(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031656
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマーで予備含浸された繊維状材料を製造するための流動床方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176182
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2018544200の分割
【原出願日】2017-12-20
(31)【優先権主張番号】1663197
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジル・オシュステテール
(72)【発明者】
【氏名】アルチュール・ピエール・バボー
(72)【発明者】
【氏名】チボー・サバール
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・タンギー
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・ユズ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・カプロ
(72)【発明者】
【氏名】パトリス・ガイヤール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連続繊維及び少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで作製される繊維状材料を含む予備含浸された繊維状材料を製造するための方法であって、繊維の均質な含浸、特に最終複合部品の性能に影響を及ぼすような気孔を低減し、制御し、再現可能にして寸法を制御する、繊維への樹脂含浸方法を提供する。
【解決手段】完全及び均質に、1つのロービング又はいくつかの平行なロービングの形態であるこの繊維状材料を、粉末形態である少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで含浸する工程を含むことを特徴とし、この含浸工程が、タンク20中の乾燥経路によって行われ、この繊維状材料における少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスの量の制御は、粉末中の繊維状材料の滞留時間を制御することによって達成され、意図的な帯電を伴う静電工程を含まない方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維及び少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで作製される繊維状材料を含む予備含浸された繊維状材料を製造するための方法であって、前記予備含浸された繊維状材料が単一の一方向テープ又は複数の平行な一方向テープとして製造され、前記方法が、特に完全かつ均質に、1つのロービング(81a)又はいくつかの平行なロービングの形態である前記繊維状材料を、粉末形態である前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで含浸する工程を含み、前記含浸工程が、タンク(20)中の乾燥経路によって行われ、前記繊維状材料における前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスの量の制御が、前記粉末中の前記繊維状材料の滞留時間を制御することによって達成され、意図的な帯電を伴う静電工程が含まれず、前記熱可塑性ポリマー粉末粒子の体積平均直径D50が、30~300μm、特に50~200μm、より好ましくは70~200μmである、方法。
【請求項2】
前記含浸された繊維状材料中の繊維の含量が、45体積%~65体積%、好ましくは50体積%~60体積%、特に54体積%~60体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末中の滞留時間が、0.01秒~10秒、好ましくは0.1秒~5秒、及び特に0.1秒~3秒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンク(20)が流動床(22)を含み、前記含浸工程が、前記流動床(22)の入口と出口との間で前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングの同時ファンアウトを伴って行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流動床(22)が、少なくとも1つの張力装置(82)を含み、前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングが、前記少なくとも1つの張力装置(82)の表面の一部又は全部と接触していることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングの前記ファンアウトが、少なくとも前記少なくとも1つの張力装置(82)で行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの張力装置(82)が、凸状、凹状又は円筒状の形状の圧縮ローラであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの圧縮ローラが、円筒形の形状であり、前記流動床の入口と出口との間の前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングのファンアウト率が、1%~400%、好ましくは30%~400%、好ましくは30%~150%、好ましくは50%~150%であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
単一の圧縮ローラが前記流動床(22)内に存在し、前記含浸が、前記圧縮ローラの始点と前記圧縮ローラの垂直接線との間で前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングによって形成される角度α1で行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記角度α1が、0~89°、好ましくは5°~85°、好ましくは5°~45°、好ましくは5°~30°であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2つの圧縮ローラR1及びR2が、前記流動床(22)内に存在し、前記含浸が、前記圧縮ローラR1の始点と前記圧縮ローラR1の垂直接線との間で前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングによって形成される角度α1、及び/又は前記圧縮ローラR2の始点と前記圧縮ローラR2の垂直接線との間で前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングによって形成される角度α2で行われ、前記圧縮ローラR1が、(前記方法の進行方向において)前記圧縮ローラR2に先行し、前記ロービング(81a)又は前記複数のロービングが前記ローラR2の頂部又は下を通過することができることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記2つの圧縮ローラR1及びR2が、0.15mmから前記タンク(20)の最大寸法に等しい長さまでの距離、好ましくは10mm~50mmの距離にあり、前記2つの圧縮ローラR1及びR2の高さの差が、0から前記タンク(20)の最大高さから前記2つの圧縮ローラの直径を差し引いたものに対応する高さ、好ましくは0.15mmから前記タンク(20)の最大高さから前記2つの圧縮ローラの直径を差し引いたものに対応する高さ、より好ましくは10mm~300mmの高さの差であり、R2が上側の圧縮ローラであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単一の熱可塑性ポリマーマトリックスが使用され、前記熱可塑性ポリマー粉末が流動化可能であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの加熱カレンダ(51、52、53)によってカレンダ加工することにより、前記含浸された繊維状材料の前記ロービング(81a)又は前記平行ロービングを、単一の一方向テープ又は複数の平行な一方向テープの形態に成形する工程をさらに含み、後者の場合、前記加熱カレンダが、前記テープの数とサーボ制御システムによって調節される前記カレンダのロール間の圧力及び/又は間隔とに応じて複数のカレンダ加工溝(73)、好ましくは200までのカレンダ加工溝を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記カレンダ加工工程が、前記繊維ロービング(81a)の走行方向に対して平行に及び/又は直列に取り付けられた複数の加熱カレンダ(51、52、53)によって行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱されたカレンダ(51、52、53)が、前記熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンド中の炭素系充填剤の存在と組み合わされた一体型誘導加熱又はマイクロ波加熱システム、好ましくはマイクロ波加熱システムを含むことを特徴とする、請求項14及び15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱カレンダ(51、52、53)が、前記(それぞれの)カレンダ(51、52、53)の前及び/又は後に位置する相補的な急速加熱装置(41、42、43)、特に前記ポリマー又は前記ポリマーのブレンド中の炭素系充填剤の存在と組み合わされたマイクロ波又は誘導加熱装置、又は赤外線IR若しくはレーザー加熱装置又は火炎若しくは熱ガスのような別の熱源と直接接触させることによる加熱装置と組み合わされることを特徴とする、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記含浸工程が、前記粉末による含浸の後に前記単一のロービング(81a)又は前記複数の平行ロービングを被覆する工程によって完了され、前記被覆工程が、前記カレンダ加工工程の前に、前記流動床(22)中の粉末形態の前記ポリマーと同一であっても異なっていてもよい溶融熱可塑性ポリマーによって行われ、前記溶融ポリマーが、好ましくは前記流動床(22)の粉末形態の前記ポリマーと同じタイプであり、好ましくは前記被覆が、前記単一のロービング(81a)又は前記複数の平行ロービングに対するクロスヘッド押出によって行われることを特徴とする、請求項1~17に記載の方法。
【請求項19】
前記熱可塑性ポリマーがさらに、炭素系充填剤、特にカーボンブラック又は炭素系ナノ充填剤、好ましくは炭素系ナノ充填剤、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル、又はそれらの混合物から選択される充填剤を含むことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性ポリマーがさらに、液晶ポリマー又は環状ポリブチレンテレフタレート、又はそれらを含む混合物を添加剤としてさらに含むことを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)、特にポリエーテルケトンケトン(PEKK);芳香族ポリエーテルイミド(PEI);ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU);ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、特に尿素部分によって任意に修飾された芳香族ポリアミド;PEBA、ポリアクリレート、特にポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリオレフィン、特にポリプロピレン、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びフルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);及びこれらのブレンド、特に好ましくは90-10重量%~60-40重量%、特に90-10重量%~70-30重量%のPEKKとPEIとのブレンドから選択されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーが、Tg≧80℃のようなガラス転移温度を有するポリマー又は溶融温度Tm≧150℃を有する半結晶性ポリマーであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記繊維状材料が、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、バサルト繊維、シリカ繊維、天然繊維、特に亜麻繊維又は麻繊維、リグニン繊維、竹繊維、サイザル繊維、シルク繊維、又はセルロース繊維、特にビスコース繊維、又は前記ポリマー若しくは前記ポリマーブレンド(後者が非晶質である場合)のTg若しくは前記ポリマー若しくは前記ポリマーブレンド(後者が半結晶性である場合)のTmよりも高いガラス転移温度Tgを有する非晶質熱可塑性繊維、又は前記ポリマー若しくは前記ポリマーブレンド(後者が非晶質である場合)のTg若しくは前記ポリマー若しくは前記ポリマーブレンド(後者が半結晶性である場合)のTmよりも高い溶融温度Tmを有する半結晶性熱可塑性繊維、又は前記繊維の2つ以上の混合物、好ましくは炭素繊維、ガラス繊維若しくは炭化ケイ素繊維の混合物、特に炭素繊維から選択される連続繊維を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
