(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031737
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/033 20060101AFI20220215BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G03F7/033
C08F222/40
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186323
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2018159162の分割
【原出願日】2018-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐徳
(72)【発明者】
【氏名】露木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大喜多 健三
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】下記式(a1)、(a2)、および(a3)に示す構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、ならびに光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
【効果】本発明の感光性樹脂組成物を用いてレジストを形成することにより、IMS法によりマイクロバンプを形成する際に、良好にレジスト開口部に溶融はんだを充填することができ、目的に適ったマイクロバンプ等のはんだ電極を製造することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a1)に示す構造単位(a1)を15~60質量%、下記式(a2)に示す構造単位を15~50質量%、および下記式(a3)に示す構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(A)(但し、アルカリ可溶性樹脂(A)は多環縮環脂肪族(メタ)アクリレート由来の構造単位を有さない)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、ならびに光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
2は置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基を示す。)
【化2】
(式(a2)中、R
3は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
4はアルキル基の少なくとも1つ以上の水素原子を水酸基またはアルコキシ基に置換した基を示す。)
【化3】
(式(a3)中、R
5は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
6は単結合、-OCO-、-COO-、-CONH-、または-O-を示し;R
7はフェノール性水酸基を有するアリール基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成型法(IMS法)は、はんだ電極(はんだバンプ)を形成するための方法の一つである。これまで、ウェハなどの基板上にはんだ電極を形成する方法としては、ソルダーペースト法などが用いられてきた。しかしながら、これらの方法では、はんだバンプの高さ制御が難しい上、はんだ組成を自由に選択できないなどの制約があった。これに対しIMS法ではこれらの制約がないという利点が知られている。
【0003】
IMS法は、特許文献1~4に示されるように、溶融したはんだを射出成形できるノズルをレジストに密着させながら、レジストの開口部にはんだを流し込むことを特徴とする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-055260号公報
【特許文献2】特開2007-294954号公報
【特許文献3】特開2007-294959号公報
【特許文献4】特表2013-520011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IMS法でマイクロバンプを形成するためには、狭くて深いレジスト開口部に溶融はんだを射出して充填する必要があるが、狭くて深い開口部に溶融はんだを完全に充填することは難しい。また、マイクロバンプは複数形成する必要があり、その場合、複数の開口部を有するレジストを形成することになるが、この複数の開口部のサイズや形状を均一にすることは難しい。このため、開口部のサイズや形状によって、溶融はんだを完全に充填することができる開口部もあれば、溶融はんだを完全に充填することができない開口部もあるという状況になりやすい。
【0006】
以上のような理由により、IMS法でマイクロバンプを形成する際には、レジスト開口部に溶融はんだを完全に充填することができず、目的に適ったマイクロバンプを形成することができない場合があるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、IMS法によりマイクロバンプを形成する際に、良好にレジスト開口部に溶融はんだを充填することにより、目的に適ったマイクロバンプ等のはんだ電極を製造する過程において、前記レジストを形成する際に好適に用いることができる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明は、例えば下記[1]~[11]に関する。
[1] 電極パッドを有する基板上に、下記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物の塗膜を形成する工程(1);
前記塗膜を選択的に露光し、さらに現像することにより、前記電極パッドに対応する領域に開口部を有するレジストを形成する工程(2);ならびに
前記レジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填する工程(4);
