、松果体細胞、肺細胞(例えば、I型肺細胞およびII型肺細胞)、クララ細胞、杯細胞、G細胞、D細胞、腸管クロム親和性細胞、胃主細胞、壁細胞、胃小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、杯細胞、パネート細胞、腸細胞、M細胞、肝細胞、肝星細胞(例えば、中胚葉に由来するクッパー細胞)、胆嚢細胞、腺房中心細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞、膵ε細胞、甲状腺(例えば、濾胞細胞)、副甲状腺(例えば、上皮小体主細胞)、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋サテライト細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハール介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞(例えば、糸球体内メサンギウム細胞および糸球体外メサンギウム細胞)、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞(stromal cell)、間質細胞(interstitial cell)、テロサイト、単純上皮細胞、有足細胞、腎近位尿細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、非繊毛性上皮細胞、胚細胞、精子、卵子、リンパ球、骨髄性細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中胚葉性血管芽細胞、周皮細胞、壁細胞、および/またはこれらの任意の組合せを含む。
【0265】
条件的ノックアウトは、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター、発生特異的プロモーターを使用することによる、誘導性ノックアウトであり得る。これは、任意の時点または特異的時点において、遺伝子/タンパク質の発現を消失させるか、または抑制することを可能とし得る。例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーターの場合、テトラサイクリンを、生後の任意の時点で非ヒト動物に与えることができる。非ヒト動物が子宮において成長している場合、妊娠中の母親にテトラサイクリンを与えることによってプロモーターを誘導することができる。非ヒト動物が卵の中で成長している場合、テトラサイクリンを注入するか、またはテトラサイクリン中でインキュベートすることによって、プロモーターを誘導することができる。テトラサイクリンが非ヒト動物に与えられると、テトラサイクリンはcreの発現を結果としてもたらし、そしてそれが目的の遺伝子の切出しを結果としてもたらす。
【0266】
cre/lox系はまた、発生特異的プロモーターの制御下も可能である。例えば、一部のプロモーターは、生後なおまたは思春期の開始後にオンとなる。これらのプロモーターは、cre発現を制御するのに使用することができ、したがって、発生特異的ノックアウトにおいて使用することができる。
【0267】
また、ノックアウト技術の任意の組合せを実行し得ることも想定される。例えば、組織特異的ノックアウトを、誘導技術と組み合わせ、組織特異的な誘導性ノックアウトを創出することができる。さらに、発生特異的プロモーターなどの他の系を、組織特異的プロモーターおよび/または誘導性ノックアウトと組み合わせて使用することもできる。
【0268】
場合によって、遺伝子編集は、ノックアウトを設計するために有用な場合がある。例えば、遺伝子編集は、CRISPR関連タンパク質(Casタンパク質、例えばCas9)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびメガヌクレアーゼ(maganucleases)を含むヌクレアーゼを使用して実施することができる。ヌクレアーゼは、天然で存在するヌクレアーゼの場合もあり、遺伝子改変ヌクレアーゼの場合もあり、かつ/または組換えヌクレアーゼの場合もある。例えば、CRISPR/Casシステムは、遺伝子編集システムとして適する場合がある。
【0269】
非ヒト動物の1または複数の遺伝子の全てではないアレルをノックアウトできることも想定される。例えば、二倍体非ヒト動物において、2つのアレルのうちの1つをノックアウトすることが想定される。これは、遺伝子の減少した発現および減少したタンパク質レベルを結果としてもたらし得る。発現の全体的な減少は、両方のアレルが機能している、例えば、ノックアウトおよび/またはノックダウンされていない場合と比較して、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、もしくは20%未満、またはほぼこれらの比率未満、例えば、99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、60%~50%、50%~40%、40%~30%、もしくは30%~20%、またはほぼこれらの比率であり得る。さらに、タンパク質レベルの全体的な減少は、発現の全体的な減少と同じであり得る。タンパク質レベルの全体的な減少は、両方のアレルが機能している、例えば、ノックアウトおよび/またはノックダウンされていない場合と比較して、約99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、もしくは20%、またはほぼこれらの比率未満、例えば、99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、60%~50%、50%~40%、40%~30%、もしくは30%~20%、またはほぼこれらの比率であり得る。しかしながら、非ヒト動物において1または複数の遺伝子の全てのアレルがノックアウトされ得ることも想定される。
【0270】
1または複数の遺伝子のノックアウトは、遺伝子型判定によって検証することができる。遺伝子型判定の方法は、シーケンシング、制限酵素断片長多型同定(RFLPI)、ランダム増幅多型検出(RAPD)、増幅断片長多型検出(AFLPD)、PCR(例えば、ロングレンジPCR、またはステップワイズPCR)、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ、およびDNAマイクロアレイまたはビーズへのハイブリダイゼーションを含み得る。例えば、遺伝子型判定は、シーケンシングによって実施することができる。場合によって、シーケンシングは、高忠実度シーケンシングであり得る。シーケンシングの方法は、マクサム・ギルバートシーケンシング、連鎖停止法(chain-termination methods)(例えば、サンガーシーケンシング)、ショットガンシーケンシング、およびブリッジPCRを含み得る。場合によって、遺伝子型判定は、次世代シーケンシングによって実施することができる。次世代シーケンシングの方法は、超並列シグネチャーシーケンシング、コロニーシーケンシング、パイロシーケンシング(例えば、454 Life Sciencesによって開発されたパイロシーケンシング)、単分子リアルタイムシーケンシング(single-molecule rea-time sequencing)(例えば、Pacific Biosciencesによる)、イオン半導体シーケンシング(例えば、Ion Torrent半導体シーケンシングによる)、シーケンシング・バイ・シンセシス(例えば、IlluminaによるSolexaシーケンシングによる)、ライゲーションによるシーケンシング(例えば、Applied BiosystemsによるSOLiDシーケンシング)、DNAナノボールシーケンシング、およびヘリスコープ単分子シーケンシングを含み得る。場合によって、本発明における非ヒト動物の遺伝子型判定は、全ゲノムのシーケンシング解析を含み得る。場合によって、動物における遺伝子のノックアウトは、遺伝子の一部または遺伝子全体のシーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)によって検証される場合がある。例えば、ブタにおけるNLRC5遺伝子のノックアウトは、NLRC5全体の次世代シーケンシングによって検証される場合がある。NLRC5の次世代シーケンシングは、例えば、フォワードプライマー5’-gctgtggcatatggcagttc-3’(配列番号1)およびリバースプライマー5’-tccatgtataagtctttta-3’(配列番号2)、またはフォワードプライマー5’-ggcaatgccagatcctcaac-3’(配列番号3)およびリバースプライマー5’-tgtctgatgtctttctcatg-3’(配列番号4)を使用して実施することができる。
【表1】
【0271】
トランス遺伝子
トランス遺伝子、または外因性核酸配列は、内因性遺伝子を、トランス遺伝子を伴わない場合より高いレベルで過剰発現させるために有用であり得る。さらに、外因性核酸配列は、外因性遺伝子を発現するために使用される場合がある。トランス遺伝子はまた、他の種類の遺伝子、例えばドミナントネガティブの遺伝子も包含し得る。
【0272】
Xタンパク質のトランス遺伝子とは、Xタンパク質をコードする外因性核酸配列を含むトランス遺伝子を指す場合がある。場合によって、本明細書で使用される、Xタンパク質をコードするトランス遺伝子は、Xタンパク質のアミノ酸配列の100%または約100%をコードするトランス遺伝子であり得る。場合によって、Xタンパク質をコードするトランス遺伝子は、Xタンパク質の全長または部分アミノ配列をコードする場合がある。例えば、トランス遺伝子は、Xタンパク質のアミノ酸配列のうちの、少なくとも99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、もしくは5%、または少なくともほぼこれらの比率、例えば、99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、もしくは60%~50%、またはほぼこれらの比率をコードし得る。トランス遺伝子の発現は最終的に、機能的タンパク質、例えば、部分的にまたは完全に機能的なタンパク質を結果としてもたらし得る。上記で論じたように、部分配列を発現させる場合、最終結果は、場合によって、非機能的タンパク質またはドミナントネガティブのタンパク質であり得る。非機能的タンパク質またはドミナントネガティブのタンパク質はまた、機能的(内因性または外因性)タンパク質と競合する場合もある。トランス遺伝子はまた、RNA(例えば、mRNA、shRNA、siRNA、またはマイクロRNA)もコードし得る。場合によって、トランス遺伝子が、mRNAをコードする場合、これを、ポリペプチド(例えば、タンパク質)へと翻訳することができる。したがって、トランス遺伝子は、タンパク質をコードし得ることが想定される。場合によって、トランス遺伝子は、タンパク質をコードする場合もあり、タンパク質の部分をコードする場合もある。加えて、タンパク質は、野生型ポリペプチドと比較して、1または複数の突然変異(例えば、欠失、挿入、アミノ酸の置換、または再配列)を有し得る。タンパク質は、天然ポリペプチドの場合もあり、人工ポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)の場合もある。トランス遺伝子は、2つまたはそれよりも多いポリペプチドにより形成される融合タンパク質をコードし得る。
【0273】
トランス遺伝子、または外因性核酸配列が、天然で存在するmRNA(例えば、別の種で通常見出されるmRNA)に基づくmRNAをコードする場合、mRNAは、5’または3’非翻訳領域に1または複数の改変を含み得る。1または複数の改変は、1もしくは複数の挿入、1(on)もしくは複数の欠失、または1もしくは複数のヌクレオチドの変更、またはこれらの組合せを含み得る。1または複数の改変は、mRNAの安定性を増加させ得る。1または複数の改変は、翻訳を阻害することまたはmRNAの分解を刺激することができるmiRNA分子などのmiRNA分子の結合部位を除去し得る。例えば、HLA-Gタンパク質をコードするmRNAを改変して、miR148ファミリーのmiRNAの結合部位(biding site)を除去することができる。この結合部位の除去は、mRNAの安定性を増加させ得る。
【0274】
トランス遺伝子は、トランス遺伝子の産物を産生するように、生物、細胞、組織、または臓器へと入れることができる。例えば、1または複数のトランス遺伝子を含む非ヒト動物が本明細書で開示される。1または複数のトランス遺伝子は、本明細書に記載される1または複数の破壊と組み合わせることができる。トランス遺伝子を細胞中に組み込むことができる。例えば、トランス遺伝子は、生物の生殖細胞系列へと組み込むことができる。細胞へと挿入されると、トランス遺伝子は、メッセンジャーRNA(mRNA)のコピーである、相補的DNA(cDNA)セグメントの場合もあり、ゲノムDNA(イントロンを伴うかまたは伴わない)の、その元の領域内に存在する遺伝子自体の場合もある。
【0275】
トランス遺伝子は、ある1つの種のタンパク質をコードし、かつ異なる種の動物においてタンパク質を発現するポリヌクレオチドを含む場合がある。例えば、トランス遺伝子は、ヒトタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み得る。そのようなポリヌクレオチドは、非ヒト動物(例えば、ブタ)においてヒトタンパク質(例えば、CD47)を発現するために使用され得る。場合によって、ポリヌクレオチドは、合成のものであってよく、例えば、配列および/または化学的特徴においてあらゆる天然ポリヌクレオチドとは異なってよい。
【0276】
種Xのタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、種Yの動物においてタンパク質を発現するように最適化されてもよい。コドン用法のバイアス(例えば、コードDNAにおける同義コドンの出現頻度の差異)が存在することがある。コドンは、ポリペプチド鎖中の特定のアミノ酸残基をコードするか、または翻訳の終結(終止コドン)のための一続きのヌクレオチド(例えば、3ヌクレオチドの一続き)である場合がある。種によってDNAコドン優先性が異なることがある。最適化されたポリヌクレオチドは、場合によって種Yのコドンを用いて、種Xのタンパク質をコードする場合があるため、ポリペプチドは、種Xのタンパク質をコードする天然遺伝子と比較して種Yにおいてより効率的にタンパク質を発現する場合がある。場合によって、最適化されたポリヌクレオチドは、タンパク質を、同じタンパク質をコードする種Xの天然遺伝子よりも、種Yにおいて少なくとも5%、10%、20%、40%、80%、90%、1.5倍、2倍、5倍、または10倍効率的に発現する場合がある。
【0277】
ヒト白血球抗原G(HLA-G)
【0278】
HLA-Gは、強力な免疫阻害性および寛容原性分子である場合がある。ヒト胎児におけるHLA-Gの発現は、ヒト胎児が母親の免疫応答を免れるのを可能とする場合がある。同種HLA-Gに対する刺激機能も応答もこれまで報告されていない。HLA-Gは、非古典的HLAクラスI分子であり得る。それは、その遺伝子の多様性、発現、構造、および機能によって古典的MHCクラスI分子とは異なり得る。HLA-Gは、低いアレル多型によって特徴付けられる場合がある。HLA-Gの発現は、トロホブラスト細胞、成体胸腺髄質、および幹細胞に制約され得る。しかしながら、HLA-Gの新発現(neo-expression)が、がん、多発性硬化症、炎症性疾患、またはウイルス感染症などの病的状態において誘導されることがある。
【0279】
HLA-Gの7つのアイソフォームが同定されている。異なるアイソフォームは、選択的スプライシングの産物であり得る。これらの4つは膜結合性(HLA-G1から-G4)である場合があり、3つは可溶性アイソフォーム(HLA-G5から-G7)である場合がある。HLA-G1およびHLA-G5アイソフォームは、β-2-ミクログロブリン(B2M)およびノナペプチドに非共有結合的に会合した3つの球状ドメイン(α1~α3)重鎖によって形成された古典的HLAクラスI分子の典型的な構造を示す。切断型アイソフォームは1つまたは2つのドメインを欠くが、それらは全てα1ドメインを含有し、またそれらは全てB2Mなしのアイソフォームである。
【0280】
HLA-Gは、例えば、ILT2/CD85j/LILRB1、ILT4/CD85d/LILRB2、またはKIR2DL4/CD158dといった阻害性受容体への直接的な結合を通じて免疫阻害機能を発揮し得る。
【0281】
ILT2は、B細胞、一部のT細胞、一部のNK細胞、および単球/樹状細胞によって発現され得る。ILT4は骨髄特異的である場合があり、その発現は単球/樹状細胞に制約される場合がある。KIR2DL4は、HLA-Gの特異的受容体であり得る。それはNK細胞のCD56brightサブセットによって発現され得る。ILT2およびILT4受容体は、α3ドメインおよびB2Mを通じて広範な古典的HLA分子に結合し得る。しかしながら、HLA-Gは、最も高い親和性のそれらのリガンドであり得る。
【0282】
ILT2-HLA-G相互作用は、例えば以下:i)NKおよび抗原特異的CD8+T細胞の細胞溶解機能、ii)CD4+T細胞の異種増殖性(alloproliferative)応答、およびiii)樹状細胞の成熟および機能の阻害を媒介し得る。ILT2-HLA-G相互作用は、ナイーブおよびメモリーの両方のB細胞の機能をin vitroおよびin vivoで妨げ得る。HLA-Gは、B細胞活性化のT細胞依存性および非依存性の両方のモデルでB細胞の増殖、分化、およびIg分泌を阻害し得る。HLA-Gは、B細胞のAb分泌のモジュレーションにおいて負のB細胞調節因子として作用し得る。HLA-Gはまた、調節性T細胞の分化を誘導する場合もあり、次いでそれが同種応答を阻害する場合があり、同種移植片の寛容にそれ自体関与することがある。
【0283】
腫瘍細胞によるHLA-Gの発現は、宿主Tリンパ球およびNK細胞によって媒介される免疫監視の回避を可能とし得る。したがって、悪性細胞によるHLA-Gの発現は、腫瘍浸潤NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、および抗原提示細胞(APC)の活性を阻害することによって腫瘍の免疫除去を防止することがある。
【0284】
HLA-G構造のバリエーション、特にそのモノマー/マルチマー状態およびB2Mとの会合は、HLA-Gの生物学的機能、その調節、ならびに阻害性受容体ILT2およびILT4とのその相互作用において役割を果たし得る。
【0285】
ILT2およびILT4阻害性受容体は、モノマー構造よりもHLA-Gマルチマーにより高い親和性を有することがある。HLA-G1およびHLA-G5(HLA-G1/5)は、α1ドメイン内の42位の固有のシステイン残基間でのジスルフィド結合(Cys42-Cys42)を通じてダイマーを形成し得る。B2M会合HLA-G1のダイマーは、モノマーよりも高い親和性でILT2およびILT4に結合することがある。ダイマーのこの増加した親和性は、α3ドメインのILT2およびILT4結合部位を露出させて、受容体に対してそれをよりアクセス可能にする傾斜した配向に起因することがある。ILT2およびILT4の両方は、F195およびY197残基のレベルでHLA-G
α3ドメインに結合し得る。
【0286】
ILT2およびILT4は、それらのHLA-Gアイソフォームに異なって結合する。ILT2は、B2M会合HLA-G構造のみを認識することがある一方、ILT4は、B2M会合およびB2MなしのHLA-G重鎖の両方を認識する可能性がある。B2Mなしの重鎖は、HLA-G発現細胞の培養物の上澄みにおいて細胞表面で検出されている。さらには、B2MなしのHLA-G重鎖は、ヒト絨毛トロホブラスト細胞によって産生される主な構造であり得る。(B2Mなしの)α1~α3構造の存在(HLA-G2およびG-6アイソフォーム)がヒト心臓移植レシピエントの循環中で示され、それはより良好な同種移植片受容に関連する可能性がある。α1~α3構造はILT4のみに結合するが、ILT2に結合しない可能性がある。しかしながら、α1~α3ダイマー(α1~α3モノマーの二量体化は42位の2つの遊離システイン間のジスルフィド結合を通じて達成される)は、同種ネズミ皮膚移植モデルにおいてin vivoで寛容原性であり得る。(α1~α3)×2の合成分子は、ILT4を発現しなかった腫瘍細胞株の増殖を阻害する可能性がある。これは、HLA-Gの未知の受容体の存在を指し示している可能性がある。
【0287】
したがって、一態様では、HLA-Gタンパク質をコードする外因性核酸配列を含む遺伝子改変された非ヒト動物および細胞が本明細書で開示される。遺伝子改変された非ヒト動物および細胞はまた、本明細書で開示される遺伝子改変(例えば、ノックイン、ノックアウト、遺伝子破壊など)のいずれかなどの、1または複数のさらなる遺伝子改変も含み得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物および細胞はまた、B2Mタンパク質をコードする別の外因性核酸配列も含み得る。
【0288】
非ヒト動物は、1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子を含む場合がある。ポリヌクレオチド挿入物は、1または複数のタンパク質またはその機能的断片をコードし得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物は、1または複数のタンパク質またはその機能的断片をコードする1または複数の外因性核酸配列を含み得る。場合によって、非ヒト動物は、MHC分子(例えば、MHC I分子および/またはMHC II分子)の発現および/または機能を低減できるタンパク質をコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子を含み得る。1または複数のトランス遺伝子は、MHC I形成サプレッサー、補体活性化の調節因子、NK細胞の阻害性リガンド、B7ファミリーのメンバー、CD47、セリンプロテアーゼインヒビター、ガレクチン、および/またはこれらの任意の断片をコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含み得る。場合によって、MHC I形成サプレッサーは、感染細胞タンパク質47(ICP47)であり得る。場合によって、補体活性化の調節因子は、分化クラスター46(CD46)、分化クラスター55(CD55)、および分化クラスター59(CD59)を含み得る。場合によって、NK細胞の阻害性リガンドは、白血球抗原E(HLA-E)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、およびβ-2-ミクログロブリン(B2M)を含み得る。NK細胞の阻害性リガンドは、HLA-Gのアイソフォーム、例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7であり得る。例えば、NK細胞の阻害性リガンドは、HLA-G1であり得る。HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)のトランス遺伝子は、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードするヌクレオチド配列を含むトランス遺伝子を指す場合がある。本明細書で使用する場合、場合によって、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードするトランス遺伝子は、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)のアミノ酸配列の100%または約100%をコードするトランス遺伝子であり得る。他の場合には、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードするトランス遺伝子は、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)の全長または部分配列をコードするトランス遺伝子であり得る。例えば、トランス遺伝子は、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)のアミノ酸配列の少なくとも99%、95%、90%、80%、70%、60%、もしくは50%、または少なくともほぼこれらの比率をコードし得る。例えば、トランス遺伝子は、HLA-Gのアミノ酸配列の90%をコードし得る。トランス遺伝子は、機能的な(例えば、部分的にまたは完全に機能的な)HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードするポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、およびB2Mの1または複数をコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含み得る。HLA-GのゲノムDNA配列は、代替的なスプライシングによって7つのアイソフォームを結果としてもたらす8つのエクソンを有し得る。HLA-G1アイソフォームは、エクソン7を除外し得る。HLA-G2アイソフォームは、エクソン3および7を除外し得る。イントロン2またはイントロン4の翻訳は、膜貫通ドメインの発現の喪失により分泌型アイソフォームを結果としてもたらし得る。HLA-Gのゲノム配列およびcDNAのマップを
図14A~14Bに示す。場合によって、B7ファミリーのメンバーは、CD80、CD86、プログラム死リガンド1(PD-L1)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、CD275、CD276、T細胞活性化インヒビター1(VTCN1)を含有するVセットドメイン、血小板受容体Gi24、天然の細胞傷害誘発受容体3リガンド1(NR3L1)、およびHERV-H LTR結合2(HHLA2)を含み得る。例えば、B7ファミリーのメンバーは、PD-L1またはPD-L2であり得る。場合によって、セリンプロテアーゼインヒビターは、セリンプロテアーゼインヒビター9(Spi9)であり得る。場合によって、ガレクチンは、ガレクチン-1、ガレクチン-2、ガレクチン-3、ガレクチン-4、ガレクチン-5、ガレクチン-6、ガレクチン-7、ガレクチン-8、ガレクチン9、ガレクチン-10、ガレクチン-11、ガレクチン-12、ガレクチン-13、ガレクチン-14、およびガレクチン-15を含み得る。例えば、ガレクチンは、ガレクチン9であり得る。
【0289】
遺伝子改変された非ヒト動物は、1または複数の遺伝子の低減された発現および本明細書で開示される1または複数のトランス遺伝子を含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、TAP1、CXCL10、MICA、MICB、C3、CIITA、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の1または複数の低減された発現、および、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、PD-L1、PD-L2、CD47、Spi9、およびガレクチン9の1または複数をコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子を含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、CD47(例えば、ヒトCD47)、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)、およびPD-L2(例えば、ヒトPD-L2)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、HLA-E、CD47(例えば、ヒトCD47)、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)、およびPD-L2(例えば、ヒトPD-L2)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、C3、CXC10、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、CD47(例えば、ヒトCD47)、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)、およびPD-L2(例えば、ヒトPD-L2)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、TAP1、C3、CXC10GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、CD47(例えば、ヒトCD47)、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)、およびPD-L2(例えば、ヒトPD-L2)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、C3、CXC10、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、HLA-E、CD47(例えば、ヒトCD47)、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)、およびPD-L2(例えば、ヒトPD-L2)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、TAP1、C3、CXC10、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、HLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、GGTA1の低減された発現、および、HLA-Eをコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含むトランス遺伝子を含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、GGTA1の低減された発現、および、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含むトランス遺伝子を含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、Rosa26プロモーター、例えばブタRosa26プロモーターと隣接して挿入されたHLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードする1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含むトランス遺伝子を含み得る。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、C3、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、およびガレクチン9を含む。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、TAP1、C3、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、およびガレクチン9を含む。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、TAP1、C3、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、およびガレクチン9を含む。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、C3、GGTA1、およびCXCL10の低減されたタンパク質発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1またはHLA-Eを含む。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、TAP1、C3、GGTA1、およびCXCL10の低減されたタンパク質発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1またはHLA-Eを含む。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物は、NLRC5、TAP1、C3、GGTA1、およびCXCL10の低減されたタンパク質発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1またはHLA-Eを含む。場合によって、本発明においてトランス遺伝子によってコードされるCD47、PD-L1、およびPD-L2は、ヒトCD47、ヒトPD-L1およびヒトPD-L2であり得る。
【0290】
遺伝子改変された非ヒト動物は、動物のゲノム中の遺伝子座に挿入されたトランス遺伝子を含み得る。場合によって、トランス遺伝子は、ターゲティングされた遺伝子のプロモーターと隣接してまたはターゲティングされた遺伝子の内側に挿入され得る。場合によって、トランス遺伝子の挿入は、ターゲティングされた遺伝子の発現を低減させ得る。ターゲティングされた遺伝子は、本明細書で開示されるその発現が低減される遺伝子であり得る。例えば、トランス遺伝子は、NLRC5、TAP1、CXCL10、MICA、MICB、C3、CIITA、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の1または複数のプロモーターと隣接してまたは1または複数の内側に挿入され得る。場合によって、トランス遺伝子は、GGTA1のプロモーターと隣接してまたはGGTA1の内側に挿入され得る。場合によって、トランス遺伝子(例えば、CD47トランス遺伝子)は、ある特定の種類の細胞においてトランス遺伝子が選択的に発現することを可能とするプロモーターと隣接して挿入され得る。例えば、CD47トランス遺伝子は、血液細胞および脾臓細胞においてCD47トランス遺伝子が選択的に発現することを可能とするプロモーターと隣接して挿入され得る。そのようなプロモーターの1つは、GGTA1プロモーターであり得る。
【0291】
例えば、非ヒト動物は、感染細胞タンパク質47(ICP47)、分化クラスター46(CD46)、分化クラスター55(CD55)、分化クラスター59(CD59)、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン9、これらの任意の機能的断片、またはこれらの任意の組合せの1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子(例えば、外因性核酸配列)を含み得る。ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、またはB2Mをコードするポリヌクレオチドは、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、またはガレクチン9のヒトタンパク質の1または複数をコードし得る。非ヒト動物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれよりも多くのトランス遺伝子を含み得る。例えば、非ヒト動物は、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン9、これらの任意の機能的断片、またはこれらの任意の組合せを含む1または複数のトランス遺伝子を含み得る。非ヒト動物はまた、ICP47をコードする単一のトランス遺伝子を含み得る。非ヒト動物は、ある場合には、CD59をコードする単一のトランス遺伝子を含み得る。非ヒト動物は、ある場合には、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)をコードする単一のトランス遺伝子を含み得る。非ヒト動物は、ある場合には、HLA-Eをコードする単一のトランス遺伝子を含み得る。非ヒト動物は、ある場合には、B2Mをコードする単一のトランス遺伝子を含み得る。非ヒト動物はまた、2またはそれよりも多くのトランス遺伝子を含む場合があり、2またはそれよりも多くのトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、および/またはこれらの任意の組合せである。例えば、2またはそれよりも多くのトランス遺伝子は、CD59およびCD46またはCD59およびCD55を含み得る。非ヒト動物はまた、3またはそれよりも多くのトランス遺伝子を含む場合があり、3またはそれよりも多くのトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、3またはそれよりも多くのトランス遺伝子は、CD59、CD46、およびCD55を含み得る。非ヒト動物はまた、4またはそれよりも多くのトランス遺伝子を含む場合があり、4またはそれよりも多くのトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、およびCD59を含み得る。非ヒト動物は、ICP47、CD46、CD55、およびCD59を含む4またはそれよりも多くのトランス遺伝子を含み得る。
【0292】
トランス遺伝子と遺伝子破壊との組合せを使用することができる。非ヒト動物は、1または複数の低減された遺伝子および1または複数のトランス遺伝子を含み得る。例えば、発現が低減された1または複数の遺伝子は、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、CIITA、および/またはこれらの任意の組合せのいずれか1つを含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、これらの任意の機能的断片、および/またはこれらの任意の組合せを含む場合がある。例えば、多様な組合せを例示するためだけに述べると、それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子は、NLRC5を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、TAP1を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5およびTAP1を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、およびGGTA1を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、B4GALNT2、およびCMAHを含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、およびCMAHを含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、ICP47を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、CD59を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、TAP1を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、CD59を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5およびTAP1を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、CD59を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、およびGGTA1を含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、CD59を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、B4GALNT2、およびCMAHを含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、CD59を含む。それらの発現が破壊される、1または複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、およびCMAHを含む場合があり、かつ、1または複数のトランス遺伝子は、CD59を含む。
