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特開2022-31643IL23アンタゴニストに対する臨床応答の予測因子としてのCCL20
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031643
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】IL23アンタゴニストに対する臨床応答の予測因子としてのCCL20
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220215BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220215BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220215BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P1/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P9/00
A61P11/00
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/14
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P31/20
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/08
A61P43/00 111
G01N33/53 P
C07K16/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172872
(22)【出願日】2021-10-22
(62)【分割の表示】P 2018532465の分割
【原出願日】2016-12-16
(31)【優先権主張番号】62/271,156
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルガンタス,ロバート・ダブリュー,ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】モアハウス,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ヒッグス,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ラーナデー,カウストゥバ
(72)【発明者】
【氏名】シュトライヒャー,ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】リース,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】リャン,メイナ
(72)【発明者】
【氏名】ファッジョーニ,ラファエラ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワインシテイン,インナ
(72)【発明者】
【氏名】リー,イェン-ワー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】ガッサー,ロバート・エイ,ジュニア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法の提供。
【解決手段】IL23アンタゴニストを患者に、前記患者が(i)所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、投与することを含む、患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、IL23アンタゴニストを患者に、前記患者が(i)所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
IL23媒介疾患を有する患者を処置する方法であって、患者へのIL23アンタゴニストの前記投与を、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、保留するまたは開始しないことを含む、前記方法。
【請求項3】
患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、前記患者が抗TNF剤を用いた処置に対して失敗、非応答性または不耐性であり、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、IL23アンタゴニストを前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
IL23媒介疾患を有する患者を、IL-23アンタゴニストを用いて処置するか否かを決定する方法であって、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、前記患者を処置すると決定することを含む、前記方法。
【請求項5】
IL23媒介疾患を有すると診断された患者を、IL23アンタゴニストを用いた処置のための候補として選択する方法であって、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、前記患者を処置のために選択することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記患者から得られた前記試料のうちの1つもしくは複数におけるCCL20のレベルを測定することまたは前記試料中のCCL20のレベルを測定するように臨床検査室もしくは医療提供者に指示すること及び/または前記試料中のCCL20のレベルを測定するために前記患者から得られた前記1つもしくは複数の試料を臨床検査室もしくは医療提供者に提出することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者から得られた前記1つまたは複数の試料中のCCL20のレベルを決定することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
医療提供者に、
(i)前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、前記試料のうちの1つまたは複数において低いまたは低減したレベルのCCL20を有すると決定される場合に、IL23アンタゴニストを前記患者に投与するように、
あるいは
(ii)前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、前記試料のうちの1つまたは複数において高
いまたは増加したレベルのCCL20を有すると決定される場合に、IL23アンタゴニストの前記患者への前記投与を保留するまたは否定するように、
助言することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記IL23アンタゴニストが、抗IL23抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、グセルクマブ、BI-655066、チルドラキヌマブ(tildrakinumab)、LY-3074828、またはその抗原結合断片を含む、請求項9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、(i)配列番号7を含むもしくはこれからなる可変領域(VH)及び/または配列番号8を含むもしくはこれからなる軽鎖可変領域(VL)、あるいは(ii)配列番号45を含むもしくはこれからなる可変領域(VH)及び/または配列番号46を含むもしくはこれからなる軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、配列番号33~38または配列番号47~52から選択される少なくとも1つの相補性決定領域を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、固定用量で投与される、請求項12または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記固定用量が、10~1000mg/用量である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固定用量が、約210mg/用量または約700mg/用量である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、前記IL23媒介疾患または障害の処置のための1つまたは複数の追加の治療を用いて、IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくは抗原結合断片の投与の前、最中、後または代わりに処置されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者から採取した前記1つもしくは複数の試料及び/または前記1つもしくは複数の対照試料が、全血、血清、血漿、唾液、痰、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、胸膜液、心膜液、腹水、滑液、上皮細胞、尿、便、皮膚、組織生検、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の対照試料が、(i)正常な健常個体から得られた試料(1つまたは複数)、(ii)非IL23媒介疾患を有する患者から得られた試料(1つまたは複数)、または(iii)それらの組み合わせである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者のCCL20のレベルが、イムノアッセイにおいて測定される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
IL22、LCN2、IL17F、IL17A/F、IL23R、IL12B、IL6、IL21、TNF、CCR6、CCL22、IL1R1、IFN-γ、S100A12、DEFB-2、DEFB-4、IL1、SERPINB3、PI3/エラフィン、LL37、RORγ、RORγT、IL26、S100A7、DEFB103B、及びGM-CSFからなる群より選択される1つまたは複数のIL23経路バイオマーカーのレベルを決定することをさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
CCL20の前記所定の閾値レベルが、
(a)CCL20の約平均レベル、
(b)CCL20の約中央値レベル、及び
(c)表6に記載するCCL20の約1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、または9番目の十分位数ベースラインレベル、
からなる群より選択され、これは、イムノアッセイを使用して、複数の正常な健常患者、非IL23媒介疾患を有する患者、及び/またはIL23媒介疾患を有する患者からの血清において測定される、請求項1~21のいずれか一項いずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記IL23媒介疾患または障害が、肺疾患、炎症性腸疾患、慢性炎症性皮膚疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、感染、または癌である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記IL23媒介疾患または障害が、喘息、IPF、COPD、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、セリアック病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、湿疹、乾癬、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節炎、関節リウマチ(RA)、リウマチ障害、ANCA血管炎、ベーチェット病、自己免疫性甲状腺炎、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群(SS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、アルツハイマー病、マイコバクテリア疾患、リーシュマニア症、真菌感染、ウイルス感染、胃癌、結腸直腸癌、食道癌、白血病、B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌、乳癌、肺癌、及び上咽頭癌からなる群より選択される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記炎症性腸疾患が、クローン病、UCまたはセリアック病である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、CRP≧5mg/Lのレベル及び/またはFCP≧250μg/gのレベル、FCP≧200μg/gのレベル、FCP≧150μg/gのレベル、FCP≧100μg/gのレベル、もしくは少なくとも約100μg/g~少なくとも約250μg/gのFCPレベルを、前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記所定のCCL20閾値レベルが、イムノアッセイを使用して測定して、少なくとも約12pg/mL~少なくとも約55pg/mLである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記所定のCCL20閾値レベルが、イムノアッセイを使用して測定して、約22.6pg/mLである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくはその抗原結合断片の投与が
、前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片の最初の投与後に、少なくとも100点のクローン病活動指数(CDAI)応答スコア減少及び/または150点未満への総CDAIスコアの減少をもたらす、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも100点のCDAI応答スコア減少または150点未満への総CDAIスコアの減少が、前記IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくはその抗原結合断片の最初の投与後、1、2、4、8、12、16または24週間以内またはそれ以降に生じる、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2015年12月22日に出願された米国仮特許出願第62/271,156号に対する優先権を主張し、当該仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子提出された配列表に対する参照
電子提出された配列表の内容は、ASCIIテキストファイル(名称:50315PCT_SequenceListing.txt、サイズ:72,947バイト、作製日:2016年12月16日)であり、本出願と共に出願され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその断片を含む)を用いた処置に好適であるIL23媒介疾患または障害を有する患者の集団を階層化する及び/または特定するためのケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド20(CCL20)サイトカインの発現レベルの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン(IL)-23は、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、及び強直性脊椎炎を含むがこれらに限定されない様々な炎症性状態の病理発生に関係する炎症促進性サイトカインである。IL23は、T細胞が、IL17A、IL17A受容体、TNF-α、及びGM-CSFを含むいくつかの炎症性遺伝子を発現するように誘導する。IL23の主な公知の作用は、TヘルパーTh17細胞、ならびにマクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、及び自然リンパ球の分化を誘発して、IL17、IL22、TNFα、GMCSF、及びIFN-γの上方制御、ならびにIL10の下方制御をもたらすものである。
【0005】
インターロイキン(IL)-23は、2つのサブユニットであるp40及びp19からなるヘテロ二量体サイトカインである。p40サブユニットは、IL12及びIL23により共通のサブユニットとして共有され、IL12/23の阻害剤、例えば、ウステキヌマブ/STELARA(登録商標)(Janssen Biotech,Inc,Horsham,PA)及びブリアキヌマブ/ABT-874(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)により標的とされる。
【0006】
患者における研究により、IL23が、クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)の細胞及び標的組織において上方制御され、一方でIL12はそうでないことが実証されている(Schmidt et al.Inflamm Bowel Dis.11(1):16-23(2005))。同様の観察所見が、多発性硬化症を有する患者(MS;Vaknin et al.J of Immunol.176:7768 74(2006))、乾癬を有する患者(Lee et al J Exp Med 199:125-30(2004))、及びMSを有する患者からの活動性病変(Li et al.Brain.130(2):490-501(2007))からの樹状細胞において報告されている。IL23は、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎(AS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び視神経脊髄炎を含む他の疾患においても上昇する。CD及び乾癬(PsO)患者における全ゲノム関連性解析により、固有のIL23受容体成分(IL23R)及び疾患における多型間の有意な関連が示された(Cargill et al.
Am J of Human Gen.80:273-90(2007);Duerr et al.Science 314:1461-63(2006))。さらには、IL23Rの対立遺伝子変異型は、UC(Cargill et al.Am.J.Hum.Gen.80:273-90(2007))、RA(Farago et al.Ann.Rheum.Dis.67:248-50(2008))、AS(Burton et
al.Nature Gen.39:1329-37(2007))、及びMS(Illes et al.Neuro Letters.431:36-38(2008))の頻度と有意な相関を示している。それゆえ、IL23及びその受容体は両方とも、薬物開発のための非常に魅力的な標的である。
【0007】
炎症性腸疾患(IBD)(Ahern et al.Immun Rev.226:147-59(2008))、PsO炎症性関節炎(Yago et al.Arthritis Res and Ther.9:R96(2007))、及びMS(Cua et al.Nature 421:744-48(2003)の前臨床モデルでは、抗IL12/23p40抗体の有益な作用が、IL12を残したままIL23のみの遮断を通して再現されている。臨床では、抗IL12/23p40抗体(例えば、ウステキヌマブ及びブリアキヌマブ)は、CD(第2相試験、Toedter et al.Am J Gastroenterol.104(11):2768-73(2009);Sandborn et al.Gastroenterol.135:1130-41(2008);Mannon et al.N Eng J of Med.351(20):2069-79(2004))及びPsO(第2及び3相試験、Gordon et al.J.Invest.Dermatol.132:304-314(2012);Kimball et al.Br J Dermatol.167(Suppl.1):64(Abstract P94)(2012);Langley et al.J Am Acad Dermatol.66:AB195(Abstract 4779)(2012);Gottlieb et al.Br.J.Dermatol.165:652-660(2011);Reich et al.N Engl J Med.365:1586-1596(2011);Strober et al.Br J Dermatol.165:661-668(2011);Leonardi et al.Lancet.371(9625):1665-74(2008);Papp et al.Lancet.371(9625):1675-84(2008))において臨床応答を誘導すると示されている。PsOを有する被験者における抗IL23抗体MEDI2070(NCT01094093)及びCNTO 1959を用いた第1相臨床試験(Sofen et al.Drugs Dermatol.10(8):885-92(2011))は、IL12及びIL23を標的とする抗体に匹敵する臨床有効性を実証しており、これは、抗IL12/23p40抗体の治療効果がIL23単独の中和に起因する可能性を示している(Papp et al.Efficacy and Safety of
Different Dose Regimens of a Selective IL-23p19 Inhibitor(BI 655066)Compared with Ustekinumab in Patients with Moderate-to-Severe Plaque Psoriasis with and without Psoriatic Arthritis[abstract].In:2015 ACR/ARHP Annual Meeting.Abstract nr 2144)。
【0008】
IL23経路の異なる要素を標的とするいくつかの薬剤が、現在承認されているまたは開発中であるが、IL23媒介疾患の罹患率、合併症及び内因的異質性は、新しい治療法及び/またはIL23アンタゴニストを用いた処置に好適な患者の特定の集団を特定するための改善された方法を必要とし続けている。例えば、Gaffe et al.Nature Revs.Immunol.14:585-600(2014)を参照されたい
【発明の概要】
【0009】
本開示は、患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、IL23アンタゴニストを患者に、患者が(i)所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、投与することを含む、前記方法を提供する。IL23媒介疾患を有する患者を処置する方法であって、患者へのIL23アンタゴニストの投与を、患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20を患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、保留するまたは開始しないことを含む、前記方法も提供する。
【0010】
患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、患者が抗TNF剤を用いた処置に対して失敗、非応答性または不耐性であり、患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定されている場合に、IL23アンタゴニストを患者に投与することを含む、前記方法も提供する。
【0011】
本開示は、IL23媒介疾患を有する患者を、IL-23アンタゴニストを用いて処置するか否かを決定する方法であって、患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定されている場合に、患者を処置すると決定することを含む、前記方法も提供する。IL23媒介疾患を有すると診断された患者を、IL23アンタゴニストを用いた処置のための候補として選択する方法であって、患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定されている場合に、患者を処置のために選択することを含む、前記方法も提供する。
【0012】
いくつかの態様では、上に開示する方法は、患者から得られた試料のうちの1つもしくは複数におけるCCL20のレベルを測定することまたは試料中のCCL20のレベルを測定するように臨床検査室もしくは医療提供者に指示すること及び/または試料中のCCL20のレベルを測定するために患者から得られた1つまたは複数の試料を臨床検査室もしくは医療提供者に提出することをさらに含む。いくつかの態様では、上に開示する方法は、患者から得られた1つまたは複数の試料中のCCL20のレベルを決定することをさらに含む。いくつかの態様では、上に開示する方法は、医療提供者に、
(i)患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、試料のうちの1つまたは複数において低いまたは低減したレベルのCCL20を有すると決定されている場合に、IL23アンタゴニストを患者に投与するように
あるいは
(ii)患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、試料のうちの1つまたは複数において高いまたは増加したレベルのCCL20を有すると決定されている場合に、IL23アンタゴニストの患者への投与を保留するまたは否定するように、
助言することをさらに含む。
【0013】
いくつかの態様では、第二の試料は、IL23アンタゴニストの投与後、1、2、4、8、12、もしくは28週間、または間の時に採取される。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、抗IL23抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に結合する。
【0014】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、グセルクマブ、BI-655066、チルドラキヌマブ、LY-3074828、またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号7を含むもしくはこれからなる可変領域(VH)及び/または配列番号8を含むもしくはこれからなる軽鎖可変領域(VL)、あるいは(ii)配列番号45を含むもしくはこれからなる可変領域(VH)及び/または配列番号46を含むもしくはこれからなる軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号33~38または配列番号47~52から選択される少なくとも1つの相補性決定領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、固定用量で投与される。いくつかの態様では、固定用量は、10~1000mg/用量である。いくつかの態様では、固定用量は、約210mg/用量または約700mg/用量である。
【0015】
いくつかの態様では、患者は、IL23媒介疾患または障害の処置のための1つまたは複数の追加の治療を用いて、IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくは抗原結合断片の投与の前、最中、後または代わりに処置されている。いくつかの態様では、患者から採取した1つもしくは複数の試料及び/または1つもしくは複数の対照試料は、全血、血清、血漿、唾液、痰、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、胸膜液、心膜液、腹水、滑液、上皮細胞、尿、便、皮膚、組織生検、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数である。
【0016】
いくつかの態様では、1つまたは複数の対照試料は、(i)正常な健常個体から得られた試料(1つまたは複数)、(ii)非IL23媒介疾患を有する患者から得られた試料(1つまたは複数)、または(iii)それらの組み合わせである。いくつかの態様では、患者のCCL20のレベルは、イムノアッセイにおいて測定される。
【0017】
いくつかの態様では、上に開示する方法は、IL22、LCN2、IL17F、IL17A/F、IL23R、IL12B、IL6、IL21、TNF、CCR6、CCL22、IL1R1、IFN-γ、S100A12、DEFB-2、DEFB-4、IL1、SERPINB3、PI3/エラフィン、LL37、RORγ、RORγT、IL26、S100A7、DEFB103B、及びGM-CSFからなる群より選択される1つまたは複数のIL23経路バイオマーカーのレベルを決定することをさらに含む。いくつかの態様では、CCL20の所定の閾値レベルは、
(a)CCL20の約平均レベル、
(b)CCL20の約中央値レベル、及び
(c)表6に記載するCCL20の約1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、または9番目の十分位数ベースラインレベル、
からなる群より選択され、これは、イムノアッセイを使用して、複数の正常な健常患者、非IL23媒介疾患を有する患者、及び/またはIL23媒介疾患を有する患者からの血清において測定される。
【0018】
いくつかの態様では、IL23媒介疾患または障害は、肺疾患、炎症性腸疾患、慢性炎症性皮膚疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、感染、または癌である。いくつかの態様では、IL23媒介疾患または障害は、喘息、IPF、COPD.クローン病
、潰瘍性大腸炎(UC)、セリアック病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、湿疹、乾癬、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節炎、関節リウマチ(RA)、リウマチ障害、ANCA血管炎、ベーチェット病、自己免疫性甲状腺炎、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群(SS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、アルツハイマー病、マイコバクテリア疾患、リーシュマニア症、真菌感染、ウイルス感染、胃癌、結腸直腸癌、食道癌、白血病、B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌、乳癌、肺癌、及び上咽頭癌からなる群より選択される。いくつかの態様では、炎症性腸疾患は、クローン病、UCまたはセリアック病である。
【0019】
いくつかの態様では、患者は、CRP≧5mg/Lのレベル及び/またはFCP≧250μg/gのレベル、FCP≧200μg/gのレベル、FCP≧150μg/gのレベル、FCP≧100μg/gのレベル、もしくは少なくとも約100μg/g~少なくとも約250μg/gのFCPレベルを、患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定されている。いくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、イムノアッセイを使用して測定して、少なくとも約5pg/mL~少なくとも約55pg/mLである。いくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、イムノアッセイを使用して測定して、約22.6pg/mLである。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくはその抗原結合断片の投与は、抗IL23抗体またはその抗原結合断片の最初の投与後に、少なくとも100点のクローン病活動指数(CDAI)応答スコア減少及び/または150点未満への総CDAIスコアの減少をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも100点のCDAI応答スコア減少または150点未満への総CDAIスコアの減少は、IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくはその抗原結合断片の最初の投与後、1、2、4、8、12、16または24週間以内またはそれ以降に生じる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第24週までの患者内訳を示す。本チャートは、中程度または重度のCDを有する患者においてMEDI2070を評価する第2a相試験(clinicaltrials.gov識別番号:NCT01714726)にて登録及び無作為化された患者の数及び内訳をまとめる。mITT:修正治療企図解析(ITT解析)(Modified Intent-to-Treat)集団、PP:パープロトコル、OL:非盲検。
図2A】CDAI臨床効果、CDAI寛解、及びCR100により示される、修正治療企図解析(ITT解析)集団における第8週での臨床有効性を示す。第8週でのCDAI臨床効果率(150未満のCDAIスコアまたはCDAIスコアにおけるベースラインからの少なくとも100点の減少として定義される)は、MEDI2070群においてプラセボ群と比べて有意に高かった(それぞれ、49.2%対26.7%、P=0.01)。CDAI寛解(150未満のCDAIスコアとして定義される)率は、MEDI2070で27.1%及びプラセボで15.0%であった(P=0.10)。CR100率(少なくとも100点CDAIスコア減少として定義される)は、それぞれMEDI2070及びプラセボ群において45.8%及び25.0%であった(P=0.02)。
図2B】複合評価項目により示される、修正治療企図解析(ITT解析)集団における8週目での臨床有効性を示す。MEDI2070を受けている患者は有意に高い割合で、CDAI効果及びFCPまたはCRPにおけるベースラインに対する50%減少(P<0.001)、ならびにCDAI寛解及びFCPまたはCRPにおけるベースラインに対する50%減少の複合評価項目を達成した(P=0.02)。CDAI:クローン病活動指数、CI:信頼区間、CRP:C反応性蛋白、FCP:便中カルプロテクチン、p:p値。
図3A】クローン病活動指数効果率(ベースラインから第24週まで)により示される、ノンレスポンダー補完を使用した非盲検集団における第24週までの様々な評価時点での有効性を示す。非盲検期間の試料サイズ:プラセボ/MEDI2070群(n=52)、MEDI2070群(n=52)。
図3B】クローン病活動指数寛解率(ベースラインから第24週まで)により示される、ノンレスポンダー補完を使用した非盲検集団における第24週までの様々な評価時点での有効性を示す。非盲検期間の試料サイズ:プラセボ/MEDI2070群(n=52)、MEDI2070群(n=52)。
図4】ベースラインCCL20レベル毎の経時的なCDAI-100応答を有する患者の割合(%)を示す。CCL20低:ベースラインCCL20<22.6pg/mL、CCL20高:ベースラインCCL20≧22.6pg/mL。CI:信頼区間。試験集団にわたるCCL20濃度中央値:22.6pg/mL。22.6pg/mL未満のベースライン血清CCL20レベルを有する患者は、プラセボと比較して第8週で統計学的に有意に増加したCDAI-100応答を有した。
図5】ベースラインIL22レベル毎の経時的なCDAI-100応答を有する患者の割合(%)を示す。IL22低:ベースラインIL22<15.6pg/mL、IL22高:ベースラインIL22≧15.6pg/mL。CI:信頼区間。試験集団にわたるIL22濃度中央値:15.6pg/mL。116人の患者が、評価可能なベースラインIL22値を有した。15.6pg/mL以上のベースライン血清IL22レベルを有する患者は、プラセボと比較して第8週で統計学的に有意に増加したCDAI-100応答を有した。
図6】ベースラインLCN2レベル毎の経時的なCDAI-100応答を有する患者の割合(%)を示す。LCN2低:ベースラインLCN2<215ng/mL、LCN2高:ベースラインLCN2≧215ng/mL。CI:信頼区間。試験集団にわたるLCN2濃度中央値:215ng/mL。215ng/mL以上のベースライン血清LCN2レベルを有する患者は、プラセボと比較して第8週で統計学的に有意に増加したCDAI-100応答を有した。
図7】(十分位数毎に)ベースラインCCL20、IL22またはLCN2レベルの関数として第8週で150未満のCDAIスコアまたはCDAIスコアにおける100超の減少を達成している被験者の割合(%)間の差異により測定した、プラセボと比較してMEDI2070を用いて処置した被験者間の差次的臨床応答率を示す。図7~9のそれぞれにおける試験集団にわたるCCL20、IL22またはLCN2のベースライン値のセットに関しては、各分布を10レベルつまり十分位数へと分割し、それにより11被分析物カットオフのそれぞれ(図7~9にて「分位値」と記す)が、試験集団を、総試験集団の10%少ない群へと漸進的に分類する。例えば、十分位数の4番目(0.4分位値として示す)にて、総試験集団の40%が特定の被分析物レベル未満であるベースラインCCL20、IL22またはLCN2血清レベルを有し、一方で、総試験集団の60%が特定の被分析物レベル以上のベースラインCCL20、IL22またはLCN2血清レベルを有した。
図8】(十分位数毎に)ベースラインCCL20、IL22またはLCN2レベルの関数として第8週でCDAIスコアにおいて100点改善を達成している被験者の割合(%)間の差異により測定した、プラセボと比較してMEDI2070を用いて処置した被験者間の差次的臨床応答率を示す。
図9】(十分位数毎に)ベースラインCCL20、IL22またはLCN2レベルの関数として第8週でMEDI2070及びプラセボを用いて処置した被験者間の、150未満のCDAIスコアまたはCDAIスコアにおける100超の減少を達成している、かつベースラインFCPまたはCRPと比較してFCPまたはCRPのいずれかで50%超減少も達成している被験者の割合(%)間の差異により測定した、プラセボと比較してMEDI2070を用いて処置された被験者間の差次的臨床応答率を示す。臨床応答率は、MEDI2070処置被験者について観察された割合とプラセボを用いて処置された被験者について観察された割合の間のデルタすなわち差異として報告する(「応答率差」)。図7~9に示すように、漸増的に高くなるレベルのベースラインIL22またはLCN2を有する、MEDI2070を用いて処置されたCD患者は、プラセボと比較してより高い臨床応答率を達成し(3つの異なる臨床応答尺度を使用して測定)、これは、MEDI2070が、高いベースラインIL22またはLCN2血清レベルを有する患者において第8週でより良好な臨床応答を誘導したことを示す。高レベルのIL22またはLCN2を有する被験者(例えば、5番目、6番目または7番目の十分位数(0.5、0.6または0.7分位値)でのIL22またはLCN2レベルを有する被験者を含む)は、IL22またはLCN2低被験者(例えば、1番目または2番目の十分位数(0.1または0.2分位値)でのIL22またはLCN2レベルを有する被験者を含む)と比較してプラセボからのより大きな臨床応答差異を有した(3つの異なる臨床応答尺度のいずれが使用されたかにかかわらない)。漸増的に低くなるレベルのベースラインCCL20を有する、MEDI2070を用いて処置されたCD患者は、プラセボと比較してより高い臨床応答率を達成し(3つの異なる臨床応答尺度を使用して測定)、これは、MEDI2070が、低いベースラインCCL20血清レベルを有する患者において第8週でより良好な臨床応答を誘導したことを示す。低レベルのCCL20を有する被験者(例えば、1番目または2番目の十分位数(0.1または0.2分位値)でのCCL20レベルを有する被験者を含む)は、CCL20高被験者(例えば、7番目または8番目の十分位数(0.7または0.8分位値)でのCCL20レベルを有する被験者を含む)と比較してプラセボからのより大きな臨床応答差異を有した(3つの異なる臨床応答尺度のいずれが使用されたかにかかわらない)。これらの結果は、MEDI2070を用いた処置に応答性である患者の特定において、高いまたは上昇したIL22及び/またはLCN2血清レベル、ならびに低いまたは低減したCCL20血清レベルの予測値を強調する。図7~9に記載する十分位数のそれぞれに対応するベースラインCCL20、IL22またはLCN2血清レベルの概要は、実施例4に提供する(表4(IL22)、表5(LCN2)または表6(CCL20)を参照されたい)。
図10】図示するように様々な分子を4~10週間にわたって投与して処置された患者に関する差次的臨床応答率(処置及びプラセボ間のCDAI-100応答を達成した被験者の割合(%)における差異として定義する(「プラセボに対するCDAI応答デルタ」))(y軸)及び差次的臨床寛解率(処置及びプラセボ間の150点を下回る総CDAIスコアを達成した被験者の割合(%)における差異として定義する(「プラセボに対するCDAI寛解デルタ」))(x軸)を比較する。ベースラインCRP≧5mg/L(n=85)、ベースラインIL-22≧11.3pg/mL(n=81)、ベースラインIL-22≧15.6pg/mL(n=58)、またはベースラインIL-22≧11.3pg/mL+CRP≧5mg/L(n=62)(実施例3に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定)を有した8週間にわたってMEDI2070を用いて処置された患者は、増加したCDAI-100応答率及び/またはCDAI寛解率を有した。ベースラインCRP≧5mg/L、ベースラインIL-22≧11.3pg/mL、ベースラインIL-22≧15.6pg/mL、またはベースラインIL-22≧11.3pg/mL+CRP≧5mg/L(実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定)を有した8週間にわたってMEDI2070を用いて処置された患者のCDAI-100応答率及びCDAI寛解率は両方とも、CD患者を処置するための現在承認されているまたは開発中である他の分子に関して報告されたCDAI-100応答率及び/またはCDAI寛解率よりも大きかった。この他の分子には、ウステキヌマブ(Sandborn et al.,N Engl J Med.2012 Oct 18;367(16):1519-28の図1に報告される6週間または8週間の6mg/kg用量を用いた処置後.)、ベドリズマブ(Sands et.al.,Gastroenterology.2014 Sep;147(3):618-627の図3に報告される6週間または10週間の処置後)、またはアダリムマブ(Sandborn et.al,Ann Intern Med.2007;146:829-838に報告されるインフリキシマブに対して二次的な失敗である患者における4週間の処置後)が含まれる。第2a相試験におけるMEDI2070を用いて処置した全患者に関する全体的な臨床応答及び臨床寛解率は、バイオマーカー状態にかかわらず(mITT(n=119))、現在承認されているまたは開発中である他の分子の応答率と同様であった。mITT、修正治療企図解析(ITT解析)集団。表6は、図10にプロットしたMEDI2070処置下位群のそれぞれに関するCDAI-100応答率差及びCDAI寛解率差をまとめる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、インターロイキン23(IL23)媒介疾患に罹患しており、例えば、IL12及びIL23のp40サブユニット(例えば、ウステキヌマブにより標的とされる)、またはIL23のp19サブユニット(例えば、チルドラキヌマブ、グセルクマブ、MEDI2070、BI-655066、及びLY-3074828により標的とされる)を標的とするIL23アンタゴニストを用いて処置される患者における臨床転帰を予測するための、ケモカイン(CCモチーフ)リガンド20(CCL20)の、単独または1つもしくは複数のバイオマーカー、例えば、インターロイキン-22(IL22)、リポカリン-2(LCN2)、C反応性蛋白(CRP)、もしくは便中カルプロテクチン(FCP)と組み合わせた使用に関する。