予備含浸された繊維状材料の一方向テープ、特にリールに巻き取られたテープであって、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法によって得られることを特徴とするテープ。
【請求項25】
スリッティングを必要とせずに、三次元部品の製造においてロボットのレイアップに適した幅(l)及び厚さ(ep)を有し、好ましくは、少なくとも5mmであり、400mmまでの範囲、好ましくは5~50mm、及びさらにより好ましくは5~15mmの範囲であってもよい幅(l)を有することを特徴とする、請求項24に記載のテープ。
【請求項26】
前記熱可塑性ポリマーが、PA11、PA12、11/1010若しくは12/1010といった脂肪族ポリアミド、又はPA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T及びPA BACT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドから選択されるポリアミドであることを特徴とする、請求項24及び25のいずれか一項に記載のテープ。
【請求項27】
ロボットを用いて前記テープを自動レイアップすることにより、三次元複合部品の製造に適したキャリブレートされたテープを製造するための、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項28】
三次元複合部品の製造における、請求項24~26のいずれか一項に記載の予備含浸された繊維状材料のテープの使用。
【請求項29】
前記複合部品の前記製造が、輸送分野、特に、自動車輸送、石油及びガス(特に海洋)の輸送、ガス貯蔵、民間又は軍事航空、海上及び鉄道輸送;再生可能エネルギー、特に風力タービン又は船舶用タービン、エネルギー貯蔵装置、ソーラーパネル;熱保護パネル;スポーツ及びレジャー、健康及び医療、武器又はミサイル部品に関する弾道学、安全及びエレクトロニクスの分野に関することを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
請求項24~26のいずれか一項に記載の予備含浸された繊維状材料の少なくとも1つの一方向テープの使用から得られることを特徴とする三次元複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーで予備含浸された繊維状材料を製造するための方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、予備含浸された繊維状材料を製造するための方法に関し、この方法が、三次元複合部品の製造のために直接使用できる、キャリブレートされた寸法を有する予備含浸された繊維状材料のテープを得るために、低減及び制御された気孔を有する予備含浸された繊維状材料、特に完全に予備含浸された繊維状材料の調製のための含浸工程を含む。
【0003】
本明細書において、「繊維状材料」という表現は、強化繊維の集合体を意味すると理解される。その成形前に、それはロービングの形態である。その成形後、それはストリップ(又はテープ)又はシートの形態である。強化繊維が連続である場合、その集合体は、織布又は不織布(NCF)を構成する。強化繊維が短い場合、その集合体はフェルト又は不織布を構成する。
【0004】
このような予備含浸された繊維状材料は、特に、三次元構造を有し、良好な機械的及び熱的特性を有する機械部品の製造のための軽量複合材料の製造を意図している。繊維が炭素で作製される場合、又は樹脂に適切な添加剤が充填されている場合、これらの繊維状材料は静電荷を放出することができる。従って、それらは、特に機械、民間又は軍事航空及び海洋、自動車、石油及びガス、とりわけ海洋石油又はガス、ガス貯蔵、エネルギー、健康及び医療、軍隊及び軍備、スポーツ及びレジャー、エレクトロニクス分野において部品の製造に適合する特性を有する。
【0005】
そのような含浸された繊維状材料は、複合材料とも呼ばれる。それらは、強化繊維からなる繊維状材料と、含浸ポリマーからなるマトリックスとを含む。このマトリックスの主な役割は、強化繊維をコンパクトな形状に保ち、最終製品に所望の形状を与えることである。このマトリックスはまた、繊維間の電荷の移動を確実にし、従って、複合体の機械的強度を決定する。このようなマトリックスはまた、強化繊維を摩耗及び攻撃的環境から保護し、表面外観を制御し、繊維間の電荷を分散させる働きをする。このマトリックスの役割は、特に疲労及びクリープに関する複合材料の長期の強度にとって重要である。
【背景技術】
【0006】
予備含浸された繊維状材料から製造された良質の三次元複合部品は、特に、強化繊維を熱可塑性ポリマーで含浸する方法の制御によって達成される。
【0007】
本明細書では、用語「ストリップ」は、その幅が400mm以上である繊維状材料のストリップを示すのに使用される。用語「テープ」は、400mm以下のキャリブレートされた幅を有するテープを示すのに使用される。
【0008】
「ロービング」という用語は、繊維状材料を示すのに使用される。
【0009】
これまで、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの含浸によって強化された繊維状材料のストリップの製造は、特にポリマーの性質、所望の最終複合材料のタイプ及びそれらの使用分野に依存するいくつかの方法に従って行われた。粉末付着による含浸、又は溶融ポリマーのクロスヘッド押出による技術は、例えばWO2012/066241A2に記載されているようなエポキシ樹脂のような熱硬化性ポリマーで強化繊維を含浸するためにしばしば使用される。これらの技術は、一般に、熱可塑性ポリマー、特に、溶融粘度が高すぎて繊維の十分な含浸及び良質の完成品又は半製品を得ることができない高いガラス転移温度を有するポリマーによる含浸に直接適用することができる。
【0010】
別の既知の含浸方法は、ポリマー粉末の水性分散液、ポリマー粒子の水性分散液又はポリマーの水性エマルジョン若しくは懸濁液に繊維を連続的に通過させる。例えば文献EP0324680を参照してもよい。この方法では、マイクロメータサイズ(約20μm)の粉末の分散液を使用した。水溶液に浸漬した後、繊維をポリマー粉末で含浸する。次いで、この方法は、浸漬中に吸収された水を蒸発させるために、含浸された繊維を第1のオーブンに通すことからなる乾燥工程を含む。その後、含浸され乾燥された繊維を第2の温度加熱ゾーンに通すことからなる熱処理工程が、ポリマーを溶融させることでポリマーを繊維に接着させ、広げ、被覆するために必要である。
【0011】
この方法の主な欠点は、完全ではないこともある付着の均一性である。この方法に関連する別の問題は、製造コストに大きく影響する乾燥時間及びエネルギー消費である。さらに、使用される粉末の粒径は普通は微細であり(通常は20μmの体積によるD50)、これにより予備含浸テープ又は予備含浸シートの最終コストも増加する。
【0012】
さらに、この方法の乾燥工程は、水を蒸発させることによって予備含浸繊維に気孔を誘導する。
【0013】
次いで予備含浸された繊維状材料は、例えば、テープの形態に成形される必要がある。
【0014】
ベンゾフェノンのような有機溶媒を含む熱可塑性ポリマーの溶融浴に連続的に繊維を通すことによって一方向繊維を含浸させる方法によって得られる繊維状材料のストリップが市販されている。例えばImperial Chemical Industriesによる文献US4541884を参照してもよい。有機溶媒の存在は、特に溶融ブレンドの粘度を適合させること及び繊維の良好なコーティングを確実にすることを可能にする。このように予備含浸された繊維は、次いで成形される。それらは、例えば、種々の重量のストリップに切断されてもよく、次いでプレスに入れ、次いでポリマーの溶融温度より高い温度で加熱して、材料の凝集、特に繊維に対するポリマーの接着を確実にしてもよい。この含浸及び成形方法により、高い機械的強度を有する構造部品を製造することが可能となる。
【0015】
この技術の欠点の1つは、これらの材料を得るために必要な加熱温度にある。ポリマーの溶融温度は、特にそれらの化学的性質に依存する。それは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ポリマーに関して比較的高い場合があり、例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリエーテルケトンケトン(PEKK)ポリマーに関してはさらに非常に高い場合がある。従って、加熱温度は、250℃を超える温度、及びさらには350℃を超える温度に上昇し得る。その温度は溶媒の沸点及び引火点よりもはるかに高い。ベンゾフェノンではそれぞれ305℃及び150℃である。この場合、溶媒の急激な離脱が生じ、繊維内に多くの気孔が誘発され、その結果、複合材料に欠陥が現れる。従って、この方法は再現するのが難しく、作業者を危険にさらす爆発の危険を伴う。最後に、環境上の理由及び作業者の安全衛生上の理由から、有機溶媒の使用を避けるべきである。
【0016】
Atochem及びフランス国家の共同名義で出願された文献EP0406067並びに同様にEP0201367自体には、ポリマー粉末の流動床での含浸技術が記載されている。繊維は閉鎖された流動化タンクに浸透し、ここでEP0406067に関して、それらは、任意にローラ又は溝付きロールによって互いに分離され、これら繊維はこれらのローラ又はロールと接触する摩擦によって静電気的に帯電する。この静電荷により、ポリマー粉末は繊維の表面に結合され、それにより繊維を含浸することが可能になる。
【0017】
国際出願であるWO2016/062896は、ロービングを接地し、粉体塗装ガン又はノズルの先端とロービングとの間に電位差を印加することによって、意図的な帯電によりロービングを粉体塗装するための静電方法を記載している。
【0018】
文献WO2008/135663は、第3の変形例において、繊維の含浸テープの製造を記載している。この文献では、繊維のテープは、含浸工程の前に、保持手段によって一緒に保持された繊維から形成されたテープの形態に既に予備成形されている。このようにして成形されたテープは、静電気で予め帯電され、及び圧縮空気中、懸濁液中のポリマー微粒子の流動床を含むチャンバにて浸漬され、ポリマーコーティングの層でテープをコーティングする。このような文献は、1つ以上の繊維ロービングの含浸を同時に行うことはできず、テープの形態の予備含浸ロービングの連続的な成形を行うこともできない。
【0019】
文献EP2586585自体はまた、繊維をポリマー粒子の流動床に通すことによって含浸させる原理を記載している。その一方で、その文献は、このように含浸された1つ以上のロービングの1つ以上の一方向の平行テープの形態への連続的な成形を記載していない。
【0020】
出願US2002/0197397には、ポリマー粉末の混合物で繊維を含浸させる方法が記載されており、この混合物は、流動床で直接、前もってコンパンドすることなく製造される。
【0021】
国際出願WO2015/121583は、流動床中に材料を含浸させた後、ロービングを熱カレンダ加工することによって予備含浸された繊維状材料を製造する方法を記載している。
【0022】
この熱カレンダ加工は、含浸装置の下流で行われ、ポリマーの分配及び繊維の含浸を均質化できる。得られた気孔は制御され、再現可能であるが定量化されない。
【0023】
仏国特許FR2600585は、ガラス、カーボン及びケブラー繊維(ここで繊維の直径は5~10μmである。)のロービングを予備含浸するための流動床方法を記載しており、このロービングは、繊維を互いに広げるためにローラによって初期に広げられ、次いでこの広がったロービングをプラスチック粒子で構成された流動床に通し、この平均直径は、フィラメントの直径に対応する限度内にある。
【0024】
Miller et al.:「Impregnation techniques for thermoplastic matrix composites」(Polymers and Polymer Composites、Rapra Technology,Vol.4,No.7,01 January 1996,pages 459-481)は、特に粉末形態のポリマーを有する流動床において、ロービングを予備含浸するための様々な方法を記載しており、粉末中のロービングの滞留時間の記載はなく、粉末粒子の体積直径D50の記載もない。
