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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031708
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】細胞分離装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220215BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220215BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220215BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20220215BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20220215BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/115 Z
C12M1/26
C12N1/02
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183597
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2017566145の分割
【原出願日】2016-12-29
(31)【優先権主張番号】62/272,533
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517440900
【氏名又は名称】サーモゲネシス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コエーリョ,フィリップ,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ブサ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】エリス,ジョナサン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞分離装置、方法、及びシステム、並びに細胞分離方法において使用するための組成物及び試薬を提供する。
【解決手段】細胞分離方法であって、(a)機能的閉鎖システムにおいて少なくとも10mL(あるいは、少なくとも25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mL)の容積を有するホスト液体を処理することであって、前記ホスト液体は、(i)標的細胞及び(ii)浮遊試薬を含み、前記浮遊試薬の1つ以上への前記細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で前記標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含む、処理することと、(b)遠心などのベクトル力を前記機能的閉鎖システム内で前記ホスト液体に適用して、前記接着標的細胞を前記ホスト液体内で層状化させることと、(c)前記接着標的細胞を前記機能的閉鎖システム内の任意の領域に隔離すること、とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞分離方法であって、
(a) 機能的閉鎖システムにおいて少なくとも10mL(あるいは、少なくとも25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mL)の容積を有するホスト液体を処理することであって、前記ホスト液体は、(i)標的細胞及び(ii)浮遊試薬を含み、前記浮遊試薬の1つ以上への前記細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で前記標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含む、処理することと、
(b) 遠心などのベクトル力を前記機能的閉鎖システム内で前記ホスト液体に適用して、前記接着標的細胞を前記ホスト液体内で層状化させることと、
(c) 前記接着標的細胞を前記機能的閉鎖システム内の任意の領域に隔離すること、とを含む細胞分離方法。
【請求項2】
前記浮遊試薬は、産生された浮遊試薬を含み、各産生された浮遊試薬は浮遊試薬を含み、前記浮遊ラベル及び結合剤は、前記ホスト液体中で前記標的細胞に接触する前に、互いに接着して前記産生された浮遊試薬を形成する、請求項1に記載の細胞分離方法。
【請求項3】
前記浮遊試薬は、前記ホスト液体内で組み立てられる二次浮遊試薬を含み、前記方法は、ステップ(a)の前に前処理ステップを更に含み、前記前処理ステップは、前記結合剤の前記浮遊ラベルへの接着を促進し、前記浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、前記ホスト液体を浮遊ラベル及び結合剤と接触させることを含む、請求項1に記載の細胞分離方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
(i)各結合剤は、(A)前記標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、(B)前記一次結合剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカーを含み、
(ii)各浮遊ラベルは、前記浮遊ラベルに結合された第2のリンカーを含み、
前記第2のリンカーは、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、前記第2の相補性領域は、前記第1の相補性領域と完全に相補的であり、前記第1及び第2の相補性領域のハイブリッドは、少なくとも40℃の計算されたTmを有し、
前記前処理ステップは、前記第1及び第2の相補性領域のハイブリダイゼーションを促進し、前記浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、前記ホスト液体を前記浮遊ラベル及び前記結合剤と接触させることを含み、
前記処理することは、前記接着標的細胞を生成するのに適した条件下で、前記ホスト液体中で前記標的細胞及び前記浮遊試薬を接触させることを含み、
(d)ステップ(c)の後、前記第1の相補性領域及び前記第2の相補性領域を脱ハイブリダイズさせて前記浮遊試薬を前記標的細胞から放出させるのに十分な時間、前記機能的閉鎖システム内で前記接着標的細胞を37℃以下の温度に曝すこと、を更に含む、方法。
【請求項5】
細胞分離方法であって、
(a)ホスト液体を提供することであって、前記ホスト液体が接着標的細胞を含み、各接着標的細胞が、
(i)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合した結合剤、
(ii)前記剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)前記浮遊ラベルに結合された第2のリンカーを含む浮遊ラベルであって、前記第2のリンカーは、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、前記第2の相補性領域は前記第1の相補性領域と完全に相補的であり、前記第2の相補性領域は前記第1の相補性領域にハイブリダイズしてハイブリッドを形成し、前記第1及び第2の相補性領域の前記ハイブリッドは、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、浮遊ラベルを含む、ホスト液体を提供することと、
(b)遠心などのベクトル力を前記ホスト液体に適用して、前記接着標的細胞を前記ホスト液体内で層状化させることと、
(c)前記接着標的細胞を隔離することと、
(d)ステップ(c)の後に、前記第1の相補性領域及び前記第2の相補性領域を脱ハイブリダイズさせて前記標的細胞から前記浮遊ラベルを放出させるのに十分な時間、前記接着標的細胞を37℃以下の温度に曝すこと、を含む、細胞分離方法。
【請求項6】
前記接着標的細胞は、前記ホスト液体中の標的細胞を、前記結合剤、前記第1のリンカー、及び前記第2のリンカーを含む産生された浮遊試薬に接触させることを含む処理ステップにより、ステップ(a)の前に生成され、前記第2の相補性領域は、前記第1の相補性領域とハイブリダイズし、前記ハイブリッドを形成し、
前記産生された浮遊試薬の1つ以上への前記細胞の接着を促進し、前記接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で前記接触が行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記接着標的細胞は、ステップ(a)の前に、
(A) 前記第1及び第2の相補性領域のハイブリダイゼーションを促進し、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、前記ホスト液体を前記浮遊ラベル及び前記第1リンカーに結合した結合剤と接触させることと、
(B) 前記接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で、前記ホスト液体中で前記標的細胞及び前記浮遊試薬を接触させることと、を含む処理ステップによって生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記計算されたTmは、最近隣2状態モデルを使用して計算されたTmであり、
【数1】
ΔH°(エンタルピー)及びΔS°(エントロピー)は、配列及び公表された最近接熱力学パラメータから、かつ使用されるイオン条件下において計算された融解パラメータであり、Rは理想気体定数(1.987calK-1モル-1)であり、[オリゴ(oligo)]は、オリゴヌクレオチドのモル濃度であり、定数-273.15により、温度をケルビンから摂氏温度に変換する、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の相補性領域と前記第2の相補性領域との間の前記ハイブリッドの前記計算されたTmは、40℃~約60℃である、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記結合剤は、前記標的細胞上の細胞エピトープに結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各浮遊試薬は、1つ以上の第2のリンカーを含み、前記1つ以上の第2のリンカーは、少なくとも1つの結合剤に接着された1つ以上の第1のリンカーに結合され、前記少なくとも1つの結合剤は、前記標的細胞上の細胞エピトープに結合でき、前記接触させることは、1種以上の前記浮遊試薬への前記標的細胞の接着を促進し、前記接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で、前記標的細胞及び前記浮遊試薬を接触させることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理することは、
(i)前記ホスト液体を一次結合剤と接触させることであって、各一次結合剤は、(A)前記標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤、及び(B)前記剤に結合した第1のリンカーを含み、前記標的細胞の前記一次結合剤への接着を促進し、標的細胞結合剤複合体を生産するのに適した条件下で生じる接触させることと、
(ii)前記標的細胞結合剤複合体を前記浮遊ラベルとインキュベートすることであって、各浮遊ラベルが第2のリンカーを含み、前記第2のリンカーが前記第1のリンカーに結合することができ、前記第1のリンカーの前記第2のリンカーへの結合を促進し、前記接着標的細胞を生成するのに適した条件下でインキュベートすることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
非結合一次結合剤を除去する中間ステップは、ステップ(i)と(ii)との間には起こらない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記機能的閉鎖システム内の前記標的細胞から前記浮遊ラベルを分離して、分離した標的細胞を生産することを更に含む、請求項1~3、及び10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記標的細胞及び/又は前記所望の細胞は、脂肪組織、培養細胞、遺伝子改変細胞、及びこのような標的細胞の亜集団に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球、顆粒球、単核細胞、リンパ球、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、間質血管分画細胞に見出される腫瘍細胞、癌幹細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、間葉系幹細胞及び前駆細胞、脂肪由来幹細胞及び前駆細胞、内皮前駆細胞からなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記標的細胞及び/又は前記所望の細胞は、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的細胞及び/又は所望の細胞は、非枯渇ホスト液体中、10%未満の前記細胞を表す、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記標的細胞及び/又は所望の細胞は、非枯渇ホスト液体中、5%未満の前記細胞を表す、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記所望の細胞の回収効率は、68%超、又は75%超、又は80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記所望の細胞の生存率は、90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記標的細胞及び/又は所望の細胞は、前記ホスト液体中、全細胞の20%未満で存在する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記標的細胞及び/又は所望の細胞は、前記ホスト液体中全細胞の5%未満、又は前記ホスト液体中総細胞の2%未満、又は前記ホスト液体中全細胞の1%未満で存在する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記結合剤は、抗体、オリゴヌクレオチド、アプタマー、分子インプリントポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、酵素、小分子、脂質、脂肪酸、金属原子、金属イオン、又は合成ポリマーからなる群から選択される、請求項2~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記結合剤は、抗体を含む、請求項2~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のリンカー及び第2のリンカーは、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、オリゴヌクレオチド、抗体結合タンパク質、これらの組み合わせ、及び/又は抗体結合タンパク質又は任意の第2の接着結合剤によって結合された部分を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のリンカー及び第2のリンカーは、ビオチン及び/又はストレプトアビジンを、単独で又はオリゴヌクレオチドと組み合わせて含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記浮遊ラベルは、ガス充填気泡、中空ポリマー、ガラスビーズ、同伴ガス(entrained gas)を伴う微孔性ビーズ、不混和性液体の液滴、金ナノ粒子、及び銀ナノ粒子からなる群から選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記浮遊ラベルは、ガス充填気泡を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ガス充填気泡は、脂質、リン脂質、炭水化物、又はタンパク質シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ガス充填気泡は、リン脂質シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ガス充填気泡は、約1μm~約6.5μmの直径を有する、請求項29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ホスト液体は、末梢血、臍帯血、又は白血球除去輸血である請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記機能的閉鎖システムが、
(a)
(i)少なくとも1つの入口ポートと、第1の出口ポートと、第2の出口ポートとを備える処理容器、
(ii)入口ポートを備える少なくとも第2の容器、及び入口ポート及び第1の出口ポートを備える第3の容器、を備える2つ以上の追加の容器、
(ii)前記処理容器の前記第1の出口ポートを前記第2の容器の前記入口ポートに接続する第1の導管であって、第1の可逆的閉鎖装置を備え、前記第1の可逆的閉鎖装置が開かれたときに前記処理容器から前記第2の容器への流体の流れのみが生じ得るように、前記第2の容器が前記処理容器に一時的に流体接続されている、第1の導管、
及び(v)前記処理容器の前記第2の出口ポートを前記第3の容器の前記入口ポートに接続する第2の導管であって、第2の可逆的閉鎖装置を備え、前記第2の可逆的閉鎖装置が開かれたときに前記処理容器から前記第3の容器への流体の流れのみが生じ得るように、前記第3の容器が前記処理容器に一時的に流体接続されている、第2の導管、を備えるカートリッジと、
(b)少なくとも1つのポートを備える移送容器と、
(c)少なくとも第3の導管であって、
(i)前記第3の容器の前記第1の出口ポートを前記移送容器の前記少なくとも1つのポートに接続し、かつ
(ii)前記移送容器の前記少なくとも1つのポートを前記処理容器の前記少なくとも1つの入口ポートに接続し、
前記少なくとも第3の導管は、(A)前記第3の容器が前記移送容器に一時的に流体接続され、かつ(B)前記移送容器が前記処理容器に一時的に流体接続されるように、少なくとも第3の可逆的閉鎖装置を備え、
(I)前記少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、前記第3の容器から前記移送容器への流体の流れのみが生じ得るか、又は
(II)前記少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、前記移送容器から前記処理容器への流体の流れのみが生じ得るか、のいずれか1つのみが真であり得るように構成される少なくとも第3の導管と、を備える細胞分離システムを備える、請求項1~4及び8~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
処理される前記ホスト液体は枯渇ホスト液体であり、前記方法は、前記処理又は前記前処理ステップの前に、前記処理容器内などの前記機能的閉鎖システム内で、遠心などのベクトル力を非枯渇ホストに適用することを含み、非所望細胞を前記第2の容器に通過させることによるなど、前記非所望細胞を枯渇させて、これにより処理される前記枯渇ホスト液体を生産することを含む、請求項1~4及び8~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記枯渇ホスト液体は、前記処理容器から前記移送容器に通過させ、前記浮遊試薬と混合させて前記ホスト液体の処理を開始する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記標的細胞は前記所望の細胞であり、前記隔離することは、前記分離された標的細胞を前記第3の容器に通過させることを含む、請求項34~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記標的細胞は前記所望の細胞ではなく、前記隔離することは、前記機能的閉鎖システム内で前記分離した標的細胞を濃縮することを含む、請求項34又は35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞分離システムは、少なくとも前記カートリッジ及び前記第1及び第2の導管において前記活性を制御するための制御モジュールを更に備える、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記機能的閉鎖システムが、請求項1~21のいずれか一項に記載の細胞分離システムを備える、請求項1~4及び8~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2015年12月29日出願の米国仮出願第62/272,533号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