【0022】
本明細書に開示の方法に従ってCCL20と組み合わせてバイオマーカーとして使用することができるIL23経路における遺伝子またはタンパク質には、例えば、インターロイキン-22(IL22)、リポカリン-2(LCN2)、IL23R、IL12B、IL6、IL21、TNF、CCR6、CCL22、IL1R1、IFNガンマ、S100カルシウム結合タンパク質A12(S100A12)、ディフェンシンB2(DEFB-2、DEFB-4)、インターロイキン-1ベータ(IL1β)、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害剤メンバー3(SERPINB3)、ペプチダーゼ阻害剤3(PI3)/エラフィン、ヒトカテリシジン(LL37)、レチノイド関連オーファン受容体-γ(RORγ及びRORγT)、インターロイキン-26(IL26)、ソライアシン(psoriasin)(S100A7)、ディフェンシンベータ103B(DEFB103B)、またはGM-CSFが含まれる。Haider et al.J.Immunol.180:1913-1920(2008);Nakae et al.J.Leukocyte Biol.81:1258-1268(2007);Guttman-Yassky et al.J Immunol.181(10):7420-7427(2008);El-Behi Nature Immunol.12:568-75(2011)、Wilson,et al.,Nature Immunology 8:950-7(2007)を参照されたく、この全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本開示は、例えば、CCL20の発現レベルを単独で、または1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、及びFCPを含む、の発現レベルと組み合わせて、決定することに基づいて、IL23媒介疾患を処置、予防及び/もしくは改善する、臨床転帰を予測する、処置のために患者を選択する、またはIL23が媒介する特定の疾患もしくは障害に罹患している患者の集団を階層化するための方法を提供する。従って、一態様では、本開示は、適切な一連の処置を決定するためにIL23媒介疾患を有する被験者から得た試料中のCCL20の発現レベルを単独で、または1つもしくは複数のバイオマーカー(例えば、IL22のレベル、LCN2のレベル、FCPのレベル、レベルもしくはCRP、またはそれらの組み合わせ)と組み合わせて決定することを含む方法を提供する。
【0024】
CDは、最も一般的には遠位回腸及び結腸に影響を及ぼし、胃腸(GI)管のいずれの部分にも生じ得る、原因不明の慢性貫壁性炎症疾患である。CDを有する患者は、腸粘膜に直接的または付随的損傷を引き起こす制御されない炎症を有する。現在の主要な仮説は、遺伝的に素因がある個体において、この炎症が、腸バリア機能の障害による炎症性刺激の持続、または調節不全の炎症性応答のいずれかから生じる可能性があるというものであ
る(Sandborn et al.Gastroenterol.135:1130-41(2008);Rutgeerts et al.Aliment Pharmacol Ther.17(12):1435-50(2003))。CDは最も一般的には15歳から35歳の間で生じるが、どの年齢の患者も罹患する可能性がある。
【0025】
一般に使用される医薬治療には、アミノサリチル酸、(スルファサラジン及びメサラミンを含む)、全身性コルチコステロイド、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン及びメトトレキサート);抗菌剤;及び生物学的薬剤、例えば、アダリムマブ/HUMIRA(登録商標)(Abbott laboratories,IL)(配列番号23、24)、インフリキシマブ/REMICADE(登録商標)(Janssen Biotech,Inc)、セルトリズマブ/CIMZIA(登録商標)(UCB,Inc,Smyrna,GA)(配列番号25、26)、ベドリズマブ/ENTYVIO(登録商標)(Takeda Pharmaceuticals America,Inc.,Deerfield,IL)、及びナタリズマブ/TYSABRI(商標)(Biogen Idec Inc,Cambridge,MA)が含まれる。高度に不均一な疾患であり、患者がある特定の治療法に好ましく応答し得るか否かの予測が困難である。
【0026】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、単独で、または例えば、上昇したもしくは高いレベルの臨床バイオマーカーIL22、LCN2、CRP、FCP、及びそれらの組み合わせと組み合わせた、CCL20の発現範囲及び/または閾値レベル)を使用して、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその抗原結合断片を含む)を用いた処置に好適であるCDなどのIL23媒介疾患を有する被験者の集団を階層化する及び/または特定することができる。
【0027】
各階層内で、本明細書に開示のバイオマーカー(単独で、または例えば、上昇したもしくは高いレベルの臨床バイオマーカーIL22、LCN2、CRP、FCP、及びそれらの組み合わせと組み合わせた、CCL20の発現範囲及び/または閾値レベル)を、例として、例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体)を用いて患者を診断する、患者を処置する;例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体)を用いた処置のために患者を選択するまたは選択しない;例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体)を用いるある特定の処置を選択する;一時的または永続的に処置を保留するもしくは改変する;患者の予後を決定する;または処置の効果をモニタリングするために使用することができ、ここでこれらの方法は、例えば、単独で、または例えば、上昇したもしくは高いレベルの臨床バイオマーカーIL22、LCN2、CRP、FCP、及びそれらの組み合わせと組み合わせて、CCL20の発現範囲及び/または閾値レベルを決定することを含む。
【0028】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に特異的に結合することができる抗IL23抗体である。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方への結合に関して、MEDI2070または当該分野で公知の別の抗IL23抗体と競合することができる、抗IL23抗体または他の分子(例えば、小分子、アプタマー、足場分子等)である。
【0029】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖(HC)(配列番号17)及び/もしくは軽鎖(配列番号18)、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはそ
の抗原結合断片は、MEDI2070の可変領域(VH)(配列番号7)及び/または軽鎖可変領域(VL)(配列番号8)を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の相補性決定領域(配列番号33~38)の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号45の配列を含むVH領域及び/または配列番号46の配列を含むVL領域、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号47~49(配列番号45のVHのCDR)及び/または配列番号50~52(配列番号46のVLのCDR)の相補性決定領域の少なくとも1つを含む。
【0030】
他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせから選択される抗IL23抗体である。他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせとIL23への結合に関して競合する分子である。
【0031】
本明細書に開示の方法は、IL23結合抗体に対してのみ適用可能であるわけではない。本明細書に開示の方法は、IL23のp19サブユニットの任意の阻害剤に対して適用可能であり、それには、例えば、抗体及びその抗原結合断片、アプタマー、足場分子、小分子、可溶性IL23受容体等が含まれる。
【0032】
本開示をより容易に理解できるようにするため、ある特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、発明を実施するための形態の全体にわたって示す。
I.定義
本明細書に提供される見出しは、本開示の様々な態様(1つまたは複数)を限定するものではなく、それらの態様は、本明細書を全体として参照することによって得ることができる。従って、直後に定義される用語は、本明細書を全体として参照することにより、より完全に定義される。
【0033】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別様に明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。「a」(または「an」)という用語、ならびに「1つまたは複数」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換可能に使用することができる。
【0034】
さらには、「及び/または」は、本明細書で使用される場合、2つの指定される特徴または構成要素の各々の、他方を伴うまたは伴わない具体的な開示として解釈されたい。ゆえに、「及び/または」という用語は、本明細書で「A及び/またはB」などの表現で用いられるとき、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「及び/または」という用語は、「A、B、及び/またはC」などの表現で用いられるとき、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0035】
本明細書において態様が「を含む」という表現を用いて記載される場合はいずれも、「からなる」及び/または「から本質的になる」の用語で記載される他の点では類似の態様も提供される。
【0036】
「約」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して数値に関連して使用されるとき、当業者が精通し許容できる精度の区間を示す。一般に、そのような精度の区間は、±15%である。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC
Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0038】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で認められている形式で示される。
数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。値の範囲が示される場合、その範囲の示される上限及び下限間のそれぞれの介在整数値、及びその分数も、かかる値間の各部分範囲と共に、具体的に開示されることが理解されたい。任意の範囲の上限及び下限は、独立して範囲に含まれるかまたは範囲から除外されることが可能であり、上下限のどちらか一方または両方が含まれるまたはどちらも含まれない各範囲も本発明に包含される。値が明記的に記される場合、記された値とほぼ同じ数量(quantity)または量(amount)である値もまた本発明の範囲内にあることが理解されたい。組み合わせが開示されている場合、その組み合わせの要素の各サブコンビネーションも具体的に開示され、本発明の範囲内である。逆に、異なる要素または要素群が個々に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。本発明の任意の要素が複数の代替物を有するものとして開示される場合、各代替物が単独でまたは他の代替物との任意の組み合わせから除外される本発明の例もここに開示される。本発明の1つ以上の要素はそのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素の全ての組み合わせがここに開示される。
【0039】
アミノ酸は、本明細書において、その一般に知られている三文字記号によるか、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字記号のいずれかにより言及される。別段の指示がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向で左から右へ記載される。
【0040】
ヌクレオチドは、その一般に受け入れられている一文字コードにより言及される。別段の指示がない限り、核酸は、5’から3’の方向で左から右へ記載される。ヌクレオチドは、本明細書において、IUPAC-IUB生化学命名委員会が推奨するその一般に知られている一文字記号により言及される。従って、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Uはウラシルを表す。
【0041】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」、及び「遺伝子」という用語は、本明細書で互換可能に使用されて、任意の長さのヌクレオチドのポリマー、及びリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、その類似体、またはその混合物を指す。
【0042】
「DNA配列」という表現は、連続する核酸配列を指す。この配列は、一本鎖または二
本鎖、DNAまたはRNAのいずれかであることができるが、二本鎖DNA配列が好ましい。配列は、6~20ヌクレオチド長さのオリゴヌクレオチドから、数千または数十万の塩基対の完全長ゲノム配列であることができる。
【0043】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書で互換可能に使用されて、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは線状または分枝状であることができ、それは修飾アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって分断されることができる。これらの用語はまた、天然でまたは介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含し、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作または修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションである。例えば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸、例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、及びクレアチンを含む)、ならびに当該分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドも本定義内に含まれる。
【0044】
「単離された」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、天然には見いだされない形態であるポリペプチド、ポリヌクレオチド、または組成物である。単離されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、または組成物は、もはや天然に見いだされる形態ではない程度まで精製されているものを含む。いくつかの態様では、単離されているポリペプチド、ポリヌクレオチド、または組成物は、実質的に純粋である。
【0045】
「アミノ酸置換」という用語は、親配列に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置き換えることを指す。アミノ酸は、親配列において、例えば、当該分野で公知の化学的ペプチド合成を介するかまたは組換え方法を通して置換することができる。従って、「X位での置換」または「X位での置換」に対する言及は、X位に存在するアミノ酸の代替のアミノ酸残基を用いた置換を指す。いくつかの態様では、置換パターンは、スキーマAXYに従って記載することができ、ここでAは、X位に天然に存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Yは置換するアミノ酸残基である。他の態様では、置換パターンは、スキーマXYに従って記載することができ、ここでYは、X位に天然に存在するアミノ酸を置換するアミノ酸残基に対応する一文字コードである。
【0046】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。ゆえに、ポリペプチド内のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸で置き換えられる場合、この置換は保存的であるとみなされる。別の態様では、一続きのアミノ酸を、側鎖ファミリーメンバーの順番及び/または組成が異なる構造的に類似する一続きによって保存的に置き換えることができる。
【0047】
非保存的置換は、(i)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、HisもしくはLys)が電気陰性残基(例えば、GluもしくはAsp)に代えて、もしくはそれによって置換されているか、(ii)親水性残基(例えば、SerもしくはThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、PheもしくはVal)に代えて、もしくはそれによって置換されているか、(iii)システインもしくはプロリンが任意の他の残基に代えて、もしくはそれによって置換されているか、または(iv)かさ高い疎水性もし
くは芳香族側鎖を有する残基(例えば、Val、His、IleもしくはTrp)がより小さい側鎖を有するもの(例えば、Ala、Ser)もしくは側鎖を有しないもの(例えば、Gly)に代えて、もしくはそれによって置換されているものを含む。
【0048】
他の置換は当業者により容易に特定することができる。例えば、アミノ酸アラニンについて、置換は、D-アラニン、グリシン、ベータ-アラニン、L-システイン及びD-システインのいずれか1つから選ぶことができる。リジンについて、置換は、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモ-アルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン、またはD-オルニチンのいずれか1つであることができる。概して、単離ポリペプチドの特性における変化を誘発すると予想することができる機能的に重要な領域の置換は、(i)極性残基、例えば、セリンもしくはトレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、もしくはアラニンに代えて(もしくはそれによって)置換されるか、(ii)システイン残基が、任意の他の残基に代えて(もしくはそれによって)置換されるか、(iii)電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンが、電気陰性側鎖を有する残基、例えば、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸に代えて(もしくはそれによって)置換されるか、または(iv)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、かかる側鎖を有しないもの、例えばグリシンに代えて(もしくはそれによって)置換されるものである。前述の非保存的置換のうちの1つがタンパク質の機能的特性を変化させ得る尤度は、タンパク質の機能的に重要な領域に関する置換の位置にも相関し、一部の非保存的置換は、従って生物学的特性に対する効果をほとんどまたは全く有しない場合がある。
【0049】
「アミノ酸挿入」という用語は、親配列に存在する2つのアミノ酸残基の間に新規アミノ酸残基を導入することを指す。アミノ酸は、例えば、当該分野で公知の化学的ペプチド合成を介して、または組換え方法を通して親配列に挿入することができる。従って、本明細書で用いるとき、X及びYがアミノ酸位置に対応する「X位とY位との間での挿入」という表現は、X位とY位との間のアミノ酸の挿入を指し、さらにX位及びY位のアミノ酸をコードするコドン間のアミノ酸をコードするコドンの核酸配列における挿入も指すす。
【0050】
2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の「パーセント配列同一性」という用語は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入しなければならない付加または欠失(すなわち、ギャップ)を考慮した、比較ウィンドウにわたって配列が共有する同一の合致位置の数を指す。合致位置は、標的配列と参照配列との両方に同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が存在する任意の位置である。標的配列内に存在するギャップは計数されず、それは、ギャップがヌクレオチドまたはアミノ酸ではないためである。同様に、参照配列内に存在するギャップは計数されず、それは、参照配列からのヌクレオチドまたはアミノ酸ではなく標的配列ヌクレオチドまたはアミノ酸が計数されるためである。
【0051】
配列同一性の割合(%)は、両配列において同一のアミノ酸残基または核酸塩基が生じる位置の数を決定して、合致位置の数を求め、合致位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性の割合(%)を求めることにより算出される。2つの配列間の配列の比較及びパーセント配列同一性の決定は、オンライン使用及びダウンロードの両方で容易に利用可能なソフトウェアを使用して達成することができる。好適なソフトウェアプログラムが、様々な供給元から、タンパク質配列及びヌクレオチド配列の両方のアラインメントのために利用可能である。パーセント配列同一性を決定するための1つの好適なプログラムは、米国政府の国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPのいずれかのアルゴリズムを使用して
2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列の比較に用いられ、一方でBLASTPはアミノ酸配列の比較に用いられる。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラムスイートの一部であって、さらに欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)からwww.ebi.ac.uk/Tools/psaにて入手可能な、ニードル(Needle)、ストレッチャー(Stretcher)、ウォーター(Water)、またはマッチャー(Matcher)である。
【0052】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整合する単一ポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、各々が独自のパーセント配列同一性を有することができる。パーセント配列同一性の値は小数第2位で四捨五入されることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は80.1に切り捨てられ、一方で80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数であるだろうことにも留意されたい。
【0053】
ある特定の態様では、第一のアミノ酸配列の第二の配列アミノ酸に対するパーセンテージ同一性「X」は、100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第一及び第二の配列のアラインメントにおいて(目視検査、または特定の配列アラインメントプログラムによってアラインメントしたとき)同一の合致としてスコア化されるアミノ酸残基の数であり、Zは、第二の配列の残基の総数である。第一の配列の長さが第二の配列より長い場合、第一の配列の第二の配列に対するパーセント同一性は、第二の配列の第一の配列に対するパーセント同一性より高くなるだろう。
【0054】
当業者は、パーセント配列同一性を計算するための配列アラインメントの生成が一次配列データによってのみ駆動される二値の配列間比較に限定されないことを理解するであろう。配列アラインメントは多重配列アラインメントから得ることができる。多重配列アラインメントの生成に好適な1つのプログラムは、www.clustal.orgから入手可能なClustalW2である。別の好適なプログラムは、www.drive5.com/muscle/から入手可能なMUSCLEである。ClustalW2及びMUSCLEは、あるいは例えばEBIから入手可能である。
【0055】
また、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、突然変異の位置)、または系統学的データなどの異種ソースからのデータと統合することによって配列アラインメントを生成することができることも理解されるだろう。異種データを統合して多重配列アラインメントを生成する好適なプログラムは、www.tcoffee.orgで入手可能であるか、あるいは例えばEBIから入手可能なT-Coffeeである。また、パーセント配列同一性の計算に用いる最終的なアラインメントは自動的にまたは手動でキュレーションすることができることも理解されるだろう。
【0056】
本明細書で用いるとき、「抗体」という用語は、B細胞により産生される典型的な抗体の文脈において、少なくとも重鎖の可変ドメイン(VH)及び軽鎖の可変ドメイン(VL)を含む、抗原、例えば、IL23に結合することができる抗体の少なくとも最小部分を表す。脊椎系における基本的な抗体構造は、比較的よく理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)を参照されたい。
【0057】
抗体またはその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗
体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより産生される断片を含むがこれらに限定されない。ScFv分子は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号において記載されている。本開示により包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であることができる。
【0058】
ゆえに、「抗体」という用語のこの定義を鑑みる場合、抗体、例えば、抗IL23抗体MEDI2070に対する言及は、MEDI2070抗体ならびにさらにその抗原結合断片、変異体、及び誘導体を指す。いくつかの態様では、抗体は、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に特異的に結合することができる抗IL23抗体である。
【0059】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖(HC)(配列番号17)及び/もしくは軽鎖(配列番号18)、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖可変領域(VH)(配列番号7)及び/または軽鎖可変領域(VL)(配列番号8)を含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の相補性決定領域(配列番号33~38)の少なくとも1つを含む、例えば、それはMEDI2070の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの相補性決定領域を含む。
【0060】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号45の配列を含む、からなる、もしくはから本質的になるVH領域及び/または配列番号46の配列を含む、からなる、もしくはから本質的になるVL領域、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号47~49(配列番号45のVHのCDR)及び/または配列番号50~52(配列番号46のVLのCDR)の相補性決定領域の少なくとも1つを含む。米国特許第8,722,033号を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせから選択される抗IL23抗体である。他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせと、IL23への結合に関して競合する分子である。
【0062】
いくつかの態様では、抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物から単離及び/もしくは精製された抗体、または哺乳動物細胞から生成されたハイブリドーマにより産生される抗体である。いくつかの態様では、抗体は、遺伝子操作された抗体、例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒューマニア化抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、等である。遺伝子工学技術は、完全ヒト抗体を非ヒト源において作成する能力も提供する。いくつかの態様では、抗体は、ファージディスプレーを使用して生成される。
【0063】
いくつかの態様では、抗体は、ポリマー形態、オリゴマー形態、または多量体形態である。抗体が2以上の別個の抗原結合領域断片を含むある特定の態様では、抗体は、抗体が認識し結合する別個のエピトープの数に応じて、二重特異性、三重特異性、もしくは多重特異性、または二価、三価もしくは多価であるとみなされる。
【0064】
いくつかの態様では、結合剤は、先行段落の任意の抗体の抗原結合断片である。抗原結合断片(本明細書で「抗原結合部分」とも称される)は、本明細書に記載の抗体のいずれかの抗原結合断片であってよい。抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dsFv、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、一本鎖Fv(scFV)、軽鎖または重鎖可変ドメインのいずれかを含む断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、ビス-scFv、Fab発現ライブラリーにより発現される断片、ドメイン抗体、VhHドメイン、V-NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、等を含むがこれらに限定されない、少なくとも1つの抗原結合部位を有する、抗体の任意の部分であることができる。
【0065】
典型的な抗体は、ジスルフィド結合により相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VH、VH領域、またはVHドメインと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つまたは4つの定常ドメイン、CH1、CH2、CH3、及びCH4から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、VL、VL領域、またはVLドメインと略される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。
【0066】
VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FW)と呼ばれるより保存的な領域に点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変の領域へとさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順番で配置された3つのCDR及び4つのFWから構成される:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4。フレームワーク領域は、それらのそれぞれのVH及びVL領域に従って命名することができる。ゆえに、例えば、VH-FW1は、VHの最初のフレームワーク領域を表すことになる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典補体系の第一の成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0067】
「特異的に結合する」とは、一般的に、抗体(例えば、抗IL23抗体)またはその断片、変異体、もしくは誘導体が、エピトープにその抗原結合ドメインを介して結合すること、そしてその結合が、抗原結合ドメイン及びエピトープ間のいくらかの相補性を必然的に伴うことを意味する。この定義に従い、抗体は、抗体があるエピトープにその抗原結合ドメインを介して、無作為な、無関係なエピトープに結合する場合よりも容易に結合する場合に、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。
【0068】
「エピトープ」という用語は、本明細書で用いるとき、本明細書に開示される抗体(例えば、抗IL23抗体)またはその断片、変異体、もしくはその誘導体に結合することができる抗原タンパク質決定基を指す。いくつかの態様では、エピトープという用語は、IL23のp19サブユニットのタンパク質決定基(例えば、アミノ酸配列)を指す。いくつかの態様では、エピトープという用語は、IL23のp40サブユニットのタンパク質決定基(例えば、アミノ酸配列)を指す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。エピトープを認識する抗体または結合分子の部分は、パラトープと
呼ばれる。タンパク質抗原のエピトープは、その構造及びパラトープとの相互作用に基づき、立体エピトープと線状エピトープとの2つに分類される。立体エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続なセクションで構成される。これらのエピトープは、抗原の3次元表面特徴及び形状または三次構造に基づきパラトープと相互作用する。対照的に、線状エピトープは、その一次構造に基づきパラトープと相互作用する。線状エピトープは抗原からの連続したアミノ酸配列によって形成される。
【0069】
「抗体結合部位」という用語は、相補的抗体が特異的に結合する連続または不連続な部位(すなわち、エピトープ)を含む抗原(例えば、IL23のp19サブユニットのアミノ酸配列、またはIL23のp40サブユニットのアミノ酸配列)内の領域を指す。ゆえに、抗体結合部位は、抗原内に、エピトープを超えた、結合親和性及び/もしくは安定性などの特性を決定することができる、または抗原酵素活性もしくは二量化などの特性に影響を与えることができる追加の領域を含有することができる。従って、2つの抗体が抗原内の同じエピトープに結合するとしても、抗体分子が別個の分子間接触をエピトープの外側にあるアミノ酸と確立する場合、かかる抗体は、別個の抗体結合部位に結合するとみなされる。
【0070】
抗体またはその断片、変異体、もしくは誘導体は、それがエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を、ある程度まで、遮断する程度まで優先的に所与のエピトープに結合する場合に、そのエピトープに対する参照抗体または抗原結合断片の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイにより決定することができる。結合分子は、所与のエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも35%、少なくとも30%、または少なくとも25%競合的に阻害するといわれることができる。
【0071】
本明細書に開示の抗体またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、エピトープ(複数可)または抗原の部分(複数可)、例えば、それらが認識または特異的に結合する標的ポリサッカライドに関して、記載または指定することができる。例えば、抗IL23抗体(例えば、MEDI2070)の抗原結合ドメインと特異的に相互作用するIL23の部分は、「エピトープ」である。
【0072】
「IL23媒介疾患または障害」という用語は、本明細書で「IL23媒介疾患」、ならびにその語法にかなった変形と互換可能に使用され、該障害を有する対象における異常レベルのIL23またはIL23経路の異常活性化(単独でまたは他の介在物質を伴う)により引き起こされる、これにより悪化する、これを伴う、またはこれにより延長されると当該分野で公知である任意の病理を指す。非限定的な例としては、IL23媒介性炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、ならびに肺疾患、慢性炎症性皮膚疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、または癌が挙げられる。
【0073】
いくつかの態様では、IL23媒介性炎症性腸疾患は、CD、潰瘍性大腸炎(UC)、ベーチェット病、またはセリアック病である。いくつかの態様では、IL23媒介性肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、コルチコステロイドナイーブ喘息、慢性喘息、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド難治性喘息、喫煙による喘息、またはコルチコステロイドで制御されない喘息)、特発性肺線維症(IPF)、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。
【0074】
いくつかの態様では、IL23媒介性慢性炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、アレ
ルギー性接触皮膚炎、湿疹、乾癬、円形脱毛症、または掌蹠膿疱症である。いくつかの態様では、IL23媒介性炎症性疾患は、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節炎、関節リウマチ(RA)、リウマチ障害、ANCA血管炎、ベーチェット病、または自己免疫性甲状腺炎である。いくつかの態様では、IL23媒介性自己免疫疾患は、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群(SS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、コラーゲン誘発性関節炎、または1型糖尿病である。
【0075】
いくつかの態様では、IL23媒介性神経変性疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの態様では、IL23媒介癌は、メラノーマ、結腸直腸癌、胃癌、骨髄腫、前立腺癌、大腸炎関連癌、卵巣癌、口腔癌、食道癌、白血病B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌、乳癌、肺癌、及び上咽頭癌である。いくつかの態様では、IL23媒介疾患または障害は、微生物感染であり、例えば、マイコバクテリア疾患、またはリーシュマニア症を含む。いくつかの態様では、IL23媒介疾患または障害は、真菌またはウイルス感染である(例えば、Khader et al.,Mucosal Immunol 2(5):403-411(2009)を参照されたい)。
【0076】
本明細書で用いるとき、「処置する」、「処置すること」、「処置」、または「の処置」という用語は、本明細書で用いるとき、(1)IL23媒介疾患もしくは障害の可能性を減少させる、例えば、IL23媒介疾患もしくは障害の発症を遅延させるもしくは予防すること、(2)IL23媒介疾患もしくは障害の発症率を減少させること、例えば、IL23媒介疾患もしくは障害に関連する症状もしくは身体的な悪化を遅らせるもしくは停止させること、(3)好ましくは、対象がIL23媒介疾患もしくは障害による不快感及び/もしくは機能的な変化にもはや苦しまない程度まで、IL23媒介疾患もしくは障害の重症度における低下もしくは症状の回復(例えば、未処置患者と比較したときのCD悪化または疾患重症度における相対的低下)、ならびに/または(4)IL23媒介疾患または障害を治癒することを目的とする方法を指す。
【0077】
別段の指定がない限り、「処置する」、「処置すること」、「処置」、または「の処置」という用語(または語法的に同等な用語)は、予防的及び治療的処置レジメンの両方を指す。ゆえに、処置は、疾患の発症の前に、予防または防止作用のために施されてよい。またそれは、IL23媒介疾患または障害の開始の後に、治療作用のために施されてもよい。いくつかの態様では、IL23媒介疾患または障害の処置は、外科手術を含むことができる。
【0078】
「対象」または「患者」という用語は、本明細書で用いるとき、IL23媒介疾患または障害の診断、予後、または治療が望まれる、任意の対象、特に哺乳動物対象を指す。本明細書で用いるとき、「対象」または「患者」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、クマ、ニワトリ、両生類、爬虫類等を含む。本明細書で用いるとき、「IL23媒介疾患を有する患者」などの表現は、そのIL23媒介疾患に対する、治療、イメージングもしくは他の診断法、及び/または予防的処置の適用から利益を得るだろう対象、例えば、ヒトを含む哺乳動物対象を含む。
【0079】
いくつかの態様では、対象は、ナイーブ対象である。「ナイーブ対象」は、治療、例えば治療剤を投与されていない対象である。いくつかの態様では、ナイーブ対象は、IL23媒介疾患を有すると診断される前に治療剤を用いて処置されていない。いくつかの態様では、対象は、治療及び/または単回もしくは複数回用量の治療剤(例えば、IL23媒介疾患を調節することができる治療剤)を、IL23媒介疾患を有すると診断される前に受けている。
【0080】
いくつかの態様では、「IL23媒介疾患または障害を有する患者」という用語、例えば、クローン病などの特定のIL23媒介疾患を有する患者(すなわち、「クローン病患者」または「CD患者」)は、IL23媒介疾患もしくは障害(例えば、CD)を示す1つもしくは複数の症状を提示する、または具体的なIL23媒介疾患もしくは障害(例えば、CD)についてスクリーニングされている対象を指す。あるいはまたは加えて、「IL23媒介疾患を有する患者」という用語は、IL23媒介疾患もしくは障害(例えば、CD)を有すると疑われるまたは1つもしくは複数のリスク因子(例えば、年齢、性別、家族歴等)を有し得る対象も包含する。本用語は、IL23媒介疾患または障害について検査されたことがない対象、ならびに初期診断を受けている対象も包含する。
【0081】
「治療」という用語は、本明細書で用いるとき、IL23媒介疾患または障害を治癒する、緩和する、または予防するための任意の手段を含み、それには例えば、治療剤、器具使用、対症療法、及び外科的またはリハビリ手法が含まれる。これに関して、治療という用語は、IL23媒介疾患または障害の予防、管理、処置及び/または回復に使用することができる任意のプロトコル、方法及び/または治療もしくは診断を包含する。
