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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031642
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】アンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220215BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K48/00
A61K45/00
A61K35/76
A61K9/14
A61K9/127
A61K9/51
A61P11/00
A61K47/30
A61K47/36
A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172664
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2019545867の分割
【原出願日】2017-10-16
(31)【優先権主張番号】10201609048R
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508305029
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】スルナ、ウッタム
(72)【発明者】
【氏名】ウィー、ケン ブン
(72)【発明者】
【氏名】リン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ビン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RNAのエクソンスキップを誘導することで、GLDCの活性を調節するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【解決手段】特定の配列を含み、GLDCのmRNA前駆体又は成熟mRNAのエクソンのスキップを誘導することによって、GLDCの発現を阻害して、細胞周期停止又はアポトーシスを誘導する、グリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)の活性を阻害するための単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドはGLDC RNAのエクソン、イントロン又はエクソン-イントロン境界の標的領域に特異的にハイブリダイズし、前記標的領域が、エクソン7、エクソン8、エクソン13、エクソン15、及びエクソン16からなる群より選択されるいずれか1つである、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号12、配列番号26、配列番号28、及び、配列番号52から選択されるいずれか1つの配列を含み、
GLDCのmRNA前駆体又は成熟mRNAのエクソンのスキップを誘導することによって、GLDCの発現を阻害して、細胞周期停止又はアポトーシスを誘導する、
グリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)の活性を阻害するための単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドはGLDC RNAのエクソン、イントロン又はエクソン-イントロン境界の標的領域に特異的にハイブリダイズし、前記標的領域が、エクソン7、エクソン8、エクソン13、エクソン15、及びエクソン16からなる群より選択されるいずれか1つである、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドが、活性、又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、GLDCの発現を阻害するか、又はその発現産物を改変する、請求項2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
GLDCのmRNA前駆体又は成熟mRNAの標的領域に特異的にハイブリダイズし、1種以上のRNA結合スプライシング調節因子に対して立体障害効果を発揮する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
立体障害によりmRNAの翻訳を妨げる、請求項4に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
修飾されたポリヌクレオチド骨格を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記修飾されたポリヌクレオチド骨格が、少なくとも1つのポリヌクレオチドの糖を置きかえた修飾部分を含む、請求項6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記修飾部分がホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ペプチド結合ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)、及び非ペプチドデンドリマーオクタグアニジン部分標識モルホリノオリゴマーからなる群より選択される、請求項7に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記修飾されたポリヌクレオチド骨格が少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記修飾ヌクレオチド間結合が修飾されたホスフェートを含む、請求項9に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記修飾されたホスフェートが、非架橋酸素原子を置換する硫黄原子、ホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、及びホスホロアミデートからなる群より選択される、請求項10に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
リボ核酸、デオキシリボ核酸、DNAホスホロチオエート、RNAホスホロチオエート、2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチド、2’-O-メチル-オリゴデオキシリボヌクレオチド、2’-O-ヒドロカルビルリボ核酸、2’-O-ヒドロカルビルDNA、2’-O-ヒドロカルビルRNAホスホロチオエート、2’-O-ヒドロカルビルDNAホスホロチオエート、2’-F-ホスホロチオエート、2’-F-ホスホジエステル、2’-メトキシエチルホスホロチオエート、2-メトキシエチルホスホジエステル、デオキシメチレン(メチルイミノ)(デオキシMMI)、2’-O-ヒドロカルビMMI、デオキシメチルホスホネート、2’-O-ヒドロカルビルメチルホスホネート、モルホリノ、4’-チオDNA、4’-チオRNA、ペプチド核酸、3’-アミデート、デオキシ3’-アミデート、2’-O-ヒドロカルビル3’-アミデート、ロックド核酸(Locked Nucleic Acids)、シクロヘキサン核酸、トリサイクルDNA、2’-フルオロ-アラビノ核酸、N3’-P5’ホスホロアミデート、カルバメート結合、ホスホトリエステル結合、及びナイロン骨格修飾からなる群より選択される一つ又は複数の修飾を有する骨格を含む、請求項1~請求項11に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、又は細胞への取り込みを増進する1つ以上のコンジュゲートに化学的に連結されている、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、活性、又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
GLDC発現癌患者の治療に使用するための、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記患者はさらなる抗癌剤又は治療を施される、請求項15に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
前記癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、卵巣癌、結腸癌、黒色腫、精巣癌、甲状腺癌、神経膠腫、カルチノイド腫瘍及び葉状腫瘍からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項15又は請求項16に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項19】
そのままで、又は送達剤と複合して、患者への非経口投与に適している、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記キャリアが、ナノ粒子、リポソーム、ウイルスベクター、カチオン性脂質、ポリマー、UsnRNA、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、経口、直腸、経粘膜、腸、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内に投与される、請求項18~請求項20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
組成物が、癌を有する患者における予後の分類又は決定を補助するための組成物、又は癌を有する患者のための治療戦略を選択するための組成物である、請求項18~請求項21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
癌を治療するための医薬の製造における、GLDCの活性を阻害する、請求項1~17のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項24】
前記オリゴヌクレオチドが、活性、又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記オリゴヌクレオチドが、GLDCの発現を阻害するか、又はGLDCの発現産物を改変する、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項23~請求項25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
癌を有する患者における予後の分類又は決定を補助するための方法、又は癌を有する患者のための治療戦略を選択するための方法であって、試料中のGLDCの核酸、タンパク質又は活性のレベルをex vivoで評価することを含み、
前記試料中のGLDCの核酸、タンパク質又は活性のレベルが上昇したレベルである場合、請求項1~請求項17のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むGLDC活性の阻害剤が、治療レジメンにおいて選択されることを含む方法。