を有することを特徴とするはんだ電極の製造方法。
【0009】
【化1】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
2は置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0010】
[2] 前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記式(a2)に示す構造単位を有する前記[1]に記載のはんだ電極の製造方法。
【0011】
【化2】
(式(a2)中、R
3は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
4はアルキル基の少なくとも1つ以上の水素原子を水酸基またはアルコキシ基に置換した基を示す。)
【0012】
[3] 前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記式(a3)に示す構造単位を有する前記[1]または[2]に記載のはんだ電極の製造方法。
【0013】
【化3】
(式(a3)中、R
5は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
6は単結合、-OCO-、-COO-、-CONH-、または-O-を示し;R
7はフェノール性水酸基を有するアリール基を示す。)
【0014】
[4] 前記アルカリ可溶性樹脂(A)に含まれる前記構造単位(a1)の含有割合が、15~60質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のはんだ電極の製造方法。
[5] 前記工程(2)の後、前記工程(4)の前に、前記レジストの開口部の内部にメッキ膜を形成する工程(3)を有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載のはんだ電極の製造方法。
[6] 下記式(a1)に示す構造単位(a1)を15~60質量%、および下記式(a2)に示す構造単位を15~50質量%有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、ならびに光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
【0015】
【化4】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
2は置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0016】
【化5】
(式(a2)中、R
3は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
4はアルキル基の少なくとも1つ以上の水素原子を水酸基またはアルコキシ基に置換した基を示す。)
【0017】
[7] 前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記式(a3)に示す構造単位を有する前記[6]に記載の感光性樹脂組成物。
【0018】
【化6】
(式(a3)中、R
5は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
6は単結合、-OCO-、-COO-、-CONH-、または-O-を示し;R
7はフェノール性水酸基を有するアリール基を示す。)
【0019】
[8] 電極パッドを有する基板上に、下記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物の塗膜を形成する工程(1);
前記塗膜を選択的に露光し、さらに現像することにより、前記電極パッドに対応する領域に開口部を有するレジストを形成する工程(2);
前記レジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填し、はんだ電極を形成する工程(4);ならびに
前記はんだ電極を介して、前記第1基板の電極パッドと、電極パッドを有する第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成する工程(6);
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【0020】
【化7】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
2は置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0021】
[9] 電極パッドを有する基板上に、下記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物の塗膜を形成する工程(1);
前記塗膜を選択的に露光し、さらに現像することにより、前記電極パッドに対応する領域に開口部を有するレジストを形成する工程(2);
前記レジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填し、はんだ電極を形成する工程(4);
前記レジストを除去する工程(5);ならびに
前記はんだ電極を介して、前記第1基板の電極パッドと、電極パッドを有する第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成する工程(6);
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【0022】
【化8】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示し;R
2は置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0023】
[10] 前記[8]または[9]に記載の積層体の製造方法によって製造された積層体。
[11] 前記[10]に記載の積層体を有する電子部品。
【発明の効果】
【0024】