【0082】
「治療剤」という用語は、本明細書で用いるとき、所望の、通常は有益な効果を産生するためにIL23媒介疾患または障害を有する対象に投与される任意の治療上活性な物質を指す。治療剤という用語は、例えば、小分子薬及び生物製剤と一般的に称される古典的な低分子量治療剤を含み、これには、抗体またはその活性断片、ペプチド、タンパク質薬、タンパク質コンジュゲート薬等が含まれるがこれらに限定されない。治療剤は、対象に投与されたときに所望の治療上活性な物質へと代謝されるプロドラッグであることもできる。いくつかの態様では、治療剤は、予防剤である。加えて、治療剤は、薬学的に製剤化することができる。
【0083】
本明細書で用いるとき、「有効量」または「薬学的有効量」または「治療有効量」という用語は、対象に投与された時ときに、所望の治療効果及び/または予防的効果を達成するのに十分である調製物中の化合物(複数可)の量、例えば、処置されるべき障害または状態に関する臨床的に許容可能な標準に従って疾患状態の症状を軽減する、状態を改善する、または発症を遅らせる量を指す。対象に投与される組成物の量は、IL23媒介疾患または障害のタイプ及び重症度、ならびに個体の特徴、例えば、全身健康状態、年齢、性別、体重及び薬物に対する忍容性に依存するだろう。疾患の程度、重症度及びタイプにも依存するだろう。当業者は、これら及び他の因子に応じて適切な投与量を決定することができるだろう。組成物は、1つまたは複数の追加の治療用化合物及び/または処置と組み合わせて投与することもできる。
【0084】
「生体試料」という用語は、本明細書でその最も広い意味で使用される。本明細書に開示の方法は、本開示のバイオマーカー、すなわち、CCL20を、単独で、または少なくとも1つの追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、もしくはそれらの組み合わせと組み合わせて含有し得る任意の試料を使用して実行することができる。生体試料は、一般的には対象から得られる。試料は、本開示のバイオマーカーをアッセイし得る任意の生物学的組織または流体のものであってよい。しばしば、試料は、「臨床試料」、すなわち、患者に由来する試料であるだろう。
【0085】
本明細書に開示の方法に関して、対象から得られる試料の非限定的な例としては、例えば、全血、血清、血漿、唾液、痰、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、胸膜液、心膜液、腹水、滑液、上皮細胞、尿、便、皮膚、組織、ピンチまたは細針生検試料、ならびに既知の診断、処置及び/または転帰歴を有するアーカイブ試料が挙げられる。生体試料は、組織学的目的のために採取された凍結切片などの組織の切片、またはそれらの組み合わせも含ん
でよい。試料は、当該分野で公知の任意の手段により得ることができる。
【0086】
「生体試料」という用語は、生体試料の処理により誘導される任意の物質も包含する。誘導された物質には、試料から抽出されたタンパク質、試料から抽出された核酸、または試料からPCR増幅された核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。生体試料の処理は、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の追加等のうちの1つまたは複数を必然的に含んでよい。例えば、血液試料は、血清へとまたは特定の型の細胞を含有する画分へと、分画することができる。
【0087】
いくつかの態様では、試料は、個体からの試料の組み合わせ、例えば、組織及び流体試料の組み合わせであることができる。試料は、必要に応じて、適切な緩衝液での希釈により前処理するかまたは濃縮することができる。種々の緩衝液、例えばリン酸塩、TRIS等を生理学的pHで採用する、いくつかの標準的な水性緩衝液及び/またはプロテアーゼ阻害剤はいずれも使用することができる。いくつかの態様では、試料は、複数の個体からの試料の組み合わせであることができる。
【0088】
ある特定のIL23媒介疾患または障害に関するバイオマーカーの発現レベルを診断及び/または決定するために得られる試料は、当該分野で使用される特定の方法に応じて変動することができる。ゆえに、試料は、例えば、生体試料(全血、血清、血漿、唾液、痰、気管支肺胞洗浄液、便、上皮細胞、組織生検試料、腸組織生検試料、尿、皮膚、ポリープ、脳脊髄液、胸膜液、心膜液、腹水、滑液、等)、身体検査データ(例えば、発熱、疼痛及び/または腹部圧痛の存在)、家族歴、臨床検査の結果(例えば、血中タンパク質レベル、血液沈降速度、体のミネラルレベル、赤血球数、白血球数、便試料中の血液及び/または感染微生物の存在)、イメージング試験及び内視鏡検査(例えば、バリウムX線及び他のX線、CTスキャン、結腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、ビデオカプセル内視鏡検査)、等であることができる。
【0089】
本明細書で用いるとき、「対照」という用語は、対象を特徴づけるために使用するとき、健常である対象またはIL23媒介疾患もしくは障害以外の特定の疾患を有すると診断されている患者を指す。「対照試料」という用語は、健常対象からまたはIL23媒介疾患もしくは障害以外の特定の疾患を有すると診断されている患者から得られた1つ、または1つより多い、生体試料を指す。
【0090】
患者からの試料は、IL23媒介疾患または障害を処置するための治療を施す前または後に得ることができる。いくつかの場合では、連続的な試料を、治療が開始した後、または治療が終わった後の患者から得ることができる。試料は、例えば、医療提供者(例えば、医者)または医療給付提供者により要求され、同じまたは異なる医療提供者(例えば、看護師、病院)または臨床検査室により獲得及び/または処理されることができ、処理後、結果は、元の医療提供者もしくはなおも別の医療提供者、医療給付提供者または患者へと渡すことができる。
【0091】
同様に、本明細書に開示のバイオマーカー、すなわち、CCL20の単独での、または少なくとも1つの追加バイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、もしくはそれらの組み合わせとの組み合わせの発現レベルの定量化、バイオマーカー遺伝子またはタンパク質発現レベル間の比較及び/または比率、バイオマーカー不在または存在の評価、ある特定の閾値に関するバイオマーカーレベルの決定、処置決断、あるいはこれらの組み合わせを、1つまたは複数の医療提供者、医療給付提供者、及び/または臨床検査室により行うことができる。
【0092】
本明細書で用いるとき、「医療提供者」という用語は、生存対象、例えば、ヒト患者と
直接的に相互連絡を取り、与薬する、個人または機関を指す。医療提供者の非限定的な例としては、一般医学的、専門医学的、外科、及び/または任意のその他のタイプの処置、評価、維持、治療、投薬及び/または助言を含むが、これに限定されない、患者の健康状態の全てまたは任意の部分に関する、一般及び/または専門的処置、評価、維持、治療、投薬、及び/または助言を提供する、医師、看護師、技術者、治療者、薬剤師、カウンセラー、代替医療施術者、医療施設、医院、病院、救急処置室、診療所、応急処置センター、代替医療診療所/施設、及び任意の他の事業体が挙げられる。
【0093】
本明細書で用いるとき、「臨床検査室」という用語は、生存対象、例えば、ヒトに由来する物質を検査または処理するための施設を指す。処理の非限定的な例としては、生存被験者、例えばヒトの任意の疾患もしくは障害の診断、予防、もしくは処置のための情報、または健康評価を提供する目的のために、ヒトの体に由来する物質の生物学的、生化学的、血清学的、化学的、免疫血液学、血液学的、生物物理学的、細胞学的、病理学的、遺伝学的、または他の検査が挙げられる。これらの検査は、試料の採取またそうでなければ取得、生存被験者、例えばヒトの体内の、または生存対象、例えばヒトの体から得た試料内の様々な物質の、調製、決定、測定、または別の方法でその有無の記載を行うための手順も含むことができる。
【0094】
臨床検査室は、例えば、試料を採取または入手する、試料を処理する、試料を提出する、試料を受領する、試料を移送する、試料を分析もしくは測定する、試料を定量化する、試料の分析/測定/定量後に得られた結果を提供する、試料の分析/測定/定量後に得られた結果を受領する、1つもしくは複数の試料の分析/測定/定量後に得られた結果を比較/スコア化する、1つもしくは複数の試料からの比較/スコアを提供する、1つもしくは複数の試料からの比較/スコアを入手する、または他の関連する活動が可能である。
【0095】
本明細書で用いるとき、「医療給付提供者」という用語は、1つまたは複数の医療給付、給付制度、健康保険、及び/または医療費勘定プログラムを、全体的にもしくは部分的に、提供する、提示する、提案する、支払う、または患者がそれらに接触できるようにすることに別の方法で関連する、個々の団体、組織、またはグループを包含する。
【0096】
いくつかの態様では、医療提供者は、IL23媒介疾患または障害を処置するための治療を施すことができるまたは施すように別の医療提供者に指示することができる。医療提供者は、例えば、以下の措置を実行することができるまたは別の医療提供者もしくは患者に行うように指示することができる:試料を入手する、試料を処理する、試料を提出する、試料を受領する、試料を移送する、試料を分析または測定する、試料を定量する、試料の分析/測定/定量後に得られた結果を提供する、試料の分析/測定/定量後に得られた結果を受領する、1つまたは複数の試料の分析/測定/定量後に得られた結果を比較/スコア化する、1つまたは複数の試料からの比較/スコアを提供する、1つまたは複数の試料からの比較/スコアを入手する、治療を施す(例えば、IL23媒介疾患または障害を処置する治療剤)、治療の投与を開始する、治療の投与を休止する、治療の投与を継続する、治療の投与を一時的に中断する、投与される治療剤の量を増加させる、投与される治療薬の量を低減させる、一定量の治療剤の投与を継続する、治療剤の投与頻度を増加させる、治療剤の投与頻度を低減させる、治療薬の同じ投与頻度を維持する、治療または治療剤を少なくとも別の治療または治療剤で置き換える、治療または治療剤を少なくとも別の治療または追加の治療剤と組み合わせる。
【0097】
いくつかの態様では、医療給付提供者は、例えば、試料の採取、試料の処理、試料の提出、試料の受領、試料の移送、試料の分析もしくは測定、試料の定量、試料の分析/測定/定量後に得られた結果の提供、試料の分析/測定/定量後に得られた結果の移送、1つもしくは複数の試料を分析/測定/定量した後に得られた結果の比較/スコア化、1つも
しくは複数の試料からの比較/スコアの移送、治療もしくは治療剤の投与、治療もしくは治療剤の投与の開始、治療もしくは治療剤の投与の休止、治療もしくは治療剤の投与の継続、治療もしくは治療剤の投与の一時的な中断、投与される治療剤の量の増加、投与される治療剤の量の低減、一定量の治療剤の投与の継続、治療剤の投与頻度の増加、治療剤の投与頻度の低減、治療剤の同一投与頻度の維持、治療もしくは治療剤を少なくとも別の治療もしくは治療剤で置き換えること、または治療もしくは治療剤を少なくとも別の治療もしくは追加の治療剤と組み合わせることを許可または拒否することができる。
【0098】
加えて、医療給付提供者は、例えば、治療の処方を許可または拒否する、治療の適用範囲を許可または拒否する、治療費の払い戻しを許可または拒否する、治療の適格性を決定または否定する等ができる。
【0099】
II.臨床応答バイオマーカーとしてのCCL20
近年発見された新しいCD4T細胞サブセットであるTh17は、ますます数が増える慢性免疫介在性疾患の病原基盤の本発明者らの理解を変えている。特に、体内の大半のTh17細胞が存在し、自己(または自己の延長、通常これらの組織でコロニー形成する多様な微生物叢)に対して免疫調節不全である、腸管及び気道ならびに皮膚などの微生物環境と接触する組織では、慢性炎症性疾患がもたらされ得る。様々な炎症性の状態が、IL23経路に沿った薬理学的開発のための潜在的な標的を有する。これらには、例えば、Th17細胞の分化に影響する、IL23が含まれる。
【0100】
いくつかのIL23媒介疾患及び障害、例えばCDまたは乾癬は、広範な症状、重症度及びそれゆえ薬物に対する応答を示す、異種疾患である。IL23媒介疾患及び障害の臨床的管理における問題の1つは、適時の及び適切な処置のために症状の初期臨床的フレアーアップを経験している患者の特定のサブグループを特定することの困難性、またはある特定の治療、例えば、IL23アンタゴニストを用いた処置から利益を得る可能性があるもしくはない患者の特定のサブグループの特定である。ゆえに、特定の抗IL23療法に応答するIL23媒介疾患を有する患者の特定のグループを特定及び処置する方法に関する必要性が依然として当該分野に残っている。
【0101】
いくつかの遺伝子及びタンパク質、例えば、CCL20が、IL23媒介疾患及び障害を有する患者の血清及び他の組織中において過剰発現すると報告されている。CCL20、ヒトベータ-ディフェンシン(hBD)-2などは、CCR6陽性未成熟樹状細胞及びT細胞の強力な化学誘引物質である。CCL20は、関節リウマチ及び乾癬(Melis
et al.,Ann.Rheum.Dis.69:618-23(2010);Mrabet et al.Rheumatology International 33:265-66(2013);Schlenk et al.J.Rheumatol.32:2291-98(2005);Homey et al.J.Immunol.164:6621-32(2000);Lisignoli et al.J.Cell.Physiol.210:798-806(2007))、クローン病及び潰瘍性大腸炎(Kaser et al.J.Clin.Immunol.24:74-85(2004);Uiterweer et al.J.Clin.Immunol.24:74-85(2004);Lee et al.Inflammatory Bowel Diseases 11:1070-79(2005);Uchida et al.Gastroenterology Research and Practice 2015:856532(2015))、多発性硬化症(Ambrosini et al.,J.Neuropathol.Exp.Neurol.64:706-15(2005))、Pseudomonas aeruginosa感染(Lin et al.,Infect.Immun.71:365-73(2003))、アトピー性皮膚炎(Nakayama et al.Int.Immunol.13:95-103(2001))、
メラノーマ(Hasan et al.J.Immunol.176:6512-22(2006))、歯周病及び齲歯(Veerayutthwilai et al.Oral Microbiol.Immunol.22:5-13(2007);Hosokawa et al.,Clin.Exper.Immunol.142:285-91(2005))、結腸直腸癌(Rubie et al.Tumour Biol.27:166-74(2006);Frick et al.Scand.J.Immunol.78:298-305(2013))、ドライアイ疾患(Dohlman et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.54:4081-91(2013))、潰瘍性大腸炎関連腫瘍(Hashimoto et al.,Oncology Letters 6:1271-1276(2013)、腸管腫瘍の自然発生(Nandi et al.PLoS One 9:e97566(2014))、COPD(Brand et al.J.Biol.Chem.290:14717-28(2015))等において増加する。Schutyser et al.,Cytokine and Growth Factor Reviews14:409-426(2003)も参照されたい。米国公開第2011/0212104号は、CCL20を含むいくつかの分子のレベルが、CD患者において上昇したことを開示し、CCL20を、IBD(CD及びUCを含む)の潜在的なバイオマーカーとして提案した。上に引用した参考文献はいずれも、特定のIL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体)を用いた処置のために、IL23媒介疾患を有する患者の集団を階層化するもしくは特定する及び/またはIL23媒介疾患を有する患者の分集団を選択するために使用することができる、CCL20の閾値、レベルまたは範囲を開示しなかった。さらに引用する参考文献はいずれも、IL23媒介疾患を有する患者の集団におけるCCL20レベルの低減と抗IL23療法への応答の増加との間の逆相関を開示しない。本開示に関してより重要なことで、引用文献のいずれもが示さなかったことは、低いまたは低減したレベルのCCL20を、特定のIL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL-23抗体)を用いた処置のため、IL23媒介疾患を有する患者の集団を階層化するまたは特定するために使用することができることである。
【0102】
新しい治療選択肢、例えば、MEDI2070などのIL23を特異的に標的とする抗体は、IL23媒介疾患に罹患している患者のまだ満たされていない医学的需要に対処する可能性を有する。従って、例えば、MEDI2070(例えば、診断バイオマーカーまたはその組み合わせ)及び/または当該分野で公知の他の抗IL23治療剤に対して良好な臨床応答を有する可能性が高い患者の群を特定するための手段は、それらの有用性を非常に増大させ得る。
【0103】
一般に、本明細書に開示の方法は、
(a)IL23媒介疾患または障害(例えば、CD)を有する患者における、単独での、またはIL22、LCN2、CRP、及び/もしくはFCPを含む1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上のバイオマーカーのレベルにおける変化の検出と組み合わせた、CCL20のレベルにおける変化の検出、ならびに
(b)これらの変化とIL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体またはその抗原結合断片を含む)を用いた治療に対する臨床応答の増加の相関に基づく。
【0104】
言い換えると、CCL20の単独での、またはIL22及び/もしくはLCN2との組み合わせ、ならびに他のバイオマーカー、例えば、CRP及び/もしくはFCPとのさらなる組み合わせ、またはその任意の組み合わせにおける特定のレベルは、治療の臨床有効性と相関し、IL23媒介疾患または障害、例えば、CDに罹患している患者の特定の集団における臨床転帰の予測に有用である。
【0105】
「IL23経路バイオマーカー」という用語は、本明細書で用いるとき、ケモカイン(CCモチーフ)リガンド20(CCL20、MIP-3α)及び他のIL23経路タンパク質、例えば、インターロイキン-22(IL22)、リポカリン-2(LCN2)、インターロイキン-17F(IL17F)、IL17A/IL17F(IL17A/F)、S100カルシウム結合タンパク質A12(S100A12)、インターロイキン23受容体(IL23R)、インターロイキン12B(IL12B)、インターロイキン23A(IL23A)、ディフェンシンB2(DEFB-2、DEFB-4)、IL1β、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼ阻害剤メンバー3(SERPINB3)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、CCL6、α3インテグリン、インターロイキン-21(IL21)、CCR6、CCL22、IL1R1、IFNγ、PI3/エラフィン、LL37、RORγ、RORγT、IL26、S100A7、DEFB103B、GM-CSF、またはそれらの組み合わせを含むIL23経路におけるタンパク質を包含する。例えば、Haider et al.J.Immunol.180:1913-1920(2008);Nakae et al.J.Leukocyte Biol.81:1258-1268(2007)、Guttman-Yassky et al.J Immunol.181(10):7420-7427(2008)、Wilson,et al.Nature Immunology 8:950-7(2007)を参照されたく、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、本明細書に開示の方法により使用されるIL23経路バイオマーカー(1つまたは複数)は、CCL20を、単独でまたはIL23経路バイオマーカーIL22及び/もしくはLCN2と組み合わせて含む。いくつかの態様では、本明細書に開示のIL23経路バイオマーカーまたはIL23経路バイオマーカーのセットは、追加のバイオマーカー、例えば、CRP及び/またはFCPと組み合わせることができる、
いくつかの態様では、CCL20は、他のIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/またはLCN2と組み合わせることができ、これを今度は、当該分野で公知の他の炎症経路に存在する1つもしくは複数の分子と、及び/または当該分野で公知のIL23媒介疾患もしくは障害に連結する他のバイオマーカー、これには、例えば、C反応性蛋白(CRP)、カルプロテクチン(S100A8/S100A9複合体)、DMBT1、MIF、PAP/REG3α、REG3γ、ハプトグロビン、インターロイキン-6(IL6)、ラクトフェリン、GP-39(YKL-40)、GPX-2、GPX-3、好中球エラスターゼ等が含まれるがこれらに限定されない、と置換もしくは組み合わせることができる。
【0106】
「バイオマーカー」という用語は、生物学的プロセス、生物学的事象、及び/または病理状態の特有の指標である因子、例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置に対する臨床応答の予測因子を指す。本明細書で用いるとき、バイオマーカーという用語は、臨床的マーカー及び生物学的マーカーの両方を包含する。ゆえに、本発明の文脈では、「バイオマーカー」という用語は、例えば、例としてCCL20(単独で、または他のIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/もしくはLCN2と組み合わせて)、IL23媒介疾患または障害に関連する他のバイオマーカー(例えば、CRP及び/またはカルプロテクチン)、及びそれらの組み合わせを含む、「生物学的バイオマーカー」を包含する。本明細書に開示の生物学的マーカーは、これらのタンパク質をコードする遺伝子(DNA及び/またはRNA)、ならびに代謝産物も含む。
【0107】
「バイオマーカー」という用語は、例えば、性別、年齢、併用薬、喫煙状態、ボディ・マス・インデックス(BMI)等の、生物学的療法に対する応答を予測することができる「臨床バイオマーカー」(「臨床状態マーカー」とも称される)も包含する。例えば、米国公開番号US20150065530、US20140141990、US20130
005596、US20090233304、US20140199709、US20130303398、及びUS20110212104を参照されたく、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22及び/またはLCN2)は、それらのそれぞれの野生型配列に対して(例えば、CCL20、IL22、及びLCN2の場合は、それぞれ配列番号1、4、及び6に対して)80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するタンパク質、及びそれらのそれぞれの野生型配列に対して(例えば、CCL20、IL22、及びLCN2の場合は、それぞれ配列番号2、3、及び5に対して)80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する核酸も含む。
【0109】
本明細書に開示のバイオマーカー、例えば、CCL20、IL22、またはLCN2は、その断片、変異体、及び誘導体も含む。本明細書で用いるとき、「変異体」バイオマーカーは、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸配列変化を含有する。アミノ酸配列変化は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または挿入、好ましくは保存的置換であることができる。変異体バイオマーカーは、アミノ酸置換、欠失または挿入の任意の組み合わせを有することができる。一態様では、バイオマーカー変異体ポリペプチドは、そのアミノ酸配列が少なくとも60、70、80、85、90、95、97、98、99、99.5または100%同一性を対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と共有するように整数のアミノ酸変化を有することができる。
ケモカインリガンド20(CCL20)
「CCL20」という用語は、本明細書で用いるとき、CCL20遺伝子(NCBI参照配列NM_004591.2、配列番号5)によりコードされるケモカインリガンド20タンパク質(NCBI参照配列NP_004582.1、配列番号6)を指す。Uniprotアクセッション番号P7855も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CCL20は、マクロファージ炎症性タンパク質3アルファ(MP3a)、CKb4、肝臓及び活性化調節ケモカイン(LARC)、ST38、MIP3A、MIP-3a、低分子誘導性サイトカインA20(SSCYA20)、またはベータ-ケモカインエクソダス(exodus)-1としても知られ、樹状細胞トラフィッキング及び活性化T細胞の動員において重要な役割を担うと知られている。それは、活性化Th17細胞により生成され、結腸上皮細胞は、過敏性腸疾患におけるCCL20産生の主要部位であると知られている。
【0110】
CCL20のシグナル配列は、26アミノ酸長である、すなわち、配列番号6の残基27~96は成熟CCL20に対応する。
CCL20という用語は、その断片(例えば、CCL20は、位置27~93、27~90、及び28~96に対応する3つの異なる鎖へと切断されることができる)、イソ型(例えば、完全長イソ型1、これは96アミノ酸長である。イソ型2、これは位置27のアラニンを欠くため95アミノ酸長であり、それゆえイソ型1のN末端アラニン残基を欠く成熟ポリペプチドを生じる)、変異体(例えば、V47M、及び当該分野で公知の他の変異体)、及び誘導体(例えば、グリコシル化または脱グリコシル化形態のCCL20タンパク質、またはそうでなければ化学的に修飾された形態のタンパク質)も含む。いくつかの態様では、CCL20という用語は、CCL20遺伝子を指し、これはゲノムDNA、cDNA、mRNA、及びその断片を含む。いくつかの態様では、CCL20という用語は、ストリンジェントな条件下でCCL20遺伝子に特異的にハイブリダイズすること
ができるオリゴヌクレオチドも指す。
【0111】
本出願において考察される他のIL23経路バイオマーカーに関する記述は、以下に提供される。
インターロイキン22(IL22)
「IL22」という用語は、本明細書で用いるとき、IL22遺伝子(NCBI参照配列NM_020525.4、配列番号3)によりコードされるインターロイキン22タンパク質(NCBI参照配列NP_065386.1、配列番号4)を指す。Uniprotアクセッション番号Q9GZX6も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。IL22は、Thl7細胞から発現されると知られている炎症促進性のサイトカインである。Wilson et al.Nature Immunol.8:950(2007)。IL22の血清レベルの増加は、IBDとも関連付けられている。例えば、Schmechel et al.Inflamm.Bowel Dis.14:204(2008)、及びBrand et al.Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol 290:G827-G838(2006)を参照されたい。IL22は、肝臓細胞におけるハプトグロビン発現を誘発する(Dumoutier et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci USA 97:10144(2000))、結腸上皮細胞におけるREG3α、REG3γ、S100A8、S100A9及びハプトグロビンの発現を上方制御する(Zheng et al.Nature Medicine 14:282(2008))、ならびにケラチノサイトにおけるS100A8及びS100A9の発現を上方制御する(Boniface et al.J.Immunol.174:3695(2005))ことが示されている。
【0112】
IL22は、33のアミノ酸シグナル配列を有する、すなわち、配列番号4の残基34~179は、成熟IL22に対応する。Xie et al.J.Biol.Chem.275:31335(2000)。
【0113】
IL22という用語は、その断片、変異体(例えば、S158G及び当該分野で公知の他の変異体)、及び誘導体(例えば、グリコシル化または脱グリコシル化形態のIL22タンパク質、またはそうでなければ化学的に修飾された形態のタンパク質)も含む。いくつかの態様では、IL22という用語は、IL22遺伝子を指し、これはゲノムDNA、cDNA、mRNA、及びその断片を含む。いくつかの態様では、IL22という用語は、ストリンジェントな条件下でIL22遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドも指す。
リポカリン-2(LCN2)
「LCN2」という用語は、本明細書で用いるとき、LCN2遺伝子(NCBI参照配列NM_005564.3、配列番号5)によりコードされるリポカリン-2タンパク質(NCBI参照配列NP_005555.2、配列番号6)を指す。Uniprotアクセッション番号P80188も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。LCN2は、24p3及び好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)としても知られ(Kjeldsen et al.J.Biol.Chem.268:10425-10432(1993))、元々はマウス腎臓細胞及びヒト好中性顆粒において同定された25kDaの分泌性糖タンパク質である。それは、20を超える小さな分泌性タンパク質、例えば、RBP4、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、主要尿タンパク質(MUP)、アポリポタンパク質D(apoD)及びプロスタグランジンDシンターゼ(PODS)を含むリポカリンスーパーファミリーに属する。Akerstrom et
al.Biochim Biophys Acta.1482:1-8(2000)を参照されたい。このタンパク質ファミリーの共通の特徴は、小さい親油性物質、例えば、遊離脂肪酸、レチノイド、アラキドン酸及び様々なステロイドと結合しこれを輸送するそ
れらの能力である(Flower,Biochem J.318:1-14(1996)。LCN2は、クローン病結腸の結腸上皮細胞及び白血球において発現される。
【0114】
LCN2は、20のアミノ酸シグナル配列を有する、すなわち、配列番号6の残基21~198は、成熟LCN2に対応する。Bundgaard et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.202:1468(1994)、国際出願公開番号WO2006/091035、及び米国特許出願公開第20050261191号を参照されたく、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
LCN2という用語は、その断片、イソ型(例えば、残基193と198間の配列DQCIDG(配列番号39)が配列GNGQSG(配列番号40)で置き換えられているイソ型2)、変異体(例えば、G9R、L13S、K82N、I155V、S178Y、及び当該分野で公知の他の変異体)、及び誘導体(例えば、グリコシル化または脱グリコシル化形態のLCN2タンパク質、またはそうでなければ化学的に修飾された形態のタンパク質)も含む。いくつかの態様では、LCN2という用語は、LCN2遺伝子を指し、これはゲノムDNA、cDNA、mRNA、及びその断片を含む。いくつかの態様では、LCN2という用語は、ストリンジェントな条件下でLCN2遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドも指す。
【0116】
本明細書に開示の方法は、上に開示するIL23経路バイオマーカー、例えば、CCL20、IL22、またはLCN2、ならびに下に記載する追加のバイオマーカー、例えばCRP及び/またはFCPを含むことができる。
C反応性蛋白(CRP)
CCL20ならびに本明細書に開示の他のIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/またはLCN2は、診断、予測、またはモニタリング目的のために、他のIL23経路バイオマーカー、治療介入点の下流にあるバイオマーカー(例えば、IL23)、またはある特定のIL23媒介疾患もしくは障害に特異的なバイオマーカーと組み合わせることができる。例えば、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、CDまたはUCを含む)については、かかる特異的なバイオマーカーは、C反応性蛋白(CRP)及び/または便中カルプロテクチン(FCP)を含み、これらを下に記載する。
【0117】
「CRP」という用語は、本明細書で用いるとき、CRP遺伝子(NCBI参照配列NM_000567.2、配列番号9)によりコードされるC反応性蛋白(NCBI参照配列NP_000558.2、配列番号10)を指す。Uniprotアクセッション番号P02741も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CRP(PTX1としても知られる)は、組織傷害または炎症の後に濃度が劇的に上昇する、急性期反応物質として長らく認識されている。CRPレベルの上昇は、冠動脈疾患に関連付けられている。CRPは、炎症性腸疾患、特にクローン病のマーカーとして長らく使用されている。例えば、Vermerie et cd.(2004)Inflamm.Bowel Dis.10:661及びKeshet et al.(2009)Am.J.Med.ScL 337:248を参照されたい。ヒトにおいてバイオマーカーとして使用するために、CRPレベルは、カスタム仕様のELISAアッセイを使用して、または、例えば、市販のELISAキット、例えば、R&D Systems(Minneapolis,Minnesota,USA)製のQUANTIKINE(登録商標)ヒトCRPイムノアッセイキット及びAssayPro(St.Charles,Missouri,USA)製のAssayMax(登録商標)ヒトラクトフェリンELISAキットを使用して決定してよい。
【0118】
CRPは、18のアミノ酸シグナル配列を有する、すなわち、配列番号10の残基19~224は、成熟CRPに対応する。
CRPという用語は、その断片、変異体(例えば、K1G、T1G、L170V、位置16で開始する配列YSIFSYATKRQDNEIL(配列番号41)の配列TVFSRMPPRDKTMRFF(配列番号42)での置換、位置80~98からの配列の欠失、及び当該分野で公知の他の変異体)、及び誘導体(例えば、残基1~19シグナルペプチドの切断後に産生されるピロリジンN末端カルボン酸修飾形態のCRP、及び他の化学的に修飾された形態のタンパク質)も含む。イソ型2のCRPでは、位置67~199の配列が喪失している。いくつかの態様では、CRPという用語は、CRP遺伝子を指し、これはゲノムDNA、cDNA、mRNA、及びその断片を含む。いくつかの態様では、CRPという用語は、ストリンジェントな条件下でCRP遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドも指す。
便中カルプロテクチン(S100A8/S100A9)(FCP)
「FCP」という用語は、本明細書で用いるとき、便中カルプロテクチンを指す。FCPは、好中球、単球、及び上皮細胞により炎症性条件下で産生される哺乳類タンパク質S100A8及びS100A9の複合体である、Foell et al.J.Leukocyte Biol.81:28(2007)。カルプロテクチンは、栄養素Mn2+及びZn2+のキレート化により膿瘍中のStaphylococcus aureusの増殖を阻害することができる。Corbin et al.Science 319:962(2008)。カルプロテクチンは、長らく腸炎症と関連付けられ、IBDのためのマーカーとして提案されている。例えば、Lugering et al.Digestion 56:406(1995);von Roon et al.Am.J.Gastroenterol.102:803(2007);Leach et al.Scand.J.Gastroenterol.42:1321(2007);Langhorst et al.Am.J.Gastroenterol.103:162(2008)を参照されたい。便中のその測定は、活動性IBDの検出及び疾患の再発予測において有用であると示されている。Angriman et al.Clinica Chimica Acta 381:63(2007)。2006年に、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、PHICAL(登録商標)便中カルプロテクチンイムノアッセイ(Genova Diagnostics,Inc.,Asheville,NC,USA)のIBDの診断における使用を認可した。米国特許番号US4833074、US5455160、及びUS6225072を参照されたい。この検査は、比色読み出しを伴うELISAアッセイを必然的に含む。他のヒトカルプロテクチン検出キットも市販されている。例えば、米国特許第6,225,072号を参照されたい。100μg/便のgを超えるレベルでの便中カルプロテクチンの検出は、IBDに関して診断的である。von Roon et al.Am.J.Gastroenterol.102:803(2007)。PHICAL(登録商標)検査で提供される文献によると、50μg/gを超える便中カルプロテクチンレベルは、「陽性」結果とみなされ、これは、IBD患者における1700μg/g超(例えば、200~20.000μg/g)、及び正常な健常被験者での25μg/gの便中カルプロテクチンレベル中央値に基づく。
【0119】
S100A8(S100カルシウム結合タンパク質A8)(NCBI参照配列NP_002955.2、配列番号12)は、カルグラニュリンA、嚢胞性線維症抗原、骨髄関連タンパク質8、顆粒球L1タンパク質、カルプロテクチンL1Lサブユニット、CFAG、白血球L1複合体軽鎖、移動阻害因子関連タンパク質8、MRP-8、S100カルシウム結合タンパク質A8、及び尿路結石タンパク質バンドAとしても知られ、S100A8遺伝子(NCBI参照配列NM_002964.3、配列番号11)によりコードされる。Uniprotアクセッション番号P05109も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0120】
S100A9(S100カルシウム結合タンパク質A9)(NCBI参照配列NP_002956.1、配列番号14)は、カルグラニュリンB、嚢胞性線維症抗原B、骨髄関
連タンパク質14、カルプロテクチンL1Hサブユニット、白血球L1複合体重鎖、移動阻害因子関連タンパク質14、及びMRP-14としても知られ、S100A9遺伝子(NCBI参照配列NM_002965.3、配列番号13)によりコードされる。
【0121】
S100A8またはS100A9はいずれも古典的なシグナル配列を有さない。Rammes et al.J.Bio.Chem.272:9496(1997)。Uniprotアクセッション番号P06702も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。カルプロテクチンという用語は、S100A8及びS100A9タンパク質の断片、変異体も含む。例えば、S100A8のイニシエータ-メチオニンを除去して、アミノ酸残基2~93を含むN末端で処理されたS100A8タンパク質を得ることができる。また、S100A8タンパク質の位置42のシステインアミノ酸をS-ニトロシル化して、S-ニトロソシステインを得ることができる。S100A8タンパク質の変異体では、アミノ位置80~93の配列、VAAHKKSHEESHKE(配列番号43)がWQPTKKAMKKATKSS(配列番号44)と置き換えられる。カルプロテクチンのS100A9サブユニットの公知の変異体には、C3A、E36Q、M63A、E78Q、M81A、M83A、S6H、K25F、H28L、及びH20Rが含まれる。S100A9のイニシエータ-メチオニンを除去して、アミノ酸残基2~114を含むN末端で処理されたS100A9タンパク質を得ることができる。N末端Metの除去後、N末端Thrをブロックすることができる。S100A9の位置3のシステインアミノ酸も、一過的にS-ニトロシル化して、S-ニトロソシステインを得ることができる。Cys3のS-ニトロシル化は、iNOS-S100A8/S100A9複合体が関与するトランスニトロシラーゼ(transnitrosylase)機構を通したCys247でのGAPDHのLDL(ox)誘発性S-ニトロシル化に関係づけられる。S100A9の位置105のヒスチジン(His105)を、pros-メチルヒスチジンに修飾することもできる。加えて、S100A9の位置113のトレオニン(Thr113)をMAPK14によりリン酸化して、ホスホトレオニンを得ることができる。
【0122】
いくつかの態様では、カルプロテクチンまたはFCPという用語は、S100A8及び/またはS100A9をコードする遺伝子を指し、これはゲノムDNA、cDNA、mRNA、及びその断片を含む。いくつかの態様では、FCPまたはカルプロテクチンという用語は、ストリンジェントな条件下でS100A8またはS100A9をコードする遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドも指す。
【0123】
本開示のいくつかの態様では、本明細書に開示の方法は、例えば、以下に開示するバイオマーカーのセットのいずれかを使用して実行することができる:
(a)CCL20単独
(b)少なくとも1つの追加のIL23経路バイオマーカーと組み合わせたCCL20、例えば、
a.CCL20、及びIL22
b.CCL20、及びLCN2
c.CCL20、IL22、及びLCN2
(c)炎症に関連する少なくとも1つの追加のバイオマーカーと組み合わせたCCL20、例えば、
a.CCL20、及びFCP(S100A8及び/またはS100A9)
b.CCL20、及びCRP
c.CCL20、FCP(S100A8及び/またはS100A9)、及びCRP
(d)少なくとも1つの追加のIL23経路バイオマーカー及び炎症に関連する少なくとも1つの追加のバイオマーカーと組み合わせたCCL20、例えば、
a.CCL20、IL22、及びFCP(S100A8及び/またはS100A9)
b.CCL20、IL22、及びCRP
c.CCL20、LCN2、及びFCP(S100A8及び/またはS100A9)
d.CCL20、LCN2、及びCRP
e.CCL20、IL22、LCN2、及びFCP(S100A8及び/またはS100A9)
f.CCL20、IL22、LCN2、及びCRP
g.CCL20、IL22、FCP(S100A8及び/またはS100A9)、及びCRP
h.CCL20、LCN2、FCP(S100A8及び/またはS100A9)、及びCRP