【0025】
文献EP0335186には、予備含浸された金属繊維を含む複合体を圧縮するためにカレンダ又はプレスを使用する可能性が記載されている。これは、電磁放射を遮蔽するための成形体の製造に使用される。1つ以上の繊維ロービングを含浸させ、及びそれらを熱カレンダ加工により1つ以上の一方向の平行テープの形態に連続的に成形するという事実を記載していない。
【0026】
ロボットを用いた自動レイアップによる三次元複合部品の製造に適した、キャリブレートされたテープの形態の予備含浸された繊維状材料の成形に関して、これは一般に後処理で行われる。
【0027】
従って、文献WO92/20521は、繊維ロービングを熱可塑性粉末粒子の流動床に通すことによって繊維ロービングを含浸させる可能性を記載している。このようにしてポリマー粒子で被覆された繊維は、ポリマーが十分に浸透して繊維を被覆するようにオーブン又は加熱装置内で加熱される。得られた予備含浸された繊維状強化材の後処理は、それを一組の研磨ローラに通すことからなってもよく、依然として液体のマトリックスによる含浸を改善することができる。ストリップを形成するように、2つのローラの間に1つ以上の重ね合わされた繊維状強化材をさらに配置してもよい。このような文献は、1つ以上の繊維ロービングの含浸及び、予備含浸ロービングの一方向の平行テープの形態への連続成形を行うことを可能にするものではない。
【0028】
予備含浸された繊維状材料のテープの品質、及び従って最終複合材料の品質は、繊維の含浸の均質性、及びひいては予備含浸された繊維状材料の気孔の制御及び再現性に依存するだけでなく、最終的なテープのサイズ並びに光学上幅及び厚さに依存する。具体的には、これらの二次元パラメータの均一性及び制御は、材料の機械的強度を改善することを可能にする。
【0029】
現在、繊維性材料の含浸に使用される方法とは無関係に、幅の狭いテープ、すなわち400mm未満の幅のテープの製造は、一般に、シートとも呼ばれる400mmより大きい幅を有するストリップのスリッティング(すなわち切断)を必要とする。このようにして寸法決めされたテープは、次いでヘッドを使用してロボットによってレイアップされる。さらに、シートの役割は約1kmの長さを超えないので、切断後に得られるテープは、一般に、ロボットレイアップ中に特定の大型複合部品を製造するのに十分な長さではない。従って、より長い長さを得るために、テープを端と端で接合しなければならず、ひいては過度の厚さが生じる。不均質な外観を導くこれらの過剰厚さは、この複合部品を構成する良質の複合材料を得ることに有害である。さらに、これらの過剰厚さは、ダウンタイム及びロボットの再起動を必要とし、従って時間及び生産性の損失を招く。
【0030】
従って、繊維状材料を含浸させ、そのような予備含浸された繊維状材料をキャリブレートされたテープの形態に成形するための現在の技術は、いくつかの欠点を有する。例えば、熱可塑性ポリマーの溶融ブレンドをダイ中及びダイ出口で、材料のコアに至るまで均一に加熱することは困難であり、含浸の質を損なう。さらに、繊維と含浸ダイにおけるポリマーの溶融ブレンドとの間に存在する温度差も、含浸の質及び均質性を損なう。さらに、この溶融含浸方法は、熱可塑性樹脂の高い粘度により、特にそれらが高いガラス転移温度を有している場合には、高性能の複合材料を得るために必要な、繊維の含量を高めることができず、製造速度を高めることもできない。有機溶媒の使用には、一般的に、材料の欠陥の出現及び一般的に環境、健康及び安全の危険性を含む。ストリップの形態の予備含浸された繊維状材料の高温後処理による成形は、依然として繊維内のポリマーの均質な分配を可能にしないので、困難なままであり、これは、制御が不十分な気孔を有する低品質の材料が得られることになる。キャリブレートされたテープを得るためのシートのスリッティング及び、これらのテープの端と端の接合は、追加の製造コストを引き起こす。スリッティングはまた、ロボットレイアップに使用される予備含浸された繊維状材料のテープを汚染し、ロボットの機能不全及び/又は複合体の不完全性につながる恐れのある重大なダスト問題を引き起こす。これは、ロボットの修理、製造の停止、及び非準拠製品の廃棄のコストにつながる可能性がある。最後に、スリッティング工程の間に、かなりの量の繊維が劣化し、予備含浸された繊維状材料のテープの特性の損失、特に機械的強度及び伝導率の低下につながる。
【0031】
さらに、含浸は依然として完全に行われておらず、引用した上記文献は完全な含浸を示しているが、得られた気孔率が、特に上記で列挙された用途には高すぎることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】国際公開第2012/066241号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0324680号明細書
【特許文献3】米国特許第4541884号明細書
【特許文献4】欧州特許第0406067号明細書
【特許文献5】欧州特許第0201367号明細書
【特許文献6】国際公開第2016/062896号
【特許文献7】国際公開第2008/135663号
【特許文献8】欧州特許第2586585号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0197397号明細書
【特許文献10】国際公開第2015/121583号
【特許文献11】仏国特許第2600585号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0335186号明細書
【特許文献13】国際公開第92/20521号
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】Miller et al.:「Impregnation techniques for thermoplastic matrix composites」(Polymers and Polymer Composites、Rapra Technology,Vol.4,No.7,01 January 1996,pages 459-481)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
従って、本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服することである。本発明は、含浸装置における滞留時間の制御とこの装置内の繊維状材料のファンアウトの制御とを組み合わせた含浸技術により、予備含浸された繊維状材料を製造する方法を提供すること、並びに繊維の均質な含浸、特に完全含浸を有する予備含浸された繊維状材料を得て、最終複合部品の性能に影響を及ぼすような気孔を低減し、制御し、再現可能にして寸法を制御することを特に目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
この目的のために、本発明の1つの主題は、連続繊維及び少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで作製される繊維状材料を含む予備含浸された繊維状材料を製造するための方法であり、1つのロービング又はいくつかの平行なロービングの形態であるこの繊維状材料を、粉末形態の少なくとも1つの熱可塑性マトリックスで、特に完全に含浸させる工程を含む。
【0036】
本発明はまた、予備含浸された繊維状材料の一方向テープ、特にリールに巻き取られたテープに関するものであり、上記で定義されたような方法によって得られることを特徴とする。
【0037】
本発明はさらに、三次元部品の製造における上記で定義されたテープの使用に関する。この複合部品のこの製造は、輸送分野、特に、自動車輸送、石油及びガス(特に海洋)の輸送、ガス貯蔵、民間又は軍事航空、海上及び鉄道輸送;再生可能エネルギー、特に風力タービン又は船舶用タービン、エネルギー貯蔵装置、ソーラーパネル;熱保護パネル;スポーツ及びレジャー、健康及び医療、武器又はミサイル部品に関する弾道学、安全及びエレクトロニクスの分野に関する。本発明はまた、上記で定義した予備含浸された繊維状材料の少なくとも1つの一方向テープの使用から得られることを特徴とする三次元複合部品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の1つの主題は、連続繊維及び少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで作製される繊維状材料を含む予備含浸された繊維状材料を製造するための方法であって、この予備含浸された繊維状材料が単一の一方向テープ又は複数の平行な一方向テープとして製造され、この方法が、特に完全かつ均質に、1つのロービング又はいくつかの平行なロービングの形態であるこの繊維状材料を、粉末形態である少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスで含浸する工程を含み、この含浸工程は、タンク中の乾燥経路によって行われ、この繊維状材料における少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスの量の制御は、粉末中の繊維状材料の滞留時間を制御することによって達成され、意図的な帯電を伴う静電工程が含まれない方法である。
【0039】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末粒子の体積平均直径D50は、30~300μm、特に50~200μm、より詳細には70~200μmである。
【0040】
「粉末中の滞留時間」という表現は、ロービングが流動床中でこの粉末と接触している時間を意味する。
【0041】
本発明者らは、予期できないことに、粉末中の滞留時間を制御することにより、繊維状材料を熱可塑性ポリマーマトリックスで、特に完全及び均質に、十分に制御された粉末(樹脂)含量で含浸させることが可能であることを見出した。
【0042】
「均質」という用語は、含浸が均一であり、テープの幅の減少もなく、予備含浸された繊維状材料の表面におけるドライブ繊維(drive fiber)もないことを意味する。
【0043】
ポリマーマトリックス
熱可塑性物質又は熱可塑性ポリマーは、室温で一般に固体である材料を意味すると理解される。これは半結晶性又は非晶質であってもよく、非晶質である場合には、特にガラス転移温度(Tg)を通過した後に、温度が上昇する間に軟化し、高温で流れ、又は半結晶性である場合はその溶融温度(Tm)を通過する際に明らかな溶融を示し得、その結晶化温度(半結晶性ポリマーに関して)未満及びそのガラス転移温度(非晶質ポリマーに関して)未満の温度に低下する間に再び固体になる。
【0044】
Tg及びTmは、それぞれ規格11357-2:2013及び11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0045】
繊維状材料を含浸させるためのマトリックスを構成するポリマーに関しては、これは熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドが有利である。この熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンドは、タンク、特に流動床タンクのような装置でそれを使用できるように、粉末形態に粉砕される。
【0046】
タンクの形態の装置、特に流動床タンクは、開いていても閉じていてもよい。任意に、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドはさらに、炭素系充填剤、特にカーボンブラック又は炭素系ナノ充填剤を含み、好ましくは炭素系ナノ充填剤、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル、又はそれらの混合物から選択される充填剤を含む。これらの充填剤は、電気及び熱を伝導することを可能にし、結果として、加熱されたときのポリマーマトリックスの潤滑性を改善することを可能にする。
【0047】
任意に、この熱可塑性ポリマーは、特に触媒、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、光安定剤、滑剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、核形成剤、鎖延長剤及び染料又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0048】
別の変形例によれば、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドは、液晶ポリマー又は環状ポリブチレンテレフタレート又は、CYCLICS CORPORATION社が販売するCBT100樹脂といった混合物をさらに含んでいてもよい。この化合物は、特に、繊維のコアへのより良好な浸透のために、ポリマーマトリックスを溶融状態で流動化することを可能にする。含浸マトリックスの製造のために使用されるポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドの性質、特にその溶融温度に依存して、これらの化合物の一方又は他方が選択される。