本発明のはんだ電極の製造方法によれば、特定の感光性樹脂組成物を用いてレジストを形成することにより、IMS法によりマイクロバンプを形成する際に、良好にレジスト開口部に溶融はんだを充填することができ、目的に適ったマイクロバンプ等のはんだ電極を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明のはんだ電極の製造方法において、工程(1)により基板上に感光性樹脂組成物の塗膜を形成した状態を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明のはんだ電極の製造方法において、工程(2)によりレジストを形成した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明のはんだ電極の製造方法において、工程(3)によりレジストの開口部の内部にメッキ膜を形成した状態を示す図である。
【
図4】
図4(1)は、本発明のはんだ電極の製造方法において、工程(4)によりレジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填している状態を示す図である。
図4(2)は、本発明のはんだ電極の製造方法において、工程(4)によりはんだ電極を形成した状態を示す図である。
【
図5】
図5(1)は、本発明の第1の積層体の製造方法において、工程(6)で、電気的接続構造を形成する前の第1基板および第2基板の状態を示す図である。
図5(2)は、本発明の第1の積層体の製造方法において、工程(6)により第1基板の電極パッドと第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の積層体の製造方法において、工程(5)によりはんだ電極を備えた基板からレジストを除去した状態を示す図である。
【
図7】
図7(1)は、本発明の第2の積層体の製造方法において、工程(6)で、電気的接続構造を形成する前の第1基板および第2基板の状態を示す図である。
図7(2)は、本発明の第2の積層体の製造方法において、工程(6)により第1基板の電極パッドと第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[はんだ電極の製造方法]
本発明のはんだ電極の製造方法は、
電極パッドを有する基板上に、下記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物の塗膜を形成する工程(1);
前記塗膜を選択的に露光し、さらに現像することにより、前記電極パッドに対応する領域に開口部を有するレジストを形成する工程(2);ならびに
前記レジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填する工程(4);
を有することを特徴とする。
【0027】
【化9】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示し;R
2は置換基を有してもよい1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0028】
以下、本発明のはんだ電極の製造方法を、図面を参照しながら説明する。
(工程1)
工程1では、
図1に示すように、電極パッド2を有する基板1上に感光性樹脂組成物の塗膜3を形成する。
基板1は、たとえば半導体基板、ガラス基板、シリコン基板、並びに半導体板、ガラス板およびシリコン板の表面に各種金属膜などを設けて形成される基板などである。基板1は多数の電極パッド2を有している。
【0029】
塗膜3は、感光性樹脂組成物を基板1に塗布等することにより形成される。感光性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法を挙げることができる。塗膜3の膜厚は、通常0.001~100μm、好ましくは0.01~50μm、より好ましくは0.1~10μmである。
【0030】
前記感光性樹脂組成物は、上記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する。
【0031】
アルカリ可溶性樹脂(A)が有する構造単位(a1)を示す式(a1)において、2つのR1は、それぞれ独立に水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0032】
R2は、置換基を有してもよい1価の脂環式炭化水素基を示す。前記脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等を挙げることができる。これらの中で、シクロヘキシル基が特に好ましい。
【0033】
構造単位(a1)を形成することのできるモノマーとしては、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、およびN-(9-アクリジニル)マレイミド等を挙げることができる。
【0034】
本発明のはんだ電極の製造方法においては、前記構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)を含む感光性樹脂組成物から形成されたレジストを用いることにより、IMS法によりマイクロバンプを形成する際に、良好にレジスト開口部に溶融はんだを充填することができ、目的に適ったマイクロバンプ等のはんだ電極を製造することができるようになる。このような効果が得られる理由は以下のように考えられる。
【0035】
本発明者は、IMS法でマイクロバンプを形成する際に、レジスト開口部に溶融はんだを完全に充填することが困難であるのは、IMS法を行った際にレジストから発生するアウトガスが原因の1つであるとの知見を得た。すなわち、IMS法を行った際に加えられる熱によりレジストからアウトガスが発生し、このガスがレジスト開口部内に滞留して、溶融はんだがレジスト開口部内に流入するのを妨げているものと考えられる。発生したアウトガス量が多くなるほど、溶融はんだがレジスト開口部内に流入しにくくなり、レジスト開口部に溶融はんだを十分に充填することが困難になる。
【0036】