i.CCL20、IL22、LCN2、FCP(S100A8及び/またはS100A9)、及びCRP
(e)IL17F、IL17A/F、IL23R、IL12B、IL6、IL21、TNF、CCR6、CCL22、IL1R1、IFN-γ、S100A12、DEFB-2、DEFB-4、IL1、SERPINB3、PI3/エラフィン、LL37、RORγ、RORγT、IL26、S100A7、DEFB103B、及びGM-CSFからなる群より選択されるバイオマーカーの少なくとも1つと組み合わせた上に開示するバイオマーカーの組み合わせ。
【0124】
本開示のいくつかの態様では、本明細書に開示の方法は、IL23媒介疾患、例えば、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、CDまたはUCを含む)において、IL22及び/またはLCN2ならびに任意選択の追加のバイオマーカー、例えば、CRP及び/またはカルプロテクチン、ならびにその任意の組み合わせまたはサブセットを含むバイオマーカーのセットを使用することにより、適用することができる。
【0125】
本出願のあらゆる項を通して、「及び/または」で終わる2つ以上のバイオマーカーの列挙、例えば、「CCL20、IL22、及び/またはLCN2」は、リストの個々の構成要素ならびにそれらの組み合わせを包含し、リスト内の各構成要素が「及び/または」という用語により連結されるとみなされる。ゆえに、「CCL20、IL22及び/またはLCN2」は、「CCL20及び/またはIL22及び/またはLCN2」に等しく、CCL20単独、IL22単独、LCN2単独、CCL20+IL22、CCL20+LCN2、IL22+LNC2、及びCCL20+IL22+LCN2を包含する。
【0126】
III.CCL20及び他のバイオマーカーの検出及び定量化
CCL20及び他の本明細書に開示のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP及び/またはFCP(それらの発現されたタンパク質レベル、またはそれらのそれぞれの核酸レベル、例えばmRNAレベルのいずれか)を、当業者に周知の多くの方法のいずれかにより検出し、定量化することができる。これらの方法には、生化学的分析方法、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィー、質量分光法等、または様々な免疫学的方法、例えば、流体またはゲル沈降素反応、免疫拡散法(一重または二重)、免疫組織化学、アフィニティークロマトグラフィー、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISAs)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロット法、等が含まれる。
【0127】
いくつかの態様では、CCL20または任意の他の本明細書に開示のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP及び/またはFCPを検出及び/または定量化するために使用する方法は、試料中の遺伝子または遺伝子セグメントによりコードされるRNA、例えば、mRNA、のレベル、濃度、または量を測定することを含む。RNA、例えば、mRNAのレベルは、ノーザンブロッティングまたは定量PCR(qPCR)、例えば、逆転写qPCR、リアルタイムqPCR、及びエンドポイントqPCRなどの方法を
含むがこれらに限定されない当該分野で公知の任意の技術により測定されてよい。あるいは、「タグをベースとする」技術、例えば、遺伝子発現連続解析法(SAGE)及びRNA-Seqを実行して、異なるmRNAの細胞濃度の相対測定を提供してよい。
【0128】
いくつかの態様では、CCL20及び他の本明細書に開示のバイオマーカーを検出及び/または定量化するために使用する方法は、試料中の遺伝子または遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質産物のレベル、濃度、または量を測定することを含む。タンパク質産物の発現レベルを決定する好適な方法は、当該分野で公知であり、イムノアッセイ(例えば、ウェスタンブロット法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはサンドイッチイムノアッセイもしくは免疫組織化学アッセイ)を含む。
【0129】
イムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology
Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites&Terr,eds.(1991)を参照されたい。例えば、米国特許出願公開第2007/0212723 A1号、Shang et al.,Circulation Research 101:1146-1154(2007);及び国際特許出願公開番号WO/2012/094651及びWO/2010/129964も参照されたい。
【0130】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー、例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRPは、電気泳動ポリペプチド分離(例えば、1次元または2次元電気泳動)において検出及び/または定量化することができる。電気泳動技術を使用してポリペプチドを検出する手段は、当業者に周知である(一般的に、R.Scopes(1982)Polypeptide Purification,Springer-Verlag,N.Y.;Deutscher,(1990)Methods
in Enzymology Vol.182:Guide to Polypeptide Purification,Academic Press,Inc.,N.Y.を参照されたい)。
【0131】
いくつかの態様では、ウェスタンブロット(免疫ブロット)分析は、試料中のCCL20、IL22、LCN2、FCP、CRP、またはその任意の組み合わせの存在を検出及び定量化するために使用される。この技術は、一般的に、試料ポリペプチドをゲル電気泳動により分子量に基づき分離すること、分離されたポリペプチドを好適な固体支持体(例えば、ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、または誘導体化ナイロンフィルター)へと移すこと、及び試料を被分析物と特異的に結合する抗体とインキュベートすることを含む。被分析物に特異的に結合する抗体は、直接標識されてよく、またあるいは、一次抗体のドメインに特異的に結合する標識された抗体(例えば、標識されたヒツジ抗マウス抗体)を使用してその後検出されてよい。
【0132】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー、例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRPは、生体試料中で、イムノアッセイを使用して検出及び/または定量化することができる。イムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies
in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites&Terr,eds.(1991)も参照されたい。いくつかの態様では、イムノアッセイは1つもしくは複数のCC
L20、IL22、LCN2、FCPもしくはCRP抗体またはその抗原結合断片を使用することができ、これらはそれぞれヒトCCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRPを認識する。
【0133】
いくつかの態様では、イムノアッセイは、サンドイッチイムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)またはサンドイッチ電気化学発光(ECL)アッセイを含み、ここで本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)に対する第一の抗体またはその抗原結合断片は、「捕捉」抗体として使用される。捕捉抗体を固体支持体に付着させ、試料または標準物からの抗原を捕捉抗体に結合させ、次いで検出可能標識を含む同じバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)に対する第二の抗体またはその抗原結合断片、すなわち、「検出」抗体を加える。検出抗体は、酵素反応、ECL反応、放射能、または当該分野で公知の任意の他の検出法のいずれかにより検出することができる。
【0134】
いくつかの態様では、イムノアッセイは、以下のステップを含む。まず、捕捉抗体またはその断片を、固体支持体、例えば、マルチウェルプレートまたは当業者に公知の他のアッセイデバイスに結合させる。捕捉抗体を、ある期間、例えば一晩にわたって付着させ、次いで、未結合抗体を除去する。プレートを次いで洗浄して、任意の未結合捕捉抗体を除去することができる。プレートを次いでブロッキング溶液を用いて処理して、非特異的タンパク質を固体支持体の任意の未結合領域に結合させることができる。典型的なブロッキング溶液には、無関連タンパク質、例えば、脱脂粉乳または血清アルブミンが含まれる。プレートを次いで再度洗浄して、任意の未結合ブロッキング溶液を除去することができる。次に、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)を含有すると思われる試料を、プレートに加える。試料は、典型的には、連続的に希釈され、2通りまたは3通りでプレーティングされる。対照としては、標準量のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)またはその好適な断片が含まれ、様々な陰性対照も含まれる。抗原を、捕捉抗体に、ある期間、例えば1時間にわたって室温で結合させる。インキュベーションの後、プレートを次いで洗浄して、任意の未結合抗原を除去することができる。次に、検出抗体を加える。検出抗体は、典型的には、捕捉抗体が結合するエピトープと異なるものよりも、バイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)におけるエピトープに特異的に結合する抗体である。検出抗体を標識することまたは標識しないことも可能である。検出抗体を標識しない場合、標識された二次抗体の追加のさらなるステップが必要となり、これは当業者に周知である。
【0135】
検出抗体は、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを用いて直接標識することができる、または酵素を結合させ得るタグを用いて標識することができる。例えば、検出抗体を、ビオチンにコンジュゲートさせることができ、酵素とコンジュゲートしたストレプトアビジンをビオチンタグに結合させることにより、次のステップにて酵素を付着させる。あるいは、検出抗体を、化学発光性、蛍光性、またはECLタグにコンジュゲートすることができる。後者の一例は、ルテニウムキレートである。インキュベーション後、プレートを次いで洗浄して、任意の未結合検出抗体を除去することができる。検出抗体の検出は、使用される検出抗体の種類に基づいて変動する方法により達成することができる。
【0136】
検出抗体をビオチンでタグ付けする場合、酵素とコンジュゲートしたストレプトアビジンを加え、未結合ストレプトアビジンを洗い落とし、例えば、分光光度計で読み取ることができる比色反応を提供する基質を加える。検出抗体をルテニウムキレートにコンジュゲートする場合、プレートに電流を流し、発光を測定する。
【0137】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)を検出するためのイムノアッセイは、競合または非競合のいずれであることもできる。非競合イムノアッセイは、捕捉された被分析物の量を直接測定するアッセイである。競合アッセイでは、試料中の被分析物の量は、試料中に存在する被分析物により捕捉薬剤から除外された(または競合により排除された)加えられた(外因性)標識被非分析物の量を測定することにより間接的に測定される。一つの競合アッセイでは、既知の量の、例えば、標識CCL20が試料に加えられ、試料を次いで捕捉薬剤と接触させる。抗体に結合した標識CCL20の量は、試料中に存在するCCL20の濃度と反比例する。
【0138】
いくつかの態様では、本方法は、患者試料中のCCL20(または本明細書に開示の任意の他のバイオマーカー)のレベルを直接測定し、その場合、絶対レベルは、例えば、精製された完全長CCL20またはCCL20断片(または本明細書に開示の完全長バイオマーカーまたはその断片)を使用してイムノアッセイ結果を標準曲線上にプロットすることにより算出される。検出抗体から検出されたシグナルを次いで、様々な標準及びプレート上に含まれた対照に基づいて定量化することができる。結果を標準曲線上にプロットすることにより、試験試料中のCCL20(または本明細書に開示の任意の他のバイオマーカー)の絶対レベルを、例えば、バイオマーカーのpgもしくはng/mL、またはバイオマーカーのpgもしくはng/総タンパク質のmgにて算出することができる。
【0139】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)に関する検出アッセイは、当業者に周知の標準的な方法に従って、(正もしくは負または被分析物の量として)スコア付けすることができる。スコア付けする具体的な方法は、アッセイ形式及び標識の選択に依存するだろう。例えば、ウェスタンブロットアッセイは、酵素標識により産生された着色産物を可視化することによりスコア付けすることができる。正しい分子量で明瞭に目視できる着色バンドまたは箇所は、正の結果としてスコア付けされ、一方で明瞭に目視できる箇所またはバンドの不在は負としてスコア付けされる。バンド及び箇所の強度は、被分析物濃度の定量的尺度を提供することができる。
【0140】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)の測定された発現レベルは、発現レベルの1つより多い測定に基づく代表発現レベルまたは平均発現レベルを表す。いくつかの態様では、測定された発現レベルは、同じ試料の発現レベルのいくつかの測定の代表または平均である。いくつかの態様では、測定された発現レベルは、同じ被験者から得られた同じ成分を含有する異なる試料の測定レベルのいくつかの測定の代表または平均である。いくつかの態様では、測定された発現レベルは、当業者に周知の技術を使用してRNA Seq技術においてなされるように、分位値正規化される。
【0141】
「レベル」という用語は、本明細書に開示のバイオマーカーに、例えば、「CCL20レベル」、「IL22レベル」、「LCN2レベル」、「FCPレベル」、または「CRPレベル」のように適用されるとき、生体試料中のバイオマーカー(タンパク質発現または遺伝子発現)の存在または発現を検出するために任意の分析方法を用いて行われ、生体試料中のバイオマーカーの、に関する、またはそれに対応する、存在、不在、絶対量または濃度、相対量または濃度、力価、発現レベル、測定されたレベルの比率等を示す測定値を指す。
【0142】
「値」または「レベル」の正確な性質は、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)を検出するために採用される特定の分析方法(例えば、イムノアッセイ、質量分析法、in vivo分子イメージング
、遺伝子発現プロファイリング、アプタマーに基づくアッセイ等)の特定の設計及び構成要素に依存する。例えば、米国特許第2010/00221752号を参照されたい。
【0143】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)への言及とともに本明細書で用いるとき、「上昇したレベル」、「増加したレベル」、「より高いレベル」、または「高レベル」という用語は、対照試料において測定されたバイオマーカーの発現レベルもしくは範囲(「正常レベル」)、または本明細書に開示の特定の閾値よりも高い生体試料(例えば、血清)中のレベルを指す。これらの閾値には、例えば、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを含むCCL20イムノアッセイを使用して測定したCCL20血清タンパク質に関する約22.6pg/mL、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを含むIL22イムノアッセイを使用して測定したIL22血清タンパク質に関する約15.6pg/mL、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを含むLCN2イムノアッセイを使用して測定したLCN2血清タンパク質に関する約215ng/mLが含まれる。
【0144】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)への言及とともに本明細書で用いるとき、「低下したレベル」、「減少したレベル」、「低減したレベル、」または「低レベル」という用語は、対照試料において測定されたバイオマーカーの発現レベルもしくは範囲(「正常レベル」)、または本明細書に開示の特定の閾値よりも低い生体試料(例えば、血清)中のレベルを指す。これらの閾値には、例えば、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを含むCCL20イムノアッセイを使用して測定したCCL20血清タンパク質に関する約22.6pg/mL、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを含むIL22イムノアッセイを使用して測定したIL22血清タンパク質に関する約15.6pg/mL、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを含むLCN2イムノアッセイを使用して測定したLCN2血清タンパク質に関する約215ng/mLが含まれる。
【0145】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRP)に関する正常レベルまたは範囲は、標準慣行に従って定義することができる。ゆえに、特定の生体試料中で測定されたレベルは、類似する正常試料において決定されたレベルまたはレベルの範囲と比較することができる。この文脈では、正常試料または対照試料は、例えば、IL23媒介疾患または障害の検出可能な症状を有さない個体から得た試料となる。ゆえに、例えば、CCL20のレベルは、試験試料中のCCL20のレベルが、正常試料、対照試料、または本明細書に開示の特定の閾値レベルより低いレベルまたは範囲で存在するときに、低レベル、低下したレベル、減少したレベル、低減したレベル、またはその語法にかなった変形と言われる。これらの閾値には、例えば、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを含むCCL20イムノアッセイを使用して測定したCCL20血清タンパク質に関する約22.6pg/mL、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを含むIL22イムノアッセイを使用して測定したIL22血清タンパク質に関する約15.6pg/mL、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを含むLCN2イムノアッセイを使用して測定したLCN2血清タンパク質に関する約215ng/mLが含まれる。
【0146】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRP)のレベルは、それが、正常試料もしくは対照試料、または本明細書に開示の特定の閾値レベルよりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%
、195%、200%、205%、210%、215%、220%、225%、230%、235%、240%、245%、250%、255%、260%、265%、270%、275%、280%、285%、290%、295%、300%、305%、310%、315%、320%、325%、330%、335%、340%、345%、350%、355%、360^、365%、370%、375%、380%、385%、390%、395%、400%、405%、410%、415%、420%、425%、420%、435%、440%、445%、450%、455%、460%、465%、470%、475%、480%、485%、490%、495%、または500%高い場合に、上昇したまたは高いとみなされる。
【0147】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRP)のレベルは、それが、正常試料もしくは対照試料、または本明細書に開示の特定の閾値レベルよりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、200%、205%、210%、215%、220%、225%、230%、235%、240%、245%、250%、255%、260%、265%、270%、275%、280%、285%、290%、295%、300%、305%、310%、315%、320%、325%、330%、335%、340%、345%、350%、355%、360^、365%、370%、375%、380%、385%、390%、395%、400%、405%、410%、415%、420%、425%、420%、435%、440%、445%、450%、455%、460%、465%、470%、475%、480%、485%、490%、495%、または500%低い場合に、減少したまたは低いとみなされる。
【0148】
本明細書で用いるとき、「閾値レベル」(またあるいは、本明細書にて「閾値」または「所定の閾値レベル」)という用語は、比較目的の対象となり得る本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRP)のレベルを指す。いくつかの態様では、閾値レベルは、健常(疾患を有さない)被験者の対照集団から採取した試料からのタンパク質または核酸の発現レベルのレベルの代表値として表されるタンパク質または核酸の発現レベルであってよい。いくつかの態様では、閾値レベルは、同じ被験者における異なる時点でのレベル、例えば、本アッセイの前、例えば、被験者が疾患を発症する前または治療を開始する前に決定されたレベルであってよい。一般に、試料は、共通因子により正規化される。例えば、体液試料は、体液体積により正規化され、細胞含有試料は、タンパク質含量または細胞数により正規化される。別の態様では、閾値レベルは、対応する対象試料または、例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置に応答しない被験者の対照群における同じバイオマーカーの発現のレベルも指す。
【0149】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)の発現レベルは、閾値レベル(またあるいは本明細書の「所定の閾値レベル」)と比較される。ゆえに、本明細書で用いるとき、「閾値レベル」または「所定の閾値レベル」という用語は、それに対してタンパク質または核酸の測定された発現レベルが比較されるカットオフまたは閾値である。
【0150】
既知の対照試料に対する比較に基づき、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)に関する「閾値レベル」を決定す
ることができ、バイオマーカーの閾値レベルを超えるまたは下回る検査試料は、試料を採取された患者がIL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置から利益を得るまたは得ない可能性があることを示す。例えば、CCL20については、CCL20に関する閾値レベルを下回る試料は、患者がIL23アンタゴニストを用いた処置から利益を得る可能性があることを示すだろう。逆に、CCL20に関する閾値レベルを超える試料は、患者がIL23アンタゴニストを用いた処置から利益を得ない可能性があることを示すだろう。例えば、IL22またはLCN2については、IL22またはLNC2に関する閾値レベルを超える試料は、患者がIL23アンタゴニストを用いた処置から利益を得る可能性があることを示すだろう。逆に、IL22またはLCN2に関する閾値レベルを下回る試料は、患者がIL23アンタゴニストを用いた処置から利益を得ない可能性があることを示すだろう。
【0151】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)に関する閾値レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)は、試料の種類(例えば、血清、肺組織、皮膚)、疾患の種類(例えば、喘息、IPF、COPD、クローン病、UC、またはアトピー性皮膚炎)、及びいくつかの場合では、使用されるアッセイに対してあらかじめ決められている及び適合していることができる。
【0152】
実施例に記載するように、中程度から重度クローン病患者の集団からの血清試料から実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して定量化したCCL20タンパク質レベルは、22.6pg/mL(試験における患者の集団のCCL20レベル中央値)以下のCCL20レベルを有する患者は抗IL23抗体に対して増加した臨床応答を有した一方で、22.6pg/mLより高いCCL20レベルを有する患者はプラセボ群のそれと同様の減少した臨床応答を有したことを示す。従って、本明細書に開示の方法のいくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約22.6pg/mL CCL20タンパク質発現である。いくつかの他の態様では、所定のCCL20閾値レベルは、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、IL23媒介疾患を有する複数の患者から測定した血清中のCCL20の約中央値である。いくつかの態様では、「低レベルのCCL20」(CCL20低)は、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約22.6pg/mL CCL20タンパク質発現の中央値を下回る値であると定義される。いくつかの態様では、「高レベルのCCL20(CCL20高)は、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約22.6pg/mL CCL20タンパク質発現の中央値以上の値であると定義される。
【0153】
いくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約22.6pg/mL+/-10pg/mL
CCL20タンパク質発現である。従って、CCL20閾値レベルは、約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32または33pg/mLであることができる。いくつかの態様では、「低レベルのCCL20」(CCL20低)は、これらの閾値レベルの1つを下回る値であると定義され、一方で「高レベルのCCL20」(CCL20高)は、同じ閾値レベル以上の値であると定義される(すなわち、閾値レベルを20pg/mLとした場合、低レベルのCCL20は、20pg/mL未満となり、高レベルのCCL20は、20pg/mL以上となる)。
【0154】
いくつかの態様では、所定のCCL20閾値は、表6に報告する1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目の十分位数のCCL20ベースラインレベルに対応す
る。いくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約11.8pg/mL、14.5pg/mL、約16.3pg/mL、約20.8pg/mL、約22.6pg/mL、約26.5pg/mL、または約32.1pg/mL CCL20タンパク質発現である。いくつかの態様では、「低レベルのCCL20」(CCL20低)は、これらの閾値レベルの1つを下回る値であると定義され、一方で「高レベルのCCL20」(CCL20高)は、同じ閾値レベル以上の値であると定義される。
【0155】
いくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で5pg/mL~55pg/mL、例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35pg/mLの濃度のCCL20に対応する。
【0156】
実施例に記載するように、中程度から重度クローン病患者の集団からの血清試料から実施例5に記載のIL22イムノアッセイを使用して定量化したIL22タンパク質レベルは、15.6pg/mL(試験における患者の集団のIL22レベルの中央値)以上の高いまたは上昇したIL22レベルを有する患者が、抗IL23抗体に対して増加した臨床応答を有した一方で、15.6pg/mL未満の低いまたは減少したIL22レベルを有する患者はプラセボ群のそれと同様の減少した臨床応答を有したことを示す。従って、本明細書に開示の方法のいくつかの態様では、所定のIL22閾値レベルは、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約15.6pg/mL IL22タンパク質発現である。いくつかの他の態様では、所定のIL22閾値レベルは、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、IL23媒介疾患を有する複数の患者から測定した血清中のIL22の約中央値である。いくつかの態様では、「低レベルのIL22」(IL22低)は、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約15.6pg/mL IL22タンパク質発現の中央値を下回る値であると定義される。いくつかの態様では、「高レベルのIL22」(IL22高)は、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して。血清中で約15.6pg/mL IL22タンパク質発現の中央値以上の値であると定義される。
【0157】
いくつかの態様では、所定のIL22閾値レベルは、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約15.6pg/mL+/-10pg/mL IL22タンパク質発現である。従って、IL22閾値レベルは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26pg/mLであることができる。いくつかの態様では、「低レベルのIL22」(IL22低)は、これらの閾値レベルの1つを下回る値であると定義され、一方で「高レベルのIL22」(IL22高)は、同じ閾値レベル以上の値であると定義される(すなわち、閾値レベルを20pg/mLとした場合、低レベルのIL22は、20pg/mL未満となり、高レベルのIL22は、20pg/mL以上となる)。
【0158】
いくつかの態様では、所定のIL22閾値は、表4に報告する2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目または8番目の十分位数のIL22ベースラインレベルに対応する。いくつかの態様では、所定のIL22閾値レベルは、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約7.9pg/mL、約11.3pg/mL、約12.7pg/mL、約15.6pg/mL、約19.6pg/mL、約23.1pg/mL、約31.4pg/mLまたは約46.8pg/mL IL22タンパク質発現である。いくつかの態様では、「低レベルのIL22」(IL22低)は、これらの閾値レベルの1つを下回る値であると定義され、一方で「高レベルのIL22」(IL22高)は、同じ閾値レベル以上の値であると定義される。
【0159】
いくつかの態様では、所定のIL22閾値レベルは、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で7.9pg/mL~31.4pg/mL、例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31pg/mLの濃度のIL22に対応する。
【0160】
実施例に記載するように、中程度から重度クローン病患者の集団からの血清試料から実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して定量化したLCN2タンパク質レベルは、215ng/mL(試験における患者の集団のLCN2レベルの中央値)以上の高いまたは上昇したLCN2レベルを有する患者が、抗IL23抗体に対して増加した臨床応答を有した一方で、215ng/mL未満の低いまたは減少したLCN2レベルを有する患者は減少した臨床応答を有したことを示す。従って、本明細書に開示の方法のいくつかの態様では、所定のLCN2閾値レベルは、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約215ng/mL LCN2タンパク質発現である。いくつかの他の態様では、所定のLCN2閾値レベルは、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して測定して、IL23媒介疾患を有する複数の患者から測定される血清中のLCN2の約中央値である。いくつかの態様では、「低レベルのLCN2」(LCN2低)は、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約215ng/mL LCN2タンパク質発現の中央値を下回る値であると定義される。いくつかの態様では、「高レベルのLCN2」(LCN2高)は、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約215ng/mL LCN2タンパク質発現の中央値以上の値であると定義される。
【0161】
いくつかの態様では、所定のLCN2閾値レベルは、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して測定して、約215ng/mL+/-70ng/mL LCN2タンパク質発現である。従って、LCN2閾値レベルは、約145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280または285ng/mLであることができる。いくつかの態様では、「低レベルのLCN2」(LCN2低)は、これらの閾値レベルの1つを下回る値であると定義され、一方で「高レベルのLCN2」(LCN2高)は、同じ閾値レベル以上の値であると定義される(すなわち、閾値レベルを250ng/mLとした場合、低レベルのLCN2は、250ng/mL未満となり、高レベルのLCN2は、250ng/mL以上となる)。
【0162】
いくつかの態様では、所定のLCN2閾値は、表5に報告する1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目または7番目の十分位数のLCN2ベースラインレベルに対応する。いくつかの態様では、所定のLCN2閾値レベルは、実施例4に記載のイムノアッセイを使用して測定して、血清中で約142.8ng/mL、約163.6ng/mL、約184.3ng/mL、約201.3ng/mL、約214.6ng/mL、約233.4ng/mL、約261.1ng/mL、約294.8ng/mL、または約326.6ng/mL LCN2タンパク質発現である。いくつかの態様では、「低レベルのLCN2」(LCN2低)は、これらの閾値レベルの1つを下回る値であると定義され、一方で「高レベルのLCN2」(LCN2高)は、同じ閾値レベル以上の値であると定義される。
【0163】
いくつかの態様では、所定のLCN2閾値レベルは、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを使用して測定して、血清中で143ng/mL~261ng/mL、例えば、約145、150、155、160、165、170、175、180、185、190
、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255または260ng/mLの濃度のLCN2に対応する。
【0164】
いくつかの態様では、閾値レベルは、試料中の本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCPまたはCRP)の存在または不在を検出するために使用される市販のイムノアッセイの製造業者のマニュアルに報告されている通りに健常ボランティアから得られた試料から測定された代表または平均発現レベルである。
【0165】
CCL20を定量化するための固相サンドイッチELISAキットは、R&D Systemsから入手可能である(ヒトCCL20/MIP-3アルファQuantikine(登録商標)ELISAキット、カタログ番号DM3A00)。本明細書に開示の他のバイオマーカーは、他のR&D System製のQuantikine(登録商標)ELISAキット、すなわち、IL22(ヒトIL22 Quantikine(登録商標)ELISAキット、カタログ番号D2200)、LCN2(ヒトリポカリン-2/NGAL Quantikine(登録商標)ELISAキット、カタログ番号DLCN20)及びCRP(ヒトC反応性蛋白/CRP Quantikine ELISAキット、カタログ番号DCRP00)を使用して定量化することもできる。ヒトCCL20/MIP-3アルファQuantikine ELISAキット、ヒトIL22Quantikine(登録商標)ELISAキット、ヒトリポカリン-2/NGAL Quantikine(登録商標)ELISAキット、及びヒトC反応性蛋白/CRP Quantikine ELISAキットに関するR&D Systemsの製造業者のマニュアルは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。便中カルプロテクチンを定量化するために利用可能な試験は多数ある。6つの市販の便中カルプロテクチン試験の概説及び比較:3つの迅速なイムノクロマトグラフィーアッセイ(Buhlmann Quantum Blue、Eurospital Calfast、及びBiotec Certest)、2つのELISA(Eurospital及びCalprolab)、及び1つの自動化イムノアッセイ(Phadia EliA)については、Labaere et al.United European Gastroenterology Journal 2:30-37(2014):を参照されたい。
【0166】
ヒトCCL20 QUANTIKINE(登録商標)アッセイの製造業者のマニュアルに示される通りに、明らかに健常なボランティアからの血清(n=74)、EDTA血漿(n=34)、及びヘパリン血漿(n=34)中で検出可能なCCL20レベルは、CCL20 QUANTIKINE(登録商標)イムノアッセイを使用して評価し、CCL20平均値は、それぞれ、血清では26.3pg/mL、EDTA血漿では14.3pg/mL、及びヘパリン血漿では14.2pg/mLであった。従って、本明細書に開示の方法のいくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、血清では約26.3pg/mL、EDTA血漿では約14.3pg/mL、及びヘパリン血漿では約14.2pg/mLであり、これらは、そのそれぞれの試料に関する製造業者の使用説明書に従い、ヒトCCL20/MIP-3アルファQUANTIKINE(登録商標)ELISAキット(カタログ番号DM3A00);R&D Systems)によって測定される。
【0167】
同様に、ヒトIL22 QUANTIKINE(登録商標)アッセイの製造業者のマニュアルに示される通りに、明らかに健常なボランティアからの血清(n=53)、EDTA血漿(n=51)、ヘパリン血漿(n=53)及び尿(n=42)中のIL22レベルは、IL22 QUANTIKINE(登録商標)イムノアッセイを使用して評価し、IL22平均値は、それぞれ、血清では35.7pg/mL、EDTA血漿では29.3pg/mL、ヘパリン血漿では31.7pg/mL、及び尿では35.2pg/mLであった。従って、本明細書に開示の方法のいくつかの態様では、所定のIL22閾値レベルは、血清では約35.7pg/mL、EDTA血漿では約29.3pg/mL、ヘパリン血
漿では約31.7pg/mL、及び/または尿では約35.2pg/mLであり、これらは、そのそれぞれの試料に関する製造業者の使用説明書に従い、ヒトIL22 QUANTIKINE(登録商標)ELISAキット(カタログ番号D2200;R&D Systems)によって測定される。
【0168】
ヒトLCN2 QUANTIKINE(登録商標)アッセイの製造業者のマニュアルに示される通りに、明らかに健常なボランティアからの血清(n=35)、ヘパリン血漿(n=35)、唾液(n=9)及び尿(n=19)中の検出可能なLCN2レベルは、LCN2 QUANTIKINE(登録商標)イムノアッセイを使用して評価し、LCN2平均値は、それぞれ、血清では119ng/mL、ヘパリン血漿では94ng/mL、唾液では320ng/mL、及び尿では9.94ng/mLであった。従って、本明細書に開示の方法のいくつかの態様では、所定のLCN2閾値レベルは、血清では約119ng/mL、ヘパリン血漿では約94ng/mL、唾液では約320ng/mL、及び尿では約9.94ng/mLであり、これらは、そのそれぞれの試料に関する製造業者の使用説明書に従い、ヒトリポカリン-2/NGAL QUANTIKINE(登録商標)ELISAキット(カタログ番号DLCN20/SLCN20/PDLCN20;R&D Systems)により測定される。
【0169】
いくつかの態様では、試料中で測定される本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の発現レベルは、閾値レベルまたは閾値を超えるまたは下回る。試料中で測定される本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の発現レベルが閾値レベルまたは閾値を超えるまたは下回るこれらの態様では、発現レベルは、試料を採取された患者が、IL23アンタゴニスト(例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置から利益を得るまたは得ない可能性があることを示すことができる。測定された発現レベルが閾値レベルまたは閾値を超えるまたは下回る程度は、任意の程度であってよい。
【0170】
例示的な態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の測定された発現レベルは、閾値レベルよりも少なくともまたは約10%高いまたは低い、例えば、閾値レベルよりも少なくともまたは約15%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約20%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約25%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約30%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約35%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約40%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約45%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約50%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約55%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約60%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約65%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約70%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約75%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約80%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約85%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約90%高いまたは低い、閾値レベルよりも少なくともまたは約95%高いまたは低い。
