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特開2022-31587非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法
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  • 特開-非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法 図1
  • 特開-非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法 図2
  • 特開-非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法 図3
  • 特開-非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031587
(43)【公開日】2022-02-21
(54)【発明の名称】非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 5/024 20060101AFI20220214BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20220214BHJP
   B08B 3/08 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C23G5/024
B08B3/12 A
B08B3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135434
(22)【出願日】2020-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】516045159
【氏名又は名称】株式会社クリンビー
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和彦
【テーマコード(参考)】
3B201
4K053
【Fターム(参考)】
3B201AA48
3B201AB02
3B201BB02
3B201BB83
3B201BB95
3B201CB15
3B201CC11
3B201CD11
4K053QA04
4K053RA32
4K053XA28
4K053YA07
4K053YA10
(57)【要約】
【課題】引火性の炭化水素系溶剤を用いる場合と同程度の時間で、減圧ベーパー洗浄を行うことのできる非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法を提案すること。
【解決手段】洗浄システム300では、相対的に水分量の多い非引火性の洗浄液が流れる第1の系統と、相対的に水分量が少なく可燃物として取り扱われる洗浄液が流れる第2の系統とに分けてある。ベーパー発生器252により、水分量の少ない洗浄液から蒸気を生成して減圧ベーパー洗浄を行う。減圧ベーパー洗浄に入る前までに、ベーパー発生器252の中の水分を全て蒸発させることができるので、減圧ベーパー洗浄の時間を、一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにでき、ベーパー乾燥品質、乾燥時間も一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系溶剤と水を含む非引火性の洗浄液を用いてワークを洗浄する洗浄工程と、
洗浄後の前記ワークに、前記洗浄液から生成される水を含まない前記炭化水素系溶剤の蒸気を用いて、減圧ベーパー洗浄を施す減圧ベーパー洗浄工程と
を含み、
前記減圧ベーパー洗浄工程の開始前に、前記洗浄工程において使用する前記洗浄液の一部を水分蒸発器に供給し、当該水分蒸発器において前記洗浄液から水分を除去して炭化水素系溶剤を抽出し、抽出した前記炭化水素系溶剤を真空蒸留機兼ベーパー発生器に供給し、前記真空蒸留機兼ベーパー発生器において前記炭化水素系溶剤の蒸気を生成し、
前記減圧ベーパー洗浄工程において、前記蒸気を、前記減圧ベーパー洗浄が行われる槽に供給する非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法。
【請求項2】