【0293】
場合によって、遺伝子の第1のエクソンは、遺伝子改変される。例えば、遺伝子改変され得る遺伝子の1または複数の第1のエクソンは、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、CIITA、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される遺伝子であり得る。例えば、
図112Aは、NLCR5遺伝子の第1のエクソンをターゲティングしたガイドRNAを示す。他の場合には、遺伝子の第2のエクソンがターゲティングされる。例えば、
図105、
図106、および
図107は、第1および第2のエクソンをターゲティングするガイドRNAを作成するためのプライマー対の関連配列、および、シーケンシングによって遺伝子改変を決定するためのプライマー配列を示す。
【0294】
使用することができ、かつ具体的に想定されるトランス遺伝子は、本明細書で開示される遺伝子、例えば、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン9、これらの任意の機能的断片、および/またはこれらの任意の組合せに対してある特定の同一性および/または相同性を呈する遺伝子を含み得る。したがって、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、もしくは99%、または少なくともほぼこれらの比率の相同性、例えば、少なくとも99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、または少なくともほぼこれらの比率の相同性を(核酸またはタンパク質レベルで)遺伝子が呈する場合、それをトランス遺伝子として使用できることが想定される。少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、または少なくともほぼこれらの比率の同一性、例えば、少なくとも99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、または少なくともほぼこれらの比率の同一性を(核酸またはタンパク質レベルで)呈する遺伝子をトランス遺伝子として使用できることも想定される。
【0295】
非ヒト動物はまた、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれよりも多くのドミナントネガティブトランス遺伝子を含み得る。ドミナントネガティブトランス遺伝子の発現は、ドミナントネガティブトランス遺伝子の野生型対応物の発現および/または機能を抑制し得る。したがって、例えば、ドミナントネガティブトランス遺伝子Xを含む非ヒト動物は、発現が低減されたX遺伝子を含む異なる非ヒト動物と比較して類似の表現型を有し得る。1または複数のドミナントネガティブトランス遺伝子は、ドミナントネガティブNLRC5、ドミナントネガティブTAP1、ドミナントネガティブGGTA1、ドミナントネガティブCMAH、ドミナントネガティブB4GALNT2、ドミナントネガティブCXCL10、ドミナントネガティブMICA、ドミナントネガティブMICB、ドミナントネガティブCIITA、ドミナントネガティブC3、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0296】
また、遺伝子発現を抑制し得る、例えば、遺伝子をノックダウンし得る、1または複数の核酸をコードする、1または複数のトランス遺伝子を含む非ヒト動物も提示される。遺伝子発現を抑制するRNAは、shRNA、siRNA、RNAi、およびマイクロRNAを含み得るが、これらに限定されない。例えば、siRNA、RNAi、および/またはマイクロRNAを非ヒト動物に与えて遺伝子発現を抑制することができる。さらに、非ヒト動物は、shRNAをコードする、1または複数のトランス遺伝子を含み得る。shRNAは、特定の遺伝子に特異的であり得る。例えば、shRNAは、本出願で記載される任意の遺伝子であって、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、B4GALNT2、CIITA、C3、および/またはこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない遺伝子に特異的であり得る。
【0297】
対象に移植された場合に、遺伝子改変された非ヒト動物由来の細胞、組織、または臓器は、遺伝子改変されていない対応物由来の細胞、組織、または臓器と比較して、対象においてより低い免疫応答(例えば、移植片拒絶)を誘発し得る。場合によって、免疫応答は、T細胞(例えば、CD8+T細胞および/またはCD4+T細胞)およびNK細胞の活性化、増殖および細胞傷害性を含み得る。したがって、本明細書で開示される遺伝子改変された細胞の表現型は、細胞をNK細胞、T細胞(例えば、CD8+T細胞またはCD4+T細胞)と共培養し、NK細胞またはT細胞の活性化、増殖および細胞傷害性を試験することによって測定することができる。場合によって、遺伝子改変された細胞によって誘導されたT細胞またはNK細胞の活性化、増殖および細胞傷害性は、遺伝子改変されていない細胞によって誘導されたものより低い場合がある。場合によって、本発明における遺伝子改変された細胞の表現型は、酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイによって測定することができる。
【0298】
1または複数のトランス遺伝子は、異なる種に由来し得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、ヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、ブタ遺伝子、ウシ遺伝子、イヌ遺伝子、ネコ遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子、またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、トランス遺伝子は、ヒト遺伝子的配列を有するヒトに由来し得る。1または複数のトランス遺伝子は、ヒト遺伝子を含み得る。場合によって、1または複数のトランス遺伝子は、アデノウイルス遺伝子ではない。
【0299】
トランス遺伝子は、非ヒト動物のゲノムへと、ランダムに挿入することもでき、部位特異的に挿入することもできる。例えば、トランス遺伝子は、非ヒト動物のゲノム内のランダムな遺伝子座へと挿入することができる。これらのトランス遺伝子は、ゲノム中のいずれの場所に挿入されても完全に機能的であり得る。例えば、トランス遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードする場合もあり、内因性プロモーターの制御下にある位置へと挿入される場合もある。代替的に、トランス遺伝子は、遺伝子のイントロンもしくは遺伝子のエクソン、プロモーター、または非コード領域などの遺伝子へと挿入することができる。トランス遺伝子は、遺伝子の第1のエクソンに組み込まれる場合がある。
【0300】
ある場合には、トランス遺伝子の1つを超えるコピーを、ゲノム内の、1つを超えるランダムな遺伝子座へと挿入することができる。例えば、複数のコピーを、ゲノム内のランダムな遺伝子座へと挿入することができる。これは、トランス遺伝子を、ランダムに、1回挿入する場合と比較した、全発現の増大をもたらし得る。代替的に、トランス遺伝子のコピーを、ある遺伝子へと挿入し、トランス遺伝子の別のコピーを、異なる遺伝子へと挿入することもできる。トランス遺伝子は、非ヒト動物のゲノム内の特異的遺伝子座へと挿入され得るようにターゲティングすることができる。
【0301】
トランス遺伝子の発現は、1または複数のプロモーターにより制御することができる。プロモーターは、遍在性プロモーター、組織特異的プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。プロモーターと隣接して挿入されるトランス遺伝子の発現は、調節することができる。例えば、遍在性プロモーターの近傍に、またはこの隣にトランス遺伝子が挿入された場合、トランス遺伝子は、非ヒト動物の全ての細胞で発現されることになる。一部の遍在性プロモーターは、CAGGSプロモーター、hCMVプロモーター、PGKプロモーター、SV40プロモーター、またはRosa26プロモーターであり得る。
【0302】
プロモーターは、内因性プロモーターの場合もあり、外因性プロモーターの場合もある。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、内因性または外因性のRosa26プロモーターと隣接して挿入することができる。さらに、プロモーターは非ヒト動物に特異的であり得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、ブタRosa26プロモーターと隣接して挿入することができる。
【0303】
組織特異的プロモーター(これは細胞特異的プロモーターと同義であり得る)を使用して、発現の位置を制御することができる。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、組織特異的プロモーターと隣接して挿入することができる。組織特異的プロモーターは、FABPプロモーター、Lckプロモーター、CamKIIプロモーター、CD19プロモーター、ケラチンプロモーター、アルブミンプロモーター、aP2プロモーター、インスリンプロモーター、MCKプロモーター、MyHCプロモーター、WAPプロモーター、またはCol2Aプロモーターであり得る。例えば、プロモーターは、膵臓特異的プロモーター、例えばインスリンプロモーターであり得る。
【0304】
誘導性プロモーターも同様に、使用することができる。これらの誘導性プロモーターは、所望の場合、誘導剤を添加または除去することにより、オンにすることもでき、オフにすることもできる。誘導性プロモーターは、Lac、tac、trc、trp、araBAD、phoA、recA、proU、cst-1、tetA、cadA、nar、PL、cspA、T7、VHB、Mx、および/またはTrexであり得ることが想定される。
【0305】
本明細書に記載される非ヒト動物または細胞は、インスリンをコードするトランス遺伝子を含み得る。インスリンをコードするトランス遺伝子は、ヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、ブタ遺伝子、ウシ遺伝子、イヌ遺伝子、ネコ遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子、または任意の他の哺乳動物遺伝子であり得る。例えば、インスリンをコードするトランス遺伝子は、ヒト遺伝子であり得る。インスリンをコードするトランス遺伝子はまた、キメラ遺伝子、例えば部分的にヒト遺伝子であり得る。
【0306】
トランス遺伝子の発現は、トランス遺伝子の転写物のレベルを検出することによって測定することができる。例えば、トランス遺伝子の発現は、ノーザンブロッティング、ヌクレアーゼ保護アッセイ(例えば、RNアーゼ保護アッセイ)、逆転写PCR、定量PCR(例えば、リアルタイム定量的逆転写PCRなどのリアルタイムPCR)、in situハイブリダイゼーション(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH))、ドットブロット解析、ディファレンシャルディスプレイ、遺伝子発現のシリアル解析、サブトラクティブハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、ナノストリング、および/またはシーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)によって測定することができる。場合によって、トランス遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるタンパク質を検出することによって測定することができる。例えば、1または複数の遺伝子の発現は、タンパク質免疫染色、タンパク質免疫沈降、電気泳動(例えば、SDS-PAGE)、ウエスタンブロッティング、ビシンコニン酸アッセイ、分光光度法、質量分析、酵素アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ)、免疫組織化学、フローサイトメトリー、および/または免疫細胞化学によって測定することができる。場合によって、トランス遺伝子の発現は、顕微鏡法によって測定することができる。顕微鏡法は、光学、電子、または走査型プローブ顕微鏡法であり得る。場合によって、光学顕微鏡法は、明視野、斜光照明、交差偏光、分散染色、暗視野、位相コントラスト、微分干渉コントラスト、干渉反射顕微鏡法、蛍光(例えば、粒子、例えば細胞が免疫染色されている場合)、共焦点、単一平面照明顕微鏡法、ライトシート蛍光顕微鏡法、デコンボリューション、または連続時間符号化振幅顕微鏡法の使用を含む。
【0307】
トランス遺伝子の挿入は、遺伝子型判定によって検証することができる。遺伝子型判定の方法は、シーケンシング、制限酵素断片長多型同定(RFLPI)、ランダム増幅多型検出(RAPD)、増幅断片長多型検出(AFLPD)、PCR(例えば、ロングレンジPCR、またはステップワイズPCR)、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ、およびDNAマイクロアレイまたはビーズへのハイブリダイゼーションを含み得る。場合によって、遺伝子型判定は、シーケンシングによって実施され得る。場合によって、シーケンシングは、高忠実度シーケンシングであり得る。シーケンシングの方法は、マクサム・ギルバートシーケンシング、連鎖停止法(例えば、サンガーシーケンシング)、ショットガンシーケンシング、およびブリッジPCRを含み得る。場合によって、遺伝子型判定は、次世代シーケンシングによって実施され得る。次世代シーケンシングの方法は、超並列シグネチャーシーケンシング、コロニーシーケンシング、パイロシーケンシング(例えば、454 Life Sciencesによって開発されたパイロシーケンシング)、単分子リアルタイムシーケンシング(例えば、Pacific Biosciencesによる)、イオン半導体シーケンシング(例えば、Ion Torrent半導体シーケンシングによる)、シーケンシング・バイ・シンセシス(例えば、IlluminaによるSolexaシーケンシングによる)、ライゲーションによるシーケンシング(例えば、Applied BiosystemsによるSOLiDシーケンシング)、DNAナノボールシーケンシング、およびヘリスコープ単分子シーケンシングを含み得る。場合によって、本発明における非ヒト動物の遺伝子型判定は、全ゲノムのシーケンシング解析を含み得る。
【0308】
場合によって、動物におけるトランス遺伝子の挿入は、トランス遺伝子の一部またはトランス遺伝子全体をシーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)することによって検証することができる。例えば、ブタにおけるRosa26プロモーターと隣接したトランス遺伝子の挿入は、例えばフォワードプライマー5’-cgcctagagaagaggctgtg-3’(配列番号35)、およびリバースプライマー5’-ctgctgtggctgtggtgtag-3’(配列番号36)を使用したRosaのエクソン1~4の次世代シーケンシングによって検証することができる。
【表2】
【表3】
【0309】
非ヒト動物の集団
単一の非ヒト動物、そしてまた非ヒト動物の集団が本明細書で提供される。非ヒト動物の集団は、遺伝子的に同一であり得る。非ヒト動物の集団はまた、表現型が同一であり得る。非ヒト動物の集団は、表現型が同一かつ遺伝子的に同一であり得る。
【0310】
遺伝子改変され得る非ヒト動物の集団が本明細書でさらに提供される。例えば、集団は、少なくとも2、5、10、50、100、もしくは200、または少なくともほぼこれらの数の本明細書で開示される非ヒト動物を含み得る。集団の非ヒト動物は、同一の表現型を有し得る。例えば、集団の非ヒト動物は、クローンであり得る。非ヒト動物の集団は、同一の身体的特徴を有し得る。同一の表現型を有する集団の非ヒト動物は、同じトランス遺伝子(複数可)を含み得る。同一の表現型を有する集団の非ヒト動物はまた、発現が低減された同じ遺伝子(複数可)を含み得る。同一の表現型を有する集団の非ヒト動物はまた、発現が低減された同じ遺伝子(複数可)を含み、かつ同じトランス遺伝子(複数可)を含み得る。非ヒト動物の集団は、少なくとも2、5、10、50、100、もしくは200、または少なくともほぼこれらの数の、同一の表現型を有する非ヒト動物を含み得る。例えば、任意の特定の同腹仔の表現型は、同一の表現型を有し得る(例えば、一例では、1から約20のいずれかの非ヒト動物)。集団の非ヒト動物は、同一の表現型を有するブタであり得る。
【0311】
集団の非ヒト動物は、同一の遺伝子型を有し得る。例えば、集団中の非ヒト動物の染色体における全ての核酸配列は同一であり得る。同一の遺伝子型を有する集団の非ヒト動物は、同じトランス遺伝子(複数可)を含み得る。同一の遺伝子型を有する集団の非ヒト動物はまた、発現が低減された同じ遺伝子(複数可)を含み得る。同一の遺伝子型を有する集団の非ヒト動物はまた、発現が低減された同じ遺伝子(複数可)を含み、かつ同じトランス遺伝子(複数可)を含み得る。非ヒト動物の集団は、少なくとも2、5、50、100、もしくは200、または少なくともほぼこれらの数の、同一の遺伝子型を有する非ヒト動物を含み得る。集団の非ヒト動物は、同一の遺伝子型を有するブタであり得る。
【0312】
同一の遺伝子型および/または表現型を有する2またはそれよりも多くの非ヒト動物由来の細胞は、寛容化ワクチンにおいて使用することができる。場合によって、本明細書で開示される寛容化ワクチンは、同一の遺伝子型および/または表現型を有する2またはそれよりも多くの非ヒト動物(例えば、ブタ)由来の複数の細胞(例えば、遺伝子改変された細胞)を含み得る。移植片に対してレシピエントを免疫寛容化させる方法は、同一の遺伝子型または表現型を有する2またはそれよりも多くの非ヒト動物由来の複数の細胞(例えば、遺伝子改変された細胞)を含む寛容化ワクチンをレシピエントに投与することを含み得る。
【0313】
同一の遺伝子型および/または表現型を有する2またはそれよりも多くの非ヒト動物由来の細胞は、移植において使用することができる。場合によって、移植片(例えば、異種移植片または同種移植片)は、同一の遺伝子型および/または表現型を有する2またはそれよりも多くの非ヒト動物由来の複数の細胞を含み得る。本明細書に記載される方法の実施形態では、例えばそれを必要とする対象において疾患を処置する方法は、同一の遺伝子型および/または表現型を有する2またはそれよりも多くの非ヒト動物由来の複数の細胞(例えば、遺伝子改変された細胞)を移植することを含み得る。
【0314】
非ヒト動物の集団は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して作製することができる。場合によって、非ヒト動物の集団は、交配によって作製され得る。例えば、同系交配を使用して、表現型が同一または遺伝子的に同一である非ヒト動物または非ヒト動物の集団を作製することができる。例えば、同胞から同胞へ、または親から子へ、または孫から祖父母へ、または曾孫から曾祖父母への同系交配を使用することができる。連続するラウンドの同系交配は、最終的に、表現型が同一または遺伝子的に同一である非ヒト動物を産生し得る。例えば、少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、もしくは50世代、または少なくともほぼこれらの世代数の同系交配は、表現型が同一かつ/または遺伝子的に同一である非ヒト動物を産生し得る。10~20世代の同系交配の後、非ヒト動物の遺伝子の成立ちは少なくとも99%純粋であると考えられる。連続的な同系交配は、本質的に同質の非ヒト動物、または、非ヒト動物は同一の双子を有しない場合があるので同質に近い非ヒト動物に繋がり得る。
【0315】
交配は、同じ遺伝子型を有する非ヒト動物を使用して実施することができる。例えば、非ヒト動物は、発現が低減された同じ遺伝子(複数可)を有し、かつ/または同じトランス遺伝子(複数可)を有する。交配はまた、異なる遺伝子型を有する非ヒト動物を使用して実施することもできる。交配は、遺伝子改変された非ヒト動物および遺伝子改変されていない非ヒト動物、例えば、遺伝子改変された雌ブタおよび野生型雄ブタ、または遺伝子改変された雄ブタおよび野生型雌ブタを使用して実施することができる。所望の非ヒト動物を産生するために、交配の全てのこれらの組合せを使用することができる。
【0316】
遺伝子改変された非ヒト動物の集団はまた、クローニングによっても作製することができる。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物細胞の集団は、遺伝子的に同一または表現型が同一の個々の非ヒト動物の類似の集団を無性的に産生することができる。クローニングは、双胎形成(例えば、胚から1または複数の細胞を分離し、それを新たな胚に成長させる)、体細胞核移入、または人工授精などの様々な方法によって実施することができる。方法のさらなる詳細は、本開示の全体を通して提供される。
【0317】
II.遺伝子改変された細胞
疾患を処置または予防するために使用できる1または複数の遺伝子改変された細胞が本明細書で開示される。これらの遺伝子改変された細胞は、遺伝子改変された非ヒト動物由来のものであり得る。例えば、上記に開示された遺伝子改変された非ヒト動物を1または複数の細胞が単離されるようにプロセシングして、単離された遺伝子改変された細胞を産生することができる。これらの単離された細胞はまた、場合によって、さらに遺伝子改変された細胞であり得る。しかしながら、細胞は、例えば、改変されたまたは改変されていないヒトまたは非ヒト動物の細胞を使用して動物の外側で、ex vivoで改変され得る。例えば、細胞(ヒトおよび非ヒト動物の細胞を含む)は、培養物中で改変され得る。遺伝子改変された細胞を使用して、本明細書に記載される遺伝子改変された非ヒト動物を生成できることも想定される。場合によって、遺伝子改変された細胞は、遺伝子改変された動物から単離され得る。場合によって、遺伝子改変された細胞は、遺伝子改変されていない動物由来の細胞に由来し得る。細胞の単離は、初代細胞を単離して培養する方法を含む、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。遺伝子改変された細胞はヒトから抽出されたものではないことが具体的に想定される。
【0318】
したがって、全体を通して記載される様々な作製方法を含む遺伝子改変された非ヒト動物に適用できるあらゆることが、本発明においても当てはまり得る。例えば、破壊される全ての遺伝子および過剰発現されるトランス遺伝子は、本発明において使用される遺伝子改変された細胞の作製に適用することができる。さらに、全体を通して記載される遺伝子改変された非ヒト動物における遺伝子の遺伝子型および発現を試験する任意の方法は、細胞の遺伝子改変を試験するために使用することができる。
【0319】
遺伝子改変された細胞は、Laurasiatheria上目のメンバーまたは非ヒト霊長類動物に由来し得る。そのような遺伝子改変された細胞は、Laurasiatheria上目のメンバーまたは非ヒト霊長類動物から単離され得る。あるいは、そのような遺伝子改変された細胞は、Laurasiatheria上目のメンバーまたは非ヒト霊長類動物に由来し得る。例えば、遺伝子改変された細胞は、例えば、細胞培養または遺伝子改変の方法を使用して、Laurasiatheria上目のメンバーまたは非ヒト霊長類動物から単離された細胞から作製することができる。
【0320】
遺伝子改変された細胞、例えば、遺伝子改変された動物由来の細胞またはex vivoで作製された細胞を解析および分取することができる。場合によって、遺伝子改変された細胞は、フローサイトメトリー、例えば蛍光活性化細胞分取によって解析および分取することができる。例えば、トランス遺伝子を発現する遺伝子改変された細胞は、トランス遺伝子によってコードされるポリペプチドを認識する標識(例えば、蛍光標識)に基づくフローサイトメトリーを使用して検出し、他の細胞から精製することができる。
【0321】
場合によって、遺伝子改変された細胞は、免疫応答を低減し、阻害し、または消失させることができる。例えば、遺伝子改変は、細胞のエフェクター機能を減少させ、増殖を減少させ、持続性を減少させ、かつ/または免疫細胞においてグランザイムBおよびCD107アルファなどの細胞溶解エフェクター分子の発現を低減させる場合がある。免疫細胞は、単球および/またはマクロファージであり得る。場合によって、IFN-gなどのT細胞由来サイトカインは、IFN-ガンマの分泌を介してマクロファージを活性化させ得る。場合によって、T細胞活性化が阻害され、マクロファージの阻害もまた引き起こし得る。
【0322】
非ヒト動物およびヒト幹細胞を含む幹細胞を使用することができる。幹細胞は、生存する人間を生成する能力を有しない。例えば、幹細胞は、生存する人間を生成できないように非可逆的に分化し得る。幹細胞は、生存するヒトを生成できない限り、多能性であり得る。
【0323】
遺伝子改変された非ヒト動物に関するセクションにおいて上記で論じたように、遺伝子改変された細胞は、発現が低減された1または複数の遺伝子を含み得る。遺伝子改変された非ヒト動物について上記で開示されるものと同じ遺伝子を破壊することができる。例えば、遺伝子改変された細胞は、発現が破壊される(例えば、低減された)1または複数の遺伝子を含み、1または複数の遺伝子は、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、CIITAおよび/またはこれらの任意の組合せを含む。さらに、遺伝子改変された細胞は、1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子を含み得る。例えば、遺伝子改変された細胞は、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン9、これらの任意の機能的断片、またはこれらの任意の組合せの1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子を含み得る。遺伝子改変された細胞は、1または複数の低減された遺伝子および1または複数のトランス遺伝子を含み得る。例えば、発現が低減された1または複数の遺伝子は、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、CIITA、および/またはこれらの任意の組合せのいずれか1つを含む場合があり、かつ1または複数のトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン9、これらの任意の機能的断片、および/またはこれらの任意の組合せを含む場合がある。場合によって、遺伝子改変された細胞は、NLRC5、C3、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、および、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、およびガレクチン9を含む。場合によって、遺伝子改変された細胞は、TAP1、C3、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、およびガレクチン9を含む。場合によって、遺伝子改変された細胞は、NLRC5、TAP1、C3、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現、ならびに、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含み得、タンパク質は、HLA-G1、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、およびガレクチン9を含む。場合によって、本発明においてトランス遺伝子によってコードされるCD47、PD-L1、およびPD-L2は、ヒトCD47、ヒトPD-L1およびヒトPD0-L2であり得る。場合によって、遺伝子改変された細胞は、その表面をCD47でコーティングされ得る。細胞の表面におけるCD47のコーティングは、細胞表面をビオチン化した後、ビオチン化された細胞をストレプトアビジン-CD47キメラタンパク質と共にインキュベートすることによって達成することができる。コーティングされるCD47は、ヒトCD47であり得る。
【0324】
遺伝子改変された非ヒト動物に関するセクションにおいて上記で論じたように、遺伝子改変された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれよりも多くの破壊された遺伝子を含み得る。遺伝子改変された細胞はまた、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれよりも多くのトランス遺伝子も含み得る。
【0325】
上記で詳細に論じたように、遺伝子改変された細胞、例えばブタ細胞はまた、ドミナントネガティブトランス遺伝子、および/または1または複数のノックダウン遺伝子を発現するトランス遺伝子を含み得る。これも上記で論じたように、トランス遺伝子の発現は、1または複数のプロモーターによって制御され得る。
【0326】
遺伝子改変された細胞は、組織または臓器由来の1または複数の細胞であってよく、組織または臓器は、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、目、網膜、生殖器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、または尿管、子宮、卵巣および精巣を含む。例えば、遺伝子改変された細胞、例えばブタ細胞は、脳、心臓、肝臓、皮膚、腸、肺、腎臓、眼、小腸、または膵臓由来のものであり得る。場合によって、遺伝子改変された細胞は、膵臓由来のものであり得る。より具体的には、膵臓細胞は、島細胞であり得る。さらに、1または複数の細胞は、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞(例えば、PP細胞)、または膵ε細胞であり得る。例えば、遺伝子改変された細胞は、膵β細胞であり得る。本明細書で開示される組織または臓器は、1または複数の遺伝子改変された細胞を含み得る。組織または臓器は、本出願に記載される1または複数の遺伝子改変された動物由来のものであってよく、例えば、1または複数の遺伝子改変されたブタ由来の膵島などの膵臓組織であり得る。
【0327】
遺伝子改変された細胞、例えばブタ細胞は、1または複数の種類の細胞を含んでよく、1または複数の種類の細胞は、毛胞、角化細胞、性腺刺激物質産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞(corticotropes)、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、ソマトトロピン産生細胞、プロラクチン産生細胞、クロム親和性細胞、濾胞傍細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜実質細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア(例えば、希突起膠細胞、星状細胞)、脳室上衣細胞、松果体細胞、肺胞上皮細胞(例えば、I型肺胞上皮細胞、およびII型肺胞上皮細胞)、クララ細胞、杯細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、胃の主細胞、壁細胞、胃小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、杯細胞、パネート細胞、腸細胞、M細胞、肝細胞、肝星細胞(例えば、中胚葉に由来するクッパー細胞)、胆嚢細胞、腺房中心細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞(例えば、PP細胞)、膵ε細胞、甲状腺(例えば、濾胞細胞)、副甲状腺(例えば、上皮小体主細胞)、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、繊維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋サテライト細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハール介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞(例えば、糸球体内メサンギウム細胞および糸球体外メサンギウム細胞)、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞(stomal cell)、間質細胞(interstitial cell)、テロサイト、単純上皮細胞、有足細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、非繊毛性上皮細胞、胚細胞、精子、卵子、リンパ球、骨髄性細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中胚葉性血管芽細胞、および周皮細胞、壁細胞を含む。遺伝子改変された細胞は潜在的に、細胞療法において使用される任意の細胞であり得る。例えば、細胞療法は、糖尿病などの疾患に対する膵β細胞の補充または置換であり得る。
【0328】
遺伝子改変された細胞、例えばブタ細胞は、非ヒト動物由来のもの(例えば、抽出されたもの)であり得る。1または複数の細胞は、成熟した成体非ヒト動物由来のものであり得る。しかしながら、1または複数の細胞は、胎仔または新生仔の組織由来のものであってもよい。
【0329】
疾患に応じて、1または複数の細胞は、成体ドナー、例えば島細胞ドナーとして有用であるために十分な大きさに成長したトランスジェニック非ヒト動物由来のものであり得る。場合によって、非ヒト動物は、離乳の年齢を過ぎた動物であり得る。例えば、非ヒト動物は、少なくともまたは少なくとも約6ヶ月齢であり得る。場合によって、非ヒト動物は、少なくともまたは少なくとも約18ヶ月齢であり得る。非ヒト動物は、場合によって、生存して交配する年齢に達する。例えば、異種移植用の島は、新生仔(例えば、3~7日齢)または離乳前(例えば、14~21日齢)のドナーブタ由来のものであり得る。1または複数の遺伝子改変された細胞、例えばブタ細胞は、培養細胞であり得る。例えば、培養細胞は、野生型細胞または(本明細書に記載される)遺伝子改変された細胞由来のものであり得る。さらには、培養細胞は、初代細胞であり得る。初代細胞は、抽出され、例えば液体窒素中または-20℃~-80℃で、凍結され得る。培養細胞はまた、公知の方法によって不死化されてもよく、かつ、例えば液体窒素中または-20℃~-80℃で、凍結および保存されてもよい。
【0330】
本明細書に記載される遺伝子改変された細胞、例えばブタ細胞は、野生型の遺伝子改変されていない細胞が移植された場合と比較して、より低い拒絶のリスクを有し得る。
【0331】
ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン9、これらの任意の機能的断片、またはこれらの任意の組合せのポリヌクレオチド配列を含むベクターが本明細書で開示される。これらのベクターは、(トランスフェクション、形質転換、ウイルス送達、または任意の他の公知の方法によって)細胞のゲノム中に挿入され得る。これらのベクターは、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、および/またはガレクチン9のタンパク質またはその機能的断片をコードし得る。
【0332】
想定されるベクターは、プラスミドベクター、人工/ミニ染色体、トランスポゾン、およびウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。RNAを含む単離されたまたは合成の核酸がさらに本明細書で開示され、RNAは、表2の任意の配列によってコードされる。RNAはまた、表2の任意の配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率の相同性を呈する任意の配列をコードし得る。RNAはまた、表2の任意の配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率の同一性を呈する任意の配列をコードし得る。
【0333】
RNAは、一本鎖ガイドRNAであり得る。本開示はまた、表1の任意の配列を含む単離または合成された核酸を提供する。RNAはまた、表1の任意の配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率の相同性を呈する単離または合成された核酸を提供し得る。RNAはまた、表1の任意の配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくは100%または少なくともほぼこれらの比率の同一性を呈する単離または合成された核酸を提供し得る。
【0334】
非ヒト動物のゲノム中の1または複数の遺伝子のターゲティングにガイドRNA配列を使用することができる。例えば、ガイドRNA配列は、非ヒト動物のゲノム中の単一の遺伝子をターゲティングし得る。場合によって、ガイドRNA配列は、非ヒト動物のゲノム中の1または複数の遺伝子のそれぞれの1または複数の標的部位をターゲティングし得る。
【0335】
遺伝子改変された細胞はまた、白血球、リンパ球、Bリンパ球、または、島細胞、島ベータ細胞、もしくは肝細胞などの任意の他の細胞であり得る。これらの細胞は、本明細書で開示される任意の方法、例えばECDI固定によって、固定するかまたはアポトーシス性にすることができる。
【0336】
遺伝子改変された細胞は、非ヒト胎仔動物、周生期非ヒト動物、新生非ヒト動物、離乳前非ヒト動物、若年非ヒト動物、成体非ヒト動物、またはこれらの任意の組合せに由来し得る(例えば、回収され得る)。場合によって、遺伝子改変された非ヒト動物細胞は、胚組織、例えば胚膵臓組織に由来し得る。例えば、遺伝子改変された細胞は、42日胚(E42)由来の胚性ブタ膵臓組織に由来し得る(例えば、回収され得る)。
【0337】