近年の臨床試験では、ある希少な幹細胞、前駆細胞又は免疫細胞の集団が再生医療及び免疫療法(参考文献)において臨床的有用性を有することが立証されている。このような希少な標的細胞は、血中又は骨髄中の他の細胞数よりも5桁ほど少ない(10)ことがあり、その数のうちの多くは赤血球及び血小板である。豊富にある不要な細胞と、臨床的に重要な希少標的細胞とが混合することにより、標的細胞が富化及び精製するにあたっての問題点が呈示される。血液及び骨髄中の主要細胞集団は、サイズ及び密度が異なるため、遠心中の密度に基づいて層状化する細胞を選択及び精製プロセスに利用することができる。例えば、正常なヒトの血液は、一般に、最も多数あり、かつ最も密度の高い細胞である赤血球(「RBC」)と、最も数が少なく、かつ最小密度の細胞である血小板(「PLT」)と、最大細胞であり、RBCとPLTとの間の密度を有する白血球(「WBC」)と、血漿と、を含む。これらの3つの細胞画分は、遠心中に別個の集団に分離する。平均して、RBCは個体の全血球の約99.9%を構成し、個体内の全血量の約45%を占めるが、これは個体間で異なり、また同一個体内で時間の経過共に異なることが周知である。RBCは身体組織に酸素を運ぶ主要手段として重要な機能を果たすが、癌などの特定の病気に対抗するための組織の再生又は免疫系の増強には有用ではない。固体の血液量の残りのほぼ全てが全血量の約55%を占める非細胞性液体である血漿から構成され、その中で、全ての血液細胞が懸濁されている。したがって、通常の血液量の99%以上が血漿及び赤血球で構成されている。
【0003】
残りの約<0.6%の正常血液量は、WBC及び血小板(PLT)から構成されている。PLTは、WBCより数が約30倍多い、不規則な形状の小さい核細胞である。PLTは、出血を止め、損傷組織を修復及び再生する多数の成長因子を放出することによって、止血及び治癒において基本的な役割を果たす。しかし、それらの接着性により、希少であり、臨床的に重要な標的細胞の効率的な富化及び精製が妨げられる。最も広く行き渡っていない血液細胞はWBCであり、典型的な血液サンプル中の全細胞のわずか約10分の1%のみを占める。WBCは、身体の免疫系に不可欠であり、感染症、異物及び血液学的及び固形腫瘍癌に対する身体の防衛に関与している。免疫療法又は再生医療において臨床的に利用されている細胞のほとんど全てが、WBC画分内に存在する。WBCはサブグループに更に分けられてもよい。最大であり、かつ最も密度の高いサブグループは、顆粒球(GRN)であり、全WBCの約60%を占める。より小さく、かつより密度の低いサブグループは単核細胞(MNC)であり、残りの約40%を構成する。MNCは、リンパ球及び単球に更に分解され得るが、それらは、単一で円形の核の各細胞内に存在するため、集合的にMNCと称される。MNCは、免疫系の重要な構成要素であり、T細胞、B細胞、及び身体組織の感染部位に移動し、免疫応答を誘発するためにマクロファージ及び樹状細胞に分割し、分化するNK細胞を含む。臨床試験で現在検討されている多くの細胞療法は、MNC画分に存在する細胞を利用する。
【0004】
したがって、血液、骨髄又は白血球除去輸血から希少細胞集団を精製するためには、更に多くのRBC、GRN及びPLTの実質的に全てを除去し、富化MNC画分を形成する初期のバルク枯渇ステップが望ましい。前述のように、これは遠心分離を用いて達成することができる。遠心分離は、FDA承認(FDA clearance)のためのより簡単な調節経路を提供する「最小限操作された」ものとして、FDAによって分類された細胞処理方法である。この初期バルク枯渇プロセスを血液でのみ行うことにより、MNC画分に存在する希少細胞集団を3桁(10)富化させることができ、その後の標的細胞の追加の精製及び富化がより効率的になる。
【0005】
現在の標的細胞分離方法は、MNCを手作業で分離することから始まり、非常に熟練した操作員がFicollなどの密度勾配媒体で作業する必要がある。密度勾配媒体は、例えば、これらの粒子を組み合わせて遠心すると、粒子が層状化され、それらの層が顆粒球層とMNC層との間に入るような顆粒球及びMNCの密度の中間である正確な密度の小さな粒子であり、より獲得可能な顆粒球は存在せずに、ピペットによるMNCの回収がその後に行われる。MNC内の最終標的細胞へのその後の精製では、高価で複雑な機器及び高価な試薬が必要である。これらの現在の方法はまた、大量の不要の細胞と混合した希少細胞を精製するにあたって好適ではないか、又は標的細胞の単離及び採取の効率が低い、低処理速度も有する。これらの方法はまた、細胞に望ましくない影響を及ぼし得る化学剤に細胞を曝露し得るか、又は細胞の微生物学的汚染のリスクを提示する機能的に開放されたシステムの使用を必要とし得る。したがって、希少細胞が高効率、高処理量で懸濁され、手動による介入がほとんど又は全くなく、単純な装置、細胞適合性試薬及び機能的閉鎖無菌システムを用いて、培地の単離、分離、精製、又は交換を可能にするための新しい技術が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無菌条件下で細胞の生存率を維持しながら、幹細胞、前駆細胞、又は免疫細胞などの所望の希少細胞など、ホスト液体中に存在する本質的に任意の又は全ての所望の細胞を富化及び/又は精製するための装置及び方法を提供する。臨床的に関連する数の幹細胞、前駆細胞又は免疫細胞を含む、血液、骨髄又は白血球除去輸血によって例示される細胞型の量に関して本発明を実施することにより、他のすべての既知の装置によって得ることができるものよりも、回収、生存及び純度が有意に高い標的細胞の組成物を提供することができる。
したがって、第1の態様において、本発明は、
(a)
(i)少なくとも1つの入口ポートと、第1の出口ポートと、第2の出口ポートとを備える処理容器、
(ii)入口ポートを備える第2の容器、
(iii)入口ポート及び第1の出口ポートを備える第3の容器、
(iv)処理容器の第1の出口ポートを第2の容器の入口ポートに接続する第1の導管であって、第1の可逆的閉鎖装置を備え、第1の可逆的閉鎖装置が開かれたときに処理容器から第2の容器への流体の流れのみが生じ得るように、第2の容器が処理容器に一時的に流体接続されている、第1の導管、
及び(v)処理容器の第2の出口ポートを第3の容器の入口ポートに接続する第2の導管であって、第2の可逆的閉鎖装置を備え、第2の可逆的閉鎖装置が開かれたときに処理容器から第3の容器への流体の流れのみが生じ得るように、第3の容器が処理容器に一時的に流体接続されている、第2の導管、を備えるカートリッジと、
(b)少なくとも1つのポートを備える移送容器と、
(c)少なくとも第3の導管であって、
(i)第3の容器の第1の出口ポートを移送容器の少なくとも1つのポートに接続し、かつ
(ii)移送容器の少なくとも1つのポートを処理容器の少なくとも1つの入口ポートに接続し、
少なくとも第3の導管が、(A)第3の容器が移送容器に一時的に流体接続され、かつ(B)移送容器が処理容器に一時的に流体接続されるように、少なくとも第3の可逆的閉鎖装置を備え、
(I)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、第3の容器から移送容器への流体の流れのみが生じ得るか、又は
(II)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、移送容器から処理容器への流体の流れのみが生じ得るか、のいずれか1つのみが真であり得るように構成される少なくとも第3の導管と、
(d)少なくともカートリッジ、並びに第1及び第2の導管において、活性を制御するように構成された制御モジュールと、を備える細胞分離システムを提供する。
【0007】
一実施形態では、移送容器はカートリッジの内部にある。別の実施形態では、少なくとも第3の導管は、単一の導管を備える。別の実施形態では、少なくとも第3の導管は、第3の容器と移送容器との間、及び移送容器と処理容器との間に配置されたT又はYコネクタを備える。
【0008】
一実施形態では、移送容器の少なくとも1つのポートは、第1の入口ポート及び出口ポートを備える。このような実施形態では、少なくとも第3の導管は、
(i)第3の容器の出口ポートを移送容器の入口ポートに接続し、第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに第3の容器から移送容器への流体の流れのみが生じ得るように、第3の容器が移送容器に一時的に流体接続されているように、第3の可逆的閉鎖装置を備る、第3の導管と、
(ii)移送容器の出口ポートを処理容器の少なくとも1つの入口ポートに接続する第4の導管であって、第4の可逆的閉鎖装置が開かれたときに移送容器から処理容器への流体の流れのみが生じ得るように、移送容器が処理容器に一時的に流体接続されているように、第4の可逆的閉鎖装置を備える、第4の導管と、を備える。
【0009】
更なる実施形態では、処理容器の少なくとも1つの入口ポートは、第1の入口ポート及び第2の入口ポートを備え、少なくとも第3の導管又は第4の導管(存在する場合)は、移送容器の出口ポートを処理容器の第1の入口ポートに接続する。このような実施形態では、細胞分離システムは、処理容器の第2の入口ポートを少なくとも1つの培地リザーバに接続する第1の培地投入導管を更に備え、第1の培地投入導管は、少なくとも第5の可逆的閉鎖装置を備え、少なくとも第5の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、少なくとも1つの培地リザーバから処理容器への流体の流れのみが生じ得るように、少なくとも1つの培地リザーバが処理容器に一時的に流体接続される。
【0010】
一実施形態では、移送容器の少なくとも1つのポートは、第2の入口ポートを更に備える。このような実施形態では、細胞分離システムは、移送容器の第2の入口ポートを少なくとも1つの培地リザーバに接続する第2の培地投入導管を更に備え、第2の培地投入導管は少なくとも第6の可逆的閉鎖装置を備え、少なくとも第6の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、少なくとも1つの培地リザーバから移送容器への流体の流れのみが生じ得るように、少なくとも1つの培地リザーバが処理容器に一時的に流体接続されている。
【0011】
一実施形態では、細胞分離システムはミキサを更に備える。1つの特定の例では、ミキサは静的ミキサを備える。更なる実施形態では、ミキサは、カートリッジルーフの内面に配置されたインペラを備える。別の実施形態では、ミキサは、カートリッジルーフの内面から離間配置されたインペラを備える。別の実施形態では、ミキサは、第1の端部及び第2の端部を有するポンプ導管を含む蠕動ポンプを備え、ポンプ導管の第1の端部は処理チャンバ内に位置付けられ、ポンプ導管の第2の端部は処理チャンバの外側に位置付けられ、かつ処理チャンバの少なくとも1つの入口ポートに接続されている。更に別の実施形態では、ミキサは、底部及び頂部を含む混合モジュールを備え、カートリッジは底部に位置付けられるように構成され、頂部は底部に取り外し可能に連結されるように構成される。このような実施形態では、混合モジュールは、回転可能な構成要素がカートリッジをその垂直軸上で180度又は360度回転させるように構成されるように、底部に連結された回転可能な構成要素を備えることができる。別の実施形態では、混合モジュールは、カートリッジが混合モジュールの底部に位置付けられたときにカートリッジの温度を上昇させるように構成されてもよい。
【0012】
一実施形態では、第1の培地投入導管及び/又は第2の培地投入導管は、フィルタを更に備える。別の実施形態では、第2の容器は、第1の廃棄物導管に連結された出口ポートを備える。更なる実施形態では、処理容器は、第2の廃棄物導管に連結された無菌通気口を更に備える。
【0013】
別の態様では、本発明は、
(a)機能的閉鎖システムにおいて少なくとも10mL(あるいは、少なくとも25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mL)の容積を有するホスト液体を処理することであって、ホスト液体は、(i)標的細胞及び(ii)浮遊試薬を含み、処理することは、1種以上の浮遊試薬へ細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含む、処理することと、
(b)遠心などのベクトル力を機能的閉鎖システム内でホスト液体に適用して、接着標的細胞をホスト液体内で層状化させることと、
(c)接着標的細胞を機能的閉鎖システム内の任意の領域に隔離すること、とを含む細胞分離方法を提供する。
【0014】
一実施形態では、浮遊試薬は、産生された浮遊試薬を含み、各産生された浮遊試薬は、浮遊ラベル及び結合剤がホスト液体中で標的細胞に接触する前に、互いに接着して産生された浮遊試薬を形成する浮遊試薬を含む。別の実施形態では、浮遊試薬は、ホスト液体内で組み立てられる二次浮遊試薬を含み、この方法は、ステップ(a)の前に前処理ステップを更に含み、前処理ステップは、結合剤の浮遊ラベルへの接着を促進し、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体を浮遊ラベル及び結合剤と接触させることを含む。
【0015】
一実施形態では、各浮遊ラベルは、
(i)各結合剤が、(A)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、(B)一次結合剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む第1のリンカーを含み、
(ii)各浮遊ラベルが、浮遊ラベルに結合された第2のリンカーを含み、第2のリンカーは、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第2の相補性領域は、第1の相補性領域と完全に相補的であり、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドは、少なくとも40℃の計算されたTmを有し、
前処理ステップは、第1及び第2の相補性領域のハイブリダイゼーションを促進し、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体を浮遊ラベル及び結合剤と接触させることを含み、
処理することは、接着標的細胞を生成するのに適した条件下で、ホスト液体中で標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含み、この方法は、
(d)ステップ(c)の後、第1の相補性領域及び第2の相補性領域を脱ハイブリダイズさせて浮遊試薬を標的細胞から放出させるのに十分な時間、機能的閉鎖システム内で接着標的細胞を37℃以下の温度に曝すこと、を更に含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、
(a)ホスト液体が接着標的細胞を含み、各接着標的細胞が、
(i)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合した結合剤、
(ii)剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)浮遊ラベルに結合された第2のリンカーを含む浮遊ラベルであって、第2のリンカーは、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第2の相補性領域は第1の相補性領域と完全に相補的であり、第2の相補性領域は第1の相補性領域にハイブリダイズしてハイブリッドを形成し、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドは、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、浮遊ラベルを含む、ホスト液体を提供することと、
(b)遠心などのベクトル力をホスト液体に適用して、接着標的細胞をホスト液体内で層状化させることと、
(c)接着標的細胞を隔離することと、
(d)ステップ(c)の後に、第1の相補性領域及び第2の相補性領域を脱ハイブリダイズさせて標的細胞から浮遊ラベルを放出させるのに十分な時間、接着標的細胞を37℃以下の温度に曝すこと、を含む細胞分離方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、接着標的細胞は、ホスト液体中の標的細胞と、結合剤、第1のリンカー、及び第2のリンカーを含む産生された浮遊試薬とを接触させることを含む処理ステップによって、ステップ(a)の前に生成され、第2の相補性領域は、ハイブリッドを形成するために第1の相補性領域にハイブリダイズされ、産生された浮遊試薬の1つ以上への細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で接触が行われる。別の実施形態では、接着標的細胞は、ステップ(a)の前に、(A)第1及び第2の相補性領域のハイブリダイゼーションを促進して、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体を浮遊ラベル及び第1のリンカーに結合した結合剤に接触させることと、(B)接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体中で標的細胞及び浮遊試薬を接触させることと、を含む処理ステップによって生成される。
【0018】
これらの態様のいずれにおいても、計算されたTmは、最近接2状態モデルを使用して計算されたTmであってもよく、
【数1】
ΔH°(エンタルピー)及びΔS°(エントロピー)は、配列及び公表された最近接熱力学パラメータから、かつ使用されるイオン条件下において計算された融解パラメータであり、Rは理想気体定数(1.987calK-1モル-1)であり、[オリゴ(oligo)]は、オリゴヌクレオチドのモル濃度であり、定数-273.15により、温度をケルビンから摂氏温度に変換する。一実施形態では、第1の相補性領域と第2の相補性領域との間のハイブリッドの計算されたTmは、40℃~約60℃である。
【0019】
本発明の方法のいずれかの別の実施形態において、結合剤は、標的細胞上の細胞エピトープに結合する。別の実施形態では、各浮遊試薬は、1つ以上の第2のリンカーを含み、1つ以上の第2のリンカーは、少なくとも1つの結合剤に接着された1つ以上の第1のリンカーに結合され、少なくとも1つの結合剤は、標的細胞上の細胞エピトープに結合でき、接触させることは、1種以上の浮遊試薬への標的細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で、標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含む。別の実施形態では、処理することは、(i)ホスト液体を一次結合剤に接触させることであって、各一次結合剤が、(A)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤、及び(B)剤に結合した第1のリンカーを含み、標的細胞の一次結合剤への接着を促進し、標的細胞結合剤複合体を生産するのに適した条件下でこの接触させることが生じることと、(ii)標的細胞結合剤複合体を浮遊ラベルとインキュベートすることであって、各浮遊ラベルが第2のリンカーを含み、第2のリンカーが第1のリンカーに結合することが可能であり、第1のリンカーの第2のリンカーへの接着を促進し、接着させた標的細胞を生成するのに適した条件下でこのインキュベートすること、を含んでもよい。一実施形態では、非結合一次結合剤を除去する中間ステップは、ステップ(i)と(ii)との間には生じない。
【0020】
更なる実施形態では、本発明の方法は、機能的閉鎖システム内で標的細胞から浮遊ラベルを分離して、分離した標的細胞を生産することを更に含んでもよい。本発明の方法の一実施形態では、標的細胞は所望の細胞であり、方法は、隔離の後に所望の細胞を濃縮し、分離した標的細胞を生産する更なるステップを含んでもよい。
