(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031589
(43)【公開日】2022-02-21
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220214BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135436
(22)【出願日】2020-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】100143362
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】冨士谷 伸
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC02
4C058DD01
4C058EE23
4C058EE29
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK46
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
4C180KK05
4C180LL11
(57)【要約】
【課題】オゾンの排出を防止できる殺菌装置を提供する。
【解決手段】この殺菌装置1は、吸気口2と排気口3とを連通する空気通路4を形成する通路形成部5と、通路形成部5の外部の収容部6内に設けられ、紫外線を放射する殺菌灯7と、を備え、通路形成部5は、紫外線を透過させる紫外線透過部8を有し、殺菌灯7からの紫外線は、紫外線透過部8を透過して、空気通路4内を流れる空気に照射されるものであるので、オゾンの排出を防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口と排出口とを連通する流体通路を形成する通路形成部と、
前記通路形成部の外部に設けられ、紫外線を放射する紫外線放射部と、を備え、
前記通路形成部は、紫外線を透過させる紫外線透過部を有し、
前記紫外線放射部からの紫外線は、前記紫外線透過部を透過して、前記流体通路内を流れる流体に照射される、殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線放射部を気密に収容する収容部をさらに備える、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記紫外線放射部からの紫外線を前記流体通路に向けて反射する反射面が設けられている、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記通路形成部の内面は、紫外線を反射する、請求項1~3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記流体通路は、蛇行している、請求項1~4のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射による流体の殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射による流体の殺菌装置は種々開発されている。例えば特許文献1の殺菌装置100では、
図7に示すように、殺菌する空気が流れるダクト104を有し、紫外線ランプ106がその中心部に設けられ、ダクト104はその軸方向の中心線を含む平面で2分割され、2分割されたそれぞれの内部空間に複数枚の導風板の1組が平行に配置されて設けられ、第1組、第2組の複数枚の導風板108-1~108-n、109-1~109-nの各々は分割平面に直交する平面に対して角度α、マイナスαをもってそれぞれ配置され、これらの導風板は分割平面を正面視する方向から見て複数のX字が連なるようにして配置され,分割平面上であってこれらの導風板によって形成される複数の菱形の空間の各々の紫外線ランプを避けた両側の空間部分にそれぞれ仕切り板110-1a~110-(n+1)a、110-1b~110-(n+1)bが設けられている。なお、同図中の符号105aは吸気口、105bは排気口である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の殺菌装置100では、紫外線ランプ106の近傍でオゾンが生成され、このオゾンが排出されるおそれがある。殺菌装置100から排出されたオゾンは、殺菌装置100が設置されている室内に拡散し、人体などに悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、オゾンの排出を防止できる殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、吸入口と排出口とを連通する流体通路を形成する通路形成部と、前記通路形成部の外部に設けられ、紫外線を放射する紫外線放射部と、を備え、前記通路形成部は、紫外線を透過させる紫外線透過部を有し、前記紫外線放射部からの紫外線は、前記紫外線透過部を透過して、前記流体通路内を流れる流体に照射される、殺菌装置に係るものである。