「胎仔動物」という用語およびその文法的同等物は、動物の任意の産まれていない仔を指す場合がある。「周生期動物」という用語およびその文法的同等物は、誕生の直前または直後の動物を指す場合がある。例えば、周生期の期間は、妊娠の20~28週に開始し、生後1~4週に終了する場合がある。「新生動物」という用語およびその文法的同等物は、任意の新たに産まれた動物を指す場合がある。例えば、新生動物は、1ヶ月以内に産まれた動物であり得る。「離乳前非ヒト動物」という用語およびその文法的同等物は、母乳から引き離される前の任意の動物を指す場合がある。
【0338】
遺伝子改変された非ヒト動物細胞は、医薬組成物に製剤化され得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物細胞は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることができる。使用できる賦形剤は食塩水である。医薬組成物は、移植を必要とする患者を処置するために使用することができる。
【0339】
遺伝子改変された細胞は、任意の遺伝子の低減された発現、および/または本明細書で開示される任意のトランス遺伝子を含み得る。細胞の遺伝子改変は、遺伝子改変された動物を作製するための本明細書に記載される方法と同じ方法のいずれかを使用して行うことができる。場合によって、非ヒト動物に由来する遺伝子改変された細胞を作製する方法は、1または複数の遺伝子の発現を低減させることおよび/または1または複数のトランス遺伝子を挿入することを含み得る。遺伝子発現の低減および/またはトランス遺伝子の挿入は、本出願に記載される任意の方法、例えば遺伝子編集を使用して実施することができる。
【0340】
幹細胞に由来する遺伝子改変された細胞
遺伝子改変された細胞は、幹細胞であり得る。これらの遺伝子改変された幹細胞は、本明細書で開示される方法による固定されたまたはアポトーシス性細胞にその後に加工できる細胞の潜在的に無制限の供給を作製するために使用することができる。上記で論じたように、幹細胞は、生存する人間を生成することはできない。
【0341】
ヒト多能性幹細胞からの何億ものインスリン産生性、グルコース応答性の膵ベータ細胞の産生は、糖尿病の細胞移植療法のための未だかつてない細胞供給源を提供する(Pagliucaら、2014年)。糖尿病および他の疾患の細胞移植療法のための他のヒト幹細胞(胚性、多能性、胎盤性、人工多能性など)由来の細胞供給源が開発中である。
【0342】
これらの幹細胞由来細胞移植片は、拒絶にさらされる。拒絶は、CD8+T細胞によって媒介され得る。1型糖尿病レシピエントでは、ヒト幹細胞由来の機能的ベータ細胞は、拒絶および自己免疫の再発にさらされる。両方は、CD8+T細胞によって媒介されると考えられている。
【0343】
これらのアロ反応性および自己反応性のCD8+T細胞の活性化およびエフェクター機能に干渉するために、CRISP/Cas9遺伝子ターゲティングを含む遺伝子改変の確立された分子的方法を使用して、幹細胞由来の部分的にまたは完全に分化した細胞移植片における機能的MHCクラスIの細胞表面発現を防止する目的のために、ヒト幹細胞におけるNLRC5、TAP1、および/またはB2M遺伝子を突然変異させることができる。したがって、MHCクラスIの機能的発現を欠いたヒト幹細胞由来細胞移植片の移植は、それがなければ拒絶および自己免疫の再発を予防するために必要とされる免疫抑制の必要性を最小化し得る。
【0344】
しかしながら、移植されたヒト細胞上のMHCクラスI発現の欠如は、ナチュラルキラー(NK)細胞の受動的な活性化を引き起こす可能性がある(Ohlenら、1989年)。NK細胞の細胞傷害性は、ヒトMHCクラス1遺伝子HLA-Eの発現によって克服される場合があり、HLA-Eは、NK細胞上の阻害性受容体CD94/NKG2Aを刺激して、細胞殺滅を防止する(Weissら、2009年;Lilienfeldら、2007年;Sasakiら、1999年)。HLA-E遺伝子の発現の成功は、ヒトB2M(ベータ2ミクログロブリン)遺伝子とコグネイトのペプチドとの共発現に依存していた(Weissら、2009年;Lilienfeldら、2007年;Sasakiら、1999年;Pascasovaら、1999年)。幹細胞のDNAにおけるヌクレアーゼ媒介性の切断は、相同性により導かれる修復を介した1または複数の遺伝子の挿入を可能とする。トランス遺伝子を挿入しながらHLA-EおよびhB2M遺伝子を連続してヌクレアーゼ媒介性のDNA切断の領域に組み込んで、標的遺伝子(例えば、NLRC5)の発現を防止することができる。
【0345】
MHCクラスIの機能的発現を欠いた幹細胞由来細胞移植片のレシピエントにおける維持免疫抑制の必要性を、消失させないまでも、さらに最小化するために、これらの移植片のレシピエントはまた、本明細書で開示される寛容化アポトーシス性ドナー細胞によっても処置され得る。
【0346】
インスリン産生膵ベータ細胞の産生方法(Pagliucaら、2014年)は、非ヒト(例えば、ブタ)の初代単離多能性胚性幹細胞または幹様細胞に適用できる可能性がある(Goncalvesら、2014年;HallらV.、2008年)。しかしながら、これらのインスリン産生膵ベータ細胞のレシピエントは、移植片の成功を脅かす活性免疫応答を有する可能性がある。抗体媒介性およびCD8+T細胞の免疫攻撃を克服するために、初代非ヒト多能性胚性幹細胞または幹様細胞を単離する前にドナー動物を遺伝子改変して、本出願を通して開示されるGGTA1、CMAH、B4GalNT2、またはMHCクラスI関連遺伝子の発現を防止することができる。次いで、遺伝子改変された動物から単離された多能性胚性幹細胞または幹様細胞を何百万ものインスリン産生膵ベータ細胞に分化できる可能性がある。
【0347】
異種幹細胞由来細胞の移植は、一部の場合に望ましいことがある。例えば、ヒト胚性幹細胞の使用は、レシピエントにとって倫理的に反対される可能性がある。したがって、ヒトレシピエントは、胚性幹細胞の非ヒト供給源由来の細胞移植片を受けるのをより快く感じる可能性がある。
【0348】
非ヒト幹細胞は、ブタ幹細胞を含んでもよい。これらの幹細胞は、野生型ブタまたは遺伝子操作されたブタに由来し得る。野生型ブタに由来する場合、CRISP/Cas9遺伝子ターゲティングを含む遺伝子改変の確立された分子的方法を使用する遺伝子操作は、幹細胞の段階での実施が最良であり得る。遺伝子操作は、NLRC5、TAP1、および/またはB2M遺伝子の発現の破壊をターゲティングして、MHCクラスIの機能的発現を防止し得る。移植片におけるNLRC5、TAP1、およびB2Mなどの遺伝子の破壊は、島ベータ細胞上を含む移植片細胞上のMHCクラスIの機能的発現の欠如を引き起こすことによって、自己反応性CD8+T細胞の移植後活性化に干渉し得る。したがって、これは、自己反応性CD8+T細胞の細胞溶解エフェクター機能から移植、例えば移植された島ベータ細胞を保護し得る。
【0349】
しかしながら、幹細胞の遺伝子操作は分化能力を変えることがあるので、NLRC5、TAP1、および/またはB2M遺伝子の発現が破壊されたブタを含む、遺伝子操作されたブタから幹細胞株を作製するための手法が為され得る。
【0350】
GGTA1、CMAH、B4GalNT2遺伝子の発現も防止するように遺伝子改変されたまたは本出願の全体を通して開示されるように補体調節タンパク質CD46、CD55、またはCD59をコードするトランス遺伝子を発現するように改変されたブタ由来の幹細胞の作製は、インスリン産生膵ベータ細胞または他の細胞療法製品の治療的使用をさらに改善できる可能性がある。同様に、本明細書に記載されるのと同じ戦略を、全体を通して記載される他の方法および組成物において使用することができる。
【0351】
MHCクラスIの機能的発現を欠いたヒト幹細胞由来細胞移植片のレシピエントと同様に、ブタ幹細胞由来移植片のレシピエントにおける維持免疫抑制の必要性は、寛容化アポトーシス性ドナー細胞を用いる周移植期処置によってさらに最小化され得る。
【0352】
III.寛容化ワクチン
従来、ワクチンは、宿主に免疫を付与するために使用される。例えば、皮膚下にアジュバントと共に不活化ウイルスを注入することで、活性および/または有毒なバージョンのウイルスに対する一過性または永続性の免疫に繋がり得る。これは陽性ワクチンと称される場合がある(
図3)。しかしながら、静脈内に注入される不活化細胞(例えば、ドナーまたはドナーとは遺伝子的に異なる動物由来の細胞)は、ドナー細胞または類似の細胞マーカーを有する細胞の寛容を結果としてもたらし得る。これは寛容化ワクチンと称される場合がある(陰性ワクチンと称される場合もある)(
図3)。不活性細胞は、アジュバントなしで注入することができる。あるいは、不活性細胞は、アジュバントと共に注入されてもよい。これらの寛容化ワクチンは、レシピエントを寛容化し、拒絶を予防することによって、移植、例えば異種移植において有利な場合がある。免疫抑制療法を使用せずにレシピエントに寛容化が付与され得る。しかしながら、場合によって、寛容化ワクチンと組み合わせた他の免疫抑制療法が移植拒絶を減少させる場合がある。
【0353】
図4は、一過性の免疫抑制に援護された寛容化ワクチン接種のためのドナー由来のアポトーシス性細胞の注入(例えば、静脈内注入)による対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類動物)での移植された移植片(例えば、異種移植片)の生存を延長するための例示的な手法を裏付ける。ドナーは、移植用の異種移植片(例えば、島)と共に寛容化ワクチンとしての細胞(例えば、脾臓細胞)を提供し得る。寛容化ワクチン細胞は、(例えば、ECDI固定による)アポトーシス性細胞であってよく、これを移植の前(例えば、移植前7日目の最初のワクチン)および後(例えば、移植後1日目のブースターワクチン)にレシピエントに投与することができる。寛容化ワクチンは、移植された移植片(例えば、島)の生存時間を延長する一過性の免疫抑制を提供し得る。
【0354】
寛容化ワクチンは、以下の種類の細胞の1または複数を含み得る:i)GGTA1単独、またはGGTA1およびCMAH、またはGGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減された発現と共に遺伝子型が同一の細胞を含むアポトーシス性細胞。これは、アポトーシス性細胞ワクチンのドナー動物と遺伝子型が同一の動物由来の、またはさらなる遺伝子改変(例えば、NLRC5、TAP1、MICA、MICB、CXCL10、C3、CIITA遺伝子の抑制、または、ICP47、CD46、CD55、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、CD59、またはこれらの任意の機能的断片の2またはそれよりも多くのポリヌクレオチド挿入物を含むトランス遺伝子の発現)を経たがアポトーシス性細胞ワクチンが由来するドナー動物と遺伝子型が類似の動物由来の臓器、組織、細胞、および細胞株移植片(例えば、異種移植片)に対する細胞媒介性の免疫および細胞依存的な抗体媒介性の免疫を最小化または消失させ得る。ii)アポトーシス性細胞ワクチンのドナー動物と遺伝子型が同一の動物由来の、またはさらなる遺伝子改変(例えば、NLRC5、TAP1、MICA、MICB、CXCL10、C3、CIITA遺伝子の抑制、または、ICP47、CD46、CD55、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、CD59、またはこれらの任意の機能的断片の2またはそれよりも多くのポリヌクレオチド挿入物を含むトランス遺伝子の発現)を経たがアポトーシス性幹細胞由来細胞ワクチンが由来するドナー動物と遺伝子型が類似の動物由来の臓器、組織、細胞、および細胞株移植片(例えば、異種移植片)に対する細胞媒介性の免疫および細胞依存的な抗体媒介性の免疫を最小化または消失させるためのアポトーシス性幹細胞(例えば、胚性、多能性、胎盤性、人工多能性など)由来ドナー細胞(例えば、白血球、リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、赤血球細胞、移植片細胞、または任意の他のドナー細胞);iii)ヒト幹細胞株と遺伝子型が同一の臓器、組織、細胞、および細胞移植片(例えば、同種移植片)に対してまたは遺伝子改変(例えば、NLRC5、TAP1、MICA、MICB、CXCL10、C3、CIITA遺伝子の抑制)を経たが、それ以外はアポトーシス性ヒト幹細胞由来ドナー細胞ワクチンと遺伝子型が類似した同じ幹細胞株に由来する移植片(例えば、同種移植片)に対して細胞媒介性の免疫および細胞依存的な抗体媒介性の免疫を最小化または消失させるためのアポトーシス性幹細胞(例えば、胚性、多能性、胎盤性、人工多能性など)由来ドナー細胞(白血球、リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、赤血球細胞、機能的な島ベータ細胞などの移植片細胞、または任意の他のドナー細胞);iv)UV照射、ガンマ照射、または、ECDIの存在下でのインキュベーションを伴わない他の方法によってアポトーシス性にされたアポトーシス性ドナー細胞。場合によって、寛容化ワクチン細胞は、それを必要とする対象に投与、例えば注入(場合によって、繰り返して注入)され得る。寛容化ワクチンは、細胞から1または複数の遺伝子を破壊する(例えば、発現を低減させる)ことによって産生することができる。例えば、本出願を通して記載される遺伝子改変された細胞は、寛容化ワクチンを作製するために使用することができる。例えば、細胞は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、B4GALNT2、および/またはこれらの任意の組合せを含む、破壊され得る(例えば、低減された発現)1または複数の遺伝子を有し得る。例えば、細胞は、破壊されたGGTA1単独、または破壊されたCMAH単独、または破壊されたB4GALNT2単独を有し得る。細胞はまた、破壊されたGGTA1およびCMAH、破壊されたGGTA1およびB4GALNT2、または破壊されたCMAHおよびB4GALNT2を有し得る。細胞は、破壊されたGGTA1、CMAH、およびB4GALNT2を有し得る。場合によって、破壊された遺伝子は、GGTA1を含まない。細胞はまた、NLRC5(内因的または外因的に)を発現することができるが、GGTA1および/またはCMAHは破壊されている。細胞はまた、破壊されたC3を有し得る。
【0355】
寛容化ワクチンは、例えば本出願を通して記載される、1または複数のトランス遺伝子を追加的に発現する細胞を用いて産生することができる。例えば、寛容化ワクチンは、感染細胞タンパク質47(ICP47)、分化クラスター46(CD46)、分化クラスター55(CD55)、分化クラスター59(CD59)、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、PD-L1、PD-L2、CD47、これらの任意の機能的断片、またはこれらの任意の組合せの1または複数のポリヌクレオチド挿入物を含む1または複数のトランス遺伝子を含む細胞を含み得る。場合によって、寛容化ワクチンは、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減されたタンパク質発現、および、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む遺伝子改変された細胞を含む場合があり、タンパク質は、HLA-G1、PD-L1、PD-L2、およびCD47を含む。場合によって、寛容化ワクチンは、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減されたタンパク質発現、および、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含む遺伝子改変された細胞を含む場合があり、タンパク質は、HLA-E、PD-L1、PD-L2、およびCD47を含む。場合によって、寛容化ワクチンは、その表面がCD47でコーティングされた細胞を含み得る。細胞の表面におけるCD47のコーティングは、細胞表面をビオチン化した後、これらのビオチン化された細胞をストレプトアビジン-CD47キメラタンパク質と共にインキュベートすることによって達成することができる。例えば、寛容化ワクチンは、その表面がCD47でコーティングされた細胞を含む場合があり、細胞は、GGTA1、CMAH、およびB4GALNT2の低減されたタンパク質発現、および、タンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むトランス遺伝子を含み、タンパク質は、HLA-G1、PD-L1、およびPD-L2を含む。CD47コーティング細胞は、非アポトーシス性細胞であり得る。あるいは、CD47コーティング細胞は、アポトーシス性細胞であり得る。
【0356】
場合によって、寛容化は、遺伝子改変された移植片の投与を含み得る。移植片は、細胞、組織、臓器、または組合せであり得る。場合によって、免疫抑制は、ワクチンまたは寛容化移植片と組み合わせられる。場合によって、移植片におけるHLA-G1の発現および移植片のMHCまたはHLAクラスIの欠損は、ワクチンの投与から独立した寛容原性活性を有することがある。
【0357】
対象に投与された場合に、寛容化ワクチンの細胞は、ある循環半減期を有し得る。寛容化ワクチンの細胞は、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、18、24、36、48、60、もしくは72時間の循環半減期を有し得るか、または少なくともほぼこれらの時間の循環半減期を有し得る。例えば、寛容化ワクチンの循環半減期は、0.1~0.5、0.5~1.0、1.0~2.0、1.0~3.0、1.0~4.0、1.0~5.0、5~10、10~15、15~24、24~36、36~48、48~60、もしくは60~72時間、またはほぼこれらの時間であり得る。寛容化ワクチン中の細胞は、その循環半減期を増強させるように処理することができる。そのような処理は、タンパク質、例えばCD47での細胞のコーティングを含み得る。その循環半減期を増強させるように処理された細胞は、非アポトーシス性細胞であり得る。その循環半減期を増強させるように処理された細胞は、アポトーシス性細胞であり得る。あるいは、寛容化ワクチン中の細胞は、その循環半減期を増強させるように遺伝子改変(例えば、そのゲノム中へのCD47などのトランス遺伝子の挿入)され得る。その循環半減期を増強させるように遺伝子改変された細胞は、非アポトーシス性細胞であり得る。その循環半減期を増強させるように遺伝子改変された細胞は、アポトーシス性細胞であり得る。
【0358】
寛容化ワクチンは、1または複数の破壊された遺伝子(例えば、低減された発現)および1または複数のトランス遺伝子の両方を有し得る。本明細書に記載される任意の遺伝子および/またはトランス遺伝子を使用することができる。
【0359】
1または複数の破壊された遺伝子(例えば、低減された発現)を含む細胞は、寛容化ワクチンとしてまたはその一部として使用することができる。すなわち、1または複数の破壊された遺伝子を含む細胞は寛容化ワクチンであり得るか、寛容化ワクチンとすることができる。
【0360】
寛容化ワクチンは、移植において使用される細胞、臓器、および/または組織と同じ遺伝子型および/または表現型を有し得る。ある場合には、寛容化ワクチンの遺伝子型および/または表現型と移植片の遺伝子型および/または表現型は異なる。移植レシピエントのために使用される寛容化ワクチンは、移植用移植片ドナー由来の細胞を含み得る。移植レシピエントのために使用される寛容化ワクチンは、移植用移植片とは遺伝子的におよび/または表現型が異なる細胞を含み得る。場合によって、移植レシピエントのために使用される寛容化ワクチンは、移植用移植片ドナー由来の細胞および移植用移植片とは遺伝子的におよび/または表現型が異なる細胞を含み得る。移植用移植片とは遺伝子的におよび/または表現型が異なる細胞は、移植用移植片ドナーの同じ種の動物に由来し得る。
【0361】
寛容化ワクチン用の細胞の供給源は、ヒトまたは非ヒト動物に由来し得る。
【0362】
本出願を通して開示される細胞を寛容化ワクチンとすることができる。例えば、寛容化ワクチンは、本明細書で開示される1または複数の移植される細胞から作製することができる。あるいは、寛容化ワクチンは、移植される細胞のいずれかとは異なる1または複数の細胞から作製することができる。例えば、寛容化ワクチンとされる細胞は、移植される細胞のいずれかとは遺伝子型および/または表現型が異なるものであり得る。しかしながら、場合によって、寛容化ワクチンは、(内因的にまたは外因的に)NLRC5を発現する。寛容化ワクチンは、移植における細胞、臓器、および/または組織の生存を促進し得る。寛容化ワクチンは、ドナー細胞、臓器、および/または組織と遺伝子型が同一または類似の非ヒト動物に由来し得る。例えば、寛容化ワクチンは、ドナーのブタ細胞、臓器、および/または組織と遺伝子型が同一または類似のブタ(例えば、アポトーシス性ブタ細胞)に由来する細胞であり得る。その後、ドナー細胞、臓器、および/または組織は、同種移植片または異種移植片において使用することができる。場合によって、寛容化ワクチン用の細胞は、GGTA1、CMAH、およびB4GalNT2の低減された発現を有し、かつHLA-G(またはHLA-E-)、ヒトCD47、ヒトPD-L1およびヒトPD-L2をコードするトランス遺伝子を有する遺伝子改変された動物(例えば、ブタ)に由来し得る。移植片ドナー動物は、寛容化ワクチン細胞用の動物(例えば、ブタ)をさらに遺伝子改変することによって作製され得る。例えば、移植片ドナー動物は、寛容化ワクチン細胞用の上記の動物において追加の遺伝子(例えば、NLRC5(またはTAP1)、C3、およびCXCL10)を破壊することによって作製され得る(
図5)。
【0363】
寛容化ワクチンは、非ヒト動物細胞(例えば、非ヒト哺乳動物細胞)を含み得る。例えば、非ヒト動物細胞は、ブタ、ネコ、ウシ、シカ、イヌ、フェレット、ガウル、ヤギ、ウマ、マウス、ムフロン、ラバ、ウサギ、ラット、ヒツジ、または霊長類動物に由来し得る。具体的には、非ヒト動物細胞は、ブタ細胞であり得る。寛容化ワクチンはまた、遺伝子改変された非ヒト動物細胞を含み得る。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物細胞は、死細胞(例えば、アポトーシス性細胞)であり得る。寛容化ワクチンはまた、本明細書で開示される任意の遺伝子改変された細胞を含み得る。
【0364】
寛容化ワクチンを作製するための細胞の処理
寛容化ワクチンは、化学物質で処理された細胞を含み得る。場合によって、処理は、細胞のアポトーシスを誘導し得る。理論によって縛れるものではないが、アポトーシス性細胞は、(例えば、脾臓中の)宿主の抗原提示細胞によって捕捉されて、免疫細胞(例えば、T細胞)におけるアネルギーの誘導に繋がる非免疫原性の様式で宿主免疫細胞(例えば、T細胞)に提示され得る。
【0365】
寛容化ワクチンは、アポトーシス性細胞および非アポトーシス性細胞を含み得る。寛容化ワクチン中のアポトーシス性細胞は、寛容化ワクチン中の非アポトーシス性細胞と遺伝子的に同一であり得る。あるいは、寛容化ワクチン中のアポトーシス性細胞は、寛容化ワクチン中の非アポトーシス性細胞と遺伝子的に異なるものであり得る。寛容化ワクチンは、固定された細胞および固定されていない細胞を含み得る。寛容化ワクチン中の固定された細胞は、寛容化ワクチン中の固定されていない細胞と遺伝子的に同一であり得る。あるいは、寛容化ワクチン中の固定された細胞は、寛容化ワクチン中の固定されていない細胞と遺伝子的に異なるものであり得る。場合によって、固定された細胞は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)で固定された細胞であり得る。
【0366】
寛容化ワクチン中の細胞は、化学物質、例えばECDIを使用して固定され得る。固定は、細胞をアポトーシス性にさせ得る。本明細書で開示される寛容化ワクチン、細胞、キットおよび方法は、ECDIおよび/またはECDI処理を含み得る。例えば、寛容化ワクチンは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)で処理された、細胞、例えば本明細書で開示される遺伝子改変された細胞であり得る。すなわち、全体を通して記載される遺伝子改変された細胞をECDIで処理して、寛容化ワクチンを創出することができる。次いで、寛容化ワクチンを移植に使用して、移植された細胞、臓器、および/または組織の生存を促進することができる。寛容化ワクチン用の細胞を処理するためにECDI誘導体、機能化ECDI、および/または置換されたECDIも使用できることも想定される。場合によって、寛容化ワクチン用の細胞は、任意の適するカルボジイミド誘導体、例えば、ECDI、N、N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および当業者によって理解される他のカルボジイミド誘導体で処理することができる。
【0367】
寛容化ワクチン用の細胞はまた、ECDIの存在下でのインキュベーションを伴わない方法、例えば、他の化学物質またはUV照射もしくはガンマ照射などの照射によってもアポトーシス性にすることができる。
【0368】
ECDIは、遊離のアミンおよびカルボキシル基を化学架橋することができ、かつ、例えば、寛容化ワクチンおよびドナー非ヒト動物の両方を生じさせた動物由来の、細胞、臓器、および/または組織において効果的にアポトーシスを誘導し得る。すなわち、同じ遺伝子改変された動物は、移植において使用される寛容化ワクチンならびに細胞、組織および/または臓器を生じさせ得る。例えば、本明細書で開示される遺伝子改変された細胞は、ECDIで処理され得る。このECDI固定は、寛容化ワクチンの創出に繋がり得る。
【0369】
寛容化ワクチンを作製するために使用できる遺伝子改変された細胞は、脾臓(脾臓B細胞を含む)、肝臓、末梢血(末梢血B細胞を含む)、リンパ節、胸腺、骨髄、またはこれらの任意の組合せに由来し得る。例えば、細胞は、脾臓細胞、例えばブタの脾臓細胞であり得る。場合によって、細胞は、ex-vivoで拡大され得る。場合によって、細胞は、胎仔の、周生期の、新生の、離乳前の、および/または若成体の非ヒト動物に由来し得る。場合によって、細胞は、非ヒト動物の胚に由来し得る。
【0370】
寛容化ワクチン中の細胞はまた、2またはそれよりも多くの破壊された(例えば、低減された発現)遺伝子を含む場合があり、2またはそれよりも多くの破壊された遺伝子は、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、およびB4GALNT2、これらの任意の機能的断片、またはこれらの任意の組合せであり得る。場合によって、2またはそれよりも多くの破壊された遺伝子は、GGTA1を含まない。上記のように、破壊は、遺伝子発現のノックアウトまたは抑制であり得る。ノックアウトは、例えばCRISPR/Casシステムを使用して、遺伝子編集によって実施することができる。あるいは、遺伝子発現の抑制は、例えば、RNA干渉、shRNA、1または複数のドミナントネガティブトランス遺伝子を使用して、ノックダウンによって行うことができる。場合によって、細胞は、本明細書で開示される1または複数のトランス遺伝子をさらに含み得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、CD46、CD55、CD59、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0371】
寛容化ワクチン中の細胞はまた、1または複数のドナー非ヒト動物に由来し得る。場合によって、細胞は、同じドナー非ヒト動物に由来し得る。細胞は、1または複数のレシピエント非ヒト動物に由来し得る。場合によって、細胞は、2またはそれよりも多くの非ヒト動物(例えば、ブタ)に由来し得る。
【0372】
寛容化ワクチンは、見込まれるレシピエントのkg体重当たり0.001~5.0またはほぼこの範囲内、例えば、0.001~1.0またはほぼこの範囲内のエンドトキシン単位を含み得る。例えば、寛容化ワクチンは、見込まれるレシピエントのkg体重当たり0.01~5.0、0.01~4.5、0.01~4.0、0.01~3.5、0.01~3.0、0.01~2.5、0.01~2.0、0.01~1.5、0.01~1.0、0.01~0.9、0.01~0.8、0.01~0.7、0.01~0.6、0.01~0.5、0.01~0.4、0.01~0.3、0.01~0.2、もしくは0.01~0.1、またはほぼこれらの範囲内のエンドトキシン単位を含み得る。
【0373】
寛容化ワクチンは、μl当たり1~100個またはほぼこの数の凝集物を含み得る。例えば、寛容化ワクチンは、μl当たり1~5個、1~10個、もしくは1~20個、またはほぼこれらの数の凝集物を含み得る。寛容化ワクチンは、少なくとも1、5、10、20、50、もしくは100個、または少なくともほぼこれらの数の凝集物を含み得る。
【0374】
寛容化ワクチンは、約50,000個の凍結から融解されたヒト末梢血単核細胞を寛容化ワクチンの約160,000個の細胞(例えば、ブタ細胞)と共にインキュベートした場合に、0.001pg/ml~10.0pg/mlまたはほぼこのレベル、例えば、0.001pg/ml~1.0pg/mlまたはほぼこのレベルのIL-1ベータの放出を誘発し得る。例えば、寛容化ワクチンは、約50,000個の凍結から融解されたヒト末梢血単核細胞を寛容化ワクチンの約160,000個の細胞(例えば、ブタ細胞)と共にインキュベートした場合に、0.001~10.0、0.001~5.0、0.001~1.0、0.001~0.8、0.001~0.2、もしくは0.001~0.1pg/ml、またはほぼこれらのレベルのIL-1ベータの放出を誘発する。寛容化ワクチンは、約50,000個の凍結から融解されたヒト末梢血単核細胞を寛容化ワクチンの約160,000個の細胞(例えば、ブタ細胞)と共にインキュベートした場合に、0.001~2.0pg/mlまたはほぼこのレベル、例えば、0.001~0.2pg/mlまたはほぼこのレベルのIL-6の放出を誘発し得る。例えば、寛容化ワクチンは、約50,000個の凍結から融解されたヒト末梢血単核細胞を寛容化ワクチンの約160,000個の細胞(例えば、ブタ細胞)と共にインキュベートした場合に、0.001~2.0、0.001~1.0、0.001~0.5、もしくは0.001~0.1pg/ml、またはほぼこれらのレベルのIL-6の放出を誘発し得る。
【0375】
寛容化ワクチンは、37℃での放出インキュベーションの4時間または約4時間後に、60%より多くまたは約60%より多くの、例えば、85%より多くまたは約85%より多くのアネキシンV陽性のアポトーシス性細胞を含み得る。例えば、寛容化ワクチンは、37℃での放出インキュベーションの約4時間後に、60%、70%、80%、90%、または99%より多くのアネキシンV陽性のアポトーシス性細胞を含む。
【0376】
寛容化ワクチンは、0.01%~10%またはほぼこの比率、例えば、0.01%~2%またはほぼこの比率の壊死細胞を含み得る。例えば、寛容化ワクチンは、0.01%~10%、0.01%~7.5%、0.01%~5%、0.01%~2.5%、もしくは0.01%~1%、またはほぼこれらの比率の壊死細胞を含む。
【0377】
ドナー細胞の投与の前、間、および/または後のECDIで処理された細胞、臓器、および/または組織を含む寛容化ワクチンの投与は、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)において細胞、臓器、および/または組織に対する寛容を誘導し得る。ECDIで処理された細胞は、静脈内注入によって投与され得る。
【0378】
ECDIで処理された脾臓細胞を含む寛容化ワクチンの注入によって誘導された寛容は、無傷なプログラム死1受容体-プログラム死リガンド1シグナル伝達経路とCD4+CD25+Foxp3+調節性T細胞との間の相乗効果に依存する可能性がある。
【0379】
寛容化(telorizing)ワクチン中の細胞は、ECDI固定によってだけでなく、他の方法を通じてもアポトーシス性細胞(例えば、寛容化ワクチン)にすることができる。例えば、全体を通して開示される遺伝子改変された細胞のいずれか、例えば、非ヒト細胞である動物細胞またはヒト細胞(幹細胞を含む)は、遺伝子改変された細胞をUV照射に曝露することによってアポトーシス性(apopototic)にすることができる。遺伝子改変された細胞はまた、それをガンマ照射に曝露することによってもアポトーシス性にすることができる。ECDIを伴わない他の方法、例えばEtOH固定も想定される。
【0380】
寛容化ワクチン中の細胞、例えば、ECDIで処理された細胞、抗原がカップリングした細胞、および/またはエピトープがカップリングした細胞は、ドナー細胞(例えば、移植用移植片のドナー由来の細胞)を含み得る。寛容化ワクチン中の細胞、例えば、ECDIで処理された細胞、抗原がカップリングした細胞、および/またはエピトープがカップリングした細胞は、レシピエント細胞(例えば、移植用移植片のレシピエント由来の細胞)を含み得る。寛容化ワクチン中の細胞、例えば、ECDIで処理された細胞、抗原がカップリングした細胞、および/またはエピトープがカップリングした細胞は、第三者(例えば、ドナーでもレシピエントでもない)の細胞を含み得る。場合によって、第三者の細胞は、レシピエントおよび/またはドナーと同じ種の非ヒト動物に由来する。他の場合には、第三者の細胞は、レシピエントおよび/またはドナーとは異なる種の非ヒト動物に由来する。
【0381】
細胞のECDI処理は、1または複数の抗原および/またはエピトープの存在下で実施することができる。ECDIで処理された細胞は、ドナー、レシピエントおよび/または第三者の細胞を含み得る。同様に、抗原および/またはエピトープは、ドナー、レシピエントおよび/または第三者の抗原および/またはエピトープを含み得る。場合によって、ドナー細胞は、レシピエントの抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。例えば、遺伝子操作され、かつ遺伝子型が同一のドナー細胞(例えば、ブタ細胞)に由来する可溶型のドナー抗原は、ECDIを用いてレシピエント末梢血単核細胞にカップリングされ、ECDIでカップリングされた細胞は静脈内注入を介して投与される。
【0382】
場合によって、レシピエント細胞は、ドナーの抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。場合によって、レシピエント細胞は、第三者の抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。場合によって、ドナー細胞は、レシピエントの抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。場合によって、ドナー細胞は、第三者の抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。場合によって、第三者の細胞は、ドナーの抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。場合によって、第三者の細胞は、レシピエントの抗原および/またはエピトープ(例えば、ECDIで誘導されたカップリング)にカップリングされる。例えば、遺伝子操作され、かつ遺伝子型が同一のドナー細胞(例えば、ブタ細胞)に由来する可溶型のドナー抗原は、ECDIを用いてポリスチレンナノ粒子にカップリングされ、ECDIでカップリングされた細胞は静脈内注入を介して投与される。
【0383】
これらの寛容化細胞ワクチンのいずれかの寛容原性能力は、以下の1または複数を細胞の表面にカップリングすることによってさらに最適化することができる:IFN-g、NF-kBインヒビター(クルクミン、トリプトライド、Bay-117085など)、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、または宿主抗原提示細胞および宿主リンパ球の機能を改変する他の免疫モジュレート分子。
【0384】
これらのアポトーシス性細胞ワクチンはまた、ドナー反応性細胞のアポトーシスによる死を誘発する分子(FasL、PD-L1、ガレクチン9、CD8アルファなど)をそれらの表面上に提示するように操作されたドナー細胞によっても補完することができる。
【0385】
本明細書で開示される(dislosed)寛容化ワクチンは、レシピエントにおいて移植片(例えば、異種移植片または同種移植片の移植片)の生存期間を増加させ得る。本明細書で開示される寛容化ワクチンはまた、移植後の免疫抑制(immunosupression)の必要性を低減または消失させ得る。異種移植片または同種移植片は、臓器、組織、細胞または細胞株であり得る。異種移植片および寛容化ワクチンはまた、異なる種に由来し得る。あるいは、異種移植片および寛容化ワクチンは、同じ種に由来し得る。例えば、異種移植片および寛容化ワクチンは、実質的に遺伝子的に同一である個体(例えば、同じ個体)に由来し得る。
【0386】
場合によって、寛容化ワクチンまたは陰性ワクチンは、寛容化または陰性ワクチンを投与された対象において相乗効果を生み出し得る。他の場合には、寛容化または陰性ワクチンは、寛容化または陰性ワクチンを投与された対象において拮抗効果を生み出し得る。
【0387】
ECDIで固定された細胞は、医薬組成物に製剤化することができる。例えば、ECDIで固定された細胞を薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることができる。使用できる賦形剤は、食塩水である。使用できる賦形剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。次いで、医薬組成物は、移植を必要とする患者を処置するために使用することができる。
【0388】
IV.遺伝子改変された非ヒト動物を作製する方法
上記される遺伝子改変された非ヒト動物を作製するために、様々な技法を使用することができる。遺伝子改変された動物を創出するための少数の例が本明細書で開示される。本明細書で開示される方法は単なる例であり、いかなる意味でも限定を意味しないことが理解されるべきである。
【0389】
遺伝子破壊
遺伝子破壊は、上記の任意の方法、例えば、ノックアウト、ノックダウン、RNA干渉、ドミナントネガティブなどによって実施することができる。方法の詳細な説明は、遺伝子改変された非ヒト動物に関するセクションにおいて上記に開示される。
【0390】
CRISPR/Casシステム
本明細書に記載される方法は、CRISPR/Casシステムを用いることができる。例えば、CRISPR/Casシステム、例えばII型CRISPR/Casシステムを使用して二本鎖切断(DSB)を生じることができる。本明細書で開示される方法において使用されるCas酵素は、DNAの切断を触媒するCas9であり得る。Streptococcus pyogenesに由来するCas9、または任意の近縁のCas9による酵素作用により、20ヌクレオチドのガイド配列にハイブリダイズし、20ヌクレオチドの標的配列に後続してプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を有する標的部位配列において、二本鎖切断を生じることができる。
【0391】