【0049】
繊維状材料の含浸マトリックスの組成物中に組み込まれる熱可塑性ポリマーは、以下から選択されてもよい:
-脂肪族又は脂環式ポリアミド(PA)又は半芳香族PA(ポリフタルアミド(PPA)とも呼ばれる。)のファミリーからのポリマー及びコポリマー、
-ポリウレア、特に芳香族ポリウレア、
-ポリアクリレート、より詳細にはポリメチルメタクリレート(PMMA)又はそれらの誘導体などのアクリルファミリーからのポリマー及びコポリマー、
-ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)、例えばポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はそれらの誘導体のファミリーからのポリマー及びコポリマー
-芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、
-ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、
-ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU)、
-ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP);
-ポリ乳酸(PLA)、
-ポリビニルアルコール(PVA)、
-フルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)
並びにそれらのブレンド。
【0050】
有利には、この熱可塑性ポリマーがブレンドである場合、それは、「ドライブレンドすること」若しくはコンパウンドすることによって先に得られた粉末の形態でタンクに、又は「ドライブレンド」の形態でタンクに直接的に添加される。
【0051】
有利には、それは、「ドライブレンドすること」によって先に得られた粉末形態で、又は「ドライブレンド」の形態でタンクに直接添加され、及びブレンドはPEKKとPEIとのブレンドである。
【0052】
有利には、このポリマーが2つのポリマーP1及びP2のブレンドである場合、ポリマーP1及びP2の重量割合は1-99%~99-1%である。
【0053】
有利には、PEKK/PEIブレンドは、90-10重量%~60-40重量%、特に90-10重量%~70-30重量%である。
【0054】
熱可塑性ポリマーは、繊維状材料を含浸させる非反応性最終ポリマー又は反応性プレポリマーに対応してもよいが、この反応性プレポリマーは、繊維状材料を含浸もさせるが、含浸後に鎖末端の官能基がこのプレポリマーによって保持されるので、それ自体と又は別のプレポリマーと、又はさらに鎖延長剤と、特に加熱カレンダ上での加熱中に反応できる。
【0055】
第1の可能性によれば、このプレポリマーは、同一鎖(すなわち、同じプレポリマー上)において、2つの末端官能基X’及びY’(これらは縮合によってそれぞれ互いに共反応性である。)を保持する少なくとも1つの反応性プレポリマー(ポリアミド)を含んでいてもこれからなってもよく、より詳細にはX’及びY’はそれぞれアミン及びカルボキシル又はカルボキシル及びアミンである。第2の可能性によれば、このプレポリマーは少なくとも2つのポリアミドプレポリマーを含んでいてもこれらからなってもよく、これらのプレポリマーは、互いに反応性であり、それぞれが、同一である(同じプレポリマーについては同一であり、2つのプレポリマー間では異なる)2つの末端官能基X’又はY’を保持し、一方のプレポリマーのこの官能基X’は、他方のプレポリマーのこの官能基Y’とのみ、特に縮合によって反応でき、より詳細にはX’及びY’はそれぞれアミン及びカルボキシル又はカルボキシル及びアミンである。
【0056】
第3の可能性によれば、このプレポリマーは、-NH2、-CO2H及び-OH、好ましくはNH2及び-CO2Hから選択されるn個(nは1~3、好ましくは1~2、より好ましくは1又は2、より詳細には2である。)の反応性末端官能基Xを保持するこの熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも1つのプレポリマー、及びこのプレポリマーa1)の少なくとも1つの官能基Xと重付加により反応性である2つの同一反応性末端官能基Yを有する少なくとも1つの鎖延長剤Y-A’-Y(A’は非ポリマー性構造の炭化水素ビラジカルである。)(好ましくは500未満、より好ましくは400未満の分子量を有する。)を含んでいてもこれらからなってもよい。
【0057】
熱可塑性マトリックスの最終ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10000~40000、好ましくは12000~30000の範囲である。これらのMn値は、ISO規格307:2007に従ってm-クレゾールに従って決定されるが、溶媒を変更している場合に0.8以上の固有粘度に対応できる(硫酸の代わりにm-クレゾールの使用及び温度は20℃)。
【0058】
上述の2つの選択肢によるこの反応性プレポリマーは、500~10000、好ましくは1000~6000、特に2500~6000の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0059】
Mnは、特に、溶液中の電位差滴定によって決定された末端官能基の含量及びこのプレポリマーの官能性に基づいて計算することによって決定される。重量Mnはまた、サイズ排除クロマトグラフィ又はNMRによって決定することができる。
【0060】
ポリアミドの定義に使用されている命名法は、ISO規格1874-1:2011「Plastics-Polyamide(PA)moulding and extrusion materials-Part 1:Designation」、特に3頁(表1及び2)に記載されており、当業者には周知である。
【0061】
ポリアミドは、ホモポリアミド又はコポリマー又はそれらのブレンドであってもよい。
【0062】
有利には、マトリックスを構成するポリマーは、ポリアミド(PA)から選択され、特に脂肪族ポリアミド、特にPA11及びPA12、脂環式ポリアミド、及び尿素部分によって任意に修飾された半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)、及びこれらのコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PPMA)及びこれらのコポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フルオロポリマー、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)から選択される。
【0063】
フルオロポリマーの場合、フッ化ビニリデンのホモポリマー(式CH2=CF2のVDF)又は少なくとも50重量%のVDFとVDFと共重合可能な少なくとも1つの他のモノマーとを含むVDFのコポリマーを使用することが可能である。EDFの含量は、特に熱応力及び化学的応力に供された場合に、構造部品の良好な機械的強度を確実にするために、80重量%より多くなければならず、又はさらに良好には90重量%でなければならない。コモノマーは、例えばフッ化ビニルのようなフルオロモノマーであってもよい。
【0064】
高温に耐えなければならない構造部品に関して、フルオロポリマーの他、有利には、PAEK(ポリアリールエーテルケトン)、例えばポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)又は高いガラス転移温度Tgを有するPasを本発明に従って使用してもよい。
【0065】
有利には、この熱可塑性ポリマーは、Tg≧80℃のようなガラス転移温度を有するポリマー又は溶融温度Tm≧150℃を有する半結晶性ポリマーである。
【0066】
有利には、この熱可塑性ポリマーは以下である:
-ポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、又はそれらのブレンド又はコポリマーから選択される脂肪族ポリアミド、
-EP1505099に記載されている、任意に尿素部分で修飾された半芳香族ポリアミド、特に式X/YArの半芳香族ポリアミド、特に式A/XTの半芳香族ポリアミド(ここでAはアミノ酸から得られる部分、ラクタムから得られる部分及び式(Caジアミン).(Cb二酸)に対応する部分から選択され、ここでaはジアミンの炭素原子の数を表し、bは二酸の炭素原子の数を表し、a及びbはそれぞれ4~36、有利には9~18であり、(Caジアミン)部分は、線状又は分枝状脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及びアルキル芳香族ジアミンから選択され、及び(Cb二酸)部分は、線状又は分枝状の脂肪族二酸、脂環式二酸及び芳香族二酸から選択され;X.Tは、Cxジアミン及びテレフタル酸の重縮合から得られる部分を示し、xはCxジアミンの炭素原子の数を表し、xは6~36、有利には9~18である。)、特に式A/6T、A/9T、A/10T又はA/11Tのポリアミド(Aは上記で定義された通りである。)、特にポリアミドPA6/6T、66/6T、6I/6T、MPMDT/6T、PA11/10T、11/6T/10T、MXDT/10T又はMPMDT/10T、BACT/10T、MXD6及びMXD10、及びブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)。
【0067】
Tはテレフタル酸に対応し、MXDはm-キシリレンジアミンに対応し、MPMDはメチルペンタメチレンジアミンに対応し、BACはビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。
【0068】
繊維状材料:
この繊維状材料を構成する繊維に関して、特に鉱物、有機物、植物由来の繊維が挙げられる。鉱物起源の繊維の中で、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、シリカ繊維又は炭化ケイ素繊維を挙げることができる。有機起源の繊維の中で、例えば、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーに基づく繊維、例えば半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維又はポリオレフィン繊維を挙げることができる。好ましくは、それらは、非晶質熱可塑性ポリマーをベースとし、含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド(後者が非晶質である場合)のTgよりも高い、又は含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド(後者が半結晶性である場合)のTmよりも高いガラス転移温度Tgを有する。有利には、それらは、半結晶性熱可塑性ポリマーをベースとし、含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド(後者が非晶質である場合)のTgよりも高い、又は含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド(後者が半結晶性である場合)のTmよりも高い溶融温度Tmを有する。従って、最終複合体の熱可塑性マトリックスによる含浸の間に繊維状材料を構成する有機繊維が溶融する危険性はない。植物起源の繊維の中で、亜麻、麻、リグニン、竹、シルク、特にスパイダーシルク、サイザル、及び他のセルロース繊維、特にビスコース繊維をベースとする天然繊維を挙げることができる。植物起源のこれらの繊維は、熱可塑性ポリマーマトリックスの接着及び含浸を容易にする目的で、純粋に使用することができ、処理され又はコーティング層でコーティングされることができる。
【0069】
繊維状材料はまた、繊維を有する、布地、組みひも又は織布であってもよい。
【0070】
それはまた、支持糸を有する繊維に対応し得る。
【0071】
これらの構成繊維は、単独で又は混合物として使用することができる。従って、有機繊維は、熱可塑性ポリマーで含浸させて、予備含浸された繊維状材料を形成するために、鉱物繊維と混合することができる。
【0072】
有機繊維のロービングは、いくつかの坪量を有していてもよい。それらはまた、いくつかの幾何学形状を有していてもよい。繊維は、短繊維の形態であってもよく、これは次いでストリップ、シート、又は小片の形態であってもよいフェルト又は不織布を後に構成する一方向(UD)繊維の2D織布、組みひも又はロービング又は不織布を構成する連続繊維の形態であってもよい。繊維状材料の構成繊維はまた、様々な幾何学形状のこれらの強化繊維の混合物の形態であってもよい。好ましくは、繊維は連続している。
【0073】
好ましくは、繊維状材料は、炭素、ガラス又は炭化ケイ素の連続繊維又はそれらの混合物、特に炭素繊維によって形成される。それは1つのロービング又はいくつかのロービングの形態で使用される。
