(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031706
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】両側性マイクロホンアレイにおける風雑音を制御すること
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220215BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20220215BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20220215BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20220215BHJP
G10K 11/175 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R1/40 320B
H04R25/00 K
H04R1/10 101A
G10K11/175
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183500
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2019545904の分割
【原出願日】2017-11-08
(31)【優先権主張番号】15/347,445
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ターミューレン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】風雑音を制御する両側性マイクロホンアレイ及び方法を提供する。
【解決手段】一対のイヤホン102、104は、複数の信号を提供するマイクロホンアレイ106、108を有する。プロセッサは、マイクロホン信号を受け取り、カットオフ周波数を下回る信号を反転させる第1の組のフィルタをマイクロホン信号のサブセットに適用し、一方のマイクロホン信号を第1のフィルタに、他方を第2のフィルタに提供し、イヤホンに近い音に対してよりもイヤホンから少し離れて生じる音に対して、より敏感であるカットオフ周波数を上回る遠距離場信号と、カットオフ周波数を下回る無指向性の遠距離場信号と、を発生させるように信号を組み合わせるために第2のフィルタを使用することで、マイクロホン信号に存在する風雑音のレベルを決定し、風雑音の決定されたレベルの関数としてカットオフ周波数を調整し、遠距離場信号を一対のイヤホンのスピーカに出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の複数のマイクロホン信号を提供する第1のマイクロホンアレイ、および第1のスピーカを有する第1のイヤホンと、
第2の複数のマイクロホン信号を提供する第2のマイクロホンアレイ、および第2のスピーカを有する第2のイヤホンと、
前記第1の複数のマイクロホン信号および第2の複数のマイクロホン信号を受け取るプロセッサとを備える装置において、
前記プロセッサは、
マイクロホン信号に存在する風雑音のレベルを決定し、
第1の組のフィルタを適用し、前記マイクロホン信号を組み合わせて、前記装置から離れて生じる音に対してよりもイヤホンを着用している人からの音声信号に対してより敏感である近接場信号を発生させ、
前記マイクロホン信号を組み合わせて、無指向性信号を発生させ、
重みが風雑音の決定されたレベルの関数である加重和を使用して、前記近接場信号および前記無指向性信号を組み合わせて、通信信号を発生させ、
前記通信信号を通信システムに提供するように構成される、
装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記無指向性信号との前記近接場信号の比較に基づいて、前記通信信号において前記近接場信号に適用される重みを調整するために風雑音のレベルを決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記近接場信号および無指向性信号を発生させることは、前記プロセッサにおいて、
第2の組のフィルタを前記第1のマイクロホンアレイおよび前記第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号の第1のサブセットに適用することと、
第3の組のフィルタを前記第1のマイクロホンアレイおよび前記第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号の第2のサブセットに適用することと、
フィルタ処理された第1のサブセットをフィルタ処理された第2のサブセットと組み合わせて、前記近接場信号を発生させることと、
前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットを合計して、前記無指向性信号を発生させることとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記近接場信号および無指向性信号を発生させることはさらに、
前記第1のサブセットを合計し、合計された第1のサブセットを前記第3の組のフィルタに提供することと、
前記第2のサブセットを合計し、合計された第2のサブセットを第4の組のフィルタに提供することと、
前記合計された第1のサブセットおよび前記合計された第2のサブセットを合計して、前記無指向性信号を発生させることとを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、複数のサブプロセッサを備え、前記第1および第2のサブセットの合計は、第3および第4のフィルタの適用およびフィルタ処理されたサブセットの組み合わせとは別個のサブプロセッサによって行われる、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
プロセッサにおいて、
第1のマイクロホンアレイを有する第1のイヤホンから、第1の複数のマイクロホン信号を受け取るステップと、
第2のマイクロホンアレイを有する第2のイヤホンから、第2の複数のマイクロホン信号を受け取るステップと、
マイクロホン信号に存在する風雑音のレベルを決定するステップと、
第1の組のフィルタを適用して、前記マイクロホン信号を組み合わせて、装置から離れて生じる音に対してよりもイヤホンを着用している人からの音声信号に対してより敏感である近接場信号を発生させるステップと、
前記マイクロホン信号を組み合わせて、無指向性信号を発生させるステップと、
重みが風雑音の決定されたレベルの関数である加重和を使用して、前記近接場信号および前記無指向性信号を組み合わせて、通信信号を発生させるステップと、
前記通信信号を通信システムに提供するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記プロセッサにおいて、