【0171】
例示的な態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の測定された発現レベルは、閾値レベルよりも少なくとも2倍高いもしくは低い、閾値レベルよりも少なくとも3倍高いもしくは低い、閾値レベルよりも少なくとも4倍高いもしくは低い、閾値レベルよりも少なくとも5倍高いもしくは低い、閾値レベルよりも少なくとも6倍高いもしくは低い、閾値レベルよりも少なくとも7倍高いもしくは低い、閾値レベルよりも少なくとも8倍高いもしくは低い
、閾値レベルよりも少なくとも9倍高いもしくは低い、または閾値レベルよりも少なくとも10倍高いもしくは低い。
【0172】
上記のように、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)のレベルは、当該分野で公知の方法を使用して決定することができる。当業者は、上に開示するQUANTIKINE(登録商標)アッセイに加えて、実施例に記載の方法及びイムノアッセイを含む、本項を通して記載する閾値レベルを当業者が決定することを可能にするだろう多くの方法が当該分野で利用可能であることを理解するだろう。
【0173】
いくつかの態様では、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の所定の閾値レベルは、被験者(例えば、複数の正常な健常患者、非IL23媒介疾患を有する患者及び/またはIL23媒介疾患を有する患者)の集団におけるある特定の百分位値数値に関して定義される。
【0174】
いくつかの態様では、CCL20に関する所定の閾値レベルは、10番目、15番目、20番目、25番目、30番目、35番目、40番目、45番目、50番目、50番目、55番目、60番目、65番目、70番目、75番目、80番目、85番目、または90番目の百分位値数に対応する。
【0175】
同様に、いくつかの態様では、IL22に関する所定の閾値レベルは、10番目、15番目、20番目、25番目、30番目、35番目、40番目、45番目、50番目、50番目、55番目、60番目、65番目、70番目、75番目、80番目、85番目、もしくは90番目の百分位値数に対応し、LCN2に関する所定の閾値レベルは、10番目、15番目、20番目、25番目、30番目、35番目、40番目、45番目、50番目、50番目、55番目、60番目、65番目、70番目、75番目、80番目、85番目、もしくは90番目の百分位値数に対応し、CRPに関する所定の閾値レベルは、10番目、15番目、20番目、25番目、30番目、35番目、40番目、45番目、50番目、50番目、55番目、60番目、65番目、70番目、75番目、80番目、85番目、もしくは90番目の百分位値数に対応し、及び/またはFCPに関する所定の閾値レベルは、10番目、15番目、20番目、25番目、30番目、35番目、40番目、45番目、50番目、50番目、55番目、60番目、65番目、70番目、75番目、80番目、85番目、もしくは90番目の百分位値数に対応する。
【0176】
本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の閾値レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)は、アッセイの性質、例えば、使用される捕捉及び検出抗体、供給源、純度、ならびに標準物の組成、等に基づいて変動することができる。
【0177】
一態様では、患者がIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置から利益を得ることができるか否かを決定するために任意無作為の閾値レベルを使用する代わりに、本明細書に開示のバイオマーカー(例えば、CCL20、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCP)の患者のレベルを、1つまたは複数の対照レベルと比較することができる。この態様に従い、試験試料(例えば、IL23媒介疾患または障害に罹患している患者からの試料)を、1つまたは複数の対照試料(例えば、正常な健常個体から採取した試料、同じ患者から早期に採取された試料、患者の疾患の非IL23媒介性サブセット、例えば、喘息、COPD、IPF、クローン病、UC、またはアトピー性皮膚炎を有する患者から採取した試料、所定の標準量の単離されたバイオマーカータンパク質もしくは遺伝子もしくはその断片、またはそれらの組み合わせ)と
比較する。
【0178】
結果は、対照バイオマーカーレベルと比較した患者のバイオマーカーレベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)における増加率(%)または低減率(%)を決定するために、対照試料に対する比率として表すことができる。対照試料は、患者試料と一致する対、例えば、患者試料が全血である場合に全血、患者試料が血清である場合に血清、患者試料が血漿である場合に血漿、患者試料が唾液である場合に唾液、患者試料が尿である場合に尿、患者試料が痰である場合に痰、患者試料が気管支肺胞洗浄液である場合に気管支肺胞洗浄液、患者試料が肺組織である場合に肺組織、または患者試料が皮膚である場合に皮膚のうちのの1つまたは複数であることができる。一度決定されたら、バイオマーカー発現レベルは、患者の診療記録に記録することができる。
【0179】
特定の態様では、低レベルのCCL20(実施例3に開示するCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約22.6pg/mLより低い)は、IL23媒介疾患(例えば、CDを含む)を有する患者におけるIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)に対する正の臨床応答の予測因子である。一態様では、高レベルのCCL20は、実施例3に開示するCCL20イムノアッセイを使用して測定して、約12pg/mL~約55pg/mL間の値である。
【0180】
いくつかの態様では、上に開示するように、CCL20は、他のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、FCP及び/またはCRPと組み合わせることができる。特定の態様では、CCL20は、IL22及び/またはLCN2と組み合わせることができる。従って、いくつかの態様では、高レベルのIL22(実施例4に開示するIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で少なくとも約15.6pg/mL)、及び/または高レベルのLCN2(実施例4に開示するLCN2イムノアッセイを使用して測定して、少なくとも約215ng/mL)と、上に開示する閾値レベルを下回るCCL20の組み合わせは、IL23媒介疾患(例えば、CDを含む)を有する患者におけるIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)に対する正の臨床応答の予測因子である。
【0181】
一態様では、高レベルのIL22は、実施例4に開示するIL22イムノアッセイを使用して測定して、約7.9pg/mL~約31.4pg/mL間の値である。一態様では、高レベルのLCN2は、実施例4に開示するLCN2イムノアッセイを使用して測定して、約143pg/mL~約261pg/mL間の値である。
【0182】
特定の態様では、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約11.8pg/mL、約14.5pg/mL、約16.3pg/mL、約20.8pg/mL、約22.6pg/mL、約26.5pg/mL、または約32.1pg/mL CCL20タンパク質発現を下回るCCL20のレベルは、IL23媒介疾患(例えば、CDを含む)を有する患者におけるIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)に対する正の臨床応答の予測因子である。
【0183】
特定の態様では、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定して、血清中で約7.9pg/mL、約11.3pg/mL、約12.7pg/mL、約15.6pg/mL、約19.6pg/mL、約23.1pg/mL、約31.4pg/mLもしくは約49.8pg/mL IL22タンパク質発現を超えるIL22のレベル、及び/または実施例4に開示するLCN2イムノアッセイに従って測定して、約142.8ng/
mL、約163.6ng/mL、約184.3ng/mL、約201.3ng/mL、約214.6ng/mL、約233.4ng/mL、約261.1ng/mL、約294.8ng/mL、もしくは約326.6ng/mL LCN2発現を超えるLCN2のレベルと組み合わせた、上に開示するCCL20は、IL23媒介疾患(例えば、CDを含む)を有する患者におけるIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)に対する正の臨床応答の予測因子である。
【0184】
一態様では、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の投与は、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の最初の投与後に、少なくとも100点のクローン病活動指数(CDAI)応答スコア減少、または150点未満への総CDAIスコアの減少をもたらす。
【0185】
他の態様では、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の投与は、単回または複数回用量の抗IL23抗体またはその抗原結合断片の投与後に、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、または150点のクローン病活動指数(CDAI)応答スコア減少をもたらす。
【0186】
IV.IL23アンタゴニスト
CCL20、単独または本明細書に開示の他のIL23経路バイオマーカー(例えば、IL22及び/またはLCN2)との組み合わせ、及び/もしくは炎症を示す他のバイオマーカー(例えば、FCP及び/またはCRP)との組み合わせを使用して、例えば、IL23媒介疾患または障害に罹患している患者をIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた、処置を施す、処置のために選択する、処置をモニターする、または処置を開始する、修正するもしくは終えるか否かを決定することができる。
【0187】
本明細書で用いるとき、「IL23アンタゴニスト」という用語は、in vitroまたはin vivoのいずれかでIL23の発現、活性もしくは半減期に、またはIL23媒介疾患もしくは障害、例えば、CDを有する対象におけるIL23により引き起こされるまたは悪化される症状、病理、または続発症に影響を与えることができる、任意の薬剤を指す。IL23アンタゴニストは、本明細書に定義する任意の治療剤であることができ、これは、直接的もしくは間接的にIL23活性を阻害する、軽減する、もしくは中和する、IL23発現を阻害するもしくは減少させる、IL23半減期を減少させることができる、またはIL23に起因する症状の悪化を防ぐことができる。ある特定の態様では、IL23アンタゴニストは、抗IL23モノクローナル抗体である。
【0188】
本明細書に企図される特定のIL23アンタゴニストは、IL23と特異的に結合し阻害するが、IL12を阻害しない。本開示のIL23アンタゴニストまたは結合剤(例えば、及びMEDI2070などの抗体)は、それが標的部位に、参照分子の標的部位への結合をある程度遮断する程度まで優先的に結合する場合、参照分子(例えば、異なるIL23アンタゴニストまたは結合剤)の所与の標的部位への結合を競合的に阻害する。競合的阻害は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイにより決定することができる。本開示のIL23アンタゴニストまたは結合剤(例えば、MEDI20
70などの抗体)は、参照分子の所与エピトープへの結合を、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、または少なくとも50%競合的に阻害すると言われることができる。
【0189】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、例えば、IL23のp19サブユニット、IL23のp40サブユニット、または両方を標的とする抗IL23抗体である。企図される例示的なIL23アンタゴニストは、抗IL23抗体MEDI2070であり、これはIL23のp19サブユニットを標的とする。MEDI2070は、完全ヒト、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来の、免疫グロブリンG2(IgG2)モノクローナル抗体(MAb)であり、ヒトIL23に高い親和性で特異的に結合し、IL23がIL23受容体と相互作用することを防ぐ。この分子は、ヘテロ四量体であり、IgG2サブクラスの2本の重鎖及びラムダサブクラスの2本の軽鎖からなり、これらは、ジスルフィド結合を通して共有結合される。国際公開番号WO2011/056600を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0190】
MEDI2070は、配列番号17の重鎖及び配列番号18の軽鎖を含む。MEDI2070は、それぞれ、配列番号33、34及び35に対応する配列を有する、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3を含む重鎖可変領域(配列番号7)を含む。MEDI2070は、それぞれ、配列番号36、37、及び38に対応する配列を有するVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む軽鎖可変領域(配列番号8)を含む。
【0191】
本明細書で用いるとき、「MEDI2070」という用語は、インタクトなMEDI2070免疫グロブリンのみでなく、そのMEDI2070抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体、MEDI2070と同じIL23エピトープに結合する抗体もしくはその断片、またはMEDI2070のIL23への結合を競合的に阻害する抗体もしくは断片も指す。アミノ酸配列において、特に可変領域において、またはそのCDRにおいて(しかし、定常領域における変動も企図される)MEDI2070と同一または類似する抗体(またはその断片)が企図される。例えば、一態様では、MEDI2070は、本明細書に開示のMEDI2070ポリペプチドのそれ(MEDI2070の重鎖、MEDI2070の軽鎖)と約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約92%、約95%、約98%、約99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを表す。いくつかの態様では、MEDI2070は、MEDI2070の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは6つの相補性決定領域を含む、単離されたIL23特異的抗原結合タンパク質である。
【0192】
企図される別の例示的なIL23アンタゴニストは、配列番号45のVH及び/または配列番号46のVLを含むIL23のp19サブユニットを標的とするIL23抗体である。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、配列番号45からのVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3(すなわち、配列番号47~49)を含む重鎖可変領域、ならびに/または配列番号46からのVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3(すなわち、配列番号50~52)を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、配列番号45のVH及び配列番号46のVLを含む抗体と同じIL23エピトープに結合する。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、配列番号45のVH及び配列番号46のVLを含む抗体のIL23に対する結合を競合的に阻害する。特に可変領域において、またはそのCDRにおいて(しかしながら、定常領域における変動も企図される)配列番号45のVH及び/または配列番号46のVLに対してアミノ酸配列において同一または類似するVH及び/またはVLドメインを含む抗体(またはその断片)が企図される。例えば、一態様では、IL23アンタゴニスト
は、配列番号45のVH及び/または配列番号46のVLに対して、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約92%、約95%、約98%、約99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、配列番号45のVH及び/または配列番号46のVLの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、または6つの相補性決定領域を含む単離されたIL23特異的抗原結合タンパク質である。
【0193】
「IL23アンタゴニスト」という用語は、例えば、米国特許番号US7491391、US7807414、US7872102、US7807160、US8362212、US7935344;もしくはUS7790862;米国出願公開番号US2012282269、US20090123479、US20120128689、もしくはUS2012264917:または国際公開番号WO199905280、WO20070244846、WO2007027714、WO2007076524、WO2007147019、WO2008103473、WO2008103432、WO2009043933、WO2009082624、もしくはWO12009760に記載のIL23を標的とする抗体も包含し、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、「IL23アンタゴニスト」は、引用文献に開示される抗体のCDR配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを含む抗体及びその抗原断片(例えば、scFvなどの構築物を含む)を包含する。いくつかの態様では、「IL23アンタゴニスト」は、IL23への結合に関して引用文献に開示される抗体と競合する抗体及びその抗原断片(例えば、scFvなどの構築物を含む)を包含する。
【0194】
いくつかの特定の態様では、「IL23アンタゴニスト」という用語は、ウステキヌマブ(CNTO-1275、STELARA(登録商標))(配列番号19、20)、ブリアキヌマブ(ABT-874)(配列番号27、28)、グセルクマブ(CNTO-1959)、チルドラキヌマブ(MK-3222;SCH-900222)(配列番号29、30)、BI-655066(Krueger et al.J.Allergy Clin Immunol.136:116-124(2015)を参照されたい)、LY-3074828(Gaffen et al.Nature Reviews Immunology 14:585-600,(2014)を参照されたい)、またはそれらのそれぞれのCDR配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ及び/もしくは6つを含むその抗原結合断片を表す。
【0195】
本開示のIL-23アンタゴニストは、IL17A、IL17F、TNF-α、IL-1β、IL-6及びTGF-βを含むがこれらに限定されない、他のサイトカイン(例えば、抗体)の1つまたは複数のアンタゴニストと組み合わせて使用することもできる。例えば、Veldhoen,Immunity 24:179-189(2006);Dong,Nat.Rev.Immunol.6(4):329-333(2006)を参照されたい。
【0196】
様々な態様では、本明細書に開示のIL-23アンタゴニストは、抗体の抗原結合断片、例えば、本明細書において言及するIL-23アンタゴニスト抗体のいずれかの断片を含む。かかる断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)、ナノボディ、及びダイアボディが含まれるがこれらに限定されない。
【0197】
「IL23アンタゴニスト」という用語は、アンタゴニスト、例えば、アプタマー(例えば、米国特許出願公開第2007066550号)、ペプチド(例えば、Quiniou et al.,Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.2014 Nov 15;307(10):R1216-30に開示されるもの)、IL-23受容体に対して経口的に安定なペプチド、または小分子阻害剤(
例えば、Synta Pharmaceuticals’ STA-5326)も包含する。
【0198】
V.IL23媒介疾患の診断、処置、及びモニタリングのためのCCL20レベル
CDなどのIL23媒介疾患を有する対象において差次的に発現されるIL23経路バイオマーカー、例えばCCL20は、対象がある特定の治療法、例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いて処置されるときの臨床的転帰を予測するために適用することができる。いくつかの態様では、単一のIL23経路バイオマーカー、例えば、CCL20を使用することができる。他の態様では、CCL20は、他のIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/またはLCN2と組み合わせることができる。他の態様では、追加のバイオマーカー、例えば、FCP及び/またはCRPなどの炎症を示すバイオマーカーを、CCL20と組み合わせることができる。
【0199】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に特異的に結合することができる抗IL23抗体またはその抗原結合断片、例えば、IL23のp19サブユニットを標的とする抗IL23抗体MEDI2070である。
【0200】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖(HC)(配列番号17)及び/もしくは軽鎖(配列番号18)、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖可変領域(VH)(配列番号7)及び/または軽鎖可変領域(VL)(配列番号8)を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の相補性決定領域(配列番号33~38)の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号45の配列を含むVH領域及び/または配列番号46の配列を含むVL領域、またはその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号47~49(配列番号45のVHのCDR)及び/または配列番号50~52(配列番号46のVLのCDR)の相補性決定領域の少なくとも1つを含む。
【0201】
他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせから選択される抗IL23抗体である。他の態様では、IL23アンタゴニストは、IL23への結合に関して、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせから選択される抗体と競合する分子(例えば、抗体)である。
【0202】
この知見を適用して、例えば、処置を決定する新しい方法(例えば、患者をある特定の治療のために候補として選択することにより)、IL-23媒介疾患を処置する方法、治療剤(例えば、抗IL23抗体)がIL23媒介疾患及び障害を処置することの有効性をモニタリングする方法、または処方、投薬レジメン、もしくは投与経路を調節する方法を考案することができる。
【0203】
本明細書に開示の方法は、単独または1つもしくは複数の追加のバイオマーカーと組み
合わせた、対象のCCL20の発現レベルに少なくとも一部基づいて、例えば、CDなどのIL23媒介疾患に関する予防法及び/または処置を処方する、開始する、及び/または変更することを含む。特定の態様では、かかる追加のバイオマーカーは、IL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/またはLCN2である。別の態様では、かかる追加のバイオマーカーは、炎症性バイオマーカー、例えば、CRP及び/またはFCPである。
【0204】
本開示は、IL23媒介疾患または障害を有する患者をIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の投与を含む治療レジメンを用いて処置するか否かを決定する方法であって、(a)患者から採取した試料中のCCL20のレベル(及び任意選択で、追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)を測定するまたは臨床検査室に測定するように指示すること、ならびに(b)患者が、バイオマーカーの所定の閾値レベル(1つまたは複数)と比較して、または1つもしくは複数の対照試料におけるバイオマーカーレベル(1つまたは複数)と比較して、高いまたは低いレベルのCCL20(及び任意選択で、追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)を試料中に有すると決定される場合に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の投与を含む治療レジメンを用いて、患者を処置することもしくは医療提供者に患者を処置するように指示すること、または処置を保留すること、処置を開始しないこと、処置を否定すること、もしくは医療提供者に処置を保留する、開始しない、もしくは否定するように指示することを含む、前記方法を提供する。
【0205】
一態様では、本開示は、IL23媒介疾患または障害を有する患者をIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の投与を含む治療レジメンを用いて処置するか否かを決定する方法であって、(a)患者から採取した試料中のCCL20のレベル(及び任意選択で、追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)を測定するまたは臨床検査室に測定するように指示すること、ならびに(b)患者が、所定のバイオマーカー閾値レベル(1つまたは複数)と比較して、または1つもしくは複数の対照試料におけるバイオマーカーレベル(1つまたは複数)と比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20、及び高いまたは増加したレベルの少なくとも1つの任意選択の追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせを試料中に有すると決定される場合に、IL23に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の投与を含む治療レジメンを用いて、患者を処置することまたは医療提供者に患者を処置するように指示することを含む、前記方法を提供する。
【0206】
一態様では、本開示は、IL23媒介疾患または障害を有する患者をIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の投与を含む治療レジメンを用いて処置するか否かを決定する方法であって、(a)患者から採取した試料中のCCL20のレベル(及び任意選択で、追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)を測定するまたは臨床検査室に測定するように指示すること、ならびに(b)患者が、所定のバイオマーカー閾値レベル(1つまたは複数)と比較して、または1つもしくは複数の対照試料におけるバイオマーカーレベル(1つまたは複数)と比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20、及び低いまたは低減したレベルの少なくとも1つの任意選択の追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせを試料中に有すると決定
されている場合に、IL23に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の投与を含む治療レジメンを用いた処置を保留すること、処置を開始しないこと、処置を否定すること、または医療提供者に、患者の処置を保留する、開始しない、もしくは否定するように指示することを含む、前記方法を提供する。
【0207】
IL23媒介疾患または障害を有すると診断された患者をIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置の候補として選択する方法であって、(a)患者から採取した試料中のCCL20のレベル(及び任意選択で、追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)を測定するまたは臨床検査室に測定するように指示すること、ならびに(b)患者が、所定の閾値レベル(1つまたは複数)と比較して、または1つもしくは複数の対照試料におけるバイオマーカーレベル(1つまたは複数)と比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20、及び高いまたは増加したレベルの少なくとも1つの任意選択の追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせを試料中に有すると決定される場合に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いて患者を処置することまたは医療提供者に患者を処置するように指示することを含む、前記方法も提供する。
【0208】
IL23媒介疾患または障害を有すると診断された患者をIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置の候補として選択する方法であって、(a)患者から採取した試料中のCCL20のレベル(及び任意選択で、追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)を測定するまたは臨床検査室に測定するように指示すること、ならびに(b)患者が、所定の閾値レベル(1つまたは複数)と比較して、または1つもしくは複数の対照試料におけるバイオマーカーレベル(1つまたは複数)と比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20、及び低いまたは低減したレベルの少なくとも1つの任意選択の追加のバイオマーカー、例えばIL22、LCN2、CRP、FCP、または組み合わせを試料中に有すると決定されている場合に、患者に対するIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置を、保留すること、処置を開始しないこと、処置を否定すること、または医療提供者に患者の処置を保留する、開始しない、もしくは否定するように指示することを含む、前記方法も提供する。
【0209】
いくつかの態様では、本開示の方法は、1つまたは複数の追加のアッセイを指図する及び/または行うことを必然的に伴うことができる。例えば、CCL20のレベル(及び任意選択で追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、またはそれらの組み合わせのレベル)(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)が正常範囲内である(すなわち、上昇していない)と決定される場合、CCL20アッセイ(または別のバイオマーカーのためのアッセイ)は、偽陰性結果を除外するために繰り返されてよい、及び/または1つもしくは複数の追加のCCL20アッセイ(または他のバイオマーカーのアッセイ)を、対象の状態をモニターするために行ってよい。逆に、CCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)が上昇していると決定される場合、偽陽性結果を除外するために、CCL20アッセイを繰り返すことが望ましくあり得る。
【0210】
いくつかの態様では、所定のCCL20閾値レベルは、CCL20イムノアッセイ(例えば、実施例3に記載のCCL20イムノアッセイを含む)を使用して血清中で測定して
、少なくとも約22.6pg/mLである。いくつかの態様では、所定のIL22閾値レベルは、IL22イムノアッセイ(例えば、実施例4に記載のIL22イムノアッセイを含む)を使用して血清中で測定して、少なくとも約15.6pg/mLであり、及び/または所定のLCN2閾値レベルは、LCN2イムノアッセイ(例えば、実施例4に記載のLCN2イムノアッセイを含む)を使用して血清中で測定して、少なくとも約215ng/mLである。
【0211】
いくつかの態様では、IL23媒介疾患を有する患者における所定の閾値レベルを超えるまたは下回るCCL20の存在は、かかる疾患に特異的なバイオマーカーのうちの1つまたは複数と組み合わせて使用することができる。例えば、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、CDまたはUCを含む)を有する患者については、CCL20の測定は、他のIL23経路バイオマーカーレベル(例えば、IL22及び/またはLCN2レベル)ならびに他のバイオマーカー、例えば、C反応性蛋白(CRP)及び/または胎児(fetal)カルプロテクチン(FCP)レベルの測定と組み合わせることができる。従って、一態様では、CCL20のレベルは、本明細書に開示の方法のいずれかにおいてIL22、LCN2、CRP及び/またはFCPレベルと組み合わせて、(i)IL23媒介疾患(例えば、IBD、CDまたはUC)に罹患している患者が、特定の処置に対して適格もしくは非適格であるか否か、またはIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた特定の処置に応答し得るか否かを決定すること、(ii)特定の処置(例えば、MEDI2070などのIL23アンタゴニストを用いる)が、開始される、保留される、または改変されるべきか否かを決定すること、(iii)特定の治療剤を用いて、疾患(例えば、IBD、CDまたはUC)が処置可能であるまたは処置可能でないかを診断すること、あるいは(iv)CRP及び/カルプロテクチンレベルが高い場合に、特定の治療剤等を用いた疾患(例えば、IBD、CDまたはUC)の処置の転帰を予見するまたは予測することができる。
【0212】
いくつかの態様では、C反応性蛋白の平均レベルは、それらが、例えば、製造業者の使用説明書に従うDade Behring hs-CRP免疫比濁(immunoturbidometric)アッセイを含む、患者のCRPレベルの測定に好適なアッセイを使用して測定して、≧5mg/Lである場合に、高いまたは上昇している(及びゆえに、活動性疾患を有することを示す)。いくつかの態様では、便中カルプロテクチンの平均レベルは、それらが、例えば、製造業者の使用説明書に従うPhadia ELIA(商標)カルプロテクチンアッセイを含む、患者の便中カルプロテクチンレベルの測定に好適なアッセイを使用して測定して、≧250μg/gである場合に、高いまたは上昇している(及びゆえに、活動性疾患を有することを示す)。他の態様では、C反応性蛋白の平均レベルは、それらが、例えば、製造業者の使用説明書に従うDade Behring hs-CRP免疫比濁アッセイを含む、患者のCRPレベルの測定に好適なアッセイを使用して測定して、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9または10mg/Lである場合に、高いまたは上昇している。いくつかの態様では、便中カルプロテクチンの平均レベルは、それらが、例えば、製造業者の使用説明書に従うPhadia ELIA(商標)カルプロテクチンアッセイを含む、患者の便中カルプロテクチンレベルの測定に好適なアッセイを使用して測定して、少なくとも150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340または350μg/gである場合に、高いまたは上昇している。いくつかの態様では、便中カルプロテクチンのレベルは、それらが、例えば、製造業者の使用説明書に従うPhadia ELIA(商標)カルプロテクチンアッセイを含む、患者の便中カルプロテクチンレベルの測定に好適なアッセイを使用して測定して、≧250μg/g、≧200μg/g、≧150μg/g、≧100μg/g、または少なくとも約100μg/g~少なくとも約250μg/gである場合に、高いまた
は上昇している。当業者は、C反応性蛋白またはカルプロテクチンを定量化するための異なる方法を本明細書に開示の方法に適用することができることを理解するだろう。例えば、米国特許番号US8541180、米国特許出願公開番号US20140227725またはUS20140227725、及びPCT公開番号WO2012175616、WO2010062663、WO2012175602、WO2013132338、またはWO2013132347を参照されたく、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0213】
当業者は、CCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を、処置、診断、及びモニタリング方法を含むがこれらに限定されない、本明細書に開示の方法に従って、正の選択子として使用することができる、すなわち、患者から採取した試料中のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)が所定のCCL20閾値レベルを下回る、または1つもしくは複数の対照試料におけるCCL20レベルと比べて低減している場合に、特定の行動(例えば、IL23アンタゴニストを用いたIL23媒介疾患を有する患者の処置)が取られることを理解するだろう。
【0214】
当業者は、CCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を、処置、診断、及びモニタリング方法を含むがこれらに限定されない、本明細書に開示の方法に従って、負の選択子として、使用することができる、すなわち、患者から採取した試料中のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)が所定のCCL20閾値レベルを超える、または1つもしくは複数の対照試料におけるCCL20レベルと比べて増加している場合に、特定の行動(例えば、IL23アンタゴニストを用いたIL23媒介疾患を有する患者の処置)が取られないことも理解するだろう。
【0215】
一態様では、本開示は、患者がIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置から利益を得ることになるか否かに関して、医療提供者、医療給付提供者、または臨床検査室による決定を容易にするための方法、アッセイ、及びキットを含む。
【0216】
本明細書に提供する方法アッセイ及びキットはまた、患者が、本明細書に開示の任意の他のIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた、または当業者に公知の処置から利益を得ることになるか否かに関して、医療提供者、医療給付提供者、または臨床検査室による決定を容易にする。
【0217】
一態様では、本明細書に開示の方法は、診断を成すことを含み、これは、少なくとも一部では患者のCCL20のレベルに基づく鑑別診断であってよい。いくつかの態様では、本明細書に開示の方法は、被験者に、CCL20アッセイ及び/または少なくとも部分的にCCL20レベルに基づいて診断の結果を知らせることを含む。患者は、口頭で、書面で、及び/または電子手段により知らされることができる。
【0218】
この診断は、患者診療記録に記録することもできる。例えば、様々な態様では、特定のIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いて処置可能なIL23媒介疾患(例えば、CD)の診断は、診療記録に記録される。「診療記録」または「患者診療記録」という用語は、以下の1つまたは複数を典型的に含む、患者の検査及び/または処置の記述を指す:患者の病歴及び主訴、医師の身体所見、診断用検査及び手順の結果、ならびに患者の薬物治療及び治療的手順。診療記録は、典型的には、1人
または複数人の医師及び/または医師の助手により作成され、それは、記された、転写された、また別様に記録された、医療を必要とする様々な病気もしくは障害、及び/または接種、及び/またはアレルギー、及び/または処置、及び/または予後、及び/またはしばしば親、兄弟姉妹に関する健康情報、及び/または職業の記録及び/または履歴である。
【0219】
診療記録は、紙形式であることができる及び/またはコンピュータ可読媒体に維持することができる。診療記録は、検査室、医師のオフィス、病院、健康維持組織、保険会社、及び/または個人の診療記録ウェブサイトにより維持されることができる。いくつかの態様では、CCL20レベルに少なくとも一部が基づく診断は、医療注記物、例えば、カード、着用物、及び/または無線周波数識別(RFID)タグ上または内に記録される。本明細書で用いるとき、「着用物」という用語は、タグ、ブレスレット、ネックレス、アームバンド、またはヘッドバンドを含むがこれらに限定されない、対象の身体上に着用されることができる任意の物品を指す。
【0220】
本明細書で用いるとき、「診断」という用語は、疾患を検出することまたは疾患の病期もしくは程度を決定することを意味する。通常、疾患の診断は、疾患を示す1つもしくは複数の因子及び/または症状の評価に基づく。つまり、診断は、疾患または障害の存在または不在を示す因子の存在、不在、または量に基づいてなされることができる。特定の疾患の診断を示すとみなされる各因子または症状は、特定の疾患に排他的に関連している必要はない、例えば、診断因子または症状から推察することができる鑑別診断があってよい。同様に、特定の疾患を示す因子または症状が、特定の疾患を有さない個体に存在するという例があってよい。
【0221】
「診断」という用語は、薬物療法の治療効果を決定すること、または薬物療法に対する応答のパターンを予測することも包含する。診断方法は、独立して、または特定の疾患に関して医療分野で公知の他の診断及び/または病期分類法と組み合わせて、使用してよい。
【0222】