【0021】
本発明の方法の別の実施形態では、標的細胞及び/又は所望の細胞は、脂肪組織、培養細胞、遺伝子改変細胞、及びこのような標的細胞の亜集団に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球、顆粒球、単核細胞、リンパ球、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、間質血管分画細胞に見出される腫瘍細胞、癌幹細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、間葉系幹細胞及び前駆細胞、脂肪由来幹細胞及び前駆細胞、内皮前駆細胞からなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、標的細胞及び/又は所望の細胞は、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞からなる群から選択されてもよい。
【0022】
本発明の方法の様々な更なる実施形態では、標的細胞及び/又は所望の細胞は、非枯渇ホスト液体中、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の細胞を表す。様々な更なる実施形態では、所望の細胞の回収効率は、68%超、又は75%超、又は80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超である。他の実施形態では、単離された所望の細胞の生存率は、90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超である。更なる実施形態では、標的細胞及び/又は所望の細胞は、ホスト液体中の全細胞の20%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満で存在する。
【0023】
本発明の方法の一実施形態では、結合剤は、抗体、オリゴヌクレオチド、アプタマー、分子インプリントポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、酵素、小分子、脂質、脂肪酸、金属原子、金属イオン、又は合成ポリマーからなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、結合剤は抗体を含む。他の実施形態では、第1のリンカー及び第2のリンカーは、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、オリゴヌクレオチド、抗体結合タンパク質、及び/又は抗体結合タンパク質若しくは任意の第2の接着結合剤によって結合された部分を含んでもよい。特定の実施形態では、第1のリンカー及び第2のリンカーは、ビオチン及び/又はストレプトアビジンを、単独で又はオリゴヌクレオチドと組み合わせて含む。
【0024】
本発明の方法の別の実施形態では、浮遊ラベルは、ガス充填気泡(gas-filled bubbles)、中空ポリマー、ガラスビーズ、同伴ガス(entrained gas)を含む微孔性ビーズ、不混和性液体の液滴、金ナノ粒子、及び銀ナノ粒子からなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、浮遊ラベルは、ガス充填気泡を含む。更なる具体的な実施形態では、ガス充填気泡は、脂質、リン脂質、炭水化物、又はタンパク質シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含む。更なる特定の実施形態では、ガス充填気泡は、リン脂質シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含む。別の特定の実施形態では、ガス充填気泡は、約1μm~約6.5μmの直径を有してもよい。更なる特定の実施形態では、ホスト液体は、末梢血、臍帯血、又は白血球除去輸血であり得る。
【0025】
一実施形態では、本発明の方法における使用のための機能的閉鎖システムは、
(a)
(i)少なくとも1つの入口ポートと、第1の出口ポートと、第2の出口ポートとを備える処理容器、
(ii)入口ポートを備える少なくとも第2の容器、及び入口ポート及び第1の出口ポートを備える第3の容器、を備える2つ以上の追加の容器、
(ii)処理容器の第1の出口ポートを第2の容器の入口ポートに接続する第1の導管であって、第1の可逆的閉鎖装置を備え、第1の可逆的閉鎖装置が開かれたときに処理容器から第2の容器への流体の流れのみが生じ得るように、第2の容器が処理容器に一時的に流体接続されている、第1の導管、
及び(v)処理容器の第2の出口ポートを第3の容器の入口ポートに接続する第2の導管であって、第2の可逆的閉鎖装置を備え、第2の可逆的閉鎖装置が開かれたときに処理容器から第3の容器への流体の流れのみが生じ得るように、第3の容器が処理容器に一時的に流体接続されている、第2の導管、を備えるカートリッジと、
(b)少なくとも1つのポートを備える移送容器と、
(c)少なくとも第3の導管であって、
(i)第3の容器の第1の出口ポートを移送容器の少なくとも1つのポートに接続し、かつ
(ii)移送容器の少なくとも1つのポートを処理容器の少なくとも1つの入口ポートに接続し、
少なくとも第3の導管が、(A)第3の容器が移送容器に一時的に流体接続され、かつ(B)移送容器が処理容器に一時的に流体接続されるように、少なくとも第3の可逆的閉鎖装置を備え、
(I)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、第3の容器から移送容器への流体の流れのみが生じ得るか、又は
(II)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、移送容器から処理容器への流体の流れのみが生じ得るか、のいずれか1つのみが真であり得るように構成される少なくとも第3の導管と、を備える、細胞分離システムを備える。
【0026】
本発明の方法の別の実施形態では、処理されるホスト液体は枯渇したホスト液体であり、この方法は、処理又は前処理ステップの前に、処理容器内などの機能的閉鎖システム内で、遠心などのベクトル力を非枯渇ホスト液体に適用することを含み、非所望細胞を第2の容器に通過させることなどによって、非所望細胞を枯渇させて、これにより処理される枯渇されたホスト液体を生産することを含む。更なる実施形態では、枯渇ホスト液体は、処理容器から移送容器に通過させ、浮遊試薬と混合させてホスト液体の処理を開始する。一実施形態では、標的細胞は所望の細胞であり、隔離することは、分離された標的細胞を第3の容器に通過させることを含む。別の実施形態では、標的細胞は所望の細胞ではなく、隔離することは、機能的閉鎖システム内で分離した標的細胞を濃縮することを含む。更なる実施形態では、細胞分離システムは、少なくともカートリッジ、並びに第1及び第2の導管において活性を制御するための制御モジュールを更に備える。本発明の方法のいずれかの一実施形態では、機能的閉鎖システムは、本発明の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせの細胞分離システムを含むことができる。
【0027】
別の態様において、本発明は、
(a) 少なくとも1mL(あるいは、少なくとも2mL、5mL、10mL、15mL、30mL、25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mL)の容量を有する液体培地、及び
(b) 液体培地中に懸濁される所望の細胞を含む細胞懸濁液を提供し、所望の細胞は、脂肪組織、培養細胞、遺伝子改変細胞、及びこのような所望の細胞の亜集団に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球、顆粒球、単核細胞、リンパ球、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、間質血管分画細胞に見出される造血幹細胞及び前駆細胞、間葉系幹細胞及び前駆細胞、内皮前駆細胞からなる群から選択され、所望の細胞は、液体培地に存在し、所望の細胞は、細胞懸濁液中、少なくとも80%の細胞から構成され、
所望の細胞の生存率が90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超であり、
機能的閉鎖細胞分離システム内に存在するか、又は機能的閉鎖細胞分離システムから更なる処理なく直接得られる。
【0028】
特定の一実施形態では、所望の細胞は、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞からなる群から選択されてもよい。別の実施形態では、機能的閉鎖細胞分離システムは、本発明の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせの細胞分離システムを備える。一実施形態では、細胞懸濁液は、移送容器、処理容器及び/又は第3の容器内に存在してもよい。別の実施形態では、細胞懸濁液は、機能的閉鎖細胞分離システムの移送容器を通って細胞懸濁液除去ストリーム中に存在する。
【0029】
様々な実施形態では、生存可能な所望の細胞の数は、少なくとも1×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5x10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10である。別の実施形態では、所望の細胞は、細胞に接着した浮遊ラベルを含む。
【0030】
更なる態様では、本発明は、
(a)少なくとも1つの第1リンカーに共有結合又は非共有結合した少なくとも1つの結合剤であって、細胞懸濁液中の細胞上の少なくとも1つの分子標的に結合できる少なくとも1つの結合剤、及び
(b)分離されるべき細胞が懸濁されている液体培地の密度とは実質的に異なる密度を示す少なくとも1つの第2の相補的リンカーに共有結合又は非共有結合された少なくとも1つの浮遊ラベル、を含む組成物を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、
(i) 標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、
(ii)剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)浮遊ラベル、
(iv)浮遊ラベルに結合する第2のリンカーであって、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第2の相補性領域が、第1の相補性領域と完全に相補的であり、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドが、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、第2のリンカー、を含むキットを提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、
(i)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、
(ii)剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)浮遊ラベル、
(iv)浮遊ラベルに結合する第2のリンカーであって、第1の相補性領域と完全に相補的である第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1及び第2のリンカーの相補性領域のハイブリッドが、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、第2のリンカー、を含む組成物を提供し、
第1のリンカーと第2のリンカーは互いにハイブリダイズされている。一実施形態では、組成物は、一次結合剤に結合した標的細胞を更に含む。
【0033】
本発明の組成物及びキットの一実施形態では、計算されたTmは、最近接2状態モデルを使用して計算されたTmであってもよく、
【数2】
ΔH°(エンタルピー)及びΔS°(エントロピー)は、配列及び公表された最近接熱力学パラメータから計算された融解パラメータであり、Rは理想気体定数(1.987calK-1モル-1)であり、[オリゴ(oligo)]は、オリゴヌクレオチドのモル濃度であり、定数-273.15により、温度をケルビンから摂氏温度に変換する。一実施形態では、第1の相補性領域と第2の相補性領域との間のハイブリッドの計算されたTmは、40℃~約60℃である。
【0034】
本発明のキット及び組成物の様々な実施形態では、一次結合剤は、抗体、オリゴヌクレオチド、アプタマー、分子インプリントポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、酵素、小分子、脂質、脂肪酸、金属原子、金属イオン、又は合成ポリマーからなる群から選択されてもよい。特定の一実施形態では、一次結合剤は抗体を含む。別の特定の実施形態では、第1のリンカー及び第2のリンカーのうちの1つはビオチン(任意でオリゴヌクレオチドハイブリッド対の第1の員に連結されている)を更に含み、他方ではストレプトアビジン(任意でオリゴヌクレオチドハイブリッド対の第2の員に連結される)を更に含む。様々な更なる実施形態では、浮遊ラベルは、ガス充填気泡、中空ポリマー、ガラスビーズ、同伴ガスを基礎とする微孔質、不混和性液体の液滴、金ナノ粒子、及び銀ナノ粒子からなる群から選択することができる。特定の一実施形態では、浮遊ラベルは、ガス充填気泡を含む。様々な実施形態において、ガス充填気泡は、脂質、リン脂質、タンパク質、又は炭水化物シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含んでもよい。更なる特定の実施形態では、ガス充填気泡は、リン脂質シェルによって包囲されたペルフルオロオロカーボンガスコアを含む。別の特定の実施形態では、ガス充填気泡は、約1μm~約6.5μmの直径を有する。
【0035】
別の態様では、本発明は、所望の細胞の少なくとも1つの分子型と、非所望細胞の少なくとも1つの分子型の出発混合物からの浮遊活性化細胞選別によって精製された所望の細胞を含む組成物を提供し、出発混合物は、所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも1倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも5倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも10倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも50倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも100倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも500倍、又は所望の細胞として非所望細胞の少なくとも1000倍を含み、
所望の細胞の少なくとも1つの型の回収効率は、80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超であり、
所望の細胞の少なくとも1つの型の純度は、80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超であり、
所望の細胞の少なくとも1つの型の生存率は、90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超であり、
浮遊活性化細胞選別に供される、所望の細胞の少なくとも1つの分子型と非所望細胞の少なくとも1つの分子型との混合物の容積は、10mL超、50mL超、又は100mL超、又は150mL超、又は200mL超、又は400mL超、又は800mL超である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】例示的実施形態による、細胞分離システムの分解図である。
図2】例示的実施形態による、細胞分離システムのカートリッジの断面図である。
図3】例示的実施形態による、細胞分離システムの側面図である。
図4A】例示的実施形態による、カートリッジルーフ上の例示的静的ミキサの斜視図である。
図4B】例示的実施形態による、図4Aの例示的静的ミキサの底面図である。
図5A】例示的実施形態による、カートリッジルーフ上の別の例示的静的ミキサの斜視図である。
図5B】例示的実施形態による、図5Aの例示的静的ミキサの底面図である。
図6】例示的実施形態による、カートリッジの漏斗中の例示的なミキサの断面図である。
図7】例示的実施形態による、カートリッジの例示的蠕動ポンプの断面図である。
図8】例示的実施形態による、例示的な混合モジュールの分解図である。
図9】所望の細胞がCD3細胞であり、本方法が本明細書に記載の細胞分離システムを使用することを含む、本発明の実施形態の例示的なフローチャートである。
図10】非所望の細胞を連続的に除去するために2つ以上の分画遠心分離ステップが実施される、本発明の実施形態の例示的なフローチャートである。
図11】本発明の方法の例示的実施形態を用いて作製された実験データをまとめた図である。
図12】本発明の方法及びシステムの例示的実施形態を用いて作製された実験データをまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用するとき、「及び」は、別段の記載がないかぎり、「又は」と同義に使用される。
【0038】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、列挙されたパラメータの±5%を意味する。
【0039】
本発明の任意の態様の全ての実施形態は、文脈が別の方法を明確に指示しない限り、組み合わせて使用することができる。
【0040】
文脈が明らかに別に必要としない限り、明細書及び特許請求の全範囲にわたって、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などの語は排他的又は徹底的な意味とは反対である包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、「含むが、これらに限定されない」ことを意味する。単数又は複数の数字を使用する語は、それぞれ複数及び単数をも含む。さらに、「本明細書において」、「上記の」及び「以下の」という言葉及び類似の用語は、本出願で使用される場合、本出願全体を参照するものとし、本出願の特定部分には言及しないものとする。
【0041】
本開示の実施形態の説明は、徹底的であることを意図するものではなく、開示を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。本開示の特定の実施形態及び実施例は、例解のために本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、開示の範囲内で様々な均等な変更が可能である。
【0042】
図面を参照すると、図1は、例示的な細胞分離システム100を示す。図1に示すように、細胞分離システム100は、カートリッジ102、制御モジュール104、及びドッキングステーション106を含んでもよい。本明細書で使用するとき、「カートリッジ」は、閉鎖ハウジング内の容器間の細胞の無菌移動を可能にする閉鎖ハウジング(ルーフを有する)であり、細胞、結合剤、浮遊ラベル、及び浮遊試薬を混合して、一時的に流体接続される3つ以上の機械的に接合されている容器を備える連結を達成する。カートリッジ102は、250mLまでの液体を保持することができ、円筒形でもよく、単回使用用であってもよく、好ましくは硬質プラスチック、より好ましくは光学的に透明なポリカーボネートで構成されてもよい。他のある実施形態では、カートリッジ102は再使用可能である。制御モジュール104は、カートリッジ102に取り外し可能に連結されてもよい。制御モジュール104は、光学的感知及び重力感知を有する電気機械的装置である。具体的には、制御モジュール104は、カートリッジ102の底部における細胞界面の光学的感知を提供し、以下に更に詳細に説明するように、カートリッジ102の様々な容器間の活性を制御するために1つ以上の可逆的閉鎖装置を制御するように構成され得る。ドッキングステーション106は、制御モジュール104に取り外し可能に連結されてもよく、制御モジュール104を再充電するために使用されてもよい。さらに、ドッキングステーション106は、無線又は有線接続を介して1つ以上のプロトコルを受信してもよく、制御モジュール104によって受信されたデータのダウンロード及び処理を行うように更に構成されてもよい。ドッキングステーション106は、好ましくは、充電式バッテリシステムを使用して、重力感知及び光学的感知設備を監視及び制御し、カートリッジ102内の活性を指示する制御モジュール104に電力を供給する。G力を決定するための手段は、遠心分離機RPMの測定から、又は加速度又は力の直接測定から力を計算するなど、当該技術分野において一般的に公知の任意のものであり得る。