前記無指向性信号との前記近接場信号の比較に基づいて、前記通信信号において前記近接場信号に適用される重みを調整するために風雑音のレベルを決定するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記近接場信号および無指向性信号を発生させるステップは、
第2の組のフィルタを前記第1のマイクロホンアレイおよび前記第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号の第1のサブセットに適用するステップと、
第3の組のフィルタを前記第1のマイクロホンアレイおよび前記第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号の第2のサブセットに適用するステップと、
フィルタ処理された第1のサブセットをフィルタ処理された第2のサブセットと組み合わせて、前記近接場信号を発生させるステップと、
前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットを合計して、前記無指向性信号を発生させるステップとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記近接場信号および無指向性信号を発生させるステップは、
前記第1のサブセットを合計し、合計された第1のサブセットを前記第3の組のフィルタに提供するステップと、
前記第2のサブセットを合計し、合計された第2のサブセットを第4の組のフィルタに提供するステップと、
前記合計された第1のサブセットおよび前記合計された第2のサブセットを合計して、前記無指向性信号を発生させるステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセッサは、複数のサブプロセッサを備え、前記第1および第2のサブセットの合計は、第3および第4のフィルタの適用およびフィルタ処理されたサブセットの組み合わせとは別個のサブプロセッサによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1の前部マイクロホン信号および第1の後部マイクロホン信号を含む第1の複数のマイクロホン信号を提供する第1のマイクロホンアレイ、および第1のスピーカを有する第1のイヤホンと、
第2の前部マイクロホン信号および第2の後部マイクロホン信号を含む第2の複数のマイクロホン信号を提供する第2のマイクロホンアレイ、および第2のスピーカを有する第2のイヤホンと、
前記第1の複数のマイクロホン信号および第2の複数のマイクロホン信号を受け取るプロセッサとを備える装置において、
前記プロセッサは、
第1の組のフィルタを適用し、マイクロホン信号を組み合わせて、前記装置に近い音に対してよりも前記装置から少し離れて生じる音に対してより敏感である遠距離場信号を発生させ、
前記第1の前部マイクロホン信号から前記第1の後部マイクロホン信号を減算して、第1の差信号を生成し、
前記第2の前部マイクロホン信号から前記第2の後部マイクロホン信号を減算して、第2の差信号を生成し、
低域通過フィルタを前記第1および第2の差信号の各々に適用し、
フィルタ処理された第1および第2の差信号を比較して、前記第1または第2のイヤホンの一方を、もう一方よりも多い風を受けているものとして識別し、
遠距離場信号において識別されたイヤホンからのマイクロホン信号の相対的な寄与を減少させるように構成される、
装置。
【請求項12】
前記識別されたイヤホンからのマイクロホン信号の相対的な寄与を減少させることは、低周波数におけるこれらの信号の寄与を減少させることを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記識別されたイヤホンからのマイクロホン信号の相対的な寄与を減少させることは、第1のフィルタの動作を調整することを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記識別されたイヤホンからのマイクロホン信号の相対的な寄与を減少させることは、前記第1の組のフィルタを適用する前に、前記識別されたイヤホンからのマイクロホン信号に適用される利得を低減させることを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、
ある時間の期間の間、遠距離場信号において識別されたイヤホンからのマイクロホン信号の相対的な寄与を回復させ、
前記信号を回復させるためにとられた時間の間に、第1または第2のイヤホンの一方が再びもう一方よりも多い風を受けているものとして識別された場合には、遠距離場信号において今回識別されたイヤホンからのマイクロホン信号の相対的な寄与を減少させるようにさらに構成される、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、二重用途の両側性マイクロホンアレイに関し、そのようなアレイにおける風雑音を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器はしばしば、2つのマイクロホンを含み、それらは、特定の方向、典型的にはユーザが見ている方向における音の検出を最適化する可能性がある2マイクロホンビーム形成アレイを形成するために使用される。各補聴器(すなわち、各耳について1つ)は、そのようなアレイを有し、もう一方とは無関係に動作する。ブルートゥース(登録商標)ヘッドホンなどの、通信に用いられるイヤピースもまたしばしば、遠端の会話の相手への伝送のためのユーザの声を検出するために、遠距離場向けではなく、ユーザ自身の口向けの、2マイクロホンアレイを含む。そのようなアレイは典型的には、2つのイヤピースを有するデバイスにおいてさえ、単一のイヤピース上にだけ提供される。
【0003】
各耳に2つの、全部で4つのマイクロホンの使用は、参照によりここに組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0230026号において述べられる。その開示は、雑音環境において相手の言うことを聞きかつ相手と会話をする際にユーザを支援するために、別の人の声を検出するという文脈において、各耳について別個の一対のマイクロホンを使用することよりも改善された性能を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0230026号
【特許文献2】米国特許第8,184,822号
【特許文献3】米国特許第8,798,283号
【特許文献4】米国特許第9,020,160号
【特許文献5】米国特許第8,620,650号