【請求項28】
前記試料中のGLDCの核酸、タンパク質又は活性のレベルに関する情報を利用して治療レジメンを選択するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記試料が前記患者から得られ、前記試料が、癌が疑われるか、癌が発見された組織の試料であるか、又は前記組織に由来する細胞を含む、請求項27又は請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
GLDCmRNA前駆体のエクソンスキップをex vivoで誘導する方法であって、請求項1~請求項17のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド又は請求項18~請求項22のいずれか1項に記載の組成物をex vivoで細胞に送達することにより、GLDCmRNA前駆体のエクソンスキップをex vivoで誘導することを含む方法。
【請求項31】
前記細胞がヒト細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト細胞が癌細胞であり、前記癌が、血液悪性腫瘍、肺癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、精巣癌、喉頭癌、肝臓癌、子宮癌、結腸直腸癌、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、及び網膜芽細胞腫からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。特に、本発明は、RNAのエクソンスキップを誘導することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0002】
より詳細には、本出願は癌の領域に関し、特に、非小細胞肺癌(NSCLC)などのグリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)を過剰発現する癌、及びリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫)、神経膠芽腫、乳癌、前立腺癌、肺癌、及び結腸癌などの他の癌の領域に関する。GLDCタンパク質存在量の直接的かつ選択的な標的化(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)媒介エクソンスキップによる)は癌細胞の細胞周期停止及び/又はアポトーシスをもたらすことが、本明細書において示される。また、正常組織におけるGLDCの部分的枯渇(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)媒介エクソンスキップによる)が、有害作用を有さないという証拠も提供される。
【背景技術】
【0003】
GLDCはオキシドレダクターゼのファミリ-に属する酵素であり、特に、アクセプターとしてジスルフィドを有するドナーのCH-NH基に作用する酵素である。この酵素は、グリシン、セリン及びトレオニンの代謝に関与する。それは、補因子としてピリドキサ-ルホスフェートを使用する。GLDCは、全ての真核生物においてグリシンの分解を触媒するグリシン切断系を形成する4つのタンパク質のうちの1つである。ヒトにおける高レベルのグリシン又はグリシン蓄積は、グリシン脳症(glycine encephalopathy)として知られている。
【0004】
本明細書における明らかに先に公開された文献のリスト又は議論は、必ずしも、その文書が最新技術の一部であること、又は一般的な知識であることを確認するものと解釈されるべきではない。
【0005】
本明細書で言及される文書はいずれも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様においては、GLDCの活性を調節するための単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが提供される。
【0007】
好ましくは、調節という用語は、GLDCの活性;GLDCへのRNAスプライシング又は翻訳後プロセシング;GLDCのリン酸化;mRNA及び/又はmRNA前駆体の発現並びにタンパク質発現の両方を含む、GLDCの発現レベル;又はGLDCの細胞内局在化のうちの1つ以上の活性化、阻害、遅延、抑制又は干渉を指す。好ましくは本発明において、オリゴヌクレオチドは、活性;又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパクの質発現レベルのうち1つ以上を調節する。種々の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GLDCの発現を阻害するか、又はその発現産物を改変する。ある実施形態では、オリゴヌクレオチドがGLDCのmRNA前駆体又は成熟mRNAのエクソンのスキップを誘導することによって、細胞周期停止及び/又はアポトーシスを誘導して、GLDCの発現を阻害する。より詳細には、GLDC発現細胞におけるGLDCの発現をオリゴヌクレオチドが阻害する。
【0008】
好ましくは、オリゴヌクレオチドはGLDCmRNA前駆体又は成熟mRNAの標的領域に特異的にハイブリダイズする。本明細書中で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」は、ワトソン-クリックDNA相補性、フ-グステイン結合、又は当該分野で公知の他の配列特異的結合の規則に従って、水素結合による核酸の2つ又は3つの鎖の間の相互作用を意味する。ハイブリダイゼーションは、当該分野で公知の異なるストリンジェンシー条件下で実施され得る。
【0009】
より好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドが1つ以上のRNA結合スプライシング調節因子に対して立体障害効果を発揮する。例えば、ある実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、立体障害によってmRNAの翻訳を妨げる。
【0010】
好ましくはオリゴヌクレオチドがGLDC RNAのエクソン、イントロン又はエクソンイントロン境界である標的領域に特異的にハイブリダイズし、標的領域はエクソン2(配列番号95)、エクソン3(配列番号96)、エクソン6(配列番号97)、エクソン7(配列番号98)、エクソン8(配列番号99)、エクソン9(配列番号100)、エクソン10(配列番号101)、エクソン12(配列番号102)、エクソン13(配列番号103)、エクソン15(配列番号104)、エクソン16(配列番号105)、エクソン19(配列番号106)、エクソン20(配列番号107)、エクソン21(配列番号108)、イントロン6(配列番号109)、イントロン7(配列番号110)及びイントロン8(配列番号111)を含む群から選択される任意のものである。これらの配列を以下の表に示す。
【0011】

【0012】

【0013】

【0014】

【0015】
好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1~94のいずれか1つから選択される配列を含む。配列番号1~12を表1に示す。表1に示される配列に加えて、表2は、GLDC転写物においてエクソンスキップを誘導することもできるshAON(配列番号13~94)の代替配列を示す。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】

【0019】

【0020】

【0021】
本発明の種々の実施形態において、表1又は表2に示される各配列は、1つ以上のエクソン/イントロンを標的とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】GLDC標的エクソンの効率的かつ特異的なスキップをもたらすshAONの選択。GLDCを標的とする100nMのshAONを、Lipofectamin 2000を用いてA549細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの16~24時間後に細胞を回収し、全RNAを抽出し、cDNAに逆転写した。特異的標的エクソンのスキップの誘導におけるshAON効率を、標的エクソンをカバーする領域のPCR増幅、続いてPCR産物のデンシトメトリー分析によって決定した。shAON効率は、全アンプリコンに対してのエクソンスキップを有するアンプリコンの百分率として提示される。タンパク質合成及びRNA分解を防止するために、トランスフェクションの5時間後に、100μg/mlのシクロヘキシミドを培養培地に添加した。a)特異的エクソンスキップを示すPCR産物のアガロースゲル電気泳動の画像。b)各shAONによって誘導されたエクソンスキップ効率の計算値。c)バンドのDNA配列決定は、特定の標的エクソンのスキップを確認するためにアガロースゲル((a)に示される)から切り出されたスキップされた転写物に対応する。ここで[バンド1]に示される配列は配列番号112であり、[バンド2]に示される配列は配列番号113であり、[バンド3]に示される配列は配列番号114である。d)スキップされた転写物がNMDによって分解される程度を、上記と同じ条件下であるがシクロヘキシミドの非存在下でのshAONトランスフェクションによって推定した。2つの実験条件におけるスキップ効率の比較では、シクロヘキシミド処理試料においてスキップされた転写物の割合がより高く、シクロヘキシミドがスキップされた転写物をNMDから保護することが示されている。
図2】選択された3つのshAONは低用量で標的エクソンスキップを誘導し、GLDCタンパク質発現を阻害する。a)用量応答曲線。b)144時間までの異なる時点でのスキップ効率を示すタイムコース実験。c) ロード対照としてβ-アクチンを用いたGLDCタンパク質のウェスタンブロッティング。
図3】shAONは、A549細胞の生育/増殖及び腫瘍形成を阻害する。a)10nMでのshAONトランスフェクション後のA549細胞の増殖曲線。NCはスクランブルされたshAON、lipo onlyはLipofectamin 2000のみ。b)トランスフェクション後120時間でのA549細胞生存率に対する種々の濃度のshAONの効果。c)10nMのshAON7c、7D又は8Dでトランスフェクトした120時間後のA549、MRC5及びHLF細胞間の細胞生存率の比較。d)shAONでトランスフェクトしたA549細胞の軟寒天アッセイ。コロニー数をトランスフェクションの7日後に計数し、NCに対して正規化した。「*」は、結果がスクランブルされたAONコントロールと有意に異なる(p<0.01、スチューデントのt検定)ことを示す。