炭化水素系溶剤と水を含む非引火性の洗浄液を用いてワークを洗浄する洗浄工程と、
洗浄後の前記ワークに、前記洗浄液から生成される水を含まない前記炭化水素系溶剤の蒸気を用いて、減圧ベーパー洗浄を施す減圧ベーパー洗浄工程と
を含み、
前記洗浄工程において使用する前記洗浄液を真空蒸留機に供給して、当該洗浄液を真空蒸留再生し、
真空バッファタンクに貯留した前記洗浄液を、前記真空蒸留機とは別に配置したベーパー発生器に供給し、当該ベーパー発生器で発生した蒸気を、当該蒸気の温度が設定値を超えるまでは、凝縮器を介して前記真空バッファタンクに戻し、前記蒸気の温度が前記設定値を超えると、前記蒸気を前記減圧ベーパー洗浄が行われる槽に供給可能とし、
前記減圧ベーパー洗浄工程の開始前に、前記ベーパー発生器に、前記真空バッファタンクに貯留した前記洗浄液を供給して前記蒸気を発生させ、
前記減圧ベーパー洗浄工程において、前記ベーパー発生器で発生する前記設定値を超えた温度の前記蒸気を前記槽に供給する非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記真空バッファタンクとして、第1真空バッファタンクおよび第2真空バッファタンクを配置し、
前記ベーパー発生器から前記凝縮器を介して回収される相対的に水分量の多い前記洗浄液を前記第2真空バッファタンクに回収し、当該洗浄液を前記洗浄工程における前記ワークの洗浄に使用し、
前記真空蒸留機で真空蒸留再生された相対的に水分量の少ない前記洗浄液および、前記減圧ベーパー洗浄工程において前記槽の底に溜まる相対的に水分量の少ない前記洗浄液を、前記第1真空バッファタンクに回収し、
前記第1真空バッファタンクに貯留した前記洗浄液を前記ベーパー発生器に供給して、当該ベーパー発生器から前記蒸気を発生させる非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記洗浄工程には、前記ワークに脱気超音波洗浄を施す粗洗浄工程および粗洗浄後の前記ワークに真空超音波洗浄を施す仕上げ洗浄工程が含まれており、
減圧ベーパー洗浄後の前記ワークを真空乾燥させる真空乾燥工程を更に含み、
前記真空乾燥工程を、前記減圧ベーパー洗浄工程が行われる前記槽で行い、
前記粗洗浄工程および前記仕上げ洗浄工程を、前記槽または前記槽とは別の槽で行う非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素に所定割合で水を加えることで引火点の無くなった非引火性炭化水素系洗浄液を用いて、油、フラックス等の汚れが付着したワークの洗浄および減圧ベーパー洗浄を行う非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品等の洗浄液として、特許文献1に記載されているような引火点を持たない非引火性炭化水素系洗浄液が知られている。非引火性炭化水素系洗浄液は、炭化水素に所定割合で水を加えることで、引火点が無くなり、消防法上の危険物の適用外になる。
【0003】
このような非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄システムでは、すすぎ洗浄として、非引火性炭化水素系洗浄液から得られる炭化水素の蒸気を用いた減圧ベーパー洗浄が採用される場合がある。非引火性炭化水素系洗浄液を沸騰させると、水と炭化水素では沸点が異なり、先に水が蒸発し、後から炭化水素が蒸発する。水が蒸発した後に発生する炭化水素の蒸気を用いて減圧ベーパー洗浄が行われる。非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄システムは、例えば、特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-46197号公報
【特許文献2】特開2020-70310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、非引火性炭化水素系洗浄液を用いて減圧ベーパー洗浄を行う場合には、洗浄液に水が入っているので、以下のような問題点がある。
第1に、非引火性炭化水素系洗浄液を用いて減圧ベーパー洗浄を行う場合には、先に水が蒸発し、後から炭化水素が蒸発する。一般的な炭化水素系溶剤の蒸気を用いる場合に比べて、水が蒸発し終わるまで時間が必要であるので、減圧ベーパー洗浄のための所要時間が倍以上掛かってしまう。
