(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031659
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ゲムシタビン-プロドラッグを含む製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7068 20060101AFI20220215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20220215BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220215BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220215BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P35/00
A61P43/00 123
A61K47/54
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176770
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2020012388の分割
【原出願日】2015-06-25
(31)【優先権主張番号】1411253.6
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2050/MUM/2014
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】1417646.5
(32)【優先日】2014-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516375207
【氏名又は名称】ヌカナ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ケンノヴィン,ゴードン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌治療薬として有用なゲムシタビンのプロドラッグであるゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの臨床有効量を静脈内投与可能で、かつ安定な新規医薬製剤を提供する。
【解決手段】ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、非プロトン性極性溶媒、水性媒体及び2種以上の可溶化剤を含む医薬製剤を提供する。前記非プロトン性極性溶媒はジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びN-メチルピロリドン(NMP)から選択されることが好ましい。前記水性媒体は生理食塩水、グルコース溶液又は注射用水であることが好ましい。前記2種以上の可溶化剤はポリエトキシ化ヒマシ油及びポリエトキシ化ソルビタンモノオレエートを含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
非プロトン性極性溶媒、および
任意選択で、1種または複数の薬学的に許容し得る賦形剤
を含む医薬製剤。
【請求項2】
前記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシ
ド(DMSO)、およびN-メチルピロリドン(NMP)から選択される、請求項1に記
載の製剤。
【請求項3】
前記非プロトン性極性溶媒がDMAである、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
さらに水性媒体を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記水性媒体が生理食塩水である、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記水性媒体がWFIである、請求項4に記載の製剤。
【請求項7】
さらに可溶化剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
2種以上の可溶化剤を含む、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記または各可溶化剤が、ポリエトキシ化脂肪酸またはその混合物である、請求項7ま
たは請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを100m
g~300mg/mL、任意選択でリン酸ジアステレオ異性体の混合物の形態において
含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
DMAを20体積%~80体積%、
可溶化剤または複数の可溶化剤を30体積%~80体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを50mg
~150mg/mL、任意選択で実質的にジアステレオマーとして純粋な形態の(S)-
リン酸エピマーの形態において
含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
DMAを20体積%~80体積%、
第1の可溶化剤を20体積%~60体積%、
第2の可溶化剤を10体積%~40体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを50mg
~150mg/mL
含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
DMAを0.5体積%~7.5体積%、
可溶化剤または複数の可溶化剤を0.5体積%~7.5体積%、
水性媒体を85体積%~99体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを2.0m
g~12.0mg/mL、任意選択で実質的にジアステレオマーとして純粋な形態の(S
)-リン酸エピマーの形態において
含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
静脈内投与用の、請求項1から10、13、および14のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
水性媒体で希釈して静脈内投与用の製剤を形成するための、請求項1から4、7から9
、11、および12のいずれかに記載の製剤。
【請求項16】
医療用の、請求項1から15のいずれかに記載の製剤。
【請求項17】
癌処置用の、請求項1から15のいずれかに記載の製剤。
【請求項18】
癌処置の方法であって、それを必要とする対象に、
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、および
非プロトン性極性溶媒
を含む医薬製剤を投与するステップを含む方法。
【請求項19】
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートおよび非
プロトン性極性溶媒を含む溶液を水性媒体で希釈して点滴または注射用の製剤を用意する
ステップ、ならびに
点滴または注射用の前記製剤を、前記対象に点滴または注射で投与するステップ
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与ステップが、前記希釈ステップの48時間後までに行われる、請求項19に記
載の方法。
【請求項21】
点滴または注射用のゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホ
スフェートの医薬製剤を調製する方法であって、
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートおよび非
プロトン性極性溶媒を含む溶液を水性媒体で希釈して点滴または注射用の前記製剤を用意
するステップ
を含む方法。
【請求項22】
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの医薬製
剤を調製する方法であって、
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを非プロ
トン性極性溶媒に溶解し、溶液を形成するステップ、
さらに、1種または複数の医薬品賦形剤を前記溶液に加え、ゲムシタビン-[フェニル
-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの医薬製剤を形成するステップ
を含む方法。
【請求項23】
前記非プロトン性極性溶媒がDMAである、請求項18から22のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項24】
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%
含む第1の製剤、ならびに
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを10
0mg~400mg(例えば、100mg~300mg)/mL
含む第2の製剤
を含むキット。
【請求項25】
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを10
0mg~400mg(例えば、100mg~300mg)/mL
含む第1の製剤、ならびに
DMAを20体積%~80体積%、
第1の可溶化剤を20体積%~60体積%、
第2の可溶化剤を10体積%~40体積%
含む第2の製剤
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周知の癌治療薬ゲムシタビンの一リン酸誘導体であるゲムシタビン-[フェ
ニル-ベンゾキシ-L-アラニニル]-ホスフェート(化学名:2’-デオキシ-2’,
2’-ジフルオロ-D-シチジン-5’-O-[フェニル(ベンゾキシ-L-アラニニル
)]ホスフェート)の医薬製剤に関する。特に、本発明は、非プロトン性極性溶媒、好ま
しくはジメチルアセトアミド(DMA)を含む製剤に関する。これらの溶媒を含む製剤は
、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの治療
上有効な処置をもたらす。本発明の製剤は、投与直前に必要な濃度に希釈してもよい。
【背景技術】
【0002】
ゲムシタビン(1、Gemzar(登録商標)として市販)は、現時点で乳癌、非小細
胞肺癌、卵巣癌、および膵癌の処置が認可されており、膀胱癌、胆管癌、結腸直腸癌、お