本明細書で用いるとき、「鑑別診断」という用語は、臨床的データの分析に基づいて、同様の症状を有する2つ以上の疾患のうちのどちらが対象の症状(複数可)の要因である可能性が高いかという決定を指す。本用語は、患者試料中で測定されたCCL20レベルが所定の閾値レベルを下回るか否か、または1つもしくは複数の対照試料中のレベルと比べて低減したか否かに基づいて、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置に患者が感受性であるか否かの決定を指すためにも使用される。
【0223】
「予後」という用語は、本明細書で用いるとき、臨床状態または疾患の起こり得る経過及び転帰の予測を指す。予後は、通常、疾患の好ましいまたは好ましくない経過または転帰を示す疾患の因子または症状を評価することにより作成される。「予後を決定すること」という表現は、本明細書で用いるとき、それにより当業者が、患者における状態の経過または転帰を予測することができるプロセスを指す。「予後」という用語は、100%の精度で状態の経過または転帰を予測する能力を指すわけではない。代わりに、当業者は、「予後」という用語が、ある特定の経過または転帰が生じ得る可能性の増加、つまり、その経過または転帰が、所与の状態を呈する患者において、その状態を呈さない個体のものと比較したときに、生じる可能性がより高いことを指すことを理解するだろう。
【0224】
「好ましい予後」及び「有望な予後」、または「好ましくない予後」及び「有望でない予後」という用語は、本明細書で用いるとき、状態または疾患の起こり得る経過及び/ま
たは可能性がある転帰の予測に関する相対的用語である。好ましいまたは有望な予後は、好ましくないまたは有望でない予後よりも状態に関して良好な転帰を予測する。一般的な意味では、「好ましい予後」は、特定の状態に伴い得る多くの他の起こり得る予後よりも比較的良好な転帰であり、他方で好ましくない予後は、特定の状態に伴い得る多くの他の起こり得る予後よりも比較的不良な転帰を予測する。好ましいまたは有望な予後の典型的な例には、寛解率代表値より良好、より低い転移の傾向、より長い予測余命、癌性プロセスから良性プロセスの分化等が含まれる。
【0225】
本開示は、IL23経路バイオマーカー、例えば、CCL20の発現における変化に基づいて対象においてIL23媒介疾患を処置する方法を含む。本開示は、IL23媒介疾患または障害を有する患者を処置する方法であって、患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定されている場合に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を患者に投与することを含む、前記方法を提供する。いくつかの態様では、試料は、患者から得られ、試料中のCCL20のレベルの測定のために提出される。
【0226】
本開示は、IL23媒介疾患または障害を有する患者を処置する方法であって、(a)患者から採取した試料を試料中のCCL20のレベルの測定のために提出すること、及び(b)患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を採取された試料中に有する場合に、IL23に特異的に結合する抗体(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)またはその抗原結合断片を患者に投与することを含む、前記方法も提供する。
【0227】
IL23媒介疾患または障害を有する患者を処置する方法であって、(a)患者から採取した試料を試料中のCCL20のレベルの測定のために提出すること、及び(b)患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20を試料中に有する場合に、IL23に特異的に結合する抗体(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)またはその抗原結合断片の患者への投与を保留するまたは開始しないことを含む、前記方法も提供する。
【0228】
本開示は、IL23媒介疾患または障害を有する患者を処置する方法であって、(a)患者から得た試料中のCCL20のレベルを測定すること、(b)試料中のCCL20のレベルを決定すること、及び、(c)患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を試料中に有すると決定されている場合に、IL23に特異的に結合する抗体(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)またはその抗原結合断片を患者に投与するように医療提供者に助言すること、あるいは患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20を試料中に有すると決定されている場合に、IL23に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の患者への投与を保留するまたは否定するように医療提供者に助言することを含む、前記方法も提供する。
【0229】
IL23媒介疾患または障害を有する患者を処置する方法であって、(a)患者から採取した試料を、患者から得た試料中のCCL20のレベルの測定のために提出すること、及び(b)患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の
対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を試料中に有すると決定されている場合に、IL23に特異的に結合する抗体(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)またはその抗原結合断片を患者に投与すること、あるいは患者が、所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20を試料中に有すると決定されている場合に、IL23に特異的に結合する抗体(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)またはその抗原結合断片の患者への投与を保留する、開始しない、または否定することを含む、前記方法も提供する。
【0230】
いくつかの態様では、本方法は、対象に、有効量のIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を投与することを含む。いくつかの態様では、IL23媒介疾患は、肺疾患、炎症性腸疾患、慢性炎症性皮膚疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、感染、または癌である。いくつかの態様では、IL23媒介疾患または障害は、喘息、IPF、COPD.クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、セリアック病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、湿疹、乾癬、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節炎、関節リウマチ(RA)、リウマチ障害、ANCA血管炎、ベーチェット病、自己免疫性甲状腺炎、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群(SS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、アルツハイマー病、マイコバクテリア疾患、リーシュマニア症、真菌感染、ウイルス感染、胃癌、結腸直腸癌、食道癌、白血病、B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌、乳癌、肺癌、及び上咽頭癌からなる群より選択される。
【0231】
いくつかの態様では、患者のCCL20レベルは、ヒトCCL20またはその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体を認識する1つもしくは複数の抗CCL20抗体またはその抗原結合断片を採用して本明細書に記載のイムノアッセイにおいて測定される。いくつかの態様では、試料は、患者から得られ、試料中のCCL20のレベルの測定のために、例えば、臨床検査室に提出される。
【0232】
上記処置方法のいくつかの態様では、患者のCCL20レベル(例えば、DNAまたはRNAレベル)は、CCL20遺伝子の発現レベルを特異的に測定することができる1つまたは複数のオリゴヌクレオチドプローブを採用するアッセイにおいて測定される。
【0233】
いくつかの態様では、CCL20検出アッセイ(例えば、イムノアッセイ)は、患者から得られた試料上で、患者を処置する医療専門家によって行われる(例えば、「ポイントオブケア」診断キットとして組み立てられる、例えば、実施例3に記載のイムノアッセイを含む本明細書に記載のイムノアッセイを使用する)。いくつかの態様では、試料は、患者から得られ、例えば、医療専門家の指示に従った(例えば、実施例3に記載のイムノアッセイを含む、例えば、本明細書に記載のアッセイを使用する)試料中のCCL20レベルの測定のために臨床検査室に提出される。
【0234】
いくつかの態様では、アッセイを行う臨床検査室は、患者のCCL20レベルが所定のCCL20閾値を下回るか否かまたは1つもしくは複数の対照試料と比べて低減しているか否かに基づいて、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置から患者が利益を得ることができるか否かについて、医療提供者(healthcare provide)に助言するだろう。
【0235】
いくつかの態様では、第二の測定は、IL23に特異的に結合するIL23抗体(例え
ば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)またはその抗原結合断片の投与後、1、2、4、8、12、もしくは28週間で、またはその間で実施される。
【0236】
いくつかの態様では、本開示は、IL23媒介疾患を有する患者をある期間にわたって処置する方法であって、患者から採取した第一の試料中の第一のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を測定すること、または患者から採取した第一の試料を試料中の第一のCCL20レベルの測定のために提出すること、ここで患者のCCL20レベルは、例えば、ヒトCCL20を認識する1つまたは複数の抗CCL20抗体またはその抗原結合断片を採用して、例えば、実施例3に記載のイムノアッセイを含むイムノアッセイにおいて測定される、及び、第一の試料中の患者のCCL20レベルが所定のCCL20閾値レベルを下回る、または1つもしくは複数の対照試料におけるCCL20レベルと比べて低下している場合に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を患者に投与することを含む、前記方法を提供する。検査は、上記のように医療提供者または臨床検査室により行われることができる。
【0237】
これらの態様に従い、本方法は、患者から採取した第二の試料中の第二のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を測定すること、または患者から採取した第二の試料を試料中の第二のCCL20レベルの測定のために提出すること、ここで患者のCCL20レベルは再び、例えば、ヒトCCL20を認識する1つまたは複数の抗CCL20抗体またはその抗原結合断片を採用して、例えば、実施例3に記載のイムノアッセイを含むイムノアッセイにおいて測定される、患者における第一及び第二のCCL20レベルを比較すること、ならびに用量を変更すること、例えば、患者に投与されるIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の量または頻度を増加させるまたは維持することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、IL23アンタゴニスト療法は、例えば、第二の試料中の患者のCCL20レベルが、第一の試料中のCCL20レベルよりも低い場合に、中止することができる。
【0238】
いくつかの態様では、患者に投与されるIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)の量または頻度は、第二の試料中の患者のCCL20レベルが、第一の試料中のCCL20レベルより高いまたはほぼ同じである場合に、維持するまたは減少させることができる。
【0239】
ある特定の態様では、本明細書に開示の全ての処置方法において、「負荷」用量のIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を投与して、患者において所望の治療レベルを達成する。負荷用量が患者のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)に有意に影響しないまたは患者のCCL20レベルが低減する場合、処置を中止する、例えば、非IL23アンタゴニスト療法を使用するという決断がなされ得る。
【0240】
負荷用量がCCL20レベルの増加を患者においてもたらす場合、用量サイズまたは頻度を「維持」用量まで減少させる決断がなされ得る。ここに提供する方法が医療提供者にとって処置を施すためのガイドラインであり、最終的な処置決断は、医療提供者の健全な判断に基づくだろうことに留意することが重要である。
【0241】
いくつかの態様では、本明細書に提供するようなイムノアッセイの結果は、医療給付提
供者に、患者の保険がIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置をカバーすることになるか否かの決定のために、提出されることができる。
【0242】
いくつかの態様では、本開示は、IL23媒介疾患を有する患者を処置する方法であって、例えば、臨床検査室にて、IL23媒介疾患を有する患者から得た第一の試料、例えば、医療提供者により提供される試料中のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を測定すること、ここで第一の試料中の患者のCCL20レベルは、例えば、ヒトCCL20を認識する1つまたは複数の抗CCL20抗体またはその抗原結合断片を採用する、例えば、実施例3に記載のイムノアッセイを含むイムノアッセイにおいて測定される、第一の試料中の患者のCCL20レベルが所定のCCL20レベルを下回るか否か、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比べて低減しているか否かを決定すること、及び、患者のCCL20レベルが所定のCCL20閾値レベルを下回る、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比べて低減している場合に、医療提供者にIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を患者に投与するように助言することを含む、前記方法を含む。
【0243】
いくつかの態様では、これらの方法は、患者から得た第二の試料、例えば、医療提供者により提供された試料中のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を測定すること、ここで患者のCCL20レベルは再び、例えば、ヒトCCL20を認識する1つまたは複数の抗CCL20抗体またはその抗原結合断片を採用する、例えば、実施例3に記載のイムノアッセイを含む、イムノアッセイにおいて測定される、第二の試料中の患者のCCL20レベルが第一の試料中で測定されたCCL20レベルより高い、ほぼ同じ、またはより低いか否かを決定すること、及び、例えば、患者に投与されるIL23アンタゴニストの量または頻度を増加させるまたは維持するように示された場合に、IL23アンタゴニスト療法(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする抗IL23抗体、またはその抗原結合断片の投与を含む治療)を調整するように医療提供者に助言すること、または第二の試料中の患者のCCL20レベルが第一の試料中のCCL20レベルより低い場合に、IL23アンタゴニスト療法を中止すること、または第二の試料中の患者のCCL20レベルが第一の試料中のCCL20レベルより高いもしくはほぼ同じである場合に、患者に投与するIL23アンタゴニストの量もしくは頻度を維持また減少させるように、医療提供者に助言することをさらに含むことができる。
【0244】
いくつかの態様では、試料は、患者から得られ、例えば、臨床検査室に、試料中のCCL20レベルの単独での、または少なくとも別のIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/もしくはLCN2、少なくとも1つの炎症性バイオマーカー、例えば、CRP及び/もしくはFCP、もしくはそれらの組み合わせ(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)のレベルとの組み合わせた、例えばイムノアッセイを使用する測定のために、提出される。
【0245】
いくつかの態様では、アッセイを行う臨床検査室は、患者のCCL20レベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)が所定のCCL20閾値を下回るまたは1つもしくは複数の対照試料と比べて低いか否かに基づいて、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を用いた処置から患者が利益を得ることができるか否かについて、医療提供者(healthcareprovide)に助言するだろう。
【0246】
いくつかの態様では、本明細書に企図する(例えば、クローン病などのIL23媒介疾患のための)処置の方法は、対象に、IL23を標的とする抗体またはその抗原結合断片(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)を、例えば、本明細書に記載のアッセイを使用して、血清の体積当たりある特定の量のIL23特異的抗体を達成及び/または維持するのに十分な量及び/または十分な間隔で投与することを含む。
【0247】
例えば、IL23を標的とする抗体またはその抗原結合断片(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)を与えて、血清中で少なくとも約15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、65ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、140ng/ml、160ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、220ng/ml、240ng/ml、260ng/ml、280ng/ml、300ng/ml、320ng/ml、340ng/ml、360ng/ml、380ng/ml、400ng/ml、420ng/ml、440ng/ml、460ng/ml、480ng/ml、500ng/ml、520ng/ml、540ng/ml、560ng/ml、580ng/ml、600ng/ml、620ng/ml、640ng/ml、660ng/ml、680ng/ml、700ng/ml、720ng/ml、740ng/ml、760ng/ml、780ng/ml、800ng/ml、820ng/ml、840ng/ml、860ng/ml、880ng/ml、900ng/ml、920ng/ml、940ng/ml、960ng/ml、980ng/ml、または1000ng/mlを達成することができる。
【0248】
さらなる実施形態では、IL23を標的とする抗体またはその抗原結合断片(例えば、IL23のp19サブユニットに対する、例えば、MEDI2070)を与えて、約12.5ng/ml~約1000ng/mlの血清中のIL23特異的抗体の濃度を達成することができる。当業者は、ここで与えられる量は、完全長抗体または免疫グロブリン分子にあてはまることを理解するだろう。その抗原結合断片が使用される場合、絶対量は、断片の分子量に基づいて算出することができる様式において得られるものとは異なるだろう。
【0249】
いくつかの態様では、本明細書で企図される(例えば、クローン病などのIL23媒介疾患のための)処置の方法は、対象に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を、15~54mgを0.5~1.5ヶ月毎、55~149mgを1.5~4.5ヶ月毎、150~299mgを4~8ヶ月毎、または300~1100mgを4~12ヶ月毎の量及び間隔で投与することを含む。
【0250】
いくつかの態様では、量及び間隔は、15~21mgを0.5~1.0ヶ月毎、55~70mgを1.5~3.0ヶ月毎、150~260mgを4~6ヶ月毎、または300~700mgを4~8ヶ月毎である。いくつかの態様では、量及び間隔は、21mgを毎月、70mgを3ヶ月毎、210mgを6ヶ月毎、または700mgを6ヶ月毎である。いくつかの態様では、量及び間隔は、210mgを3ヶ月毎または700mgを3ヶ月毎である。いくつかの態様では、量及び間隔は、210mgを1ヶ月毎または700mgを1ヶ月毎である。
【0251】
本方法のいくつかの態様では、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070な
どの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)は、静脈内(IV)投与される。本方法のいくつかの態様では、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)は、皮下(SC)投与される。
【0252】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)は、1つまたは複数の固定用量にて投与される。いくつかの態様では、用量は、毎週の、2週毎、3週毎、4週毎、5週毎、6週毎、7週毎、8週毎、9週毎、10週毎、または12週毎に投与される。いくつかの態様では、用量は、約1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、500mg、510mg、520mg、530mg、540mg、550mg、560mg、570mg、580mg、590mg、600mg、610mg、620mg、630mg、640mg、650mg、660mg、670mg、680mg、690mg、700mg、710mg、720mg、730mg、740mg、750mg、760mg、770mg、780mg、790mg、800mg、810mg、820mg、830mg、840mg、850mg、860mg、870mg、880mg、890mg、900mg、910mg、920mg、930mg、940mg、950mg、960mg、970mg、980mg、990mg、または1000mgを含む。いくつかの態様では、用量は、1000mgよりも高い。
【0253】
いくつかの態様では、用量は、皮下投与される約210mgのIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)である。
【0254】
他の態様では、用量は、静脈内投与される約700mgのIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)である。
【0255】
いくつかの態様では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50用量が投与される。
【0256】
一特定の態様では、抗IL23抗体(例えば、MEDI2070)は、210mg Q4Wの固定用量で26用量にわたって投与される。別の特定の態様では、抗IL23抗体(例えば、MEDI2070)は、700mg静脈内Q4Wの固定用量で12週間投与される。いくつかの態様では、静脈内投与の後、抗IL23抗体(例えば、MEDI2070)は、210mg皮下Q4Wの固定用量で100週間にわたって投与される。
【0257】
製剤、投薬レジメン、及び治療剤、例えば、及びIL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL2
3抗体、またはその抗原結合断片)の投与経路を調整して、本明細書に開示の方法に従う最適な治療応答のための有効量を提供することができる。IL23アンタゴニストの投与に関しては、アンタゴニストは、当該分野で公知の任意の好適な手段、組成及び経路を通して投与されてよい。投薬レジメンに関しては、単回ボーラスを投与することができる、いくつかの分割用量を経時的に投与することができる、または用量は治療状況の緊急性により示されるように比例的に増減させることができる。
【0258】
IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)は、非経口、局所、または吸入によるものを含むがこれらに限定されない任意の好適な技術により投与されてよい。注射される場合、医薬組成物は、例えば、関節内、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮膚経路(皮内、経皮または真皮下、及び皮下を含む)を介して、ボーラス注射により、または連続注入により投与することができる。いくつかの態様では、医薬組成物は、静脈内経路により投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、皮下経路により投与される。
【0259】
さらなる態様では、組成物は、経口、口腔内、直腸、気管内、胃、または頭蓋内経路により投与される。局所投与、例えば、疾患または傷害の部位での投与は、例えば、胃腸管を必然的に含む状態のための浣腸または坐剤により、企図される。経皮的送達及びインプラントからの持続放出も企図される。吸入による送達は、例えば、経鼻または経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル形態のアンタゴニストの吸入等を含む。他の選択肢には点眼薬、経口調製物、例えば、丸剤、シロップ剤、トローチ剤またはチューインガムを含む、ならびに局所用調製物、例えば、ローション、ゲル、スプレー、及び軟膏、予め充填されたシリンジ及び自動注射器が含まれる。
【0260】
好都合なことに、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)は、1つまたは複数の追加の成分、例えば、生理学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物の形態で投与することができる。任意選択で、組成物は、併用療法用の1つまたは複数の生理学的に活性な薬剤を追加で含む。
【0261】
医薬組成物は、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を、緩衝液、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、低分子量ポリペプチド(10より少ないアミノ酸を含むものなど)、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、例えばグルコース、スクロースまたはデキストリン、キレート剤、例えばEDTA、グルタチオン、安定化剤、及び賦形剤からなる群より選択される1つまたは複数の物質と一緒に含んでよい。
【0262】
中性緩衝食塩水または同種血清アルブミンと混合された食塩水は、適切な希釈剤の例である。適切な業界標準に従って、ベンジルアルコールなどの保存剤も加えてよい。組成物は、適切な賦形剤溶液(例えば、スクロース)を希釈剤として使用して凍結乾燥物として製剤化してよい。
【0263】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195または200mg/mlの濃度で提供することができる。
【0264】
本発明に有用な例示的な製剤は、グルタミン酸、クエン酸または酢酸緩衝液を適切なpH、4.5~5.2で、賦形剤、例えばスクロース、グリシン、プロリン、グリセロール、及び/またはソルビトールを適切な濃度、例えば、1~20%(w/v)で、そして界面活性剤、例えばポリソルベート(ポリソルベート20または80)またはポロクサマー(ポロクサマー1888)のような非イオン性界面活性剤を0.001%~0.1%(w/v)の適切な濃度で含むものである。そのような製剤は、米国特許第6171586号ならびにWIPO公開出願番号WO20100027766及びWO2011088120に開示されている。いくつかの態様では、製剤は、酢酸ナトリウム、スクロース及びポリソルベート20を含む。
【0265】
いくつかの態様では、製剤は、70mg/mL抗IL23抗体(例えば、MEDI2070)、10mM酢酸ナトリウム、9%(w/v)スクロース及び0.004%(w/v)ポリソルベート20をpH5.2で含む。好適な成分は、採用される投与量及び濃度ではレシピエントに対して非毒性である。薬物製剤に採用され得る成分のさらなる例は、21st Ed.(2005),Mack Publishing Company,Easton,PAを含む任意のRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて提示されている。
【0266】
VI.組み合わせ処置
本発明の方法の特定の態様は、抗IL23抗体(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)及び「IL23アンタゴニスト」という題目の記述の項において記載した1つまたは複数の追加のIL23アンタゴニストの、追加の治療剤と組み合わせた使用を必然的に含む。
【0267】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に特異的に結合することができる抗IL23抗体である。
【0268】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖(HC)(配列番号17)及び/もしくは軽鎖(配列番号18)、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖可変領域(VH)(配列番号7)及び/または軽鎖可変領域(VL)(配列番号8)を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の相補性決定領域(配列番号33~38)の少なくとも1つを含む。
【0269】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号45の配列を含むVH領域及び/もしくは配列番号46の配列を含むVL領域、またはその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号47~49(配列番号45のVHのCDR)及び/または配列番号50~52(配列番号46のVLのCDR)の相補性決定領域の少なくとも1つを含む。
【0270】
他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせから選択される抗IL23抗体である。他の態様では、IL23アンタゴニストは、IL23への結合に関して、ウステキ
ヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせと競合する分子(例えば、抗体)である。
【0271】
例としては、抗IL23抗体及び抗炎症性特性を有する1つもしくは複数の他の治療部分(例えば、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド、及び/または免疫調節剤)の、または抗IL23抗体及び1つもしくは複数の他の処置(例えば、外科手術、超音波、または炎症を減少させるのに有効な処置)の組み合わせを使用することが挙げられる。抗IL23抗体と組み合わせてよい有用な薬剤には、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎を処置するために使用されるもの、例えば、アミノサリチル酸(例えば、メサラミンまたはメサラミンへと代謝される物質、例えば、ASACOL(登録商標)、SALOFALK(登録商標)、PENTASA(登録商標)、DIPENTUM(登録商標)、COLAZIDE(登録商標)、LIALDA(登録商標)及びROWASA(登録商標)を含む)、コルチコステロイド/グルココルチコイド(プレドニゾロンメタスルホ安息香酸、チキソコルトールピバレート、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、及びブデソニドを含む)、抗生物質、例えばメトロニダゾールまたはシプロフロキサシン(または、例えば、瘻孔に苦しむ患者の処置に有用な他の抗生物質)、ならびに免疫抑制剤、例えば、アザチオプリン(例えば、IMURAN(登録商標)及びAZASAN(登録商標))、6-メルカプトプリン(例えば、PURINETHOL(登録商標))、メトトレキサート(例えば、TREXALL(登録商標)、RHEUMATREX(登録商標))、タクロリムス(例えば、PROGRAF(登録商標))及びシクロスポリン(例えば、GENGRAF(登録商標)、NEORAL(登録商標)、及びSANDIMMUNE(登録商標))が含まれる。かかる薬剤(複数可)は、経口的にまたは別の経路、例えば坐剤または浣腸を介して、当該分野で公知及び処方情報に記載されている投与量及び間隔で投与されてよい。
【0272】
さらには、IL23抗体もしくは抗体誘導体、または前記の組み合わせは、1つもしくは複数の分子または他の処置と併せて使用することができ、ここで他の分子(複数可)及び/または処置(複数可)は、IL23に直接結合しないまたは影響しないが、その組み合わせは処置されている状態の処置または予防に有効である。例えば、抗IL23抗体は、プロバイオティクス療法、または腸内菌叢移植を含む、施錠な腸内菌叢を保存または維持するために使用される他の治療法と組み合わせて使用することができる。
【0273】
一実施形態では、分子(複数可)及び/または処置(複数可)の1つまたは複数は、治療の経過において他の分子(複数可)または処置(複数可)の1つまたは複数により引き起こされる状態、例えば、嘔気、疲労、脱毛症、悪液質、不眠症等を処置するまたは予防する。かかる薬剤(複数可)または治療法は、当該分野で公知及び処方情報に記載されている経路により、ならびに投与量及び間隔で施されてよい。
【0274】
いくつかの態様では、IL23抗体もしくは抗体誘導体、または前記の組み合わせは、1つまたは複数の成分栄養処置と併せて使用することができる。例えば、Voitk et al.Arch Surg 107:329(1973);Yamamoto et
al.Int J Colorectal Dis 28:335-340(2013)を参照されたい。
【0275】
追加の支持療法は、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)との可能性のある組み合わせ処置に含まれる。かかる支持療法は、(限定されないが)、鎮痛薬、及び抗コリン剤及び止瀉剤などである。かかる支持療法を組み合わせるこ
とは、処置レジメンの開始、患者の症状の減少及び彼らの生活の質の改善において有用であることができる。支持療法は、経口鉄、葉酸、及びビタミンB12を投与することを含む。止瀉剤には、ジフェノキシラート、コデイン、ロペラミド、及び抗コリン剤(またはその薬学的等価物)が含まれるがこれらに限定されず、これらは、軽度の疾患を有する患者に、腸管運動の頻度を減少させ、直腸切迫を緩和するために投与されることができる。コレスチラミンは、すでに限定的な回盲部切除術を受けた患者における胆汁塩により誘発される結腸分泌を防ぐために患者において使用されることができる。抗コリン剤には、臭化クリジニウム、ジサイクロミン塩酸塩、ベラドンナのチンキ等が含まれるがこれらに限定されず、腹部痙攣、疼痛及び直腸切迫を減少させるのに有用である。支持または治療は、当該分野で公知及び処方情報に記載されている経路により、ならびに投与量及び間隔で投与されてよい。
【0276】
分子及び/または他の処置の組み合わせが使用される全てのそれぞれの場合において、個々の分子(複数可)及び/または処置(複数可)は、有効である、任意の順序で、任意の時間にわたって、例えば、同時、連続的、または交互に投与することができる。一実施形態では、処置の方法は、処置の第二の治療単位を開始する前に、1つの分子を用いた処置または他の処置の最初の治療単位を完了させることを含む。処置の最初の治療単位の終了時と処置の第二の治療単位の開始時との間の時間の長さは、治療の全体の治療単位が有効であることを可能にする任意の長さの時間、例えば、秒、分、時間、日、週、月、さらには年であることができる。
【0277】
VII.IL23経路バイオマーカーを検出するためのキット及びアッセイ
本開示は、CCL20を単独であるいは少なくとも1つのIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/もしくはLCN2、少なくとも1つの炎症性バイオマーカー、例えば、CRP及び/もしくはFCP、またはそれらの組み合わせ(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)と組み合わせて、例えば、イムノアッセイ法を通して検出するためのキットも提供する。かかるキットは、例えば、1つまたは複数の抗CCL20、抗IL22、抗LCN2、抗CRP、及び/または抗FCP抗体を含む、本方法において使用される、様々な試薬のうちの1つまたは複数を(例えば、濃縮形態で)それぞれ有する容器を含むことができる。1つまたは複数の抗CCL20、抗IL22、抗LCN2、抗CRP、及び/または抗FCP抗体、例えば、捕捉抗体は、固体支持体に既に付着した状態で提供されることができる。1つまたは複数の抗体抗CCL20、抗IL22、抗LCN2、抗CRP、及び/または抗FCP抗体、例えば、検出抗体は、検出可能な標識、例えば、ビオチンまたはルテニウムキレートに既にコンジュゲートした状態で提供されることができる。
【0278】
キットは、検出可能な標識を抗体にカップリングするための試薬(ならびに標識自体)、緩衝液、及び/または試薬ならびに本明細書に提供するアッセイの実践を支持する器具類も提供することができる。ある特定の態様では、検出抗体に結合する標識された二次抗体を提供することができる。本開示に従って提供されるキットは、好適な容器、プレート、及び本明細書に提供するアッセイの実践に必要な任意の他の試薬または物質をさらに含むことができる。
【0279】
いくつかの態様では、キットは、高ストリンジェンシー条件下で、CCL20、IL22、及び/またはLCN2遺伝子配列のサブ配列をハイブリダイズすることができる1つまたは複数の核酸プローブ(例えば、天然に存在する及び/または科学的に修飾されたヌクレオチド単位を含むオリゴヌクレオチド)を含む。いくつかの態様では、高ストリンジェンシー条件下で、CCL20、IL22、及び/またはLCN2遺伝子配列のサブ配列をハイブリダイズすることができる1つまたは複数の核酸プローブ(例えば、天然に存在する及び/または科学的に修飾されたヌクレオチド単位を含むオリゴヌクレオチド)は、
マイクロアレイチップに付着させる。
【0280】
本開示に従って提供されるキットは、プロセスを説明する小冊子または説明書も含むことができる。CCL20、IL22、及び/またはLCN2検出イムノアッセイについて、及び特にサンドイッチイムノアッセイ、例えば、ELISAアッセイまたはECLアッセイについては、サンドイッチイムノアッセイプロセスは、固体支持体に付着させた第一の抗CCL20、抗IL22、及び/もしくは抗LCN2「捕捉」抗体またはその抗原結合断片、ならびに第二の抗CCL20、抗IL22、及び/もしくは抗LCN2「検出」抗体またはその抗原結合断片を含む。イムノアッセイは、本明細書に提供する方法または当業者に周知及び理解される方法により行うことができる。一態様では、イムノアッセイは、捕捉抗体またはその断片を固体支持体に付着させること、検査試料または対照試料を適用すること、CCL20、IL22、及び/またはLCN2を、試料中に存在する場合、捕捉抗体またはその断片に結合させること、捕捉抗体またはその断片に既に結合しているCCL20、IL22、及び/またはLCN2に結合することができる、検出抗体またはその断片を適用すること、そして、CCL20、IL22、及び/またはLCN2に結合した検出抗体またはその断片の量を測定することを含む。ある特定の態様では、アッセイは、洗浄ステップ、ブロッキングステップ及びインキュベーションステップをさらに含むことができる。
【0281】
検査キットは、1つまたは複数のCCL20、IL22、及び/またはLCN2検出アッセイ、例えば、イムノアッセイまたは核酸検出アッセイを実行するための説明書を含むことができる。キットに含まれる説明書は、包装材料に添付することも、添付文書として含めることもできる。説明書は、典型的には書面または印刷物であるが、それらに限定されない。かかる説明書を記憶し、エンドユーザーに伝えることができる任意の媒体が企図される。そのような媒体には、電気記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で用いるとき、「説明書」という用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0282】
VIII.コンパニオン診断システム
本明細書に開示の方法は、可能性のある処置選択について臨床医または患者に知らせる、例えば、ウェブサーバを介して利用可能な、コンパニオン診断として提供することができる。本明細書に開示の方法は、生体試料を採取するまたは別様に得ること、ならびにCCL20の単独での、あるいは少なくとも1つのIL23経路バイオマーカー、例えば、IL22及び/もしくはLCN2、少なくとも1つの炎症性バイオマーカー、例えば、CRP及び/もしくはFCP、またはそれらの組み合わせと組み合わせたレベル(例えば、CCL20、IL22、LCN2、FCP、CRP、及び/またはそれらの組み合わせのタンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)を検出及び測定するための分析方法を行うことを含むことができる。CCL20と組み合わせることができる例示的なバイオマーカー及びそれらの組み合わせは、本明細書において上に考察する。
【0283】
CCL20の単独での、または1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、及びそれらの組み合わせのレベルと組み合わせたレベル(例えば、タンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベル)、あるいは測定されたレベルから誘導される正規化スコアは、単独で(例えば、処置、診断、予後、またはモニタリング目的のために)、または他のバイオマーカー(例えば、遺伝子シグネチャーを誘導するために使用されるパネル遺伝子から誘導されたレベルもしくは正規化スコアと組み合わせて使用することができる。
【0284】
これらのスコアを、例えば、(i)性別、(ii)年齢、(iii)ボディ・マス・イ
ンデックス、(iv)喫煙状態、(v)併用している薬物、(vi)健康評価品質(HAQ)、または2つ以上の組み合わせなどの臨床的バイオマーカーに対応する他のスコアと組み合わせて、診断スコアを得ることもできる。このアプローチでは、診断スコアは、疾患の存在の有無の指標である予め設定された閾値と比較される全てのマーカー計算の合計から決定される単一の数であってよい。または、診断スコアは、それぞれがバイオマーカー値を表す一連のバーであってよく、応答のパターンは、疾患の存在の有無の決定のために予め設定されたパターンと比較されてよい。
【0285】
本明細書に記載の方法の少なくともいくつかの態様は、必然的に含まれる計算の複雑性のために、CCL20の単独での、または他のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、FCP、及びそれらの組み合わせとの組み合わせの使用を含む方法は、コンピュータの使用により実施することができる。いくつかの態様では、コンピュータシステムは、プロセッサ、入力デバイス、出力デバイス、記憶デバイス、コンピュータ可読記憶媒体リーダー、通信システム、プロセシング加速(例えば、DSPまたは特殊用途プロセッサ)、及びメモリーを含む、バスを介して電気的に連結されるハードウェア要素を含む。