第2に、水が洗浄物に残っていると、乾燥不良やシミになりやすい。
第3に、水は、蒸発させるのに炭化水素の10倍の熱量が必要なので、蒸気を発生させるためのヒーター容量を大きくする必要がある。
第4に、水の含有率が低くなると、引火点が現れ、消防法上の危険物に該当することになってしまうので、水分濃度の管理が必要である。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、引火性の炭化水素系溶剤を用いる場合と同程度の時間で、減圧ベーパー洗浄を行うことのできる非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の非引火性炭化水素系洗浄液を用いた洗浄方法は、炭化水素系溶剤と水を含む非引火性の洗浄液を用いてワークを洗浄する洗浄工程と、洗浄後の前記ワークに、前記洗浄液から生成される水を含まない前記炭化水素系溶剤の蒸気を用いて、減圧ベーパー洗浄を施す減圧ベーパー洗浄工程とを含んでいる。
本発明の第1の形態では、減圧ベーパー洗浄工程の開始前に、洗浄工程において使用する洗浄液の一部を水分蒸発器に供給し、当該水分蒸発器において洗浄液から水分を蒸発させて除去して炭化水素系溶剤を抽出し、抽出した炭化水素系溶剤を真空蒸留機兼ベーパー発生器に供給し、真空蒸留機兼ベーパー発生器において炭化水系溶剤の蒸気を生成している。そして、減圧ベーパー洗浄工程において、当該工程の開始と同時に、水分を含まない炭化水素系溶剤の蒸気を、減圧ベーパー洗浄が行われる槽に供給できるようにしている。
【0008】
本発明では、減圧ベーパー洗浄の前に、ワークの洗浄に用いる洗浄液から水分を蒸発させ、水分を含まない炭化水素系溶剤の蒸気を生成可能な状態にできる。したがって、減圧ベーパー洗浄の所要時間として、洗浄液から水を蒸発させるための時間が不要となり、一般的な炭化水素系溶剤を用いる場合と同程度の時間で減圧ベーパー洗浄を行うことができる。また、水分を含まない蒸気が供給されるので、洗浄品質を高め、乾燥不良、シミなどの発生を回避できる。
【0009】
本発明の第2の形態では、洗浄工程において使用する洗浄液を真空蒸留機に供給して、当該洗浄液を真空蒸留再生する系とは別個に、真空バッファタンクに貯留した洗浄液を、ベーパー発生器に供給し、当該ベーパー発生器で発生した蒸気を、当該蒸気の温度が設定温度を超えるまでは、凝縮器を介して真空バッファタンクに戻し、蒸気の温度が設定温度を超えると、蒸気を減圧ベーパー洗浄が行われる槽に供給する系を配置している。そして、減圧ベーパー洗浄工程の開始前に、ベーパー発生器に、真空バッファタンクに貯留した洗浄液を供給して蒸気を発生させ、減圧ベーパー洗浄工程において、ベーパー発生器で発生する設定温度を超えた蒸気を槽に供給するようにしている。この場合においても、上記の第1の形態と同様な効果が得られる。
【0010】
本発明の第3の形態では、上記の第2の形態において使用している真空バッファタンクの代わりに、第1真空バッファタンクおよび第2真空バッファタンクを配置してある。ベーパー発生器から凝縮器を介して回収される相対的に水分量の多い洗浄液を第2真空バッファタンクに回収し、当該洗浄液を洗浄工程におけるワークの洗浄に使用している。一方、真空蒸留機で真空蒸留再生された相対的に水分量の少ない洗浄液および、減圧ベーパー洗浄工程において槽の底に溜まる相対的に水分量の少ない洗浄液を、第1真空バッファタンクに回収し、第1真空バッファタンクに貯留した洗浄液をベーパー発生器に供給して、当該ベーパー発生器から蒸気を発生させるようにしている。
【0011】
このように、第3の形態では、相対的に水分量の多い非引火性洗浄液が流れる第1の系統と、相対的に水分量が少なく可燃物として取り扱われる洗浄液が流れる第2の系統とに分けてあり、水分量の少ない洗浄液から蒸気を生成して減圧ベーパー洗浄を行っている。減圧ベーパー洗浄に入る前までに、ベーパー発生器の中の水分を全て蒸発させることで、減圧ベーパー洗浄の時間を、一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。また、ベーパー発生器の中の水を全て蒸発させてから減圧ベーパー洗浄を行うと、ベーパー乾燥品質、乾燥時間も一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る3槽式の洗浄システムを示す説明図である。