【特許文献6】米国特許第9,190,043号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、一態様では、第1のイヤホンは、第1の前部マイクロホン信号を提供する第1の前部マイクロホンと、第1の後部マイクロホン信号を提供する第1の後部マイクロホンとを含む第1のマイクロホンアレイ、および第1のスピーカを有する。第2のイヤホンは、第2の前部マイクロホン信号を提供する第2の前部マイクロホンと、第2の後部マイクロホン信号を提供する第2の後部マイクロホンとを含む第2のマイクロホンアレイ、および第2のスピーカを有する。プロセッサは、第1の前部マイクロホン信号、第1の後部マイクロホン信号、第2の前部マイクロホン信号、および第2の後部マイクロホン信号を受け取り、装置に近い音に対してよりも装置から少し離れて生じる音に対してより敏感である遠距離場信号を発生させるように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために第1の組のフィルタを使用し、遠距離場信号を出力のためにスピーカに提供する。プロセッサはまた、装置から離れて生じる音に対してよりもイヤホンを着用している人からの音声信号に対してより敏感である近接場信号を発生させるように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために第2の組のフィルタを使用し、近接場信号を通信システムに提供もする。
【0006】
実装形態は、任意の組み合わせで、次の事項の1つまたは複数を含んでもよい。第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイは、装置から少し離れた音の検出を最適化するように物理的に配置されてもよい。2つの前部マイクロホンは、イヤホンが、着用されるとき、前方を向いてもよく、2つの後部マイクロホンは、イヤホンが、着用されるとき、後方を向き、第1のアレイのマイクロホンを通る線は、典型的な成人によって着用されるとき、イヤホンの約2メートル前方の位置において第2のアレイのマイクロホンを通る線と交差する。プロセッサは、装置から離れて生じる音に対してよりもイヤホンを着用している人からの音声信号に対してより敏感である第2の近接場信号を発生させるように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために、第2の組のフィルタとは異なる第3の組のフィルタを使用し、第2の近接場信号を出力のためにスピーカに提供してもよい。遠距離場信号をスピーカに提供することは、個々のユーザと関連する一組のユーザ選好に従って遠距離場信号をフィルタ処理することを含んでもよい。プロセッサは、いくつかのサブプロセッサで構成されてもよく、一組のユーザ選好による遠距離場信号のフィルタ処理は、遠距離場信号を発生させるように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために第1の組のフィルタを適用するサブプロセッサとは別個のサブプロセッサによって行われてもよい。
【0007】
プロセッサは、装置に近い音に対してよりも装置から少し離れた音に対してより敏感である第2の遠距離場信号を発生させるように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために、第1の組のフィルタとは異なる第3の組のフィルタを使用することによって、遠距離場信号を発生させ、遠距離場信号をスピーカに提供してもよく、第1の遠距離場信号を第1のスピーカに提供し、第2の遠距離場信号を第2のスピーカに提供する。第1の遠距離場信号および第2の遠距離場信号をそれぞれの第1および第2のスピーカに提供することは、個々のユーザの第1の耳と関連する一組のユーザ選好に従って第1の遠距離場信号をフィルタ処理すること、および個々のユーザの第2の耳と関連する一組のユーザ選好に従って第2の遠距離場信号をフィルタ処理することを含んでもよい。プロセッサは、組み合わせた前部マイクロホン信号を形成するために第1の前部マイクロホンおよび第2の前部マイクロホンに対応する信号を合計し、組み合わせた後部マイクロホン信号を形成するために第1の後部マイクロホンおよび第2の後部マイクロホンに対応する信号を合計し、フィルタ処理された、組み合わせた前部マイクロホン信号を形成するために組み合わせた前部マイクロホン信号をフィルタ処理し、フィルタ処理された、組み合わせた後部マイクロホン信号を形成するために組み合わせた後部マイクロホン信号をフィルタ処理し、指向性マイクロホン信号を形成するためにフィルタ処理された、組み合わせた前部マイクロホン信号およびフィルタ処理された、組み合わせた後部マイクロホン信号を組み合わせることによって近接場信号を発生させてもよく、近接場信号は、指向性マイクロホン信号を含む。プロセッサは、第1および第2の組のフィルタを同時に動作させてもよい。
【0008】
一般に、一態様では、第1のイヤホンは、第1の前部マイクロホン信号を提供する第1の前部マイクロホンと、第1の後部マイクロホン信号を提供する第1の後部マイクロホンとを含む第1のマイクロホンアレイ、および第1のスピーカを有する。第2のイヤホンは、第2の前部マイクロホン信号を提供する第2の前部マイクロホンと、第2の後部マイクロホン信号を提供する第2の後部マイクロホンとを含む第2のマイクロホンアレイ、および第2のスピーカを有する。プロセッサは、第1の前部マイクロホン信号、第1の後部マイクロホン信号、第2の前部マイクロホン信号、および第2の後部マイクロホン信号を受け取る。第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイは、装置に近い音に対してよりも装置から少し離れた音に対してより大きい感度を有するように物理的に配置される。プロセッサは、装置から離れて生じる音に対してよりもイヤホンを着用している人からの音声信号に対してより敏感である近接場信号を発生させるように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために第1の組のフィルタを使用し、近接場信号を出力のために通信システムに提供する。
【0009】
一般に、一態様では、第1のイヤホンは、第1の複数のマイクロホン信号を提供する第1のマイクロホンアレイ、および第1のスピーカを有する。第2のイヤホンは、第2の複数のマイクロホン信号を提供する第2のマイクロホンアレイ、および第2のスピーカを有する。プロセッサは、第1の複数のマイクロホン信号および第2の複数のマイクロホン信号を受け取り、カットオフ周波数を下回る信号を反転させる第1の組のフィルタを第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号のサブセットに適用し、第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイの各々からのマイクロホン信号の第1のフィルタ処理された信号および残りを第2の組のフィルタに提供する。プロセッサはまた、装置に近い音に対してよりも装置から少し離れて生じる音に対してより敏感である、カットオフ周波数を上回る遠距離場信号およびカットオフ周波数を下回る無指向性の遠距離場信号を発生させるようにマイクロホン信号を組み合わせるために第2の組のフィルタを使用し、マイクロホン信号に存在する風雑音のレベルを決定し、風雑音の決定されたレベルの関数としてカットオフ周波数を調整し、遠距離場信号を出力のためにスピーカに提供もする。