【0074】
「すぐに使える」材料とも呼ばれる予備含浸された材料では、含浸熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンドは、繊維の周りに均一及び均質に分配される。このタイプの材料では、含浸熱可塑性ポリマーは、最小量の気孔、すなわち繊維間の空隙の最小量を得るために、繊維内に可能な限り均質に分配されなければならない。具体的には、このタイプの材料における気孔の存在は、例えば機械的引張応力下に置かれた場合に応力集中点として作用し得、次いでこれが予備含浸された繊維状材料の破損開始点を形成し機械的に弱化させる。ポリマー又はポリマーブレンドの均質な分配は、従って、これらの予備含浸された繊維状材料から形成された複合材料の機械的強度及び均質性を改善する。
【0075】
このように、含浸された繊維状材料中の繊維の含量は、いわゆる「すぐに使える」予備含浸材料の場合、45体積%~65体積%、好ましくは50体積%~60体積%、特に54体積%~60体積%である。
【0076】
含浸度の測定は、テープの断面の画像分析(特に、顕微鏡又はカメラ又はデジタルカメラの使用)によって、ポリマーによって含浸されたテープの表面積を、製品の総表面積(含浸された表面積+気孔の表面積)で割ることによって、行われ得る。良質の画像を得るためには、横方向に切断したテープを標準的な研磨樹脂でコーティングし、標準的なプロトコルで研磨することが好ましく、顕微鏡で少なくとも6倍の倍率で試料を観察できる。
【0077】
有利には、この予備含浸された繊維状材料の気孔率は、0%~30%、特に1%~10%、特に1%~5%である。
【0078】
気孔率は、閉気孔率に対応し、電子顕微鏡法によって、又は理論密度と本発明の実施例の項に記載した予備含浸された繊維状材料の実験密度との間の相対偏差としてのいずれかによって決定されてもよい。
【0079】
含浸工程:
製造方法を実施するためのユニットの例は、国際出願WO2015/121583に記載されており、タンク(そうでなければ、本発明の場合、圧縮ローラ(
図4)であってもよい張力装置を備えた流動床(
図3)を含む含浸タンクと称される。)以外、
図1において表される通りである。
【0080】
圧縮ローラは、固定式であっても回転式でもよい。
【0081】
この繊維状材料の含浸工程は、特にポリマー粉末の流動床(22)を含むタンク(20)を含む連続含浸装置に1つ以上のロービングを通すことによって行われる。
【0082】
ポリマー粉末又はポリマーは、タンクに導入されたガスG(例えば空気)中に懸濁され、ホッパー21を通ってタンクに流入する。ロービングはこの流動床22を通って循環する。
【0083】
タンクは、任意の形状、特に円筒状又は平行六面体、特に直方体又は立方体、有利には直方体を有していてもよい。
【0084】
タンクは、開いたタンク又は閉じたタンクであってもよい。有利には、それは開いている。
【0085】
タンクが閉鎖している場合、ポリマー粉末がこのタンクを出ることができないように封止システムが装備される。
【0086】
従って、この含浸工程は、乾燥経路によって行われ、すなわち、熱可塑性ポリマーマトリックスは、粉末形態、特に気体、特に空気中に懸濁しているが、溶媒中又は水中には分散できない。
【0087】
含浸されるべき各ロービングは、ロール(図示せず)によって生成された張力下でリール(11)を有する装置(10)から巻き解かれる。好ましくは、装置(10)は複数のリール(11)を含み、各リールは含浸されるべきロービングを巻き解くことを可能にする。従って、いくつかの繊維ロービングを同時に含浸することが可能である。各リール(11)には、各繊維ロービングに張力を適用するためにブレイク(break)(図示せず)が設けられている。この場合、アライメントモジュール(12)は、繊維ロービングを互いに平行に配置することを可能にする。このようにして、繊維ロービングは相互に接触することができず、それによって繊維同士が擦れて繊維が機械的に劣化するのを防止することが可能になる。
【0088】
繊維ロービング又は平行繊維ロービングは、次いで
図1の場合には圧縮ローラ(23)である張力装置を備えた特に流動床(22)を含むタンク(20)を通過する。次いで、繊維ロービング又は平行繊維ロービングは、粉末中の滞留時間を制御した後、含浸後にタンクから出現する。
【0089】
従って、本発明者らは、予期できないことに、粉末中の滞留時間を制御することにより、繊維状材料を熱可塑性ポリマーマトリックスで、十分に制御された樹脂含量で均質に含浸させることが可能であることを見出した。
【0090】
また、少なくとも1つの張力装置を使用することにより、含浸が従来技術の方法と比較して改善され、特に含浸が完全な含浸であることも見出した。
【0091】
張力装置は、ロービングがタンクを通過する可能性のある任意のシステムを意味すると理解される。張力装置は、ロービングがその上を走行できる限り、任意の形状を有していてもよい。
【0092】
張力装置(attention device)の例は、本発明を制限するものではないが、
図3に詳細に示されている。
【0093】
この含浸は、ポリマー粉末が繊維ロービングのコアに浸透し、及び粉末コーティングされたロービングのタンクからの輸送に十分に耐えるように繊維に付着することを可能にするために行われる。粉末によって予備含浸されたロービングは、次いで加熱されたカレンダ装置に送られるが、カレンダ加工の前に予熱されてもよく、任意にカレンダ加工後に加熱されてもよい。
【0094】
任意に、この情報(information)工程は、流動床(22)中の粉末で含浸させるためにタンク(20)のちょうど出口に、及びカレンダ成形工程の直前に、予備含浸されたロービングを被覆する工程によって完了されてもよい。このために、タンク(20)(流動床22)の出口エアロックは、特許であるEP0406067にも記載されているように、被覆クロスヘッドを含んでいてもよい被覆装置(30)に接続されてもよい。被覆ポリマーは、流動床ポリマー粉末と同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、同じタイプのものである。このような被覆により、所望の範囲内のポリマー最終体積含量を得て、予備含浸されたロービングの表面に局所的にも高すぎる繊維含量が存在する(これは、特に良質のいわゆる「すぐに使える」繊維状材料を得るためには、複合部品の製造の間のテープ溶接にとって有害となり得る。)のを回避するために、繊維を含浸させる工程を完了させるだけでなく、得られた複合材料の性能を改善することも可能になる。
【0095】
上記で示されるような本発明の方法は、意図的な帯電を伴う静電工程を排除した乾燥経路によって行われる。
【0096】
「意図的な帯電を伴う」という表現は、繊維状材料と粉末との間に電位差が印加されることを意味する。電荷は、特に制御され増幅される。次いで、粉末のグレインは、帯電された粉末を繊維に対して引き付けることによって繊維状材料を含浸させる。様々な手段(2つの金属電極間の電位差、金属部品上の機械的摩擦など)によって、負又は正に粉末を電気的に帯電させることができ、反対に(正又は負に)繊維を帯電させることが可能である。
【0097】
本発明の方法は、タンクの前又はタンク内の実施ユニットの要素上の繊維状材料の摩擦によって現れる可能性のある静電荷の存在を排除するものではないが、これは、いかなる場合においても意図しない電荷である。
【0098】
有利には、この含浸された繊維状材料中の繊維の含量は、45体積%~65体積%、好ましくは50体積%~60体積%、特に54体積%~60体積%である。
【0099】
45%未満の繊維では、機械的特性に関してほとんど強化されない。
【0100】
65%を超えると、方法の限界に達し、機械的特性が再び失われる。
【0101】
ガラス繊維などの繊維状材料があるサイズを有する場合、繊維状材料がタンク内を通過する前に、任意のデサイジング工程を行ってもよい。用語「サイズ」は、紡糸口金(テキスタイルサイズ)を離れ、織布(プラスチックサイズ)に至る際に強化繊維に適用される表面処理を示す。
【0102】
紡糸口金を離れる際にフィラメントに適用される「テキスタイル」サイズは、結合剤を付着させることからなり、フィラメント同士の凝集を確実にし、摩耗を低減し、その後の取扱い操作(織り、ドレープ形成、編み)を確実にして、静電荷の形成を防止する。
【0103】
織布に適用される「プラスチック」サイズ又は「仕上げ」は、架橋剤を付着させることからなり、その役割は、樹脂中の繊維間の物理化学的結合を保証し、周囲から繊維を保護することである。
【0104】
有利には、含浸した繊維状材料中の繊維の含量は、50体積%~60体積%、特に54体積%~60体積%である。
【0105】
有利には、粉末中の滞留時間は0.01秒~10秒、好ましくは0.1秒~5秒、特に0.1秒~3秒である。
【0106】
粉末中の繊維状材料の滞留時間は、含浸、特にこの繊維状材料の含浸に不可欠である。
【0107】
0.1秒未満では、含浸はコアにとって適切ではない。
【0108】
10秒を超えると、繊維状材料に含浸するポリマーマトリックスの量が多すぎて、予備含浸された繊維状材料の機械的特性が悪くなる。
【0109】
有利には、本発明の方法において使用されるタンクは、流動床を含み、この含浸工程は、この流動床の入口と出口との間でこのロービングの同時ファンアウトを伴って行われる。
【0110】
「流動床の入口」という表現は、流動床を含むタンクの縁部の垂直接線に対応する。
【0111】
「流動床の出口」という表現は、流動床を含むタンクの他の縁部の垂直接線に対応する。
【0112】
従って、タンクの接合部に依存するが、入口及び出口における距離は、円筒の場合は直径、立方体の場合は辺、又は直方体の場合の幅又は長さに対応する。ファンアウトは、ロービングの各構成フィラメントを可能な限りその最も近い空間でそれを囲む他のフィラメントから個別化することからなる。それはロービングの横方向の広がりに対応する。
【0113】
言い換えれば、流動床(又は流動床を含むタンク)の入口と流動床(又は流動床を含むタンク)の出口との間で移動の広がり又は可動幅が増大し、従って改善された含浸、特に繊維状材料の完全な含浸が可能になる。
【0114】
流動床は、開いていても閉じていてもよく、特に開いている。
【0115】
有利には、この流動床は、少なくとも1つの張力装置を含み、このロービングは、この少なくとも1つの張力装置の表面の一部又は全部と接触している。
【0116】
図3は、高さ調節可能な張力装置(82)を有する流動床(22)を含むタンク(20)の詳細を示す。
【0117】
ロービング(81a)は含浸前のロービングに対応し、これが、少なくとも1つの張力装置の表面の一部又は全部と接触し、従って張力装置(82)の表面上で部分的又は完全に走行し、このシステム(82)は含浸が行われる流動床に浸漬される。次いで、粉末中の滞留時間を制御した後、このロービングはタンク(81b)から出現する。
【0118】
このロービング(81a)は、回転式又は固定式ローラ又は平行六面体の縁部であってもよいタンク(83a)の縁部と接触してもしなくてもよい。
【0119】
有利には、このロービング(81a)は、任意にタンク(83a)の縁部と接触している。
【0120】
有利には、タンク(83b)の縁部は、ローラ、特に円筒状の回転式ローラである。
【0121】
このロービング(81b)は、ローラ、特に円筒状の回転式又は固定式ローラ又は平行六面体の縁部であってもよいタンク(83b)の縁部と接触してもしなくてもよい。
【0122】
有利には、このロービング(81b)はタンク(83b)の縁部と接触している。
【0123】
有利には、タンク(83b)の縁部は、ローラ、特に円筒状の回転式ローラである。
【0124】
有利には、このロービング(81a)はタンク(83a)の縁部と接触し、タンク(83b)の縁部はローラ、特に円筒状の回転式ローラであり、このロービング(81b)は、タンク(83b)の縁部と接触し、タンク(83b)の縁部はローラであり、特に円筒状の回転式ローラである。
【0125】
有利には、この張力装置は、このロービングの方向に対して垂直である。
【0126】
有利には、このロービングのファンアウトは、この少なくとも1つの張力装置と少なくとも同じレベルで行われる。
【0127】
従って、ロービングのファンアウトは、主に張力装置と同じレベルで行われるが、ロービングとこの縁部との間に接触がある場合には、タンクの縁部と同じ高さで行われてもよい。
【0128】
別の実施形態では、この少なくとも1つの張力装置は、凸状、凹状又は円筒状の圧縮ローラである。
【0129】
凹形状は、それでも行われるが、ファンアウトには好ましくないので、凸形がファンアウトに好ましい。
【0130】
「圧縮ローラ」という表現は、走行しているロービングが圧縮ローラの表面に対して部分的又は完全に加圧することを意味し、このローラのファンアウトを誘発する。
【0131】
有利には、この少なくとも1つの圧縮ローラは円筒状であり、この流動床の入口と出口との間のロービングのファンアウト率は、1%~400%、好ましくは30%~400%、好ましくは30%~150%、好ましくは50%~150%である。
【0132】