図4】shAONは肺腫瘍球細胞においてGLDCノックダウンを誘導し、細胞の生育/増殖及び腫瘍形成を阻害した。a)腫瘍球細胞におけるshAON誘導エクソンスキップ効率の用量応答曲線(デンシトメトリー分析により測定)。トランスフェクションの24時間後に細胞を回収した。shAONトランスフェクションの5時間後に100μg/mlのシクロヘキシミドを添加して、スキップされた転写物がNMDを受けるのを阻害した。b)ロード対照としてβ-アクチンを用いた腫瘍球細胞におけるGLDCタンパク質(200nM)のウェスタンブロッティング(トランスフェクションの72時間後)。c)トランスフェクションの72時間後に細胞生存率アッセイを用いて測定したshAON用量応答。d)150nMのshAONでトランスフェクトした腫瘍球細胞の増殖曲線。e)shAONでトランスフェクトした腫瘍球細胞の軟寒天アッセイ。コロニーの数を、トランスフェクションの7日後に計数し、そしてNC試料に対して正規化した。「*」は、結果がスクランブルされたAONコントロールと有意に異なる(p<0.01、スチューデントのt検定)ことを示す。
図5】GLDC shAONは、他のタイプの癌においてGLDCダウンレギュレーションを誘導するのに有効であり得る。a)異なる細胞系におけるGLDC発現のリアルタイムPCR測定。b)MLL細胞株においてGLDC shAON(100nM)で誘導されたエクソンスキップの効率(shAONトランスフェクションの5時間後に25μg/mlシクロヘキシミドを添加)。
図6】GLDC shAONは、免疫不全マウスにおいて皮下成長したヒト腫瘍異種移植片において、エクソンスキップを誘導し、腫瘍成長を阻害した。a)shAON 7D又はNC(スクランブル)のいずれかで処置したマウス(7~8マウス/処置群)由来の腫瘍質量を比較するドットプロット。25パーセンタイル及び75パーセンタイルを示すエラーバーと共に中央値を示す。7D処置マウス由来の腫瘍の中央値は、NC処置マウス由来よりも60%小さい;P値=0.000676(対応なしt試料検定)及び0.00391(対応なしWilcoxon順位和検定)。b)マウスから抽出した20個の腫瘍試料(スクランブル対照群12個、shAON 7D群8個)において、shAON 7Dによって誘導されたエクソン7のスキップをNCと比較したゲル電気泳動分析。RNA分解のために検出可能なPCR産物を有さない試料は、ゲル光に含まれない。
図7】shAON 7Dは、トランスフェクション剤(Lipofectamin)の非存在下で、エクソンスキップ、GLDCダウンレギュレーション及びTS32細胞増殖阻害を誘導することができた。shAON 7D(100nM)で誘導された、トランスフェクションの24時間後におけるリポフェクタミンの有無による(a)特異的エクソンスキップ及び(b)のGLDC転写物ダウンレギュレーションの比較。(c)トランスフェクションの72時間後のリポフェクタミンの非存在下でのTS32細胞増殖に対するshAON 7Dの効果。トランスフェクション剤(リポフェクタミン)の非存在下で、100nM濃度のshAON 7Dは、エクソン7スキップ、GLDCダウンレギュレーション、及びTS32細胞増殖阻害を、それぞれ55%、37%及び18%の効率で誘導することができた。shAON 7D濃度が200nMに増加すると、細胞増殖阻害は32%に増加した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、グリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)発現を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(shAON)の立体障害に関する。特に、このようなshAONは、非小細胞肺癌(NSCLC)及び他の癌のための薬物候補として使用され得る。GLDC mRNAのナンセンス変異依存分解を誘導するためのshAONの適用は、以前の研究では説明されていない。したがって、本発明は、NSCLC及び他の癌についてのGLDCに対する高度に有効な(IC50<10nM)薬物候補の群についての新規化学式を開発するために使用され得る。
【0024】
「オリゴヌクレオチド」は、任意のポリヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドからなるオリゴマーである。ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、それらの修飾形態、又はそれらの組み合わせから構成され得る。本明細書で使用される用語「ヌクレオチド」又はその複数形は、本明細書で論じられ、他の方法で当技術分野で知られている修飾形態と交換可能である。ある例において、当技術分野は、天然に存在するヌクレオチドのみならず重合され得るヌクレオチドの改変物をも包含する「核酸塩基」という用語を使用する。従って、ヌクレオチド又は核酸塩基は、天然の核酸塩基であるアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)ならびにキサンチン、ジアミノプリン、8-オキソ-N6メチルアデニン、7-デアザキサンチン、7-デアザグアニン、N4,N4-エタノシトシン、N’,N’-エタノ-2,6-ジアミノプリン、5-メチルシトシン(mC)、5-(C[3]C6)-アルキニル-シトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、シュ-ドイソシトシン、2-ヒドロキシ-5-メチル-4-トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシン、及び米国特許第5,432,272号及びSusan M. Freier and Karl-Heinz Altmann, 1997, Nucleic Acids Research, vol. 25: pp 4429-4443に記載の「非天然の」核酸塩基を意味する。用語「核酸塩基」はまた、既知のプリン及びピリミジン複素環だけでなく、その複素環アナログ及び互変異性体も含む。さらに、天然及び非天然の核酸塩基には、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,687,808号(Merigan et ah)、Chapter 15 by Sanghvi, Antisense Research and Application, Ed. S. T. Crooke and B. Lebleu, CRC Press, 1993, Englisch et ah, 1991, Angewandte Chemie, International Edition, 30: 613-722 (特に622頁及び623頁を参照)及びthe Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, J. I. Kroschwitz Ed., John Wiley & Sons, 1990, pages 858-859, Cook, Anti-Cancer Drug Design 1991, 6, 585-607に開示されているものが含まれる。種々の局面において、ポリヌクレオチドはまた、1つ以上の「ヌクレオシド塩基」又は「塩基単位」を含み、これは、最も古典的な意味ではヌクレオシド塩基ではないがヌクレオシド塩基として働く特定の「ユニバ-サル塩基」を含む、核酸塩基のように働き得る複素環化合物などの化合物を含む。ユニバ-サル塩基には、3-ニトロピロ-ル、任意で置換されているインド-ル(例えば、5-ニトロインド-ル)、及び任意で置換されているヒポキサンチンが含まれる。他の望ましいユニバ-サル塩基としては、ピロ-ル、及び当技術分野で公知のユニバ-サル塩基を含むジアゾ-ル誘導体又はトリアゾ-ル誘導体が挙げられる。
【0025】
ポリヌクレオチドはまた、修飾された核酸塩基を含み得る。「修飾塩基」は天然塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、及び/又はチミン)と対合することができ、かつ/又は天然に存在しない塩基と対合することができるものであることが当技術分野で理解される。例示的な修飾塩基はEP1072679及びWO97/12896に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。修飾核酸塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、-アデニン及びグアニンの6-メチル化体及び他のアルキル誘導体、-アデニン及びグアニンの2-プロピル化体及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、ならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュ-ドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオ-ル、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザアデニン及び7-デアザアデニン、並びに3-デアザアデニン及び3-デアザアデニンが含まれるが、限定されない。さらなる修飾塩基には、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)オン)などの三環ピリミジン、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、置換フェノキサジンシチジン(例えば9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)などのGクランプ、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)が含まれる。修飾塩基には、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環、例えば7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン及び2-ピリドンで置換されたものも含まれ得る。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990, Englisch et ah, 1991, Angewandte Chemie, International Edition, 30: 613, Sanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289- 302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993に開示されているものが含まれる。これらの塩基の特定のものは、ポリヌクレオチドの結合親和性を増加させるのに有用であり、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、及びN-2、N-6及び0-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含む)を含む。5-メチルシトシン置換は0.6~1.2℃で核酸二重鎖安定性を増加させることが示されており、特定の態様では、2’O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,687,808号、第4,845,205号、第5,130,302号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711 号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、第5,645,985号、第5,830,653号、第5,763,588号、第 6,005,096号、第5,750,692号及び第5,681,941号を参照されたい。