【0043】
カートリッジ102が制御モジュール104に取り外し可能に取り付けられるとき、制御モジュール104の光学センサ又は他のセンサなどの1つ以上の検出器を使用して、カートリッジ102を通って流れる細胞の型を検出することができる。さらに、制御モジュール104は、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の光学的又は他のエミッタを備えてもよい。例示的実施形態では、4つの赤外線エミッタ/検出器対が制御モジュール104内に垂直に配置される。好ましい実施形態では、赤外線センサは、一対の赤外線エミッタから直接横切って配置される。第2の好ましい実施形態では、赤血球によって優先的に吸収される波長を供給する伝送器は、その周波数に敏感である一対のセンサから直接横切って配置される。第3の好ましい実施形態では、吸収された蛍光染料を有する細胞を同定するセンサが利用される。第1の好ましい実施形態では、細胞の存在が発せられた赤外光と干渉し、赤外光検出器が流体を透過する信号の振幅を定量化する。好ましい実施形態では、センサは、送信レベルの0~1000の値を割り当てることができる。水に似ている純粋な血奬は、赤外光のいずれも遮断されることなく、およそ1000の値を記録する。コンパクトになったRBCがセンサ/エミッタ対の間を通過すると、本質的にすべての赤外光が遮断され、検出器は値0を記録する。
【0044】
図2は、カートリッジ102の断面図を示す。図2に示すとおり、カートリッジ102は、少なくとも1つの入口ポート110と、第1の出口ポート112と、第2の出口ポート114とを含む処理容器108を備える。カートリッジ102はまた、入口ポート118を備える第2の容器116と、入口ポート122及び第1の出口ポート124を備える第3の容器120とを備える。以下のプロセスで説明するように、正常血液、臍帯血又は骨髄などの細胞を含む生物学的流体は、少なくとも1つの入口ポート110を介して処理容器108に送達される。カートリッジ102の第2の容器116は、大型の第1の剛性貯蔵区画又はRBC枯渇区画を含み、第3の容器120は、その中にWBC及び実質的に全てのSPCが移される、より小型の第2の剛性貯蔵区画又はSC区画を含む。第2の容器116は、血液試料から枯渇したRBCの量が回収されるWBCの量よりも常に非常に多いことから、第3の容器120よりもかなり大きい。全ての区画は、カートリッジ102内で互いに異なるが、気流に対して連続している。第2の区画116及び第3の区画120は、細胞溶液が処理チャンバ108から第2及び第3の容器116、120に移動する際、空気の移動が可能ではあるが、容器間において流体移送はできないように、小さいがフィルタ処理されているか、又は十分に細い通気孔によって処理容器108に接続されていてもよい。一実施形態では、処理容器108はほぼ円錐形の中央容器であり、第2及び第3の容器116、120は円周方向に配置された小さな容器である。容器は、所与の目的のために任意の適切な量であり得る。一実施形態では、第3及び第2の容器116、120は、それぞれ、追加の通常は閉鎖しているポートを更に備え、重力排水のために、又は空気フィルタ192を通して空気圧を加えた結果として、カートリッジ102の外部の任意の適切な受け入れ容器への任意の接続点を提供する。更なる実施形態では、処理容器108内の流体は、容器内の流体のレベルが内部剛性投入チューブ110において最も低い点以下まで降下すると停止する、空気フィルタ192を通して空気圧を適用することによって内部投入チューブ110を通って除去してもよい。
【0045】
図2に示すように、カートリッジ102はまた、処理容器108の第1の出口ポート112及び第2の容器116の入口ポート118とを接続する第1の導管126を備える。第1の導管126は、第1の可逆的閉鎖装置128を備える。第2の容器116は、第1の可逆的閉鎖装置128が開かれたときに、処理容器108から第2の容器116への流体の流れのみが生じ得るように、処理容器108に一時的に流体接続される。カートリッジ102はまた、処理容器108の第2の出口ポート114及び第3の容器120の入口ポート122とを接続する第2の導管130を備える。第2の導管130は、第2の可逆的閉鎖装置132を備える。第3の容器120は、第2の可逆的閉鎖装置132が開かれたときに、処理容器108から第3の容器120への流体の流れのみが生じ得るように、処理容器108に一時的に流体接続される。
【0046】
本明細書で使用するとき、「可逆的閉鎖装置」とは、流体の流れを禁ずるために閉鎖することができる(例えば、制御装置によって)任意の装置である。このような例示的な装置としては、これらに限定されないが、弁、クランプ、及び止めコックが挙げられる。本明細書で使用するとき、「一時的に流体接続された」は、一方の容器から別の容器への流体又は細胞懸濁液の無菌移送を達成するために、装置の常時閉鎖弁の開口部を介して一時的に接続されたとき以外、容器が流体非連続的である(すなわち、各々が機能的に閉鎖している)ことを意味する。「導管」は、これに限定されるものではないが、チューブなど、容器間の流体移送を可能にする任意の適切な装置であってもよい。全ての導管は、導管が閉鎖されないようにカートリッジ組立中に取り付けたピンを操作員が取り外すとすぐに、容器が流体接続されないように「常時閉鎖」となる。導管は、弁、クランプ又は止めコックなどの任意の適切な可逆的閉鎖装置によって閉鎖されてもよい。一実施形態では、カートリッジ内の導管は、流体が通過すべき時を除いて常にバネ式チューブ挟持機構によって閉鎖されてもよく、その時点で挟持機構を回転させて(例えば、導管の可逆的開口を自動的に制御する制御モジュールによって)流体を通過させることができ、その後、再び回転させて、バネ式チューブ挟持機構により導管を再び挟持することによってその通路を閉鎖できる。このような例では、可逆的閉鎖装置は、幅約0.088インチの挟持面を有する2つの対向するクランプを備え、チューブ内の液圧が325PSIのときに、内径が0.062インチ、外径が0.088インチのウレタンチューブを通る全流体の通過を遮断するために約1.6ポンドの挟持力を必要とする。より大きい圧力では、1.6ポンドを超える挟持力が必要となる場合があり、また、より低い圧力では少ない挟持力で十分な場合もある。このような例では、カンチレバーシステムを使用して、これらの必要な挟持圧を達成することができる。カンチレバーシステムは、必要に応じて導管を開閉する(チューブを挟持し、解放する)ことができる。バネは各カンチレバーに設けられてもよく、好ましくはカンチレバーの最端部に配置される。アクチュエータは、バネの抵抗を超えて、レバーを動かす。一旦アクチュエータに力が加わらなくなると、バネの付勢力によってレバーが第1の位置に戻る。
【0047】
上記のように、処理容器108又は他の容器は、細胞の存在又は非存在を検出するための少なくとも1つの検出器によって任意に検索することができる。このような実施形態では、制御モジュール104は、少なくとも1つの検出器から中継された情報に基づいて、第1の可逆的閉鎖装置128及び/又は第2の可逆的閉鎖装置132の開閉を制御する。図1に関連して上述したように、これに限定されないが、光検出器など、任意の適切な検出器を使用することができる。
【0048】
以下に詳細に説明するように、作動中、RBCは、処理容器108の底部に向かって最初に移動し、第1の可逆的閉鎖装置128及び第2の可逆的閉鎖装置132が存在する処理容器108の底部に達するまで遠心分離機の回転軸から半径方向外側に移動する。ここで、処理容器108の底部の上にある流体の圧力ヘッドは、流体を2つの区画:第2の容器116又は第3の容器120のいずれかに押し出す。流体がどの区画に配向されるかは、第1の可逆的閉鎖装置128及び第2の可逆的閉鎖装置132の状態(開放、閉鎖)に依存する。いずれの場合でも、第1の可逆的閉鎖装置128及び/又は第2の可逆的閉鎖装置132を通過した後、流体は、一般に、処理容器108内に残存している流体(主に血漿)からの圧力によって押し出され、回転軸に向かって流れる。第1の可逆的閉鎖装置128及び/又は第2の可逆的閉鎖装置132を通過した流体は、その後、第2の容器116又は第3の容器120のいずれかに保持される。第1の可逆的閉鎖装置128及び/又は第2の可逆的閉鎖装置132を微調整することにより、不要な細胞溶液が枯渇する場合もあり、所望の細胞溶液が採取され得る。
【0049】
図3に示すように、細胞分離システム100は、少なくとも1つのポート136を備える移送容器134を更に備えてもよい。移送容器134は、カートリッジ102に機械的に連結されてもよく、又は、システムを機能的閉鎖ステムとして維持するために、移送容器134をカートリッジ102内の容器に接続する関連導管を介してのみ物理的に接続されてもよい。このように、一実施形態では、移送容器134はカートリッジ102の内部にあり、別の実施形態では、移送容器134は、カートリッジ102の外部にある。様々な容器は、剛性構造、袋、ボトル、又は任意の他の好適な構造などの任意の好適な材料を含むことができる。一実施形態では、各容器は硬質プラスチック容器(これに限定されないがポリカーボネートなど)などの剛性容器である。別の実施形態では、移送容器134は、これに限定されないが袋などの可撓性容器である。採取された標的細胞の入った溶液での移送開始時に容器内の空気は、その移送容器を処理容器に接続する関連導管に沿って置換できるため、移送容器134は剛性容器であり得る。また、移送容器134は可撓性容器であってもよく、これは例えば、遠心中に遠心分離機のロータ区画に保存するのを容易にするために、小さな形状に折り畳み可能であるという利点を有する。
【0050】
さらに、図3に示すように、細胞分離システム100は、第3の容器120の第1の出口ポート124を移送容器134の少なくとも1つのポート136に接続する少なくとも第3の導管138と、処理容器108の少なくとも1つの入口ポート110への移送容器134の少なくとも1つのポート136を更に備える。少なくとも第3の導管138は、第3の容器120が移送容器134に一時的に流体接続され、移送容器134が処理容器108に一時的に流体接続されるように、少なくとも第3の可逆的閉鎖装置140を備える。少なくとも第3導管138は、(I)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置140が開かれたとき、第3の容器120から移送容器134への流体の流れのみが生じ得るか、又は(II)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置140が開かれたときに、移送容器134から処理容器108への流体の流れのみが生じ得るか、のいずれか1つのみが真であるように構成されている。
【0051】
第3の容器120の第1の出口ポート124から移送容器134へと、移送容器134から処理容器108の少なくとも1つの入口110への間の第3の導管138もまた、任意の好適な可逆的閉鎖装置によって常時閉鎖されている。一実施形態では、第3の導管138は、第3の可逆的閉鎖装置140(第3の容器120の第1の出口ポート124にちょうど隣接している)によってカートリッジ102の外部にクランプで締めてもよく、(例えば、隔離された接着細胞を第3の容器120から移送容器134へ重力排水することによって)第3の容器120から移送容器134へと隔離された接着細胞を移送するときに、クランプを外してもよい。移送容器134へ移送後、第3の容器用ポート124に隣接する第3の導管138上の第3の可逆的閉鎖装置140を再びクランプで締めてもよい。その際、例えば、隔離された接着細胞は、隔離された接着細胞(これに限定されるものではないが、ホスト液体から細胞及び血小板非含有血漿を結合させる単核細胞など)の亜集団を単離/富化することなど、更なる処理のために、隔離された接着細胞を処理チャンバ108に戻して重力排水することによって)、第3の導管138を通って処理容器108に移送されてもよい。従って、移送容器134は、カートリッジ102を再使用し得ることから、経済的利点をもたらす。加えて、移送容器134は、標的細胞懸濁液とBACS試薬との混合を改善することができる。
【0052】
細胞分離システム100は、図1に関連して上述したように、制御モジュール104を更に備えてもよい。制御モジュール104は、少なくともカートリッジ102、及び第1及び第2の導管126、130内での活性を制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、制御モジュール104は、移送容器134内及び/又は第3の導管138内の活性を制御することもできる。例えば、制御モジュール104は、移送容器134がカートリッジ102内に存在する実施形態において、移送容器134及び/又は第3の導管138内の活性を制御することができる。制御モジュール104は、遠心分離機内に配設されたときなど、カートリッジ容器108、116、120間の流体の流れを配向する可逆的閉鎖装置128、132、140を制御することができる。1つの非限定的実施形態では、浮遊ラベルに結合する標的細胞を浮遊ラベルに結合していない細胞から分離するように、標的細胞/浮遊ラベル混合物の入ったカートリッジ102を遠心する。制御モジュール104は、第1の可逆的閉鎖装置128を通って非浮遊ペレット化細胞をカートリッジ102の第2の容器116に送達し、カートリッジ102の処理容器108内で、浮遊試薬に結合した上清のバルク及び実質的に全ての標的細胞を残すようにプログラムすることができる。
【0053】
一実施形態では、少なくとも第3の導管138は、単一の導管を備える。この実施形態では、単一の導管のみが移送容器134に流体連結され、導管は、第3の容器120から移送容器134に流れる流体が移送容器134から処理容器108に流れる流体から分離されるように、流体分離され得る。この実施形態では、任意の好適な可逆的閉鎖手段を使用することができる。1つの非限定的例が図3に示されており、少なくとも第3の導管138は、第3の容器120と移送容器134との間、及び移送容器134と処理容器108との間に配設されたT又はYコネクタ144を含み、適切な可逆的閉鎖装置140、146を備えて、所望の流体の流れを調節する。
【0054】
更なる実施形態では、移送容器の少なくとも1つのポートは、第1の入口ポート148及び出口ポート150を備える。この実施形態では、少なくとも第3の導管138は、(i)第3の容器120の出口ポート124を移送容器134の入口ポート136に接続する第3の導管138であって、第3可逆的閉鎖装置140が開かれたときに第3の容器120から移送容器134への流体の流れのみが生じ得るように、第3の容器120が移送容器134に一時的に流体接続されるように、第3可逆的閉鎖装置140を備える第3の導管138と、(ii)移送容器134の出口ポート136を処理容器108の少なくとも1つの入口ポート110に接続する第4の導管152であって、第4の可逆的流体開閉装置146が開かれたときに、移送容器134から処理容器108への流体の流れのみ生じ得るように、移送容器134が処理容器108に一時的に流体接続されるように、第4の可逆的閉鎖装置146を備える、第4の導管152と、を備えてもよい。この実施形態では、完全に別個の導管138、152を使用することによって、第3の容器120から移送容器134へ流れる流体と、移送容器134から処理容器108へ流れる流体から離れる流体との分離が可能になる。
【0055】
更に別の実施形態では、処理容器108の少なくとも1つの入口ポート110は、第1の入口ポート154及び第2の入口ポート156を備え、少なくとも第3の導管138又は第4の導管152(存在する場合)は、移送容器134の出口ポート136を処理容器108の第1の入口ポート154に接続する。このような実施例では、細胞分離システム100は、処理容器108の第2の入口ポート156を少なくとも1つの培地リザーバ160に接続する第1の培地投入導管158を更に備えてもよく、第1の培地投入導管158は、少なくとも第5の可逆的閉鎖装置162を備え、少なくとも第5の可逆的閉鎖装置162が開かれたときに、少なくとも1つの培地リザーバ160から処理容器108への流体の流れのみが生じ得るように、少なくとも1つの培地リザーバ160が処理容器108に一時的に流体接続される。
【0056】
培地投入リザーバ(複数可)160は、第2の入口ポート156を通って処理容器108にホスト液体、結合剤、浮遊ラベル、及び/又は浮遊試薬を供給するために使用することができる。
【0057】
更に別の実施形態では、処理容器108の少なくとも1つの入口ポート110は、第3の入口ポート157を備える。第3の入口ポート157は、第5の導管159に連結されてもよい。このような実施例では、フィルタ186に正圧を加えることによって、処理チャンバ108から液体を除去することができる。
【0058】
一実施形態では、移送容器134の少なくとも1つのポートは、第2の入口ポート161を更に備える。例えば、細胞分離システム100は、移送容器134の第2の入口ポート161を少なくとも1つの培地リザーバ(図示せず)に接続する第2の培地投入導管163を更に備えてもよく、第2の培地投入導管163は、少なくとも第6の可逆的閉鎖装置165を備え、少なくとも第6の可逆的閉鎖装置165が開かれたときに、少なくとも1つの培地リザーバから移送容器134への流体の流れのみが生じ得るように、少なくとも1つの培地リザーバが処理容器108に一時的に流体接続される。
【0059】
培地投入リザーバ(複数可)は、第2の入口ポート161を通って、移送容器134にホスト液体、結合剤、浮遊ラベル、及び/又は浮遊試薬を供給するために使用することができる。少なくとも1つの培地リザーバが処理容器108及び移送容器134の両方に一時的に流体接続されている実施形態では、培地リザーバ(複数可)は同じリザーバであってもよく、又は各容器はそれ自身の専用のリザーバ(複数可)を有してもよい。
【0060】
更なる実施形態では、細胞分離システム100は、ミキサを更に備える。ミキサは、例えば、(a)浮遊試薬とホスト液体、並びに/又は(b)浮遊ラベル、結合剤、及びリンカー(存在する場合)、並びに/又は(c)浮遊ラベル、結合剤、リンカー(存在する場合)、及びホスト液体の混合を促進する/改善するために使用され得る。一実施形態では、ミキサは静的ミキサである。静的ミキサは、これに限定されるものではないが、円筒形チューブの内部長さ全体にわたって配向されたミキサ要素を備える円筒形チューブなどの構成において、容器を同時に通過する2種の流体の連続混合を提供する間も依然として静止している入口及び出口を有する容器を備える。
【0061】
(標的細胞懸濁液(主要成分)及びBACS試薬(添加剤)を混合するなど)本発明の装置での混合に適した例示的静的ミキサを図4A図5Bに示す。上記の培地リザーバは、第5及び第6の可逆的閉鎖装置を通って静的ミキサに一時的に流体接続されてもよい。図4A及び図4Bに示すように、1つの非限定的実施形態では、静的ミキサ164は、カートリッジルーフ170の内面168に取り付けられたインペラ166を備えることによって、カートリッジ102をその軸上で回転させるように作用し、例えば、BACS試薬及び標的細胞の入った溶液を処理容器内で混合する。図4A図4Bの設計の利点は、カートリッジの内部に加えた混合物が適所に接着されることであり、このため、装填されたカートリッジをプログラム可能な時間、ローラテーブル装置に単に置くことによって、細胞溶液及びBACS試薬での混合が生じる点である。
【0062】
図5A及び図5Bに示すように、別の非限定的実施形態では、静的ミキサ164は、カートリッジルーフ170の内面168から離間配置されたインペラ166を備えることによって、カートリッジ102をその軸上で回転させるように作用し、例えば、BACS試薬及び標的細胞の入った溶液を処理容器内で混合する。図5A~5Bの設計の利点は、カートリッジの内部に加えた混合物がモータ手段によって駆動されるその軸上で回転し、このため、カートリッジが直立したままであり、遠心分離機から取り外す必要がない点である。
【0063】