ベクターは、Casタンパク質など、CRISPR酵素をコードする、酵素コード配列に作動可能に連結することができる。本発明において使用できるCasタンパク質は、クラス1およびクラス2を含む。Casタンパク質の非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5d、Cas5t、Cas5h、Cas5a、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1またはCsx12としても公知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Csy4、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4、Cse5e、Csc1、Csc2、Csa5、Csn1、Csn2、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx1S、Csf1、Csf2、CsO、Csf4、Csd1、Csd2、Cst1、Cst2、Csh1、Csh2、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5、C2c1、C2c2、C2c3、Cpf1、CARF、DinG、これらの相同体、またはこれらの修飾形を含む。非修飾CRISPR酵素は、Cas9など、DNA切断活性を有し得る。CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補体内など、標的配列において、一本または両方の鎖の切断を導きうる。例えば、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、25、50、100、200、500、もしくはそれよりも多い塩基対以内、またはほぼこれらの数の塩基対以内において、一本または両方の鎖の切断を導きうる。突然変異させたCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一本または両方鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に照らして突然変異させたCRISPR酵素をコードするベクターを使用することができる。Casタンパク質は、Cas9HiFiなど、高忠実度のcasタンパク質であり得る。
【0392】
Cas9とは、例示的な野生型のCas9ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来するCas9)に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率の配列同一性および/または配列相同性を伴うポリペプチドを指す場合がある。Cas9とは、例示的な野生型のCas9ポリペプチド(例えば、S.pyogenesに由来する)に対して、最大で50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、または最大でほぼこれらの比率の配列同一性および/または配列相同性を伴うポリペプチドを指す場合がある。Cas9とは、Cas9タンパク質の野生型形態を指す場合もあり、Cas9タンパク質の改変された形態は、欠失、挿入、置換、変異体、突然変異、融合、キメラ、またはこれらの任意の組合せなどのアミノ酸変化を含み得る、Cas9タンパク質の修飾形態を指す場合もある。
【0393】
S.pyogenesのCas9(SpCas9)は、ゲノム操作のためのCRISPRエンドヌクレアーゼとして使用することができる。しかしながら、他のものを使用してもよい。場合によって、異なるエンドヌクレアーゼを使用して、ある特定のゲノム標的をターゲティングすることができる。場合によって、NGG以外のPAM配列を伴う、合成SpCas9由来の変異体を使用することができる。加えて、多様な種に由来する、他のCas9オーソログも同定されており、これらの「非SpCas9」は、様々なPAM配列に結合し得、これらもまた、本発明に有用であり得るだろう。例えば、SpCas9の比較的大きなサイズ(約4kbのコード配列)は、SpCas9 cDNAを保有するプラスミドは、細胞内で効率的に発現しえないことをもたらし得る。逆に、Staphylococcus aureus Cas9(SaCas9)のコード配列はおよそ、SpCas9より1キロベース短く、おそらく、細胞内の効率的な発現を可能とする。SpCas9と同様に、SaCas9エンドヌクレアーゼも、in vitroの哺乳動物細胞内、およびマウスのin vivoにおいて、標的遺伝子を修飾することが可能である。場合によって、Casタンパク質は、異なるPAM配列をターゲティングすることがある。場合によって、NLRC5などの標的遺伝子は、例えばCas9のPAM、5’-NGGと隣接してもよい。他の場合には、他のCas9オーソログは、異なるPAMの要件を有していてもよい。例えば、S.thermophilus(CRISPR1について5’-NNAGAAおよびCRISPR3について5’-NGGNG)およびNeisseria meningiditis(5’-NNNNGATT)のものなどの他のPAMも、NLRC5などの標的遺伝子と隣接して見出されることがある。本発明のトランス遺伝子は、任意のCas、またはCas誘導体、タンパク質からの任意のPAM配列と隣接して挿入することができる。場合によって、PAMは、ゲノム中に8~12塩基対毎、またはほぼこの範囲内の塩基対毎に見出され得る。PAMは、ゲノム中に1~15塩基対毎に見出され得る。PAMはまた、ゲノム中に5~20塩基対毎に見出され得る。場合によって、PAMは、ゲノム中に5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれよりも多くの塩基対毎に見出され得る。PAMは、ゲノム中に5~100塩基対毎に、または5~100塩基対の間に見出され得る。
【0394】
例えば、S.pyogenesのシステムについて、標的遺伝子配列は、5’-NGG
PAMに先行(すなわち、5’にある)する場合があり、かつ20ntのガイドRNA配列は、反対鎖と塩基対合してPAMと隣接するCas9切断を媒介する場合がある。場合によって、隣接する切断は、PAMの3塩基対または約3塩基対上流であってよい。場合によって、隣接する切断は、PAMの10塩基対または約10塩基対上流であってよい。場合によって、隣接する切断は、PAMの0~20塩基対またはほぼこの範囲内の塩基対上流であってよい。例えば、隣接する切断は、PAMの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30塩基対上流の近傍にあり得る。隣接する切断はまた、PAMの1~30塩基対下流である場合もある。
【0395】
S.pyogenes Cas9への代替法は、Cpf1ファミリーに由来する、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼであって、哺乳動物細胞内の切断活性を提示するエンドヌクレアーゼを含み得る。Cas9ヌクレアーゼと異なり、Cpf1を媒介するDNAの切断の結果は、短い3’突出を伴う二本鎖切断である。Cpf1の付着末端型切断パターンは、従来の制限酵素クローニングと類似する指向性遺伝子移入であって、遺伝子編集の効率を増大させる指向性遺伝子移入の可能性を開きうる。上記で記載したCas9の変異体およびオーソログと同様に、Cpf1もまた、CRISPRにより、SpCas9が優先するNGG PAM部位を欠く、ATリッチ領域またはATリッチゲノムへとターゲティングし得る部位の数を拡大し得る。
【0396】
1または複数の核局在化配列(NLS)を含むCRISPR酵素をコードするベクターを使用することができる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはほぼこれらの数のNLSが使用され得る。CRISPR酵素は、アミノ末端(ammo-terminus)において、またはこの近傍にNLSを含む場合もあり、カルボキシ末端において、またはこの近傍に、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはほぼこれらの数を超えるNLSを含む場合もあり、これらの任意の組合せ(例えば、アミノ末端における1または複数のNLSと、カルボキシ末端における1または複数のNLSとの組合せ)を含む場合もある。1つを超えるNLSが存在する場合、単一のNLSが、1つを超えるコピーで、かつ/または1もしくは複数のコピーで存在する、他の1もしくは複数のNLSと組み合わせて存在し得るように、各NLSは、他のNLSから独立に選択することができる。
【0397】
方法において使用されるCRISPR酵素は、最大6個のNLSを含み得る。NLSに最も近傍のアミノ酸がN末端またはC末端から、ポリペプチド鎖に沿って、約50アミノ酸以内、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、または50アミノ酸以内にある場合に、NLSはN末端またはC末端の近傍にあると考えられる。
【0398】
ガイドRNA
本明細書で使用される「ガイドRNA」という用語、およびその文法的同等物は、標的DNAに特異的であることが可能であり、Casタンパク質と複合体を形成し得るRNAを指す場合がある。RNA/Cas複合体は、Casタンパク質を標的DNAに「ガイド」することを支援し得る。
【0399】
本明細書で開示される方法はまた、細胞または胚へと、少なくとも1つのガイドRNA、または少なくとも1つのガイドRNAをコードする核酸、例えば、DNAを導入するステップも含み得る。ガイドRNAは、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼと相互作用して、エンドヌクレアーゼを、その部位において、ガイドRNAの5’末端が、染色体配列内の特異的プロトスペーサー配列と塩基対合する、特異的標的部位へと導きうる。
【0400】
ガイドRNAは、2つのRNA、例えば、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含み得る。ガイドRNAは、ある場合には、crRNAおよびtracrRNAの部分(例えば、機能的な部分)の融合により形成される、単一鎖RNAまたは単一のガイドRNA(sgRNA)を含み得る。ガイドRNAはまた、crRNAおよびtracrRNAを含む二重RNAでもあり得る。さらに、crRNAは、標的DNAとハイブリダイズし得る。
【0401】
上記で論じた通り、ガイドRNAは、発現産物であり得る。例えば、ガイドRNAをコードするDNAは、ガイドRNAをコードする配列を含むベクターであり得る。ガイドRNAは、細胞または生物に、ガイドRNAをコードする配列およびプロモーターを含む単離ガイドRNAまたは単離プラスミドDNAをトランスフェクトすることにより、細胞または生物へと移入させることができる。ガイドRNAはまた、ウイルスを媒介する遺伝子送達を使用するなど、他の形で、細胞または生物へと移入させることもできる。
【0402】
ガイドRNAは、単離ガイドRNAであり得る。例えば、ガイドRNAは、単離RNAの形態で、細胞または生物へとトランスフェクトすることができる。ガイドRNAは、当分野において公知の任意のin vitro転写系を使用する、in vitro転写により調製することができる。ガイドRNAは、細胞へと、ガイドRNAのコード配列を含むプラスミドの形態ではなく、単離RNAの形態で移入させることができる。
【0403】
ガイドRNAは、3つの領域を含み得る:染色体配列中の標的部位に相補的であり得る5’末端の第1の領域、ステムループ構造を形成し得る第2の内部領域、および一本鎖であり得る第3の3’領域。各ガイドRNAの第1の領域はまた、各ガイドRNAが融合タンパク質を特定の標的部位にガイドするように異なる場合がある。さらに、各ガイドRNAの第2および第3の領域は、全てのガイドRNAで同一な場合がある。
【0404】
ガイドRNAの第1の領域は、ガイドRNAの第1の領域が標的部位と塩基対合できるように染色体配列中の標的部位の配列に相補的であり得る。場合によって、ガイドRNAの第1の領域は、10ヌクレオチド~25ヌクレオチドまたはほぼこの範囲(すなわち、10nt~25nt、または約10nt~約25nt、または10nt~約25nt、または約10nt~25nt)、またはそれよりも多くを含み得る。例えば、ガイドRNAの第1の領域と染色体配列中の標的部位との間の塩基対合領域は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、もしくはそれよりも多いヌクレオチドの長さ、またはほぼこれらの数のヌクレオチドの長さであり得る。ある場合には、ガイドRNAの第1の領域は、19、20、もしくは21ヌクレオチドまたはほぼこれらの数のヌクレオチドの長さであり得る。
【0405】
ガイドRNAはまた、二次構造を形成する第2の領域を含み得る。例えば、ガイドRNAにより形成される二次構造は、ステム(またはヘアピン)およびループを含み得る。ループおよびステムの長さは、変動し得る。例えば、ループは、3~10ヌクレオチドまたはほぼこの長さの範囲であることが可能であり、かつステムは、6~20塩基対またはほぼこの長さの範囲であり得る。ステムは、1~10または約10ヌクレオチドの1または複数のバルジを含み得る。第2の領域の全長は、16~60ヌクレオチドまたはほぼこの長さの範囲であり得る。例えば、ループは、4ヌクレオチドの長さであり得るか、またはほぼこの長さであることが可能であり、ステムは、12塩基対であり得るか、またはほぼこの長さであり得る。
【0406】
ガイドRNAはまた、3’末端において、本質的に一本鎖であり得る第3の領域も含み得る。例えば、第3の領域は、ある場合には、目的の細胞内の任意の染色体配列と相補性ではなく、ある場合には、ガイドRNAの残余部分と相補性ではない。さらに、第3の領域の長さは、変動し得る。第3の領域は、4ヌクレオチドの長さを超えうるか、またはほぼこの長さを超えうる。例えば、第3の領域の長さは、5~60ヌクレオチドまたはほぼこの長さの範囲であり得る。
【0407】
ガイドRNAは、遺伝子標的の任意のエクソンまたはイントロンをターゲティングし得る。場合によって、ガイドは、遺伝子のエクソン1または2をターゲティングする場合があり、他の場合には、ガイドは、遺伝子のエクソン3または4をターゲティングする場合がある。組成物は、全てが同じエクソンをターゲティングする複数のガイドRNA、または場合によって、異なるエクソンをターゲティングし得る複数のガイドRNAを含み得る。遺伝子のエクソンおよびイントロンをターゲティングすることができる。
【0408】
ガイドRNAは、20ヌクレオチドの核酸配列またはほぼこの長さの核酸配列をターゲティングし得る。標的核酸は、20ヌクレオチド未満またはほぼこの長さ未満であり得る。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、もしくは1~100ヌクレオチドの間のいずれかの長さ、または少なくともほぼこの長さであり得る。標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、もしくは1~100ヌクレオチドの間のいずれかの長さ、または最大でほぼこの長さであり得る。標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドのすぐの5’側の20塩基であり得るか、またはほぼこの長さであり得る。ガイドRNAは、核酸配列をターゲティングし得る。標的核酸は、少なくとも1~10個、1~20個、1~30個、1~40個、1~50個、1~60個、1~70個、1~80個、1~90個、もしくは1~100個、または少なくともほぼこれらの数であり得る。
【0409】
ガイド核酸、例えばガイドRNAは、別の核酸、例えば、細胞ゲノム内の標的核酸またはプロトスペーサーにハイブリダイズし得る核酸を指す場合がある。ガイド核酸は、RNAであり得る。ガイド核酸は、DNAであり得る。ガイド核酸は、核酸部位の配列に特異的に結合するように、プログラムまたはデザインすることができる。ガイド核酸は、ポリヌクレオチド鎖を含むことが可能であり、単一のガイド核酸と呼ばれうる。ガイド核酸は、2つのポリヌクレオチド鎖を含むことが可能あり、二重ガイド核酸と呼ばれうる。ガイドRNAは、細胞または胚へと、RNA分子として導入することができる。例えば、RNA分子は、in vitroで転写することもでき、かつ/または化学的に合成することもできる。RNAは、合成DNA分子、例えばgBlocks(登録商標)遺伝子断片から転写され得る。次いで、ガイドRNAは、細胞または胚へと、RNA分子として導入することができる。ガイドRNAはまた、細胞または胚へと、RNA以外の核酸分子、例えば、DNA分子の形態で導入することもできる。例えば、ガイドRNAをコードするDNAは、目的の細胞内または胚内のガイドRNAの発現のためのプロモーター制御配列に作動可能に連結することができる。RNAコード配列は、RNAポリメラーゼIII(PolIII)により認識されるプロモーター配列に作動可能に連結することができる。ガイドRNAを発現するために使用できるプラスミドベクターは、px330ベクターおよびpx333ベクター(
図11および
図89)を含むがこれらに限定されない。場合によって、プラスミドベクター(例えば、px333ベクター)は、少なくとも2つのガイドRNAをコードするDNA配列を含み得る。例えば、GGTA1-10およびGal2-2、またはGGTA1-10、Gal2-2、およびNLRC5-6を導入するために、px333ベクターを使用することができる。他の場合には、px333ベクターを用いてNLRC5-6およびGal2-2を導入することができる。
【0410】
ガイドRNAをコードするDNA配列もまた、ベクターの一部であり得る。さらに、ベクターは、さらなる発現制御配列(例えば、エンハンサー配列、Kozak配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列など)、選択用マーカー配列(例えば、抗生剤耐性遺伝子)、複製起点などを含み得る。ガイドRNAをコードするDNA分子はまた、直鎖状でもあり得る。ガイドRNAをコードするDNA分子はまた、環状でもあり得る。
【0411】
RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードするDNA配列を細胞へと導入する場合、各DNA配列は、個別の分子(例えば、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼのコード配列を含有する1つのベクターと、ガイドRNAのコード配列を含有する第2のベクターと)の一部の場合もあり、同じ分子(例えば、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼおよびガイドRNAの両方のコード(および調節)配列を含有する1つのベクター)の一部の場合もある。
【0412】
ガイドRNAは、ブタまたはブタ細胞中の遺伝子をターゲティングし得る。場合によって、ガイドRNAは、ブタNLRC5遺伝子、例えば表4に列挙される配列をターゲティングし得る。場合によって、ガイドRNAは、ブタNLRC5、GGTA1またはCMAH遺伝子をターゲティングするようにデザインされ得る。ガイドRNAを作製するための例示的なオリゴヌクレオチドは、表5に列挙されている。場合によって、少なくとも2つのガイドRNAが導入される。少なくとも2つのガイドRNAは、2つの遺伝子をそれぞれにターゲティングし得る。例えば、場合によって、第1のガイドRNAがGGTA1をターゲティングする場合があり、かつ第2のガイドRNAがGal2-2をターゲティングする場合がある。場合によって、第1のガイドRNAがNLRC5をターゲティングする場合があり、かつ第2のガイドRNAがGal2-2をターゲティングする場合がある。他の場合には、第1のガイドRNAがGGTA1-10をターゲティングする場合があり、かつ第2のガイドRNAがGal2-2をターゲティングする場合がある。
【0413】
ガイド核酸は、核酸に新たな特色または増強された特色をもたらす、1または複数の修飾を含み得る。ガイド核酸は、核酸アフィニティータグを含み得る。ガイド核酸は、合成ヌクレオチド、合成ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド誘導体、および/または修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0414】
場合によって、gRNAは、修飾を含み得る。修飾は、gRNAの任意の位置において施すことができる。単一のgRNAに、1つを超える修飾を施すことができる。gRNAは、修飾後に、品質管理を経る場合がある。場合によって、品質管理は、PAGE、HPLC、MS、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0415】
gRNAの修飾は、置換、挿入、欠失、化学修飾、物理修飾、安定化、精製、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0416】
gRNAはまた、5’アデニル酸、5’グアノシン三リン酸キャップ、5’N7-メチルグアノシン三リン酸キャップ、5’三リン酸キャップ、3’リン酸、3’チオリン酸、5’リン酸、5’チオリン酸、Cis-Synチミジン二量体、三量体、C12スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、dSpacer、PCスペーサー、rSpacer、Spacer 18、Spacer 9、3’-3’修飾、5’-5’修飾、脱塩基、アクリジン、アゾベンゼン、ビオチン、ビオチンBB、ビオチンTEG、コレステリルTEG、デスチオビオチンTEG、DNP TEG、DNP-X、DOTA、dT-ビオチン、二重ビオチン、PCビオチン、ソラーレンC2、ソラーレンC6、TINA、3’DABCYL、Black Hole Quencher 1、Black Hole Quencher 2、DABCYL SE、dT-DABCYL、IRDye QC-1、QSY-21、QSY-35、QSY-7、QSY-9、カルボキシルリンカー、チオールリンカー、2’デオキシリボヌクレオシド類似体プリン、2’デオキシリボヌクレオシド類似体ピリミジン、リボヌクレオシド類似体、2’-0-メチルリボヌクレオシド類似体、糖修飾類似体、ゆらぎ/ユニバーサル塩基、蛍光色素標識、2’フルオロRNA、2’O-メチルRNA、メチルホスホネート、ホスホジエステルDNA、ホスホジエステルRNA、ホスホチオエート(phosphothioate)DNA、ホスホロチオエートRNA、UNA、シュードウリジン-5’-三リン酸、5-メチルシチジン-5’-三リン酸、またはこれらの任意の組合せにより修飾され得る。
【0417】
場合によって、修飾は、永続性である。他の場合には、修飾は、一過性である。場合によって、複数の改変を、gRNAに施す。gRNAの修飾は、それらのコンホメーション、極性、疎水性、化学反応性、塩基対合相互作用、またはこれらの任意の組合せなど、ヌクレオチドの物理化学的特性を変更し得る。
【0418】
修飾はまた、ホスホロチオエート置換でもあり得る。場合によって、天然のホスホジエステル結合は、細胞内ヌクレアーゼによる急速な分解を受けやすく、ホスホロチオエート(PS)結合置換を使用する、ヌクレオチド間連結の修飾は、細胞内分解による加水分解に対して、より安定であり得る。修飾は、gRNAの安定性を増大させることができる。修飾はまた、生体活性も増強し得る。場合によって、ホスホロチオエート増強型RNAのgRNAは、RNアーゼA、RNアーゼT1、仔ウシ血清ヌクレアーゼ、またはこれらの任意の組合せを阻害し得る。これらの特性は、in vivoまたはin vitroの、ヌクレアーゼへの曝露の可能性が高い適用におけるPS-RNAのgRNAの使用を可能とし得る。例えば、ホスホロチオエート(PS)結合は、gRNAの5’末端または3’末端の、最後の3~5ヌクレオチドの間に導入し、これにより、エキソヌクレアーゼ分解を阻害することができる。場合によって、ホスホロチオエート結合は、エンドヌクレアーゼによる攻撃を低減するように、gRNAの全体を通して付加することもできる。
【表4】
【表5】
【0419】
相同組換え
相同組換えもまた、本明細書で開示される関連する遺伝子改変のいずれかのために使用することができる。相同組換えは、内因性遺伝子における部位特異的な改変を可能にし得るため、ゲノム中への新規の改変を操作することができる。例えば、DNA分子間で遺伝子配列情報を渡すための相同組換え(遺伝子変換および古典的な鎖切断/再結合)の能力は、ターゲティングされた相同組換えを与えることができ、また、遺伝子操作および遺伝子マニピュレーションにおける強力な方法であり得る。
【0420】
相同組換えを経た細胞は、多数の方法によって同定することができる。例えば、選択方法は、例えばヒト抗gal抗体によって、細胞に対する免疫応答の非存在を検出し得る。選択方法はまた、細胞または組織に曝露された場合のヒト血液の凝固のレベルを評価することを含み得る。抗生剤耐性を介する選択がスクリーニングのために使用され得る。
【0421】
トランスジェニック非ヒト動物の作製
ランダム挿入
本明細書に記載される方法の、1または複数のトランス遺伝子は、細胞のゲノム中の任意の遺伝子座へと、ランダムに挿入することができる。これらのトランス遺伝子は、ゲノム内のいずれの場所に挿入されても機能的であり得る。例えば、トランス遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードする場合もあり、内因性プロモーターの制御下にある位置へと挿入される場合もある。代替的に、トランス遺伝子は、遺伝子のイントロンまたは遺伝子のエクソン、プロモーター、または非コード領域などの遺伝子へと挿入することができる。トランス遺伝子は、遺伝子の第1のエクソンに組み込まれ得る。
【0422】
トランス遺伝子配列をコードするDNAは、細胞の染色体へと、ランダムに挿入することができる。ランダムな組込みは、当業者に公知の細胞にDNAを導入する任意の方法から得ることができる。これには、電気穿孔、超音波穿孔、遺伝子銃の使用、リポトランスフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、デンドリマーの使用、マイクロインジェクション、アデノウイルスベクター、AAVベクター、およびレトロウイルスベクターを含むウイルスベクターの使用、ならびに/またはII群のリボザイムが含まれるが、これらに限定されない。
【0423】
トランス遺伝子をコードするDNAはまた、レポーター遺伝子の活性化を介して、トランス遺伝子またはその発現産物の存在を検出し得るよう、レポーター遺伝子を含むようにデザインすることもできる。上記で開示したレポーター遺伝子など、当技術分野で公知の任意のレポーター遺伝子を使用することができる。細胞培養物中で、レポーター遺伝子が活性化した細胞を選択することにより、トランス遺伝子を含有する細胞を選択することができる。
【0424】
トランス遺伝子をコードするDNAは、電気穿孔を介して、細胞へと導入することができる(
図90)。DNAはまた、リポフェクション、感染、または形質転換を介して、細胞へと導入することもできる。電気穿孔および/またはリポフェクションを使用して、線維芽細胞にトランスフェクトすることができる。
【0425】
トランス遺伝子の発現は、発現アッセイ、例えば、qPCRにより検証することもでき、RNAのレベルを測定することにより検証することもできる。発現レベルはまた、コピー数も示し得る。例えば、発現レベルが極度に高度である場合、これは、トランス遺伝子の1つを超えるコピーが、ゲノム内に組み込まれたことを指し示し得る。代替的に、高度な発現は、トランス遺伝子が、高度な転写領域内に、例えば、高度に発現するプロモーターの近傍に組み込まれたことを指し示し得る。発現はまた、ウェスタンブロット法を介するなど、タンパク質レベルを測定することにより検証することもできる。
【0426】
部位特異的挿入
本明細書で開示される方法のうちのいずれかにおける、1または複数のトランス遺伝子の挿入は、部位特異的であり得る。例えば、1または複数のトランス遺伝子は、プロモーターと隣接して、例えば、Rosa26プロモーターと隣接して、またはこの近傍に挿入することができる。
【0427】
細胞のターゲティングされた遺伝子座の修飾は、標的遺伝子座に対する相同性を有するDNAを、細胞へと導入することによりもたらし得る。DNAは、構築物の組込みを含む細胞の選択を可能とするマーカー遺伝子を含み得る。標的ベクター内の相同DNAは、標的遺伝子座において、染色体DNAを組み換えうる。マーカー遺伝子は、相同DNA配列、3’側組換えアーム、および5’側組換えアームで挟むことができる。
【0428】
様々な酵素が、外来DNAの、宿主ゲノムへの挿入を触媒し得る。例えば、部位特異的リコンビナーゼは、顕著に異なる生化学的特性を伴う、2つのタンパク質ファミリー、すなわちチロシンリコンビナーゼ(この場合、DNAを、チロシン残基へと共有結合的に接合させる)と、セリンリコンビナーゼ(この場合共有結合的接合は、セリン残基において生じる)とへとクラスター分けすることができる。場合によって、リコンビナーゼは、Cre、fC31インテグラーゼ(Streptomyces属ファージfC31に由来するセリンリコンビナーゼ)、またはバクテリオファージ由来の部位特異的リコンビナーゼ(Flp、ラムダインテグラーゼ、バクテリオファージHK022リコンビナーゼ、バクテリオファージR4インテグラーゼ、およびファージTP901-1インテグラーゼを含む)を含み得る。
【0429】
構築物内では、発現制御配列もまた使用することができる。例えば、発現制御配列は、多様な細胞型内で発現する、構成的プロモーターを含み得る。例えば、適する強力な構成的プロモーターおよび/またはエンハンサーの中には、DNAウイルス(例えば、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、CMV、HSVなど)由来の、またはレトロウイルスLTR由来の発現制御配列がある。組織特異的プロモーターもまた、使用することもでき、発現を、特異的細胞系統へと導くのに使用することができる。下記の実施例で論じる実験はRosa26遺伝子プロモーターを使用して実行されるが、当業者に明白なように、遺伝子発現を導くことができる他のRosa26関連プロモーターを使用して、類似の結果を得ることができる。したがって、本明細書の記載は限定を意味するものではなく、むしろ多くの可能な実施例の1つを開示することを意味する。場合によって、より短いRosa26の5’上流配列を使用することができ、これはより短いにもかかわらず同程度の発現を達成することができる。点突然変異、部分欠失または化学修飾などのRosa26プロモーターの軽微なDNA配列変異体もまた有用である。
【0430】
Rosa26プロモーターは、哺乳動物において発現可能である。例えば、ブタRosa26遺伝子の5’フランキング配列に類似の配列も使用することができ、配列は、他の種(ヒト、ウシ、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウサギおよびラットなど)のRosa26相同体のプロモーターを含むがこれらに限定されない。Rosa26遺伝子は、異なる哺乳動物の種間で十分に保存されている場合があり、他の哺乳動物のRosa26プロモーターも使用され得る。
【0431】
部位特異的挿入を実施するためにCRISPR/Casシステムを使用することができる。例えば、ゲノムの挿入部位へのニック形成をCRISPR/Casによって行って、挿入部位におけるトランス遺伝子の挿入を容易とすることができる。
【0432】
本明細書に記載される方法は、DNAまたはRNA構築物が宿主細胞中に入ることを可能とするために使用され得る技法を用いることができ、技法は、リン酸カルシウム/DNA共沈殿、核へのDNAのマイクロインジェクション、電気穿孔、無傷な細胞との細菌プロトプラスト融合、トランスフェクション、リポフェクション、感染、粒子ボンバードメント、精子媒介性遺伝子移入、または当業者に公知の任意の他の技術を含むがこれらに限定されない。
【0433】
本明細書で開示される、ある特定の態様は、ベクターを用いうる。選択された宿主内で、複製可能であり、生存する限りにおいて、任意のプラスミドおよびベクターを使用することができる。当技術分野で公知のベクターおよび市販されているベクター(およびこれらの変異体または誘導体)は、方法における使用のための、1または複数の組換え部位を含むように操作することができる。ベクターは、pFastBac、pFastBacHT、pFastBacDUAL、pSFV、およびpTet-Splice(Invitrogen)、pEUK-C1、pPUR、pMAM、pMAMneo、pBI101、pBI121、pDR2、pCMVEBNA、およびpYACneo(Clontech)、pSVK3、pSVL、pMSG、pCH110、およびpKK232-8(Pharmacia,Inc.)、p3’SS、pXT1、pSG5、pPbac、pMbac、pMClneo、およびpOG44(Stratagene,Inc.)、およびpYES2、pAC360、pBlueBa-cHis A、B、およびC、pVL1392、pBlueBac111、pCDM8、pcDNA1、pZeoSV、pcDNA3 pREP4、pCEP4、およびpEBVHis(Invitrogen,Corp.)、ならびにこれらの変異体または誘導体などの真核細胞用発現ベクターを含み得るが、これに限定されない。
【0434】
これらのベクターを使用して、目的の遺伝子、例えば、トランス遺伝子、または目的の遺伝子の部分を発現させることができる。遺伝子の部分または遺伝子は、制限酵素ベースの技法などの公知の方法を使用することにより挿入することができる。
【0435】
細胞核移入を使用する類似の遺伝子改変された非ヒト動物の作製
遺伝子改変された非ヒト動物を作製する代替的な方法は、細胞核移入によるものであり得る。遺伝子改変された非ヒト動物を作製する方法は、a)1または複数の遺伝子の低減された発現を有し、かつ/または本明細書で開示される外因性ポリヌクレオチドを含む細胞を産生すること;b)第2の細胞を提供し、a)の結果としてもたらされた細胞の核を第2の細胞に移入して、胚を作製する胚を作製すること;c)胚を遺伝子改変された非ヒト動物に成長させることを含み得る。この方法における細胞は、除核細胞であり得る。a)の細胞は、任意の方法、例えば、本明細書に記載されるまたは当技術分野で公知の遺伝子破壊および/または挿入を使用して作製することができる。
【0436】
この方法は、本明細書で開示されるものと類似の遺伝子改変された非ヒト動物を作製するために使用することができる。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物を作製する方法は、a)NLRC5、TAP1および/またはC3の低減された発現を有する細胞を産生すること;b)第2の細胞を提供し、a)の結果としてもたらされた細胞の核を第2の細胞に移入して、胚を作製すること;およびc)胚を遺伝子改変された非ヒト動物に成長させることを含み得る。この方法における細胞は、除核細胞であり得る。
【0437】
この方法において使用される細胞は、本明細書に記載される任意の開示された遺伝子改変された細胞に由来し得る。例えば、破壊される遺伝子は、NRLC5、TAP1、および/またはC3に限定されない。遺伝子破壊とトランス遺伝子との他の組合せは、本出願の開示全体を通して見出すことができる。例えば、方法は、本明細書で開示される任意の非ヒト動物由来の第1の細胞を提供すること;第2の細胞を提供すること;a)の第1の細胞の核をb)の第2の細胞に移入すること;c)の産物から胚を作製すること;および胚を遺伝子改変された非ヒト動物に成長させることを含み得る。
【0438】
本明細書で開示される方法におけるa)の細胞は、接合体であり得る。接合体は、i)野生型非ヒト動物の精子および野生型非ヒト動物の卵子;ii)野生型非ヒト動物の精子および遺伝子改変された非ヒト動物の卵子;iii)遺伝子改変された非ヒト動物の精子および野生型非ヒト動物の卵子;ならびに/またはiv)遺伝子改変された非ヒト動物の精子および遺伝子改変された非ヒト動物の卵子の接合によって形成され得る。非ヒト動物は、ブタであり得る。
【0439】
本明細書で開示される方法におけるa)の細胞における1または複数の遺伝子は、ゲノム中の所望の位置に切断を生じることによって破壊され得る。例えば、切断は、二本鎖切断(DSB)であり得る。DSBは、Cas(例えば、Cas9)、ZFN、TALEN、およびメガヌクレアーゼを含むヌクレアーゼを使用して生じることができる。ヌクレアーゼは、天然で存在するヌクレアーゼまたは改変されたヌクレアーゼであり得る。ヌクレアーゼをコードする核酸が、ヌクレアーゼが発現される細胞に送達され得る。細胞中の遺伝子をターゲティングするCas9およびガイドRNAが細胞に送達され得る。場合によって、Cas9をコードするmRNA分子およびガイドRNAが細胞に注入され得る。場合によって、Cas9をコードするプラスミドおよびガイドRNAをコードする異なるプラスミドが、(例えば、感染によって)細胞に送達され得る。場合によって、Cas9およびガイドRNAの両方をコードするプラスミドが、(例えば、感染によって)細胞に送達され得る。
【0440】
上記のように、DSB後に、1または複数の遺伝子は、相同組換え(HR)および/または非相同末端結合(NHEJ)などのDNA修復機構によって破壊され得る。方法は、1または複数のトランス遺伝子をa)の細胞のゲノムに挿入することを含み得る。1または複数のトランス遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7)、B2M、これらの任意の機能的断片、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0441】
本明細書で提供される方法は、1または複数のトランス遺伝子を挿入することを含む場合があり、1または複数のトランス遺伝子は、任意の非ヒト動物または本明細書で開示される遺伝子改変された細胞中の任意のトランス遺伝子であり得る。
【0442】
遺伝子改変された非ヒト動物由来の細胞を使用して非ヒト動物を作製する方法も本明細書で開示される。細胞は、本明細書で開示される任意の遺伝子改変された非ヒト動物に由来し得る。方法は、a)遺伝子的に同定された非ヒト動物由来の細胞を提供すること;b)細胞を提供すること;c)a)の細胞の核をb)の細胞に移入すること;c)c)の生成物から胚を作製すること;およびd)胚を遺伝子改変された非ヒト動物に成長させることを含み得る。この方法の細胞は、除核細胞であり得る。
【0443】
さらに、方法におけるa)の細胞は、遺伝子改変された非ヒト動物由来の任意の細胞であり得る。例えば、本明細書で開示される方法におけるa)の細胞は、線維芽細胞または胎仔線維芽細胞などの体細胞であり得る。
【0444】
方法における除核細胞は、生物からの任意の細胞であり得る。例えば、除核細胞は、ブタ細胞であり得る。除核細胞は、卵子、例えば、除核未受精卵であり得る。
【0445】
本明細書で開示される遺伝子改変された非ヒト動物は、当技術分野で公知の任意の適する技法を使用して作製することができる。例えば、これらの技法は、(例えば、前核の)マイクロインジェクション、精子媒介性遺伝子移入、卵子または接合体の電気穿孔、および/または核移植を含むがこれらに限定されない。
【0446】
類似の遺伝子改変された非ヒト動物を作製する方法は、a)細胞中の1または複数の遺伝子を破壊すること、b)a)の結果としてもたらされた細胞を使用して胚を作製すること;およびc)胚を遺伝子改変された非ヒト動物に成長させることを含み得る。
【0447】