【0010】
実施は、任意の組み合わせで、次の事項の1つまたは複数を含んでもよい。プロセッサは、第2の組のフィルタにおいて遠距離場信号を発生させた後、第1のカットオフ周波数の関数である第2のカットオフ周波数を下回るフィルタの出力に利得を適用してもよい。プロセッサは、第1の組のフィルタにおいて遠距離場信号を発生させた後、フィルタの出力に高域通過フィルタを適用してもよい。プロセッサは、マイクロホン信号に存在する全低周波数エネルギーを決定してもよく、全音声レベルが、第1のしきい値を下回り、風雑音のレベルが、第2のしきい値を下回ると決定すると、第1の組のフィルタのカットオフ周波数を増加させる。遠距離場信号を発生させることは、マイクロホン信号に存在する全低周波数エネルギーを決定すること、マイクロホン信号の合計を計算すること、マイクロホン信号の差を計算すること、マイクロホン信号の合計をマイクロホン信号の差と比較すること、および比較の結果に基づいてカットオフ周波数を決定することを含んでもよい。マイクロホン信号の差を計算することは、第1の複数のマイクロホン信号におけるマイクロホン信号の第1の差を計算すること、第2の複数のマイクロホン信号におけるマイクロホン信号の第2の差を計算すること、ならびにマイクロホン信号の差として第1の差および第2の差の差を計算することを含んでもよい。
【0011】
一般に一態様では、第1のイヤホンは、第1の複数のマイクロホン信号を提供する第1のマイクロホンアレイ、および第1のスピーカを有する。第2のイヤホンは、第2の複数のマイクロホン信号を提供する第2のマイクロホンアレイ、および第2のスピーカを有する。プロセッサは、第1の複数のマイクロホン信号および第2の複数のマイクロホン信号を受け取り、装置に近い音に対してよりも装置から少し離れて生じる音に対してより敏感である、カットオフ周波数を上回る遠距離場信号およびカットオフ周波数を下回る無指向性の遠距離場信号を発生させるようにマイクロホン信号を組み合わせるために第1の組のフィルタを使用し、マイクロホン信号に存在する風雑音のレベルを決定し、風雑音の決定されたレベルの関数としてカットオフ周波数を調整し、遠距離場信号を出力のためにスピーカに提供する。プロセッサはまた、装置から離れて生じる音に対してよりもイヤホンを着用している人からの音声信号に対してより敏感である近接場信号を発生させるようにマイクロホン信号を組み合わせるために第2の組のフィルタを使用し、無指向性信号を発生させるためにマイクロホン信号を組み合わせ、重みが、通信信号を発生させるために風雑音の決定されたレベルの関数である、加重和を使用して近接場信号および無指向性信号を組み合わせ、通信信号を通信システムに提供もする。
【0012】
実施は、任意の組み合わせで、次の事項の1つまたは複数を含んでもよい。プロセッサは、マイクロホン信号の差とのマイクロホン信号の合計の比較に基づいてカットオフ周波数を調整するために風雑音のレベルを決定し、無指向性信号との近接場信号の比較に基づいて通信信号における近接場信号に適用される重みを調整するために風雑音のレベルを決定してもよい。遠距離場信号を発生させることは、カットオフ周波数を下回る信号を反転させる全域通過フィルタを第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号のサブセットに適用すること、および第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイの各々からのマイクロホン信号の全域通過フィルタ処理された信号および残りを第1の組のフィルタに提供することを含んでもよい。近接場信号および無指向性信号を発生させることは、第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号の第1のサブセットに第3の組のフィルタを適用すること、第1のマイクロホンアレイおよび第2のマイクロホンアレイの各々からの複数のマイクロホン信号の第2のサブセットに第4の組のフィルタを適用すること、近接場信号を発生させるためにフィルタ処理された第1のサブセットをフィルタ処理された第2のサブセットと組み合わせること、ならびに無指向性信号を発生させるために第1のサブセットおよび第2のサブセットを合計することを含んでもよい。近接場信号および無指向信号を発生させることはまた、第1のサブセットを合計し、合計された第1のサブセットを第3の組のフィルタに提供すること、第2のサブセットを合計し、合計された第2のサブセットを第4の組のフィルタに提供すること、無指向性信号を発生させるために合計された第1のサブセットおよび合計された第2のサブセットを合計することを含んでもよい。プロセッサは、いくつかのサブプロセッサで構成されてもよく、第1および第2のサブセットの合計は、第3および第4のフィルタの適用ならびにフィルタ処理されたサブセットの組み合わせとは別個のサブプロセッサによって行われてもよい。
【0013】
一般に、一態様では、第1のイヤホンは、第1のマイクロホン信号を提供する第1のマイクロホン、および第1のスピーカを有する。第2のイヤホンは、第2のマイクロホン信号を提供する第2のマイクロホン、および第2のスピーカを有する。プロセッサは、第1のマイクロホン信号および第2のマイクロホン信号を受け取り、出力信号を発生させるようにマイクロホン信号を組み合わせるために第1の組のフィルタを使用する。プロセッサは、低域通過フィルタを第1のマイクロホン信号および第2のマイクロホン信号の各々に適用し、低域通過フィルタ処理された第1のマイクロホン信号を低域通過フィルタ処理された第2のマイクロホン信号と比較し、片方が、もう一方よりも大きい雑音成分を有することもあるかどうかを決定し、第1のマイクロホン信号が、第2のマイクロホン信号よりも大きい雑音成分を有すると決定すると、第1の組のフィルタにおいてカットオフ周波数を下回る第1のマイクロホン信号に適用される利得の量を減少させることによって出力信号を発生させる。その後、第1のマイクロホン信号がもはや、第2のマイクロホン信号よりも大きい雑音成分を有しないと決定すると、プロセッサは、第1の組のフィルタにおいて第1のマイクロホン信号に適用される利得の量を回復する。
【0014】