【0026】
当業者は、本開示のアンチセンスポリヌクレオチドを容易に設計し得る。例えば、当分野における一般的な教示には、それぞれ参照により本明細書に組み込まれるWee and Pramono et al, PLoS One 3:e1844 (2008); Pramono ZA et al, WO/2011/078,797; Pramono and Wee et al, Hum Gene Ther 23:781-790 (2012); Aartsma-Rus et al, Methods Mol Biol. 867: 117-29 (2012); Aartsma-Rus et al, Methods Mol Biol. 867: 97-116 (2012); van Roon-Mom et al., Methods Mol Biol. 867: 79-96 (2012)が含まれるが、これらに限定されない。一般的なガイドラインはまた、3つの連続したG又はCヌクレオチドを回避する試み、自己構造の形成に有利でない長さ及び配列を選択すること(ヘアピン化を回避する)、ならびにプライマー二量体を形成しそうな配列を回避することを含む。いくつかの実施形態において、本開示のアンチセンスポリヌクレオチドは、該アンチセンスポリヌクレオチドが完全にPRDM15核酸のエクソン内部にある配列に特異的にハイブリダイズするか、又は該アンチセンスポリヌクレオチドがPRDM15核酸に特異的にハイブリダイズしたときに該アンチセンスポリヌクレオチドの約1つのヌクレオチドが前記イントロン-エクソン境界にまたがる配列に特異的にハイブリダイズするように、エクソン又はイントロン-エクソン境界に特異的にハイブリダイズするように設計されたものである。アンチセンスポリヌクレオチドが完全にエクソン内部にある配列に特異的にハイブリダイズするいくつかの実施形態において、アンチセンスポリヌクレオチドの末端は、エクソンの末端から約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のヌクレオチド分離れていることが意図される。
【0027】
他の実施形態では、本開示のアンチセンスポリヌクレオチドは、アンチセンスポリヌクレオチドの約2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のヌクレオチドがイントロン-エクソン境界にまたがるように、GLDC核酸のイントロン-エクソン境界に特異的にハイブリダイズするように設計されたものである。ヌクレオチドが、エクソン側又はイントロン側のいずれかで「イントロン-エクソン境界にまたがる」ことができることが理解される。したがって、イントロン配列に特異的かつ主に(predominantly)ハイブリダイズし、隣接するエクソンにハイブリダイズするヌクレオチドが1つのみであるアンチセンスポリヌクレオチドは、1つのヌクレオチドだけ「イントロン-エクソン境界にまたがる」。同様に、エクソン配列に特異的にハイブリダイズし、隣接するイントロンにハイブリダイズするヌクレオチドが1つのみであるアンチセンスポリヌクレオチドは、1つのヌクレオチドだけ「イントロン-エクソン境界にまたがる」。前述の実施形態のいずれかにおいて、アンチセンスポリヌクレオチドは少なくとも約10ヌクレオチド長であり、約15、20、25、30、35、40、45、50又はそれ以上のヌクレオチド長までである。
【0028】
好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは修飾されたポリヌクレオチド骨格を含み得る。修飾ポリヌクレオチド骨格は、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの糖を置き換えた修飾部分を含んでもよい。
【0029】
修飾ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド中のヌクレオチド単位の1つ以上の糖及び/又は1つ以上のヌクレオチド間結合の両方がそれぞれ「天然に存在しない」糖(すなわち、リボース又はデオキシリボース以外の糖)又はヌクレオチド間結合で置換されたものについて使用されることが意図される。ある局面において、この実施形態は、ペプチド核酸(PNA)を意図する。PNA化合物において、ポリヌクレオチドの糖骨格はアミド含有(例えば、N-(2-アミノエチル)-グリシン単位間のペプチド結合)骨格に置き換えられている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,082号、第5,714,331号、及び第5,719,262号、ならびにNielsenら、Science,1991,254,14971500を参照されたい。修飾ポリヌクレオチドはまた、1つ以上の置換糖基を含み得る。ある局面では、糖の修飾は、2’位のヒドロキシル基が糖環の3’ 位又は4’ 位の炭素原子と繋げられて二環式糖基を形成しているロックド核酸(Locked Nucleic Acids, LNA)を含む。ある局面においてその結合は2’ 位の酸素原子と4’ 位の炭素原子とを架橋するメチレン(CH [2] -) [n]基であり、ここでnは1又は2である。LNA及びその調製はWO98/39352及びWO99/14226に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明において、好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは修飾ポリヌクレオチド骨格を含む。修飾ポリヌクレオチド骨格は、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの糖を置きかえた修飾部分を含みうる。修飾部分は、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ペプチド結合ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)、及び非ペプチドデンドリマーオクタグアニジン部分タグ付きモルホリノオリゴマーを含む群より選択され得る。
【0030】
様々な実施形態では、修飾ポリヌクレオチド骨格は少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む。修飾ヌクレオチド間結合は、修飾されたホスフェートを含む。より好ましくは、修飾されたホスフェートは、非架橋酸素原子を置換する硫黄原子、ホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、及びホスホロアミデートを含む群より選択されるいずれか1つを含む。
【0031】
本発明の種々の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、DNAホスホロチオエート、RNAホスホロチオエート、2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチド及び2’-O-メチル-オリゴデオキシリボヌクレオチド、2’-O-ヒドロカルビルリボ核酸、2’-O-ヒドロカルビルDNA、2’-O-ヒドロカルビルRNAホスホロチオエート、2’-O-ヒドロカルビルDNAホスホロチオエート、2’-F-ホスホロチオエート、2’-F-ホスホジエステル、2’-メトキシエチルホスホロチオエート、2-メトキシエチルホスホジエステル、デオキシメチレン(メチルイミノ)(デオキシMMI)、2’-O-ヒドロカルビルMMI、デオキシ-メチルホスホネート、2’-O-ヒドロカルビルメチルホスホネート、モルホリノ、4’-チオDNA、4’-チオRNA、ペプチド核酸、3’-アミデート、デオキシ3’-アミデート、2’-O-ヒドロカルビル3’-アミデート、ロックド核酸、シクロヘキサン核酸、三環DNA、2’フルオロアラビノ核酸、N3’-P5’ホスホロアミデート、カルバメート結合体、ホスホトリエステル結合体、ナイロン骨格修飾、及び前述の骨格の混合物からなる群より選択されるいずれか1つの骨格を含む。
【0032】
好ましくは、オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、又は細胞への取り込みを増強する1つ以上のコンジュゲートに化学的に連結されている。
【0033】
本開示の化合物はまた、遺伝的疾患の処置の目的で、予防又は治療として使用され得る。ある実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはGLDC発現癌患者の治療に使用することができる。患者には、さらなる抗癌剤又は治療剤を投与してもよい。癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、卵巣癌、血液悪性腫瘍、肺癌、前立腺癌、胃癌、精巣癌、喉頭癌、肝臓癌、子宮癌、結腸直腸癌、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、網膜芽細胞腫、甲状腺癌、及び神経膠腫、カルチノイド及び葉状腫瘍を含む群から選択されるいずれか1つである。血液悪性腫瘍は、リンパ腫又は白血病のいずれかである。特に、リンパ腫はB細胞リンパ腫である。より詳細には、B細胞リンパ腫は濾胞性リンパ腫又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0034】
本発明の別の態様では、本発明の第1の態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチドと、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。この組成物はそのままでも送達剤と複合した状態でも患者への非経口投与に適している。キャリアは、ポリマーナノ粒子などのナノ粒子;pH感受性リポソーム、抗体結合リポソームなどのリポソーム;ウイルスベクター、カチオン性脂質、ポリマー、U7 snRNAなどのUsnRNA、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、経口、又は直腸、又は経粘膜、又は腸、又は筋肉内、又は皮下、又は髄内、又は髄腔内、又は直接脳室内、又は静脈内、又は硝子体内、又は腹腔内、又は鼻腔内、又は眼内に投与される。
【0035】
医薬的に許容されるキャリアとは、一般に、キャリアが生物学的に有害でないか、又は望ましくない効果を引き起こさない、対象への投与に適した材料を指す。このようなキャリアは、典型的には薬剤の不活性成分である。典型的には、キャリアは、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれが含まれる医薬組成物の任意の他の成分と、有害な様式で相互作用することなく、活性成分と共に対象に投与される。適切な医薬キャリアはその全体が参照により本明細書に組み込まれるMartin, Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed, Mack Publishing Co, Easton, Pa, (1990)に記載されている。
