(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031640
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】表示システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/36 20060101AFI20220215BHJP
H04N 5/20 20060101ALI20220215BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20220215BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20220215BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20220215BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G09G5/36 520A
G09G5/36 530Y
H04N5/20
G06T5/00 740
H04N5/66 A
G09G5/00 510H
G09G5/10 B
G09G5/00 510V
G09G5/00 550H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171682
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2019571865の分割
【原出願日】2018-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】391010116
【氏名又は名称】EIZO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】坂井 良和
(72)【発明者】
【氏名】正谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】東 尚哉
(57)【要約】 (修正有)
【課題】階調特性を変更した後において、画像の視認性の低下を抑制可能な表示システムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、表示部及び表示制御部を備える表示システムであって、前記表示制御部は、階調特性変換部を備え、前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、前記表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、入力画像データを画像として表示するように構成される、表示システムが提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部及び表示制御部を備える表示システムであって、
前記表示制御部は、階調特性変換部を備え、
前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、
第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、
前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、
前記表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、入力画像データを画像として表示するように構成される、
表示システム。
【請求項2】
前記変換処理は、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせるシフト処理を含み、
前記シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記シフト処理のシフト数を指示する指示部を備え、
前記指示部は、前記シフト数を連続的に変更可能に構成されるか、又は、前記シフト数を指示した後、さらに所定のシフト数を指示可能に構成され、
前記シフト処理では、前記指示部により指示されたシフト数だけ第1階調特性をシフトさせる、
請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、入力画像階調取得部を備え、
前記入力画像階調取得部は、前記入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成され、
前記シフト処理では、前記二つの階調値のうちの小さい方の階調値が前記表示部の最小輝度に対応するように、又は、前記二つの階調値のうちの大きい方の階調値が前記表示部の最大輝度に対応するように第1階調特性をシフトさせる、
請求項2又は請求項3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記入力画像データの任意の二つの階調値は、前記入力画像データの最小階調値及び最大階調値である、
請求項4に記載の表示システム。
【請求項6】
前記指示部を操作する操作部を備え、
前記操作部に対する1アクションにより、前記シフト処理が実行される、
請求項4又は請求項5に記載の表示システム。
【請求項7】
前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含む、
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の表示システム。
【請求項8】
前記拡大又は縮小の程度を指示する指示部を備え、
前記指示部は、前記拡大又は縮小の程度を連続的に変更可能に構成されるか、又は、前記拡大又は縮小の程度を指示した後、さらに所定の値を前記拡大又は縮小の程度として指示可能に構成され、
前記差分変更処理では、前記指示部により指示された前記拡大又は縮小の程度だけ第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する、
請求項7に記載の表示システム。
【請求項9】
前記表示制御部は、入力画像階調取得部を備え、
前記入力画像階調取得部は、前記入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成され、
前記二つの階調値のうちの小さい方の階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、前記二つの階調値のうちの大きい方の階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように前記差分変更処理が実行される、
請求項7又は請求項8に記載の表示システム。
【請求項10】
前記入力画像データの任意の二つの階調値は、前記入力画像データの最小階調値及び最大階調値である、
請求項9に記載の表示システム。
【請求項11】
前記指示部を操作する操作部を備え、
前記操作部に対する1アクションにより、前記差分変更処理が実行される、
請求項9又は請求項10に記載の表示システム。
【請求項12】
第1階調特性を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された第1階調特性を、前記変換処理実行後に第2階調特性に書き換える階調特性書換部と、
を備える、
請求項1~請求項11の何れか1つに記載の表示システム。
【請求項13】
第1階調特性は、DICOM規格により定められる標準表示関数に関連付けられている、
請求項1~請求項12の何れか1つに記載の表示システム。
【請求項14】
前記表示部を備える表示装置を有し、
前記表示制御部は、前記表示装置の内部に設けられる、
請求項1~請求項13の何れか1つに記載の表示システム。
【請求項15】
前記表示システムは、第1表示部及び第2表示部を備え、
前記表示制御部は、第1表示部及び第2表示部に接続され、
第1表示部及び第2表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、前記入力画像データを画像として表示するように構成される、
請求項1~請求項14の何れか1つに記載の表示システム。
【請求項16】
コンピュータを、階調特性変換部として機能させるプログラムであって、
前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、
第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、
前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、
第2階調特性に対応する輝度で入力画像データが画像として表示部に表示されるように構成される、
プログラム。
【請求項17】
前記変換処理は、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせるシフト処理を含み、
前記シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される、
請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含む、
請求項16又は請求項17に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の階調特性を好適に変更可能な表示システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示システムに画像を表示する場合、ユーザーの好みや周囲の環境に応じて、階調特性を変更する場合がある。
【0003】
特許文献1には、異なる画像観察条件又は異なる画像出力特性を有する画像出力装置に応じて、適正な階調特性に基づいて画像を出力可能な画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、階調特性を変更した後において、画像の視認性の低下を抑制可能な表示システム及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0007】
本発明によれば、表示部及び表示制御部を備える表示システムであって、前記表示制御部は、階調特性変換部を備え、前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、前記表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、入力画像データを画像として表示するように構成される、表示システムが提供される。
【0008】
例えば、表示システムで医用診断画像を表示するとき、画像の品位が劣る場合、診断能が低下する。
【0009】
本発明によれば、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行する。このとき、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、変換処理を実行する。これにより、自然な視認性を維持しつつ、状況に応じて見かけ上の輝度を高くしたり低くしたりすることができる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0011】
好ましくは、前記変換処理は、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせるシフト処理を含み、前記シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される。
好ましくは、前記表示制御部は、前記シフト処理のシフト数を指示する指示部を備え、前記指示部は、前記シフト数を連続的に変更可能に構成されるか、又は、前記シフト数を指示した後、さらに所定のシフト数を指示可能に構成され、前記シフト処理では、前記指示部により指示されたシフト数だけ第1階調特性をシフトさせる。
好ましくは、前記表示制御部は、入力画像階調取得部を備え、前記入力画像階調取得部は、前記入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成され、前記シフト処理では、前記二つの階調値のうちの小さい方の階調値が前記表示部の最小輝度に対応するように、又は、前記二つの階調値のうちの大きい方の階調値が前記表示部の最大輝度に対応するように第1階調特性をシフトさせる。
好ましくは、前記入力画像データの任意の二つの階調値は、前記入力画像データの最小階調値及び最大階調値である。
好ましくは、前記指示部を操作する操作部を備え、前記操作部に対する1アクションにより、前記シフト処理が実行される。
好ましくは、前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含む。
好ましくは、前記拡大又は縮小の程度を指示する指示部を備え、前記指示部は、前記拡大又は縮小の程度を連続的に変更可能に構成されるか、又は、前記拡大又は縮小の程度を指示した後、さらに所定の値を前記拡大又は縮小の程度として指示可能に構成され、前記差分変更処理では、前記指示部により指示された前記拡大又は縮小の程度だけ第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する。