本明細書で開示される方法におけるa)の細胞は、体細胞であり得る。体細胞の種類または供給源に制限はない。例えば、それは、ブタに、または培養細胞株または任意の他の生細胞に由来し得る。細胞はまた、皮膚細胞、神経細胞、卵丘細胞、卵管上皮細胞、線維芽細胞(例えば、胎仔線維芽細胞)、または肝細胞であり得る。本明細書で開示される方法におけるa)の細胞は、野生型非ヒト動物、遺伝子改変された非ヒト動物、または遺伝子改変された細胞に由来し得る。さらには、b)の細胞は、除核卵(例えば、除核未受精卵)であり得る。
【0448】
除核もまた公知の方法によって実施することができる。例えば、第II中期の卵母細胞を、すぐの除核のために、任意選択で1ミリリットル当たり7~10マイクログラムまたはほぼこの量のサイトカラシンBを含有する、HECM中に入れるか、または、適する培地(例えば、10%発情期ウシ血清を加えたCRlaaなどの、胚培養培地)中に入れた後(例えば、24時間以内または16~18時間後)に除核することができる。除核はまた、マイクロピペットを使用して極体および隣接する細胞質を除去することによってマイクロサージャリーでも達成することができる。次いで、卵母細胞をスクリーニングして、除核が成功したものを同定することができる。卵母細胞をスクリーニングする1つの方法は、適する保持培地中で1ミリリットル当たり3~10マイクログラムまたはほぼこの量の33342ヘキスト色素を用いて卵母細胞を染色した後、10秒未満の紫外線照射の下で卵母細胞を見るものであり得る。次いで、除核が成功した卵母細胞を適する培養培地、例えば、10%の血清を加えたCRlaa中に入れることができる。卵母細胞の処理はまた、核移入のために最適化され得る。
【0449】
本発明において作製される胚は、子孫(例えば、子ブタ)を産生するために代理非ヒト動物(例えば、ブタ)に移入され得る。例えば、胚は、発情の日またはその1日後に、例えば全身麻酔下での正中線開腹術後に、レシピエント雌ブタの卵管に移入することができる。妊娠は、例えば超音波によって診断され得る。妊娠は、移入の28日後または約28日後に診断され得る。次いで、妊娠は、超音波検査によって2週間隔または約2週間隔で確認され得る。マイクロインジェクションされた子孫(例えば、子ブタ)の全ては、自然分娩によって出産され得る。妊娠および出産の情報(例えば、妊娠の時間、妊娠率、子孫の数、生存率など)が記録され得る。子孫の遺伝子型および表現型は、シーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)などの本出願を通して記載される任意の方法を使用して測定され得る。シーケンシングはまた、
図109および
図110Aに示すように、Zas
258シーケンシングであり得る。シーケンシング産物はまた、増幅産物の電気泳動によって検証され得る(
図110B)。例えば、CM1Fシーケンシングを
図111Aに示し、電気泳動産物を
図111Bに示す。
【0450】
培養細胞を直ちに、核移入(例えば、体細胞核移入)、胚移入、および/または妊娠の誘導のために使用することができ、安定な遺伝子改変に由来する胚が子孫(例えば、子ブタ)を生じることを可能にし得る。そのような手法は、時間および費用、例えば、遺伝子改変された細胞からの生きたおよび/または健常な子ブタの産生に失敗する結果になることもある費用のかかる細胞スクリーニングの月数を低減し得る。
【0451】
胚の生育および移入は、胚の生育および移入の産業において使用される標準手順を使用して実施することができる。例えば、代理母を使用することができる。胚はまた、例えばインキュベーターを使用することによって、培養物中で生育および移入され得る。場合によって、胚は、妊娠を確立するために、動物、例えば代理動物に移入され得る。
【0452】
本明細書で開示される同一の遺伝子型および/または表現型を有する複数の遺伝子改変された非ヒト動物を複製または作製することが望ましい場合がある。例えば、遺伝子改変された非ヒト動物は、交配(例えば、選択的な交配)によって複製され得る。遺伝子改変された非ヒト動物は、核移入(例えば、体細胞核移入)または細胞(例えば、卵母細胞、精子、接合体または胚性幹細胞)へのDNAの導入によって複製され得る。これらの方法は、複数の本明細書で開示される遺伝子改変された非ヒト動物を複製または作製するために複数回再現され得る。場合によって、細胞は、妊娠した遺伝子改変された非ヒト動物の胎仔から単離され得る。単離された細胞(例えば、胎仔細胞)は、妊娠した動物に類似または同一の複数の遺伝子改変された非ヒト動物を生成するために使用され得る。例えば、単離された胎仔細胞は、核移入(例えば、体細胞核移入)によって遺伝子改変された動物を生成するためのドナー核を提供し得る。
【0453】
V.使用方法
細胞、臓器、および/または組織は、本明細書で記載される通り、非ヒト動物からすることができる。細胞、臓器、および/または組織は、ex vivoにおいて遺伝子的に変更し、状況に応じて使用することができる。これらの細胞、臓器、および/または組織は、細胞ベースの治療のために使用することができる。これらの細胞、臓器、および/または組織を使用して、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)における疾患を処置または予防することができる。驚くべきことに、本明細書に記載される遺伝子改変は、拒絶の予防の一助となり得る。さらに、細胞、臓器、および/または組織は、移植に対して免疫系を寛容化する一助にもなるために寛容化ワクチンとされ得る。さらに、寛容化ワクチンは、自己免疫応答の阻害を含め、免疫系を和らげ得る。
【0454】
それを必要とする対象において疾患を処置する方法が本明細書で開示され、方法は、寛容化ワクチンを対象に投与すること;T細胞活性化を阻害する医薬物質を対象に投与すること;および遺伝子改変された細胞を対象に移植することを含み得る。T細胞活性化を阻害する医薬物質は、抗体であり得る。抗体は、本明細書で開示される抗CD40抗体であり得る。抗CD40抗体は、拮抗性抗体であり得る。抗CD40抗体は、アミノ酸配列:EPPTACREKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECLPCGESEFLDTWNRETHCHQHKYCDPNLGLRVQQKGTSETDTICTCEEGWHCTSEACESCV(配列番号487)内でエピトープに特異的に結合する抗CD40抗体であり得る。抗CD40抗体は、アミノ酸配列:EKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECL(配列番号488)内でエピトープに特異的に結合する抗CD40抗体であり得る。抗CD40抗体は、Fab’抗CD40Lモノクローナル抗体断片CDP7657であり得る。抗CD-40抗体は、FcRを操作されたFcサイレント抗CD40Lモノクローナルドメイン抗体であり得る。対象に移植される細胞は、本出願を通して記載される任意の遺伝子改変された細胞であり得る。対象に移植される組織または臓器は、遺伝子改変された細胞の1または複数を含み得る。場合によって、方法は、本出願に記載される1または複数の免疫抑制剤を投与することをさらに含む場合があり、例えば、B細胞を枯渇させる抗体、mTORインヒビター、TNF-アルファインヒビター、IL-6インヒビター、窒素マスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、および補体C3またはC5インヒビターの1または複数をレシピエントに提供することなどをさらに含み得る。
【0455】
疾患を処置する方法も本明細書で開示され、方法は、1または複数の細胞をそれを必要とする対象に移植することを含む。1または複数の細胞は、本明細書で開示される任意の遺伝子改変された細胞であり得る。場合によって、方法は、1または複数の細胞(例えば、遺伝子改変された細胞)を含む組織または臓器をそれを必要とする対象に移植することを含み得る。
【0456】
本明細書では、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)における疾患を処置または予防する方法であって、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)への、低減された発現を有する1または複数の遺伝子を含む遺伝子改変された非ヒト動物に由来する1または複数の細胞(臓器および/または組織を含む)の移植を含む方法について記載される。1または複数の細胞は、全体を通して記載される遺伝子改変された非ヒト動物に由来し得る。
【0457】
本明細書で開示される方法を、糖尿病、心血管疾患、肺疾患、肝臓疾患、皮膚疾患、または神経障害を含むがこれらに限定されない疾患を処置または予防するために使用することができる。例えば、方法は、パーキンソン病またはアルツハイマー病を処置または予防するために使用され得る。方法はまた、1型、2型、嚢胞性繊維症関連、外科的糖尿病、妊娠糖尿病、ミトコンドリア糖尿病、またはこれらの組合せを含む糖尿病を処置または予防するために使用され得る。場合によって、方法は、遺伝性糖尿病または遺伝性糖尿病の形態を処置または予防するために使用され得る。さらに、方法は、1型糖尿病を処置または予防するために使用され得る。方法はまた、2型糖尿病を処置または予防するために使用され得る。方法は、前糖尿病を処置または予防するために使用され得る。
【0458】
例えば、糖尿病を処置する場合、遺伝子改変された脾臓細胞をECDIにより固定し、レシピエントに与えることができる。さらに、遺伝子改変された膵島細胞が、インスリンを産生するために同じレシピエントに移植され得る。遺伝子改変された脾臓細胞および膵島細胞は、遺伝子的に同一なものであってよく、また、同じ遺伝子改変された非ヒト動物に由来し得る。
【0459】
本明細書で提供されるものには以下が含まれる:i)それを必要とする対象における状態を処置するための対象への投与における使用のための遺伝子改変された細胞、組織または臓器;ii)移植片に対する対象の免疫寛容化における使用のための、遺伝子改変された細胞、組織、または臓器を含む寛容化ワクチン;iii)対象におけるT細胞活性化、B細胞活性化、樹状細胞活性化、またはこれらの組合せの阻害における使用のための1または複数の医薬物質;またはiv)これらの任意の組合せ。
【0460】
本明細書で提供されるものには、それを必要とする対象における状態を処置するための対象への投与における使用のための遺伝子改変された細胞、組織または臓器も含まれる。対象は、寛容化ワクチンの使用によって遺伝子改変された細胞、組織または臓器に対して寛容化されていてもよく、または寛容化されてもよい。さらに、対象は、T細胞活性化、B細胞活性化、樹状細胞活性化、またはこれらの組合せを阻害する1または複数の医薬物質を投与され得る。
移植
【0461】
本明細書で開示される方法は、移植を含み得る。移植は、自家移植、同種移植、異種移植、または他の任意の移植であり得る。例えば、移植は、異種移植であり得る。移植はまた、同種移植でもあり得る。
【0462】
本明細書で使用される「異種移植(xenotransplantation)」およびその文法的同等物は、細胞、組織、または臓器の、レシピエントへの、移植、植込み、または輸注を伴う任意の手順であって、レシピエントとドナーとが異なる種である手順を包含し得る。本明細書で記載される、細胞、臓器、および/または組織の移植は、ヒトへの異種移植(xenotransplantation)のために使用することができる。異種移植(xenotransplantation)は、血管化異種移植(xenotransplant)、部分血管化異種移植(xenotransplant)、非血管化異種移植(xenotransplant)、異種ドレッシング、異種バンデッジ、およびナノ構造を含むがこれらに限定されない。
【0463】
本明細書で使用される「同種移植(allotransplantation)」およびその文法的同等物は、細胞、組織、または臓器の、レシピエントへの、移植、植込み、または輸注を伴う任意の手順であって、レシピエントとドナーとが同じ種である手順を包含し得る。本明細書で記載される、細胞、臓器、および/または組織の移植は、ヒトへの同種移植(allotransplantation)のために使用することができる。同種移植(allotransplantation)は、血管化同種移植(allotransplant)、部分血管化同種移植(allotransplant)、非血管化同種移植(allotransplant)、同種ドレッシング、同種バンデッジ、および同種構造を含むがこれらに限定されない。
【0464】
処置(例えば、本明細書で開示される処置のうちのいずれか)の後、移植片拒絶は、1または複数の野生型細胞を、レシピエントへと移植する場合と比較して、改善され得る。例えば、移植片拒絶は、超急性拒絶であり得る。移植片拒絶はまた、急性拒絶でもあり得る。他の種類の拒絶は、慢性拒絶を含み得る。移植片拒絶はまた、細胞を媒介する拒絶またはT細胞を媒介する拒絶でもあり得る。移植片拒絶はまた、ナチュラルキラー細胞を媒介する拒絶でもあり得る。
【0465】
場合によって、対象は、主要組織適合性複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)に対して感作される。例えば、対象は、パネル反応性抗体(PRA)スクリーニングにおいて陽性の結果を有し得る。場合によって、対象は、0.1~100%の計算されたPRA(cPRA)スコアを有し得る。cPRAスコアは、0.1~10%、5%~30%、10%~50%、20%~80%、40%~90%、50%~100%、またはほぼこれらの比率であり得る。場合によって、陽性のPRAスクリーニングを有する対象は、本発明の遺伝子改変された細胞を移植され得る。
【0466】
場合によって、対象は、単一抗原ビーズ(SAB)試験によるPRAレベルの定量化を実施された者であり得る。SAB試験は、対象が抗体を有するMHCまたはHLAを同定し得る。
【0467】
本明細書で使用される「~を改善すること」およびその文法的同等物は、当業者により認識される、任意の改善を意味し得る。例えば、移植の改善とは、超急性拒絶の減少であって、所望されない影響または症状の減殺、減少、または減弱を包含し得る減少を意味し得る。
【0468】
本開示は、糖尿病または前糖尿病を処置または予防する方法を記載する。例えば、方法は、本明細書に記載されるドナー非ヒト動物由来の1または複数の膵島細胞をレシピエントに、またはそれを必要とするレシピエントに投与することを含むがこれに限定されない。方法は、移植、または場合によって、異種移植であり得る。ドナー動物は、非ヒト動物であり得る。レシピエントは、霊長類動物、例えば非ヒト霊長類動物であってよく、サルを含むがこれに限定されない。レシピエントは、ヒト、および場合によって、糖尿病または前糖尿病を有するヒトであり得る。場合によって、糖尿病または前糖尿病を有する患者が移植で処置され得るかどうかは、例えば、Diabetes Care 2015年;38巻:1016~1029頁(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0469】
方法はまた、本明細書で提供されるトランスジェニックの細胞、組織および/または臓器、例えば、膵臓組織または細胞が霊長類動物、例えばヒトに移植され、移植後に霊長類動物は、より少ない免疫抑制療法を必要とするまたは免疫抑制療法を必要としない、異種移植の方法も含み得る。より少ない免疫抑制療法を必要とするまたは免疫抑制療法を必要としないことは、他の方法によって必要とされるものと比較した免疫抑制薬(複数可)/剤(複数可)の用量の低減(または完全な消失);他の方法によって必要とされるものと比較した免疫抑制薬(複数可)/剤(複数可)の種類数の低減(または完全な消失);他の方法によって必要とされるものと比較した免疫抑制処置の継続期間の低減(または完全な消失);および/または他の方法によって必要とされるものと比較した維持免疫抑制の低減(または完全な消失)を含むがこれらに限定されない。
【0470】
本明細書で開示される方法は、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)における疾患を処置または予防するために使用され得る。レシピエントは、任意の非ヒト動物またはヒトであり得る。例えば、レシピエントは、哺乳動物であり得る。レシピエントの他の例は、霊長類動物、例えば、サル、チンパンジー、バンブー、またはヒトを含むがこれらに限定されない。レシピエントがヒトの場合、レシピエントは、それを必要とするヒトであり得る。本明細書に記載される方法はまた、非霊長類動物、非ヒトレシピエントにおいても使用される場合があり、例えば、レシピエントは、イヌ、ネコ、ウマ、オオカミ、ウサギ、フェレット、アレチネズミ、ハムスター、チンチラ、ファンシーラット、モルモット、カナリア、インコ、またはオウムを含むがこれらに限定されない愛玩動物であり得る。レシピエントが愛玩動物の場合、愛玩動物は、それを必要とし得る。例えば、レシピエントは、それを必要とするイヌまたはそれを必要とするネコであり得る。
【0471】
移植は、当技術分野で公知の任意の移植による移植であり得る。移植片は、レシピエントの様々な部位に移植され得る。部位は、肝臓被膜下腔、脾臓被膜下腔、腎臓被膜下腔、網、網嚢、胃または腸粘膜下層、小腸の血管セグメント、静脈嚢(venous sac)、精巣、脳、脾臓、または角膜を含み得るがこれらに限定されない。例えば、移植は、被膜下移植であり得る。移植はまた、筋内移植でもあり得る。移植は、門脈内移植であり得る。
【0472】
移植は、ヒトまたは非ヒト動物由来の1または複数の細胞、組織、および/または臓器の移植であり得る。例えば、組織および/もしくは器官は、脳、心臓、肺、眼、胃、膵臓、腎臓、肝臓、腸、子宮、膀胱、皮膚、毛髪、爪、耳、腺、鼻、口腔、口唇、脾臓、歯茎、歯、舌、唾液腺、扁桃腺、咽頭、食道、大腸、小腸、直腸、肛門、甲状腺、胸腺、骨、軟骨、腱、靭帯、腎上体、骨格筋、平滑筋、血管、血液、脊髄、気管、尿管、尿道、視床下部、下垂体、幽門、副腎、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精嚢、陰茎、リンパ、リンパ節、またはリンパ管であり得る臓器であり得るか、または1もしくは複数の細胞は、脳、心臓、肺、眼、胃、膵臓、腎臓、肝臓、腸、子宮、膀胱、皮膚、毛髪、爪、耳、腺、鼻、口腔、口唇、脾臓、歯茎、歯、舌、唾液腺、扁桃腺、咽頭、食道、大腸、小腸、直腸、肛門、甲状腺、胸腺、骨、軟骨、腱、靭帯、腎上体、骨格筋、平滑筋、血管、血液、脊髄、気管、尿管、尿道、視床下部、下垂体、幽門、副腎、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精嚢、陰茎、リンパ、リンパ節、またはリンパ管であり得る臓器に由来し得る。1または複数の細胞はまた、脳、心臓、肝臓、皮膚、腸、肺、腎臓、眼、小腸、または膵臓にも由来し得る。1または複数の細胞は、膵臓、腎臓、眼、肝臓、小腸、肺、または心臓に由来し得る。1または複数の細胞は、膵臓、腎臓、眼、肝臓、小腸、肺、または心臓に由来する。1または複数の細胞は、膵臓に由来し得る。1または複数の細胞は、膵島細胞、例えば膵β細胞であり得る。さらに、1または複数の細胞は、膵島細胞および/または細胞クラスターなどであってよく、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞(例えば、PP細胞)、または膵ε細胞を含むがこれらに限定されない。一例では、1または複数の細胞は、膵α細胞であり得る。別の例では、1または複数の細胞は、膵β細胞であり得る。
【0473】
上記で論じたように、遺伝子改変された非ヒト動物は、異種移植片(例えば、細胞、組織および/または臓器)の提供において使用することができる。単に例示的な目的のために、遺伝子改変された非ヒト動物、例えばブタは、膵島および/または島細胞を含むがこれらに限定されない膵臓組織のドナーとして使用することができる。そのような組織に由来する膵臓組織または細胞は、膵島細胞、または島、または島細胞クラスターを含み得る。例えば、細胞は、移植できる膵島であり得る。より具体的には、細胞は、膵β細胞であり得る。細胞はまた、インスリン産生性であり得る。あるいは、細胞は、島様細胞であり得る。島細胞クラスターは、α、β、δ、PPまたはε細胞のいずれか1または複数を含み得る。本発明の方法および組成物によって処置される疾患は、糖尿病であり得る。移植可能な移植片は、膵島および/または膵島由来の細胞であり得る。トランスジェニック動物に対する改変は、膵島または膵島由来の細胞に対するものであり得る。場合によって、膵島または膵島由来の細胞は、ブタのものであり得る。場合によって、膵島由来の細胞は、膵β細胞を含む。
【0474】
ドナー非ヒト動物は、胚、胎仔、新生、若齢および成体を含むがこれらに限定されない、任意の発生段階にあり得る。例えば、ドナー細胞の島細胞は、成体非ヒト動物から単離することができる。ドナー細胞、例えば島細胞はまた、胎仔または新生非ヒト動物から単離することもできる。ドナー非ヒト動物は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1歳未満であり得る。例えば、島細胞は、6歳未満の非ヒト動物から単離することができる。島細胞はまた、3歳未満の非ヒト動物から単離することもできる。ドナーは、非ヒト動物であってよく、かつ0(胎仔を含む)~2年、2~4年、4~6年、6~8年、もしくは8~10年、またはほぼこれらの年数の任意の年齢であり得る。非ヒト動物は、10歳より高齢または約10歳より高齢であり得る。ドナー細胞は、ヒトに由来してもよい。
【0475】
島細胞は、様々な年齢の非ヒト動物から単離され得る。例えば、島細胞は、新生仔~2歳またはほぼこの年齢の非ヒト動物から単離され得る。島細胞はまた、胎仔~2歳またはほぼこの年齢の非ヒト動物から単離され得る。島細胞は、6月齢~2歳またはほぼこの年齢の非ヒト動物から単離され得る。島細胞はまた、7月齢~1歳またはほぼこの年齢の非ヒト動物から単離され得る。島細胞は、2~3歳またはほぼこの年齢の非ヒト動物から単離され得る。場合によって、非ヒト動物は、0歳未満(例えば、胎仔または胚)であり得る。場合によって、新生の島は、成体の島よりも頑強かつ単離後により不変である場合があり、酸化ストレスにより耐性の場合があり、(恐らくは発生期の島幹細胞サブ集団由来の)顕著な成長能力を呈する場合があるため、それらは、移植後に増殖し、移植部位に生着する能力を有し得る。
【0476】
糖尿病の処置に関して、新生の島は、顕著なレベルのインスリンを産生するように充分に成熟するには最大で4~6週または最大でほぼこの期間がかかる場合があるという欠点を有し得るが、新生の島の成熟に充分な期間にわたって外因性のインスリンで処理することによってこれを克服することができる。異種移植片の移植では、新生の島の生存および機能的な生着は、ドナー特異的なc-ペプチドレベル(これは任意のレシピエントの内因性c-ペプチドから容易に区別される)を測定することによって決定され得る。
【0477】
上記で論じたように、成体細胞を単離することができる。例えば、成体非ヒト動物の島、例えば成体ブタ細胞を単離することができる。次いで、島は、外分泌組織を汚染する調製物を枯渇させるために移植前に1~3日間またはほぼこの期間にわたり培養することができる。処置の前に、島をカウントし、蛍光カルセイン-AMおよびヨウ化プロピジウムの二重染色によって生存率を評価することができる。75%より大きい島細胞の生存率が使用され得る。しかしながら、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%より大きい、またはほぼこれらの比率より大きい細胞生存率が使用され得る。例えば、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~95%、もしくは90%~100%、またはほぼこれらの比率の生存率を呈する細胞が使用され得る。さらに、純度は、全組織当たり80%より多いまたは約80%より多い島であり得る。純度はまた、全組織当たり少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは99%の島、または少なくともほぼこれらの比率の島であり得る。例えば、純度は、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~100%、90%~95%、もしくは95%~100%、またはほぼこれらの純度であり得る。
【0478】
ダイナミック潅流(dynamic perifusion)によって評価される(assed)グルコース刺激インスリン分泌および生存率を含む島の機能的特性が、処置前にin vitroで決定され得る(Balamurugan、2006年)。例えば、非ヒト動物の島細胞、例えばトランスジェニックブタ島細胞は、移植に適するように、それらを拡大させ、成熟させ、かつ/または精製するためにin vitroで培養され得る。
【0479】
島細胞はまた、刻んだ膵臓の標準的なコラゲナーゼ消化によって単離され得る。例えば、無菌技法を使用して、腺を、組織解離性の酵素(膵臓の急速な解離およびランゲルハンスの健康、無傷かつ機能的な島の最大回収のために配合された精製された酵素の混合物、ここでこれらの酵素の標的基質は、完全には同定されないが、膵臓腺房組織の細胞間マトリックスを含む、コラーゲンおよび非コラーゲンタンパク質であると推定される)(1.5mg/ml)を用いて膨張させ、過剰の脂肪、血管および結合組織を取り除き、刻み、120rpmで、15分間振とう水浴中で、37℃で消化することができる。消化は、消化の間の細胞損傷を回避するために組織解離性酵素と混合したリグノカインを使用して達成され得る。消化の後、細胞は、滅菌ビーカー中に、滅菌50mm~1000mmのメッシュ、例えば、100mm、200mm、300mm、400mm、500mm、600mm、700mm、800mm、900mm、または1000mmのメッシュを通過させてもよい。さらに、第2の消化過程を、任意の未消化組織に使用してもよい。
【0480】
島はまた、成体ブタの膵臓から単離され得る(Brandhorstら、1999年)。膵臓は、適する供給源のブタから回収し、膵臓周囲の組織を除去し、膵臓を、脾臓の葉に、および十二指腸/結合葉(connecting lobe)に分けて、各々の葉の管にカニューレ挿入し、その葉を組織解離性の酵素で膨張させる。膵臓の葉は、リコルディチャンバに入れ、温度を28~32℃まで漸増し、膵臓の葉を、酵素活性および機械的な力によって解離する。解放された島を、腺房および管状組織から、連続密度勾配を使用して分離する。精製された膵島を、2~7日間またはほぼこの期間にわたり培養し、特徴付けにかけ、全ての仕様を満たす島生成物を、移植用に出荷する(Korbuttら、2009年)。
【0481】
移植前、移植後、および/または移植時におけるドナー細胞、臓器、および/または組織は、機能的であり得る。例えば、移植された細胞、臓器、および/または組織は、移植後、少なくとも1、5、10、20、30日間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。移植された細胞、臓器、および/または組織は、移植後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。移植された細胞、臓器、および/または組織は、移植後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、もしくは30年間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり機能的であり得る。場合によって、移植された細胞、臓器、および/または組織は、最長でレシピエントの生涯にわたり機能的であり得る。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないことも指し示し得る。
【0482】
さらに、移植された細胞、臓器、および/または組織は、その意図される正常な働きの100%で機能し得る。移植された細胞、臓器、および/または組織はまた、その意図される正常な働きの少なくとも50、60、65、70、75、80、85、90、95、99、もしくは100%、または少なくともほぼこれらの比率、例えば、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100%、またはほぼこれらの比率で機能し得る。ある特定の例では、移植された細胞、臓器、および/または組織は、(米国医師会により決定される正常な機能の移植されていない細胞、臓器、または組織と比較した場合に)その意図される正常な働きの100%を超えて機能し得る。例えば、移植された細胞、臓器、および/または組織は、その意図される正常な働きの110、120、130、140、150、175、200%もしくはより高く、またはほぼこれらの比率、例えば、100~125、125~150、150~175、175~200%、またはほぼこれらの比率で機能し得る。
【0483】
ある特定の場合には、移植された細胞は、少なくともまたは少なくとも約1日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞はまた、少なくともまたは少なくとも約7日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくともまたは少なくとも約14日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくともまたは少なくとも約21日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくともまたは少なくとも約28日間にわたり機能的であり得る。移植された細胞は、少なくともまたは少なくとも約60日間にわたり機能的であり得る。
【0484】
移植の成功の別の指標は、レシピエントが免疫抑制療法を要求しない日数であり得る。例えば、本明細書で提供される処置(例えば、移植)の後、レシピエントは、少なくとも1、5、10、100、365、500、800、1000、2000、4000もしくはそれよりも多い期間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないことも指し示し得る。
【0485】
場合によって、レシピエントは、少なくとも1日または少なくとも約1日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントはまた、少なくともまたは少なくとも約7日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約14日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約21日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約28日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約60日間にわたり、免疫抑制療法を要求しなくてもよい。さらには、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、もしくは50年間、または少なくともほぼこれらの期間、例えば、少なくとも1~2、2~3、3~4、4~5、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~50年間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり免疫抑制療法を要求しなくてもよい。
【0486】
移植の成功の別の指標は、レシピエントが、低減された免疫抑制療法を要求する日数であり得る。例えば、本明細書で提供される処置の後、レシピエントは、少なくとも1、5、10、50、100、200、300、365、400、500日間、または少なくともほぼこれらの期間、例えば、少なくとも1~30、30~120、120~365、365~500日間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。これは、移植が成功したことを指し示し得る。これはまた、移植された細胞、組織、および/または臓器の拒絶が、見られないかまたは見られても最小であることも指し示し得る。
【0487】
例えば、レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約1日間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。レシピエントはまた、少なくとも7日間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約14日間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約21日間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約28日間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約60日間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。さらには、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、もしくは50年間、または少なくともほぼこれらの期間、例えば、少なくとも1~2、2~3、3~4、4~5、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~50年間、または少なくともほぼこれらの期間にわたり、低減された免疫抑制療法を要求する場合がある。
【0488】
本明細書で使用される「低減された」およびその文法的同等物は、1または複数の野生型細胞を、レシピエントへと移植する場合に要求される免疫抑制療法と比較して、低用量の免疫抑制療法を指す場合がある。
【0489】
ドナー(例えば、移植用移植片および/または寛容化ワクチン中の細胞のドナー)は、哺乳動物であり得る。同種移植片のドナーは、未改変のヒト細胞、組織、および/または臓器であってよく、多能性幹細胞を含むがこれに限定されない。異種移植片のドナーは、哺乳動物などの非ヒト動物由来の任意の細胞、組織、および/または臓器であり得る。場合によって、哺乳動物は、ブタであり得る。
【0490】
本発明の方法は、免疫寛容化されたレシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)に1または複数のドナー細胞を移植することによって疾患を処置することをさらに含み得る。
【実施例0491】
(実施例1)
ブタにおいてGGTA1、CMAH、NLRC5、B4GALNT2、および/またはC3遺伝子を破壊するためのガイドRNAを発現するプラスミドの生成
遺伝子改変されたブタからは、レシピエントにおいて低い免疫拒絶を誘導するか、もしくは免疫拒絶を誘導しない移植片、および/またはレシピエントにおける免疫寛容化を増強する寛容化ワクチンとしての細胞が得られる。そのようなブタは、遺伝子改変されていない対応する動物と比較して、MHC分子(例えば、MHC I分子および/またはMHC II分子)を調節するいずれかの遺伝子の発現が低減されていることになる。そのような遺伝子の発現を低減させることにより、結果として、MHC分子の発現および/または機能が低下することになる。これらの遺伝子は、MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合性ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー群2Dリガンド、CXCR3リガンド、C3、およびCIITAのうちの1つまたは複数であるであろう。さらに、またはあるいは、そのようなブタは、ヒトでは発現されていない内因性遺伝子のタンパク質発現低下を有することになる(例えば、CMAH、GGTA1および/またはB4GALNT2)。例えば、このブタは、NLRC5、TAP1、C3、CXCL10、MICA、MICB、CIITA、CMAH、GGTA1および/またはB4GALNT2のうちの1つまたは複数のタンパク質発現低下を有することになる。場合によって、ブタは、NLRC5、C3、CXCL10、CMAH、GGTA1および/またはB4GALNT2のタンパク質発現低下を有することになる。
【0492】
本実施例は、CRISPR/cas9系を使用してブタにおけるGGTA1、CMAH、NLRC5、B4GALNT2および/またはC3遺伝子を破壊するためのプラスミドを生成するための例示的な方法を示す。プラスミドを、Cas9 DNAエンドヌクレアーゼとガイドRNAとを同時に発現するpx330ベクターを使用して生成した。
【0493】
px330-U6-キメラ_BB-CBh-hSpCas9(#42230)プラスミドは、細菌の穿刺培養形式でAddgeneから入手した。穿刺培養物を、アンピシリンを含有する予温したLB寒天プレート上に画線し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、単一のコロニーを選択し、アンピシリンを含有する液体LB一晩培養物に接種した(ミニプレップについては5mL、またはマキシプレップについては80~100mL)。ミニプレップは、Qiagenキットを製造元の指示書に従って使用して行った。プラスミドをヌクレアーゼ非含有水に溶出させ、ストックを-20℃で保管した。GGTA1、CMAH、NLRC5、C3、およびB4GALNT2をターゲティングするためにデザインしたオリゴヌクレオチドを表6に示す。オリゴヌクレオチドは、IDTにより合成した。
図7A~
図7E、
図8A~
図8E、
図9A~
図9E、
図10A~
図10E、および
図11A~
図11Eは、GGTA1(すなわち、px330/Gal2-1)(
図7A~
図7E)、CMAH(すなわち、px330/CM1F)(
図8A~
図8E)、NLRC5(すなわち、px330/NL1_第1)(
図9A~
図9E)、C3(すなわち、px330/C3-5)(
図10A~
図10E)、およびB4GALNT2(すなわち、px330/B41_第2)(
図11A~
図11E)をターゲティングするプラスミドをクローニングするためのクローニングス戦略を示す。構築したpx330プラスミドを、表7に示すシーケンシングプライマーを使用してシーケンシングすることにより、および
図109に示す通りシーケンシングすることにより、検証した。オリゴヌクレオチドを、ヌクレアーゼ非含有水を用いて100μMで再懸濁させて、-20℃の冷凍庫内に保管した。
【0494】
ベクター消化:5μgのpx330ストックと、5μLの10×FastDigest
Reaction Bufferと、35μLのヌクレアーゼ非含有水と、5μLのFastDigest BbsI酵素(切断部位:GAAGAC)とを含有する反応溶液中で、px330ベクターを消化した。反応溶液を37℃で15分間インキュベートし、65℃で15分間、熱不活性化した。ベクターを脱リン酸化するために、0.2μL(2U;1U/1pmolのDNA末端)のCIPを添加し、得られた混合物を、37℃で60分間インキュベートした。直線化されたプラスミドを、Qiagen PCR Cleanupキットを使用して精製し、ヌクレアーゼ非含有水に溶出させ、使用するまで-20℃で保管した。
【0495】
オリゴヌクレオチドアニーリングおよびリン酸化:1μLの100uM フォワードオリゴヌクレオチド、1μLの100uM リバースオリゴヌクレオチド、1μLの10×T4リガーゼ緩衝液、6μLのヌクレアーゼ非含有水、1μLのポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)を混合することにより、溶液を作製した。得られた溶液を、サーマルサイクラーを用い、次のプログラムを実行してインキュベートした:30分間37℃、5分間95℃、0.1℃/秒で25℃まで低下。