【0286】
コンピュータ可読記憶媒体リーダーは、コンピュータ可読記憶媒体にさらに連結されることができ、この組み合わせは、包括的に、一時的及び/またはより永久的にコンピュータ可読情報を含有するための、遠隔、ローカル、固定及び/または取り外し可能な記憶デバイスと記憶媒体、メモリー等を表し、これは、記憶デバイス、メモリー及び/または任意の他のそのようなアクセス可能なシステムリソースを含むことができる。
【0287】
単一のアーキテクチャを使用して、現在望ましいプロトコル、プロトコルの変形型、拡張等に従ってさらに構成されることができる1つまたは複数のサーバを実装し得る。しかしながら、当業者には、実施形態が、より具体的なアプリケーション要件に従って良好に使用され得ることが明らかであるだろう。カスタマイズされたハードウェアもまた使用してよく、及び/または特定の要素がハードウェア、ソフトウェアもしくはその両方において実装されてよい。さらに、ネットワーク入力/出力デバイス(図示せず)などの他のコンピュータデバイスへの接続を採用してよいが、他のコンピュータデバイスへの有線、無線、モデム、及び/または他の接続(1つまたは複数)も使用してよいことが理解されたい。
【0288】
一態様では、システムは、入力データを1つまたは複数のプロセッサに提供するための1つまたは複数のデバイスをさらに含む。システムは、順位付けされたデータ要素のデータセットを記憶するためのメモリーをさらに含む。別の態様では、入力データを提供するためのデバイスは、データ要素の特徴を検出するための検出器、例えば、蛍光プレートリーダー、質量分析計、または遺伝子チップリーダを含む。
【0289】
システムは、データベース管理システムを追加で含んでよい。ユーザのリクエストまたはクエリは、訓練セットのデータベースから関連情報を抽出するためにクエリを処理するデータベース管理システムにより理解される適切な言語にフォーマットされることができる。システムは、ネットワークサーバ及び1つまたは複数のクライアントが接続されるネットワークに接続可能であってよい。ネットワークは、当該技術分野で公知であるように、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)であってよい。好ましくは、サーバは、コンピュータプログラム製品(例えば、ソフトウェア)を実行して、ユーザのリクエストを処理するためのデータベースデータにアクセスするために必要なハードウェアを含む。システムは、データ要素に関するデータをシステムに提供する(例えば発現値)ための入力デバイスと通信することができる。一態様では、入力デバイスは、例えば、質量分析計、遺伝子チップまたはアレイリーダ等を含む遺伝子発現プロ
ファイルシステムを含むことができる。
【0290】
本明細書に記載のいくつかの態様は、コンピュータプログラム製品を含むように実装することができる。コンピュータプログラム製品は、アプリケーションプログラムを、データベースを有するコンピュータ上で実行させるための媒体に具現化されたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ可読媒体を含み得る。本明細書で用いるとき、「コンピュータプログラム製品」は、任意の性質の物理媒体上に含有され(例えば、記述された、電子的、磁気的、光学的、または別様)、コンピュータまたは他の自動化されたデータ処理システムと共に使用され得る、自然またはプログラミング言語の文の形態の系統的な指示のセットを表す。そのようなプログラミング言語文は、コンピュータまたはデータ処理システムにより実行された場合、コンピュータまたはデータ処理システムを、記述の具体的な内容に従って機能させる。
【0291】
コンピュータプログラム製品は、限定されることなく、ソース及びオブジェクトコード形態でのプログラム、ならびに/またはコンピュータ可読媒体に埋め込まれたテストもしくはデータライブラリを含む。さらには、コンピュータシステムまたはデータ処理機器デバイスが予め選択された様式で機能することを可能にするコンピュータプログラム製品が、オリジナルソースコード、アセンブリコード、オブジェクトコード、機械言語、上記の暗号化または圧縮されたバージョン、及びありとあらゆる等価物を含むがこれらに限定されない、いくつかの形態で提供されてよい。
【0292】
一態様では、コンピュータプログラム製品は、例えば、患者から採取した試料中のCCL20のレベルが所定の閾値レベルを超えるまたは下回る場合に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を、それを必要とする患者に投与するか否かを決定するための、本明細書に開示の処置、診断、予後またはモニタリング方法を実装するために提供される。
【0293】
一態様では、コンピュータプログラム製品は、例えば、患者から採取した試料中のCCL20のレベルならびに1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の追加のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、CRP、及び/またはFCPのレベルがそれらのそれぞれの所定の閾値レベルを超えるまたは下回る場合に、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を、それを必要とする患者に、投与するか否かを決定するための、本明細書に開示の処置、診断、予後またはモニタリング方法を実装するために提供される。
【0294】
いくつかの態様では、IL23アンタゴニストは、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に特異的に結合することができる抗IL23抗体である。
【0295】
いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖(HC)(配列番号17)及び/もしくは軽鎖(配列番号18)、またはその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の重鎖可変領域(VH)(配列番号7)及び/または軽鎖可変領域(VL)(配列番号8)を含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、MEDI2070の相補性決定領域(配列番号33~38)の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、抗IL23抗体またはその抗原結合断片は、配列番号45の配列を含むVH領域及び/もしくは配列番号46の配列を含むVL領域、またはその抗原結合断片、変異体もしくは誘導体を含む。いくつかの態様では、抗IL2
3抗体またはその抗原結合断片は、配列番号47~49の相補性決定領域(配列番号45のVHのCDR)及び/または配列番号50~52(配列番号46のVLのCDR)の少なくとも1つを含む。
【0296】
他の態様では、IL23アンタゴニストは、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせから選択される抗IL23抗体である。他の態様では、IL23アンタゴニストは、IL23への結合に関して、ウステキヌマブもしくはブリアキヌマブ(IL23のp40サブユニットを標的とする)、グセルクマブ、チルドラキズマブ、BI-655066もしくはLY-3074828(IL23のp19サブユニットを標的とする)、その抗原結合断片、またはそれらの組み合わせと競合する分子(例えば、抗体)である。
【0297】
コンピュータプログラム製品は、コンピュータデバイスまたはシステムのプロセッサにより実行可能なプログラムコードを具現化するコンピュータ可読媒体を含み、該プログラムコードは、a)対象からの生体試料に帰属するデータを取得するコードであって、データは、CCL20レベル値(存在/不在、量、またはこれらのレベル値から別様に誘導されるデータ)を、単独でまたは生体試料中の他のバイオマーカー、例えば、IL22、LCN2、FCP、CRP、もしくはそれらの組み合わせに対応する値(例えば、生物学的マーカーまたは臨床的マーカー)と組み合わせて含む。これらの値は、臨床バイオマーカー、例えば、疾患もしくは障害の重症度を示すものに、またはかかる疾患もしくは障害を有する患者の素因に対応する値と組み合わされることができ、ならびに、(b)例えば、IL23アンタゴニスト(例えば、MEDI2070などの、IL23のp19サブユニットを標的とする、例えば、抗IL23抗体、またはその抗原結合断片)を、それを必要とする患者に投与するか否かを示す、分類法を実行するコードを含む。
【0298】
様々な態様を方法または装置として説明してきたが、態様は、コンピュータと連結したコード、例えば、コンピュータ上に存在するコードまたはコンピュータによりアクセス可能なコードを通して実行可能であることが理解されたい。例えば、ソフトウェア及びデータベースを使用して、上述の方法の多くを実行することが可能である。ゆえに、ハードウェアにより達成される態様に加えて、これらの態様が、具現化され、本明細書に開示する機能を使用可能にするコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能媒体で構成される製品の使用を通じて、達成可能であることにも留意されたい。それゆえ、態様もそのプログラムコード手段において、本特許により保護されるとみなされることが望ましい。
【0299】
さらには、いくつかの態様は、限定されることなく、RAM、ROM、磁気媒体、光学媒体、または磁気光学媒体を含む、事実上任意の種類のコンピュータ可読メモリー内に保存されたコードであることができる。さらにより一般的には、いくつかの態様は、限定されないが、汎用プロセッサ、マイクロコード、PLA、またはASIC上で動作するソフトウェアを含む、ソフトウェアにて、ハードウェアにて、またはそれらの任意の組み合わせにて実装され得る。
【0300】
また、いくつかの態様は、搬送波中で具現化されるコンピュータシグナル、ならびに伝送媒体を通して伝搬されるシグナル(例えば、電気的及び光学的)として達成され得ることが想定される。ゆえに、上述の様々なタイプの情報が、データ構造等の構造にフォーマットされ得、伝送媒体を通して電気シグナルとして伝送されるかまたはコンピュータ可読媒体上に保存され得る。
略語表
【0301】
【表1-1】
【0302】
配列
【0303】
【表2-1】
【0304】
【表2-2】
【0305】
【表2-3】
【0306】
【表2-4】
【0307】
【表2-5】
【0308】
【表2-6】
【0309】
【表2-7】
【0310】
【表2-8】
【0311】
***
本明細書で言及する全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0312】
本開示の態様は、以下の非限的な実施例を参照することによりさらに定義されることができ、それらの実施例は、本開示のある特定の抗体の調製及び本開示の抗体を使用するための方法を詳細に記載する。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、物質及び方法の両方に対する多くの修正を実施できることが明らかだろう。
【0313】
発明の概要及び要約の項目ではなく、発明を実施するための形態の項目が、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図することが理解されたい。発明の概要及び要約の項目は、本発明者(複数可)により企図されるように1つまたは複数の、しかし全てではない本発明の例示的な態様を記載し得、ゆえに、本発明及び添付の特許請求の範囲をいずれにしても限定するものではない。
【0314】
本発明は、特定の機能及びその関連事項の実施を説明する機能的構成要素を用いながら上記説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は説明の簡便化のために本明細書において恣意的に定義されている。代替の境界は、特定の機能及びその関連事項が適切に実施される限り、定義されることができる。
***
【実施例0315】
本発明は、本発明の例示的な態様を詳述する以下の実施例の参照により完全に理解されるだろう。
実施例1
第2a相臨床試験プロトコル
第2a相試験を、抗TNFα療法に失敗しているまたは不耐性である中程度から重度CDを有する被験者における、最初の12週の処置期間中、第0週(1日目)及び第4週(29日目)に投与される複数の静脈内用量のMEDI2070(700mg)またはプラセボの有効性及び安全性を評価するために実施した。以下の治験実施計画を、ヒト患者において実行した。臨床治験の結果を実施例2に提示する。
【0316】
I.臨床試験概要
第2a相試験は、抗TNFα療法に失敗しているまたは不耐性である中程度から重度CDを有する被験者における、最初の12週の処置期間中、第0週(1日目)及び第4週(29日目)に投与される複数の静脈内用量のMEDI2070(700mg)またはプラセボの有効性及び安全性を評価した。100週の、非盲検、処置期間を含んで、MEDI2070(210mg皮下Q4Wで投与した)の長期安全性の評価を可能にし、PK及び有効性データの情報を提供した。
【0317】
この試験の主要な目的は、臨床効果(ベースラインからのCDAIの少なくとも100点減少として定義する)または寛解(CDAI<150として定義))を第8週で中程度から重度CDを有する被験者において誘導するMEDI2070対プラセボの有効性の評価とした。
【0318】
この試験の第二の目的は、第8週でのCDAI寛解の達成におけるMEDI2070対プラセボの有効性、第8週でのベースラインからの少なくともCDAI100点減少の達成におけるMEDI2070対プラセボの効果、第8週でのベースラインからの少なくともCDAI70点減少の達成におけるMEDI2070対プラセボの効果、第12週でのCDAI寛解またはベースラインからの少なくともCDAI100点減少の達成におけるMEDI2070対プラセボの効果、第8週でのCDAIにおけるベースラインからの変化に与えるMEDI2070対プラセボの効果、MEDI2070の安全性及び忍容性、ならびにMEDI2070のPK及び免疫原性(IM)を評価することを含んだ。
【0319】
この試験の探索的目的は、CDAI応答、他の評価時点でのCDAIにおけるベースラインからの変化、及び持続的CDAI応答を含むがこれらに限定されない臨床効果の他の尺度に与えるMEDI2070の効果、血中及び便中の炎症性マーカーに与える処置の効果、MEDI2070に応答する被験者に関する血中または便中バイオマーカーの予測値、ならびに患者報告アウトカム(PRO)に与えるMEDI2070の効果を評価することを含んだ。
【0320】
II.試験設計概要
これは、2部構成の第2a相試験とし、12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間、その後に100週の、非盲検、処置期間を含んで、MEDI2070の短期有効性、ならびに短期及び長期安全性を、治験責任医師により決定された、抗TNFα療法に失敗したまたは不耐性である中程度から重度の活動性CDを有する被験者において評価した。被験者を、彼らが失敗した前抗TNFα薬剤の数に基づいて、階層化した(1対1超)。世界各地の様々な施設にいる被験者を、1:1比率に無作為化して、最初に固定静脈内用量のMEDI2070(700mg)またはプラセボを、12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間中、第0週(1日目)及び第4週(29日目)に受けさせた。二重盲検、プラセボ対照、処置期間の完了時(第12週)に、被験者は、100週の、非盲検、処置期
間を開始する選択肢を有し、この場合、彼らは図1に記載のように非盲検MEDI2070(210mg皮下)Q4W(第12週から第112週まで)を受けた。
【0321】
MEDI2070またはプラセボを、静脈内注入として、少なくとも60分間にわたって、注入ポンプを介して第0週(1日目)及び第4週(29日目)に投与した。12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間を完了し、100週の、非盲検、処置期間を開始した被験者は、MEDI2070を、210mg皮下注射Q4Wの固定用量で26用量にわたって(第112週まで)受けた。この試験の主要な分析は、試験における最後の被験者が12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間を完了した後、または12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間を完了する前に試験から脱落した後に実施した。
【0322】
この試験におけるMEDI2070の用量は、12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間(第0週及び第4週)では700mg静脈内Q4Wとし、100週の、非盲検、処置期間(第12週から第112週)では210mg皮下Q4Wとした。
【0323】
MEDI2070の薬物動態/PDモデリングは、700mg静脈内及び210mg皮下投与レジメンの両方に関して試験の全期間を通して、血漿中IL23の平均抑制を99%超と予測した。さらには、これらの投与レジメンでのMEDI2070の(効力補正された)血清濃度は、CDにおいて有効であると示された抗IL12/23p40抗体ウステキヌマブのそれ(Sandborn et al.Gastroenterol.135:1130-41(2008))よりも高いと予測された。700mg静脈内投与は、定常状態の標的抑制を迅速に達成すると予測された。
【0324】
以前の臨床データ(Sandborn et al.Gastroenterol.135:1130-41(2008))は、静脈内ウステキヌマブの投与後の応答パラメータにおけるプラセボからの変化は、ウステキヌマブ投与の開始後6~8週間で最大化されたことを示し、それゆえ、提案された12週間のプラセボ対照、二重盲検期間は、この患者集団においてMEDI2070の効果を特徴決定するのに十分である。規制ガイダンスは、4~8週の間(または2サイクルの投薬後)に効果の誘導について主要評価項目を評価することを推奨するため、第8週での主要評価項目の評価が適切である。加えて、第12週を評価して、MEDI2070の効果の潜在的な延長時間経過を観察した。
【0325】
全ての被験者は臨床試験用医薬品(700mg MEDI2070またはプラセボ)を静脈内注入により、最小60分間にわたって12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間中に受けた。MEDI2070(700mg)またはプラセボを、100mLの体積中5.0%w/vデキストロースにて、最小60分間にわたって注入ポンプを使用して送達した。各静脈内注入の前後に、静脈内アクセスを5%w/vデキストロースでフラッシュした。
【0326】
MEDI2070を、皮下(SC)注射により、100週の、非盲検、処置期間中に投与した。各皮下用量は、被験者の前腹壁に、経験豊富かつ認定されたスタッフメンバーにより投与された。各皮下注射は、1.0mLを超えない体積(すなわち、210mg皮下用量については、3×1.0mL注射)とした。MEDI2070投与量体積が1.0mLを超えるとき、用量は、3シリンジに等しく分けられ、複数回の皮下注射として被験者の前腹壁上の交互(左または右)の部位に、各注射間おおよそ30秒以下の時間、及び少なくとも2cm離れた距離で投与した。
【0327】
III.疾患評価及び方法
CDAI:CDAIは、CDにおける疾患活動性を測定するための臨床試験における使用のために開発され有効性が確認されているいくつかの多品目機器の中で最も古く、最も
広く活用されている(Best et al.Gastroenterology 70:439-44(1976);Sands et al.N Engl J Med.350(9):876-85(2004))。CDAIは、前の週にわたってモニターされる症状スコアを使用して活動性疾患の重症度を測定し、患者報告症状、医師が評価した兆候、及び臨床検査マーカーを含む。CDAIスコアは、1週間にわたって日誌に記録された主観的項目(液体または非常に柔らかい便の回数、腹痛及び全身健康状態)、及び客観的項目(ロペラミド/オピエートなどの止瀉剤を服用する関連症状、腹部質量、ヘマトクリット、毎朝の体温、及び体重)に関して加重したスコアを合計することにより算出する。CDAIスコアは0~600の範囲であり、スコアが高いほど疾患活動性が高いことを示す。スコアが150未満、150~219、及び220~450の被験者は、それぞれ、寛解、軽度疾患、及び中程度から重度疾患を表し、一方で450超のスコアを有する被験者は、非常に重度の疾患を有する(Buxton et al.Value Health.10:214-20(2007))。CDAIは、試験に対する適格性を決定するためにその部位で算出された。統計学的分析のために、全来診でのCDAIも算出した。
【0328】
患者報告アウトカム:本試験は、患者報告アウトカム(PRO)を、IBDQを使用して評価した。IBDQは、第0週、第4週、第8週、及び第12週に予定された、試験来診日に紙質問票を使用して被験者により完了され、任意の他の評価の前に施された。
【0329】
炎症性腸疾患質問票(IBDQ):IBDQは、IBDを有する患者における健康関連生活の質を測定する有効な、疾患特異的PRO手段である(Guyatt et al.Gastroenterology.96:804-10(1989))。IBDQは、以下の範囲をカバーする:腸症状(10項目)、全身症状(5項目)、情緒的機能(12項目)、及び社会生活機能(5項目)。項目は、7点のリッカート尺度でスコア化され、32点から224点の総合判定スコアが得られる(スコアが高いほど、より良好な生活の質を示す)。IBDQは、IBDにおける処置有効性を評価するために薬物承認用途においてしばしば使用されている。IBDQは、自己回答で、5分内に完了するように設計された。
【0330】
IV.評価項目
本試験の主要評価項目は、第8週でのCDAI応答とし、150未満のCDAIスコアまたはベースラインからの少なくとも100点のCDAI減少のいずれかにより定義した。ベースラインは、臨床試験用医薬品の最初の投与の前の直近の非欠損観測値として定義した。
【0331】
欠損データは、ノンレスポンダー補完アプローチにより補完した。すなわち、主要評価項目に欠損情報を有する被験者はいずれも、ノンレスポンダーと仮定した。加えて、ステロイド使用に臨床的に有意義な増加を有する被験者は、主要分析の観点に関してノンレスポンダーであると仮定した。
【0332】
主要評価項目に関しては、処置群間の比較は、mITT集団に基づき、ロジスティック回帰モデルを使用して処置及び階層化因子を共変量として用いて行った。この試験に関する階層化因子は、被験者が受けたことのある前抗TNFα薬剤の数により定義した(1対1超)。処置効果の有意性は、α=10%で両側検定を使用して検査した。
【0333】
以下の感度分析を行った。(1)感度分析を、mITT集団における被験者について上で計画したモデルを拡張することにより、ベースラインCDAIスコア及び/または他のベースライン共変量に関して調整することにより行った。(2)混合効果縦断的ロジスティック回帰モデルを、観察された応答に対して実施した。このロジスティックランダム効果モデルは、被験者間の変動性を考慮するためのランダム切片を含む。固定カテゴリー効
果には、階層化因子、処置、来診時点、及び処置と来診時点の交互作用、ならびにベースラインスコアの連続固定共変量が含まれる。(3)感度分析は、PP集団における被験者について上で計画されたモデルを拡張することにより、ベースラインCDAIスコア及び/または他のベースライン共変量に関して調整することにより行った。
【0334】
副次評価項目には、以下を含めた。
1)第8週でのCDAI寛解、(これは150未満のCDAIスコアにより定義される)。
2)第8週でのCDAIにおけるベースラインからの少なくとも100点の減少。
3)第8週でのCDAIにおけるベースラインからの少なくとも70点の減少。
4)第12週でのCDAI応答(CDAI<150またはベースラインからの少なくとも100点のCDAI減少により定義されるいずれかの寛解)。副次評価項目1、2、3、及び4は、主要評価項目と同様の方法で分析した。加えて、感度分析を、ステロイドを増加させた(5mg/日プレドニゾロン、もしくは等価物、または3mg/日ブデソニドとして定義する)被験者について、第8週来診時またはその前での最終応答値を第12週へと代入することにより行った。
5)第8週でのベースラインCDAIからの変化。副次評価項目5は、前抗TNFα使用について調整する逆確率加重一般化推定方程式法を使用して分析した。また、感度分析を、前抗TNFα使用について調整する二重盲検、プラセボ対照、処置期間の終了を通してLOCF手法を使用して欠損データを補完した後に、ANCOVAモデルを使用して行った。
6)MEDI2070の安全性及び忍容性を評価するために、安全性及び忍容性評価項目には、SAEを含むAE、臨床検査値及びバイタルサインにおける有意な変化を含んだ。12週の、二重盲検、プラセボ対照、処置期間にわたる全ての安全性関連評価項目は、受けた実際の処置を使用して安全性集団に基づいて報告した。少なくとも1用量のMEDI2070を伴うプラセボに無作為化された被験者は、活動性群に含めた。同様に、いずれの活動性用量も伴わないMEDI2070群に無作為化された被験者はプラセボ群に含めた。医薬品規制用語集(MedDRA)を、全てのAEをコード化するために使用した。処置下で発現したAEは、臨床試験用医薬品の最初の用量の投与時または投与後から最後の投薬の36週間後までの発症を伴うあらゆるAEと定義した。
7)複数回用量のMEDI2070のPK及び免疫原性(IM)を評価するために、血清MEDI2070濃度データの記述統計を、来診毎に提供した。MEDI2070の個別及び平均血清濃度-時間プロファイルを、PKデータ分析のために生成し、時間0を注入開始と定義した。血清中のMEDI2070に対する抗薬物抗体(ADA)の存在も評価した。
【0335】
実施例2
第2a相臨床試験結果
I.試験設計及び患者
実施例1に記載する第2a相試験(clinicaltrials.gov識別番号:NCT01714726)は、12週の、二重盲検、プラセボ対照処置期間、その後100週非盲検処置期間を含んで、MEDI2070の短期有効性ならびに短期及び長期安全性を前抗TNF-α療法に失敗した活動性の中程度から重度クローン病を有する患者において評価した。世界各地の60の施設で実施して、本試験は、少なくとも6ヶ月にわたって回腸、回腸-結腸、または結腸クローン病と診断された18歳から65歳までの成人を含んだ。
【0336】
患者は、中程度から重度活動性クローン病(220~450のクローン病活動指数[CDAI]スコアとして定義する)を、活動性炎症のエビデンス(ベースラインC反応性蛋白[CRP]≧5mg/L、便中カルプロテクチン[FCP]≧250μg/g、または
炎症の内視鏡によるエビデンス[それぞれ直径で0.5cm超である少なくとも3つの非吻合部潰瘍化、または少なくとも10cm連続する腸を必然的に含む10アフタ性潰瘍化の写真記録]をスクリーニング前12週間以内に)と共に、有するものとした。患者は、少なくとも1回の抗TNF-α療法をクローン病に関して認可された用量で受けていなければならず、一次非応答(少なくとも2週間離れた少なくとも2用量の抗TNF-α療法を含む少なくとも1つの誘導レジメンにもかかわらず、活動性疾患の兆候及び症状)または二次非応答(初回臨床利益後の維持抗TNF-α療法中での持続的活動性疾患の症状の再発)または不耐性(注入関連応答、脱髄、鬱血性心不全、または感染を含むがこれらに限定されない)を伴う。除外基準としては、同種異系骨髄移植または細胞ベースの移植、短腸症候群、試験の3ヶ月以内の閉塞性狭窄、試験の12週間以内の腸の外科手術、回腸瘻造設または結腸瘻造設、臨床的に有意な随伴症、またはIL12またはIL23を標的とする生物学的薬剤を用いた前処置を有するものを含んだ。
【0337】
他の前治療のウォッシュアウトが必要とされ、それには、試験前にインフリキシマブでは8週間、アダリムマブもしくはセルトリズマブでは10週間、ナタリズマブでは12週間、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス、サリドマイド、もしくはタクロリムスでは4週間、静脈内もしくは筋肉内コルチコステロイドでは2週間、または局所メサラミンもしくは直腸コルチコステロイドでは2週間を含む。5-アミノサリチル酸及びグルココルチコステロイドの併用は、用量が無作為化の前2週間にわたって安定し、第8週を通して安定を維持する場合に許可された。同様に、免疫調節剤、例えば、アザチオプリンの併用は、用量が無作為化の8週前から第8週を通して安定を維持した場合に許可された。クローン病のための経口抗生物質、プロバイオティクス、及び止瀉剤の使用が許可された。
【0338】
全ての患者は、書面によるインフォームドコンセントを提供した。試験は、ヘルシンキ宣言及び臨床試験実施基準に従って実施され、各サイトの地方機関の審査委員会がプロトコルを承認した。
【0339】
II.処置
二重盲検期間については、対話型音声またはウェブベースの応答システムを、処置群の無作為化のために使用し、各患者に固有の無作為化コードを割り当てた。無作為化を、以前に失敗した抗TNF-α薬剤の数に基づいて階層化した(1対1超)。順列ブロックアルゴリズムに基づく秘匿割付けを用いた盲検無作為化を使用して、患者を、各層内で1:1に無作為化して、MEDI2070 700mgまたはプラセボを60分間にわたり、第0週(1日目)及び第4週(29日目)に静脈内投与した。患者、治験責任医師、及び治験依頼者は、一次分析を実施した、第12週に最後の患者が達するまで処置に対して盲検化された。非盲検期間中(第12週から第112週まで)、全ての患者は、MEDI2070 210mgを4週毎に皮下投与された(100週にわたって26用量)。
【0340】
III.試験評価
主要評価項目測定基準は、第8週でのベースラインからの少なくとも100点CDAIスコア減少または150未満のCDAIスコアとして定義した、臨床効果を達成した患者の比率とした。副次的測定基準は、第8週でのCDAI寛解(CDAIスコア<150と定義)、第8週でのベースラインからの少なくとも100点CDAIスコア減少(CR100)、第8週でのベースラインからの少なくとも70点CDAIスコア減少(CR70)、第12週での臨床効果、第12週でのCDAI寛解を達成する患者の割合、ならびに有害事象、重篤な有害事象、及び臨床検査値及びバイタルサインにおける有意な変化を含む、MEDI2070の安全性及び忍容性を含んだ。血清MEDI2070濃度及びADAの存在を、ベースライン、第8週、第24週、及び試験終了時に評価した。
【0341】
探索的評価項目測定基準には、血中及び便中の炎症性マーカー(CRP及びFCP)、他のバイオマーカーの応答及び臨床効果に関するそれらの予測値、第8週から第24週の間の持続臨床効果、ならびに第8週及び第24週で評価する持続CDAI寛解を含んだ。バイオマーカー評価には、第8週及び第12週でのMEDI2070対プラセボを用いた処置後のベースラインからのIL22血清レベル(クローン病患者及び疾患活動性のマーカーにおいて高レベルで発現される[Schmechel et al.,Inflamm Bowel Dis,14:204-212(2008)])における変化、第8週及び第12週でのMEDI2070対プラセボを用いた処置後のIL22レベルにおけるベースラインからの変化と臨床効果及びCDAI寛解の関連性、ならびに第8週及び第12週でのプラセボと比較してMEDI2070を用いた処置後の臨床効果及びCDAI寛解の予測因子としてのベースラインでのより高いIL22血清レベルの評価を含んだ。
【0342】
IV.統計分析
プラセボ群におけるCDAI臨床効果率を20%と仮定すると、処置群あたりおおよそ54人の患者が、第8週でMEDI2070 700mgとプラセボ間のCDAI臨床効果率における25%差異を検出するための87%検出力を提供するために必要とされ、これには、α=0.1の有意性レベルで両側検定を使用した。処置群調整当たりおおよそ10%脱落率を仮定して、おおよそ60人の患者を無作為化することとした。
【0343】
修正治療企図解析(ITT解析)集団は、二重盲検期間中に少なくとも1用量の試験処置を受けた全ての無作為化患者を含んだ。安全性集団は、二重盲検期間中に任意の試験処置を受けた患者を含んだ。パープロトコル集団は、全ての処置用量を受けた患者を含み、大きなプロトコル偏差はなかった。非盲検集団は、非盲検期間中に少なくとも1用量のMEDI2070を受けた全ての患者を含んだ。
【0344】
2値アウトカムを有する主要及び副次的測定基準については、処置群間の比較は、修正治療企図解析(ITT解析)集団に基づき、これにはロジスティック回帰モデル[Ge et al.,Drug Inf J,45:481-493(2011)]を使用して、処置及び階層化因子(前抗TNF-α薬剤の数、1対1超)を共変量とした。処置効果の有意性は、両側検定をα=10%にて使用して検査した。感度分析を、ベースラインCDAIスコア及び/または他のベースライン共変量に関して調整するために計画したロジスティック回帰モデルを拡張することにより実施した。2値評価項目に関する欠損データは、ノンレスポンダー補完を使用して補完した。第8週の前にノンレスポンダーとして補完された患者は、全てのその後の来診に関してノンレスポンダーであるとみなした。加えて、ステロイド使用において臨床的に有意義な増加を有する患者は、ノンレスポンダーであると仮定した。ステロイド用量における臨床的に有意義な増加は、少なくとも5mg/日の少なくとも3日間にわたるプレドニゾンもしくは等価物の増加、または少なくとも3mg/日の少なくとも3日間にわたるブデソニドの増加として定義した。連続測定値に関する欠損データは、逆確率加重一般化推定方程式法を用いて扱い、前抗TNF-α薬剤使用について調整した。
【0345】
薬物動態データをまとめた。探索的分析を、非盲検期間の患者について行った。これらの患者に関する第24週までの二重盲検及び非盲検期間からの有効性データを組み合わせ、二重盲検期間中の処置群毎に報告した。CRP及びFCPにおけるベースラインからの変化を、混合効果反復測定モデルを使用して分析し、前抗TNF-α使用及びベースラインについて、非盲検集団に関して調整した。第24週でのMEDI2070 210mg及び第12週でのMEDI2070 700mgまたはプラセボ間の比較を行った。
【0346】
V.患者結果
合計で、121人の患者を無作為化した。このうち119人は、二重盲検処置を受けた
図1)。二重盲検期間中、それぞれ59中52(86.7%)及び60中52(85.2%)人の患者が、MEDI2070及びプラセボ群にて第12週を完了した。全体的にベースラインの患者特徴を、処置群間で平衡させた(表1)が、CDAI及びCRPレベルがMEDI2070において数値的に高かったことは除く。第8週、第12週、及び第24週からの結果をここに報告する。試験は、長期経過観察を進行中である。
表1.ベースライン特徴及び人口統計(修正治療企図解析(ITT解析)集団)。
【0347】
【表3-1】
【0348】
【表3-2】
【0349】
VI.有効性
(i)第8週
主要評価項目測定基準については、第8週での臨床効果の比率は、MEDI2070群においてプラセボ群に対して有意に高かった(それぞれ、49.2%対26.7%、P=0.01、点推定:0.225[90%信頼区間(CI):0.083~0.368]、図2A)。CDAI寛解率は、MEDI2070で27.1%及びプラセボで15.0%であった(P=0.10、点推定:0.122[90%CI:0.000~0.243])。CR70率は、それぞれ、MEDI2070及びプラセボ群において52.5%及び46.7%であり(P=0.52)、CR100率は、それぞれ、MEDI2070及びプラセボ群において45.8%及び25.0%であった(P=0.02)。
【0350】
有意に大きな割合のMEDI2070を受けている患者が、CDAI効果及びFCPまたはCRPにおけるベースラインに対する50%減少(P<0.001)、ならびにCDAI寛解及びFCPまたはCRPにおけるベースラインに対する50%減少の複合評価項目を達成した(P=0.02、図2B)。MEDI2070処置は、さらにFCPにおいてプラセボに対して有意に大きな減少をもたらし(最小二乗平均変化-153.5対-49.7、最小二乗平均差異-105.6[90%CI:-184.0~-27.2]、P=0.027)、CRPレベルを有意に減少させた(最小二乗平均変化:-12.6対プラセボで5.1、最小二乗平均差異-17.6[90%CI:-28.3~-6.9]、P=0.007)。
【0351】
(ii)第12週
第12週で、臨床効果の比率は、MEDI2070でより大きく(37.3%対28.3%、P=0.29)、CDAI寛解の比率においても同様であった(20.3%対13.3%、P=0.31)。しかしながら、差異は統計学的に有意ではなかった。第12週でのCR100の比率は、MEDI2070で37.3%及びプラセボで28.3%であった(P=0.288)。第12週で、MEDI2070でのFCP及びCRPにおける有意な減少が維持された(FCP:最小二乗平均変化-179.6対-55.1、最小二乗平均差異-124.6[90%CI:-221.2~-27.9]、P=0.034、CRP:最小二乗平均変化:-13.4対プラセボで-2.6、最小二乗平均差異-10.8[90%CI:-17.6~-4.1]、P=0.008)。
【0352】
(iii)第24週
臨床効果及びCDAI寛解率は、第24週でMEDI2070群において維持された。24週での、臨床効果及びCDAI寛解を達成した、プラセボ次いで非盲検MEDI2070を受けている患者の割合(プラセボ/MEDI2070群)は、MEDI2070 700mg次いで非盲検MEDI2070(MEDI2070/MEDI2070)を受けているそれと同様であった(図3A及び図3B)。24週間にわたって、MEDI2070/MEDI2070群は、CDAI効果プラスFCPまたはCRPにおけるベースラインに対する50%減少、ならびにCDAI寛解プラスFCPまたはCRPにおけるベースラインに対する50%減少の複合評価項目を達成し続けた(表2)。第24週で両方の複合評価項目を達成しているプラセボ/MEDI2070群における患者の割合は、MEDI2070/MEDI2070群のそれと同様であった。MEDI2070/MEDI2070群では、FCP及びCRPレベルにおけるベースラインからの変化は、第12週と第24週の間で維持された。プラセボ/MEDI2070群では、FCP及びCRPレベルにおける低減が第12週と第24週の間で観察された。
【0353】
表2.複合評価項目(第8週から第24週)、持続効果及び寛解(非盲検集団)、ならびに便中カルプロテクチン及びC反応性蛋白におけるベースラインからの変化(混合効果モデル、非盲検集団)。
【0354】
【表4】
【0355】
持続効果は、第8週及び第24週の両方で効果の基準を達成することとして定義する。割合(%)は、非盲検集団における患者の数を使用して算出した。
持続寛解は、第8週及び第24週の両方で寛解の基準を達成することとして定義する。割合(%)は、非盲検集団における患者の数を使用して算出した。
平均及びP値は、処置群、来診時点、処置と来診時点の交互作用、前抗腫瘍壊死因子α使用の階層化因子、及びベースライン便中カルプロテクチンまたはC反応性蛋白に関する固定項目を伴う混合効果モデルから獲得し、処置内患者をランダム効果とし、共分散構造を無構造と仮定した。
【0356】
VII.MEDI2070曝露-応答関係
700-mg静脈内用量のMEDI2070では、曝露及び有効性の間で決定的な関係は確立されなかった(データは示さず)。第4週トラフならびに第8週及び第12週での
血清MEDI2070濃度は、10倍の範囲にわたって変動し、CDAI応答に関連しないまたは第8週で非応答であった(データは示さず)。これらの知見は、用量応答曲線のプラトーでの投薬と一致している。
【0357】
VIII.バイオマーカー
MEDI2070群の患者は、血清IL22レベルにおいてプラセボ/MEDI2070群のそれに対してより大きな減少を有した。15.6pg/mLの中央値以上であるベースライン血清IL22レベルは、MEDI2070群における臨床効果の尤度の増加と関連した。15.6pg/mL未満のベースラインIL22レベルを有するMEDI2070群の患者は、プラセボ群のそれと同様のCR100応答率を有した(図5)。臨床応答は、プラセボ群でIL22の強い関数ではなかった。
【0358】
IX.安全性
(i)第12週
二重盲検期間の終了時に、処置下で発現した有害事象を有する患者の割合は、MEDI2070及びプラセボ群間で同様であり(それぞれ、67.8%対68.3%)、グレード3以上の有害事象(それぞれ、10.2%対11.7%)及び重篤な有害事象(それぞれ、8.5%対8.3%)を有する患者の割合も同様であった。処置関連有害事象は、MEDI2070を受けている患者の13.6%で、プラセボを受けている患者の21.7%で観察された。いずれかの群の患者の少なくとも5%において観察されたものを表3に示す。重篤な有害事象は、MEDI2070群で5人の患者、プラセボ群で5人の患者において発生した。事象には、MEDI2070群ではクローン病(2人の患者にて3件の事象)、結腸内視鏡検査-関連結腸穿孔(n=1)、発熱(n=1)、及び蜂巣炎(n=1)、ならびにプラセボ群では貧血(n=1)、クローン病(2人の患者にて2件の事象)、下痢(n=1)、胃腸出血(n=1)、及び腹部膿瘍(n=1)が含まれた。
【0359】
表3.いずれかの処置群の患者の少なくとも5%において処置下で発現した有害事象(第12週まで、安全性集団)
【0360】
【表5】
【0361】
重篤であるもしくは重症度において少なくともグレード3であった、または経口もしくは非経口抗菌治療を必要とした感染は、MEDI2070群では4人の患者にて4件の事象で、プラセボ群では7人の患者にて11件の事象で発生した。処置下で発現した有害事象に起因し得る処置中止は、MEDI2070患者の8.5%(胃腸障害[6.8%]及び感染[1.7%]を含む)及びプラセボ患者の10.0%(胃腸障害[6.7%]、感染[1.7%]、及び眼障害[1.7%]を含む)で発生した。
【0362】
(ii)第24週
第24週で、処置下で発現した有害事象は、MEDI2070群にて患者の67.3%で、プラセボ/MEDI2070群にて患者の65.4%で観察され、それぞれ、処置関連有害事象は、患者の25.0%及び21.2%で観察された。少なくともグレード3重症度の処置下で発現した有害事象は、MEDI2070群では患者の13.5%で、プラセボ/MEDI2070群では患者の3.8%で発生した。重篤な有害事象は、それぞれ、患者の15.4%及び7.7%で観察された。処置下で発現した有害事象に起因し得る処置中止は、MEDI2070患者の9.6%(クローン病フレア[3.8%]、痔瘻[1.9%]、貧血及びリンパ球減少症[1.9%]、ならびに肛門膿瘍[1.9%]を含む)、及びプラセボ/MEDI2070患者の3.8%(骨盤膿瘍[1.9%]及び腎臓結石[1.9%]を含む)で発生した。重篤、重症度において少なくともグレード3であった、または経口もしくは非経口抗菌治療を必要とした感染事象の数は、MEDI2070及びプラセボ/MEDI2070群において等しかった(13件の事象)。
【0363】
X.免疫原性
抗薬物抗体が119人のうち2人の患者において検出された。MEDI2070を受けている一人の患者が抗薬物抗体をベースラインで有したが、その後の評価では有さなかっ
た。残りの患者は、二重盲検期間中にプラセボを受けており、第24週で抗薬物抗体を有した。
【0364】
XI.考察
前抗TNF-α療法に失敗した中程度から重度クローン病を有する患者では、MEDI2070は、第8週でプラセボと比較して有意に大きな比率の臨床効果、CDAIにおける100点減少及びCDAI寛解の複合をもたらし(それぞれ、49.2%対26.7%、P=0.01)、これは試験の主要評価項目を満たした。臨床有効性は、MEDI2070で観察された生物学的効果と一致した。MEDI2070群の患者は、プラセボと比べてベースラインからのより大きな低減をFCP及びCRPにおいて有した。FCP及びCRPに与えるMEDI2070の有益な効果は、この患者集団が、抗TNF-α療法を用いて以前に重度に処置されていたこと、患者の65%超が2つ以上の前抗TNF-α薬剤を受けたことがあることを考慮すると、顕著である。