マイクロバンプは、下部が銅からなり、上部がはんだからなるピラー状の構造を有することが多い。このようなピラー状バンプを製造するときには、まずレジスト開口部内に銅を充填し、基板を銅メッキすることが一般的である。このためレジストは、メッキ耐性を有することが要求される。メッキ耐性は、レジストを構成する樹脂のガラス転移温度が高いほど高くなることが知られている。このため、レジストの形成に使用される従来の感光性樹脂組成物には、ガラス転移温度が高くなることが一般的に知られている、ジシクロペンタニルアクリレート等の多環縮環脂肪族メタクリレートから導かれる構造単位を含む樹脂が用いられていた。
【0037】
しかし、多環縮環脂肪族メタクリレートから導かれる構造単位を含む樹脂では、該構造単位のエステル部位が熱により分解されやすく、分解により遊離した成分がガスとして放出される。従来の感光性樹脂組成物から形成されたレジストを用いて、IMS法によりマイクロバンプを形成したときに、良好にレジスト開口部に溶融はんだを充填することができないのは、多環縮環脂肪族メタクリレートから導かれる構造単位のエステル部位が熱により分解され、分解により遊離した成分がアウトガスとして多量に放出されるからであると考えられる。
【0038】
本発明のはんだ電極の製造方法において用いられる感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(A)が有する構造単位(a1)は、熱により分解されにくい。このため、この感光性樹脂組成物から形成されたレジストを用いてIMS法を行うと、レジストから発生するアウトガスは少なく、溶融はんだがレジスト開口部内に流入するのをアウトガスにより阻害される程度は低い。以上のような理由から、本発明のはんだ電極の製造方法によれば、IMS法により良好にレジスト開口部に溶融はんだを充填することができ、目的に適ったマイクロバンプ等のはんだ電極を製造することができるものと考えられる。
【0039】
さらに、前記構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)はガラス転移温度が高いので、アルカリ可溶性樹脂(A)を含む感光性樹脂組成物から形成されたレジストは高いメッキ耐性を有する。
【0040】
すなわち、前記感光性樹脂組成物は、アウトガス発生の抑制による溶融はんだの良好な充填と高いメッキ耐性とを両立させる効果を有する。
アルカリ可溶性樹脂(A)中に含まれる前記構造単位(a1)の含有割合は、好ましくは15~60質量%、より好ましくは20~50質量%、さらに好ましくは25~45質量%である。前記構造単位(a1)の含有割合が前記下限値以上であると、高いメッキ耐性が得られ、かつアウトガスの発生を低減させることができる点で有利である。一方、前記構造単位(a1)の含有割合が高くなりすぎると、レジスト形成能が低下する場合があるので、レジスト形成能を確保する上で前記構造単位(a1)の含有割合は前記上限値以下であることが有利である。
【0041】
アルカリ可溶性樹脂(A)は下記式(a2)に示す構造単位を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A)が式(a2)に示す構造単位を含有すると、IMS法実施時に基板の反りが発生するのを防止することができ、またアウトガスの発生を抑制することもできる。
【0042】
【化10】
式(a2)中、R
3は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有してもよいアルキル基を示す。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0043】
R4は、アルキル基の少なくとも1つ以上の水素原子を水酸基またはアルコキシ基に置換して形成される基を示す。R4としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、およびメトキシエチル基等を挙げることができる。
【0044】
構造単位(a2)を形成することのできるモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0045】
アルカリ可溶性樹脂(A)中に含まれる構造単位(a2)の含有割合は、好ましくは15~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは20~35質量%である。
【0046】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、下記式(a3)に示す構造単位を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A)が式(a3)に示す構造単位を含有すると、レジストのメッキ耐性が向上する。
【0047】
【化11】
式(a3)中、R
5は水素原子、または炭素数1~10の置換基を有していてもよいアルキル基を示す。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0048】
R6は単結合、-OCO-、-COO-、-CONH-、または-O-を示す。
R7はフェノール性水酸基を有するアリール基を示す。R7としては、ヒドロキシフェ二ル基、ヒドロキシナフチル基、等を挙げることができる。
【0049】
構造単位(a3)を形成することのできるモノマーとしては、4-(1-メチルエテニル)フェノール、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシ-1-ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0050】
アルカリ可溶性樹脂(A)中に含まれる構造単位(a3)の含有割合は、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。
アルカリ可溶性樹脂(A)は、式(a1)~(a3)に示す構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、クロトン酸、マレイン酸等から導かれる構造単位を挙げることができる。
【0051】
前記感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の含有率は、好ましくは20~60質量%、より好ましくは25~50質量%である。