ファンアウトは、使用される繊維状材料の関数である。例えば、炭素繊維材料のファンアウトは亜麻繊維の場合よりもはるかに大きい。
【0133】
ファンアウトまた、ロービング中の繊維又はフィラメントの数、それらの平均直径、及びそのサイズによるそれらの凝集の関数でもある。
【0134】
この少なくとも1つの圧縮ローラの直径は、3mm~500mm、好ましくは10mm~100mm、特に20mm~60mmである。
【0135】
3mm未満では、圧縮ローラによって誘導される繊維の変形が大きすぎる。
【0136】
有利には、圧縮ローラは円筒状であり、溝がなく、特に金属性である。
【0137】
張力装置が少なくとも1つの圧縮ローラである場合、第1の変形例によれば、単一の圧縮ローラが流動床内に存在し、この含浸は、圧縮ローラの始点とこの圧縮ローラの垂直接線との間でこのロービングによって形成される角度α1で行われる。
【0138】
圧縮ローラの始点とこの圧縮ローラの垂直接線との間でロービングによって形成される角度α1は、粉末が濃縮されるゾーンの形成を可能にし、その結果、「コーナー効果」を生じさせ、これはこの圧縮ローラによるロービングの同時ファンアウトにより大きなロービング幅に対しての含浸を可能にし、従って改善された先行技術に比べて改善された含浸を可能にする。次いで制御された滞留時間との組み合わせは、完全な含浸を可能にする。
【0139】
有利には、角度α1は0~89°、好ましくは5°~85°、好ましくは5°~45°、好ましくは5°~30°である。
【0140】
しかしながら、0~5°の角度α1は、機械的応力の危険を生じさせる可能性があり、このことは繊維の破損をもたらし、85~89°の角度α1は、「コーナー効果」を創出するのに十分な機械的応力を創出しない。
【0141】
従って、0°に等しい角度α1の値は、垂直繊維に対応する。円筒状の圧縮ローラの高さは調整可能であり、従って繊維を垂直に配置することが可能であることは明らかである。
【0142】
ロービングが離れることができるように、タンクの壁が穿孔されることは、本発明の範囲外ではない。
【0143】
有利には、タンク(83a)の縁部にはローラ、特にロービングが走行する円筒状の回転式ローラが設けられており、従って、先行ファンアウトが生じる。
【0144】
有利には、1つ以上の張力装置が流動床を含むタンクの下流に存在し、その張力装置上においてファンアウトが開始される。
【0145】
有利には、ファンアウトは、上記で定義されたこの張力装置で開始され、タンク(83a)の縁部で継続する。
【0146】
次いで圧縮ローラ上を通過した後、ファンアウトが最大となる。
【0147】
図4は、これらに限定されないが、単一の圧縮ローラを有し、単一の円筒状の圧縮ローラが存在し、角度α
1を示す流動床(22)を含むタンク(20)を有する実施形態を記載している。
【0148】
繊維上の矢印は、繊維の走行方向を示す。
【0149】
有利には、この流動床におけるこの粉末のレベルは、少なくともこの圧縮ローラの途中に位置する。
【0150】
角度α1によって生じる「コーナー効果」は一方の面の含浸に有利であるが、圧縮ローラによって得られるこのロービングのファンアウトによりまた、ロービングの他方の面の含浸を可能にすることは明らかである。言い換えれば、この含浸は、少なくとも1つの圧縮ローラR1の始点と圧縮ローラR1の垂直接線との間でロービングによって形成される角度α1で、ロービングの一方の面で有利であるが、ファンアウトによりまた、他の面を含浸することも可能になる。
【0151】
角度α1は、上記で定義した通りである。
【0152】
第2の変形例によれば、張力装置が少なくとも1つの圧縮ローラである場合、2つの圧縮ローラR
1及びR
2がこの流動床内にあり、この含浸は、圧縮ローラR
1の始点と圧縮ローラR
1の垂直接線との間でロービングによって形成される角度α
1、及び/又は圧縮ローラR
2の始点と圧縮ローラR
2の垂直接線との間でロービングによって形成される角度α
2で行われ、この圧縮ローラR
1は、この圧縮ローラR
2に先行し、このロービングがローラR
2の頂部(
図5及び6)又はその下(
図7及び8)を通過することができる。
【0153】
有利には、2つの圧縮ローラは、凸状、凹状又は円筒状の形状から選択された同一又は異なる形状のものである。
【0154】
有利には、2つの圧縮ローラは、同一で溝がない円筒状のローラであり、特に金属性である。
【0155】
2つの圧縮ローラの直径は、同一であっても異なっていてもよく、上で定義した通りである。
【0156】
有利には、2つの圧縮ローラの直径は同一である。
【0157】
2つの圧縮ローラR
1及びR
2は、互いに及びタンクの底部(
図6及び
図7)に対して同じレベルであり、又は互いにタンクの底部に対してオフセットし、圧縮ローラR
1の高さは、タンクの底部に対して圧縮ローラR
2の場合よりも大きいか、又は小さくなっている(
図5及び
図8)。
【0158】
有利には、2つのローラが異なる高さにあり、ロービングがローラR2の頂部を通過する場合、α2は0~90°である。
【0159】
従って、有利には、この含浸は、このロービングの一方の面において、この圧縮ローラR1の始点とこの圧縮ローラの垂直接線との間でこのロービングによって形成される角度α1、及びローラR2の頂部を通過することによって得られるこのロービングの反対側の面においてこの圧縮ローラR2の始点とこの圧縮ローラR2の垂直接線との間でこのロービングによって形成される角度α2において行われる。
【0160】
有利には、この実施形態におけるこのロービングは、各角度α1及びα2でファンアウトに供される。
【0161】
図6は、これらに限定されないが、圧縮ローラR
1及びR
2を有する実施形態を記載しており、R
1はR
2に先行し、タンク(20)は、2つの同じレベルで並ぶ2つの円筒状圧縮ローラが存在する流動床(22)を含み、このロービングがこの圧縮ローラR
1とR
2との間に現れる場合を示している。
【0162】
この場合、角度α2は0に等しく、このロービングはローラR2上を通過する。
【0163】
繊維上の矢印は、繊維の走行方向を示す。
【0164】
代替的に、このロービングは、最初にこの圧縮ローラR1とR2との間で走行し、この圧縮ローラR2の表面の一部又は全部に接触した後に現れる。
【0165】
有利には、このロービングは、最初にこの圧縮ローラR1の表面の一部又は全部と接触し、ローラR2の下でこの圧縮ローラR2の表面の一部又は全体と接触した後に圧縮ローラR2の外側に現れ、角度α2は、この圧縮ローラR2の始点とこの圧縮ローラR2の垂直接線との間でこのロービングによって形成される。この場合、角度α2=90°となる。
【0166】
従って、この含浸は、このロービングの一方の面においてこの圧縮ローラR1の始点とこの圧縮ローラの垂直接線との間でこのロービングによって形成される角度α1、及びこのロービングの同じ面においてこの圧縮ローラR2の始点とこの圧縮ローラR2の垂直接線との間でこのロービングによって形成される角度α2において行われるが、ファンアウトによりまた他の面を含浸させることが可能になる。
【0167】
有利には、この実施形態におけるこのロービングは、各角度α1及びα2でファンアウトに供される。
【0168】
図7は、互いに同じレベルの2つの圧縮ローラR
1及びR
2を有する例示的な実施形態を示す。
【0169】
第2変形例の別の実施形態によれば、2つの圧縮ローラが存在する場合、2つの圧縮ローラR1とR2との間の距離は、0.15mmからタンクの最大寸法に等しい長さ、好ましくは10mm~50mmであり、2つの圧縮ローラR1及びR2の高さの差は、0からタンクの最大高さから2つの圧縮ローラの直径を差し引いたものに対応する高さ、好ましくは0.15mmからタンクの最大高さから2つの圧縮ローラの直径を差し引いたものに対応する高さ、より好ましくは10mm~300mmの高さの差であり、R2が上側の圧縮ローラである。
【0170】
有利には、2つの圧縮ローラが存在し、互いに同じレベルである場合、この流動床内のこの粉末のレベルは少なくともこの2つの圧縮ローラの途中に位置する。
【0171】
図8は、これらに限定されないが、2つの圧縮ローラR
1及びR
2を有する実施形態を記載しており、R
1はR
2に先行し、タンク(20)は、異なるレベルの2つの円筒状圧縮ローラが存在する流動床(22)を含み、角度α
1及びα
2を示している。
【0172】
圧縮ローラR
1及びR
2の直径は、
図5、6、7及び8において同じであるように示されるが、各円筒状圧縮ローラの直径は異なっていてもよく、圧縮ローラR
1の直径は、可能性として、上記で定義された範囲内で圧縮ローラR
2の直径より大きい又は小さい。
【0173】
有利には、2つの圧縮ローラの直径は同一である。
【0174】
圧縮ローラR1が圧縮ローラR2よりも高いことは、本発明の範囲外とはならない。
【0175】
第3の変形例によれば、2つの圧縮ローラが存在し、異なるレベルにある場合、少なくとも1つの第3の圧縮ローラR
3がさらに存在し、高さ方向で圧縮ローラR
1とR
2の間に位置する(
図9)。
【0176】
有利には、このロービングは、最初にこの圧縮ローラR1の表面の一部又は全部と接触し、次いでこの圧縮ローラR3の表面の一部又は全部と接触し、この圧縮ローラR2の表面の一部又は全部に接触した後に現れる。
【0177】
従って有利には、この含浸は、このロービングの一方の面において、この少なくとも1つの圧縮ローラR1の始点とこの圧縮ローラR1の垂直接線との間でこのロービングによって形成される角度α1、及びさらにロービングと圧縮ローラR3の垂直接線とによって形成される角度α3において、並びに他方の面において、ロービングと圧縮ローラR2の垂直接線とによって形成される角度α2にて行われる。
【0178】
有利には、2つの圧縮ローラが異なるレベルで存在し、少なくとも1つの第3の圧縮ローラR3がさらに存在する場合、この少なくとも1つの圧縮ローラR2の始点とこの圧縮ローラR2の垂直接線との間でロービングによって形成される角度α2は180°~45°、特に120°~60°である。
【0179】
有利には、角度α3は0°~180°、有利には45°~135°である。
【0180】
図9は、これらに限定されないが、タンク(20)が、R
1がR
2に先行する2つの圧縮ローラR
1及びR
2、及び第3の圧縮ローラR
3を有する流動床(22)を含み、角度α
1、α
2及びα
3を示す実施形態を記載する。
【0181】
圧縮ローラR
1、R
2及びR
3の直径は、
図9においては同じであるように示されるが、各円筒状圧縮ローラの直径は異なっていてもよいし、又は2つの(to)圧縮ローラが同じ直径を有していてもよく、第3のローラが上記で定義された範囲内において、大きい又は小さい異なる直径を有していてもよい。
【0182】
有利には、3つの圧縮ローラの直径は同一である。
【0183】
有利には、この第3の変形例では、ロービングのファンアウトの第2の制御は、圧縮ローラR3で行われ、ファンアウトの第3の制御は、圧縮ローラR3で行われる。
【0184】
この第3の変形例における滞留時間は、上で定義した通りである。
【0185】
有利には、この第3の変形例では、この流動床内のこの粉末のレベルは、少なくともこの圧縮ローラR2の途中に位置する。
【0186】
この第3の変形例では、ロービングが最初にこの圧縮ローラR1の表面の一部又は全部と接触し、次いでこの圧縮ローラR2の表面の一部又は全体と接触し、この圧縮ローラR3の表面の一部又は全部と接触した後に現れることは本発明の範囲外とはならない。
【0187】
1つの有利な実施形態によれば、本発明は、単一の熱可塑性ポリマーマトリックスが使用され、熱可塑性ポリマー粉末が流動化可能であることを特徴とする、上記定義の方法に関する。
【0188】
「流動化可能」という用語は、
図16に示すように、流動床に適用される空気の流量が最小流動化流量(Umf)と最小発泡流量(Umf)との間にあることを意味する。
【0189】
最小流動化流量未満では流動化はなく、ポリマー粉末の粒子は床に落下し、もはや懸濁状態にはなく、本発明による方法は動作できない。
【0190】
最小発泡流量超過では、粉末粒子が飛散し(flyway)、流動床の一定組成物をもはや一定に保つことができない。
【0191】
有利には、粒子の体積直径D90は50~500μm、有利には120~300μmである。
【0192】
有利には、粒子の体積直径D10は5~200μm、有利には35~100μmである。
【0193】
有利には、粉末粒子の体積直径はD90/D10の比、すなわち1.5~50、有利には2~10の範囲内にある。
【0194】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末粒子の体積平均直径D50は、30~300μm、特に50~200μm、より詳細には70~200μmである。
【0195】
粒子の体積直径(D10、D50及びD90)は、ISO規格9276:2014に従って定義される。
【0196】
「D50」は、体積平均直径、すなわち検査された粒子の集団を正確に2つに分割する粒径の値に対応する。
【0197】
「D90」は、体積粒度分布の複合曲線の90%の値に対応する。