よびリンパ腫などの他の様々な癌の処置に広く使用されている有効なヌクレオシド類似体
である。
【0003】
【0004】
ゲムシタビンの臨床的有用性は、多くの先天的および後天的な耐性機構によって制限さ
れている。細胞レベルでの耐性は3つの指標に依存する:(i)リン酸化部分への活性化
に必要なデオキシシチジンキナーゼのダウンレギュレーション、(ii)ヌクレオチドト
ランスポーター、特に癌細胞による取り込みに必要なhENT1の発現低下、および(i
ii)触媒酵素、特にゲムシタビンを分解するシチジン脱アミノ酵素のアップレギュレー
ション。
【0005】
国際公開第2005/012327号パンフレットには、ゲムシタビンの一連のリン酸
誘導体および関連するヌクレオシド薬物分子について記載されている。その中で、ゲムシ
タビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート(NCU-10
31;2)は、特に有効な化合物であることが確認されている。これらの化合物は、ゲム
シタビンの有用性を制限する先天的および後天的な耐性機構の大半を回避すると思われる
('Application of ProTide Technology to Gemcitabine: A Successful Approach to Ov
ercome the Key Cancer Resistance Mechanisms Leads to a New Agent (NUC-1031) in C
linical Development'; Slusarczyk et all; J. Med. Chem.; 2014, 57, 1531-1542)。
【0006】
【0007】
残念なことに、NUC-1031は脂溶性が非常に高く、したがって、難水溶性であり
(計算上:<0.1mg/mL)、そのイオン化部分、ピリミジン窒素、およびフェノー
ル性水酸基のpKa値を算出すると、非経口投与に適するpH範囲外である。塩類含有率
またはpHに関わらず、NUC-1031は本質的に非水溶性であり、これの意味すると
ころは、有効な処置のために十分な高用量で該化合物を送達するための臨床的に許容され
る方法の開発にとって深刻である。時に、NUC-1031と同程度の脂溶性を持つ薬物
分子の送達は可能であるが、許容できないレベルの疼痛を患者にもたらす場合のみである
。
【0008】
NUC-1031は、リン酸を中心としたエピマーである、2種類のジアステレオ異性
体の混合物として存在する:
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明における特定の実施形態の目的は、有効量を送達するゲムシタビン-[フェニル
-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの医薬製剤を提供することである。
【0011】
本発明における特定の実施形態の目的は、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-
L-アラニニル)]-ホスフェートの安定した医薬製剤を提供することである。静脈内投
与に適した点滴製剤は、通常30分よりも長く、48時間まで安定した状態であるべきで
ある。通常、静脈内投与のための該製剤は、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-
L-アラニニル)]-ホスフェートの析出、およびゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾ
キシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの分解のいずれについても安定した状態である
べきである。
【0012】
本発明における特定の実施形態の目的は、静脈内で有効量を送達するゲムシタビン-[
フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの医薬製剤を提供すること
である。
【0013】
本発明における特定の実施形態の目的は、末梢静脈または中心静脈ラインからのいずれ
かで投与可能なゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフ
ェートの非経口製剤を提供することである。したがって、本発明における特定の実施形態
の目的は、末梢静脈からの投与に適した重量オスモル濃度を有する製剤を提供することで
ある。
【0014】
本発明における特定の実施形態は、上記目的のいくつかまたはすべてを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によって、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
非プロトン性極性溶媒、および
任意選択で、1種または複数の薬学的に許容される添加物
を含む医薬製剤が提供される。
【0016】
前記非プロトン性極性溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシ
ド(DMSO)、およびN-メチルピロリドン(NMP)から選択してもよい。好ましく
は、該非プロトン性極性溶媒はDMAである。DMAは、検討したもののうち、最も良い
溶解性プロファイルを示す。
【0017】
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA、DMSO、またはNMP)は、医薬品グ
レードでもよい。該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は投与媒体でもよく、また
は、前記製剤は望ましい特性を提供する投与媒体で使用前に希釈してもよい。したがって
、前記製剤は点滴用であってもよく、該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)を主成
分として有してもよく、または、該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)を主成分と
して有し、点滴用であり、該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)を微量成分として
のみ有する製剤を生成するため、投与前に希釈するよう意図された製剤でもよく、または
、点滴用であり、該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)を微量成分としてのみ有し
、該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)が主成分である製剤を希釈して得られる製
剤でもよい。したがって、該非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の0
.1体積%~100体積%を占めてもよい。
【0018】
静脈内で治療上有効な量を送達するために十分な量のゲムシタビン-[フェニル-ベン
ゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを溶解する、薬学的に許容される溶媒は、極
めて少ない。該溶媒のうち、大半は安定しておらず、すなわち、ゲムシタビン-[フェニ
ル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートは溶液から析出する傾向にある場
合がある。驚くべきことに、安定した溶液をもたらす溶媒が、概して、DMA、DMSO
、およびNMPなどの非プロトン性極性溶媒であることを、本発明者らは発見した。ゲム
シタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを溶解する能
力が認められている該溶媒のうち、特定の非プロトン性極性溶媒、とりわけDMAは、特
に、その溶液を水性媒体で希釈する際、必要な量を送達するために必要な濃度で、ゲムシ
タビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを溶解した状態
に保つことが可能であることを、本発明者らは発見した。したがって、非プロトン性極性
溶媒、とりわけDMAを使用することは、他の製剤の溶媒に比して2倍有利であり、これ
によって、DMAは、驚くべきことに、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-ア
ラニニル)]-ホスフェートを実用的かつ治療上有効な形で患者に送達するための優れた
媒体と言える。
【0019】
前記ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートは
、リン酸ジアステレオ異性体の混合物として存在してもよく、または実質的にジアステレ
オマーとして純粋な形態で(S)-エピマーもしくは(R)-エピマーとして存在しても
よい。本発明で意図される「実質的にジアステレオマーとして純粋」とは、ジアステレオ
マー純度が約90%を上回ることと定義する。実質的にジアステレオ異性体として純粋な
形態で存在する場合、前記ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)
]-ホスフェートは、ジアステレオ異性体純度が95%、98%、99%、または99.
5%さえ上回ることもある。
【0020】
前記ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートは
、リン酸ジアステレオ異性体の混合物として存在してもよい。したがって、ジアステレオ
異性体の混合物としてNUC-1031を投与することによって、有効な処置をもたらす
実用的かつ経済的な方法が提供される。該2つの異性体の間に生物学的効果の差がないこ
とを示唆する臨床的根拠はない。
【0021】
あるいは、前記ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホス
フェート2は、実質的にジアステレオマーとして純粋な形態で(S)-エピマー3として
存在してもよい。該(S)-エピマーは、その(R)-エピマーに比して驚くほど顕著に
溶解性が高く、これによって、製剤上の利便性がより高く、その製剤の安定性が高く、か
つ輸液器具または中心静脈ライン内で析出するリスクが低くなる。また、希釈した製剤を
末梢静脈から投与する際、患者の不快感を減少するような方法で、該薬剤を送達すること
を可能にすることもある。
【0022】
本発明の製剤は、投与直前、すなわち、投与48時間前まで(例えば、24、12、ま