実施は、任意の組み合わせで、次の事項の1つまたは複数を含んでもよい。プロセッサは、第1のマイクロホン信号が、第2のマイクロホン信号よりも大きい雑音成分を有すると決定すると、第2の組のフィルタにおいてカットオフ周波数を下回る第1のマイクロホン信号に適用される利得の量を減少させ、その後、第1の無指向性信号がもはや、第2の無指向性信号よりも大きい雑音成分を有さないと決定すると、第2の組のフィルタにおいて第1のマイクロホン信号に適用される利得の量を回復し、第2の出力信号を発生させるようにマイクロホン信号を組み合わせるために第2の組のフィルタを使用し、第1の出力信号は、スピーカに提供され、第2の出力信号は、通信システムに提供される。第1の組のフィルタは、遠距離場アレイ信号を作成してもよく、第2の組のフィルタは、近接場アレイ信号を作成してもよい。第1のイヤホンは、第3のマイクロホン信号を提供する第3のマイクロホンを含んでもよく、第2のイヤホンは、第4のマイクロホン信号を提供する第4のマイクロホンを含んでもよく、プロセッサは、第1の差信号を形成するために第3のマイクロホンに対応する信号を第1のマイクロホンから減算し、第2の差信号を形成するために第4のマイクロホンに対応する信号を第2のマイクロホンから減算し、第1の差信号を第2の差信号と比較し、片方が、もう一方よりも大きい雑音成分を有するかどうかを決定することによって第1のマイクロホン信号を第2のマイクロホン信号と比較してもよい。
【0015】
利点は、単一デバイスにおいて、会話支援のための遠距離場音検出および遠隔通信のための近接場音検出の両方を改善することを含む。風雑音の排除もまた、改善される。
【0016】
上で述べられたすべての例および特徴は、任意の技術的に可能な方法で組み合わされてもよい。他の特徴および利点は、記述および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示される新しいヘッドホンアーキテクチャでは、2つのイヤホン102、104はそれぞれ、2つのマイクロホンアレイ106および108を含有する。2つのイヤホン102、104は、ユーザの首の周りに着用される中央ユニット110に接続される。
図2に概略的に示されるように、中央ユニットは、プロセッサ112、無線通信システム114、および電池116を含む。イヤホンはまたそれぞれ、スピーカ118、120、およびフィードバックベースの能動的雑音低減を提供するために使用される追加のマイクロホン122、124も含有する。2つのアレイ106および108におけるマイクロホンは、126、128、130、および132とラベルを付けられる。これらのマイクロホンは、多目的を果たし、それらの出力信号は、フィードフォワード雑音消去において消去すべき周囲の音として、会話支援のために強化すべき周囲の音(局所会話相手の声を含む)として、無線通信システムを通じて遠隔会話の相手に伝送すべき声音として、かつユーザが話しながら彼自身の声を聞くために再生すべきサイドトーン声音として使用される。
図1の例では、4つのマイクロホンは、各耳上の前部マイクロホンが前方を向き、各耳上の後部マイクロホンが後方を向く状態で配置される。各対のマイクロホンを通る線は、ユーザが見ている方向からの音の検出を最適化するために、ヘッドホンが、典型的なユーザによって着用されるとき、一般に前方を向く。イヤホンは、着用されるとき、それらのそれぞれの対のマイクロホンをわずかに内側に向けるように配置され、それでマイクロホンアレイを通る線は、ユーザの1または2メートル前方に集中する。これは、ユーザと対面している誰かの声の受け取りを最適化するという特定の恩恵を有する。
【0019】
プロセッサ112は、いくつかの構成可能なフィルタを様々なマイクロホンからの信号に適用する。各耳に2つが位置する、すべての4つのマイクロホン126、128、130、132から共用の処理システムへの広帯域幅通信チャンネルの供給は、局所会話支援および遠隔の人またはシステムとの通信の両方において新しい機会を提供する。具体的には、
図3に示されるように、第1の組のフィルタ202は、マイクロホンの物理的配置を最大限活用し、局所会話の相手などの、すぐ近くの音源からの音を検出するために最適化される遠距離場アレイを形成するように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために使用される。我々が、アレイがすぐ近くの音源からの音を検出するために最適化されると言うとき、我々は、約1から2メートルの距離においてヘッドホン着用者の前で生じる信号に対するアレイの感度が、ヘッドホンのより近くでもしくはヘッドホンからより遠くで、または他の方向から生じる音に対する感度よりも大きいということを意味する。米国特許出願公開第2015/0230026号において述べられるように、すべての4つのマイクロホンを一緒に使用することは、各耳について別個の対のマイクロホンを使用するよりも改善された性能につながる可能性がある。加えて、アレイは、2つの別個の組のフィルタ202および204を使用することによって、例えば両耳の空間認知を保つために、2つの耳について異なって構成されてもよい。
【0020】
第3の組のフィルタ206は、ユーザ自身の声を検出するために最適化される近接場アレイを形成するように4つのマイクロホン信号を組み合わせるために使用される。我々が、アレイがユーザ自身の声を検出するために最適化されると言うとき、我々は、ユーザの口から生じる信号に対するアレイの感度が、ヘッドホンからさらに遠くで生じる音に対する感度よりも大きいということを意味する。マイクロホン126、128、130、132が、ユーザの前での遠距離場ピックアップを最適化するように物理的に配置されている場合でさえ、すべての4つのマイクロホンの組み合わせは、同じイヤホン位置にあるがしかしユーザの口に物理的に向けられる2マイクロホンアレイと少なくとも同程度の、場合によってはそれよりも良好な近接場声性能を提供することが見いだされている。
【0021】
いくつかの例では、なお別の組のフィルタ208は、ユーザ自身に戻るユーザの声を提供するために使用され、一般にサイドトーンと呼ばれる。サイドトーン音声信号は、彼または彼女自身の声のユーザの認知へのイヤホンの音響特性の影響を計算に入れるためにアウトバウンド音声信号とは異なってフィルタ処理されてもよい。最後に、各耳のための能動的雑音低減(ANR)フィルタ210、212は、雑音消去信号を作成するために局所マイクロホンの少なくとも1つを使用する。ANRフィルタは、周囲雑音を消去するために各耳について1つまたは両方の外部マイクロホンおよびフィードバックマイクロホンを使用してもよい。いくつかの例では、反対側の耳からの外部マイクロホンはまた、各耳におけるANRのために使用されてもよい。
【0022】
ANR信号、遠距離場アレイ信号、サイドトーン信号、および任意の入ってくる通信またはエンタテインメント信号(図示されず)は、各耳について合計される。
図4に示されるように、フィルタの少なくともいくつかは、プロセッサ112において実施され、プロセッサは、様々なフィルタへの4つのマイクロホン信号(加えてフィードバックマイクロホン信号)の分配を扱う。同様に、プロセッサは、多数のフィルタ出力の合計および適切なスピーカへのそれらの分配を扱ってもよい。
【0023】
いくつかの例では、