【0036】
本開示のより具体的な形態においては、治療有効量のアンチセンスポリヌクレオチドを、医薬的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又はキャリアと共に含む医薬組成物が提供される。このような組成物としては種々の緩衝液含量(例えば、リン酸塩、Tris-HCl、酢酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤、ならびに、界面活性剤及び可溶化剤(例えば、Tween 80、Polysorbate 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)及び充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール)のような添加剤が挙げられる。この材料は例えば、限定されるものではないが、ポリ乳酸又はポリグリコール酸などのポリマー化合物の粒子状調製物に、又はリポソームに組み込むことができる。ヒアルロン酸を使用してもよい。このような組成物は、開示された組成物の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、及びインビボクリアランス速度に影響を及ぼし得る。組成物は、液体形態で調製されてもよく、又は凍結乾燥形態などの乾燥粉末であってもよい。
【0037】
本発明に従って提供される医薬組成物が当技術分野で知られている任意の手段によって投与することができることは理解されるであろう。好ましくは、投与のための医薬組成物は、注射、経口、又は肺もしくは鼻経路によって投与される。アンチセンスポリヌクレオチドは、種々の実施形態において、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、又は皮下の投与経路によって送達される。
【0038】
本発明のアンチセンス分子は任意の医薬的に許容される塩、エステル、もしくはエステルの塩、又は、ヒトを含む動物への投与の際に生物学的に活性な代謝産物又はその残基を(直接又は間接的に)提供することができる任意の他の化合物を包含する。したがって、例えば、本開示はまた、本発明の化合物のプロドラッグ及び医薬的に許容される塩、かかるプロドラッグの医薬的に許容される塩、並びに他の生物学的同等物にも関する。
【0039】
用語「医薬的に許容される塩」は本発明の化合物の生理学的及び医薬的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、それに望ましくない毒性効果を与えない塩を指す。
【0040】
ポリヌクレオチドについて、医薬的に許容される塩の好ましい例としては、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン(例えば、スペルミン及びスペルミジン)などのカチオンと形成される塩、(b)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸)と形成される酸付加塩、(c)有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸)と形成される塩、及び(d)元素(塩素、臭素、ヨウ素など)のアニオンから形成される塩、が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物は、局所又は全身治療が所望されるかどうか、及び治療されるべき領域に依存して、多くの方法で投与され得る。投与は局所的(眼及び直腸送達を含む粘膜を含む)、肺、例えば、粉末又はエアロゾルの吸入(ネブライザ-、気管内、鼻腔内、表皮及び経皮によるものを含む)、経口又は非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射又は注入;又は頭蓋内、例えば髄腔内又は脳室内投与が含まれる。少なくとも1つの2’-O-メトキシエチル修飾を有するポリヌクレオチドは、経口投与に特に有用であると考えられる。
【0041】
本開示の医薬製剤は、簡便には単位剤形で提示されてもよく、製薬業界で周知の従来技術に従って調製されてもよい。このような技術は、活性成分を医薬キャリア又は賦形剤と会合させる工程を含む。一般に、製剤は活性成分を液体キャリア又は細かく分割された固体キャリア又はその両方と均一に会合させ、次いで、必要であれば、製品を成形することによって調製される。
【0042】
追加の治療剤との併用療法もまた、本開示によって企図される。本開示の組成物と同時に送達され得る治療剤の例としてはグルココルチコイドステロイド(例えば、これらに限定されないが、プレドニゾン及びデフラザコート)、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、βアドレナリン受容体遮断薬、抗線維症剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明が例えば、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)を用いて、適切な宿主細胞中でのポリヌクレオチドの発現を指示するような、遺伝子治療において使用され得る。このようなベクターは例えば、宿主細胞中でポリヌクレオチドを増幅して有用な量を作製するために、及び組換え技術を使用してタンパク質を発現するために有用である。いくつかの実施形態では、ベクターが本発明のポリヌクレオチドが発現制御配列を含むポリヌクレオチドに作動可能に連結されている発現ベクターである。
【0044】
したがって、本発明のさらに別の態様は患者において癌を治療する方法を提供し、この方法は、本発明の第1の態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬的有効量の組成物を投与することを含む。キャリアは、ポリマーナノ粒子などのナノ粒子、pH感受性リポソームや抗体結合リポソームなどのリポソーム、ウイルスベクター、カチオン性脂質、ポリマー、U7 snRNAなどのUsnRNA、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択される。
【0045】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又は組成物は、経口、又は直腸、又は経粘膜、又は腸、又は筋肉内、又は皮下、又は髄内、又は髄腔内、又は直接脳室内、又は静脈内、又は硝子体内、又は腹腔内、又は鼻腔内、又は眼内に投与することができる。これまでのところ、実績のある全身投与の選択肢には、静脈内、腹腔内、鼻腔内及びくも膜下腔内が含まれる。ASOと、ナノ粒子やポリマー又はリポソームを基とするビヒクルなどの送達キャリアと複合体化することで、特定の組織へのASOの送達効率をさらに増大しうる。
【0046】
癌は、血液悪性腫瘍、肺癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、精巣癌、喉頭癌、肝臓癌、子宮癌、結腸直腸癌、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、及び網膜芽細胞腫を含む群から選択される任意の1つであり得る。
【0047】
ある実施形態では、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0048】
本発明のなお別の局面において、癌を処置するための薬剤の製造におけるGLDCの活性を調節するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用が提供される。オリゴヌクレオチドは、活性又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する。ある実施形態では、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0049】
本発明の別の局面において、癌を有する患者における予後の分類又は決定を補助するための、又は癌を有する患者のための治療戦略を選択するための方法が提供され、この方法は、試料中のGLDC核酸、タンパク質又は活性のレベルを評価することを包含する。この方法は、試料中のGLDC核酸、タンパク質又は活性のレベルに関する情報を利用して、治療レジメンを選択する工程を包含する。様々な実施形態では試料は患者から得られ、試料は癌が疑われるか、癌が発見された組織試料であるか、又は前記組織由来の細胞を含む。試料中のGLDC核酸、タンパク質又は活性のレベルが上昇したレベルである場合、選択された治療レジメンは、GLDC活性の阻害剤又はGLDCのmRNA前駆体、mRNA及びタンパク質の発現レベルの調節剤で患者を治療することを含む。様々な実施形態では、阻害剤又は調節剤が本発明の第1の態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0050】
本発明の別の態様では、GLDCmRNA前駆体のエクソンスキップを誘導する方法であって、本発明の第1の態様によるアンチセンスポリヌクレオチド、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を細胞に送達し、それによってGLDCmRNA前駆体のエクソンスキップを誘導することを含む方法が提供される。
【0051】
好ましくは、エクソン2、エクソン3、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン12、エクソン13、エクソン15、エクソン16、エクソン19、エクソン20、又はエクソン21がスキップされる。
【0052】
様々な実施形態では、細胞はヒト細胞であってよい。該ヒト細胞は癌細胞であり、該癌は、NSCLC、血液悪性腫瘍、肺癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、精巣癌、喉頭癌、肝臓癌、子宮癌、結腸直腸癌、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、及び網膜芽細胞腫を含む群から選択されるいずれか1つである。
【0053】
本発明の別の態様では、本発明の第1の態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、任意で容器、及び添付文書、パッケージラベル、取扱説明書、又は他のラベルを含むキットが提供される。
【0054】
有利であることに、本発明は、GLDC mRNAのエクソンスキップを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド、及びGLDC発現癌の治療のための前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0055】
当業者は、上記方法の適用が多くの他の疾患の治療における使用に適切なアンチセンス分子を同定するための広範な適用を有することを理解するであろう。
【0056】