たは2時間前まで)に所定量で希釈するためのものでもよい。
【0023】
前記製剤は、さらに1種または複数の薬学的に許容される可溶化剤、例えば薬学的に許
容される非イオン性可溶化剤を含んでいてもよい。可溶化剤は界面活性剤と呼はれること
もある。例示した可溶化剤には、ポリエトキシ化脂肪酸、脂肪酸エステル、およびその混
合物が含まれる。適当な可溶化剤には、ポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、商品名Kol
liphor(登録商標)ELPで販売)、ポリエトキシ化ステアリン酸(例えば、商品
名Solutol(登録商標)またはKolliphor(登録商標)HS15で販売)
、またはポリエトキシ化(例えば、ポリオキシエチレン(20))ソルビタンモノオレエ
ート(例えば、商品名Tween(登録商標)80で販売)が含まれる。
【0024】
特定の好ましい実施形態において、前記製剤は1種類以上の薬学的に許容される可溶化
剤を含む。
【0025】
また、前記製剤は水性媒体を含んでいてもよい。水性媒体を通常含む場合、本発明の製
剤は、投与準備ができているとしてもよい。
【0026】
前記製剤は、静脈内、皮下、または筋肉内など、非経口投与用としてもよい。好ましく
は、前記製剤は静脈内投与用である。該投与は、中心静脈からまたは末梢静脈から行って
もよい。
【0027】
投与に適した製剤中のゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]
-ホスフェートの総量は、通常、250mg~3g、例えば、1g~2g、例えば、約1
.5gである。
【0028】
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の30体積%以上を占めて
もよい。したがって、前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の50
体積%以上、例えば、60体積%以上を占めてもよい。前記非プロトン性極性溶媒(例え
ば、DMA)は、前記製剤の95体積%以下、例えば、90体積%以下を占めてもよい。
また、前記製剤は水性媒体(例えば、生理食塩水)を含んでいてもよい。該水性媒体は、
前記製剤の50体積%以下、例えば、前記製剤の30体積%以下で存在してもよい。通常
、該水性媒体(例えば、生理食塩水)は、前記製剤の5体積%以上、例えば、10体積%
以上を占める。
【0029】
前記製剤の溶媒中のゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-
ホスフェート濃度は、500mg/mL以下でもよい。該濃度は、100mg/mL以上
でもよい。好ましくは、該濃度は、200mg~300mg/mL、例えば、225mg
~275mg/mL、例えば、約250mg/mLである。
【0030】
特定の好ましい製剤は、
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを10
0mg~400mg(例えば、100mg~300mg)/mL
含む。
【0031】
より好ましい製剤は、
DMAを70体積%~90体積%、
水性媒体(例えば、生理食塩水)を10体積%~30体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを20
0mg~300mg/mL
含む。
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)が主成分として存在する、前述の4つの段
落に記載された製剤は、例えば、リン酸ジアステレオ異性体の混合物の形態でゲムシタビ
ン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを投与するために使
用してもよい。それらは、実質的にジアステレオマーとして純粋な形態の(S)-リン酸
エピマーの形態でゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホス
フェートを投与するために使用することもできる。これらの段落に記載された製剤は、投
与前に希釈することなく、該製剤の投与(例えば、点滴または注射)に使用することがで
きる。それらは、中心静脈から投与してもよい。
【0032】
あるいは、これらの製剤を希釈して、末梢静脈からの投与に適した製剤を形成してもよ
い。
【0033】
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の10体積%以上、例えば
、20体積%以上を占めてもよい。したがって、前記非プロトン性極性溶媒(例えば、D
MA)は、前記製剤の80体積%以下、例えば、60体積%以下を占めてもよい。前記非
プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の40体積%以下を占めてもよい。
前記製剤は、さらに1種または複数の可溶化剤(例えば、1種または複数のポリエトキシ
化脂肪酸)を含んでいてもよい。1種または複数の該可溶化剤は、前記製剤の90体積%
以下、例えば、前記製剤の80体積%以下を占めてもよい。通常、1種または複数の該可
溶化剤は、前記製剤の30体積%以上、例えば、50体積%以上または60体積%以上を
占める。1つの好ましい製剤は、DMA:可溶化剤混合物が30%:70%の溶液として
該薬剤を含む。
【0034】
前記製剤の溶媒中のゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-
ホスフェート濃度は、200mg/mL以下、例えば、150mg/mL以下または12
0mg/mL以下でもよい。該濃度は、40mg/mL以上、例えば、60mg/mL以
上でもよい。好ましくは、該濃度は、70mg~110mg/mL、例えば、約75mg
/mLまたは約100mg/mLである。
【0035】
特定の好ましい製剤は、
DMAを20体積%~80体積%、
可溶化剤または複数の可溶化剤を30体積%~80体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを50
mg~150mg/mL
含む。また、前記製剤は、水性媒体を、例えば、1体積%~15体積%の量で含んでいて
もよい。
【0036】
特定の特に好ましい製剤は、
DMAを20体積%~80体積%、
第1の可溶化剤を20体積%~60体積%、
第2の可溶化剤を5体積%~40体積%、
水性媒体を2体積%~12体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを50m
g~150mg/mL
含む。前記第1の可溶化剤は、ポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、商品名Kolliph
or(登録商標)ELPで販売)でもよい。前記第2の可溶化剤は、ポリエトキシ化ソル
ビタンモノオレエート(例えば、商品名Tween(登録商標)80で販売)でもよい。
また、前記製剤は、水性媒体を、例えば、3体積%~15体積%で含んでいてもよい。
【0037】
前記製剤は、
DMAを50体積%~60体積%、
第1の可溶化剤を20体積%~30体積%、
第2の可溶化剤を8体積%~15体積%、
水性媒体を4体積%~10体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを75
mg~125mg/mL
で含んでいてもよい。
【0038】
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)が主成分として存在する、前述の5つの
段落に記載された製剤は、例えば、実質的にジアステレオマーとして純粋な形態の(S)
-リン酸エピマーの形態でゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)
]-ホスフェートを投与するために使用することができる。それらは、RおよびSエピマ
ーの混合物またはRエピマーを投与するために使用することもできる。これらの段落に記
載された製剤は、通常、投与前に水性媒体で希釈する。希釈後、それらは末梢静脈から投
与してもよい。
【0039】
これらの製剤は、いずれの可溶化剤も含まない製剤を希釈して形成してもよい。ゲムシ
タビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートは、特定の可溶
化剤の存在下で分解し得る。
【0040】
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の0.1体積%以上、例え
ば、0.5体積%以上または1体積%以上を占めてもよい。したがって、DMAは、前記
製剤の10体積%以下、例えば、5体積%以下または3体積%以下を占めてもよい。前記
非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)は、前記製剤の8体積%以下または2体積%以
下を占めてもよい。また、前記製剤は水性媒体(例えば、WFI)を含んでいてもよい。
該水性媒体は、前記製剤の99.5体積%以下、例えば、前記製剤の99体積%または9
8体積%以下で存在してもよい。通常、該水性媒体は、前記製剤の85体積%以上、例え
ば、90体積%以上または95体積%以上を占める。前記製剤は、さらに1種または複数
の可溶化剤(例えば、1種または複数のポリエトキシ化脂肪酸)を含んでいてもよい。1
種または複数の該可溶化剤は、前記製剤の10体積%以下、例えば、前記製剤の7.5体
積%以下、5体積%以下、または3体積%以下を占めてもよい。通常、1種または複数の
該可溶化剤は、前記製剤の0.1体積%以上、例えば、0.5体積%以上、1体積%以上
、または2体積%以上を占める。
【0041】
前記製剤の溶媒中のゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-
ホスフェートの濃度は、12.0mg/mL以下または10.0mg/mL以下、例えば
、7.0mg/mL以下または4.5mg/mLでもよい。該濃度は、1.0mg/mL
以上、例えば、2.0mg/mL以上でもよい。好ましくは、該濃度は、2.5mg~1
1mg/mL、例えば、3mg~7mg/mL、例えば、約4.5mg/mLである。
【0042】
特定の好ましい製剤は、
DMAを0.1体積%~15体積%(例えば、0.5~5体積%)、
可溶化剤または複数の可溶化剤を0.1体積%~15体積%(例えば、0.1体積%~
7.5体積%)、
水性媒体を85体積%~99体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを2.