別の非限定的実施形態では、図6に示すように、ミキサは、カートリッジ102の処理容器108内でBACS試薬と標的細胞の入った溶液との混合物に循環運動を付与するように作用し、その間カートリッジ102は静止した状態を維持している。このような実施形態は、インペラ172を駆動して、これによって処理容器108内で混合を行われるように構成されたモータ176と共に、円筒状チューブ174内に位置付けされたインペラ172を備えてもよい。
【0064】
図7に示すように、別の非限定的実施形態では、ミキサは、第1の端部182及び第2の端部184を有するポンプ導管180を含む蠕動ポンプ178を備え、ポンプ導管180の第1の端部182は、処理チャンバ108内に位置付けられ、ポンプ導管180の第2の端部184は、処理チャンバ108の外側に位置付けられ、かつ処理チャンバ108の少なくとも1つの入口ポート110に接続される。
【0065】
図8に示すように、更に別の非限定的実施形態では、ミキサは、混合モジュール194を備える。混合モジュールは、底部195及び頂部196を備えてもよい。図8に示すように、カートリッジ102は、底部195に位置付けされるように構成されてもよく、頂部196は、底部195に取り外し可能に連結されるように構成されてもよい。したがって、カートリッジ102は、底部195及び頂部196によって形成されたチャンバ内に位置付けられてもよい。1つの非限定的実施形態では、混合モジュール194は、底部195に連結された回転可能な構成要素197を備えてもよい。回転可能な構成要素197は、カートリッジ102をその垂直軸上で回転させるように構成され得る。回転可能な構成要素197は、モータに連結されてもよく、次に混合モジュール194の底部195を回転させる。1つの特定の実施例では、回転可能な構成要素197は、カートリッジ102をその垂直軸上で180度回転させて、カートリッジ102の底部が垂直位置にあるように構成され、次に回転可能な構成要素197によってカートリッジ102が元の直立位置まで180度戻って回転させる。別の実施例では、回転可能な構成要素197は、ある時間にわたって様々な回転速度で360度にわたって連続的に回転しながらカートリッジ102を回転させるように構成される。別の非限定的実施形態では、混合モジュール194の底部195は、振動して、混合を補助するように構成されてもよい。別の非限定的実施形態では、混合モジュール194は、カートリッジ102が混合モジュール194の底部195に位置付けられたときに、カートリッジ102の温度を上昇させるように構成されてもよい。このような温度の上昇は、混合モジュール194の底部195における伝導、対流、又は輻射加熱によって起こり得る。
【0066】
図8に示すように、混合モジュール194は、混合制御モジュール198を備えてもよく、制御パネル199及びディスプレイ200を備えてもよい。制御パネル199を使用して、混合のための時間、並びに1つ以上の混合パラメータを選択することができる。例えば、使用者はある時間180度の混合を選択し、ある時間360度の混合、ある時間特定の温度での加熱、及び/又はある時間振動することを選択することができる。他の例もまた、可能である。
【0067】
様々な実施形態では、第1の培地投入導管158及び/又は第2の培地投入導管は、フィルタ186を更に備える。処理容器及び/又は標的容器への培地の無菌導入を促進するために任意の好適なフィルタ(0.2ミクロンフィルタ又は大きな粒子を除去するための他の好適なサイズのフィルタを含むが、これに限定されない)は、培地投入導管(複数可)に連結して使用することができる。このようなフィルタの例示的配置は、例えば、図3に見ることができる。
【0068】
別の実施形態では、第2の容器116は、第1の廃棄物導管190に連結された出口ポート188を備える。この実施形態は、第2の容器116から廃棄物を除去することができる。更なる実施形態では、処理容器108は、第2の廃棄物導管(図示せず)に連結された無菌通気口192を更に備える。この実施形態では、処理容器108から廃棄物を除去することができる。このような無菌通気口192の例示的配置は、例えば、図1及び図2に見ることができる。
【0069】
別の態様では、本発明は、
機能的閉鎖システムにおいて少なくとも10mL(あるいは、少なくとも25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mLなど)の容積を有するホスト液体を処理することであって、ホスト液体は、(i)標的細胞及び(ii)浮遊試薬を含み、1種以上の浮遊試薬へ細胞の接着を促進するのに適した時間及び条件下で標的細胞及び浮遊試薬を接触させて、接着標的細胞を生成することを含む、処理することと、
(b) 遠心などのベクトル力を機能的閉鎖システム内でホスト液体に適用して、接着標的細胞をホスト液体内で層状化させることと、
(c) 接着標的細胞を機能的閉鎖システム内の任意の領域に隔離すること、とを含む細胞分離方法を提供する。
【0070】
本発明のこの態様の方法におけるステップは全て、従来の細胞分離法を用いて可能であったものよりも、無菌性を維持し、より高い効率及び生存率で、かつより高い濃度で所望の細胞を単離するために、より大量のホスト液体の処理が可能であるように、機能的閉鎖システムにおいて行う。全ての流体移送ステップ及び処理ステップは無菌条件下で行われ、環境は閉鎖され無菌状態を維持している。
【0071】
本明細書で使用するとき、「機能的閉鎖システム」は、無菌容器間の断続的な流体の移動及び/又はその周囲大気とのガス交換を可能にしつつ、内部で無菌を維持している容器又は容器の集合体である。
【0072】
以下の表1に要約するように、臍帯血及び末梢血(例示的ホスト液体)の処理により、赤血球(RBC)が99.6%、顆粒球が80%、血小板が84%枯渇し、単核細胞(MNC)富化分画となる(表中、太字垂直線の左側に「BACS MNC調製物」と表記されている)。この最初のMNC富化後、MNCが依然として豊富な細胞集団のほんの一部を呈し、CD34及びCD3細胞などの細胞外分子標的を発現する特異的細胞が、富化MNC細胞調製物のほんのわずかな割合を呈するように、RBC及び血小板が依然として優勢である。本発明は、RBC99.999%、顆粒球99.9999%(臍帯血)又は99.96%(末梢血)及び血小板98.2%の最終枯渇まで更に枯渇させることにより、対象の分子マーカーを有する標的細胞を単離する能力の劇的な増加をもたらす(表中、太い垂直線の右側に「BACS最終」及び「BACS細胞選択効率」と表記されている)。本発明の方法は、79%(臍帯血)又は80%(末梢血)の選択効率で標的細胞を回収しながら、99.993%(臍帯血)又は98.788%(末梢血)に対して非標的MNCの枯渇を可能にする。したがって、本発明の方法により、臨床応用に必要な量の出発ホスト液体から細胞集団中の対象の標的細胞を単離する能力が指数関数的に増加することとなる。本発明の予備のMNC調製ステップにおける標的細胞の非常に高い保持率と、BACS細胞単離ステップにおける標的細胞の高回収率とが組み合わさることにより、総合的な効率が高くなり、可能な限り多くの標的細胞を使用することによって細胞産生コスト又は治療結果のいずれかが最適化される多くの遭遇する状況において、本発明の商業的及び治療上の利点を示す。
【表1】
【0073】
以下の実施例に示すように、本発明の方法は、わずか5×10細胞/mLから少なくとも105×10細胞/mLの範囲の細胞密度で満足できる標的細胞回収効率(70%超)をもたらす。これは、20倍以上の範囲であり、後者は、細胞が総容量のおよそ20%を占める懸濁液である。浮遊ラベルそのものが大きな粒子(ガス充填気泡などのumスケールの公称直径)であることから、非常に高い細胞密度を含むこうした広い細胞密度範囲にわたるこのような頑強で一貫した性能は驚くべき結果であり、従って、磁気ナノ粒子(公称直径50nm)などのはるかに小さい試薬とは異なり、高密度懸濁液を介して翻訳する能力が制限されている。高い回収効率を達成するためには、各細胞は複数の浮遊試薬に結合する必要がある可能性が高い。これは、驚くことに、全ての細胞/泡の衝突により、生産的な結合事象をもたらすわけではない可能性と組み合わせて、許容できないほど細胞生存率を低下させる剪断力を適用することなく、比較的大きな浮遊試薬を非常に高密度の細胞懸濁液と十分によく混合して、合理的な時間内で満足できる標的細胞回収を達成することができる。
【0074】
本明細書で使用するとき、「ホスト液体」は、所望の細胞(これらに限定されないが、全血、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球除去輸血、バフィコート、培養細胞懸濁液、又は遺伝子改変細胞懸濁液、又は他の産生細胞懸濁液など)の原料源であり、非所望細胞と混合し、希釈されていても、希釈されていなくてもよい(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、細胞培養培地、プロテアーゼ溶液などの所望の細胞を単離するのに有用な緩衝液又は他の液体で希釈する)。一実施形態では、ホスト液体は、末梢血、臍帯血、又は白血球除去輸血、又はそれらの希釈液である。
【0075】
一実施形態では、ホスト液体は、関連するホスト液体中に通常存在する全ての細胞が存在し続けるという点で、「非枯渇」ホスト液体であり得る。別の実施形態において、ホスト液体は、枯渇ホスト液体を含み得る。「枯渇」ホスト液体は、非所望細胞の1つ以上の型のかなりの分画(例えば、少なくとも50%、他の実施形態では、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)が枯渇しているホスト液体である。枯渇ホスト液体は、密度遠心分離、分画遠心分離、若しくは溶解を介して全血から赤血球を枯渇させた後、若しくは赤血球及び顆粒球が枯渇している、若しくは血小板が枯渇している、所望の細胞の入った懸濁液を含んでもよい。又は、非改変細胞が枯渇している遺伝子改変細胞の懸濁液を含んでもよく、又は、非幹細胞が枯渇した消化組織試料を含んでいてもよく、又は、非新生物細胞が枯渇している消化腫瘍試料を含んでもよい。枯渇ホスト液体の全ての実施形態において、所望の細胞は、これらに限定されないが、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、細胞培養培地、希釈又は希釈されていない原液のホスト液体(すなわち、全血など)などの任意の好適な液体に懸濁されてもよい。
【0076】
本明細書で使用するとき、「所望の細胞」(複数の「所望の細胞」)は、本発明の方法の中間産物又は最終産物において富化又は単離される細胞(複数可)である。
【0077】
本明細書で使用するとき、「標的細胞」(複数の「標的細胞」)は、浮遊試薬が本発明の方法によって他の細胞からそれらを分離するために接着される細胞(複数可)である。一実施形態では、標的細胞は所望の細胞である(すなわち:陽性選択)。別の実施形態において、標的細胞は、非所望細胞の全部又は一部を構成する(すなわち、陰性選択)。本発明の方法及びシステムは、任意の好適な標的細胞とともに使用することができる。種々の非限定的実施形態では、標的細胞は、脂肪組織、培養細胞、遺伝子改変細胞、及びこのような標的細胞の亜集団に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球、顆粒球、単核細胞、リンパ球、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、間質血管分画細胞に見出される腫瘍細胞、癌幹細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、間葉系幹細胞及び前駆細胞、脂肪由来幹細胞及び前駆細胞、内皮前駆細胞からなる群から選択されてもよい。様々な特定の実施形態では、標的細胞は、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞の標的細胞であってもよい。
【0078】
一実施形態では、ホスト液体は、所望の細胞の初期細胞の懸濁液の希釈液を含む。この実施形態において、本発明の方法により処理する直前のホスト液体は、所与の細胞分離手順に適切である場合、50倍から40倍、30倍、20倍、10倍、4倍(すなわち:4倍)、3倍以下、2倍以下、1倍以下、0.5倍以下、0.25倍以下、0.1倍以下、又はそれ以下で希釈してもよい。任意の好適な希釈剤を使用することができる。1つの非限定的実施形態において、所望の細胞はCD3細胞であり、ホスト液体は、最初の非希釈ホスト液体の2倍~4倍の間の希釈液を含んでもよい。
【0079】
本明細書で使用するとき、「浮遊ラベル」は、(細胞接着時に)標的細胞単独の密度及び/又はホスト液体の密度とは実質的に異なる密度を有する細胞及び浮遊ラベルの複合体となる材料である。好適なこのような浮遊ラベルには、これに限定するものではないが、タンパク質又は脂質シェルを有するガス封入気泡、中空ポリマー、ガラスビーズ(中空又は固体のいずれか)、ガス含有微孔性ビーズ、不混和性液体の液滴、金ナノ粒子及び銀ナノ粒子を挙げることができる。1つの特定の実施形態において、浮遊ラベルは、タンパク質、脂質、リン脂質、又は炭水化物シェルに包含されるようなガス封入気泡を含む。一実施形態では、ガス充填気泡は、リン脂質シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含む。これらの実施形態のいずれにおいても、ガス充填気泡は、任意の好適な直径を有することができる。1つの非限定的実施形態では、ガス充填気泡は、約1μm~約6.5μmの直径を有する。
【0080】
一実施形態では、浮遊ラベルは、共有結合又は非共有結合のいずれかで浮遊ラベルに接着させた少なくとも1つの結合剤を含み、接着は任意でリンカーを介してもよい。この実施形態は、本明細書では「浮遊試薬」と称される。本明細書で使用するとき、「結合剤」は、少なくとも1つの標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープと十分に高い親和性及び特異性により結合できる分子などの構造体である。好適な結合剤は、これらに限定されないが、抗体、オリゴヌクレオチド、アプタマー、分子インプリントポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、酵素、小分子、脂質、脂肪酸、金属原子、金属イオン、及び合成ポリマーを挙げることができる。一実施形態では、結合剤は、標的細胞上の細胞エピトープに選択的に結合する抗体を含む。本明細書で使用するとき、「一次結合剤」は、それに接着した浮遊ラベルを有さない結合剤である。本明細書中で使用されるとき、「リンカー」(又は個々に「リンカー」)は、共有結合又は非共有結合により一方は結合剤に、他方は浮遊ラベルに接着された一対の化学的部分(第1のリンカー及び第2のリンカー)を含み、それらはリンカーを介して、好適な培地、十分に高い親和性を有する好適な条件下で自然に互いに接着して(共有結合的に又は非共有的の一方で)、浮遊ラベルへ結合剤の間接的な結合を達成し、浮遊試薬を形成することができる。ある実施形態では、少なくとも1つの第1リンカー部分は、機能的に露出されたアビジン又はストレプトアビジンであり、第2リンカー部分は、単独で又は本明細書に記載のオリゴヌクレオチド結合対と連結される、ビオチン又はビオチン誘導体である。
【0081】
他の実施形態では、第1のリンカーは第1のオリゴヌクレオチドであり、第2のリンカーは第1のオリゴヌクレオチドに対してその長さの少なくとも一部にわたって相補的であり(完全に相補的であるなど)、塩基対を介して第1のオリゴヌクレオチドに結合可能である第2のオリゴヌクレオチドである。
【0082】
ある実施形態では、2種以上の異なる浮遊ラベルの組み合わせが用いられ、1つ以上は液体媒体の密度よりも実質的に高い密度を有し、1つ以上は液体媒体より実質的に低い密度を有する。1種以上の異なる浮遊ラベルに接着した1種以上の結合剤は、1つ以上の異なる分子標的を標的化してもよく、又は同じ分子標的を全て標的化してもよく、1つ以上の分子標的は、所望の分子、又は非所望分子上にあってもよい。
【0083】
ある実施形態では、結合剤-一次中、ホスト液体に添加された1種以上の結合剤の量は、細胞懸濁液の標的細胞上の結合剤の結合部位を実質的に飽和するのに十分であり、浮遊ラベルの細胞結合性結合剤への結合に実質的に干渉するのに十分ではない混合物中に残存している任意の量の非結合結合剤のみが残り、このため、浮遊ラベルを添加する前に非結合結合剤を除去する必要がなくなる。
【0084】
更なる実施形態では、ホスト液体に添加する1種以上の結合剤の量は、これらに限定されないが、例えば、血液分析器、フローサイトメトリー、顕微鏡法、沈降法、酵素アッセイ、ELISAなど、当業者に公知の任意の好適な手段を用いて、ホスト液体中に存在する標的細胞の数を事前に数えることによって求められる。ある実施形態では、ホスト液体に添加する1種以上の結合剤の量は、ホスト液体のアリコートに対して2種以上の量の結合剤の範囲を試験することによって決定される。更なる実施形態では、使用される1種以上の結合剤の量は、標的細胞上に存在する結合剤結合部位の数の最大で40倍である。
【0085】
種々の結合剤、リンカー、及び浮遊ラベルは、集合的に「浮遊活性化細胞選別試薬」(BACS試薬)と称されてもよい。
【0086】
浮遊試薬は、これらに限定されないが、産生された浮遊試薬、二次浮遊試薬、結合剤-一次浮遊試薬、浮遊-一次浮遊試薬、及び同時浮遊試薬など、浮遊ラベルと結合剤/任意のリンカーとの任意の好適な組み合わせによって生産されてもよい。本明細書で使用するとき、「産生された浮遊試薬」は、浮遊ラベル及び結合剤がホスト液体と接触する前に浮遊試薬を形成するように互いに接着される浮遊試薬である。
【0087】
本明細書で使用するとき、「二次浮遊試薬」は、ホスト液体を浮遊ラベル及び別個の結合剤と接触させたときに自発的に組み立てられる浮遊試薬である。したがって、いくつかの実施形態では、浮遊試薬は、ホスト液体中で組み立てられた二次浮遊試薬を含み、本方法は、ホスト液体を処理して接着標的細胞を生成する前に、結合剤の浮遊ラベルへの接着を促進し、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体を浮遊ラベル及び結合剤と接触させることを含む前処理ステップを更に含む。浮遊ラベル及び別個の結合剤をホスト液体に添加する任意の好適な順序を、意図された目的に適したものとして使用することができる。本明細書で使用するとき、「結合剤-一次」は、ホスト液体を最初に結合剤と接触させ、続いて細胞懸濁液を浮遊ラベルと接触させることによって二次浮遊試薬を形成する順序である。本明細書で使用するとき、「浮遊-一次」は、ホスト液体を浮遊ラベルに最初に接触させて、続いてホスト液体を結合剤と接触させることによって二次浮遊試薬を形成する順序である。本明細書で使用するとき、「同時の順序」は、ホスト液体を浮遊ラベル及び結合剤の両方と実質的に同時に接触させることによって二次浮遊試薬を形成する順序である。
【0088】
1つの非限定的実施形態では、
(i)各結合剤が、(A)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、(B)一次結合剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカーを含み、
(ii)各浮遊ラベルが、浮遊ラベルに結合された第2のリンカーを含み、第2のリンカーは、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第2の相補性領域は、第1の相補性領域と完全に相補的であり、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドは、少なくとも40℃の計算されたTmを有し、
前処理ステップは、第1及び第2の相補性領域のハイブリダイゼーションを促進し、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体を浮遊ラベル及び結合剤と接触させることを含み、
処理することは、接着標的細胞を生成するのに適した条件下で、ホスト液体中で標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含み、この方法は、
(d)ステップ(c)の後、第1の相補性領域及び第2の相補性領域を脱ハイブリダイズさせて浮遊試薬を標的細胞から放出させるのに十分な時間、機能的閉鎖システム内で接着標的細胞を37℃以下の温度に曝すこと、を含む。
【0089】
別の態様では、本発明は、
(a)ホスト液体を提供することであって、ホスト液体が接着標的細胞を含み、各接着標的細胞が、
(i)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合した結合剤、