【0496】
ライゲーション反応:ヌクレアーゼ非含有水で1:250希釈されたアニールされたオリゴヌクレオチドと、2μLの希釈されたアニールされたオリゴヌクレオチドと、100ngの直線化された/脱リン酸化されたpx330ベクターと、5μLの10×T4リガーゼ緩衝液と、50μLの最終体積にするためのヌクレアーゼ非含有水と、2.5μLのT4 DNAリガーゼとを混合することにより、溶液を作製した。溶液を室温で4時間インキュベートし、次いで、65℃で10分間、熱不活性化した。
【0497】
形質転換:形質転換前に15分間、-80℃の冷凍庫からのTOP10 E.coliバイアルを氷上で解凍した。2μLのライゲーション反応生成物を細胞に添加し、チューブを穏やかに軽く叩くことにより混合した。チューブを、氷上で5分間インキュベートして、42℃の水浴中で30秒間熱ショックを与え、熱ショック後、氷上に戻してさらに2分間置いた。50μLの形質転換された細胞を、アンピシリンを含有するLB寒天上に播種し、ピペット先端部で広げた。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。
【0498】
適正に挿入されたオリゴヌクレオチドのコロニーPCRスクリーニング:3×コロニーをプレートから選択し、プレートの底に1~3のラベルを貼った。15μLの10×Standard Taq Reaction Bufferと、3μLの10mM dNTP mixと、0.5μLの100uM px330-F1プライマー(表7中の配列番号161)と、0.5μLの100uM px330-R1プライマー(表7中の配列番号162)と、130μLのヌクレアーゼ非含有水と、1μLのStandard Taq Polymeraseとを混合することにより、PCR反応のためのマスターミックスを調製した。マスターミックスを短時間ボルテックスし、次いで1~3のラベルを貼った3本のPCRのチューブに50μLを分注した。ピペット先端部で寒天プレート上のコロニー#1を軽くつつき、ピペットに吸い上げ、ピペットからPCRチューブ#1の中に排出した。コロニーごとに新しい先端部を使用して、コロニーごとに繰り返してスクリーニングした。チューブをサーマルサイクラー内に配置して、次のプログラムを実行した:5分間95℃、30秒間95℃、30秒間52℃、30秒間68℃、サイクルステップ2~4を30サイクル、5分間68℃、使用するまで4℃で保持。Qiagen PCR Cleanup Kitを、製造元のプロトコールに従って使用して、PCRクリーンアップを行った。生成物をヌクレアーゼ非含有水に溶出させた。
【0499】
シーケンシングのための試料の調製:120ngのPCR産物と、6.4pmolのpx330-F1プライマー(1μLの6.4μMストック)と、12μLの最終体積にするヌクレアーゼ非含有水とを混合することにより、溶液を作製した。配列データを得た後、適正な配列挿入を同定した。適正な挿入を有するコロニーのグリセロールストックを調製した。コロニーPCR中に#1~3のラベルを貼ったLB寒天プレート上のそれらの適正に挿入されたコロニーを、アンピシリンを含有する5mLのLB培地に、ピペット先端部で軽くつつき、培地のチューブの中に押し出すことにより接種した。液体培養物を、ODが1.0~1.4の間に達するまで、増殖させた。500μLの細菌培養物を、クライオバイアル中の500μLの滅菌50%グリセロールに添加し、直ちにドライアイス上に置き、-80℃の冷凍庫に移すまでそこに置いた。
【表6-1】
【表6-2】
【表7】
(実施例2)
ブタにおけるRosa26遺伝子座をターゲティングするガイドRNAを発現するプラスミドの生成
【0500】
MHC欠損があるブタからは、レシピエントにおいて低い免疫拒絶を誘導するか、または免疫拒絶を誘導しない移植片が得られる。MHC機能を阻害する外因性タンパク質をブタで発現させて、MHC欠損を生じさせることにする。このプロジェクトにおけるさらに先の本発明者らのもう1つの目的は、1つまたは複数のタンパク質の遍在性発現を指示することになる遍在性プロモーターの制御下で1つまたは複数のタンパク質をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを挿入することである。本実施例は、そのような遍在性プロモーターの1つ、Rosa26をターゲティングするガイドRNAを発現するプラスミドの生成を示す。Rosa26プロモーターが、Rosa26遺伝子座での遺伝子の遍在性の発現を指示することになる。したがって、Rosa26遺伝子座に外因性タンパク質をコードするトランス遺伝子を、遺伝子産物がブタの全ての細胞で発現されるように挿入することによって、トランスジェニックブタを産生することにする。Rosa26をターゲティングするガイドRNAを発現するプラスミドは、Rosa26遺伝子座へのトランス遺伝子の挿入を容易とするために使用されることになる。本実施例は、CRISPR/cas9系を使用してブタにおけるRosa26遺伝子座をターゲティングするためのプラスミドを生成するための例示的な方法を示す。px330ベクターを使用してプラスミドを生成し、px330ベクターを使用してCas9 DNAエンドヌクレアーゼとガイドRNAとを同時に発現させた。
【0501】
Rosa26のシーケンシング:
【0502】
ブタのRosa26遺伝子座をターゲティングするガイドRNAをデザインするために、ブタのRosa26をシーケンシングして、正確な配列情報を得た。
【0503】
プライマーデザイン:プライマーを生成するために使用したRosa26参照配列は、Kongら、Rosa26 Locus Supports Tissue-Specific Promoter Driving Transgene Expression Specifically in Pig.、PLoS ONE、2014年;9巻(9号):e107945頁;Liら、Rosa26-targeted swine models for stable gene over-expression and Cre-mediated lineage tracing.、Cell Research、2014年;24巻(4号):501~504頁;およびLiら、Identification and cloning of the porcine ROSA26 promoter and its role in transgenesis.、Transplantation Technology、2014年:2巻(1号)から取った。次いで、ブタゲノムデータベース(NCBI)を検索することにより、およびEnsembl Genome Browserを使用することにより、参照配列を拡大した。ベース配列を、4つの1218塩基対領域に分けて、プライマーデザインを容易にした。Integrated DNA TechnologiesのPrimerQuest Toolを使用してプライマーをデザインし、次いで、Standard Nucleotide BLASTを使用してSus scrofa参照ゲノム配列に対して検索して、特異性についてチェックした。プライマー長を200~250塩基対に限定した。1000nMのプライマー濃度用のNew England Tm Calculatorと、Taq DNA Polymerase Kitとを使用して、プライマーアニーリング温度を算出した。
【0504】
PCR:PCRは、Taq DNA PolymeraseおよびStandard Taq Buffer(New England Biolabs)を使用して行った。PCRに使用したDNA鋳型は、クローニングしたブタから単離した細胞から抽出した。PCR条件は、次のもの30サイクルであった:95℃、30秒;50℃、30秒、51℃30秒、52℃30秒、53℃30秒、54℃30秒、55℃30秒;および68°で30秒間の伸長ステップ。QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen)を使用したPCR産物を精製した。シーケンシングに使用するプライマーを表8に列挙する。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0505】
シーケンシング解析:SnapGeneソフトウェアを使用して、DNA配列をアラインさせた。DNAシーケンスの結果をUniversity of Minnesota
Biogenomics Centerから受け取った後、SnapGeneソフトウェアにアップロードし、解析用のソフトウェアによりアラインさせた。塩基対の置換、欠失および挿入を、クロマトグラムを参照することにより判定し、異なるプライマーを使用して増幅したDNA断片の配列を比較することにより確認した。編集および確認が全て終わったら、元の親DNA配列をアラインした配列で置き換えることにより、結果として得られる新たなDNA親配列を作製した(配列番号224、
図12に示されているマップ)。Rosa26配列は、参照Rosa26配列とは異なった。例えば、223、420、3927、4029、および4066位に塩基対置換があり、2692位と2693位の間に塩基対欠失があった。ヌクレオチド置換および欠失が、この配列を固有のものにする(
図12)。かくて、このシーケンシングデータから、Rosa26遺伝子座をターゲティングするガイドRNAをデザインするための、より正確な配列情報を得た。
Rosa26をターゲティングするガイドRNAを発現するプラスミドの生成
【0506】
Rosa26をターゲティングするオリゴヌクレオチドをデザインし、IDTにより合成した。ガイドRNAの配列を表9に示す。実施例1に記載した方法を使用して、Rosa26をターゲティングするガイドRNAを発現するpx330プラスミドを生成した。
図13A~
図13Eは、Rosa26をターゲティングするプラスミド(すなわち、px330/ROSAエクソン1)をクローニングするためのクローニング戦略を示す。構築したpx330プラスミドを、表7に示したシーケンシングプライマーを使用してシーケンシングすることにより検証した。
【表9】
【0507】
(実施例3)
2つのガイドRNAを同時に発現するプラスミドの生成
【0508】
2つのガイドRNAを同時に発現する代替的ベクター(例えば、px333)も、単一遺伝子の2領域をターゲティングするガイドRNAを発現させるために使用することにする。CRISPR/cas9系による単一遺伝子の2つの領域のターゲティングは、DNAが修復され再び繋ぎ合わされたとき、2つの切断部位間の全遺伝子の除去をもたらすことになる。2領域のターゲティングは、2対立遺伝子ノックアウトを生じさせる可能性を増加させ、結果として、遺伝子内の1つの遺伝子座のみのターゲティングと比較して、より良好な分取、より多くの2対立遺伝子欠失、および全体的に見れば、陰性遺伝子型を有するブタを産生するより高い可能性が得られる。
px333プラスミド構築に使用されるオリゴヌクレオチド対は、px330プラスミドに使用されるオリゴヌクレオチドと比較して、高いG含有量、より低いA含有量、および可能な限り多くのGGGGの四つ組を含有することになる。GGTA1標的は、ほぼ全GGTA1遺伝子に及ぶことになり、これにより、ゲノムから全遺伝子が除去されることになる。さらに、この戦略を用いる複数の部位のターゲティングをトランス遺伝子の挿入の際に使用することとし、これは、このプロジェクトにおけるさらに先の本発明者らのもう1つの目標である。
(実施例4)
遺伝子改変されたブタを作製するためのブタ胎仔線維芽細胞の単離、培養およびトランスフェクション。
【0509】
ある遺伝子をターゲティングするガイドRNAを発現するpx330プラスミドを使用して遺伝子改変されたブタを産生するために、px330プラスミドをブタ胎仔線維芽細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた線維芽細胞は、1つまたは複数の標的遺伝子の破壊を引き起こすガイドRNAを発現することになる。得られた線維芽細胞を、例えば体細胞核移入により、遺伝子改変されたブタを作製するために使用した。本実施例は、ブタ胎仔線維芽細胞の単離および培養、ならびにpx330プラスミドの線維芽細胞へのトランスフェクションを示す。
【0510】
細胞培養
【0511】
遺伝子改変されたブタの産生に使用した胎仔線維芽細胞株は、Karoline Fetal(島単離の後に高い島収率をもたらした雌ブタドナー(ponor)P1101由来)、Marie Louise Fetal(島単離の後に高い島収率をもたらした雌ブタドナーP1102由来)、Slaughterhouseブタ#41(雄;天然の膵臓において(非常に高いジチゾン(DTZ)スコアにより評価して)高い島数を示した)、Slaughterhouseブタ#53(天然の膵臓において高いジチゾン(DTZ)スコアにより評価して高い島数を示した)を含んだ。
【0512】
これらのブタの各々から採取した筋肉および皮膚組織試料を切開し、培養して、線維芽細胞を増殖させた。次いで、細胞を回収し、体細胞核移入(SCNT)に使用して、クローンを産生した。複数の胎仔(最大8匹)を30日目に回収した。胎仔を別々に解剖し、150mmディッシュに播種して、胎仔線維芽細胞を増殖させた。培養を通して、胎仔細胞株を別々に保持し、各々のチューブまたは培養容器に胎仔番号のラベルを貼った。コンフルエントになったら、細胞を回収し、液体窒素凍結保存のために10%のDMSOを含有するFBS中、細胞約百万個/mLで凍結した。
【0513】
培養培地調製:5mLのGlutamax、5mLのpen/strep、および25mLのHI-FBS(標準5%FBS培地用;貯蔵細胞には10%FBSを使用する)を、DMEM、高グルコース、無グルタミン、無フェノールレッドの500mLボトルに添加した。全ての胎仔線維芽細胞を遠心沈降させるための遠心分離機設定は、4℃で0.4rcf(1600rpm)で5分であった。細胞を、水浴で急速に37℃に温めることにより液体窒素保存から解凍した。解凍された細胞を、(DMSOを十分に希釈するのに十分な)約25mLの新鮮な、予温した培養培地に迅速に移した。次いで、細胞を遠心沈降させ、上清を除去し、細胞を、カウントまたは播種するために1~5mLの新鮮な培養培地に再懸濁させた。予温した培地を用いる3~4日ごとの培地交換を細胞に施し、TrypLE Express Dissociation試薬を使用して90~100%コンフルエント時に細胞を継代した。
【0514】
接着線維芽細胞の回収:培地を細胞から吸引除去した。DPBSを添加して細胞を洗浄した。予温した(37℃)TrypLE Express試薬を細胞に添加した。最小量の試薬を使用して、細胞層を薄く覆った。細胞を37℃で10分間インキュベートした。FBSを含有するある体積の培養培地をTrypLE細胞懸濁液に添加して、酵素を中和した。細胞懸濁液をピペットで吸い上げ、ピペットから排出して、培養面から全ての細胞を取り除いた。細胞懸濁液を、氷上の15または50mLのコニカルチューブに移した。プレート/フラスコを、顕微鏡下でチェックして、確実に全ての細胞を収集した。培地洗浄で、後に残った細胞の収集を助長することもあった。細胞を遠心沈降させ、次いで新鮮な培養培地(カウントするために1~5mLの間)で再懸濁させた。カウントする場合、20μLの細胞懸濁液を80μLの0.2%のTrypan Blueに添加することにより、細胞懸濁液の1:5希釈物を調製した。ピペットで吸い上げ、ピペットから排出することにより、懸濁液をよく混合した。12~14μLの希釈物を血球計数盤に添加して、4角をカウントした。数を平均した。例えば、各角が20、24、22、22とカウントされると、平均は22になった。この数に希釈係数5を掛けて、細胞110×104個/mLを得た。小数点の位置を2つ左に動かすことにより、その数を106に補正した(細胞1.10×106個/mL)。最後に、その数に、元の試料から採取したmL数を掛けて、細胞の総数を得た。
胎仔線維芽細胞のトランスフェクション
【0515】
この実験は、胎仔線維芽細胞をトランスフェクトすることであった。トランスフェクトされた胎仔線維芽細胞を、体細胞核移入技術を使用して、遺伝子改変された動物を産生するために使用した。
【0516】
トランスフェクションに使用したGFPプラスミド(pSpCas9(BB)-2A-GFP)は、それがGFP発現領域を含有したことを除いて、px330プラスミドの正確なコピーであった。
【0517】
GFPトランスフェクト対照細胞:トランスフェクションは、InvitrogenのNeon Transfection Systemを使用して行った。キットは、10μLおよび100μLの先端部サイズで届いた。実験前日または2日前に、実験のサイズ、ならびに所望の細胞数および密度に依存して適切な培養容器に細胞を播種した。トランスフェクション当日に約80%コンフルエンスに達した。
【0518】
実験当日に、Neonモジュールおよびピペットスタンドをバイオフード内に設置した。Neonチューブをピペットスタンド内に配置し、3mLのBuffer E(Neon Kit)をNeonチューブに添加した。モジュールをオンにし、所望の設定に調整した(胎仔ブタ線維芽細胞については、1300V、30ms、1パルス)。TrypLEを使用して細胞を回収し、カウントして実験の設定を決定した。必要量の細胞を新しいチューブに移し、残りの細胞を再び播種した。カウントした後に細胞を遠心沈降させ、PBSに再懸濁させて洗浄した。細胞を遠心沈降させ、細胞数および先端部サイズについての表10に従ってBuffer R(Neon Kit)に再懸濁させた。
【表10】
【0519】
表10に従ってDNAの適切な量を細胞懸濁液に添加し、ピペットで吸い上げ、ピペットから排出することにより混合した。キットからのNeon先端部をNeonピペットに付けて、その体積の細胞懸濁液をNeon先端部の中に吸引した。ピペットを、ピペットスタンド内のNeonチューブの中に、Neon先端部をBuffer Eに沈めるように入れた。「完了」メッセージが現れるまで、モジュールインターフェース上のSTARTを押した。ピペットをピペットスタンドから取り出して、表10に従って適切なサイズのウェル内の抗生物質を有さない、ある体積の予温した培養培地に、細胞懸濁液を押し出した。
【0520】
上記のステップを、全細胞懸濁物を使用するまで繰り返した。Neon先端部は、トランスフェクション2回ごとに交換し、Neonチューブ管は、トランスフェクション10回ごとに交換した。細胞を37℃で24時間インキュベートし、次いで培地を、抗生物質を含有する通常の培養培地と交換した。得られた細胞を、Cas9切断、遺伝子ノックアウト後の表面タンパク質の完全な再利用、および分取前の適正な細胞分裂を可能にするために、約5日間培養した。GFPプラスミドをトランスフェクトした細胞を、
図15に示した。
(実施例5)
GGTA1遺伝子との蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
【0521】
CRISPR/cas9による遺伝子破壊を、細胞においてFISHを使用して検証した。本実施例は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用してGGTA1遺伝子を検出するための例示的な方法を示す。ここでは本方法を使用して、動物(例えば、GGTA1がノックアウトされた動物)からの細胞におけるGGTA1遺伝子の有無を検証した。
【0522】
FISHプローブの調製:Invitrogen PureLinkキットを使用して、RP-44ブタBACクローン(RP44-324B21)からGGTA 1のDNAを抽出した。Orange-552 dUTP(Enzo Life Science)を使用して、ニック翻訳反応(Nick Translation Kit-Abbott Molecular)によりDNAを標識した。ニック翻訳された断片のサイズを、1%TBEゲル上での電気泳動によりチェックした。標識されたDNAを、COT-1 DNA、サケ精子DNA、酢酸ナトリウムおよび95%エタノールに沈殿させ、次いで乾燥させ、50%ホルムアミドハイブリダイゼーション緩衝液に再懸濁させた。
【0523】
FISHプローブのハイブリダイゼーション:プローブ/ハイブリダイゼーション緩衝液混合物、およびブタ線維芽細胞(15AS27)からの細胞遺伝学的スライドを、変性させた。プローブをスライドに適用し、加湿チャンバ内で37℃で24時間、スライドをハイブリダイズした。
【0524】
FISH検出、可視化および画像取込み:ハイブリダイゼーション後、FISHスライドを、72℃の2×SSC溶液で15秒間洗浄し、DAPI染色剤で対比染色した。DAPIおよびFITCフィルターセットを備えているOlympus BX61顕微鏡ワークステーション(Applied Spectral Imaging、Vista、CA)で蛍光シグナルを可視化した。干渉計ベースのCCD冷却カメラ(ASI)およびFISHView ASIソフトウェアを使用して、FISH画像を取り込んだ。FISH画像を
図16に示す。
(実施例6)
Cas9/ガイドRNA媒介性GGTA1ノックアウトを有する細胞の表現型選択
【0525】
GGTA1遺伝子産物を標識することにより、Cas9/ガイドRNA系によるGGTA1遺伝子の破壊を検証した。GGTA1ノックアウトを、ノックアウト実験での表現型分取のためのマーカーとして使用することにする。ブタ細胞の表面で見出される糖タンパク質をコードするGGTA1遺伝子は、それがノックアウトされていた場合、その糖タンパク質が細胞表面に存在しない結果となるだろう。GGTA1陰性細胞の分取に使用したレクチンは、GGTA1遺伝子により産生される糖タンパク質などの、末端アルファ-D-ガラクトシル残基に選択的に結合するイソレクチンGS-IB4ビオチン-XXコンジュゲートであった。
【0526】
GGTA1をターゲティングするガイドRNAを発現するpx330プラスミド(実施例1で生成したもの)をブタ胎仔線維芽細胞にトランスフェクトした。
【0527】
トランスフェクション後に陰性細胞について選択するために、細胞を約5日間増殖させて、それらの表面タンパク質を再利用した。次いで、細胞を回収し、IB4レクチンで標識した。次いで、細胞を細胞表面のビオチンコンジュゲートレクチンと極めて緊密に結合するストレプトアビジンテールを有する2.8マイクロメートル超磁性ビーズであるDynaBeads Biotin-Binderで、細胞をコーティングした。磁石内においたとき、表面にレクチン/ビーズが結合している「陽性」細胞は、チューブの側面に付着したが、「陰性」細胞は、いずれのビーズにも結合せず、容易な分離のために懸濁液に浮遊したままであった。
【0528】
詳細には、TrypLEプロトコールを使用してプレートから細胞を回収し、単一のチューブに収集した。細胞を遠心沈降させ、1mLの分取培地(DMEM、補充物なし)に再懸濁させてカウントした。細胞が10,000,000個未満の場合、細胞を遠心沈降させ、上清を廃棄した。別々のチューブで、IB4レクチン(1μg/μL)を5μL~1mLの分取培地により希釈した(最終濃度5μg/mL)。細胞ペレットを1mLの希釈されたレクチンで再懸濁させた。細胞懸濁液を約15~20分間、数分ごとに穏やかにスロッシングしながら、氷上でインキュベートした。
【0529】
インキュベーション中にビオチンビーズを調製した。ビーズのボトルを、30秒間ボルテックスした。1Mの細胞当たり20μLのビーズを、15mLコニカルチューブの中の5mLの分取培地に添加した。チューブをボルテックスし、DynaMag-15磁石の中に置き、3分間、静置した。培地を除去した。1mLの新鮮な分取培地を添加し、チューブをボルテックスしてビーズを洗浄した。洗浄したビーズを、使用するまで氷上に置いた。
【0530】
細胞インキュベーション後、細胞懸濁液の体積を分取培地で15mLにして、レクチンを希釈した。細胞を回転させ、1mLの洗浄済みビオチンビーズで再懸濁させた。懸濁液を、振盪インキュベーターにおいて氷上で30分間、125rpmでインキュベートした。細胞懸濁液を、振盪インキュベーターから取り出し、点検した。小さい凝集物が観察されることもあった。
【0531】
5mLの分取培地を、細胞懸濁液に添加し、チューブを3分間、DynaMag-15の中に置いた。「陰性」細胞の第1の画分を収集し、新しい15mLコニカルチューブに移した。さらに5mLの分取培地を添加して、まだ磁石上にある「陽性」チューブを洗浄した。磁石を数回反転して、細胞懸濁液を再び混合した。チューブを3分間静置して、細胞を分離した。次いで、第2の「陰性」画分を取り出し、第1の画分と併せた。10mLの分取培地を「陽性」チューブに添加した。チューブを、磁石から取り出し、使用の準備が整うまで氷浴内に置いた。
【0532】
「陰性」画分のチューブを磁石上に置いて二次的分離をもたらし、第1のチューブから持ち込まれた可能性がある一切のビーズ結合細胞を除去した。チューブを磁石上で3分間保持した。細胞をピペットで採取して磁石から離し、新しい15mLコニカルチューブに移した。元の「陽性」チューブと、比較のための二重分取した「陰性」チューブとを用意し、それらのチューブ内の細胞を遠心沈降させた。「陽性」のペレットは、濃い赤錆色に見えた。「陰性」ペレットは、目に見えないか、または白く見えた。
【0533】
各々のペレットを、1mLの新鮮な培養培地(10%FBS)に再懸濁させ、24ウェルプレート上の別々のウェルに播種した。ウェルを顕微鏡下で点検し、必要な場合には、より多くのウェルに希釈した。細胞を37℃で培養した。遺伝子改変された細胞、すなわち、非標識細胞を、磁石により陰性選択した(
図17A)。遺伝子改変されていない細胞、すなわち、標識細胞は、細胞表面に第一鉄ビーズが堆積していた(
図17B)。
(実施例7)
GGTA1/NLRC5ノックアウトブタの産生および特徴付け
【0534】
本実施例は、ノックアウトブタを産生するための例示的な方法を示す。ノックアウトブタは、NLRC5、TAP1、C3、CXCL10、MICA、MICB、CIITA、CMAH、GGTA1および/またはB4GALNT2のうちの2つまたはそれよりも多くについてのタンパク質発現低下を有し得る。そのようなノックアウトブタの1つは、CRISPR/cas9系を使用するGGTA1/CMAH/NLRC5ノックアウトブタであった。このブタから移植術用の島を得た。GGTA1/CMAH/NLRC5が破壊されたブタの島は、MHCクラスI欠損を有し、レシピエントに移植されたとき、免疫拒絶の誘導が低いかまたは全くないであろう。
胎仔線維芽細胞のトランスフェクション
【0535】
実施例1で生成したGGTA1、CMAHおよびNLRC5をターゲティングするガイドRNAを発現するpx330プラスミドを、ブタ胎仔線維芽細胞内にトランスフェクトした(transected)。5~10%の血清と、グルタミンと、ペニシリン/ストレプトマイシンとを含有するDMEM中で、ブタ胎仔線維芽細胞を培養した。Lipofectamine 3000システム(Life Technologies、Grand Island、NY)を製造元の指示書に従って使用して、Cas9とGGTA1、CMAHまたはNLRC5遺伝子をターゲティングするsgRNAとを発現する2つまたは3つのプラスミドを、線維芽細胞に同時トランスフェクトした。
GGTA1 KO細胞の対抗選択
【0536】
トランスフェクションの4日後、トランスフェクトされた細胞を回収し、イソレクチンB4(IB4)-ビオチンで標識した。αGalを発現する細胞を、ビオチンコンジュゲートIB4で標識し、ストレプトアビジンでコーティングされたDynabeads(Life Technologies)により磁場内で枯渇させた(
図91)。αGal欠損細胞を、上清から選択した。細胞を顕微鏡観察により調査した。分取後に結合したビーズを全くまたはほとんど含有していなかった細胞を、陰性の細胞として同定した。
CRISPR/Cas9系によりターゲティングされたGGTA1およびNLRC5遺伝子のDNAシーケンシング解析
【0537】
IB4対抗選択した細胞およびクローニングされたブタ胎仔から、Qiagen DNeasy Miniprep Kitを使用してゲノムDNAを抽出した。PCRは、表11に示す通り、GGTA1およびNLRC5特異的プライマー対を用いて行った。DNAポリメラーゼ、dNTPack(New England Biolabs)を使用し、GGTA1についてのPCR条件は、それらのプライマーに理想的なアニーリングおよび融解温度に基づいた。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離し、Qiagen Gel Extraction Kitにより精製し、表7に示した通りの特異的シーケンシングプライマーを用いてサンガー法(DNA Sequencing Core Facility、University of Minnesota)によりシーケンシングした。
【表11】
【0538】
体細胞核移入(SCNT)
【0539】
SCNTは、Whitworthら、Biology of Reproduction、91巻(3号):78、1~13頁、(2014年)によって記載されたように行った。in vitroにおいて成熟した卵母細胞(DeSoto Biosciences Inc.、St.Seymour、TN)を使用して、SCNTを行った。0.1%ヒアルロニダーゼ中でのピペット操作により、卵母細胞から卵丘細胞を除去した。正常な形態および目に見える極体を有する卵母細胞のみを、SCNTに選択した。5μg/mLのビスベンズイミドと7.5μg/mLのサイトカラシンBとを含有する操作培地(5%FBSを含有する、Ca非含有NCSU-23)中で15分間、卵母細胞をインキュベートした。第一極体および第二分裂中期板を除去することにより、卵母細胞を除核した。単一細胞を各々の除核卵母細胞に注入し、融合させ、50μ秒間、180Vの2×DCパルス(BTX細胞電気穿孔器、Harvard Apparatus、Hollison、MA、USA)により、280mMのマンニトール、0.1mMのCaCl2、および0.05mMのMgCl2中で同時に活性化した。活性化された胚を、0.4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するNCSU-23培地中に戻し、加湿雰囲気中、38.5℃、5%CO2で1時間未満培養し、代理ブタに移入した。
胚を使用する遺伝子改変されたブタの産生
【0540】
胚移入培地を満たしたペトリ皿に、代理ブタに移入するための胚を添加した。細胞凍結保存のための0.25ml滅菌ストローも使用した。胚の吸引を25~35℃で行った。
【0541】
胚の吸引は、この順序に従って行った:培地層-空気層-培地層-空気層-胚層-空気層-培地層-空気層-培地層。EOガスで滅菌したストローを使用した場合、その内部を、胚の吸引の前に、胚移植用の培地の吸引および分注を1~3回繰り返すことにより洗浄した。吸引後、ストローの上端部をプラスチックキャップにより密封した。吸引し密封したストローを無菌に保つために、プラスチックピペット(Falcon、2ml)をストローよりわずかに大きいサイズに切断し、その中に入れ、パラフィンフィルムで密封した。密封したストローの温度を、携帯型インキュベーターを使用して、使用の直前まで維持した。
【0542】
胚および発情同期化した代理母を用意した。胚の移入は、代理母の開腹手術によって卵巣を露出することにより行うことになる。麻酔後、腹部の正中線を切開して、子宮、卵巣、卵管および采を露出させた。胚を吸引するストローを携帯型インキュベーターから無菌で取り出し、卵管の入口に挿入した。挿入したストローを、膨大部-峡部接合領域まで移動させた。挿入手順後、ハサミを使用してストローを反対側の空気含有層の位置で切断した。1ccシリンジを切断端部に装着し、およそ0.3ccの空気を注入して胚および培地をストローから卵管の中に放出した。この時点で、0.2ml黄色先端部の5mmの上端部を切り取り、シリンジとストローを接続するために使用した。
【0543】
胚移入後、露出した子宮、卵巣、卵管および采を腹腔に入れ、吸収性の縫合材を使用して腹部筋膜を閉じた。次いで、手術部位をベタジンで清浄にし、抗生物質および抗炎症薬および鎮痛薬で処置した。胚を移植した代理母の妊娠検査を行い、その後、妊娠に成功した非ヒト動物の分娩を誘発した。
妊娠および胎仔
【0544】
ブタ胎仔の2つの同腹仔(妊娠1から7匹および妊娠2から5匹)を得た。胎仔を、45日目(妊娠1)または43日目(妊娠2)に回収し、DNAおよび培養細胞単離のために加工した。組織断片および細胞を、2日間にわたり培養培地に播種して、胎仔細胞を接着および増殖させた。野生型細胞(遺伝子改変されていない胎仔細胞)ならびに妊娠1または2からの胎仔細胞を、培養プレートから取り出し、alexa fluor 488とコンジュゲートしているIB4レクチン、またはFITCとコンジュゲートしている抗ブタMHCクラスI抗体で標識した。フローサイトメトリー解析を行い、データを
図21A~C:妊娠1、または
図21D~E:妊娠2に示した。胎仔細胞の各群の全強度の減少を強調するために各々のパネルにWT細胞のヒストグラムを含める。特に興味深いのは、ピーク強度の減少として示された、妊娠1におけるアルファGalおよびMHCクラスI標識の減少である。妊娠2では、胎仔1および3に、WT胎仔細胞と比較して、アルファgal標識の大きい減少、およびMHCクラス1標識の有意な低減がある。
胎仔の遺伝子型
【0545】
胎仔細胞からのDNAを、GGTA1(Sus scrofa品種混合第1染色体、Sscrofa10.2 NCBI参照配列:NC_010443.4と比較した)またはNLRC5(コンセンサス配列)標的領域のPCR増幅に付し、得られたアンプリコンを1%のアガロースゲル上で分離した(
図18A、
図18B、
図19A、および
図19B)。アンプリコンを、各反応からのフォワードプライマーを単独で使用してサンガーシーケンシングによっても解析した。結果を、GGTA1の標的部位の後で6ヌクレオチド切断された妊娠1の胎仔1、2、4、5、6、および7として示す。胎仔3は、切断部位の後で17ヌクレオチド切断され、続いて、2,511(668~3179)ヌクレオチドの欠失があり、続いて、単一塩基置換があった。標的遺伝子の両方のコピーからの対立遺伝子を含む単一のシーケンシング実験からの切断、欠失および置換は、遺伝子改変が起こったことを単に示唆することはできるが、各対立遺伝子について正確な配列を明らかにすることはできない。この解析から、7匹全ての胎仔は、単一の対立遺伝子改変を有したと思われる。妊娠1からの胎仔のNLRC5標的部位の配列解析は、一貫性があるアラインメントを示すことができなかった。これは、シーケンシング反応における未知の複雑性、またはサンガーシーケンシング反応および解析を複雑にするNLRC5対立遺伝子間で異なるDNA改変を示唆する。妊娠2の胎仔DNA試料1、3、4、および5は、GGTA1遺伝子標的部位から3ヌクレオチド切断された。胎仔2は、サンガーシーケンシングで可変性を有した。これは、DNA突然変異の複雑な可変性または低い試料の質を示唆する。しかし、胎仔DNA鋳型の質は、上記で記載したGGTA1遺伝子スクリーニング実験の生成に十分なものであった。NLRC5遺伝子アンプリコンは、全て、NLRC5遺伝子切断部位の120ヌクレオチド下流で切断された。
【0546】
胎仔のDNA(野生型(WT)対照、および妊娠1からの胎仔1~7からのもの)を、後肢生検材料から単離し、標的遺伝子NLRC5およびGGTAをPCRにより増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離して、蛍光DNA染色により可視化した。WTレーンにおけるアンプリコンのバンドは、改変されていないDNA配列を表す。アンプリコンサイズの増加または減少は、それぞれ、そのアンプリコン内での挿入または欠失を示唆した。1つの試料中の対立遺伝子間のDNA改変のバリエーションのため、バンドがより拡散して見える可能性があった。DNA改変のわずかなバリエーションにより、1%アガロースゲルによって分離することができた。結果を
図20A~
図20Bに示す。NLRC5ゲルでのようにバンドがないこと(妊娠1の胎仔1、3、および4;
図20A下部)は、標的領域への改変が、DNA増幅プライマーの結合を破壊したことを示唆した。GGTA1ターゲティング実験における全てのバンドの存在は、DNAの質が、NLRC5ターゲティングPCR反応中にDNAアンプリコンを生成するのに十分なものであったことを示唆する。妊娠1の胎仔1、2、4および5(
図20A、上部)は、より大きいGGTA1アンプリコンを有した。これは、標的領域内での挿入を示唆する。妊娠1の胎仔3(
図20A、上部)については、GGTA1アンプリコンは、WT対照よりも速く泳動した。これは、標的領域内での欠失を示唆する。妊娠1の胎仔6および7(
図20A、下部)については、NLRC5アンプリコンは、WTよりも速く泳動した。これは、標的域内での欠失を示唆する。妊娠2の胎仔1~5(
図20B、上部)GGTA1アンプリコンは、サイズによって解釈することが困難であり、WT対照と比較して拡散していた。胎仔1~5(
図20B、下部)NLRC5アンプリコンは、野生型対照と比較してサイズおよび密度が均一であった。
【0547】
アルファGalおよびMHCクラス1フローサイトメトリー標識の表現型結果におけるバリエーションを考えると、GGTA1およびNLRC5遺伝子における2対立遺伝子突然変異にはかなりのバリエーションがある。この観察は、アガロースゲル中のバンドのサイズの差、切断された遺伝子産物、およびシーケンシングの困難によって支持される(
図18A~
図18B、
図19A~
図19B、
図20A~
図20B、および
図21A~
図21E)。配列の改変を完全に解読するために、個々の対立遺伝子のクローニングを行うことにする。しかし、胎仔の表現型、DNAシーケンシング、および機能の解析は、胎仔ブタにおける2対立遺伝子のGGTA1およびNLRC5遺伝子改変の創出が支持する。
ヒト免疫細胞の増殖に対する遺伝子ノックアウトの影響
【0548】
次に、妊娠1の胎仔3からの細胞を用いて、共培養アッセイを行って、ヒト免疫細胞の増殖に対するMHCクラスI発現の低下の影響を評価した。
混合リンパ球反応(MLR)
【0549】
共培養を平底96ウェルプレートで行った。カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識したヒトPBMC(2.5μM/ml)を、レスポンダーとして、細胞0.3~0.9×105個/ウェルで使用した。細胞0.1~0.3×105個/ウェルの野生型またはブタ線維芽細胞(野生型ブタまたはGGTA1/NLRC5ノックアウト胎仔からのもの)を、刺激因子として、1:1、1:5および1:10の刺激因子-レスポンダー比で使用した。全てのMLRアッセイにおいてMLR共培養を4日間行った。別の並行実験では、全PBMC細胞を、陽性対照として、フィトヘマグルチニン(PHA)(2ug/ml)で刺激した。
【0550】
培養した細胞を洗浄し、抗CD3抗体、抗CD4抗体および抗CD8抗体で染色し、その後、ホルムアルデヒドで固定し、洗浄した。BD FACS Canto IIフローサイトメーターを使用して、改変されていないブタ線維芽細胞と比較してGGTA1/NLRC5ノックアウト胎仔からの線維芽細胞に応答してのCD8+およびCD4+T細胞の増殖能力を評価した。FACS diva/Flow Joソフトウェア(Tri star、San Diego、CA、USA)を使用してデータを解析し、事前にゲートをかけたCD8 T細胞およびCD4 T細胞を用いてCFSE dim/low百分率を決定した。
【0551】
野生型およびGGTA1/NLRC5ノックアウト胎仔細胞に対するヒトCD8+細胞およびCD4+T細胞の増殖応答を、