【0006】
本発明によれば、吸入口と排出口とを連通する流体通路を形成する通路形成部と、前記通路形成部の外部に設けられ、紫外線を放射する紫外線放射部と、を備え、前記通路形成部は、紫外線を透過させる紫外線透過部を有し、前記紫外線放射部からの紫外線は、前記紫外線透過部を透過して、前記流体通路内を流れる流体に照射されるので、紫外線放射部と流体通路とが紫外線透過の点を除き完全に切り離されている。
【0007】
したがって、紫外線放射部の近傍でオゾンが生成された場合でも、このオゾンが流体通路内に排出されるおそれがない。したがって、殺菌装置から排出されたオゾンが、殺菌装置が設置されている室内に拡散し、人体などに悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0008】
請求項2記載の発明のように、前記紫外線放射部を気密に収容する収容部をさらに備えることが好ましい。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記紫外線放射部を気密に収容する収容部をさらに備えているので、紫外線放射部の近傍でオゾンが生成された場合でも、このオゾンが収容部内に閉じ込められて、室内に拡散することを確実に防止できる。
【0010】
請求項3記載の発明のように、前記紫外線放射部からの紫外線を前記流体通路に向けて反射する反射面が設けられていることが好ましい。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、前記紫外線放射部からの紫外線を前記流体通路に向けて反射する反射面が設けられているので、紫外線放射部からの紫外線を、流体通路内を流れる流体に効率良く照射でき、流体を効率良く殺菌できる。
【0012】
請求項4記載の発明のように、前記通路形成部の内面は、紫外線を反射することが好ましい。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、前記通路形成部の内面は、紫外線を反射するので、紫外線放射部からの紫外線を、流体通路内を流れる流体に効率良く照射でき、流体を効率良く殺菌できる。
【0014】
請求項5記載の発明のように、前記流体通路は、蛇行していることが好ましい。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、前記流体通路は、蛇行しているので、通路形成部を小形化できる。その結果、コンパクトで流体を効率良く殺菌できる殺菌装置を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸入口と排出口とを連通する流体通路を形成する通路形成部と、前記通路形成部の外部に設けられ、紫外線を放射する紫外線放射部と、を備え、前記通路形成部は、紫外線を透過させる紫外線透過部を有し、前記紫外線放射部からの紫外線は、前記紫外線透過部を透過して、前記流体通路内を流れる流体に照射されるので、紫外線放射部と流体通路とが紫外線透過の点を除き完全に切り離されている。
【0017】
したがって、紫外線放射部の近傍でオゾンが生成された場合でも、このオゾンが流体通路内に排出されるおそれがない。したがって、殺菌装置から排出されたオゾンが、殺菌装置が設置されている室内に拡散し、人体などに悪影響を及ぼすことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る殺菌装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図5】本殺菌装置の平面図におけるX-X断面図である。
【
図7】従来の殺菌装置の一例における全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る殺菌装置1の全体構成を示す斜視図、
図2は本殺菌装置1の分解斜視図、
図3は本殺菌装置1の平面図、
図4は本殺菌装置1の側面図であって、(a)は前面、(b)は後面を示す。また、
図5は
図3中のX-X断面図である。以下、複数存在する構成要素については、その代表的なものについて説明する。
【0020】
図1~
図5に示すように、本殺菌装置1は、吸入口としての吸気口2と排出口としての排気口3とを連通する流体通路としての空気通路4を形成する通路形成部5と、通路形成部5の外部の収容部6に設けられ、紫外線を放射する紫外線放射部としての殺菌灯7とを備え、通路形成部5は、紫外線を透過させる紫外線透過部8を有し、殺菌灯7からの紫外線は、紫外線透過部8を透過して、空気通路4内を流れる流体としての空気に照射されるようになっている。
【0021】