図2】実施の形態2に係る3槽式の洗浄システムを示す説明図である。
図3】実施の形態3に係る3槽式の洗浄システムを示す説明図である。
図4】実施の形態4に係る1槽式の洗浄システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の洗浄方法を適用した洗浄システムの実施の形態を説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る洗浄システムを示す説明図である。洗浄システム100は、非引火性炭化水素系洗浄液を用いてワークの粗洗浄、仕上げ洗浄、減圧ベーパー洗浄を行う。非引火性炭化水素系洗浄液としては、例えば、炭化水素に16%の水を含むHA-IS16(商品名、東ソー株式会社)を用いることができるが、これに限定されるものでないことは勿論である。
【0015】
洗浄システム100は、常温で脱気超音波洗浄により粗洗浄を行う第1槽10と、常温で真空超音波洗浄により仕上げ洗浄を行う第2槽20と、減圧ベーパー洗浄によるすすぎ洗浄と真空乾燥を行う第3槽30とを備えている。
【0016】
液補充タンク40に貯留される非引火性炭化水素系洗浄液(以下、単に、「洗浄液」と呼ぶ場合もある。)は、真空バッファタンク41を介して、仕上げ洗浄が行われる第2槽20に供給される。第2槽20に貯留される洗浄液は、フィルタ21を経由する第2槽循環路22を循環して異物がろ過される。洗浄液は、第2槽循環路22から分岐する分岐路23を介して、粗洗浄が行われる第1槽10に供給される。第1槽10に貯留される洗浄液は、脱気槽11およびフィルタ12を経由する第1槽循環路13を循環して脱気および異物がろ過される。
【0017】
脱気槽11から排出される気体は、液封式真空ポンプ60によって真空引きされて気液分離槽61に供給され、気体に含まれる洗浄液が回収される。回収された洗浄液は、真空バッファタンク41に戻される。
【0018】
ここで、第1槽循環路13を循環する洗浄液は、第1槽循環路13から分岐する分岐管14を介して水分蒸発器50に供給される。水分蒸発器50において洗浄液から水分を蒸発させて水タンク51に回収する。水タンク51に回収した水は、真空バッファタンク41から第1槽10に供給される洗浄液に補給される。水分蒸発器50において洗浄液から水分を除去して得られる炭化水素系溶剤は、真空蒸留機兼ベーパー発生器52に供給される。真空蒸留されて異物が除去された炭化水素系溶剤は蒸気となって、供給管53を介して、第3槽30に供給可能である。供給管53は途中位置において、凝縮器54を介して、真空バッファタンク41に連通している。凝縮器54を介して液相状態に戻った炭化水素系溶剤は、真空バッファタンク41に戻される。
【0019】
第3槽30は、減圧ベーパー洗浄工程において、メカニカルブースターポンプ62によって真空引きされて、例えば10kPaの減圧状態となる。減圧状態になった第3槽30には、真空蒸留機兼ベーパー発生器52から蒸気が供給される。第3槽30からメカニカルブースターポンプ62によって真空引きされる蒸気は、真空バッファタンク41に回収される。また、凝縮して液相状態に戻った炭化水素系溶剤は、第3槽30の底に溜まり、ここから真空バッファタンク41に回収可能である。
【0020】
一方、真空乾燥工程において、第3槽30は、メカニカルブースターポンプ62および液封式真空ポンプ63によって真空引きされて、例えば0.1kPaの真空状態とされる。第3槽30から炭化水素系溶剤の蒸気が真空吸引されて気液分離槽61に排出され、炭化水素系溶剤が回収される。回収された炭化水素系溶剤は真空バッファタンク41に戻される。
【0021】
洗浄対象のワークは、不図示の搬送機構によって、第1槽10に投入されて粗洗浄される。粗洗浄においては、ワークが、常温状態の洗浄液に浸漬された状態で、例えば、5分間に亘り、脱気超音波洗浄が施される。粗洗浄後のワークは、第1槽10から取り出されて第2槽20に搬送されて仕上げ洗浄が施される。仕上げ洗浄においては、ワークが、常温の洗浄液に浸漬された状態で、例えば、5分間に亘り、超音波洗浄が施される。
【0022】