図22A~
図22Cに示す。細胞に、増殖の評価の前に、CD4+またはCD8+としてゲートをかけた(
図22A)。CD8 T細胞増殖は、野生型胎仔細胞と比較して、GGTA1/NLRC5ノックアウト線維芽細胞を有する胎仔細胞による処置刺激後に低減された。ヒトレスポンダーを1:1比のGGTA1/NLRC5ノックアウト胎仔細胞で処置したとき、CD8+T細胞増殖のほぼ55%の低減が観察された(
図22B)。野生型胎仔細胞は、ヒトCD8+T細胞の17.2%増殖を誘発したが、胎仔3(妊娠1)からのGGTA1/NLRC5ノックアウト胎仔細胞は、7.6%増殖しか誘導しなかった(
図22B)。1:5および1:10の比では、野生型胎仔細胞と比較して、CD8+T細胞増殖応答の差は観察されなかった(
図22B)。野生型胎仔細胞と比較して、GGTA1/NLRC5ノックアウトに応答してのCD4+T細胞増殖に変化は観察されなかった(
図22C)。
生きている子ブタの分娩
【0552】
上記で得た妊娠の1つに妊娠期間を完了させた。7匹の生きている子ブタを臨月に帝王切開により分娩させた(
図23)。GGTA1およびNLRC5遺伝子におけるまたはそれらの付近における突然変異をスクリーンニングするために、耳切取り試料および尾皮膚試料を採取し、解析した。子ブタの遺伝子型をPCRにより判定した。異なるプライマー対を使用する3つのPCR実験を行って、子ブタの遺伝子型を確認した。
【0553】
第1のPCR実験:子ブタ#6および#7からの試料を使用してPCRを実行した。子ブタ#6のNLR増幅は、1つの強いバンドを生じさせ、その一方で#7は、ゲル上で泳動させたとき一連のバンドを生じさせた(
図24A)。最も強いバンドを各々の子ブタからゲル抽出し、それらからシーケンシングに十分なDNAを得た。子ブタ#6のPCR産物は、予測PCR産物の位置に頑強なバンドを示した。子ブタ#7のPCR産物は、予測PCR産物とは異なるサイズの位置にバンドを示した。結果は、NLRC5遺伝子部位において子ブタ#6が1対立遺伝子突然変異型であり、その一方で子ブタ#7が2対立遺伝子変異型であることを示した。GGTA1遺伝子型判定に使用したプライマーセットは、Gal amp 1 フォワード:gagcagagctcactagaacttg(配列番号153)、およびGal amp1 リバース:AAGAGACAAGCCTCAGACTAAAC(配列番号154)(644bpアンプリコン)であった。NLRC5遺伝子型判定に使用したプライマーセットは、NL1_第1_スクリーンフォワード:ctgctctgcaaacactcaga(配列番号155)、およびNLRC5-678 リバース:gtggtcttgcccatgcc(配列番号156)(630bpアンプリコン)であった。
【0554】
第2のPCR実験:子ブタ#5、#6および#7からの試料を使用してPCRを実行した。NLRC5遺伝子のみを試験した。第1のPCR実験の場合と同じPCR増幅を行った。子ブタ#5および#6のPCR産物は、予想サイズの位置にバンドを示した(
図24B)。子ブタ#5のPCR産物は、第2のぼんやりしたバンドを示した(
図24B)。子ブタ#7のPCR産物は、上記の第1のPCR実験での場合のように一連のバンドを示した。これらの結果は、子ブタ#5、#6および#7におけるNLRC5遺伝子が、これらの子ブタにおいて1対立遺伝子および2対立遺伝子突然変異を有することを示した。
【0555】
第3のPCR実験:子ブタ#1、#2、#4、#5、#6および#7からの試料を使用してPCRを実行した。GGTA1遺伝子型判定に使用したプライマーセットは、表11中の配列番号193および194(303bpアプリコン)であった。NLRC5遺伝子型判定に使用したプライマーセットは、表11中の配列番号197および198(217bpアプリコン)であった。子ブタ#1および#2のNLRC5遺伝子増幅は、残りのものほど頑強でなく、よりぼんやりしたバンドを生じさせた(
図24C)。子ブタ#5も、残りのものより大きく尾を引いたバンドを生じさせた(
図24C)。GGTA1スクリーンは、一貫性があるバンドを生じさせた。NLRC5遺伝子増幅産物は、この実験ではより小さい、異なるものであり、子ブタ#1と#2、#4と#5、#6と#7で異なる産物を創出した。これは、MHCクラス1発現の喪失をもたらす、異なる突然変異が存在したことを示す。
【0556】
シーケンシングによる子ブタの遺伝子型判定
【0557】
子ブタの遺伝子型をシーケンシングにより判定した。
図25A~25Fに示されているように、子ブタ#1、#2、#4、#5、#6および#7は、NLRC5遺伝子に対する1つまたは複数の突然変異を有した。
(実施例8)
遺伝子改変されたブタを作製するためのGGTA1/NLRC5ノックアウト/HLA-G1ノックイン細胞の生成および特徴付け。
【0558】
レシピエント(例えば、霊長類動物、例えばヒト)に移植されたときのブタ異種移植片の生存を増強するための1つの戦略は、Gal α-(1,3)Gal抗原(Gal抗原)およびSLA1のレベルを同時に抑制すること、その一方で、SLA1の非存在下で移植片により活性化されるナチュラルキラー細胞(NK細胞)増殖を抑制することである。このために、GGTA1が(Gal抗原を抑制するために)ノックアウトされた、NLRC5が(SLA1を抑制するために)ノックアウトされた、およびHLA-G1が(NK細胞増殖を抑制するために)ノックインされた細胞を、CRISPR-Cas9媒介性遺伝子編集技術を使用して生成した。
【0559】
HLA-G1の最適な発現を得るために、HLA-G1 cDNAをブタRosa26の第1エクソン内に組み込んだ。Rosa26のエクソン1の正確な配列を、上記の実施例2に記載したように判定した。本発明者らは、先ず、Rosa26上の切断部位の5’および3’配列に対する1000bp DNA配列を確認した。切断部位の1000bp上流を左の相同性アームとしてデザインし、1000bp下流を右の相同性アームに指定した。左の相同性アームの配列は、Liら(Li P.ら、Identification and cloning of the porcine Rosa26 promoter and its role in transgenesis.、Transplantation Technology 2014年、doi:10.7243/2053-6623-2-1)より適応され(
図26A)、後に、配列特異的プライマーを使用してそれを増幅することにより確認された。Long Amp(NEB)を使用して、データベース内で入手可能な配列に基づいて、右の相同性アーム(エクソン1および切断部位を含む)のためのプライマーをデザインし、1000bp産物を増幅した。次のものが、左および右の相同性アームのプライマーであった:左Rosa26フォワード:gcagccatctgagataggaaccctgaaaacgagagg(配列番号157)、左Rosa26リバース:acagcctcttctctaggcggcccc(配列番号158);右Rosa26フォワード:cgcctagagaagaggctgtg(配列番号263)および右Rosa26リバース:actcccataaaggtattg(配列番号264)。
【0560】
次世代シーケンシングを行うことにより、アームの配列を検証した。製造元の指示書通りのロングレンジPCR(Qiagen、USA)の後、ブタからのRosa26遺伝子のアンプリコンを得た。増幅された産物を0.8%のアガロースゲル上で泳動させた(
図26B、レーン:マーカー:1kb DNAラダー;二重反復で泳動させた1および2 Rosa26アンプリコン)。増幅された画分を、Gel extraction kit(Invitrogen、USA)を製造元の指示書に従って使用して溶出させた。溶出した画分をナノドロップにより定量し、次世代シーケンシングに付した。ペアードリード解析に基づくアンプリコンのコンセンサス配列を
図26Cに示す。Rosa26遺伝子座にHLA-G1を挿入するための、相同性により導かれる組換え構築物を、
図26D、26Eおよび26F、ならびに
図117~119に示す。
【0561】
HLAG1を含有する断片であって、相同性がRosa26遺伝子座に導く断片の生成
【0562】
シングルチューブ等温反応で、断片長も末端適合性も問わない複数のDNA断片のアセンブリ成功を可能にする、ギブソンアセンブリ技術を使用して、Rosa26遺伝子座へのHLA-G1の挿入を行った。ギブソンアセンブリマスターミックスは、単一の反応緩衝液中で機能するように選ばれた、次の3つの異なる酵素活性を含むものであった:エキソヌクレアーゼは、一方の末端(オーバーラップ領域)で相補性を共有する断片のアニーリングを容易とする一本鎖3’突出を創出した;DNAポリメラーゼは、アニールされた各断片内のギャップを埋めた;およびDNAリガーゼは、アセンブルされたDNA内のニックを塞だ。
【0563】
相同な左右のアーム(HLA-G1配列と適切な塩基オーバーラップを有する)を生成するために、PCRを行った。HLA-G1の化学合成されたgBLOCKをヌクレアーゼ非含有水に濃度10ng/mLで再懸濁させた。HLA-G1は、オーバーラップマークとして50bpをさらに追加するのに十分な大きさであったので、本発明者らは、左右のアームを使用して、HL-G1に余分な50bpのオーバーラップを加えた。本発明者らは、断片1のリバースプライマー(相同性により導かれる修復(HDR)のための左アーム)および断片2のフォワードプライマー(HDRの右アーム)に50bpオーバーラップを加えた。そのため、左右のアームは、長さ1050bpであった。
【0564】
左アーム断片の反応は、次のように設定した:2μLのDNA(濃度298ng/ml)、1μLのフォワードプライマー(GLF)(10μM)、1μLのリバースプライマー(GLR)(10μM)、および21μLのヌクレアーゼ非含有水(NFW)を混合した。混合物をHigh Yield PCR EcoDry Premix(Clontechから入手した)に添加した。PCRを行った。予測アンプリコンサイズは、1050bpであった。Tmは、61.5℃であった。PCR産物は、アガロースゲル上に複数のバンドをもたらした。アセンブリのため、およびより良好な画像表示のために、1050bpバンドをアガロースゲルから溶出した。
【0565】
右アーム断片の反応は、次のように設定した:10μLの10×ロングレンジBuffer、1μLのdNTP、2μLのDNA(濃度298ng/ml)、1μLのフォワードプライマー(10uM)、1μLのリバースプライマー(10μM)、2μLのロングレンジAmpを、50μLの総体積になるようにヌクレアーゼ非含有水と混合した。Tmは、67℃であった。予想アンプリコンサイズは、987bpであった。
【0566】
中央断片(HLA-G1)の反応は、次のように設定した:10μLの10×緩衝液、1μLのdNTP、1μLまたは2μLのgBlock濃度)、1μLのフォワードプライマー(10uM)、1μLのリバースプライマー(10μM)、2μLのロングレンジAmpを、50μLの総体積になるようにヌクレアーゼ非含有水と混合した。Tmは、67℃であった。
【0567】
アガロースゲルからの左、右および中央アームの精製を、PureLink(登録商標)Quick Gel Extraction Kit(Invitrogen)の指示書通りに行った。ナノドロップ分光光度計を使用して、全ての断片の濃度を測定した。23.5ng/μL、30ng/μLおよび28.3ng/μLが、1.2%アガロースゲルから溶出した左、中央および右断片の濃度であった。ギブソンアセンブリについての指示書に従って、2μLの各断片を、0.2mlのPCRチューブの中で10μLのGAマスターミックス(NEB)および4μLのヌクレアーゼ非含有水と混合して20μLの最終体積にし、サーマルサイクラー内で、50℃で1時間、インキュベートした。
【0568】
次いで、2μLのアセンブルされた産物を、左アームのフォワードプライマーおよび右アームのリバースプライマーを使用してLong Amp(NEB)を使用するロングレンジPCRに付した。ロングレンジPCRの反応は、次のように設定した:10μLの5×ロングレンジ緩衝液、1μLのdNTP(100μM;NEB)、2μLの増幅されたgblock HLA-G1、1μLのフォワードプライマー(10μM)、1μLのリバースプライマー(10μM)を、ヌクレアーゼ非含有水と混合して50μLの最終体積にした。PCRを行い、予想アンプリコンサイズは、3000bpであった。
【0569】
ブタRosa26エクソン1、GGTA1およびNLRC5のエクソン1を(SLA1ノックアウトのために)ターゲティングするためのgRNAのデザインおよびクローニング
【0570】
GGTA1またはNLRC5の第1コドンのすぐ近くのブタROSA26エクソン1のエクソン1に切れ目を入れるgRNAを作製するための特異的オリゴヌクレオチドを、http://zifit.partners.org/ZiFiT/CSquare9Nuclease.aspxを使用してデザインした。HLA-G1のcDNA配列を表2に示し、HLA-Gのゲノム配列を配列番号191として示す。HLA-Gのゲノム配列およびcDNAのマップを
図14A~14Bに示す。
【0571】
略述すると、オリゴヌクレオチドを合成し、それぞれの量のヌクレアーゼ非含有水に再懸濁させて、各々100μMの濃度を得た。1μLの各オリゴヌクレオチド(フォワードおよびリバース)を、0.2μLチューブの中で、1μLの10×T4ポリヌクレオチドキナーゼ反応緩衝液、0.5μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ、および6.5μLのdH2Oと混合して総体積10μLにした。反応溶液が入っているチューブをサーモサイクラー内に配置した。フォワードオリゴとリバースオリゴの適切なアニーリングのために次のプログラムを実行した:30分間37℃;5分間95℃;0.1℃/秒で25℃へ低下。アニールされたオリゴを1:100希釈した。
【0572】
アニールされたオリゴヌクレオチドを、プラスミドpX330-U6-キメラ_BB-CBh-hSpCas9(Addgene)を使用してクローニングして、CRISPR関連Cas9ヌクレアーゼ系のためのgRNAを生成した。fast digest緩衝液を使用して15分間、37℃で、1マイクログラムのプラスミドpX330をBbsI(New England Biolabs、Ipswich、MA)で消化し、次いで15分間維持して、BbsIを不活性化した。次いで、消化されたベクターの自己ライゲーションを回避するために、0.2μLのウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)を添加し、1時間インキュベートした。消化されたpX330を、Plasmid Extractionミニプレップキット(Qiagen)を使用して精製した。消化されたベクターを300μLのPB緩衝液と混合し、次いで、このキットの精製カラムに添加し、次いで、それを8000rpm×1分で遠心沈降させた。素通り画分を廃棄し、カラムをPE緩衝液(無水エタノールを含有する)により洗浄し、最後に50μLのEB緩衝液に溶出させた。1.3μL(50ng)の消化されたpx330ベクターを、1.0μLの希釈されたオリゴヌクレオチド、5μLの10×T4リガーゼ緩衝液、および2.5μLのT4 DNAリガーゼと混合し、最終的にその体積を、39.9μLのヌクレアーゼ非含有水を添加することにより、50μLにした。反応ミックスにいずれのオリゴも添加しない陰性対照を実行した。次いで、製造元のプロトコールに従って、リガーゼを65℃で5分間不活性化した後にTOP10コンピテント細胞(Invitrogen)の形質転換へと進んた。DNAクローンは、配列であった。
【0573】
gRNAと並置したpx330ベクター内のRosa26オリゴのライゲーションの証拠を、
図27A、27Bおよび27Cに示した。適正なクローンの配列を
図27Aに示し、構築されたプラスミドのRNC1_E02_008シーケンシング結果を
図27Bに示した。
【0574】
ライゲートされた産物の制限消化も行って、ライゲーションの成功を検証した。2つの制限酵素(BsbIおよびAgeI)を使用して、精製されたライゲーション産物を消化した。オリゴヌクレオチドをBsbI部位でライゲートしたので、オリゴヌクレオチドを保有するpx300ベクター内のBsbI部位は破壊されていた(
図27C、レーン1:無傷ベクター;レーン2:破壊されたBsbI部位を有するライゲートされたベクター)。
【0575】
標的DNAのin vitroにおける転写(IVT)およびin vitroにおけるCas9媒介性切断
【0576】
Rosa26、GGTA1およびNLRC5部位に対するデザインしたgRNAの切断能を調査するために、Guide-it(商標)sgRNA In Vitro Transcription and Screening Systemを、製造元のプロトコールに従って、ガイドRNAのin vitroにおける転写に使用した。ガイドRNAのそれぞれの切断能も調査した。GalMetオリゴ(フォワード:acaccggagaaaataatgaatgtcaag(配列番号367);リバース:aaaacttgacattcattattttctccg(配列番号368))を使用して、GGTA1切断のためのgRNAを機能させた(
図28)。Gal(Met)は、GGTA1 cDNA転写物の第1のメチオニンをターゲティングしたが、プロモーター領域内の外部のいずれの他の調節メチル基もターゲティングしなかった。
【0577】
A:gRNAの標的(約2000kb)の増幅
【0578】
キットの指示書通りに特異的プライマーを使用して、Rosa26、GGTA1およびNLRC5についてのgRNAの約2kb長アンプリコン含有標的配列を増幅した。ブタDNAおよびプライマーをヌクレアーゼ非含有水と混合して25μLの総体積にした。後に、その混合物をDry PCR mixと混合した。Rosa26、GGTA1およびNLRC5についての反応のTmは、それぞれ、61.5℃、60℃、および63℃であった。Purlink;Quick Gel Extraction kit(Invitrogen)を使用して、アガロースゲルから全てのアンプリコンを溶出させた。
【0579】
B:In-vitroにおける転写
【0580】
T7プロモーターの制御下にあるデザインされたsgRNAコード配列と、ユニバーサルgRNA配列とを含有する、化学合成されたDNA鋳型を、IDTから入手した。その鋳型を、キット内に備えられていたd Guide-it Scaffold TemplateでのPCRにより、増幅させた。
【0581】
Rosa26、NLRC5およびGGTA1のためのIVT鋳型は、次のとおりであった:Rosa26:gccgcctctaatacgactcactatagggccgccggggccgcctagagagttttagagctagaaatagca(配列番号233);NLRC5:gccgcctctaatacgactcactatagggccggcctcagaccccacacagaggttttagagctagaaatagca(配列番号234);GGTA1:gcggcctctaatacgactcactataggggagaaaataatgaatgtcaagttttagagctagaaatagca(配列番号235)。
【0582】
5μlのGuide-it Scaffold Template(キット内に備えられていたもの)と1μlの上述の鋳型を10μMの濃度で混合し、RNase非含有水で希釈して25μlの最終体積にした。穏やかなピペット操作により、溶液を混合した。全25μl混合物を、High Yield PCR EcoDry Premixの1本のチューブに添加した。次のプログラムを使用するサーマルサイクリング:1分間95℃;30秒間95℃、1分間68℃、1分間68℃の33サイクル。
【0583】
得られたPCR産物を1.8%アガロースゲル上で泳動させた。約140bpでの単一のバンドが、3つのIVT鋳型の各々について得られた。次いで、キットが備えていたNucleoSpin Gelにより、バンドを精製した。
【0584】
次いで、100ngのPCR産物をGuide-it In Vitro Transcription BufferおよびGuide-it T7 Polymerase
Mixと混合することにより、in vitroにおける転写を行った。ヌクレアーゼ非含有水を添加することにより、最終体積は20μLになり、それを42℃で1時間インキュベートした。
【0585】
C:In Vitroにおいて転写されたsgRNAの精製および定量
【0586】
(1)2μlのRNase非含有DNase Iを、全20μlのin vitro転写反応物に添加し、37℃で0.5時間インキュベートした。
【0587】
(2)RNase非含有水を反応混合物に添加して、100μlの最終体積にした。
【0588】
(3)10mM Tris、pH8.0、1mM EDTAで飽和させた100μlのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を、ステップ(2)からの希釈された反応混合物に添加し、よくボルテックスした。
【0589】
(4)溶液を12,000rpmで2分間、室温で遠心分離した。上清を新しいチューブに移し、それに同量のクロロホルムを添加した。
【0590】
(5)溶液をよくボルテックスし、次いで、12,000rpmで2分間、室温で遠心分離した。
【0591】
(6)上清を新しいチューブに移し、1/10体積の3M酢酸ナトリウムおよび同体積のイソプロパノールを添加し、よくボルテックスした。
【0592】
(7)ステップ(6)からの溶液を5分間、室温でインキュベートし、次いで、15,000rpmで5分間、室温で遠心分離した。
【0593】
(8)上清を注意深く除去した。ペレットを80%エタノールですすぎ、15,000で5分間、室温で遠心分離した。
【0594】
(9)ペレットを約15分間、空気乾燥させ、20μlのRNase非含有水に再懸濁させ、ナノドロップを使用して濃度をチェックした。
【0595】
D:Rosa26、NLRC5およびGGTA1の精製されたgRNAでの2kb鋳型(セクションA)のCas9媒介性切断
【0596】
(1)上記sgRNA(標的に特異的)と増幅された実験鋳型(約2kb長の各々の遺伝子;標的配列を含有する、Rosa26、NLRC5(NL1)およびGGTA1)とを含む切断反応を準備した。
【0597】
(2)実験切断鋳型(総量100ng)と、実験sgRNA試料(上記からの合計20ng)、1μLのGuide-it Recombinant Cas9 Nuclease、1μLの10×Cas9 Reaction Buffer、1μLの10×BSAを混合し、ヌクレアーゼ非含有水で10μLの最終体積にした。その混合物を37℃で1時間インキュベートした。溶液を70℃で10分間インキュベートすることにより、反応を停止させた。全10μlの反応物を陰性対照(100ngの切断されていない2kb対照断片)とともに1%アガロースゲルで分析した(
図29)。
【0598】
電気穿孔および流動分取
【0599】
凍結保存された細胞を10%完全DEMEM培地に、ペトリ皿1つ当たり細胞1×106個で播種した。細胞を播種した後、各々24時間後に培地を交換し、ペトリ皿がコンフルエント(>70%)になるようにさせた。次いで、PBS、TRYPLE Expressを使用して細胞を回収し、次いで、電気穿孔用のNeonシステムが備えていた100μLのR緩衝液に再懸濁させた。gRNA(Rosa26、GGTA1またはNLRC5のためのもの)を含有する1.5μgのpx330プラスミドを1.5mlチューブに添加し、穏やかに軽くたたくことにより混合した。その後、100μLチューブの中で、1300V×30ms×1パルスで電気穿孔を行った。細胞を15%完全DMEM培地に播種し、各々12時間後にモニターした。電気穿孔の12時間後、細胞接着の徴候を見ることができた。
【0600】
ブタ胎仔線維芽細胞に、px330U6-gRNA(met、GGTA1);px330U6-gRNA(Rosa26)およびpx330U6-gRNA(NLRC5)を電気穿孔し、1×PBS-/-およびTriple Expressを使用するトランスフェクション後5日目に、Rosa26相同性左およびアーム(ブタRosa26遺伝子座での挿入用にデザインされたもの)を有するギブソンアセンブリにより構築されたHLA-G1のアンプリコンを回収した。
【0601】
本発明者らは、3本の異なるチューブの中でトランスフェクトし、各々のペトリ皿から細胞約1×10
6個を回収した。これらの細胞を、100μLの流動緩衝液(PBS-1%BSA)中の、1μgのIB4-APC(BioLegend)、1μgの抗ブタSLA1-FITIC(Novus Biologicals)、5μLの抗HLA-G1-PEで染色し、4℃で30分間、暗所でインキュベートした。陰性非染色対照も4℃で保持し、本発明者らが染色細胞で行った全ての処置に付した。また、本発明者らは、それぞれの蛍光色素についての陽性対照のための単染色チューブ:IB4-APCおよびSLA1-FITCも作製した。その後、ブタ線維芽細胞を2000rpmで5分間、微量遠心管で回転させて、余分な抗体を除去した。次に、細胞を再び流動緩衝液(100μL)に再懸濁させ、ストレーナー(BD)を備えた流管に通した。染色後、本発明者らは、流動分取施設(CCRB、University of Minnesota)への移動中の夾雑の可能性を回避するために、全てのチューブに注意深くキャップをした。捕集培地は、流動分取コア施設の指示通り、2.5%完全DMEM(Pen-Step、GlutamaxおよびFBS)であった。分取結果を
図30に示す。
生きている子ブタの分娩
【0602】
図114A~Cは、GGTA1/NLRC5ノックアウト/HLA-G1ノックイン子ブタの生仔出生の写真を示す。
シーケンシングによる遺伝子型判定
【0603】
次世代シーケンシングを行って、ROSA部位へのHLA-G1配列の適正な挿入を確認した。生きている子ブタから採取した皮膚試料を用いてシーケンシングを行った。ROSA部位におけるHLA-G1ノックアウトの確認配列を
図115(配列番号499)に示す。
(実施例9)
遺伝子改変されたブタを作製するためのGGTA1ノックアウト/CD47ノックイン細胞の生成および特徴付け
【0604】
レシピエント(例えば、霊長類動物、例えばヒト)に移植されたときのブタ異種移植片の生存を増強するための1つの戦略は、同時に、Galアルファ(1,3)Gal抗原(Gal抗原)のレベルを抑制し、マクロファージの活性化を抑制することである。このために、GGTA1が(Gal抗原を抑制するために)ノックアウトされ、ヒトCD47が(マクロファージ活性化を抑制するために)ノックインされた細胞を、CRISPR-Cas9媒介性遺伝子編集技術を使用して生成した。
【0605】
実施例26に記載したのと同様の方法を使用して、GGTA1ノックアウト/CD47ノックイン細胞を生成した。GGTA1特異的gRNA(エクソン1に結合部位を有するもの)がpx330においてU6プロモーター下にクローニングされた、GGTA1ターゲティングgRNAベクターに、ギブソンアセンブリにより構築されたGGTA1-CD47遺伝子ハイブリッド体を、トランスフェクトした。GGTA1-CD47遺伝子ハイブリッド体中のCD47遺伝子は、GGTA1の1000bp相同性アーム(切断部位の5’側および3’側)間にサンドイッチされていた。
【0606】
GGTA1遺伝子座の左アームおよび右アームを用いてCD47 cDNAをアセンブルした。
【0607】
アセンブリ用のプライマーは、CD47アセンブリ右フォワードプライマー:ttgagcctgtgcatcgcagcgt(配列番号236);CD47アセンブリ右リバースプライマー:ctacttttaatgcaagctggtgacttggctgataactagg(配列番号237);CD47アセンブリ左フォワードプライマー:aaattaaggtagaacgcactccttagcgctcgt(配列番号238);CD47アセンブリ左リバースプライマー:attttgggcttccatgttggtgacaaaacaaggg(配列番号239)であった。
【0608】
左アームと、CD47コード配列と、右アームとを含む得られたアセンブリ構築物の配列を
図31に示した(左アームおよび右アームに下線を引いてある)。CD47配列を、ブタコドン利用のために最適化し、合成により作製したか、またはアセンブルした。この配列は、ヒト細胞に由来しなかった。ブタにおける適正なアミノ酸プロファイルをもって発現するように、それをデザインした。CD47配列(表12)を、ブタコドン利用のために最適化し、合成により作製したか、またはアセンブルした。
【表12】
【0609】
GGTA1遺伝子と相同である左および右アームを用いて、CD47遺伝子をGGTA1遺伝子切断部位にターゲティングした。GGTA1遺伝子は、成体の島において不活性であったが、成体ブタの血液細胞および脾細胞において活性化された。したがって、CD47を(GGTA1部位から)発現するブタは、非常に良いワクチンドナーであるであろう。
【0610】
アセンブリをシーケンシングにより確認した。アセンブルされた左アームおよび右アームの配列を
図32に示す。
【0611】
細胞の表現型を細胞分取により調査した。Gal抗原をIB4-APC染色により検出した。CD47をCD47-Brilliant Violet 421-Aにより検出した。細胞分取結果を、
図33A~33C(非染色)、
図34A~34C(px330)、
図35A~35C(IB4)、および
図36A~36C(CD47/IB4)に示した。GGTA1がノックアウトされた細胞、およびCD47がノックインされた/GGTA1がノックアウトされた細胞を分取し、体細胞核移入のために精製した。分取された細胞についての細胞分取結果を
図37A~37C(IB4)および
図38A~38C(CD47/IB4)に示した。
(実施例10)
ヒトリンパ球の免疫活性化に対するMHCクラスI欠損ブタ線維芽細胞(Fibroblast)の効果
A.増殖(CFSE):SLA-I/Gal-2ノックアウト
【0612】
異種移植に対するヒト免疫応答を判定するための1つの戦略は、遺伝子改変された、MHCクラスI欠損ブタ線維芽細胞と、ヒトPBMCの共培養であり得る。混合リンパ球反応共培養を平底96ウェルプレートで行った。ヒトCFSE標識(2.5μM/ml)PBMCを、レスポンダーとして、細胞1~2×105個/ウェル/200ulで使用した。細胞1000~1×10
5個/ウェルのブタ線維芽細胞(SLA-I/Gal-2ノックアウトを有するまたは有さないもの)を、刺激因子として、100:1、50:1、10:1および1:10の刺激因子-レスポンダー比で使用した。サイトカイン(Il-2、TNF-aおよびIFN-g)エフェクター分子(パーフォリン、グランザイムB LAMP-1/CD107a)発現のために24時間、ならびにTおよびB細胞増殖の測定のために5~6日間、MLR共培養を行った。
図39および
図55は、増殖データの解析に使用したゲーティング戦略を示す。1名のヒトドナーの結果を
図40および
図41~
図44に示す。さらなるドナーの結果を
図56~
図59に示す。
B.増殖(CFSE):NLRC5-6/Gal-2-2構築物:SLA-I/Gal-2ノックダウン;NLRC5-6/Gal-2構築物およびGGTA1-1/Gal2-2構築物SLA-I/Gal-2ノックダウン。
【0613】
ヒトPBMC:CFSEで事前に標識したものを、次のものとともに培養した:対照:ブタFibroblast:野生型;条件#3 NLRC5-6/Gal-2-2構築物:SLA-I/Gal-2ノックダウンを有する、MLF細胞;条件#4 NLRC5-6/Gal-2構築物およびGGTA1-1/Gal2-2構築物SLA-I/Gal-2ノックダウンを有する、MLF細胞;培養細胞密度:MLF細胞=細胞4×10
4個/ml;ヒトPBMC=細胞1×10
6個/ml;MLR培養物の細胞密度:二重反復または三重反復で、96ウェルプレート平底の1ウェル当たり細胞2×10
5~1.4×10
5個/200ul(表13)。
【表13】
C.細胞内サイトカイン染色(ICCS)
【0614】
並行実験(表14)では、全PBMC細胞を、陽性および非刺激対照として、それぞれ、PHA(2ug/ml)で、およびそれなしで、刺激した。培養細胞を洗浄し、抗CD3、抗CD4および抗CD8で染色し、続いて、ホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、抗パーフォリン、グランザイムB、IL-2、TNF-aおよびIFN-gで細胞内染色した(
図45~
図52)。BD FACS Canto II flowを使用して、改変されていないブタ線維芽細胞と比較してSLA-Iノックアウトブタ線維芽細胞(F3)に応答してのCD8およびCD4 T細胞の増殖能力を、評価した。FACS diva/Flow Joソフトウェア(Tri star、San Diego、CA、USA)を使用してデータを解析し、事前にゲートをかけたCD8 T細胞およびCD4 T細胞を用いてCFSE dim/low百分率を決定した。
【表14】
(実施例11)
PT85抗体を含む混合細胞培養の方法論。
【0615】
混合リンパ球反応共培養を平底96ウェルプレートで行った。ヒトCFSE標識(2.5μM/ml)PBMCを、レスポンダーとして、細胞1~2×10
5個/ウェル/200ulで使用した。ブタ線維芽細胞/WT、またはHLA-Gを細胞2000~1×10
5個/ウェルで(PT85 Ab/遮断Ab、10ug/mlとともに、またはなしで)で形質導入したものを、刺激因子として、100:1、50:1、10:1および1:10の刺激因子-レスポンダー比で使用した。サイトカイン(Il-2、TNF-aおよびIFN-g)エフェクター分子(パーフォリン、グランザイムB LAMP-1/CD107a)発現のために24時間、ならびにTおよびB細胞増殖の測定のために5~6日間、MLR共培養を行った。別の並行実験では、全PBMC細胞を、陽性および非性激対照として、それぞれ、PHA(2ug/ml)で、およびそれなしで、刺激した。培養細胞を洗浄し、抗CD3、抗CD4および抗CD8で染色し、続いて、ホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、抗パーフォリン、グランザイムB、IL-2、TNF-aおよびIFN-gで細胞内染色した。BD FACS Canto II flowを使用して、改変されていないブタ線維芽細胞と比較してSLA-Iノックアウトブタ線維芽細胞(F3)に応答してのCD8およびCD4 T細胞の増殖能力を、評価した。FACS diva/Flow Joソフトウェア(Tri star、San Diego,CA,USA)を使用してデータを解析した、(表15)。
【表15】
(実施例12)
MHCクラス1分子/TCR相互作用を遮断するPT-85抗体。
【0616】
混合リンパ球反応共培養を平底96ウェルプレートで行った。ヒトCFSE標識(2.5μM/ml)PBMCを、レスポンダーとして、細胞1~2×10
5個/ウェル/200ulで使用した。細胞2000~1×10
5個/ウェルのブタ線維芽細胞(PT85 10ug/mlでのSLA-遮断を有するまたは有さない)を、または前記ブタ線維芽細胞と、HLA-Gが形質導入されたブタ線維芽細胞/MLF細胞を、刺激因子として、100:1、50:1、10:1および1:10の刺激因子-レスポンダー比で使用した(
図53および
図54)。サイトカイン(Il-2、TNF-aおよびIFN-g)エフェクター分子(パーフォリン、グランザイムB LAMP-1/CD107a)発現のために24時間、ならびにTおよびB細胞増殖の測定のために5~6日間、MLR共培養を行った。別の並行実験では、全PBMC細胞を、陽性および非性激対照として、それぞれ、PHA(2ug/ml)で、およびそれなしで、刺激した。培養細胞を洗浄し、抗CD3、抗CD4および抗CD8で染色し、続いて、ホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、抗パーフォリン、グランザイムB、IL-2、TNF-aおよびIFN-gで細胞内染色した(
図66~
図74および
図79~
図86)。BD FACS Canto II flowを使用して、改変されていないブタ線維芽細胞と比較してSLA-Iノックアウトブタ線維芽細胞(F3)に応答してのCD8およびCD4 T細胞の増殖能力を評価した(
図61~
図65および
図75~
図78)。FACS diva/Flow Joソフトウェア(Tri star、San Diego、CA、USA)を使用してデータを解析し、事前にゲートをかけたCD8 T細胞およびCD4 T細胞を用いてCFSE dim/low百分率を決定した、
図61~
図65。データを解析するために使用したゲーティング戦略を
図60に示す。
(実施例13)
ヒトT細胞増殖応答を阻害するためのHLA-Gトランス遺伝子発現ブタの試験。
【0617】
T細胞増殖は、改変されていない対照ブタ線維芽細胞/WTと比較して、PT-85遮断Abで処置されたブタ線維芽細胞によるそれぞれ10:1のヒトPBMCとFCの比での刺激後に、低減された。ヒトレスポンダーを10:1および1:1比でSLA-I遮断PT-85AbまたはHLA-G発現を用いて処置したとき、T細胞(CD3/CD4/CD8)増殖の実質的低減が観察された。100:1および50:1の比では、改変されていなし/WTブタ線維芽細胞と比較してT細胞増殖応答にあまり差は見られなかった。PT-85でのSLA-I遮断、またはHLA-G発現のどちらを用いても、B細胞増殖の実質的低減なし。
(実施例14)
Luminexヒトサイトカインパネル(HSTCMAG-28SKヒト高感度T細胞)による混合リンパ球アッセイ測定後の、分泌されたサイトカインのプロファイル。
【0618】
遺伝子改変されたブタ細胞に対する混合リンパ球のサイトカインプロファイルを判定するために、24日目に混合細胞培養物および対照からの上清を収集し、luminexアッセイを行う、共培養アッセイを行った。製造元のプロトコールに従って、上清のアリコートを除去し、サイトカインごとにluminexビーズとともにインキュベートし、洗浄し、製造所でインテナンスされたlumnex装置で測定した。二重ノックアウト(DKO)#3および#4は、別々に作製された遺伝子的および表現型的GGTA1/NLRC5ノックアウト細胞である。HLAG1トランスジェニック細胞は、別の実験で扱ったため、対応する非刺激および野生型細胞対照が含まれている。
(実施例15)
GGTA1-10、Gal2-2およびNLRC5-6の遺伝子改変
【0619】
初代ブタ細胞に、GGTA1-10/Gal2-2(条件2)、NLRC5-6/Gal2-2(条件3)、GGTA1-10/Gal2-2およびNLRC5-6/Gal2-2(条件4)、または条件1:細胞のみをトランスフェクトした(
図90)。磁性ビーズ分取を使用することによる陰性細胞のビーズ選択を、末端アルファ-D-ガラクトシル残基(例えば、GGTA1の産物)に対する選択性があるIB4レクチンを使用して行った(
図91)。第1のビーズ選択を5日後に行い、その後、8日目に第2のビーズ選択を行った。University of MNからの分取マシンを使用する陰性細胞の細胞分取選択をトランスフェクションの7日後に行った。細胞をIB4レクチンAlexa Fluor 467およびSLA I FITCで染色し、フローサイトメトリーにより解析した(
図92~
図102)。培養物の共焦点顕微鏡観察を
図103Aに示す。シーケンシング確認の電気泳動を示す追加データを、
図113A~113Iに示す。
【表16-1】
【表16-2】
【表17】
【0620】
(実施例16)