0mg~12.0mg(例えば、2.0mg~10.0mg)/mL
含む。
【0043】
特定の特に好ましい製剤は、
DMAを0.5体積%~10体積%、
第1の可溶化剤を0.2体積%~4体積%、
第2の可溶化剤を0.1体積%~2体積%、
水性媒体を85体積%~99体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを2.
0mg~12.0mg(例えば、2.0mg~10.0mg)/mL
含む。前記第1の可溶化剤は、ポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、商品名Kolliph
or(登録商標)ELPで販売)でもよい。前記第2の可溶化剤は、ポリエトキシ化ソル
ビタンモノオレエート(例えば、商品名Tween(登録商標)80で販売)でもよい。
【0044】
前記製剤は、
DMAを0.5体積%~6体積%、
第1の可溶化剤を0.5体積%~6体積%、
第2の可溶化剤を0.2体積%~4体積%、
水性媒体を85体積%~99体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを2.
0mg~12.0mg(例えば、2.0mg~10.0mg)/mL
含む。
【0045】
前記非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)が微量成分として存在する、前述の4つ
の段落に記載された製剤は、例えば、実質的にジアステレオマーとして純粋な形態の(S
)-リン酸エピマーの形態でゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル
)]-ホスフェートを投与するために使用することができる。それらは、RおよびSエピ
マーの混合物またはRエピマーを投与するために使用することもできる。通常、これらの
段落に記載された製剤は、濃縮した非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)の製剤また
は濃縮した非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)および可溶化剤の製剤を、投与48
時間前までに前記水性媒体で希釈して調製される。得られた製剤は末梢静脈から投与して
もよい。
【0046】
本発明の製剤は、好ましくは非経口投与用であるが、本発明の特定の実施形態では、経
口投与でもよい。
【0047】
本発明の第2の態様において、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)、および
任意選択で、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬製剤が提供され、該製剤は医療用である。
【0048】
本発明の第3の態様において、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)、および
任意選択で、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬製剤が提供され、該製剤は癌処置用である。
【0049】
本発明の第4の態様において、癌処置の方法であって、それを必要とする対象に、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、
非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)、および
任意選択で、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬製剤を投与するステップを含む方法を提供する。
【0050】
前記方法は、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、非プ
ロトン性極性溶媒(例えば、DMA)、および任意選択で、1種または複数の薬学的に許
容される賦形剤を含む溶液を、水性媒体で希釈して点滴または注射用の製剤を用意するス
テップ、ならびに
点滴または注射用の該製剤を、前記対象に点滴または注射で投与するステップ
を含むことができる。
【0051】
前記方法は、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、非プ
ロトン性極性溶媒(例えば、DMA)、および任意選択で、水性媒体を含む第1の溶液を
、非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)および1種または複数の可溶化剤を含む第2
の溶液で希釈して第3の溶液を形成するステップ、
第3の溶液を水性媒体で希釈して点滴または注射用の製剤を用意するステップ、ならび
に
点滴または注射用の該製剤を、前記対象に点滴または注射で投与するステップ
を含むことができる。
【0052】
前記第2の製剤は、2種以上の可溶化剤を含んでいてもよい。通常、該第2の製剤は活
性体を含まない。
【0053】
前記または各希釈は、所定量で行ってもよい。
【0054】
前記出発溶液は、第1の態様の製剤でもよい。同様に、点滴または注射用の前記製剤は
、第1の態様の製剤でもよい。前記投与ステップは、前記希釈ステップ、例えば、第1ま
たは第2の希釈ステップ後48時間まで(例えば、12または2時間まで)に行われても
よい。
【0055】
前記癌は、膵癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、胆管
癌、腎癌、子宮頚癌、胸腺癌、原発不明の癌、リンパ腫、または白血病から選択される癌
でもよい。
【0056】
前記方法は、
中心静脈ラインからの投与器具を第1の製剤の最初の部分で洗い流すステップであって、
第1の製剤は、
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%
含む、ステップ、ならびに
第2の製剤を、該投与器具を介して患者に投与するステップであって、第2の製剤は、
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを10
0mg~400mg(例えば、100mg~300mg)/mL
含む、ステップ、ならびに
任意選択で、該投与器具を第1の製剤の次の部分で洗い流すステップ
を含んでいてもよい。通常、該第1の製剤は活性体を含まない。本発明の第5の態様にお
いて、点滴または注射用のゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)
]-ホスフェートの医薬製剤を調製する方法が提供され、該方法は、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート、非プ
ロトン性極性溶媒(例えば、DMA)、および任意選択で、1種または複数の薬学的に許
容し得る賦形剤を含む溶液を、水性媒体で希釈して点滴または注射用の前記製剤を用意す
るステップ
を含む。
【0057】
前記希釈は、所定量で行ってもよい。
【0058】
前記出発溶液は、第1の態様の製剤でもよい。同様に、点滴または注射用の前記製剤は
、第1の態様の製剤でもよい。前記投与ステップは、前記希釈ステップ後48時間まで(
例えば、12または2時間まで)に行われてもよい。
【0059】
前記水性媒体は、生理食塩水(例えば、0.9%生理食塩水または0.45%生理食塩
水)、グルコース溶液、および注射用水(WFI)から選択されてもよい。好ましくは、
該水性媒体はWFIである。WFIの使用によって、実質的に血液と等張の製剤が提供さ
れる。
【0060】
前記水性媒体は、1種または複数の薬学的に許容される可溶化剤(界面活性剤としても
公知)、例えば、薬学的に許容される非イオン性可溶化剤を含んでいてもよい。例示的な
可溶化剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween(登録
商標)80として市販)である。
【0061】
本発明の第6の態様において、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニ
ニル)]-ホスフェートの医薬製剤を調製する方法が提供され、該方法は、非プロトン性
極性溶媒(例えば、DMA)にゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル
)]-ホスフェートを溶解して溶液を形成するステップ、1種または複数の追加の医薬品
賦形剤を該溶液に加えてゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニル)]-
ホスフェートの医薬製剤を形成するステップを含む。
【0062】
より効率的な工程は、非プロトン性極性溶媒(例えば、DMA)に前記ゲムシタビン-
[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを前もって溶解すること
から始め、次に前記必要な賦形剤、例えば、可溶化剤を加えることによって得られること
を本発明者らは発見した。
【0063】
1種または複数の前記医薬品賦形剤は、可溶化剤を含んでいてもよい。
【0064】
本発明の第7の態様において、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニ
ル)]-(S)-ホスフェート、または薬学的に許容されるその塩もしくはその溶媒和物
、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤が提供される。好ま
しくは、該ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホ
スフェートは、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態である。
【0065】
前記製剤は、静脈内、皮下、または筋肉内など、非経口投与用としてもよい。好ましく
は、前記製剤は静脈内投与用である。
【0066】
前記製剤は、任意選択で、さらに極性有機溶媒を含む水性製剤でもよい。非経口(例え
ば、静脈内)投与の場合、好ましくは、該製剤は極性有機溶媒も含む。該製剤は、DMS
OまたはNMPを含んでいてもよい。
【0067】
また、前記製剤はシクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0068】