【0198】
「D10」は、粒子の体積の10%のサイズに対応する。
【0199】
本発明による方法の別の実施形態によれば、流動床を含むタンクへの入口においてロービングの張力を制限するための流動床を含むタンクの前にクリール(creel)が存在する。
【0200】
任意に、本発明による方法では、流動床を含むタンクの後に1つ以上の張力装置が存在する。
【0201】
成形工程
それらが、特に流動床(22)を含むタンク(20)を離れるとすぐに、任意に溶融ポリマーで被覆された予備含浸されたロービング(平行ロービング)は、1つ以上の加熱されたカレンダを含む連続カレンダ加工装置によって、単一の一方向テープ又は複数の平行一方向テープの形態に成形される。
【0202】
有利には、カレンダ加工装置の加熱されたカレンダは、表面のみならずコアにおいても材料を加熱することを可能にする急速加熱手段に組み合わされる。
【0203】
流動床(22)を含むタンク(20)から出たファンアウトされたロービングは、次いで加熱の影響下で収縮し、これにより、ロービングの繊維の間に溶融ポリマーを挿入するのを助け、従って、このロービングの不十分さを低減でき、特に、このロービングの含浸のために有利である。
【0204】
これらの急速加熱手段に組み合わされたカレンダの機械的応力は、特に繊維状材料がいわゆる「すぐに使える」材料である場合には、気孔の存在を排除し、ポリマーを均質に分配することを可能にする。
【0205】
有利には、この熱カレンダ加工は、含浸ポリマーを繊維に均一に浸透させ、付着させて被覆するだけでなく、予備含浸された繊維状材料のテープの厚さ及び幅を制御することを可能にする。
【0206】
複数の平行な一方向テープ、すなわち予備含浸された平行ロービングのような多数のテープを製造し、流動床を通過させることができるためには、
図1の図において参照された(51)、(52)、(53)の加熱カレンダは、テープの数に応じて、有利には複数のカレンダ加工溝(73)を含む。この溝の数は、例えば、200までの範囲であってもよい。サーボ制御システムSYSTはさらに、テープの厚さepを制御するために、カレンダ(70)のローラ(71)、(75)の間の圧力及び/又は間隔Eを調整することを可能にする。そのようなカレンダ(70)は、以下に説明する
図2に示されている。
【0207】
カレンダ加工装置は、少なくとも1つの加熱カレンダ(51)を含む。好ましくは、繊維ロービングの走行方向に対して平行に及び/又は直列に取り付けられたいくつかの加熱カレンダ(51)、(52)、(53)を含む。
【0208】
特に、後続カレンダ加工工程は、(方法の進行方向において)増加するローラ間の圧力及び/又は(方法の進行方向において)減少するローラ間の間隔で徐々に行われる。
【0209】
直列にいくつかのカレンダを有するという事実は、材料を圧縮し、材料中の気孔の量を減少させ、その程度を減少させることを可能にする。従って、このいくつかのカレンダは、いわゆる「すぐに使える」繊維状材料を製造することが望ましい場合に重要である。
【0210】
いくつかのカレンダを平行に有するという事実は、予備含浸ロービングの数を増加させることを可能にする。
【0211】
有利には、カレンダ加工装置の各カレンダは、熱可塑性ポリマー、ポリマーブレンドを加熱するために、一体型誘導又はマイクロ波加熱システム、好ましくはマイクロ波加熱システムを有する。有利には、ポリマー又はポリマーブレンドが、炭素系充填剤、例えばカーボンブラック又は炭素系ナノ充填剤を含み、好ましくは炭素系ナノ充填剤、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル又はそれらの混合物から選択される場合、この誘導マイクロ波加熱効果は、これらの充填剤の存在によって増幅され、次いで材料のコアに熱を伝導する。
【0212】
有利には、装置の各カレンダ(51)、(52)、(53)は、熱エネルギーを材料に迅速に伝え、溶融ポリマーによって繊維の含浸を完全にするために、各カレンダの前及び/又は後に位置する急速加熱装置(41)、(42)、(43)に組み合わされる。急速加熱装置は、例えば、以下の装置:マイクロ波又は誘導装置、赤外線IR又はレーザー装置、又は火炎若しくは高温ガス装置などの熱源との直接接触により可能となる別の装置から選択されてもよい。マイクロ波又は誘導装置は、炭素系ナノ充填剤が加熱効果を増幅し、材料のコアに伝えるので、特にポリマー又はポリマーブレンドにおける炭素系ナノ充填剤の存在と組み合わせられる場合、非常に有利である。
【0213】
一実施形態の変形例によれば、これらの加熱装置のいくつかを組み合わせることがさらに可能である。
【0214】
この方法は、含浸前に繊維ロービングを、好ましい加熱手段として加熱カレンダの加熱システムのようなマイクロ波加熱で繊維を加熱する工程をさらに含んでもよい。
【0215】
任意に、後続の工程は、予備含浸され成形されたテープを巻き取ることからなる。このために、方法を実施するユニット(100)は、テープと同じ数のリール(61)を含む巻き取り装置(60)を含み、1つのリール(61)が各テープに割り当てられる。劣化を避けるためにテープが触れるのを防ぎながら、予備含浸されたテープをそれぞれのリール(61)にそらすために、ディストリビュータ(62)が一般に設けられている。
【0216】
図2は、断面で見たカレンダ(70)の溝(73)の詳細を示す。カレンダ(70)は、上側のローラ(71)と下側のローラ(75)とを含む。ローラのうちの1つ、例えば上側のローラ(71)は、歯付き部分(72)を含むが、他方のローラ、すなわち例では下側のローラ(75)は溝付き部分(76)を含み、この溝の形状は上側のローラの突出部分(72)の形状と相補的である。ローラ(71)、(75)間の間隔E及び/又は2つのローラによって互いにかけられる圧力は、溝(73)の寸法、特にそれらの厚さep及び幅lを規定することを可能にする。各溝(73)は、その中に繊維ロービングを収容するために設けられ、次いでローラの間で加圧され加熱される。ロービングは、次いで、平行な一方向テープに変換され、その厚さ及び幅は、カレンダの溝(73)によってキャリブレートされる。各カレンダは、有利には、溝及び予備含浸されたロービングが存在するのと同数のテープを製造するように、複数の溝を含み、溝の数は200までの範囲であってもよい。カレンダ加工装置は、
図1に参照されたSYSTで示され、この目的のために設けられたコンピュータプログラムによって制御されている中央装置をさらに含んでいてもよく、これにより、ユニット100のすべてのカレンダのカレンダ加工ローラの圧力及び/又は間隔を同時に調節可能である。
【0217】
このようにして製造された一方向テープは、正確な幅にスリッティングする必要なく、三次元部品の製造においてロボットのレイアップに適した幅l及び厚さepを有する。テープの幅は、有利には5~400mm、好ましくは5~50mm、さらにより好ましくは5~15mmである。
【0218】
従って、先に説明した予備含浸された繊維状材料の製造方法は、繊維の均質な含浸及び気孔の制御及び再現性を可能にしながら、高い生産性で予備含浸された繊維状材料を製造することを可能にし、従ってターゲットとする最終複合物品の性能の制御及び再現性を可能にする。繊維周囲の均質な含浸及び気孔の欠如は、この粉末中、特に流動床を含むタンク中での滞留時間の制御及び圧縮ローラ上のロービングの同時ファンアウトと組み合わせられる「コーナー効果」によるタンク内の含浸工程によって確実にされる。得られた材料は、厚さ及び幅に関してキャリブレートされ、少ない気孔を有するテープの形態の半製品である。
【0219】
従って、この方法は、ロボットを用いてテープの自動レイアップによって三次元複合部品の製造に適した予備含浸された繊維状材料のキャリブレートされたテープを製造することを可能にする。
【0220】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーは、Tg≧80℃のようなガラス転移温度を有する非晶質ポリマーから及び/又は溶融温度Tm≧150℃を有する半結晶性ポリマーから選択される。
【0221】
有利には、この熱可塑性ポリマーは以下である:
-ポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、それらのブレンド又はコポリマーから選択される脂肪族ポリアミド、特に1010/11、1010/12など
-EP1505099に記載されている、任意に尿素部分で修飾された半芳香族ポリアミド、特にポリフタルアミド、特に式X/YArの半芳香族ポリアミド、特に式A/XTの半芳香族ポリアミド(ここでAはアミノ酸から得られる部分、ラクタムから得られる部分及び式(Caジアミン).(Cb二酸)に対応する部分から選択され、ここでaはジアミンの炭素原子の数を表し、bは二酸の炭素原子の数を表し、a及びbはそれぞれ4~36、有利には9~18であり;X.Tは、Cxジアミン及びテレフタル酸の重縮合から得られる部分を示し、xはCxジアミンの炭素原子の数を表し、xは6~36、有利には9~18である。)、特に式A/6T、A/9T、A/10T又はA/11Tのポリアミド(Aは上記で定義された通りである。)、特にポリアミドPA6/6T、66/6T、6I/6T、PA11/10T、11/6T/10T、MXDT/10T又はMPMDT/10T、BACT/10T、アラミド、及びブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)。
【0222】
有利には、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製されている。
【0223】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーは、特にPA11、PA12、PA11/1010、PA12/1010、PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T及びPA BACT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドであり、本発明に従う方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製される。
【0224】
有利には、このテープは、その熱可塑性ポリマーが、PA11、PA12、PA11/1010、PA12/1010、PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PAMPMDT/10T及びPA BACT/10Tから選択されるポリアミドであるものであり、民間航空又は軍事航空又は自動車産業に使用される。
【0225】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーはPEKKである。
【0226】
有利には、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製されている。
【0227】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーはPEKKであり、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維から作製される。
【0228】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーはPEIである。
【0229】
有利には、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製されている。
【0230】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーはPEIであり、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製される。
【0231】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーは、PEKKとPEIとのブレンドであり、好ましくは90-10重量%~60-40重量%、特に90-10重量%~70-30重量%である。
【0232】
有利には、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製されている。
【0233】
有利には、本発明による方法で得られたテープの熱可塑性ポリマーはPEKK及びPEIのブレンドであり、本発明による方法で得られたテープの繊維状材料は炭素繊維で作製される。
【0234】
別の態様によれば、本発明は、三次元複合部品の製造における、上記で定義した予備含浸された繊維状材料のテープの使用に関する。
【0235】
有利には、この複合部品のこの製造は、輸送分野、特に、自動車輸送、石油及びガス(特に海洋)の輸送、ガス貯蔵、民間又は軍事航空、海上及び鉄道輸送;再生可能エネルギー、特に風力タービン又は船舶用タービン、エネルギー貯蔵装置、ソーラーパネル;熱保護パネル;スポーツ及びレジャー、健康及び医療、武器又はミサイル部品に関する弾道学、安全及びエレクトロニクスの分野に関する。
【0236】