通路形成部5は、上方が開口された金属製の箱体であって、長方形の底板51と、底板51の四辺にそれぞれ立設された前壁52、後壁53、左壁54、右壁55とからなっている。箱体は、紫外線を遮蔽する。前壁52の左寄りには、吸気口2が配置されており、後壁53の中央には、排気口3が配置されている。そして、左壁54から右壁55の手前まで延びる複数の仕切板56と、右壁55から左壁54の手前まで延びる複数の仕切板57とが、それぞれ所定の間隔をあけて互い違いに配置されることにより、吸気口2と排気口3との間を蛇行して両者を連通する空気通路4が形成される。また、通路形成部5の内面は紫外線の反射面を構成している。複数の仕切板56,57の表面は紫外線の反射面を構成している。通路形成部5の上方の開口には、例えば石英ガラス製の紫外線透過部8が覆設される。
【0022】
収容部6は、下方に拡開された金属製の蓋体であって、通路形成部5よりも幅狭の長方形の天井板61と、天井板61の四辺にそれぞれ垂設或いは傾斜して設けられた前壁62、後壁63、左壁64、右壁65とからなっている。蓋体は、紫外線を遮蔽する。天井板61には、殺菌灯7を前後方向に取り付けるためのソケット71,72が垂設されている。また、収容部6の内面についても、紫外線の反射面を構成するようになっている。
【0023】
図2に示すように、ソケット71,72に殺菌灯7を取り付けた収容部6を、ガスケット(不図示)と紫外線透過部8とを介して、通路形成部5の上方の開口にネジなどで固定することにより、本殺菌装置1を組み立てると、
図1に示すようになり、収容部6内の気密を保持できるようになる。
【0024】
吸気口2には、外気を取り込むための吸気ファン9が取り付けられている。吸気ファン9は、例えばDCモータで駆動されるファン(DCファン)であって、この吸気ファン9の回転数を制御することにより、空気通路4内を流れる空気量、ひいては風速を調整できるようになっている。さらに、吸気ファン9は、回転方向を制御できるものが好ましい。排気口3には、排気ファンを取り付けていないが、吸気ファン9の回転方向を切り替えることで、排気ファンとして使用することができるからである。
【0025】
殺菌灯7は、例えば水銀ランプであって、この殺菌灯7では、UV-Cと呼ばれる100~280nmの波長の紫外線が放射される。このうちの200nm以下の波長の紫外線は、空気中の酸素と反応して人体に有害なオゾンを生成する一方、殺菌線と呼ばれるほどの強い殺菌力がある253.7nmの波長の紫外線はオゾンを生成しないことが知られている。前述の石英ガラス製の紫外線透過部8を通路形成部5の上方に配置しておけば、ここでオゾンを生成する200nm以下の波長の紫外線をカットして、253.7nmの波長の紫外線を透過させ、通路形成部5の空気通路4に照射することができる。
【0026】
一般に、紫外線による空気の殺菌効果は、紫外線の照度(W/m2)×照射時間(sec)によって表すことができる。したがって、所定の殺菌効果を得るには、紫外線の照度が小さければ、照射時間を長くするとよく、逆に紫外線の照度が大きければ、照射時間を短くすればよい。そこで、殺菌灯7としては、253.7nmの波長の紫外線だけを放射するようにした特定の水銀ランプだけでなく、エキシマランプや紫外LEDなど、今後開発されるものを含めて、多様な殺菌灯にも対応できることとなる。また、殺菌灯7と空気通路4とが紫外線透過の点を除き完全に切り離されていることから、殺菌灯7の取り換えなどのメンテナンスも容易となる。
【0027】
図6は本殺菌装置1の電気回路図である。以下、その構成と動作について概略説明する。
【0028】
図6に示すように、殺菌灯7は、AC電源を使用する。このAC電源を変換してDC電源を得るようになっている。吸気ファン9は、このDC電源を使用する。また、通路形成部5の上方に紫外線透過部8を介して収容部6が正しく取り付けられることにより、その収容部6内の気密が確保されていることを、例えば通路形成部5と収容部6の前壁同士52,62の接続部66と、後壁同士53,63の接続部67とにそれぞれ設けられたリミットスイッチSW1,SW2で検出するようになっている。
【0029】
本殺菌装置1を組み立てた状態で、電源スイッチをオンすると、AC電源からの交流電流が、ヒューズを介してDC電源に供給され、ここで直流電流に変換されて吸気ファン9に供給される。これにより、吸気ファン9が動作を開始する。すると、外気が
図2中の矢印Aで示すように吸気口2から吸入され、通路形成部5内の仕切板56,57間を同図中の矢印Bで示すように蛇行して通過したのち、同図中の矢印Cで示すように排気口3からそのまま排出される。
【0030】