本発明の第8の態様において、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニニ
ル)]-(R)-ホスフェート、または薬学的に許容されるその塩もしくはその溶媒和物
、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤が提供される。好ま
しくは、該ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)-ホ
スフェートは、実質的にジアステレオ異性体として純粋な形態である。
【0069】
本発明の第9の態様において、キットが提供され、該キットは、
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%
含む第1の製剤、ならびに
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを10
0mg~400mg(例えば、100mg~300mg)/mL
含む第2の製剤
を含む。
【0070】
通常、前記第1の製剤は活性体を含まない。したがって、通常、該製剤はゲムシタビン
-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを含まない。該第1の
製剤は、2つの個別容器または1つの容器に入れて提供してもよい。
【0071】
本発明の第9の態様のキットは、中心静脈ラインからゲムシタビン-[フェニル-ベン
ゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを静脈内投与するために有用である。前記第
2の製剤の投与前に、中心静脈ラインを前記第1の製剤で洗い流す。これによって、該活
性製剤と水性媒体との直接的な接触を避けることで(例えば、溶液を洗い流す生理食塩水
)、静脈内投与装置、すなわち、中心静脈ラインの中または入口部におけるゲムシタビン
-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの析出リスクを軽減す
る。該第2の製剤の投与後、中心静脈ラインをさらに該第1の製剤で洗い流してもよい。
これによって、析出をさらに予防する。
【0072】
本発明の第10の態様において、キットが提供され、該キットは、
DMAを30体積%~95体積%、
水性媒体を5体積%~50体積%、および
ゲムシタビン[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを100
mg~400mg(例えば、100mg~300mg)/mL
含む第1の製剤、ならびに
DMAを20体積%~80体積%、
第1の可溶化剤を20体積%~60体積%、および
第2の可溶化剤を10体積%~40体積%
含む第2の製剤
を含む。
【0073】
通常、前記第2の製剤はいかなる活性体も含まない。前記キットは、末梢投与に適した
製剤の調製に有用である。前記第1の製剤は、投与48時間前まで、例えば、24時間前
までに該第2の製剤で希釈して第3の製剤を形成する。第3の製剤は、投与前、水性媒体
で望ましい濃度までさらに希釈して、点滴または注射として患者に投与するために使用さ
れる製剤を形成する。ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-
ホスフェートの析出に関して安定した末梢投与用の製剤を得るためには、通常、可溶化剤
を含むことが望ましい。しかし、該ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラニ
ニル)]-ホスフェートは、このような可溶化剤の存在下で分解する傾向があることがあ
る。したがって、本発明の特定の実施形態において、2段階の希釈方法は、末梢投与用の
製剤を得る望ましい手段である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本明細書全体を通して、S-エピマーまたはS-ジアステレオ異性体という用語は、ゲ
ムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェートを
意味する。同様に、本明細書全体を通して、R-エピマーまたはR-ジアステレオ異性体
という用語は、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-(R)
-ホスフェートを意味する。
【0075】
「生理食塩水」という用語は、塩化ナトリウムの水溶液を意味するよう意図されている
。本発明の生理食塩液は、通常、殺菌されており、通常、非経口投与での使用に適した濃
度である。適当な濃度は、2w/v%までまたは1w/v%までである。重量オスモル濃
度を最適化するため、様々な濃度、例えば、0.9%または0.45%の生理食塩水を本
発明の製剤に使用することができる。
【0076】
本発明の製剤は、人体の処置に使用することができる。これらは、動物体の処置に使用
してもよい。特に、本発明の化合物は、家畜などの市販の動物を処置するために使用する
ことができる。あるいは、本発明の化合物は、ネコ、イヌなどのペット動物を処置するた
めに使用することができる。
【0077】
本発明の製剤中の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で入手、保管、および/また
は投与されてもよい。適当な薬学的に許容される塩には、以下に限定されないが、塩酸、
硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に
許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロ
キシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸
、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼ
ンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸
、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、
アスコルビン酸、および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれる。適当な
塩基の塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム、アル
ギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオールアミン、グリシン
、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン
、および亜鉛の塩が含まれる。また、酸および塩基の半塩、例えば、半硫酸塩、半シュウ
酸塩、および半カルシウム塩を形成してもよい。特定の実施形態において、特にS-エピ
マーに適用される実施形態において、該化合物は塩酸塩または半シュウ酸塩の形態である
。好ましくは、本発明の化合物は塩の形態ではなく、すなわち、それらは遊離塩基/遊離
酸の形態である。
【0078】
本発明の上述の製剤の投与量は、当然ながら、使用する化合物、正確な投与様式、望ま
しい処置、および適応となる疾患によって変更されることがある。本発明の化合物の投与
量レベル、投与頻度、および処置期間は、製剤ならびに患者の臨床指標、年齢、および合
併する医学的状態によって異なることが予想される。本発明の化合物の処置目的のための
投与サイズは、周知の医学の原則に従い、状態の性質および重症度、動物または患者の年
齢および性別、ならびに投与経路に従って変更することが当然ながらある。
【0079】
通常、医薬製剤は組成物の形態をとっており、その中で、活性化合物または薬学的に許
容されるその塩は、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と併用される
。本発明の製剤中のこのような薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体の
1つは、前記非プロトン性極性溶媒である。適当な医薬製剤の選択および調合のための従
来の手順は、例えば、"Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs", M. E
. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0080】
前記製剤は、局所適用(例えば、皮膚または膀胱)、経口投与、または非経口投与(例
えば、静脈内投与)に適することもある。
【0081】
本発明の医薬製剤に使用される任意の溶媒は、医薬品グレードであるべきであり、これ
は、それらがヒトへの投与(例えば、静脈内投与)に適した不純物プロファイルを有する
ことを意味する。
【0082】
経口投与用の、本発明の製剤は、アジュバントまたは担体、例えば、乳糖、ショ糖、ソ
ルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、トウモロコシデン
プン、もしくはアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチンもしくは
ポリビニルピロリドン;および/または滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ス
テアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ワックス、パラフィンなど、と混合し
た活性化合物を含んでいてもよく、その後、圧縮して錠剤とした。コーティング錠が必要
とされる場合、上述の通りに調製したコアを、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルク
、および二酸化チタンを含んでいてもよい濃縮糖溶液でコーティングしてもよい。あるい
は、該錠剤は、易揮発性有機溶媒に溶解した適当なポリマーでコーティングしてもよい。
【0083】
軟ゼラチンカプセルの調製のため、前記活性化合物は、例えば、植物油またはポリエチ
レングリコールと混合してもよい。硬ゼラチンカプセルは、上述の錠剤用の賦形剤のいず
れかを用いた、該化合物の顆粒を含んでいてもよい。また、該活性化合物の液体または半
固体の製剤を硬ゼラチンカプセルに充填してもよい。
【0084】