前記1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)は、露光により光ラジカル重合開始剤から発生する活性種によりラジカル重合する成分である。
【0052】
化合物(B)としては、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、ビニル基を有する化合物が好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物は、単官能性(メタ)アクリレート化合物と多官能性(メタ)アクリレート化合物とに分類されるが、いずれの化合物であってもよい。
【0053】
上記単官能性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシルアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカニル(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デセニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、tert-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0054】
上記多官能性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO(propylene oxide)変性トリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシメチルエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(三官能以上)、フタル酸とエポキシアクリレートとの反応物などが挙げられる。
【0055】
化合物(B)として、市販されている化合物をそのまま用いることができる。市販されている化合物としては、例えば、アロニックスM-210、同M-309、同M-310、同M-320、同M-400、同M-7100、同M-8030、同M-8060、同M-8100、同M-9050、同M-240、同M-245、同M-6100、同M-6200、同M-6250、同M-6300、同M-6400、同M-6500(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD R-551、同R-712、同TMPTA、同HDDA、同TPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同HX-220、同HX-620、同R-604、同DPCA-20、DPCA-30、同DPCA-60、同DPCA-120(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート#295、同300、同260、同312、同335HP、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0056】
これらの化合物(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記感光性樹脂組成物における化合物(B)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは30~100質量部、より好ましくは40~80質量部である。
【0057】
前記光ラジカル重合開始剤(C)は、光の照射によりラジカルを発生し、化合物(B)のラジカル重合を開始させる化合物である。光ラジカル重合開始剤(C)としては、オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤が、多種かつ大量に活性種を発生させて、空気中の酸素による阻害を抑制する機能を有する点で好ましい。
【0058】
オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤にはオキシムの二重結合に起因する幾何異性体が存在しうるが、これらは区別されず、いずれの光ラジカル重合開始剤であってもよい。
【0059】
光ラジカル重合開始剤(C)としては、例えば、WO2010/146883号公報、特開2011-132215号公報、特表2008-506749号公報、特表2009-519904、および特表2009-519991号公報に記載光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0060】
前記光ラジカル重合開始剤(C)の具体例としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-エトキシカルボニルオキシ-1-フェニルプロパン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、およびN-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0061】
これらの化合物(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記感光性樹脂組成物における化合物(C)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは1~10質量%である。
【0062】
前記感光性樹脂組成は、その他の成分として、重合禁止剤、連鎖移動剤、溶剤、界面活性剤、接着助剤、増感剤、無機フィラー等を、本発明の目的および特性を損なわない範囲で含有してもよい。
【0063】
前記感光性樹脂組成は、溶剤を含有することで、取り扱い性が向上したり、粘度の調節が容易になったり、保存安定性が向上したりする。
溶剤としては、
メタノール、エタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。
【0064】
溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の含有量は、膜厚0.1~100μmのレジストを形成する場合、通常、前記感光性樹脂組成の固形分が5~80質量%となる量を用いる。固形分とは、組成物に含まれる全成分のうち溶剤を除く成分を意味する。