好ましくは、前記表示制御部は、入力画像階調取得部を備え、前記入力画像階調取得部は、前記入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成され、前記二つの階調値のうちの小さい方の階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、前記二つの階調値のうちの大きい方の階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように前記差分変更処理が実行される。
好ましくは、前記入力画像データの任意の二つの階調値は、前記入力画像データの最小階調値及び最大階調値である。
好ましくは、前記指示部を操作する操作部を備え、前記操作部に対する1アクションにより、前記差分変更処理が実行される。
好ましくは、第1階調特性を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された第1階調特性を、前記変換処理実行後に第2階調特性に書き換える階調特性書換部と、を備える。
好ましくは、第1階調特性は、DICOM規格により定められる標準表示関数に関連付けられている。
好ましくは、前記表示部を備える表示装置を有し、前記表示制御部は、前記表示装置の内部に設けられる。
好ましくは、前記表示システムは、第1表示部及び第2表示部を備え、前記表示制御部は、第1表示部及び第2表示部に接続され、第1表示部及び第2表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、前記入力画像データを画像として表示するように構成される。
他の観点によれば、コンピュータを、階調特性変換部として機能させるプログラムであって、前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、第2階調特性に対応する輝度で入力画像データが画像として表示部に表示されるように構成される、プログラムが提供される。
好ましくは、前記変換処理は、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせるシフト処理を含み、前記シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される。
好ましくは、前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】JNDと輝度の関係を表すテーブルの一例である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示システム100のハードウェア構成を表す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表示システム100の機能ブロック図である。
【
図4】DICOM規格により定められる標準表示関数の一部を表すものである。
図4において、0~255の階調値Pに対応する輝度L(j)、JND対応値(j)、及び各階調間のJND対応値(j)の差分(Δj)が記されている。
【
図5】
図4の標準表示関数をグラフ化したものである。
【
図6】本発明の表示システム100の処理を説明するためのフロー図である。
【
図7】本発明の第2観点に係る表示システム100の処理を説明するためのフロー図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の表示システム100での階調輝度レンジ調整(高輝度シフト)を説明するためのテーブルである。
図8Bは、階調輝度レンジ調整(低輝度シフト)を説明するためのテーブルである。
【
図9】高輝度シフト及び低輝度シフト後の階調特性を表すグラフである。
【
図10】
図10Aは、本発明の第2観点に係る表示システム100のJND Maximizer(各階調間のJND対応値の差分を拡大する処理であり、後述のJND Enhancerの一態様)、JND Enhancer及びJND Suppressorを説明するためのテーブルである。
図10Bは、各階調間のJND対応値の差分を拡大又は縮小した後のテーブルである。
【
図11】JND Maximizerにより、各階調間のJND対応値の差分を拡大した後の階調特性を表すグラフである。
【
図12】JND Maximizer実行前後における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図13】JND Enhancer((1)階調輝度レンジ調整なし)により、各階調間のJND対応値の差分を拡大した後の階調特性を表すグラフである。
図13では、可変分解能imax=0,20,40,60,80,100%のときの階調特性をまとめて図示している(以下同様)。
【
図14】JND Enhancer((1)階調輝度レンジ調整なし)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図15】JND Suppressor((2)階調輝度レンジ調整なし)により、各階調間のJND対応値の差分を縮小した後の階調特性を表すグラフである。
図15では、可変分解能i=0,-20,-40,-60,-80,-100%のときの階調特性をまとめて図示している(以下同様)。
【
図16】JND Suppressor((2)階調輝度レンジ調整なし)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図17】JND Enhancer((3)Lmax固定)により、各階調間のJND対応値の差分を拡大した後の階調特性を表すグラフである。
【
図18】JND Enhancer((3)Lmax固定)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図19】JND Suppressor((4)Lmax固定)により、各階調間のJND対応値の差分を縮小した後の階調特性を表すグラフである。
【
図20】JND Suppressor((4)Lmax固定)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図21】JND Enhancer((5)Lmin固定)により、各階調間のJND対応値の差分を拡大した後の階調特性を表すグラフである。
【
図22】JND Enhancer((5)Lmin固定)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図23】JND Suppressor((6)Lmin固定)により、各階調間のJND対応値の差分を縮小した後の階調特性を表すグラフである。
【
図24】JND Suppressor((6)Lmin固定)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図25】JND Enhancer((7)-1指定階調輝度固定(Lmax側ΔJND<Lmin側ΔJND))により、各階調間のJND対応値の差分を拡大した後の階調特性を表すグラフである。
【
図26】JND Enhancer((7)-1指定階調輝度固定(Lmax側ΔJND<Lmin側ΔJND))実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図27】JND Enhancer((7)-2指定階調輝度固定(Lmin側ΔJND<Lmax側ΔJND))により、各階調間のJND対応値の差分を拡大した後の階調特性を表すグラフである。
【
図28】JND Enhancer((7)-2指定階調輝度固定(Lmin側ΔJND<Lmax側ΔJND))実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図29】JND Suppressor((8)指定階調輝度固定)により、各階調間のJND対応値の差分を縮小した後の階調特性を表すグラフである。
【
図30】JND Suppressor((8)指定階調輝度固定)実行時における、階調値とJND対応値の関係を表す模式図である。
【
図31】
図31Aは、第1表示装置10Aと第2表示装置10Bが表示制御部1を介して接続された態様を、
図31Bは、表示制御部1を内蔵する第1表示装置10Aと第2表示装置10Bが接続された態様を、
図31Cは、外部の記憶部2に記憶される表示制御部1と、第1表示装置10Aと第2表示装置10BがネットワークNTを介して接続された態様を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
1.JND対応値について
まず、JND対応値について説明する。
図1に示すように、JND対応値とは、輝度と一対一で対応する値であり、一例は、視覚認識のBarten Modelに基づくDICOM規格のJNDインデックスである。ここで、
図1は、DICOM規格により定められる標準表示関数と呼ばれるものである。JNDインデックスとは、平均的人間観察者が識別可能である与えられたターゲットの最小の輝度差を1JND(Just-Noticeable Difference, 弁別域)と定義し、当インデックスにおける1ステップが弁別域である輝度差に帰着するような値をいう。JND対応値としては、Barten Model以外の方法で導出した、観察者が識別可能な最小の輝度差に対応するデータをJNDインデックスの代わりに用いることもできる。
【0015】
DICOM規格によれば、人間工学に基づき、画像を表示する際に、各階調間のJND対応値の差分が一定となるように標準表示関数(=階調特性)が定められている。これにより、低階調~高階調の画像の視認性が人間の目にとって自然なものとなる。したがって、例えば医療用モニタでは、正確な読影や診断を可能とするためにも、標準表示関数に則った階調特性を備えることが好ましい。
【0016】
2.表示システム100
次に、
図2~
図5を用いて、表示システム100の構成について説明する。なお、
図2~
図5を用いた説明では、各構成要素の基本的な機能を説明するにとどめ、処理の詳細な説明は後述する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、表示システム100は、表示部4を備える表示装置10及び表示制御部1を有する。また、表示システム100は、記憶部2、操作部3、表示部4、バックライト5、通信部6、及びバス7を有する。表示制御部1は、記憶部2に記憶されたプログラム(不図示)を読み出して種々の演算処理を実行するものであり、例えば、CPU等により構成される。記憶部2は、表示部4に設定される第1階調特性や、種々のデータやプログラムを記憶するものであり、例えば、メモリ、HDD又はSSDにより構成される。ここで、プログラムは、表示システム100の出荷時点においてプリインストールされていてもよく、Web上のサイトからアプリケーションとしてダウンロードしてもよく、有線又は無線通信により他の情報処理装置又は記録媒体から転送されてもよい。操作部3は、表示システム100を操作するものであり、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、音声入力部、カメラ等を利用した動き認識装置により構成される。表示部4は、入力画像データ(静止画及び動画を含む)を画像として表示するものであり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、電子ペーパーその他のディスプレイで構成される。バックライト5は、表示部4の背面から表示部4を照明するものである。なお、表示部4が液晶ディスプレイでない場合には、バックライト5は不要である。通信部6は、他の情報処理装置又は各構成要素と種々のデータを送受信するものであり、任意のI/Oにより構成される。バス7はシリアルバス、パラレルバス等で構成され、各部を電気的に接続し、種々のデータの送受信を可能にするものである
【0018】
各構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部2に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、又はDRPなどの種々の回路によって実現することができる。本実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、上記のソフトウェア又はハードウェアの態様によって通信や演算が実行され得るものである。
【0019】
図3に示すように、表示制御部1は、入力画像階調取得部11、階調特性設定部12、階調特性変換部13、指示部14、輝度変更部15、階調特性書換部16、及び解析部17を備える。
【0020】
入力画像階調取得部11は、表示システム100に入力される入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成される。本実施形態では、任意の二つの階調値は、入力画像データの最小階調値及び最大階調値である。本実施形態では、入力画像データはモノクロの静止画像データである。入力画像階調取得部11は、後述の解析部17により実行された入力画像データに対するヒストグラム解析に基づいて、入力画像データに含まれる最小階調値(Pmin)及び最大階調値(Pmax)を取得する。ここで、ヒストグラム解析は、入力画像データ全体を対象として実行してもよく、入力画像データに含まれる一部の範囲(=関心領域)に対して実行してもよい。また、入力画像データが切り替えられた場合や、入力画像データ内の関心領域を変更した場合には、その都度ヒストグラム解析を実行してもよい。