経口適用のための液状調製物は、シロップ剤または懸濁剤、例えば、本発明の化合物を
含み、残部は(the balance being)糖、ならびにエタノール、水、グリセロール、およ
びプロピレングリコールの混合物である溶液の形態でもよい。任意選択で、該液状調製物
は、着色剤、香料、甘味剤(サッカリンなど)、保存剤、および/または増粘剤としてカ
ルボキシメチルセルロース、または当業者に公知の他の賦形剤を含んでいてもよい。
【0085】
しかし、好ましくは、本発明の製剤は、非経口(例えば、静脈内)投与用、または非経
口(例えば、静脈内)投与用の製剤を形成するための希釈用である。非経口(例えば、静
脈内)投与として、前記活性化合物は、殺菌した水溶液または油溶液として投与してもよ
い。好ましくは、該活性化合物は殺菌した水溶液として投与する。
【0086】
本発明の前記医薬組成物は、好ましくは、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L
-アラニニル)]-ホスフェートを0.05~99%w(重量パーセント)、より好まし
くは、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを
0.05~80%w、なおより好ましくは、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L
-アラニニル)]-ホスフェートを0.10~70%w、また、さらにより好ましくは、
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートを0.1
0~50%wで含んでおり、すべての重量パーセントは全組成物に基づく。
【0087】
シクロデキストリン類は、薬物送達における広い用途が見出されていることが認められ
ている(Rasheed et al, Sci. Pharm., 2008, 76, 567-598)。シクロデキストリン類は
、環状オリゴ糖の1種である。それらは、薬物分子を包接する「分子ケージ(molecular
cage)」として働き、溶解度など、それらの薬物分子の性質を変える。シクロデキストリ
ン類は、(α-1,4)-結合したα-D-グルコピラノース単位で構成されている。シ
クロデキストリン類は、6、7、または8個のグルコピラノース単位を含むことがある(
それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリンとされている)。医薬製剤に用い
るシクロデキストリン類は、β-シクロデキストリンであることが多い。そのペンダント
水酸基は、C1~C6置換または非置換のアルキル基でアルキル化することもできる。シ
クロデキストリン類の例は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シ
クロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(ΗΡ-β-CD
)、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム塩、部分的メチル化β-シ
クロデキストリンである。本発明の製剤は、少なくとも1種のシクロデキストリンを含ん
でいてもよい。
【0088】
本発明は、1つまたは複数の原子を、通常自然界で認められる主な同位体の原子質量ま
たは質量数とは、原子質量または質量数は異なるが、同じ原子番号を持つ原子で置き換え
た、同位体で標識された形態の薬学的に許容されるすべての化合物の製剤も含む。
【0089】
本発明の化合物中に含めるのに適した同位体の例には、2Hおよび3Hなどの水素、1
1C、13C、および14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、18Fなどのフッ素、1
23Iおよび125Iなどのヨウ素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17O、
および18Oなどの酸素、32Pなどのリン、ならびに35Sなどの硫黄の同位体が含ま
れる。
【0090】
特定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を組み入れた同位体標識化合物は、薬
物および/または基質の組織分布研究に有用である。該放射性同位体であるトリチウム、
すなわち3H、および炭素-14、すなわち14Cは、組入れの容易さおよび検出手段の
迅速さからみて、この目的のために特に有用である。
【0091】
重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体を用いた置換は、より高い代謝安定性から
得られる特定の治療上の利点、例えば、in vivo半減期の延長または投与必要量の
減少をもたらすことがあり、このため、状況によって好ましい場合がある。
【0092】
同位体標識化合物は、一般に、過去に用いた同位体非標識試薬の代わりに適切な同位体
標識試薬を用いて、当業者に公知の従来の技術または記載されているものに類似の工程に
よって調製できる。
【0093】
癌、リンパ腫、または白血病の処置に用いる処置法または製剤は、本発明の製剤に加え
、従来の手術または放射線療法または化学療法を伴ってもよい。該化学療法には、1種ま
たは複数の他の活性薬剤の投与が含まれていてもよい。
【0094】
本発明の処置法の一環として追加の活性薬剤を投与する、このような併用療法は、該処
置の各構成成分を、同時に、連続して、または個別に投与する方法によって行われてもよ
い。このような組合せ製品には、上述の治療上有効な投与量の範囲内で本発明の化合物、
および承認されている投与量の範囲内で1種または複数の他の薬学的に活性な薬剤が用い
られる。
【0095】
したがって、本発明の医薬製剤は別の活性薬剤を含んでいてもよい。
【0096】
前記1種または複数の他の活性薬剤は、下記の抗腫瘍剤の分類中の1種または複数でも
よい:
(i)抗増殖薬/抗悪性腫瘍薬およびその組合せであり、アルキル化剤(例えば、シクロ
ホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ベンダムスチン、メルファラン、クロラムブ
シル、ブーサルファン(busulphan)、テモゾロミド(temozolamide)、およびニトロソ
尿素);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビンおよび5-フルオロウラシルとテガフールと
いったフルオロピリミジン類などの葉酸拮抗剤、ラルチトレキセド、メトトレキサート、
ペメトレキセド、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシウレアなど);抗生物質(例
えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビ
シン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、およびミトラマイシンと
いったアントラサイクリン系);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラス
チン、ビンデシン、およびビノレルビンといったビンカアルカロイド類、ならびにタキソ
ールおよびタキソテールといったタキソイド類、ならびにポロキナーゼ阻害剤);プロテ
アソーム阻害剤、例えば、カルフィルゾミブおよびボルテゾミブ;インターフェロン療法
;およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシドといったエピポ
ドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカン、ミトキサントロン、およびカンプトテ
シン)など、
(ii)細胞増殖抑制剤であり、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベス
トラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびイオドキシフェン
(iodoxyfene))、抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド
、および酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例え
ば、ゴセレリン、リュープロレリン、およびブセレリン)、プロゲストゲン剤(例えば、
酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール
、ボロゾール(vorazole)、およびエキセメスタン)、およびフィナステリドなどの5α
-還元酵素の阻害剤など、
(iii)抗侵襲剤、例えば、ダサチニブおよびボスチニブ(SKI-606)、ならび
にメタロプロテイナーゼ阻害剤、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベータ受容体機能
の阻害剤、またはヘパラナーゼに対する抗体、
(iv)成長因子機能の阻害剤:例えば、成長因子抗体および成長因子受容体抗体を含む
阻害剤、例えば、抗erbB2抗体であるトラスツズマブ[ハーセプチン(商標)]、抗
EGFR抗体であるパニツムマブ、抗erbB1抗体であるセツキシマブ、チロシンキナ
ーゼ阻害剤、例えば、上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロ
チニブ、および6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-
(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(CI1033)などのEGF
Rファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブなどのerbB2チロシンキナーゼ阻
害剤);肝細胞成長因子ファミリーの阻害剤;インスリン成長因子ファミリーの阻害剤;
細胞アポトーシス制御蛋白の調節因子(例えば、Bcl-2阻害剤);イマチニブおよび
/またはニロチニブ(AMN107)などの血小板由来成長因子ファミリーの阻害剤;セ
リン/スレオニンキナーゼの阻害剤(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤な