【0065】
(工程2)
工程2では、
図2に示すように、塗膜3を選択的に露光し、さらに現像することにより、電極パッド2に対応する領域に開口部4を有するレジスト5を形成する。つまり、各電極パッド2を収容する開口部4が形成されるように塗膜3に対して部分的に露光を行い、その後現像、加熱を行って、各電極パッド2を収容する開口部4を形成する。その結果、各電極パッド2に対応する領域に開口部4を有するレジスト5が得られる。開口部4は、レジスト5を貫通する孔である。露光、現像および加熱に関しては、従来法に則して行うことができる。開口部4の最大幅は、通常、塗膜3の膜厚の0.1~10倍、好ましくは0.5~2倍である。
【0066】
(工程4)
工程4では、レジスト5の開口部4の内部に射出成型法(IMS法)により溶融はんだを充填する。
まず、
図4(1)に示すように、IMSヘッド8をレジスト5に密着、好ましくは押圧させながらIMSヘッド8から溶融はんだ9を開口部4に注入する。その後冷却することによって、
図4(2)に示すように、各開口部4にはんだ電極6が形成される。IMS法においては、通常、250℃以上に溶融はんだを加熱しながら充填を行う。
【0067】
前述のとおり、レジスト5を形成する感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(A)が有する構造単位(a1)は熱により分解されにくいので、工程4においてレジスト5から発生するアウトガスは少ない。このため、溶融はんだ9を開口部4内に良好に充填することができるので、目的に適ったはんだ電極6が製造される。
本発明のはんだ電極の製造方法においては、前記工程(2)の後、前記工程(4)の前に、下記の工程3を行うこともできる。
【0068】
(工程3)
工程3では、
図3に示すように、レジスト5の開口部4の内部にメッキ膜15を形成する。メッキ膜15を形成する方法としては、電解メッキ法等の通常のメッキ法を用いることができる。メッキ膜15の種類としては、はんだ電極を形成できれば特に制限はなく、銅膜等を挙げることができる。
【0069】
前述のとおり、レジスト5を形成する感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(A)はガラス転移温度が高く、前記感光性樹脂組成物から形成されたレジスト5は高いメッキ耐性を有する。このため、工程3においてメッキ処理を良好に行うことができる。
【0070】
前記工程(2)の後に前記工程3を行い、その後前記工程(4)を行うことにより、基板の金属パッドの上に、下部が銅等の金属からなり、上部がはんだからなるピラー状のはんだ電極を製造することができる。
【0071】
[積層体の製造方法]
本発明の第1の積層体の製造方法は、
電極パッドを有する第1基板上に、下記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物の塗膜を形成する工程(1);
前記塗膜を選択的に露光し、さらに現像することにより、前記電極パッドに対応する領域に開口部を有するレジストを形成する工程(2);
前記レジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填し、はんだ電極を形成する工程(4);ならびに
前記はんだ電極を介して、前記第1基板の電極パッドと、電極パッドを有する第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成する工程(6);
を有する。
【0072】
【化12】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換可能なアルキル基を示し;R
2は置換可能な1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0073】
本発明の第2の積層体の製造方法は、
電極パッドを有する第1基板上に、下記式(a1)に示す構造単位(a1)を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、および光ラジカル重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物の塗膜を形成する工程(1);
前記塗膜を選択的に露光し、さらに現像することにより、前記電極パッドに対応する領域に開口部を有するレジストを形成する工程(2);
前記レジストの開口部の内部に射出成型法により溶融はんだを充填し、はんだ電極を形成する工程(4);
前記レジストを除去する工程(5);ならびに
前記はんだ電極を介して、前記第1基板の電極パッドと、電極パッドを有する第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成する工程(6);
を有する。
【0074】
【化13】
(式(a1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~10の置換可能なアルキル基を示し;R
2は置換可能な1価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0075】
第1および第2の積層体の製造方法における工程(1)、(2)および(4)は、前記はんだ電極の製造方法における工程(1)、(2)および(4)とそれぞれ実質的に同じである。つまり、第1の積層体の製造方法は、前記はんだ電極の製造方法における工程(1)、(2)、(4)の後に工程(6)を行う方法であり、第2の積層体の製造方法は、前記はんだ電極の製造方法における工程(1)、(2)、(4)の後に工程(5)および(6)を行う方法である。
【0076】
第1および第2の積層体の製造方法のいずれにおいても、工程(2)の後、工程(4)の前に、前記はんだ電極の製造方法の場合と同様に、前記はんだ電極の製造方法における工程(3)を行うことができる。
【0077】
第1および第2の積層体の製造方法においては、前記はんだ電極の製造方法における基板が第1基板に該当する。