【0021】
階調特性設定部12は、表示部4に第1階調特性を設定するように構成される。本実施形態では、記憶部2に記憶されている階調特性テーブル(=第1階調特性を規定するテーブル)を取得し、かかる階調特性テーブルを表示部4に設定する。本実施形態で利用する第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性である。具体的には、
図4に示すように、本実施形態では、第1階調特性はDICOM規格により定められる標準表示関数に関連付けられている。
図4に示すように、0~255までの階調値Pに対して、それぞれ輝度L(j)が一対一で対応している。また、
図1に示すように、輝度L(j)及びJND対応値(j)は一対一で対応しているので、0~255までの階調値Pに対して、それぞれJND対応値(j)が一対一で対応している。ここで、各輝度L(j)は、0~255の各階調値Pにおいて、各階調間のJND対応値の差分(Δj)が一定となるように定められている。
図4の例では、各階調間のJND対応値の差分(Δj)は2.56である。ここで、
図4の階調特性テーブルを視覚化したものが
図5のグラフである。
【0022】
階調特性変換部13は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行するものである。本実施形態では、階調特性変換部13は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、変換処理を実行するように構成される。また、変換処理は、シフト処理及び差分変更処理を含む。シフト処理は、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせる処理である。そして、シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される。ここで、シフト処理では、入力画像データの任意の二つの階調値のうちの小さい方の階調値が表示部4の最小輝度に対応するように、又は、任意の二つの階調値のうちの大きい方の階調値が表示部4の最大輝度に対応するように第1階調特性をシフトさせてもよい。また、任意の二つの階調値は、入力画像データの最小階調値及び最大階調値であってもよい。この場合、表示部4の最大輝度又は最小輝度が含まれる階調範囲まで第1階調特性をシフトさせることができる。さらに、差分変更処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する処理である。ここで、最小階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、最大階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように、差分変更処理が実行されてもよい。
【0023】
表示部4は、階調特性変換部13により変換された第2階調特性に対応する輝度で、入力画像データを画像として表示するように構成される。
【0024】
操作部3は、指示部14を操作するものである。本実施形態では、操作部3に対する1アクションにより、シフト処理が実行されるように構成される。また、本実施形態では、操作部3に対する1アクションにより、差分変更処理が実行されるように構成される。ここで、1アクションとは、いわゆる1クリックに相当し、例えば、ソフトウェア、表示装置10のキー、及びキーボード等のショートカット機能により実現される。
【0025】
指示部14は、シフト処理のシフト数を指示するものである。本実施形態では、指示部15は、シフト数を連続的に変更可能に構成されるか、又は、シフト数を指示した後、さらに所定のシフト数を指示可能に構成される。例えば、シフト数を0~255で表すとき、操作部3により0,20,40,60,80,100,200,255等と直接入力してもよく、操作部3が例えばマウスである場合には、マウスの移動に伴ってシフト数が0~255までの範囲で連続的に上下してもよい。そして、階調特性変換部13によるシフト処理では、指示部14により指示されたシフト数だけ第1階調特性をシフトさせる。
【0026】
さらに、指示部14は、差分変更処理における拡大又は縮小の程度を指示する機能も備える。本実施形態では、指示部14は、拡大又は縮小の程度を連続的に変更可能に構成されるか、又は、拡大又は縮小の程度を指示した後、さらに所定の値を拡大又は縮小の程度として指示可能に構成される。ここで、例えば、拡大又は縮小の程度を0~100%で表すとき、操作部3により0,20,40,60,80,100%等と直接入力してもよく、操作部3が例えばマウスである場合には、マウスの移動に伴って拡大又は縮小の程度が0~100%までの範囲で連続的に上下してもよい。そして、階調特性変換部13による差分変更処理では、指示部14により指示された拡大又は縮小の程度だけ第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する。
【0027】
輝度変更部15は、第2階調特性を維持した状態で輝度を変更可能に構成される。そして、表示部4は、輝度変更部15により変更された輝度で入力画像データを画像として表示部4に表示する。これにより、例えば、推奨最大輝度500cd/m2の範囲で輝度階調レンジ調整を行った後、さらに輝度が高い方が好ましい場合には、出力上限輝度(例:600~700cd/m2)までの範囲で階調特性を輝度の上限側にシフトさせることにより、輝度階調レンジ調整後の輝度を変更することができる。なお、ここで言うシフトとは、グラフ上における平行移動に相当するものと理解されたい。
【0028】
階調特性書換部16は、第1階調特性を書き換えるものである。具体的には、記憶部2に記憶された第1階調特性を変換処理実行後に第2階調特性に書き換え、表示部4の階調特性を変更する。
【0029】
解析部17は、上述の通り、入力画像データに対してヒストグラム解析を実行するものである。
【0030】
また、本実施形態では、表示制御部1は、表示装置10の内部に設けられる。
【0031】
3.輝度階調レンジ調整(シフト処理)
次に、
図6、
図8及び
図9を用いて、一実施形態に係る輝度階調レンジ調整について説明する。ここで、輝度階調レンジ調整とは、階調特性変換部13による変換処理の一種であり、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせるシフト処理に相当する。シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される。なお、シフト処理におけるシフト数は、指示部14により指示される。ここで、
図9の例では、表示部4の最大輝度又は最小輝度が含まれる階調範囲まで第1階調特性をシフトさせる「最大シフト」を示す。
【0032】
図6に示すように、まず、S1において、表示システム100は、入力画像データを取得する。本実施形態では、入力画像階調取得部11が、入力画像データの最小階調値及び最大階調値を取得する。本実施形態では、以下の条件で処理を実施するものとする。かかる条件は、後述のJND Enhancer(JND Maximizer)、JND Suppressorにおいても同様とする。
◆入力画像データの最小階調値及び最大階調値:50,200(解析部17によるヒストグラム解析の結果)
◆階調特性:0~255階調における特性を以下のように規定
・階調値0:0.6cd/m
2
・階調値50:28.49cd/m
2
・階調値200:190.18cd/m
2
・階調値255:500.02cd/m
2
◆表示部4の輝度
・Lmax(最大輝度):500.02cd/m
2
・Lmin(最小輝度):0.6cd/m
2
【0033】
次に、S2において、階調特性設定部12が、記憶部2に記憶された階調特性テーブル(第1階調特性)を取得し、表示部4に設定する。
【0034】
次に、S3において、階調特性変換部13が、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行する。このとき、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように変換処理が実行される。輝度階調レンジ調整では、かかる変換処置はシフト処理である。そして、シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される。具体的には、指示部14によりシフト数が指示された後、階調特性変換部13が、入力画像データの最小階調値(50)から最大階調値(200)までの階調数(151)を取得する。そして、S2において設定した第1階調特性のうち、かかる階調数(151)と一致する任意の階調範囲を特定する。
【0035】
かかる処理は、
図9に示される第1階調特性を高階調値側又は低階調値側にシフトさせるシフト処理に相当する。以下、階調特性テーブルのことを前段LUTと称する場合がある。
【0036】
(1)低階調値側へのシフト
以下、入力画像データを表示部4の有する最大輝度で画像として表示する処理について説明する。本実施形態では、指示部14により指示されるシフト数は55である。
図8Aに示すように、第1階調特性において、index(階調値を表す指標)がnのときに輝度がLUT
0_n(n:0~255)、つまり、indexが0のときに輝度がLUT
0_0、indexが最小階調値(以下、Phmin)のときに輝度がLUT
0_Phmin、indexが最大階調値(以下、Phmax)のときに輝度がLUT
0_Phmax、indexが255のときに輝度がLUT
0_255である。具体的には、本実施形態では、
図4に示すように、階調値が0のときに輝度が0.6cd/m
2、階調値が最小階調値(50)のときに6.46cd/m
2、階調値が最大階調値(200)のときに輝度が190.18cd/m
2、階調値が255のときに輝度が500.02cd/m
2(以下、説明の簡略化のため、500cd/m
2とする)である。
【0037】
そして、indexがPhmin(50)に対応する輝度をLUT0_105(=Phmin(50)+255-Phmax(200))までシフトさせたものが、下段の前段LUTで表される。
【0038】
これは、
図9に示すように、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持したまま、第1階調特性を55階調値分だけ左側(=低階調値側)にシフトさせることに相当する。
図9の例では、指示部14により指示されたシフト数は55であり、表示部4の最大輝度が含まれる階調範囲(すなわち、第1階調特性の階調値255が最大階調値(200)に含まれる範囲)まで第1階調特性をシフトさせる「最大シフト」に相当する。ここで、本実施形態においてシフト数を56以上とした場合、第2階調特性における最大階調値(200)に対応する輝度が存在しなくなるので、シフト数の上限を55としている。
【0039】
ここで、入力画像データの最小階調値が50、最大階調値が200であるので、階調値が50未満及び200を上回る範囲においては、表示部4に画像が表示されないようにしている。
図9では、第1階調特性のシフト後における点A(階調値50)の輝度は、第1階調特性の点A1(階調値105)における輝度である28.49cd/m
2となる。また、第1階調特性のシフト後における点B(階調値200)の輝度は、第1階調特性の点B1(階調値255)における輝度である500cd/m
2となる。
【0040】
このように、S3において、指示部14によりシフト処理のシフト数が指示され、階調特性変換部13により、第1階調特性のうち、第2階調特性として用いる階調範囲(105~255)が特定される。ここで、階調値105は、最小階調値(50)にシフト数55を加えることにより算出される。または、階調値105は、第1階調特性の最大階調値(255)から、入力画像データの最小階調値(50)から最大階調値(200)までの階調数(151)を減じた値に1を加えることにより算出される。これにより、表示部4の最大輝度が含まれる階調範囲まで第1階調特性をシフトさせ、第2階調特性を得ることが可能になる。
【0041】
また、指示部14は、シフト数を指示した後、さらに所定のシフト数を指示可能に構成されてもよい。例えば、シフト数を55に指示した後、所定のシフト数を54,53・・・1と更新することができる。これにより、第1階調特性のうち、階調値が104~254、103~253、・・・、51~201までの階調範囲を、第2階調特性として決定することが可能になる。また、例えば、指示部14がマウスである場合、マウスの移動又はスクロールバー等の調整にともない、シフト数を連続的に変更するようにしてもよい。
【0042】
かかる指示部14への指示命令は、操作部3を操作することにより送信される。
【0043】
次に、S4において、階調特性書換部16が、記憶部2に記憶された第1階調特性を、S3におけるシフト処理の実行後に、第2階調特性に書き換える。本実施形態では、階調特性書換部16は、特定された階調値と輝度の関係、すなわち第1階調特性における階調範囲(105~255)及びそれに対応する輝度を、シフト後の第2階調特性における階調範囲(50~200)に対応する輝度として、記憶部2に記憶されている第1階調特性を第2階調特性に書き換える。ここで、説明の都合上、階調特性書換部16による処理をS4として記述しているが、S3と同時に階調特性の書き換えが実行されてもよい。