Laurasiatheria上目の遺伝子改変された動物を作製するためのHLA-Gノックイン細胞の生成および特徴づけ。
【0621】
HLA-GがノックインされたLaurasiatheria上目の動物の細胞を、CRISPR/Cas9媒介性遺伝子編集技術を使用して生成することができる。HLA-Gのノックインは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7を含み得る。HLA-Gを標的遺伝子座に挿入することができる。例えば、HLA-Gを、Laurasiatheria上目の動物のRosa26遺伝子座に挿入することができる。あるいは、HLA-Gを、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、またはNOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)などの、別の標的遺伝子座に挿入することができる。別の遺伝子にターゲティングされたHLA-Gコード配列のノックインは、その遺伝子を破壊またはノックアウトすることができる。
【0622】
HLA-G挿入の標的領域を、本質的に上記実施例2に記載したようにシーケンシングすることになる。正確な情報を使用して、実施例2に記載したように標的領域に特異的なガイドRNAをデザインすることになる。標的領域に特異的なガイドRNAを発現するプラスミド、例えばpx330を、実施例1および実施例2に記載した方法を使用して生成することになる。あるいは、標的領域に特異的な2つガイドRNAを同時に発現するプラスミド、例えばpx333を、実施例3に記載したように生成することができる。
【0623】
実施例8に記載したように、標的遺伝子座切断部位から1000bp上流(5’)および下流(3’)のDNA配列を確認することになる。左相同性アームを切断部の1000bp上流に指定することとし、右相同性アームを切断部位の1000bp上流としてデザインすることになる。HLA-Gを含有する断片であって、相同性が導く断片の生成、および標的遺伝子座へのHLA-Gの挿入は、実施例8においてRosa26遺伝子座へのHLA-G1挿入について記載したように行うことになる。使用するHLA-G配列を、5’および/または3’非翻訳領域に改変を有するmRNAとして転写することができる。そのような改変は、mRNAの安定性を増大させることができる。
【0624】
Laurasiatheria上目の動物の細胞は、遺伝子のノックアウトをHLA-Gノックインと併せて有することができる。例えば、GGTA1および/またはNLRC5をノックアウトすることができ、HLA-Gをノックインすることができる。したがって、Laurasiatheria上目のGGTA1/NLRC5ノックアウト/HLA-Gノックイン動物を、実施例8に記載したものと同様の方法を使用して産生することができる。記載したように、HLA-Gコード配列のノックインは、別の遺伝子(例えば、GGTA1および/またはNLRC5)を破壊またはノックアウトすることができる。
【0625】
Laurasiatheria上目の動物は、有蹄類動物、例えば、偶蹄類動物(例えば、ブタ、ペッカリー、カバ、ラクダ、ラマ、マメジカ(ネズミジカ)、シカ、キリン、プロングホーン、アンテロープ、ヤギ-アンテロープ(ヒツジ、ヤギなどを含む)、もしくはウシ)または奇蹄類動物(例えば、ウマ、バク、およびサイ)、非ヒト霊長類動物(例えば、サルもしくはチンパンジー)、イヌ科動物(例えば、イヌ)またはネコを含む場合がある。Laurasiatheria上目のメンバーは、真無盲腸目(ハリネズミ、トガリネズミおよびモグラ)、奇蹄目(サイ、ウマ、およびバク)、食肉目(肉食動物、例えば、ネコ、イヌおよびクマ)、鯨偶蹄目(偶蹄目の動物およびクジラ目の動物)、翼手目(コウモリ)、および有鱗目(センザンコウ)を含む場合がある。
【0626】
【表18-1】
【表18-2】
【表18-3】
【表18-4】
【表18-5】
【表18-6】
【表18-7】
【表18-8】
【表18-9】
【表18-10】
【表18-11】
【表18-12】
【表18-13】
【表18-14】
【表18-15】
【表18-16】
【表18-17】
【表18-18】
【表18-19】
【表18-20】
【表18-21】
【表18-22】
【表18-23】
【表18-24】
【表18-25】
【表18-26】
【表18-27】
【表18-28】
【表18-29】
【表18-30】
【表18-31】
【表18-32】
【表18-33】
【表18-34】
【表18-35】
【表18-36】
【表18-37】
【表18-38】
【表18-39】
【表18-40】
【表18-41】
【表18-42】
【表18-43】
【表18-44】
【表18-45】
【表18-46】
【表18-47】
【表18-48】
【表18-49】
【表18-50】
【表18-51】
【表18-52】
【表18-53】
【表18-54】
【表18-55】
【表18-56】
【表18-57】
【表18-58】
【表18-59】
【表18-60】
【表18-61】
【表18-62】
【表18-63】
【表18-64】
【表18-65】
【表18-66】
【表18-67】
【表18-68】
【表18-69】
【表18-70】
【表18-71】
【表18-72】
【表18-73】
【表18-74】
【表18-75】
【表18-76】
【表18-77】
【表18-78】
【表18-79】
【表18-80】
【表18-81】
【表18-82】
【表18-83】
【表18-84】
【表18-85】
【表18-86】
【表18-87】
【表18-88】
【表18-89】
【表18-90】
【表18-91】
【表18-92】
【表18-93】
【表18-94】
【表18-95】
【表18-96】
【表18-97】
【表18-98】
【表18-99】
【表18-100】
【表18-101】
【表18-102】
【表18-103】
【表18-104】
【表18-105】
【表18-106】
【表18-107】
【表18-108】
【表18-109】
【表18-110】
【表18-111】
【表18-112】
【表18-113】
【0627】
本明細書において一部の実施形態を示し、説明してきたが、このような実施形態は、単に例として提供したものに過ぎない。今や当業者であれば、本発明から逸脱することなく、非常に多くの変形形態、変更形態および置換形態を考え付き得る。本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替形態が本発明を実施する際に使用されるであろうことは、理解されるはずである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号359と少なくとも95%同一である外因性核酸配列を含む、遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目2)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも96%同一である、項目1に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目3)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも97%同一である、項目1に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目4)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも98%同一である、項目1に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目5)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも99%同一である、項目1に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目6)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と100%同一である、項目1に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目7)
改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される外因性核酸を含む、遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目8)
前記改変された3’非翻訳領域が、1または複数の欠失を含む、項目7に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目9)
前記改変された3’非翻訳領域が、未改変のHLA-G mRNAと比較して前記mRNAの安定性を増加させる、項目7または8に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目10)
前記HLA-Gが、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である、項目7~9のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目11)
前記HLA-Gが、HLA-G1である、項目7~9のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目12)
前記HLA-Gが、HLA-G2である、項目7~9のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目13)
前記遺伝子改変された非ヒト動物の少なくとも1つの細胞が、HLA-Gタンパク質を発現する、項目1~12のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目14)
前記HLA-Gタンパク質が、HLA-G1である、項目13に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目15)
β-2-ミクログロブリン(B2M)タンパク質をコードする第2の外因性核酸をさらに含む、項目1~14のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目16)
前記B2Mタンパク質が、ヒトB2Mタンパク質である、項目15に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目17)
配列番号240と少なくとも75%同一である外因性核酸配列を含む、遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目18)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも80%同一である、項目17に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目19)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも85%同一である、項目17に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目20)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも90%同一である、項目17に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目21)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも95%同一である、項目17に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目22)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と同一である、項目17に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目23)
前記遺伝子改変された非ヒト動物の少なくとも1つの細胞が、ヒトCD47タンパク質を発現する、項目17~22のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目24)
改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される第2の外因性核酸配列をさらに含む、項目17~23のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目25)
前記改変された3’非翻訳領域が、1または複数の欠失を含む、項目24に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目26)
前記改変された3’非翻訳領域が、未改変のHLA-G mRNAと比較して前記mRNAの安定性を増加させる、項目24または25に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。(項目27)
前記HLA-Gが、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である、項目24~26のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目28)
前記HLA-Gが、HLA-G1である、項目24~26のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目29)
前記HLA-Gが、HLA-G2である、項目24~26のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目30)
前記第2の外因性核酸配列が、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、項目24~26のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目31)
前記外因性核酸配列が、構成的に活性な内因性プロモーターに作動可能に連結されている、項目1~30のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目32)
前記外因性核酸配列が、ROSA26遺伝子部位において前記遺伝子改変された非ヒト動物のゲノム中に挿入されている、項目1~31のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目33)
前記外因性核酸配列が、前記外因性核酸配列を有しない同じ種の動物または異なる部位に挿入された前記外因性核酸を有する同じ種の動物と比較して、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、またはこれらの組合せの発現を低減させるために効果的な部位において前記遺伝子改変された非ヒト動物のゲノム中に挿入されている、項目1~31のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目34)
前記外因性核酸配列が、前記糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)の発現を低減させるために効果的な前記部位において前記遺伝子改変された非ヒト動物のゲノム中に挿入されている、項目1~31のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目35)
糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む、項目1~34のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目36)
MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む、項目1~34のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目37)
前記MHC I特異的エンハンセオソームの成分の前記ゲノム破壊を含み、前記MHC
I特異的エンハンセオソームの成分が、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)である、項目36に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目38)
前記MHC I結合ペプチドのトランスポーターの前記ゲノム破壊を含み、前記トランスポーターが、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)である、項目36または37に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目39)
C3の前記ゲノム破壊を含む、項目36~38のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目40)
前記NK群2Dリガンドの前記ゲノム破壊を含み、前記NK群2Dリガンドが、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)またはMHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)である、項目36~39のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目41)
前記ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子の前記ゲノム破壊を含み、前記ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子が、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、またはβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)である、項目36~40のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目42)
前記CXCR3リガンドの前記ゲノム破壊を含み、前記CXCR3リガンドが、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)である、項目36~41のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目43)
前記ゲノム破壊が、前記ゲノム破壊を有しない同じ種の動物と比較して、破壊された遺伝子の発現を低減させる、項目35~42のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目44)
前記ゲノム破壊が、前記ゲノム破壊を有しない同じ種の動物と比較して、破壊された遺伝子からのタンパク質の発現を低減させる、項目35~42のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目45)
感染細胞タンパク質47(ICP47)をコードするさらなる外因性核酸配列をさらに含む、項目1~44のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目46)
Laurasiatheria上目のメンバーである、項目1~45のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目47)
有蹄動物である、項目1~45のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。(項目48)
ブタである、項目1~45のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目49)
非ヒト霊長類動物である、項目1~45のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目50)
胎仔である、項目1~49のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物。
(項目51)
項目1~50のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物から単離された細胞。
(項目52)
島細胞である、項目51に記載の細胞。
(項目53)
幹細胞である、項目51に記載の細胞。
(項目54)
項目1~50のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物から単離された組織。
(項目55)
実質臓器移植片である、項目54に記載の組織。
(項目56)
肝臓の全体または部分である、項目54に記載の組織。
(項目57)
腎臓の全体または部分である、項目54に記載の組織。
(項目58)
配列番号359と少なくとも95%同一である外因性核酸配列を含む非ヒト細胞。
(項目59)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも96%同一である、項目58に記載の非ヒト細胞。
(項目60)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも97%同一である、項目58に記載の非ヒト細胞。
(項目61)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも98%同一である、項目58に記載の非ヒト細胞。
(項目62)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と少なくとも90%同一である、項目58に記載の非ヒト細胞。
(項目63)
前記外因性核酸が、配列番号359または配列番号502と100%同一である、項目58の非ヒト細胞。
(項目64)
細胞表面にヒト白血球抗原G1(HLA-G1)を発現する、項目58~63のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目65)
改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される外因性核酸を含む非ヒト細胞。
(項目66)
前記改変された3’非翻訳領域が、1または複数の欠失を含む、項目65に記載の非ヒト細胞。
(項目67)
前記改変された3’非翻訳領域が、未改変のHLA-G mRNAと比較して前記mRNAの安定性を増加させる、項目65または66に記載の非ヒト細胞。
(項目68)
前記HLA-Gが、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である、項目65~67のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目69)
前記HLA-Gが、HLA-G1である、項目65~67のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目70)
前記HLA-Gが、HLA-G2である、項目65~67のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目71)
β-2-ミクログロブリン(B2M)タンパク質をコードする第2の外因性核酸をさらに含む、項目58~70のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目72)
前記B2Mタンパク質が、ヒトB2Mタンパク質である、項目71に記載の非ヒト細胞。
(項目73)
配列番号240と少なくとも75%同一である外因性核酸を含む非ヒト細胞。
(項目74)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも80%同一である、項目73に記載の非ヒト細胞。
(項目75)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも85%同一である、項目73に記載の非ヒト細胞。
(項目76)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも90%同一である、項目73に記載の非ヒト細胞。
(項目77)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と少なくとも95%同一である、項目73に記載の非ヒト細胞。
(項目78)
前記外因性核酸配列が、配列番号240と100%同一である、項目73に記載の非ヒト細胞。
(項目79)
少なくとも1つの非ヒト細胞が、ヒトCD47タンパク質を発現する、項目73~78のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目80)
改変された3’非翻訳領域を有するヒト白血球抗原G(HLA-G)mRNAとして転写される第2の外因性核酸配列をさらに含む、項目73~79のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目81)
前記改変された3’非翻訳領域が、1または複数の欠失を含む、項目80に記載の非ヒト細胞。
(項目82)
前記改変された3’非翻訳領域が、未改変のHLA-G mRNAと比較して前記mRNAの安定性を増加させる、項目80または81に記載の非ヒト細胞。
(項目83)
前記HLA-Gが、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、またはHLA-G7である、項目80~82のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目84)
前記HLA-Gが、HLA-G1である、項目80~82のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目85)
前記HLA-Gが、HLA-G2である、項目80~82のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目86)
前記第2の外因性核酸配列が、配列番号359または配列番号502と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、項目80~82のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目87)
前記外因性核酸配列が、構成的に活性な内因性プロモーターに作動可能に連結されている、項目58~86のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目88)
前記外因性核酸配列が、ROSA26遺伝子部位において非ヒト細胞のゲノム中に挿入されている、項目58~87のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目89)
前記外因性核酸配列が、前記外因性核酸配列を有しない同じ種の細胞または前記外因性核酸が異なる部位に挿入されている同じ種の細胞と比較して、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、またはこれらの組合せの発現を低減させるために効果的な部位において前記非ヒト細胞のゲノム中に挿入されている、項目58~87のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目90)
前記外因性核酸配列が、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)の発現を低減させる部位において前記非ヒト細胞のゲノム中に挿入されている、項目58~87のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目91)
糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、β1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む、項目58~87のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目92)
MHC I特異的エンハンセオソームの成分、MHC I結合ペプチドのトランスポーター、ナチュラルキラー(NK)群2Dリガンド、CXCケモカイン受容体(CXCR)3リガンド、MHC IIトランスアクチベーター(CIITA)、C3、ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される1または複数の遺伝子におけるゲノム破壊をさらに含む、項目58~87のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目93)
前記MHC I特異的エンハンセオソームの成分の前記ゲノム破壊を含み、前記MHC
I特異的エンハンセオソームの成分が、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5)である、項目92に記載の非ヒト細胞。
(項目94)
前記MHC I結合ペプチドのトランスポーターの前記ゲノム破壊を含み、前記トランスポーターが、抗原プロセシング関連トランスポーター1(TAP1)である、項目92または93に記載の非ヒト細胞。
(項目95)
C3の前記ゲノム破壊を含む、項目92~94のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目96)
前記NK群2Dリガンドの前記ゲノム破壊を含み、前記NK群2Dリガンドが、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)またはMHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)である、項目92~95のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目97)
前記ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子の前記ゲノム破壊を含み、前記ヒトにおいて発現されない内因性遺伝子が、糖タンパク質ガラクトシルトランスフェラーゼアルファ1,3(GGTA1)、推定上のシチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)、またはβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)である、項目92~96のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目98)
CXCR3リガンドの前記ゲノム破壊を含み、前記CXCR3リガンドが、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)である、項目92~97のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目99)
前記ゲノム破壊が、前記ゲノム破壊を有しない同じ種に由来する細胞と比較して、破壊された遺伝子の発現を低減させる、項目91~98のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。(項目100)
前記ゲノム破壊が、前記ゲノム破壊を有しない同じ種に由来する細胞と比較して、破壊された遺伝子からのタンパク質の発現を低減させる、項目91~98のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目101)
感染細胞タンパク質47(ICP47)をコードするさらなる外因性核酸配列をさらに含む、項目58~100のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目102)
Laurasiatheria上目の細胞である、項目58~101のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目103)
有蹄動物の細胞である、項目58~101のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目104)
ブタ細胞である、項目58~101のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目105)
非ヒト霊長類動物の細胞である、項目58~101のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目106)
胎仔細胞である、項目58~105のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目107)
幹細胞である、項目58~106のいずれか一項に記載の非ヒト細胞。
(項目108)
前記非ヒト細胞が島細胞である、項目58~106のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
項目58~106のいずれか一項に記載の非ヒト細胞を含む実質臓器移植片。
(項目110)
項目58~106のいずれか一項に記載の非ヒト細胞を含む胚。
(項目111)
項目58~106のいずれか一項に記載の少なくとも1つの非ヒト細胞を対象に提供することを含む方法。
(項目112)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、実質臓器移植片である、項目111に記載の方法。
(項目113)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、幹細胞移植片である、項目111に記載の方法。(項目114)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、島細胞移植片である、項目111に記載の方法。(項目115)
寛容化ワクチンを前記対象に提供することをさらに含む、項目111~114のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記寛容化ワクチンが、前記少なくとも1つの非ヒト細胞が前記対象に提供される前に、それと同時に、またはその後に、提供される、項目115に記載の方法。
(項目117)
前記寛容化ワクチンが、アポトーシス性細胞を含む、項目115または116に記載の方法。
(項目118)
前記寛容化ワクチンが、前記対象に提供される前記少なくとも1つの非ヒト細胞と同じ種に由来する細胞を含む、項目115~117のいずれか一項に記載の方法。
(項目119)
前記寛容化ワクチンが、前記対象に提供される前記少なくとも1つの非ヒト細胞と遺伝学的に同一である細胞を含む、項目115~118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
抗CD40抗体を前記対象に提供することをさらに含む、項目111~119のいずれか一項に記載の方法。
(項目121)
前記抗CD40抗体が、前記少なくとも1つの非ヒト細胞が前記対象に提供される前に、それと同時に、またはその後に、提供される、項目120に記載の方法。
(項目122)
前記抗CD40抗体が、配列番号487のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、項目120または121に記載の方法。
(項目123)
前記抗CD40抗体が、配列番号488のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、項目120または121に記載の方法。
(項目124)
a)項目1~50のいずれか一項に記載の遺伝子改変された非ヒト動物から単離された少なくとも1つの細胞と、
b)寛容化ワクチン、抗CD40抗体、またはこれらの組合せと
を含む異種移植用システム。
(項目125)
前記少なくとも1つの細胞が、島細胞、幹細胞、またはこれらの組合せを含む、項目124に記載のシステム。
(項目126)
前記少なくとも1つの細胞が、実質臓器移植片である、項目124に記載のシステム。(項目127)
前記少なくとも1つの細胞が、肝臓の全体または部分である、項目124に記載のシステム。
(項目128)
前記少なくとも1つの細胞が、腎臓の全体または部分である、項目124に記載のシステム。
(項目129)
前記寛容化ワクチンを含む、項目124~128のいずれか一項に記載のシステム。
(項目130)
前記寛容化ワクチンが、アポトーシス性細胞を含む、項目129に記載のシステム。
(項目131)
前記寛容化ワクチンが、前記少なくとも1つの細胞と同じ種に由来する細胞を含む、項目129または130に記載のシステム。
(項目132)
前記寛容化ワクチンが、前記少なくとも1つの細胞と遺伝学的に同一である細胞を含む、項目129~131のいずれか一項に記載のシステム。
(項目133)
前記抗CD40抗体を含む、項目129~132のいずれか一項に記載のシステム。
(項目134)
前記抗CD40抗体が、配列番号487のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、項目133に記載のシステム。
(項目135)
前記抗CD40抗体が、配列番号488のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、項目133に記載のシステム。
(項目136)
a)項目58~108のいずれか一項に記載の少なくとも1つの非ヒト細胞と、
b)寛容化ワクチン、抗CD40抗体、またはこれらの組合せと
を含む異種移植用システム。
(項目137)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、島細胞、幹細胞、またはこれらの組合せを含む、項目136に記載のシステム。
(項目138)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、実質臓器移植片である、項目136に記載のシステム。
(項目139)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、肝臓の全体または部分である、項目136に記載のシステム。
(項目140)
前記少なくとも1つの非ヒト細胞が、腎臓の全体または部分である、項目136に記載のシステム。
(項目141)
前記寛容化ワクチンを含む、項目136~140のいずれか一項に記載のシステム。
(項目142)
前記寛容化ワクチンが、アポトーシス性細胞を含む、項目141に記載のシステム。
(項目143)
前記寛容化ワクチンが、前記少なくとも1つの細胞と同じ種に由来する細胞を含む、項目141または142に記載のシステム。
(項目144)
前記寛容化ワクチンが、前記少なくとも1つの細胞と遺伝学的に同一である細胞を含む、項目141~143のいずれか一項に記載のシステム。
(項目145)
前記抗CD40抗体を含む、項目141~144のいずれか一項に記載のシステム。
(項目146)
前記抗CD40抗体が、配列番号487のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、項目145に記載のシステム。
(項目147)
前記抗CD40抗体が、配列番号488のアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、項目145に記載のシステム。