(ii)剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)浮遊ラベルに結合された第2のリンカーを含む浮遊ラベルであって、第2のリンカーは、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第2の相補性領域は第1の相補性領域と完全に相補的であり、第2の相補性領域は第1の相補性領域にハイブリダイズしてハイブリッドを形成し、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドは、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、浮遊ラベルを含む、ホスト液体を提供することと、
(b)遠心などのベクトル力をホスト液体に適用して、接着標的細胞をホスト液体内で層状化させることと、
(c)接着標的細胞を隔離することと、
(d)ステップ(c)の後に、第1の相補性領域及び第2の相補性領域を脱ハイブリダイズさせて標的細胞から浮遊ラベルを放出させるのに十分な時間、接着標的細胞を37℃以下の温度に曝すこと、を含む細胞分離方法を提供する。
【0090】
この態様では、これらの方法は、機能的閉鎖システムで実施してもよく、又は開放システムで実施してもよい。この方法は、任意の好適な容量で実施することができる。この態様の一実施形態において、この方法は、少なくとも1ml、2ml、5ml、10ml、25ml、50ml、100ml、又は少なくとも200mlの容量で実施される。
【0091】
一実施形態では、接着標的細胞は、ホスト液体中の標的細胞と、結合剤、第1のリンカー、及び第2のリンカーを含む産生された浮遊試薬とを接触させることを含む処理ステップによって、ステップ(a)の前に生成され、第2の相補性領域は、ハイブリッドを形成するために第1の相補性領域にハイブリダイズされ、産生された浮遊試薬の1つ以上への細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で接触が行われる。別の実施形態では、接着標的細胞は、ステップ(a)の前に、
(A)第1及び第2の相補性領域のハイブリダイゼーションを促進し、浮遊試薬を生産するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体を浮遊ラベル及び第1リンカーに結合した結合剤と接触させることと、
(B)接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で、ホスト液体中で標的細胞及び浮遊試薬を接触させることと、を含む処理ステップによって生成される。
【0092】
これらの異なる実施形態/態様において、第1のオリゴヌクレオチドは、第2のオリゴヌクレオチド中の第2の相補性領域と完全に相補的である第1の相補性領域を含む。当業者に理解されるように、第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、意図された目的(例えば、ビオチン又はストレプトアビジンなどのリンカーの別の成分にオリゴヌクレオチドを結合するため)に適した追加のヌクレオチドを含み得る。この実施形態では、ハイブリダイズした相補性オリゴヌクレオチドは、可逆的様式で結合剤(抗体など)を浮遊ラベル(例えば、ガス充填気泡)に連結し、第1及び第2の相補性領域との間に形成されたハイブリッドを脱ハイブリダイズするほど十分に細胞懸濁液の温度を上昇させることによって標的細胞をそれらの結合した気泡から放出させることができる。本発明者らは、驚くべきことに、40℃以上の理論的Tmを有するハイブリッドは、このように高温であっても、単離された標的細胞からの気泡の分離を達成するために必要とされる場合には、本発明の方法において使用することができ、ほとんどの哺乳類細胞型(最高37℃を好む)の生存能力を損なうことが予測されることを見出した。驚くべきことに、本発明者らは、40℃以上の理論的Tmを有するハイブリッドが、計算されたTm、すなわち約37℃を十分に下回る温度で、細胞から効果的に気泡を放出することを発見した。
【0093】
いずれの理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、理論上のTmを十分に下回る放出は、これらを一緒に束ねるマイクロメーター直径の細胞及び気泡によってこれらのハイブリッドに課される大きなブラウン、向心力、及び/又は摩擦力によるものであり、それらの理論的Tm以下では、ハイブリッドが弱化する可能性があると考えている。結果として、本発明者らは、これらの実施形態において、90%以下の回収効率で、97%~99%の標的細胞生存率を日常的に達成した。
【0094】
一実施形態では、ハイブリダイゼーションステップは、4℃~約30℃の範囲の温度で実施することができる。様々な更なる実施形態において、ハイブリダイゼーションステップは、10℃~約30℃、15℃~約30℃、20℃~約30℃、21℃~約30℃、22℃~約30℃、23℃~約30℃、24℃~約30℃、25℃~約30℃、10℃~約25℃、15°C~約25℃、20℃~約25℃、21℃~約25℃、22℃~約25℃、23℃~約25℃、又は24℃~約25℃で実施することができる。
【0095】
これらの実施形態では、計算されたTmは、最近隣2状態モデルを使用して計算されたTmであり、
【数3】
ΔH°(エンタルピー)及びΔS°(エントロピー)は、配列及び公表された最近接熱力学パラメータから、かつ使用されるイオン条件下において計算された融解パラメータであり、Rは理想気体定数(1.987calK-1モル-1)であり、[オリゴ(oligo)]は、オリゴヌクレオチドのモル濃度であり、定数-273.15により、温度をケルビンから摂氏温度に変換する。最近隣の熱力学的パラメータはAllawi、H.、Santa Lucia、J.Jr.、Biochemistry、36、10581のものであり、一価陽イオン補正はOwczarzy、R.ら、Biochemistry、47、5336のものである。
【0096】
様々な実施形態において、第1の相補性領域と第2の相補性領域との間のハイブリッドの計算されたTmは、40℃~約60℃、40℃~約58℃、40℃~約56℃、40℃~約55℃、40℃~約54℃、40℃~約53℃、40℃~約52℃、40℃~約51℃、40℃~約50℃、41℃~約60℃、41℃~約58℃、41℃~約56℃、41℃~約55℃、41℃~約54℃、41℃~約53℃、41℃~約52℃、41℃~約51℃、41℃~約50℃、42℃~約60℃、42℃~約58℃、42℃~約56℃、42℃~約55℃、44℃~約54℃、42℃~約53℃、42℃~約52℃、42℃~約51℃、又は42℃~約50℃である。
【0097】
当業者には理解されるように、第1及び第2の相補性領域の特異的ヌクレオチド配列は、第1及び第2の相補性領域の長さにわたって完全な相補体を形成し、結果として、記載されている計算されたTmを有するハイブリットとなる任意のものであってもよい。
【0098】
「ベクトル力」は、これに限定されるものではないが、重力、向心力、遠心力など、方向を有する力並びに大きさである。
当業者は、血液の主要な細胞成分の相対密度、特定の細胞型の分化クラスター(CD)表面マーカー、及び様々な医学的適応症に対するこれらの細胞型の関係を十分に認識している。
【0099】
本発明の方法は、任意の好適な、機能的閉鎖細胞分離システムで行うことができる。1つの非限定的実施形態では、細胞分離システムは、米国特許第8747289号に記載されているシステムを含むことができる。改良された実施形態では、細胞分離装置は、本明細書に開示されたシステムの任意の実施形態又は実施形態の組み合わせの機能的閉鎖細胞分離システムを備える。1つのこのような実施形態では、機能的閉鎖システムは、
(a)
(i)少なくとも1つの入口ポートと、第1の出口ポートと、第2の出口ポートとを備える処理容器、
(ii)入口ポートを備える少なくとも第2の容器、及び入口ポート及び第1の出口ポートを備える第3の容器、を備える2つ以上の追加の容器、
(ii)処理容器の第1の出口ポートを第2の容器の入口ポートに接続する第1の導管であって、第1の可逆的閉鎖装置を備え、第1の可逆的閉鎖装置が開かれたときに処理容器から第2の容器への流体の流れのみが生じ得るように、第2の容器が処理容器に一時的に流体接続されている、第1の導管、
及び(v)処理容器の第2の出口ポートを第3の容器の入口ポートに接続する第2の導管であって、第2の可逆的閉鎖装置を備え、第2の可逆的閉鎖装置が開かれたときに処理容器から第3の容器への流体の流れのみが生じ得るように、第3の容器が処理容器に一時的に流体接続されている、第2の導管、を備えるカートリッジと、
(b) 少なくとも1つのポートを備える移送容器と、
(c)少なくとも第3の導管であって、
(i)第3の容器の第1の出口ポートを移送容器の少なくとも1つのポートに接続し、かつ
(ii)移送容器の少なくとも1つのポートを処理容器の少なくとも1つの入口ポートに接続する、少なくとも第3の導管と、
少なくとも第3の導管が、(A)第3の容器が移送容器に一時的に流体接続され、かつ(B)移送容器が処理容器に一時的に流体接続されるように、少なくとも第3の可逆的閉鎖装置を備え、
(I)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、第3の容器から移送容器への流体の流れのみが生じ得るか、又は
(II)少なくとも第3の可逆的閉鎖装置が開かれたときに、移送容器から処理容器への流体の流れのみが生じ得るか、のいずれか1つのみが真であり得るように構成される少なくとも第3の導管と、を備える細胞分離システムを備える。
【0100】
本明細書で使用するとき、「可逆的閉鎖装置」とは、流体の流れを禁ずるために閉鎖することができる(例えば、制御装置によって)任意の装置である。このような例示的な装置としては、これらに限定されないが、弁、クランプ、及び止めコックが挙げられる。
【0101】
本明細書で使用するとき、「カートリッジ」は、閉鎖ハウジング内の容器間の細胞の無菌移動を可能にする閉鎖ハウジング(ルーフを有する)であり、細胞、結合剤、浮遊ラベル、及び浮遊試薬を混合して、一時的に流体接続される3つ以上の機械的に接合されている容器を備える連結を達成する。本明細書で使用するとき、「一時的に流体接続された」は、一方の容器から別の容器への流体又は細胞懸濁液の無菌移送を達成するために、装置の常時閉鎖弁の開口部を介して一時的に接続されたとき以外、容器が流体非連続的である(すなわち、各々が機能的に閉鎖している)ことを意味する。「移送容器」は、第2の導管を介して第3の容器に一時的に流体連結され、処理容器に一時的に流体連結されるが、関連した導管を介する場合を除き、移送容器が機械的にカートリッジに連結されている必要はない。
【0102】
「導管」は、これに限定されるものではないが、チューブなど、容器間の流体移送を可能にする任意の適切な装置であってもよい。全ての導管は、容器が流体接続されないように、「常時閉鎖」されている。導管は、弁、クランプ又は止めコックなどの任意の適切な可逆的閉鎖装置によって閉鎖されてもよい。一実施形態では、カートリッジ内の導管は、流体が通過すべき時を除いて常にバネ式チューブ挟持機構によって閉鎖され、その時点で挟持機構を回転させて(例えば、導管の可逆的開口を自動的に制御する制御モジュールによって)流体を通過させることができ、その後、再び回転させて、導管を再び挟持することによってその通路を閉鎖できる。
【0103】
第3の容器の出口と移送容器へ、及び移送容器から処理容器への入口の間の第3の導管もまた、任意の好適な可逆的閉鎖装置によって常時閉鎖されている。一実施形態では、第3の導管は、(第3の容器の出口ポートにちょうど隣接している)カートリッジの外部にクランプで締めてもよく、(例えば、隔離された接着細胞を第3の容器から移送容器へ重力排水することによって)第3の容器から移送容器へと隔離された接着細胞を移動するときに、クランプを外してもよい。移送容器への移送後、第3の容器ポートに隣接する第3の導管上にクランプを再確立してもよい。その際、例えば、隔離された接着細胞は、隔離された接着細胞(これに限定されるものではないが、ホスト液体から細胞及び血小板非含有血漿を結合させる単核細胞など)の亜集団を単離/富化することなど、更なる処理のために、隔離された接着細胞を処理チャンバに戻して重力排水することによって)、第3の導管を通って処理容器に移送されてもよい。
【0104】
移送容器は、カートリッジに機械的に連結されてもよく、又はシステムを機能的閉鎖システムとして維持するために移送容器をカートリッジ内の容器に接続する関連導管を介してのみ物理的に接続されてもよい。
【0105】
様々な容器は、剛性構造、袋、ボトル、又は任意の他の好適な構造などの任意の好適な材料を含むことができる。一実施形態では、各容器は硬質プラスチック容器(これに限定されないがポリカーボネートなど)などの剛性容器である。別の実施形態では、移送容器は、これに限定されないが袋などの可撓性容器である。採取された標的細胞の入った溶液での移送開始時に容器内の空気は、その移送容器を処理容器に接続する関連導管に沿って置換できるため、移送容器は剛性容器であり得る。また、移送容器は可撓性容器であってもよく、これは例えば、遠心中に遠心分離機のロータ区画に保存するのを容易にするために、小さな形状に折り畳み可能であるという利点を有する。
【0106】
一実施形態では、処理容器はほぼ円錐形の中央容器であり、第2及び第3の容器は円周方向に配置された小さな容器である。容器は、所与の目的のために任意の適切な量であり得る。
【0107】
一実施形態では、第3及び第2の容器はそれぞれ、カートリッジの外部の任意の好適な受け入れ容器への任意の接続点となる追加の常時閉鎖ポートを更に備えることができる。別の実施形態では、処理容器、第2及び第3の容器は、流体が全ての容器及びカートリッジの移送容器の内外に移動する際に空気の移動をもたらすために共通のろ過空気通気口を共有してもよい。カートリッジの通常動作では、このろ過通気口では容器間の流体移送はできない。図9は、所望の細胞がCD3細胞であり、本方法が本明細書に記載の細胞分離システムを使用することを含む、本発明の実施形態の例示的なフローチャートを示す。
【0108】
別の実施形態では、本方法は、標的細胞の1種以上の浮遊ラベルへの接着を促進して接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で標的細胞及び浮遊ラベルを接触させることを含む。一実施形態では、各浮遊試薬は、1つ以上の第2のリンカーを含み、1つ以上の第2のリンカーは、少なくとも1つの結合剤に接着された1つ以上の第1のリンカーに結合され、少なくとも1つの結合剤は、標的細胞上の細胞エピトープに結合でき、接触させることは、1種以上の浮遊試薬への標的細胞の接着を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した時間及び条件下で、標的細胞及び浮遊試薬を接触させることを含む。
【0109】
この実施形態では、処理することは、機能的閉鎖システム内で浮遊試薬を生成することを含み、これは、標的細胞の存在下又は非存在下で行うことができる。非限定的実施形態では、浮遊試薬の生成は、
(A)(i)第1に、少なくとも1つの分子標的に結合でき、少なくとも1つの第1のリンカーを担持することができる少なくとも1つの結合剤、(ii)第2に、少なくとも1つの相補的リンカーを担持する少なくとも1つの浮遊ラベル;又は
(B)(i)第1に、少なくとも1つのリンカーを担持する少なくとも1つの浮遊ラベル;(ii)第2に、少なくとも1つの分子標的に結合し、少なくとも1つの相補的リンカーを担持できる少なくとも1つの結合剤;又は
(C)少なくとも1つのリンカーを担持する少なくとも1つの浮遊ラベル、及び少なくとも1つの分子標的に結合し、少なくとも1つの相補的リンカーを実質的に同時に担持することができる少なくとも1つの結合剤、を混合することによって実施されてもよい。
【0110】
別の実施形態では、本方法は、以下のとおり、最初に標的細胞結合剤複合体を生成することを含む:
(i)ホスト液体を一次結合剤と接触させることであって、各一次結合剤は、(A)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤、及び(B)その剤に結合した第1のリンカーを含み、標的細胞の一次結合剤への接着を促進し、標的細胞結合剤複合体を生産するのに適した条件下で生じる接触させることと、
(ii)標的細胞結合剤複合体を浮遊ラベルとインキュベートすることであって、各浮遊ラベルが第2のリンカーを含み、第2のリンカーが第1のリンカーに結合することができ、第1のリンカーの第2のリンカーへの結合を促進し、接着標的細胞を生成するのに適した条件下でインキュベートすること。
【0111】
この実施形態では、本方法には、ステップ(i)と(ii)との間に、非結合一次結合剤の除去が生じるいかなる中間ステップも含まなくてもよい。この実施形態は、「無洗浄」プロトコルと称され得る。以下の実施例に示すように、無洗浄プロトコルは、様々な原材料、細胞濃度、処理容量、標的、手動又は自動プロトコル及び浮遊試薬(ガス充填気泡など)の直径において優れた標的細胞回収率(70+%~90+%)を日常的にもたらす。多くの原材料及び処理条件において無洗浄プロトコルの適用が奏効したことは、驚くべき結果である。結合剤(抗体など)及び粒子(マイクロビーズ、ナノ粒子、又は微小気泡など)を用いて標的細胞を物理的に捕捉する当業者は、詳細な予備的な抗体滴定試験(個々の独立した生物試験片について)なく、所定の標的細胞懸濁液中の抗体結合部位の総数を予測することは不可能であることが分かっている。このような滴定試験がない場合(これらの試験は時間を要し、原材料を消費する)、標準量の抗体を添加すると、実質的に過剰の非細胞結合抗体が細胞懸濁液中に残存する場合があることが予想され得る。これには、第2のステップにおいて粒子と結合するにあたって細胞結合抗体と競合し、その結果標的細胞の回収効率が低下することが予想される。無洗浄プロトコルは、貴重な利益をもたらす。通常、エンドユーザーに洗浄ステップの要件を割愛するために、産生業者は産生中に抗体などの結合剤で粒子をあらかじめ標識することもある。これにより、一般的に必要な洗浄ステップがエンドユーザーから産生業者に移り、産生コスト(したがって試薬価格)が上昇する。この戦略を採用している産生業者は、多数の異なる抗体標識微小気泡製品(顧客にとって対象の別個の標的分子ごとに1つ)を組み立て、ストックするという要件も提示される。これにより、複雑な産生プロセスと数多くの別個の製品の在庫をもたらし、ここでも産生業者のコストが上昇し、したがって製品価格が上昇する。また、標識浮遊試薬製品の浮遊試薬成分が結合剤成分よりも短い固有の貯蔵寿命を有する一般的な場合も、在庫の有効期限が切れると高価な結合剤が廃物となり、ここでもコストの上昇となる。
【0112】
別の実施形態では、少なくとも1つの分子マーカーに結合できる産生された浮遊試薬を使用することができる。これらの実施形態の各々において、浮遊試薬と標的細胞との混合は、移送容器、処理容器、又はその両方で行うことができる。
【0113】
一実施形態では、浮遊試薬は移送容器内で生成される。他の実施形態では、浮遊試薬は、処理チャンバ内で、又は外部の混合装置内で生成されてもよい。
【0114】
更なる実施形態では、浮遊試薬を標的細胞と接触させて接着標的細胞を生産することは、移送容器内で行われる。
【0115】
BACS試薬と標的細胞の入った溶液との混合は、標的細胞がホスト液体中に落下する間に浮遊ラベルが増加するという事実を説明する任意の好適な手段によって達成することができる。一実施形態では、効率を改善するために、各標的細胞上の実質的にすべての結合部位が浮遊ラベルと結合するように混合が実施される。1つの非限定的実施形態において、混合することは、本発明の装置を回転又は振盪プラットフォーム上に置くことなどにより、BACS試薬及びカートリッジの処理容器内の標的細胞溶液に転頭運動を提供することによって実施される。更なる実施形態では、混合することは、浮遊ラベルの固有の上昇運動を逆転させ、標的細胞の動きを低下させて処理容器の対向する内面に向かって移動させるために、カートリッジを180度周期的に再配向することを含む。
【0116】
別の非限定的実施形態では、混合することは、移送容器中でBACS試薬及び標的細胞の入った溶液に転頭運動を提供することによって実施される。更なる実施形態では、混合することは、浮遊ラベルの固有の上昇運動及び標的細胞の落下運動を引き起こし、移送容器の対向する内面に向かって移動させるために、移送容器を180度周期的に再配向することを含む。
【0117】