【0044】
ここで、シフト後における第2階調特性においても、1階調間のJND対応値の差分Δjについては、変更前の第1階調特性と同様に2.56で一定となる。
【0045】
最後に、S5において、表示部4が、第2階調特性に対応する輝度で、入力画像データを画像として表示する。換言すると、シフト前の第1階調特性のうち、階調特性変換部13により特定された第1階調特性の105~255までの階調範囲及びそれに対応する輝度を、シフト後の第2階調範囲(50~200)における輝度として画像を表示する。
【0046】
このように、第1階調特性を低階調値側へシフトさせるシフト処理(最大シフト)により、表示部4の表示上の輝度レンジは、以下のようになる。
・シフト前:6.46~190.18cd/m2(階調値50~200)
・シフト後:28.49~500cd/m2(シフト後の階調値50~200であり、シフト前の階調値105~255に相当)
【0047】
これにより、入力画像データを修正することなく、階調特性を変更することで、入力画像データを表示部4の有する最大輝度500cd/m2まで利用して画像として表示することが可能になる。また、表示上の輝度を高めることにより、読影や診断時における環境照度の影響を低減させることができる。これにより、医用診断画像の視認性が向上し、異常箇所の発見が容易になる。さらに、シフト後においても、1階調間のJND対応値の差分Δjが一定であるので、画像の視認性を損なうことがない。
【0048】
なお、本実施形態では、シフト数を55とする最大シフトの例を説明したが、シフト数はこれに限定されず、任意の階調値分をシフトさせることができる。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを右方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、階調輝度レンジが高輝度側にシフトさせる構成とすることができる。また、操作部3がマウスである場合、左又は右クリック等を1回押す毎に、階調輝度レンジが高輝度側に所定の階調値(例:5階調)ずつシフトさせる構成とすることもできる。この場合、入力画像階調取得部11は、入力画像データの最小階調値から最大階調値までの階調数と一致する階調特性の任意の階調範囲を特定する必要はない。
【0049】
また、操作部3に対する1アクションにより、階調特性変換部13が表示部4の最大輝度が含まれる階調範囲まで第1階調特性をシフトさせることができる。これにより、上述の最大シフト(第1階調特性における階調値255を含むようなシフト)を簡単に実現することができる。さらに、指示部14によりシフト数が指示された後でも、操作部3に対する1アクションにより、最大シフトが実行されるように構成してもよい。
【0050】
また、第1階調特性を低階調値側へシフトさせた後、さらに第1階調特性を
図9の上下方向にシフトさせてもよい。
【0051】
さらに、低階調値側へのシフト後、すなわち、階調特性変換部13により特定された輝度(第1階調特性105~255における輝度)を、輝度変更部15により、かかる階調特性を維持した状態で変更してもよい。そして、表示部4は、変更後の輝度で、入力画像データを画像として表示してもよい。
【0052】
(2)高階調値側へのシフト
次に、
図6、
図8及び
図9を用いて、高階調値側へのシフトについて説明する。かかる処理は上述の低階調値側へのシフトと逆の処理であり、表示上の輝度を下げるものである。
【0053】
本実施形態では、指示部14により指示されるシフト数は50である。そして、階調特性変換部13により、第1階調特性の階調範囲(0~150)が特定される。ここで、階調値0は、最小階調値(50)からシフト数50を減じることにより算出される。これにより、表示部4の最小輝度が含まれる階調範囲(すなわち、第1階調特性の階調値0が最小階調値(0)に含まれる範囲)まで第1階調特性をシフトさせることが可能になる。ここで、本実施形態においてシフト数を50以上とした場合、第2階調特性における最小階調値(50)に対応する輝度が存在しなくなるので、シフト数の上限を50としている。
【0054】
図8Bに示すように、第1階調特性は、
図8Aと同様であるため、その説明を省略する。高階調値側へのシフトは、indexがPhmaxに対応する輝度をLUT
0_150(=Phmax(200)-Phmin(50))までシフトさせたものが、下段の前段LUTで表される。
【0055】
これは、
図9に示すように、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持したまま、第1階調特性を50階調値分だけ右側(=高階調側)にシフトさせることに相当する。ここで、最小階調値が50、最大階調値が200であるので、階調値が50未満及び200を上回る範囲においては、表示部4に画像が表示されない。
図9では、第1階調特性のシフト後における点C(階調値50)の輝度は、第1階調特性の点C1(階調値0)における輝度である0.6cd/m
2となる。また、第1階調特性のシフト後における点D(階調値200)の輝度は、第1階調特性の点D1(階調値150)における輝度である74.04cd/m
2となる。
【0056】
このように、第1階調特性を高階調値側へシフトさせるシフト処理(最大シフト)により、表示部4の表示上の輝度レンジは、以下のようになる。
・シフト前:6.46~190.18cd/m2(階調値50~200)
・シフト後:0.6~74.04cd/m2(シフト後の階調値50~200であり、シフト前の階調値0~150に相当)
【0057】
これにより、入力画像データを修正することなく、階調特性を変更することで、入力画像データを表示部4の有する最小輝度0.6cd/m2まで利用して画像として表示することが可能になる。これにより、ユーザーの眼精疲労を低減することが可能になる。さらに、シフト後においても、1階調間のJND対応値の差分Δjが一定であるので、画像の視認性の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
その他の処理については低階調値側へのシフトと同様であるので、説明を省略する。
【0059】
なお、本実施形態では、シフト数を50とする最大シフトの例を説明したが、シフト数はこれに限定されず、任意の階調値分をシフトさせることができる。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを左方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、階調輝度レンジが低輝度側にシフトさせる構成とすることができる。また、操作部3がマウスである場合、左又は右クリック等を1回押す毎に、階調輝度レンジが低輝度側に所定の階調値(例:5階調)ずるシフトさせる構成とすることもできる。この場合、入力画像階調取得部11は、入力画像データの最小階調値から最大階調値までの階調数と一致する階調特性の任意の階調範囲を特定する必要はない。
【0060】
また、操作部3に対する1アクションにより、階調特性変換部13が表示部4の最小輝度が含まれる階調範囲まで第1階調特性をシフトさせることができる。これにより、上述の最大シフト(第1階調特性における階調値0を含むようなシフト)を簡単に実現することができる。なお、操作部3に対する1アクションにより、入力画像データの任意の二つの階調値のうちの小さい方の階調値が表示部4の最小輝度に対応するように、又は、任意の二つの階調値のうちの大きい方の階調値が表示部4の最大輝度に対応するように第1階調特性をシフトさせるようにしてもよい。さらに、指示部14によりシフト数が指示された後でも、操作部3に対する1アクションにより、最大シフトが実行されるように構成してもよい。
【0061】
また、第1階調特性を高階調値側へシフトさせた後、さらに第1階調特性を
図9の上下方向にシフトさせてもよい。
【0062】
さらに、低輝度側へのシフト後、すなわち、階調特性変換部13により特定された輝度(元の階調特性0~150における輝度)を、輝度変更部15により、かかる階調特性を維持した状態で変更してもよい。そして、表示部4は、変更後の輝度で、入力画像データを画像として表示してもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態における輝度階調レンジ調整(シフト処理)によれば、ユーザーの用途に適した見え方で画像を表示することができる。
【0064】
4.JND Maximizer(差分変更処理)
以下、
図7、
図10及び
図11を用いて、JND Enhancerの一形態であるJND Maximizerについて説明する。本実施形態において、JND Enhancerとは、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大する差分変更処理を実行するものである。本実施形態では、入力画像データの任意の二つの階調値のうちの小さい方の階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、任意の二つの階調値のうちの大きい方の階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように差分変更処理が実行される。また、任意の二つの階調値は、入力画像データの最小階調値及び最大階調値であってもよい。具体的には、所定の階調値における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するものである。ここで、「所定の階調値以外の階調値の輝度を設定する」とは、所定の階調値の輝度を設定前のまま維持することに加え、所定の階調値の輝度を設定前の輝度のまま上書きすることも含む。そして、JND Maximizerは、JND Enhancerのうち、JND対応値の差分を最大まで拡大するものである。以下、入力画像データの最低階調値を50、最大階調値を200とする例について説明する。
【0065】
4-1.概要
まず、JND Maximizer実行後の第2階調特性について、
図11を用いて説明する。
図11に示すように、JND Maximizerを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、2つの階調特性が交わる階調値より大きい階調範囲で、JND Maximizer後の輝度が高くなる。以下、JND Maximizerにおける算出処理について説明する。
【0066】
以下、変更後の階調値Pnに対応するJND対応値をj_Pn、ターゲット輝度をLt(j_Pn)とする。ここで、Pnは最小階調値~最大階調値の整数である。
【0067】
本実施形態では、以下のステップで、最小階調値~最大階調値の階調範囲におけるターゲット輝度Lt(j_Pn)を算出する。ここで、元の階調特性は、
図10Aに示される状態である。そして、
図10Bに示すように、前段LUTがPhmin~Phmaxの範囲において、各階調値に対応するターゲット輝度がLt(j_Pn)となるような前段LUT_Pnを以下の手順で算出する。
S1:最小階調値と最大階調値における輝度の設定
最小階調値(50)におけるターゲット輝度Lt(j_P
50)をLmin(最小輝度:0.6cd/m
2)、最大階調値(200)におけるターゲット輝度Lt(j_P
200)をLmax(最大輝度:500cd/m
2)とする。ここで、本実施形態では、所定の階調値(第1階調特性と、JND Maximizer実行後における第2階調特性の交点に対応する階調値)における階調特性に基づく輝度を基準としている。換言すると、JND Maximizerの実行前後において、かかる輝度を固定している。
S2:JND対応値j_Pnを算出
最小階調値~最大階調値の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように処理される。
S3:ターゲット輝度Lt(j_Pn)を算出
最小階調値~最大階調値の階調範囲において、各階調値Pnに対応するターゲット輝度Lt(j_Pn)を、S2で算出したJND対応値j_Pnに基づいて特定する。
【0068】
上記各ステップについて、具体的に説明する。以下に示すように、本実施形態では、S2において、(数1)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0069】
【0070】
(数1)は、最小階調値(50)及び最大階調値(200)に対応するJND対応値の差分を、最大階調値(200)と最小階調値(50)の差分(150)で割ることにより、各階調値Pn間のJND対応値j_Pnの差分を一定とするものである。(数1)の具体的な意味は、以下の通りである。
・j(Lmax)-j(Lmin)
最大階調値(200)に対応するJND対応値j_P
200と、最小階調値(50)に対応するJND対応値j_P
50の差分を算出する。
・/(Phmax-Phmin)
(最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲に含まれる階調値の個数-1)で上記JND対応値j_Pnの差分を割る。これにより、階調値PnとJND対応値j_Pnの対応を1次関数で表す場合における「傾き」を求める(