図5に示されるように、プロセッサ112は、左および右ANRプロセッサ302、304、左および右アレイプロセッサ306、308、および通信プロセッサ310などの、別個の専用サブプロセッサの組み合わせによって提供される。適切なANRプロセッサの一例は、米国特許第8,184,822号において述べられ、それの内容全体は、参照によりここに組み込まれる。同様のプロセッサは、アレイ処理のために使用されてもよい。適切な通信プロセッサの一例は、Qualcomm Inc.からのCSR8670であり、それはいくつかの例ではまた、ANRおよびアレイプロセッサの汎用処理制御も提供し、同様に無線通信システム114も提供する。他の例では、単一のANRまたはアレイプロセッサが、両側を扱ってもよく、または通信プロセッサがまた、別個の左側および右側プロセッサを有してもよい。ANRおよびアレイフィルタは、1つの側につき単一のプロセッサを提供されてもよく、またはすべてのフィルタ処理は、単一のプロセッサによって扱われてもよい。4つの外部マイクロホン信号はそれぞれ、サブプロセッサの各々に直接提供されてもよく、またはアレイプロセッサなどの、サブプロセッサの1つもしくは複数は、マイクロホン信号のサブセットを直接受け取り、それらの信号を他のプロセッサにバスを通じて転送してもよい(
図5に示されるように)。
【0024】
遠距離場フィルタ処理
遠距離場マイクロホン処理のための例となるトポロジは、
図6に示される。これは、前の図に表される完全な製品によって実行される処理のサブセットを表す。この例では、4つのマイクロホン信号LF、LR、RF、およびRRの各々は、2つのアレイプロセッサ306、308の各々に提供される。もし同じ遠距離場信号が、各耳に提供されるべきならば、単一のそのようなプロセッサだけが、必要とされる。各アレイプロセッサは、それぞれの耳について遠距離場信号を作成するためにフィルタ処理された信号を合計する前に、入ってくる各マイクロホン信号に特定のフィルタを適用する。合計された信号はひいては、個々の各マイクロホン信号に適用される特定のフィルタに基づいて等化402、404される。
【0025】
左および右の耳への出力のために遠距離場信号を発生させるための特定のフィルタおよび関連する信号処理は、参照により上で組み込まれた米国特許出願公開第2015/0230026号において述べられる。
図6に示されるフィルタ処理、合計、等化、および処理のすべては、単一のプロセッサで、または例で使用されるそれとは異なるプロセッサの組み合わせで行われることもあり得る。いくつかの例では、スピーカに直接出力されるよりもむしろ、アレイプロセッサ出力は、その内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第8,798,283号において述べられるそれなどの、AMRシステムのヒアスルー特徴に指向性成分を提供するために、ANRプロセッサへの信号入力として提供される。
【0026】
近接場通信フィルタ
上で述べられたように、4つのマイクロホンが、遠距離場声ピックアップを最適化するように物理的に配置される場合でさえ、4つがすべて、組み合わされるとき、それらはまた、通信目的のための良好な近接場音声信号を作成もする。以前の通信ヘッドセットは、例えばユーザの口に向けられるビーム形成アレイにおいて、ユーザの声の検出を改善するために2つのマイクロホンを組み合わせていた。高いレベルまで、
図6に示される同じタイプの処理が、異なるフィルタ係数を適切に使用して、近接場信号を発生させるために行われてもよい。
図6と比較すると、ただ一組のフィルタが、アウトバウンド音声信号を発生させるために必要とされるということになる。いくつかの例では、
図7に示されるように、アレイプロセッサ306または308の1つは、近接場声フィルタ処理を実施する通信プロセッサ310に2つのコンポジット信号を提供する前に、4つのマイクロホン信号を組み合わせる。具体的には、アレイプロセッサ308は、2つの前部マイクロホン信号LFおよびRFならびに2つの後部マイクロホン信号LRおよびRRを合計し、二組の合計された信号502、504を通信プロセッサ310に提供する。通信プロセッサは、遠距離場エネルギーに対してユーザ自身の声を最適化する近接場アレイ信号を形成するために二組の合計された信号を組み合わせる。前部合計および後部合計はそれぞれ、フィルタ処理506、508され、2つのフィルタ処理された合計は次いで、近接場アレイ信号512を発生させるために組み合わされる510。これは、2つだけのインバウンド信号を通信プロセッサに提供することによって、通信プロセッサ310の設計およびプロセッサ間の信号ルーティングを簡単にする。
図7の特定例では、無線通信システム114は、通信プロセッサ310と統合され、近接場信号は、アウトバウンド通信リンクに直接提供される。より強力な通信プロセッサを用いると、事前合計は、必要とされなくてもよく、すべての4つのマイクロホン信号は、ユーザの声のピックアップをさらに最適化するために個々にフィルタ処理されてもよい。
【0027】
サイドトーンフィルタ
ユーザの耳をブロックするヘッドセットでは、再生される彼ら自身の声を聴くことは、ユーザが、彼らが話すレベルを制御し、ヘッドセットに向かって話すことをより心地良く感じるのに役立つことができる。彼ら自身の録音に耳を傾けている誰でもが、関連する可能性があるので、しかしながら、アウトバウンド通信信号をユーザの耳に単に提供するだけでは、自然に聞こえないこともある。これは、イヤホン102、104が、ユーザが彼ら自身の声を知覚する仕方を変える方法に起因してより言明さえされる。参照によりここに組み込まれる、米国特許第9,020,160号は、より自然に聞こえる自己音声信号を作成するためにフィードバックおよびフィードフォワードマイクロホン信号をフィルタ処理する方法を論じる。これらの技法は、
図3においてフィルタ208によって示されるように、すべての4つのマイクロホンを使用するか、または
図7においてフィルタ514によって示されるように、アウトバウンド信号処理ステップからの事前合計された前部マイクロホン信号を使用する、現在のアーキテクチャにおいて使用されてもよい。いくつかの例では、自己音声フィルタ処理は、ANRフィルタ処理の一部として行われる。変更されないフィードバックベースの雑音低減は、ヘッドホンを着用しているとき、人の声のより低い周波数成分を増幅する閉塞効果の大部分を軽減することができるので、これは、特に有利である可能性がある。外部マイクロホン信号はその時、耳がブロックされるときに失われる声のより高い周波数成分を再注入するために使用される(それらを周囲雑音として消去するよりもむしろ)。閉塞効果の消去は、ANRプロセッサ302、304によって扱われてもよく、一方通信プロセッサ310は、外部マイクロホンからのサイドトーン信号を提供する。
【0028】
図7の例などの、簡略化された例では、通信経路からの合計された前部マイクロホン信号は、基本的サイドトーン信号を提供するために、単に低域通過フィルタ処理され、等化される。サイドトーン信号は次いで、他の局所出力信号と合計され、スピーカ118、120に提供される。
【0029】