更なる非限定的実施形態において、混合することは、オンボードミキサを備える細胞分離システムを使用することによって実施される。このようなオンボードミキサの実施形態は、細胞分離システムに関する更なる開示において以下に記載される。
【0118】
別の実施形態では、処理されるホスト液体は枯渇したホスト液体であり、この方法は、処理又は前処理ステップの前に、処理容器内などの機能的閉鎖システム内で、遠心などのベクトル力を非枯渇ホスト液体に適用することを含み、非所望細胞を第2の容器に通過させることなどによって、非所望細胞を枯渇させて、これにより処理される枯渇されたホスト液体を生産することを含む。この実施形態により、同一の機能的閉鎖システムで実施されるべき非所望の細胞を枯渇させるステップ、及びその後の標的/所望の細胞の精製のステップが可能になる。これらのステップは従来技術の方法を用いては不可能であった。2ステップ工程では、最初の富化ステップは、対象の細胞対対象外の細胞の相対存在量を、出発物質の相対存在量よりも十分に高いレベルまで上昇させ、その後の処理を効率的に進行させることができる。特定の実施形態では、この富化ステップは、本明細書に記載のシステムの任意の実施形態又は実施形態の組合せにおける分画遠心を介して実施される。第2のステップでは、最初の(富化)ステップの産生細胞懸濁液を、浮遊試薬を用いた処理工程に供して、それらの意図する用途に対して十分な純度で(すなわち、必要に応じて可能な限り少ない対象外の細胞によってコンタミされている)可能な限り多くの標的細胞を回収する。2ステップ工程では、多くの場合、最初の富化ステップ中に対象の一部の細胞が失われる。したがって、ここでも全回収率の基準値として、BACSステップの産生において回収される出発物質に存在する標的細胞の割合が存在する。
【0119】
当業者に理解されるように、ホスト液体から非所望細胞を除去するために1回ベクトル力を適用することができるか、又は2回以上の分画遠心分離ステップを実施して、順次非所望細胞を除去してもよい。この工程の例は、図10に見ることができる。
【0120】
当業者に理解されるように、枯渇ホスト液体の生産は、処理容器内など、機能的閉鎖システム内で非枯渇ホスト液体に例えば遠心などのベクトル力を適用する1つのラウンドを適用し、非所望細胞を枯渇させることを含んでもよい。
【0121】
あるいは、ホスト液体を枯渇させることは、異なる型の非所望細胞を除去するためにベクトル力(遠心など)を2ラウンド以上適用し、所望の標的細胞を単離するために更に処理される枯渇ホスト液体を生産することを含んでもよい(図10)。例えば、ホスト液体が全血である場合、第1の遠心分離ラウンドを用いて、例えば、赤血球のみ、又は赤血球及び顆粒球を枯渇させ、第2の遠心分離ラウンドによって単核細胞及び血小板を層状化して、枯渇ホスト液体を形成することができる。
【0122】
1つの非限定的実施形態では、機能的閉鎖システムは、所望の細胞源を含むホスト液体(正常な血液など)を処理容器に受け入れることができ、遠心分離機に入れると、非所望細胞(例えばRBC、GRN及びPLT)をカートリッジ内の第2の容器へ移動させることを含む遠心分離の間に、最初の所望の細胞の富化ステップを実施し、希少な所望の細胞を含む富化された所望の細胞の調製物(例えばMNC)を第3の容器からの無菌的移動をもたらし、次に上記のような浮遊ラベルへの結合及び単離を介して次の更なる精製を行うために処理容器に戻す。RBC、GRN、PLT及び過剰な流体(例えば、血漿)などの非所望細胞は、システムが機能的に閉鎖している状態を維持して、富化された標的細胞を乱すことなく、全てを機能的閉鎖システムから除去することができる。
【0123】
一実施形態では、枯渇ホスト液体を処理容器から移送容器に通し、浮遊試薬と混合して処理ステップ(a)を開始し、接着標的細胞を生産する。更なる実施形態では、この方法は、機能的閉鎖システム内の標的細胞から浮遊ラベルを分離して、分離した標的細胞を生産することを更に含む。これらに限定されないが、浮遊試薬を破壊すること(例えば、陽圧又は陰圧の適用又は細胞に損傷を与えない超音波エネルギーの適用を介して)、又は、(例えば、オリゴヌクレオチドリンカーの脱ハイブリッド形成又は巨大分子リンカーの酵素的切断又は低分子リンカーの化学的切断を介して)標的細胞に結合した結合剤とこれらの結合剤が連結される浮遊ラベルとの間の連結を切断することによる、など、浮遊ラベルを標的細胞から分離する任意の好適な方法を使用することができ、これにより標的細胞を放出し、例えば、遠心中にカートリッジの円錐状の処理容器(ここでは、非標的細胞を実質的に含まない)を下方に移行させて、カートリッジの第3の容器に収集するために位置付ける。ある実施形態では、エネルギー又は圧力を印加するための装置(ソニケータなど)は、機能的閉鎖細胞分離システムに不可欠である。他のある実施形態では、エネルギー又は圧力を印加するための装置は、システムの容器の1つに不可欠である。ある実施形態では、エネルギー又は圧力は、システムの任意の容器とは別個である。本発明者らは、驚くべきことに、浮遊試薬から標的細胞を分離するための超音波処理を用いて、高い標的細胞の回収効率と相まって、高い標的細胞の生存率(90%~100%)を日常的に得た。
【0124】
ある実施形態では、この方法は正の選択を達成するために使用される。この実施形態では、標的細胞は所望の細胞であり、この方法は、機能的閉鎖システム内で分離した標的細胞を濃縮するステップを更に含み、隔離ステップは、濃縮し、分離した標的細胞を第3の容器に通過させることを含む。他の実施形態では、この方法は、負の選択(すなわち、標的細胞が所望の細胞ではない)を達成するために使用される。この実施形態では、隔離することは、機能的閉鎖システム内で分離した標的細胞を濃縮することを含む。ある他の実施形態では、2ラウンド以上の負の選択及び/又は正の選択が連続して使用される。ある実施形態では、2つ以上の連続した選択ラウンドを用いることにより、細胞を、第2又は第3の容器のいずれかから処理容器に戻すように配向し、配向した細胞と追加のBACS試薬との混合を伴っても伴わなくてもよい。
【0125】
別の実施形態では、細胞分離システムは、少なくともカートリッジ、並びに第1及び第2の導管において活性を制御するための制御モジュールを更に備える。
【0126】
いくつかの実施形態では、制御装置は、移送容器内及び/又は第3の導管内の活性を制御することもできる。例えば、制御装置は、移送容器がカートリッジ内に存在する実施形態において、移送容器及び/又は第3の導管内の活性を制御することができる。制御装置は、例えば遠心中など、カートリッジ容器間の流体の流れを配向する可逆的閉鎖装置を制御することができる。1つの非限定的実施形態では、浮遊ラベルに結合する標的細胞を浮遊ラベルに結合していない細胞から分離するように、標的細胞/浮遊ラベル混合物の入ったカートリッジを遠心する。制御モジュールは、第1の可逆的閉鎖装置を通って非浮遊ペレット化細胞をカートリッジの第2の容器に送達し、カートリッジの処理容器内で、浮遊試薬に結合した上清のバルク及び実質的に全ての標的細胞を残すようにプログラムすることができる。
【0127】
更なる実施形態では、処理容器又は他の容器は、細胞の存在又は非存在を検出するための少なくとも1つの検出器によって任意に検索することができる。この実施形態では、制御モジュールは、少なくとも1つの検出器から中継される情報に基づいて、少なくとも第1及び/又は第2の導管内の可逆的閉鎖装置の開閉を制御する。任意の好適な検出器は、これに限定されないが、光検出器などを使用することができる。
【0128】
本明細書に記載の全ての実施形態では、所望の細胞は、これに限定するものではないが、脂肪組織、培養細胞、遺伝子改変細胞、及びこのような標的細胞の亜集団に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球、顆粒球、単核細胞、リンパ球、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、間質血管分画細胞に見出される腫瘍細胞、癌幹細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、間葉系幹細胞及び前駆細胞、脂肪由来幹細胞及び前駆細胞、内皮前駆細胞などの対象の任意の細胞であってもよい。様々な非限定的実施形態では、所望の細胞は、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞であってもよい。この列挙には、負のマーカー(上付きのマイナス記号で示される)を含み、この方法は、列挙されたマーカーに対して負の細胞を精製するために使用される。この列挙に示された負のマーカーは多能性マーカーであり、したがって、これらの負のマーカーの1つ以上を有する細胞を枯渇させることは、残存多能性細胞(すなわち、iPSC又はESC)の分化細胞を枯渇させるために使用することができる。
【0129】
様々な実施形態において、ホスト液体は、少なくとも10ml(あるいは、少なくとも25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mLなど)の容量を有する。
【0130】
他の実施形態では、所望の細胞は、非枯渇ホスト液体中、10%未満(あるいは、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満など)の細胞を表す。1つの非限定的実施形態では、CD3、CD4、CD14、CD19、CD56、又はCD34細胞は所望の細胞であり、非枯渇ホスト液体(全血)において約0.2%未満を表し、かつ枯渇ホスト液体(赤血球及び/又は血小板枯渇後の全血など)中の約20%、18%、15%、12%、10%、5%、2.5%、1%又は0.5%の細胞を表す。
【0131】
更なる実施形態では、所望の細胞の回収効率は、68%超、又は75%超、又は80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超である。1つの非限定的実施形態では、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞は所望の細胞であり、68%超、又は75%超、80%超、85超%又は90%超の回収率を有する。
【0132】
他の実施形態では、所望の細胞の生存率は、90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超である。1つの非限定的実施形態では、CD3細胞、CD4細胞、CD235a、CD14、CD19、CD56、CD34、CD117、KDR、SIRPA、ASGR1、OCLN、GLUT2、SLC6A1、TRA-1-60、SSEA4、AP(アルカリホスファターゼ)、SSEA3、TDGF1、又はCD349細胞は所望の細胞であり、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%の生存率を有する。
【0133】
更なる実施形態において、所望の細胞は、未処理のホスト液体中に所望の細胞約5×10個/mL及び所望の細胞約2.5×10個/mLで存在する。様々な更なる実施形態では、所望の細胞は、未処理のホスト液中において、所望の細胞約5×10個/mL~所望の細胞約2.5×10個/mL、所望の細胞5×10/mL~所望の細胞約2.5×10個/mL、所望の細胞5×10個/mL~所望の細胞約2.5×10個/mL、所望の細胞5×10個/mL~所望の細胞約10個/mL、及び所望の細胞5×10個/mL~所望の細胞約5×10個/mLで存在し得る。
【0134】
例えば、CD34細胞が所望の細胞であり、臍帯血がホスト液体である場合、未処理の臍帯血中、所望の細胞は、所望の細胞約5×10個/mL~所望の細胞約5×10個/mL、又は未処理の臍帯血中、所望の細胞約5×10個/mLで存在し得る。
【0135】
更なる非限定的実施例では、CD3細胞は所望の細胞であり、白血球除去輸血がホスト液体であり、所望の細胞は、所望の細胞約2.5×10個/mL~所望の細胞約2.5×10個/mLで存在し得る。別の非限定的実施例において、CD3細胞は所望の細胞であり、未処理のホスト液体(全血)中に約3×10個/mL~約6×10個/mlで存在する。
【0136】
ある実施形態では、本発明の方法を使用する全細胞処理時間は、1時間未満、45分未満、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、10分未満である、又は5分未満である。
【0137】
ある実施形態では、機能的閉鎖システムの好適な容器(処理容器、第2の容器、及び/又は移送容器など)を、細胞の代謝要求を満たすのに十分なO及びCOを含むガス混合物でパージし、ガス混合物の残部は、浮遊剤(例えば、微小気泡など)に含まれる同じペルフルオロカーボンガスである。
【0138】
ある実施形態では、標的細胞が懸濁されているホスト液体は、細胞の代謝必要性を満たすのに十分なO及びCOを含む気体混合物で平衡化され、ガス混合物の残部は、浮遊剤に含まれる同じペルフルオロカーボンガス(例えば、ガス充填気泡など)である。本明細書の開示に基づいて本発明の方法を実施する際に使用される好適な条件を決定することは、当業者のレベルの範囲内である。
【0139】
別の態様では、本発明は、
(a)少なくとも10mL(又は、あるいは少なくとも25mL、少なくとも50mL、少なくとも75mL、少なくとも100mL、少なくとも200mL、少なくとも400mL、少なくとも800mLなど)の容量を有する液体培地、
(b)液体培地中に懸濁される所望の細胞であって、所望の細胞は、脂肪組織、培養細胞、遺伝子改変細胞、及びこのような所望の細胞の亜集団に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄、白血球、顆粒球、単核細胞、リンパ球、単球、T細胞、B細胞、NK細胞、間質血管分画細胞に見出される造血幹細胞及び前駆細胞、間葉系幹細胞及び前駆細胞、内皮前駆細胞からなる群から選択され、所望の細胞は、液体培地に存在し、細胞懸濁液中、少なくとも80%(あるいは、少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又はそれ以上)の細胞から構成される所望の細胞、含む細胞懸濁液を提供し、
所望の細胞の生存率は90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超であり、
細胞懸濁液は、閉鎖細胞分離システム内に存在する。
【0140】
本発明の細胞懸濁液は、隔離後(及び任意に細胞分離後)に得られる所望の細胞であるが、更に、実施され得る任意の下流処理の前に、(a)機能的閉鎖システム(例えば、細胞分離システム)に含まれるか、又は(b)機能的閉鎖システムから直接的に得られるかのいずれかである。液体培地は、細胞が隔離/細胞分離後に懸濁される液体培地であり、したがって、特定の意図された用途に好適な任意のこのような液体培地であり得る。様々な実施形態において、液体培地は、生理食塩水、細胞培養培地、又は特定の用途に好適な他の液体培地を含み得る。一実施形態では、細胞懸濁液は閉鎖細胞分離システムから直接得られる。別の実施形態では、細胞分離システムは、本発明の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせの細胞分離システム/器具を備える。更なる実施形態では、細胞懸濁液は、閉鎖細胞分離システムの移送容器を通って細胞懸濁液除去ストリーム中に存在する。一実施形態では、組成物中の所望の細胞は、細胞に接着した浮遊ラベルを含む。
【0141】
一実施形態では、生存可能な所望の細胞の数は、少なくとも1×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5x10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10、又は少なくとも1×10、又は少なくとも2×10、又は少なくとも5×10である。更なる実施形態では、所望の細胞は、細胞に接着した浮遊ラベルを含む。更なる実施形態では、細胞懸濁液は、本明細書に開示された任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに記載されるとおり、細胞分離システムの移送容器、処理容器及び/又は第3の容器内に存在する。
【0142】
別の態様では、1種以上の結合剤及び/若しくは1種以上の浮遊ラベル、並びに/又は1種以上の浮遊試薬、並びに1つ以上のカートリッジ、並びに/又は1つ以上のシステム、並びに/又は1種以上の緩衝液を含むキットが提供される。
【0143】
別の態様では、本発明は、
(a)少なくとも1つの第1リンカーに共有結合又は非共有結合した少なくとも1つの結合剤であって、細胞懸濁液中の細胞上の少なくとも1つの分子標的に結合できる少なくとも1つの結合剤、及び
(b)分離されるべき細胞が懸濁されている液体培地の密度とは実質的に異なる密度を示す少なくとも1つの第2の相補的リンカーに共有結合又は非共有結合された少なくとも1つの浮遊ラベル、を含む組成物を提供する。
【0144】
別の実施形態では、少なくとも1つの浮遊ラベルとしては、これらに限定されないが、ガス充填気泡、中空ポリマー、ガラスビーズ、同伴ガスを含む微孔性ビーズ、不混和性液体の液滴、任意の形状の固体、任意の形状の液体、金ナノ粒子、又は銀ナノ粒子が挙げられる。更なる実施形態では、所望の細胞としては、これらに限定されないが、脂肪組織、培養細胞、又は遺伝子改変細胞に存在する正常な血液、胎盤/臍帯血、骨髄又は間質血管分画細胞に見出される造血幹細胞及び前駆細胞、間充織幹細胞及び前駆細胞及び内皮前駆細胞などの様々な細胞型が挙げられる。
【0145】
一実施形態では、組成物は、
(a)少なくとも1つの第1リンカーに共有結合又は非共有結合した少なくとも1つの結合剤であって、細胞懸濁液中の細胞上の少なくとも1つの分子標的に結合できる少なくとも1つの結合剤、及び
(b)分離されるべき細胞が懸濁されている液体培地の密度とは実質的に異なる密度を示す少なくとも1つの第2の相補的リンカーに共有結合又は非共有結合された少なくとも1つの浮遊ラベル、を含む。
【0146】
別の実施形態では、組成物は、
(i)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、
(ii)剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)浮遊ラベル、
(iv)浮遊ラベルに結合する第2のリンカーであって、第1の相補性領域と完全に相補的である第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1及び第2のリンカーの相補性領域のハイブリッドが、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、第2のリンカー、を含む。
第1のリンカーと第2のリンカーは互いにハイブリダイズされている。一実施形態では、組成物は、一次結合剤に結合した標的細胞を更に含む。
【0147】
別の態様では、本発明は、
(i)標的細胞上の少なくとも1つの細胞エピトープに結合できる剤を含む一次結合剤、
(ii)剤に結合し、第1の相補性領域を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む、第1のリンカー、
(iii)浮遊ラベル、
(iv)浮遊ラベルに結合する第2のリンカーであって、第2の相補性領域を有する第2のオリゴヌクレオチドを含み、第2の相補性領域が、第1の相補性領域と完全に相補的であり、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドが、少なくとも40℃の計算されたTmを有する、第2のリンカー、を含むキットを提供する。
【0148】
これらの組成物及びキットは、標的細胞の分離が脱ハイブリッド形成によって行われる、例えば、上記の方法の特定の実施形態において有用である。一実施形態では、第1及び第2の相補性領域のハイブリッドの計算されたTmは、40℃~約60℃である。別の実施形態では、計算されたTmは、最近隣2状態モデルを使用して算出される。
【数4】