図12参照)。このように、「傾き」を定数とすることで、各階調値間のJND対応値の差分を拡大した後においても、各階調値Pn間のJND対応値j_Pnの差分が一定となる。
・×(Pn-Phmin)
所定の階調値Pnと最小階調値(50)の差分を掛けることにより、所定の階調値PnにおけるJND対応値j_Pnまでの、最小階調値(50)におけるJND対応値j_P
50からの増加分を求める。
・+j(Lmin)
最小階調値(50)におけるJND対応値j_P
50(1次関数における切片)を加える。
【0071】
以下、(数1)につき、具体的な数字で説明する。JND対応値j_Pnについては、
図4を参照されたい。なお、
図4では、小数点第2位以下を切り捨て表示している。
j_Pn=(j(L
255)-j(L
0))/(P
200-P
50)×(Pn-P
50)+j(L
0)
=(705.94-52.47)/(200-50)×(Pn-50)+52.47
=4.36×(Pn-50)+52.47
【0072】
かかる処理を、Pnが50~200までの階調範囲で繰り返し、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲に含まれる各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。
【0073】
ここで、
図12に示すように、JND Maximizer実行前の第1階調特性(
図4参照)では、階調値が0のときにJND対応値が最小(52.47)となり、階調値が255のときにJND対応値が最大(705.94)となる傾きが2.56の一次関数である。JND Maximizerを実行することにより、階調値が50のときにJND対応値が最小(52.47)となり、階調値が200のときにJND対応値が最大(705.94)となる傾きが4.36の一次関数となる。換言すると、第1階調特性では、階調値が0~255の範囲(256階調)において、52.47~705.94までのJND対応値が割り当てられている。一方、JND Maximizerを実行することにより、階調値が50~200の範囲において、52.47~705.94までのJND対応値が割り当てられる。これにより、隣接する階調値間におけるJND対応値の差分が2.56から4.36へと拡大されることになる。
【0074】
そして、S3において、(数2)により、ターゲット輝度Lt(j_Pn)を特定する。
【0075】
【0076】
ここで、(数2)中のxは、以下の(数3)中の右辺である。
【0077】
【0078】
これは、レティネックス理論に基づく数式であり、ターゲット輝度Lt(j_Pn)はJND対応値j_Pnの関数として特定することができる。換言すると、ターゲット輝度Lt(j_Pn)とJND対応値j_Pnは一対一で対応しており、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲におけるJND対応値j_Pnを算出することにより、それに対応するターゲット輝度Lt(j_Pn)を設定することが可能になる。
【0079】
このように、JND Maximizerを実行することにより、表示部4の表示特性は、以下のようになる。
◆実行前
・表示上の輝度レンジ:6.46~190.18cd/m
2
・表示上のコントラスト:29(=190.18/6.46)
・JND対応値の差分:2.56(
図4参照)
◆実行後
・表示上の輝度レンジ:0.6~500cd/m
2
・表示上のコントラスト:833(=500/0.6)
・JND対応値の差分:4.36(=(705.94-52.47)/(200-50))
【0080】
4-2.処理フロー
以下、
図7を用いて、JND Maximizerの処理フローについて説明する。
【0081】
図7に示すように、まず、S1において、表示システム100は、入力画像データを取得する。このとき、入力画像階調取得部11が、入力画像データの最小階調値及び最大階調値を取得する。
【0082】
次に、S2において、階調特性設定部12が、記憶部2に記憶された階調特性テーブル(第1階調特性)を取得し、表示部4に設定する。
【0083】
次に、S3において、階調特性変換部13は、上述の(数1)により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲におけるJND対応値を拡大する。このとき、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定(=4.26)となっている。本実施形態では、第1階調特性のうち、P_255に対応する輝度(500cd/m2)を、第2階調特性のP_200の輝度(500cd/m2)として設定する。また、第1階調特性のうち、P_0に対応する輝度(0.6cd/m2)を、第2階調特性のP_50の輝度(0.6cd/m2)として設定する。これにより、最小階調値(50)で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、最大階調値(200)で第1階調特性に対応する最大輝度が設定される。これがJND Maximizerである。
【0084】
ここで、本実施形態では、操作部3に対する1アクションにより、JND Maximizerが実行されるように構成されてもよい。また、操作部3に対する1アクションにより、入力画像データの任意の二つの階調値のうちの小さい方の階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、任意の二つの階調値のうちの大きい方の階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように差分変更処理が実行されるようにしてもよい。
【0085】
次に、S4において、階調特性書換部16が、記憶部2に記憶されている第1階調特性を第2階調特性に書き換える。ここで、説明の都合上、階調特性書換部16による処理をS4として記述しているが、S3と同時に階調特性の書き換えが実行されてもよい。
【0086】
最後に、S5において、表示部4が、第2階調特性に対応する輝度(上述の(数2)により得られる、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲における、各階調値に対応する輝度)で、入力画像データを画像として表示する。
【0087】
以上説明したように、本実施形態におけるJND Maximizer(差分変更処理)によれば、各階調間のJND対応値の差分を最大限拡大させることができ、かつ、拡大後も各階調間のJND対応値の差分は一定であるので、ユーザーにとって見やすい表示状態を簡単に調整することが可能になる。
【0088】
5.JND Enhancer (1)階調輝度レンジ調整なし(差分変更処理)
以下、
図13及び
図14を用いて、輝度階調レンジ調整(シフト処理)なしの場合におけるJND Enhancerについて説明する。
【0089】
まず、JND Enhancer実行後の第2階調特性について、
図13を用いて説明する。
図13に示すように、JND Enhancerを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、2つの階調特性が交わる階調値より大きい階調範囲で、JND Enhancer実行後の輝度が高くなる。JND Enhancerでは、指示部14により、JND対応値の拡大の程度を連続的に変更可能に構成される。また、指示部14は、拡大又は縮小の程度を指示した後、さらに所定の値を拡大又は前記縮小の程度として指示可能に構成されてもよい。
図13では、拡大の度合いが0,20,40,60,80,100%の例を示している。ここで、0%は第1階調特性(
図5参照)を表し、100%はJND Maximizer実行後の第2階調特性(
図11参照)を表している。以下、JND Enhancerにおける算出処理について説明する。なお、
図10に示されるテーブルはJND Maximizerと同様であるので、その説明を省略する。以下の全ての機能においても同様である。
【0090】
本実施形態では、以下の(数4)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0091】
【0092】
ここで、(数4)中における各パラメータは、以下の通りである。
・imax(%):JND Enhancerの分解能
・i(%):調整値
・j(L_Phmin):最小階調値に対応する元の階調特性のJND対応値
ここで、i(調整値)が、上述の0,20,40,60,80,100%に対応する値である。その他のパラメータについては、(数1)と同じであるため、説明を省略する。
【0093】
ここで、
図13は、各パラメータとして、以下の値を採用している。
・j(Lmax):705.94
・j(Lmin):52.47
・Phmax:200
・Phmin:50
・imax:100%
・i:0,20,40,60,80,100%
・j(L_Phmin):180.60(元の階調特性における階調値50に対応するJND対応値)
【0094】
かかる計算により、第2階調特性で規定される最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図13である。なお、本実施形態では、所定の階調値(第1階調特性と、i=0,20,40,60,80,100の場合におけるそれぞれの第2階調特性の交点に対応する階調値)における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0095】
このとき、
図14に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~100の間で変化する。なお、
図14の例では、i=0~100の間で交点が必ずしも一致するものではない。
図14に示すように、例えばi=0とi=100の場合を比べると、グラフの交点より高階調側においてi=100のJND対応値が高くなる。換言すると、グラフの交点より高階調側においてi=100の輝度が高くなる(
図4及び
図13参照)。一方、グラフの交点より低階調側においてi=100のJND対応値が低くなる。換言すると、グラフの交点より低階調側においてi=100の輝度が低くなる(
図4及び
図13参照)。
【0096】
また、iを0から100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~4.36(i=100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを上方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に増加するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.018(=(4.36-2.56)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=40)を指示するように構成してもよい。
【0097】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0098】
このように、JND Enhancerにより、各階調値間のJND対応値の差分を連続又は非連続で拡大させることができ、かつ、拡大後も各階調値間のJND対応値の差分は一定であるので、ユーザーにとって見やすい表示状態を簡単に調整することが可能になる。
【0099】
6.JND Suppressor (2)階調輝度レンジ調整なし(差分変更処理)
以下、
図15及び
図16を用いて、輝度階調レンジ調整(シフト処理)なしの場合におけるJND Suppressorについて説明する。本実施形態において、JND Suppressorとは、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を縮小する差分変更処理を実行するものである。
【0100】
まず、JND Suppressor実行後の第2階調特性について、
図15を用いて説明する。
図15に示すように、JND Suppressorを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、2つの階調特性が交わる階調値より大きい階調範囲で、JND Suppressor後の輝度が低くなる。JND Suppressorでは、JND対応値の縮小の程度を連続的に変更可能に構成される。
図15では、縮小の度合いが0,-20,-40,-60,-80,-100%の例を示している。ここで、0%は第1階調特性(
図5参照)を表し、-100%は各階調値間のJND対応値の差分が1の表示状態となる第2階調特性を表す。ここで、各階調値間のJND対応値の差分が1未満となる場合には、輝度が変化しても観察者が認識することができない。したがって、かかる差分が1となる場合を、JND対応値の差分の縮小の上限(-100%)としている。以下、JND Suppressorにおける算出処理について説明する。
【0101】
本実施形態では、以下の(数5)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0102】