また、収容部6内の気密が確保されていることを、リミットスイッチSW1,SW2がいずれもオンとなることで検出し、その場合には、AC電源からの交流電流が、ヒューズと、50Hz/60Hzの切換スイッチと、安定器とを介して殺菌灯7に供給される。すると、殺菌灯7に並列接続されたグロー管Gが働き、殺菌灯7が点灯する。そして、殺菌灯7から紫外線が放射され、通路形成部5と、仕切板56,57とで反射した紫外線とともに、通路形成部5内を蛇行して通過する空気に照射される。かかる紫外線の照射により効率よく殺菌された空気が、排気口3から順次に排出される。
【0031】
電源スイッチをオフすると、AC電源からの交流電流がカットされて、殺菌灯7が消灯するとともに、DC電源からの直流電流もカットされて、吸気ファン9も停止する。殺菌灯7などの寿命が尽きると、
図2と逆の手順で、殺菌装置1を分解して、その殺菌灯7などを取り換えた上で、再度組み立てる。
【0032】
以上説明したように、本殺菌装置1によれば、吸気口2と排気口3とを連通する空気通路4を形成する通路形成部5と、通路形成部5の外部の収容部6に設けられ、紫外線を放射する殺菌灯7と、を備え、通路形成部5は、紫外線を透過させる紫外線透過部8を有し、殺菌灯7からの紫外線は、紫外線透過部8を透過して、空気通路4内を流れる空気に照射されるので、殺菌灯7と空気通路4とが紫外線透過の点を除き完全に切り離されている。
【0033】
したがって、殺菌灯7の近傍でオゾンが生成された場合でも、このオゾンが空気通路4内に排出されるおそれがない。したがって、殺菌装置1から排出されたオゾンが、殺菌装置1が設置されている室内に拡散し、人体などに悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0034】
また、殺菌灯7から離れた空気通路4内を流れる空気の温度と流速が大きく変化することがなくなり、その殺菌灯7から紫外線透過部8を介して照射される紫外線により、空気通路4内を流れる空気においてほぼ均一な殺菌効果が得られるようになる。
【0035】
また、本殺菌装置1によれば、殺菌灯7を気密に収容する収容部6を備えているので、殺菌灯の近傍でオゾンが生成された場合でも、このオゾンが収容部内に閉じ込められて、室内に拡散することを確実に防止できる。
【0036】
また、殺菌灯7からの紫外線を空気通路4に向けて反射する反射面が設けられているので、殺菌灯7からの紫外線を、空気通路4内を流れる空気に効率良く照射でき、空気を効率良く殺菌できる。
【0037】
また、通路形成部5の内面は、紫外線を反射するので、殺菌灯7からの紫外線を、空気通路4内を流れる空気に効率良く照射でき、空気を効率良く殺菌できる。
【0038】
また、空気通路4は、蛇行しているので、通路形成部を小形化できる。その結果、コンパクトで空気を効率良く殺菌できる殺菌装置を実現できる。
【0039】
なお、上記実施形態では、吸気口2にのみ吸気ファン9を設けているが、これに代えて、或いは、これとともに、排気口3にも同様の排気ファンを設けてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、殺菌灯7は収容部6内の前後方向に1本だけ設けているが、収容部6内の適所に複数本の殺菌灯7を設けてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、通路形成部5と収容部6の両方を金属製としているが、具体的には紫外線を反射しやすく、かつ、放熱しやすいアルミニウム製や、耐候性のあるステンレス製などとすることが好ましい。また、通路形成部5と収容部6の全体を必ずしも同一材料で構成する必要はなく、例えば通路形成部5をステンレス製として、その内面を紫外線を反射しやすい材料で被覆することとしてもよい。さらには、特定の合成樹脂のように紫外線の照射で劣化しやすい材料でなければ、非金属製のものとしてもよい。収容部6を気密保持するためのガスケット材料についても同様である。
【0042】
また、上記実施形態では、殺菌装置1の通路形成部5及び収容部6の前壁52,62を左側、後壁53,63を右側にして、横向けに配置しているが、左右逆向きに配置してもよい。さらには、殺菌装置1の通路形成部5及び収容部6の前壁52,62を下側、後壁53,63を上側にして、縦向きに配置してもよく、機能上の問題がない限り、任意の配置を選択できる。通路形成部5、収容部6などの各形状についても、機能上の問題がない限り、任意の形状を選択できる。
【0043】
また、上記実施形態では、殺菌装置1は空気を殺菌するが、空気以外の気体を殺菌してもよく、気体以外の流体、例えば水などの液体を殺菌してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 殺菌装置
2 吸気口(吸入口に相当する。)
3 排気口(排出口に相当する。)
4 空気通路(流体通路に相当する。)
5 通路形成部
6 収容部
7 殺菌灯(紫外線放射部に相当する。)
8 紫外線透過部
9 吸気ファン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】