仕上げ洗浄後のワークは、第2槽20から第3槽30に投入され、減圧ベーパー洗浄が施され、次に、真空乾燥が施される。減圧ベーパー洗浄においては、真空蒸留機兼ベーパー発生器52から発生する蒸気が、メカニカルブースターポンプ62による真空引きによって、第3槽30に供給され、例えば、2分間に亘って、蒸気によってワークが洗浄される。この後は、メカニカルブースターポンプ62および液封式真空ポンプ63によって第3槽30が真空引きされて蒸気が第3槽30から排出され、例えば、2分間に亘って、ワークに真空乾燥が施される。
【0023】
ここで、減圧ベーパー洗浄工程において用いる蒸気は、減圧ベーパー洗浄工程の開始に先立って、真空蒸留機兼ベーパー発生器52において生成される。すなわち、ワークを第2槽20から第3槽30に移送する間、および、前回の2分間の真空乾燥工程の間において、水分蒸発器50において洗浄液から水分を除去して得られる炭化水素系溶剤を所定量、真空蒸留機兼ベーパー発生器52に供給する。
【0024】
真空蒸留機兼ベーパー発生器52から発生する蒸気は最初から水分を含まない炭化水素系溶剤の蒸気である。第2槽20から第3槽30へのワークの搬入に合わせて、真空蒸留機兼ベーパー発生器52から凝縮器54を介して真空バッファタンク41に戻る分岐路を閉じれば、蒸気が第3槽30に供給され、減圧ベーパー洗浄が開始される。したがって、減圧ベーパー洗浄工程において、洗浄液から水分を蒸発させて除去する時間が不要となり、一般的な炭化水素系溶剤を用いる場合と同一の処理時間で、減圧ベーパー洗浄を行うことができる。なお、真空蒸留機兼ベーパー発生器52の底に溜まる液は厳密に言えば可燃物であるが、液量が少なく、かつ、真空中であるので問題はない。
【0025】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に係る洗浄システムを示す説明図である。洗浄システム200は、非引火性炭化水素系洗浄液を用いてワークの粗洗浄、仕上げ洗浄、減圧ベーパー洗浄を行う。図2において、上記の洗浄システム100における各部位と対応する洗浄システム200の各部位には同一の符号を付してある。また、これらの部位の説明は省略する。
【0026】
洗浄システム200は、洗浄システム100における真空蒸留機兼ベーパー発生器52が、真空蒸留機250とベーパー発生器252に分かれた構成となっている。すなわち、第1槽10の第1槽循環路13を循環する洗浄液は、第1槽循環路13から分岐する分岐管14を介して真空蒸留機250に供給される。洗浄液は、真空蒸留機250において真空蒸留され異物等の汚れが分離除去されて再生され、蒸留再生液タンク251に回収される。蒸留再生液タンク251に回収された洗浄液は、供給路253を介して第2槽20に供給可能である。
【0027】
一方、ベーパー発生器252には、真空バッファタンク41から第2槽20に向かう洗浄液供給路から分岐する分岐路254を介して、真空バッファタンク41から洗浄液が供給される。ベーパー発生器252において生成された洗浄液の蒸気は、凝縮器54を介して真空バッファタンク41に回収可能であると共に、第3槽30に供給可能である。蒸気の供給先の切り替えは、供給管53に取り付けた温度センサ255によって計測される発生蒸気の温度に基づき行われる。
【0028】
この構成の洗浄システム200において、洗浄対象のワークは、不図示の搬送機構によって、第1槽10に投入されて粗洗浄される。粗洗浄においては、ワークが、常温状態の洗浄液に浸漬された状態で、例えば、5分間に亘り、脱気超音波洗浄が施される。粗洗浄後のワークは、第1槽10から取り出されて第2槽20に搬送されて仕上げ洗浄が施される。仕上げ洗浄においては、ワークが、常温の洗浄液に浸漬された状態で、例えば、5分間に亘り、超音波洗浄が施される。
【0029】
仕上げ洗浄後のワークは、第2槽20から第3槽30に投入され、減圧ベーパー洗浄が施され、次に、真空乾燥が施される。減圧ベーパー洗浄においては、ベーパー発生器252において生成された蒸気が第3槽30に供給され、例えば、2分間に亘って、蒸気によってワークが洗浄される。この後は、メカニカルブースターポンプ62および液封式真空ポンプ63によって第3槽30が真空引きされて蒸気が第3槽30から排出され、例えば、2分間に亘って、ワークに真空乾燥が施される。
【0030】