第1の積層体の製造方法は、前記工程(1)、(2)、(4)の後に、前記はんだ電極を介して、前記第1基板の電極パッドと電極パッドを有する第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成する工程(6)を行う。
【0078】
工程(6)で用いられる第2基板は、第1基板、すなわち前記はんだ電極の製造方法における基板と同様であって差し支えない。
工程(6)では、例えば
図5(1)に示すように、第2基板11の電極パッド12を有する面に接着剤7を塗布する。そして、はんだ電極6を有する第1基板を、第2基板11の各電極パッド12が第1基板1の各はんだ電極6と向かい合うように対置させる。第2基板11が有する電極パッド12は、このとき第1基板1のはんだ電極6と対向する位置に設けられている。その後、第1基板1を第2基板11に、はんだ電極6が電極パッド12に接触するように被せ、加熱および/または圧着することにより、
図5(2)に示すように、はんだ電極9を介して、第1基板1の電極パッド2と第2基板の電極パッド12とが接続した電気的接続構造を形成する。これにより電気的接続構造を備えた積層体10が製造される。積層体10は、接着剤7から形成された接着剤層13を備える。
【0079】
前記加熱の温度は、通常、100~300℃であり、前記圧着時の力は、通常、0.1~10MPaである。
接着剤7は、通常の半導体素子の積層に用いられる接着剤でよい。なお、工程(6)では、接着剤を用いなくてもよい。
【0080】
第2の積層体の製造方法は、工程(1)、(2)、(4)の後に、前記レジストを除去する工程(5)、および前記はんだ電極を介して、前記第1基板の電極パッドと、電極パッドを有する第2基板の電極パッドとの電気的接続構造を形成する(6)を行う。
【0081】
工程(5)におけるレジストの除去は、従来使用されるレジストの除去方法で行えばよく、例えば、剥離液によるウェットプロセスやアッシングによるドライプロセスが挙げられる。
図6に、第1基板1からレジスト5を除去した状態を示す。
【0082】
第2の積層体の製造方法における工程(6)は、第1の積層体の製造方法における工程(6)と同様に行えばよい。例えば
図7(1)に示すように、第2基板11の電極パッド12を有する面に接着剤7を塗布し、はんだ電極6を有する第1基板を、第2基板11の各電極パッド12が第1基板1の各はんだ電極6と向かい合うように対置する。第1基板1を第2基板11に、はんだ電極6が電極パッド12に接触するように被せ、加熱および/または圧着することにより、
図7(2)に示すように、はんだ電極9を介して、第1基板1の電極パッド2と第2基板の電極パッド12とが接続した電気的接続構造を形成する。これにより電気的接続構造を備えた積層体20が製造される。積層体20は、レジスト5を除去する工程(5)を経て製造されているので、積層体10と異なり、レジスト5を含まない。
【0083】
第1および第2の積層体の製造方法のいずれにおいても、工程(2)の後、工程(4)の前に、前記はんだ電極の製造方法における工程(3)を行った場合には、銅等の金属とはんだとからなるはんだ電極を介して、第1基板の電極パッドと第2基板の電極パッドとが電気的接続構造を形成する。
【0084】
本発明の積層体の製造方法は、前述のはんだ電極の製造方法を含んでいるので、前述のはんだ電極の製造方法と同様の効果を有する。すなわち、本発明の積層体の製造方法は、はんだレジストの開口部の形状に適合し、目的に適ったはんだ電極を含む電気的接続構造を備えた積層体を製造することができる。
【0085】
上述のとおり、本発明の積層体の製造方法により製造される積層体は、第1基板と第2基板との間にはんだレジストを備えていても備えていなくてもよい。積層体がはんだレジストを備えている場合には、そのはんだレジストはアンダーフィルとして使用される。
本発明の積層体の製造方法により製造された積層体は、半導体素子、表示素子、及びパワーデバイス等のさまざまな電子部品に利用することができる。
【実施例0086】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、「部」は「質量部」の意味で用いる。
<物性の測定方法>
(アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にてアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した。
・カラム:東ソー社製カラムのTSK-MおよびTSK2500を直列に接続
・溶媒:テトラヒドロフラン
・温度:40℃
・検出方法:屈折率法
・標準物質:ポリスチレン
・GPC装置:東ソー製、装置名「HLC-8220-GPC」
【0087】
<感光性樹脂組成物の製造>
[合成例1]アルカリ可溶性樹脂(A1)の合成
フラスコ中に、重合開始剤として2,2'-アゾビスイソブチロニトリル10g、重合溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200g、ならびにモノマーとしてメタクリル酸11g、4-(1-メチルエテニル)フェノール14g、N-シクロヘキシルマレイミド40g、およびn-ブチルアクリレート35gを加え、攪拌しながら、80℃まで昇温した。その後、80℃で3時間加熱した。
【0088】
加熱終了後、反応生成物を多量のシクロヘキサン中に滴下して凝固させた。この凝固物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、次いで、液液洗浄し、アルカリ可溶性樹脂(A1)を得た。
【0089】
アルカリ可溶性樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は10,200であった。アルカリ可溶性樹脂(A1)に含まれる構造単位の含有率を13C NMRで測定したところ、メタクリル酸由来の構造単位は11質量%、4-(1-メチルエテニル)フェノール由来の構造単位は14質量%、N-シクロヘキシルマレイミド由来の構造単位は40質量%、n-ブチルアクリレート由来の構造単位は35質量%であった。
【0090】
[合成例2~9]アルカリ可溶性樹脂(A2)~(A7)、(AR1)、および(AR2