本発明を完全に理解し、容易に実用的に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施形態のみを非限定的な例により説明するが、その説明は添付の例示的な図面を参照している。
【実施例0057】
実施例1
本稿では、NSCLC(非小細胞肺癌)の治療戦略として、GLDC(グリシンデカルボキシラ-ゼ)mRNAをそれぞれ分解する12個の新規shAON(立体障害アンチセンスオリゴヌクレオチド)を同定した(添付の図1)。GLDCは、NSCLCからの腫瘍開始細胞において高度に発現され、細胞形質転換及び腫瘍形成を促進する(Zhang et al. Cell 2012; Jain et al. Science 2012);触媒能力が不活性なGLDCは、細胞形質転換を促進することができない。shAONは、すべての塩基がホスホロチオエート骨格によって結合した2’-O-メチルで修飾されている化学修飾合成一本鎖RNA分子である。各shAONは、新生したばかりのGLDC mRNAに特異的部位で相補的に結合するように設計され、エクソン認識及びそのスプライシングに重要なRNA結合スプライシングレギュレーターに対して立体障害効果を発揮する。機構的としては、成熟RNAにおいて多数の下流の未成熟終止コドンを生成する特異的なフレーム外エクソン(out-of-frame exon)の排除をshAONが誘導すると、得られるmRNAがナンセンス変異依存分解プロセスを介して分解の標的とされるというものである。
【0058】
本発明者らはヒト癌細胞株及び患者の原発性癌細胞についてのさらなるインビトロバリデ-ションのために、3つの最も効率的なshAONを選択する。癌細胞株において、各shAONは、GLDC mRNAにおける特異的エクソンスキップ及びその後のGLDCタンパク質発現の抑制をIC50<10nMで誘導し(図2)、癌細胞増殖の70%超を阻害する(図3)。原発性癌細胞において、shAONは、肺腫瘍球細胞の生育/増殖及び腫瘍形成を阻害する(図4)。さらに、shAONは、急性白血病細胞株におけるGLDCのダウンレギュレーションに有効である(図5)。本発明者らはさらに、NSCLC患者由来の肺腫瘍球細胞を移植したマウスにおけるインビボ研究のための1つのshAONを選択する。移植マウスにshAONを腹腔内注射によって計画的に投与すると、ヒト腫瘍増殖の60%が阻害された(図6)。
【0059】
本発明を以下により詳細に説明する。
【0060】
材料及び方法
細胞株培養
ヒト肺腺癌上皮細胞株A549を、10%FBS、2mML-グルタミン、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM培地中で維持した。正常ヒト胎児肺線維芽細胞MRC-5細胞及びヒト成人肺線維芽細胞HLF細胞を、10%FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM培地中で維持した。
【0061】
腫瘍球培養
腫瘍球TS32細胞を、以前に記載されたように調製し(Zhang, WC; et al., 2012)、無処理シャーレ中において、0.4%BSA(Sigma)、20ng/mlEGF、4ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)(Invitrogen)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充したITS(Sigma)含有DMEM/F12培地中で維持した。新鮮な培地を3日毎に補充した。細胞をAccutase(EMD-Millipore)で分割して、単一細胞懸濁液を得た。
【0062】
shAONの設計・合成
shAONは、我々の特許された計算方法を用いて設計され、Sigma-Aldrich Pte Ltd(シンガポール)によって2’-O-メチルで修飾されたホスホロチオエート骨格(2OMePS)を伴い合成された。スクランブルされたシーケンスを有するshAONが全ての実験に含まれた。
【0063】
shAONによる細胞トランスフェクション
全ての細胞/細胞株についての細胞トランスフェクションの間のトランスフェクション培地として、抗生物質(すなわち、ペニシリン-ストレプトマイシン)を含まない増殖培地を使用した。
【0064】
A549細胞を、1mLのトランスフェクション培地を含む6ウェルプレートに1.0~1.5×10細胞/ウェルで播種し、一晩インキュベートした。細胞が約40%コンフルエンスに達し、培養培地をトランスフェクション前に900μLに減少させた。shAON (100pmol中):リポフェクタミン2000(μL中)=1:2の固定比を有する様々な濃度の10×トランスフェクション混合物を、Opti-MEM培地(Invitrogen)中で100μLの総容量に調製し、室温で20分間インキュベートし、細胞培養物に添加した。
【0065】
TS32細胞を、900μLのトランスフェクション培地を含む24ウェルプレートに、1.0~1.5×10細胞/mlの密度で播種した。様々な量のshAON及び固定量のリポフェクタミン2000(5μL)を含む10×トランスフェクション混合物を、Opti-MEM培地中で100μLの総容量に調製し、室温で20分間インキュベートし、細胞培養物に添加した。再現性を確実にするために、トランスフェクションは、通常、2連又は3連で行った。
【0066】
shAON誘導エクソンスキップ効率の測定のために、シクロヘキシミド(Sigma)をトランスフェクションの5時間後に細胞培地に添加(100μg/ml)して、タンパク質合成及びRNA分解を停止させた。
【0067】
shAONで誘導されたエクソンスキップの効率とmRNAダウンレギュレーションの定量
shAONによるトランスフェクションの24時間後、細胞を回収し、Qiagen RNeasy Mini Kitを用いて全RNAを抽出し、DNase(AmbionTurbo DNA-Freeキット)で処理してコンタミDNAを除去し、ランダムヘキサマーと共にSuperScript(商標)III Reverse Transcriptase(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って使用してcDNAに転写した。
【0068】
shAON誘導エクソンスキップの効率の測定のために、標的エクソン及び両側の少なくとも1つの隣接エクソンをカバーする領域を増幅するプライマーを用いてPCR反応を行った。次いで、PCR産物を、アガロースゲル電気泳動及びDNA配列決定によって確認し、特異的標的エクソンのスキップを確認した。エクソンスキップ効率は、全産物に対する標的エクソンスキップ産物の量を計算することによってゲル画像のデンシトメトリー分析を行い推定した。密度測定分析は、ImageJソフトウェア(Rasband, WS, ImageJ, U.S. National Institutes of Health, Bethesda, MD, 米国)を用いて行った。
【0069】
標的エクソン中及び標的エクソンの外側のプライマーを用いて定量的リアルタイムPCR(qPCR)を行い、対応する試料中の内因性参照としてGADPHを用いて、スキップ効率の計算のために、スクランブル配列を用いて同じ濃度のshAONでトランスフェクトした細胞と比較して、全長GLDC転写物の量を測定した。
【0070】
細胞生存率アッセイ
チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ(Sigma)又はCellTiter-Blue細胞生存アッセイ(Promega)を用いて、96ウェルプレート(100μL培地/ウェル中3.5×10細胞)中で細胞生存率及び増殖の計測を行った。96ウェルプレートにおいて細胞をshAONとリポフェクタミン2000との混合物でトランスフェクトした。MTTアッセイ(接着細胞に使用)では、培地を、MTT(0.5mg/ml)を含むDMEM培地(100μL/ウェル)で置換し、37℃で4時間インキュベートし、次いで100μLのイソプロパノールに交換した。波長570nmのマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて630nmでバックグラウンドを差し引いて吸光度を測定し、生細胞数に対する吸光度の較正曲線を用いて生細胞数に変換した。CellTiter-Blue細胞生存率アッセイ(懸濁細胞の場合)では、Cell-Titer Blue試薬を添加し(11μL/ウェル)、37℃で4時間インキュベートした。励起570nM及び発光600nmのマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて蛍光を測定した。再現性を確実にするために、アッセイを少なくとも2回行い、トランスフェクションを各実験において3連のウェルで行った。
【0071】
軟寒天アッセイ
shAONトランスフェクションの24時間後、細胞を回収し、DMEM培地中の0.4%のノーブル寒天に再懸濁し、固化した底層(DMEM培地中の0.6%の貴寒天)を含む96ウェルプレート上にプレーティング(5×10細胞/ウェル)した。各ウェルを100μLの増殖培地で覆い、標準培養条件下で1週間インキュベートした。細胞をCellTiter Blueで染色し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いてコロニー計数を行った。
【0072】
ウエスタンブロッティング(濃度・会社のダブルチェックの必要性)
Haltプロテア-ゼ阻害剤カクテルを含有するM-PER溶解緩衝液を用い、4℃で10分間穏やかに振盪することで、細胞からタンパク質を抽出した。細胞残屑を、最高速度(12,000g?)で20分間、4℃で遠心分離することによって除去し、上清のタンパク質濃度を、BioRad protein assayを使用して、製造業者の指示に従って測定した。製造業者の説明書に従って調製した8%Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Bio-rad)に、各試料からの16μgのタンパク質をロードし、次いで、Bio-radニトロセルロースメンブレンに移した。PBST中の5%乳で1時間ブロッキングした後、メンブレンを3%乳/PBST中のウサギ抗ヒトGLDCポリクローナル抗体(1:2000)と共に4℃で一晩インキュベートし、続いて、3%乳/PBST中の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(1:4000)と共に室温で3時間インキュベ-トした。ウェスタンブロッティングのためのロード対照としてβ-アクチンを使用し、第1及び第2の抗体としてマウス抗ヒトβ-アクチン抗体(1:1000)及び西洋ワサビペルオキシダ-ゼ結合抗マウスIgG(1:4000)をそれぞれ使用した。Supersignal West Pico化学発光基質(Thermo Scientific)を用いたECLシステムによって可視化した。
【0073】
マウス異種移植実験