【0103】
ここで、(数5)中における各パラメータは、以下の通りである。
・imin(%):JND Suppressorの分解能
・i(%):調整値
【0104】
図15の例では、imin=-100、i=0,-20,-40,-60,-80,-100%である。その他のパラメータは、
図13の場合と同じであるので、説明を省略する。
【0105】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図15である。なお、本実施形態では、所定の階調値(第1階調特性と、i=0,-20,-40,-60,-80,-100%の場合におけるそれぞれの第2階調特性の交点に対応する階調値)における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0106】
このとき、
図16に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~-100の間で変化する。なお、
図16の例では、i=0~-100の間で交点が必ずしも一致するものではない。
図16に示すように、例えばi=0とi=-100の場合を比べると、グラフの交点より高階調側においてi=-100のJND対応値が低くなる。換言すると、グラフの交点より高階調側においてi=-100の輝度が低くなる(
図4及び
図15参照)。一方、グラフの交点より低階調側においてi=-100のJND対応値が高くなる。換言すると、グラフの交点より低階調側においてi=-100の輝度が高くなる(
図4及び
図15参照)。
【0107】
また、iを0から-100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~1(i=-100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを下方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に減少するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.0156(=(2.56-1)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=40)を指示するように構成してもよい。
【0108】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0109】
このように、JND Suppressorにより、各階調値間のJND対応値の差分を連続又は非連続に縮小させることができるので、画像の粒状性(ノイズ感)を低減させることができる。また、縮小後も各階調値間のJND対応値の差分は一定であるので、ユーザーにとって見やすい表示状態を簡単に調整することが可能になる。
【0110】
7.JND Enhancer (3)Lmax固定(シフト処理+差分変更処理)
以下、
図17及び
図18を用いて、Lmaxを固定した場合のJND Enhancerについて説明する。これは、輝度階調レンジを高輝度側にLmaxまでシフト(シフト処理における低階調値側への最大シフト)させた状態から、JND Enhancer(差分変更処理)を実行するものである。
【0111】
まず、JND Enhancer実行後の第2階調特性について、
図17を用いて説明する。
図17に示すように、低階調値側への最大シフト実行後(i=0)にJND Enhancerを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、最大輝度(Lmax)を固定した状態で、JND Enhancer実行後における輝度が低くなる。JND Enhancerでは、JND対応値の拡大の程度を連続的に変更可能に構成される。
図17では、拡大の度合いが0,20,40,60,80,100%の例を示している。ここで、0%は低階調値側への最大シフト実行後における第2階調特性(
図9参照)を表し、100%は低階調値側への最大シフト実行後にJND Maximizerを実行した後の第2階調特性を表している。なお、本実施形態では、低階調値側への最大シフト実行前における階調特性が、第1階調特性に相当する。以下、JND Enhancerにおける算出処理について説明する。
【0112】
本実施形態では、以下の(数6)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0113】
【0114】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図17である。なお、本実施形態では、所定の階調値(最大階調値(200))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0115】
このとき、
図18に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、第1階調特性を高輝度側にLmaxまでシフト(シフト処理における低階調値側への最大シフト)させてから、Lmaxに対応する最大JND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図18に示すように、例えばi=0とi=100の場合を比べると、最大階調値(200)よりも低い階調範囲においてi=100のJND対応値が低くなる。換言すると、最大階調値(200)よりも低い階調範囲においてi=100の輝度が低くなる(
図4及び
図17参照)。
【0116】
また、iを0から100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~4.36(i=100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを上方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に増加するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.018(=(4.36-2.56)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=40)を指示するように構成してもよい。
【0117】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0118】
このように、本実施形態では、表示上の最大輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続又は非連続に拡大させることができる。
【0119】
8.JND Suppressor (4)Lmax固定(シフト処理+差分変更処理)
以下、
図19及び
図20を用いて、Lmaxを固定した場合のJND Suppressorについて説明する。これは、輝度階調レンジを高輝度側にLmaxまでシフト(シフト処理における低階調値側への最大シフト)させた状態から、JND Suppressor(差分変更処理)を実行するものである。
【0120】
まず、JND Suppressor実行後の第2階調特性について、
図19を用いて説明する。
図19に示すように、低階調値側への最大シフト実行後(i=0)にJND Suppressorを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、最大輝度(Lmax)を固定した状態で、JND Suppressor実行後における輝度が高くなる。JND Suppressorでは、JND対応値の拡大の程度を連続的に変更可能に構成される。
図19では、縮小の度合いが0,-20,-40,-60,-80,-100%の例を示している。ここで、0%は低階調値側への最大シフト実行後における第2階調特性(
図9参照)を表し、-100%は低階調値側への最大シフト実行後にJND Suppressorの最大縮小(i=-100%)を実行した後の第2階調特性を表している。なお、本実施形態では、低階調値側への最大シフト実行前における階調特性が、第1階調特性に相当する。以下、JND Suppressorにおける算出処理について説明する。
【0121】
本実施形態では、以下の(数7)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0122】
【0123】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図19である。なお、本実施形態では、所定の階調値(最大階調値(200))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0124】
このとき、
図20に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~-100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、元の階調特性を高輝度側にLmaxまでシフト(上述の最大シフト)させてから、Lmaxに対応する最大JND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図20に示すように、例えばi=0とi=-100の場合を比べると、最大階調値(200)よりも低い階調範囲においてi=-100のJND対応値が高くなる。換言すると、最大階調値(200)よりも低い階調範囲においてi=-100の輝度が高くなる(
図4及び
図19参照)。
【0125】
また、iを0から-100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~1(i=-100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを下方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に減少するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.0156(=(2.56-1)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=-20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=-40)を指示するように構成してもよい。
【0126】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0127】
このように、本実施形態では、表示上の最大輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続又は非連続に縮小させることができる。
9.JND Enhancer (5)Lmin固定(シフト処理+差分変更処理)
以下、
図21及び
図22を用いて、Lminを固定した場合のJND Enhancerについて説明する。これは、輝度階調レンジを低輝度側にLminまでシフト(シフト処理における高階調値側への最大シフト)させた状態から、JND Enhancer(差分変更処理)を実行するものである。
【0128】
まず、JND Enhancer実行後の第2階調特性について、
図21を用いて説明する。
図21に示すように、高階調値側への最大シフト実行後(i=0)にJND Enhancerを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、最小輝度(Lmin)を固定した状態で、JND Enhancer実行後における輝度が高くなる。JND Enhancerでは、JND対応値の拡大の程度を連続的に変更可能に構成される。
図21では、拡大の度合いが0,20,40,60,80,100%の例を示している。ここで、0%は高階調値側への最大シフト実行後における第2階調特性(
図9参照)を表し、100%は高階調値側への最大シフト実行後にJND Maximizerを実行した後の第2階調特性を表している。なお、本実施形態では、高階調値側への最大シフト実行前における階調特性が、第1階調特性に相当する。以下、JND Enhancerにおける算出処理について説明する。
【0129】
本実施形態では、以下の(数8)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0130】
【0131】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図21である。なお、本実施形態では、所定の階調値(最小階調値(50))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0132】
このとき、
図22に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、元の階調特性を低輝度側にLminまでシフト(シフト処理における高階調値側への最大シフト)させてから、Lminに対応する最小JND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図22に示すように、例えばi=0とi=100の場合を比べると、最小階調値(50)よりも高い階調範囲においてi=100のJND対応値が高くなる。換言すると、最小階調値(50)よりも高い階調範囲においてi=100の輝度が高くなる(