ΔH°(エンタルピー)及びΔS°(エントロピー)は、配列及び公表された最近接熱力学パラメータから、かつ使用されるイオン条件下において計算された融解パラメータであり、Rは理想気体定数(1.987calK-1モル-1)であり、[オリゴ(oligo)]は、オリゴヌクレオチドのモル濃度であり、定数-273.15により、温度をケルビンから摂氏温度に変換する。更なる実施形態では、第1のリンカー及び第2のリンカーのうちの1つはビオチン(任意でオリゴヌクレオチドハイブリッド対の第1の員に連結されている)を更に含み、他方ではストレプトアビジン(任意でオリゴヌクレオチドハイブリッド対の第2の員に連結される)を更に含む。様々な実施形態では、浮遊ラベルは、ガス充填気泡、中空ポリマー、ガラスビーズ、同伴ガスを基礎とする微孔質、不混和性液体の液滴、金ナノ粒子、及び銀ナノ粒子からなる群から選択される。特定の一実施形態では、浮遊ラベルは、ガス充填気泡を含む。別の実施形態では、ガス入気泡は、脂質、リン脂質、タンパク質、又は炭水化物シェルによって包囲されたペルフルオロカーボンガスコアを含む。更なる特定の実施形態では、ガス充填気泡は、リン脂質シェルによって包囲されたペルフルオロオロカーボンガスコアを含む。更なる特定の実施形態では、ガス充填気泡は、約1μm~約6.5μmの直径を有する。
【0149】
一実施形態では、少なくとも1つの結合剤としては、これらに限定されないが、抗体、オリゴヌクレオチド、アプタマー、分子インプリントポリマー、炭水化物、タンパク質、ペプチド、酵素、小分子、脂質、脂肪酸、金属原子、金属イオン、又は合成ポリマーが挙げられる。別の実施形態では、少なくとも1つの第1のリンカー及び/又は第2のリンカーとしては、これらに限定されないが、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、オリゴヌクレオチド、抗体結合タンパク質、抗体結合タンパク質によって結合された部分、これらの組み合わせ、又は任意の第2接着結合剤が挙げられる。特定の実施形態では、一次結合剤は抗体を含む。
【0150】
別の態様では、本発明は、所望の細胞の少なくとも1つの分子型と、非所望細胞の少なくとも1つの分子型の出発混合物からの浮遊活性化細胞選別によって精製された所望の細胞を含む組成物を提供し、出発混合物は、所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも1倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも5倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも10倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも50倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも100倍、又は所望の細胞として非所望細胞の数の少なくとも500倍、又は所望の細胞として非所望細胞の少なくとも1000倍を含み、
所望の細胞の少なくとも1つの型の回収効率は、80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超であり、所望の細胞の少なくとも1つの型の純度は、80%超、又は85%超、又は90%超、又は95%超であり、所望の細胞の少なくとも1つの型の生存率は、90%超、又は95%超、又は97%超、又は99%超であり、
浮遊活性化細胞選別に供される、所望の細胞の少なくとも1つの分子型と非所望細胞の少なくとも1つの分子型との混合物の容積は、2mL超、10mL超、50mL超、又は100mL超、又は150mL超、又は200mL超、又は400mL超、又は800mL超である。
【0151】
種々の実施形態において、精製された所望の細胞、又は精製された所望の細胞から増殖した細胞は、細胞療法、研究、又は創薬に使用される。別の実施形態では、浮遊活性化細胞選別により精製する前に、所望の細胞を遠心分離によって富化する。更なる実施形態では、浮力活性化細胞選別ステップは、先行する所望の細胞の富化が行われた同じ容器内で実施される。
【0152】
様々な実施形態において、所望の細胞は、精製の前に、又は精製の後に、増殖される。他の実施形態では、細胞は細胞療法に使用され、細胞療法は自己又は同種異系である。更なる実施形態では、所望の細胞は、幹細胞又は前駆細胞、免疫細胞、幹細胞から分化した細胞、誘導多能性幹細胞から分化した細胞、遺伝子操作細胞、及び/又は遺伝子操作される細胞である。
【0153】
様々な更なる実施形態において、所望の細胞は、浮遊活性化細胞選別によって負の選択が行われ、浮遊活性化細胞選別によって正の選択が行われ、又はこれらの組み合わせによって選択が行われる。例えば、所望の細胞は、負の選択及び正の選択を連続して組み合わせることによる浮遊活性化細胞選別によって選択することができ、連続する負の選択及び正の選択は、同じ容器内で行われる。
実施例1
オリゴヌクレオチドハイブリッドリンカーを用いた標的細胞の単離
【0154】
本発明の方法における使用のための富化された細胞懸濁結合剤-浮遊ラベル複合体を調製するために、以下のプロトコルを使用することができる:末梢血単核細胞(PBMC)調製物は、200mlの新鮮なヒト末梢血及び収集された胎盤臍帯血単位を処理することによって調製した。PBMC調製物をPBSHEにより1×10個/mlのWBC濃度に希釈した。希釈したPBMC調製物を、血液学分析装置を用いて計数した。
【0155】
末梢血PBMCからのCD3細胞の単離:CD3抗体及びオリゴヌクレオチドハイブリッドを、0.3mg/mL(2μM)の濃度でCD3抗体をインキュベートすることによって調製した。細胞懸濁液1mL当たりのビオチンに予めコンジュゲートした8-Mer、10-Mer、12-Mer又は14-Merのいずれかの1/10の容量の相補性オリゴヌクレオチド(A’)(濃度4μM)により、5’末端で20-Merオリゴ5’-GGA AGC GGT GCT ATC CAT CT-3’(配列番号1)に予めコンジュゲートさせた。相補的オリゴ配列は、20-Merオリゴの3’最末端の塩基である。ハイブリダイゼーションが起こるように、オリゴヌクレオチドを室温で1時間インキュベートした。
【0156】
希釈したPBMC調製物に、細胞懸濁液1mL当たり12.5μgのCD3抗体-オリゴハイブリッド(CD3細胞選択に最適であることが実験的に予め決定されている)を添加し、室温で20分間回転ミキサ上でインキュベートした。
【0157】
臍帯血PBMCからのCD34細胞の単離:CD34抗体及びオリゴヌクレオチドハイブリッドを、0.1mg/mL(2μM)の濃度でCD34抗体をインキュベートすることによって調製した。細胞懸濁液1mL当たりのビオチンに予めコンジュゲートした8-Mer、10-Mer、12-Mer又は14-Merのいずれかの1/10の容量の相補性オリゴヌクレオチド(A’)(濃度4μM)により、5’末端で20-Merオリゴ5’-GGA AGC GGT GCT ATC CAT CT-3’(配列番号1)に予めコンジュゲートさせた。相補的オリゴ配列は、20-Merオリゴの3’最末端の塩基である。ハイブリダイゼーションが起こるように、オリゴヌクレオチドを室温で1時間インキュベートした。
【0158】
希釈したPBMC調製物に、細胞懸濁液1mL当たり15μgのCD34抗体-オリゴハイブリッド(CD34細胞選択に最適であることが実験的に予め決定されている)を添加し、室温で20分間回転ミキサ上でインキュベートした。
【0159】
これとは別に、微小気泡を再懸濁するためにAdvanced MicrobubblesのSIMB(登録商標)4-5のバイアルを短時間ボルテックスして浮遊試薬を調製した。微小気泡懸濁液の濃度はMultiSizer(登録商標)4(Beckman Coulter)で2μLのアリコートを分析することによって決定した。WBC当たり10個の微小気泡の比を使用して、CD3の単離のためにPBMC懸濁液に添加する微小気泡の容量を算出し、WBC当たり50個の微小気泡の比を用いて、CD34の単離のためにPBMC懸濁液に添加する微小気泡の容量を算出した。PBMC-抗体-オリゴハイブリッド-微小気泡懸濁液を、室温で40分間、ロッキングテーブル上でインキュベートした。
【0160】
インキュベーション後、細胞懸濁液を400xgで5分間遠心した。微小気泡(及び微小気泡結合細胞)はメニスカス上に浮遊するケーキを形成し(陽性分画)、非結合細胞は容器の底部にペレットを形成し(陰性分画)、細胞ペレットと気泡ケーキとの間に透明溶液が観察された。
【0161】
陽性分画を別の容器に移し、30倍過剰のオリゴA’を添加し、37℃の水浴中で20分間インキュベートし、次いで37℃のインキュベーターで30分間回転ミキサに供し、オリゴヌクレオチドを脱ハイブリダイズさせた。微小気泡陽性細胞分画を400×gで5分間遠心した。現在結合していない標的細胞集団は容器の底部にペレットを形成し、一方、微小気泡はメニスカス上に浮遊するケーキを形成した。微小気泡を容器から取り出した。
【0162】
希釈したPBMC、陰性分画、陽性分画及び微小気泡試料をフローサイトメトリー分析に供した。FITC標識抗ヒトCD45、7-アミノアクチノマイシン色素(7-AAD)、及びCD3単離用のAPC標識抗ヒトCD3又はCD34単離用のPE標識抗ヒトCD34を含む抗体マスターミックスを使用した。各細胞懸濁液の50μLアリコートを添加して、適切であると事前に決定された、任意の容量のマスターミックスの入ったチューブに流した。希釈されたPBMC懸濁液50μlは、陽性対照及び陰性対照フロー用チューブの両方に添加した。陽性対照をマスターミックスで標識し、陰性対照チューブをFITC標識抗ヒトCD45、7AAD、及びPE又はAPC標識マウスIgG(アイソタイプ)で標識した。その後、全てのチューブをボルテックスし、暗所で室温で20分間インキュベートした。このインキュベーションの後、全てのチューブに0.5mlの1×溶解緩衝液を加え、次にチューブをボルテックスし、室温で暗所で更に10分間インキュベートした。フローサイトメトリー分析の直前に、各チューブに、フロー用カウントビーズ懸濁液50μLを入れた。次に、CD3単離用のPBMC又はCD34単離用のISHAGEゲーティング戦略のための好適な結果を得るために予め決定されたCD45/7-AAD/CD3ゲーティング戦略を用いてチューブを分析した。
【0163】
実験結果を図11に示す。計算されたTmが16.3℃、27.9℃、及び41.6℃である8-Mer(n=1)及び10-Mer(n=1)及び12-Mer(n=1)のオリゴヌクレオチドリンカーは、それぞれ、12.5%、及び21.7%、及び68.4%の標的細胞回収率となった。計算されたTmが50.2℃である14-Mer(n=3)オリゴヌクレオチドリンカーは、76.7%~94.5%の標的細胞回収率となった。これらの結果は、標的細胞回収率がオリゴヌクレオチドリンカー長と感度の高い相関関係にあり、本明細書で使用する脱ハイブリダイゼーション温度37℃(これはヒト細胞生存に理想的である)よりも実質的に高い(使用されたイオン条件下で)計算されたTmを有するオリゴヌクレオチドリンカーハイブリッドにより最も高い回収率が得られるという驚くべき発見をもたらす。最適条件下で、95%以下の標的細胞回収率が観察された。当業者は、この回収率が、従来の標的細胞単離法の回収効率を超えていることを認識するであろう。
実施例2
機能的閉鎖システムにおけるヒト血液からの標的細胞の単離
【0164】
本発明の方法における使用のための富化された細胞懸濁液-結合剤-浮遊ラベル複合体を調製するために、以下のプロトコルを使用した:本発明においてCD3又はCD4単離用の200mlの新鮮なヒト末梢血、及びCD3単離用の100mL白血球除去輸血を処理することによって末梢血及び白血球除去輸血単核細胞(PBMC)調製物を調製し、PBSHE中に40~45mLを採取するように設定した。カートリッジ内の非標的細胞分画を排出後、標的細胞富化細胞懸濁液を移送容器によって処理容器に移して、無菌性を維持した。
【0165】
末梢血からのCD3細胞の単離:PBMC又は白血球除去輸血PBMC、1mLのビオチン化CD3抗体(原液濃度タンパク質0.5mg/mL)をPBSHEで5mLの容量に希釈し、一体化した0.2μmフィルタを通して添加し、インキュベートした室温で20分間一定に混合してインキュベートした。
【0166】
末梢血からのCD4細胞の単離:1mLのビオチン化CD3抗体(原液濃度タンパク質0.5mg/mL)をPBSHEで5mLの容量に希釈し、一体化した0.2μmフィルタを通して添加し、インキュベートした室温で20分間一定に混合してインキュベートした。
CD4細胞
【0167】
0.5mLのビオチン化CD3抗体(原液濃度タンパク質0.5mg/mL)をPBSHEで5mLの容量に希釈し、一体化した0.2μmフィルタを通して添加し、インキュベートした室温で20分間一定に混合してインキュベートした。
【0168】
これとは別に、浮遊試薬は、CD3又はCD4用にAdvanced MicrobubblesのSIMB(登録商標)4-5の微小気泡の2x1.4mLバイアルを短時間ボルテックスし、PVC産出チューブを備えた5mLシリンジに無菌で分注することによって調製した。5mLの残りの部分はPBSHEで構成されている。20分間抗体のインキュベーションを完了した後、微小気泡シリンジをシステムの第3の導管に滅菌溶接し、微小気泡を添加した。PBMC-抗体-微小気泡懸濁液を室温で30分間一定に混合してインキュベートした。
【0169】
インキュベートした後、そのシステムを400xgで5分間遠心した。微小気泡(及び微小気泡結合細胞)はメニスカス上に浮遊するケーキを形成し、非結合細胞は容器の底部にペレットを形成し、細胞ペレットと気泡ケーキとの間に透明溶液が観察された。次いで、このシステムを50xgで1分間遠心して陰性分画を第2の容器に移した。この場合、枯渇容器として機能する。陰性アリコートを細胞計数のために採取した。
【0170】
気泡ケーキ及び上清を移送容器に移し、次に気泡が破壊されるまで超音波エネルギーを2秒間加えた。超音波処理された陽性細胞分画を処理容器に戻して、400xgで5分間遠心した後、第3の容器に移した。この場合、所定の最終容量まで採取容器として機能した。陽性分画アリコートを細胞計数のために採取した。
【0171】
希釈したPBMC、陰性分画、及び陽性分画試料をフローサイトメトリー分析に供した。FITC標識抗ヒトCD45、7-アミノアクチノマイシン色素(7-AAD)、PE標識抗ヒトCD4及びAPC標識抗ヒトCD3を含む抗体マスターミックスを用いた。各細胞懸濁液の50μLアリコートを添加して、適切であると事前に決定された任意の容量のマスターミックスの入ったチューブに流した。希釈されたPBMC懸濁液50μlは、陽性対照及び陰性対照フロー用チューブの両方に添加した。陽性対照をマスターミックスで標識し、陰性対照チューブをFITC標識抗ヒトCD45、7AAD、及びPE又はAPC標識マウスIgG(アイソタイプ)で標識した。その後、全てのチューブをボルテックスし、暗所で室温で20分間インキュベートした。このインキュベーションの後、全てのチューブに0.5mlの1×溶解緩衝液を加え、次にチューブをボルテックスし、室温で暗所で更に10分間インキュベートした。フローサイトメトリー分析の直前に、各チューブに、フロー用カウントビーズ懸濁液50μLを入れた。次いで、PBMCにより好適な結果を得るために予め決定されたCD45/CD4/7-AAD/CD3ゲーティング戦略を用いてチューブを分析した。
【0172】
実験結果を図12に示す。末梢血から細胞を単離すると、CD3(n=4)の回収率が80.9%~88.1%、純度が94.8%~99.6%、生存率が90.7%~95.8%となった。CD4細胞(n=1)の回収率は81.7%、純度96.6%、生存率95.3%であった。白血球除去輸血(n=1)からのCD3細胞の単離は、回収率83.0%、純度98.6%及び生存率96.1%となった。それぞれの場合において、これらの組み合わせた回収率、純度及び生存率の基準値は、全手作業工程及び開放容器を使用する当業者による文献でこれまでに報告されたものを上回り、本発明の改善された性能を実証している。
実施例3
オリゴヌクレオチドリンカーを用いた機能的閉鎖システムにおけるヒト血液からのCD3細胞の単離
【0173】
本発明の方法における使用のための富化された細胞懸濁結合剤-浮遊ラベル複合体を調製するために、以下のプロトコルを使用することができる:末梢血単核細胞(PBMC)調製物を、本発明の200mlの新鮮なヒト末梢血を処理することによって調製し、PBSHE中に40~45mLを採取するように設定した。カートリッジから非標的細胞血液分画を排出後、採取し、富化標的細胞懸濁液を移送容器を介して処理容器に移して、無菌性を維持した。
【0174】
CD3抗体及びオリゴヌクレオチドハイブリッドを、3mg/mL(2μM)の濃度で540μgCD3抗体をインキュベートすることによって調製した。ビオチンに予めコンジュゲートした14-Merの1/10の容量の相補性オリゴヌクレオチド(A’)(濃度4μm)により、5’末端で20-Merオリゴ5’-GGA AGC GGT GCT ATC CAT CT-3’(配列番号1)に予めコンジュゲートさせた。相補的オリゴ配列は、20-Merオリゴの3’最末端の塩基である。ハイブリダイゼーションが起こるように、オリゴヌクレオチドを室温で1時間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、抗体-オリゴハイブリッドを、組み込まれた0.2mフィルタを通してPBMCに添加し、室温で20分間一定に混合してインキュベートした。
【0175】
これとは別に、浮遊試薬は、Advanced MicrobubblesのSIMB(登録商標)4-5の微小気泡の2x1.4mLバイアルを短時間ボルテックスし、PVC産出チューブを備えた5mLシリンジに無菌で分注することによって調製した。5mLの残りの部分はPBSHEで構成されている。20分間抗体のインキュベーションを完了した後、微小気泡シリンジをシステムの第3の導管に滅菌溶接し、微小気泡を添加した。PBMC-抗体-微小気泡懸濁液を室温で30分間一定に混合してインキュベートした。
【0176】
インキュベートした後、そのシステムを400xgで5分間遠心した。微小気泡(及び微小気泡結合細胞)はメニスカス上に浮遊するケーキを形成し、非結合細胞は容器の底部にペレットを形成し、細胞ペレットと気泡ケーキとの間に透明溶液が観察された。次いで、このシステムを50xgで1分間遠心して陰性分画を第2の容器、枯渇容器に移した。陰性アリコートを細胞計数のために採取した。別に、濃度600μM競合オリゴA’を5mLシリンジ中でPBSHEと組み合わせた。
【0177】
バブルケーキ及び上清を移送容器に移し、競合オリゴ-A’を無菌的に添加した。PBMC-抗体-微小気泡懸濁液を37℃の水浴中で競合A’と一緒に、40分間一定に混合しながらインキュベートした。
【0178】
陽性細胞分画を処理容器に戻して、400xgで5分間遠心した後、第3の容器に移した。この場合、所定の最終容量まで採取容器として機能した。未結合の微小気泡は処理容器内に残存した。陽性分画アリコート及び微小分画を細胞計数のために採取した。
【0179】
希釈したPBMC、陰性分画、陽性分画、及び微小気泡分画試料をフローサイトメトリー分析に供した。FITC標識抗ヒトCD45、7-アミノアクチノマイシン色素(7-AAD)、及びAPC標識抗ヒトCD3を含む抗体マスターミックスを用いた。各細胞懸濁液の50μLアリコートを添加して、適切であると事前に決定された任意の容量のマスターミックスの入ったチューブに流した。希釈されたPBMC懸濁液50μlは、陽性対照及び陰性対照フロー用チューブの両方に添加した。陽性対照をマスターミックスで標識し、陰性対照チューブをFITC標識抗ヒトCD45、7AAD、及びAPC標識マウスIgG(アイソタイプ)で標識した。その後、全てのチューブをボルテックスし、暗所で室温で20分間インキュベートした。このインキュベーションの後、全てのチューブに0.5mlの1×溶解緩衝液を加え、次にチューブをボルテックスし、室温で暗所で更に10分間インキュベートした。フローサイトメトリー分析の直前に、各チューブに、フロー用カウントビーズ懸濁液50μLを入れた。次いで、PBMCにより好適な結果を得るために予め決定されたCD45/7-AAD/CD3ゲーティング戦略を用いてチューブを分析した。
【0180】
実験結果を図11に示す。計算されたTmが50.2℃である14-Merオリゴヌクレオチドリンカー(n=1)を用いて末梢血(n=1)からCD3細胞を単離することにより、回収率76.7%、純度97.3%、及び生存率96.8%となった。これらの結果は、自動化大容量システムにおいて、オリゴヌクレオチドリンカー法により、優れた純度、回収率及び生存率をもたらし、標的細胞を収集するために微小気泡の物理的破壊(超音波処理などを介して)が不要になることを示している。こうした物理的破壊は、本明細書で採用されているものなどの大容量システムで正確に制御することが困難となり得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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