4~6週齢のNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJマウスに、無血清培地及びMatrigel(BD)(1:1)中の腫瘍球の単細胞懸濁液を皮下移植した(500,000細胞/マウス)。shAON50mg/kgを週3回腹腔内投与した。6週間の注射後にマウスを屠殺し、腫瘍を抽出し、秤量した。Micro Smash MS-100(4500rpmで3×45秒)中の0.5mmガラスビーズ(Sigma-Aldrich)を用いた細胞を破壊した後、Qiagen RNeasy Mini Kit及びM-PER溶解緩衝液をそれぞれ使用して、全RNA及びタンパク質を腫瘍試料から抽出した。
【0074】
結果
GLDC標的エクソンの効率的かつ特異的なスキップにつながるshAONの選択
GLDC転写物中の25個のエクソンのうち、5個のフレーム外エクソン(エクソン7、8、13、15及び16)を、shAONを設計するための我々の標的として選択した。各々が個々にスキップされるとき、得られる転写物は標的エクソンの下流にシフトしたリーディングフレームを有し、スキップされた転写物中に複数のPTCを生成する。結果として、標的遺伝子は、転写物が活発に分解されるナンセンス変異依存分解(NMD)経路の組み合わせを介してダウンレギュレートされるか、又は、切り縮められた非機能的遺伝子産物の翻訳を導くかのいずれかである。著者らが以前に開発し、検証した計算法を用いて、20個のshAON(4個のshAON/エクソン)を設計した。スクランブルされた配列を有する1つのshAONを、ネガティブコントロールとして全ての実験に含めた。これらのshAONは安定性及び配列特異性を増加させるために、ホスホロチオエート骨格及び2’-O-メチルリボース修飾(2OMePS)を有するものとして合成した。
【0075】
本発明者らは、A549ヒト肺腺癌上皮細胞をトランスフェクトすることによって、GLDC転写物の特異的エクソンスキップを誘導する設計されたshAONの能力を試験し(図1)、100nMのshAONを用いて、トランスフェクションの24時間後のA549細胞においてGLDC標的エクソンスキップを誘導する際のスキップ効率の計算値に基づいて、最良のshAONを選択した。20個の設計されたshAONのうち12個は、標的エクソンのスキップを誘導することができた。表1では12個の有効なshAONの式を表示している。全体として、エクソン7及びエクソン8を標的とするshAONは、標的エクソンスキップを誘導するのにより効率的であった。3つのshAON(7D、7C、及び8D)は、GLDC転写物の80%以上において標的エクソンのスキップを誘導することができたので選択した。
【0076】
【表3】

【0077】
GLDC shAONは低用量で標的エクソンのスキップを誘導し、GLDCタンパク質発現を阻害した
A549細胞における特異的エクソンスキップの誘導に対する3つの選択されたshAONの時間及び用量応答効果を、続けてデンシトメトリー分析を行うPCRによって評価した。図2aに示されるように、3つのshAONの全ては、3.5~7nMの範囲のIC50という低用量で特異的エクソンスキップを誘導し得る。10nMのshAONを用いた時間経過実験によると(図2b)、エクソンスキップの誘導に対するそれらの効果は時間と共に減少したが、トランスフェクションの72時間後にも依然としてGLDC転写物の40%超においてスキップを誘導することができた。
【0078】
本発明者らはA549細胞におけるGLDC mRNA転写物のダウンレギュレートにおける3つの選択されたshAONの効果を測定するために、定量的リアルタイムPCR(qPCR)を行った。qPCR分析では、スクランブルされたshAONでトランスフェクトされた細胞と比較したところ、10nMのGLDC shAONでのトランスフェクションでは、24時間後に70%超のGLDC全長転写物のダウンレギュレーションが示された。トランスフェクションの72時間後、3つのshAONの各々は依然として40%超のダウンレギュレーションを誘導し得、これはデンシトメトリーからの結果と一致する。
【0079】
ウェスタンブロッティング分析を行って、タンパク質レベルでのGLDC発現に対する選択したshAONの効果を調べた(図2c)。10nM又は20nMの選択されたshAONによるトランスフェクションの72時間後に、ほぼ完全な枯渇に至るタンパク質レベルの低下が存在した。
【0080】
GLDC shAONはA549細胞増殖及び腫瘍形成を阻害する
肺癌細胞は高レベルのGLDCに依存することが見出されている(Zhang WC, et al, Cell. 2012 Jan 20;148(1-2):259-72)。shAONは細胞にトランスフェクトされた場合、GLDCの効果的なノックダウンを誘導し得るので、本発明者らは癌細胞の増殖及び増殖に対するそれらの効果を試験した。A549細胞生存率を、種々の濃度の選択されたshAONでのトランスフェクションの0、24、48、72及び120時間後にMTTアッセイを用いて測定し、未処理細胞、リポフェクタミン2000又はスクランブルされたshAONでトランスフェクトされた細胞を含むいくつかのネガティブコントロールと比較した。shAON誘導GLDCノックダウンは、トランスフェクション後120時間まで細胞増殖を阻害するようであった(図3a及び図3b)。細胞増殖の阻害は5nMのshAONによる35%阻害から、30nMのshAONによるほぼ100%阻害まで増加した。図3cに示すように、10nMのshAONでトランスフェクトした場合、2つの非癌細胞、HLF及びMRC-5の増殖は阻害されないようであったが、A549細胞では細胞増殖の約70%が阻害された。
【0081】
次に、shAONトランスフェクトA549細胞を、典型的には腫瘍形成性と相関する足場固定非依存性増殖の尺度である軟寒天中コロニー形成能力について調べた。トランスフェクションの7日後、3つのGLDC shAONで処理した細胞は、スクランブルされたshAONで処理した細胞と比較して、軟寒天中で70~92%少ないコロニーを生じ、これはshAON誘導GLDCノックダウンが癌細胞腫瘍形成性を大きく阻害したことを示す。
【0082】
shAONは肺腫瘍球細胞においてGLDCノックダウンを誘導し、細胞の生育/増殖及び腫瘍形成を阻害した
癌幹細胞(CSC)又は腫瘍開始細胞(TIC)は腫瘍増殖を駆動及び持続する能力を有し、インビトロ培養で増殖させた場合、球体形成によって単離及び濃縮(enrich)され得る。そのため、本発明者らは、腫瘍開始細胞について高度に濃縮された腫瘍球細胞の増殖に影響を及ぼすことにおけるGLDC shAONの効果を試験した。図4aに示すように、GLDC shAONはGLDC転写物中の特異的標的エクソンのスキップを効果的に誘導することができ、スキップ効率は51~93%の範囲であり、IC50は65nM~220nMの範囲である(図4a)。ウェスタンブロッティングを用いて測定したタンパク質レベルでは、GLDCタンパク質発現も効果的に阻害された(図4b)。腫瘍球細胞における効果的なエクソンスキップ及びGLDCノックダウンを誘導するためには、A549細胞におけるよりも多量のshAONが必要であった。
【0083】
CellTiter Blueアッセイを用いて測定したところ、GLDC shAON処理細胞の増殖/増殖は、スクランブルされたshAONで処理した腫瘍球細胞と比較して、57~75%阻害された。軟寒天アッセイではまた、GLDC shAON処理細胞によって形成されたコロニー数が、スクランブルされたshAON処理細胞によって形成されたコロニー数の61~73%減少したことが示された。
【0084】
GLDC shAONは、他の種類の癌においてGLDCダウンレギュレーションを誘導するのに有効であり得る
GLDCの過剰発現は、非小細胞肺癌において見出されたばかりでなく、他のタイプの癌においても報告された(Zhang WC, 2012)。我々はqPCRを用いて2つのMLL白血病細胞株におけるGLDC発現を評価し、GLDCがそれらの両方において過剰発現され、一方、非癌細胞のGLDCの発現は約600倍少ないことを確認した(図5a)。そのため、本発明者らは、GLDC shAONがこれらの2つのMLL細胞株において有効であり得るかどうかを試験した。図5bに示されるように、GLDC shAONは両方のMLL細胞株においてGLDC転写物の50%超において特定のエクソンのスキップを誘導し、本発明者らの設計したshAONが他のタイプの癌にも有効であり得ることを示した。
【0085】
GLDC shAONは移植腫瘍の増殖を阻害した
in vivo実験におけるshAON 7Dの効果を試験するために、免疫不全マウスに腫瘍球細胞を移植し、続いてshAON 7Dの腹腔内注射を行った。図6に示されるように、7D及びNC処置マウス由来の腫瘍は、それぞれ0.325g及び0.820gの中央値、すなわち腫瘍増殖の60%阻害と計量された(P値=0.000676(対応なしt試料検定)及び0.00391(対応なしWilcoxon順位和検定))。腫瘍試料20点(対照群からの12点及びshAON 7D群からの8点)のRNA分析では、7D処置がすべての処置された腫瘍試料においてGLDCエクソン7又はエクソン7及び8(軽度)のスキップを引き起こしたが、NC処置された腫瘍試料においてGLDCエクソンスキップはほとんど観察されなかったことが示された。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、設計又は構造の詳細に多くの変形又は修正を行うことができることを理解するであろう。
本発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
グリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)の活性を調節するための単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<2>
前記オリゴヌクレオチドが、活性、又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する、<1>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<3>前記オリゴヌクレオチドが、GLDCの発現を阻害するか、又はその発現産物を改変する、<2>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<4>
細胞周期停止又はアポトーシスを誘導するために、GLDCのmRNA前駆体又は成熟mRNAのエクソンのスキップを誘導することによって、GLDCの発現を阻害する、<3>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<5>
GLDCのmRNA前駆体又は成熟mRNAの標的領域に特異的にハイブリダイズし、1種以上のRNA結合スプライシング調節因子に対して立体障害効果を発揮する、<1>~<4>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<6>
立体障害によりmRNAの翻訳を妨げる、<5>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<7>