さらに別の態様によれば、本発明は、上記で定義した予備含浸された繊維状材料の少なくとも1つの一方向テープの使用から生じることを特徴とする三次元複合部品に関する。
【0237】
本発明の方法の有利な実施形態
有利には、繊維状材料は、炭素繊維及びガラス繊維から選択される。
【0238】
有利には、炭素繊維を含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PA11/1010又はPA12/1010などの脂肪族ポリアミド、又は半芳香族ポリアミド、特にPA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T又はPA MPMDT/10T、又はPA BACT/10T、PEKK及びPEI又はそれらの混合物から選択される。
【0239】
有利には、ガラス繊維を含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PA11/1010又はPA12/1010などの脂肪族ポリアミド、又は半芳香族ポリアミド、特にPA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、又はPA BACT/10T、PEKK及びPEI又はそれらの混合物から選択される。
【0240】
有利には、この含浸された、炭素繊維又はガラス繊維で形成された繊維状材料中の繊維の含量は、45体積%~65体積%、好ましくは50体積%~60体積%、特に54体積%~60体積%である。
【0241】
以下の表Iは、1つ以上の溝のない円筒状の圧縮ローラを有する、炭素繊維又はガラス繊維で作製されるロービングのための流動床を含むタンク内で行われる本発明の方法による有利な実施形態をまとめる。
【0242】
【0243】
PEKK又はPEIを含む実施形態では、PEKKはPEIとのブレンド状態であってもよく、PEiはPEKKとのブレンド状態で上記の比率で存在してもよい。
【0244】
有利には、2つの圧縮ローラが流動床に存在する上記で定義した表Iの組成物では、ローラR2はローラR1よりもタンクの底部に対して高く、特にH2-H1は1cm~30cm、好ましくは1~10cm、特に1cm~3cm、特に約2cmであり、角度α2は0~90°、特に25~45°、特に25°~35°であり、ロービングはR2の頂部を通過する。
【0245】
【0246】
有利には、2つの圧縮ローラが流動床に存在する上で定義した表Iの組成物では、ローラR2はローラR1よりもタンクの底部に対して高く、特にH2-H1は1cm~30cm、特に約2cmであり、角度α2は90~180℃、特に115~135°、特に115°~125°であり、ロービングはR2の下を通過する。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【
図1】本発明による予備含浸された繊維状材料の製造方法を実施するためのユニットの図を示す。
【
図2】
図1のユニットで使用されるカレンダの2つの構成ローラの断面図を示す。
【
図3】高さ調節可能な張力装置(82)を有する流動床(22)を含むタンク(20)の詳細を示す。タンクへの入口の縁部には回転式ローラ83aが設けられ、その上をロービング81aが走行し、回転式ローラ83bがタンク出口の縁部に設けられ、その上をローラ81bが走行する。
【
図4】単一の円筒状の圧縮ローラが存在し、角度α
1を示す流動床(22)を含むタンク(20)を有する単一の圧縮ローラを示す。 繊維上の矢印は、繊維の走行方向を示す。
【
図5】これらに限定されないが、2つの圧縮ローラR
1及びR
2を有する実施形態を記載しており、R
1はR
2に先行し、タンク(20)は流動床(22)を含み、ここで2つの円筒状の圧縮ローラがタンク底部に対して異なるレベルであり(高さH
2のR
2は高さH
1のR
1を超える。)、角度α
1及びα
2を示す。 繊維ロービング上の矢印は、ロービングの走行方向を示す。
【
図6】2つの圧縮ローラR
1及びR
2が互いに同じレベルで並んでおり、角度α
1を示す円筒状であり、角度α
2=0°を示し、ロービングが2つのローラの間を通過する流動床(22)を含むタンク(20)を有する例示的な実施形態を示す。
【
図7】2つの圧縮ローラR
1及びR
2が互いに同じレベルで並んでおり、角度α
1を示す円筒状であり、角度α
2=90°を示し、ロービングがR
2の下を通過する流動床(22)を含むタンク(20)を有する例示的な実施形態を示す。
【
図8】異なるレベルでR
1がR
2に先行する2つの圧縮ローラR
1及びR
2が存在し、角度α
1及びα
2を示し、ロービングがR
2の下を通過する流動床(22)を含むタンク(20)の例示的な実施形態を示す。
【
図9】タンクが、R
1がR
2に先行する2つの圧縮ローラR
1及びR
2、及び圧縮ローラR
3を有する流動床(22)を含み、角度α
1、α
2及びα
3を示すタンク(20)を有する実施形態を示す。
【
図10】WO2015/121583(カレンダリング後)に記載されている方法に従って、D50=100μmのPA11/6T/10Tポリアミド粉末で含浸された炭素繊維(1/4’’Toray 12K T700S M0E炭素繊維)ロービングの断面図の走査型電子顕微鏡で撮影した写真を示す。 WO2015/121583に記載の方法は、白い矢印によって描かれた予備含浸ロービングのいくつかの位置での均質性の欠如を示す。
【
図11】本発明の方法(カレンダ加工の後の実施例2に記載される。)に従って、D50=115μmのPA MPMDT/10Tポリアミド粉末で含浸された1/4’’の炭素繊維(Toray 12K T700S M0E繊維)ロービングの断面図の走査型電子顕微鏡で撮影した写真を示す。 画像分析は、テープの縁部を除いて、5%の気孔率を与える。
【
図12】本発明の方法に従って(カレンダ加工の後の実施例2に記載される。)、D50=132μmのPA 11/6T/10Tポリアミド粉末で含浸された1/4’’の炭素繊維(Toray 12K T700繊維)ロービングの断面図の走査型電子顕微鏡で撮影した写真を示す。
【
図13】本発明の方法に従って(カレンダ加工の前の実施例3に記載される)D50=120μmのPA11ポリアミド粉末で含浸された3B HiPer Tex 2400 texガラス繊維ロービングの断面図の走査型電子顕微鏡で撮影した写真を示す。
【
図14】本発明の方法による(カレンダリング加工後の実施例3に記載される)D50=132μmのPA11/6T/10Tポリアミド粉末を含浸させた3B HiPer Tex 2400 texガラス繊維ロービングの断面図の走査型電子顕微鏡で撮影された写真を示す。
【
図15】本発明の方法による(カレンダ加工後の実施例4に記載される)D50=115μmのMPMDT/10Tポリアミド粉末で含浸された1/2’’の炭素繊維(SGLグレードAA、50K)ロービングの断面図の双眼顕微鏡で撮影された写真を示す 。
【
図16】空気の流量の関数としての流動化を示す。流動床に適用される空気の流量が最小流動化流量(Umf)と最小発泡流量(Umf)との間になければならない。
【
図17】本発明の方法(実施例3)との比較例として溶融経路によって得られたPA11(D50=15~34μm)による亜麻繊維の含浸を示す。
【
図18】本発明の方法(実施例3)との比較例としての溶融経路によって得られたMPMDT/10T(D50=115μm)によるToray T700 S 24K 60E炭素繊維の含浸を示す。 以下の実施例は、本発明の範囲を限定的に説明するものではない。
【実施例0248】
[実施例1]
(比較例):
WO2015/121583に記載されているように、12K炭素繊維ロービングをPA11/6T/10Tで含浸させた。
【0249】
D50=100μM。
【0250】
結果:
結果は
図10に示されており、白い矢印によって描かれた予備含浸ロービングのいくつかの位置での均質性の欠如を示す。
【0251】
[実施例2]
単一のローラを有する流動床中のポリアミド粉末で(炭素繊維)繊維状材料を含浸するための一般的手順
以下の手順を行った:
-タンク内の円筒状圧縮ローラ(L=500mm、W=500mm、H=600mm)、直径25mm。
-粉末中に0.3秒の滞留時間
-25°の角度α1
-1/4’’のToray、12K T700S M0E炭素繊維ロービングの約100%のファンアウト(すなわち、幅を2倍したもの)
-MPMDT/10T粉末についてD50=115μm(D10=49μm、D90=207μm)。
11/6T/10T粉末についてD50=132μm(D10=72μm及びD90=225μm)。
-固定式ローラを備えたタンクの縁部。
【0252】
繊維状材料(1/4’’炭素繊維ロービング)は、この手順に従って様々なポリアミド(上記で定義した粒径のMPMDT/10T及びPA11/6T/10T)によって予備含浸されたものであり、
図11及び12に示されている。
図11はMPMDT/10Tに対応し、
図12はPA11/6T/10Tに対応する。
【0253】
これは、圧縮ローラを有する流動床中の乾燥粉末による含浸方法及び粉末中の滞留時間の制御の有効性を実証する。
【0254】
[実施例3]
単一のローラを有する流動床中の(PA11及び11/6T/10T)ポリアミド粉末で(ガラス繊維)繊維状材料を含浸するための一般的手順
以下の手順を行った:
-直径6mmのタンク内の固定式圧縮ローラ
-約5秒の滞留時間
-45°の角度α1
-120μmのPA11粉末のD50(D10=60μm及びD90=210μm)。
PA11/6T/10T粉末のD50=132μm(D10=60μm及びD90=210μm)。
-固定式ローラを備えたタンクの縁部。
【0255】
繊維状材料(2400texガラス繊維ロービング)は、この手順に従って様々なポリアミド(PA11及び11/6T/10T)によって予備含浸されたものであり、
図13及び14に示されている。
図13はPA11に対応し、
図14はPA11/6T/10Tに対応する。
【0256】
これは、圧縮ローラを有する流動床中の乾燥粉末による含浸方法及び粉末中の滞留時間の制御の有効性を実証する。
【0257】
[実施例4]
2つのローラを有する流動床中のポリアミド粉末で繊維状材料を含浸させる一般的手順
-両方とも直径25mmを有する、タンク(L=500mm、W=500、H=600)内の高さの差H
2-H
1=2cmを有する2つの円筒状圧縮ローラ。約1cmのローラ間の距離(
図5に示すように)
-粉末中に2秒の滞留時間
-角度α
1が25°、角度α
2が30°
-1/2’’のSGLグレードAA炭素繊維ロービングについて約100%のファンアウト(すなわち、幅を2倍したもの)
-粉末のD50は98.9μm。
-回転式ローラを備えたタンクの縁部。
【0258】
MPMDT/10Tポリアミドにより予備含浸された繊維状材料(1/2’’炭素繊維ロービング)は、この手順に従って調製したものであり、
図15(双眼顕微鏡図)に示される。
【0259】
含浸度は40%である。
【0260】
これは、2つの圧縮ローラを有する流動床中の乾燥粉末による含浸方法及び粉末中の滞留時間の制御の有効性を実証する。
【0261】
[実施例5]
気孔率の画像解析による決定
気孔は、MPMDT/10T)により含浸した1/2’’の炭素繊維ロービング上の画像分析によって決定した。それは5%である。
【0262】
[実施例6]
気孔率の決定-理論密度と実験密度との間の相対偏差(一般的方法)
a)必要なデータは次の通りである:
-熱可塑性マトリックスの密度
-繊維の密度
-強化材の坪量:
・例えば(単一のロービングから得られる)1/4インチのテープの場合の線密度(g/m)
・例えばより広いテープ又は織布の場合の表面密度(g/m2)
b)実施される測定:
結果が研究材料を代表するように、試料数は少なくとも30でなければならない。
【0263】
実施される測定は次の通りである:
-採取された試料のサイズ:
・長さ(線密度が分かっている場合)。
・長さ及び幅(表面密度が分かっている場合)
-採取した試料の実験密度:
・大気中及び水中の質量の測定。
-繊維の含量の測定は、ISO1172:1999に従って又は例えば文献B.Benzler,Applikationslabor,Mettler Toledo,Giesen,UserCom 1/2001において決定されるように熱重量分析(TGA)によって決定される。
【0264】
炭素繊維含量の測定は、ISO14127:2008に従って決定されてもよい。
【0265】
繊維の理論重量含量の決定:
a)繊維の理論重量含量の決定:
【0266】
【数1】
ここで
m
lはテープの線密度、
Lは試料の長さ、及び
Me
空気は大気中で測定した試料の質量。
【0267】
繊維の重量含量の変動は、強化材中の繊維の量の変動を考慮に入れずに、マトリックスの含量の変化に直接関連すると考えられる。
【0268】
b)理論密度の決定:
【0269】
【数2】
ここでd
m及びd
fはマトリックス及び繊維のそれぞれの密度である。
【0270】
このようにして計算された理論密度は、試料に気孔がない場合はアクセス可能な密度である。
【0271】
c)気孔の評価:
この場合気孔は、理論密度と実験密度との間の相対偏差である。