減圧ベーパー洗浄工程において用いる蒸気は、当該工程の開始に先立って、ベーパー発生器252において生成される。すなわち、ワークを第2槽20から第3槽30に移送する間、および、前回の2分間の真空乾燥工程の間において、真空バッファタンク41からベーパー発生器252に所定量の洗浄液を供給する。ベーパー発生器252からは最初は沸点の低い水分を多く含む蒸発が発生する。水分を含む蒸気は、凝縮器54を介して真空バッファタンク41に回収される。水分が蒸発した後は、沸点の高い炭化水素系溶剤が蒸発する。炭化水素系溶剤の蒸気の温度は、水分を含む蒸気に比べて温度が高いので、温度センサ255により、発生する蒸気が、水分が含まれていない蒸気になったことを検知できる。この後は、凝縮器54を経由して真空バッファタンク41に戻る分岐路を閉じる。
【0031】
第2槽20から第3槽30へのワークの搬入の後に、真空引きを開始すると、ベーパー発生器252から蒸気が第3槽30に供給され、減圧ベーパー洗浄が開始される。すなわち、本例では、温度センサ255によって管理される時間差切替式のベーパー発生機構を用いたことにより、減圧ベーパー洗浄に入る前までに、ベーパー発生器252の中の水分を全て蒸発させることができるので、減圧ベーパー洗浄の時間を、一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【0032】
また、ベーパー発生器252の中の水を全て蒸発させてから減圧ベーパー洗浄を行っているので、ベーパー乾燥品質、乾燥時間も一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【0033】
さらに、第1槽10から回収される汚れた洗浄液は真空蒸留機250に回収されて蒸留再生される。真空蒸留機250とは別個に配置したベーパー発生器252には、基本的に汚れた洗浄液は供給されない。よって、減圧ベーパー洗浄の品質が向上するという利点もある。
【0034】
なお、ベーパー発生器252から第3槽30を経由して真空バッファタンク41に至る系は、溶剤の蒸気、すなわち可燃物が流通する系となっている。しかしながら、液量が少なく、かつ、この系は真空中なので問題はない。
【0035】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に係る洗浄システムを示す説明図である。洗浄システム300は、非引火性炭化水素系洗浄液を用いてワークの粗洗浄、仕上げ洗浄、減圧ベーパー洗浄を行う。図3において、上記の洗浄システム200における各部位と対応する洗浄システム300の各部位には同一の符号を付してあり、これらの部位の説明は省略する。
【0036】
洗浄システム300は、上記の洗浄システム200における場合と同様に、真空蒸留機250とベーパー発生器252とを分けてあり、また、真空バッファタンクとして、第1真空バッファタンク301および第2真空バッファタンク302を配置してある。洗浄システム300において、第1槽10、第2槽20、真空蒸留機250および蒸留再生液タンク251を含む第1系統と、第3槽30、ベーパー発生器252、凝縮器54、第1、第2真空バッファタンク301、302を含む第2系統に分かれている。後者の第2系統の液容量は例えば140リットル以下となるように設計されている。第2系統を流れる洗浄液の水分濃度は、例えば13%以下となり消防法上の危険物となってしまうが、指定数量である4000リットルの数パーセント以下であり、消防署への届け出が必要ないのと、洗浄液は真空下に置かれているので、引火する危険性が無く安全である。
【0037】
第1系統において、第1槽10の第1槽循環路13を循環する洗浄液は、第1槽循環路13から分岐する分岐管14を介して真空蒸留機250に供給される。洗浄液は、真空蒸留機250において真空蒸留され異物等の汚れが分離除去されて再生され、蒸留再生液タンク251に回収される。蒸留再生液タンク251に回収された洗浄液は第2槽20に供給可能である。
【0038】
第2系統において、ベーパー発生器252には、第1真空バッファタンク301から洗浄液が供給される。ベーパー発生器252において洗浄液を蒸発させると、最初は水が蒸発するが、それを凝縮器54で凝縮し、第2真空バッファタンク302に溜める。水が完全に無くなった後の炭化水素系溶剤の溶剤蒸気を、第3槽30に送り、減圧ベーパー洗浄を行う。第3槽30においてワークに凝縮して槽の底に垂れ落ちた炭化水素系溶剤は、第1真空バッファタンク301に溜める。なお、ベーパー発生器252に溜まる汚れた洗浄液は、ここから排出して第1槽10に供給される。