GLDC RNAのエクソン、イントロン又はエクソン-イントロン境界の標的領域に特異的にハイブリダイズし、前記標的領域が、エクソン2、エクソン3、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン12、エクソン13、エクソン15、エクソン16、エクソン19、エクソン20、エクソン21、イントロン6、イントロン7、及びイントロン8からなる群より選択されるいずれか1つである、<1>~<6>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<8>
配列番号1~配列番号94から選択されるいずれか1つの配列を含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<9>
修飾されたポリヌクレオチド骨格を含む、<1>~<8>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<10>
前記修飾されたポリヌクレオチド骨格が、少なくとも1つのポリヌクレオチドの糖を置きかえた修飾部分を含む、<9>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<11>
前記修飾部分がホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ペプチド結合ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)、及び非ペプチドデンドリマーオクタグアニジン部分標識モルホリノオリゴマーからなる群より選択される、<10>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<12>
前記修飾されたポリヌクレオチド骨格が少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む、<9>~<11>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<13>
前記修飾ヌクレオチド間結合が修飾されたホスフェートを含む、<12>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<14>
前記修飾されたホスフェートが、非架橋酸素原子を置換する硫黄原子、ホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート、及びホスホロアミデートからなる群より選択される、<13>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<15>
リボ核酸、デオキシリボ核酸、DNAホスホロチオエート、RNAホスホロチオエート、2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチド、2’-O-メチル-オリゴデオキシリボヌクレオチド、2’-O-ヒドロカルビルリボ核酸、2’-O-ヒドロカルビルDNA、2’-O-ヒドロカルビルRNAホスホロチオエート、2’-O-ヒドロカルビルDNAホスホロチオエート、2’-F-ホスホロチオエート、2’-F-ホスホジエステル、2’-メトキシエチルホスホロチオエート、2-メトキシエチルホスホジエステル、デオキシメチレン(メチルイミノ)(デオキシMMI)、2’-O-ヒドロカルビMMI、デオキシメチルホスホネート、2’-O-ヒドロカルビルメチルホスホネート、モルホリノ、4’-チオDNA、4’-チオRNA、ペプチド核酸、3’-アミデート、デオキシ3’-アミデート、2’-O-ヒドロカルビル3’-アミデート、ロックド核酸(Locked Nucleic Acids)、シクロヘキサン核酸、トリサイクルDNA、2’-フルオロ-アラビノ核酸、N3’-P5’ホスホロアミデート、カルバメート結合、ホスホトリエステル結合、ナイロン骨格修飾、及び前述の骨格の混合物からなる群より選択される骨格を含む、<1>~<14>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<16>
アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、又は細胞への取り込みを増進する1つ以上のコンジュゲートに化学的に連結されている、<1>~<15>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<17>
前記オリゴヌクレオチドが、活性、又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する、<1>~<16>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<18>
GLDC発現癌患者の治療に使用するための、<1>~<17>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<19>
前記患者はさらなる抗癌剤又は治療を施される、<18>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<20>
前記癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、卵巣癌、結腸癌、黒色腫、精巣癌、甲状腺癌、神経膠腫、カルチノイド腫瘍及び葉状腫瘍からなる群より選択されるいずれか1つである、<18>又は<19>に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
<21>
<1>~<20>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
<22>
そのままで、又は送達剤と複合して、患者への非経口投与に適している、<21に患者の組成物。
<23>
前記キャリアが、ポリマーナノ粒子などのナノ粒子;pH感受性リポソーム、抗体結合リポソームなどのリポソーム;ウイルスベクター、カチオン性脂質、ポリマー、U7 snRNAなどのUsnRNA、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択される、<22>に記載の組成物。
<24>
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、経口、直腸、経粘膜、腸、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内に投与される、<21>~<23>のいずれか1項に記載の組成物。
<25>
<1>~<20>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、又は医薬的有効量の<21>~<24>のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、患者における癌を治療する方法。
<26>
キャリアが、ポリマーナノ粒子などのナノ粒子;pH感受性リポソーム、抗体結合リポソームなどのリポソーム;ウイルスベクター、カチオン性脂質、ポリマー、U7 snRNAなどのUsnRNA、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択される、<25>に記載の方法。
<27>
前記アンチセンスオリゴヌクレオチド又は前記組成物が、経口、直腸、経粘膜、腸、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内に投与される、<25>又は<26>に記載の方法。
<28>
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、<25>~<27>のいずれか1項に記載の方法。
<29>
癌を治療するための医薬の製造における、GLDCの活性を調節するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
<30>
前記オリゴヌクレオチドが、活性、又はmRNA前駆体、成熟mRNA及びタンパク質の発現レベルのうち1つ以上を調節する、<29>に記載の使用。
<31>
前記オリゴヌクレオチドが、GLDCの発現を阻害するか、又はGLDCの発現産物を改変する、<30>に記載の使用。
<32>
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、<29>~<31>のいずれか1項に記載の使用。
<33>
癌を有する患者における予後の分類又は決定を補助するための方法、又は癌を有する患者のための治療戦略を選択するための方法であって、試料中のGLDCの核酸、タンパク質又は活性のレベルを評価することを含む方法。
<34>
前記試料中のGLDCの核酸、タンパク質又は活性のレベルに関する情報を利用して治療レジメンを選択するステップをさらに含む、<33>に記載の方法。
<35>
前記試料が前記患者から得られ、前記試料が、癌が疑われるか、癌が発見された組織の試料であるか、又は前記組織に由来する細胞を含む、<33>又は<34>のいずれか1項に記載の方法。
<36>
前記試料中のGLDCの核酸、タンパク質又は活性のレベルが上昇したレベルである場合、選択される前記治療レジメンが、GLDC活性の阻害剤又はGLDCのmRNA前駆体、mRNA及びタンパク質の発現レベルの調節剤で患者を処置することを含む、<33>~<35>のいずれか1項に記載の方法。
<37>
前記阻害剤又は前記調節剤が、<1>~<20>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、<36>に記載の方法。
<38>
GLDCmRNA前駆体のエクソンスキップを誘導する方法であって、<1>~<20>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド>又は<21>~<24>のいずれか1項に記載の組成物を細胞に送達することにより、GLDCmRNA前駆体のエクソンスキップを誘導することを含む方法。
<39>
エクソン2、エクソン3、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン12、エクソン13、エクソン15、エクソン16、エクソン19、エクソン20、又はエクソン21のいずれか1つがスキップされる、<38>に記載の方法。
<40>
前記細胞がヒト細胞である、<38>又は<39>のいずれか1項に記載の方法。
<41>
前記ヒト細胞が癌細胞であり、前記癌が、血液悪性腫瘍、肺癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、精巣癌、喉頭癌、肝臓癌、子宮癌、結腸直腸癌、黒色腫、神経膠芽腫、肉腫、及び網膜芽細胞腫からなる群より選択されるいずれか1つである、<40>に記載の方法。
<42>
<1>~<20>のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、任意で容器中に、添付文書、パッケージラベル、説明書又は他のラベルを含むキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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