図4及び
図21参照)。
【0133】
また、iを0から100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~4.36(i=100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを上方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に増加するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.018(=(4.36-2.56)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=40)を指示するように構成してもよい。
【0134】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0135】
このように、本実施形態では、表示上の最小輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続又は非連続に拡大させることができる。
10.JND Suppressor (6)Lmin固定(シフト処理+差分変更処理)
以下、
図23及び
図24を用いて、Lminを固定した場合のJND Suppressorについて説明する。これは、輝度階調レンジを低輝度側にLminまでシフト(シフト処理における高階調値側への最大シフト)させた状態から、JND Suppressor(差分変更処理)を実行するものである。
【0136】
まず、JND Suppressor実行後の第2階調特性について、
図23を用いて説明する。
図23に示すように、高階調値側への最大シフト実行後(i=0)にJND Suppressorを実行することにより、最小階調値(50)~最大階調値(200)までの階調範囲において、最小輝度(Lmin)を固定した状態で、JND Suppressor実行後における輝度が低くなる。JND Suppressorでは、JND対応値の拡大の程度を連続的に変更可能に構成される。
図23では、縮小の度合いが0,-20,-40,-60,-80,-100%の例を示している。ここで、0%は高階調値側への最大シフト実行後における第2階調特性(
図9参照)を表し、-100%は高階調値側への最大シフト実行後にJND Suppressorの最大縮小(i=-100%)を実行した後の第2階調特性を表している。なお、本実施形態では、高階調値側への最大シフト実行前における階調特性が、第1階調特性に相当する。以下、JND Suppressorにおける算出処理について説明する。
【0137】
本実施形態では、以下の(数9)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0138】
【0139】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図23である。なお、本実施形態では、所定の階調値(最小階調値(50))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0140】
このとき、
図24に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~-100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、元の階調特性を低輝度側にLminまでシフト(上述の最大シフト)させてから、Lminに対応する最小JND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図24に示すように、例えばi=0とi=-100の場合を比べると、最小階調値(50)よりも高い階調範囲においてi=-100のJND対応値が低くなる。換言すると、最小階調値(50)よりも高い階調範囲においてi=-100の輝度が低くなる(
図4及び
図23参照)。
【0141】
また、iを0から-100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~1(i=-100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを下方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に減少するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.0156(=(2.56-1)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=-20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=-40)を指示するように構成してもよい。
【0142】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0143】
このように、本実施形態では、表示上の最小輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続又は非連続に縮小させることができる。
【0144】
11.JND Enhancer (7)-1指定階調輝度固定(Lmax側ΔJND<Lmin側ΔJND)(差分変更処理)
以下、
図25及び
図26を用いて、指定階調値Pcにおける輝度を固定した場合のJND Enhancerについて説明する。これは、操作部3により指定された指定階調値Pcにおける輝度を固定した状態で、JND Enhancerを実行するものである。ここで、指定階調値Pcは、最小階調値(50)、最大階調値(200)、中間階調値(125)、入力画像データの平均階調値、関心領域の中央の階調値、関心領域の平均階調値、又はユーザーによる任意の階調値とすることができる。本実施形態では、指定階調値Pcが80である場合について説明する。
【0145】
ここで、指定階調値Pcの値により、輝度がLmax側で飽和するか、Lmin側で飽和するかが問題となる。例えば、指定階調値Pcが小さい場合、各階調値間のJND対応値の差分を拡大することにより、Lmin側の階調値に割り当てられる輝度が不足する。逆に、指定階調値Pcが大きい場合、各階調値間のJND対応値の差分を拡大することにより、Lmax側の階調値に割り当てられる輝度が不足する。これを解消するために、本実施形態では、以下の(数10)を用い、輝度がLmax側で飽和するか、Lmin側で飽和するかを判定する。そして、その結果に応じて、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する数式を切り替える。
【0146】
【0147】
これは、指定階調値Pcから最大階調値Phmax又は最小階調値Phminまでの階調値の絶対値でJND対応値の差分を割ることで、Lmax側又はLmin側における各階調値間のJND対応値の差分(ΔJND)を求めるものである。ここで、階調値とJND対応値の関係は、
図12を参照されたい。
【0148】
そして、指定階調値Pcが80の場合、Lmax側ΔJND<Lmin側ΔJNDとなる、換言すると、Lmax側で輝度が飽和するので、以下の(数11)に基づいて、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。
【0149】
【0150】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図25である。なお、本実施形態では、所定の階調値(指定階調値Pc(80))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0151】
このとき、
図26に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、指定階調値Pc(80)に対応するJND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図26に示すように、例えばi=0とi=100の場合を比べると、指定階調値Pc(80)よりも高い階調範囲においてi=100のJND対応値が高くなる。換言すると、指定階調値Pc(80)よりも高い階調範囲においてi=100の輝度が高くなる(
図4及び
図25参照)。一方、指定階調値Pc(80)よりも低い階調範囲においてi=100のJND対応値が低くなる。換言すると、指定階調値Pc(80)よりも低い階調範囲においてi=100の輝度が低くなる(
図4及び
図25参照)。
【0152】
また、iを0から100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~3.74(i=100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを上方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に増加するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.0118(=(3.74-2.56)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=40)を指示するように構成してもよい。
【0153】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0154】
このように、本実施形態では、表示上の指定階調値Pcに対応する輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続的に拡大させることができる。
【0155】
12.JND Enhancer (7)-2指定階調輝度固定(Lmin側ΔJND<Lmax側ΔJND)(差分変更処理)
次に、
図27及び
図28を用いて、輝度がLmin側で飽和する場合におけるJND Enhancerについて説明する。本実施形態では、指定階調値Pcが125である場合について説明する。
【0156】
指定階調値Pcが125の場合、Lmin側ΔJND<Lmax側ΔJNDとなる、換言すると、Lmin側で輝度が飽和するので、以下の(数12)に基づいて、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。
【0157】
【0158】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図27である。なお、本実施形態では、所定の階調値(指定階調値Pc(125))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を拡大し、且つ、拡大後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0159】
このとき、
図28に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、指定階調値Pc(125)に対応するJND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図28に示すように、例えばi=0とi=100の場合を比べると、指定階調値Pc(125)よりも高い階調範囲においてi=100のJND対応値が高くなる。換言すると、指定階調値Pc(125)よりも高い階調範囲においてi=100の輝度が高くなる(
図4及び
図27参照)。一方、指定階調値Pc(125)よりも低い階調範囲においてi=100のJND対応値が低くなる。換言すると、指定階調値Pc(125)よりも低い階調範囲においてi=100の輝度が低くなる(
図4及び
図27参照)。
【0160】
また、iを0から100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~4.27(i=100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを上方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に増加するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.0171(=(4.27-2.56)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=40)を指示するように構成してもよい。
【0161】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0162】
このように、本実施形態では、表示上の指定階調値Pcに対応する輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続的に拡大させることができる。
【0163】
13.JND Suppressor (8)指定階調輝度固定(差分変更処理)
以下、
図29及び