【0039】
このように、ベーパー発生器252で発生する蒸気を、最初は凝縮器54で凝縮させて第2真空バッファタンク302に送り、その後、第3槽30へ送ってベーパー洗浄を行う、という時間差切替式のベーパー発生機構を採用している。また、この切替のタイミングは、ベーパー発生器252の上部に設置した温度センサ255の設定で行っている。先に述べたように、水が蒸発しているときの蒸気温度と、水が蒸発しなくなった時の蒸気温度の違いを利用して、切替のタイミングを設定できる。
【0040】
第2真空バッファタンク302に溜まった洗浄液は水分が多いので、第1槽10に送る。これに対して、第1真空バッファタンク301に溜まった洗浄液は水分が少ないので、ベーパー発生器252に送る。このような洗浄液の流れにより、第1真空バッファタンク301に入ってくる水は、第2槽20から第3槽30に洗浄物に付着して持ち込まれる水と、当該第1真空バッファタンク301の液位が下がった時に補充される洗浄液に含まれる水だけになり、水分濃度を例えば3%以下と低くできる。
【0041】
以上説明したように、洗浄システム300においては、第3槽30、ベーパー発生器252および第1真空バッファタンク301を循環する洗浄液の水分濃度が下がったことと、時間差切替式のベーパー発生機構を用いたことにより、減圧ベーパー洗浄に入る前(真空乾燥中・洗浄物の搬送中)までに、ベーパー発生器252の中の水分を全て蒸発させることができるので、減圧ベーパー洗浄の時間を、一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【0042】
また、ベーパー発生器252の中の水を全て蒸発させてから減圧ベーパー洗浄を行っているので、ベーパー乾燥品質、乾燥時間も一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【0043】
さらに、第3槽30、ベーパー発生器252および第1真空バッファタンク301を循環する洗浄液の水分濃度が下がったことと、時間差切替式のベーパー発生機構を採用したことにより、ベーパー発生器252のヒーター容量も、一般的な炭化水素系溶剤を用いる場合と同じにできる。
【0044】
さらには、第1槽10から回収される汚れた洗浄液は真空蒸留機250に回収されて蒸留再生される。真空蒸留機250とは別個に配置したベーパー発生器252には、基本的に汚れた洗浄液は供給されない。これにより、減圧ベーパー洗浄の品質が向上するという利点がある。
【0045】
(実施の形態4)
図4は、本発明を適用した実施の形態4に係る1槽式の洗浄システムを示す説明図である。洗浄システム400は、1槽の真空洗浄乾燥槽401において、非引火性炭化水素系洗浄液を用いて洗浄物の粗洗浄、仕上げ洗浄、減圧ベーパー洗浄を行い、最後に、洗浄物の真空乾燥を行う。1槽式の洗浄システム400では、減圧ベーパー洗浄における溶剤蒸気の発生機構として、実施の形態2の3槽式の洗浄システム200の場合と同様に、真空蒸留機兼ベーパー発生器で発生する蒸気を、最初は凝縮器で凝縮させて第1真空バッファタンクに送り、その後、真空洗浄乾燥槽へ送ってベーパー洗浄を行う、という時間差切替式のベーパー発生機構を採用している。
【0046】
洗浄システム400において、液補充タンク402に貯留される非引火性炭化水素系洗浄液(以下、単に、「洗浄液」と呼ぶ場合もある。)が、第2真空バッファタンク403に供給される。洗浄液は、第2真空バッファタンク403の仕上げ洗浄液タンク404に供給され、ここから、隣接配置されている粗洗浄液タンク405に供給される。
【0047】
真空洗浄乾燥槽401は洗浄対象のワークが搬入された後に密閉され、メカニカルブースターポンプ406および液封式真空ポンプ407によって真空引きされる。また、真空洗浄乾燥槽401には、粗洗浄液タンク405から洗浄液が供給され、洗浄物には、真空超音波洗浄による粗洗浄が施される。粗洗浄後、真空洗浄乾燥槽401の洗浄液は、フィルタ408を介して粗洗浄液タンク405に戻される。次に、真空洗浄乾燥槽401には、仕上げ洗浄液タンク404から洗浄液が供給され、ワークには、真空超音波洗浄による仕上げ洗浄が施される。仕上げ洗浄後、真空洗浄乾燥槽401の洗浄液は、フィルタ409を介して仕上げ洗浄液タンク404に戻される。