風雑音緩和
上で述べられたように、2つのマイクロホンは、ユーザの声を検出するためにビーム形成アレイとして前に使用されている。他の例では、参照によりここに組み込まれる、米国特許第8,620,650号において述べられるように、2つのマイクロホン信号は、周囲および風の雑音の排除を最適化するために組み合わされてもよい。これは、近接場アレイから風雑音を除去するために、
図8に示されるように、
図7の例に適合されてもよい。用語「風雑音」はここでは、他の音源(それは、遠方の風を含むこともあり得る)からイヤホンに到達する音響雑音を指す「周囲」雑音とは対照的に、イヤホンに直接ぶつかる空気の流れによって引き起こされる雑音を述べるために使用される。米国特許第8,620,650号の方法は、風雑音に敏感な1つのマイクロホン信号、および風雑音にはあまり敏感でないがしかし周囲雑音にはより敏感である1つのマイクロホン信号とともに使用される。加重和が、使用され、ただし各信号に与えられる重みは、各信号に存在する雑音エネルギーの相対量に依存する。
図8の特定例では、アレイ信号512は、風雑音に敏感である傾向がある。米国特許第8,620,650号の仕方での風雑音オプティマイザ556は、入ってくる前部合計502および後部合計504を合計する(554)ことによって形成される無指向性信号552とアレイ信号512を組み合わせる。これは、アウトバウンド音声信号として使用するための改善された出力信号を作成する。
図8の特定例では、処理は、無線通信システム114を統合する通信プロセッサ310において行われる。
【0030】
遠距離場アレイ信号はまた、風雑音の影響も受けやすいが、しかし異なる処理が、それを管理するために使用される。いくつかの例では、
図9に示されるように、処理は、信号における風雑音の存在に基づいて低周波数での無指向性モードとより高い周波数での指向性遠距離場アレイモードとの間で次第に消える。この例では、4つのマイクロホン信号は、全エネルギー信号608を作成するために合計される、602、604、606。同時に、2つの左マイクロホンの差(LF-LB)610が、計算され、2つの右マイクロホンの差(RF-RB)612が、計算され、それらの2つの差の差((LF-LB) - (RF-RB))614が、計算される。全エネルギー信号608に対するその最終的な差信号616の比は、風インジケータ信号620を作成するためにしきい値と比較される。風信号620は、全エネルギー信号608と一緒に、2つの追加の組のフィルタ622、624についてカットオフ周波数を決定する計算626への入力としての役割を果たす。風プレフィルタ622は、個々のマイクロホン信号をフィルタ処理する。特に、風プレフィルタは、計算されたカットオフ周波数を下回る前部マイクロホン信号の位相を反転する全域通過フィルタを適用する。これは、アレイがより低い周波数では無指向性感度を有し、より高い周波数では指向性を維持するようにする。風レベルが、増加するにつれて、前部マイクロホンが、それを下回ると反転される、カットオフ周波数は、高められ、無指向性挙動を徐々に増加させ、高い風レベルでは、指向性アレイは、いずれにしても特に有用というわけではなく、それで全帯域幅は、無指向性にされる。
【0031】
第2の組の風フィルタ624は、遠距離場アレイ処理204の後に適用される。この第2の組の風フィルタは、2つのことを行い、それは、低周波数利得を減少させ、それは、高域通過フィルタを適用する。正常な遠距離場アレイ処理では、高利得が、アレイの指向性に起因するエネルギーの損失を計算に入れるためにより低い周波数において適用される。より低い周波数での感度が、無指向性であるようにシフトされると、このエネルギーは、回復され、利得は、低減されてもよい。この低周波数利得のカットオフ周波数は、全域通過フィルタ622のカットオフ周波数に基づいているが、しかし厳密に同じ周波数でなくてもよい。同時に、高域通過フィルタは、なおピックアップされるどんな残留風雑音も除去し、特に高い風レベルでは、これは、他の技法よりも有効なこともある。風レベルが、増加するにつれて、低周波数利得カットオフ周波数および高域通過フィルタカットオフ周波数の両方は、風プレフィルタの上昇する反転周波数に続いて高められる。
図9は、右耳だけについての処理を示す。同じ処理は、左耳について行われ、明確にするために省略される。いくつかの例では、同じ制御信号620およびカットオフ周波数が、両方の耳について使用され、それらは、システム全体について一度、または別個のアレイプロセッサにおいて重複して計算されてもよい。
【0032】
低周波数における白色雑音利得の緩和
図9においてまた示されもする、いくつかの例では、風フィルタ622および624の追加の使用が、行われる。指向性遠距離場アレイが、使用されるとき、低周波数での有効ノイズの下限(floor)は、アレイ内でのエネルギーの損失を補うために必要とされる利得の増加に起因して、高められる。これは、静かな環境にいるときはユーザに容易に気付かれるが、しかしそのような環境では、遠距離場アレイは、それが、雑音環境にある場合よりも恩恵が少ない。従って、風雑音プレフィルタ622は、周囲雑音が、低いときに、風雑音もまた、低く、それがさもなければ、指向性信号に有利であるということになるときでさえ、低周波数において次第に無指向性感度になるために使用されてもよい。しきい値628は、カットオフ計算626への追加の入力を提供し、もし風検出620が、低いが、しかし全エネルギーもまた、しきい値628よりも低いならば、その時風プレフィルタ622は、なお適用される。これは、低周波数での白色雑音利得を低減する。低周波数利得はまた、この状況において風フィルタ624によって回復されもするが、しかし高域通過フィルタは、使用されない。低雑音状況において計算されるカットオフ周波数は、高い風状況におけるよりも全エネルギー信号608に対して異なる関数関係に従うこともある。
【0033】
両側性風緩和
左および右マイクロホン信号を組み合わせるよりもむしろ、近接場声ピックアップの議論において上で述べられたように、近接場信号に使用される風対周囲雑音混合アルゴリズムはまた、例えばもし風が、片方からユーザにもう一方よりも多くぶつかるならば、遠距離場マイクロホン信号において非対称である雑音の排除を最適化するために別個の左および右マイクロホン信号を使用するように適合されてもよい。この例では、
図10に示されるように、後部マイクロホンは、左および右の差信号706、708を作成するために、各側の前部マイクロホンから減算される702、704。これらの信号は、2つのイヤピース間での頭部の陰影に起因して同じでない。差信号は次いでそれぞれ、低域通過フィルタ処理され710、712、片方がもう一方よりも多い風を受けているかどうかを決定するために比較される714。もしそうであれば、雑音のある側からのマイクロホン信号は、低周波数において抑制され、その場合その風は、遠距離場フィルタによって低周波数においてその側からマイクロホンに適用される利得を減少させることによって最も問題がある。別法として、プレフィルタ段は、