)の合成
合成例2~9においては、使用するモノマーを変更した以外は合成例1と同様の手法にて、下記表1に示すモノマー由来の構造単位および含有率を有するアルカリ可溶性樹脂(A2)~(A7)、(AR1)および(AR2)をそれぞれ合成した。なお、表1中のモノマー由来の構造単位の含有率の単位は質量%である。各アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)を表1に記す。
【0091】
【0092】
[実施例1]
<感光性樹脂組成物の製造>
100質量部のアルカリ可溶性樹脂(A1)、47質量部の多官能アクリレート(商品名「アロニックスM8100」、東亜合成(株)製)、5質量部のトリメチロールプロパントリアクリレート、0.4質量部の光重合開始剤(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、商品名「IRGACURE OXE02」、BASF社製)、3質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および0.1質量部のオクタメチルシクロテトラシロキサンを、80質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて均一に混合し、孔径10μmのカプセルフィルターでろ過して、実施例1の感光性樹脂組成物を製造した。
【0093】
<感光性樹脂組成物のアウトガス量の測定>
シリコン基板上にスピンコーターを用いて、実施例1の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布し、ホットプレートで110℃にて5分間加熱し、厚さ16μmの塗膜を形成した。次いでアライナー(Suss社製、型式「MA-200」)を用い、照射強度300mJ/cm2にて全面露光した。露光後、塗膜を2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に60秒間接触させ、塗膜を流水で洗浄し、現像した。次いで、窒素フロー下、対流式オーブンで270℃にて10分間加熱した。加熱後、1cm×1cmにサイズにシリコン基板を切断して、アウトガス量測定用基板を準備した。
【0094】
アウトガス量の測定はヘッドスペースGC-MS(装置名「Agilent 6890N」、アジレントテクノロジー株式会社製、流量:He2.0ml/min)を用いて、アウトガス量測定用基板を260℃で15分間加熱した際の発生ガス量を測定した。測定結果を表2に示す。
【0095】
<はんだ電極の製造>
シリコン基板上に複数の銅製の電極パッドを有する基板上にスピンコーターを用いて、実施例1の感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布し、ホットプレートで120℃にて5分間加熱した。次いでアライナー(Suss社製、型式「MA-200」)を用い、パターンマスクを介して波長420nmの光を照射強度300mJ/cm2にて露光した。露光後、塗膜を2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に240秒間接触させ、塗膜を流水で洗浄し、現像した。次いで、窒素フロー下、対流式オーブンで200℃にて10分間加熱し、電極パッドに対応する部分に開口部を有するはんだレジストを保持したレジスト保持基板を形成した。電子顕微鏡で観察したところ、各開口部の開口は直径7μmの円形であり、各開口部の深さは25μmであった。
【0096】
前記レジスト保持基板を、1質量%硫酸水溶液に23℃で1分間浸漬し、水洗、乾燥した。乾燥後のレジスト保持基板のはんだレジストの開口部の内部に、IMSヘッドを用いて、SAC305(鉛フリー半田、千住金属工業(株)製品名)を250℃で溶融して得られた溶融はんだを250℃に加熱しながら10分間かけて充填し、はんだ電極を製造した。溶融はんだ充填後のレジスト保持基板を光学顕微鏡で観察して、以下の基準にてはんだ埋め込み性を評価した。評価結果を表2に示す。
A:レジスト保持基板の全開口部の数に対する溶融はんだが充填されていない箇所の開口部の数が1%未満であった。
B:レジスト保持基板の全開口部の数に対する溶融はんだが充填されていない箇所の開口部の数が1%以上、10%未満であった。
C:レジスト保持基板の全開口部の数に対する溶融はんだが充填されていない箇所の容積が10%以上であった。
【0097】
同様に、露光に用いたパターンマスクのサイズを小さくして、開口部の開口が直径5μmの円形であり、各開口部の深さが25μmであるレジスト保持基板を作製した。次いで、同様に溶融はんだを充填し、はんだ電極を製造した。そのときのはんだ埋め込み性を上記と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
【0098】
[実施例2~7、比較例1および比較例2]
<感光性樹脂組成物の製造>
アルカリ可溶性樹脂(A1)の代わりに、アルカリ可溶性樹脂(A2)~(A7)、(AR1)および(AR2)をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の手法にて、実施例2~7、比較例1および比較例2の感光性樹脂組成物を製造した。
【0099】
<感光性樹脂組成物のアウトガス量の測定>
実施例1の感光性樹脂組成物に替えて実施例2~7、比較例1および比較例2の感光性樹脂組成物をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にアウトガス量の測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0100】
<はんだ電極の製造>
実施例1の感光性樹脂組成物に替えて実施例2~7、比較例1および比較例2の感光性樹脂組成物をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にはんだ電極を製造した。実施例1と同様にはんだ埋め込み性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0101】