【0048】
次に、真空洗浄乾燥槽401は、メカニカルブースターポンプ406によって真空引きされて所定の減圧状態とされると共に、真空蒸留機兼ベーパー発生器411から蒸気が供給され、ワークには減圧ベーパー洗浄が施される。なお、真空洗浄乾燥槽401から真空引きされる流体は、気液分離槽412に送り込まれ、気体が分離されて残った液体は、第1真空バッファタンク413に回収される。
【0049】
ここで、減圧ベーパー洗浄の開始に先立って、真空蒸留機兼ベーパー発生器411においては、粗洗浄液タンク405から所定量の洗浄液が供給され、洗浄液の真空蒸留再生が行われると共に洗浄液の蒸気が発生する。真空蒸留機兼ベーパー発生器411において洗浄液を蒸発させると、最初は水が蒸発するが、それを凝縮器414で凝縮し、第1真空バッファタンク413に溜める。水が完全に無くなった後の炭化水素系溶剤の溶剤蒸気を、真空洗浄乾燥槽401に送り、減圧ベーパー洗浄を行う。真空洗浄乾燥槽401において洗浄物に凝縮して槽の底に垂れ落ちた炭化水素系溶剤は、第1真空バッファタンク413溜める。なお、真空蒸留機兼ベーパー発生器411に溜まる汚れた洗浄液は、その底部から廃液として排出される。
【0050】
このように、真空蒸留機兼ベーパー発生器411で発生する蒸気を、最初は凝縮器414で凝縮させて第1真空バッファタンク413に送り、その後、真空洗浄乾燥槽401へ送ってベーパー洗浄を行う、という時間差切替式のベーパー発生機構を採用している。蒸気の送り先の切替タイミングは、真空蒸留機兼ベーパー発生器411の上部に設置した温度センサ415の設定で行っている。
【0051】
減圧ベーパー洗浄の後は、メカニカルブースターポンプ406および液封式真空ポンプ407により、真空洗浄乾燥槽401を真空引きして、洗浄物の真空乾燥を行う。しかる後に真空を解除して洗浄物を取り出すことで一連の洗浄乾燥処理が終了する。
【0052】
以上説明したように、洗浄システム400においては、時間差切替式のベーパー発生機構を用いたことにより、減圧ベーパー洗浄に入る前(真空乾燥中・洗浄物の搬送中)までに、真空蒸留機兼ベーパー発生器411の中の水分を全て蒸発させることができるので、減圧ベーパー洗浄の時間を、一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【0053】
また、真空蒸留機兼ベーパー発生器411の中の水を全て蒸発させてから減圧ベーパー洗浄を行っているので、ベーパー乾燥品質、乾燥時間も一般的な炭化水素系洗浄液を用いる場合と同じにできる。
【0054】
(その他の実施の形態)
上記の1槽式の洗浄システム400は、実施の形態2の3槽式の洗浄システム200において採用した時間差切替式のベーパー発生機構と同様な機構を採用している。1槽式の洗浄システムにおいて、実施の形態1の3槽式の洗浄システム100において採用した水分蒸発器を用いて炭化水素系溶剤を抽出して蒸気を発生する構成、実施の形態3における時間差切替式のベーパー発生機構および2つの真空バッファタンクを用いた構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 第1槽
11 脱気槽
12 フィルタ
13 第1槽循環路
14 分岐管
20 第2槽
21 フィルタ
22 第2槽循環路
23 分岐路
30 第3槽
40 液補充タンク
41 真空バッファタンク
50 水分蒸発器
51 水タンク
52 真空蒸留機兼ベーパー発生器
53 供給管
54 凝縮器
60 液封式真空ポンプ
61 気液分離槽
62 メカニカルブースターポンプ
63 液封式真空ポンプ
100 洗浄システム
200 洗浄システム
250 真空蒸留機
251 蒸留再生液タンク
252 ベーパー発生器
253 供給路
254 分岐路
255 温度センサ
300 洗浄システム
301 第1真空バッファタンク
302 第2真空バッファタンク
400 洗浄システム
401 真空洗浄乾燥槽
402 液補充タンク
403 第2真空バッファタンク
404 洗浄液タンク
405 粗洗浄液タンク
406 メカニカルブースターポンプ
407 液封式真空ポンプ
408 フィルタ
409 フィルタ
411 真空蒸留機兼ベーパー発生器
412 気液分離槽
413 第1真空バッファタンク
414 凝縮器
415 温度センサ
図1
図2
図3
図4