図30を用いて、指定階調値Pcにおける輝度を固定した場合のJND Suppressorについて説明する。これは、操作部3により指定された指定階調値Pcにおける輝度を固定した状態で、JND Suppressorを実行するものである。本実施形態では、指定階調値Pcが80である場合について説明する。なお、指定階調値Pcを固定した場合におけるJND Enhancerと異なり、JND Suppressorでは各階調値間のJND対応値の差分を縮小するので、輝度の飽和を考慮する必要はない。
【0164】
本実施形態では、以下の(数13)により、JND対応値j_Pnを算出する。
【0165】
【0166】
かかる計算により、最小階調値(50)~最大階調値(200)の階調範囲において、各階調値Pnに対応するJND対応値j_Pnを算出する。このとき、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となる。そして、これをプロットしたものが
図29である。なお、本実施形態では、所定の階調値(指定階調値Pc(80))における階調特性に基づく輝度を基準とし、各階調値間のJND対応値の差分を縮小し、且つ、縮小後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように、所定の階調値以外の階調値の輝度を設定するように構成される。
【0167】
このとき、
図30に示すように、階調値とJND対応値の関係は、i=0~-100の間で連続又は非連続に変化する。ここで、かかる処理は、指定階調値Pc(80)に対応するJND対応値を固定した状態でグラフの傾きを変更することに相当する。
図30に示すように、例えばi=0とi=-100の場合を比べると、指定階調値Pc(80)よりも高い階調範囲においてi=-100のJND対応値が低くなる。換言すると、指定階調値Pc(80)よりも高い階調範囲においてi=-100の輝度が低くなる(
図4及び
図29参照)。一方、指定階調値Pc(80)よりも低い階調範囲においてi=-100のJND対応値が高くなる。換言すると、指定階調値Pc(80)よりも低い階調範囲においてi=-100の輝度が高くなる(
図4及び
図29参照)。
【0168】
また、iを0から-100まで連続的に変化させることにより、各階調値間のJND対応値の差分は、2.56(i=0)~1(i=-100)まで連続的に変化する。例えば、操作部3がマウスである場合、マウスを下方向にスライドさせ、マウスの移動に伴い、iの値が連続的に減少するように構成することができる。このときのJND対応値の差分の分解能は、0.0156(=(2.56-1)/100)となる。また、指示部14によりiの値(例:i=-20)を指示した後、さらに所定の値(例:i=-40)を指示するように構成してもよい。
【0169】
かかる処理が、
図7におけるS3に相当する。ここで、S1~S2、S4~S5はJND Maximizerと同様であるので、説明を省略する。
【0170】
このように、本実施形態では、表示上の指定階調値Pcに対応する輝度は一定のまま、各階調間のJND対応値の差分を連続又は非連続に縮小させることができる。
【0171】
14.複数の表示装置10を制御する場合
次に、
図31を用いて、表示システム100が複数の表示装置10を含む場合について説明する。本実施形態では、表示システム100は、第1表示装置10A及び第2表示装置10Bを備える。第1表示装置10Aは第1表示部4Aを備え、第2表示装置10Bは第2表示部4Bを備える。また、表示制御部1は、第1表示装置10A及び第2表示装置10Bに接続される。そして第1表示部4A及び第2表示部4Bは、階調特性変換部13により変換された階調特性に基づいて、入力画像データを画像として表示するように構成される。以下、種々の態様について説明する。
【0172】
14-1.表示制御部1が外部の表示制御装置1Aに設けられる場合
図31Aに示すように、第1表示装置10A及び第2表示装置10Bの外部に設けられた表示制御部1により、第1表示装置10A及び第2表示装置10Bが接続される。本実施形態では、表示制御部1が外部の表示制御装置1Aに設けられる。そして、表示制御部1により、第1表示部4A及び第2表示部4Bが同時に制御される。これにより、例えば、同じ条件で撮影された過去の診断画像を第1表示部4Aに表示させ、現在の診断画像を第2表示部4Bに表示させた場合、第1表示装置10A又は第2表示装置10Bの操作部3を操作することで、第1表示部4A及び第2表示部4Bの輝度を同時に制御することが可能になる。
【0173】
14-2.表示制御部1が第1表示装置10Aの内部に設けられる場合
図31Bに示すように、第1表示装置10Aの内部に表示制御部1が設けられてもよい。この場合、表示制御部1は、第1表示装置10Aの内部において第1表示部4Aと接続され、且つ、第2表示部4Bとも接続される。これにより、第1表示部4A及び第2表示部4Bを同時に制御することができる。
【0174】
14-3.表示制御部1が外部の記憶部2(サーバ)に設けられる場合
図31Cに示すように、外部の記憶部2に表示制御部1が設けられてもよい。外部の記憶部2は、例えばサーバにより構成される。そして、ネットワークNTを介して、表示制御部1が第1表示装置10A及び第2表示装置10Bと接続される。これにより、第1表示部4A及び第2表示部4Bを同時に制御することができる。
【0175】
以上説明したように、上述の全ての実施形態に係る表示システム100は、階調特性の変更後においても各階調値間のJND対応値の差分が一定であるので、階調特性を変更した後において、画像の視認性が低下することを抑制できる。
【0176】
15.その他
以上、種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されない。
【0177】
例えば、表示制御部1は、表示装置10の外付けセットトップボックスとして提供されてもよい。また、表示制御部1の機能を実装したASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)、DRP(Dynamic ReConfigurable Processor)として提供することもできる。
【0178】
また、シフト処理と差分変更処理とを組み合わせて実施することもできる。例えば、シフト処理を実行後に差分変更処理を実行してもよく、差分変更処理を実行後にシフト処理を実行してもよい。また、差分変更処理において、入力画像データの最小階調値及び最大階調値を取得することなく、階調値-JND対応値の関係(
図12等)におけるグラフの傾きを適当に変更することにより、JND対応値の差分の拡大又は縮小することは可能である。なお、かかる態様では、JND対応値の差分の拡大又は縮小の程度を好適に調整できないので、入力画像データの最小階調値及び最大階調値を取得することが好ましい。
【0179】
また、本発明は、以下の態様でも実現可能である。
コンピュータを、階調特性変換部として機能させるプログラムであって、
前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、
第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、
前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、
第2階調特性に対応する輝度で入力画像データが画像として表示部に表示されるように構成される、
プログラム。
【0180】
また、本発明は、以下の態様でも実現可能である。
前記変換処理は、第1階調特性を低階調値側又は高階調値側に向けてシフトさせるシフト処理を含み、
前記シフト処理は、第1階調特性及び第2階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を維持するように実行される、
上述のプログラム。
【0181】
また、本発明は、以下の態様でも実現可能である。
前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含む、
上述のプログラム。
【0182】
さらに、上述のいずれかのプログラムを格納する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供してもよい。
【符号の説明】
【0183】
1:表示制御部
1A:表示制装置
2:記憶部
3:操作部
4:表示部
4A:第1表示部
4B:第2表示部
5:バックライト
6:通信部
7:バス
10:表示装置
10A:第1表示装置
10B:第2表示装置
11:入力画像階調取得部
12:階調特性設定部
13:階調特性変換部
14:指示部
15:輝度変更部
16:階調特性書換部
17:解析部
100:表示システム
【手続補正書】
【提出日】2021-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部及び表示制御部を備える表示システムであって、
前記表示制御部は、階調特性変換部及び入力画像階調取得部を備え、
前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、
第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、
前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、
前記表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、入力画像データを画像として表示するように構成され、
前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含み、
前記入力画像階調取得部は、前記入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成され、
前記二つの階調値のうちの小さい方の階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、前記二つの階調値のうちの大きい方の階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように前記差分変更処理が実行される、
表示システム。
【請求項2】
前記拡大又は縮小の程度を指示する指示部を備え、
前記指示部は、前記拡大又は縮小の程度を連続的に変更可能に構成されるか、又は、前記拡大又は縮小の程度を指示した後、さらに所定の値を前記拡大又は縮小の程度として指示可能に構成され、
前記差分変更処理では、前記指示部により指示された前記拡大又は縮小の程度だけ第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記入力画像データの任意の二つの階調値は、前記入力画像データの最小階調値及び最大階調値である、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記指示部を操作する操作部を備え、
前記操作部に対する1アクションにより前記指示部を操作することによって、前記差分変更処理が実行される、
請求項2に記載の表示システム。
【請求項5】
第1階調特性を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された第1階調特性を、前記変換処理実行後に第2階調特性に書き換える階調特性書換部と、
を備える、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項6】
第1階調特性は、DICOM規格により定められる標準表示関数に関連付けられている、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項7】
前記表示部を備える表示装置を有し、
前記表示制御部は、前記表示装置の内部に設けられる、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項8】
前記表示システムは、第1表示部及び第2表示部を備え、
前記表示制御部は、第1表示部及び第2表示部に接続され、
第1表示部及び第2表示部は、第2階調特性に対応する輝度で、前記入力画像データを画像として表示するように構成される、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項9】
コンピュータを、階調特性変換部及び入力画像階調取得部として機能させるプログラムを有するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記階調特性変換部は、第1階調特性を第2階調特性に変換する変換処理を実行し、
第1階調特性は、各階調値間のJND対応値の差分が一定となる特性であり、
前記階調特性変換部は、第2階調特性により規定される各階調値間のJND対応値の差分が一定となるように前記変換処理を実行し、
第2階調特性に対応する輝度で入力画像データが画像として表示部に表示されるように構成され、
前記変換処理は、第1階調特性における各階調値間のJND対応値の差分を拡大又は縮小する差分変更処理を含み、
前記入力画像階調取得部は、前記入力画像データの任意の二つの階調値を取得するように構成され、
前記二つの階調値のうちの小さい方の階調値で第1階調特性に対応する最小輝度が設定され、前記二つの階調値のうちの大きい方の階調値で第1階調特性に対応する最大輝度が設定されるように前記差分変更処理が実行される、
コンピュータ読み取り可能な記録媒体。