どのRas/Rafシグナル伝達阻害剤、例えば、ソラフェニブ、チピファルニブ(tipi
farnib)、およびロナファルニブ(lonafarnib))、MEKおよび/またはAKTキナー
ゼを介した細胞シグナル伝達の阻害剤、c-kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、PI
3キナーゼ阻害剤、Plt3キナーゼ阻害剤、CSF-1Rキナーゼ阻害剤、IGF受容
体キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤およびCDK2および/またはCDK4阻害
剤などのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、
(v)血管新生阻害剤であり、血管内皮成長因子の作用を阻害するもの[例えば、抗血管
内皮細胞成長因子抗体であるベバシズマブ(アバスチン(商標));サリドマイド;レナ
リドミド;および例えば、バンデタニブ、バタラニブ、スニチニブ、アキシチニブ、およ
びパゾパニブなどのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤など、
(vi)遺伝子療法を用いたアプローチ、例えば、異常なp53遺伝子または異常なBR
CA1もしくはBRCA2などの異常な遺伝子を置き換えるアプローチを含む、
(vii)免疫療法を用いたアプローチ、例えば、アレムツズマブ、リツキシマブ、イブ
リツモマブチウキセタン(ゼヴァリン(登録商標))、およびオファツムマブなどの抗体
療法;インターフェロンαなどのインターフェロン類;IL-2(アルデスロイキン)な
どのインターロイキン類;インターロイキン阻害剤、例えば、IRAK4阻害剤;HPV
ワクチンなどの予防および処置ワクチンを含む癌ワクチン、例えば、ガーダシル、サーバ
リックス、オンコファージ、およびシプリューセル-T(プロベンジ);およびtoll
様受容体調節因子、例えば、TLR-7またはTLR-9アゴニストを含む、
(viii)細胞毒性薬、例えば、フルダラビン(fludaribine)(フルダラ)、クラド
リビン、ペントスタチン(ニペント(商標))、
(ix)ステロイド剤であり、糖質コルチコイドおよび鉱質コルチコイドを含む副腎皮質
ステロイド剤など、例えば、アルクロメタゾン(aclometasone)、ジプロピオン酸アクロ
メタゾン(aclometasone dipropionate)、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタ
ゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リ
ン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾン、酪酸ク
ロベタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、クロプレドノール、コルチゾン、酢酸コルチ
ゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン(deoxycortone)、デソニド、デスオキシメタ
ゾン、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、イソニコチン酸デキサメタゾ
ン、ジフルオロコルトロン(difluorocortolone)、フルクロロロン(fluclorolone)、
フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノ
ニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン(fluorocortisone)、フルオロコル
トロン、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、フルオロメトロン、
フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン(fluprednidene acetate)、フルランドレノ
ロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、酢
酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピ
オン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、イコメタゾン(icomethasone)、イ
コメタゾンエンブテート(icomethasone enbutate)、メプレドニゾン、メチルプレドニ
ゾロン、モメタゾン パラメサゾン、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、プレドニカ
ルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール、ピバル酸チキソコルトー
ル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、お
よびその各薬学的に許容される誘導体。ステロイド剤を組み合わせて用いてもよく、例え
ば、本段落に記載の2種以上のステロイド剤の組合せ、
(x)標的療法、例えば、PI3Kd阻害剤、例えば、イデラリシブおよびペリホシン;
または、PD-1、PD-L1、およびCAR Tを阻害する化合物。
【0097】
また、前記1種または複数の他の活性薬剤は抗生剤でもよい。
【0098】
例示的な例として、ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-
ホスフェートのジアステレオマー混合物は、国際公開第2005/012327号パンフ
レットに記載された、または'Application of ProTide Technology to Gemcitabine: A S
uccessful Approach to Overcome th Key Cancer Resistance Mechanisms Leads to a Ne
w Agent (NUC-1031) in Clinical Development'; Slusarczyk et all; J. Med. Chem. ;
2014, 57, 1531 - 1542に記載された合成方法に従って調製することができる。
【0099】
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェートの(R
)および(S)異性体は、下記条件下のHPLCによって分離することができる:
装置:DAD検出器付きAgilent1200(商標)シリーズ
流量:1.0mL/分
カラム:Chiralpak AD(商標);250×4.6mm ID(順相)
温度:室温
粒径:20μm
供給量:MeOHに溶解;10g/L
溶媒:n-ヘプタン/IPA 10~>50%IPA
(S)-エピマーは8.6分に溶出し、(R)-エピマーは10.3分に溶出する。
【0100】
前記各異性体は、下記の特性評価方法を用いて特徴付けることができる:陽子(1H)
、炭素(13C)、リン(31P)、およびフッ素(19F)のNMRスペクトルを、2
5℃でBruker Avance500分光計に記録した。スペクトルは、重水素化溶
媒のピークに自動校正され、すべての13C NMRおよび31P NMRは、プロトン
デカップリングされた。分析用カラムとしてVarian Polaris C18-A
(10μΜ)を使用し、100/0~0/100のH2O/MeOHの勾配溶出を用いて
35分間行ったHPLC分析によって、最終的な化合物の純度は、95%を上回ることが
実証された。該HPLC分析は、Varian Prostar(LC Worksta
tion-Varian prostar335LC検出器)によって行われた。
2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-D-シチジン-5’-O-[フェニル(ベン
ジルオキシ-L-アラニニル)]-(S)-ホスフェート3
(ES+) m/z, 実測値: (M + Na+) 603.14. C25H27F2N4O8NaP 計算値: (M+) 580.47.
31P NMR (202 MHz, MeOD): δΡ 3.66
1H NMR (500 MHz, MeOD): δΗ 7.58 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-6), 7.38-7.32 (m, 7H, Ar
H), 7.26-7.20 (m, 3H, ArH), 6.24 (t, J = 7.5 Hz, 1H, H-1'), 5.84 (d, J = 7.5 Hz,
1H, H-5), 5.20 (AB系, JAB= 12.0 Hz, 2H, OCH2Ph), 4.46-4.43 (m, 1H, H-5'), 4.36-
4.31 (m, 1H, H-5'), 4.25-4.19 (m, 1H, H-3'), 4.07-4.00 (m, 2H, H-4', CHCH3), 1.3
8 (d, J = 7.2 Hz, 3H, CHCH3).
19F NMR (470 MHz, MeOD): δF- 118.0 (d, J = 241 Hz, F), - 120.24 (広幅なd, J = 2
41 Hz, F).
13C NMR (125 MHz, MeOD): δC174.61 (d, 3JC-P = 5.0 Hz, C=O, エステル), 167.63 (C
-NH2), 157.74 (C=Oベース), 152.10 (d, 2JC-P = 7.0 Hz, C-Ar), 142.40 (CH-ベース),
137.22 (C-Ar), 130.90, 129.63, 129.39, 129.32, 126.32 (CH-Ar), 124.51 (d, 1JC-F
= 257 Hz, CF2), 121.47, 121.43 (CH-Ar), 96.67 (CH-ベース), 85.92 (広幅シグナル,
C-1'), 80.31 (C-4'), 71.27 (見かけ上t, 2JC-F= 23.7 Hz, C-3'), 68.03 (OCH2Ph), 6
5.73 (d, 2JC-P= 5.30 Hz, C-5'), 51.66 (CHCH3), 20.42 (d, 3JC-p= 6.25 Hz, CHCH3).