【0365】
第12週で、臨床効果の比率は、MEDI2070群においてより大きく、CDAI寛解の比率においても同様であった。しかしながら、これらの差異は有意ではなかった。MEDI2070によるFCP及びCRPにおける有意な減少は、第12週で維持された。第24週で、臨床効果、CDAI寛解、ならびにFCP及びCRPのレベルにおけるベースラインからの変化は、MEDI2070群において第12週及び第24週の間で維持された。プラセボ/MEDI2070群の患者の中で、臨床効果及びCDAI寛解を第24週で達成している割合は、両期間においてMEDI2070を受けたものと同様であり、FCP及びCRPレベルにおける有意な低減が第12週及び第24週の間で観察された。700-mg静脈内用量のMEDI2070では、曝露及び有効性の間の決定的な関係は確立されなかった。この知見は、用量応答曲線のプラトーでの投薬と一致する。より広い範囲の用量が将来の試験において探索されるだろう。
【0366】
MEDI2070は十分に忍容性を示し、処置下で発現した有害事象、グレード3以上の有害事象、重篤な有害事象、及び処置下で発現した有害事象に起因する中止の比率は、第12週でプラセボのそれと同様であった。重篤または重度感染の比率は、MEDI2070群において第12週で10%未満であった。第24で、処置下で発現した有害事象の全体比率は、MEDI2070及びプラセボ/MEDI2070群間で同様であった。グレード3以上の有害事象及び重篤な有害事象の比率は、MEDI2070群においてプラセボ/MEDI2070群に対して数値的により大きく(それぞれ、13.5%対3.8%及び15.4%対7.7%)、処置下で発現した有害事象に起因する中止の比率も同様であった(それぞれ、9.6%対3.8%)。重篤または重度感染の比率は、両処置群において第24週で同じであった(13件の事象)。1人の患者が抗薬物抗体をベースラインで有した。おそらく、これは偽陽性結果であり、経過観察評価では検出されなかった。
【0367】
特定の組み入れ基準、主要評価項目、及び評価のタイミングは変動するが、本発明者らの試験の結果は、MEDI2070で達成された短期CDAI寛解率(8週間で27.1%)は、概して、前抗TNF-α療法に失敗したクローン病を有する患者において評価された他の生物学的療法のそれと比べて遜色がないことを示す。これらには、ウステキヌマブ(8週間で26%[7/27])(Sandborn et al.Gastroenterology 135:1130-41(2008))、ベドリズマブ(6週間で10.5%[n=105])、(Sandborn et al.N Engl J Med 369:711-21(2013))及びアダリムマブ(4週間で21%[34/159がインフリキシマブに対する二次非応答を伴う])(Sandborn et al.Ann Intern Med 146:829-38(2007))が含まれる。MEDI2070の安全性プロファイルも、クローン病を有する患者に利用可能な他の生物製剤と比べて遜色がない。二重IL23/IL12阻害剤ウステキヌマブ及びブリアキヌ
マブを評価する試験の近年のメタアナリシスは、12~20週間にわたって処置された乾癬患者における主要有害心血管事象のリスクの増加を見出した[Tzellos et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol,27:1586-1587(2013)]。本発明者らの試験において、24週間の経過観察までに主要有害心血管事象を経験した患者はいなかった。MEDI2070は、IL23に対して特異的であり、IL12を阻害しない。この特異性の臨床的有意性は、未知である。しかしながら、この試験の経過観察(104週間)は長期有効性及び安全性を決定するために継続している。
【0368】
本発明者らは、血清IL22レベルをベースライン及びMEDI2070処置後に評価した。IL22は、クローン病において高レベルで発現され、粘膜障壁の完全性を支持するエフェクターサイトカインであり、IL23連関活性の指標である[Schmechel et al.,Inflamm Bowel Dis,14:204-212(2008)]。血清IL22レベルは、プラセボ群と比較してMEDI2070群にて減少した。加えて、15.6pg/mL以上であるベースライン血清IL22レベルは、MEDI2070群における臨床効果の尤度の増加と関連し、一方で15.6pg/mL未満のベースラインIL22レベルを有するMEDI2070処置患者は、プラセボ群のそれと同様のCR100応答を有した。図5。対照的に、Dige et al.による研究では、IL22レベルは、アダリムマブを用いて有効に処置されたクローン病患者において減少しなかった[Dige et al.,J Crohns Colitis,7:248-255(2013)]。この研究は、新規のバイオマーカーを、病理発生のさらなる理解及びクローン病の処置の改善のために組み込んだ最初の研究である。
【0369】
結論として、MEDI2070処置は、前抗TNF-α療法に失敗したクローン病を有する患者において、許容可能な安全性プロファイルを伴って、一貫して強固な有効性を実証した。
【0370】
実施例3
CCL20の検出及び定量化のためのELISAイムノアッセイ
CCL20を、この実施例(実施例3)に開示する例示的な方法に従って、検出及び定量化することができる。この方法を適用して、例えば、実施例5に提示するCCL20関連実験データ(下記参照)を得た。本方法を、実施例1及び2に提示する第2a相試験に関する試料を検査するためにも使用した。
【0371】
CCL20(MIP3アルファ)を、定量的ELISAベースのイムノアッセイを使用して測定した。R&D Systems製のヒトCCL20/MIP-3α Quantikine Elisaキット(カタログ番号DM3A00)を使用した。キットは、参照標準(RS)、品質対照(QC)、陰性対照(NC)、または提供されたRD6Uキャリブレータ希釈液(パーツ番号895148)を使用して1:4の最小必要希釈度(MRD)まで希釈した血清検査試料のいずれかの、100μl/ウェルの適用のための準備が整った、捕捉抗体でプレコートされ、プレブロックされた96ウェルプレート(パーツ番号890831)を含んだ。
【0372】
アッセイプレートを、2時間±0.5時間にわたって、室温(RT)で、プレート振とう機上で穏やかに振とうさせながらインキュベートし、未結合被分析物を、プレートをMedimmune Elisa洗浄緩衝液(1×PBS pH7.4/0.05%Tween-20)を用いて4回洗浄することにより除去した。結合した被分析物を検出するために、200μlの抗MIP-3アルファコンジュゲート(パーツ番号890832)を、各ウェルに加え、プレートを、さらに2時間±0.5時間にわたり室温(RT)で、プレート振とう機上で穏やかに振とうさせながらインキュベートした。未結合検出コンジュ
ゲートを、プレートを洗浄緩衝液(1×PBS pH7.4/0.05%Tween-20)を用いて4回洗浄することにより除去した。
【0373】
プレートを構築するために、200μlの基質溶液(1:1で混合したパーツ番号895000及び895001)を次いで各ウェルに加え、プレートを30分間室温で光から保護してインキュベートし、次いで50μlの反応停止液(パーツ番号895032)を各ウェルに加えた。プレートを、優しく軽く叩いて、全体を混ぜ、450nM及び570nMの光学密度を、SpectraMaxPlusマイクロプレート分光光度計(Molecular Devices)を使用して30分間以内に決定した。試料及び対照中のCCL20濃度を、キット内に提供され各プレート上で実行した組換えCCL20の標準曲線の二次曲線フィッティングから内挿した。アッセイは、100%血清中4pg/ml~2ng/mlのCCL20の定量可能範囲で、特異的、再現可能及び精密であると決定された。
【0374】
実施例4
IL23経路バイオマーカーIL22及びLCN2の検出及び定量化のためのイムノアッセイ
IL22及び/またはLCN2を、この実施例(実施例4)に開示する例示的な方法に従って、検出及び定量化することができる。これらの方法を適用して、例えば、実施例5に提示する実験データ(下記参照)を得た。本方法を、実施例1及び2に提示する第2a相試験に関する試料を検査するためにも使用した。
【0375】
3.1 IL22 ELISAイムノアッセイ
IL22レベルを、定量的ELISAベースのイムノアッセイを使用して測定した。ヒトIL-22に対して特異的なマウスモノクローナル抗体を、マイクロプレート(R&D
Systems、カタログ番号D2200)上にプレコートした。100マイクロリットルのアッセイ希釈液をマイクロプレートのウェルにまず加え、その後100μLの標準物、対照物、及び試料を加えた。プレートを、2時間±15分間にわたって室温でインキュベートして、IL22をプレート上の捕捉抗体に結合させた。プレートを次いで、1×洗浄緩衝液(1×PBS pH7.4/0.05%Tween-20)を使用して5回洗浄して、未結合物質を除去し、200μLの検出抗体(抗IL22抗体-HRPコンジュゲート、(R&D Systems、カタログ番号D2200)と2時間±15分間にわたって室温でさらにインキュベートした。その後、プレートを再度洗浄し、150μLのTMB、発色性HRP基質(Neogen、カタログ番号331176)と20分間±3分間にわたって室温で暗所にてインキュベートした。酵素反応を、100μLの反応停止液(1M HCL)の添加により停止させた。
【0376】
反応を停止させた後30分間以内に、プレートをSpectraMaxPlus384マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices)上で読み取って、450nmでの光学密度を測定した。生成された色の強度は、結合したIL22の量に直接比例する。試料及び対照中のIL22濃度を、各プレート上で実行された、組換えE.coli由来IL22の標準曲線から内挿した。二次モデルを曲線フィッティングのために使用した。アッセイは再現可能及び精密であった。定量可能範囲は、100%血清中10pg/mL~800pg/mLのIL-22であると確立された。
【0377】
3.2LCN2 ELISAイムノアッセイ
標準的なMeso Scale Discoveryプレート(MSD、カタログ番号L15XA)を、1μg/mLのラット-抗ヒトリポカリン-2抗体(R&D Systems、カタログ番号MAB17571)を用いて、50μL/ウェルで2℃~8℃にて一晩コーティングした。プレートを、200μL ELISA洗浄緩衝液(0.05%T
ween-20/PBS)で3回洗浄し、150μL/ウェルのI-Block緩衝液(IBB)(0.5%Tween-20/0.2%I-Blockバッファー/PBS)で少なくとも60分間にわたってプレート振とう機上で穏やかに振とうさせながら、ブロックした。IBB中で調製した、参照標準物、品質対照及び陰性対照、ならびにIBB中で1:50の最小必要希釈度まで希釈した血清検査試料を、プレートに30μL/ウェルで加えた。
【0378】
アッセイプレートを、2時間にわたって室温にてプレート振とう機上で穏やかに振とうさせながらインキュベートした。未結合被分析物を、プレートを洗浄することにより除去した。結合した被分析物を検出するために、0.5μg/mLのビオチン-コンジュゲートヤギ-抗ヒトリポカリン-2抗体(R&D Systems、カタログ番号BAF1757)を30μL/ウェルで加え、プレートをさらに60分間にわたってプレート振とう機上で穏やかに振とうさせながらインキュベートした。未結合検出抗体を、プレートを洗浄することにより除去した。ストレプトアビジンSULFO-TAG(商標)検出色素(MSD、カタログ番号R32AD-1)を、プレートに0.5μg/ウェルで加え、プレートを、光曝露から保護するために覆ってさらに30分間インキュベートした。プレートを洗浄し、1×Read緩衝液(MSD、カタログ番号R92TC-2)を、150μL/ウェルで加え、プレートをMSD Sector Imager上で20分間以内に読み取った。
【0379】
各プレートに関するECL(電気化学発光法)値を、MSD Sector Imagerを使用して収集した。参照標準物に関するECL値を、Softmax Pro GxP v6.4ソフトウェア(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて、曲線フィッティングの5-パラメータロジスティックモデルを使用してプロットした。未知の試料の濃度を、同じアッセイプレート上の標準曲線から内挿した。Softmaxにより導かれたデータを次いで、Microsoft Excelソフトウェアにインポートして、データレポートとグラフを生成した。アッセイのダイナミックレンジは、100%血清に調整して0.70ng/ml~1000.00ng/mLであると確立された。
【0380】
実施例5
抗IL23抗体を用いたIL23媒介疾患の処置に関する予測バイオマーカーとしてのIL23経路バイオマーカー(CCL20、IL22及び/またはLCN2)の同定
IL23は、活性化された樹状細胞及びマクロファージから主に発現され(Gaffen et al(2014)Nature Revs Immunol 14:585-600;Oppmann et al(2000)Immunity 13:715-251を参照されたい)、Th17、Th22、γδ T細胞及び自然リンパ球(ILC)を含む様々な造血(hematopoetic)細胞型に直接作用して、IL22、IL21、IL17A、IL17F、IL17A/F、TNFアルファ及びGM-CSFを含むサイトカインを誘導する(例えば、Gaffen et al(2014)Nature Revs Immunol 14:585-600;Zheng et al(2007)Nature 445:648-51;El-Behi et al(2011)Nature Immunol 12:568-575を参照されたい)。これらのエフェクター及び制御性サイトカインは、次に適切な同族受容体を発現する様々な他の細胞型に作用することができる。IL23誘導性IL22は、例えば、IL22受容体発現上皮細胞及びケラチノサイトを刺激して、抗菌タンパク質、例えばLCN2を分泌させることができる(Sonnenberg et al(2010)Adv Immunol 107:1-29;Stallhofer et al(2015)Inflamm Bowel Dis 2015 Aug 7;Behnsen et al(2014)Immunity 40:262-73)。
【0381】
実施例1及び2に記載する第2a相試験では、(実施例3に記載のイムノアッセイを使用して測定して)それぞれ15.6pg/mLまたは215ng/mL以上の上昇したベースライン血清IL22またはLCN2レベルを有するCD患者が有するMEDI2070群における臨床効果の尤度が増加した一方で、15.6pg/mL未満のベースラインIL22レベルを有するEDI2070処置患者は、プラセボ群におけるそれと同様のCR100応答を有し、215ng/mL未満のベースラインLCN2レベルを有するこれらの患者は、プラセボと比較して統計学的に有意に増加したCR100応答を示さなかった。図5及び6。具体的には、15.6pg/mL以上のベースライン血清IL22レベルを有する患者または215ng/mL以上のベースライン血清LCN2レベルを有する患者は、プラセボと比較してMEDI2070を用いて処置されたときに第8週で統計学的に有意に増加したCDAI-100応答を有すると観察された。図5及び6。同様に、本発明者らは、22.6pg/mL未満の減少したベースライン血清CCL20レベルを有するCD患者が、MEDI2070群における臨床効果の尤度の増加に関連し、一方で22.6pg/mL以上のベースラインCCL20レベルを有するMEDI2070処置患者が、プラセボと比較して統計学的に有意に増加した応答を示さなかったことも観察した。図4。ゆえに、図4~6に示すように、15.6pg/mL以上のベースライン血清IL22レベルを有する患者、以上のベースライン血清LCN2レベル215ng/mLを有する患者、または22.6pg/mL未満のベースライン血清CCL20レベルを有する患者は全て、プラセボと比較して、MEDI2070を用いて処置されたとき、統計学的に有意に増加したCDAI-100応答を有すると観察された。
【0382】
ベースライン血清IL22、LCN2及び/またはCCL20レベルと、MEDI2070を用いた処置に対する応答との間の関係性をさらに理解するために、試験集団全体にわたるIL22、LCN2またはCCL20のいずれかのベースライン値のセットを、10レベル、つまり十分位数へと分割し、11被分析物カットオフのそれぞれが、試験集団を、総試験集団の10%少ない群へと漸進的に区切るようにした。各十分位数カットオフでのベースラインIL22、LCN2、及びCCL20血清レベルの関数としてのMEDI2070及びプラセボに曝露された患者間の差次的臨床応答率を、図7~9に提供し、個別のIL22、LCN2、及びCCL20血清十分位数値を、以下の表4(IL22)、表5(LCN2)、及び表6(CCL20)にまとめる。例えば、表4に報告するように、4番目の十分位数で、総試験集団の40%が12.7pg/mL未満のベースラインIL-22レベルを有し、総試験集団の60%が12.7pg/mL以上のベースラインIL-22レベルを有した。第8週でのCDAI応答率(CDAIスコア<150またはCDAIスコアにおける100超の減少を達成する被験者の割合(%)により測定)は、MEDI2070に曝露され、12.7pg/mL以上のベースラインIL-22レベルを有する、すなわち4番目の十分位数より上である被験者において、58.3%であった。MEDI2070に暴露され、試験集団に関して4番目の十分位数(12.7pg/ml)より上のベースラインIL22レベルを有する21人の被験者は、第8週でCDAIレスポンダーであると見いだされた。「分位値」と呼ばれるRにおける関数を使用して、十分位数値を決定した。別の例として、表6に報告するように、4番目の十分位数にて、総試験集団の40%が20.8pg/mL未満のベースラインCCL20レベルを有し、総試験集団の60%が20.8pg/mL以上のベースラインCCL20レベルを有した。第8週でのCDAI応答率(CDAIスコア<150またはCDAIスコアにおける>100の減少を達成する被験者の割合(%)により測定)は、MEDI2070に曝露され20.8pg/mL未満のベースラインCCL20レベルを有する、すなわち、4番目の十分位数より下である被験者において、51.6%であった。MEDI2070に暴露され、試験集団に関して4番目の十分位数(20.8pg/mL)より下のベースラインCCL20レベルを有する16人の被験者は、第8週でCDAIレスポンダーであると見いだされた。各十分位数カット以上であるベースラインIL22、LCN2、またはCC
L20値を有する被験者における、試験の第8週での、MEDI2070及びプラセボ曝露群におけるCDAIレスポンダー及びノンレスポンダーの数、ならびにCDAI応答率はまた、表4~6において示し、処置及びプラセボ間の各十分位数カットに関する応答率差異を、図7に提供する。表4~6に記載するベースラインIL22、LCN2、及びCCL20レベル/十分位数の関数として、臨床応答の2つの追加の尺度-第8週でCDAIスコアにおいて100点改善を達成するMEDI2070を用いて処置された被験者の割合(%)対プラセボを用いて処置された被験者の割合(%)間の差異(図8)、及び、第8週での、CDAI応答(CDAIスコア<150またはCDAIスコアにおける>100の減少)を達成する+さらにベースラインFCPまたはCRPと比較してFCPまたはCRPのいずれかにおいて50%超の減少も達成するMEDI2070を用いて処置された被験者の割合(%)対プラセボを用いて処置された被験者の割合(%)間の差異(図9)-も行った。
【0383】
図7~9に示し、以下の表4に報告するように、MEDI2070を用いて処置した漸増的に高くなるレベルのベースラインIL22を有するCD患者は、プラセボと比較して第8週でより高いCDAI応答を達成し(図7~9に示す3つの異なる臨床応答尺度のいずれかを使用して測定)、これは、MEDI2070が、高いベースラインIL22血清レベルを有する患者においてより良好な臨床応答を誘導したことを示す。特記すべきは、高レベルのIL22を有する被験者(例えば、5番目、6番目または7番目の十分位数(0.5、0.6または0.7分位値)でのIL22レベルを有する被験者を含む)は、IL22低被験者(例えば、1番目または2番目の十分位数(0.1または0.2分位値)でのIL22レベルを有する被験者を含む)と比較してプラセボからのより大きな臨床応答率差異を有した(3つの異なる臨床応答尺度のいずれが使用されたかにかかわらない)。図7~9を参照されたい。これらのIL22高被験者は、MEDI2070を用いて処置された全参加者と比較して増加したCDAI応答率も有した(例えば、図10を参照されたい)。
【0384】
重要なことに、第2a相試験においてMEDI2070を用いて処置されたIL22高被験者にて観察されたCDAI応答率及びCDAI寛解率は、今日までに報告されたCDの生物学的療法に対する臨床応答率の中で最も高い臨床応答率である。例えば、図10に示すように、8週間にわたってMEDI2070を用いて処置された上昇したベースライン血清IL22を有する患者において達成されたCDAI-100応答率差(処置及びプラセボ間のCDAI-100応答を達成した被験者の割合(%)における差異として定義する)及び/またはCDAI寛解率差(処置及びプラセボ間の150点を下回る総CDAIスコアへの減少を達成した被験者の割合(%)における差異として定義する)は、現在承認されているまたは開発中であるCDを処置するためのいくつかの他の化合物を用いて処置された患者の公開されたCDAI-100応答及び/またはCDAI寛解率と比較して高く増加した。この他の化合物には、ウステキヌマブ(Sandborn et al.,N Engl J Med.2012 Oct 18;367(16):1519-28.の図1に報告される6週間または8週間の6mg/kg用量を用いた処置後の応答率)、ベドリズマブ(Sandset.al.,Gastroenterology.2014 Sep;147(3):618-627の図3に報告される6週間または10週間の処置後の応答率)、またはアダリムマブ(Sandbornet.al,Ann Intern Med.2007;146:829-838に報告されるインフリキシマブに対して二次的な失敗である患者における4週間の処置後の応答率)が含まれる。例えば、ベースラインCRP≧5mg/L、ベースラインIL-22≧11.3pg/mL、ベースラインIL-22≧15.6pg/mL、またはベースラインIL-22≧11.3pg/mL+CRP≧5mg/L(実施例3に記載のIL22イムノアッセイを使用して測定)を有したMEDI2070を用いて8週間にわたって処置された患者において達成されたCDAI-100応答率差(「プラセボに対するCDAI応答デルタ」)及びCD
AI寛解率差(「プラセボに対するCDAI寛解デルタ」)は両方とも、図10で報告したウステキヌマブ、ベドリズマブ及びアダリムマブについて報告されたCDAI-100応答率差及び/またはCDAI寛解率差よりも大きかった。第2a相試験にてMEDI2070を用いて処置した全患者に関する全体的な臨床応答及び寛解率は、バイオマーカー状態にかかわらず、現在承認されているまたは開発中である他の分子の応答率と同様であった。表6は、図10にプロットするMEDI2070処置下位群のそれぞれに関するCDAI-100応答率差及びCDAI寛解率差をまとめる。これらの結果は、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその断片、例えば、MEDI2070を含む)を用いた処置に応答性であるIL23媒介疾患または障害を有する患者の同定において、高いまたは上昇したIL22血清レベル(単独または他の本明細書に開示のバイオマーカーとの組み合わせ)の、驚くべき予期せぬ予測値をさらに強調する。
【0385】
同様に、図7、8、及び9に示し、表5に報告するように、MEDI2070を用いて処置した漸増的に高くなるレベルのベースラインLCN2を有するCD患者は、プラセボと比較して第8週でより高い臨床応答率を達成し(図7、8及び9に示す3つの異なる臨床応答尺度のいずれかを使用して測定)、これは、MEDI2070が、高いベースラインLCN2血清レベルを有する患者においてより良好な臨床応答を誘導したことを支持する。なお、LCN2高被験者(例えば、5番目、6番目または7番目の十分位数(0.5、0.6または0.7分位値)でのLCN2レベルを有する被験者を含む)は、LCN2低被験者(例えば、1番目または2番目の十分位数(0.1または0.2分位値)でのLCN2レベルを有する被験者を含む)と比較してプラセボからのより大きな臨床応答差異を有した(3つの異なる臨床応答尺度のいずれが使用されたかにかかわらない)。これらの結果は、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその断片、例えば、MEDI2070を含む)を用いた処置に応答性であるIL23媒介疾患または障害を有する患者の同定において、高いまたは上昇したLCN2血清レベルの驚くべき予期せぬ予測値をさらに実証する。
【0386】
最後に、図7、8、及び9ならびに表6はさらに、MEDI2070を用いて処置した漸増的に低くなるレベルのベースラインCCL20を有するCD患者が、プラセボと比較して第8週でより高い臨床応答率を達成したことを示し(図7、8及び9に示す3つの異なる臨床応答尺度のいずれかを使用して測定)、これは、MEDI2070が、低いベースラインCCL20血清レベルを有する患者においてより良好な臨床応答を誘導したことを支持する。特記すべきは、CCL20低被験者(例えば、1番目、2番目、3番目、または4番目の十分位数(0.1、0.2、0.3または0.4分位値)でのCCL20レベルを有する被験者を含む)は、CCL20高被験者(例えば、7番目または8番目の十分位数(0.7または0.8分位値)でのCCL20レベルを有する被験者を含む)と比較してプラセボからのより大きな臨床応答差異を有した(3つの異なる臨床応答尺度のいずれが使用されたかにかかわらない)。これらの結果は、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその断片、例えば、MEDI2070を含む)を用いた処置に応答性であるIL23媒介疾患または障害を有する患者の同定において、低いまたは低減したCCL20血清レベルの予測値をさらに実証する。
【0387】
IL22またはLCN2については、増加する臨床応答率及び増加するベースラインバイオマーカーレベルの間の関係は、8番目、9番目または10番目の十分位数の患者におけるほど常に明確というわけではなかった。あるとしてもこれらのIL22またはLCN2レベルでは、分析に利用可能なMEDI2070またはプラセボを用いて処置された患者は過小であった。例えば、図7、8、及び9、表4及び5を参照されたい。しかしながら、より大きな試料サイズを考慮すると、IL22またはLCN2レベルを8番目、9番目または10番目の十分位数で有すると同定された患者について増加した臨床応答率が予測される。
【0388】
まとめると、これらの結果は、高いIL22血清レベル及び/または高いLCN2血清レベル及び/または低いCCL20(例えば、試験で同定されたベースラインIL22及び/もしくはLCN2血清レベル中央値ならびに/または7.9pg/mLから31.4pg/mLの間の血清IL22レベル及び/もしくは142.8ng/mLから261.1ng/mLの間の血清LCN2レベルならびに/または4.9pg/mLから22.6pg/mLの間の血清CCL20レベルを含む)を使用して、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその断片、例えば、MEDI2070を含む)を用いた処置に好適なIL23媒介疾患または障害を有する患者を同定することができることを支持する。
【0389】
表4.十分位数ベースラインIL22レベル毎の第8週での被験者数及びCDAI応答率。
【0390】
【表6】
【0391】
表5.十分位数ベースラインLCN2レベル毎の第8週での被験者数及びCDAI応答率。
【0392】
【表7】
【0393】
表6.十分位数ベースラインCCL20レベル毎の第8週での被験者数及びCDAI応答率。
【0394】
【表8】
【0395】
表7.様々な下位群に関するCDAI-100応答率差(処置及びプラセボ間のCDAI-100応答を達成する被験者の割合(%)における差異として定義する)及びCDAI寛解率差(処置及びプラセボ間の150点を下回る総CDAIスコアを達成する被験者
の割合(%)における差異として定義する)。
【0396】
【表9】
【0397】
前に注記したように、IL23誘導性IL22は、細胞のLCN2分泌を誘導する。ゆえに、ベースライン血清レベルの2つの別々のIL23経路メンバー(すなわち上昇したIL22またはLCN2)がそれぞれMEDI2070に対する患者の臨床応答(例えば、第8週でのCDAI-100応答率)の予測因子であったという所見は、他のIL23経路バイオマーカーも、MEDI2070を用いた処置に対する応答における臨床効果の尤度の増加を予測する可能性があることを強く示す。従って、血清ベースラインレベルのIL22及び/もしくはLCN2または任意の他のIL23経路被分析物(例えば、CCL20、IL17F、IL17A/F、IL23R、IL12B、IL6、IL21、TNF、CCR6、CCL22、IL1R1、IFN-γ、S100A12、DEFB-2、DEFB-4、IL1、SERPINB3、PI3/エラフィン、LL37、RORγ、RORγT、IL26、S100A7、DEFB103B、またはGM-CSFを含む)がIL23連関活性の増加を反映する限り、IL23経路活動性が増加していると決定された患者(1つまたは複数のIL23経路バイオマーカーを測定することにより決定する)は、IL23アンタゴニスト(例えば、抗IL23抗体またはその抗原結合断片、例えば、MEDI2070を含む)を用いた処置から利益を得る可能性がより高くあり得る。
***
本発明を特定の態様に関して説明してきたが、当業者には変更及び修正が考えつくであろうことが理解されたい。従って、特許請求の範囲に表される限定のみが本発明に課せられるべきである。
【0398】
本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ規定されるべきである。
特定の態様の前述の説明は、他の人が、当業者の知識を適用することにより、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の態様を様々な用途に容易に修正及び/または適用させることができるほどに、本発明の全体的な性質を完全に明らかにするだろう。それゆえ、このような適用及び修正は、本明細書に提示される教示及び指針に基づいて、開示される態様の等価物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書の表現または用語は、本明細書の用語または表現が教示及び指針に照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく説明のためのものであるこ
とが理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022031643000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、IL23アンタゴニストを患者に、前記患者が(i)所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、投与することを含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0398
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0398】
本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ規定されるべきである。
特定の態様の前述の説明は、他の人が、当業者の知識を適用することにより、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の態様を様々な用途に容易に修正及び/または適用させることができるほどに、本発明の全体的な性質を完全に明らかにするだろう。それゆえ、このような適用及び修正は、本明細書に提示される教示及び指針に基づいて、開示される態様の等価物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書の表現または用語は、本明細書の用語または表現が教示及び指針に照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく説明のためのものであることが理解されたい。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、IL23アンタゴニストを患者に、前記患者が(i)所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、投与することを含む、前記方法。
[態様2]
IL23媒介疾患を有する患者を処置する方法であって、患者へのIL23アンタゴニストの前記投与を、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、高いまたは増加したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、保留するまたは開始しないことを含む、前記方法。
[態様3]
患者のインターロイキン-23(IL23)媒介疾患を処置する方法であって、前記患者が抗TNF剤を用いた処置に対して失敗、非応答性または不耐性であり、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、IL23アンタゴニストを前記患者に投与することを含む、前記方法。
[態様4]
IL23媒介疾患を有する患者を、IL-23アンタゴニストを用いて処置するか否かを決定する方法であって、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、前記患者を処置すると決定することを含む、前記方法。
[態様5]
IL23媒介疾患を有すると診断された患者を、IL23アンタゴニストを用いた処置のための候補として選択する方法であって、前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、低いまたは低減したレベルのCCL20を前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される場合に、前記患者を処置のために選択することを含む、前記方法。
[態様6]
前記患者から得られた前記試料のうちの1つもしくは複数におけるCCL20のレベルを測定することまたは前記試料中のCCL20のレベルを測定するように臨床検査室もしくは医療提供者に指示すること及び/または前記試料中のCCL20のレベルを測定するために前記患者から得られた前記1つもしくは複数の試料を臨床検査室もしくは医療提供者に提出することをさらに含む、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
[態様7]
前記患者から得られた前記1つまたは複数の試料中のCCL20のレベルを決定することをさらに含む、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
医療提供者に、
(i)前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、前記試料のうちの1つまたは複数において低いまたは低減したレベルのCCL20を有すると決定される場合に、IL23アンタゴニストを前記患者に投与するように、
あるいは
(ii)前記患者が所定のCCL20閾値レベルと比較して、または1つもしくは複数の対照試料中のCCL20レベルと比較して、前記試料のうちの1つまたは複数において高いまたは増加したレベルのCCL20を有すると決定される場合に、IL23アンタゴニストの前記患者への前記投与を保留するまたは否定するように、
助言することをさらに含む、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
前記IL23アンタゴニストが、抗IL23抗体またはその抗原結合断片である、態様1~8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、IL23のp19サブユニット(配列番号15)、IL23のp40サブユニット(配列番号16)、または両方に結合する、態様9に記載の方法。
[態様11]
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、グセルクマブ、BI-655066、チルドラキヌマブ(tildrakinumab)、LY-3074828、またはその抗原結合断片を含む、態様9または10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、(i)配列番号7を含むもしくはこれからなる可変領域(VH)及び/または配列番号8を含むもしくはこれからなる軽鎖可変領域(VL)、あるいは(ii)配列番号45を含むもしくはこれからなる可変領域(VH)及び/または配列番号46を含むもしくはこれからなる軽鎖可変領域(VL)を含む、態様9に記載の方法。
[態様13]
前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片が、配列番号33~38または配列番号47~52から選択される少なくとも1つの相補性決定領域を含む、態様9に記載の方法。
[態様14]
前記抗体が、固定用量で投与される、態様12または13のいずれか一項に記載の方法。
[態様15]
前記固定用量が、10~1000mg/用量である、態様14に記載の方法。
[態様16]
前記固定用量が、約210mg/用量または約700mg/用量である、態様14に記載の方法。
[態様17]
前記患者が、前記IL23媒介疾患または障害の処置のための1つまたは複数の追加の治療を用いて、IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくは抗原結合断片の投与の前、最中、後または代わりに処置されている、態様1~16のいずれか一項に記載の方法。
[態様18]
前記患者から採取した前記1つもしくは複数の試料及び/または前記1つもしくは複数の対照試料が、全血、血清、血漿、唾液、痰、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、胸膜液、心膜液、腹水、滑液、上皮細胞、尿、便、皮膚、組織生検、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数である、態様1~17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
前記1つまたは複数の対照試料が、(i)正常な健常個体から得られた試料(1つまたは複数)、(ii)非IL23媒介疾患を有する患者から得られた試料(1つまたは複数)、または(iii)それらの組み合わせである、態様1~18のいずれか一項に記載の方法。
[態様20]
前記患者のCCL20のレベルが、イムノアッセイにおいて測定される、態様1~19のいずれか一項に記載の方法。
[態様21]
IL22、LCN2、IL17F、IL17A/F、IL23R、IL12B、IL6、IL21、TNF、CCR6、CCL22、IL1R1、IFN-γ、S100A12、DEFB-2、DEFB-4、IL1、SERPINB3、PI3/エラフィン、LL37、RORγ、RORγT、IL26、S100A7、DEFB103B、及びGM-CSFからなる群より選択される1つまたは複数のIL23経路バイオマーカーのレベルを決定することをさらに含む、態様1~20のいずれか一項に記載の方法。
[態様22]
CCL20の前記所定の閾値レベルが、
(a)CCL20の約平均レベル、
(b)CCL20の約中央値レベル、及び
(c)表6に記載するCCL20の約1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、または9番目の十分位数ベースラインレベル、
からなる群より選択され、これは、イムノアッセイを使用して、複数の正常な健常患者、非IL23媒介疾患を有する患者、及び/またはIL23媒介疾患を有する患者からの血清において測定される、態様1~21のいずれか一項いずれか一項に記載の方法。
[態様23]
前記IL23媒介疾患または障害が、肺疾患、炎症性腸疾患、慢性炎症性皮膚疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、感染、または癌である、態様1~22のいずれか一項に記載の方法。
[態様24]
前記IL23媒介疾患または障害が、喘息、IPF、COPD、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、セリアック病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、湿疹、乾癬、円形脱毛症、掌蹠膿疱症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、関節炎、関節リウマチ(RA)、リウマチ障害、ANCA血管炎、ベーチェット病、自己免疫性甲状腺炎、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群(SS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、アルツハイマー病、マイコバクテリア疾患、リーシュマニア症、真菌感染、ウイルス感染、胃癌、結腸直腸癌、食道癌、白血病、B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝細胞癌、乳癌、肺癌、及び上咽頭癌からなる群より選択される、態様1~23のいずれか一項に記載の方法。
[態様25]
前記炎症性腸疾患が、クローン病、UCまたはセリアック病である、態様23に記載の方法。
[態様26]
前記患者が、CRP≧5mg/Lのレベル及び/またはFCP≧250μg/gのレベル、FCP≧200μg/gのレベル、FCP≧150μg/gのレベル、FCP≧100μg/gのレベル、もしくは少なくとも約100μg/g~少なくとも約250μg/gのFCPレベルを、前記患者から採取した1つまたは複数の試料中に有すると決定される、態様25に記載の方法。
[態様27]
前記所定のCCL20閾値レベルが、イムノアッセイを使用して測定して、少なくとも約12pg/mL~少なくとも約55pg/mLである、態様1~26のいずれか一項に記載の方法。
[態様28]
前記所定のCCL20閾値レベルが、イムノアッセイを使用して測定して、約22.6pg/mLである、態様27に記載の方法。
[態様29]
前記IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくはその抗原結合断片の投与が、前記抗IL23抗体またはその抗原結合断片の最初の投与後に、少なくとも100点のクローン病活動指数(CDAI)応答スコア減少及び/または150点未満への総CDAIスコアの減少をもたらす、態様25~28のいずれか一項に記載の方法。
[態様30]
少なくとも100点のCDAI応答スコア減少または150点未満への総CDAIスコアの減少が、前記IL23アンタゴニストまたは抗IL23抗体もしくはその抗原結合断片の最初の投与後、1、2、4、8、12、16または24週間以内またはそれ以降に生じる、態様29に記載の方法。
【外国語明細書】