図9に示される対称的な風制御方法と同様に、その利得を低減することもあり得る。システムはゆっくりと、すべての4つのマイクロホンを使用することに戻り、もし風が、やんだならば、このフェーディングは、すべてのマイクロホンの完全な使用が、すべての周波数において回復されるまで続く。もし風が、再び検出されるならば、システムは迅速に、低周波数における片側動作に戻る。
【0034】
合計および比較は、アレイプロセッサの各々において行われてもよく(例のいくつかにおけるように、2つあると仮定すれば)、またはそれらの片方において行われ、制御信号が、もう一方に提供されてもよい。もし通信プロセッサが、事前に合計された前部および後部信号対よりもむしろ、すべての4つのマイクロホン信号を提供されるならば、その時同様の左/右風雑音制御は、
図7に示される無指向性/指向性風雑音制御と組み合わせて近端音声信号に適用されることもあり得る。別法として、
図7の例では、アレイプロセッサは、通信プロセッサに提供される前部/後部合計において左または右マイクロホンの重み付けを減少させることもあり得る。各側の全エネルギーは、雑音源が非対称であるかどうかを決定するために比較されてもよく、信号は、同じ仕方でバランスを保たれるので、この手法はまた、各耳について1つだけのマイクロホンがある場合にも有用である。
【0035】
同時動作
十分な処理能力があると、異なる組のフィルタは、近接場および遠距離場の信号を同時に作成するために並行して使用されてもよい。これは、ユーザが彼自身の声および会話の相手の声を同時に聞くことを可能にし(すなわち、もし彼らが、互いに話しているならば)、またはユーザが無線接続で別の人に対して聞くと同時に話すことを可能にする。単なるマルチタスキングは別として、もし会話において1人よりも多い人が、本明細書で述べられたものなどのデバイスを使用しているならば、その後者は、有用である可能性がある。例えば、その内容全体が、参照によりここに組み込まれる、米国特許第9,190,043号を参照されたい。多数のヘッドセットの各々は、近接場フィルタからのそのユーザの局所的に検出された声を他のヘッドセットに伝送することができ、その場合それは、ユーザに彼らの会話の相手の声の完全な組を提供するために、そのヘッドセットの遠距離場フィルタの結果と組み合わされてもよい。
【0036】
近接場および遠距離場の声の同時検出はまた、近接場が、会話に使用されていないところでも有用である可能性がある。例えば、もしヘッドセットが、声パーソナルアシスタント(VPA)を実施するまたはそれに接続されるならば、近接場信号は、そのシステムに、または起床単語検出プロセスに向けられてもよい。近接場信号は、単に周囲マイクロホンを使用するよりもより高い信号対雑音比を提供するはずである。
【0037】
近接場および遠距離場の信号はまた、互いに比較されてもよい。この比較の1つの結果は、主要な信号の近接を推定することである可能性があり、もし2つの相関が、高いならば、それは、ユーザが話しているということである。これは、2つの例を挙げると、音声アクティビティ検出器のため、または他の雑音低減アルゴリズムを変えるために使用されてもよい。
【0038】
図1の特定例では、イヤホンは、イヤホン内のマイクロホンおよびスピーカと中央ユニット内の様々なプロセッサとの間で信号を伝えるワイヤによって中央ユニットに接続される。他の例では、処理、通信、および電池コンポーネントは、イヤホン内に埋め込まれ、それらは、有線または無線接続によって互いに接続されてもよい。コンポーネントおよびタスクは、アーキテクチャおよび通信帯域幅に応じて、イヤホン間で分けられてもよく、または両方において繰り返されてもよい。本開示の重要な考察は、各耳につき2つの、すべての4つのマイクロホンからの信号が、各耳での再生のために音を発生させているプロセッサの少なくともいくつかに利用可能であり、通信経路について中間合計ステップがあってもよいけれども、すべての4つの信号が最終的に、通信システムを通じての伝送のために信号を発生させるプロセッサに提供されるということである。
【0039】
上で述べられたシステムおよび方法の実施形態は、当業者には明らかとなるコンピュータコンポーネントおよびコンピュータ実施ステップを含む。例えば、コンピュータ実施ステップが、コンピュータ実施可能命令として例えばフラッシュROM、不揮発性ROM、およびRAMなどのコンピュータ可読媒体上に記憶されてもよいことは、当業者によって理解されるはずである。さらに、コンピュータ実行可能命令が、例えばマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、ゲートアレイ、その他などの様々なプロセッサ上で実行されてもよいことは、当業者によって理解されるはずである。説明を容易にするために、上で述べられたシステムおよび方法のあらゆるステップまたは要素は、コンピュータシステムの一部として本明細書で述べられてはいないが、しかし当業者は、各ステップまたは要素が、対応するコンピュータシステムまたはソフトウェアコンポーネントを有してもよいことを認識するであろう。そのようなコンピュータシステムおよび/またはソフトウェアコンポーネントは従って、それらの対応するステップまたは要素(すなわち、それらの機能性)を述べることによって可能にされ、本開示の範囲内である。
【0040】
いくつかの実装形態が、述べられている。しかしながら、追加の変更が、本明細書で述べられる発明概念の範囲から逸脱することなくなされてもよく、それに応じて、他の実施形態が、次の特許請求の範囲内であることは、理解されよう。
【符号の説明】
【0041】
102 イヤホン
104 イヤホン
106 2マイクロホンアレイ
108 2マイクロホンアレイ
110 中央ユニット
112 プロセッサ
114 無線通信システム
116 電池
118 スピーカ
120 スピーカ
122 追加のマイクロホン
124 追加のマイクロホン
126 マイクロホン
128 マイクロホン
130 マイクロホン
132 マイクロホン
202 第1の組のフィルタ
204 第2の組のフィルタ
206 第3の組のフィルタ
208 別の組のフィルタ
210 アクティブ雑音低減(ANR)フィルタ
212 アクティブ雑音低減(ANR)フィルタ
302 左ANRプロセッサ
304 右ANRプロセッサ
306 左アレイプロセッサ
308 右アレイプロセッサ
310 通信プロセッサ
502 合計信号の組、前部合計
504 合計信号の組、後部合計
512 近接場アレイ信号
514 フィルタ
552 無指向性信号
556 風雑音オプティマイザ
608 全エネルギー信号
616 最終的な差信号
620 風インジケータ信号、風信号、制御信号、風検出
622 追加の組のフィルタ、全域通過フィルタ、風フィルタ、風プレフィルタ
624 追加の組のフィルタ、第2の組の風フィルタ
628 しきい値
706 左差信号
708 右差信号
【外国語明細書】