逆相HPLCによって、100/0~0/100のH2O/MeOHを用いて35分間溶
出したところ、tR=22.53分にジアステレオ異性体のピークが1つ認められた。
2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-D-シチジン-5’-O-[フェニル(ベン
ジルオキシ-L-アラニニル)]-(R)-ホスフェート4
(ES+) m/z, 実測値: (M + Na+) 603.14. C25H27F2N4O8NaP 計算値: (M+) 580.47.
31P NMR (202 MHz, MeOD): δΡ 3.83
1H NMR (500 MHz, MeOD): δΗ 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 1H, H-6), 7.38-7.31 (m, 7H, Ar
H), 7.23-7.19 (m, 3H, ArH), 6.26 (t, J = 7.5 Hz, 1H, H-1'), 5.88 (d, J = 7.5 Hz,
1H, H-5), 5.20 (s, 2H, OCH2Ph), 4.49-4.46 (m, 1H, H-5'), 4.38-4.34 (m, 1H, H-5'
), 4.23-4.17 (m, 1H, H-3'), 4.07-4.01 (m, 2H, H-4', CHCH3), 1.38 (d, J = 7.2 Hz,
3H, CHCH3).
19F NMR (470 MHz, MeOD): δF- 118.3 (d, J = 241 Hz, F), - 120.38 (広幅なd, J = 2
41 Hz, F).
13C NMR (125 MHz, MeOD): δC174.65 (d, 3JC-P = 5.0 Hz, C=O, エステル), 167.65 (C
-NH2), 157.75 (C=Oベース), 152.10 (d, 2JC-P = 7.0 Hz, C-Ar), 142.28 (CH-ベース),
137.50 (C-Ar), 130.86, 129.63, 129.40, 129.32, 126.31 (CH-Ar), 124.50 (d, 1JC-F
= 257 Hz, CF2), 121.44, 121.40 (CH-Ar), 96.67 (CH-ベース), 85.90 (広幅シグナル,
C-1'), 80.27 (C-4'), 71.30 (見かけ上t, 2JC-F= 23.7 Hz, C-3'), 68.02 (OCH2Ph), 6
5.50 (C-5'), 51.83 (CHCH3), 20.22 (d, 3JC-p = 7.5 Hz, CHCH3).
逆相HPLCによって、100/0~0/100のH2O/MeOHを用いて35分間溶
出したところ、tR=21.87分にジアステレオ異性体のピークが1つ認められた。
【0101】
本明細書の説明および請求項の全体を通し、前記語句の「含む(comprise)」
および「含む(contain)」、ならびにそれらの変形は、「以下に限定されないが
含む」ことを意味し、それらは、他の部分、添加物、構成成分、整数、またはステップを
除外することを意図しない(および除外しない)。本明細書の説明および請求項の全体を
通し、文脈上別段の解釈を要する場合を除き、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠
詞が使用される場合、本明細書は、文脈上別段の解釈を要する場合を除き、単数のみなら
ず複数も意図していると理解されたい。
【0102】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載されている特徴、整数、
特性、化合物、化学的部分、または基は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載されて
いる任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であることを理解されたい。本
明細書(任意の添付されている請求項、要約書、および図を含む)に開示されているすべ
ての特徴、および/または同様に開示されている任意の方法または工程のすべてのステッ
プは、このような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが、互いに相容れな
い組合せを除き、任意の組合せで組み合わせてもよい。本発明は、前述のいかなる実施形
態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付されている請求項、要約書
、および図を含む)に開示されている特徴の任意の新規の1つもしくは任意の新規組合せ
、または同様に開示されている任意の方法または工程のステップの任意の新規の1つもし
くは任意の新規組合せに及ぶ。
【0103】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時またはその前に出願され、本明細書と
共に公衆の閲覧に供されるすべての論文および文献に向けられるが、すべてのこのような
論文および文献の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0104】
下記の略記が本明細書で使用されている:
API-医薬品有効成分、すなわち、ゲムシタビン-[フェニル-ベンゾキシ-L-アラ
ニニル)]-ホスフェート
DMA-ジメチルアセトアミド DMF-N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO-ジメチルスルホキシド IPA-イソプロピルアルコール
NMP-N-メチルピロリジノン PEG-ポリエチレングリコール
[実施例]
【実施例0105】
第一世代の製剤の開発
ゲムシタビン-[フェニル-(ベンゾキシ-L-アラニニル)]-ホスフェート(NU
C-1031;2)は、国際公開第2005/012327号パンフレットに記載されて
いる方法によって、リン酸ジアステレオ異性体の混合物として得られた。
【0106】
実施例1のすべての試験は、リン酸ジアステレオマーの混合物としてNUC-1031
を用いて行われた。
【0107】
NUC-1031の溶解度は、薬学的に許容される一連の溶媒系に対して判定された。
採用された治験実施計画書は以下の通りである:
【0108】
1~2mLの少量の各溶媒系を準備し、ある重量の試験対象化合物を加えた。該溶液を
約4時間撹拌し、次に0.45μL膜で濾過した。その後、該濾液中の試験対象化合物の
濃度を、HPLC定量法によって判定した。
【0109】
膵癌の処置に用いられるゲムシタビン投与計画に基づき、分子量について調整されたN
UC-1031の用量は、週1回の点滴投与として、約3200mgであった。必要な溶
解度の指標として、輸液量を理論的目標である500mLとすると、輸液中のNUC-1
031の必要な溶解度は、6mg/mlより高い。しかし、該溶解度は指標に過ぎず、溶
解度がより低くとも治療上有効であり得る。
【0110】
【0111】
DMSO、DMA、およびNMPは、すべて非プロトン性極性溶媒であり、安定した溶
液を提供した。
【0112】
水または生理食塩水で1:1に希釈後、NMPおよびDMAは、いかなる析出の証拠も
示さなかった。付属書類1は、希釈時の一連の溶媒に対するNUC-1031の溶解度を
示す。DMAは、必要な量を投与するために十分な溶解度を示した。
【0113】
【0114】
【表2-2】
DMA溶解度に対する希釈の影響
表2はDMA溶解度に対する水性希釈の影響を提示する
【0115】
【0116】
さらに、これらのDMA溶液は、より長期間に渡る物理的安定性の評価が行われており
、その結果は表2aに示されている。
【0117】
【0118】
上述の試験に続き、5mlバイアル中、250mgのNUC-1031をDMA:0.
9%生理食塩水が80:20の溶液中の製剤を、臨床試験に使用した。該製剤によって臨
床試験における処置は成功したが、注射の際の疼痛のため、中心静脈ラインからの投与が
必要であった。
【0119】
次に、末梢静脈からの投与が可能な製剤を探索した。